説明

過給機付き内燃機関の制御装置

【課題】 この発明は、過給機付き内燃機関の制御装置に関し、過給機が備えるコンプレッサまたはタービンの下流における状態量を正確に検知することを目的とする。
【解決手段】 内燃機関の吸気通路にターボチャージャ10のコンプレッサ12を配置する。コンプレッサ12のハウジングとインペラ20間のクリアランスをコンプレッサクリアランスCLIC、CLOCとして検出する。コンプレッサクリアランスCLIC、CLOCを基礎データの一つとして、コンプレッサ出口側の温度T3および圧力P3を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過給機付き内燃機関の制御装置に係り、特に、過給機が備えるコンプレッサまたはタービンの下流における状態量を正確に検知する機能を有する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機付きの内燃機関において、その運転状態を精度良く制御するためには、コンプレッサ出口から筒内に流入する空気流量、更には、コンプレッサ出口側における温度や圧力を精度良く検出することが必要である。また、過給機がターボチャージャである場合は、排気通路に配置される触媒の状態を精度良く制御するために、タービンの出口から流出するガスの流量、温度、および圧力等を正確に検知することが必要である。
【0003】
コンプレッサから内燃機関に供給される空気量を算出する手法としては、例えば特表2001−516421号公報に開示されるものが知られている。ここに開示される手法によれば、コンプレッサの上流に配置された空気量センサの出力や、機関回転数などに基づいて、コンプレッサにより過給された状態で筒内に流入する空気量を精度良く算出することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特表2001−516421号公報
【特許文献2】特開2001−41095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンプレッサの能力は、そのハウジングとインペラとの間のクリアランスが変わることにより変化する。同様に、タービンの能力も、そのハウジングとタービンホイルの間のクリアランスに応じて変化する。このため、経時変化等によりそれらのクリアランスに変化が生ずると、コンプレッサ出口の状態量や、タービン出口の状態量にも変化が生ずる。
【0006】
上記公報に開示される手法は、それらのクリアランスの変化を考慮することなくモデル演算を行うこととしている。このため、ここに開示される手法によると、状態量(空気量)の算出精度が、コンプレッサのクリアランス変化に伴って悪化する事態が生ずる。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、過給機の内部におけるクリアランス変化に影響を受けることなく、コンプレッサ出口における状態量、あるいはタービン出口における状態量を常に精度良く算出することのできる過給機付き内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、過給機付き内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサを含む過給機と、
前記コンプレッサのハウジングとインペラ間のクリアランスをコンプレッサクリアランスとして検出するコンプレッサクリアランス検出手段と、
前記コンプレッサクリアランスを基礎データの一つとして、コンプレッサ出口側状態量を算出するコンプレッサ出口側状態量算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、
内燃機関の筒内に流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
コンプレッサ入口側状態量を検出する手段とを備え、
前記コンプレッサ出口側状態量算出手段は、
前記コンプレッサクリアランス、前記コンプレッサ出口側状態量、前記空気流量、前記過給機回転数、および前記コンプレッサ入口側状態量の間に成立するコンプレッサ特性関係を記憶するコンプレッサ特性関係記憶手段と、
前記コンプレッサ特性関係に、前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、前記過給機回転数、および前記コンプレッサ入口側状態量の検出値を当てはめることにより、前記コンプレッサ出口側状態量を算出する手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、第1の発明において、
内燃機関の筒内に流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
