説明

運動状態検出方法及び運動状態検出装置

【課題】加速度センサーや角速度センサーの代わりに使用することができる安価な検出器を用いることのできる運動状態検出方法及び運動状態検出装置を提供する。
【解決手段】導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態検出する検出器を用い、単位時間当たりの前記導通の状態から前記非導通の状態への変化の回数である第1の回数、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかの計測を行う第1の処理と、前記第1の回数、又は、前記第2の回数のいずれかを変更判断値とし、前記変更判断値を基にして前記単位時間の長さの変更を行う第2の処理と、を含み、前記単位時間当たりの前記導通の状態の時間の割合、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態の時間の割合から運動状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人などの運動状態を把握するために用いられる運動状態検出方法及び運動状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人などの動物を含む物体の動き、所謂運動状態を検出して、その検出結果を観察に用いたり、機器の制御に用いたりすることが行われている。制御に用いられる機器には、自動車、航空機、船舶及び産業用ロボットなどがあり、多岐に渉る。一般的に、運動状態の検出には加速度センサーや角速度センサーが用いられることが多い。これは、機器の制御などに用いるためには検出の正確さが求められることからである。このため、使用される環境が継続的に電力供給がなされる環境であることもあって、センサー自体の消費電力の問題は後回しとなることが多い。
【0003】
また、従来、複数の電極で囲われた空間に可動する導電球を配置したボールセンサーと呼ばれるセンサーが存在する。該導電球は、基本的に該空間内の重力方向に位置することから、ボールセンサーを取り付けた物体の傾き方や動きに応じて複数の電極に対しての接し方が異なり、これにより複数の電極の間の各々が導通の状態又は非導通の状態となる。従ってボールセンサーを取り付けた物体の傾き方や動きを、複数の電極間の導通の状態及び非導通の状態を測定することにより検出することができる。ボールセンサーは、導通の状態となるときに電力を消費するものであるから消費電力は小さい。しかしながら、検出精度が導電球の大きさや複数の電極の各々の形状により決まることから、上述した加速度センサーや角速度センサーに比べて検出精度が劣る。
【0004】
上述したように検出精度と消費電力は相反する場合があるが、これを解決するひとつの方法として、検出精度は高いが消費電力の大きいセンサー部と検出精度は低いが消費電力のより小さなセンサー部とを組み合わせたセンサー装置が存在する。例えば、特許文献1には、各々の間が絶縁された3つの電極で囲った空間に導電性の球体を入れ、振動などにより導電性の球体が可動して接触する電極が変化することにより電気的振動検出手段を起動することで、該電気的振動検出手段を常時起動しておくことに比べて消費電力の小さな振動検出装置を実現することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−118587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、導電性の球体が可動し電極間の導通状態を変化させない限り電気的振動検出手段の起動がなされないことは省電力につながっているものの、計測は電気的振動検出手段により行われることから計測時は省電力とはなっておらず、また、電気的振動検出手段が起動する前の振動の計測はできないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくともひとつを解決するためになされたものであり、以下の運動状態検出方法及び運動状態検出装置の適用例又は実施形態として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例に係るひとつの運動状態検出方法は、物体の動きに応じて導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態を検出する検出器を用い、単位時間当たりの前記導通の状態から前記非導通の状態への変化の回数である第1の回数、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかの計測を行う第1の処理と、前記第1の回数、又は、前記第2の回数のいずれかを変更判断値とし、前記変更判断値を基にして前記単位時間の長さの変更を行う第2の処理と、を含み、前記単位時間の長さを変えることによって、前記単位時間当たりの前記導通の状態の時間の割合、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態の時間の割合を変えることを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、導通の状態から非導通の状態への変化の回数である第1の回数又は非導通の状態から導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかを計測し、第1の回数又は第2の回数のいずれかを変更判断値として単位時間の長さを変更することにより、単位時間当たりの導通の状態の時間の割合又は単位時間当たりの非導通の状態の時間の割合を変えることができ、検出器を取り付けた対象物の運動状態をより適正に検出することができる。
【0010】
