説明

運動アーティファクトを除去する微小電極

【課題】運動アーティファクトの除去を行なう。
【解決手段】生体電位信号の測定のための電極システム(10、50)の微小電極(14、70)と、加速度計(16、52)が基材(12、54)に結合され、生体電位増幅器(214、276)が微小電極(14、70)に電気的に結合されており、加速度測定回路(212、234)が加速度計(16、52)に電気的に結合される。患者からの生体電位を測定する方法が、微小電極(14、70)によって生体電位を感知するステップを含み、生体電位は、微小電極(14、70)と電気的に連絡した増幅器によって増幅される。電極の運動が、電極基材(12、54)に一体化されている加速度計(16、52)によって感知される。感知された生体電位及び感知された運動が電子式制御器(18)に与えられる。感知された運動に対応する感知された生体電位の部分が、アーティファクト混入部分として識別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体電位変換の分野に関する。さらに具体的には、本開示は、運動アーティファクト(モーション・アーティファクト)の除去を行なう生体電位微小電極に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の生理学的な状態又は機能を決定するのに有用な生体電位信号を非侵襲式で得るために、患者の皮膚に貼付される電極が広く用いられている。哺乳動物の皮膚の解剖学的構造は、高い電気インピーダンスを呈する。この電気インピーダンスのため、電極によって得られる生体電位信号の大きさ及び信号対雑音比が低下する。電極を用いる前に、皮膚を研摩し且つ/又は皮膚に電解質ゲルを塗布して信号の電気特性を改善することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5513649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解質ゲルを塗布する代替として、電極に、皮膚の外側層を貫通して電極と皮膚との境界面のインピーダンスを低下させるスパイクを形成することが行なわれる。しかしながら、電極と皮膚との境界面の電気特性を改善した後でも、運動アーティファクトが、取得される生体電位信号の誤差の重大な原因となる。運動アーティファクトは、患者の運動、電極の運動、又は取得される生体電位信号を信号プロセッサへ送り返す線の運動によって生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、生体電位信号の測定のための微小電極システムに関わるものである。この微小電極システムは、基材を含んでおり、基材から微小電極が延在している。加速度計が基材に一体化されている。加速度計は、基材の加速度を示す加速度信号を発生する。加速度計測定サーキットリが、加速度計に電気的に結合されている。
【0006】
また、患者からの生体電位を測定する方法が、微小電極によって生体電位を感知するステップを含んでいる。生体電位は、微小電極と電気的に連絡した増幅器によって増幅される。電極の運動が、電極基材に一体化されている加速度計によって感知される。感知された生体電位及び感知された運動が電子式制御器に与えられる。
【0007】
本書に開示される生体電位電極は、シリコン基材を含んでいる。微小電極がシリコン基材の上に堆積させられる。加速度計がシリコン基材に一体化される。加速度計は、シリコン基材からエッチングされるプルーフ・マス(proof mass)を含んでいる。プルーフ・マスは少なくとも一つの支持体によって基材から懸吊される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面は、本開示を実施するのに現状で思量される最良の態様を示す。
【図1】水平整列型微小電極の実施形態を示す図である。
【図2】垂直整列型微小電極の実施形態を示す図である。
【図3(A)】加速度計の一実施形態を示す図である。
【図3(B)】代替的な加速度計の実施形態を示す図である。
【図4(A)】加速度計回路を示す図である。
【図4(B)】代替的な加速度計回路を示す図である。
【図4(C)】代替的な加速度計回路を示す図である。
【図5(A)】微小電極の構築の様々な段階での微小電極を示す図である。
【図5(B)】微小電極の構築の様々な段階での微小電極を示す図である。
【図5(C)】微小電極の構築の様々な段階での微小電極を示す図である。
