説明

運転支援装置

【課題】車両の所定位置に固定された撮像手段により車両周囲を撮像した画像を使用して、運転者にとってより使用感の良い運転支援画像を表示する運転支援装置を提供する。
【解決手段】画像処理手段は、車両40の後部に設置された撮像手段1で撮像した車両後方周囲画像から車両40後方に対応する領域を切り出しこれから後方画像を生成するとともに、車両40後方の左右範囲に対応する領域とを各々切り出しこれらから右後方周囲画像と左後方周囲画像とを生成する。そして、後方画像を表示手段の下部に表示するとともに、右後方周囲画像と左後方周囲画像とを表示手段の上部に並べて表示する。その際、右後方周囲画像は表示手段の中央部から右側部へ向かうに従って表示領域が上下に広く表示されるよう生成されるとともに、左後方周囲画像は表示手段の中央部から左側部へ向かうに従って表示領域が上下に広く表示されるよう生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置に係わり、特に、車両に固定された撮像手段により車両周囲を撮像した画像を使用して、運転支援画像を車内の表示手段に表示する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者が車両を運転する際に行う車両周囲の確認を支援する装置として、車両の後部等、所定の位置に設置された撮像手段で車両周囲を撮像し、撮像した画像を車内に設置された表示手段に表示する運転支援装置がある。この運転支援装置を使用すれば、例えば、運転者が駐車場等で車両をバックさせて駐車を行なう際に、車両後方に障害物や人が存在するか否かを確認しやすくなる。
【0003】
このような運転支援装置では、車内に設置された表示手段に表示する画像によって、運転者による車両周囲の確認のしやすさが左右されるため、撮像手段で撮像した画像を使用して、視点変換や画像処理を行い、より運転者にとって確認のしやすい画像を表示手段に表示する様々な運転支援装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、車両後部の所定位置に設置された撮像手段である広角リアカメラと、車内に設置され広角リアカメラで撮像した画像を表示するための表示手段とを有する運転支援装置が提案されている。この運転支援装置は、車両後方および車両後側方を広角リアカメラで撮像した広角画像の一部を切り出して、車両の後方画像と、右後側方画像と、左後側方画像とを得ている。そして、後方画像を表示手段の表示領域の中央部に表示すると共に、右後側方画像を後方画像の右側に、左後側方画像を後方画像の左側に、それぞれ並べて表示領域に表示することによって、運転支援画像を運転者に提供している。
【0005】
この運転支援装置が提供する運転支援画像において、後方画像は、撮像した広角画像の一部を切り出した画像データに対し、車両の運転者がルームミラーで視認する車両後方のミラー反射像に対応するサイズとなるよう、座標変換等の画像処理を行うことにより生成している。また、車両の右後側方画像および左後側方画像については、撮像した広角画像の一部を切り出した画像データに対し、表示領域での表示スペース(中央部に表示されている後方画像の左右のスペース)に収まるよう、画像圧縮等の画像処理を行うことにより生成している。
【0006】
以上のように生成した運転支援画像は、限られた表示手段の表示領域の中で、車両の後方および後側方の広い範囲の画像を効率よく表示することができ、後方画像に関しては、運転者がルームミラーで視認する車両後方のミラー反射像に対応するサイズとすることにより、運転者が正しい距離感で画像を把握できるように表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−81664号公報(第10〜11頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された方法では、以下のような問題があった。運転者が、特許文献1に記載された運転支援装置を使用する場合として、車両をバックで駐車スペースに駐車する場合が考えられる。運転者は、車両を駐車スペースに導入したり、車両を駐車スペースに収める(車両を駐車スペースに位置決めする)際は、主に表示手段の表示領域の中央部に表示されている後方画像を見て、これらの運転動作を行う。また、運転者は、駐車運転中に車両の左右方向から歩行者や他の車両等が接近してきたか否かを確認する必要があり、その際運転者は、運転支援画像の右後側方画像および左後側方画像で歩行者や他の車両等の接近の確認を行う。
