説明

遊星ローラねじ装置

【課題】遊星ローラの生産効率を向上させるための手段を提供する。
【解決手段】外周面に軸ねじを形成したねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、前記軸ねじと前記ナットねじとに噛合うローラねじを外周面に有し、前記ねじ軸とナットとの間を自転しながら公転する遊星ローラと、該遊星ローラの軸部が嵌合する保持孔を設けた保持器とを有する遊星ローラねじ装置において、前記遊星ローラのローラ本体部の端面と前記軸部の間にギヤ取付部を形成し、該ギヤ取付部に嵌合する嵌合孔を有する遊星ピニオンギヤを設け、該遊星ピニオンギヤを前記ギヤ取付部に嵌合させて前記遊星ローラの端部に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やプレス成形機等の機械装置の送り機構や自動車用アクチュエータ等に用いられる遊星ローラねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遊星ローラねじ装置は、外周面に軸ねじを形成したねじ軸と内周面にナットねじを形成したナットとの間にこれらのねじと噛合うローラねじを有する遊星ローラを配置し、この遊星ローラの端部に遊星ピニオンギヤを形成し、遊星ピニオンギヤをナットに設けたリングギヤに噛合わせて遊星ローラをねじ軸周りに自転させながら公転させている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭59−147151号公報(第1頁右下欄−第2頁左下欄、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、遊星ローラの端部を加工して遊星ピニオンギヤを形成しているため切削加工等による複雑な工程を経て遊星ローラを製作しなければならず、加工時間が長くなって生産効率が低下するという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、遊星ローラの生産効率を向上させるための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、外周面に軸ねじを形成したねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、前記軸ねじと前記ナットねじとに噛合うローラねじを外周面に有し、前記ねじ軸とナットとの間を自転しながら公転する遊星ローラと、該遊星ローラの軸部が嵌合する保持孔を設けた保持器とを有する遊星ローラねじ装置において、前記遊星ローラのローラ本体部の端面と前記軸部の間にギヤ取付部を形成し、該ギヤ取付部に嵌合する嵌合孔を有する遊星ピニオンギヤを設け、該遊星ピニオンギヤを前記ギヤ取付部に嵌合させて前記遊星ローラの端部に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
このように、本発明は、ローラ本体部と遊星ピニオンギヤを組み合わせて遊星ローラを構成するようにしたため、大きな負荷を受けるローラねじを有するローラ本体部と、遊星ローラの回転を案内して比較的軽い負荷を受ける遊星ピニオンギヤとをそれぞれの負荷に応じて別に形成することが可能になり、遊星ローラの製作が容易となってその生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、図面を参照して本発明による遊星ローラねじ装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は実施例の遊星ローラねじ装置を示す断面図、図2は実施例の遊星ローラを示す側面図、図3は実施例のローラ本体部を示す側面図、図4は実施例の遊星ピニオンギヤを示す正面図、図5は実施例の遊星ピニオンギヤを示す側面図である。
図1において、1は遊星ローラねじ装置である。
2は遊星ローラねじ装置1のねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その外周面には軸ねじ3が所定のピッチPおよびリードで螺旋状に形成されている。
【0008】
4は遊星ローラねじ装置1のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には多条のナットねじ5が軸ねじ3と同じピッチPで形成されている。
6は遊星ローラであり、図2に示すようにローラ本体部7と遊星ピニオンギヤ8により構成されており、ローラ本体部7の両端部に形成されたギヤ取付部9にそれぞれの遊星ピニオンギヤ8の位相を同位相とし、かつローラねじ10の位相と同位相となるようにローラ本体部7の端面11に接触する位置まで嵌め込んで組み立てられる。
【0009】
ローラ本体部7は、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、図3に示すように外周面に軸ねじ3とナットねじ5とに嵌合するローラねじ10が軸ねじ3と同じピッチPで形成され、両端部に形成した円柱状の軸部12とローラ本体部7の端面11の間にその断面形状が矩形状で2面幅が軸部12の直径より大きく、かつその対角線の長さが遊星ピニオンギヤ8の谷径より小さく、軸方向の長さが遊星ピニオンギヤ8の幅より長くなるように形成されたギヤ取付部9を備えている。
【0010】
遊星ピニオンギヤ8は樹脂材料を射出成形により形成した平歯車であり、図4に示すようにローラ本体部7のギヤ取付部9を嵌合させるためのギヤ取付部9の断面形状と略同形状の矩形の嵌合孔13が上記の位相関係を適合させるように形成されている。
14は保持器であり、樹脂材料や金属材料で製作された円環状部材であって、遊星ローラ6の軸部12が嵌合する保持孔15が所定の角度ピッチで複数設けられており、遊星ローラ6の軸部12を保持孔15で保持してねじ軸2とナット4の間に複数の遊星ローラ6を所定の角度ピッチで配置する。
【0011】
