説明

運転室内設置用シート装置

【課題】シート装置において、ガイドレールの上に運転手が乗る危険を回避するうえ、耐久性を向上する。
【解決手段】シート装置1は、運転席4および調節装置5を有し、調節装置5が二つのガイドレール6,7およびシートキャリア8を有し、シートキャリア8がガイドレール6,7に支承され、建設車両の運転方向に横に調節可能である。ガイドレール6,7は、シートキャリア8がステップ面2に相対的に自由にぶら下がれるように、ステップ面2上を移動可能なように、運転手17が使うステップ面2の横に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席および調節装置を有し、該調節装置が二つのガイドレールおよびシートキャリアを有し、該シートキャリアが建設車両の運転方向に横に調節可能に該ガイドレールに支承されている、建設車両、とりわけ締固め機の、少なくともステップ面と操作卓を有する運転室内に設置するためのシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知技術から周知の上記様シート装置は加えて、基底領域もしくは運転室のステップ面に設けられたガイドレールを有する。運転席はシートキャリアを介してガイドレールと結合でき、ガイドレールの縦方向に延びるように、ガイドレールの上を移動可能に設けられている。運転席はガイドレールと直接に結合しているか、もしくは、シートキャリアおよびガイドレールとともに調節装置を形成する。該ガイドレールは、基底領域もしくはステップ面に、車道に横方向へ互いに平行に延びるように、運転席もしくはシートキャリアのほぼ真下にあるよう設けられる。このことは、様々な理由から不利である。
【0003】
建設機械の運転のため運転席に乗る運転手は、建設機械の運転席に到達することにより作業位置につくためには、少なくとも部分的にガイドレールの上に乗るか、これを踏まざるを得ない。このことは、運転手がガイドレール上でよろめいたり、ガイドレールにより倒れる可能性がある限り危険で不利である。運転手は場合によっては運転室を毎時何度も離れなくてはならず、それにより繰り返し作業事故の危険がある。ガイドレールの縦方向へのシートキャリアの完全な調節可能性が保証されなくてはならないので、ガイドレール領域をカバーすることはできない。これにより、またしてもメンテの必要が高まるうえ、ガイドレールの損傷危険度も高まる。ガイドレールの周知構成は、更に、運転手が作業位置についた後、自分から度々位置変更をしなくてはならないデメリットがある。ここでもシート下のステップ面上に設けられたガイドレールが邪魔となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、上記様シート装置で公知技術の問題を回避するうえ耐久性が向上されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、請求項1に記載のシート装置により解決される。本発明のシート装置の好適な実施例は下位請求項に記載される。
【0006】
従って本発明のシート装置は、ガイドレールが運転手が利用するステップ面の横に、シートキャリアがステップ面に相対的に自由にぶら下がるよう、その上を移動できるように設けられている点で、冒頭に挙げられたシート装置と異なる。その結果、運転手が使うステップ面もしくは、運転手が使う基部空間がガイドレールから自由となる。シートキャリア下面とステップ面の間の最終的な距離は本発明では、シートキャリアの自由なぶら下がり構成がステップ面に相対的であることが保証されている限り問題ではない。
このことは、運転手を乗り降りの際もしくは作業中に妨げ、運転手の負傷の危険性につながりかねない邪魔なガイドレールが存在しないという利点がある。
【0007】
シートキャリアがトラバース、とりわけアルミニウム鋳造物に形成されてると好適である。また、シートキャリアを鉄鋳造物、溶接部として形成することも当然考えられる。しかし、アルミニウム鋳造物として構成すると、シートキャリアが比較的軽い自重で、よって調節可能性がよくなることが保証される利点がある。更に、シートキャリアを真っ直ぐ、もしくは、好適にはハンドル形状に形成し、ハンドル状実施形態においてはシートキャリアの脚の端部が上向き、つまり、ステップ面または運転手の立地面から離れるように向いていることも考えられる。
【0008】
シートキャリアの調節もしくは移動を可能とするためには、シートキャリアに、ガイドレールに機能相補的に形成され、シートキャリアをガイドレールの縦方向に調節することを可能とする手段を設けることができる。
【0009】