【図5(D)】微小電極の構築の様々な段階での微小電極を示す図である。
【図6】生体電位を測定する方法の一実施形態の各ステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
生体電位を得るために、皮膚装着型監視電極が典型的に用いられる。人体の皮膚は、角質層、生物表皮、及び真皮の三つの別個の層で形成されている。皮膚の外側の10マイクロメートル〜15マイクロメートルは角質層と呼ばれ、人体の最初の障壁を形成する死んだ組織である。角質層は皮膚インピーダンスの主な寄与体であって、皮膚装着型電極の信号対雑音比特性の主要因である。角質層の下には生物表皮が位置する(50マイクロメートル〜100マイクロメートル)。生物表皮は生きた細胞を含むが、僅かな神経しか含まず、また血管は存在しない。神経は深い組織に存在するため、生物表皮までの皮膚への貫通は無痛である。生物表皮の下に真皮が位置する。真皮は皮膚容積の大部分を形成しており、生きた細胞、神経、及び血管を含む。
【0010】
微小電極は、角質層を通って生物表皮まで貫通することが可能な複数の導電性スパイクを用いて皮膚インピーダンスを低下させる。電極スパイクは典型的には、長さが50マイクロメートル〜250マイクロメートルにわたり、100本〜10,000本のスパイクがアレイを成して構成されている。スパイクは角質層及び生物表皮を貫通するような所要の尖鋭度を有する。
【0011】
図1は電極10の一実施形態を示す。電極10は水平型の積層構成を具現化しており、これにより構成要素の各々が底面基材12の上で水平に整列する。底面基材12はシリコン材料で構築され得る。
【0012】
電極10はさらに、底面基材12に結合された三つの構成要素を含んでいる。これら三つの構成要素は、微小電極14、加速度計16、及び電子回路18を含んでいる。
【0013】
本出願では、幾つかの構成要素の相互作用を「結合されている」と記載する。「結合されている」との用語は、本出願では機械的接続又は電気的接続、及び直接的接続又は間接的接続を包含するものとして用いられる。
【0014】
図1の電極10は、微小電極14、加速度計16、及び電子回路18を、底面基材12の上で水平に整列した別個の構成要素として構成している。幾つかの実施形態は、各構成要素(14、16、18)と底面基材12との間に絶縁層19を含んでいてもよい。微小電極14、加速度計16、及び電子回路18は、各構成要素を接続する線20を用いて電気的に接続されている。代替的には、微小電極14と加速度計16と電子回路18との間に他の形態の電気的接続を代用し得ることが理解される。かかる代替的な形態の電気的接続としては、限定しないが底面基材12の上の印刷接続等がある。
【0015】
微小電極14は、銀(Ag)又は銀/塩化銀(Ag/AgCl)の電気めっきを施した複数のスパイク22を含んでいる。純銀皮膜の場合には、表面は、経時的に塩化銀の層によって不動態化されて被覆される。Ag/AgCl皮膜は、組織でのイオン電流を金属導体での電子の移動へ変換することにより、スパイク22の電気伝導性を高める。スパイク22は、長さが50マイクロメートル〜250マイクロメートルにわたる。この長さの範囲は、角質層を貫通して生物表皮まで達し、しかも十分な数のスパイクが患者の皮膚の不完全性に関わらず生物表皮に貫通するような十分なスパイク長さ範囲を提供するのに適している。
【0016】
微小電極14は、シリコン基材26から電極空洞部24をエッチングで切り出して、スパイク22をホウ素ドープ層28に堆積させることにより作製される。この工程については、後にあらためて詳述する。
【0017】
上で認められるように、スパイク22による角質層の貫通は、電極10によって取得される生体電位の改善された信号対雑音比を提供する。取得される生体電位の誤差のもう一つの重大な原因は、運動アーティファクトである。前述のように、運動アーティファクトは、患者の運動、電極の運動、又は電極から監視装置(図示されていない)まで延在するリード線(図示されていない)の運動から生じ得る。運動アーティファクト検出を用いて、アーティファクトが混入している可能性の高い生体電位データを標識して、生体電位信号品質の指標に盛り込むこともできるし、信号処理を用いて、取得される生体電位から推定運動アーティファクトを除去してもよい。電極10は、当該電極10への加速度計16の一体化によって、改善された生体電位取得を達成することが可能である。電極10に加速度計16を配置することにより、加速度計は、電極10が遭遇する運動を測定することができ、取得される生体電位に存在する運動アーティファクトの改善された推定を得ることができる。