【0009】
後方画像の左右に表示されている右後側方画像および左後側方画像については、表示領域に収まるよう画像圧縮を行っているため、運転者が肉眼で車両の右後側方および左後側方を見た場合に比べて画像が歪んで表示されることとなる。従って、運転者が右後側方画像および左後側方画像を見て、駐車スペースの左右方向から歩行者や他の車両の接近を確認しようとしても、右後側方画像および左後側方画像に表示される歩行者や他の車両等との距離感や、駐車スペースへ接近する速度が把握しづらく、運転者にとって使用感の悪いものとなっていた。
【0010】
本発明は以上述べた問題点を解決し、車両の所定位置に固定された撮像手段により車両周囲を撮像した画像を使用して、運転者にとってより使用感の良い運転支援画像を表示する運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するものであって、本発明の運転支援装置は、車両の後部に設置された撮像手段で撮像した車両後方周囲画像に画像処理手段が画像処理を行って運転支援画像を生成し、これを車両に設置された表示手段に表示するものである。画像処理手段は、後方周囲画像の中央部であって車両後部に対応する領域を切り出しこれから後方画像を生成するとともに、後方周囲画像の左右領域を各々切り出しこれらから右後方周囲画像と左後方周囲画像とを生成する。そして、右後方周囲画像と左後方周囲画像とを表示手段の上部に並べて表示するとともに、後方画像を右後方周囲画像および左後方周囲画像の下方に表示する。その際、右後方周囲画像は表示手段の中央部から右側部へ向かうに従って表示領域が上下に広く表示されるよう生成されるとともに、左後方周囲画像は表示手段の中央部から左側部へ向かうに従って表示領域が上下に広く表示されるよう生成される。
【0012】
また、撮像手段が車両前方に設置され、撮像手段で撮像した車両前方周囲画像に画像処理を行って運転支援画像を生成する場合は、画像処理手段は、前方周囲画像の中央部であって車両前部に対応する領域を切り出しこれから前方画像を生成するとともに、前方周囲画像の左右領域を各々切り出しこれらから右前方周囲画像と左前方周囲画像とを生成する。そして、右前方周囲画像と左前方周囲画像とを表示手段の上部に並べて表示するとともに、前方画像を右前方周囲画像および左前方周囲画像の下方に表示する。その際、右前方周囲画像は表示手段の中央部から右側部へ向かうに従って表示領域が上下に広く表示されるよう生成されるとともに、左前方周囲画像は表示手段の中央部から左側部へ向かうに従って表示領域が上下に広く表示されるよう生成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の運転支援装置は、右後方周囲画像(あるいは右前方周囲画像)および左後方周囲画像(あるいは左前方周囲画像)は、各々が表示手段の中央部から各画像の側部に向かうに従って表示領域が上下に広くなるように表示している。これにより、後方画像(あるいは前方画像)において車両の進行方向に存在する表示対象(駐車スペースの白線や車止め、周囲のブロック塀等)を過不足なく表示できるとともに、右後方周囲画像(あるいは右前方周囲画像)や左後方周囲画像(あるいは左前方周囲画像)において、運転者が車両の左右から接近する歩行者、自転車、他の車両等を認識し易くなる。従って、運転者にとって使用感の良い運転支援画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例である運転支援装置の構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施例における、後方周囲画像の撮像を説明する図であり、(A)は車両を側方から見た場合、(B)は車両を上方から見た場合を示している。
【図3】本発明の実施例における、後方周囲画像を説明する図である。
【図4】本発明の実施例における、運転支援画面を説明する図であり、(A)はある切出角度での後方周囲画像を、(B)は(A)から得られる運転支援画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施例としては、車両後部に撮像手段を1台設置する運転支援装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【実施例】
