説明

運動案内装置

【課題】加工誤差に起因して負荷分布が不均一となる影響を小さくする。
【解決手段】運動案内装置10は、長手方向に沿って転動体転走溝11aが形成される軌道レール11と、転動体転走溝11aに対向する負荷転動体転走溝25が形成される移動ブロック21と、転動体転走溝11aと負荷転動体転走溝25とによって構成される負荷転動体転走路32内に転動自在に設置される複数のボール12とを有し、移動ブロック21が軌道レール11の長手方向で往復運動自在とされる装置である。そして、負荷転動体転走路32は、2経路の負荷転動体転走路32,32が近接且つ並列配置されることによって1組の複列負荷転動体転走路36を形成するように構成されており、この複列負荷転動体転走路36は、組を成す2経路の負荷転動体転走路32,32同士でボール12との接触角θ1,θ2が互いに異なるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動案内装置に係り、特に、加工誤差に起因して負荷分布が不均一となる影響を小さくすることのできる運動案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械の直線運動部を軽く正確に動かす機械要素部品として、例えば図22および図23に示すごとき運動案内装置が知られている。この種の運動案内装置の構成について、図22および図23を用いて説明すると、従来技術に係る運動案内装置40は、軌道レール41と、軌道レール41に多数の転動体として設置されるボール42…を介して往復運動自在に取り付けられた移動ブロック43とを備えて構成されている。軌道レール41はその長手方向と直交する断面が概略矩形状に形成された長尺の部材であり、その表面(上面および両側面)にはボール42が転がる際の軌道となる転動体転走溝41a…が軌道レール41の全長に渡って形成されている。なお、軌道レール41は、直線的に伸びるように形成されることもあるし、曲線的に伸びるように形成されることもある。
【0003】
一方、移動ブロック43は、金属材料から成る移動ブロック本体部43aと、移動ブロック本体部43aにおける移動方向の両端面に対して設置される樹脂材料から成る一対のエンドプレート43b,43bとから構成されている。移動ブロック本体部43aには、転動体転走溝41a…とそれぞれ対応する位置に負荷転動体転走溝43c…が設けられている。軌道レール41の転動体転走溝41a…と移動ブロック本体部43aに形成された負荷転動体転走溝43c…とによって負荷転動体転走路52…が形成され、この通路に導入された複数のボール42…は、負荷を受けながら転走することになる。また、移動ブロック本体部43aは、負荷転動体転走溝43c…と平行に延びる無負荷転動体転走路53…を備えている。さらに、一対のエンドプレート43b,43bのそれぞれには、各無負荷転動体転走路53…と各負荷転動体転走路52…とを結ぶ方向転換路55…が設けられている。1つの負荷転動体転走路52および無負荷転動体転走路53と、それらを結ぶ一対の方向転換路55,55との組み合わせによって、1つの無限循環路が構成されることとなる(図23参照)。
【0004】
そして、複数のボール42…が負荷転動体転走路52と無負荷転動体転走路53と一対の方向転換路55,55とから構成される無限循環路に無限循環可能に設置されることにより、移動ブロック43の軌道レール41に対する相対的な往復運動が可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時の産業界にあっては上述した運動案内装置の適用範囲を拡大したいとする要請が存在しており、装置メーカーに対しては、案内精度をさらに向上させた運動案内装置を市場に提供することが求められてきている。かかる要請の一例として、例えばこれまで一般的な用途では問題とならなかった、ウェービング現象と呼ばれる移動ブロックの姿勢変化や振動(脈動)等についても極小化を求められる場合がある。そして、この種の案内精度向上を図るための従来の対策としては、例えばボールの負荷域である負荷転動体転走路52から無負荷域である方向転換路55においてボール42をスムーズに移動させるために、加工技術の向上によって装置部品の寸法精度向上を図ったり、あるいは方向転換路55の入口においてクラウニング形状を設けたり、さらにはこのクラウニング形状の最適化を図ったりする等といった取り組みがなされてきた。
【0006】
しかしながら、上述したような既存形状の僅かな設計変更や加工技術の最適化を図る観点からの改良には限界があり、運動案内装置を高精度化するための新たな改良技術の創出が求められていた。
