説明

過充電検出回路、電池パック及び集積回路

【課題】二次電池の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせることができる過充電検出回路、電池パック及び集積回路を提供することを目的とする。
【解決手段】二次電池の近傍に配設され二次電池と並列接続されたサーミスと抵抗の直列回路と、サーミスタと抵抗の接続点の電圧を第一の所定温度に対応する第一の基準電圧と比較する第一のコンパレータと、第一のコンパレータの出力にしたがって、二次電池の温度が第一の所定温度未満のとき閾値電圧を第一の値とし、二次電池の温度が第一の所定温度以上のとき閾値電圧を第一の値よりも低い第二の値とする切り替え手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関し、二次電池の過充電、過放電、過電流を検出して前記二次電池と負荷又は充電装置との間の配線に設けられたスイッチ素子をオフする保護回路を備えた過充電検出回路、電池パック及び集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池としてリチウムイオン電池がデジタルカメラなど携帯機器に搭載されている。リチウムイオン電池は過充電及び過放電に弱いため、過充電及び過放電の保護回路を備えた電池パックの形態で使用される。
【0003】
図10及び図11は、従来の電池パックの各例のブロック図を示す。図10において、リチウムイオン電池2と並列に抵抗R1とコンデンサC1の直列回路が接続されている。リチウムイオン電池2の正極は電池パック1の外部端子3に接続され、負極は電流遮断用のnチャネルMOS(金属酸化膜半導体)トランジスタM1、M2を介して電池パック1の外部端子4に接続されている。
【0004】
MOSトランジスタM1、M2はドレインを共通接続され、MOSトランジスタM1のソースはリチウムイオン電池2の負極に接続され、MOSトランジスタM2のソースは外部端子4に接続されている。また、MOSトランジスタM1、M2それぞれは、ドレイン・ソース間に等価的にボディダイオードD1、D2が接続されている。
【0005】
保護IC(集積回路)5は、過充電検出回路、過放電検出回路、過電流検出回路を内蔵している。また、保護IC5はリチウムイオン電池2の正極から抵抗R1を通して電源Vddを供給されると共にリチウムイオン電池2の負極から電源Vssを供給されて動作する。
【0006】
保護IC5は過放電検出回路或いは過電流検出回路で過放電或いは過電流を検出したときDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM1を遮断し、過充電検出回路で過充電を検出したときCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM2を遮断する。
【0007】
図11では、更に、電池パック1内にサーミスタR3が設けられている。サーミスタR3の一端は電池パック1の端子6に接続され、他端は外部端子4に接続されている。電池パック1の端子6には充電時に充電装置から分圧抵抗を介して所定電圧が印加される。電池パック1の温度によってサーミスタR3の抵抗値が変化することで端子6の電圧は変化する。充電装置は、端子6の電圧を検出して電池パック1の温度が所定値を超えると充電を停止するよう制御を行う。
【0008】
なお、特許文献1には、二次電池に温度保護素子(PTC素子)と直列に接続されたダイオード及びこれらと逆方向に並列に接続されたダイオードを二次電池に接続して、通常の放電時には高温になっても温度保護素子(PTC素子)が動作しないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−152580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図10に示す従来例は電池パックの温度に対する保護機能がない。また、図11に示す従来例は電池パックの温度に対する保護機能があるものの、充電装置から分圧抵抗を介して所定電圧が印加されるため、充電装置の所定電圧が変化した場合や充電装置の分圧抵抗の誤差がある場合には、電池パックの温度を正確に検出することができず、適切な充電制御を行えないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、二次電池の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせることができる過充電検出回路、電池パック及び集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の如き構成を採用した。
【0013】
本発明の過充電検出回路は、二次電池(12)の正極及び負極間の電圧を閾値電圧と比較して前記二次電池(12)の過充電を検出し、前記二次電池(12)と負荷又は充電装置との間の配線に設けられたスイッチ素子(M11)をオフする電池パック(10A)において、
前記二次電池(12)の近傍に配設され前記二次電池(12)と並列接続されたサーミス(R13)と抵抗(R14)の直列回路と、
前記サーミスタと抵抗の接続点(A)の電圧を第一の所定温度に対応する第一の基準電圧(V1)と比較する第一のコンパレータ(21)と、
前記第一のコンパレータ(21)の出力にしたがって、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記閾値電圧を第一の値とし、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記閾値電圧を前記第一の値よりも低い第二の値とする切り替え手段(M13)と、
を有することにより、二次電池の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせることができる。
【0014】
また、過充電検出回路において、前記二次電池(12)の正極及び負極間の電圧を分圧する分圧回路(160)と、前記分圧回路(160)で分圧した電圧を一定の閾値電圧(Voc)と比較する第二のコンパレータ(162)とを有し、
前記切り替え手段(M13)は、前記第一のコンパレータ(21)の出力にしたがって、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記分圧回路(160)を第一の分圧比とし、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記分圧回路(160)を前記第一の分圧比よりも小さい第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替える構成とすることができる。
【0015】
また、過充電検出回路において、前記切り替え手段(M13)は、更に、前記サーミスタ(R13)と抵抗(R14)の接続点(A)の電圧を前記第一の所定温度より低い第二の所定温度に対応する第二の基準電圧(V2)と比較する第三のコンパレータ(21A)を有し、
前記第三のコンパレータ(21A)の出力にしたがって、前記二次電池(12)の温度が前記第二の所定温度未満のとき前記分圧回路(160)を第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替える構成とすることができる。
【0016】
また、過充電検出回路において、前記サーミスタ(R13)は、負の温度係数を持つNTCサーミスタである構成とすることができる。
【0017】
また本発明は、前記二次電池(12)と、上記に記載したうち何れか一つの過充電検出回路(15A)を有する電池パック(10A)とすることができる。
【0018】
本発明の集積回路は、二次電池(12)の正極及び負極間の電圧を閾値電圧と比較して前記二次電池(12)の過充電を検出し、前記二次電池(12)と負荷又は充電装置との間の配線に設けられたスイッチ素子(M11)をオフする集積回路(15A)において、
前記二次電池(12)の近傍に配設され前記二次電池(12)と並列接続されたサーミス(R13)と抵抗(R14)との接続点の電圧を第一の所定温度に対応する第一の基準電圧(V1)と比較する第一のコンパレータ(21)と、
前記第一のコンパレータ(21)の出力にしたがって、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記閾値電圧を第一の値とし、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記閾値電圧を前記第一の値よりも低い第二の値とする切り替え手段(M13)と、を有する構成とすることができる。
【0019】
また集積回路は、前記サーミス(R13)と抵抗(R14)との接続点の電圧を入力する入力端子(15b)を有する構成とすることができる。
【0020】
また集積回路は、前記二次電池(12)の正極及び負極間の電圧を分圧する分圧回路(160)と、前記分圧回路(160)で分圧した電圧を一定の閾値電圧と比較する第二のコンパレータ(162)とを有し、
前記切り替え手段(M3)は、前記第一のコンパレータ(21)の出力にしたがって、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記分圧回路(160)を第一の分圧比とし、前記二次電池(12)の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記分圧回路(160)を前記第一の分圧比よりも小さい第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替える構成とすることができる。
【0021】
また集積回路において、前記切り替え手段(M13)は、更に、前記サーミスタ(R13)と抵抗(R14)の接続点の電圧を前記第一の所定温度より低い第二の所定温度に対応する第二の基準電圧と比較する第三のコンパレータ(21A)を有し、
前記第三のコンパレータ(21A)の出力にしたがって、前記二次電池(12)の温度が前記第二の所定温度未満のとき前記分圧回路(160)を第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替える構成とすることができる。
【0022】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、二次電池の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の電池パックの参考例のブロック図を示す。
【図2】NTCサーミスタとPTCサーミスタそれぞれの温度・抵抗特性を示す図である。
【図3】第一の実施形態の電池パックのブロック図である。
【図4】第一の実施形態の過充電検出回路を説明する図である。
【図5】第一の実施形態のコンパレータ162の動作を説明する図である。
【図6】第一の実施形態の過充電検出回路の一変形例を示す図である。
【図7】第一の実施形態の過充電検出回路の別の変形例を示す図である。
【図8】第二の実施形態の電池パックのブロック図である。
【図9】第二の実施形態の過充電検出回路を説明する図である。
【図10】従来の電池パックの一例のブロック図を示す。
【図11】従来の電池パックの他の一例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(参考例)
図1は、本発明の電池パックの参考例のブロック図を示す。同図中、リチウムイオン電池12と並列に抵抗R11とコンデンサC11の直列回路が接続されている。リチウムイオン電池12の正極は配線により電池パック10の外部端子13に接続され、負極は配線により電流遮断用のnチャネルMOSトランジスタM11、M12を介して電池パック10の外部端子14に接続されている。
【0026】
MOSトランジスタM11、M12はドレインを共通接続され、MOSトランジスタM11のソースはリチウムイオン電池12の負極に接続され、MOSトランジスタM12のソースは外部端子14に接続されている。また、MOSトランジスタM11、M12それぞれは、ドレイン・ソース間に等価的にボディダイオードD11、D12が接続されている。
【0027】
また、リチウムイオン電池12と並列にサーミスタR13と抵抗R14の直列回路が接続されている。上記のサーミスタR13は、電池パック10内でリチウムイオン電池12の近傍に配設されてリチウムイオン電池12と熱結合されている。サーミスタR13は負の温度係数を持つNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを用いる。
【0028】
なお、図2に負の温度係数を持つNTCサーミスタと、正の温度係数を持つPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタそれぞれの温度・抵抗特性を示す。
【0029】
保護IC15は、過充電検出回路16、過放電検出回路17、過電流検出回路18を内蔵している。また、保護IC15はリチウムイオン電池12の正極から抵抗R11を通して電源Vddを端子15aに供給されると共に、リチウムイオン電池12の負極から電源Vssを端子15cに供給されて動作する。
【0030】
過充電検出回路16は端子15a、15cの電圧からリチウムイオン電池12の過充電を検出して検出信号を論理回路19に供給する。過放電検出回路17は端子15a、15cの電圧からリチウムイオン電池12の過放電を検出して検出信号を論理回路19に供給する。過電流検出回路18は端子15c、15fの電圧から抵抗R12に流れる電流が過大となる過電流を検出して検出信号を論理回路19に供給する。
【0031】
また、保護IC15は端子15bにサーミスタR13と抵抗R14の接続点Aを接続され、端子15fに抵抗R12の一端を接続され抵抗R12の他端は外部端子14に接続されている。また、保護IC15はDOUT出力の端子15dをMOSトランジスタM11のゲートに接続され、COUT出力の端子15eをMOSトランジスタM12のゲートに接続されている。
【0032】
保護IC15において、端子15bはコンパレータ21の非反転入力端子に接続されている。端子15cはツェナーダイオード等の定電圧源20の負極に接続され、定電圧源20の正極はコンパレータ21の反転入力端子に接続されている。
【0033】
サーミスタR13は図2に負の温度係数を持つNTCサーミスタであるため、温度が上昇するにしたがって抵抗値が低下して接続点Aの電圧は上昇する。
【0034】
コンパレータ21はヒステリシス特性を有し、定電圧源20で発生した定電圧V1と接続点Aの電圧を比較して、接続点Aの電圧が高いときハイレベルの信号を出力する。つまり、サーミスタR13の検出温度が定電圧V1に対応する所定温度(例えば45°C程度)を超えるとコンパレータ21はハイレベルの高温検出信号を出力する。
【0035】
コンパレータ21の出力する高温検出信号は不感応時間設定回路22に供給される。不感応時間設定回路22は高温検出信号のハイレベル期間が所定値(例えば0.5sec)を超えるとハイレベルの高温検出信号を論理回路19に供給する。
【0036】
論理回路19は、過充電検出回路16、過放電検出回路17、過電流検出回路18それぞれの検出信号が供給されると共に、不感応時間設定回路22の出力する高温検出信号が供給されている。
【0037】
論理回路19は過充電検出回路16から過充電検出信号を供給されると端子15eのCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM12を遮断し、過放電検出回路17から過放電検出信号を供給されると端子15dのDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM11を遮断し、過電流検出回路18から過電流検出信号を供給されると端子15dのDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM11を遮断する。
【0038】
論理回路19は高温検出信号がハイレベルとなると、端子15eのCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM12を遮断する。これにより、リチウムイオン電池12の温度を正確に検出することができ、リチウムイオン電池12が高温となった場合に充電を停止して保護することができる。
【0039】
また、サーミスタR13は図2に示すように温度に対してほぼリニアに抵抗値が変化するNTCサーミスタを用いているため温度を精度良く検出でき、サーミスタR13を電池パック10内でリチウムイオン電池12の近傍に配設することによりリチウムイオン電池12の温度を精度良く検出できる。なお、PTCサーミスタはある温度を超えると急激に抵抗値が増加するため温度を精度良く検出できない。
【0040】
ところで、リチウムイオン電池12は、高温且つ満充電となった場合に破損しやすくなるという特性を有する。このため電池パック10において、リチウムイオン電池12の温度保護を行いつつ、高温時に満充電とならないように充電制御を行うことが好ましい。そこでリチウムイオン電池12の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせるのが以下に説明する本発明の実施形態である。
(第一の実施形態)
図3は、本発明の第一の実施形態の電池パックのブロック図である。同図中、図1と同一部分には同一符号を付す。
【0041】
本実施形態では、リチウムイオン電池12が所定の温度より高くなったとき、過充電検出回路16Aにおいて過充電を検出する相対的な閾値電圧を低くし、満充電となる前に過充電を検出させる。
【0042】
以下に本実施形態の電池パック10Aについて説明する。
【0043】
本実施形態の電池パック10Aでは、リチウムイオン電池12と並列に抵抗R11とコンデンサC11の直列回路が接続されている。リチウムイオン電池12の正極は配線により電池パック10の外部端子13に接続され、負極は配線により電流遮断用のnチャネルMOSトランジスタM11、M12を介して電池パック10Aの外部端子14に接続されている。
【0044】
MOSトランジスタM11、M12はドレインを共通接続され、MOSトランジスタM11のソースはリチウムイオン電池12の負極に接続され、MOSトランジスタM12のソースは外部端子14に接続されている。また、MOSトランジスタM11、M12それぞれは、ドレイン・ソース間に等価的にボディダイオードD11、D12が接続されている。
【0045】
また、リチウムイオン電池12と並列にサーミスタR13と抵抗R14の直列回路が接続されている。上記のサーミスタR13は、電池パック10A内でリチウムイオン電池12の近傍に配設されてリチウムイオン電池12と熱結合されている。サーミスタR13は負の温度係数を持つNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを用いる。
【0046】
なお、図2に、負の温度係数を持つNTCサーミスタと、正の温度係数を持つPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタそれぞれの温度・抵抗特性を示す。
【0047】
保護IC15Aは、過充電検出回路16A、過放電検出回路17、過電流検出回路18を内蔵している。また、保護IC15Aはリチウムイオン電池12の正極から抵抗R11を通して電源Vddを端子15aに供給されると共に、リチウムイオン電池12の負極から電源Vssを端子15cに供給されて動作する。
【0048】
過充電検出回路16Aは端子15a、15cの電圧からリチウムイオン電池12の過充電を検出して検出信号を論理回路19に供給する。また過充電検出回路16Aには、後述する不感応時間設定回路22から出力される高温検出信号が入力される。過充電検出回路16Aの詳細は後述する。
【0049】
過放電検出回路17は端子15a、15cの電圧からリチウムイオン電池12の過放電を検出して検出信号を論理回路19に供給する。過電流検出回路18は端子15c、15fの電圧から抵抗R12に流れる電流が過大となる過電流を検出して検出信号を論理回路19に供給する。
【0050】
また保護IC15Aは、端子15bにサーミスタR13と抵抗R14の接続点Aを接続され、端子15fに抵抗R12の一端を接続され抵抗R12の他端は外部端子14に接続されている。また、保護IC15AはDOUT出力の端子15dをMOSトランジスタM11のゲートに接続され、COUT出力の端子15eをMOSトランジスタM12のゲートに接続されている。
【0051】
保護IC15Aにおいて、端子15bはコンパレータ21の非反転入力端子に接続されている。端子15cはツェナーダイオード等の定電圧源20の負極に接続され、定電圧源20の正極はコンパレータ21の反転入力端子に接続されている。
【0052】
サーミスタR13は図2に示すような負の温度係数を持つNTCサーミスタであるため、温度が上昇するにしたがって抵抗値が低下して接続点Aの電圧は上昇する。
【0053】
コンパレータ21はヒステリシス特性を有し、定電圧源20で発生した定電圧V1と接続点Aの電圧を比較して、接続点Aの電圧が高いときハイレベルの信号を出力する。つまり、サーミスタR13の検出温度が定電圧V1に対応する所定温度(例えば45°C程度)を超えるとコンパレータ21はハイレベルの高温検出信号を出力する。
【0054】
コンパレータ21の出力する高温検出信号は不感応時間設定回路22に供給される。不感応時間設定回路22は高温検出信号のハイレベル期間が所定値(例えば0.5sec)を超えるとハイレベルの高温検出信号を論理回路19に供給する。
【0055】
論理回路19は、過充電検出回路16A、過放電検出回路17、過電流検出回路18それぞれの検出信号が供給されると共に、不感応時間設定回路22の出力する高温検出信号が供給されている。
【0056】
論理回路19は過充電検出回路16Aから過充電検出信号を供給されると端子15eのCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM12を遮断し、過放電検出回路17から過放電検出信号を供給されると端子15dのDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM11を遮断し、過電流検出回路18から過電流検出信号を供給されると端子15dのDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM11を遮断する。
【0057】
論理回路19は高温検出信号がハイレベルとなると、端子15eのCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM12を遮断する。これにより、リチウムイオン電池12の温度を正確に検出することができ、リチウムイオン電池12が高温となった場合に充電を停止して保護することができる。
【0058】
ここで本実施形態の過充電検出回路16Aについてより詳細に説明する。図4は、第一の実施形態の過充電検出回路を説明する図である。
【0059】
過充電検出回路16Aは、分圧回路160、定電圧源161、コンパレータ162、MOSトランジスタM13を有する。
【0060】
分圧回路160は、抵抗R41、R42、R43が直列に接続されて構成されており、電源Vdd及び電源Vss間電圧を分圧する。抵抗R41の一端は端子15aに接続されて電源Vddが供給されており、抵抗R43の一端は端子15cに接続されて電源Vssが供給されている。
【0061】
MOSトランジスタM13は、分圧回路160の分圧比を切り替える切り替え手段である。MOSトランジスタM13のソースが抵抗R41と抵抗R42との接続点Bに接続されており、ドレインが抵抗R42と抵抗R43との接続点Cに接続されている。そしてMOSトランジスタM13のゲートに、不感応時間設定回路22からの出力される高温検出信号が供給される。尚本実施形態のMOSトランジスタM13は、MOSトランジスタM11、MOSトランジスタM12と同様にnチャネルMOSトランジスタとした。
【0062】
定電圧源161は、ツェナーダイオード等の定電圧源であり、定電圧Vocを発生させる。コンパレータ162では、非反転入力端子162aが接続点Bに接続されており、反転入力端子162bが定電圧源161の正極に接続されている。コンパレータ162の出力信号は、論理回路19へ供給される。
【0063】
次に、過充電検出回路16Aの動作について説明する。
【0064】
過充電検出回路16Aでは、高温検出信号が出力されていない場合、MOSトランジスタM13のゲートにはローレベルの信号が印加され、MOSトランジスタM13はオフの状態となっている。この場合コンパレータ162は、接続点Bの電圧Vinと定電圧源161の電圧とを比較する。電圧Vinは、電源Vdd及び電源Vss間電圧を抵抗R41と抵抗R42及びR43により分圧した電圧である。コンパレータ162は、電圧Vinが定電圧Vocを超えたとき、過充電を検出したことを示すハイレベルの過充電検出信号を出力する。この過充電検出信号は論理回路19へ供給される。論理回路19は、過充電検出信号を検知すると端子15eのCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM12を遮断し、充電を停止させる。したがってMOSトランジスタM13がオフの場合には、電源Vdd及び電源Vss間電圧の抵抗R41と抵抗R42及びR43による分圧が、過充電を検出するための相対的な閾値電圧(第一の値)となる。このとき電源Vdd及び電源Vss間電圧の分圧比は、(R42+R43)/(R41+R42+R43)(第一の分圧比)である。
【0065】
ここでサーミスタR13の検出温度が所定温度以上となり、不感応時間設定回路22から高温検出信号が出力される。MOSトランジスタM13は、高温検出信号がゲートに印加されてオンになり、接続点Bと接続Cとが短絡する。したがってMOSトランジスタM13がオンの場合の接続点Bの電圧Vinは、電源Vdd及び電源Vss間電圧の抵抗R41と抵抗R43による分圧となる。
【0066】
コンパレータ162は、電圧Vinと定電圧Vocとを比較し、電圧Vinが定電圧Vocを超えたとき、過充電を検出したことを示すハイレベルの過充電検出信号を出力する。したがってMOSトランジスタM13がオンの場合には、電源Vdd及び電源Vss間電圧の抵抗R41と抵抗R43による分圧が、過充電を検出するための相対的な閾値電圧(第二の値)となる。このとき電源Vdd及び電源Vss間電圧の分圧比は、R41/(R41+R43)(第二の分圧比)である。尚本実施形態では、第二の分圧比が第一の分圧比よりも小さくなるように各抵抗値を設定することが好ましい。
【0067】
尚本実施形態では、サーミスタR13の検出温度が例えば45°C以上のとき、高温検出信号が出力されるものとした。また本実施形態では、MOSトランジスタM13がオフの状態において、電圧Vinが例えば4.3V(第一の値)になったとき過充電を検出する。そしてMOSトランジスタM13がオンの状態において、電圧Vinが例えば4.1V(第二の値)となったとき過充電を検出するものとした。
【0068】
以下に図5を参照して、本実施形態における相対的な閾値電圧の切り替えについて具体的に説明する。図5は、第一の実施形態のコンパレータ162の動作を説明する図である。図5では、電源Vddを横軸、コンパレータ162の入力端子電圧を縦軸とした。
【0069】
本実施形態では、サーミスタR13の検出温度が45°C未満(MOSトランジスタM13がオフ)においてリチウムイオン電池12の充電が開始されると、電圧Vinは、図5のVin1に示すような傾斜となる。この場合コンパレータ162の出力は、電圧Vinが定電圧Vocを超える4.3V(第一の値)になったとき、ハイレベルの過充電検出信号を出力する。
【0070】
また実施形態では、サーミスタR13の検出温度が45°C以上になると、MOSトランジスタM13がオンとなり、電源Vdd及び電源Vss間電圧の分圧比が切り替わる。この状態でリチウムイオン電池12の充電が開始されると、電圧Vinは、図5のVin2に示すような傾斜となる。この場合コンパレータ162は、電圧Vinが定電圧Vocを超える4.1V(第二の値)になったとき、ハイレベルの過充電検出信号を出力する。
【0071】
このように本実施形態によれば、サーミスタR13の検出温度に基づきMOSトランジスタM13のオン/オフを制御して、電源Vdd及び電源Vss間の分圧比を切り替えることにより、過充電を検出する相対的な閾値電圧を切り替える。より具体的には本実施形態では、サーミスタR13の検出温度が所定温度以上となったとき、電源Vdd及び電源Vss間の分圧比を第一の分圧比から第二の分圧比に切り替えることで、過充電を検出する相対的な閾値電圧を、第一の分圧比に対応した第一の値から第二の分圧比に対応した第二の値に切り替える。ここで第二の値は第一の値よりも低い値となる。
【0072】
よって本実施形態では、高温時においてリチウムイオン電池12が満充電となる前に過充電を検出し、充電を停止させることができ、リチウムイオン電池12が高温で且つ満充電となることを防止することができる。したがって本実施形態によれば、リチウムイオン電池12の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせることができる。
【0073】
図6及び図7に本実施形態の過充電検出回路16Aの変形例を示す。図6は、第一の実施形態の過充電検出回路の一変形例を示す図である。図7は、第一の実施形態の過充電検出回路の別の変形例を示す図である。
【0074】
図6に示す過充電検出回路16aでは、分圧回路160Aが、抵抗R41、抵抗R43、可変抵抗R44により構成されている。分圧回路160Aでは、電源Vdd及び電源Vss間に抵抗R41、可変抵抗R44、抵抗R43が直列に接続されており、電源Vdd及び電源Vss間電圧を分圧している。本変形例では、可変抵抗R44が分圧回路160Aの分圧比を切り替える切り替え手段となる。抵抗R41と可変抵抗R44との接続点Dは、コンパレータ162の非反転入力と接続されている。分圧回路160Aでは、高温検出信号が出力されると、可変抵抗R44の抵抗値を低下させて電圧Vinを低下させる。よって本変形例では、高温検出信号が出力されたとき、電源Vdd及び電源Vss間の分圧比の切り替えにより、過充電を検出する相対的な閾値電圧を切り替えることができる。
【0075】
図7に示す過充電検出回路16bでは、分圧回路160Bの分圧比を切り替える切り替え手段として、スイッチ45を有する。分圧回路160Bにおいて、高温検出信号が出力されていない場合、コンパレータ162の非反転入力は、スイッチ45を介して抵抗R41と抵抗R42との接続点Bに接続されている。高温検出信号が出力されと、分圧回路160Bにおいてスイッチ45が切り替わり、コンパレータ162の非反転入力はスイッチ45を介して抵抗R42と抵抗R43との接続点Cに接続される。接続点Cの電圧Vincは、接続点Bの電圧Vinよりも低い電圧である。よって本変形例でも、高温検出信号が出力されたとき、電源Vdd及び電源Vss間の分圧比の切り替えにより、過充電を検出する相対的な閾値電圧を切り替えることができる。
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、サーミスタR13による検出温度が第一の所定温度以上のとき又は第二の所定温度未満のとき、電源Vdd及び電源Vss間の分圧比の切り替えにより過充電を検出する閾値電圧を切り替え、満充電となる前に過充電を検出させる。
【0076】
図8は、本発明の第二の実施形態の電池パックのブロック図である。同図中、第一の実施形態と同一部分には第一の実施形態を説明する図3と同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
電池パック10Bの有する保護IC15Bは、サーミスタR13の検出温度が第一の所定温度以上であることを検出するコンパレータ21と、サーミスタR13の検出温度が第二の所定温度未満であることを検出するコンパレータ21Aとを有する。尚本実施形態では、第一の所定温度を例えば45°C程度とし、第二の所定温度を例えば0°C程度とした。
【0078】
コンパレータ21Aの反転入力端子は、端子15bに接続されている。コンパレータ21Aの非反転入力端子はツェナーダイオード等の定電圧源20Aの正極に接続されている。定電圧源20Aの負極は、端子15cに接続されている。コンパレータ21Aは、サーミスタR13の検出温度が定電圧V2に対応する所定温度(例えば0°C程度)未満になるとハイレベルの低温検出信号を出力する。
【0079】
コンパレータ21Aの出力する低温検出信号は不感応時間設定回路22に供給される。不感応時間設定回路22は、低温検出信号のハイレベル期間が所定値(例えば0.5sec)を超えるとハイレベルの低温検出信号を過充電検出回路16Bに供給する。
【0080】
図9は、第二の実施形態の過充電検出回路を説明する図である。
【0081】
本実施形態の過充電検出回路16Bは、第一の実施形態の過充電検出回路16Aと同様の構成であるが、MOSトランジスタM13のゲートに高温検出信号又は低温検出信号の何れか一方が供給される点で第一の実施形態と異なる。
【0082】
本実施形態の過充電検出回路16Bでは、ハイレベルの高温検出信号又はハイレベルの低温検出信号が出力された場合に、第一の実施形態の過充電検出回路16Aと同様の動作を行う。
【0083】
したがって本実施形態によれば、サーミスタR13による検出温度が第一の所定温度以上の場合又は検出温度が第二の所定温度未満の場合に、過充電を検出する相対的な閾値電圧を低くすることができる。このためリチウムイオン電池12が高温又は低温の場合に、リチウムイオン電池12が満充電となることを防止でき、リチウムイオン電池12の温度保護を高精度に行い、かつ適切な充電制御を行わせることができる。
【0084】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0085】
10、10A、10B 電池パック
12 リチウムイオン電池
13、14 外部端子
15、15A、15B 保護IC
16、16A、16B 過充電検出回路
17 過放電検出回路
18 過電流検出回路
19 論理回路
20 定電圧源
21、21A、162 コンパレータ
22 不感応時間設定回路
M11、M12、M13 MOSトランジスタ
R11、R12、R41、R42、R41 抵抗
R13 サーミスタ
R44 可変抵抗
160、160A、160B 分圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の正極及び負極間の電圧を閾値電圧と比較して前記二次電池の過充電を検出し、前記二次電池と負荷又は充電装置との間の配線に設けられたスイッチ素子をオフする過充電検出回路において、
前記二次電池の近傍に配設され前記二次電池と並列接続されたサーミスと抵抗の直列回路と、
前記サーミスタと抵抗の接続点の電圧を第一の所定温度に対応する第一の基準電圧と比較する第一のコンパレータと、
前記第一のコンパレータの出力にしたがって、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記閾値電圧を第一の値とし、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記閾値電圧を前記第一の値よりも低い第二の値とする切り替え手段と、
を有することを特徴とする過充電検出回路。
【請求項2】
前記二次電池の正極及び負極間の電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路で分圧した電圧を一定の閾値電圧と比較する第二のコンパレータとを有し、
前記切り替え手段は、前記第一のコンパレータの出力にしたがって、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記分圧回路を第一の分圧比とし、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記分圧回路を前記第一の分圧比よりも小さい第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替えることを特徴とする請求項1記載の過充電検出回路。
【請求項3】
前記切り替え手段は、更に、前記サーミスタと抵抗の接続点の電圧を前記第一の所定温度より低い第二の所定温度に対応する第二の基準電圧と比較する第三のコンパレータを有し、
前記第三のコンパレータの出力にしたがって、前記二次電池の温度が前記第二の所定温度未満のとき前記分圧回路を第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替えることを特徴とする請求項2記載の過充電検出回路。
【請求項4】
前記サーミスタは、負の温度係数を持つNTCサーミスタであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の過充電検出回路。
【請求項5】
前記二次電池と、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の過充電検出回路と、を有する電池パック。
【請求項6】
二次電池の正極及び負極間の電圧を閾値電圧と比較して前記二次電池の過充電を検出し、前記二次電池と負荷又は充電装置との間の配線に設けられたスイッチ素子をオフする集積回路において、
前記二次電池の近傍に配設され前記二次電池と並列接続されたサーミスと抵抗との接続点の電圧を第一の所定温度に対応する第一の基準電圧と比較する第一のコンパレータと、
前記第一のコンパレータの出力にしたがって、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記閾値電圧を第一の値とし、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記閾値電圧を前記第一の値よりも低い第二の値とする切り替え手段と、
を有することを特徴とする集積回路。
【請求項7】
前記サーミスと抵抗との接続点の電圧を入力する入力端子を有する請求項6記載の集積回路。
【請求項8】
前記二次電池の正極及び負極間の電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路で分圧した電圧を一定の閾値電圧と比較する第二のコンパレータとを有し、
前記切り替え手段は、前記第一のコンパレータの出力にしたがって、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度未満のとき前記分圧回路を第一の分圧比とし、前記二次電池の温度が前記第一の所定温度以上のとき前記分圧回路を前記第一の分圧比よりも小さい第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替えることを特徴とする請求項6又は7記載の集積回路。
【請求項9】
前記切り替え手段は、更に、前記サーミスタと抵抗の接続点の電圧を前記第一の所定温度より低い第二の所定温度に対応する第二の基準電圧と比較する第三のコンパレータを有し、
前記第三のコンパレータの出力にしたがって、前記二次電池の温度が前記第二の所定温度未満のとき前記分圧回路を第二の分圧比として、相対的に前記閾値電圧を切り替えることを特徴とする請求項8記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−254016(P2012−254016A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172925(P2012−172925)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−330580(P2007−330580)の分割
【原出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】