導通の状態又は非導通の状態を検出する検出器のひとつに、第1の電極、第2の電極及び第1の電極と第2の電極との間を可動する球状の導電体を有するボールセンサーと呼ばれる検出器がある。このような検出器の場合、第1の電極及び第2の電極間の導通の状態及び非導通の状態は球状の導電体の可動状態で決まる。しかしながら、対象物の運動状態によっては、静止しているときと静止していないときとの区別がつかないことがある。例えば、検出器が激しく傾斜しているときに球状の導電体が第1の電極又は第2の電極のいずれかに張り付いたようになる状態が発生する場合があるが、このときの検出器の出力は、第1の電極又は第2の電極のいずれかに接して静止しているときの検出器の出力と同じとなる。
【0011】
しかしながら、このような検出器が激しく動いた後に停止した場合、第1の電極及び第2の電極間で可動する導電体は即座に停止することができず、暫くの間、第1の電極及び第2の電極の間を激しく動き回ることになる。この間、第1の電極と第2の電極との間が導通の状態と非導通の状態とが激しく入れ替わる。すなわち、検出器の出力が導通の状態と非導通の状態とが激しく入れ替わる期間があるときは、直前の導通の状態または非導通の状態は検出器が運動状態にあると判断できることとなる。この場合、球状の導電体の可動状態を反映した第1の回数又は第2の回数のいずれかを変更判断値とし、変更判断値を判断材料として単位時間の長さを変更し、単位時間当たりの導通の状態となる時間の割合又は単位時間当たりの非導通の状態の時間の割合を変化させることにより、より実際の動きに近い運動状態の検出を、単位時間当たりの導通の状態の時間の占める割合又は単位時間当たりの非導通の状態の時間の占める割合を用いて行うことが可能となる。
【0012】
[適用例2]
上記の適用例に係る運動状態検出方法において、前記第2の処理において、前記変更判断値と第1の基準値とが比較され、前記変更判断値が前記第1の基準値を上回った場合に、前記単位時間の長さが長くされることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、変更判断値が第1の基準値を上回った場合に単位時間の長さを行うことで、運動状態の検出のための処理を簡単化することができる。変更判断値が第1の基準値以下の場合、運動状態のレベルの設定の仕方にもよるが、単位時間の長さの変更を行っても運動状態のレベルが変わらない場合がある。このような場合、単位時間の長さの変更の処理は不要となることから、この分の処理の簡略化が可能である。運動状態のレベルの設定の仕方や第1の基準値は、検出する対象物により異なってくるものと考えられる。したがって、運動状態のレベルの設定の仕方や第1の基準値は、予め実験などを行うことにより定めておくことができる。
【0014】
[適用例3]
上記の適用例に係る運動状態検出方法において、前記第2の処理は、前記単位時間における前記導通の状態の占める時間の割合が、第1境界条件の値よりも小さく、かつ、前記第1境界条件よりも小さい値の第2境界条件の値よりも大きい場合に、行われることが好ましい。
【0015】
この方法によれば、単位時間当たりの導通の状態の割合又は単位時間当たりの非導通の状態の割合が、第1境界条件よりも小さく、かつ、第2境界条件によりも大きい場合に単位時間の長さの変更を行うことにより、運動状態の検出のための処理を簡単化することができる。単位時間当たりの導通の状態の割合が所定の値以上である場合や他の所定の値以下であった場合は、単位時間の長さの変更を行っても運動状態のレベルが変わらない場合がある。このため、予め実験などにより所定の値である第1境界条件及び他の所定の値である第2境界条件を定めておくことにより、単位時間の長さを行わなくてもよい場合を設定することができる。これにより、運動状態のレベルの検出のために必要な処理を軽減することができる。
【0016】
[適用例4]
本適用例に係るひとつの運動状態検出装置は、第1の電極と、前記第1の電極と対向配置された第2の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極の間に存在し、前記第1の電極及び前記第2の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、演算処理部と、を含み、前記演算処理部は、単位時間当たりの前記導通の状態から前記非導通の状態への変化の回数である第1の回数、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかを算出して変更判断値とし、前記変更判断値を基にして前記単位時間の長さの変更を行い、前記単位時間の長さを変えることによって、前記単位時間当たりの前記導通の状態の時間の割合、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態の時間の割合を変えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、導通の状態から非導通の状態への変化の回数である第1の回数又は非導通の状態から導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかを計測し、第1の回数又は第2の回数のいずれかを変更判断値として単位時間の長さを変更することにより、単位時間当たりの導通の状態の時間の割合又は単位時間当たりの非導通の状態の時間の割合を変えることができ、より実際の動きに近い運動状態の検出を、単位時間当たりの導通の状態の時間の占める割合又は単位時間当たりの非導通の状態の時間の占める割合を用いて行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態及び第2実施形態におけるブロック図の1例を示す図。
【図2】第1実施形態におけるメインフローチャートの1例を示す図。
【図3】第2実施形態におけるメインフローチャートの1例を示す図。
