説明

運動能力検査装置

【課題】歩行が困難であっても立つことができれば使用者の歩行機能を計測することができる運動能力検査装置を提供する。
【解決手段】刺激装置50は、左右の足をそれぞれ載せる一対の足置台211、212を備え、足置台211、212を時間経過に伴って変位させることにより、立位である使用者の下肢部に筋刺激を与える。計測装置60は、刺激装置50による筋刺激に関連する使用者の身体の応答に関する情報を計測し、使用者に関する7種類の歩行機能情報を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歩行に関係した運動能力を検査する運動能力検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行に関係した動作状態を計測することにより、健康度や歩行機能の評価に用いる技術が種々提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、歩行時の足圧分布を時間的に連続して計測し、計測したデータから歩行に関係した特徴を抽出する技術が記載されている。特許文献1に記載された装置は、自然な歩行で3〜5歩ほど歩くことができるマット状の圧力センサを用いており、圧力センサにより計測した足圧をコンピュータに取り込んでいる。足圧は、圧力の強さを階調値とする足圧画像データとして毎秒30枚出力される。
【0004】
同様の技術として、特許文献2には、被計測者に圧力分布センサの上で足踏みを行わせ、圧力分布センサからの圧力分布データを用いて被計測者の荷重状態を解析する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−218754号公報
【特許文献2】特開2006−312029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使用者の歩行に関係した運動能力を検査する目的は、健康度や歩行機能の評価に用いることであって、この種の検査は、歩行改善、バランス改善、障害に対する回復訓練(リハビリテーション)などを主な目的として行われる。そのため、この種の検査の対象となる使用者は、自発的に歩行するのが困難なほど歩行機能が不十分である場合も多い。
【0007】
したがって、特許文献1、2に記載された技術のように、自発的に歩行を行わなければ計測を行うことができない装置は、使用者の歩行機能によっては使用可能が困難な場合がある。
【0008】
本発明は、歩行が困難であっても立つことができれば使用者の歩行機能の計測することができる運動能力検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、立位である使用者の下肢部に筋刺激を与える刺激装置と、刺激装置による筋刺激に関連する使用者の身体の応答に関する情報を計測して出力する計測装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
この運動能力検査装置において、刺激装置は、使用者の足を載せる足置台と、駆動源を備え足置台を時間の経過に伴って変位させる駆動装置とを備えることが好ましい。
【0011】
この運動能力検査装置において、足置台として左右の足を片足ずつ載せる第1の足置台と第2の足置台とを備え、駆動装置は、第1の足置台と第2の足置台とをそれぞれ変位させることが好ましい。
【0012】
この場合、駆動装置は、第1の足置台と第2の足置台とに関して、少なくとも前端部と後端部との相対的な高さ位置を変化させることにより上下方向に揺動させることが好ましい。
【0013】
この運動能力検査装置において、刺激装置を使用している使用者が見る表示装置を備え、表示装置は、刺激装置を使用する使用者に対する指導情報を提示する指導表示領域と、計測装置が計測した計測情報を提示する結果表示領域とを備えることが好ましい。
【0014】
この運動能力検査装置において、指導表示領域と結果表示領域とは、コントラストが個別に設定されることが好ましい。
【0015】
この運動能力検査装置において、指導表示領域と結果表示領域とは、表示装置の画面に占める面積が個別に設定されることが好ましい。
【0016】
この運動能力検査装置において、計測装置は、第1の足置台に作用する荷重を検出する第1の荷重センサと、第2の足置台に作用する荷重を検出する第2の荷重センサと、第1の荷重センサと第2の荷重センサとが検出した荷重のデータをそれぞれ出力する荷重出力部とを備えることがより好ましい。
【0017】
この運動能力検査装置において、計測装置は、足置台に作用する荷重を異なる3箇所以上の位置で計測するように3個以上設けられた荷重センサと、荷重センサが検出した荷重のデータを用いて足置台に作用する荷重の代表点の位置を算出する荷重位置算出部と、荷重位置算出部が算出した代表点の位置を出力する荷重位置出力部とを備えることが好ましい。
【0018】
また、この運動能力検査装置において、計測装置は、足置台の上の位置に応じた荷重の分布を計測する荷重センサと、荷重センサが検出した荷重の分布を出力する荷重分布出力部を備えることが好ましい。
【0019】
この運動能力検査装置において、刺激装置は、駆動装置による足置台の変位に合わせて使用者に足を踏み込むタイミングを指示するタイミング指示部を含み、計測装置は、タイミング指示部による指示のタイミングと荷重センサが検出した情報とを関係付けて出力する比較出力部とを備えることが好ましい。
【0020】
この運動能力検査装置において、計測装置は、使用者の発汗量、血流量、体温、姿勢から選択される生理情報を計測することがより好ましい。
【0021】
また、この運動能力検査装置において、計測装置から出力される情報を蓄積する蓄積装置を備えることがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上を用いる他動運動機器を示す透視した平面図である。
【図3】同上を用いる他動運動機器を示す要部分解斜視図である。
【図4】同上を用いる他動運動機器の外観斜視図である。
【図5】同上における歩行機能情報の表示例を示す図である。
【図6】同上に用いるレーダーチャートの表示例を示す図である。
【図7】同上に用いる表示装置の画面の構成例を示す図である。
【図8】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図9】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図10】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図11】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図12】同上における結果表示領域の表示例を示す図である。
【図13】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図14】同上における結果表示領域の表示例を示す図である。
【図15】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図16】同上に用いる指導情報の例を示す図である。
【図17】同上における結果表示領域の表示例を示す図である。
【図18】同上に用いる足置台の構成例を示す分解斜視図である。
【図19】同上における荷重センサの配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に説明する実施形態は、立位である使用者の下肢部に筋刺激を与える刺激装置と、刺激装置による筋刺激に関連する使用者の身体の応答に関する情報を出力する計測装置とを備える。刺激装置は、使用者が左右の足をそれぞれ載せる一対の足置台と、各足置台を時間の経過に伴って変位させる駆動装置とを備える。ただし、刺激装置は、実施形態に示す構成に限定する趣旨ではなく、たとえば、1つの足置台を時間の経過に伴って変位させる構成でもよい。足置台の変位は、重力方向(上下方向)の平行変位、重力方向に交差する平面内での平行変位、重力方向の軸周りでの回転変位、重力方向に交差するいずれかの方向の軸周りでの回転変位から選択した単独の変位または組み合わた変位とする。また、刺激装置が、電気刺激によって使用者の下肢部に筋刺激を与える構成であってもよい。これらの刺激装置は、一例であって、他の刺激装置であってもよい。
【0024】
本実施形態に示す刺激装置は、図2および図3に示す構成を備える。本実施形態では、図4に示すように、床上に載置して使用する構成を想定するが、床に埋め込んで使用する構成を採用してもよい。また、図4に示すように、ハウジング10の周囲に手摺101を設けた構成を採用し、使用中に手摺101を持つことによってバランス感覚が衰えている使用者や歩行機能に障害がある使用者でも転倒することなく使用することを可能にしている。手摺101には、液晶表示器のようなフラットパネルディスプレイを用いた表示器102が設けられ、使用の指示や使用中の状態を表示器102に示すことができるようにしてある。
【0025】