【0016】
図1の構成ブロック図に示すように、本発明による運転支援装置10は、撮像手段1と、表示手段3と、画像処理手段20とを備えている。更には、画像処理手段20は、ROM4と、RAM5と、撮像手段I/F部6と、表示手段I/F部7と、これらを制御する制御部2とを備えている。
【0017】
撮像手段1は、図示は省略するが、魚眼レンズ等の広角レンズや、広角レンズを保持するレンズホルダ、絞りやフィルタ、及び広角レンズを透過した光束が結像されるCCD等の撮像素子で構成されている。この撮像手段1は、図2(A)および(B)に示すように、車両40後部のバンパー40a上部でかつ幅方向は略中央部(例えば、車両40後部に設置されたナンバープレート上部)に1台設置されており、車両40の後方周囲について、撮像手段1で撮像できる範囲全てを撮像する。尚、本実施例では、撮像手段1が1台設置されている場合について説明するが、撮像手段を複数台設置し、車両40の後方周囲を各撮像手段で分担して撮像するようにしてもよい。
【0018】
表示手段3は、タッチパネル機能を有する液晶パネルを備え、画像処理手段20から送信されるデータに基づいた画像を表示する。尚、詳細な説明は省略するが、表示手段3は、車両40に設置されている図示しないカーナビゲーションシステムから送信される地図画像や、DVDプレーヤ等の画像再生機器から送信される画像を表示させてもよい。
【0019】
次に、画像処理手段20について説明する。撮像手段I/F部6は、撮像手段1と制御部2との間に介在し、撮像手段1で撮像された画像を取り込んで制御部2に画像データとして出力するインターフェイスである。制御部2は、内部に図示しない画像ASIC等を備えており、撮像手段1で撮像され撮像手段I/F部6を介して入力された画像データに対し、画像切り出しや歪補正等の画像処理を行なう。表示手段I/F部7は、制御部2と表示手段3との間に介在し、制御部2で画像処理された画像データを取り込んで表示手段3に出力するインターフェイスである。
【0020】
ROM4には、制御部2での画像処理を実行するプログラムや、制御部2が取り込んだ画像の座標変換を行なう際に参照する座標変換テーブル等が格納されており、制御部2は、このプログラムや座標変換テーブルに従って上述した画像処理を行なう。また、RAM5は、撮像手段1で常時撮像されている車両40の後方周囲画像を一時的に記憶するとともに、制御部2が画像処理を行なう際に、一時的に画像処理された画像を保存する等、制御部2の作業領域として使用される。
【0021】
次に、図1乃至図3を使用して、本実施例による運転支援装置10の動作原理について説明する。尚、以下の説明では、図2(B)に示す車両40の右側ドアミラー40bが備えられた車両側方を右側、左側ドアミラー40cが備えられた車両側方を左側、として説明する。運転者が車両40をバックで運転して駐車を行う動作を開始すると(例えば、AT車であればシフトレバーを「R(リバース)」とすると)、運転支援装置10が作動を開始し、画像処理手段20の制御部2は、図3に示す後方周囲画像60をRAM5から読み出し、この後方周囲画像60に対し画像処理を開始する。
【0022】
後方周囲画像60は、撮像手段1で撮像できる車両40の後方範囲全てを撮像してRAM5に記憶したものである。ここで、撮像手段1で撮像できる車両40の後方範囲全てとは、図2(A)に示す垂直方向撮像境界51a(撮像手段1の中心を通り地面に垂直な線)より後方の範囲全て、かつ、図2(B)に示す水平方向撮像境界51b(撮像手段1の中心を通り車両40後部に平行な線)より後方の範囲全てである撮像範囲50である。
【0023】
制御部2は、図2(B)に示すように、後方周囲画像60から、車両40の後端であるバンパー40aより後方周辺を後方切出領域50a、車両40の右側後方であり、後方切出領域50aの右側周辺(一部が後方切出領域50aと重複している)を右後側方切出領域50b、および、車両40の左側後方であり、後方切出領域50aの左側周辺(一部が後方切出領域50aと重複している)を左後側方切出領域50cとして、それぞれ対応する画像領域を切り出す。以下にその方法を説明する。
【0024】