【図4】第1実施形態及び第2実施形態における信号処理のフローチャートの1例を示す図。
【図5】第1実施形態及び第2実施形態におけるレベル値算出処理のフローチャートの1例を示す図。
【図6】実施例1におけるレベル値の変化を示す図。
【図7】実施例2におけるレベル値の変化を示す図。
【図8】実施例3におけるレベル値の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
【0020】
図1に運動状態検出装置10の構成要素の一部を示す。運動状態検出装置10は、センサー部1の特定の時間間隔における運動状態を、複数のレベルのいずれかのレベルにあるかを判定し、判定した結果として得たレベルの値を出力するものである。
【0021】
図1に示した運動状態検出装置10の構成要素は、センサー部1、センサー部1の出力信号を検出する検出部2、検出部2からの出力信号(以下、検出信号と呼ぶ)に対して処理を行いセンサー部1の運動状態がいずれのレベルにあるかを判定する演算処理部3、及び演算処理部3の判定結果を出力する出力部4である。
【0022】
演算処理部3は、入力信号処理部5、レベル値算出部6、及び処理制御部7を含む。尚、図1に示す運動状態検出装置10は、ひとつのパッケージに収められてもよいし、複数のパッケージに分割し実装されてもかまわない。図1に示す運動状態検出装置10の構成要素の形態は、後述するすべての実施形態において同じである。また、以降、センサー1における一対の電極の導通の状態をオン、非導通の状態をオフ、と記載することがある。例えば、「センサー部1がオン」と記載した場合は、センサー部1における一対の電極が導通の状態にあることを示す。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態は、センサー部1の出力信号から判定されるセンサー部1の単位時間当たりの運動状態の補正を単位時間の長さを変更することで行うもので、単位時間の長さの変更を行うかどうかの判断にセンサー部1のオフからオンの回数を用いるものである。センサー1におけるオン、オフの変化は検出信号として演算処理部3に伝えられるが、演算処理部3内部ではひとつの割込み信号の変化として認識され、その割込み処理の中で変化の回数が計測される。
【0024】
単位時間の長さの変更を行うかどうかを判断する基準となる回数を判断基準S0で表すことにする。また、本実施形態において、変更前の単位時間の長さをt0で表し、変更後の単位時間の長さをt1で表すことにする。
【0025】
図2に本実施形態における処理のメインルーチン100を示す。メインルーチン100は、演算処理部3の制御プログラムの一部であり、処理制御部7が実行する。図4に入力信号処理300を示す。入力信号処理300は、入力信号処理部5が実行する処理の一部を示すものである。図5にレベル値算出処理400を示す。レベル値算出処理400は、レベル値算出部6が実行する処理の一部を示すものである。メインルーチン100、入力信号処理300及びレベル値算出処理400は並列動作(同時実行)が可能である。また、入力信号処理300及びレベル値算出処理400はソフトウエアで構成してもハードウエアで構成してもかまわない。
【0026】
まず、図2、図4及び図5を用いて運動状態検出装置10の動作の説明を行う。
【0027】
運動状態検出装置10の電源投入後、検出部2、演算処理部3及び出力部4のパワーオンリセットが実行され、メインルーチン100が起動する。メインルーチン100が起動し検出部2及び演算処理部3の動作に必要なレジスター類及び動作モードなどの初期設定が行われる(図2・処理101)。処理101に記載はないが、出力先に応じたデータ出力形式等の設定などが必要な場合は出力部4に対しての設定も処理101において行われる。また、図示はないが運動状態検出装置10のホスト装置が存在する場合、ホスト装置からの制御のための入力部を設け、ホスト装置が運動状態検出装置10のパワーオンリセットの終了を検出し、その後入力部を介してメインルーチン100を起動するようにしてもよい。また、ホスト装置自体が入力部を介して処理101を実行するような仕組みを有していてもかまわない。また、演算処理部3への割込み信号は、パワーオンリセットにおいてマスクされる。本実施形態において、割込み信号がマスクされることを割込みマスク・オン、割込み信号のマスクが解除されることを割込みマスク・オフと記載することがある。割り込み信号は、割り込みマスク・オフの場合に有効となる。
【0028】
各部の初期設定が終わると処理制御部7は、検出部2に対して検出信号の出力の開始を指示する(図2・処理102)。本実施形態においては、検出部2に対しての検出信号の出力の指示は一度しか行われず、以降、検出信号は演算処理部3に対して常に出し続ける状態となる。これは必要な動作の説明を簡単化して行うためであるが、決められた時間内しか使用しないなど用途に限定がある場合は、使用しない時間帯において、センサー部1、検出部2、出力部4及び演算処理部3の時間監視に必要な一部回路を残して動作を停止させるのもひとつの方法である。図2・処理102により検出部2が検出信号の出力を開始しているが、演算処理部3への割込み信号がマスクされているため、検出部2からの検出信号の変化に対しての演算処理部3の処理はまだ行われない。
【0029】
次に、処理制御部7により動作パラメーターの設定が行われる(図2・処理103)。図2・処理103には、本実施形態の説明で用いるパラメーターを表記した。表記したパラメーターは、TC(単位時間内の経過時間)、TS(単位時間の長さ)、UC(オフからオンの回数)、DC(オンからオフの回数)、OnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)及びOfT(センサー部1がオフからオンに変化したときの単位時間内における経過時間)である。動作パラメーターの設定後、処理制御部7により割込みマスクが解除(割込みマスク・オフ)され(図2・処理104)、単位時間の経過時間の長さ計測のためTC(単位時間内の経過時間)のカウントをスタートさせる(図2・処理105)。割込みマスク・オフ(図2・処理104)により入力信号処理部5が検出部2からの検出信号に応じた動作を開始する。