16はリングギヤであり、遊星ローラ6の遊星ピニオンギヤ8に噛合う内歯の平歯車であって、ナット4の内周面に圧入等により固定されており、遊星ピニオンギヤ8がリングギヤ16に噛合うことにより遊星ローラ6を一定の速度で公転させる。
上記のねじ軸2の軸ねじ3とナット4のナットねじ5とに、保持器14に保持されてリングギヤ16と遊星ピニオンギヤ8により公転を案内された遊星ローラ6のローラねじ10が嵌合し、ナット4を回転させることによって遊星ローラ6がねじ軸2の周りを自転しながら公転してねじ軸2を軸方向に移動させる。これによりナット4の回転運動がねじ軸2の直線運動に変換される。
【0012】
このように本実施例は、遊星ローラ6のローラ本体部7と遊星ピニオンギヤ8とを別に形成するようにしたため、ねじ軸2とナット4との間で遊星ローラねじ装置1にかかる大きな荷重を支えるローラねじ10を有するローラ本体部7は転造等によりその外周面にローラねじ10を形成し、遊星ローラ6の回転を案内してローラ本体部7に比べて軽い負荷を受ける遊星ピニオンギヤ8は射出成形により形成して、それぞれの負荷に応じて製作することが可能となるので、ローラ本体部7と遊星ピニオンギヤ8とを容易に製作することができ、それぞれの大量生産が可能となる。
【0013】
以上説明したように、本実施例では、ローラ本体部と遊星ピニオンギヤを組み合わせて遊星ローラを構成するようにしたため、大きな負荷を受けるローラねじを有するローラ本体部と、遊星ローラの回転を案内して比較的軽い負荷を受ける遊星ピニオンギヤとをそれぞれの負荷に応じて別に形成することが可能になり、遊星ローラの製作が容易となってその生産効率を向上させることができる。
【0014】
また、ローラ本体部のギヤ取付部の2面幅を軸部の直径より大きく、長さを遊星ピニオンギヤの幅より長くなるように形成したことにより、遊星ローラを構成したときに遊星ピニオンギヤとローラ本体部の軸部との間にギヤ取付部が突出し、軸部を保持器の保持孔に嵌合させたときに保持器とギヤ取付部とが接触し、遊星ローラの自転に伴う保持器と遊星ローラとの間に発生する摩擦を小さくすることができる。
【0015】
なお、本実施例では遊星ピニオンギヤを樹脂材料を射出成形により形成して製作すると説明したが、金属材料を焼結冶金により形成した焼結金属を用いて製作するようにしてもよく、金属材料を金属射出成形により形成して製作するようにしてもよい。また、金属材料を鍛造等のプレス加工により形成して製作するようにしてもよい。
これらによっても前記と同様の効果を得ることができる。
【0016】
なお、本実施例のギヤ取付部の断面形状と遊星ピニオンギヤの嵌合孔とを矩形として説明したが、ローラ本体部のローラねじと遊星ピニオンギヤの位相を常に決まった位相に固定できれば、これらを多角形状に形成すればよく、またギヤ取付部と嵌合孔にキー溝を設けてキーを嵌めこんだギヤ取付部を嵌合孔に嵌合させるようにしてもよい。
また、円筒状に形成したギヤ取付部を円形断面を有する嵌合孔に嵌合させるときは、両端部の遊星ピニオンギヤの位相を合わせて接着剤により接着してもよく、金属材料で製作された遊星ピニオンギヤの場合はシマリバメや焼きバメにより両端部の遊星ピニオンギヤの位相を合わせて嵌合させても、ロウ付けにより接合してもよい。
【0017】
なお、本実施例の遊星ローラにおいてはローラ本体部の両側にギヤ取付部を設けて遊星ピニオンギヤを組み合わせるとして説明したが、ローラ本体部の片側にギヤ取付部を設けて遊星ピニオンギヤを組み合わせるようにしても上記と同様の効果を得ることができる。
また、本実施例においては遊星ローラねじ装置のナットを回転させてねじ軸を軸方向に移動させるとして説明したが、ねじ軸を回転させてナットを移動させる形式の遊星ローラねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の遊星ローラねじ装置を示す断面図
【図2】実施例の遊星ローラを示す側面図
【図3】実施例のローラ本体部を示す側面図
【図4】実施例の遊星ピニオンギヤを示す正面図
【図5】実施例の遊星ピニオンギヤを示す側面図
【符号の説明】
【0019】
1 遊星ローラねじ装置
2 ねじ軸
3 軸ねじ
4 ナット
5 ナットねじ
6 遊星ローラ
7 ローラ本体部
8 遊星ピニオンギヤ
9 ギヤ取付部
10 ローラねじ
11 端面
12 軸部
13 嵌合孔
14 保持器
15 保持孔
16 リングギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に軸ねじを形成したねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、前記軸ねじと前記ナットねじとに噛合うローラねじを外周面に有し、前記ねじ軸とナットとの間を自転しながら公転する遊星ローラと、該遊星ローラの軸部が嵌合する保持孔を設けた保持器とを有する遊星ローラねじ装置において、
前記遊星ローラのローラ本体部の端面と前記軸部の間にギヤ取付部を形成し、該ギヤ取付部に嵌合する嵌合孔を有する遊星ピニオンギヤを設け、該遊星ピニオンギヤを前記ギヤ取付部に嵌合させて前記遊星ローラの端部に配置したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記遊星ピニオンギヤを、樹脂材料により形成したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記遊星ピニオンギヤを、金属材料を金属射出成形で形成したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記遊星ピニオンギヤを、焼結金属により形成したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記遊星ピニオンギヤを、金属材料をプレス加工により形成したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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