説明

運搬車両

【課題】異物除去装置を構成する垂下部材の下端により車輪が損傷することを防止する。
【解決手段】異物除去装置13を構成する棒状体20の下端側にローラ22を回転可能に設ける。凹凸路面の走行時等、車体2が左右方向に揺れた場合に、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に棒状体20の下端に設けた石突き21が接触せずに、ローラ22の外周面が接触する。この結果、この棒状体20の下端に設けた石突き21によりアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面が損傷することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば露天の採掘場、石切り場、鉱山等で採掘した砕石物または掘削した土砂等を運搬するのに好適に用いられるダンプトラック等の運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダンプトラックと呼ばれる大型の運搬車両は、車体のフレーム上に起伏可能となった荷台(ベッセル)を備え、この荷台に砕石物または土砂等の運搬対象物を多量に積載した状態で集荷場等に向けて運搬、搬送するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来技術による運搬車両は、自走可能な車体と、該車体上に傾転(起伏)可能に設けられ運搬対象物が積載される荷台と、前記車体の下側に車幅方向に間隔をもって配置された複輪式の車輪と、該複輪式の車輪間に入り込む土砂、石等の異物を除去する異物除去装置等とを備えている。
【0004】
ここで、異物除去装置は、例えば、荷台の下側に設けられたブラケットと、上端側が該ブラケットに前,後方向(車体の進行方向)の揺動を可能に取付けられ下端側が複輪式の車輪間に垂下状態で挿入される垂下部材とにより構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、運搬車両の走行時に、複輪式の車輪を構成する各タイヤの間に土砂、石等の異物が入り込む(挟み込まれる)と、この異物が異物除去装置を構成する垂下部材の下端側と衝突することにより、この異物がタイヤの間から取り除かれる(弾き出される)構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−53412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術による運搬車両では、異物除去装置を構成する垂下部材の下端により車輪を構成するタイヤの側面が傷付く虞がある。
【0008】
すなわち、ダンプトラック等の運搬車両は不整地等の凹凸路面を走行することが多く、このような凹凸路面の走行時に車体は左右方向に揺れる。このとき、サスペンション(懸架装置)を介して車体に支持された車輪(の回転中心軸)は、車体ならびに荷台(の下面)に対し斜め(非平行)になる。そして、この場合に、荷台から複輪式の車輪間に垂下状態で挿入された垂下部材の下端が、車輪を構成するタイヤの側面と接触(摺接)する場合がある。
【0009】
一方、タイヤの側面には細かい土砂等が付着しており、このようなタイヤの側面に垂下部材の下端が接触すると、この下端と土砂等との擦れ合いに基づいてこの下端が鋭利に削られる。そして、このように鋭利に削られた垂下部材の下端がタイヤの側面に接触することにより、このタイヤの側面が損傷してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、異物除去装置を構成する垂下部材の下端により車輪が損傷することを防止できる運搬車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明は、自走可能な車体と、該車体上に傾転可能に設けられた荷台と、前記車体の下側に車幅方向に間隔をもって配置された複輪式の車輪と、該複輪式の車輪間に入り込む異物を除去する異物除去装置とを備え、該異物除去装置は、前記荷台の下側または車体に設けられたブラケットと、上端側が該ブラケットに揺動可能に取付けられ下端側が前記複輪式の車輪間に垂下状態で挿入される垂下部材とにより構成してなる運搬車両に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記垂下部材には、該垂下部材の下端よりも上側となる位置に回動可能に取付けられ、該垂下部材の下端が前記複輪式の車輪に接触するのを抑えるローラを設ける構成としたことにある。
【0013】
また、請求項2の発明は、前記垂下部材は、上,下方向に延びた棒状体により構成し、前記ローラは、この棒状体のうち、前記車体の進行方向の一側または他側に位置して取付ける構成としたことにある。
【0014】
また、請求項3の発明は、前記垂下部材は、前記車体の進行方向に離間すると共に上,下方向に延びた板状体により構成し、前記ローラは、この板状体の間に取付ける構成としたことにある。
【0015】