ハウジング10は、床上に載置されるベース板11と、ベース板11の上方に配置される上板12とを結合して形成される。図示例では、ベース板11および上板12は外周形状が長方形状であるが、ベース板11および上板12の外周形状についてはとくに制限はない。以下では、説明を簡単にするために、ベース板11を床上に載置した状態でハウジング10の上面が床面と平行になるものとする。したがって、図2および図3における上下が使用時の上下になる。図示例は、ハウジング10を床に固定しておらず適宜の位置で使用できる場合を示しているが、ハウジング10を床に固定して定位置で使用する構成を採用してもよい。
【0026】
図示例では、ハウジング10は直方体状に形成されているが、内部に収納用の空間を備えるものであればハウジング10の外観形状として円筒状、多角筒状などを採用することもできる。なお、床に埋め込んで使用する構成では、ハウジング10として上板12を除く部材を軸組のみとした構造を採用することが可能である。
【0027】
図示する刺激装置は、使用者が立位で使用し、使用者が左右の足を片足ずつ載せる足置台211と足置台212とを備える。足置台211、212は、足置台211と足置台212とをそれぞれ変位させる駆動装置30とともに、ハウジング10に配置される。以下では、図2および図3に示す矢印Xの向きを前方として説明する。
【0028】
上板12には、各足置台211、212をそれぞれ露出させる矩形状に開口した2個の開口窓131、132が貫設される。各開口窓131、132は、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい矩形状に形成される。また、各開口窓131、132の長手方向に沿った中心線は、ハウジング10の前後方向に対して交差する。
【0029】
左の開口窓131の長手方向に沿った中心線は前端部が後端部よりも左側に位置し、右の開口窓132の長手方向に沿った中心線は前端部が後端部よりも右側に位置する。すなわち、両開口窓131、132の長手方向に沿った中心線間の距離は、ハウジング10の前端側で後端側よりも大きくなる。
【0030】
開口窓131と開口窓132とのそれぞれの長手方向がベース板11の前後方向に対してなす角度は、たとえば5〜15度の範囲で適宜に設定される。角度は、左側の開口窓131については後端を中心にして左回りの角度を採用し、右側の開口窓132については後端を中心にして右回りの角度を採用する。
【0031】
各足置台211、212は、それぞれ各開口窓131、132の長手方向に沿ってスライド可能である足置カバー22と、使用者が足を載せるための足置板23とにより構成される。図3には右側の足置カバー22および足置板23のみを記載している。各足置板23には、足置板23の下面周部を囲むカバー体241、242が取り付けられる。
【0032】
各足置カバー22は角筒状に形成され、内部には軸受板25が取り付けられる。軸受板25は各開口窓131、132の幅方向に沿った軸体26を支持し、軸体26は足置板23の下面に設けた軸受(図示せず)に通される。したがって、足置板23は足置カバー22に対して軸体26の回りで揺動可能になっている。
【0033】
足置板23に取り付けられたカバー体241、242は、各足置カバー22の内側に挿入される。足置板23が軸体26の周りで揺動すると、足置板23の前端部および後端部は上下に変位する。すなわち、足置台211と足置台212とは、少なくとも前端部と後端部との相対的な高さ位置を変化させて上下に揺動する。カバー体241、242は、足置板23の前端部および後端部が上下に変位するのに伴って上下に移動し、足置カバー22と足置板23との間に隙間が生じるのを防止する。
【0034】
足置カバー22の上端縁の周部には全周に亘ってフランジ部221が形成されている。一方、上板12の下面には、開口窓131、132の長手方向に沿った周部において、レール部材(図示せず)が取り付けられている。レール部材は、開口窓131、132の内向きに開口するレール溝(図示せず)を形成する。
【0035】
足置カバー22におけるフランジ部221の一部がレール溝に挿入されることにより、足置カバー22のハウジング10に対する移動範囲が制限される。フランジ部221とレール溝との間には余裕があり、フランジ部221がレール溝に挿入されている範囲内において足置カバー22が前後左右に移動する。また、フランジ部221は、足置カバー22の移動範囲において開口窓131、132の開口縁と足置板23との間に隙間を形成しない寸法に形成されている。
【0036】
足置カバー22の下面には台車41が取り付けられる。台車41の外側面には各2個ずつの車輪42が取り付けられる。ベース板11の上面には各足置台211、212に対してそれぞれ2本ずつのレール43が固定されており、レール43の上面において車輪42が転動するように、レール43上に台車41が載置される。また、レール43の上面には車輪42がレール43から脱落するのを防止するために、車輪42の側面に当接する脱輪防止板44が固定される。
【0037】
ところで、上述したように、左右の開口窓131、132は、長手方向に沿った中心線間の距離が前端側で後端側よりも大きくなるように形成してある。すなわち、開口窓131、132の中心線は、ハウジング10の前後方向に対して所定の角度をなしている。レール43も開口窓131、132の中心線と同様に、延長方向がハウジング10の前後方向に対して所定の角度をなしている。ここに、レール43は、延長方向がハウジング10の前後方向に対してなす角度が、開口窓131、132の中心線がハウジング10の前後方向に対してなす角度よりも大きくなるように配置されている。
【0038】
たとえば、開口窓131、132の中心線がハウジング10の前後方向に対してなす角度を10度とすれば、レール43の延長方向がハウジング10の前後方向に対してなす角度は45度などに設定される。
【0039】
上述の構成によって、足置台211、212はレール43の長手方向に沿って往復移動することが可能になる。このとき、足置台211、212の移動経路は、台車41と車輪42とレール43と脱輪防止板44とにより拘束される。ここに、レール43の延長方向と開口窓131、132の長手方向とが異なっているから、足置カバー22および足置板23は開口窓131、132の長手方向に交差する方向に移動する。
【0040】
すなわち、足置台211、212の長手方向に足の長手方向を一致させると、足置台211、212は、足の長手方向とは異なる方向に移動する。これは、足置台211、212をレール43の延長方向に移動させたときに、使用者の膝に大きな剪断力が作用するのを防止するためである。
【0041】
ところで、左右の各足置台211、212を時間の経過に伴って変位させる駆動装置30は、駆動力を発生させる駆動源31を備える。駆動源31からの駆動力は、各足置台211、212にそれぞれ伝達されるように系統分離部32において2系統に分離される。さらに、系統分離部32で分離された各系統の駆動力は、往復駆動部33を介して左右の各台車41に伝達され、台車41をレール43に沿って往復移動させる。
【0042】
駆動装置30について、さらに具体的に説明する。駆動源31には回転モータ(以下、単にモータと略称し、符号31を用いる)を採用しており、モータ31の出力軸311には系統分離部32が連結される。
【0043】
系統分離部32は、モータ31の出力軸311に連結されたウォーム321と、ウォーム321に噛合する2個のウォームホイール322とを備える。ウォーム321および2個のウォームホイール322は、ベース板11に固定されるギアボックス34に収納される。ギアボックス34は、上面に開口を有するギアケース341と、ギアケース341の開口面に覆着される蓋板342とにより形成される。ギアケース341と蓋板342との間にはウォーム321の長手方向の両端部を回転可能に支持する一対の軸受323が取り付けられる。
【0044】
ウォームホイール322には、ギアケース341と蓋板342とに保持される回転軸35が挿通され、ウォームホイール322の回転に伴って回転軸35が回転するように、ウォームホイール322と回転軸35とを結合してある。
【0045】
モータ31は、ギアケース341に設けた口受部343とベース板11に固定した口受板111とに載置され、ギアケース341に覆着される蓋板342と口受け板111に結合される押さえ板112とによりベース板11に固定される。
【0046】
往復駆動部33は、回転軸35に一端部が一体に結合されるクランク板36と、クランク板36にクランク軸37を介して結合されたクランクロッド38とを備える。クランク板36は回転軸35とともに回転するように回転軸35に結合される。すなわち、ウォームホイール322は回転軸35に結合され、回転軸35にはクランク板36が結合されるから、ウォームホイール322とクランク板36とは一体に回転する。
【0047】
クランク軸37の一端部はクランク板36の他端部に固定され、クランク軸37の他端部はクランクロッド38の一端部に保持された軸受381に保持される。つまり、クランクロッド38の一端部はクランク板36に対して回動自在に結合される。クランクロッド38の他端部は台車41に対して軸体382を用いて結合される。つまり、クランクロッド38の他端部は台車41に対して回動自在に結合される。
【0048】
上述の構成から明らかなように、クランクロッド38は、ウォームホイール322の回転力を台車41の直進往復移動に変換する変換機構として機能する。また、クランクロッド38はウォームホイール322ごとに設けられ、台車41は各足置台211、212において個別に設けられている。それゆえ、各クランクロッド38は、各ウォームホイール322の回転力をそれぞれ足置台211、212の往復移動に変換する。
