遊離可能PEG試薬を有するプロドラッグPEGタンパク質結合体において活性成分(インビトロ脱ペグ化)を決定する方法
本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリシアル酸(PSA))で修飾されたタンパク質から、水溶性ポリマーの遊離を強制する、インビトロアッセイシステムの開発に関連する。本発明は、水溶性ポリマーの遊離を分析する方法、および回復したタンパク質活性を測定する方法を含む。本発明はさらに、PEGおよびPSAのようなポリマーを含む、遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理に適当な方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年10月21日に出願された米国仮特許出願番号61/107,257、および2009年9月15日に出願された米国仮特許出願番号61/242,634の利益を主張し、上記米国仮特許出願の各々は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般的に、可逆的に結合した水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリシアル酸(PSA))で修飾されたタンパク質からの、水溶性ポリマーの遊離を強制するインビトロアッセイシステムの開発に関連する。本発明は、水溶性ポリマーの遊離を分析する方法、および回復したタンパク質活性を測定する方法を含む。本発明はさらに、PEGおよびPSAのようなポリマーを含む、遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理に適当な方法を含む。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血液凝固第VIII因子(FVIII)の欠損または機能不全は、出血性障害血友病Aに関連する。血友病Aの管理のための処置の選択は、血漿由来または組換えFVIII(rFVIII)濃縮物による置換療法である。重症の血友病A、すなわちFVIIIレベルが1%より少ない患者は、FVIIIレベルを1%より上の中間的な量に維持する目的の予防的治療によって最もよく処置されることが、一般的に受け入れられている。循環中における様々なFVIII製品の平均半減期を考慮して、この循環濃度を、通常、FVIIIを1週間に2から3回投与することによって達成し得る。現在の予防治療の利便性を増すために、全ての他の製品の特徴を維持しながら、増強された薬力学的および薬物動態学的性質を有する次世代の製品の開発は、週1回ベースの投与を可能にすることが予想される。
【0004】
治療的ポリペプチド薬は、タンパク質分解酵素および中和化抗体にさらされるだけではなく、受容体媒介性細胞取り込みによって循環から除去されやすい。これらのイベントは、適用されたタンパク質の半減期および循環時間の抑制と関連し、それによってその治療的効果を制限する。PEGのようなポリマーによるポリペプチド薬の修飾は、それらを有意な程度まで酵素的分解およびクリアランスから保護し、それによってその薬力学的および薬物動態学的プロファイルを改善することが示された。それに加えて、ペグ化は、免疫原性の減少、物理的および熱的安定性の増加、溶解性の増加、液体安定性の増加、および凝集の抑制を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペグ化は通常、ポリペプチド薬への、1モノマーあたり1つまたはそれ以上のPEG鎖の共有結合によって達成される。PEGのタンパク質への安定な結合は、不可逆的な方式でそのタンパク質の生物学的機能を減少させる不利益を有する。タンパク質を、時間につれてタンパク質から解離する可能性を有する、可逆的に結合したPEGで修飾することによって、これを回避し得る。この型の遊離可能PEGは、天然タンパク質の活性の完全な回復を伴って、天然タンパク質の遊離を可能にするはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質からの、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリシアル酸(PSA)のような水溶性ポリマーの遊離を強制する、インビトロアッセイシステムの開発に関連する分野における1つまたはそれ以上のニーズに取り組む。本発明は、水溶性ポリマーの遊離を分析する方法、および回復したタンパク質活性を測定する方法を含む。本発明はさらに、遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理に適当な方法を含む。
【0007】
1つの実施態様において、本発明は、水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質から、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させる方法を含む。別の実施態様において、本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質の活性を増加させる方法を含む。どちらの方法も、タンパク質を、水溶性ポリマーを遊離させるために有効な1つまたはそれ以上の条件下でインキュベートする工程を含む。従って、本発明は、水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件の組み合わせを含む。1つの局面において、水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、タンパク質を含む緩衝液のpHを、約pH6から約pH10まで上昇させることを含む。別の局面において、その条件は、その緩衝液のpHを、約pH6.1から約pH9.8まで上昇させることを含む。さらなる局面において、その条件は、その緩衝液のpHを、約pH7.3から約pH9.8まで上昇させることを含む。さらに別の局面において、その条件は、その緩衝液のpHを、約pH6.5から約pH8.1まで上昇させることを含む。
【0008】
別の局面において、ポリマー(すなわちポリエチレングリコール)によって修飾されたタンパク質から、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、ポリマー−タンパク質結合体を含む緩衝液の遊離アミン濃度を増加させることを含む。1つの局面において、緩衝液の遊離アミン濃度の増加は、リシンの濃度の増加の結果である。別の局面において、緩衝液の遊離アミン濃度の増加は、ヒスチジンの濃度の増加の結果である。さらなる局面において、緩衝液の遊離アミン濃度の増加は、アミンの組み合わせの増加の結果である。さらに別の局面において、そのアミンの組み合わせは、リシンおよびヒスチジンである。
【0009】
さらなる局面において、ポリマー(すなわちポリエチレングリコール)によって修飾されたタンパク質から、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、ポリマー−タンパク質結合体を含む緩衝液の温度を、室温付近から約37℃へ上昇させることを含む。さらなる局面において、タンパク質から可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、緩衝液の温度を、約4℃から約37℃へ上昇させることを含む。
【0010】
またさらなる局面において、ポリエチレングリコールのような、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、ポリマー−タンパク質結合体をインキュベートする時間を、約5分から約168時間へ延長することを含む。様々な局面において、インキュベーション時間を、数分から数時間、数日、さらに1週間、またはそれ以上まで延長する。別の局面において、インキュベーション時間は、約5分から約48時間の範囲である。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、タンパク質を約0時間から約6時間まで37℃で、約100mMのヒスチジンおよび約100mMのリシンを含む、約pH7.3の緩衝液中でインキュベートし、そして最初の6時間以内にタンパク質活性を分析する工程を含む、可逆的に結合した遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理をアッセイする方法を含む。これらの方法は、例えば、バッチ間での一貫性または保存する際の安定性を示すための手段を提供する。
【0012】
さらに別の実施態様において、本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質の活性の増加または回復をモニターする方法を含む。そのような方法は、タンパク質から可逆的に結合した水溶性ポリマーを除去する前および後に、タンパク質の活性を測定することを含む。
【0013】
さらに別の実施態様において、本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質からのポリマー遊離の動態を測定する方法を含む。そのような方法は反応混合物においてある期間にわたって、遊離の水溶性ポリマーの量およびタンパク質に結合体化している可逆的に結合した水溶性ポリマーの量を同時に測定することを含み、ここで遊離の水溶性ポリマーの量の変化およびタンパク質に結合体化しているポリマーの量の変化から動態を決定する。1つの局面において、その測定は、蛍光発光スペクトルに基づき、そしてポリエチレングリコール−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル結合体に関しては約350−355nmの発光ピーク、およびポリエチレングリコール−ジベンゾフルベンに関しては約460−560nmの発光ピークにおける蛍光を用いて、同時の測定を行う。別の局面において、測定は遊離のポリエチレングリコール−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルおよびポリエチレングリコール−ジベンゾフルベンに関する高速液体クロマトグラフィーに基づく。さらなる局面において、測定は、免疫化学的に、ポリマー結合タンパク質、すなわちペグ化タンパク質、および遊離タンパク質に関する酵素結合イムノソルベント検定法に基づく。
【0014】
様々な局面において、その水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー等、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン(polyphosphasphazene)、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヒアルロン酸、およびキチン、ポリ(メタ)クリレート、およびポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン、および前述のいずれかの組み合わせを含むがこれに限らない。1つの局面において、その水溶性ポリマーはPEGである。別の局面において、その水溶性ポリマーはポリシアル酸(PSA)である。
【0015】
様々な局面において、そのタンパク質は第VIII因子(FVIII)またはフォンビルブランド因子(VWF)である。本発明のさらなる局面において、その水溶性ポリマーは、タンパク質N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはアルデヒドに基づく化学、水溶性ポリマー鎖と結合部位との間に異なる化学的結合を有する改変体、および長さが異なる改変体に結合する。1つの局面において、その水溶性ポリマーは、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル、ジベンゾフルベン、またはその誘導体に結合する。
【0016】
本発明の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、本発明の意図および範囲内の様々な変化および修飾が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施態様を示すが、説明のためのみに提供されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のさらなる説明を、下記の図1−11で述べる付随する図面を参照して提供する。
【図1】図1は、ペグ化rVWFのマルチマー構造に対する、pH依存性PEG遊離の影響を示す。
【図2】図2は、抗VWF抗体を用いて、ペグ化rVWFのマルチマー構造に対する、pHおよびアミン依存性PEG遊離の影響を示す。
【図3】図3は、抗VWF抗体を用いて、ペグ化rVWFのマルチマー構造に対する、pHおよびアミン依存性PEG遊離の影響を示す。
【図4】図4は、FVIII×VWF欠損マウスモデルにおける、天然および脱ペグ化rVWFのインビボrFVIII安定化効果の比較を示す。
【図5】図5は、異なる濃度でヒスチジンおよび/またはリシンを含む緩衝液における、PEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、FVIII色素形成活性の増加の比較を示す。
【図6】図6は、pH9.8またはヒスチジンおよびリシンを含む中性pHの緩衝液における、PEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、FVIII色素形成活性の増加の比較を示す。
【図7】図7は、PEG−rFVIIIのFVIII色素形成活性およびVWF結合能力に対する、アミンに基づく緩衝液依存性のPEG遊離の影響を示す。
【図8】図8は、インビトロ遊離アッセイの再現性およびバッチによる一貫性を調節するための試験を示す。
【図9】図9は、pH=8.5におけるPEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、PEG−ジベンゾフルベン(460−560nm)の産生および対応するPEG−FMOC結合体の蛍光シグナル(350−355nm)の減少を示す蛍光スペクトルを示す。
【図10】図10は、還元グルタチオン存在下における、pH=8.5での遊離可能ペグ化FVIIIのインキュベーションに際した、PEG−ジベンゾフルベン蛍光の形成を伴わない、PEG−FMOC結合体蛍光シグナル(350−355nm)のわずかな減少を示す蛍光スペクトルを示す。
【図11】図11は、pH=6.0における遊離可能PEG化FVIIIのインキュベーションに際した、PEG−FMOC結合体蛍光シグナル(350−355nm)の安定性を示す蛍光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、可逆的な結合でタンパク質に共有結合した水溶性ポリマーの遊離に関連する、タンパク質の活性の回復率を調査するための、インビトロアッセイシステムの開発に関連する。タンパク質の「活性の回復」という用語は、水溶性ポリマーが遊離した後の、生物学的機能、受容体結合、および酵素活性のような活性を含むがこれに限らないタンパク質活性の増加を指す。タンパク質のこの型の水溶性ポリマー修飾は、遊離可能水溶性ポリマー、すなわちPEG−FMOC−NHS試薬の、関心のあるタンパク質の露出したリシン残基への結合によって達成される。「FMOC」という用語は、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルを表し、それはペプチドまたはポリペプチド鎖の保護基を説明する。
【0019】
「タンパク質」という用語は、組換えタンパク質、タンパク質複合体、およびペプチド結合によって連結したアミノ酸残基から成るポリペプチドを含む、任意のタンパク質、タンパク質複合体、またはポリペプチドを指す。タンパク質を、インビボ供給源からの単離によって(すなわち天然に存在する)、合成方法によって、または組換えDNA技術によって得る。合成ポリペプチドを、例えば自動化ポリペプチド合成機を用いて合成する。本発明によって使用する組換えタンパク質を、下記の本明細書中で説明するような、当該分野で公知の任意の方法によって産生する。1つの実施態様において、そのタンパク質は、治療的タンパク質またはその生物学的に活性な誘導体を含む、生理学的に活性なタンパク質である。「タンパク質」という用語は典型的には、大きいポリペプチドを指す。「ペプチド」という用語は典型的には、短いポリペプチドを指す。その区別に関わらず、本明細書中で使用される場合、ポリペプチド、タンパク質、およびペプチドは、交換可能に使用される。
【0020】
ポリペプチドの「断片」は、全長ポリペプチドまたはタンパク質発現産物よりも小さい、ポリペプチドの任意の部分を指す。1つの局面において、断片は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、全長ポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端から除去された、全長ポリペプチドの欠失アナログである。よって、「断片」は、下記で説明する欠失アナログのサブセットである。
【0021】
「アナログ(analogue)」、「アナログ(analog)」、または「誘導体」は、ある場合においては様々な程度ではあるが、天然に存在する分子と、構造において実質的に同様であり、そして同じ生物学的活性を有する化合物である。例えば、ポリペプチドアナログは、参照ポリペプチドと実質的に同様の構造を共有し、そして同じ生物学的活性を有するポリペプチドを指す。アナログは、以下のものを含む1つまたはそれ以上の変異に基づいて、そのアナログが得られた天然に存在するポリペプチドと比較して、そのアミノ酸配列の組成において異なる:(i)天然に存在するポリペプチド配列の、1つまたはそれ以上のポリペプチドの末端および/または1つまたはそれ以上の内部領域における、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、(ii)天然に存在するポリペプチド配列の、1つまたはそれ以上のポリペプチドの末端(典型的には「付加」アナログ)および/または1つまたはそれ以上の内部領域(典型的には「挿入」アナログ)における、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入または付加、または(iii)天然に存在するポリペプチド配列における、1つまたはそれ以上のアミノ酸の、他のアミノ酸との置換。
【0022】
1つの実施態様において、本発明は、本発明の化合物または結合体および薬学的に許容可能な担体を混合することによって産生した、組成物または薬学的組成物を含む。「薬学的組成物」という用語は、ヒトおよび哺乳動物を含む被験体動物における薬学的使用に適当な組成物を指す。薬学的組成物は、薬理学的に有効な量のポリマー−ポリペプチド結合体を含み、そして薬学的に許容可能な担体も含む。薬学的組成物は、活性成分、および薬学的に許容可能な担体を構成する不活性成分、および直接的または間接的に、任意の2つまたはそれ以上の成分での組み合わせ、錯体形成、または凝集からできる任意の産物を含む組成物を含む。
【0023】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、デキストロースの5%水性溶液、および水中油型または油中水型エマルジョンのようなエマルジョン、および様々な型の湿潤剤および/またはアジュバントのような、任意および全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、および賦形剤を含む。適当な薬学的担体および処方が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Co.、Easton、1995)において記載される。組成物のために有用な薬学的担体は、活性薬剤の意図される投与方式に依存する。典型的な投与方式は、経腸(例えば経口)または非経口(例えば皮下、筋肉内、静脈内、または腹腔内注射;または局所、経皮、または経粘膜投与)を含むがこれに限らない。「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的な使用のために化合物または結合体に処方され得る塩であり、例えば金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含む。
【0024】
「薬学的に許容可能な」または「薬理学的に許容可能な」という用語は、生物学的にまたは他の面で望ましくないことがない物質を意味する。すなわち、その物質は、下記で説明するような当該分野で周知の経路を用いて投与されるときに、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こさず、またはそれが含まれる組成物の任意の成分と有害な方式で相互作用せずに、個体へ投与され得る。
【0025】
1つの実施態様において、本発明は、そのタンパク質またはポリペプチドの産生、バイアビリティーに有利な影響を与える化学的部分へ結合した、化学的に修飾されたタンパク質またはポリペプチドを含む。例えば、水溶性ポリマーのポリペプチドへの非特異的または部位特異的(例えばN末端)結合は、当該分野において、潜在的に免疫原性、腎クリアランスを抑制すること、および/またはプロテアーゼ抵抗性を改善することによって、半減期を改善することが公知である。いくつかの実施態様において、本発明で使用するためのポリペプチドは、分子の半減期および/または安定性を増加させるために、ペプチドに可逆的に結合した水溶性ポリマーを含む。様々な局面において、その水溶性ポリマーは、水溶性ポリマーを収容し得る任意の部位において、ペプチドまたはポリペプチドと結合する。1つの局面において、その水溶性ポリマーは、N末端に結合する。別の局面において、その水溶性ポリマーは、C末端に結合する。