また、請求項4の発明は、前記ローラは前記垂下部材に対して支持軸を介して取付ける構成とし、前記垂下部材には、前記ローラと前記支持軸との間の回転部位に潤滑剤を供給する油路を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、垂下部材にローラを設ける構成としているので、走行時に複輪式の車輪が車体に対し斜めになっても、垂下部材の下端がこの複輪式の車輪の側面に接触せずに、ローラの外周面がこの複輪式の車輪の側面に接触する。このため、垂下部材の下端が複輪式の車輪の側面に接触することが防止され、この下端が鋭利に削られることを防止できる。
【0017】
一方、ローラは複輪式の車輪の側面に接触しても、この接触に伴って自身が回動するため、このローラの外周面が鋭利に削られることは防止される。したがって、垂下部材の下端はもちろんローラによっても車輪が損傷することは防止され、複輪式の車輪の寿命を向上できる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、車体の進行方向の一側または他側にローラを取付ける構成としているので、ローラの外周面を複輪式の車輪の側面に正対させた構成を簡素に得られる。
【0019】
また、請求項3の発明によれば、車体の進行方向に離間する板状体の間にローラを取付ける構成としているので、ローラを軸方向両側から安定して支承することができる。
【0020】
また、請求項4の発明によれば、ローラと支持軸との間の回転部位に潤滑剤を供給する油路を設ける構成としているので、ローラの回動を円滑にでき、車輪の側面とローラの外周面が接触した際のこのローラの回転抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるダンプトラックを示す正面図である。
【図2】ダンプトラックを後方からみた図1の右側面図である。
【図3】図2中の左側の後輪、異物除去装置等を示す拡大右側面図である。
【図4】図3中の矢示IV−IV方向からみた要部拡大断面図である。
【図5】異物除去装置等を示す一部破断の要部拡大図である。
【図6】図5中の矢示VI−VI方向からみた一部破断の要部拡大断面図である。
【図7】異物除去装置のローラが車輪の側面に接触する状態を示す図3と同様な拡大右側面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による異物除去装置等を示す図5と同様な一部破断の要部拡大図である。
【図9】図8中の矢示IX−IX方向からみた一部破断の要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態による異物除去装置の垂下部材、ローラ、油路等を示す一部破断の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による運搬車両を、鉱山等で採掘した砕石物を運搬するダンプトラックを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は運搬車両としてのダンプトラックで、該ダンプトラック1は、自走可能な車体2と、該車体2上に傾転(起伏)可能に設けられた荷台としてのベッセル3とにより大略構成されている。
【0024】
そして、ベッセル3は、例えば砕石物からなる重い運搬対象物(以下、砕石4という)を多量に積載するため全長が10〜13メートルにも及ぶ大型の容器として形成され、その後側底部が、車体2の後端側に連結ピン5等を介して起伏(傾転)可能に連結されている。また、ベッセル3の前側上部には、後述のキャブ6を上側から覆う庇部3Aが一体に設けられている。
【0025】
6は庇部3Aの下側に位置して車体2の前部に設けられたキャブで、該キャブ6は、ダンプトラック1の運転者が乗降する運転室を形成し、その内部には運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドルおよび複数の操作レバー(いずれも図示せず)等が設けられている。
【0026】
7は車体2とベッセル3との間に伸縮可能に設けられた左,右一対のホイストシリンダ(図1中に1個のみ図示)で、該ホイストシリンダ7は、上,下方向に伸縮することにより、連結ピン5を支点としてベッセル3を傾転(起伏)させるものである。
【0027】
8はベッセル3の下方に位置して車体2の側面に取付けられた作動油タンクで、該作動油タンク8は、内部に作動油(油液)を収容している。そして、作動油タンク8内に収容した作動油は、油圧ポンプにより圧油となってホイストシリンダ7、パワーステアリング用の操舵シリンダ等に給排されるものである。
【0028】
9は車体2の前部側に回転可能に設けられた左,右の前輪(図1中に左側のみ図示)で、該前輪9は、ダンプトラック1の運転者によって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成するものである。そして、前輪9は後述の後輪10と同様に、例えば2〜4メートルに及ぶタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
【0029】
10は車体2の後部側に回転可能に設けられた左,右の後輪で、ダンプトラック1の駆動輪を構成するものである。ここで、左,右の後輪10は、図2に示すように、それぞれ車体2の下側に車幅方向(左,右方向)に間隔をもって配置された複輪式(例えば2本)のものとしている。
【0030】