コンプレッサ入口側温度を検出する手段と、
コンプレッサ入口側圧力を検出する手段とを含み、
前記コンプレッサ出口側状態量は、コンプレッサ出口側温度と、コンプレッサ出口側圧力とを含み、
前記コンプレッサ出口側状態量算出手段は、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数に基づいてコンプレッサ前後の圧力比であるコンプレッサ圧力比を算出するコンプレッサ圧力比算出手段と、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数に基づいてコンプレッサ効率を算出するコンプレッサ効率算出手段と、
前記コンプレッサ圧力比と前記コンプレッサ入口側圧力とに基づいて前記コンプレッサ出口側圧力を推定する手段と、
前記コンプレッサ効率と前記コンプレッサ入口側温度と前記コンプレッサ圧力比とに基づいて前記コンプレッサ出口側温度を推定する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記コンプレッサ圧力比算出手段は、
前記空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のコンプレッサクリアランスに対応するコンプレッサ圧力比基準値を算出する手段と、
前記コンプレッサクリアランスに基づいて、前記コンプレッサ圧力比に生ずると予測されるコンプレッサ圧力比変動量を算出する手段と、
前記コンプレッサ圧力比基準値に前記コンプレッサ圧力比変動量を加えることにより前記コンプレッサ圧力比を算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、第3または第4の発明において、
前記コンプレッサ効率算出手段は、
前記空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のコンプレッサクリアランスに対応するコンプレッサ効率基準値を算出する手段と、
前記コンプレッサクリアランスに基づいて、前記コンプレッサ効率に生ずると予測されるコンプレッサ効率変動量を算出する手段と、
前記コンプレッサ効率基準値に前記コンプレッサ効率変動量を加えることにより前記コンプレッサ効率を算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明において、
前記過給機は、内燃機関の排気通路に配置されたタービンを備え、
前記タービンのハウジングとタービンホイル間のクリアランスをタービンクリアランスとして検出するタービンクリアランス検出手段を備え、
前記コンプレッサクリアランス検出手段は、前記タービンクリアランスに基づいて前記コンプレッサクリアランスを検出する手段を含むことを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、第6の発明において、
前記タービンクリアランス検出手段は、
タービン入口側圧力を検出する手段と、
タービン出口側圧力を検出する手段と、
前記タービン入口側圧力、および前記タービン出口側圧力に基づいて、タービン前後の実圧力比である実タービン圧力比を算出する手段と、
前記タービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数と、タービン前後の圧力比であるタービン圧力比との間に成立するタービン圧力比関係を記憶するタービン圧力比関係記憶手段と、
前記タービン圧力比関係に、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記実タービン圧力比を当てはめることにより、前記タービンクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
また、第8の発明は、第6または第7の発明において、
前記タービンクリアランス検出手段は、
タービン入口側温度を検出する手段と、
タービン入口側圧力を検出する手段と、
タービン出口側温度を検出する手段と、
タービン出口側圧力を検出する手段と、
前記タービン入口側圧力、前記タービン出口側圧力、前記タービン入口側温度、および前記タービン出口側温度に基づいて、タービンの実効率である実タービン効率を算出する手段と、
前記タービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数と、タービン効率との間に成立するタービン効率関係を記憶するタービン効率関係記憶手段と、
前記タービン効率関係に、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記実タービン効率を当てはめることにより、前記タービンクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