【0026】
「水溶性ポリマー」という用語は、実質的に水性溶液中で可溶性であるかまたは懸濁物の形式で存在し、そして薬学的に有効な量での当該ポリマーに結合体化したタンパク質の投与に際し、実質的に哺乳動物に負の影響を与えず、そして生体適合性であると考えられ得るポリマー分子を指す。1つの実施態様において、生理学的に許容可能な分子は、約2から約300の反復ユニットを含む。様々な局面において、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー等、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン(polyphosphasphazene)、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヒアルロン酸、およびキチン、ポリ(メタ)クリレート、およびポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン、および前述のいずれかの組み合わせを含むがこれに限らない。
【0027】
1つの実施態様において、本発明は、型、結合、連結、配置および長さにおいて異なる、水溶性ポリマーの使用を含む。その水溶性ポリマー分子は、特定の構造に制限されず、ある局面において、直線状、分岐または多肢、樹状であるか、または分解性の連結を有する。さらに、そのポリマー分子の内部構造は、さらに他の局面において、任意の数の異なるパターンに組織化され、そして制限無しに、ホモポリマー、交互のコポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互のトリポリマー、ランダムトリポリマー、およびブロックトリポリマーからなる群より選択される。
【0028】
ある実施態様において、ポリマー−タンパク質結合体は、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)またはアルデヒドに基づく化学によって結合したポリマー−タンパク質結合体、水溶性ポリマー鎖と結合部位との間の異なる化学結合を有する改変体、および長さが異なる改変体を含むがこれに限らない。
【0029】
1つの局面において、その水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。ポリ(エチレンオキシド)(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても公知であるPEGは、ポリエーテルの1つの型である。PEG、PEO、またはPOEは、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーを指す。3つの名前は、化学的には同義であるが、歴史的にはPEGは20,000g/molより少ない分子量を有するオリゴマーおよびポリマー、PEOは20,000g/molより大きい分子量を有すポリマー、POEはあらゆる分子量のポリマーを指す傾向があった。しかし、本明細書中において、その用語を交換可能に使用する。
【0030】
PEGおよびPEOは、分子量の分布を有する分子を含む(すなわち多分散)。そのサイズ分布を、その重量平均分子量(Mw)およびその数平均分子量(Mn)によって統計学的に特徴づけることができ、その比は多分散指数と呼ばれる(Mw/Mn)。MwおよびMnを、質量分析によって測定し得る。ほとんどのPEG−タンパク質結合体、特に1KDaより大きなPEGに結合体化したものは、親PEG分子の多分散性質による分子量の範囲を示す。例えば、mPEG2K(Sunbright ME−020HS、NOF)の場合、実際の分子量は、1.036の多分散指数で1.5〜3.0KDaの範囲にわたって分布する。例外は、MS(PEG)n(N=4、8、12または24、例えばPEO4、PEO12)に基づく試薬(Pierce)に結合体化したタンパク質であり、それらは別々の鎖長および規定された分子量を有する単分散混合物として特別に調製される。
【0031】
1つの実施態様において、水溶性ポリマーがPEGである場合、PEGの平均分子量は約3から200キロダルトン(「kDa」)、約5kDaから約120kDa、約10kDaから約100kDa、約20kDaから約50kDa、約10kDaから約25kDa、約5kDaから約50kDa、または約5kDaから約10kDaの範囲である。
【0032】
「PEG」という用語は、本明細書中で議論されるか、または当該分野においてタンパク質を誘導体化するために使用されてきた、PEGの任意の形式を含むことを意味する。本発明は、1−100の反復ユニット(−CH2−CH2−O−)を含むがこれに限らない、いくつかの異なる直線状PEGポリマーの長さ、または2アームの分岐PEGポリマーの結合体を含む。いくつかの局面において、PEGポリマーの長さは、10−2000の反復ユニット(−CH2−CH2−O−)または2アームの分岐PEGポリマーの結合体を含む。12から50ユニットを有する、NHSまたはアルデヒドに基づくPEG−(CH2CH2O)nも、さらに本発明に含まれる。一般的に、本明細書中に含まれるペグ化反応に関して、加わるPEG部分の平均分子量は、約1kDaから約50kDa(「約」という用語は+/−1kDaを示す)である。他の局面において、PEG部分の平均分子量は、約60kDaの大きさであり得る。ある局面において、平均分子量は約0.5−5kDaである。
【0033】
「ペグ化」という用語は、1つまたはそれ以上のPEG部分に結合したタンパク質、タンパク質複合体、またはポリペプチドを指す。本明細書中で使用される「ペグ化」という用語は、1つまたはそれ以上のPEGをタンパク質へ結合する過程を指す。
【0034】
別の実施態様において、本発明は、NHS−結合であり、そして長さが−(CH2−CH2−O)n、ここでn=1から100、の範囲である直線状PEG−タンパク質結合体、アルデヒド結合であり、そして長さが−(CH2−CH2−O)n、ここでn=1から100、の範囲である直線状PEG−タンパク質結合体、NHS−結合であり、そして長さが変動する2アームの分岐PEG−タンパク質結合体、およびNHS結合である3アーム分岐PEG−タンパク質結合体からなる群より選択されるPEG−タンパク質結合体を含む。他の局面において、n=10から1000である。本発明はまた、その結合部位とPEG鎖との間に、異なる化学的結合(−CO(CH2)n−、および−(CH2)n−、ここでn=1から5)を含む、PEG−タンパク質結合体を含む。本発明はさらに、腎クリアランスを抑制するために、カルボキシル化、硫酸化、およびリン酸化化合物(陰イオン性)を含むがこれに限らない、荷電した、陰イオン性PEG−タンパク質結合体を含む(Caliceti、Adv.Drug Deliv.Rev.2003 55(10):1261−77;Perlman,J.Clin.Endo.Metab.2003 88(7):3227−35;Pitkin、Antimicrob.Ag.Chemo.1986 29(3):440−44;Vehaskari、Kidney Intl.1982 22 127−135)。さらなる実施態様において、そのペプチドを任意でビスホスホネート、炭水化物、脂肪酸、またはさらなるアミノ酸を含む部分へ結合体化する。
【0035】
1つの実施態様において、本発明は、タンパク質へ結合体化した水溶性ポリマーを低い程度で有する血液因子のような、修飾タンパク質を提供する。本発明の様々な局面において、タンパク質の低ペグ化形式を、結合反応において、タンパク質に対して低いモル過剰の水溶性ポリマーを用いて産生する。例えば、タンパク質をペグ化する典型的な方法は、関心のあるタンパク質に対して61.8M過剰のPEGを使用する。いくつかの局面において、タンパク質をペグ化する方法は、タンパク質に対して50−100M過剰のPEGを使用する。様々な局面において、本明細書中で記載したような低ペグ化タンパク質を、標準的な技術で使用するより少ない、反応中のモル過剰を用いて産生する。
【0036】
さらに、本明細書中で記載された低ペグ化タンパク質は、血液因子分子あたり、または血液凝固タンパク質分子あたり少なくとも約1および約10以下の水溶性ポリマー部分を含むことが企図される。1つの実施態様において、その修飾タンパク質は、タンパク質分子あたり、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、または9個の水溶性ポリマー部分を含む。別の実施態様において、その修飾タンパク質は、タンパク質分子あたり、約4〜8の間の水溶性ポリマー部分を含む。いくつかの実施態様において、その修飾タンパク質は、血液因子である。他の局面において、その修飾タンパク質は、血液凝固タンパク質である。関連する実施態様において、本発明は、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、フォンビルブランド因子およびフィブリノーゲンのような、任意の血液因子を含むがこれに限らない。1つの局面において、その血液因子分子は、第VIII因子である。別の局面において、その血液因子分子はVWFである。またさらなる局面において、その血液因子分子はヒトである。1つの実施態様において、その修飾血液因子または血液凝固タンパク質分子は、分子あたり少なくとも1つおよび20より少ないPEG部分を含む。関連する実施態様において、その修飾血液因子は、血液因子分子あたり、少なくとも4および10より少ないPEG部分を含む。さらなる実施態様において、その修飾血液因子は、血液因子分子あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施態様において、その修飾血液因子分子は、血液因子分子あたり、1〜20の間、2〜10の間、または4〜8の間のPEG部分を含む。1つの局面において、5個のPEG部分が、組換えVWFに結合する。別の局面において、12個のPEG部分が、組換え第VIII因子(rFVIII)に結合する。
【0037】
ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)のインビボ治療的半減期が、ペグ化から利益を得るかどうかを決定するために、様々な異なるPEG−タンパク質結合体を合成し、インビトロおよびインビボ(薬物動態に関して)で特徴付ける。
【0038】
本発明のペグ化タンパク質を調製する方法は一般的に、PEGがタンパク質のN末端、C末端、または任意の他のアミノ酸に可逆的に結合する条件下で、関心のあるタンパク質をPEGと反応させる工程、そして反応産物を得る工程を含む。タンパク質のペグ化は、そのタンパク質の内因性活性を有意に変え得るので、異なる型のPEGを探索する。タンパク質のペグ化に使用し得る化学は、メトキシ−PEG(O−[(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)−メチル]−O’−メチルポリエチレングリコール)のNHSエステルを用いた、タンパク質の1級アミンのアシル化を含む。メトキシ−PEG−NHSまたはメトキシ−PEG−SPAによるアシル化は、オリジナルの1級アミンから荷電を排除するアミド結合を生じる(また、C末端に関してはBoc−PEG)。リボソームタンパク質合成と異なり、合成ペプチドの合成は、C末端からN末端へ進行する。従って、Boc−PEGは、ペプチドのC末端へPEGを結合する1つの方法である(すなわちtert−ブチルオキシカルボニル(Boc、t−Boc)合成を用いる)(R.B.Merrifield(1963)「Solid Phase Peptide Synthesis.I.The Synthesis of a Tetrapeptide」、J.Am.Chem.Soc.85(14):2149−2154)。あるいは、側鎖保護基を除去するために、有害なフッ化水素酸の使用を必要としないので、フルオレニル−メトキシ−カルボニル(FMOC)化学(Atherton,E.;Sheppard,R.C.(1989)Solid Phase peptide synthesis:a practical approach.Oxford、England:IRL Press)を使用する。PEG部分を含むペプチドを産生する方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,824,784号を参照のこと。
【0039】
「リンカー」という用語は、水溶性ポリマーを、生物学的に活性な分子と連結する分子の断片を指す。その断片は典型的には、別のリンカーと、または直接的に生物学的に活性な求核剤と結合され得るか、またはそれらと反応するように活性化され得る、2つの官能基を有する。例として、リシンのようなω−アミノアルカン酸を通常使用する。本発明は、水溶性ポリマーのポリペプチドへの結合に使用される、遊離可能、分解性、または加水分解性リンカーを含む。
【0040】
1つの局面において、本発明は、タンパク質に遊離可能に連結したPEGを含む。この型のPEG修飾を、遊離可能PEG−FMOC−NHS試薬を、関心のあるタンパク質の露出したリシン残基へ結合することによって達成する。形成された結合体を、そのβ脱離メカニズムによってPEGを遊離させる能力によって特徴付ける。β脱離速度は、塩基(例えばアミン基)によって触媒され、そして塩基性pHおよび高い温度によって促進される。従って、高い濃度の遊離アミンによって、およびpHおよび温度の上昇によって、PEGの遊離をインビトロにおいて強制し得る。
【0041】
様々な他の局面において、本発明は、水溶性ポリマーの、関心のあるポリペプチドへの結合を促進し得る、安定かつ加水分解性のリンカーを含む。安定なリンカーは、アミド、アミン、エーテル、カルバメート、チオ尿素、尿素、チオカルバメート、チオカルボネート、チオエーテル、チオエステル、およびジチオカルバメート結合、例えば、ω,ω−アミノアルカン、N−カルボキシアルキルマレイミド、またはアミノアルカン酸、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒド、または無水コハク酸、N−カルボキシメチルマレイミドN,N’−ジスクシンイミジルオキサレートおよび1,1’−ビス[6−(トリフルオロメチル)ベンゾ−トリアゾリル]オキサレートを含むがこれに限らない。他の局面において、水溶性ポリマーを、加水分解性リンカーを用いてポリペプチドへ結合する。加水分解性リンカーは、水溶性ポリマーをポリペプチドに加水分解性または分解性結合で連結し、それは生理学的条件下で水と反応する(すなわち加水分解する)比較的弱い結合である。結合の水中で加水分解する傾向は、2つの中央の原子をつなぐ結合の一般的な型だけでなく、これらの中央の原子に結合した置換基にも依存する。特定の局面において、加水分解性リンカーシステムを使用する。他の局面において、他の分解性または遊離可能システムを、特別な条件下で、例えば塩基触媒によって切断し得る。加水分解性、分解性、または遊離可能リンカーを含む水溶性ポリマーを作成する方法、およびこれらのリンカーを含む場合に加水分解性の水溶性ポリマーを含む結合体を作成する方法が、米国特許第7,259,224号(Nektar Therapeutics)および米国特許第7,267,941号(Nektar TherapeuticsおよびNational Institutes of Health)、米国特許第6,515,100号(Shearwater Corporation)、WO2006/138572(Nektar Therapeutics)、米国2008/0234193(Nektar TherapeuticsおよびBaxter Healthcare)、WO2004/089280(Yeda Research and Development Co.LTD)、米国特許第7,122,189号(Enzon Inc.)において記載され、そしてリンカーシステムはさらにGreenwaldら(J.Med.Chem.42:3657−3667、1999)によって記載される。例えば、加水分解に供されるポリマーバックボーンにおけるエステル結合を有するPEGを調製し得る。この加水分解は、ポリマーのより小さい分子量の断片への切断を引き起こす。適当な、加水分解に不安定、または弱い結合は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド、チオエステル、チオールエステル、およびカルボネートを含むがこれに限らない。ポリマーバックボーンに含まれ得る加水分解的に分解性の結合は、カルバメート、カルボネート、サルフェート、およびアシルオキシアルキルエーテル結合、例えばアミンおよびアルデヒドの反応から生じるイミン結合(例えばOuchiら、Polymer Preprints、38(1):582−3(1997)を参照のこと);カルバメート、リン酸エステル、ヒドラゾン、アセタール、ケタール、またはオルトエステル結合(アセトン−ビス−(N−マレイミドエチル)ケタールリンカー(MK)を含む)を含む。本発明に含まれる他の分解性および遊離可能システムは、FMOC化学に基づくか、またはBicin誘導体に基づく遊離可能リンカーシステムである。他の局面において、他の遊離可能システムは、1,4−または1,6−ベンジル脱離反応を採用する。いくつかの局面において、本発明の方法は、ポリマー−タンパク質結合体の実質的に均一な混合物を提供する。本明細書中で使用される「実質的に均一な」は、ポリマー−タンパク質結合体分子のみが観察されることを意味する。ポリマー−タンパク質結合体は、生物学的活性を有し、そして「実質的に均一な」ペグ化タンパク質調製物は、均一な調製物の利点、例えば臨床的適用におけるロットごとの薬物動態の予測の容易さを示すために十分均一であるものである。
【0042】
形成された結合体を、そのβ脱離メカニズムによってPEGを遊離させる能力によって特徴付ける。β脱離速度は、塩基(例えばアミン基)によって触媒され、そして塩基性pHおよび高い温度によって促進される。従って、PEGの遊離は、インビトロにおいて、高い濃度の遊離アミンおよび高いpHおよび温度によって強制され得る。
【0043】
本発明は、可逆的に結合したPEGによって修飾されたタンパク質から、インビトロにおいてPEGの遊離を強制するための様々な戦略、およびその脱ペグ化をモニターするための適当なインビトロアッセイシステムの開発を記載する。例えば、タンパク質結合体、ペグ化組換えフォンビルブランド因子(rVWF)および組換え第VIII因子(rFVIII)を使用する。
【0044】
様々な実施態様において、本発明の方法において、ペグ化rVWFまたはペグ化rFVIIIを使用する。様々な血液凝固障害または出血性障害の処置において、ペグ化rVWFおよびペグ化rFVIIIを使用する。用語「血液凝固障害」または「出血性障害」は、任意の、血液が効率的に血餅を形成できないことを引き起こす血液凝固因子におけるいくつかの遺伝的または発病した(developed)欠損、および続く被験体における異常な出血を指す。血液凝固障害は、血友病A、血友病B、フォンビルブランド症候群、第X因子欠損症、第VII因子欠損症、アレキサンダー病、ローゼンタール症候群(第XI因子欠損症または血友病C)、および第XIII因子欠損症を含むがこれに限らない。血液凝固障害の処置は、予防的処置または治療的処置を指す。
【0045】
さらに、VWFは機能的なFVIIIの必須の成分であるので、VWF欠損症は、表現型血友病Aを引き起こし得る。それに加えて、フォンビルブランド病(VWD)またはVWF症候群に罹患した患者は、多くの場合FVIII欠損症を示す。これらの患者において、抑制されたFVIIIの活性は、第X染色体遺伝子の欠損の結果ではなく、血漿中のVWFの定量的および定性的変化の間接的な結果である。血友病AとVWDとの間の区別は、通常VWF抗原の測定によって、またはリストセチンコファクターの活性を決定することによって行い得る。リストセチンコファクター活性を、リストセチンおよび血小板基質を患者の血漿へ加えることによって測定する。リストセチンは、VWFの血小板糖タンパク質Ib受容体への結合を増強し、凝集を引き起こす。光透過の変化によって測定されるように、患者のVWFは、リストセチンによって誘発された血小板凝集を支援する。従って、これは患者のVWFの機能的活性のインビトロにおける測定であり、そしてVWDを診断するための最も鋭敏なアッセイである。VWF抗原含有量およびリストセチンコファクター活性の両方が、ほとんどのVWD患者において低下するが、それらは血友病A患者においては正常である。本発明は、可逆的にペグ化されたVWFおよびFVIIIを含む方法を議論するが、可逆的な結合によってPEGへ共有結合し得る全ての他のタンパク質を含む。様々な局面において、本発明は、第II因子(トロンビン)、第III因子、第V因子、第VII因子(プロコンベルチン)、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子(FIX、クリスマス因子)、第XI因子、および第XIII因子サブユニットAおよびサブユニットBを含むがこれに限らない、他の血液凝固因子タンパク質からPEGを遊離させる方法を含む。
【0046】
PEGのタンパク質からの遊離を、遊離PEGの増加、タンパク質活性の回復、およびrVWFの場合、例えばまた薬物動態学的パラメーターのインビボにおける回復を測定することによって、決定する。分離の必要無しに別個のPEG種の可能性をモニタリングすることが、異なるUV吸収および蛍光発光スペクトルを有する、置換フルオレン(PEG結合体に存在するような)、およびジベンゾフルベン(遊離PEG)発色団の縮合した環構造のスペクトルの性質に基づいて提供される。