これらの手段がリニア軸受またはコロ軸受に形成されていると好適である。シートキャリアの一端にリニア軸受と、他端にコロ軸受を設けることも考えられる。その際、コロ軸受にはシートのサイド移動の制動を可能とするキャッチ手段を設けることができる。すると運転席もしくはシートキャリアは必要ならば自由選択可能な位置でガイドレール上に制動できる。別の言い方をすればシートキャリアの一端はガイドレールに、例えばリニア軸受を介して堅固に結合でき、他端はコロ軸受を介して機能相補的ガイドレール上にのみ設置される。それによりシートキャリアは必要に応じて持ち上げ、リニア軸受もしくは付属のガイドレールの直軸の回りに揺動され得る。この場合運転室のステップ面は完全に自由通行可能であろう。
【0010】
よって実施形態の一つでは、運転方向へと見た場合、一つのガイドレールを運転席の少なくともわずか前に、もう一つのガイドレールを運転席の少なくともわずか後ろに設けることができ、こられのガイドレール間にシートキャリアが延びている。つまり、シートキャリアはその縦配置において二つのガイドレール間の距離にほぼ相当する。この距離が最終的にどれほど大きいかは運転室の大きさ、もしくは利用可能なステップ面の大きさによる。
【0011】
好適な実施例では、少なくとも前方のガイドレールがステップ面に相対的に上昇しているが、好適には決して強制的にではなく、運転手の脛骨の高さに延びるように設けることができる。これは、運転手にとり全基部空間、つまりガイドレール下部の基部空間も意のままになる点、利点がある。
【0012】
更に各ガイドレールに支持またはキャリア部材があてがわれ、その際ガイドレールが該支持またはキャリア部材に少なくとも部分的に固定可能である。該支持またはキャリア部材は別個の、各ガイドレールに特別に調和させた部材として形成できる。しかし、運転室の領域もしくは部分、好適には運転室の前壁、後壁または側壁が支持またはキャリア部材を形成することも考えられる。その際、ガイドレールは、シートキャリアの移動距離に関し完全な有益性が保証されるように固定もしくは寸法取りすると好適である。
【0013】
移動台などが使用されるときは、ガイドレールは軸またはロールとして形成すると好適である。軸とリニア軸受をコンビネーションすると、ほぼメンテ不要な運転と同時に価格的に有利な実施形態のメリットがもたらされる。
【0014】
しかし、ガイドレールをすべりガイドまたは移動台として形成することも考えられる。その際、ここでは移動台は例えば断面が長方形のガイドレールと理解され得る。これに属する機能相補的な手段、とりわけ、軸受ユニットはガイドレール上のシートキャリアの調節可能性を保証する。最も簡単な実施形態では、ガイドレールは例えばコーナー形状またはT輪郭状の断面で形成することもできる。シートキャリアにある相応の手段、例えばロール、ホイール、歯車または玉軸受は、この場合シートキャリアの調節を保証する。
【0015】
とりわけ好適な実施形態ではロック可能なシート回転ユニットが運転席とシートキャリアの間に設けられ、運転席が該シート回転ユニットによりシート回転ユニットの鉛直回転軸の回りにシートキャリア上を360度回転可能である。運転手はそれにより起き上がることなしに、運転室内の様々な方向に方向づけできる。
【0016】
更にシート回転ユニットの他の手段、とりわけ、シート調節手段を設けて、それにより運転席を例えばシートキャリアに沿って移動することができる。その際、運転手が到達する操作卓もしくは舵取り卓に関して、全シートの前後移動は脚の長さ補償を、また、背もたれの傾斜角の調節がアームの長さ補償を引き起こすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施例を図面により詳述する。
【0018】
図1は、建設機械、とりわけ締固め機の詳述されていない運転室の、運転手立地面3のステップ面2領域に設けられたシート装置1の説明図である。該ステップ面2は運転手立地面のほぼ全域に亘って延びる。
【0019】
前記シート装置1は運転席4と調節装置5を有する。該調節装置5はまた二つの平行なガイドレール6,7とシートキャリア8を有する。両ガイドレール6,7は該建設機械の運転方向に横に延び、ほぼステップ面2の幅に亘って延びる。これらは、運転室の前方境界もしくは後方境界領域に、運転手立地面3のステップ面2全面を自由にするように設けられている。シートキャリア8の両端は両ガイドレール6,7に移動可能に支承されているので、建設車両の運転方向に横に移動可能である。かように運転席4は運転方向に横に移動し、建設車両の直軸に関した位置を変更できる。第一ガイドレール6はステップ面2の前方縁に、該ステップ面が十分な自由空間をもって上へ、そして第一ガイドレールの下へ届くように設けられているので、建設機械の運転手が足を、まだ第一ガイドレール6の押し動かすことができる。第二ガイドレール7はステップ面2の後方縁において延びる。シートキャリア8はかようにステップ面2全面に橋をかける。
【0020】