【0018】
加速度計は、複数のばね30によって加速度計16から懸吊されているプルーフ・マス(図示されていない)を含んでいる。複数の電極32が、プルーフ・マスの加速度を測定し得るように巧妙に構成される。加速度計の特定の実施形態及び構成は、本書で後にあらためて詳細に開示する。
【0019】
加速度計16は、加速度計の構成要素を保護して電気的隔離及び堆積時の隔離を提供するシャドウ・マスク34によって被覆されている。加速度計16に設けられた接点パッド36が、線20等による構成要素同士の間の電気的接続を可能にしている。線20が、加速度計16に設けられた接点パッド36から電子回路18までを接続する。電子回路18のこれらの実施形態については、本書で特に図4に関して後にあらためて詳述する。
【0020】
図2は、電極の代替的な実施形態50を示す。電極50は、図1に示す電極10の水平型構成に対する代替的な配向である垂直型の積層構成として構成されている。垂直型の積層構成の電極50では、加速度計52がシリコン基材54から構築される。図1に関して前述したように、加速度計はばね56によって基材54から懸吊されたプルーフ・マス(図示されていない)と、プルーフ・マスの加速度又は変位を感知するように巧妙に配置された電極58とを含んでいる。
【0021】
加速度計52の上には、当該加速度計を保護するためのシャドウ・マスク60が堆積している。シャドウ・マスク60の上には、加速度計52と該加速度計52の上に積層した各構成要素との間に付加的な電気的隔離を提供するさらにもう一つの絶縁層62が位置している。線64が、加速度計52の接点パッド66から、絶縁層62の上に位置する電子回路68まで延在している。線64は、加速度計52と電子回路68との間に電気的接続を提供する。電子回路68の上には、スパイク付き電極70がさらに積層されている。スパイク付き電極70は、当該スパイク付き電極70の伝導性を高めるために、銀又は銀/塩化銀の電気めっき72によって被覆されている。スパイク付き電極70は、スルーホール74及びはんだバンプ76によって電子回路68に電気的に接続される。
【0022】
図1及び図2は、本書に開示される一体型電極の代替的な各実施形態を示しており、両実施形態、及びこれらの特定的に開示された構成に対する代替構成は本開示の範囲内にあるものと考えられる。
【0023】
図3(A)及び図3(B)は、本書に開示される電極の実施形態に組み込まれる本書に開示される加速度計の代替的な各実施形態を示す。
【0024】
図3(A)は、二つの垂直方向で加速度を検出するように配備された加速度計100を示す。幾つかの実施形態では加速度を三つ全ての垂直方向で測定する加速度計が望ましい場合があるが、信号処理及び巧妙な加速度計設計の利用を通じて、二方向又は場合によっては一方向で加速度を測定する加速度計でも本書に開示する電極の実施形態に実効的に用いられ得る。従って、図3(A)及び図3(B)の加速度計は二つの垂直方向で加速度を測定するように設計されているが、これらの設計は、一方向又は三つの垂直方向で加速度を測定するように改変されてよく、本開示の範囲内にあることが理解される。
【0025】
図3(A)の加速度計100は、本書で特に図5に関して後に詳細に開示するように、シリコンで構築されたプルーフ・マス102を含んでいる。プルーフ・マスは、支持枠104から複数のばね支持体106によって懸吊されている。
【0026】
複数の容量型又は抵抗型のセンサ又は電極が、プルーフ・マス102及び枠104の両方から、直交する各方向に延在している。加速度計100の加速度によるプルーフ・マス102の変位は、プルーフ・マスから延在している電極108と枠104から延在している電極110との間のキャパシタンス(又はインピーダンス)の変化によって測定される。
【0027】
図3(A)の加速度計100は、四組(112、114、116、118)の電極(108、110)として二組(112、116)(114、118)ずつが何れかの方向に整列しているように図示されているが、代替的な実施形態では、各々の方向に単一組の整列した電極108、110のみを用いてもよいことが理解される。例えば、加速度計100は代替的には、電極の組112及び114、又は他の類似の変形によって具現化され得る。
【0028】