【0049】
台車41は上述のように移動経路が拘束されているから、ウォームホイール322の回転に伴って台車41がレール43の長手方向に沿って往復移動する。つまり、モータ31の回転がウォーム321およびウォームホイール322を介してクランク板36に伝達され、さらに、クランク板36に結合されたクランクロッド38により台車41がレール43に沿った直線上で往復移動を行うのである。その結果、台車41に結合されている足置カバー22がレール43に沿って往復移動する。つまり、両足置台211、212がレール43の長手方向において往復移動する。
【0050】
ここに、ウォーム321と2個のウォームホイール322とにより駆動力を2系統に分離し、各系統ごとに足置台211、212の駆動力として用いるから、両足置台211、212は駆動装置30により関連付けて駆動される。各ウォームホイール322はウォーム321に噛合する位置を180度異ならせてある。そのため、左側の足置台211が移動範囲の後端に位置するときには、右側の足置台212は移動範囲の前端に位置する。左側の足置台211の移動範囲における後端は左側の足置台211の移動範囲の右端であって、右側の足置台212の移動範囲における前端は右側の足置台212の移動範囲の右端であるから、左右方向においては、両足置台211、212は同じ向きに移動することになる。
【0051】
ところで、各足置台211、212にそれぞれ設けた足置板23は足置カバー22に対して軸体26の周りで回動可能であるから、上述のように、足置板23は前端部と後端部との高さ位置は相対的に変化する。つまり、足置板23の上に置いた足の爪先と踵との高さ位置が変化するから、足関節の底屈と背屈とが可能になる。
【0052】
ここで、軸体26の周りでの足置板23の回動をレール43の延長方向に沿った往復移動に連動させるために、ベース板11には、足置板23の移動経路に沿って少なくとも一部に傾斜面を有したガイド面(図示せず)が形成され、足置板23の下面にはガイド面に当接する倣い突部231が設けられる。倣い突部231の先端部は、ガイド面に対する摩擦係数が小さくなるように材料および形状を選択しておけばよいが、本実施形態では、ガイド面の上で転動するローラ232を倣い突部231の先端部に設けている。
【0053】
上述のように、ガイド面に当接する倣い突部231を設けていることにより、モータ31の回転に伴って各足置台211、212が往復移動を行うと、倣い突部231がガイド面に沿って移動し、足置板23が軸体26の周りで回動する。すなわち、足置板23のベース板11に対する角度が変化し、結果的に足関節の底屈および背屈が行われる。
【0054】
ガイド面の形状についてはとくに制限はないが、本実施形態では、足置台211、212の1往復の間に足関節の底屈と背屈とを1回ずつ行うようにガイド面を形成する。したがって、ガイド面としては、全長に亘ってベース板11の上面に対して一定角度で傾斜する形状か、中間部において傾斜の向きが変化する形状(V字状、U字状、逆V字状、逆U字状など)を採用することが望ましい。
【0055】
上述した刺激装置は立位で使用する。この場合、足置台211、212が停止している初期位置において、左右の足をそれぞれ足置台211、212に載せて立ち、駆動装置30の運転を開始させる。足置台211、212の長手方向は前後方向(矢印Xの向き)に対して、10度程度の角度をなすように配置され、足置台211、212の上に立ったときに、使用者の脚部に捻れを生じることがなく、自然な立ち位置になるようにしてある。
【0056】
初期位置では、両足置台211、212は前後方向における同じ位置に停止する。すなわち、初期位置では両足置台211、212が左右方向の一直線上に並ぶ。したがって、初期位置で使用者が両足をそれぞれ左右の足置台211、212の上に載ると、使用者の重心から鉛直方向に下ろした直線は両足置台211、212の間でほぼ中央を通ることになる。
【0057】
モータ31の回転を開始すると、両足置台211、212はそれぞれ前後方向の位置を変化させるとともに、前後方向の位置変化に伴って左右方向の位置も変化させる。このとき、両足置台211、212はレール43に沿った一直線上を往復移動し、各足置台211、212は足の前後方向(長手方向)とは異なる方向に移動する。たとえば、ハウジング10の前後方向に対して45度をなす方向に移動する。
【0058】
また、足置台211、212がレール43に沿って往復移動すると同時に、足置板23が軸体26の周りに回動する。たとえば、足置板23が前方に移動する際に、倣い突起25が上方に移動するようにガイド面を形成しておけば、足置台211、212の前端位置において足関節を背屈させ、足置台211、212の後端位置において足関節を底屈させることができる。軸体26の位置は足裏において踵付近に設定し、底屈と背屈との角度はベース板11の上面に対してそれぞれ10度程度に設定する。
【0059】
なお、足置台211、212の前後の位置と底屈および背屈との関係は上述の例とは逆にすることが可能である。また、ベース板11の上面に対する底屈および背屈の角度は異ならせてもよい。これらの動作はガイド面の形状を適宜に設定することにより、容易に実現することができる。
【0060】
図2、図3に示す構成では、使用者の上体を支持する構成を設けていないが、使用者が把持する手摺を設けてもよい。手摺はハウジング10に一体に設けるほか、装置を使用する場所において造営物側に設けるようにしてもよい。手摺を設けておけば手摺によって使用者は身体を支えることができるからバランス機能が衰えている使用者でも利用しやすくなる。なお、立位で使用することが基本であるが、障害の回復訓練などに用いる目的であって、立位が困難な場合には座席を設けて着座姿勢で利用してもよい。
【0061】
上述の構成例では、足置台211、212の移動軌跡は前方に開放されたV字状になるが、逆に、足置台211、212の左右方向の距離を前端側よりも後端側で広くなるようにして逆V字状の移動軌跡を採用してもよい。あるいは、足置台211、212の前端位置と後端位置とで距離が変化しない動作や、移動軌跡の左端と右端との位置が前後方向において変化しない動作を採用してもよい。
【0062】
上述した刺激装置は、以下に説明する計測装置と組み合わせることによって、使用者の歩行機能あるいは運動能力の検査を行うだけではなく、歩行機能あるいは運動機能を向上させるための運動を行う装置としても用いられる。
【0063】
上述の動作では、足関節の底屈と背屈とが行われるから、ふくらはぎの筋群(腓腹筋等)への筋刺激が増加し、ふくらはぎの筋群の伸縮に伴って脚部からの静脈環流が促進される。このことは、全身の血行の向上につながる。また、足関節が回動することにより使用者は前後方向のバランスを維持する筋群が刺激され、とくに前後方向において転倒しないように姿勢を維持する神経系の反射によって、脚部だけではなく、腰背部の筋群の筋活動も誘発されることになる。
【0064】
モータ31の回転速度などの制御は、図示しない制御手段からの指示により行われる。制御手段は、もっとも単純にはモータ31への電源の入切を行う構成でよい。また、モータ31が直流モータであれば、モータ31に通電する電流をスイッチング素子によって断続させるとともに、スイッチングの際のオンデューティを変化させることにより、モータ31に供給する平均電力を調節するように制御手段を構成してもよい。さらには、使用者の身体状態に併せて、使用時間を設定する機能、モータ31の回転速度を経過時間に応じて変化させる機能などを制御手段に設けてもよい。
【0065】
以下では、上述した刺激装置を用いて歩行機能ないし運動能力を評価する情報(以下、「歩行機能情報」という)の計測を行う技術について説明する。本実施形態では、歩行機能情報として7種類を例示するが、他の歩行機能情報を計測してもよい。以下に説明する歩行機能情報のうちの4種類は使用者による自発的な動作を伴わずに計測することができるが、残りの2種類は使用者による自発的な動作によって計測する。
【0066】
計測に自発的な動作が不要な歩行機能情報は、(1)使用者の足全体に作用する荷重の重心位置、(2)左右の足ごとに作用する荷重の大きさ、(3)左右の足ごとに作用する荷重の重心位置の変化、(4)左右の足ごとに作用する荷重の特定状態での位置である。また、計測に自発的な動作が必要である歩行機能情報は、(5)足を踏み込むタイミング、(6)足を踏み込む力の大きさ、(7)爪先と踵とに作用する荷重の大きさである。以下では、7種類の歩行機能情報を、上に記載した順番で、第1情報、第2情報、…、第7情報という。
【0067】
第5情報(足を踏み込むタイミング)および第6情報(足を踏み込む力の大きさ)の計測には、自発的な動作を伴うが、この動作は足に踏み込む(踏ん張るように力を入れる)だけであり、歩行が困難な使用者でもその場で足を踏み込む動作は可能な場合がある。したがって、第5情報および第6情報を計測したとしても、従来の構成のように歩行を必要とする場合に比べると、歩行機能の計測を行うことができる利用者の範囲が広がる。
【0068】
