運転誘導装置
【課題】 本発明は、運転者の外景からの視覚情報取得に悪影響を及ぼすことなく視覚的に操作誘導を行うことを可能とした運転誘導装置を提供する。
【解決手段】 液晶レンズ21等を用いることで、少なくとも一部の屈折率を変更可能なフロントガラス2を備えており、車速センサで取得した車速Vと、舵角センサで取得した操舵角θに基づいて、屈折率を変化させる領域22の位置、変化する屈折率量等を設定するものであり、例えば、車速Vが速いほど変化領域22内の周辺部分の屈折率を大きく設定し、操舵角θが左折側に大きいほど左方向(白矢印方向)に領域22を移動させる。
【解決手段】 液晶レンズ21等を用いることで、少なくとも一部の屈折率を変更可能なフロントガラス2を備えており、車速センサで取得した車速Vと、舵角センサで取得した操舵角θに基づいて、屈折率を変化させる領域22の位置、変化する屈折率量等を設定するものであり、例えば、車速Vが速いほど変化領域22内の周辺部分の屈折率を大きく設定し、操舵角θが左折側に大きいほど左方向(白矢印方向)に領域22を移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作誘導を行う運転誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行状態に応じて運転者の操作を支援し、誘導を行う各種の運転誘導装置が知られている。特許文献1は、そうした運転誘導装置の一種であり、フロントウィンドウに車速に応じて移動する図形等を表示することにより、運転者の体感速度を強調し、車両の走行速度を基準範囲内へと効果的に誘導するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−318024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この運転誘導装置では、実景に図形等を重ね合わせて表示することになるため、運転者が処理すべき視覚情報が増大することになり、視覚ディストラクションを発生させてしまう。また、運転者が視覚的に煩わしいと感じてしまいかねず、その負担を増大させてしまう。さらに、実景からの情報取得に影響を及ぼすことも否定できない。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の外景からの視覚情報取得に悪影響を及ぼすことなく視覚的に操作誘導を行うことを可能とした運転誘導装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる運転誘導装置は、屈折率可変のフロントガラスを用いた運転誘導装置において、車両の走行状況に応じてこのフロントガラスに同心楕円状で、その中心からの距離が離れるほど屈折率を大きく変更する領域を設定することを特徴とする。
【0007】
車速が速いほど低い場合に比べてこの同心楕円状の領域の屈折率を大きく設定するとよい。操舵時には、この同心楕円状の領域を直進時に比べて操舵方向へ移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の運転誘導装置。
【0008】
さらに、車内にイルミネーション装置を備えており、その点灯・照明状態を車両の走行状況に応じて変更するとよい。このイルミネーション装置は、点灯・照明位置を移動可能であり、その移動速度を車速が速いほど速く移動させるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者の周辺視野部分の画像を歪ませることにより、体感速度、カーブ状況が強調される一方、中心視部分については修正が加わらないので、運転者への違和感、負担も小さく、実景からの情報取得にも支障がない。また、イルミネーションによる表示を併用することで、運転者を誘導する効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる運転誘導装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の装置によるフロントガラスの視野変更領域を説明する図である。
【図4】図1の装置における屈折率設定の一例を示すグラフである。
【図5】図1の装置による直進中のフロントガラス表示例を示す図である。
【図6】図1の装置による左カーブ進行中のフロントガラス表示例を示す図である。
【図7】図1の装置による右カーブ進行中のフロントガラス表示例を示す図である。
【図8】本発明にかかる運転誘導装置の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図9】図8の装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図8の装置中のイルミネーション装置を説明する図である。
【図11】図10のイルミネーション装置の作動状態を説明する図である。
【図12】図8の装置による直進中の作動状態を説明する図である。
【図13】図8の装置による左カーブ進行中の作動状態を説明する図である。
【図14】図8の装置による右カーブ進行中の作動状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明にかかる運転誘導装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。この運転誘導装置は、誘導制御部1を中心に構成されている。誘導制御部1は、CPU、ROM、RAMその他の記憶装置等によって構成され、後述するフロントガラス2の液晶レンズ21を利用して視野を変更する領域を求める変更位置計算部11と、当該液晶レンズ21の屈折率を調整する液晶レンズ制御部12を備える。各部は、別々のハードウェアによって構成されていてもよいが、一部または全部のハードウェアを共有してもよく、別の車両用制御装置の一部として構成されていてもよい。個々の各部は別々のハードウェア、ソフトウェアの組み合わせとして構成されていてもよい。
【0013】
誘導制御部1の変更位置計算部11には、車両の現在位置と、現在位置周辺の道路状況等を把握するナビゲーション装置51、車両の速度を検出する車速センサ52、車両の舵角を検出する舵角センサ53の各出力が入力される。
【0014】
フロントガラス2は液晶レンズ21を備え、屈折率を調節可能である。この液晶レンズ21としては、例えば、特開2005−119529号公報に記載されているタイプの液晶レンズ21を用いることができる。
【0015】
次に、この装置の動作を図2〜図7を参照して説明する。図2は、本装置の動作を示すフローチャートであり、図3は、その視野変更領域を説明する図であり、図4は、屈折率設定の一例を示すグラフであり、図5〜図7は、フロントガラス表示例を示す図である。この処理は、誘導制御部1において、車両の電源スイッチがオンになってからオフになるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行されるものである。
【0016】
変更位置計算部11は、車速センサ52の出力から自車両の車速Vを取得する(ステップS1)。次に、ナビゲーション装置51を通じて車両の現在位置とその履歴に基づいて走行中の道路の制限車速情報を取得する(ステップS3)。次に、車速Vを制限車速と比較する(ステップS5)。車速Vが制限車速を下回っている場合には、その後の処理を行わずに終了する。一方、車速Vが制限車速以上である場合には、ステップS7へと移行する。
【0017】
ステップS7では、舵角センサ53の出力である操舵角θを取得する。操舵角θは、中立位置(直進時)に0をとり、右折時に正、左折時に負の数値をとる。取得した操舵角θに応じて屈折率を変更する領域の位置を決定する(ステップS9)。例えば、図3に示されるように、フロントガラス2中において屈折率を変更する領域22は、左折時には、図中白抜きの矢印で示されるように、運転者から見て左方向に移動し、右折時には、これと反対に右方向に移動するようその位置が設定される。このように設定することで、屈折率を変更する領域の中心は、フロントガラス2上において、運転者の視線中心である中心視位置に略一致するよう配置される。
【0018】
次に、車速Vに応じて屈折率を設定する(ステップS11)。この屈折率は、例えば、図4に示されるように、車速Vが同一であれば、中心視位置であるエリア中心からの距離が離れるほど屈折率を大きく設定する。一方、エリア中心からの距離が同一の場合には、車速Vが高速になるほど、屈折率を大きく設定する。そして、液晶レンズ制御部12は液晶レンズ21中の設定エリアへの印加電圧を制御することにより、所望のエリアについてステップS11で設定したように屈折率を変化させて、当該部分を通じて運転者が見る前景を歪ませる(各図においてはこの歪みは表現していない)。
【0019】
図5〜図6は、それぞれ直進、左カーブ、右カーブ走行時の運転席(右側)から見たフロントガラス越しの画像を示している。各サイドミラー26、27、ルームミラー28に映し出される後景についてはいずれも変化はない。
【0020】
直進路100を走行している場合には、図5に示されるように、屈折率変化領域22は、その中心領域23が運転者から見てまっすぐ前方に位置するよう配置される。中心領域23に比べて周辺領域24、25の屈折率が大きくなるよう設定することで、中心領域23に比べて周辺領域24、さらには周辺領域25部分の画像は大きく歪むことにより、その錯覚により速度を体感させる。屈折率変化領域22外の画像(人物110を含む。)は歪まないので、周辺状況の把握に影響を及ぼすことがない。
【0021】
左カーブ101を走行している場合には、図6に示されるように、屈折率変化領域22は、その中心領域23が運転者から見て左方向に位置するよう配置される。中心領域23に対する周辺領域24、25の関係は、図5に示される直進時と同様である。右カーブ102走行中は、図7に示されるように、屈折率変化領域22は、その中心領域23が運転者から見て右方向に位置するよう配置される。
【0022】
本実施形態においては、このように屈折率変化領域を設定することで、運転者の錯覚を利用し、体感速度を強調することにより、誘導情報をそれと意図させることなく提供することができるので、運転者が感じる煩わしさを低減できる。また、運転者の視線を中心領域23へと誘導する効果も得られる。
【0023】
続いて、本発明にかかる運転誘導装置の第2の実施形態について説明する。図8は、そのブロック構成図である。この装置は、図1に示される第1の実施形態に、左右のドアパネル35、36上に設置されるイルミネーション31、32を追加したものである(図10参照)。誘導制御部1には、このイルミネーション31、32を制御するための表示配分計算部15と、光源制御部16とが設けられている。
【0024】
イルミネーション31、32は、それぞれ図11に示されるように多数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)310、320を車両の前後方向に沿って並べて形成されている。イルミネーション31、32は、専用の筐体に各LED310、320を並べた後に、筐体をドアパネル35、36に取り付けてもよいし、ドアパネル35、36上に個々のLED310、320を収容する収容部を設けておき、各LED310、320を配置してもよい。
【0025】
このイルミネーション31、32を利用した誘導制御について図9のフローチャートを参照して説明する。なお、この誘導制御は、図2に示されるフロントガラス2の屈折率を制御する第1の実施形態の誘導制御とともに実行される。
【0026】
ステップS21〜S27の処理は、図2に示されるステップS1〜7の処理と同一である。ステップS29では、表示配分計算部15は、取得した車速Vと操舵角θに基づいてイルミネーション31、32の表示パターンを設定し、光源制御部16によりイルミネーション31、32の作動を制御する。
【0027】
具体的には、図11に示されるように、イルミネーション31、32内における各LED310、320の点灯、消灯タイミングを制御することで、光が車両前方から後方へと移動して見えるように表示するとともに、その移動速度を車速Vが速いほど速くなるよう制御する。そして、直進路100では、左右のイルミネーション31、32の光の移動速度を一致させ(図12参照、以下、図ではフロントガラスの表示については省略している。)、カーブの場合には、カーブに応じて左右のイルミネーション31、32の速度を異ならせる。例えば、図13に示される左カーブ101の場合には、右側のイルミネーション31の光の移動速度に比べて左側のイルミネーション32の光の移動速度を早める。逆に、図14に示される右カーブ102の場合には、左側のイルミネーション32の光の移動速度に比べて右側のイルミネーション31の光の移動速度を早める。車速Vが同じでも、カーブ半径が小さくなるほど運転者の視線の向きやすい内側のイルミネーション31、32の光の移動速度を早めることで、視覚的な誘導を行う。
【0028】
以上の説明では、操舵角θに基づいて屈折率変化領域を設定する例を説明したが、ナビゲーション装置51から道路の曲率を読み出し、それに基づいて設定を行ってもよい。あるいは、前方カメラで取得した画像に基づいて走行レーンの曲率を取得したり、路車間通信や道路に埋め込まれたビーコン等により走行レーン情報を取得してもよい。
【0029】
イルミネーション31、32は、ドアパネル35、36上に限られるものではなく、フロントピラー上に設置してもよい。点灯装置ではなく、ドアパネルやフロントピラーを証明する投光装置を設け、照明位置を移動させることで、同様の効果を得てもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…誘導制御部、2…フロントガラス、11…変更位置計算部、12…液晶レンズ制御部、15…表示配分計算部、16…光源制御部、21…液晶レンズ、22…屈折率変化領域、23…中心領域、24、25…周辺領域、26、27…サイドミラー、28…ルームミラー、31、32…イルミネーション、35、36…ドアパネル、51…ナビゲーション装置、52…車速センサ、53…舵角センサ、100…直進路、101…左カーブ、102…右カーブ、110…人物、310、320…LED。
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作誘導を行う運転誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行状態に応じて運転者の操作を支援し、誘導を行う各種の運転誘導装置が知られている。特許文献1は、そうした運転誘導装置の一種であり、フロントウィンドウに車速に応じて移動する図形等を表示することにより、運転者の体感速度を強調し、車両の走行速度を基準範囲内へと効果的に誘導するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−318024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この運転誘導装置では、実景に図形等を重ね合わせて表示することになるため、運転者が処理すべき視覚情報が増大することになり、視覚ディストラクションを発生させてしまう。また、運転者が視覚的に煩わしいと感じてしまいかねず、その負担を増大させてしまう。さらに、実景からの情報取得に影響を及ぼすことも否定できない。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の外景からの視覚情報取得に悪影響を及ぼすことなく視覚的に操作誘導を行うことを可能とした運転誘導装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる運転誘導装置は、屈折率可変のフロントガラスを用いた運転誘導装置において、車両の走行状況に応じてこのフロントガラスに同心楕円状で、その中心からの距離が離れるほど屈折率を大きく変更する領域を設定することを特徴とする。
【0007】
車速が速いほど低い場合に比べてこの同心楕円状の領域の屈折率を大きく設定するとよい。操舵時には、この同心楕円状の領域を直進時に比べて操舵方向へ移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の運転誘導装置。
【0008】
さらに、車内にイルミネーション装置を備えており、その点灯・照明状態を車両の走行状況に応じて変更するとよい。このイルミネーション装置は、点灯・照明位置を移動可能であり、その移動速度を車速が速いほど速く移動させるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者の周辺視野部分の画像を歪ませることにより、体感速度、カーブ状況が強調される一方、中心視部分については修正が加わらないので、運転者への違和感、負担も小さく、実景からの情報取得にも支障がない。また、イルミネーションによる表示を併用することで、運転者を誘導する効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる運転誘導装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の装置によるフロントガラスの視野変更領域を説明する図である。
【図4】図1の装置における屈折率設定の一例を示すグラフである。
【図5】図1の装置による直進中のフロントガラス表示例を示す図である。
【図6】図1の装置による左カーブ進行中のフロントガラス表示例を示す図である。
【図7】図1の装置による右カーブ進行中のフロントガラス表示例を示す図である。
【図8】本発明にかかる運転誘導装置の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図9】図8の装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図8の装置中のイルミネーション装置を説明する図である。
【図11】図10のイルミネーション装置の作動状態を説明する図である。
【図12】図8の装置による直進中の作動状態を説明する図である。
【図13】図8の装置による左カーブ進行中の作動状態を説明する図である。
【図14】図8の装置による右カーブ進行中の作動状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明にかかる運転誘導装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。この運転誘導装置は、誘導制御部1を中心に構成されている。誘導制御部1は、CPU、ROM、RAMその他の記憶装置等によって構成され、後述するフロントガラス2の液晶レンズ21を利用して視野を変更する領域を求める変更位置計算部11と、当該液晶レンズ21の屈折率を調整する液晶レンズ制御部12を備える。各部は、別々のハードウェアによって構成されていてもよいが、一部または全部のハードウェアを共有してもよく、別の車両用制御装置の一部として構成されていてもよい。個々の各部は別々のハードウェア、ソフトウェアの組み合わせとして構成されていてもよい。
【0013】
誘導制御部1の変更位置計算部11には、車両の現在位置と、現在位置周辺の道路状況等を把握するナビゲーション装置51、車両の速度を検出する車速センサ52、車両の舵角を検出する舵角センサ53の各出力が入力される。
【0014】
フロントガラス2は液晶レンズ21を備え、屈折率を調節可能である。この液晶レンズ21としては、例えば、特開2005−119529号公報に記載されているタイプの液晶レンズ21を用いることができる。
【0015】
次に、この装置の動作を図2〜図7を参照して説明する。図2は、本装置の動作を示すフローチャートであり、図3は、その視野変更領域を説明する図であり、図4は、屈折率設定の一例を示すグラフであり、図5〜図7は、フロントガラス表示例を示す図である。この処理は、誘導制御部1において、車両の電源スイッチがオンになってからオフになるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行されるものである。
【0016】
変更位置計算部11は、車速センサ52の出力から自車両の車速Vを取得する(ステップS1)。次に、ナビゲーション装置51を通じて車両の現在位置とその履歴に基づいて走行中の道路の制限車速情報を取得する(ステップS3)。次に、車速Vを制限車速と比較する(ステップS5)。車速Vが制限車速を下回っている場合には、その後の処理を行わずに終了する。一方、車速Vが制限車速以上である場合には、ステップS7へと移行する。
【0017】
ステップS7では、舵角センサ53の出力である操舵角θを取得する。操舵角θは、中立位置(直進時)に0をとり、右折時に正、左折時に負の数値をとる。取得した操舵角θに応じて屈折率を変更する領域の位置を決定する(ステップS9)。例えば、図3に示されるように、フロントガラス2中において屈折率を変更する領域22は、左折時には、図中白抜きの矢印で示されるように、運転者から見て左方向に移動し、右折時には、これと反対に右方向に移動するようその位置が設定される。このように設定することで、屈折率を変更する領域の中心は、フロントガラス2上において、運転者の視線中心である中心視位置に略一致するよう配置される。
【0018】
次に、車速Vに応じて屈折率を設定する(ステップS11)。この屈折率は、例えば、図4に示されるように、車速Vが同一であれば、中心視位置であるエリア中心からの距離が離れるほど屈折率を大きく設定する。一方、エリア中心からの距離が同一の場合には、車速Vが高速になるほど、屈折率を大きく設定する。そして、液晶レンズ制御部12は液晶レンズ21中の設定エリアへの印加電圧を制御することにより、所望のエリアについてステップS11で設定したように屈折率を変化させて、当該部分を通じて運転者が見る前景を歪ませる(各図においてはこの歪みは表現していない)。
【0019】
図5〜図6は、それぞれ直進、左カーブ、右カーブ走行時の運転席(右側)から見たフロントガラス越しの画像を示している。各サイドミラー26、27、ルームミラー28に映し出される後景についてはいずれも変化はない。
【0020】
直進路100を走行している場合には、図5に示されるように、屈折率変化領域22は、その中心領域23が運転者から見てまっすぐ前方に位置するよう配置される。中心領域23に比べて周辺領域24、25の屈折率が大きくなるよう設定することで、中心領域23に比べて周辺領域24、さらには周辺領域25部分の画像は大きく歪むことにより、その錯覚により速度を体感させる。屈折率変化領域22外の画像(人物110を含む。)は歪まないので、周辺状況の把握に影響を及ぼすことがない。
【0021】
左カーブ101を走行している場合には、図6に示されるように、屈折率変化領域22は、その中心領域23が運転者から見て左方向に位置するよう配置される。中心領域23に対する周辺領域24、25の関係は、図5に示される直進時と同様である。右カーブ102走行中は、図7に示されるように、屈折率変化領域22は、その中心領域23が運転者から見て右方向に位置するよう配置される。
【0022】
本実施形態においては、このように屈折率変化領域を設定することで、運転者の錯覚を利用し、体感速度を強調することにより、誘導情報をそれと意図させることなく提供することができるので、運転者が感じる煩わしさを低減できる。また、運転者の視線を中心領域23へと誘導する効果も得られる。
【0023】
続いて、本発明にかかる運転誘導装置の第2の実施形態について説明する。図8は、そのブロック構成図である。この装置は、図1に示される第1の実施形態に、左右のドアパネル35、36上に設置されるイルミネーション31、32を追加したものである(図10参照)。誘導制御部1には、このイルミネーション31、32を制御するための表示配分計算部15と、光源制御部16とが設けられている。
【0024】
イルミネーション31、32は、それぞれ図11に示されるように多数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)310、320を車両の前後方向に沿って並べて形成されている。イルミネーション31、32は、専用の筐体に各LED310、320を並べた後に、筐体をドアパネル35、36に取り付けてもよいし、ドアパネル35、36上に個々のLED310、320を収容する収容部を設けておき、各LED310、320を配置してもよい。
【0025】
このイルミネーション31、32を利用した誘導制御について図9のフローチャートを参照して説明する。なお、この誘導制御は、図2に示されるフロントガラス2の屈折率を制御する第1の実施形態の誘導制御とともに実行される。
【0026】
ステップS21〜S27の処理は、図2に示されるステップS1〜7の処理と同一である。ステップS29では、表示配分計算部15は、取得した車速Vと操舵角θに基づいてイルミネーション31、32の表示パターンを設定し、光源制御部16によりイルミネーション31、32の作動を制御する。
【0027】
具体的には、図11に示されるように、イルミネーション31、32内における各LED310、320の点灯、消灯タイミングを制御することで、光が車両前方から後方へと移動して見えるように表示するとともに、その移動速度を車速Vが速いほど速くなるよう制御する。そして、直進路100では、左右のイルミネーション31、32の光の移動速度を一致させ(図12参照、以下、図ではフロントガラスの表示については省略している。)、カーブの場合には、カーブに応じて左右のイルミネーション31、32の速度を異ならせる。例えば、図13に示される左カーブ101の場合には、右側のイルミネーション31の光の移動速度に比べて左側のイルミネーション32の光の移動速度を早める。逆に、図14に示される右カーブ102の場合には、左側のイルミネーション32の光の移動速度に比べて右側のイルミネーション31の光の移動速度を早める。車速Vが同じでも、カーブ半径が小さくなるほど運転者の視線の向きやすい内側のイルミネーション31、32の光の移動速度を早めることで、視覚的な誘導を行う。
【0028】
以上の説明では、操舵角θに基づいて屈折率変化領域を設定する例を説明したが、ナビゲーション装置51から道路の曲率を読み出し、それに基づいて設定を行ってもよい。あるいは、前方カメラで取得した画像に基づいて走行レーンの曲率を取得したり、路車間通信や道路に埋め込まれたビーコン等により走行レーン情報を取得してもよい。
【0029】
イルミネーション31、32は、ドアパネル35、36上に限られるものではなく、フロントピラー上に設置してもよい。点灯装置ではなく、ドアパネルやフロントピラーを証明する投光装置を設け、照明位置を移動させることで、同様の効果を得てもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…誘導制御部、2…フロントガラス、11…変更位置計算部、12…液晶レンズ制御部、15…表示配分計算部、16…光源制御部、21…液晶レンズ、22…屈折率変化領域、23…中心領域、24、25…周辺領域、26、27…サイドミラー、28…ルームミラー、31、32…イルミネーション、35、36…ドアパネル、51…ナビゲーション装置、52…車速センサ、53…舵角センサ、100…直進路、101…左カーブ、102…右カーブ、110…人物、310、320…LED。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率可変のフロントガラスを用いた運転誘導装置において、
車両の走行状況に応じて前記フロントガラスに同心楕円状で、その中心からの距離が離れるほど屈折率を大きく変更する領域を設定することを特徴とする運転誘導装置。
【請求項2】
車速が速いほど低い場合に比べて前記同心楕円状の領域の屈折率を大きく設定することを特徴とする請求項1記載の運転誘導装置。
【請求項3】
操舵時には、前記同心楕円状の領域を直進時に比べて操舵方向へ移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の運転誘導装置。
【請求項4】
車内にイルミネーション装置を備えており、その点灯・照明状態を車両の走行状況に応じて変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の運転誘導装置。
【請求項5】
前記イルミネーション装置は、点灯・照明位置を移動可能であり、その移動速度を車速が速いほど速く移動させることを特徴とする請求項4記載の運転誘導装置。
【請求項1】
屈折率可変のフロントガラスを用いた運転誘導装置において、
車両の走行状況に応じて前記フロントガラスに同心楕円状で、その中心からの距離が離れるほど屈折率を大きく変更する領域を設定することを特徴とする運転誘導装置。
【請求項2】
車速が速いほど低い場合に比べて前記同心楕円状の領域の屈折率を大きく設定することを特徴とする請求項1記載の運転誘導装置。
【請求項3】
操舵時には、前記同心楕円状の領域を直進時に比べて操舵方向へ移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の運転誘導装置。
【請求項4】
車内にイルミネーション装置を備えており、その点灯・照明状態を車両の走行状況に応じて変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の運転誘導装置。
【請求項5】
前記イルミネーション装置は、点灯・照明位置を移動可能であり、その移動速度を車速が速いほど速く移動させることを特徴とする請求項4記載の運転誘導装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−217687(P2010−217687A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66154(P2009−66154)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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