図3は、加速度計120の代替的な実施形態を示す。加速度計120は、加速度計100のように多方向で加速度を検出する単一のプルーフ・マスを構成しているのではなく、長さに沿って整列した加速度計122及び幅に沿って整列した加速度計124のような二つの垂直整列型加速度計で構築されている。加速度計122、124の各々が、枠128から複数のばね130によって懸吊されているプルーフ・マス126を含んでいる。プルーフ・マス126から細型電極132又はセンサが延在している。加えて、プルーフ・マス126から延在する電極132と平行に枠128から電極134又はセンサが延在している。加速度計120に接続された電子回路(図1)が、細型電極132と134との間のキャパシタンスの変化を感知する。この変化が及びプルーフ・マス126の変位及び加速度を示す。
【0029】
長さに沿って整列した加速度計122のプルーフ・マス126は、矢印136の方向の加速度によって変位される。幅に沿って整列した加速度計124のプルーフ・マス126は、矢印138の方向の加速度によって変位される。
【0030】
実施形態の一例として、加速度計120は、全体的な寸法が長さ方向(L)に2.25ミリメートル及び幅方向(W)に1.5ミリメートルである。加速度計122、124の寸法例は、長さ1.5ミリメートル、幅.5ミリメートル及び高さ.3ミリメートルであってよい。但し、これらの寸法は、本書に開示される電極に用いられる加速度計の寸法及び/又は構築の範囲を制限するものではない。
【0031】
図4(A)及び図4(B)は、本書に開示する電極と共に用いられる電子回路の代替的な各実施形態を全体的に示す。
【0032】
図4(A)では、電子回路200が電極202から隔設されている。前述のように、電極202は、複数のスパイク206を備えた微小電極204を含んでいる。微小電極204は、加速度計210を備えた基材208に接続されている。
【0033】
電子回路200は、加速度測定回路202及び生体電位増幅器214を含んでいる。実施形態の一例では、生体電位は脳電図(EEG)であるが、代替的な実施形態を用いて心電図(ECG)、筋電図(EMG)、又はその他任意の生体電位を取得してもよいことが理解される。
【0034】
加速度測定回路212は、第一の電気リード216を介して加速度計210に与えられる供給電圧を与える。供給電圧は例えば、100kHzの周波数にある正弦波である。かかる高周波電源は、本書に開示するような加速度計210の寸法及び構築に適する。供給電圧は加速度計210に供給されて、戻り信号が第二の電気リード218を通って電子回路200に返される。戻り信号は、微小電極204によって取得された生体電位信号と加速度計210からの加速度信号との両方を含む結合信号であってよい。結合信号は、加速度測定回路212及び生体電位増幅器214の両方に与えられる。本実施形態では、加速度計210に与えられる供給電圧が高周波数であるため、結合信号の加速度部分も高周波数を有するものとなる。一方、生体電位信号は、例えば.5Hz〜150Hzの低周波数範囲にある周波数内容を有する。従って、加速度測定回路212は、生体電位信号のような低周波数信号に対しては高インピーダンスとして現われるように設計され、生体電位増幅器214は、加速度信号のような高周波信号に対しては高インピーダンスとして現われるように設計される。これにより、電子回路200の内部で結合信号を加速度部分及び生体電位部分に実効的に分割し、これらの信号の各々を処理する。
【0035】
加速度測定回路212は、多様な方法で加速度計210の変位を測定することができる。加速度測定回路212は、加速度計210の各電極が互いに対する配向を変化させるときのキャパシタンス変化を測定することができる。代替的には、加速度測定回路212は、プルーフ・マスが変位するときに加速度計210の反対側に発生されるキャパシタンスの不均衡を測定することができる。さらに他の実施形態では、加速度測定回路212を用いて、プルーフ・マスの運動の相対的に低い周波数の信号を、結合信号の高周波(100kHz)部分の包絡線として検出することができる。
【0036】
図4(A)に示すように、第一の電気リード216及び第二の電気リード218が電子回路200を電極202に接続している。従って、第一の電気リード216及び第二の電気リード218の長さは、数センチメートルの長さから1メートル以上の長さにわたる任意の値であってよい。第一の電気リード216及び第二の電気リード218は、ケーブル形態にある線として具現化されることもできるし、代替的な実施形態では無線接続を用いてもよい。