【0030】
図4に示すのは入力信号処理部5の処理の一部である入力信号処理300のフローチャートである。割込み信号検出(図4・処理301)により検出された信号が、センサー部1がオンからオフに変化したことを示すものかどうかを判断し(図4・処理302)、YESであればDC(オンからオフの回数)に1を加え(図4・処理303)、OnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)に導通の状態であった時間を累積し(図4・処理304)、割込み信号の検出待ちの状態に移行する。
【0031】
図4・処理302でNOと判断された場合、検出された信号が、センサー部1がオフからオンに変化したことを示すかどうか判断され(図4・処理305)、YESならばUC(オフからオンの回数)に1を加え(図4・処理306)、OfT(センサー部1がオフからオンに変化したときの単位時間内における経過時間)にTC(単位時間内の経過時間)の値が保存され(図4・処理307)、割込み信号検出待ちの状態に移行する。図4・処理305でNOであった場合には割込み信号は検出信号以外のものとみなされ、割込み信号検出待ちの状態に移行する。
【0032】
図2・処理104実行後は、メインルーチン100と入力信号処理300は並列に動作を行うことになる。上記のパラメーターの記憶部分は特に図1において図示しないが、メインルーチン100と入力信号処理300が並列に動作させることは、処理制御部7内に入力信号処理部5がアクセス可能なレジスターまたはメモリーを有することで可能となる。或いは、演算処理部3内に入力信号処理部5、レベル値算出部6及び処理制御部7などが使用できる共有メモリー部を新たな構成要素として設け、共有メモリー部に必要な情報を保存するようにしてもよい。
【0033】
処理制御部7は、単位時間の計測をスタートした後はTC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)を超えないかどうかを監視する(図2・処理106)。TC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)以上の長さになったと判断すると割込み信号のマスクをオンとして単位時間内のUC(オフからオンの回数)、DC(オンからオフの回数)及びOnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)を確定させる(図2・処理109)。その後、図5に示すレベル値算出処理400を起動する(図2・処理110)。図2には記載はないが、レベル値算出処理400で用いる第1境界条件S2及びS2よりも小さな値を有する第2境界条件S1は予め実験などにより所定の値に決定されており、レベル値算出処理400が起動される以前に設定がされていることが好ましい。例えば、図2・処理101において設定されるようにしてもよい。また、メインルーチン100内で設定を行わない場合は、レベル値算出処理400の処理401の前に設定を行えばよい。
【0034】
その後、処理制御部7は、レベル値算出処理400で算出した結果を出力し(図2・処理111)、運動状態検出処理の終了が例えばホスト装置などから指示されているかどうかを確認し(図2・処理112)、終了の指示がない場合は次の単位時間の計測のために動作パラメーターの設定(図2・処理103)の処理に戻る。この際、上述したパラメーターを2セット用意し、交互に使用することによりレベル値算出処理400の進捗に関係なく図2・処理103の実行を行えるようにするのは常套手段であるが、この場合は、例えば、図2・処理111で行う処理が、レベル値算出処理400の中で行われるようにする必要がある。
【0035】
図2・処理106においてTC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)を超えない場合は、処理制御部7はUC(オフからオンの回数)と上述の判断基準S0との比較を行い(図2・処理107)、UC(オフからオンの回数)がS0を超えた場合には単位時間間隔を決定するTS(単位時間の長さ)にt1をセットし(図2・処理108)、処理106に戻る。
【0036】
次に、図5に示すレベル値算出処理400について説明する。レベル値算出処理400は、メインルーチン100内において処理制御部7により起動される(図2・処理110)。レベル値算出処理400は、処理制御部7において算出されたOnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)の単位時間に占める割合がどの範囲に入るかにより複数のレベル値のいずれのレベルになるかを決定する処理である。第1境界条件S2及び第2境界条件S1によりレベル値TLが決定される(図5・処理401及び図5・処理403)。(OnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)/TC(単位時間内の経過時間))<S1ならばレベル1(TL=1)となる(図5・処理402)。(OnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)/TC(単位時間内の経過時間))>S2ならばレベル3(TL=3)となる(図5・処理404)。S1≦(OnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)/TC(単位時間内の経過時間))≦S2ならばレベル2(TL=2)となる(図5・処理405)。