【0047】
本発明の1つの実施態様は、修飾タンパク質の生物学的活性のインビトロにおける回復のモニタリングを可能にするアッセイシステムの開発である。PEGのような、遊離可能水溶性ポリマーを、pHを上昇させることによってタンパク質から分離し得る(pHを約8.1、約9.5、および約9.8の値まで上昇させることを含むがこれに限らない)。天然のタンパク質を回復するためのこの型のアッセイは、高いpHにおいて安定であるタンパク質に関して適当である。提供される方法の様々な局面において、pHを約6.0から約8.5、約6.5から約8.1、約6.5から約9.5、約7.3から約9.8、および約6.5から約9.8へ上昇させる。さらなる局面において、本発明は、約10までpHを上昇させることを含む。またさらなる局面において、提供される方法は、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、約9.0、約9.1、約9.2、約9.3、約9.4、約9.5、約9.6、約9.7、約9.8、約9.9、約10.0、約10.1、約10.2、約10.3、約10.4、約10.5、約10.6、約10.7、約10.8、約10.9、約11.0、約11.5、および約12.0より高くまでpH値を上昇させて試験することを含む。
【0048】
別の実施態様において、遊離アミンの添加を、中性pHにおいて水溶性ポリマーの遊離を強制する代替の方法として使用する。いくつかの局面において、その遊離アミンは、ヒスチジンおよびリシンを含むがこれに限らない。他の局面において、環状アミン、1級、2級、3級生体アミン、および芳香族アミンを使用する。従ってこの方法は、pH感受性タンパク質に適当である。これら2つのアプローチの組み合わせも、本発明の一部である。これらのアプローチを、ペグ化rVWFおよびペグ化rFVIIIで説明する(実施例1から5を参照のこと)。
【0049】
別の実施態様において、タンパク質からの水溶性ポリマーの遊離を強制する、1つまたはそれ以上のさらなる手段として、緩衝液の温度の上昇を使用する。様々な局面において、その温度を、約4℃から室温付近、約37℃へ上昇させる。またさらなる局面において、提供される方法は、緩衝液の温度を約4℃から約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、および約100℃まで上昇させることを含む。
【0050】
従って、その水溶性ポリマーを、ポリペプチドへ可逆的に結合させ得、そして緩衝液の遊離アミン濃度を増加させることによって、緩衝液のpHを上昇させることによって、緩衝液の温度を上昇させることによって、または上記のいずれかの組み合わせによって、ポリペプチドから遊離させ得る。さらに、またさらなる実施態様において、本発明の方法は、タンパク質から水溶性ポリマーを遊離させるための1つまたはそれ以上の手段として、緩衝液中でタンパク質をインキュベートする時間を延長することを含む。様々な局面において、そのインキュベーション時間を、約5分(min)から約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間(hr)、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約108時間、約120時間、約132時間、約144時間、約146時間、約168時間、約180時間、約192時間、約204時間、約228時間、約252時間、約276時間、および約300時間まで増加させる。従って、その水溶性ポリマーを、様々な局面において、インキュベーション時間を増加させることによって、緩衝液のアミン濃度またはpHを増加させることによって、緩衝液の温度を上昇させることによって、または1つまたはそれ以上のこれらの列挙した手段のいずれかの組み合わせによって、ポリペプチドから遊離させる。
【0051】
別の実施態様において、本発明は、遊離可能PEGまたは他の遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理のために使用可能なアッセイシステムの開発である(実施例6を参照のこと)。
【0052】
本発明はまた、サイズ排除クロマトグラフィーおよび遊離の水溶性ポリマー、すなわちPEGの検出/測定による、遊離した水溶性ポリマーの測定の参照方法として使用される、分離に基づく方法の例を提供する(実施例7、8、および9を参照のこと)。使用される水溶性ポリマーリンカーの型に基づいて、水溶性ポリマーの分画および定量を、カラムの流出液の屈折率、光学濃度、および/または蛍光を測定することによって達成し得る。
【0053】
本発明のさらなる実施態様は、反応混合物中において、すなわち産生された種を分離する必要性無しに、遊離した水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマー−タンパク質結合体の量を測定することによる、水溶性ポリマー遊離の動態の特徴付けである(実施例7、8および9を参照のこと)。
【0054】
1つの局面において、使用される蛍光分子の種が、そのスペクトルの性質において十分異なるなら、蛍光測定を使用する。フッ素−またはジベンゾフルベン−ポリマーおよびフッ素−(FMOC)−ポリマー結合種または遊離の水溶性ポリマー(すなわちPEG)およびPEG結合種の同時測定が、置換フルオレンの350−355nmの発光ピークおよびジベンゾフルベンの460−560nmの発光領域のような、別々の発光スペクトルを有する異なる縮合環システムのために、適当な励起波長における蛍光の測定によって可能である。さらに、励起波長の注意深い選択はまた、約280nmで最大の感受性を有するタンパク質トリプトファンおよびチロシンの蛍光の励起を回避する。そのような測定に関して、約20nmのStokesシフトを有する励起および発光シグナルを分離するために、狭い分光計のスリットが好ましい。
【0055】
別の局面において、結合体結合水溶性ポリマー(すなわちPEG)の測定を可能にする、比イムノアッセイを使用する。この方法は、USSN61/009,327において開示されるように、PEGおよび非結合タンパク質に特異的に結合する、対になった抗体の組み合わせの使用による測定を可能にする。次いでPEG結合体の脱ペグ化を、脱ペグ化の前に結合体に関して測定した反応と比較して表す、PEGタンパク質ELISAにおける反応性の相対的減少によって検出する(実施例7、8、および9を参照のこと)。この型のELISAは、遊離のPEGは検出せず、結合体に結合したPEGのみを特異的に検出する。
【0056】
これらのインビトロアッセイシステムの開発によって、実質的な方式で、可逆的ペグ化タンパク質からのPEG遊離のβ脱離による速度を増加させること、および非修飾タンパク質の活性を回復させることが可能である。
【実施例】
【0057】
(実施例)
本発明のさらなる局面および詳細が、以下の実施例から明らかであり、それは制限ではなく説明であることを意図する。実施例1は、上昇したpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例2は、1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例3は、選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PEG−RFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復を説明する;実施例4は、遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例5は、Hepes/Trisの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例6は、選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復を説明する;実施例7は、種の分離を伴わない、蛍光測定によるPEG−rFVIIIからのPEG遊離の検出を説明する;実施例8は、グルタチオンによるPEG−ジベンゾフルベンの除去を説明する;実施例9は、PEG−ジベンゾフルベン産生に対するpHの影響を示す;実施例10は、上昇したpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合を議論する;実施例11は、1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合を説明する;実施例12は、選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PSA−RFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復を説明する;実施例13は、遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合を説明する;および実施例14は、Hepes/Trisの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合を説明する。
【0058】
(実施例1)
(上昇したpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能rVWF結合体(20Kの分岐PEGと結合)の脱ペグ化を、タンパク質を2つの異なるpH値、pH6.5およびpH8.1でインキュベートすることによって行った。精製PEG−rVWFを、6.5のpH値を有する0.02Mのクエン酸ナトリウム、0.15MのNaClに溶解した。アルカリ性サンプルのために、同じ緩衝液を、0.1MのNaOHを加えることによってpH8.1に調整した。規定された時点でサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原(VWF:Ag)の含有量、遊離PEG、全PEG、およびマルチマーのVWF組成に関して分析した。
【0059】
VWF:Agの含有量を、市販で入手可能な抗体(Dako、Glostrup、Denmark)を用いて、サンドイッチELISAによって決定した。遊離PEGおよび全PEGを、Nektar Therapeutics(Huntsville、AL)によって提供された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定した。「高速液体クロマトグラフィー」、「高圧液体クロマトグラフィー」、およびHPLCという用語は、本明細書中で交換可能に使用される。高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動およびポリクローナル抗ヒトVWF抗体(Dako)を用いた免疫染色によって、VWFマルチマー分析を行った。これらの実験の結果を、表1および図1にまとめる。
【0060】
表1のデータはそれぞれ、pH6.5およびpH8.1におけるインキュベーション中の、VWF:Ag対タンパク質の決定された比(IU/mg)および全PEG含有量に対する遊離した遊離PEGのパーセンテージの結果を示す。基礎の値は、結合体の最初の性質、すなわち強制されたPEG遊離が開始される前を反映する。VWF:Ag対タンパク質の比は、天然の非修飾rVWFの100−160IU/mgと比較して、PEG−rVWF(39IU/mg)に関して著しく減少した。遊離PEGのパーセンテージは、5%と低かった。37℃におけるインキュベーションに際し、VWF:Ag対タンパク質比は、両方の条件下で時間につれて徐々に増加したが、pH8.1における値がわずかに高かった。PEG−rVWF結合体から遊離したPEGの量は、より高いpHにおいて有意に促進された。pH8.1における1時間後、遊離した遊離PEGのパーセンテージは53%であった;一方より低いpH6.5において、23%の遊離PEGが遊離した。遊離PEGのパーセンテージにおいて見られた差異は、より長いインキュベーション時間で減少し、そして29日後、pH6.5において60%のPEGが遊離し、そしてpH8.1において全PEGの68%が遊離した。
【0061】
【表1】
これらのサンプルのマルチマー分析(図1)は、ペグ化後の各VWFマルチマーの典型的なシフトを示す(「天然rVWF」および「オリジナル」と命名されたレーンと比較した場合)。pH6.5および8.1の両方におけるインキュベーション中、より低い分子量へのシフトバックによって識別可能であるように、ペグ化rVWFマルチマーの分子量は徐々に減少し、時間につれたPEGの遊離を示した。しかし、非修飾rVWFのオリジナルの構造の完全な回復は、両方のpH条件下で達成されなかった。それでも、そのデータは、37℃における、pH6.5およびpH8.1の両方におけるインキュベーションは、ペグ化rVWFからのPEGの実質的な遊離を引き起こしたことを示す。
【0062】
(実施例2)
(1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能PEG−rVWF(20kの分岐PEG)結合体を、100mMのリシンを含む、pH9.8の0.02Mのクエン酸ナトリウム、0.15MのNaCl緩衝液で希釈し、そして37℃でインキュベートした。規定された時点でサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原の含有量(VWF:Ag)、遊離PEG、全PEG、およびマルチマー組成に関して分析した。高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動、およびヒトVWF(Dako、Glostrup、Denmark)またはPEG(研究室内で開発したポリクローナルウサギ抗PEG抗体)のいずれかに対する抗体を用いた免疫染色によって、マルチマー分析を行った。その結果を表2、図2、および図3にまとめる。
【0063】
【表2】
表2のデータは、pH9.8における、アミンリシンの存在下におけるPEG−rVWFのインキュベーションに際し、VWF:Ag対タンパク質の比の明らかな増加が時間につれて起こったことを示す。さらに、述べた緩衝液中における48時間のインキュベーション後、全PEGの81%が遊離した。図2のマルチマーゲルは、10−20時間のインキュベーション後、VWFマルチマーはより低い分子量へシフトバックし、そしてその構造は非修飾rVWFのものと同様になったことを示す。より長いインキュベーション時間(48時間)は、rVWFタンパク質構造の分解を引き起こした。図3において、マルチマーゲルの染色のためにポリクローナル抗PEG抗体を用いることによって、rVWFの脱ペグ化を直接示した。20時間のインキュベーション後、少量のPEGのみが、単一のVWFマルチマーに結合したままであった。そのデータは、pH9.8における、リシンの存在下におけるインキュベーションは、実施例1と比較してより短い時間に明らかなPEGの遊離を引き起こし、そしてrVWFの構造を回復させたことを示す。従って実施例2によって説明した方法は、高いpHにおいて安定なタンパク質のために適当である。
【0064】
脱ペグ化PEG−rVWFの薬物動態を、VWF×FVIIIダブルノックアウトマウスモデルにおいて決定した。マウスに、FVIII(200IU/kg)を単独で、または1.6mg/kgの天然rVWF、遊離可能PEG−rVWF(20K分岐)、または脱ペグ化rVWF(pH9.8においてリシン溶液中で、+37℃で10時間インキュベートした)のいずれかと共に、尾静脈によるボーラス注射(10ml/kg)で与えた。
【0065】
血液サンプル(クエン酸ナトリウムで抗凝固)を、注射の5分後、および3時間後、6時間後、9時間後、および24時間後に、それぞれのグループから麻酔後に心臓穿刺によって採取した。遠心分離によって血漿を調製し、そして色素形成アッセイによってFVIII活性を測定することによって、VWFのインビボにおけるFVIII安定化機能を決定した。この実験の結果を、図4にまとめ、ペグ化rVWFは、非修飾rVWFよりも高い程度、FVIIIを保護したことを示す。脱ペグ化rVWFは、非修飾rVWFと同じFVIII安定化能力を保持し、強制的なインビトロ遊離中に活性なrVWFが遊離したことを示す。
【0066】
(実施例3)
(選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復)
遊離可能PEG−rFVIII結合体(20K分岐PEG)を、7.3のpHを有する緩衝液(10mMのヒスチジン、90mMのNaCl、1.7mMのCaCl2、10mMのTris、0.26mMのグルタチオン、176mMのマンニトール、23.5mMのトレハロース、および0.1g/lのTween80)中で、5IU/mlのFVIII色素形成活性まで希釈した;その緩衝液はさらに、リシン、ヒスチジン、または両方のアミノ酸の組み合わせを含んでおり、そしてその緩衝液を37℃でインキュベートして、タンパク質結合体からのPEGのインビトロ遊離を強制した。規定された時点(24時間、48時間、および72時間)においてサブサンプルを取り、そしてFVIII色素形成アッセイを使用することによって、FVIII色素形成活性をオンライン(online)で決定した。その結果を図5にまとめる。
【0067】
アミンを欠く緩衝液において、72時間後に5.0から11.5IU/mlのFVIII:Cまで活性が増加した。72時間の時点で、100mMのヒスチジンの存在は、FVIII活性を17.8IU/mlまで、100mMのリシンは20.4IU/mlまで、200mMのヒスチジンは24.9IU/mlまで、そして100mMのヒスチジンおよび100mMのリシンの組み合わせは34.7IU/mlまで増加させた。従って、強制的なPEG遊離は明らかに、アミン濃度およびおそらくアミンの組成に依存していた。この実施例によって本明細書中で説明された方法は、pH環境に感受性である可逆的ペグ化タンパク質のタンパク質活性のインビトロにおける回復に適当である。
【0068】
(実施例4)
(遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能PEG−rFVIII結合体(20K分岐PEG)を、7.3のpHを有する緩衝液(20mMのクエン酸Na3、1.7mMのCaCl2、176mMのマンニトール、36mMのショ糖、および0.1g/lのTween80)中でインキュベートした;その緩衝液はさらに、100mMのヒスチジンおよび100mMのリシンを含み、そして+37℃でインキュベートした。168時間までの規定された時点でサブサンプルを取り、そしてPEG−rFVIIIの機能的活性を、FVIII色素形成アッセイの使用によってオンラインで決定した。それに加えて、PEGの遊離を、凍結サブサンプルから、Nektar Therapeutics(Huntsville、AL)によって提供されるHPLC法によって、遊離PEGおよび全PEGを測定することによって確認した。その結果を、図6および表3にまとめる。
【0069】
図6は、インキュベーション段階中の、PEG−rFVIIIのFVIII色素形成活性の増加を示す。タンパク質活性の増加は、2段階の過程をたどった:FVIII活性の迅速な増加が、最初の6時間以内に観察され、インキュベーションの24時間後に最大に達する遅い活性の増加の段階が続き、6.0IU/mlの開始活性と比較して、21.9IU/mlまでFVIII色素形成活性が増加し、それは366%の活性の増加に相当する。144時間までのさらなるインキュベーションは、FVIII活性の遅い、漸進的減少を引き起こした。実施例1および2において概略を述べたように、高いpH(例えば9.8)におけるペグ化タンパク質のインキュベーションは、インビトロでPEGの遊離を誘発する別の選択肢である。従って、同じPEG−rFVIII結合体をpH9.8において37℃でインキュベートし、そして活性の増加を、pH7.3でヒスチジン/リシンの存在下で達成されたものと比較した。図6は、pH9.8において、FVIII色素形成活性の回復はより低く、FVIII色素形成活性は、4.4IU/mlの開始活性と比較して、24時間の時点で14.8IU/mlまで増加したことを示す。これはおそらく、この高いpH値におけるFVIII不活性化の増強のためであった。この結論は、両方の条件下におけるPEG遊離の同様の速度によって支持された(表3)。遊離したPEGの量を、PEGの全量に関して遊離PEGのパーセンテージとして表した。遊離PEGの最初の低い含有量(8から13%=基礎値)は、両方の緩衝液におけるインキュベーションに際し、時間依存的な方式で増加し、ヒスチジン/リシン緩衝液の場合は144時間後に全PEGの64%、そしてアルカリ性緩衝液(pH9.8)に関しては168時間後に74%の最大に達した。これらのデータは、どちらの条件もPEGの遊離を誘発するために適当であることを確認する。
【0070】
【表3】
実施例6のデータはまた、pH感受性タンパク質に関して、中性pHにおける組み合わせた遊離アミンは、タンパク質活性の回復が、アルカリ性による遊離と比較して、そのような条件下でより高いので、強制インビトロPEG遊離に有利であることを示唆する。
【0071】
(実施例5)