歩行機能情報を計測するために実際に計測する物理量は、足置台211と足置台212とに作用する荷重を用いる。すなわち、図1に示すように、足置台(第1の足置台)211に作用する荷重を検出する荷重センサ(第1の荷重センサ)611と、足置台(第2の足置台)212に作用する荷重を検出する荷重センサ(第2の荷重センサ)612とが設けられる。荷重センサ611、612は、足置台211、212に作用する荷重を検出することができれば、配置する位置はとくに問わないが、各足置台211、212にそれぞれ設けた足置板23に配置することが望ましい。
【0069】
荷重センサ611、612は、足置台211、212ごとに1個ずつ設けるほか、足置台211、212ごとに4個ずつ設けてもよい。4個の荷重センサ611は、足置台211の足置板23の表面に平行な面内において一直線上に並ばないように配置される。したがって、4個の荷重センサ611で計測される荷重から、足置台211に作用する荷重の重心位置などの代表点の位置が求められる。4個の荷重センサ611の配置位置としては、足置板23の四隅が好ましい。ここでは、足置台211の足置板23について説明したが、足置台212の足置板23についても、同様にして、4個の荷重センサ612が配置される。荷重センサ611、612には歪みゲージあるいはロードセルを用いる。
【0070】
ただし、足置台211、212ごとに荷重センサ611、612を4個ずつ設けることは必須ではなく、足置台211、212ごとに3個以上の荷重センサ611、612を一直線上に並ばないように設ければよい。すなわち、足置台211、212に作用する荷重を異なる3箇所以上の位置で計測するように、荷重センサ611、612を3個以上設けておけばよい。
【0071】
また、荷重センサ611、612は、足置板23の上面に作用する荷重の分布を計測する構成であってもよい。この種の荷重センサ611、612は、感圧式タッチパネルと同様の構成であって、シート部材に多数個の感圧部が配置されており、感圧部ごとに作用している荷重を取り出すことが可能になっている。すなわち、この構成の荷重センサ611、612は、足置板23に作用する荷重の大きさと位置とを対応付けて検出する。
【0072】
足置台211、212の荷重を検出する荷重センサ611、612の種類と、荷重センサ611、612を配置する位置とは、以下に説明する歩行機能情報の種類に応じて選択することが可能である。以下では7種類の歩行機能情報を計測するために、4個の荷重センサ611、612を用いる場合を想定するが、荷重の分布を計測する荷重センサ611、612を用いてもよい。
【0073】
第1情報(使用者の足全体に作用する荷重の重心位置)を計測するには、左右の足置台211、212にそれぞれ作用する荷重の大きさと、足置台211、212ごとに荷重の重心の位置とを求める。荷重の重心の位置は、上板12の上面に平行な面内において、たとえば、上板12の前後方向における前向きをX方向の正の向き、上板12の左右方向における左向きをY方向の正の向きとして、2次元の座標を求める。
【0074】
具体的には、足置台211に作用する荷重の大きさがw1かつ重心の位置が(x1、y1)であり、足置台212に作用する荷重の大きさがw2かつ重心の位置が(x2、y2)であるとすれば、重心の座標(xg、yg)は、以下のようにして求める。すなわち、xg=(w1・x1+w2・x2)/(w1+w2)、yg=(w1・y1+w2・y2)/(w1+w2)になる。さらに、駆動装置30を動作させて第1情報を計測している場合、重心の座標(xg、yg)は時間とともに変化するから、左右の足置板23の変位の複数周期分の平均値を用いることが好ましい。第1情報をこのようにして求める場合は、荷重センサ611、612として、足置板23の四隅に設ける構成を採用することができる。
【0075】
足置板23の上面に作用する荷重の分布を検出する荷重センサ611、612を用いる場合は、足置板23ごとに荷重の重心を求めることによって同様の演算を行う。ただし、この種の荷重センサ611、612を用いる場合は、両方の足置板23についてすべての荷重と位置との組み合わせから重心位置を求めてもよい。
【0076】
第1情報は、使用者の足全体に作用する荷重の重心位置に関する情報であるから、求めた重心の位置が適正な位置範囲に収まっているか否かを評価することが好ましい。すなわち、使用者が足置板23において規定されている位置に立った状態での適正な重心の位置範囲(座標範囲)を規定しておき、求めた重心の位置がこの範囲を逸脱するときには、使用者の身体のバランス機能に異常の可能性があると判断することができる。また、位置範囲を複数段階に設定し、重心の位置がどの範囲に属するかに応じて、バランス機能の程度を評価することも可能になる。図5(a)に第1情報として計測された重心位置700の例を示す。
【0077】
第2情報(左右の足ごとに作用する荷重の大きさ)を計測するには、第1情報の計測と同様に、左右の足置台211、212にそれぞれ作用する荷重の大きさを求める。第2情報は、左右の足置板23に作用する荷重を計測するだけであり位置の情報が不要なので、第1情報の計測と同時に計測してもよい。すなわち、第2情報としては、左右の足置台211、212に作用する荷重の大きさw1、w2が求められる。ここに、第2の情報としては荷重の絶対値ではなく、左右の荷重の比率に意味があるので、{w1/(w1+w2)}×100%:{w2/(w1+w2)}×100%を求めることによって、荷重が左右に偏っている程度を評価することが好ましい(図5(b)参照)。左右の荷重の比率は図5(b)のように、バーの長さによって表される。また、第1情報と同様に、足置板23の変位の複数周期分の平均値を第2情報に用いることが好ましい。
【0078】
上述したように、第1情報および第2情報は、使用者の身体の偏りを反映する情報であり、必ずしも両方の情報が必要というわけではなく、一方のみを計測するだけでも目安が得られる。また、第1情報と第2情報とは、足置板23の変位の複数周期分について平均値を求めているが、瞬時値を計測するとともに、足置板23の位置変化と重心の座標(xg、yg)の変化に対応付けてもよい。さらに、使用者のバランス機能によっては、足置板23を変位させると使用者が対応できない場合も考えられるから、その場合は、駆動装置30を停止させ、使用者が静止して立っている状態で第1情報と第2情報とを求めることも可能である。
【0079】
第1情報および第2情報が、使用者の荷重の偏りを評価するための計測であるのに対して、第3情報および第4情報は、使用者による荷重の支持の仕方を評価するための計測である。すなわち、第3情報は、左右の足ごとに作用する荷重の重心位置の変化であり、第4情報は、左右の足ごとに作用する荷重の重心の特定状態での位置である。
【0080】
第3情報は、足置板23を変位させたときに、使用者が足裏のどの部位で荷重を支持するかを評価する情報であって、刺激装置における駆動装置30を動作させた状態で、足置板23に作用する荷重の代表点(たとえば、重心)の位置の変化が計測される。左右の足置板23ごとに荷重の代表点の位置を求めると、足置板23が変位する間に代表点の位置も変化するから、たとえば、図5(c)に示すような代表点の位置の軌跡705、706が得られる。なお、軌跡705,706は足の輪郭形状とともに表示し、足裏のどの位置に荷重が作用したかの目安を表示することが好ましい。
【0081】
一方、第4情報は、足置板23を変位させている状態で、足置板23に作用した荷重のピーク値が得られたとき(すなわち、特定状態)の重心の位置である。この情報は、歩行時において、蹴り出す際に力を入れる部位に対応する。したがって、第4情報として得られる位置は、図5(d)のように、一般的には、足裏の前半部に位置することになる(力が入る部位を黒丸721、722で表している)。
【0082】
第5情報は、足を踏み込むタイミングの情報であって、足置板23を変位させている状態で足置板23を踏み込むタイミングを使用者に指示し、指示したタイミングと足置板23を踏み込んだタイミングとの関係を評価するために用いられる。図5(e)の記載例では、足置板23を踏み込む力の計測値を示す線上に、足置板23を踏み込むタイミングを示すマーク701を付記している。
【0083】
第6情報は、足置板23を変位させている状態で足を踏み込む力の大きさの情報であって、足置板23に作用した荷重のピーク値(図5(f)参照)を示すバー702を用いればよい。第6情報を計測することにより、歩行時における蹴り出しの力の目安を得ることができる。
【0084】
第7情報は、足置板23を変位させている状態で、足置板23の爪先側と踵側とに作用する荷重の大きさを表す情報であって、爪先側と踵側との荷重の比率を求めるか、全荷重を当該比率で分配した荷重を求める。第7情報は、第6情報と同様に、荷重のピーク値を示すバー707、708を用いて表示される(図5(g)参照)。第7情報を計測することにより、歩行時における前後のバランスの目安を得ることができる。なお、荷重のピーク値ではなく荷重の時間変化を記録すれば、前後方向における体重移動を評価することが可能である。
【0085】
上述した7種類の歩行機能情報は、すべてを計測することが望ましいが、使用者の運動機能に応じて、適宜に組み合わせて用いればよい。以下に説明する刺激装置および計測装置は、7種類の歩行機能情報のすべてを計測する構成例を示すが、計測する歩行機能情報の種類に応じて適宜に構成要素の省略や置換を行うことが可能である。
【0086】