【0037】
レベル値算出処理400においてOnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)の単位時間に占める割合を算出するのにTC(単位時間内の経過時間)を用いたが、本実施形態ではTC(単位時間内の経過時間)の代わりにTS(単位時間の長さ)を使用してもかまわない。また、TLに格納するレベルの数やS0、S1及びS2などの判断基準は測定対象によって変わってくると考えられることから、実験などにより適切なレベル数及び判断基準を設定するのが好ましい。
【0038】
本実施形態の処理フロー及び装置構成について上記説明したが、次に本実施形態の装置による測定の実施例について説明する。
【実施例1】
【0039】
本実施例は、人が正立した状態でセンサー部1がオンとなるように人に取り付け、人が正立歩行していた状態から倒れた状態になった場合のものである。本実施例においては、単位時間において人が正立した状態の時間の占める割合が多ければレベル3となり、人が倒れた状態(正立以外の状態)の時間の占める割合が多ければレベル1となる。
【0040】
図6・(a)は、本実施例における入力信号処理部5が検出したセンサー部1の状態を示すチャート図である。図6・(a)は、センサー部1がオンであるときが矩形となるように示してある。図6中、予め定められた時間間隔による単位時間の範囲をt0で示している。また、複数の連続する単位時間の境界を(1)〜(9)で示している。本実施例の説明において、例えば{単位時間(1)−(2)}と表記した場合、単位時間の境界(1)と(2)で範囲が規定される単位時間を示すものとする。
【0041】
また、視覚的及び論理解釈が容易になるように、本実施例を含め以降の実施例の説明で使用する図6、図7及び図8に表記したチャート図はデフォルメしており、パラメーターの値は、このデフォルメに合わせた値を設定値として記載しており、S0、S1及びS2を、S0=15、S1=0.25及びS2=0.75とした。また、t1=t0×1.5に設定した。
【0042】
図6・(b)は、図6・(a)のチャートにおいて、単位時間の長さがすべてt0であった場合、すなわち単位時間の長さの変更が行われなかった場合の運動状態検出装置10の出力結果(レベル値)を示す。図6・(c)は、{単位時間(3)−(4)}の計測中に単位時間を決める所定の時間間隔がt0からt1に変更され、{単位時間(3)−(4)}が{単位時間(3)−(7)}に置き換わった場合、すなわち単位時間の長さの変更が行われた場合の運動状態検出装置10の出力結果(レベル値)を示す。
【0043】
図6・(a)は、センサー部1を取り付けた人がほぼ一定のリズムで動いていたが急に倒れ、倒れたままとなった場合のものである。{単位時間(1)−(2)}の前半部分のセンサー部1のオン、オフの状態からほぼ一定のリズムで人が動いていたことが推測できる。また、{単位時間(1)−(2)}の終わり部分から{単位時間(2)−(3)}にかけてセンサー部1のオンが続いていることから、この期間の間はセンサー部1内の球状の導電体が、センサー部1がオンとなるように一対の電極に接する状態にあることが判る。これは、この期間においてはセンサー部1を取り付けた人が正立した状態でほぼ静止している可能性があることを示している。その後、{単位時間(3)−(4)}においてはセンサー部1のオン、オフの変化の回数が多くなっていることが計測されており、{単位時間(4)−(5)}及び{単位時間(5)−(6)}と進む中でセンサー部1のオン、オフの変化の回数が序所に少なくなるとともに、センサー部1のオフの時間が長くなることが計測されている。これは、{単位時間(4)−(5)}及び{単位時間(5)−(6)}において、センサー部1を取り付けた人が正立していない状態、すなわち倒れた状態になった可能性があることを示している。
【0044】
センサー部1のオン、オフの変化の回数が多くなるのは、センサー部1を取り付けた人が動作の状態から停止の状態に移行したときに起こる現象である。{単位時間(3)−(4)}においてセンサー部1のオン、オフの変化の回数が多くなっていたことから、{単位時間(1)−(2)}の終わり部分から{単位時間(2)−(3)}にかけて続いていたセンサー部1のオンは、センサー部1を取り付けた人が正立した状態で静止していることによるものではなく、倒れる動きをしていた状態にあったと判断することができる。センサー部1を取り付けた人が倒れる動きをしていたことから、球状の導電体がセンサー部1の一対の電極に張り付いたような状態にあったのであり、{単位時間(3)−(4)}においてはほぼ倒れた状態にあったと考えることができる。
【0045】
しかしながら、{単位時間(3)−(4)}にかけては倒れた状態と判断できるにもかかわらず、単位時間の変更を行っていない図6・(b)ではレベル2(センサー部1がオンの割合が0.28)であり、一定のリズムで動いていた{単位時間(1)−(2)}と同じレベル2(センサー部1がオンの割合が0.41)値であった。このことにより、単位時間の変更がない場合においては、運動状態検出装置10の出力であるレベル値だけでは人の状態の区別がつかないことが判る。
【0046】
図6・(c)は、{単位時間(3)−(4)}においてUC(オフからオンの回数)がS0を上回ったことでTS(単位時間の長さ)の値がt1に変更された場合を示している。これにより{単位時間(2)−(3)}直後の単位時間が{単位時間(3)−(4)}から{単位時間(3)−(7)}に変わっている。この変更により{単位時間(3)−(7)}のレベル値がレベル1(センサー部1がオンの割合が0.21)となり、人が正立していない状態、すなわち人が倒れた状態にあると推測できることを示すものとなった。これにより、{単位時間(3)−(7)}のレベル値が{単位時間(1)−(2)}のレベル値と異なった値となり、運動状態検出装置10の出力(レベル値)が実際の人の動きに合ったものとなっていることが判る。よって、センサー部1のオン、オフの変化の回数により単位時間の長さを変更することで、より実際の動きに近い運動状態の検出が行えることがわかる。