【0037】
図4(B)は、本書に開示するような電子回路220及び電極222の代替的な実施形態を示す。
【0038】
電極222は、複数の導電性スパイク226を含む微小電極224を含んでいる。
【0039】
電極222はさらに、加速度計230が形成されている基材228を含んでいる。微小電極224と基材228との間に電気的隔離を提供するために、絶縁層232が微小電極224と基材228との間に接続されている。
【0040】
電子回路220は、加速度測定回路234及び生体電位増幅器236を含んでいる。電子回路220は電極222に機械的に且つ電子的に接続されている。図示の実施形態では、電子回路220は基材228に機械的に接続され、加速度計230は電気的接続238によって加速度測定回路234に電気的に接続されている。同様に、微小電極224は、電気的接続240によって生体電位増幅器236に電気的に接続されている。
【0041】
図4(C)は、本書に開示する電極及び電子回路のさらにもう一つの実施形態を示す。図4(A)及び図4(B)に関して上で開示したシステムとは対照的に、図4(C)のシステムは混成型の具現化形態を示しており、この具現化形態は、電子回路250を、電極254に機械的に接続された前端252と、前端252から一定の距離を隔てているが前端252及び電極254に依然として電気的に接続されている後端256とに分割している。
【0042】
後端256はAC電圧源258を含んでいる。AC電圧源258は、周波数例として約100kHz以上にあるAC電圧を前端電子回路252及び電極254へ供給する。後端電子回路256は、一実施形態では加速度信号データ及び生体電位信号データの両方を含む電極信号260を受ける。加速度信号データは、振幅変調型電流信号の形態にあってよい。
【0043】
従って、後端256の加速度測定電子回路226は、低周波数信号例えば生体電位に対しては高インピーダンスとして現われるように設計され得る。実施形態の一例によって、生体電位は.5Hz〜150Hzの周波数内容を有し得る。従って、加速度測定電子回路226の設計は、電極信号260が加速度測定電子回路262に入ると電極信号260から生体電位信号を実効的にフィルタ除去する。加速度測定電子回路262の内部では、分路抵抗器264及び増幅器266が、電極信号260の電流を処理する。出力は加速度検出器268に与えられ、加速度検出器268は一実施形態では振幅変調型電流信号の包絡線を評価することにより、感知された加速度を決定する。
【0044】
さらに、生体電位増幅器270が電極信号260に接続される。加速度測定電子回路262と反対に、生体電位増幅器270は、高周波信号に対して高インピーダンスとして現われるように設計されることができ、従って、生体電位増幅器270は電極信号260の生体電位信号部分のみを増幅する。代替的には、別個の加速度信号及び生体電位信号(図示されていない)を電極254から取得してもよい。
【0045】
電極254は、複数の導電性スパイク274を有する微小電極272を含んでいる。微小電極272は、加速度計278を内部に形成した基材276に接続される。電極254は、電圧供給280及び加速度回路282を含む前端電子回路252に接続される。電圧供給280は、整流器284及び可変電源284を含んでいる。可変電源284は、電圧制御式回路電源又は電圧制御式負荷として具現化され得る。可変電源286は加速度回路282から帰還ループにおいて電極信号260及び加速度信号288を受ける。可変電源286及び整流器284は、AC電源258によって与えられるAC供給電圧を処理する。可変電源286及び整流器284は、加速度計278に与えるのに適するものになるようにAC電力信号を調整する。さらに、加速度回路282は、加速度計278の加速度を検出するために発振器290及び増幅器292を含んでいる。加速度回路282は加速度信号288を発生し、加速度信号288は上述の帰還ループにおいて可変電源286へ戻される。
【0046】
加速度回路282は、多様な方法で加速度計278の変位を測定することができる。加速度回路282は、加速度計278の各電極(図示されていない)が互いに対する配向を変化させるときのキャパシタンス変化を測定することができる。代替的には、加速度回路282は、プルーフ・マスが変位するときに加速度計278の反対側に発生されるキャパシタンス不均衡を測定することができる。さらに他の実施形態では、検出器294を用いて、プルーフ・マスの運動の相対的に低い周波数の加速度信号を高周波供給電圧信号の包絡線として検出することができる。