後方切出領域50aの上下範囲は、図2(A)に示すように、車両40のバンパー40aの後端から所定の距離(運転者が車両40を低速度でバックさせる際に、車両40後方の地面に存在する縁石等の障害物を認識してからブレーキを踏んでも、障害物に衝突せずに車両40を停車できる距離。例えば1メートル)だけ離れた地点と撮像手段1とを結んだ境界線52と、この境界線52と所定の角度d1で撮像手段1から後方に向かって引いた直線である境界線53とで規定される。また、後方切出領域50aの左右範囲は、図2(B)に示すように、水平方向撮像境界51bから所定の角度r3とされ、撮像手段1から後方へ向かって引いた直線である境界線56および境界線57とで囲まれる範囲で規定される。尚、境界線56と境界線57との角度は、所定の角度r1(=180°−2×r3)と設定されている。
【0025】
制御部2は、この後方切出領域50aに対応する領域を後方周囲画像60に設定する。具体的には、図3に示すように、後方切出領域50aは、後方周囲画像60の略中央部に、境界線52、境界線53、境界線56および境界線57にそれぞれ対応する太線で囲まれた領域を設定する。
【0026】
一方、右後側方切出領域50bおよび左後側方切出領域50cの上下範囲は、図2(A)に示すように、境界線52と地面との交点から所定の距離だけ車両40側に近付いた地点と撮像手段1とを結んだ境界線54と、この境界線54と所定の角度d2で撮像手段1からから後方に向かって引いた直線である境界線55とで規定される。また、右後側方切出領域50bおよび左後側方切出領域50cの左右範囲は、図2(B)に示すように、水平方向撮像境界51bと、水平方向撮像境界51bから所定の角度r2(r2>r3)とされ撮像手段1から後方へ向かって引いた直線である境界線58とで規定される範囲が右後側方切出領域50b、水平方向撮像境界51bと、水平方向撮像境界51bから所定の角度r2とされ撮像手段1から後方へ向かって引いた直線である境界線59とで規定される範囲が左後側方切出領域50cとされている。
【0027】
制御部2は、これら右後側方切出領域50bや左後側方切出領域50cに対応する領域を後方周囲画像60に設定する。具体的には、図3に示すように、右後側方切出領域50bは、後方周囲画像60における後方切出領域50aの左側に後方切出領域50aに一部が重複し、境界線54、境界線55、水平方向撮像境界51bおよび境界線58にそれぞれ対応した太線で囲まれた領域で設定される。また、左後側方切出領域50cは、後方周囲画像60における後方切出領域50aの右側に後方切出領域50aに一部が重複するように配置され、境界線54、境界線55、水平方向撮像境界51bおよび境界線59にそれぞれ対応した太線で囲まれた領域で設定される。
【0028】
制御部2は、以上説明したように後方切出領域50a、右後側方切出領域50b、および左後側方切出領域50cを、後方周囲画像60に設定し、各切出領域に対応する画像を切り出して画像データとしてRAM5に記憶する。具体的には、後方切出領域50aで切り出した画像データは後方画像データとして、右後側方切出領域50bで切り出した画像データは右後側方画像データとして、左後側方切出領域50cで切り出した画像データは左後側方画像データとして、それぞれRAM5に記憶する。
尚、上述した各境界線(水平方向撮像境界51bおよび境界線52〜59)は、画像処理を行うために後方周囲画像60に仮想的に定めるものである。
【0029】
次に、制御部2は、RAM5に記憶した後方画像データ、右後側方画像データ、および左後側方画像データを組み合わせ、表示画面上部に右後側方画像データおよび左後側方画像データに対応する画面が並べて表示されるよう、また、右後側方画像データおよび左後側方画像データに対応する画面の下方に後方画像データに対応する画面が表示されるよう画像合成を行い、これを運転支援画像データとして表示手段I/F部7を介して表示手段3に出力する。そして、表示手段3の表示画面には、運転支援画像データに対応する画像が、後述する運転支援画像70として表示される。
【0030】