また、第9の発明は、過給機付き内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサと、内燃機関の排気通路に配置されたタービンとを含む過給機と、
前記タービンのハウジングとタービンホイル間のクリアランスをタービンクリアランスとして検出するタービンクリアランス検出手段と、
前記タービンクリアランスを基礎データの一つとして、タービン出口側状態量を算出するタービン出口側状態量算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、第10の発明は、第9の発明において、
内燃機関の筒内からタービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
タービン入口側状態量を検出する手段とを備え、
前記タービン出口側状態量算出手段は、
前記タービンクリアランス、前記タービン出口側状態量、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記タービン入口側状態量の間に成立するタービン特性関係を記憶するタービン特性関係記憶手段と、
前記タービン特性関係に、前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記タービン入口側状態量の検出値を当てはめることにより、前記タービン出口側状態量を算出する手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、第11の発明は、第9の発明において、
内燃機関の筒内からタービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
タービン入口側温度を検出する手段と、
タービン入口側圧力を検出する手段とを含み、
前記タービン出口側状態量は、タービン出口側温度と、タービン出口側圧力とを含み、
前記タービン出口側状態量算出手段は、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数に基づいてタービン前後の圧力比であるタービン圧力比を算出するタービン圧力比算出手段と、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数に基づいてタービン効率を算出するタービン効率算出手段と、
前記タービン圧力比と前記タービン入口側圧力とに基づいて前記タービン出口側圧力を推定する手段と、
前記タービン効率と前記タービン入口側温度と前記タービン圧力比とに基づいて前記タービン出口側温度を推定する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
また、第12の発明は、第11の発明において、
前記タービン圧力比算出手段は、
前記タービン流入空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のタービンクリアランスに対応するタービン圧力比基準値を算出する手段と、
前記タービンクリアランスに基づいて、前記タービン圧力比に生ずると予測されるタービン圧力比変動量を算出する手段と、
前記タービン圧力比基準値に前記タービン圧力比変動量を加えることにより前記タービン圧力比を算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0020】
また、第13の発明は、第11または第12の発明において、
前記タービン効率算出手段は、
前記タービン流入空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のタービンクリアランスに対応するタービン効率基準値を算出する手段と、
前記タービンクリアランスに基づいて、前記タービン効率に生ずると予測されるタービン効率変動量を算出する手段と、
前記タービン効率基準値に前記タービン効率変動量を加えることにより前記タービン効率を算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
また、第14の発明は、第9乃至第13の発明において、
前記コンプレッサのハウジングとインペラ間のクリアランスをコンプレッサクリアランスとして検出するコンプレッサクリアランス検出手段を備え、
前記タービンクリアランス検出手段は、前記コンプレッサクリアランスに基づいて前記タービンクリアランスを検出する手段を含むことを特徴とする。
【0022】
また、第15の発明は、第14の発明において、
前記コンプレッサクリアランス検出手段は、
コンプレッサ入口側圧力を検出する手段と、
コンプレッサ出口側圧力を検出する手段と、
前記コンプレッサ入口側圧力、および前記コンプレッサ出口側圧力に基づいて、コンプレッサ前後の実圧力比である実コンプレッサ圧力比を算出する手段と、