(HEPES/TRISの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能PEG−rFVIII(20K分岐PEG)を、pH7.4において典型的なアミンを含む緩衝物質の組み合わせ、すなわち200mMのHEPESおよび200mMのTris中において、37℃でインキュベートした。規定された時点においてサブサンプルを取り、FVIII活性の回復を色素形成アッセイによってモニターし、そしてそのVWFと相互作用する能力を決定した。循環中におけるFVIIIの生存を決定的に決定するVWF結合を、表面プラズモン共鳴技術を用いることによってモニターした。Biacore装置を用いて、様々なPEG−rFVIIIサンプルを移動相に注入し、そして固定化VWFとの相互作用に関して試験した。PEG−rFVIIIはほんの低レベルでしかrVWFに結合しなかったが、サンプルの結合はPEG遊離と共に増加した。図7は、rFVIIIのVWFへの結合の増加を伴う、経時的な色素形成性FVIII活性の増加を示し、これは、脱ペグ化のシグナルである。実施例5のデータは、広いスペクトルのアミンを、そのような結合体からPEGの遊離を強制するために使用し得ることを示す。色素形成活性およびVWFへの結合の両方の回復はさらに、機能的タンパク質が時間につれて産生されることを示す。
【0072】
(実施例6)
(遊離アミンの存在下におけるPEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、FVIII活性増加の初速度)
実施例4において、37℃におけるインキュベーションの0から6時間の時間間隔として定義された、PEG−rFVIIIからのPEG遊離の最初の急速期を、バッチごとの一貫性を調査するためのパラメーターとしての適合性に関して分析した。図8は、最初の6時間の、37℃におけるpH7.3の100mMのヒスチジン/100mMのリシン緩衝液中でのインキュベーションに際したFVIII活性の増加を示す。
【0073】
左のパネルにおいて、同じPEG−rFVIIIのバッチの6回反復した測定を示し、一方右のパネルにおいて、結合体の2つの別のバッチの平均活性値を示す。1時間あたりのFVIII活性(IU/ml)の増加を、直線回帰によって曲線をフィッティングすることによって計算し、そして傾き(k’)として表す。6回のテスト単位および2つのバッチの傾きの数値を表4にまとめる。両方の場合において、同様の傾きが得られ、それによってそのアッセイシステムは再現性のある結果を生じることを示した。さらに、FVIII活性増加の初速度を決定することは、遊離可能PEG結合体の異なるバッチの比較を可能にする。
【0074】
【表4】
(実施例7)
(種の分離を伴わない蛍光測定による、PEG−rFVIIIからのPEG遊離の検出)
6.0IU/mlの開始活性rFVIII(20k分岐PEG)と比較して、FVIII色素形成活性が21.9IU/mlに増加し、1リットルあたり32mgのマンニトール、12gのショ糖、2.5gのCaCl2・2H2O、および100mgポリソルベート80を含む20mMのクエン酸緩衝液、pH=6.0に処方され、そして凍結乾燥された遊離可能PEGを、360mgのタンパク質(ビチンコン酸(bichinchonic acid)アッセイ)および345mgの全PEGを含む溶液へ再構成した。この溶液を、1リットルあたり32gのマンニトール、12gのショ糖、2.5gのCaCl2・2H2O、10mMのEDTA、および100mgのポリソルベート80を含む(99%オレイン酸、Nippon Oils and Fats)、100mMの炭酸水素ナトリウム溶液、pH8.5中に1:5に希釈し、そして20−25℃におけるインキュベーションに際し、規定された時間間隔で、350−355nmの間の狭いピークでPEG−FMOC化合物、および460−560nmの間の広いピークで遊離PEG−ジベンゾフルベン(PEG−DBF)を示す蛍光スペクトルを、Perkin Elmer LS50B分光蛍光計(0.4(励起)×1(発光)cmのPTFE−ストッパー付き石英キュベット中1.25mL、330nm励起/340−600nm発光波長、5/5nmスリット幅、180nm/分スキャニングスピード、800V光電子増倍電圧(photomultiplier voltage))で測定した(図9)。
【0075】
【表5】
別個のリザーバーからこれらの指定された間隔で取ったサンプルを、遊離FMOC−PEGおよびジベンゾフルベン−PEGに関して、20mMのリン酸ナトリウム、50mMの硫酸ナトリウム、pH6.1で操作した、Shodexタンパク質5μカラム(KW−803 300A、300×8mm(Showa Denko America,Inc.(New York)))においてHPLCによって分析し、そしてPEG−FVIIIおよび遊離FVIII抗原に関してELISAによって免疫化学的に分析した。PEG−FVIII ELISAの結果は、新しく溶解した標準調製物のものと比較した、アッセイにおいて測定した結合として与えられる。蛍光シグナルを、PEG−FMOC結合体およびPEG−ジベンゾフルベンに関して、それぞれ350−355nmおよび460−560nm(0.5nmステップで)から統合した。そのデータを表5にまとめる。
【0076】
最初に測定された濃度のパーセントとして示された、表5で示したデータは、460−560nmにおける蛍光シグナルの増加によって示される遊離ベンゾフルベン−PEGの遊離、ならびに、ELISAによって、およびPEG−FMOCタンパク質結合体の対応する減少によって測定される(350−355nm蛍光シグナルおよびPEG−FVIII ELISAによって測定されるFVIII結合PEGのレベルの減少によって示される)、遊離FVIII抗原の遊離を示す。
【0077】
(実施例8)
(グルタチオンによるPEG−ジベンゾフルベンの除去)
実施例7の炭酸水素溶液に、10mMの還元グルタチオン(GSH)を加え、そして希釈、インキュベーション、測定、サンプリング、および分析を、実施例8で述べたように行った。スペクトルを図10に示す。約24時間後、蛍光キュベットの中ではなく、サンプリングリザーバー中のグルタチオンが、酸化によって消耗したようであった(表6)。
【0078】
【表6】
最初に測定された濃度のパーセントとして示された、表6のデータは、460−560nmにおける比蛍光シグナルの中程度の増加(実施例5と比較して)、および350−355nm蛍光シグナルによって示されるような、結合PEG−FMOC化合物の対応する中程度の減少によって示されるように、還元グルタチオンによる遊離のジベンゾフルベン−PEGの除去を示す。遊離のFVIII抗原が産生され、そしてFVIII−結合PEGレベルは実施例5と同様の速度で減少する。
【0079】
(実施例9)
(PEG−ジベンゾフルベンの産生に対するpHの効果の実証)
実施例8のFVIII溶液を、1リットルあたり32gのマンニトール、12gのショ糖、2.5gのCaCl2・2H2O、および100mgのポリソルベート80(99%オレイン酸)を含む、20mMのクエン酸緩衝液、pH6.0で1:5に希釈した。インキュベーション、測定、サンプリング、および分析を、実施例7で述べたように行った。スペクトルを図11に示す。pH6.0において、PEG−ジベンゾフルベンの遊離は、pH=8.5のときよりも低かった(表7を表5と比較する)。そのデータは、β脱離のメカニズムが、水酸化物陰イオンのような、塩基性求核剤の攻撃によって行われることを示唆する。
【0080】
【表7】
(実施例10)
(上昇したpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合)
ポリシアル酸(PSA)−rVWF結合体のような、遊離可能水溶性ポリマー結合体の解重合を、そのタンパク質結合体のpHを上昇させることによって行う。異なるpH値において、例えば約6のpH、および約8または約10のpHにおいて、タンパク質結合体をインキュベートすることによって、解重合を測定する。精製PSA−rVWFを、約6のpH値を有する、0.02Mのクエン酸Na、0.15MのNaClに溶解する。アルカリ性のサンプルに関して、同じ緩衝液を、0.1MのNaOHの添加によって、約8または約10の上昇したpHへ調整する。規定された時点においてサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原(VWF:Ag)の含有量、遊離PSA、全PSA、およびマルチマーのVWF組成に関して分析する。
【0081】
VWF:Agの含有量を、市販で入手可能な抗体(Dako、Glostrup、Denmark)を用いて、サンドイッチELISAによって決定する。遊離PSAおよび全PSAを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定する。VWFマルチマー分析を、高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動およびポリクローナル抗ヒトVWF抗体(Dako)を用いた免疫染色によって行う。PSA−rVWFの解重合が、pHの上昇と共に増加することが予期される。
【0082】
(実施例11)
(1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合)
ポリシアル酸(PSA)−rVWF結合体のような、遊離可能水溶性ポリマー結合体の解重合を、別の局面において、タンパク質結合体緩衝液のアミン濃度を増加させることによって行う。遊離可能PSA−rVWF結合体を、100mMのリシンを含む、約9.8のpHの0.02Mのクエン酸ナトリウム、0.15MのNaCl緩衝液中で希釈し、そして37℃でインキュベートする。規定された時点でサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原(VWF:Ag)の含有量、遊離PSA、全PSA、およびマルチマー組成に関して分析する。マルチマー分析を、高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動、およびヒトVWF(Dako、Glostrup、Denmark)またはPSA(Millipore、Temecula、CA、USA)のいずれかに対する抗体を用いた免疫染色によって行う。
【0083】
pH9.8における、アミンリシンの存在下でのPSA−rVWFのインキュベーションに際し、経時的なVWF:Ag対タンパク質の比の増加が予期される。それに加えて、全PSAの大部分は、述べた緩衝液中でのインキュベーション後に遊離されることが予期される。インキュベーション後、少量のPSAのみが、単一のVWFマルチマーに結合したままであることが予期される。
【0084】
(実施例12)
(選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復)
水溶性ポリマー結合体化タンパク質のタンパク質活性は、遊離アミンの存在下で増加することが予期され、アミン濃度が上昇するときにポリマーの遊離を示す。この実験において、遊離可能PSA−rFVIII結合体を、約7.3のpHを有する緩衝液(10mMのヒスチジン、90mMのNaCl、1.7mMのCaCl2、10mMのTris、0.26mMのグルタチオン、176mMのマンニトール、23.5mMのトレハロース、および0.1g/lのTween80)において、5IU/mlのFVIII色素形成活性へ希釈する;その緩衝液はさらにリシン、ヒスチジン、または両方のアミノ酸の組み合わせを含み、そしてその緩衝液を37℃でインキュベートして、タンパク質結合体からのPSAのインビトロにおける遊離を強制する。規定された時点(24時間、48時間、および72時間)においてサブサンプルを取り、そしてFVIII色素形成活性を、FVIII色素形成性アッセイの使用によって、オンラインで決定する。FVIII活性は、濃度漸増のリシン、ヒスチジン、または両方のアミンの組み合わせを有する緩衝液において、時間につれて増加することが予期される。
【0085】
(実施例13)
(遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合)
遊離可能PSA−rFVIII結合体を、pH7.3の緩衝液(20mMのクエン酸Na3、1.7mMのCaCl2、176mMのマンニトール、36mMのショ糖、および0.1g/lのTween80)中でインキュベートする;その緩衝液はさらに100mMのヒスチジンおよび100mMのリシンを含み、そして+37℃でインキュベートする。あるいは、その緩衝液を、ヒスチジンおよびリシンを加えずに、pHを高いpH(例えば9.8)まで増加させる。168時間までの規定された時点でサブサンプルを取り、そしてPSA−rFVIIIの機能的活性を、FVIII色素形成性アッセイを用いることによって決定する(前に記載したように)。それに加えて、PSAの遊離を、凍結サブサンプルからHPLCによって遊離PSAおよび全PSAを測定することによって確認する。そのような条件は、インビトロでrFVIIIタンパク質からのPSAの遊離を引き起こすことが予期される。
【0086】
(実施例14)
(HEPES−Trisの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合)
以前の実験は、緩衝液のアミン濃度の増加は、遊離可能水溶性ポリマーのタンパク質結合体からの遊離を強制することを示す。この実験において、遊離可能PSA−rFVIIIを、約7.4のpHにおいて、典型的なアミンを含む緩衝物質の組み合わせ、すなわち200mMのHEPESおよび200mMのTris中で、37℃でインキュベートする。規定された時点でサブサンプルを取る。FVIII活性の回復を色素形成性アッセイによってモニターし、そしてそのVWFと相互作用する能力を決定する。循環中のFVIIIの生存を決定的に決定するVWF結合を、表面プラズモン共鳴技術を用いることによってモニターする。Biacoreシステムを用いて、様々なPSA−rFVIIIサンプルを移動相に注入し、そして固定化VWFとの相互作用に関して試験する。VWFの結合は、PSAの遊離と共に増加することが予期される。従って、経時的な色素形成性FVIII活性の増加は、rFVIIIのVWFへの結合の増加を伴うはずであり、それは解重合のシグナルである(PSAの除去)。以前の実施例において述べたように、広いスペクトルのアミンを、そのような結合体からのPSAの遊離を強制するために使用し得ることが予期される。色素形成活性およびVWFへの結合の増加は、時間につれて機能的タンパク質が産生されることを示す。
【0087】
本発明は、本発明の実施のために好ましい方式を含むと発見されたか、または提案された特定の実施態様に関して記載された。本開示を考えて、本発明の意図された範囲から離れることなく、多くの修飾および変化を、例示された特定の実施態様において行い得ることが、当業者によって認識される。従って、添付の請求が、請求されたような本発明の範囲内に入る、全てのそのような同等のバリエーションを含むことが意図される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年10月21日に出願された米国仮特許出願番号61/107,257、および2009年9月15日に出願された米国仮特許出願番号61/242,634の利益を主張し、上記米国仮特許出願の各々は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般的に、可逆的に結合した水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリシアル酸(PSA))で修飾されたタンパク質からの、水溶性ポリマーの遊離を強制するインビトロアッセイシステムの開発に関連する。本発明は、水溶性ポリマーの遊離を分析する方法、および回復したタンパク質活性を測定する方法を含む。本発明はさらに、PEGおよびPSAのようなポリマーを含む、遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理に適当な方法を含む。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血液凝固第VIII因子(FVIII)の欠損または機能不全は、出血性障害血友病Aに関連する。血友病Aの管理のための処置の選択は、血漿由来または組換えFVIII(rFVIII)濃縮物による置換療法である。重症の血友病A、すなわちFVIIIレベルが1%より少ない患者は、FVIIIレベルを1%より上の中間的な量に維持する目的の予防的治療によって最もよく処置されることが、一般的に受け入れられている。循環中における様々なFVIII製品の平均半減期を考慮して、この循環濃度を、通常、FVIIIを1週間に2から3回投与することによって達成し得る。現在の予防治療の利便性を増すために、全ての他の製品の特徴を維持しながら、増強された薬力学的および薬物動態学的性質を有する次世代の製品の開発は、週1回ベースの投与を可能にすることが予想される。
【0004】
治療的ポリペプチド薬は、タンパク質分解酵素および中和化抗体にさらされるだけではなく、受容体媒介性細胞取り込みによって循環から除去されやすい。これらのイベントは、適用されたタンパク質の半減期および循環時間の抑制と関連し、それによってその治療的効果を制限する。PEGのようなポリマーによるポリペプチド薬の修飾は、それらを有意な程度まで酵素的分解およびクリアランスから保護し、それによってその薬力学的および薬物動態学的プロファイルを改善することが示された。それに加えて、ペグ化は、免疫原性の減少、物理的および熱的安定性の増加、溶解性の増加、液体安定性の増加、および凝集の抑制を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペグ化は通常、ポリペプチド薬への、1モノマーあたり1つまたはそれ以上のPEG鎖の共有結合によって達成される。PEGのタンパク質への安定な結合は、不可逆的な方式でそのタンパク質の生物学的機能を減少させる不利益を有する。タンパク質を、時間につれてタンパク質から解離する可能性を有する、可逆的に結合したPEGで修飾することによって、これを回避し得る。この型の遊離可能PEGは、天然タンパク質の活性の完全な回復を伴って、天然タンパク質の遊離を可能にするはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質からの、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリシアル酸(PSA)のような水溶性ポリマーの遊離を強制する、インビトロアッセイシステムの開発に関連する分野における1つまたはそれ以上のニーズに取り組む。本発明は、水溶性ポリマーの遊離を分析する方法、および回復したタンパク質活性を測定する方法を含む。本発明はさらに、遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理に適当な方法を含む。
【0007】
1つの実施態様において、本発明は、水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質から、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させる方法を含む。別の実施態様において、本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質の活性を増加させる方法を含む。どちらの方法も、タンパク質を、水溶性ポリマーを遊離させるために有効な1つまたはそれ以上の条件下でインキュベートする工程を含む。従って、本発明は、水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件の組み合わせを含む。1つの局面において、水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、タンパク質を含む緩衝液のpHを、約pH6から約pH10まで上昇させることを含む。別の局面において、その条件は、その緩衝液のpHを、約pH6.1から約pH9.8まで上昇させることを含む。さらなる局面において、その条件は、その緩衝液のpHを、約pH7.3から約pH9.8まで上昇させることを含む。さらに別の局面において、その条件は、その緩衝液のpHを、約pH6.5から約pH8.1まで上昇させることを含む。
【0008】
別の局面において、ポリマー(すなわちポリエチレングリコール)によって修飾されたタンパク質から、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、ポリマー−タンパク質結合体を含む緩衝液の遊離アミン濃度を増加させることを含む。1つの局面において、緩衝液の遊離アミン濃度の増加は、リシンの濃度の増加の結果である。別の局面において、緩衝液の遊離アミン濃度の増加は、ヒスチジンの濃度の増加の結果である。さらなる局面において、緩衝液の遊離アミン濃度の増加は、アミンの組み合わせの増加の結果である。さらに別の局面において、そのアミンの組み合わせは、リシンおよびヒスチジンである。
【0009】
さらなる局面において、ポリマー(すなわちポリエチレングリコール)によって修飾されたタンパク質から、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、ポリマー−タンパク質結合体を含む緩衝液の温度を、室温付近から約37℃へ上昇させることを含む。さらなる局面において、タンパク質から可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、緩衝液の温度を、約4℃から約37℃へ上昇させることを含む。
【0010】