【実施例2】
【0047】
本実施例は、人が正立した状態でセンサー部1がオフとなるように人に取り付け、人が正立歩行していた状態から倒れた状態になった場合のものである。本実施例においては、単位時間において正立した状態の時間の占める割合が多ければレベル1となり、倒れた状態の時間の占める割合が多ければレベル3となる。この状態を図6と同様の記載方法で図7に示す。
【0048】
図7・(b)は、図7・(a)のチャートにおいて、単位時間の長さがすべてt0であった場合、すなわち単位時間の長さの補正が行われなかった場合の運動状態検出装置10の出力結果(レベル値)を示す。図7・(c)は、{単位時間(3)−(4)}の計測中に単位時間を決める所定の時間間隔がt0からt1に変更された場合、すなわち単位時間の長さの変更が行われ、{単位時間(3)−(4)}が{単位時間(3)−(7)}に置き換わった場合の運動状態検出装置10の出力結果(レベル値)を示す。
【0049】
図6・(a)と同様に、図7・(a)は、センサー部1を取り付けた人がほぼ一定のリズムで動いていたが急に倒れ、倒れたままとなった場合のものである。{単位時間(1)−(2)}の前半過ぎあたりのオン、オフの状態からほぼ一定のリズムで人が動いていたことが推測できる。また、{単位時間(1)−(2)}の終わり部分から{単位時間(2)−(3)}にかけてオフが続いていることから、センサー部1の球状の導電体が一対の電極のいずれか一方に接した状態にあることが判る。これは、この期間においてはセンサー部1を取り付けた人が正立した状態でほぼ静止している可能性があることを示している。その後、{単位時間(3)−(4)}においてはセンサー部1のオン、オフの変化の回数が多くなっていることが計測され、{単位時間(4)−(5)}及び{単位時間(5)−(6)}ではほぼセンサー部1がオンの状態にある。これは、{単位時間(4)−(5)}及び{単位時間(5)−(6)}においては、センサー部1を取り付けた人が正立していない状態、すなわち倒れた状態になった可能性があることを示している。
【0050】
上述したように、センサー部1のオン、オフの変化の回数が多くなるのは、センサー部1を取り付けた人が動作の状態から停止の状態に移行したときに起こる現象である。{単位時間(3)−(4)}においてセンサー部1のオン、オフの変化の回数が多くなっていたことから、{単位時間(1)−(2)}の終わり部分から{単位時間(2)−(3)}にかけて続いていたセンサー部1のオフは、センサー部1を取り付けた人が正立で静止していたからではなく、倒れる動きをしていたことによるものと考えられ、{単位時間(3)−(4)}においてはほぼ倒れた状態にあったと考えることができる。
【0051】
しかしながら、{単位時間(3)−(4)}においてはほぼ倒れた状態にあると判断できるにもかかわらず、単位時間の変更を行っていない図7・(b)ではレベル2(センサー部1がオンの割合が0.63)であり、一定のリズムで動いていた{単位時間(1)−(2)}と同じレベル2(センサー部1がオンの割合が0.44)となっている。運動状態検出装置10の出力であるレベル値だけでは人の状態の区別がつかないのは実施例1のケースと同様である。
【0052】
図7・(c)は、{単位時間(3)−(4)}においてUC(オフからオンの回数)がS0を上回ったことで、TS(単位時間の長さ)がt1に変更され、これにより{単位時間(2)−(3)}直後の単位時間が{単位時間(3)−(4)}から{単位時間(3)−(7)}に変わっている。この変更により{単位時間(3)−(7)}のレベル値がレベル3(センサー部1がオンの割合が0.87)となり、人が倒れた状態にあることを示すものとなった。{単位時間(3)−(7)}のレベル値が{単位時間(1)−(2)}のレベル値と異なった値となり、運動状態検出装置10の出力(レベル値)が実際の人の動きに合ったものとなっている。これからオン、オフの回数により単位時間の長さを変更することで、より実際の動きに近い運動状態の検出が行えることが分かる。
【0053】
上述した実施例1及び実施例2ではS1及びS2の値の変更は行わなかったが、TS(単位時間の長さ)が変更となった場合はS1及びS2を変更した場合が好ましい結果となる場合があることも考えられる。もうひとつの判断の基準となるS0も含めて、これら基準となる値の決定は運動状態検出装置10の使用状況を想定して実験を繰り返し行い決定することが好ましい。
【0054】
(第2実施形態)
本実施形態は、センサー部1の出力信号から判定されるセンサー部1の運動状態の補正を単位時間の長さを変更することで行うもので、変更を行うかどうかの判断に、予め決められた単位時間が経過した時点でのセンサー部1のオフからオンの変化の回数及びレベル値を用いる形態である。本実施形態における、処理制御部7で実行される制御プログラム(メインルーチン200)のフローチャートを図3に示す。本実施形態で使用するパラメーターは第1実施形態で用いたものと同じである。また、入力信号処理300及びレベル値算出処理400は第1実施形態と同じである。ただし、第1実施形態ではレベル値算出処理400においてTC(単位時間内の経過時間)の代わりにTS(単位時間の長さ)を使用することが可能であるが、本実施形態ではTS(単位時間の長さ)を使用することはできない。
【0055】