【0007】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、運動案内装置の高精度化を図ることのできる新たな改良技術を提供することによって、従来技術に比べてさらなる高精度化を実現した運動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る運動案内装置は、長手方向に沿って転動体転走溝が形成される軌道レールと、前記転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝が形成される移動ブロックと、前記転動体転走溝と前記負荷転動体転走溝とによって構成される負荷転動体転走路内に転動自在に設置される複数のボールと、を有することにより、前記移動ブロックが前記軌道レールの長手方向で往復運動自在とされる運動案内装置であって、前記負荷転動体転走路は、2経路の負荷転動体転走路が近接且つ並列配置されることによって1組の複列負荷転動体転走路を形成するように構成され、前記複列負荷転動体転走路は、組を成す2経路の負荷転動体転走路同士でボールとの接触角が互いに異なるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る運動案内装置において、前記複列負荷転動体転走路は、運動案内装置に加わる荷重の方向に応じて、組を成す2経路のうちのいずれか一方の負荷転動体転走路が、ボールからの負荷を主として受容するメイン経路として機能し、組を成す2経路のうちのいずれか他方の負荷転動体転走路が、ボールからの負荷を補助的に受容するサブ経路として機能するように構成することができる。
【0010】
上記本発明に係る運動案内装置では、当該運動案内装置が荷重を受けた際に、前記メイン経路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記サブ経路内のボールが接点変動を起こすことによって前記メイン経路とメイン経路内にあるボールとの隙間が解消され、前記サブ経路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記メイン経路とメイン経路内にあるボールとが協働して前記荷重を受容するように構成することができる。
【0011】
また、本発明に係る別の運動案内装置において、前記複列負荷転動体転走路は、組を成す2経路のうちのいずれか一方の負荷転動体転走路におけるボールとの接触角θ1が、45°<θ1<90°なる不等式を満たすように構成され、組を成す2経路のうちのいずれか他方の負荷転動体転走路におけるボールとの接触角θ2が、0°<θ2<45°なる不等式を満たすように構成することができる。
【0012】
上記本発明に係る別の運動案内装置では、当該運動案内装置が荷重を受けた際に、前記一方の負荷転動体転走路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記他方の負荷転動体転走路内のボールが接点変動を起こすことによって前記一方の負荷転動体転走路と当該一方の負荷転動体転走路内にあるボールとの隙間が解消され、前記他方の負荷転動体転走路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記一方の負荷転動体転走路と当該一方の負荷転動体転走路内にあるボールとが協働して前記荷重を受容するように構成することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る運動案内装置では、前記負荷転動体転走路を8経路設けることが好適である。
【0014】
またさらに、本発明に係る運動案内装置では、前記複数のボールが前記軌道レールのレール幅の1/10以下の直径にて構成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加工誤差に起因して負荷分布が不均一となる影響を小さくすることができるので、複数の転動体が循環する無限循環路のより一層の精度向上を図ることができる。これにより、従来技術に比べて案内精度を向上させた新たな運動案内装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る運動案内装置を説明するための部分破断斜視図である。また、図2は、本実施形態に係る運動案内装置の部分縦断面正面図であり、紙面右側が外観を、紙面左側が長手方向と直交する断面を示している。さらに、図3は、本実施形態に係る運動案内装置の部分破断側面図である。本実施形態に係る運動案内装置10は、長手方向に延びて形成される軌道レール11と、この軌道レール11に複数のボール12を介して相対移動自在に組み付けられる移動ブロック21と、から構成されている。
【0018】
運動案内装置10を構成する部材の概略を説明すると、軌道レール11はその長手方向と直交する断面が概略横長の矩形にて形成された長尺の部材であり、その表面(上面および両側面)にはボール12が転がる際の軌道となる転動体転走溝11a…が、軌道レール11の全長に渡って形成されている。
【0019】
また、本実施形態に係る軌道レール11については、上面に4条、両側面に2条ずつ、合計8条の転動体転走溝11a…が形成されている。8条の転動体転走溝11a…は、それぞれ2条ずつが1つの組となるように、2条の転動体転走溝11a,11aが近接、且つ、並列するように形成されており、特に、軌道レール11の上面に形成された4条の転動体転走溝11a…については、各組が上面の両外側に寄せられた位置に配置されている。上面の両外側に寄せられた2条の転動体転走溝11a,11aの組と、これらの組に近接する側面に形成された2条の転動体転走溝11a,11aから成る各組とは、それぞれが軌道レール11の上側のコーナー部を挟んで対応する位置に配置されている。なお、本実施形態に係る軌道レール11の場合についても、従来技術の場合と同様に、図1にて示すような直線的な形状で形成されても良いし、一定の曲率を持って曲線的に形成されても良い。
【0020】