またさらなる局面において、ポリエチレングリコールのような、可逆的に結合した水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件は、ポリマー−タンパク質結合体をインキュベートする時間を、約5分から約168時間へ延長することを含む。様々な局面において、インキュベーション時間を、数分から数時間、数日、さらに1週間、またはそれ以上まで延長する。別の局面において、インキュベーション時間は、約5分から約48時間の範囲である。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、タンパク質を約0時間から約6時間まで37℃で、約100mMのヒスチジンおよび約100mMのリシンを含む、約pH7.3の緩衝液中でインキュベートし、そして最初の6時間以内にタンパク質活性を分析する工程を含む、可逆的に結合した遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理をアッセイする方法を含む。これらの方法は、例えば、バッチ間での一貫性または保存する際の安定性を示すための手段を提供する。
【0012】
さらに別の実施態様において、本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質の活性の増加または回復をモニターする方法を含む。そのような方法は、タンパク質から可逆的に結合した水溶性ポリマーを除去する前および後に、タンパク質の活性を測定することを含む。
【0013】
さらに別の実施態様において、本発明は、可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質からのポリマー遊離の動態を測定する方法を含む。そのような方法は反応混合物においてある期間にわたって、遊離の水溶性ポリマーの量およびタンパク質に結合体化している可逆的に結合した水溶性ポリマーの量を同時に測定することを含み、ここで遊離の水溶性ポリマーの量の変化およびタンパク質に結合体化しているポリマーの量の変化から動態を決定する。1つの局面において、その測定は、蛍光発光スペクトルに基づき、そしてポリエチレングリコール−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル結合体に関しては約350−355nmの発光ピーク、およびポリエチレングリコール−ジベンゾフルベンに関しては約460−560nmの発光ピークにおける蛍光を用いて、同時の測定を行う。別の局面において、測定は遊離のポリエチレングリコール−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルおよびポリエチレングリコール−ジベンゾフルベンに関する高速液体クロマトグラフィーに基づく。さらなる局面において、測定は、免疫化学的に、ポリマー結合タンパク質、すなわちペグ化タンパク質、および遊離タンパク質に関する酵素結合イムノソルベント検定法に基づく。
【0014】
様々な局面において、その水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー等、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン(polyphosphasphazene)、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヒアルロン酸、およびキチン、ポリ(メタ)クリレート、およびポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン、および前述のいずれかの組み合わせを含むがこれに限らない。1つの局面において、その水溶性ポリマーはPEGである。別の局面において、その水溶性ポリマーはポリシアル酸(PSA)である。
【0015】
様々な局面において、そのタンパク質は第VIII因子(FVIII)またはフォンビルブランド因子(VWF)である。本発明のさらなる局面において、その水溶性ポリマーは、タンパク質N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはアルデヒドに基づく化学、水溶性ポリマー鎖と結合部位との間に異なる化学的結合を有する改変体、および長さが異なる改変体に結合する。1つの局面において、その水溶性ポリマーは、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル、ジベンゾフルベン、またはその誘導体に結合する。
【0016】
本発明の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、本発明の意図および範囲内の様々な変化および修飾が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施態様を示すが、説明のためのみに提供されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のさらなる説明を、下記の図1−11で述べる付随する図面を参照して提供する。
【図1】図1は、ペグ化rVWFのマルチマー構造に対する、pH依存性PEG遊離の影響を示す。
【図2】図2は、抗VWF抗体を用いて、ペグ化rVWFのマルチマー構造に対する、pHおよびアミン依存性PEG遊離の影響を示す。
【図3】図3は、抗VWF抗体を用いて、ペグ化rVWFのマルチマー構造に対する、pHおよびアミン依存性PEG遊離の影響を示す。
【図4】図4は、FVIII×VWF欠損マウスモデルにおける、天然および脱ペグ化rVWFのインビボrFVIII安定化効果の比較を示す。
【図5】図5は、異なる濃度でヒスチジンおよび/またはリシンを含む緩衝液における、PEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、FVIII色素形成活性の増加の比較を示す。
【図6】図6は、pH9.8またはヒスチジンおよびリシンを含む中性pHの緩衝液における、PEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、FVIII色素形成活性の増加の比較を示す。
【図7】図7は、PEG−rFVIIIのFVIII色素形成活性およびVWF結合能力に対する、アミンに基づく緩衝液依存性のPEG遊離の影響を示す。
【図8】図8は、インビトロ遊離アッセイの再現性およびバッチによる一貫性を調節するための試験を示す。
【図9】図9は、pH=8.5におけるPEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、PEG−ジベンゾフルベン(460−560nm)の産生および対応するPEG−FMOC結合体の蛍光シグナル(350−355nm)の減少を示す蛍光スペクトルを示す。
【図10】図10は、還元グルタチオン存在下における、pH=8.5での遊離可能ペグ化FVIIIのインキュベーションに際した、PEG−ジベンゾフルベン蛍光の形成を伴わない、PEG−FMOC結合体蛍光シグナル(350−355nm)のわずかな減少を示す蛍光スペクトルを示す。
【図11】図11は、pH=6.0における遊離可能PEG化FVIIIのインキュベーションに際した、PEG−FMOC結合体蛍光シグナル(350−355nm)の安定性を示す蛍光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、可逆的な結合でタンパク質に共有結合した水溶性ポリマーの遊離に関連する、タンパク質の活性の回復率を調査するための、インビトロアッセイシステムの開発に関連する。タンパク質の「活性の回復」という用語は、水溶性ポリマーが遊離した後の、生物学的機能、受容体結合、および酵素活性のような活性を含むがこれに限らないタンパク質活性の増加を指す。タンパク質のこの型の水溶性ポリマー修飾は、遊離可能水溶性ポリマー、すなわちPEG−FMOC−NHS試薬の、関心のあるタンパク質の露出したリシン残基への結合によって達成される。「FMOC」という用語は、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルを表し、それはペプチドまたはポリペプチド鎖の保護基を説明する。
【0019】
「タンパク質」という用語は、組換えタンパク質、タンパク質複合体、およびペプチド結合によって連結したアミノ酸残基から成るポリペプチドを含む、任意のタンパク質、タンパク質複合体、またはポリペプチドを指す。タンパク質を、インビボ供給源からの単離によって(すなわち天然に存在する)、合成方法によって、または組換えDNA技術によって得る。合成ポリペプチドを、例えば自動化ポリペプチド合成機を用いて合成する。本発明によって使用する組換えタンパク質を、下記の本明細書中で説明するような、当該分野で公知の任意の方法によって産生する。1つの実施態様において、そのタンパク質は、治療的タンパク質またはその生物学的に活性な誘導体を含む、生理学的に活性なタンパク質である。「タンパク質」という用語は典型的には、大きいポリペプチドを指す。「ペプチド」という用語は典型的には、短いポリペプチドを指す。その区別に関わらず、本明細書中で使用される場合、ポリペプチド、タンパク質、およびペプチドは、交換可能に使用される。
【0020】
ポリペプチドの「断片」は、全長ポリペプチドまたはタンパク質発現産物よりも小さい、ポリペプチドの任意の部分を指す。1つの局面において、断片は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、全長ポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端から除去された、全長ポリペプチドの欠失アナログである。よって、「断片」は、下記で説明する欠失アナログのサブセットである。
【0021】
「アナログ(analogue)」、「アナログ(analog)」、または「誘導体」は、ある場合においては様々な程度ではあるが、天然に存在する分子と、構造において実質的に同様であり、そして同じ生物学的活性を有する化合物である。例えば、ポリペプチドアナログは、参照ポリペプチドと実質的に同様の構造を共有し、そして同じ生物学的活性を有するポリペプチドを指す。アナログは、以下のものを含む1つまたはそれ以上の変異に基づいて、そのアナログが得られた天然に存在するポリペプチドと比較して、そのアミノ酸配列の組成において異なる:(i)天然に存在するポリペプチド配列の、1つまたはそれ以上のポリペプチドの末端および/または1つまたはそれ以上の内部領域における、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、(ii)天然に存在するポリペプチド配列の、1つまたはそれ以上のポリペプチドの末端(典型的には「付加」アナログ)および/または1つまたはそれ以上の内部領域(典型的には「挿入」アナログ)における、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入または付加、または(iii)天然に存在するポリペプチド配列における、1つまたはそれ以上のアミノ酸の、他のアミノ酸との置換。
【0022】
1つの実施態様において、本発明は、本発明の化合物または結合体および薬学的に許容可能な担体を混合することによって産生した、組成物または薬学的組成物を含む。「薬学的組成物」という用語は、ヒトおよび哺乳動物を含む被験体動物における薬学的使用に適当な組成物を指す。薬学的組成物は、薬理学的に有効な量のポリマー−ポリペプチド結合体を含み、そして薬学的に許容可能な担体も含む。薬学的組成物は、活性成分、および薬学的に許容可能な担体を構成する不活性成分、および直接的または間接的に、任意の2つまたはそれ以上の成分での組み合わせ、錯体形成、または凝集からできる任意の産物を含む組成物を含む。
【0023】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、デキストロースの5%水性溶液、および水中油型または油中水型エマルジョンのようなエマルジョン、および様々な型の湿潤剤および/またはアジュバントのような、任意および全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、および賦形剤を含む。適当な薬学的担体および処方が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Co.、Easton、1995)において記載される。組成物のために有用な薬学的担体は、活性薬剤の意図される投与方式に依存する。典型的な投与方式は、経腸(例えば経口)または非経口(例えば皮下、筋肉内、静脈内、または腹腔内注射;または局所、経皮、または経粘膜投与)を含むがこれに限らない。「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的な使用のために化合物または結合体に処方され得る塩であり、例えば金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含む。
【0024】
「薬学的に許容可能な」または「薬理学的に許容可能な」という用語は、生物学的にまたは他の面で望ましくないことがない物質を意味する。すなわち、その物質は、下記で説明するような当該分野で周知の経路を用いて投与されるときに、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こさず、またはそれが含まれる組成物の任意の成分と有害な方式で相互作用せずに、個体へ投与され得る。
【0025】
1つの実施態様において、本発明は、そのタンパク質またはポリペプチドの産生、バイアビリティーに有利な影響を与える化学的部分へ結合した、化学的に修飾されたタンパク質またはポリペプチドを含む。例えば、水溶性ポリマーのポリペプチドへの非特異的または部位特異的(例えばN末端)結合は、当該分野において、潜在的に免疫原性、腎クリアランスを抑制すること、および/またはプロテアーゼ抵抗性を改善することによって、半減期を改善することが公知である。いくつかの実施態様において、本発明で使用するためのポリペプチドは、分子の半減期および/または安定性を増加させるために、ペプチドに可逆的に結合した水溶性ポリマーを含む。様々な局面において、その水溶性ポリマーは、水溶性ポリマーを収容し得る任意の部位において、ペプチドまたはポリペプチドと結合する。1つの局面において、その水溶性ポリマーは、N末端に結合する。別の局面において、その水溶性ポリマーは、C末端に結合する。
【0026】
「水溶性ポリマー」という用語は、実質的に水性溶液中で可溶性であるかまたは懸濁物の形式で存在し、そして薬学的に有効な量での当該ポリマーに結合体化したタンパク質の投与に際し、実質的に哺乳動物に負の影響を与えず、そして生体適合性であると考えられ得るポリマー分子を指す。1つの実施態様において、生理学的に許容可能な分子は、約2から約300の反復ユニットを含む。様々な局面において、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー等、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン(polyphosphasphazene)、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヒアルロン酸、およびキチン、ポリ(メタ)クリレート、およびポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン、および前述のいずれかの組み合わせを含むがこれに限らない。
【0027】
1つの実施態様において、本発明は、型、結合、連結、配置および長さにおいて異なる、水溶性ポリマーの使用を含む。その水溶性ポリマー分子は、特定の構造に制限されず、ある局面において、直線状、分岐または多肢、樹状であるか、または分解性の連結を有する。さらに、そのポリマー分子の内部構造は、さらに他の局面において、任意の数の異なるパターンに組織化され、そして制限無しに、ホモポリマー、交互のコポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互のトリポリマー、ランダムトリポリマー、およびブロックトリポリマーからなる群より選択される。
【0028】
ある実施態様において、ポリマー−タンパク質結合体は、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)またはアルデヒドに基づく化学によって結合したポリマー−タンパク質結合体、水溶性ポリマー鎖と結合部位との間の異なる化学結合を有する改変体、および長さが異なる改変体を含むがこれに限らない。
【0029】
1つの局面において、その水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。ポリ(エチレンオキシド)(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても公知であるPEGは、ポリエーテルの1つの型である。PEG、PEO、またはPOEは、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーを指す。3つの名前は、化学的には同義であるが、歴史的にはPEGは20,000g/molより少ない分子量を有するオリゴマーおよびポリマー、PEOは20,000g/molより大きい分子量を有すポリマー、POEはあらゆる分子量のポリマーを指す傾向があった。しかし、本明細書中において、その用語を交換可能に使用する。
【0030】
PEGおよびPEOは、分子量の分布を有する分子を含む(すなわち多分散)。そのサイズ分布を、その重量平均分子量(Mw)およびその数平均分子量(Mn)によって統計学的に特徴づけることができ、その比は多分散指数と呼ばれる(Mw/Mn)。MwおよびMnを、質量分析によって測定し得る。ほとんどのPEG−タンパク質結合体、特に1KDaより大きなPEGに結合体化したものは、親PEG分子の多分散性質による分子量の範囲を示す。例えば、mPEG2K(Sunbright ME−020HS、NOF)の場合、実際の分子量は、1.036の多分散指数で1.5〜3.0KDaの範囲にわたって分布する。例外は、MS(PEG)n(N=4、8、12または24、例えばPEO4、PEO12)に基づく試薬(Pierce)に結合体化したタンパク質であり、それらは別々の鎖長および規定された分子量を有する単分散混合物として特別に調製される。
【0031】
1つの実施態様において、水溶性ポリマーがPEGである場合、PEGの平均分子量は約3から200キロダルトン(「kDa」)、約5kDaから約120kDa、約10kDaから約100kDa、約20kDaから約50kDa、約10kDaから約25kDa、約5kDaから約50kDa、または約5kDaから約10kDaの範囲である。
【0032】
「PEG」という用語は、本明細書中で議論されるか、または当該分野においてタンパク質を誘導体化するために使用されてきた、PEGの任意の形式を含むことを意味する。本発明は、1−100の反復ユニット(−CH2−CH2−O−)を含むがこれに限らない、いくつかの異なる直線状PEGポリマーの長さ、または2アームの分岐PEGポリマーの結合体を含む。いくつかの局面において、PEGポリマーの長さは、10−2000の反復ユニット(−CH2−CH2−O−)または2アームの分岐PEGポリマーの結合体を含む。12から50ユニットを有する、NHSまたはアルデヒドに基づくPEG−(CH2CH2O)nも、さらに本発明に含まれる。一般的に、本明細書中に含まれるペグ化反応に関して、加わるPEG部分の平均分子量は、約1kDaから約50kDa(「約」という用語は+/−1kDaを示す)である。他の局面において、PEG部分の平均分子量は、約60kDaの大きさであり得る。ある局面において、平均分子量は約0.5−5kDaである。
【0033】
「ペグ化」という用語は、1つまたはそれ以上のPEG部分に結合したタンパク質、タンパク質複合体、またはポリペプチドを指す。本明細書中で使用される「ペグ化」という用語は、1つまたはそれ以上のPEGをタンパク質へ結合する過程を指す。
【0034】
別の実施態様において、本発明は、NHS−結合であり、そして長さが−(CH2−CH2−O)n、ここでn=1から100、の範囲である直線状PEG−タンパク質結合体、アルデヒド結合であり、そして長さが−(CH2−CH2−O)n、ここでn=1から100、の範囲である直線状PEG−タンパク質結合体、NHS−結合であり、そして長さが変動する2アームの分岐PEG−タンパク質結合体、およびNHS結合である3アーム分岐PEG−タンパク質結合体からなる群より選択されるPEG−タンパク質結合体を含む。他の局面において、n=10から1000である。本発明はまた、その結合部位とPEG鎖との間に、異なる化学的結合(−CO(CH2)n−、および−(CH2)n−、ここでn=1から5)を含む、PEG−タンパク質結合体を含む。本発明はさらに、腎クリアランスを抑制するために、カルボキシル化、硫酸化、およびリン酸化化合物(陰イオン性)を含むがこれに限らない、荷電した、陰イオン性PEG−タンパク質結合体を含む(Caliceti、Adv.Drug Deliv.Rev.2003 55(10):1261−77;Perlman,J.Clin.Endo.Metab.2003 88(7):3227−35;Pitkin、Antimicrob.Ag.Chemo.1986 29(3):440−44;Vehaskari、Kidney Intl.1982 22 127−135)。さらなる実施態様において、そのペプチドを任意でビスホスホネート、炭水化物、脂肪酸、またはさらなるアミノ酸を含む部分へ結合体化する。
【0035】
1つの実施態様において、本発明は、タンパク質へ結合体化した水溶性ポリマーを低い程度で有する血液因子のような、修飾タンパク質を提供する。本発明の様々な局面において、タンパク質の低ペグ化形式を、結合反応において、タンパク質に対して低いモル過剰の水溶性ポリマーを用いて産生する。例えば、タンパク質をペグ化する典型的な方法は、関心のあるタンパク質に対して61.8M過剰のPEGを使用する。いくつかの局面において、タンパク質をペグ化する方法は、タンパク質に対して50−100M過剰のPEGを使用する。様々な局面において、本明細書中で記載したような低ペグ化タンパク質を、標準的な技術で使用するより少ない、反応中のモル過剰を用いて産生する。
【0036】
さらに、本明細書中で記載された低ペグ化タンパク質は、血液因子分子あたり、または血液凝固タンパク質分子あたり少なくとも約1および約10以下の水溶性ポリマー部分を含むことが企図される。1つの実施態様において、その修飾タンパク質は、タンパク質分子あたり、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、または9個の水溶性ポリマー部分を含む。別の実施態様において、その修飾タンパク質は、タンパク質分子あたり、約4〜8の間の水溶性ポリマー部分を含む。いくつかの実施態様において、その修飾タンパク質は、血液因子である。他の局面において、その修飾タンパク質は、血液凝固タンパク質である。関連する実施態様において、本発明は、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、フォンビルブランド因子およびフィブリノーゲンのような、任意の血液因子を含むがこれに限らない。1つの局面において、その血液因子分子は、第VIII因子である。別の局面において、その血液因子分子はVWFである。またさらなる局面において、その血液因子分子はヒトである。1つの実施態様において、その修飾血液因子または血液凝固タンパク質分子は、分子あたり少なくとも1つおよび20より少ないPEG部分を含む。関連する実施態様において、その修飾血液因子は、血液因子分子あたり、少なくとも4および10より少ないPEG部分を含む。さらなる実施態様において、その修飾血液因子は、血液因子分子あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施態様において、その修飾血液因子分子は、血液因子分子あたり、1〜20の間、2〜10の間、または4〜8の間のPEG部分を含む。1つの局面において、5個のPEG部分が、組換えVWFに結合する。別の局面において、12個のPEG部分が、組換え第VIII因子(rFVIII)に結合する。
【0037】
ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)のインビボ治療的半減期が、ペグ化から利益を得るかどうかを決定するために、様々な異なるPEG−タンパク質結合体を合成し、インビトロおよびインビボ(薬物動態に関して)で特徴付ける。
【0038】
本発明のペグ化タンパク質を調製する方法は一般的に、PEGがタンパク質のN末端、C末端、または任意の他のアミノ酸に可逆的に結合する条件下で、関心のあるタンパク質をPEGと反応させる工程、そして反応産物を得る工程を含む。タンパク質のペグ化は、そのタンパク質の内因性活性を有意に変え得るので、異なる型のPEGを探索する。タンパク質のペグ化に使用し得る化学は、メトキシ−PEG(O−[(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)−メチル]−O’−メチルポリエチレングリコール)のNHSエステルを用いた、タンパク質の1級アミンのアシル化を含む。メトキシ−PEG−NHSまたはメトキシ−PEG−SPAによるアシル化は、オリジナルの1級アミンから荷電を排除するアミド結合を生じる(また、C末端に関してはBoc−PEG)。リボソームタンパク質合成と異なり、合成ペプチドの合成は、C末端からN末端へ進行する。従って、Boc−PEGは、ペプチドのC末端へPEGを結合する1つの方法である(すなわちtert−ブチルオキシカルボニル(Boc、t−Boc)合成を用いる)(R.B.Merrifield(1963)「Solid Phase Peptide Synthesis.I.The Synthesis of a Tetrapeptide」、J.Am.Chem.Soc.85(14):2149−2154)。あるいは、側鎖保護基を除去するために、有害なフッ化水素酸の使用を必要としないので、フルオレニル−メトキシ−カルボニル(FMOC)化学(Atherton,E.;Sheppard,R.C.(1989)Solid Phase peptide synthesis:a practical approach.Oxford、England:IRL Press)を使用する。PEG部分を含むペプチドを産生する方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,824,784号を参照のこと。
【0039】
「リンカー」という用語は、水溶性ポリマーを、生物学的に活性な分子と連結する分子の断片を指す。その断片は典型的には、別のリンカーと、または直接的に生物学的に活性な求核剤と結合され得るか、またはそれらと反応するように活性化され得る、2つの官能基を有する。例として、リシンのようなω−アミノアルカン酸を通常使用する。本発明は、水溶性ポリマーのポリペプチドへの結合に使用される、遊離可能、分解性、または加水分解性リンカーを含む。
【0040】
1つの局面において、本発明は、タンパク質に遊離可能に連結したPEGを含む。この型のPEG修飾を、遊離可能PEG−FMOC−NHS試薬を、関心のあるタンパク質の露出したリシン残基へ結合することによって達成する。形成された結合体を、そのβ脱離メカニズムによってPEGを遊離させる能力によって特徴付ける。β脱離速度は、塩基(例えばアミン基)によって触媒され、そして塩基性pHおよび高い温度によって促進される。従って、高い濃度の遊離アミンによって、およびpHおよび温度の上昇によって、PEGの遊離をインビトロにおいて強制し得る。
【0041】
様々な他の局面において、本発明は、水溶性ポリマーの、関心のあるポリペプチドへの結合を促進し得る、安定かつ加水分解性のリンカーを含む。安定なリンカーは、アミド、アミン、エーテル、カルバメート、チオ尿素、尿素、チオカルバメート、チオカルボネート、チオエーテル、チオエステル、およびジチオカルバメート結合、例えば、ω,ω−アミノアルカン、N−カルボキシアルキルマレイミド、またはアミノアルカン酸、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒド、または無水コハク酸、N−カルボキシメチルマレイミドN,N’−ジスクシンイミジルオキサレートおよび1,1’−ビス[6−(トリフルオロメチル)ベンゾ−トリアゾリル]オキサレートを含むがこれに限らない。他の局面において、水溶性ポリマーを、加水分解性リンカーを用いてポリペプチドへ結合する。加水分解性リンカーは、水溶性ポリマーをポリペプチドに加水分解性または分解性結合で連結し、それは生理学的条件下で水と反応する(すなわち加水分解する)比較的弱い結合である。結合の水中で加水分解する傾向は、2つの中央の原子をつなぐ結合の一般的な型だけでなく、これらの中央の原子に結合した置換基にも依存する。特定の局面において、加水分解性リンカーシステムを使用する。他の局面において、他の分解性または遊離可能システムを、特別な条件下で、例えば塩基触媒によって切断し得る。加水分解性、分解性、または遊離可能リンカーを含む水溶性ポリマーを作成する方法、およびこれらのリンカーを含む場合に加水分解性の水溶性ポリマーを含む結合体を作成する方法が、米国特許第7,259,224号(Nektar Therapeutics)および米国特許第7,267,941号(Nektar TherapeuticsおよびNational Institutes of Health)、米国特許第6,515,100号(Shearwater Corporation)、WO2006/138572(Nektar Therapeutics)、米国2008/0234193(Nektar TherapeuticsおよびBaxter Healthcare)、WO2004/089280(Yeda Research and Development Co.LTD)、米国特許第7,122,189号(Enzon Inc.)において記載され、そしてリンカーシステムはさらにGreenwaldら(J.Med.Chem.42:3657−3667、1999)によって記載される。例えば、加水分解に供されるポリマーバックボーンにおけるエステル結合を有するPEGを調製し得る。この加水分解は、ポリマーのより小さい分子量の断片への切断を引き起こす。適当な、加水分解に不安定、または弱い結合は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド、チオエステル、チオールエステル、およびカルボネートを含むがこれに限らない。ポリマーバックボーンに含まれ得る加水分解的に分解性の結合は、カルバメート、カルボネート、サルフェート、およびアシルオキシアルキルエーテル結合、例えばアミンおよびアルデヒドの反応から生じるイミン結合(例えばOuchiら、Polymer Preprints、38(1):582−3(1997)を参照のこと);カルバメート、リン酸エステル、ヒドラゾン、アセタール、ケタール、またはオルトエステル結合(アセトン−ビス−(N−マレイミドエチル)ケタールリンカー(MK)を含む)を含む。本発明に含まれる他の分解性および遊離可能システムは、FMOC化学に基づくか、またはBicin誘導体に基づく遊離可能リンカーシステムである。他の局面において、他の遊離可能システムは、1,4−または1,6−ベンジル脱離反応を採用する。いくつかの局面において、本発明の方法は、ポリマー−タンパク質結合体の実質的に均一な混合物を提供する。本明細書中で使用される「実質的に均一な」は、ポリマー−タンパク質結合体分子のみが観察されることを意味する。ポリマー−タンパク質結合体は、生物学的活性を有し、そして「実質的に均一な」ペグ化タンパク質調製物は、均一な調製物の利点、例えば臨床的適用におけるロットごとの薬物動態の予測の容易さを示すために十分均一であるものである。
【0042】
形成された結合体を、そのβ脱離メカニズムによってPEGを遊離させる能力によって特徴付ける。β脱離速度は、塩基(例えばアミン基)によって触媒され、そして塩基性pHおよび高い温度によって促進される。従って、PEGの遊離は、インビトロにおいて、高い濃度の遊離アミンおよび高いpHおよび温度によって強制され得る。
【0043】
本発明は、可逆的に結合したPEGによって修飾されたタンパク質から、インビトロにおいてPEGの遊離を強制するための様々な戦略、およびその脱ペグ化をモニターするための適当なインビトロアッセイシステムの開発を記載する。例えば、タンパク質結合体、ペグ化組換えフォンビルブランド因子(rVWF)および組換え第VIII因子(rFVIII)を使用する。
【0044】
様々な実施態様において、本発明の方法において、ペグ化rVWFまたはペグ化rFVIIIを使用する。様々な血液凝固障害または出血性障害の処置において、ペグ化rVWFおよびペグ化rFVIIIを使用する。用語「血液凝固障害」または「出血性障害」は、任意の、血液が効率的に血餅を形成できないことを引き起こす血液凝固因子におけるいくつかの遺伝的または発病した(developed)欠損、および続く被験体における異常な出血を指す。血液凝固障害は、血友病A、血友病B、フォンビルブランド症候群、第X因子欠損症、第VII因子欠損症、アレキサンダー病、ローゼンタール症候群(第XI因子欠損症または血友病C)、および第XIII因子欠損症を含むがこれに限らない。血液凝固障害の処置は、予防的処置または治療的処置を指す。
【0045】
さらに、VWFは機能的なFVIIIの必須の成分であるので、VWF欠損症は、表現型血友病Aを引き起こし得る。それに加えて、フォンビルブランド病(VWD)またはVWF症候群に罹患した患者は、多くの場合FVIII欠損症を示す。これらの患者において、抑制されたFVIIIの活性は、第X染色体遺伝子の欠損の結果ではなく、血漿中のVWFの定量的および定性的変化の間接的な結果である。血友病AとVWDとの間の区別は、通常VWF抗原の測定によって、またはリストセチンコファクターの活性を決定することによって行い得る。リストセチンコファクター活性を、リストセチンおよび血小板基質を患者の血漿へ加えることによって測定する。リストセチンは、VWFの血小板糖タンパク質Ib受容体への結合を増強し、凝集を引き起こす。光透過の変化によって測定されるように、患者のVWFは、リストセチンによって誘発された血小板凝集を支援する。従って、これは患者のVWFの機能的活性のインビトロにおける測定であり、そしてVWDを診断するための最も鋭敏なアッセイである。VWF抗原含有量およびリストセチンコファクター活性の両方が、ほとんどのVWD患者において低下するが、それらは血友病A患者においては正常である。本発明は、可逆的にペグ化されたVWFおよびFVIIIを含む方法を議論するが、可逆的な結合によってPEGへ共有結合し得る全ての他のタンパク質を含む。様々な局面において、本発明は、第II因子(トロンビン)、第III因子、第V因子、第VII因子(プロコンベルチン)、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子(FIX、クリスマス因子)、第XI因子、および第XIII因子サブユニットAおよびサブユニットBを含むがこれに限らない、他の血液凝固因子タンパク質からPEGを遊離させる方法を含む。
【0046】
PEGのタンパク質からの遊離を、遊離PEGの増加、タンパク質活性の回復、およびrVWFの場合、例えばまた薬物動態学的パラメーターのインビボにおける回復を測定することによって、決定する。分離の必要無しに別個のPEG種の可能性をモニタリングすることが、異なるUV吸収および蛍光発光スペクトルを有する、置換フルオレン(PEG結合体に存在するような)、およびジベンゾフルベン(遊離PEG)発色団の縮合した環構造のスペクトルの性質に基づいて提供される。
【0047】
本発明の1つの実施態様は、修飾タンパク質の生物学的活性のインビトロにおける回復のモニタリングを可能にするアッセイシステムの開発である。PEGのような、遊離可能水溶性ポリマーを、pHを上昇させることによってタンパク質から分離し得る(pHを約8.1、約9.5、および約9.8の値まで上昇させることを含むがこれに限らない)。天然のタンパク質を回復するためのこの型のアッセイは、高いpHにおいて安定であるタンパク質に関して適当である。提供される方法の様々な局面において、pHを約6.0から約8.5、約6.5から約8.1、約6.5から約9.5、約7.3から約9.8、および約6.5から約9.8へ上昇させる。さらなる局面において、本発明は、約10までpHを上昇させることを含む。またさらなる局面において、提供される方法は、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、約9.0、約9.1、約9.2、約9.3、約9.4、約9.5、約9.6、約9.7、約9.8、約9.9、約10.0、約10.1、約10.2、約10.3、約10.4、約10.5、約10.6、約10.7、約10.8、約10.9、約11.0、約11.5、および約12.0より高くまでpH値を上昇させて試験することを含む。
【0048】
別の実施態様において、遊離アミンの添加を、中性pHにおいて水溶性ポリマーの遊離を強制する代替の方法として使用する。いくつかの局面において、その遊離アミンは、ヒスチジンおよびリシンを含むがこれに限らない。他の局面において、環状アミン、1級、2級、3級生体アミン、および芳香族アミンを使用する。従ってこの方法は、pH感受性タンパク質に適当である。これら2つのアプローチの組み合わせも、本発明の一部である。これらのアプローチを、ペグ化rVWFおよびペグ化rFVIIIで説明する(実施例1から5を参照のこと)。
【0049】
別の実施態様において、タンパク質からの水溶性ポリマーの遊離を強制する、1つまたはそれ以上のさらなる手段として、緩衝液の温度の上昇を使用する。様々な局面において、その温度を、約4℃から室温付近、約37℃へ上昇させる。またさらなる局面において、提供される方法は、緩衝液の温度を約4℃から約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、および約100℃まで上昇させることを含む。
【0050】
従って、その水溶性ポリマーを、ポリペプチドへ可逆的に結合させ得、そして緩衝液の遊離アミン濃度を増加させることによって、緩衝液のpHを上昇させることによって、緩衝液の温度を上昇させることによって、または上記のいずれかの組み合わせによって、ポリペプチドから遊離させ得る。さらに、またさらなる実施態様において、本発明の方法は、タンパク質から水溶性ポリマーを遊離させるための1つまたはそれ以上の手段として、緩衝液中でタンパク質をインキュベートする時間を延長することを含む。様々な局面において、そのインキュベーション時間を、約5分(min)から約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間(hr)、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約108時間、約120時間、約132時間、約144時間、約146時間、約168時間、約180時間、約192時間、約204時間、約228時間、約252時間、約276時間、および約300時間まで増加させる。従って、その水溶性ポリマーを、様々な局面において、インキュベーション時間を増加させることによって、緩衝液のアミン濃度またはpHを増加させることによって、緩衝液の温度を上昇させることによって、または1つまたはそれ以上のこれらの列挙した手段のいずれかの組み合わせによって、ポリペプチドから遊離させる。
【0051】
別の実施態様において、本発明は、遊離可能PEGまたは他の遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理のために使用可能なアッセイシステムの開発である(実施例6を参照のこと)。
【0052】
本発明はまた、サイズ排除クロマトグラフィーおよび遊離の水溶性ポリマー、すなわちPEGの検出/測定による、遊離した水溶性ポリマーの測定の参照方法として使用される、分離に基づく方法の例を提供する(実施例7、8、および9を参照のこと)。使用される水溶性ポリマーリンカーの型に基づいて、水溶性ポリマーの分画および定量を、カラムの流出液の屈折率、光学濃度、および/または蛍光を測定することによって達成し得る。
【0053】
本発明のさらなる実施態様は、反応混合物中において、すなわち産生された種を分離する必要性無しに、遊離した水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマー−タンパク質結合体の量を測定することによる、水溶性ポリマー遊離の動態の特徴付けである(実施例7、8および9を参照のこと)。
【0054】
1つの局面において、使用される蛍光分子の種が、そのスペクトルの性質において十分異なるなら、蛍光測定を使用する。フッ素−またはジベンゾフルベン−ポリマーおよびフッ素−(FMOC)−ポリマー結合種または遊離の水溶性ポリマー(すなわちPEG)およびPEG結合種の同時測定が、置換フルオレンの350−355nmの発光ピークおよびジベンゾフルベンの460−560nmの発光領域のような、別々の発光スペクトルを有する異なる縮合環システムのために、適当な励起波長における蛍光の測定によって可能である。さらに、励起波長の注意深い選択はまた、約280nmで最大の感受性を有するタンパク質トリプトファンおよびチロシンの蛍光の励起を回避する。そのような測定に関して、約20nmのStokesシフトを有する励起および発光シグナルを分離するために、狭い分光計のスリットが好ましい。
【0055】
別の局面において、結合体結合水溶性ポリマー(すなわちPEG)の測定を可能にする、比イムノアッセイを使用する。この方法は、USSN61/009,327において開示されるように、PEGおよび非結合タンパク質に特異的に結合する、対になった抗体の組み合わせの使用による測定を可能にする。次いでPEG結合体の脱ペグ化を、脱ペグ化の前に結合体に関して測定した反応と比較して表す、PEGタンパク質ELISAにおける反応性の相対的減少によって検出する(実施例7、8、および9を参照のこと)。この型のELISAは、遊離のPEGは検出せず、結合体に結合したPEGのみを特異的に検出する。
【0056】
これらのインビトロアッセイシステムの開発によって、実質的な方式で、可逆的ペグ化タンパク質からのPEG遊離のβ脱離による速度を増加させること、および非修飾タンパク質の活性を回復させることが可能である。
【実施例】
【0057】
(実施例)
本発明のさらなる局面および詳細が、以下の実施例から明らかであり、それは制限ではなく説明であることを意図する。実施例1は、上昇したpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例2は、1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例3は、選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PEG−RFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復を説明する;実施例4は、遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例5は、Hepes/Trisの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化を説明する;実施例6は、選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復を説明する;実施例7は、種の分離を伴わない、蛍光測定によるPEG−rFVIIIからのPEG遊離の検出を説明する;実施例8は、グルタチオンによるPEG−ジベンゾフルベンの除去を説明する;実施例9は、PEG−ジベンゾフルベン産生に対するpHの影響を示す;実施例10は、上昇したpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合を議論する;実施例11は、1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合を説明する;実施例12は、選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PSA−RFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復を説明する;実施例13は、遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合を説明する;および実施例14は、Hepes/Trisの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合を説明する。
【0058】
(実施例1)
(上昇したpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能rVWF結合体(20Kの分岐PEGと結合)の脱ペグ化を、タンパク質を2つの異なるpH値、pH6.5およびpH8.1でインキュベートすることによって行った。精製PEG−rVWFを、6.5のpH値を有する0.02Mのクエン酸ナトリウム、0.15MのNaClに溶解した。アルカリ性サンプルのために、同じ緩衝液を、0.1MのNaOHを加えることによってpH8.1に調整した。規定された時点でサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原(VWF:Ag)の含有量、遊離PEG、全PEG、およびマルチマーのVWF組成に関して分析した。
【0059】
VWF:Agの含有量を、市販で入手可能な抗体(Dako、Glostrup、Denmark)を用いて、サンドイッチELISAによって決定した。遊離PEGおよび全PEGを、Nektar Therapeutics(Huntsville、AL)によって提供された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定した。「高速液体クロマトグラフィー」、「高圧液体クロマトグラフィー」、およびHPLCという用語は、本明細書中で交換可能に使用される。高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動およびポリクローナル抗ヒトVWF抗体(Dako)を用いた免疫染色によって、VWFマルチマー分析を行った。これらの実験の結果を、表1および図1にまとめる。
【0060】
表1のデータはそれぞれ、pH6.5およびpH8.1におけるインキュベーション中の、VWF:Ag対タンパク質の決定された比(IU/mg)および全PEG含有量に対する遊離した遊離PEGのパーセンテージの結果を示す。基礎の値は、結合体の最初の性質、すなわち強制されたPEG遊離が開始される前を反映する。VWF:Ag対タンパク質の比は、天然の非修飾rVWFの100−160IU/mgと比較して、PEG−rVWF(39IU/mg)に関して著しく減少した。遊離PEGのパーセンテージは、5%と低かった。37℃におけるインキュベーションに際し、VWF:Ag対タンパク質比は、両方の条件下で時間につれて徐々に増加したが、pH8.1における値がわずかに高かった。PEG−rVWF結合体から遊離したPEGの量は、より高いpHにおいて有意に促進された。pH8.1における1時間後、遊離した遊離PEGのパーセンテージは53%であった;一方より低いpH6.5において、23%の遊離PEGが遊離した。遊離PEGのパーセンテージにおいて見られた差異は、より長いインキュベーション時間で減少し、そして29日後、pH6.5において60%のPEGが遊離し、そしてpH8.1において全PEGの68%が遊離した。
【0061】
【表1】
これらのサンプルのマルチマー分析(図1)は、ペグ化後の各VWFマルチマーの典型的なシフトを示す(「天然rVWF」および「オリジナル」と命名されたレーンと比較した場合)。pH6.5および8.1の両方におけるインキュベーション中、より低い分子量へのシフトバックによって識別可能であるように、ペグ化rVWFマルチマーの分子量は徐々に減少し、時間につれたPEGの遊離を示した。しかし、非修飾rVWFのオリジナルの構造の完全な回復は、両方のpH条件下で達成されなかった。それでも、そのデータは、37℃における、pH6.5およびpH8.1の両方におけるインキュベーションは、ペグ化rVWFからのPEGの実質的な遊離を引き起こしたことを示す。
【0062】
(実施例2)
(1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PEG−rVWFのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能PEG−rVWF(20kの分岐PEG)結合体を、100mMのリシンを含む、pH9.8の0.02Mのクエン酸ナトリウム、0.15MのNaCl緩衝液で希釈し、そして37℃でインキュベートした。規定された時点でサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原の含有量(VWF:Ag)、遊離PEG、全PEG、およびマルチマー組成に関して分析した。高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動、およびヒトVWF(Dako、Glostrup、Denmark)またはPEG(研究室内で開発したポリクローナルウサギ抗PEG抗体)のいずれかに対する抗体を用いた免疫染色によって、マルチマー分析を行った。その結果を表2、図2、および図3にまとめる。
【0063】
【表2】
表2のデータは、pH9.8における、アミンリシンの存在下におけるPEG−rVWFのインキュベーションに際し、VWF:Ag対タンパク質の比の明らかな増加が時間につれて起こったことを示す。さらに、述べた緩衝液中における48時間のインキュベーション後、全PEGの81%が遊離した。図2のマルチマーゲルは、10−20時間のインキュベーション後、VWFマルチマーはより低い分子量へシフトバックし、そしてその構造は非修飾rVWFのものと同様になったことを示す。より長いインキュベーション時間(48時間)は、rVWFタンパク質構造の分解を引き起こした。図3において、マルチマーゲルの染色のためにポリクローナル抗PEG抗体を用いることによって、rVWFの脱ペグ化を直接示した。20時間のインキュベーション後、少量のPEGのみが、単一のVWFマルチマーに結合したままであった。そのデータは、pH9.8における、リシンの存在下におけるインキュベーションは、実施例1と比較してより短い時間に明らかなPEGの遊離を引き起こし、そしてrVWFの構造を回復させたことを示す。従って実施例2によって説明した方法は、高いpHにおいて安定なタンパク質のために適当である。
【0064】
脱ペグ化PEG−rVWFの薬物動態を、VWF×FVIIIダブルノックアウトマウスモデルにおいて決定した。マウスに、FVIII(200IU/kg)を単独で、または1.6mg/kgの天然rVWF、遊離可能PEG−rVWF(20K分岐)、または脱ペグ化rVWF(pH9.8においてリシン溶液中で、+37℃で10時間インキュベートした)のいずれかと共に、尾静脈によるボーラス注射(10ml/kg)で与えた。
【0065】
血液サンプル(クエン酸ナトリウムで抗凝固)を、注射の5分後、および3時間後、6時間後、9時間後、および24時間後に、それぞれのグループから麻酔後に心臓穿刺によって採取した。遠心分離によって血漿を調製し、そして色素形成アッセイによってFVIII活性を測定することによって、VWFのインビボにおけるFVIII安定化機能を決定した。この実験の結果を、図4にまとめ、ペグ化rVWFは、非修飾rVWFよりも高い程度、FVIIIを保護したことを示す。脱ペグ化rVWFは、非修飾rVWFと同じFVIII安定化能力を保持し、強制的なインビトロ遊離中に活性なrVWFが遊離したことを示す。
【0066】
(実施例3)
(選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復)
遊離可能PEG−rFVIII結合体(20K分岐PEG)を、7.3のpHを有する緩衝液(10mMのヒスチジン、90mMのNaCl、1.7mMのCaCl2、10mMのTris、0.26mMのグルタチオン、176mMのマンニトール、23.5mMのトレハロース、および0.1g/lのTween80)中で、5IU/mlのFVIII色素形成活性まで希釈した;その緩衝液はさらに、リシン、ヒスチジン、または両方のアミノ酸の組み合わせを含んでおり、そしてその緩衝液を37℃でインキュベートして、タンパク質結合体からのPEGのインビトロ遊離を強制した。規定された時点(24時間、48時間、および72時間)においてサブサンプルを取り、そしてFVIII色素形成アッセイを使用することによって、FVIII色素形成活性をオンライン(online)で決定した。その結果を図5にまとめる。
【0067】
アミンを欠く緩衝液において、72時間後に5.0から11.5IU/mlのFVIII:Cまで活性が増加した。72時間の時点で、100mMのヒスチジンの存在は、FVIII活性を17.8IU/mlまで、100mMのリシンは20.4IU/mlまで、200mMのヒスチジンは24.9IU/mlまで、そして100mMのヒスチジンおよび100mMのリシンの組み合わせは34.7IU/mlまで増加させた。従って、強制的なPEG遊離は明らかに、アミン濃度およびおそらくアミンの組成に依存していた。この実施例によって本明細書中で説明された方法は、pH環境に感受性である可逆的ペグ化タンパク質のタンパク質活性のインビトロにおける回復に適当である。
【0068】
(実施例4)
(遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能PEG−rFVIII結合体(20K分岐PEG)を、7.3のpHを有する緩衝液(20mMのクエン酸Na3、1.7mMのCaCl2、176mMのマンニトール、36mMのショ糖、および0.1g/lのTween80)中でインキュベートした;その緩衝液はさらに、100mMのヒスチジンおよび100mMのリシンを含み、そして+37℃でインキュベートした。168時間までの規定された時点でサブサンプルを取り、そしてPEG−rFVIIIの機能的活性を、FVIII色素形成アッセイの使用によってオンラインで決定した。それに加えて、PEGの遊離を、凍結サブサンプルから、Nektar Therapeutics(Huntsville、AL)によって提供されるHPLC法によって、遊離PEGおよび全PEGを測定することによって確認した。その結果を、図6および表3にまとめる。
【0069】
図6は、インキュベーション段階中の、PEG−rFVIIIのFVIII色素形成活性の増加を示す。タンパク質活性の増加は、2段階の過程をたどった:FVIII活性の迅速な増加が、最初の6時間以内に観察され、インキュベーションの24時間後に最大に達する遅い活性の増加の段階が続き、6.0IU/mlの開始活性と比較して、21.9IU/mlまでFVIII色素形成活性が増加し、それは366%の活性の増加に相当する。144時間までのさらなるインキュベーションは、FVIII活性の遅い、漸進的減少を引き起こした。実施例1および2において概略を述べたように、高いpH(例えば9.8)におけるペグ化タンパク質のインキュベーションは、インビトロでPEGの遊離を誘発する別の選択肢である。従って、同じPEG−rFVIII結合体をpH9.8において37℃でインキュベートし、そして活性の増加を、pH7.3でヒスチジン/リシンの存在下で達成されたものと比較した。図6は、pH9.8において、FVIII色素形成活性の回復はより低く、FVIII色素形成活性は、4.4IU/mlの開始活性と比較して、24時間の時点で14.8IU/mlまで増加したことを示す。これはおそらく、この高いpH値におけるFVIII不活性化の増強のためであった。この結論は、両方の条件下におけるPEG遊離の同様の速度によって支持された(表3)。遊離したPEGの量を、PEGの全量に関して遊離PEGのパーセンテージとして表した。遊離PEGの最初の低い含有量(8から13%=基礎値)は、両方の緩衝液におけるインキュベーションに際し、時間依存的な方式で増加し、ヒスチジン/リシン緩衝液の場合は144時間後に全PEGの64%、そしてアルカリ性緩衝液(pH9.8)に関しては168時間後に74%の最大に達した。これらのデータは、どちらの条件もPEGの遊離を誘発するために適当であることを確認する。
【0070】
【表3】
実施例6のデータはまた、pH感受性タンパク質に関して、中性pHにおける組み合わせた遊離アミンは、タンパク質活性の回復が、アルカリ性による遊離と比較して、そのような条件下でより高いので、強制インビトロPEG遊離に有利であることを示唆する。
【0071】
(実施例5)
(HEPES/TRISの存在下における、遊離可能PEG−rFVIIIのインビトロ脱ペグ化)
遊離可能PEG−rFVIII(20K分岐PEG)を、pH7.4において典型的なアミンを含む緩衝物質の組み合わせ、すなわち200mMのHEPESおよび200mMのTris中において、37℃でインキュベートした。規定された時点においてサブサンプルを取り、FVIII活性の回復を色素形成アッセイによってモニターし、そしてそのVWFと相互作用する能力を決定した。循環中におけるFVIIIの生存を決定的に決定するVWF結合を、表面プラズモン共鳴技術を用いることによってモニターした。Biacore装置を用いて、様々なPEG−rFVIIIサンプルを移動相に注入し、そして固定化VWFとの相互作用に関して試験した。PEG−rFVIIIはほんの低レベルでしかrVWFに結合しなかったが、サンプルの結合はPEG遊離と共に増加した。図7は、rFVIIIのVWFへの結合の増加を伴う、経時的な色素形成性FVIII活性の増加を示し、これは、脱ペグ化のシグナルである。実施例5のデータは、広いスペクトルのアミンを、そのような結合体からPEGの遊離を強制するために使用し得ることを示す。色素形成活性およびVWFへの結合の両方の回復はさらに、機能的タンパク質が時間につれて産生されることを示す。
【0072】
(実施例6)
(遊離アミンの存在下におけるPEG−rFVIIIのインキュベーションに際した、FVIII活性増加の初速度)
実施例4において、37℃におけるインキュベーションの0から6時間の時間間隔として定義された、PEG−rFVIIIからのPEG遊離の最初の急速期を、バッチごとの一貫性を調査するためのパラメーターとしての適合性に関して分析した。図8は、最初の6時間の、37℃におけるpH7.3の100mMのヒスチジン/100mMのリシン緩衝液中でのインキュベーションに際したFVIII活性の増加を示す。
【0073】
左のパネルにおいて、同じPEG−rFVIIIのバッチの6回反復した測定を示し、一方右のパネルにおいて、結合体の2つの別のバッチの平均活性値を示す。1時間あたりのFVIII活性(IU/ml)の増加を、直線回帰によって曲線をフィッティングすることによって計算し、そして傾き(k’)として表す。6回のテスト単位および2つのバッチの傾きの数値を表4にまとめる。両方の場合において、同様の傾きが得られ、それによってそのアッセイシステムは再現性のある結果を生じることを示した。さらに、FVIII活性増加の初速度を決定することは、遊離可能PEG結合体の異なるバッチの比較を可能にする。
【0074】
【表4】
(実施例7)
(種の分離を伴わない蛍光測定による、PEG−rFVIIIからのPEG遊離の検出)
6.0IU/mlの開始活性rFVIII(20k分岐PEG)と比較して、FVIII色素形成活性が21.9IU/mlに増加し、1リットルあたり32mgのマンニトール、12gのショ糖、2.5gのCaCl2・2H2O、および100mgポリソルベート80を含む20mMのクエン酸緩衝液、pH=6.0に処方され、そして凍結乾燥された遊離可能PEGを、360mgのタンパク質(ビチンコン酸(bichinchonic acid)アッセイ)および345mgの全PEGを含む溶液へ再構成した。この溶液を、1リットルあたり32gのマンニトール、12gのショ糖、2.5gのCaCl2・2H2O、10mMのEDTA、および100mgのポリソルベート80を含む(99%オレイン酸、Nippon Oils and Fats)、100mMの炭酸水素ナトリウム溶液、pH8.5中に1:5に希釈し、そして20−25℃におけるインキュベーションに際し、規定された時間間隔で、350−355nmの間の狭いピークでPEG−FMOC化合物、および460−560nmの間の広いピークで遊離PEG−ジベンゾフルベン(PEG−DBF)を示す蛍光スペクトルを、Perkin Elmer LS50B分光蛍光計(0.4(励起)×1(発光)cmのPTFE−ストッパー付き石英キュベット中1.25mL、330nm励起/340−600nm発光波長、5/5nmスリット幅、180nm/分スキャニングスピード、800V光電子増倍電圧(photomultiplier voltage))で測定した(図9)。
【0075】
【表5】
別個のリザーバーからこれらの指定された間隔で取ったサンプルを、遊離FMOC−PEGおよびジベンゾフルベン−PEGに関して、20mMのリン酸ナトリウム、50mMの硫酸ナトリウム、pH6.1で操作した、Shodexタンパク質5μカラム(KW−803 300A、300×8mm(Showa Denko America,Inc.(New York)))においてHPLCによって分析し、そしてPEG−FVIIIおよび遊離FVIII抗原に関してELISAによって免疫化学的に分析した。PEG−FVIII ELISAの結果は、新しく溶解した標準調製物のものと比較した、アッセイにおいて測定した結合として与えられる。蛍光シグナルを、PEG−FMOC結合体およびPEG−ジベンゾフルベンに関して、それぞれ350−355nmおよび460−560nm(0.5nmステップで)から統合した。そのデータを表5にまとめる。
【0076】
最初に測定された濃度のパーセントとして示された、表5で示したデータは、460−560nmにおける蛍光シグナルの増加によって示される遊離ベンゾフルベン−PEGの遊離、ならびに、ELISAによって、およびPEG−FMOCタンパク質結合体の対応する減少によって測定される(350−355nm蛍光シグナルおよびPEG−FVIII ELISAによって測定されるFVIII結合PEGのレベルの減少によって示される)、遊離FVIII抗原の遊離を示す。
【0077】
(実施例8)
(グルタチオンによるPEG−ジベンゾフルベンの除去)
実施例7の炭酸水素溶液に、10mMの還元グルタチオン(GSH)を加え、そして希釈、インキュベーション、測定、サンプリング、および分析を、実施例8で述べたように行った。スペクトルを図10に示す。約24時間後、蛍光キュベットの中ではなく、サンプリングリザーバー中のグルタチオンが、酸化によって消耗したようであった(表6)。
【0078】
【表6】
最初に測定された濃度のパーセントとして示された、表6のデータは、460−560nmにおける比蛍光シグナルの中程度の増加(実施例5と比較して)、および350−355nm蛍光シグナルによって示されるような、結合PEG−FMOC化合物の対応する中程度の減少によって示されるように、還元グルタチオンによる遊離のジベンゾフルベン−PEGの除去を示す。遊離のFVIII抗原が産生され、そしてFVIII−結合PEGレベルは実施例5と同様の速度で減少する。
【0079】
(実施例9)
(PEG−ジベンゾフルベンの産生に対するpHの効果の実証)
実施例8のFVIII溶液を、1リットルあたり32gのマンニトール、12gのショ糖、2.5gのCaCl2・2H2O、および100mgのポリソルベート80(99%オレイン酸)を含む、20mMのクエン酸緩衝液、pH6.0で1:5に希釈した。インキュベーション、測定、サンプリング、および分析を、実施例7で述べたように行った。スペクトルを図11に示す。pH6.0において、PEG−ジベンゾフルベンの遊離は、pH=8.5のときよりも低かった(表7を表5と比較する)。そのデータは、β脱離のメカニズムが、水酸化物陰イオンのような、塩基性求核剤の攻撃によって行われることを示唆する。
【0080】
【表7】
(実施例10)
(上昇したpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合)
ポリシアル酸(PSA)−rVWF結合体のような、遊離可能水溶性ポリマー結合体の解重合を、そのタンパク質結合体のpHを上昇させることによって行う。異なるpH値において、例えば約6のpH、および約8または約10のpHにおいて、タンパク質結合体をインキュベートすることによって、解重合を測定する。精製PSA−rVWFを、約6のpH値を有する、0.02Mのクエン酸Na、0.15MのNaClに溶解する。アルカリ性のサンプルに関して、同じ緩衝液を、0.1MのNaOHの添加によって、約8または約10の上昇したpHへ調整する。規定された時点においてサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原(VWF:Ag)の含有量、遊離PSA、全PSA、およびマルチマーのVWF組成に関して分析する。
【0081】
VWF:Agの含有量を、市販で入手可能な抗体(Dako、Glostrup、Denmark)を用いて、サンドイッチELISAによって決定する。遊離PSAおよび全PSAを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定する。VWFマルチマー分析を、高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動およびポリクローナル抗ヒトVWF抗体(Dako)を用いた免疫染色によって行う。PSA−rVWFの解重合が、pHの上昇と共に増加することが予期される。
【0082】
(実施例11)
(1級アミンの存在下および高いpHにおける遊離可能PSA−rVWFのインビトロ解重合)
ポリシアル酸(PSA)−rVWF結合体のような、遊離可能水溶性ポリマー結合体の解重合を、別の局面において、タンパク質結合体緩衝液のアミン濃度を増加させることによって行う。遊離可能PSA−rVWF結合体を、100mMのリシンを含む、約9.8のpHの0.02Mのクエン酸ナトリウム、0.15MのNaCl緩衝液中で希釈し、そして37℃でインキュベートする。規定された時点でサブサンプルを取り、そしてそのVWF抗原(VWF:Ag)の含有量、遊離PSA、全PSA、およびマルチマー組成に関して分析する。マルチマー分析を、高密度水平SDSアガロースゲル電気泳動、およびヒトVWF(Dako、Glostrup、Denmark)またはPSA(Millipore、Temecula、CA、USA)のいずれかに対する抗体を用いた免疫染色によって行う。
【0083】
pH9.8における、アミンリシンの存在下でのPSA−rVWFのインキュベーションに際し、経時的なVWF:Ag対タンパク質の比の増加が予期される。それに加えて、全PSAの大部分は、述べた緩衝液中でのインキュベーション後に遊離されることが予期される。インキュベーション後、少量のPSAのみが、単一のVWFマルチマーに結合したままであることが予期される。
【0084】
(実施例12)
(選択された遊離アミンの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのタンパク質活性のインビトロにおける回復)
水溶性ポリマー結合体化タンパク質のタンパク質活性は、遊離アミンの存在下で増加することが予期され、アミン濃度が上昇するときにポリマーの遊離を示す。この実験において、遊離可能PSA−rFVIII結合体を、約7.3のpHを有する緩衝液(10mMのヒスチジン、90mMのNaCl、1.7mMのCaCl2、10mMのTris、0.26mMのグルタチオン、176mMのマンニトール、23.5mMのトレハロース、および0.1g/lのTween80)において、5IU/mlのFVIII色素形成活性へ希釈する;その緩衝液はさらにリシン、ヒスチジン、または両方のアミノ酸の組み合わせを含み、そしてその緩衝液を37℃でインキュベートして、タンパク質結合体からのPSAのインビトロにおける遊離を強制する。規定された時点(24時間、48時間、および72時間)においてサブサンプルを取り、そしてFVIII色素形成活性を、FVIII色素形成性アッセイの使用によって、オンラインで決定する。FVIII活性は、濃度漸増のリシン、ヒスチジン、または両方のアミンの組み合わせを有する緩衝液において、時間につれて増加することが予期される。
【0085】
(実施例13)
(遊離アミンの組み合わせの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合)
遊離可能PSA−rFVIII結合体を、pH7.3の緩衝液(20mMのクエン酸Na3、1.7mMのCaCl2、176mMのマンニトール、36mMのショ糖、および0.1g/lのTween80)中でインキュベートする;その緩衝液はさらに100mMのヒスチジンおよび100mMのリシンを含み、そして+37℃でインキュベートする。あるいは、その緩衝液を、ヒスチジンおよびリシンを加えずに、pHを高いpH(例えば9.8)まで増加させる。168時間までの規定された時点でサブサンプルを取り、そしてPSA−rFVIIIの機能的活性を、FVIII色素形成性アッセイを用いることによって決定する(前に記載したように)。それに加えて、PSAの遊離を、凍結サブサンプルからHPLCによって遊離PSAおよび全PSAを測定することによって確認する。そのような条件は、インビトロでrFVIIIタンパク質からのPSAの遊離を引き起こすことが予期される。
【0086】
(実施例14)
(HEPES−Trisの存在下における、遊離可能PSA−rFVIIIのインビトロ解重合)
以前の実験は、緩衝液のアミン濃度の増加は、遊離可能水溶性ポリマーのタンパク質結合体からの遊離を強制することを示す。この実験において、遊離可能PSA−rFVIIIを、約7.4のpHにおいて、典型的なアミンを含む緩衝物質の組み合わせ、すなわち200mMのHEPESおよび200mMのTris中で、37℃でインキュベートする。規定された時点でサブサンプルを取る。FVIII活性の回復を色素形成性アッセイによってモニターし、そしてそのVWFと相互作用する能力を決定する。循環中のFVIIIの生存を決定的に決定するVWF結合を、表面プラズモン共鳴技術を用いることによってモニターする。Biacoreシステムを用いて、様々なPSA−rFVIIIサンプルを移動相に注入し、そして固定化VWFとの相互作用に関して試験する。VWFの結合は、PSAの遊離と共に増加することが予期される。従って、経時的な色素形成性FVIII活性の増加は、rFVIIIのVWFへの結合の増加を伴うはずであり、それは解重合のシグナルである(PSAの除去)。以前の実施例において述べたように、広いスペクトルのアミンを、そのような結合体からのPSAの遊離を強制するために使用し得ることが予期される。色素形成活性およびVWFへの結合の増加は、時間につれて機能的タンパク質が産生されることを示す。
【0087】
本発明は、本発明の実施のために好ましい方式を含むと発見されたか、または提案された特定の実施態様に関して記載された。本開示を考えて、本発明の意図された範囲から離れることなく、多くの修飾および変化を、例示された特定の実施態様において行い得ることが、当業者によって認識される。従って、添付の請求が、請求されたような本発明の範囲内に入る、全てのそのような同等のバリエーションを含むことが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆的に結合した水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質から該水溶性ポリマーを遊離させる方法であって、該方法は、該タンパク質を、該水溶性ポリマーを遊離させるために有効な1つまたはそれ以上の条件下でインキュベートする工程を含む、方法。
【請求項2】
可逆的に結合した水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の活性を増加させる方法であって、該方法は、該タンパク質を、該水溶性ポリマーを遊離させるために有効な1つまたはそれ以上の条件下でインキュベートする工程を含む、方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記タンパク質を含む緩衝液のpHを、約pH6から約pH10まで上昇させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記条件が、前記緩衝液のpHを、約6.1から約9.8まで上昇させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記条件が、前記緩衝液のpHを、約7.3から約9.8まで上昇させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記条件が、前記緩衝液のpHを、約6.5から約8.1まで上昇させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記タンパク質を含む緩衝液の遊離アミン濃度を増加させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記緩衝液の遊離アミン濃度の増加が、リシンの濃度の増加の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記緩衝液の遊離アミン濃度の増加が、ヒスチジンの濃度の増加の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記緩衝液の遊離アミン濃度の増加が、アミンの組み合わせの増加の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記アミンの組み合わせが、リシンおよびヒスチジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記緩衝液の温度を、室温付近から約37℃へ上昇させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記緩衝液の温度を、約4℃から約37℃へ上昇させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記タンパク質をインキュベートする時間を、約5分から約168時間へ延長することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記時間が、約5分から約48時間の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理をアッセイする方法であって、該方法は、該タンパク質を0時間から約6時間まで37℃で、約100mMのヒスチジンおよび約100mMのリシンを含む、約pH7.3の緩衝液中でインキュベートする工程、ならびに最初の6時間以内にタンパク質活性を分析する工程を含む、方法。
【請求項17】
可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質の活性の増加または回復をモニターする方法であって、該方法は、該タンパク質から該可逆的に結合した水溶性ポリマーを除去する前および後に、タンパク質の活性を測定する工程を含む、方法。
【請求項18】
可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質からの水溶性ポリマー遊離の動態を測定する方法であって、該方法は、反応混合物においてある期間にわたって、遊離の水溶性ポリマーの量およびタンパク質に結合体化した水溶性ポリマーの量を同時に測定する工程を含み、ここで該遊離の水溶性ポリマーの量の変化および該タンパク質に結合体化した水溶性ポリマーの量の変化から動態を決定する、方法。
【請求項19】
前記測定する工程が、蛍光発光スペクトルに基づき、ここで、該同時に測定する工程が、水溶性ポリマー−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)結合体に関しては約350−355nmの発光ピーク、そして水溶性ポリマー−ジベンゾフルベンに関しては約460−560nmの発光ピークにおける蛍光を用いて実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記測定する工程が、遊離の水溶性ポリマー−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)および水溶性ポリマー−ジベンゾフルベンに関する高速液体クロマトグラフィーに基づく、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記測定する工程が、免疫化学的に、水溶性ポリマー結合体化タンパク質および遊離の該タンパク質に関する酵素結合イムノソルベント検定法に基づく、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質が、第VIII因子(FVIII)である、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質が、フォンビルブランド因子(VWF)である、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記水溶性ポリマーが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)、ジベンゾフルベン、またはその誘導体を有する前記タンパク質に可逆的に結合する、請求項1、2、16、17または18に記載の方法。
【請求項25】
前記水溶性ポリマーが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)、またはその誘導体に結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコールである、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記水溶性ポリマーが、ポリシアル酸である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
可逆的に結合した水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質から該水溶性ポリマーを遊離させる方法であって、該方法は、該タンパク質を、該水溶性ポリマーを遊離させるために有効な1つまたはそれ以上の条件下でインキュベートする工程を含む、方法。
【請求項2】
可逆的に結合した水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の活性を増加させる方法であって、該方法は、該タンパク質を、該水溶性ポリマーを遊離させるために有効な1つまたはそれ以上の条件下でインキュベートする工程を含む、方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記タンパク質を含む緩衝液のpHを、約pH6から約pH10まで上昇させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記条件が、前記緩衝液のpHを、約6.1から約9.8まで上昇させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記条件が、前記緩衝液のpHを、約7.3から約9.8まで上昇させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記条件が、前記緩衝液のpHを、約6.5から約8.1まで上昇させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記タンパク質を含む緩衝液の遊離アミン濃度を増加させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記緩衝液の遊離アミン濃度の増加が、リシンの濃度の増加の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記緩衝液の遊離アミン濃度の増加が、ヒスチジンの濃度の増加の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記緩衝液の遊離アミン濃度の増加が、アミンの組み合わせの増加の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記アミンの組み合わせが、リシンおよびヒスチジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記緩衝液の温度を、室温付近から約37℃へ上昇させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記緩衝液の温度を、約4℃から約37℃へ上昇させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーを遊離させるために有効な条件が、前記タンパク質をインキュベートする時間を、約5分から約168時間へ延長することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記時間が、約5分から約48時間の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
遊離可能水溶性ポリマーで修飾されたタンパク質の品質管理をアッセイする方法であって、該方法は、該タンパク質を0時間から約6時間まで37℃で、約100mMのヒスチジンおよび約100mMのリシンを含む、約pH7.3の緩衝液中でインキュベートする工程、ならびに最初の6時間以内にタンパク質活性を分析する工程を含む、方法。
【請求項17】
可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質の活性の増加または回復をモニターする方法であって、該方法は、該タンパク質から該可逆的に結合した水溶性ポリマーを除去する前および後に、タンパク質の活性を測定する工程を含む、方法。
【請求項18】
可逆的に結合した水溶性ポリマーによって修飾されたタンパク質からの水溶性ポリマー遊離の動態を測定する方法であって、該方法は、反応混合物においてある期間にわたって、遊離の水溶性ポリマーの量およびタンパク質に結合体化した水溶性ポリマーの量を同時に測定する工程を含み、ここで該遊離の水溶性ポリマーの量の変化および該タンパク質に結合体化した水溶性ポリマーの量の変化から動態を決定する、方法。
【請求項19】
前記測定する工程が、蛍光発光スペクトルに基づき、ここで、該同時に測定する工程が、水溶性ポリマー−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)結合体に関しては約350−355nmの発光ピーク、そして水溶性ポリマー−ジベンゾフルベンに関しては約460−560nmの発光ピークにおける蛍光を用いて実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記測定する工程が、遊離の水溶性ポリマー−9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)および水溶性ポリマー−ジベンゾフルベンに関する高速液体クロマトグラフィーに基づく、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記測定する工程が、免疫化学的に、水溶性ポリマー結合体化タンパク質および遊離の該タンパク質に関する酵素結合イムノソルベント検定法に基づく、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質が、第VIII因子(FVIII)である、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質が、フォンビルブランド因子(VWF)である、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記水溶性ポリマーが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)、ジベンゾフルベン、またはその誘導体を有する前記タンパク質に可逆的に結合する、請求項1、2、16、17または18に記載の方法。
【請求項25】
前記水溶性ポリマーが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(fmoc)、またはその誘導体に結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコールである、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記水溶性ポリマーが、ポリシアル酸である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2012−506382(P2012−506382A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532331(P2011−532331)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061327
【国際公開番号】WO2010/048184
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061327
【国際公開番号】WO2010/048184
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】
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