まず、メインルーチン200についての説明を行う。運動状態検出装置10の電源投入後、検出部2、演算処理部3及び出力部4のパワーオンリセットが実行され、処理制御部7においてメインルーチン200が起動する。初期設定を行う図3・処理201は基本的に第1実施形態で示したメインルーチン100の図2・処理101と同じである。これにより検出部2及び演算処理部3の動作に必要なレジスターなどの初期設定が行われる。基本的な処理は図2・処理101と同じであるが、メインルーチン200の中でレベル値が使用されることからレベル値を格納しておく変数TLの初期値の設定が必要となる。TLの初期値はレベル値に設定のない値であれば何でもよい。本実施形態ではTL=0としている。パワーオンリセット又は処理201により演算処理部3への割込み信号はマスクされた状態(割込みマスク・オン)にあるのはメインルーチン100と同じである。また、図3に記載はないが、出力部4に対して設定が必要となる場合、ホスト装置が存在する場合の実施形態の変形については、第1実施形態と同じである。
【0056】
各部の初期設定が終わると処理制御部7は、検出部2に対して検出信号の出力の開始を指示する(図3・処理202)。本実施形態においても、検出部2に対しての検出信号の出力の指示は一度しか行わない。以降、検出信号は演算処理部3に対して常に出力され続ける状態となるのは第1実施形態と同様である。図3・処理202により検出部2が検出信号の出力を開始しているが、演算処理部3への割込み信号がマスク状態にあるため、検出部2からの検出信号の変化に対しての処理はまだ行われない。
【0057】
次に、処理制御部7により動作パラメーターの設定が行われる(図3・処理203)。図3においては、使用するパラメーターは第1実施形態と同じであることから記載は省略した。動作パラメーターの設定後、処理制御部7によりレベル値算出処理400の開始が指示される(図3・処理204)。S1及びS2の値は、レベル値算出処理400の処理401の前に設定されていればよい。その後、処理制御部7により割込みマスクが解除(割込みマスク・オフ)され(図3・処理205)、単位時間の経過計測のためTC(単位時間内の経過時間)のカウントをスタートさせる(図3・処理206)。
【0058】
本実施形態においては、メインルーチン200、入力信号処理300及びレベル値算出処理400が並列して動作することになり、第1実施形態と同様に各種パラメーターを格納する共有メモリーまたは共有レジスターが必要となる。
【0059】
割込みマスク・オフ(図3・処理205)により入力信号処理部5が検出部2からの検出信号に応じた動作(図4・入力信号処理300)を行うようになる。
【0060】
図3・処理207は、TC(単位時間内の経過時間)が単位時間として予め決められた所定の時間であるt0となったことを判断する処理である。処理制御部7は、処理時間がt0となった時点でのセンサー部1のUC(オフからオンの回数)がS0を超えているかどうかを判断し(図3・処理214)、S0を超えている場合はレベル値が中間レベルであるレベル2(TL=2)かどうかを判断し(図3・処理208)、中間レベルであれば単位時間の長さの変更を行い(図3・処理209)、図3・処理207に進む。中間レベルでない場合は、単位時間の長さの変更はなされず、処理制御部7は割込みマスク・オンとしてOnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)を確定させ(図3処理211)、レベル値を出力させる(図3・処理212)。
【0061】
単位時間の長さが変更された場合は、図3・処理210においてTC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)に達したかどうかが監視される。TC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)に達したと判断されると割込み信号のマスクをオンとしてOnT(単位時間内でセンサー部1がオンであるときの時間の累積)を確定させ(図3・処理211)、レベル値を出力させる(図3・処理212)。上述したが、単位時間の長さに変更がない場合は、TC(単位時間の経過時間)がTS(単位時間の長さ)に達したかどうかの判断は図3・処理207においてなされている。この場合、図3・処理210においては必ずTC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)よりも小さくなり、図3・処理210から図3・処理211に進むことはない。このため、図3・処理210においては、TS(単位時間の長さ)の代わりに変更後の単位時間の長さであるt1を用いてもよい。しかしながら、図3・処理207においてt0の代わりにTS(単位時間の長さ)を用いることはできない。なぜならば、単位時間の長さの変更が行われた後では、TC(単位時間内の経過時間)がTS(単位時間の長さ)となったときに運動状態がレベル2であると、その後は図3・処理207及び図3・処理210の処理を繰り返すだけで、図3・処理211に進むことが無いからである。
【0062】
図3・処理212の後、処理制御部7は運動状態検出処理の終了が、例えばホスト装置などから指示されているかどうかを確認し(図3・処理213)、終了の指示がない場合は次の単位時間の計測のために動作パラメーターの設定(図3・処理203)の処理に戻る。上述したように、図3・処理207及び図3・処理210は、単位時間の経過を判断するためのものであり、TC(単位時間内の経過時間)が設定されている単位時間の長さと等しくない場合は、図3・処理207及び図3・処理210の処理で構成されるループを繰り返すことになる。
【実施例3】
【0063】
本実施例は、センサー部1を人が正立した状態でオンとなるように人に取り付け、人が正立歩行していた状態から倒れた状態になった場合のもので、上述した実施例1よりも倒れ方がより激しいものである。実施例1と同じように、本実施例においても単位時間において正立した状態の時間の占める割合が多ければ運動状態のレベルはレベル3となり、倒れた状態の時間の占める割合が多ければ運動状態のレベルはレベル1となる。