一方、移動ブロック21は、金属材料から成る移動ブロック本体部22と、移動ブロック本体部22における移動方向の両端面に対して合計8個(図1では、2個のみ見えている)設置される戻し部材23と、移動ブロック本体部22における相対移動方向の両端面に対して戻し部材23を覆って取り付けられる一対のエンドプレート24,24と、を備えて構成されている。
【0021】
ここで、本実施形態に係る移動ブロック本体部22の構成を説明するための外観正面図としての図4を示す。図4にてより詳細に示されるように、本実施形態に係る移動ブロック本体部22は、軌道レール11に形成された転動体転走溝11aと協働して負荷転動体転走路32を形成する負荷転動体転走溝25を、組み付け時における軌道レール11との対向面に有している。また、負荷転動体転走溝25から所定間隔離れた位置には、負荷転動体転走溝25に対して平行して貫通する貫通孔26が設けられている。
【0022】
この移動ブロック本体部22に貫通形成された貫通孔26は、2つの樹脂材料から成る分割体27a,27bを組み合わせることによって形成される樹脂部材27を導入設置するためのものである(図1および図2も併せて参照)。第1の分割体27aには、無負荷転動体転走路33の一部を構成する2つの溝が形成されており、一方、第2の分割体27bには、無負荷転動体転走路33の残りの部分を構成する2つの溝が形成されている。そして、第1の分割体27aおよび第2の分割体27bを組み合わせて樹脂部材27を形成することにより、樹脂部材27の中央部には上述した溝が組み合わさることによって2列の無負荷転動体転走路33,33が完成する。
【0023】
さらに、図2に示すごとく貫通孔26に対して樹脂部材27を導入設置することにより、転動体転走溝11aと負荷転動体転走溝25とによって形成される負荷転動体転走路32と平行配置された無負荷転動体転走路33が形成されることとなる。
【0024】
なお、本実施形態に係る無負荷転動体転走路33は、後述するウェービング現象の極小化等を考慮して、近接、且つ、並列配置される2条の転走路の組で構成されたものであるので、移動ブロック本体部22に貫通形成された貫通孔26を利用して、樹脂材料から成る樹脂部材27に対して無負荷転動体転走路33を2条形成して導入する構成は、加工が容易で安価であるという効果も有しており、非常に好適な構成である。
【0025】
次に、戻し部材23の構成について、図5を用いて説明を行う。なお、図5は、本実施形態に係る戻し部材23を説明するための図であり、図中(a)は移動ブロック本体部22との接触面を示し、図中(b)は移動ブロック本体部22の取付面に対して垂直に立設する面を示し、図中(c)は(b)の面と隣り合う面を示している。
【0026】
本実施形態に係る戻し部材23は、移動ブロック本体部22における相対移動方向の両端面に取り付けられる部材であり、戻し部材23における移動ブロック本体部22との接触面には、2つの突起形状が形成されている。戻し部材23に形成される一方の突起は、移動ブロック本体部22に形成された凹部28(図2および図4参照)に嵌り込む凸部23aであり、戻し部材23に形成されるもう一方の突起は、樹脂部材27に形成された半円柱形状をした係止溝29(図2参照)に嵌り込む係止凸部23bである。特に、凹部28と凸部23a、係止溝29と係止凸部23bとは、形成される位置が厳密に規定されており、戻し部材23の移動ブロック本体部22に対する設置位置は、非常に精度の高いものになっている。また、係止溝29と係止凸部23bとは、半円柱形状を利用した嵌め合い構造となっているので、移動ブロック本体部22に対する戻し部材23と樹脂部材27との回り止めや位置決めとしての好適な作用を発揮することが可能となっている。
【0027】
さらに、本実施形態に係る戻し部材23には、移動ブロック本体部22に設置された際に、負荷転動体転走路32の一部と無負荷転動体転走路33の一部をつなぐ内周側方向転換溝35aが形成されている。この内周側方向転換溝35aについては、凹部28と凸部23a、係止溝29と係止凸部23bとの作用によって、負荷転動体転走路32の一部と無負荷転動体転走路33の一部とを非常に精度良く連絡することができているので、後述するエンドプレート24側に形成された外周側方向転換溝35bと協働して方向転換路35を形成した際に、負荷転動体転走路32と無負荷転動体転走路33との連結が段差なく実現できる。
【0028】
なお、本実施形態に係る戻し部材23の移動ブロック本体部22に対する確実な固定は、例えば戻し部材23に形成されたねじ孔等の固定手段を用いることで、より強固な固定状態を実現することができる。
【0029】
続いて、図6を用いて本実施形態に係るエンドプレート24の構成を説明する。本実施形態に係るエンドプレート24は、移動ブロック本体部22における相対移動方向の両端面に対して戻し部材23を覆って取り付けられる部材である。そして、エンドプレート24は、移動ブロック本体部22との取付面側に外周側方向転換溝35bが形成されており、この外周側方向転換溝35bと戻し部材23の内周側方向転換溝35aとが協働することによって、負荷転動体転走路32と無負荷転動体転走路33とをつなぐ方向転換路35を形成することが可能となっている。なお、このエンドプレート24に形成される外周側方向転換溝35bについては、戻し部材23の内周側方向転換溝35aほどの寸法精度は要求されず、ある程度の遊び代を持って形成することが、取り付けの容易化等の面から好適である。なお、無限循環路の寸法精度については、戻し部材23の内周側方向転換溝35aの側で厳密な精度出しが行われているので問題ない。