内燃機関の筒内に流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数と、コンプレッサ前後の圧力比であるコンプレッサ圧力比との間に成立するコンプレッサ圧力比関係を記憶するコンプレッサ圧力比関係記憶手段と、
前記コンプレッサ圧力比関係に、前記空気流量、前記過給機回転数、および前記実コンプレッサ圧力比を当てはめることにより、前記コンプレッサクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【0023】
また、第16の発明は、第14または第15の発明において、
前記コンプレッサクリアランス検出手段は、
コンプレッサ入口側温度を検出する手段と、
コンプレッサ入口側圧力を検出する手段と、
コンプレッサ出口側温度を検出する手段と、
コンプレッサ出口側圧力を検出する手段と、
前記コンプレッサ入口側圧力、前記コンプレッサ出口側圧力、前記コンプレッサ入口側温度、および前記コンプレッサ出口側温度に基づいて、コンプレッサの実効率である実コンプレッサ効率を算出する手段と、
前記コンプレッサに流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数と、コンプレッサ効率との間に成立するコンプレッサ効率関係を記憶するコンプレッサ効率関係記憶手段と、
前記コンプレッサ効率関係に、前記コンプレッサ流入空気流量、前記過給機回転数、および前記実コンプレッサ効率を当てはめることにより、前記コンプレッサクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、コンプレッサクリアランスを基礎データの一つとして、コンプレッサ出口側状態量を算出することができる。このため、本発明によれば、コンプレッサクリアランスの変動に関わらず、コンプレッサ出口側状態量を正確に算出することができる。
【0025】
第2の発明によれば、コンプレッサクリアランス、コンプレッサ出口側状態量、筒内に流入する空気流量、過給機回転数、およびコンプレッサ入口側状態量の関係を定めたコンプレッサ特性関係に、必要事項の検出値を当てはめることにより、コンプレッサ出口側状態量を精度良く算出することができる。
【0026】
第3の発明によれば、コンプレッサクリアランス、筒内に流入する空気流量、および過給機回転数に基づいて、コンプレッサ圧力比およびコンプレッサ効率を精度良く算出することができる。コンプレッサ圧力比と共にコンプレッサ入口側圧力が判ると、コンプレッサ出口側圧力を演算することができる。また、コンプレッサ効率と共にコンプレッサ入口側温度およびコンプレッサ圧力比が判ると、コンプレッサ出口側温度を演算することができる。本発明によれば、それらの演算を行うことによりコンプレッサ出口側温度とコンプレッサ出口側圧力とを精度良く算出することができる。
【0027】
第4の発明によれば、筒内に流入する空気流量と過給機回転数とに基づいて、基準のコンプレッサクリアランスに対応するコンプレッサ圧力比基準値を算出することができる。また、コンプレッサクリアランスに基づいて、コンプレッサ圧力比に生ずると予測されるコンプレッサ圧力比変動量を算出することができる。そして、これらを加算することにより、コンプレッサクリアランスの影響を考慮したコンプレッサ圧力比を精度良く算出することができる。
【0028】
第5の発明によれば、筒内に流入する空気流量と過給機回転数とに基づいて、基準のコンプレッサクリアランスに対応するコンプレッサ効率基準値を算出することができる。また、コンプレッサクリアランスに基づいて、コンプレッサ効率に生ずると予測されるコンプレッサ効率変動量を算出することができる。そして、これらを加算することにより、コンプレッサクリアランスの影響を考慮したコンプレッサ効率を精度良く算出することができる。
【0029】
第6の発明によれば、タービンのハウジングとタービンホイルの間に形成されるタービンクリアランスを検出することができる。タービンホイルとインペラは機械的に連結されているため、タービンクリアランスの変動量とコンプレッサクリアランスの変動量との間には一定の相関が生ずる。本発明によれば、その相関に従うことにより、タービンクリアランスに基づいてコンプレッサクリアランスを正確に推定することができる。
【0030】
第7の発明によれば、タービン入口側圧力とタービン出口側圧力とに基づいて、実タービン圧力比を正確に算出することができる。そして、タービンクリアランス、タービン流入空気流量、および過給機回転数と、タービン圧力比との関係を定めたタービン圧力比関係に、タービン流入空気流量、過給機回転数、および実タービン圧力比を当てはめることにより、タービンクリアランスを精度良く算出することができる。
【0031】