次に、図1乃至図4を用いて、本実施例による運転支援装置10の具体的な動作及び効果について説明する。尚、以下の説明では、運転者が車両40を、商業施設等の人や他車両の往来が多いと考えられる駐車スペースにバックで駐車する場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図4(A)の後方周囲画像60に表示されるような白線で区画された駐車スペースに、運転者が車両40をバックで駐車する運転を開始する。運転者が駐車を開始すると、上述したように、制御部2は、後方周囲画像60に、後方切出領域50a、右後側方切出領域50b、および左後側方切出領域50cをそれぞれ設定し、各切出領域に対応する画像データを切り出してRAM5に記憶する。尚、以下の説明では、図4(A)に示すように、各切出領域の大きさを規定する上下方向の境界線角度を、d1=90°、d2=66°、左右方向の境界線角度を、r1=110°、r2=40°としている。
【0032】
制御部2は、後方切出領域50aで切り出した後方画像データに対応する後方画像70aが、表示手段3の表示画面下部に、後方画像70aの中心を軸にして左右を反転させて表示されるよう、また、右後側方切出領域50bで切り出した右後側方画像データに対応する右後側方画像70bが表示手段3の表示画面右上に、左後側方切出領域50cで切り出した左後側方画像データに対応する左後側方画像70cが表示手段3の表示画面左上に、それぞれ表示されるよう画像処理を行って運転支援画像データを作成する。そして、制御部2は、作成した運転支援データを表示手段3に出力して、図4(B)に示すような運転支援画像70を表示手段3の表示画面に表示する。
【0033】
尚、図4(B)に示す運転支援画像70には、右後側方画像70bと左後側方画像70cとの間に、上方視点画像70dが表示されている。詳細な説明は省略するが、この上方視点画像70dは、車両40の上部の所定の高さに仮想的に置かれた視点から俯瞰した画像であり、制御部2が後方周囲画像60の所定の領域に座標変換等の画像処理を施して生成したものである。本実施例では、運転支援画像70に上部視点画像70dが含まれる場合を説明しているが、これに代えて上方視点画像70dが表示されている領域に、右後側方画像70bおよび左後側方画像70cの表示領域をそれぞれ表示画面の中央部に延伸して表示してもよく、また、後方画像70aの表示領域を上方に拡張して表示してもよい。
【0034】
また、制御部2は、運転支援画像データを作成するとき、各切出領域で切り出した画像データに含まれる歪みの補正等の画像処理を行うが、この際、各画像データに含まれる表示内容が過不足なく表示されるように、画像の拡張もしくは圧縮を行って表示手段3の表示画面に各画像データに対応する画像を表示するようにしてもよい。尚、歪の補正については、公知技術(例えば、特開2008−311890号)であり、本発明に直接関係がないため、詳細な説明は省略する。
【0035】
図4(A)の後方周囲画像60に表示されているような駐車スペースに車両40を駐車する際、運転者は、駐車スペース手前の道路を他の車両が横切らないか、駐車スペースに車両40の横方向から近づいてくる歩行者がいないか、等の安全確認を行いつつ駐車運転を行う必要がある。
【0036】
特許文献1に記載の運転支援装置では、後方画像を、運転者がルームミラーで視認する車両後方のミラー反射像に対応するサイズとして、正しい距離感で後方画像を把握できるようにしているが、後方画像の左右に表示されている右後側方画像および左後側方画像は、表示領域に収まるよう画像圧縮を行っているために画像が歪んでいる。このため、運転者が車両40の左右方向からの歩行者や他の車両の接近を確認する際に、右後側方画像および左後側方画像に表示される歩行者や他の車両等と自身が運転する車両との距離感や、歩行者や他の車両等が接近する速度を把握しづらいという問題があった。
【0037】
これに対し、本実施例の運転支援画像70は、後方画像70aを表示画面下部に、表示手段3における表示画面の表示領域の横幅を全て使用して表示するとともに、後方画像70aの上部に右後側方画像70bと左後側方画像70cとを並べて表示している。特許文献1の表示形態である右後側方画像70bおよび左後側方画像70cを後方画像70aの左右に並べて表示手段3に表示する場合に比べて、右後側方画像70bおよび左後側方画像70cの表示領域を大きくすることができ、画像の歪や横方向への圧縮が抑えられて視認性が向上した右後側方画像70bおよび左後側方画像70cとすることができる。
【0038】