すなわち、左,右の後輪10は、いずれもが、車幅方向の外側に位置するアウタタイヤ10Aと、該アウタタイヤ10Aよりも車幅方向の内側に位置するインナタイヤ10Bと、これらアウタタイヤ10Aとインナタイヤ10Bとの間に車幅方向に隙間を確保するリムスペーサ10C等とを含んで構成されている。
【0031】
そして、左,右の後輪10は、これら左,右の後輪10間で軸方向(車体2の幅方向)に延びる筒状体のアクスルハウジング11の両端部に、回転可能に設けられている。また、このアクスルハウジング11内には、例えば電動モータ等の回転源および減速機等を含んで構成される左,右の走行駆動装置(いずれも図示せず)が設けられ、この走行駆動装置により、左,右の後輪10はそれぞれ独立して回転駆動される。
【0032】
12は車体2の後部と左,右の後輪10側との間に設けられたサスペンションシリンダで、例えば油圧シリンダにより構成され、車体2の後部側をアクスルハウジング11(左,右の後輪10)上で懸架しつつ、上,下方向の振動を緩衝するものである。
【0033】
13はベッセル3の後部の下側に設けられた異物除去装置で、該異物除去装置13は、路面から複輪式の後輪10間に入り込む(挟み込まれる)土砂、石等の異物を除去するものである。ここで、異物除去装置13は、後述のブラケット14と、棒状体20と、石突き21と、ローラ22とにより大略構成されている。
【0034】
14はベッセル3の後部の下側に設けられたブラケットで、該ブラケット14は、後述の棒状体20の上端側をベッセル3に対し車体2の前,後方向(進行方向)に揺動可能に支持するものである。このために、ブラケット14は、1対の縦板15と、取付板16と、連結ブロック17と、揺動軸18と、ストッパ19等とを備える。
【0035】
15は車体2の幅方向(左,右方向)に離間すると共に上,下方向に延びる1対の縦板で、該各縦板15は、例えば図6に示す取付け状態で、上側に取付板16が嵌め込まれる凹状切欠き部15Aが設けられている。
【0036】
16は各縦板15の上側に取り付けられた取付板で、該取付板16は、板材を折り曲げ成形することにより縦断面形状を略コ字型にされ、例えば図6に示す取付け状態で、下側に凸となる下側凸面16Aを、各縦板15の凹状切欠き部15Aに嵌め込んで溶接等により固定されている。そして、取付板16のうち、例えば図6に示す取付け状態で、下側に凹となる上側凹面16Bを、ベッセル3の下面に設けられた中空状の枠部材3Bに嵌め込んで溶接等により固定することにより、ブラケット14をベッセル3の下側に取付けている。
【0037】
17は各縦板15の下部で車体2の前,後方向の前寄り部分に設けられた連結ブロックで、該連結ブロック17は、各縦板15の間に車体2の幅方向にかけ渡されて溶接等により固定されている。
【0038】
18は各縦板15の略中央部に設けられた揺動軸で、該揺動軸18は、各縦板15の間にかけ渡された状態で取り付けられた1組のボルト18Aとナット18Bとにより構成している。そして、これらボルト18Aとナット18Bとにより構成された揺動軸18を用いて、後述の棒状体20をブラケット14に揺動可能に取付けている。
【0039】
19は連結ブロック17のうち棒状体20に対向する面にボルト19Aを用いて取り付けられたストッパで、該ストッパ19は、ゴムの如きエラストマー等の弾性材または金属、セラミック材等により形成されたものである。そして、このストッパ19に設けた凹部19Bに棒状体20の側面を当接させ、この棒状体20がそれ以上車体2の前側(リムスペーサ10Cに近付く側)に揺動するのを阻止することにより、棒状体20がリムスペーサ10Cに衝突することを防止している。
【0040】
20は異物除去装置13を構成する垂下部材としての棒状体で、該棒状体20は、例えば図6に示す取付け状態で、上,下方向に延び、横断面形状が略矩形に形成されている。そして、棒状体20の上端側を、ブラケット14に揺動可能に取付けている。
【0041】
このために、棒状体20の上端部には、揺動軸18(ボルト18A)の外径よりも大きな内径の挿通孔20Aを形成している。そして、この挿通孔20Aに挿通(遊嵌)される揺動軸18(ボルト18A)を介して、棒状体20がブラケット14に前,後方向の揺動を可能に取付けられている。一方、棒状体20の下端側は、複輪式の後輪10間、すなわち、該後輪10を構成するアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間に、垂下状態で挿入されている。
【0042】
21は棒状体20の下端に設けられた石突きで、該石突き21は、円盤状に形成され、棒状体20の下端に溶接等により固定されている。したがって、車両の前進走行時には、路面からアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間に入り込んだ(挟み込まれた)土砂、石等の異物が、下方から石突き21に衝突し、アウタ,インナ両タイヤ10A,10B外に弾き出される。
【0043】
22は棒状体20の下端側に回転可能に設けられたローラで、該ローラ22は、棒状体20の下端(に設けた石突き21)が複輪式の後輪10の側面、すなわち、該後輪10を構成するアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの互いに対向する側面に接触するのを抑えるものである。