上述した機能を実現する運動能力検査装置を以下に説明する。運動能力検査装置は、図1に示すように、基本的には、立位である使用者の下肢部に筋刺激を与える刺激装置50と、刺激装置50による筋刺激に関連する使用者の身体の応答に関する情報を計測して出力する計測装置60とを備える。また、計測装置60により計測された情報は、適宜の表示装置70に出力されることにより可視化される。計測装置60および表示装置70は、個別の装置として提供することが可能であるが、適宜のプログラムを実行することにより汎用のコンピュータを計測装置60および表示装置70として機能させてもよい。
【0087】
表示装置70は、手摺101(図4参照)に設けた表示器102に組み込まれており、使用者が刺激装置50を使用する際に、表示装置70の画面に表示される表示内容が使用者に提示される。なお、表示器102の表示装置70とは別に、表示装置70を追加して設けることにより、複数の表示装置70を設けてもよい。この場合、表示装置102の表示装置70は、主として使用者に提示する情報を表示し、他の表示装置70は、機能回復訓練を指導する医師あるいは理学療法士が利用する情報を表示すれば利便性が高くなる。もちろん、各表示装置70の表示内容は同じであってもよい。
【0088】
刺激装置50は、駆動装置30により足置台211、212を時間経過に伴って変位させる下肢刺激部51と、第5情報を計測するために足置板23を踏み込むタイミングを指示するタイミング指示部52とを備える。タイミング指示部52は、駆動装置30による足置台211、212の変位に合わせて使用者に足を踏み込むタイミングを指示する。また、刺激装置50は、駆動装置30およびタイミング指示部52に動作タイミングを指示する制御装置53を備える。タイミング指示部52は、使用者に対して視覚的あるいは聴覚的に指示を与えるようにすればよい。たとえば、タイミング指示部52を発光素子あるいはブザーにより構成し、足を踏み込むタイミングに合わせて発光素子を瞬時的に点灯させるかブザーを瞬時的に鳴動させればよい。
【0089】
一方、計測装置60は、上述した荷重センサ611、612に加えて、荷重センサ611、612が検出した荷重のデータをそれぞれ出力する荷重出力部62を備える。荷重出力部62は、刺激装置50における足置板23の動作(制御装置53による制御のタイミング)に関連付けて、荷重センサ611、612ごとに、時間経過に伴う荷重の変化を出力する。なお、足置板23が変位する際の位置の情報は、図示しないエンコーダのような位置センサにより検出されているものとする。荷重出力部62から出力された情報は、演算部600に入力される。第2情報および第6情報は、荷重の大きさと荷重が作用するタイミングとの関係がわかれば求めることができるから、演算部600は荷重出力部62から出力された情報を用いて第2情報、第6情報、および第7情報を求める。
【0090】
さらに、計測装置60は、荷重センサ611、612が検出した荷重のデータを用いて足置台211、212に作用する荷重の代表点(たとえば、重心)の位置を算出する荷重位置算出部63を備える。すなわち、荷重位置算出部63は、足置板23が変位する周期よりも十分に短い一定周期で足置板23ごとに荷重の代表点の位置を算出する。荷重位置算出部63が算出した荷重の代表点の位置は、荷重位置出力部64に与えられる。荷重位置出力部64は、両方の足置板23に作用する荷重の全体について足置板23の変位の複数周期における重心位置の平均値を算出する。また、荷重位置出力部64は、足置板23の変位に伴う足置板23ごとの重心位置の軌跡と、各足置板23に作用する荷重がピーク値になったときの足置板23ごとの代表点の位置とを出力する。したがって、荷重位置出力部64は、荷重位置算出部63から出力された情報を用いて第1情報、第3情報、第4情報を求める。
【0091】
ここで、荷重の分布を求める荷重センサ611、612を用いている場合、計測装置60は、荷重センサ611、612が検出した荷重の分布を出力する荷重分布出力部65を備えることが好ましい。荷重分布出力部65は、一定周期で荷重の分布を求めるから、荷重分布出力部65から出力される情報量は多くなるが、濃淡画像に対する処理と同様に扱うことができる。すなわち、荷重分布出力部65を設ける場合、荷重位置算出部63は、荷重が作用する位置を画素の位置とし、各位置に作用する荷重の大きさを濃淡値に対応付ければよい。このような対応付けにより、荷重位置算出部63は、デジタル画像処理における濃淡画像に対する処理と同様の技術を用いて、荷重の代表点の位置を算出する。
【0092】
第5情報を計測するには、刺激装置50に設けたタイミング指示部52と、タイミング指示部52による指示のタイミングと荷重センサ611、612が検出した情報とを関係付けて出力する比較出力部66とが必要である。タイミング指示部52は、足置板23の変位の周期に対して同期または非同期である適宜のタイミングで、使用者に対して足置板23を踏み込むように指示する。ここに、使用者は左右の足を異なる足置板23に載せているから、足ごとに踏み込むタイミングを指示する。
【0093】
比較出力部66は、タイミング指示部52が指示した踏み込むタイミングと、使用者が実際に足置板23を踏み込んだ応答のタイミングとを比較できるように出力する。また、望ましくは、足置板23の位置も出力する。これらの情報を比較すれば、使用者が意識的に身体を動かす際の動きの速さの目安を得ることができる。
【0094】
上述のようにして、7種類の歩行機能情報を求めた後、歩行機能の評価が容易になるように形式を整えて表示装置70に表示される。表示装置70に歩行機能情報の評価を表示するために、図1の構成例では、7種類の歩行機能情報に関して基準値を記憶する基準値記憶部67と、基準値記憶部67に記憶している基準値を用いて計測した情報を正規化する正規化部68とを設けている。正規化部68は、個々の歩行機能情報の絶対値を求めるのではなく、使用者の歩行機能を専門家が評価する際に、各歩行機能情報の基準値からのずれ量が同程度であると認識できるように調節する。
【0095】
正規化部68で正規化された歩行機能情報は表示制御装置71に与えられる。表示制御装置71は、正規化された歩行機能情報(実線704で結んでいる値)を、図6のようなレーダーチャートの形式で基準値(一点鎖線703で結んでいる値)とともに表示装置70に表示する。すなわち、表示制御装置71は表示装置70への表示内容を生成する。したがって、歩行機能情報で示される歩行機能のうちのどの機能が基準値に対して、優れているか劣っているかの判断を直観的に行うことができる。
【0096】
たとえば、使用者が手術後であって機能回復訓練を必要とする場合に、まず使用者の歩行機能の状態を知る必要があるから、上述した7種類の歩行機能情報を計測する。歩行機能情報を計測するにあたっては、使用者が足置板23に足を載せた状態で駆動装置30により足置板23を変位させる。このとき、使用者にはとくに意識付けを行わずに、駆動装置30に載せて30秒〜1分程度の計測を行って第1情報、第2情報、第3情報、第4情報を計測する。その後、タイミング指示部52を用いて踏み込むタイミングを指示し、使用者にはタイミング指示部52が指示するタイミングで足置板23を踏み込むように指示して、踏み込むタイミングと踏み込む際の荷重の大きさとを計測する。すなわち、第5情報および第6情報を計測する。
【0097】
上述のように歩行機能情報を計測すれば、表示装置70には、図6のように基準値と比較したレーダーチャートが示される。図6に示すレーダーチャートにおいて、(1)〜(7)は、それぞれ第1情報〜第7情報に対応する。したがって、機能回復訓練を指導する医師あるいは理学療法士が、使用者(訓練対象者)について、どの機能についてどの程度の運動を行えばよいかを決定する際の支援を行うことができる。なお、表示装置70には、レーダーチャートのほかに、各歩行機能情報ごとの詳細な情報を表示してもよい。たとえば、第1情報、第2情報、第3情報、第4情報、第5情報、第6情報、第7情報は、それぞれ、表示装置70に図5(a)〜(g)のような形式で表示される。図示例は一例を示しているだけであって、他の形式で表示してもよいのはもちろんのことである。
【0098】
計測した歩行機能情報は、表示装置70に表示する図形とともに、使用者および計測した日時に対応付けて蓄積装置72に蓄積することが好ましい。また、蓄積装置72に蓄積された情報を利用するために、蓄積装置72に蓄積された情報を取り出す取出装置73を設けることが好ましい。
【0099】
蓄積装置72は、ハードディスク装置のほか種々の記録媒体を用いることができる。また、着脱可能な半導体メモリを蓄積装置72として用いることによって、他装置で内容を確認することが可能になる。さらには、構内通信網や広域通信網において設けられ通信によってアクセスすることが可能な記憶装置を蓄積装置72に用いることによって、歩行機能情報を遠隔地で確認することが可能になり、また、複数人で計測結果を利用することが可能になる。この場合、取出装置73として、閲覧用のプログラムを搭載したコンピュータや情報端末を用いることができる。
【0100】
上述のように、表示装置70の画面上で歩行機能情報を確認可能にし、また蓄積装置72に蓄積することによって、紙媒体が不要であって環境負荷の低減につながり、また、電子カルテと連動させることが可能になる。
【0101】