また、図4(B)に示すように、右後側方画像70bと左後側方画像70cとは、表示画面の中央部から各々の側端部に向かうに従って、上下に表示領域が広くなるように画像処理をされて表示される。具体的には、右後側方画像70bについては、上方視点画像70dとの領域区画線70bbの下端から右後側方画像70bの右側端部70bcの下端とが略直線である領域区画線70baで、後方画像70aと右下がりで斜めに接するよう画像処理をされる。また、左後側方画像70cについては、上方視点画像70dとの領域区画線70cbの下端から左後側方画像70cの右側端部70ccの下端とが略直線である領域区画線70caで、後方画像70aと左下がりで斜めに接するよう画像処理をされる。
【0039】
従って、運転者が車両40の左右方向から歩行者や他の車両等の接近を確認する際に、車両40後方左右のより広い範囲を見ることができ、かつ、右後側方画像70bおよび左後側方画像70cに表示される歩行者や他の車両等と自身が運転する車両40との距離感や、歩行者や他の車両等が接近する速度が把握しやすい。また、領域区画線70baや領域区画線70caを斜めにしていることで、後方画像70aに車両40の目標進行地点である駐車スペース周辺が過不足なく表示できるとともに、表示画面の横幅を全て使用して表示しているので、駐車スペース周辺の他の駐車車両等が大きく表示されることで、駐車スペース周辺状況が把握しやすくなる。
【0040】
また、図4(B)に示すように、本実施例の運転支援画像70では、運転者が駐車運転を行い易くするために、後方画像70aに車両40の車幅を示す2本の車幅線71および車両40後部のバンパー40aから所定の距離(例えば、1mと5m)に仮想的に設定された2本の距離表示線72および73が表示されており、領域区画線70baや領域区画線70caが車幅線71に平行となるように設定されている。これにより、運転者が運転支援画像70を確認する際に、後方画像70aと右後側方画像70bおよび左後側方画像70cとの区別が行い易くなり、かつ、運転者が、後方画像70aと右後側方画像70bおよび左後側方画像70cとが区画された運転支援画像70として違和感なく見ることができるので、運転者にとってより使用感の高い運転支援画像70を提供できる。
【0041】
尚、運転者の違和感が発生する虞があるが、領域区画線70baや領域区画線70caは、車幅線71に平行でなくてもよい。また、領域区画線70baや領域区画線70caは曲線や波線等他の種類の線であってもよく、この場合でも後方画像70aと右後側方画像70bおよび左後側方画像70cとの区別が行い易くなって、運転者の視認性が向上する。
【0042】
以上説明した通り、本発明の運転支援装置によれば、後方画像(あるいは前方画像)を表示手段の下部に表示する。また、右後方周囲画像(あるいは右前方周囲画像)と左後方周囲画像(あるいは左前方周囲画像)とを表示手段の上部に並べて表示し、これらは表示手段の中央部から各画像の側部に向かうに従って表示領域が上下に広くなるように表示している。これにより、後方画像(あるいは前方画像)において車両の進行方向に存在する表示対象(駐車スペースの白線や車止め、周囲のブロック塀等)を過不足なく表示できるとともに、右後方周囲画像(あるいは右前方周囲画像)や左後方周囲画像(あるいは左前方周囲画像)において、運転者が車両の左右から接近する歩行者、自転車、他の車両等を認識し易くなる。従って、運転者にとって使用感の良い運転支援画像を提供できる。
【0043】
以上説明した実施例では、撮像手段1を車両40後部に設けて車両40の後方周辺を撮像し、これに画像処理を行って運転支援画像70を作成して運転者に提供する場合について説明したが、撮像手段1を車両40の前部に設けて車両40の前方周辺を撮像し、これに画像処理を行って運転支援画像を作成してもよい。
【0044】
撮像手段1を車両40の前部に設ける場合、撮像手段1は車両40前部のバンパー上方でかつ幅方向は略中央部(例えば、車両40前部に設置されたナンバープレート上部)に1台設置される。撮像手段1で撮像する前方周囲画像の撮像範囲や、前方周囲画像に設定する前方切出領域、右前側方切出領域および左前側方切出領域の設定方法は、図2において車両40の前後を入れ替えることを除き、撮像手段1を車両40の後部に設ける場合と同じである。
【0045】