【0044】
このために、棒状体20のうち、車体2の進行方向の一側または他側(本実施の形態の場合は一側となる前進側)で、石突き21よりも上側となる位置に、支持軸としてのボルト23を進行方向(前,後方向)に突出する状態で取付けている。そして、ローラ22は、外周面がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に正対する状態で、ボルト23の周囲に回転可能に設けられている。
【0045】
ここで、ローラ22の外周面とアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面とは、図3に示すように、例えば2.5〜3.0cmの隙間S1を介して正対させている。また、図4に示すように、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間に設けられたリムスペーサ10Cとローラ22の側面とは、例えば50〜60cmの隙間S2を介して正対させている。
【0046】
第1の実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0047】
まず、鉱山等の砕石場では、例えば大型の油圧ショベル(図示せず)を用いて運搬対象の砕石4をベッセル3上に積載する。このとき、ベッセル3は図1に示す運搬位置に配置される。そして、ダンプトラック1は、ベッセル3上に砕石4等を多量に積載した状態で、所定の荷降ろし場に向けて砕石4等を運搬する。
【0048】
また、前記荷降ろし場においては、キャブ6内の運転者が、操作レバー(図示せず)を手動操作することにより、ホイストシリンダ7を伸長させてベッセル3を斜め後方へと傾斜させる。これにより、ベッセル3内の砕石4は、下方へと滑り落ちるようにベッセル3から排出される。
【0049】
次に、砕石4の排出が終了すると、運転者が前記操作レバーを手動で操作することにより、ホイストシリンダ7を縮小させる。これによりベッセル3は、図1に示す運搬位置へと回動され、車体2上に着座する。そして、この状態でダンプトラック1は、次なる運搬作業に備えるものである。
【0050】
また、ダンプトラック1が作業現場等で路上走行するときには、複輪式の後輪10の回転に伴って、この複輪式の後輪10を構成するアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間に土砂、石等の異物が入り込む(挟み込まれる)場合がある。この場合に、この異物は、異物除去装置13を構成する棒状体20の下端に設けられた石突き21等に衝突して、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間から外側に向けて弾き出される。
【0051】
また、凹凸路面の走行時には、例えば図7に示すように、サスペンションシリンダ12の伸縮に伴ってアクスルハウジング11が、車体2ならびにベッセル3に対して斜めになる。そして、これに伴い、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの回転中心軸がベッセル3の下面に対して非平行になり、このベッセル3からアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間に垂下状態で挿入された異物除去装置13の棒状体20の下端が、これらアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面(図7の場合はアウタタイヤ10Aの側面)に近付く方向に相対変位する。
【0052】
このとき、棒状体20の下端に設けられた石突き21が、細かい土砂等が付着したアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に接触すると、この石突き21が鋭利に削られ、この石突き21によりアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bが傷付けられる虞がある。
【0053】
これに対して、本実施の形態では、棒状体20の下端(石突き21)よりも上側となる位置にローラ22を回転可能に設けている。そして、上述のような凹凸路面の走行時に、図7に示すように、ローラ22の外周面がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に接触するようにしている。
【0054】
このように、第1の実施の形態によれば、凹凸路面の走行時に車体2が左右方向に揺れた場合に、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面にローラ22の外周面が接触するので、棒状体20の下端(石突き21)がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に接触することを防止でき、この棒状体20の下端(石突き21)が鋭利に削られることを防止できる。
【0055】