【0047】
このように、図4(C)に示す実施形態では、電子回路250は前端電子回路252及び後端電子回路256に分割される。前端電子回路252は、例えば基材276に機械的に接続されることにより電極254に機械的に接続される。電極信号260は、リード線296によって電極254及び前端電子回路252から後端電子回路256へ与えられる。従って、前端電子回路252及び後端電子回路256の離隔距離は、数センチメートルから1メートルにわたり得る。この距離はリード線296によってカバーされ得る。代替的には、リード線296は、他の形態の結線接続及び/又は無線接続のような任意の形態の電気信号接続によって置き換えられてもよいことが理解される。
【0048】
電子回路のこの代替的な具現化形態は、生体電位信号の取得の点に近接した位置での改良型信号処理の利用を図っている。加速度計を電極と一体化することにより、加速度計によって検出される加速度は、生体電位取得時に電極が遭遇する運動の力に密接に類似したものとなる。この加速度は、患者の運動による運動アーティファクト及び電極自体の運動によるアーティファクトの両方を含む。電気リードを介した伝達の前に生体電位信号に改良型処理を施すことにより、リード線を横断する伝達から信号が運動アーティファクト又は他の電磁アーティファクトを蒙る蒙り易さが小さくなる。しかしながら、図4(B)に示すような各々の電極における完全な処理サーキットリの具現化形態では、完成後の電極の寸法、複雑さ、及び経費が増大し得る。従って、これらの実施形態の間での選択は、電極の特定の意図される用途又は応用に依存し得る。
【0049】
図5(A)〜図5(D)は、製造工程の様々な段階での本書に開示するような電極の代替的な実施形態を示す。
【0050】
電極300は、実質的にシリコン基材302として開始し、このシリコン基材302に窒化層304及びホウ素ドープ層306が堆積される。次に、水酸化カリウム(KOH)エッチングを用いて、シリコン基材302から電極空洞部308を切り出して形成する。電極空洞部308は、後に微小電極314となるものの開始点となる。加えて、水酸化カリウムでのエッチングをさらに用いて、後に加速度計312となるもののためのプルーフ・マス310をエッチングで切り出す。ホウ素ドープ層306は、周囲のシリコン基材302をエッチングで除去した後にプルーフ・マス310を所定位置に保持する。加えて、乾式エッチング法を用いて、ホウ素ドープ層306の部分318を除去して、後に微小電極314となるものと後に加速度計312となるものとの間に電気的隔離を形成する。
【0051】
図5(C)は、ホウ素ドープ層306に電気めっきされた微小電極314のスパイク316を示す。スパイク316は、信号変換特性及び低アレルギー誘発性のために銀又は銀/塩化銀によって電気めっきされる。
【0052】
プルーフ・マス310を支持するばね320が、ホウ素ドープ層306に堆積させられる。本実施形態では、堆積するばね320は多結晶シリコンで構築され得る。代替的には、ばね320は、バルク・シリコン基材302で構築されて、プルーフ・マス310を作製するのに用いられた水酸化カリウムでのエッチング工程時に作製されてもよい。
【0053】
1又は複数の電極322が、ホウ素ドープ層306に電気めっきされる。これらの電極322は、加速度時にプルーフ・マス310の変位を感知する電極である。
【0054】
最後に、六フッ化イオウ(SF)での乾式エッチングを用いて、スパイク付き電極316、ばね320、及び電極322が堆積し又は電気めっきされているホウ素ドープ層306の部分を選択的に除去する。ホウ素ドープ層306のこの除去によってプルーフ・マス310が解放されてばね320によって支えられるようになり、このようにして加速度の力によって運動可能になる。ばね320がエッチングされたバルク・シリコンで構築されるような代替的な実施形態では、ホウ素ドープ層306からの解放によって同様の効果を奏し、ばね320からプルーフ・マス310を懸吊する。
【0055】
図5に示す電極300は、図1のものと同様の水平型構成の電極の代替的な実施形態を詳細に示しているが、電極300は一体化型シリコン基材から構築されている一方、図1の電極10は個別に構築された構成要素の集合体であることを特記しておく。加えて、電極300の構築の以上の記載は、本書に開示するような電極を構築し得る工程を例示することのみを意図したものである。当業者は、限定のためでなく開示された方法の代替構成を認められよう。