つまり、前方周囲画像の撮像範囲は、垂直方向撮像境界51aおよび水平方向撮像境界51bより前方の範囲全てとなる。また、前方切出領域は、上下方向が境界線52と境界線53とで規定される範囲および左右方向が境界線56と境界線57とで規定される範囲(図2(A)および(B)における、後方切出領域50a)となる。
【0046】
また、右前側方切出領域は、上下方向が境界線54と境界線55とで規定される範囲および左右方向が水平方向撮像境界51bと境界線59とで規定される範囲(図2(A)および(B)における、左後側方切出領域50c)となる。さらには、左前側方切出領域は、上下方向が境界線54と境界線55とで規定される範囲および左右方向が水平方向撮像境界51bと境界線58とで規定される範囲(図2(A)および(B)における、右後側方切出領域50b)となる。
【0047】
制御部2は、前方切出領域、右前側方切出領域、および左前側方切出領域を、前方周囲画像に設定し、各切出領域に対応する画像を切り出してそれぞれ前方画像データ、右前側方画像データ、および左前側方画像データとしてRAM5に記憶する。次に、制御部2は、これら前方画像データ、右前側方画像データ、および左前側方画像データを組み合わせ、表示画面上部に右前側方画像データおよび左前側方画像データに対応する画面が並べて表示されるよう、また、右前側方画像データおよび左前側方画像データに対応する画面の下方に前方画像データに対応する画面が表示されるよう画像合成を行い、これを運転支援画像データとして表示手段I/F部7を介して表示手段3に出力する。そして、表示手段3の表示画面には、運転支援画像データに対応する画像が、運転支援画像として表示される。
【0048】
尚、撮像手段1を車両40の前部に設けて車両40の前方周辺を撮像する場合は、運転者の視線方向と撮像手段1の撮像方向とが同じであるため、撮像した画像から運転支援画像を作成する際には、左右を反転させる必要はない。
【0049】
運転者が車両40を運転して道路を走行している時には、脇道から歩行者や他の車両等が道路に進入してくる場合があり、特に車両40前部から運転席までが長い場合は、運転者の目視だけではこれら歩行者や他の車両等の察知が遅れる虞がある。このような場合に本発明による車両40前方周囲を表示する運転支援画像が表示手段3に表示されれば、運転者は右前側方画像や左前側方画像を見ることにより、道路に進入してくる歩行者や他の車両等をいち早く察知することができるので、運転者にとって使用感の良い運転支援画像を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 撮像手段
2 制御部
3 表示手段
4 ROM
5 RAM
10 運転支援装置
20 画像処理手段
40 車両
40a バンパー
40b 右側ドアミラー
40c 左側ドアミラー
50 撮像範囲
50a 後方切出領域
50b 右後側方切出領域
50c 左後側方切出領域
51a 垂直方向撮像境界
51b 水平方向撮像境界
52〜59 境界線
60 後方周囲画像
70 運転支援画像
70a 後方画像
70b 右後側方画像
70ba、70bb 領域区画線
70bc 右側端部
70c 左後側方画像
70ca、70cb 領域区画線
70cc 左側端部
d1、d2 角度
r1、r2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部の所定位置に設置された少なくとも1台の撮像手段と、同撮像手段で撮像した前記車両の後方周囲の画像に対し画像処理を行なって運転支援画像を生成する画像処理手段と、同画像処理手段から出力された前記運転支援画像を表示する表示手段とを有する運転支援装置であって、
前記画像処理手段は、前記撮像手段で前記車両の後方周囲を撮像した後方周囲画像を取り込み、同後方周囲画像の中央部であって前記車両の後部に対応する領域を後方切出領域と設定すると共に、前記後方周囲画像の前記車両の右後側方に対応する領域を右後側方切出領域と前記後方周囲画像の前記車両の左後側方に対応する領域を左後側方切出領域とをそれぞれ設定し、
前記画像処理手段は、前記後方切出領域で前記後方周囲画像から切り出した画像から後方画像を生成すると共に、前記右後側方切出領域で前記後方周囲画像から切り出した画像から右後側方画像と前記左後側方切出領域で前記後方周囲画像から切り出した画像から左後側方画像とをそれぞれ生成し、