【0064】
本実施形態の実施例について、図8を用いて説明する。図8・(a)は、図6・(a)及び図7・(a)と同じセンサー部1がオンである時間間隔を矩形で示したチャート図である。S0、S1及びS2の設定値(S0=15、S1=0.25及びS2=0.75)は第1実施例及び第2実施例と同じである。また、t1=t0×1.5であることも第1実施例及び第2実施例と同じである。
【0065】
図8から分かるように、{単位時間(1)−(2)}及び{単位時間(2)−(3)}は、単位時間であるt0が経過した時点でUC(オフからオンの回数)がS0に達しないが、{単位時間(3)−(4)}ではt0が経過した時点でセンサー部1のUC(オフからオンの回数)がS0を超えていることから、t0が経過した時点でのレベル値がS1及びS2と比較されている。
【0066】
図8・(b)に示すように{単位時間(3)−(4)}におけるレベル値はレベル2(センサー部1のオンの時間の割合が0.30)であることから単位時間の長さの変更がなされ、{単位時間(3)−(4)}は、{単位時間(3)−(7)}に置き換わる。単位時間の長さが変更され、図8・(c)に示すように{単位時間(3)−(7)}におけるレベル値はレベル1(センサー部1のオンの時間の割合が0.24)に補正された。
【0067】
{単位時間(3)−(7)}の次の{単位時間(7)−(8)}の単位時間の長さは、図3・処理203よりt0に戻される。{単位時間(7)−(8)}はt0経過後のUC(オフからオンの回数)の値がS0を越えているがレベル値はレベル1(センサー部1のオンの割合が0.13)である。従って単位時間の長さの変更は行われず{単位時間(8)−(9)}の計測に入っている。
【0068】
一般的に、センサー部1の移動が激しいほどセンサー部1の移動停止後のセンサー部1内の球状の導電体の振動数は多くなるが、振動数は無限に多くなるわけではなく、センサー部1の内部形状及び球状の導電体の大きさ・質量で決まる上限値を持ち、上限値に達した以降は球状の導電体の振動時間が長くなることで現れる。このため、センサー部1の動きが激しければ激しいほど球状の導電体の動きが治まるまでの時間が長くなり、センサー部1の動きとセンサー部1から検出される信号とのズレが大きくなる傾向にあるが、上記実施形態を例として説明をしたように、本発明を適用することにより、センサー部1の動きとセンサー部1から検出される信号とのズレを補正することが可能となり、より実際の動きに近い運動状態の検出が行えることがわかる。
【0069】
以上説明をしてきたように、本発明を適用することにより、加速度センサーや角速度センサーの代わりに運動状態検出センサーを使用することができ、加速度センサーや角速度センサーを用いた装置よりも安価で消費電力が小さい運動状態検出装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1…センサー部、2…検出部、3…演算処理部、4…出力部、5…入力信号処理部、6…レベル値算出部、7…処理制御部、10…運動状態検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の動きに応じて導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態を検出する検出器を用い、
単位時間当たりの前記導通の状態から前記非導通の状態への変化の回数である第1の回数、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかの計測を行う第1の処理と、
前記第1の回数、又は、前記第2の回数のいずれかを変更判断値とし、前記変更判断値を基にして前記単位時間の長さの変更を行う第2の処理と、を含み、
前記単位時間の長さを変えることによって、前記単位時間当たりの前記導通の状態の時間の割合、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態の時間の割合を変えることを特徴とする運動状態検出方法。
【請求項2】
前記第2の処理において、
前記変更判断値と第1の基準値とが比較され、前記変更判断値が前記第1の基準値を上回った場合に、前記単位時間の長さが長くされることを特徴とする請求項1に記載の運動状態検出方法。
【請求項3】
前記第2の処理は、
前記単位時間における前記導通の状態の占める時間の割合が、第1境界条件の値よりも小さく、かつ、前記第1境界条件よりも小さい値の第2境界条件の値よりも大きい場合に、行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動状態検出方法。
【請求項4】
第1の電極と、
前記第1の電極と対向配置された第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に存在し、前記第1の電極及び前記第2の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、
演算処理部と、を含み、
前記演算処理部は、
単位時間当たりの前記導通の状態から前記非導通の状態への変化の回数である第1の回数、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の回数である第2の回数のいずれかを算出して変更判断値とし、
前記変更判断値を基にして前記単位時間の長さの変更を行い、
前記単位時間の長さを変えることによって、前記単位時間当たりの前記導通の状態の時間の割合、又は、前記単位時間当たりの前記非導通の状態の時間の割合を変えることを特徴とする運動状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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