【0030】
以上説明した各部材を組み付けることによって、負荷転動体転走路32、無負荷転動体転走路33、および一対の方向転換路35,35が形成され、これらの転走路によって形成される無限循環路に配置された複数のボール12が、軌道レール11に対する移動ブロック21の相対移動に伴って無限循環路内を循環することとなる。
【0031】
ここで、本実施形態に係る運動案内装置10の転動体転走溝11a,11aが上記のように近接、且つ、並列する2条の転走溝の組単位で構成されるのは、ウェービング現象の極小化といった運動案内装置10の高精度化を目的としたことを理由としている。
【0032】
また、本実施形態で採用されるボール12には、一般的な運動案内装置に比べて小径(具体的には、軌道レール11のレール幅の1/10以下の直径)のものが採用されており、ボール12の設置個数を従来技術に係る運動案内装置に比べて増加させている。このような構成を採用した理由は、「ボールの小径化」によって、運動案内装置10に設置されるボール12の個数を増加させることができるので、ボール1個当たりに対する荷重あるいは面圧を下げるといった有意な作用効果を得ることができるからである。かかる作用効果によって、運動案内装置10における運動精度の向上(例えば、移動ブロック21の姿勢変動や振動(脈動)の極小化)が実現する。
【0033】
さらに、「ボールの小径化」は、転動体転走溝11aや無負荷転動体転走路33の寸法を小さくできることから移動ブロック21の体積増加にも寄与するので、移動ブロック21の剛性が向上し、かかる点からも運動案内装置10の精度向上が実現されることとなる。
【0034】
そして、これらの知見は、本出願人が有する研究施設で行われた独自の数値解析によって明らかとなったものである。そこで、次に、この独自の数値解析の内容について、詳細な説明を行うこととする。
【0035】
図7に、数値解析で定義された運動案内装置の座標系を示す。本数値解析で想定する外部荷重は、図7に示すように運動案内装置の中心にとられた座標原点に作用するものとし、その座標原点におけるウェービング値を算出することとしている。また、z軸方向、つまり鉛直方向ウェービングに焦点をあてて解析が行われている。
【0036】
さらに、数値解析では、5種類の型番(#15,#25,#45,#55,#65であり、それぞれの数字が軌道レールの幅方向寸法(単位mm)を示している)を対象にボール径と移動ブロックの負荷転動体転走溝長さを変化させて、各々のボール径、移動ブロックの負荷転動体転走溝長さに対して最適なクラウニング形状を付与させたときのウェービング値を算出している。このときの外部荷重は0.1Cの純ラジアル荷重であり、最適クラウニング深さはクラウニングを付与しない状態で0.1Cの純ラジアル荷重を作用させたときの最大ボール弾性変形量の値とした。また、クラウニング形状は、直線クラウニングとしている。数値解析の解析条件の詳細を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
以上の条件での数値解析を実施した結果、図8乃至図12に示すような解析結果を得た。ここで、図8乃至図12は、各型番(#15,#25,#45,#55,#65)において負荷転動体転走溝長さ基準値ltを変化させたときのボール径とウェービング値との関係を示す図である。なお、図8乃至図12中において製品A,製品Bと表記されるものは、出願人が製造販売している従来の運動案内装置の製品シリーズを例示するものであり、かかる製品シリーズごとで従来から使用されているボール径(Da)を縦方向の線分を引くことによって参考値として示している。
【0039】
そして、図8乃至図12で示される数値解析結果から分かったことは、いずれの負荷転動体転走溝長さ基準値ltであっても、ボール径が小さくなれば小さくなるほどウェービング値が小さくなるということであった。
【0040】
また、上記知見を得たことから、さらに運動案内装置に加わる外部荷重の違いによる影響を把握するために、型番#25、負荷転動体転走溝長さ基準値lt=100のときに、外部荷重を0.10Cから0.50Cで変化させた場合のボール径とウェービング値との関係を求めた。その解析結果が、図13に示されている。図13から分かるとおり、外部荷重が大きければ大きいほどウェービング値が大きくなることは予想されたことであったが、一方で、どのような大きさの外部荷重であっても、ボール径が小さくなれば小さくなるほどウェービング値が小さくなるという傾向に変わりはないことが明らかとなった。
【0041】
以上の結果を得たことから、本出願人は、ウェービング精度が0.01μm〜0.05μmの超精密運動案内装置、あるいはウェービング精度が0.01μm以下の超々精密運動案内装置を想定した場合の最適なボール径を求めるために、図8乃至図12で示した数値解析結果の波形を拡大し、ウェービング値が0.05μm以下となっている場合のウェービング値とボール径との関係を求めることとした。その結果を、図14乃至図18に示す。
【0042】
そして、図14乃至図18で示される解析結果から、図14乃至図18の波形は、図中の縦方向の破線で示される箇所が変化点となり、この破線より左側のボール径が大きい方でウェービング値の変化が大きく(すなわち、ボール径小径化の影響が大きいことを示している)、破線より右側ではウェービング値の変化が小さいことが分かった(すなわち、破線の値よりボール径を小さくしてもウェービング値の抑制には影響が少ない)。