シートキャリア8はハンドル形状のトラバースとして形成され、その幅は運転席4が運転方向に配置されているとき運転手の脚の間に延びるように選択される。こうして運転手は足をトラバースの横で、トラバースの各位置に無妨害でステップ面2上に載せることができる。シートキャリア8はその両端9,10に第一、第二手段11,12を有し、それにより第一もしくは第二ガイドレール6,7上での位置を調節、移動できる。第一ガイドレールは断面が丸い軸である。第一手段11はリニア軸受として形成され、これは第一ガイドレール6を、シートキャリアが横移動でき必要に応じて上へ旋回できるよう、その外周面に係合する。こうして第一手段11によりシートキャリアは第一ガイドレールにも保持され、その角度配置において第一ガイドレール6に対し固定される。第二手段12は、好適には移動方向に間隔を置いて設けられた二つの従輪20(図3)を有するコロ軸受であり、これらの従輪20は、上から第二ガイドレール7上に置かれ、その上を転がることができるよう、第二ガイドレール7と相互作用する。従輪がうっかり離昇しないよう、第二ガイドレール7の上と、それに平行に、必要に応じて除去可能な安全レール21(図3)が設けられている。
【0021】
シートキャリア8が一方でなるべく低く、わずかな距離Y(図2)でステップ面2上を延びることができ、他方第一、第二ガイドレール6,7をステップ面2から十分距離もって設けることができるように、シートキャリア8の端部はそれぞれ、第一、第二手段11,12が支承するために運ぶ、上向きのクランク状に曲げた部分19(図3、図4)が設けられている。
【0022】
ガイドレール6,7は、その間に延びるシートキャリア8の形成により条件づけられ、シートキャリア8がステップ面2に対し相対的に自由にぶら下がれる構造が生じるよう設けられている。この自由にぶら下がった構造は図2の拡大詳細図Xにおいてよく認識できる。ガイドレール6,7は二つのキャリア部材13,14と結合し、その際、該キャリア部材13,14は運転手の立地面もしくは運転室の構造に属する。
【0023】
運転席4とシートキャリア8の間にはロック可能なシート回転ユニット15が設けられ、その際、運転席4は必要に応じて該シート回転ユニット15によりシート回転ユニット15の鉛直回転軸の回りに360度回転可能である。該シート回転ユニット15はシートキャリア8上のほぼ中央に設けられ、固定手段、とりわけ、ねじにより、これと脱離可能に結合している。更に調整レールとして形成された手段16が設けられ、これらにより運転席4はシートキャリア8に沿った運転方向に移動可能である。運転手17はこの位置で、図示されていない操作卓または舵取り卓を操作でき、これは運転方向に見た場合、運転手17の前で第一ガイドレール6上部にある。運転手17の足は場合によってはガイドレール6の下に設けられた足ペダルを操作でき、その際、ガイドレール6は足の上、ほぼ運転手17の脛骨上に延びる。全シートキャリア8は必要に応じてガイドレール6の直軸の回りに持ち上げるか、もしくは、揺動できる。このためには、最も簡単なケースではシートキャリア8の端部10を単にガイドレール7から持ち上げればよい。シートキャリア8は作動位置ではロック可能なコロ軸受、つまり手段12により、ガイドレール6,7の縦方向に関してこれらの上に固定もしくは制動され得る。
【0024】
図2は図1の拡大詳細図Xである。ステップ面2とシートキャリア8が認識できる。
距離Yは、シートキャリア8が自由にぶら下がる構造でステップ面2上にあることを明瞭にしている。第一、第二ガイドレール6,7の運転室内の相応の構造により、運転席4の下に設けられた公知技術から周知のガイドレールは放棄できる。それにより運転手には、作業中の運転室への乗り降りもしくはシートの位置変更の際、運転室のステップ面2上に延びる邪魔なガイドレールに気をつける必要がないという快適な状況が生ずる。それにより、運転手にとっての快適さが増すと同時に、運転手の作業事故の危険性を著しく減少できる。
【0025】
図3と図4は第二ガイドレール7におけるシートキャリア8の軸受の細部を示す。これによると従輪20は輪郭部の自由脚として形成されたガイドレール7上にある。第二ガイドレール7もしくは、シートキャリア8の方を向いた脚の自由端には、シートキャリア8の位置を第二ガイドレール7に沿って制動するための第一の歯22が設けられている。この第一の歯22にはキャッチレバー23の端部で第二の歯24が解除可能に噛合っている。該キャッチレバー23はシートキャリア8に設けられている。第一、第二の歯が互いに噛合っている限りは、シートキャリアは移動できない。キャッチレバー23が第一の歯22との噛合いから解除されると移動ができる。
【0026】
更に図5が示すように、キャッチレバー23はシーソーとして形成され、該シーソーは水平軸26の回りを、第二ガイドレール7に平行に、第二の歯24が選択的に第一の歯22と噛合うか、またはこれを開放するよう揺動できる。キャッチレバー23の操作は、運転手が操作するてこ棒(図示されていない)を介して行なわれる。更に図5ではシートユニット15の足を符号25で示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】運転室に設けられたシート装置を有する運転室の運転手立地面図。