前記運転支援画像を前記表示手段に表示する際に、前記右後側方画像は、同右後側方画像の中心を軸として左右を反転させて前記表示手段の右側かつ前記後方画像の上部に表示するとともに、前記左後側方画像は、同左後側方画像の中心を軸として左右を反転させて前記表示手段の左側かつ前記後方画像の上部に表示し、
前記後方画像は、同後方画像の中心を軸として左右を反転させて前記右後側方画像および前記左後側方画像の下方に表示し、
前記右後側方画像を生成する際は、同右後側方画像における前記表示手段の中央部から右側部へ向かうに従って表示領域が上下方向に広くなるよう画像処理を行うとともに、前記左後側方画像を生成する際は、同左後側方画像における前記表示手段の中央部から左側部へ向かうに従って表示領域が上下方向に広くなるよう画像処理を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記表示手段における前記後方画像の上部かつ前記右後側方画像と前記左後側方画像との間の領域に、前記後方周囲画像から切り出した画像から画像処理により生成した前記車両上方の仮想視点からの撮像画像である上方視点画像を表示することを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の運転支援装置において、
前記後方画像に前記車両の車幅を表す車幅線を表示し、
前記右後側方画像と前記後方画像との境界線および前記左後側方画像と前記後方画像との境界線が、前記車幅線と平行となる直線とされたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
車両前部の所定位置に設置された少なくとも1台の撮像手段と、同撮像手段で撮像した前記車両の前方周囲の画像に対し画像処理を行なって運転支援画像を生成する画像処理手段と、同画像処理手段から出力された前記運転支援画像を表示する表示手段とを有する運転支援装置であって、
前記画像処理手段は、前記撮像手段で前記車両の前方周囲を撮像した前方周囲画像を取り込み、同前方周囲画像の中央部であって前記車両の前方に対応する領域を前方切出領域と設定すると共に、前記前方周囲画像の前記車両の右前側方に対応する領域を右前側方切出領域と前記前方周囲画像の前記車両の左前側方に対応する領域を左前側方切出領域とをそれぞれ設定し、
前記画像処理手段は、前記前方切出領域で前記前方周囲画像から切り出した画像から前方画像を生成すると共に、前記右前側方切出領域で前記前方周囲画像から切り出した画像から右前側方画像と前記左前側方切出領域で前記前方周囲画像から切り出した画像から左前側方画像とをそれぞれ生成し、
前記運転支援画像を前記表示手段に表示する際に、前記右前側方画像は、前記表示手段の右側かつ前記前方画像の上部に表示するとともに、前記左前側方画像は、前記表示手段の左側かつ前記前方画像の上部に表示し、
前記前方画像は、前記右前側方画像および前記左前側方画像の下方に表示し、
前記右前側方画像を生成する際は、同右前側方画像における前記表示手段の中央部から右側部へ向かうに従って表示領域が上下方向に広くなるよう画像処理を行うとともに、前記左前側方画像を生成する際は、同左前側方画像における前記表示手段の中央部から左側部へ向かうに従って表示領域が上下方向に広くなるよう画像処理を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運転支援装置において、
前記表示手段における前記前方画像の上部かつ前記右前側方画像と前記左前側方画像との間の領域に、前記前方周囲画像から切り出した画像から画像処理により生成した前記車両上方の仮想視点からの撮像画像である上方視点画像を表示することを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の運転支援装置において、
前記前方画像に前記車両の車幅を表す車幅線を表示し、
前記右前側方画像と前記前方画像との境界線および前記左前側方画像と前記前方画像との境界線が、前記車幅線と平行となる直線とされたことを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46124(P2013−46124A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181151(P2011−181151)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】