一方、棒状体20に回動可能に設けられたローラ22は、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に接触しても、この接触に伴って自身が回動するため、このローラ22の摩耗、損傷を抑えることができる。したがって、棒状体20の下端(石突き21)はもちろんローラ22によってもアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面が損傷することは防止され、これらアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bを備えた複輪式の後輪10の寿命を向上できる。
【0056】
また、第1の実施の形態では、ローラ22を、上,下方向に延びる棒状体20の一方の側面(進行方向の前進側となる側面)に、片持ち状態で取付ける構成としているので、ローラ22の外周面をアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に正対させた構成を簡素に得られる。
【0057】
次に、図8ないし図9は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、異物除去装置の垂下部材を板状体により構成すると共に、この板状体の間にローラを取付ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0058】
図中、31は異物除去装置13を構成する垂下部材としての板状体を示している。ここで、板状体31は、1本の板状の素材の中間部を180°折り返すことにより形成されたもので、例えば図9に示す取付け状態で上端側となる折返し部31Aと、この折返し部31Aを挟んで車体2の進行方向(前,後方向)に離間すると共に上,下方向に延びる前側,後側各板部31B,31Cとを備えている。
【0059】
32は板状体31の折返し部31Aの下側に設けられた連結部材で、該連結部材32は、前側,後側各板部31B,31Cの間にかけ渡された状態で溶接等により固定されている。そして、連結部材32と折返し部31Aと前側,後側各板部31B,31Cとにより囲まれた部分に挿通される揺動軸18(ボルト18A)を介して、板状体31をブラケット14に前,後方向の揺動を可能に取付けている。
【0060】
33は板状体31の下端に設けられた石突きで、該石突き33は、直方体状に形成され、前側,後側各板部31B,31Cの下端にかけ渡された状態で溶接等により固定されている。したがって、車両の前進走行時には、路面からアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの間に入り込んだ(挟み込まれた)土砂、石等の異物が、下方から石突き33に衝突し、アウタ,インナ両タイヤ10A,10B外に弾き出される。
【0061】
34は板状体31の下端側に回転可能に設けられたローラで、該ローラ34は、板状体31の下端に設けられた石突き33がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの互いに対向する側面に接触するのを抑えるものである。
【0062】
このために、板状体31のうち石突き33よりも上側部分に、両端部に雄ねじが形成された支持軸としてのボルト35を、前側,後側各板部31B,31Cにかけ渡した状態でその両端にナット36を螺合することにより取り付けている。そして、ローラ34は、外周面がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に正対する状態で、ボルト35の中間部の周囲に回転可能に設けられている。
【0063】
本実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如き板状体31にローラ34を設けているので、凹凸路面の走行時に車体2が左右方向に揺れると、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に板状体31の下端(石突き33)が接触せずに、ローラ34の外周面が接触する。従って、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
また、第2の実施の形態では、板状体31を構成する前側,後側各板部31B,31Cの間にローラ34を取付ける構成としているので、このローラ34を軸方向両側から安定して支承することができる。
【0065】
しかも、板状体31を、1本の板状の素材の中間部を180°折り返すことにより形成しているので、前側,後側各板部31B,31Cを備えた板状体31を曲げ形成により容易に製造できる。このため、異物除去装置13を低コストに構成できる。
【0066】
次に、図10は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ローラと支持軸との回転部位に潤滑剤を供給する油路を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
図中、41はローラを棒状体20に回転可能に取付けるための支持軸で、該支持軸41は、棒状体20に設けた支持孔20Bに挿通され、棒状体20に対する回転を回り止め板20Cにより阻止された状態でこの棒状体20に取付けられている。
【0068】