【0043】
さらに、図14乃至図18で示される解析結果から分かったこととして、型番#15の場合はボール径が1.5mmより小さくなるとウェービング値が安定して小さくなり、型番#25の場合はボール径が3.0mmより小さくなるとウェービング値が安定して小さくなり、型番#45の場合はボール径が4.5mmより小さくなるとウェービング値が安定して小さくなり、型番#55の場合はボール径が5.7mmより小さくなるとウェービング値が安定して小さくなり、型番#65の場合はボール径が6.5mmより小さくなるとウェービング値が安定して小さくなるということが挙げられる。
【0044】
この結果をボールの直径と軌道レールの幅との関係として整理すると、型番#15の場合はボールの直径が軌道レールの幅の1/10となったときに上記変化点が現れ、型番#25の場合はボールの直径が軌道レールの幅の1/8.33となったときに上記変化点が現れ、型番#45の場合はボールの直径が軌道レールの幅の1/10となったときに上記変化点が現れ、型番#55の場合はボールの直径が軌道レールの幅の1/9.65となったときに上記変化点が現れ、型番#65の場合はボールの直径が軌道レールの幅の1/10となったときに上記変化点が現れることが明らかとなった。しかもこれらの結果は、全ての型番を総合しても、その変化点が0.008μm〜0.002μm以下のウェービング値を満足するものであり、ボールの直径が軌道レールの幅の1/10以下となるように運動案内装置を構成すれば、ウェービング精度が0.01μm以下の超々精密運動案内装置を実現できることを示している。
【0045】
なお、図14乃至図18で示される解析結果から、ボール径の下限値については小さければ小さいほどウェービング値を抑制する方向になることが明らかであり、製造技術上の制約が存在しなければ、ボール径は限りなく0(ゼロ)に近い値であればあるほど良いことが予想される。ただし、現時点での製造技術を鑑みると、現実的なボール直径の下限値は、0.7mm〜0.5mm程度であるとすることができる。
【0046】
さらに、本出願人の研究者らは、ボール径を小径化することによる定格荷重の低下に対する対策として、無限循環路の条数Lを増加させることを着想し、その効果を検証することとした。
【0047】
具体的な検証方法としては、下記表2に示すように、出願人が従来から製造販売しているSNS45という製品シリーズの運動案内装置を用い、従来品であるSNS45と、SNS45のボールを小径化したもの(すなわち、ボールの直径が軌道レールの幅の1/10以下となるようにしたものであり、無限循環するボールの条数は4条である)、およびSNS45でボールを小径化するとともに無限循環するボールの条数を8条としたもの、という3つのタイプの製品を想定した。そして、それぞれのタイプの製品ごとに、基本動定格荷重(Basic dynamic load rating)、ウェービング値(Waving amplitude)、およびラジアル方向変位(Radial displacement)を解析ソフトによって算出した。その解析結果を、表2および図19に示す。なお、図19は、表2で示した解析結果をタイプごとに比較するために折れ線グラフで表した図である。
【0048】
【表2】

【0049】
その結果、従来品であるSNS45と、SNS45のボールを小径化したものとを比べると、SNS45のボールを小径化したものは、ウェービング値とラジアル方向変位が低下(改善)しているものの、基本動定格荷重も同時に低下(悪化)しており、運動案内装置としての案内能力の低下が危惧される。
【0050】
しかし、SNS45でボールを小径化するとともに無限循環するボールの条数を8条としたものについては、SNS45のボールを小径化したのみのものと比較して、さらにウェービング値とラジアル方向変位が低下(改善)しながらも、基本動定格荷重が非常に向上(良化)している。この解析結果から、「ボールの小径化」と「それぞれが2条ずつの組を成す合計8条の転動体転走溝」といった2つの特徴を組み合わせた形式の運動案内装置は、従来と同程度の運動案内機能(基本動定格荷重)を維持しながらも、運動精度が飛躍的に向上するという、非常に有意な効果を発揮できることが明らかとなった。
【0051】
なお、無限循環するボールの条数については、バランスのとれた安定走行可能な運動案内装置を得ることを考慮して、無限循環するボールの条数をL=4×N(Nは2以上の自然数)となるように構成することが好適であると考えられる。ただし、条数Lの現実的な値については、上記数式を満足するものであれば良いのであるが、ISO準拠の運動案内装置を想定した場合の値として、条数Lを8とすることが好ましいであろう。
【0052】
以上の内容をまとめると、運動案内装置に用いられるボールの小径化、具体的にはボールの直径が軌道レールの幅の1/10以下となるように構成することによって、ウェービングの発生を極小化できることが明らかとなった。
【0053】
また、無限循環するボールの条数の多条化、具体的にはボールの条数LをL=4×N(Nは2以上の自然数)となるように、より好ましくはL=8となるように構成することによって、運動案内装置に用いられるボールの個数が増加し、ボールの小径化によって危惧された定格荷重の低下を防止することが可能となった。さらに、ボールの条数の多条化には、ウェービングの発生を抑制する効果があることも明らかとなった(図19参照)。