第8の発明によれば、タービン入口側の圧力および温度、並びにタービン出口側の圧力および温度に基づいて、実タービン効率を精度良く算出することができる。そして、タービンクリアランス、タービン流入空気流量、および過給機回転数と、タービン効率との関係を定めたタービン効率関係に、タービン流入空気流量、過給機回転数、および実タービン効率を当てはめることにより、タービンクリアランスを精度良く算出することができる。
【0032】
第9の発明によれば、タービンクリアランスを基礎データの一つとして、タービン出口側状態量を算出することができる。このため、本発明によれば、タービンクリアランスの変動に関わらず、タービン出口側状態量を正確に算出することができる。
【0033】
第10の発明によれば、タービンクリアランス、タービン出口側状態量、タービン流入空気流量、過給機回転数、およびタービン入口側状態量の関係を定めたタービン特性関係に、必要事項の検出値を当てはめることにより、タービン出口側状態量を精度良く算出することができる。
【0034】
第11の発明によれば、タービンクリアランス、タービン流入空気流量、および過給機回転数に基づいて、タービン圧力比およびタービン効率を精度良く算出することができる。タービン圧力比と共にタービン入口側圧力が判ると、タービン出口側圧力を演算することができる。また、タービン効率と共にタービン入口側温度およびタービン圧力比が判ると、タービン出口側温度を演算することができる。本発明によれば、それらの演算を行うことによりタービン出口側温度とタービン出口側圧力とを精度良く算出することができる。
【0035】
第12の発明によれば、タービン流入空気流量と過給機回転数とに基づいて、基準のタービンクリアランスに対応するタービン圧力比基準値を算出することができる。また、タービンクリアランスに基づいて、タービン圧力比に生ずると予測されるタービン圧力比変動量を算出することができる。そして、これらを加算することにより、タービンクリアランスの影響を考慮したタービン圧力比を精度良く算出することができる。
【0036】
第13の発明によれば、タービン流入空気流量と過給機回転数とに基づいて、基準のタービンクリアランスに対応するタービン効率基準値を算出することができる。また、タービンクリアランスに基づいて、タービン効率に生ずると予測されるタービン効率変動量を算出することができる。そして、これらを加算することにより、タービンクリアランスの影響を考慮したタービン効率を精度良く算出することができる。
【0037】
第14の発明によれば、コンプレッサのハウジングとインペラの間に形成されるコンプレッサクリアランスを検出することができる。タービンホイルとインペラは機械的に連結されているため、タービンクリアランスの変動量とコンプレッサクリアランスの変動量との間には一定の相関が生ずる。本発明によれば、その相関に従うことにより、コンプレッサクリアランスに基づいてタービンクリアランスを正確に推定することができる。
【0038】
第15の発明によれば、コンプレッサ入口側圧力とコンプレッサ出口側圧力とに基づいて、実コンプレッサ圧力比を正確に算出することができる。そして、コンプレッサクリアランス、筒内に流入する空気流量、および過給機回転数と、コンプレッサ圧力比との関係を定めたコンプレッサ圧力比関係に、筒内に流入する空気流量、過給機回転数、および実コンプレッサ圧力比を当てはめることにより、コンプレッサクリアランスを精度良く算出することができる。
【0039】
第16の発明によれば、コンプレッサ入口側の圧力および温度、並びにコンプレッサ出口側の圧力および温度に基づいて、実コンプレッサ効率を精度良く算出することができる。そして、コンプレッサクリアランス、コンプレッサ流入空気流量、および過給機回転数と、コンプレッサ効率との関係を定めたコンプレッサ効率関係に、筒内に流入する空気流量、過給機回転数、および実コンプレッサ効率を当てはめることにより、コンプレッサクリアランスを精度良く算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1(A)は、本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。本実施形態のシステムは、内燃機関に組み込まれる過給機、具体的にはターボチャージャ10を備えている。ターボチャージャ10は、内燃機関の吸気通路に組み込まれるコンプレッサ12と、内燃機関の排気通路に組み込まれるタービン14とを備えている。
【0041】
コンプレッサ12には、吸気通路に連通して空気を取り込むための入口ダクト16と、圧縮空気を内燃機関に向けて流通させるためのコンプレッサスクロール18とが設けられている。また、コンプレッサ12の内部には、回転することにより、入口ダクト16から吸い込んだ空気を圧縮してコンプレッサスクロール18に押し出すインペラ20が設けられている。
【0042】