42は棒状体20に設けられた油路で、この油路42は、支持軸41と後述のローラ43との間の回転部位に潤滑剤を供給するためのものである。このために、この油路42は、支持軸41に穿孔等により形成され下流端を支持軸41の外周面のうちローラ43の内周面と正対する位置に開口させた第一の油路42Aと、この第一の油路42Aの上流端にニップル42Bを介して接続された第二の油路としてのホース42Cとを含んで構成されている。そして、作動時には、潤滑剤供給源から油路42を通じて潤滑剤が、ローラ43の内周面と支持軸41の外周面との間に供給され、これら支持軸41とローラ43との間の回転部位が潤滑される。
【0069】
43は支持軸41の端部に回転可能に設けられ、欠円環状の止め輪等のプレート44により抜け止めされたローラを示している。ここで、該ローラ43は、棒状体20の下端(石突き21)がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの互いに対向する側面に接触するのを抑えるもので、外周面をアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に正対させている。
【0070】
本実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如きローラ43を棒状体20に設けているので、凹凸路面の走行時に車体2が左右方向に揺れると、アウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に棒状体20の下端(石突き21)が接触せずに、ローラ43の外周面が接触する。従って、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
しかも、第3の実施の形態では、ローラ43と支持軸41との間の回転部位に潤滑剤を供給する油路42を設ける構成としているので、ローラ43の回動を円滑にでき、このローラ43の外周面がアウタ,インナ両タイヤ10A,10Bの側面に接触した際のこのローラ43の回転抵抗を低減できる。
【0072】
なお、上述した第1の実施の形態では、棒状体20のうち車体2の進行方向の前進側にローラ22を設けた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば棒状体のうち車体の進行方向の後退側にローラを設ける構成としてもよい。
【0073】
また、上述した実施の形態では、異物除去装置13のブラケット14をベッセル(荷台)3の下面に設けた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば車体にブラケットを設ける構成としてもよい。
【0074】
また、上述した各実施の形態では、複輪式の車輪として2本のタイヤ(アウタ,インナ両タイヤ10A,10B)により構成した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば3本以上のタイヤにより複輪式の車輪を構成してもよい。この場合には、それぞれのタイヤの間に異物除去装置を設けることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ダンプトラック(運搬車両)
2 車体
3 ベッセル(荷台)
10 後輪(複輪式の車輪)
13 異物除去装置
14 ブラケット
20 棒状体(垂下部材)
22,34,43 ローラ
31 板状体(垂下部材)
41 支持軸
42 油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、該車体上に傾転可能に設けられた荷台と、前記車体の下側に車幅方向に間隔をもって配置された複輪式の車輪と、該複輪式の車輪間に入り込む異物を除去する異物除去装置とを備え、
該異物除去装置は、前記荷台の下側または車体に設けられたブラケットと、上端側が該ブラケットに揺動可能に取付けられ下端側が前記複輪式の車輪間に垂下状態で挿入される垂下部材とにより構成してなる運搬車両において、
前記垂下部材には、該垂下部材の下端よりも上側となる位置に回動可能に取付けられ、該垂下部材の下端が前記複輪式の車輪に接触するのを抑えるローラを設ける構成としたことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記垂下部材は、上,下方向に延びた棒状体により構成し、前記ローラは、この棒状体のうち、前記車体の進行方向の一側または他側に位置して取付ける構成としてなる請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記垂下部材は、前記車体の進行方向に離間すると共に上,下方向に延びた板状体により構成し、前記ローラは、この板状体の間に取付ける構成としてなる請求項1に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記ローラは前記垂下部材に対して支持軸を介して取付ける構成とし、前記垂下部材には、前記ローラと前記支持軸との間の回転部位に潤滑剤を供給する油路を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の運搬車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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