【0056】
図6は、生体電位を測定する方法の実施形態の各ステップを示す流れ図400である。ブロック402及びブロック404において、生体電位が感知され、また電極の運動が感知される(ブロック404)。生体電位及び運動の両方が、同じ電極において同時に感知されて、このようにして生体電位が感知されたときの電極の実際の運動を密接に表わす運動信号を発生する。
【0057】
次に、ブロック406では、生体電位信号及び電極運動信号の両方を電子式制御器に与える。電子式制御器は、患者から数センチメートル〜数メートルの範囲内に位置し得る。
【0058】
次に、ブロック408では、電極運動信号を用いて生体電位を処理する。ブロック408での生体電位の処理は、電極運動信号を用いて運動アーティファクトが混入した生体電位の部分を識別するブロック410のステップを含み得る。生体電位の部分がアーティファクトが混入したものと識別されたら、ブロック412において混入した部分に標識して、生体電位の両方の部分が後の解析において無視されるか又は小さい加重を与えられるようにすることができる。生体電位の個々の部分に標識するのではなく、電子式制御器は、電極運動信号を用いて生体電位信号品質指標(indicy)を発生してもよい。生体電位信号品質指標は、取得されている生体電位の品質の進行中の表現であってよい。理解されるように、検出される運動アーティファクトの存在は、指標によって表現される信号品質を低下させる。ブロック414において、電極運動信号を用いて、混入した部分での関連する運動アーティファクトを相殺することができる。ブロック404において生体電位取得時の電極の実際の運動を密接に近似する電極運動信号を取得することにより、この電極運動信号を実効的に用いて、取得される生体電位の運動アーティファクトをフィルタ除去することができる。
【0059】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、またあらゆる当業者が本発明を製造して利用することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0060】
10 電極
12 底面基材
14 微小電極
16 加速度計
18 電子回路
19 絶縁層
20 線
22 スパイク付き電極
24 電極空洞部
26 シリコン
28 ホウ素ドープ層
30 ばね
32 電極
34 シャドウ・マスク
36 接点パッド
50 電極
52 加速度計
54 シリコン基材
56 ばね
58 電極
60 シャドウ・マスク
62 絶縁層
64 線
66 接点パッド
68 電子回路
70 スパイク付き電極
72 電気めっき
74 スルーホール
76 はんだバンプ
100 加速度計
102 プルーフ・マス
104 枠
106 ばね支持体
108、110 電極
112、114、116、118 電極の組
120 加速度計
122 長さに沿って整列した加速度計
124 幅に沿って整列した加速度計
126 プルーフ・マス
128 枠
130 ばね
132、134 細型電極
136、138 加速度の方向
200 電子回路
202 電極
204 微小電極
206 スパイク
208 基材
210 加速度計
212 加速度測定回路
214 生体電位増幅器
216 第一の電気リード
218 第二の電気リード
220 電子回路
222 電極
224 微小電極
226 スパイク
228 基材
230 加速度計
232 絶縁層
234 加速度測定回路
236 生体電位増幅器
238、240 電気的接続
250 電子回路
252 前端電子回路
254 電極
256 後端電子回路
258 AC電源
260 電極信号
262 加速度測定電子回路
264 分路抵抗器
266 増幅器
268 加速度検出器
270 生体電位増幅器
272 微小電極
274 スパイク
276 基材
278 加速度計
280 電源
282 加速度回路
284 整流器
286 可変電源
288 加速度信号
290 発振器
292 増幅器
294 検出器
296 リード線
300 電極
302 シリコン基材
304 窒化層
306 ホウ素ドープ層
308 電極空洞部
310 プルーフ・マス
312 加速度計
314 微小電極
316 スパイク付き電極
318 除去される部分
320 ばね
322 電極
400 流れ図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体電位信号の測定のための電極システム(10、50)であって、