以下、インペラ20の上流側、つまり、入口ダクト16側を「コンプレッサ入口側」と称し、一方、インペラ20の下流に位置するコンプレッサスクロール18の側を「コンプレッサ出口側」と称することとする。また、コンプレッサ入口側の圧力および温度を、それぞれ「コンプレッサ入口側圧力P0」および「コンプレッサ入口側温度T0」とし、一方、コンプレッサ出口側の圧力および温度を、それぞれ「コンプレッサ出口側圧力P3」および「コンプレッサ出口側温度T3」とする。
【0043】
図1(B)は、コンプレッサ12およびタービン14の内部を拡大して表した図である。インペラ20は、図中に一点鎖線で示す直線を回転中心として回転することができる。また、インペラ20は、その回転中心の周囲に、複数の全翼22と半翼24を交互に備えている。全翼22および半翼24と、コンプレッサ12のハウジングとの間には、所定のクリアランス(以下、「コンプレッサクリアランス」と称す)が形成されている。
【0044】
本実施形態では、コンプレッサ12の入口側に形成されるコンプレッサクリアランスと、その出口側に形成されるコンプレッサクリアランスとを区別することとしている。以下、前者を「コンプレッサ入口側クリアランスCLIC」と称し、後者を「コンプレッサ出口側クリアランスCLOC」と称する。コンプレッサ入口側クリアランスCLICは、より具体的には、全翼22の入口ダクト16側の端部とハウジングとの間のクリアランスである。CLICの値は、インペラ20の回転軸が径方向にぶれることにより大きな変化を示す。一方、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCは、全翼22または半翼24のコンプレッサスクロール18側端部とハウジングの間のクリアランスである。CLOCの値は、インペラ20の回転軸が径方向あるいは軸方向にぶれることにより大きく変化する。
【0045】
コンプレッサ12のハウジングには、コンプレッサ入口側クリアランスCLICを計測するためのギャップセンサ26、およびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCを計測するためのギャップセンサ28が組み込まれている。ギャップセンサ26,28は、赤外線式の非接触センサや、電磁式の非接触センサにより実現することができる。
【0046】
図1(A)に示すように、タービン14の内部には、タービンホイル30が設けられている。また、タービン14には、内燃機関から排出された排気ガスをタービンホイル30に導くためのタービンスクロール32と、タービンホイル30を通過した排気ガスを排気通路に導出するための出口ダクト34が設けられている。タービンホイル30は、コンプレッサ12のインペラ20と同一の回転軸により連結されている。
【0047】
ターボチャージャ10は、タービンホイル30により排気ガスのエネルギを回転トルクに変換し、その回転トルクを利用してコンプレッサ12のインペラ20を回転させることができる。そして、インペラ20が回転することにより、入口ダクト16から取り込んだ空気を圧縮して内燃機関に過給することができる。
【0048】
タービン14においては、タービンスクロール32側がタービンホイル30の上流となり、また、出口ダクト34側がタービンホイル30の下流となる。以下、前者を「タービン入口側」と称し、後者を「タービン出口側」と称する。また、タービンスクロール32側の圧力および温度を、それぞれ「タービン入口側圧力P4」および「タービン入口側温度T4」とし、一方、出口ダクト34側の圧力および温度を、それぞれ「タービン出口側圧力P7」および「タービン出口側温度T7」とする。
【0049】
タービンホイル30は、インペラ20と同様に、図1(B)中に一点鎖線で示す軸を回転中心として回転することができる。タービンホイル30は、その回転中心の周囲に、複数の回転翼36を備えている。回転翼36とタービン14のハウジングとの間には、所定のクリアランス(以下、「タービンクリアランス」と称す)が形成されている。
【0050】
本実施形態では、タービン入口側に形成されるタービンクリアランスと、その出口側に形成されるタービンクリアランスとを区別することとしている。以下、前者を「タービン入口側クリアランスCLIT」と称し、後者を「タービン出口側クリアランスCLOT」と称する。タービン入口側クリアランスCLITは、より具体的には、回転翼36のタービンスクロール32側端部とハウジングの間のクリアランスである。CLITの値は、タービンホイル30の回転軸が径方向あるいは軸方向にぶれることにより大きく変化する。一方、タービン出口側クリアランスCLOTは、回転翼36の出口ダクト34側の端部とハウジングとの間のクリアランスである。CLOTの値は、タービンホイル30の回転軸が径方向にぶれることにより大きな変化を示す。