ところで、本実施形態で示した刺激装置50は足置板23を駆動装置30により変位させる機能を備えているから、使用者は足置板23に載っているだけで、下肢の筋肉が刺激され、他動的に筋刺激を受けることになる。すなわち、刺激装置50は、歩行機能情報の計測に用いるだけではなく、歩行機能の回復訓練にも兼用して用いることが可能である。刺激装置50を機能回復訓練にも用いる場合には、計測した歩行機能情報について目標を設定するように運動プログラムを作成すれば、表示装置70での表示内容に目標の表示を加えるだけで、機能回復訓練の際の意識付けも行うことが可能になる。
【0102】
たとえば、運動プログラムは、(1)意識せずに刺激装置50に載る運動、(2)第1情報について重心の位置が目標範囲に収まるように意識して行う運動、(3)第2情報について左右の荷重が等しくなるように意識して行う運動から選択される。また、(4)第3情報について目標として設定された軌跡に一致させるように意識して行う運動、(5)第4情報について踏み込み時の荷重の位置を意識して行う運動も運動プログラムとして選択できる。あるいはまた、(6)第5情報について指示されたタイミングを意識して行う運動、(7)第6情報について強く踏み込むことを意識して行う運動、(8)第7情報について前後の荷重が等しくなるように意識して行う運動も選択可能である。
【0103】
上述した構成例では、計測装置60が実際に計測する情報が荷重センサ611、612により計測される荷重のみを例示したが、使用者の発汗量、血流量、体温、姿勢などから選択される生理情報を併せて計測してもよい。これらの生理情報を計測することにより、使用者の体力のような情報も併せて知ることができるから、より適切な運動プログラムを作成することができるようになる。
【0104】
ところで、上述のように運動プログラムを作成し機能回復訓練を行う場合に、(1)の運動を除くと、使用者は、適切な運動を行うために、意識的に身体を操作することが必要である。しかしながら、機能回復訓練を行う使用者にとっては、意識した通りに身体を操作する(動かす)こと自体が困難であるから、単に意識付けを行っただけでは運動を適切に行えない場合がある。
【0105】
以下では、機能回復訓練を行う使用者に、使用者の意識(脳機能)と特定部位の身体機能とを関連付けるように訓練を行うための指導情報を提示する機能について説明する。指導情報は、特定部位の身体機能について目標や指針を与える情報であって、使用者は、目標を達成するように身体操作を行うように意識したり、指針に従って身体操作を行うように意識することによって、特定部位の身体機能を強化する訓練が可能になる。すなわち、指導情報に従って機能回復訓練を行うことによって、徐々に意識と身体機能とを関連付けることを可能になるのである。
【0106】
指導情報は、基本的には表示装置70を通して使用者に視覚的に提示される。ただし、上述したタイミング指示部52と同様に、タイミングを指示する場合には聴覚的に指示を行うことも可能である。表示装置70を用いて指導情報を示すために、表示制御装置71は、計測装置60が計測した結果の情報を表示装置70に出力するだけではなく、刺激装置50を使用する使用者に対する指導情報を出力する指導情報出力部711を備える(図1参照)。また、表示制御装置71は、計測装置60が計測した結果の情報(上述した第1情報〜第7情報)と、指導情報出力部711から出力された指導情報とを、表示装置70の画面の異なる領域に表示するために領域分割部712を備える。
【0107】
領域分割部712は、図7のように、指導情報を提示する指導表示領域A1と、計測装置60が計測した結果の情報を提示する結果表示領域A2とを表示装置70の画面に設定する。指導表示領域A1と結果表示領域A2とは、図7(a)のように、互いに重複しないように形成される場合と、図7(b)のように、一方の上に他方が重複するように形成される場合とがある。図7(b)示す例では、指導表示領域A1の右上隅に結果表示領域A2が重ねて表示されている。
【0108】
表示制御装置71は、表示装置70の画面に、使用者の属性(名前、年齢、体重、病歴など)、刺激装置50の動作に関する属性(運転動作、運動強度、経過時間など)などを表示させてもよい。運転動作は、上述した7種類の歩行機能情報のうちのどの歩行機能を計測しているかを示す属性であり、運動強度は、刺激装置50による使用者への刺激の強度を示す属性である。なお、表示制御装置71は、結果表示領域A2に表示される情報のみを別に設けた表示装置に出力するためのインターフェースを備えていてもよい。
【0109】
表示装置70の画面に指導表示領域A1と結果表示領域A2とを併せて表示する場合、機能回復訓練を行う使用者にとっては、結果表示領域A2に示される結果の情報よりも指導表示領域A1に示される指導情報のほうが重要である。上述したように、指導情報は機能回復訓練に際して身体操作の目標あるいは指針となる情報であるから、機能回復訓練を行っている間には、使用者に対して指導情報が示されていなければならない。
【0110】
そのため、領域分割部712は、表示装置70の画面に占める指導表示領域A1の面積を、結果表示領域A2の面積よりも大きくするように画面分割を行う。また、使用者にとって指導表示領域A1の内容が視認しやすいように、領域分割部712は、指導表示領域A1のコントラストを結果表示領域A2のコントラストよりも大きくする。
【0111】
ところで、使用者は、上述した装置を用いることによって、歩行機能を回復ないし強化するための以下の7種類の訓練が可能になる。(1)重心位置を保つ訓練、(2)左右の荷重を調節する訓練、(3)左右に荷重を移動させる訓練、(4)足裏に作用する荷重の位置を調節する訓練、(5)踏込タイミングを調節する訓練、(6)踏込力を強化する訓練、(7)前後の体重バランスを保つ訓練。これらの7種類の歩行機能訓練について、以下では、上に記載した順番で、第1訓練、第2訓練、…、第7訓練という。
【0112】
上述した指導情報は、歩行機能訓練ごとに異なっている。以下では、歩行機能訓練の首種類ごとに指導表示領域A1に提示される指導情報の例について説明する。また、結果表示領域A2に提示される計測情報の例についても併せて説明する。指導情報は、上述したように、機能回復訓練の際の目標や指針を与えることが目的である。したがって、指導情報として、基本的には、達成すべき目標を示す情報と、目標を達成するための方向性を示す情報と、目標が達成されたときに達成を示す情報とに分類することができ、これらの情報が単独でまたは複合して用いられる。
【0113】
第1訓練(重心位置を保つ訓練)に用いる指導情報を図8に例示する。図8(a)は、目標とする重心の位置を示すマーク811と、使用者の重心を移動させる向きを示す矢印812とを指導情報とする例である。すなわち、使用者は、矢印812で示される向きに重心を移動するように意識することにより、使用者の重心を目標である重心の位置を示すマーク811に近づける訓練を行うことになる。すなわち、使用者の重心を目標の位置に保つ訓練を行うことになる。
【0114】
矢印812は、単独で示してもよいが、図8(a)のように、たとえば8方向を示す8本の矢印812を表示しておき、所要の向きの矢印812を、他の矢印812とは異なる表示(斜線部で示す)で示してもよい。矢印812で示す向きは、目標の位置を示すマーク811と計測した使用者の重心の位置(第1情報の計測技術を参照)との位置関係を用いることによって指導情報出力部711が決定する。
【0115】
図8(b)は、不安定な物体813の上に使用者を仮想的に表す人体モデル814が立っている状態を示す画像を指導情報に用いる例である。物体813は、玉乗りの玉やサーフボード、スノーボードなど(図示例は玉)、前後左右の変位を表すことができれば、どのような物体813であってもよい。図8(b)の指導情報を用いる場合には、目標の位置に重心を保つための重心移動の向きを矢印815で示す。
【0116】
図8(a)(b)の形式の指導情報では、使用者の重心の位置と目標の位置との差がわからないから、差に応じた長さあるいは太さの矢印812,815を用いて、差の程度を示すようにしてもよい。
【0117】
図8(c)は、目標とする重心の位置を中心とする3重の同心円と十字に交差する2本の直線とを用いて表した的状のパターン816を用い、使用者の重心の位置を示すマーク817も同時に表示する。指導情報が図8(c)の形式で表示される場合、使用者はパターン816の中心にマーク817を合わせるように荷重の移動を意識することにより歩行機能訓練を行うことができる。また、この例では、使用者の重心の位置と目標の位置との相対関係がわかるので矢印は不要である。ただし、パターン816において前後を示すことは必要である。図示例では、上を前方として指導情報を示している。
【0118】
なお、上述した例は、左右方向だけではなく前後方向においても重心を保持する訓練を想定しているが、左右方向についてのみ重心の位置を保つ訓練を行うようにしてもよい。この場合、指導情報は、図8(d)のように、左右の足型と左右方向の中央を示すセンターラインとによるパターン818を用い、使用者の重心の位置を示すマーク819も同時に表示すればよい。指導情報が図8(d)の形式で示される場合、使用者はマーク819をパターン818のセンターラインに合わせるように意識することにより歩行機能訓練を行うことができる。
【0119】
歩行機能訓練の際には、音声メッセージを併用することが好ましい。第1訓練では、「重心を中央に保ってください」という内容の音声メッセージを用いる。音声メッセージを出力するタイミングは、刺激装置50の使用開始時のほか、適宜に設定した一定の時間間隔でもよい。また、使用者の重心の位置と目標とする位置との距離に閾値を規定し、距離が閾値を超えたときに音声メッセージを出力するようにしてもよい。