【0054】
なお、「ボールの小径化」と「条数の多条化」は、ISO準拠の移動ブロック長を維持しながらも、上述したボール設置個数を増加させることにつながっている。したがって、「ボールの小径化」と「条数の多条化」との相乗効果による運動精度の向上と、規格内での運動案内装置の実現による適用範囲拡大要請の実現が、同時に実現されている。
【0055】
以上、好適な作用効果を発揮させることができる運動案内装置10の主要な構成について説明を行ったが、本実施形態に係る運動案内装置10は、さらに有意な作用効果を発揮することのできる構成を備えている。そこで、図20および図21を用いることによって、かかる有意な構成について説明することとする。
【0056】
図20は、本実施形態に係る運動案内装置10を軌道レール11の長手方向に直交する断面で見た場合の縦断面図である。すでに上述したように、本実施形態に係る軌道レール11では、8条の転動体転走溝11a…のそれぞれ2条ずつが1つの組となるように、2条の転動体転走溝11a,11aが近接、且つ、並列するように形成されている。つまり、本実施形態に係る運動案内装置10が有する負荷転動体転走路32については、2経路の負荷転動体転走路32,32が近接且つ並列配置されることによって、1組の複列負荷転動体転走路36が形成されている。そして、これら合計4組の複列負荷転動体転走路36については、組を成す2経路の負荷転動体転走路32,32同士でボール12との接触角θ1,θ2が互いに異なるように構成されているという特徴を有している。
【0057】
この複列負荷転動体転走路36の構成について、図20に示された軌道レール11の紙面右側に形成された複列負荷転動体転走路36を例にとって具体的に説明すると、軌道レール11の上面右側に形成された複列負荷転動体転走路36では、軌道レール11の中央側(図20における紙面左側)に位置する負荷転動体転走路32とボール12との接触角θ1が60°にて構成されており、軌道レール11の外側(図20における紙面右側)に位置する負荷転動体転走路32とボール12との接触角θ2は30°にて構成されている。また、軌道レール11の右側側面に形成された複列負荷転動体転走路36では、軌道レール11の下方側(図20における紙面下側)に位置する負荷転動体転走路32とボール12との接触角θ1が60°にて構成されており、軌道レール11の上方側(図20における紙面上側)に位置する負荷転動体転走路32とボール12との接触角θ2は30°にて構成されている。なお、図20に示された軌道レール11の紙面左側(上面左側と左側側面)に形成された2組の複列負荷転動体転走路36については、上述した紙面右側にある2組の複列負荷転動体転走路36と、軌道レール11の中心垂線Cに対して線対称に形成されている。
【0058】
本実施形態に係る運動案内装置10は、以上のように組を成す2経路の負荷転動体転走路32,32がそれぞれ異なる接触角θ1,θ2を有して構成されているので、運動案内装置10に加わる荷重の方向に応じて最適な負荷の受容が可能となっている。すなわち、図20にて示す運動案内装置10に対してラジアル方向および逆ラジアル方向から荷重が加わる場合には、2経路の負荷転動体転走路32,32のうち、接触角θ1=60°にて形成される側の負荷転動体転走路32がボール12からの負荷を主として受容するメイン経路として機能し、接触角θ2=30°にて形成される側の負荷転動体転走路32については、ボール12からの負荷を補助的に受容するサブ経路として機能することとなる。一方、水平方向から荷重が加わる場合には、2経路の負荷転動体転走路32,32のうち、接触角θ2=30°にて形成される側の負荷転動体転走路32がボール12からの負荷を主として受容するメイン経路として機能し、このとき接触角θ1=60°にて形成される側の負荷転動体転走路32については、ボール12からの負荷を補助的に受容するサブ経路として機能することとなるのである。このように、本実施形態に係る運動案内装置10では、組を成す2経路の負荷転動体転走路32,32間でボール12との接触角が異なるように構成したので、運動案内装置10に加わるあらゆる方向の荷重に対する最適な負荷の受容が可能となっている。
【0059】
また、異なる接触角を有する上記構成については、負荷転動体転走路32の加工の際に存在する加工誤差に起因する案内精度低下影響を、極力小さくすることができるという作用効果をも発揮することができる。そこで、この作用効果の原理について、図21を用いて説明を行う。
【0060】
例えば、負荷転動体転走路32の形成精度は、転動体転走溝11aや負荷転動体転走溝25の位置精度、あるいはこれらの溝形状の寸法精度に依存して決定されることとなる。そして、これらの加工に加工誤差が含まれる場合、この加工誤差に起因して運動案内装置に加わる負荷分布は不均一となり、案内精度の低下や装置寿命の低下を招くことになってしまう。しかし、加工誤差の極小化と加工コストの削減は相反するものであり、しかも加工誤差の完全な解消には限界があるので、加工誤差が存在したとしてもその加工誤差の影響を極力小さくすることのできる技術が求められていた。そして、かかる課題の存在を認識していた発明者らは、鋭意努力した結果、上述した組を成す2経路の負荷転動体転走路32,32間でボール12との接触角が異なるように構成することによって、上記課題を解消することができることを確認したのである。