基材(12、54)と、
該基材(12、54)に結合されており、複数の伝導性スパイク(22)を含む微小電極(14、70)と、
前記基材(12、54)に結合されている加速度計(16、52)と、
前記微小電極(14、70)に結合されている生体電位増幅器(214、236)と、
前記加速度計(16、52)に結合されている加速度測定回路(212、234)と
を備えた電極システム(10、50)。
【請求項2】
前記生体電位信号の品質を高めるために、前記微小電極(14、70)により得られる生体電位信号、及び前記加速度計(16、52)により得られる加速度信号を処理する電子回路(18、62、200)をさらに含んでいる請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電子回路(18、62、200)は、前記加速度信号を用いて前記生体電位信号の運動アーティファクト混入部分を識別する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の伝導性スパイク(22)は銀皮膜又は銀/塩化銀皮膜(72)を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記加速度計(16、52)は第一の加速度計(122)であり、第二の加速度計(124)をさらに含んでおり、該第一及び第二の加速度計(122、124)の両方が前記基材(12、54)と機械的に一体化されており、前記第一の加速度計(122)及び前記第二の加速度計(124)は、前記基材(12、54)において、少なくとも二つの直交する方向での加速度を測定するように配向されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電極システム(10、50)は脳電図(EEG)生体電位を測定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記生体電位増幅器(214、236)及び前記加速度測定回路(212、234)は、前記基材(12、54)から機械的に分離されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記生体電位増幅器(214、236)及び前記加速度測定回路(212、234)は、前記微小電極(14、70)と前記生体電位増幅器(214、236)と前記加速度測定回路(212、234)との間で少なくとも1本のリード線(20)を共有している、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記生体電位増幅器(214、236)及び前記加速度測定回路(212、234)は、前記基材(12、54)と一体化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記微小電極(14、70)と前記基材(12、54)との間に配設された絶縁層(19、62)をさらに含んでいる請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4(A)】
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【図4(B)】
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【図4(C)】
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【図5(A)】
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【図5(B)】
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【図5(C)】
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【図5(D)】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194240(P2011−194240A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−82251(P2011−82251)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】