【0120】
第1訓練を行う場合、結果表示領域A2には、上述した第1情報と同様の表示を行えばよい。また、図8(c)、図8(d)に示した指導情報と同様の形式で表示し、かつ使用者の重心位置が目標の位置に対してずれている程度を数値化した数値情報を結果表示領域A2に併せて表示するようにしてもよい。結果表示領域A2に数値情報が表示されていれば、使用者の能力を的確に把握することができるから、機能回復訓練を指導する医師あるいは理学療法士にとってはより適正な指導を行うための情報が得られることになる。
【0121】
第2訓練(左右の荷重を調節する訓練)と第3訓練(左右に荷重を移動させる訓練)に用いる指導情報は図9に例示するように共通にすることが可能である。図9(a)に示す例では、下半身に相当するモデル821が表示され、モデル821における左右の脚に沿って踏み込む向きを示す矢印822が表示されている。したがって、使用者は、矢印822で示された向きに従って左右の脚のいずれかを踏み込むように意識付けられることになる。この場合、踏込力を示すために矢印822の大きさを変化させてもよい。
【0122】
図9(b)に示す例では、モデル823として足に相当する形状を採用しており、図9(a)に示した例と同様に、矢印824を用いて踏み込む向きを示している。さらに、図9(c)には、全身に相当するモデル825と矢印826とが指導情報として表示される例を示している。この指導情報では、主として左右に荷重を移動させるときの姿勢を示すように矢印826が示される。
【0123】
上述した指導情報に加えて、踏込力の大きさを示すために、図10に示す表示を用いてもよい。図10(a)は、図9(b)と同様に、足に相当する形状のモデル831を用いており、モデル831の大きさによって踏込力を示している。
【0124】
図10(b)は、膝下に相当する形状のモデル832と床に相当する形状のモデル833とを示しており、床に相当するモデル833に力の伝達を想像する形状のモデル834(静止画でも動画でもよい)を示している。したがって、モデル834の表示により踏み込む向きを示し、モデル834の深さによって踏込力が示される。また、踏込力の大きさをモデル834の色で示してもよい。この場合、踏込力の大きさを複数段階に分けてそれぞれ異なる色に対応付け、各段階の中間の踏込力は各段階に対応付けた色の中間色で表すようにしてもよい。たとえば、踏込力を3段階に分けるとともに、踏込力が小さいほうから、緑、黄、赤に対応付けているとすれば、踏込力が中段階と上段階との間では、中段階から上段階に向かって、黄から赤味が強くなるように、黄と赤との混色比を変化させるのである。
【0125】
図10(c)に示す例では、全身に相当するモデル835が左右に傾く板状のモデル836の上に載っている状態を示しており、板状のモデル836の傾きによって指導情報を示している。すなわち、モデル836が傾く向きにより踏み込む向きを示し、傾く角度により踏込力の大きさを示す。
【0126】
図10(d)に示す例は、図10(b)に示した例と同様であって、床に相当する形状のモデル833に代えて、クッション性ないし撓み性を有する部材に相当するモデル837を膝下に相当する形状のモデル838とともに示し、モデル837に凹み839を示すことにより踏込力を表している。すなわち、凹み839の位置により踏み込む向きが示され、凹み839の深さにより踏込力が示される。
【0127】
なお、図10に示した例では、指導情報に踏込力の目安が含まれているから、踏込力に目標値を設定しておき、目標値が達成されたときに、音で報知するようにしてもよい。第2訓練、第3訓練では、「左右に体重をかけてください」という内容の音声メッセージを用いることが好ましい。音声メッセージを出力するタイミングは、刺激装置50の使用開始時のほか、適宜に設定した一定の時間間隔でもよい。
【0128】
第2訓練を行う場合、結果表示領域A2には、上述した第2情報あるいは第3情報と同様の表示を行えばよい。たとえば、図5(b)に示した表示あるいは図5(c)に示した表示を行えばよい。踏込力に目標値が設定されている場合、図5(b)に示した表示に加えて目標値を示しておけば、測定値と目標値との関係が一目瞭然になる。
【0129】
図5(c)に示した表示を用いる場合、左右の足ごとの代表点の位置の軌跡を示すだけではなく、健足の軌跡を患足側の表示に重ねて表示してもよい。すなわち、健足における代表点の位置の軌跡の左右を反転し、患足における代表点の位置の軌跡に並べて表示してもよい。この表示を行えば、健足と患足とにおける代表点の位置の軌跡の差異を比較しやすくなる。また、図5(c)の例では、左右の足ごとの代表点の軌跡を足の輪郭形状とともに表示しているが、足の輪郭形状に代えて格子状の罫線を用いると、左右の足における代表点の軌跡の差を定量的に把握しやすくなる。
【0130】
第4訓練(足裏に作用する荷重の位置を調節する訓練)に用いる指導情報は、図11に示すように、足の形状に相当するモデル841と、荷重の位置を示すマーク842とにより表される。モデル841の位置は、刺激装置50の足置板23の前後の移動に合わせて前後に移動させることが望ましい。すなわち、指導表示領域A1には歩行を模擬した足の位置が示されることになる。また、マーク842の位置も、足置板23の前後の移動に合わせて移動させることが好ましい。たとえば、右足が左足よりも前方に位置するときに、右足は爪先側にマーク842が表示され、左足は踵側にマーク842が表示される。
【0131】
結果表示領域A2には、図12(a)のように、足を前後に2分割した領域D1,D2が表示されるか、図12(b)のように、足を左右に2分割した領域D3,D4が表示される。あるいはまた、結果表示領域A2には、図12(c)のように、前後と左右とに2分割ずつで4分割した領域D13,D14,D23,D24が表示される。また、分割数は4以上であってもよく、分割数が多いほど荷重の位置が詳細に表示される。荷重の位置は分割した領域を単位として表示され、荷重が作用している領域は他の領域とは異なる表示状態(図示例では斜線部)で表示される。斜線部に相当する表示状態は、輝度を変えたり、色を変えたりすることによって表現することができる。第4訓練における音声メッセージは、「爪先に力を入れてください」など、踏み込む部位を指示する内容とする。
【0132】
第5訓練(踏込タイミングを調節する訓練)に用いる指導情報を図13に示す。図13(a)に示す例は、図11に示した例と同様であって、足の形状に相当するモデル851と、荷重をかける位置を表すマーク852とを用いている。さらに、モデル851の側方に矢印853を示し、マーク852の位置に応じて矢印853の表示を変化させることも可能である。たとえば、荷重の位置を前・中・後と変化させる場合を想定すると、左右のモデル851にそれぞれ3本ずつの矢印853を対応付けて表示しておき、荷重の位置に応じて矢印853の先端の位置を変化させればよい。つまり、右足の荷重の位置を前とする場合には、右側で前に位置する矢印853を足に近づけ、左足の荷重の位置を後とする場合には、左側で後に位置する矢印853を足に近づければよい。また、荷重の位置を変化させることを示すために、前・中・後の位置ごとに報知音を付加してもよい。
【0133】
図13(b)に示す例では、マーク852や矢印853を用いずに、足の形状に相当するモデル854において荷重を作用させる領域の表示状態(図示例では斜線部)を他の部位とは異ならせている。斜線部に相当する表示状態は、輝度を変えたり、色を変えたりすることによって表現することができる。
【0134】
結果表示領域A2には、図14に示すように、左右の足について時間経過に伴う踏込力の変化(正弦波状の曲線)と、荷重を作用させる位置とが示される。刺激装置50を使用している間に荷重を作用させる位置は経過時間に対応するから、実際には時間によって位置が規定される。
【0135】
第6訓練(踏込力を強化する訓練)では、図10(a)に示した例と同様に、足に相当する形状のモデルを指導表示領域A1に表示し、モデルの大きさによって踏込力を表せばよい。あるいはまた、図10(d)のように踏込力を凹みの深さで表してもよい。この場合、凹みを形成する部材に相当するモデルとして、適宜のキャラクタや風船などを表示しておき、踏込力が目標値に達したときにキャラクタが消滅したり風船が破裂したりする表示を行ってもよい。また、キャラクタの消滅時や風船の破裂時には、破裂音のような適宜の音を発生させることによって、ゲーム性を付加することが可能になり、使用者は楽しみながら機能回復訓練を行うことが可能になる。
【0136】
結果表示領域A2における表示には、図5(f)に示した例と同様に、片足ごとの踏込力のピーク値に応じた長さのバーを用いればよい。また、踏込力のピーク値について目標値が設定されている場合には、目標値も併せて表示すれば、踏込力と目標値との関係が把握しやすくなる。
【0137】
第7訓練(前後の体重バランスを保つ訓練)で用いる指導情報は、基本的には、図9、図10に示した表示例の左右を前後に置き換えた情報になる。すなわち、図15(a)のように、踵から爪先までが含まれる膝下のモデル861について矢印862を用いて踏み込む位置を示す表示、あるいは図15(b)のように、全身のモデル863を用いて矢印864によって体を傾ける向きを示す表示などが可能である。
【0138】
また、図16(a)のように、足に相当する形状のモデル871を用い、荷重を作用させる部位(図示例は爪先)が他の部位よりも大きくなるように表示すか、図16(b)のように、踵から爪先までが含まれる膝下のモデル872を用い、踏み込む部位に力の伝達を想像させる形状のモデル873を示すことによっても、前後の荷重を指示することが可能である。さらに、図16(c)のように、膝下に相当する形状のモデル874が板状の部材(足置板23)を表すモデル875の上に載っている状態を示し、板状のモデル875の前後方向の傾斜角度によって荷重を作用させる向きを示すことが可能である。図10(d)と同様に、クッション性ないし撓み性を有する部材に相当するモデル877を膝下に相当する形状のモデル876とともに示し、モデル877に凹み878を示すことにより踏込力を表してもよい。この場合、凹み878の深さによって、踏込力が示される。
【0139】
結果表示領域A2には、図17のように、爪先側と踵側との荷重の比率がバー881,882の長さによって表示される。この場合、左右の足ごとにバー881,882を表示することが好ましいが、全荷重に対する爪先側と踵側との荷重の比率を表示してもよい。また、バー881,882が踵と爪先とのどちらに対応するかを示すために足に相当する形状のモデル883を併せて表示する。
【0140】
なお、上述した運動能力検査装置は、機能回復訓練用にのみ用いてもよい。この場合、機能回復訓練を指導する医師あるいは理学療法士は、結果表示領域A2に示される計測情報を見ることによって、使用者の運動能力を知ることができるから、使用者に適切な運動を行わせるように指導することが可能である。
【0141】
上述した構成例では、荷重センサ611,612を取り付ける構造については詳述していないが、荷重センサ611,612を足置台211,212(図2参照)に取り付けるには、たとえば、図18に示す構造が採用される。図18には左側の足置台211のみを示すが、右側の足置台212も同様の構造が採用される。図18に示す構成では、足置台211に用いる足置板23を、駆動力を受けるペダル233と、ペダル233の上面に重ねて配置される受圧板234とにより構成している。荷重センサ611はペダル233の上面側に配置され、ペダル233に取り付けられた受圧板234に作用する荷重が荷重センサ611に伝達される。
【0142】
図18には、ペダル233の上面が方形に形成され、4個の荷重センサ611がペダル233の四隅に配置された例を示しているが、荷重センサ611の個数は4個に限らず、2個あるいは3個であってもよい。荷重センサ611の配置例を図19に示す。
【0143】
図19(a)(b)は、2個の荷重センサ611が足置台211に配置される例であって、ペダル233の前端部と後端部とにそれぞれ荷重センサ611が配置されている。このように配置した場合、1個の足置台211において荷重の前後の偏りが検出される。
【0144】
図19(c)(d)は、3個の荷重センサ611が足置台211に配置される例であって、ペダル233の前端部と後端部との一方に2個の荷重センサ611が配置され他方に1個の荷重センサが配置されている。このように配置した場合、1個の足置台211において荷重の前後の偏りと左右の偏りとが検出される。
【0145】
図19(e)(f)は、4個の荷重センサ611が足置台211に配置される例であって、図19(e)に示す例では図18に示した例と同様にペダル233の四隅に荷重センサ611が配置されている。また、図19(f)に示す例は、ペダル233の各辺の中央部にそれぞれ荷重センサ611が配置されている。4個の荷重センサ611を配置した構成は、荷重センサ611を3個配置した場合と同様に、荷重の前後および左右の偏りを検出することができる。4個の荷重センサ611を用いると、荷重センサ611を前後左右において対称に配置可能であるから、荷重センサ611で検出された情報の扱いが3個の場合よりも容易になる。
【0146】
上述した構成例では、図2、図3に示す構成の刺激装置50を用いているが、刺激装置50の構成を簡易化してもよい。すなわち、上述した刺激装置50は、足置板23が軸体26(図3参照)の回りで揺動可能になっているが、足置板23が一直線上で往復移動するように刺激装置50を構成してもよい。この場合、足置板23の駆動には直動機構(図示せず)を用いればよいから、刺激装置50の構成が簡単になる。
【符号の説明】
【0147】
23 足置板
30 駆動装置
31 モータ(駆動源)
50 刺激装置
51 下肢刺激部
52 タイミング指示部
60 計測装置
62 荷重出力部
63 荷重位置算出部
64 荷重位置出力部
65 荷重分布出力部
66 比較出力部
70 表示装置
71 表示制御装置
72 蓄積装置
73 取出装置
211 (第1の)足置台
212 (第2の)足置台
611 (第1の)荷重センサ
612 (第2の)荷重センサ
711 指導情報出力部
712 領域分割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位である使用者の下肢部に筋刺激を与える刺激装置と、前記刺激装置による筋刺激に関連する使用者の身体の応答に関する情報を計測して出力する計測装置とを備えることを特徴とする運動能力検査装置。
【請求項2】
前記刺激装置は、使用者の足を載せる足置台と、駆動源を備え前記足置台を時間の経過に伴って変位させる駆動装置とを備えることを特徴とする請求項1記載の運動能力検査装置。
【請求項3】
前記足置台として左右の足を片足ずつ載せる第1の足置台と第2の足置台とを備え、前記駆動装置は、前記第1の足置台と前記第2の足置台とをそれぞれ変位させることを特徴とする請求項2記載の運動能力検査装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記第1の足置台と前記第2の足置台とに関して、少なくとも前端部と後端部との相対的な高さ位置を変化させることにより上下方向に揺動させることを特徴とする請求項3記載の運動能力検査装置。
【請求項5】
前記刺激装置を使用している使用者が見る表示装置を備え、前記表示装置は、前記刺激装置を使用する使用者に対する指導情報を提示する指導表示領域と、前記計測装置が計測した計測情報を提示する結果表示領域とを備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の運動能力検査装置。
【請求項6】
前記指導表示領域と前記結果表示領域とは、コントラストが個別に設定されることを特徴とする請求項5記載の運動能力検査装置。
【請求項7】
前記指導表示領域と前記結果表示領域とは、前記表示装置の画面に占める面積が個別に設定されることを特徴とする請求項5又は6記載の運動能力検査装置。
【請求項8】
前記計測装置は、前記第1の足置台に作用する荷重を検出する第1の荷重センサと、前記第2の足置台に作用する荷重を検出する第2の荷重センサと、前記第1の荷重センサと前記第2の荷重センサとが検出した荷重のデータをそれぞれ出力する荷重出力部とを備えることを特徴とする請求項3記載の運動能力検査装置。
【請求項9】
前記計測装置は、前記足置台に作用する荷重を異なる3箇所以上の位置で計測するように3個以上設けられた荷重センサと、前記荷重センサが検出した荷重のデータを用いて前記足置台に作用する荷重の代表点の位置を算出する荷重位置算出部と、前記荷重位置算出部が算出した代表点の位置を出力する荷重位置出力部とを備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の運動能力検査装置。
【請求項10】
前記計測装置は、前記足置台の上の位置に応じた荷重の分布を計測する荷重センサと、前記荷重センサが検出した荷重の分布を出力する荷重分布出力部を備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の運動能力検査装置。
【請求項11】
前記刺激装置は、前記駆動装置による足置台の変位に合わせて使用者に足を踏み込むタイミングを指示するタイミング指示部を含み、前記計測装置は、前記タイミング指示部による指示のタイミングと前記荷重センサが検出した情報とを関係付けて出力する比較出力部とを備えることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の運動能力検査装置。
【請求項12】
前記計測装置は、使用者の発汗量、血流量、体温、姿勢から選択される生理情報を計測することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の運動能力検査装置。
【請求項13】
前記計測装置から出力される情報を蓄積する蓄積装置を備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の運動能力検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−13667(P2013−13667A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150256(P2011−150256)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】