【0061】
すなわち、負荷転動体転走路32に加工誤差が含まれていることに起因して、図21中の(a)で示されるように、メイン経路内のボール12が隙間を持った接触状態にあるときには、このまま図21(a)の状態が続けばボール12や負荷転動体転走路32に加わる負荷が不均一となり、上述したような案内精度の低下や寿命の低下等の不具合が発生することとなる。しかしながら、本実施形態に係る運動案内装置10では、メイン経路内のボール12が隙間を持った接触状態にあると、図21中の(b)に示すようにサブ経路内のボール12が接点変動を起こすことになるので、その結果、メイン経路とメイン経路内にあるボール12との隙間が解消され、適切な接触状態が実現することになるのである。このような作用は、近接且つ並列配置される2経路の負荷転動体転走路32,32同士で異なる接触角θ1,θ2を持つように構成されていることから実現されたものであり、従来技術にない新たな構成に基づく有意な作用効果である。
【0062】
一方、サブ経路内のボール12が隙間を持った接触状態にあるときには、メイン経路とメイン経路内にあるボール12とが協働して荷重を適切に受容することとなる。つまり、サブ経路に含まれる加工誤差については、元来、運動案内装置10の定格荷重はメイン経路に依存しているので、この場合については加工誤差の影響は小さいままとなるのである。
【0063】
なお、図20および図21で例示した接触角θ1,θ2の組合せは、θ1=60°,θ2=30°であったが、その他の組合せであっても同様の作用効果を発揮することが可能である。例えば、θ1=50°,θ2=40°や、θ1=55°,θ2=35°といった組合せが可能であり、本発明者らの鋭意努力によって、本発明の複列負荷転動体転走路については、組を成す2経路のうちのいずれか一方の負荷転動体転走路におけるボールとの接触角θ1が、45°<θ1<90°なる不等式を満たすように構成され、組を成す2経路のうちのいずれか他方の負荷転動体転走路におけるボールとの接触角θ2が、0°<θ2<45°なる不等式を満たすように構成されることができることを確認している。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。例えば、上述した実施形態の形状は、本発明の一適用例を示すものであり、上述した作用効果を発揮可能な構成を有する範囲内にて多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る運動案内装置を説明するための部分破断斜視図である。
【図2】本実施形態に係る運動案内装置の部分縦断面正面図であり、紙面右側が外観を、紙面左側が長手方向と直交する断面を示している。
【図3】本実施形態に係る運動案内装置の部分破断側面図である。
【図4】本実施形態に係る移動ブロック本体部の構成を説明するための外観正面図である。
【図5】本実施形態に係る戻し部材を説明するための図であり、図中(a)は移動ブロック本体部との接触面を示し、図中(b)は移動ブロック本体部の取付面に対して垂直に立設する面を示し、図中(c)は(b)の面と隣り合う面を示している。
【図6】本実施形態に係るエンドプレートの構成を説明するための図である。
【図7】数値解析で定義された直動案内装置の座標系を示す図である。
【図8】型番#15において負荷転動体転走溝長さ基準値ltを変化させたときのボール径とウェービング値との関係を示す図である。
【図9】型番#25において負荷転動体転走溝長さ基準値ltを変化させたときのボール径とウェービング値との関係を示す図である。
【図10】型番#45において負荷転動体転走溝長さ基準値ltを変化させたときのボール径とウェービング値との関係を示す図である。
【図11】型番#55において負荷転動体転走溝長さ基準値ltを変化させたときのボール径とウェービング値との関係を示す図である。
【図12】型番#65において負荷転動体転走溝長さ基準値ltを変化させたときのボール径とウェービング値との関係を示す図である。
【図13】型番#25、負荷転動体転走溝長さ基準値lt=100のときに、外部荷重を0.10Cから0.50Cで変化させた場合のボール径とウェービング値との関係を示す図である。
【図14】図8で示した数値解析結果の波形を拡大することによって、更なるウェービング値とボール径との関係を明らかにした図である。
【図15】図9で示した数値解析結果の波形を拡大することによって、更なるウェービング値とボール径との関係を明らかにした図である。
【図16】図10で示した数値解析結果の波形を拡大することによって、更なるウェービング値とボール径との関係を明らかにした図である。
【図17】図11で示した数値解析結果の波形を拡大することによって、更なるウェービング値とボール径との関係を明らかにした図である。
【図18】図12で示した数値解析結果の波形を拡大することによって、更なるウェービング値とボール径との関係を明らかにした図である。
【図19】表2で示した解析結果をタイプごとに比較するために折れ線グラフで表した図である。
【図20】本実施形態に係る運動案内装置を軌道レールの長手方向に直交する断面で見た場合の縦断面図である。
【図21】本実施形態に係る運動案内装置が発揮することのできる作用効果の原理を説明するための図である。