【図2】図1の第一拡大詳細図X
【図3】図1の第二拡大詳細図Zの断面図。
【図4】図1の第二拡大詳細図Zの斜視図。
【図5】シート構造の細部斜視分解図。
【符号の説明】
【0028】
1 シート装置
2 ステップ面
3 運転手立地面
4 運転席
5 調節装置
6 第一ガイドレール
7 第二ガイドレール
8 シートキャリア
9 シートキャリアの端部
10 シートキャリアの端部
11 第一手段
12 第二手段
13 キャリア部材
14 キャリア部材
15 シート回転ユニット
16 手段
17 運転手
19 シートキャリアのクランク状に曲げた部分
20 従輪
21 安全レール
22 第一の歯
23 キャッチレバー
24 第二の歯
25 符号
26 水平軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席(4)および調節装置(5)を有し、該調節装置(5)が二つのガイドレール(6,7)およびシートキャリア(8)を有し、該シートキャリア(8)が建設車両の運転方向に横に調節可能に該ガイドレール(6,7)に支承されている、建設車両、とりわけ締固め機の、少なくともステップ面(2)と操作卓を有する運転室内に設置するためのシート装置(1)であって、ガイドレール(6,7)が運転手(17)が利用するステップ面(2)横に、シートキャリア(8)がステップ面(2)に相対的自由にぶら下がるよう、その上を移動できるように設けられ、シートキャリア(8)の幅は、シートキャリア(8)が運転手(17)の脚の間に延び、それにより運転手(17)が足を無妨害でステップ面(2)上に載せることができるように選択されていることを特徴とするシート装置(1)。
【請求項2】
シートキャリア(8)がトラバース、例えばアルミニウム鋳造物または鉄キャリアに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項3】
シートキャリア(8)に、ガイドレール(6,7)に機能相補的に形成され、シートキャリア(8)をガイドレール(6,7)の縦方向に調節することを可能とする手段(11,12)が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項4】
手段(11,12)がリニア軸受またはコロ軸受に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項5】
運転方向へと見た場合、ガイドレール(6)が運転席(4)の少なくともわずか前に、ガイドレール(7)が運転席(4)の少なくともわずか後ろに設けられ、ガイドレール(6,7)間にシートキャリア(8)が延びていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項6】
少なくとも前方のガイドレール(6)がステップ面(2)に相対的に上昇しているが、好適には運転手(17)の脛骨の高さに延びるように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項7】
各ガイドレール(6,7)に支持またはキャリア部材(13,14)があてがわれ、ガイドレール(6,7)が該支持またはキャリア部材(13,14)に少なくとも部分的に固定可能であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項8】
ガイドレール(6,7)が軸として形成されてることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項9】
ガイドレール(6,7)がすべりガイドまたは移動台として形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)。
【請求項10】
ロック可能なシート回転ユニット(15)が運転席(4)とシートキャリア(8)の間に設けられ、運転席(4)が該シート回転ユニット(15)によりシート回転ユニット(15)の鉛直回転軸の回りに360度回転可能であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の建設車両用シート装置(1)
【請求項11】
運転席(4)および/またはシート回転ユニット(15)をシートキャリア(8)に沿って移動可能とする手段(16)が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の建設車両シート装置(1)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate