説明

過圧逃がし弁付き排水弁

【課題】逃がし弁と排水弁とを一体化させて部品点数の削減を図る。
【解決手段】二次圧側から逆流水が生じた場合には、一次圧導入室24と二次圧導入室28との間の差圧に基づいてダイアフラム式の排水弁26がポート27を開放して逆流水をドレン室29を通して外部に排水する。排水弁26の弁軸部36には逃がし弁38が収容されている。一次圧導入室24内の圧力が所定圧を上回ると、逃がし弁38が逃がし口39を開放するため、一次圧側から弁軸部36内の過圧逃がし路45内へ流体が流入し、貫通孔42からドレン室29内へ流出する。かくして、一次圧側に生じた過剰圧は逃がし弁38によってドレン室29を介して外部へ解放されるため、一次圧側に接続された貯湯タンク1が保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過圧逃がし弁付き排水弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプ式給湯器といった貯湯タンクを有する形式の給湯器では、貯湯タンクに過剰な圧力が生じた場合の対策として過圧逃がし機能を備えたものが知られている。その一例として、下記特許文献1を挙げることができる。ここに開示された貯湯式給湯器は、給水配管の途中に配された貯湯タンクと、貯湯タンク内の水を加熱する加熱手段と、加熱手段により沸かされた膨張水を貯湯タンク外へ排出する逃がし弁とを備えている。さらに、ここには逃がし弁等が故障をして貯湯タンク内に所定圧を上回る異常圧が発生したときに貯湯タンク内の水をタンク外に排水する保護弁も備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のものでは、タンクの保護弁を専用部品として給湯システム中に組み込んでいるため、その分だけ部品点数が増加してしまう、という問題点があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は部品点数を減らして給湯システム全体の構成の簡素化に寄与する過圧逃がし弁付き排水弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<請求項1の発明>
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、給湯回路中に接続されるケーシングを有する過圧逃がし弁付き排水弁であって、一次圧が導入される一次圧導入室と、二次圧が導入される二次圧導入室と、外部に開放するドレン室と、このドレン室と二次圧導入室とを連通させるポートと、二次圧導入室及びドレン室と一次圧導入室とを区画するとともに、常にはポートを閉止する状態にあるが二次圧側の圧力が設定圧を上回ったときに二次圧導入室側と一次圧導入室側との差圧に基づいてポートを開放するダイアフラム式の排水弁と、一次圧導入室とドレン室あるいは二次圧導入室との間を連通させる過圧逃がし路に設けられ一次圧側の圧力が設定圧を上回ったときに過圧逃がし路を開放して一次圧導入室内の流体をドレン室あるいは二次圧側へ逃がす逃がし弁とを、ケーシング内に組み込んでなることを特徴としている。
【0007】
<請求項2の発明>
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、排水弁は弁軸部を有しかつこの弁軸部内に過圧逃がし路が形成されていることを特徴としている。
【0008】
<請求項3の発明>
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のものにおいて、排水弁を挟んで一次圧導入室と反対側には、その先端にポートが開口する筒部が設けられるとともに、この筒部の内側にはドレン室が配され、筒部の外側には二次圧導入室が配され、弁軸部は筒部の内側にほぼ同心で収容されかつ過圧逃がし路の下流側はドレン室内に開放していることを特徴としている。
【0009】
<請求項4の発明>
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のものにおいて、排水弁を挟んで一次圧導入室と反対側には、その先端にポートが開口する筒部が設けられるとともに、この筒部の内側には二次圧導入室が配され、筒部の外側にはドレン室が配され、弁軸部は筒部の内側にほぼ同心で収容されかつ過圧逃がし路の下流側は二次圧導入室内に開放していることを特徴としている。
【0010】
<請求項5の発明>
請求項5の発明は、請求項1に記載のものにおいて、ケーシングの外側面にはバルブ収容部が付設され、かつこのバルブ収容部内には過圧逃がし路の一部と逃がし弁とが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、何らかの原因で二次圧側からの逆流が生じても、一次圧側とは排水弁によって遮断されているため、汚水が一次圧側へ侵入してしまうことはない。上記の場合、二次圧導入室内の圧力が設定圧を上回ると、一次圧側との差圧に基づいて排水弁がポートを開放するため、二次圧側の汚水はポートを通してドレン室内へ流れ込み、外部へと排水される。
【0012】
一方、例えば一次圧側に貯湯タンクが接続されている場合に、貯湯タンクにおいて一次圧が過度に上昇することがある。この上昇圧が設定圧を上回るような場合には逃がし弁が過圧逃がし路を開放して一次圧側の流体をドレン室あるいは二次圧側へと流出させて、一次圧側を過圧状態から解放する。これによって、貯湯タンクを保護することができる。
【0013】
また、請求項1によれば、このような過圧逃がし弁を既存の排水弁とともにケーシング内に一体に組み込んでいるため、従来のような過圧逃がし弁を専用部品として給湯回路中に接続していた場合に比較して、部品点数を削減することができる。
【0014】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、排水弁中に過圧逃がし弁を組み込むようにしたため、設置効率をより一層高めることができる。
【0015】
<請求項3及び請求項4の発明>
請求項3および請求項4の発明によれば、逃がし弁を組み込んだ弁軸部を筒部内にほぼ同心で組み込んだため、つまり逃がし弁をポートの中心軸に沿って配置したため、排水弁の動作の円滑さに寄与する。
【0016】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、ケーシングの外面にバルブ収容部を付設して、その内部に逃がし弁の収容空間を確保するようにしている。したがって、排水弁内に逃がし弁を組み込むためのスペースが充分に確保されないような場合に、このような構成は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】給湯システム全体を示す回路図
【図2】注湯弁ユニットの断面図
【図3】実施形態1に係る過圧逃がし弁付き排水弁の側断面図
【図4】実施形態2に係る過圧逃がし弁付き排水弁の側断面図
【図5】実施形態3に係る過圧逃がし弁付き排水弁の側断面図
【図6】同じく本体部の平面図
【図7】実施形態4に係る過圧逃がし弁付き排水弁の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
図1は本実施形態における給湯システムの全体を示している。図中、1は貯湯タンクであり、給水源に対しては給水配管2を介して接続され、その途中には減圧弁3が介在されている。貯湯タンク1は配管を介して図示しない加熱手段(ヒートポンプユニット)に接続されるとともに、給湯路4を介して浴槽5と接続されている。また、給湯路4の途中には注湯弁ユニットTが接続されている。
【0019】
この注湯弁ユニットTは、電磁弁ユニット6、逆止弁ユニット7及び過圧逃がし弁付き排水弁ユニット(以下、単に排水弁ユニット8と言う)の計3つのサブユニットを合体させて全体をユニット化したものである。
【0020】
図2に示すように、電磁弁ユニット6の第1ケーシング9の側面には貯湯タンク1に通じる一次圧導管10の一端側が接続されており、この一次圧導管10の内部には一次圧通路10Aが形成されている。第1ケーシング9内には両端が開放する円筒壁11が同心で形成され、その先端縁には弁座12が形成され、電磁弁14の弁体13によって開閉可能となっている。円筒壁11は弁座12が電磁弁14によって閉止されることに伴って第1ケーシング9内の空間を内外に区画するようにしている。このうち、円筒壁11の外側に区画された空間は一次圧導管10の一次圧通路10Aと連通し、内側に区画された空間は次述する逆止弁ユニット7の第2ケーシング16内へと通じている。
【0021】
電磁弁ユニット6の第1ケーシング9のうち電磁弁14のコイル15が設けられる側と反対側の端部には逆止弁ユニット7の第2ケーシング16の一端側が同軸で接続されている。第2ケーシング16の他端側は浴槽5側へと通じており、第2ケーシング16内の通路は二次圧通路16Aとなっている。第2ケーシング16と第1ケーシング9との間には上流側逆止弁17が介在されている。また、第2ケーシング16において上流側逆止弁17が配された側と反対側の端部寄りには下流側逆止弁18が組み込まれており、これら二つの逆止弁17,18によって電磁弁14側への逆流水の進入が規制されている。さらに、第2ケーシング16内であって下流側逆止弁18の近傍の上流側には流量計19が組み込まれている。
【0022】
排水弁ユニット8は一次圧側と二次圧側とに跨って接続されている。具体的には、一次圧側に対しては一次圧導管10の途中の部位に接続され、二次圧側に対しては流量計19と上流側逆止弁17との間の部位に接続されている。以下、図3によって排水弁ユニット8の構成を説明する。
【0023】
排水弁ユニット8は第3ケーシング20を有しており、この第3ケーシング20は本体部21に蓋体22を装着した構成となっている。蓋体22には一次側接続部22Aが側方へ突出して形成され、その先端は一次圧導管10の側面に形成された取付部10Bとシール状態で突き合わされ、ねじ締めによって固定がされている。一次側接続部22Aと取付部10Bとには相互に同軸で連通する一次圧連絡路23が形成されている。この一次圧連絡路23の一端は一次圧通路10Aへと通じ、他端は第3ケーシング20内の一次圧導入室24へと通じている。
【0024】
本体部21内には筒部25が同軸で立設され、かつこの筒部25は軸方向の双方向に貫通する円筒状に形成されている。筒部25の先端側周縁は排水弁26によって開閉するポート27が形成されている。第3ケーシング20内は排水弁26を境にして一次圧導入室24と、二次圧導入室28及びドレン室29とに区画されている。このうち、一次圧導入室24は主として蓋体22の内部に形成され、既述した通り、一次圧連絡路23を介して一次圧通路10Aに連通している。
【0025】
一方、筒部25の内部はドレン室29へと通じている。すなわち、本体部21にはドレン管30が形成されている。すなわち、ドレン管30は筒部25からその立設方向と反対側へ突出した後、一次側接続部22Aの突出方向と反対側へほぼ直角に屈曲して形成されている。ドレン管30の内部に形成されたドレン室29はその先端側において外部に開放されている。
【0026】
二次圧導入室28は筒部25の外周側に配されたリング状の空間であり、二次圧通路16Aに連通している。すなわち、本体部21の側面であって図2に示す平面視で一次側接続部22Aとほぼ直交する位置には二次側接続部31が突出して形成され、第2ケーシングにおける上流側逆止弁17と流量計19の間の部位に接続されている。
【0027】
排水弁26は同排水弁26に作用する一次圧側と二次圧側(詳しくは、二次圧に後述するばね34のばね力が加わる)との差圧によってポート27の開閉を行なう機能を有し、常には一次圧の作用によってポート27を閉じた状態に保持しているが、二次圧導入室28内の圧力が設定圧を上回った時にはポート27を開放して二次圧をドレン室29を通して外部に解放する役割を果たす。
【0028】
上記排水弁26は可撓性をもったゴム製ダイアフラム32を有している。ダイアフラム32は略円形状に形成された基板32Aを有するとともに、基板32Aの外周縁には薄肉の弛み部32Bが形成され、さらにその外周には厚肉の装着部32Cが全周に亘って形成されている。ダイアフラム32全体は装着部32Cが蓋体22と本体部21との間で挟持されることによって、本体部21内を軸芯に沿って変位可能な状態で取り付けられている。ダイアフラム32の一面側(筒部25が配置されている側:二次圧側)には略リング状に形成された合成樹脂製のばね受け33が配されている。ばね受け33はダイアフラム32における基板32Aから弛み部32Bに亘る部位を支持することができるよう断面略L字状に形成されている。また、ばね受け33と筒部25の付け根部との間にはばね34が介在され、このばね34は排水弁26を持上げる方向、つまりポート27を開放する方向に作用している。
【0029】
ダイアフラム32の他面側(蓋体22と対向する側であり、一次圧側)には合成樹脂製のダイアフラムプレート35が装着されている。ダイアフラムプレート35は略円形状に形成されてダイアフラム32の対向面と密着し、その外周縁は弛み部32Bとの干渉を避けるようにして全周に亘って起立壁35Aが形成されている。ダイアフラムプレート35の中心部には軸芯に沿って弁軸部36が延出形成されている。弁軸部36はダイアフラム32の中心部を貫通して筒部25内へ同軸で挿入されている。弁軸部36の側面の途中高さ位置には抜け止め爪37が突出形成され、抜け止め爪37がダイアフラム32の基板32Aに係止することで、ダイアフラム32とダイアフラムプレート35との組み付けがなされている。
【0030】
弁軸部36の一端部には逃がし口39が軸芯に沿って貫通しており、一次圧導入室24と弁軸部36の内部に形成された過圧逃がし路45とを連通可能としている。弁軸部36の内部には逃がし口39を開閉するための逃がし弁38が軸方向に沿って変位可能に収容されている。弁軸部36において逃がし口39が形成された側と反対側の端部には閉止部材40が装着されている。この閉止部材40と逃がし弁38に装着されたばね受け部材41との間にはコイルスプリング44が介在されていて、常には逃がし口39が閉鎖されるよう、逃がし弁38を付勢しているが、一次圧側が設定圧(コイルスプリング44のばね力)を上回ると逃がし弁38が逃がし口39を開放するように設定されている。
【0031】
なお、ばね受け部材41の外周面には適当間隔毎に複数の切欠き溝が配され、それぞれは軸方向に沿って切欠き形成されている。このことによって、弁軸部36の内壁との間に形成される複数の通路は前記した過圧逃がし路45の一部を構成する。また、弁軸部36の側面の適当高さ位置には適当角度間隔毎に複数の貫通孔44が形成され、過圧逃がし路45とドレン室29とを連通させている。
【0032】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用効果を具体的に説明する。浴槽5への給湯を行なう場合には、電磁弁14のコイル15への通電がなされて電磁弁14が吸引されると、弁座12が開放する。これによって、貯湯タンク1内の湯が一次圧通路10Aを通過した後、円筒壁11内へ流れ込む。その後、上流側逆止弁17を経て二次圧通路16Aへと流れ、さらに流量計19及び下流側逆止弁18を経て、給湯路4を通って浴槽5へと給湯される。
【0033】
通常時は、二つの逆止弁17,18によって浴槽5側の湯が一次圧側へ逆流する事態は確実に回避されている。この逆流防止の機能は、万一、下流側逆止弁18に異物が噛み込んだ場合にも保持される。すなわち、下流側逆止弁18を通過した逆流水(湯)は二次圧通路16Aを経て排水弁ユニット8内の二次圧導入室28中に流れ込む。その結果、二次圧導入室28内の圧力が所定圧以上に高められると、排水弁26の一次圧側及び二次圧側で作用する圧力差によって排水弁26が持ち上げられ、ポート27が開放される。すると、逆流水はポート27から筒部25内のドレン29室へ流入した後、外部へと排水される。かくして、逆流水が一次側へ至る事態は確実に回避される。
【0034】
ところで、図示しない加熱手段によって沸き上げられた膨張水により貯湯タンク1内の圧力が所定圧以上に達することがある。そのようなタンク1内の過剰な圧力は一次圧通路10A、一次圧連絡路23を介して排水弁ユニット8内の一次圧導入室内24に作用する。すると、逃がし弁38がコイルスプリング44のばね力に抗して押し下げられるため、逃がし弁38が逃がし口39を開放する。その結果、一次圧側の湯は逃がし口39を通って弁軸部36内の過圧逃がし路45へと流入する。そして、弁軸部36内に形成された過圧逃がし路45を通過し、貫通孔42を経てドレン室29内へ流入し、最終的に外部へと排水される。かくして、貯湯タンク1内に生じた過剰な一次圧はドレン管30を介して外部へと解放される結果、貯湯タンク1の保護が達成される。
【0035】
ところで、本実施形態1では排水弁26中に逃がし弁38を組み込むようにしたため、従来のようにこれらを給湯回路において別個に設けるようにした場合に比較して、部品点数の削減により接続作業の容易化とコストの低減を図ることができる。もっとも、本実施形態を採用しつつも従来と同様の専用の逃がし弁を設置することを妨げるものではない。
【0036】
実施形態1のさらなる効果として、排水弁ユニット8を電磁弁ユニット6、逆止弁ユニット7といった他のユニットと合体させ、全体を注湯弁ユニットTとして一部品化するようにしたため、一層の部品点数の削減が達成されている点を挙げることができる。
【0037】
また、逃がし弁38を排水弁26中に組み込んでいるため、バルブ内部の設置効率を高めることができる、という効果も得られる。さらに、逃がし弁38を排水弁26の中心軸に沿って組み込んでいるため、排水弁26の開閉動作を円滑に行わせることができる。
【0038】
<実施形態2>
図4は本発明の実施形態2を示すものである。実施形態1では一次圧側の過剰圧をドレン管30を介して外気に解放するようにしたが、実施形態2では二次圧側へ解放するようにした点で相違している。
【0039】
本実施形態において、排水弁ユニット8の本体部21内には実施形態1と同様、筒部25が立設されているが、実施形態1とは逆に、排水弁50がポート27を閉じている状態では筒部25の外側がドレン室29であり、内側が二次圧導入室28となって二次圧通路16Aへと通じている。
【0040】
本実施形態における排水弁50はダイアフラム32の下面側に樹脂製のスペーサ部材51が配されている。スペーサ部材51はダイアフラム32の基板32Aの下面に密着する略円板状に形成され、弁軸部52に対し同心で遊挿されている。スペーサ部材51の周縁は全周に亘って起立し、先端部はダイアフラム32の弛み部32Bに差し込まれている。このスペーサ部材51の下面側にはポート27の外径より大径に形成されたゴム製の弁板53が配されている。弁板53はダイアフラム32の基板32Aと共にスペーサ部材51を挟んでおり、ポート27に対する開閉を行なう。弁板53もスペーサ部材51と同様、弁軸部52に対して同心で遊挿されており、その下面側にはばね受け54が配されている。
【0041】
ばね受け54は樹脂製であり、弁軸部52に対して同軸で嵌め込まれている。ばね受け54は円筒状をなす基部54Aを有し、その途中には外周面からフランジ54Bが内外両方向へ張り出し形成されている。ばね受け54においてフランジ54Bを境としてその一端側は弁軸部52とスペーサ部材51及び弁板53との間に挿入され、その先端面はダイアフラム32の下面に突き当てられている。ばね受け54の他端側は本体部21内の底面近傍にまで至る長さを有しており、その外側にはばね55が嵌着されている。ばね55は本体部21の底面とフランジ54Bとの間に介在されていて、排水弁50に対しポート27を開放する方向へ付勢している。
【0042】
他の構成は実施形態1と同様であるため、図中に同一符号を付すことにより説明は省略する。
【0043】
上記のように構成された実施形態2においても、二次側から逆流水が生じた場合には、逆流水が筒部25の内側に形成された二次圧導入室28内に導入される。すると、排水弁50に作用する一次圧側と二次圧側との差圧に基づいて排水弁50が上昇してポート27を開放するため、逆流水はドレン管30を経て外部に排水される。
【0044】
また、貯湯タンク1内に過剰圧が発生して一次圧導入室内24の圧力が設定圧を上回る事態が生じると、逃がし弁38が押し下げられて逃がし口39を開放する。これにより、一次圧導入室24内の湯が逃がし口39を介して弁軸部52内に流入し、過圧逃がし路45を通過し、さらに貫通口42を経て二次圧導入室28内に流入した後、二次圧通路16Aへと至る。かくして、貯湯タンク1内に生じた過剰圧は逃がし弁38を介して二次圧側へと逃がされるため、貯湯タンク1の保護が達成される。
他の作用効果は実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0045】
<実施形態3>
図5及び図6は本発明の実施形態3を示すものである。実施形態1及び2は排水弁26,50の弁軸部36,52内に逃がし弁38を組み込んだ例を示したが、実施形態3においては本体部21の外側面において本体部21の中心軸線に沿う向きでバルブ収容部62を付設し、その内部に逃がし弁61を組み込むようにしたものである。
【0046】
本実施形態における排水弁60は逃がし弁が組み込まれていない点を除けば、実施形態2とほぼ同様の構成である。また、筒部25の内側の空間は二次圧導入室28であり、外側の空間はドレン室29となって、ドレン管30の内部へと通じている。
【0047】
また、蓋体22には一次圧通路23が一次圧導入室24へと通じる部分を越えてバルブ収容部62へ向けて延長路64が形成され、この延長路64はさらにバルブ収容部62内に形成された過圧逃がし路45へと通じている。バルブ収容部62は、本体部21の外側面であってドレン管30の付け根部分に一体に形成され、ドレン管30の軸線と直交する方向に延出している。バルブ収容部62内には実施形態1,2と基本的に同一構成に係る逃がし弁61が収容されている。また、バルブ収容部62の側面に形成された貫通孔65はドレン管30の内部に開口している。
【0048】
上記のように構成された実施形態3においても、一次圧側が過剰な圧力となった場合には、過剰な圧力が一次圧通路23の延長路64を通して逃がし弁61に作用する。すると、逃がし弁61が押されて逃がし口39を開放するため、一次側の過剰圧は逃がし弁61によってドレン管30へと抜け、外部に解放される。かくして、貯湯タンク1の保護がなされる。
【0049】
また、本実施形態3では逃がし弁61を組み込むスペースを本体部21の外側に付加してバルブ収容部62として確保するようにしたため、本体部21内の狭隘なスペース、とりわけ実施形態1,2のように排水弁26,50の弁軸部36,52という非常に狭いスペース内に組み込む困難さを回避することができる。
【0050】
他の構成は、実施形態1、2と同様であり、もって同様の作用効果を発揮することができる。
【0051】
<実施形態4>
図7は本発明の実施形態4を示すものである。本実施形態における逃がし弁70は、第3ケーシング20の蓋体22に形成されたバルブ収容部71中に組み込まれている。バルブ収容部71は蓋体22の外側面から径方向外方へ向けて水平に突出し、ドレン管30とは平面視においてほぼ直交する位置に設けられている。
【0052】
本実施形態の排水弁は実施形態3と同様の構成であり、筒部25の内側の空間が二次圧導入室28であり、外側の空間がドレン室29となって、ドレン管30の内部へと通じる点も実施形態3と同様である。実施形態3と相違する点としては、本体部21の外側面であってバルブ収容部71の下部には中継部72が一体に張り出し形成されていて、バルブ収容部71内の過圧逃がし路45とドレン室28とを連通させる中継通路73が形成されている点がさらに挙げられる。この中継部72はバルブ収容部71とはシールされた状態で連結がされている。
他の構成は、実施形態3と同様であり、同様の作用効果を発揮することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)いずれの実施形態においても過圧弁付き排水弁を注湯弁ユニット中に一体に組み込んだ場合を示したが、単独で構成するようにしてもよい。
【0054】
(2)いずれの実施形態においても、過圧逃がし弁付き排水弁を給湯回路に組み込んだ場合を例示したが、適用回路は特に限定されるべきものではない。
【符号の説明】
【0055】
1…貯湯タンク
8…排水弁ユニット
21…本体部
24…一次圧導入室
26,50,60…排水弁
27…ポート
28…二次圧導入室
29…ドレン室
36,52…弁軸部
38,61,70…逃がし弁
39…逃がし口
45…過圧逃がし路
62,71…バルブ収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯回路中に接続されるケーシングを有する過圧逃がし弁付き排水弁であって、
一次圧が導入される一次圧導入室と、
二次圧が導入される二次圧導入室と、
外部に開放するドレン室と、
このドレン室と前記二次圧導入室とを連通させるポートと、
前記二次圧導入室及び前記ドレン室と前記一次圧導入室とを区画するとともに、
常には前記ポートを閉止する状態にあるが前記二次圧側の圧力が設定圧を上回ったときに前記二次圧導入室側と前記一次圧導入室側との差圧に基づいて前記ポートを開放するダイアフラム式の排水弁と、
前記一次圧導入室と前記ドレン室あるいは前記二次圧導入室との間を連通させる過圧逃がし路に設けられ前記一次圧側の圧力が設定圧を上回ったときに前記過圧逃がし路を開放して前記一次圧導入室内の流体を前記ドレン室あるいは前記二次圧側へ逃がす逃がし弁とを、前記ケーシング内に組み込んでなることを特徴とする過圧逃がし弁付き排水弁。
【請求項2】
前記排水弁は弁軸部を有しかつこの弁軸部内に前記過圧逃がし路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の過圧逃がし弁付き排水弁。
【請求項3】
前記排水弁を挟んで前記一次圧導入室と反対側には、その先端に前記ポートが開口する筒部が設けられるとともに、この筒部の内側には前記ドレン室が配され、前記筒部の外側には前記二次圧導入室が配され、前記弁軸部は前記筒部の内側にほぼ同心で収容されかつ前記過圧逃がし路の下流側は前記ドレン室内に開放していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の過圧逃がし弁付き排水弁。
【請求項4】
前記排水弁を挟んで前記一次圧導入室と反対側には、その先端に前記ポートが開口する筒部が設けられるとともに、この筒部の内側には前記二次圧導入室が配され、前記筒部の外側には前記ドレン室が配され、前記弁軸部は前記筒部の内側にほぼ同心で収容されかつ前記過圧逃がし路の下流側は前記二次圧導入室内に開放していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の過圧逃がし弁付き排水弁。
【請求項5】
前記ケーシングの外側面にはバルブ収容部が付設され、かつこのバルブ収容部内には前記過圧逃がし路の一部と前記逃がし弁とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の過圧逃がし弁付き排水弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97787(P2012−97787A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244441(P2010−244441)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000108557)タイム技研株式会社 (15)
【Fターム(参考)】