【図22】従来技術に係る運動案内装置の一形態を例示する外観斜視図である。
【図23】図22で示した従来技術に係る運動案内装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 運動案内装置、11 軌道レール、11a 転動体転走溝、12 ボール、21 移動ブロック、22 移動ブロック本体部、23 戻し部材、23a 凸部、23b 係止凸部、24 エンドプレート、25 負荷転動体転走溝、26 貫通孔、27 樹脂部材、27a,27b 分割体、28 凹部、29 係止溝、32 負荷転動体転走路、33 無負荷転動体転走路、35a 内周側方向転換溝、35b 外周側方向転換溝、36 複列負荷転動体転走路、40 従来技術に係る運動案内装置、41 軌道レール、41a 転動体転走溝、42 ボール、43 移動ブロック、43a 移動ブロック本体部、43b エンドプレート、43c 負荷転動体転走溝、52 負荷転動体転走路、53 無負荷転動体転走路、55 方向転換路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って転動体転走溝が形成される軌道レールと、
前記転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝が形成される移動ブロックと、
前記転動体転走溝と前記負荷転動体転走溝とによって構成される負荷転動体転走路内に転動自在に設置される複数のボールと、
を有することにより、前記移動ブロックが前記軌道レールの長手方向で往復運動自在とされる運動案内装置であって、
前記負荷転動体転走路は、2経路の負荷転動体転走路が近接且つ並列配置されることによって1組の複列負荷転動体転走路を形成するように構成され、
前記複列負荷転動体転走路は、組を成す2経路の負荷転動体転走路同士でボールとの接触角が互いに異なるように構成されていることを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運動案内装置において、
前記複列負荷転動体転走路は、運動案内装置に加わる荷重の方向に応じて、
組を成す2経路のうちのいずれか一方の負荷転動体転走路が、ボールからの負荷を主として受容するメイン経路として機能し、
組を成す2経路のうちのいずれか他方の負荷転動体転走路が、ボールからの負荷を補助的に受容するサブ経路として機能することを特徴とする運動案内装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運動案内装置において、
当該運動案内装置が荷重を受けた際に、
前記メイン経路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記サブ経路内のボールが接点変動を起こすことによって前記メイン経路とメイン経路内にあるボールとの隙間が解消され、
前記サブ経路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記メイン経路とメイン経路内にあるボールとが協働して前記荷重を受容することを特徴とする運動案内装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運動案内装置において、
前記複列負荷転動体転走路は、
組を成す2経路のうちのいずれか一方の負荷転動体転走路におけるボールとの接触角θ1が、45°<θ1<90°なる不等式を満たすように構成され、
組を成す2経路のうちのいずれか他方の負荷転動体転走路におけるボールとの接触角θ2が、0°<θ2<45°なる不等式を満たすように構成されることを特徴とする運動案内装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運動案内装置において、
当該運動案内装置が荷重を受けた際に、
前記一方の負荷転動体転走路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記他方の負荷転動体転走路内のボールが接点変動を起こすことによって前記一方の負荷転動体転走路と当該一方の負荷転動体転走路内にあるボールとの隙間が解消され、
前記他方の負荷転動体転走路内のボールが隙間を持った接触状態にあるときには、前記一方の負荷転動体転走路と当該一方の負荷転動体転走路内にあるボールとが協働して前記荷重を受容することを特徴とする運動案内装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の運動案内装置において、
前記負荷転動体転走路が8経路設けられていることを特徴とする運動案内装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の運動案内装置において、
前記複数のボールが前記軌道レールのレール幅の1/10以下の直径にて構成されていることを特徴とする運動案内装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2009−162275(P2009−162275A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341023(P2007−341023)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】