【0051】
タービン14のハウジングには、タービン入口側クリアランスCLITを計測するためのギャップセンサ38、およびタービン出口側クリアランスCLOTを計測するためのギャップセンサ40が組み込まれている。ギャップセンサ38,40は、赤外線式の非接触センサや、電磁式の非接触センサにより実現することができる。
【0052】
図1(A)に示すように、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50には、上述したギャップセンサ26,28,38,40が接続されている。ECU50は、それらのセンサの出力に基づいて、コンプレッサ入口側および出口側クリアランスCLIC,CLOC、並びにタービン入口側および出口側クリアランスCLIT,CLOTを検知することができる。
【0053】
本実施形態のシステムは、更に、コンプレッサ12の入口側において温度T0および圧力P0を計測するための温度センサ52および圧力センサ54、並びに、タービン14の入口側で温度T4および圧力P4を計測するための温度センサ56および圧力センサ58を備えている。また、本実施形態のシステムは、ターボ回転数N、つまり、タービンホイル30およびインペラ20の回転数Nを検出するための回転数センサ60と、内燃機関の吸入空気量Gaを検出するためのエアフロメータ62とを備えている。ECU50は、これらのセンサの出力に基づいて、T0、P0、T4、P4、N、およびGa等を検知することができる。
【0054】
[実施の形態1における具体的処理]
ターボチャージャ10を備える内燃機関においては、その運転状態を精度良く制御するために、コンプレッサ12の下流における状態量、つまり、コンプレッサ出口側温度T3および圧力P3を正確に検知することが望まれる。また、排気通路に配置される触媒の状態を精度良く制御するため等の目的から、タービン12の下流における状態量、つまり、タービン出口側温度T7および圧力P7を正確に検知することも望まれる。
【0055】
それらの状態量は、ターボチャージャ10を取り巻く状況が同じであっても、コンプレッサクリアランスや、タービンクリアランスが変化すれば、その変化に対応して異なったものとなる。そこで、本実施形態のシステムは、上述した各種センサの検出値を基礎として、コンプレッサクリアランスやタービンクリアランスをも基礎データの一つとして、コンプレッサ出口側状態量やタービン出口側状態量の推定を行うこととした。
【0056】
(コンプレッサ出口側状態量の算出処理)
図2は、ECU50が、上記の機能を実現するために、より具体的には、コンプレッサ出口側温度T3およびコンプレッサ出口側圧力P3を精度良く算出するために実行するルーチンのフローチャートである。図2に示すルーチンでは、先ず、スロットル通過空気流量GaTHが算出される(ステップ100)。
【0057】
本実施形態のシステムは、コンプレッサ12の下流に、吸入空気量Gaを制御するためのスロットルバルブを備えている。上記ステップ100では、そのスロットルバルブを通過して、コンプレッサ12から内燃機関の筒内に流入する空気流量GaTHが算出される。空気流量GaTHは、例えば、エアフロメータ62の出力から算出することができる。
【0058】
次に、回転数センサ60の出力に基づいて、ターボ回転数Nが算出される(ステップ102)。次いで、ギャップセンサ26,28の出力に基づいて、コンプレッサ入口側クリアランスCLICおよびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCが計測される(ステップ104)。
【0059】
図3(A)は、コンプレッサクリアランスを特定したうえで、ターボ回転数Nをパラメータとして、コンプレッサ効率ηCとスロットル通過空気流量GaTHとの関係で定めたマップである。同様に、図3(B)は、コンプレッサクリアランスを特定したうえで、ターボ回転数Nをパラメータとして、コンプレッサ12前後の圧力比(P3/P0)とスロットル通過空気流量GaTHとの関係で定めたマップである。
【0060】
コンプレッサ効率ηCとスロットル通過空気流量GaTHとの関係、および圧力比(P3/P0)とスロットル通過空気流量GaTHとの関係は、何れもコンプレッサクリアランスに影響される。つまり、それらの関係は、経時変化や個体のばらつきに起因してコンプレッサクリアランスが変化すれば、その変化に応じて変動する。本実施形態において、ECU50は、コンプレッサ入口側クリアランスCLICおよびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCの組み合わせに対して、図3(A)または図3(B)に示すマップと同様のマップを複数記憶している(以下、それらを総称して「コンプレッサマップ」と称す)。このため、ECU50は、スロットル通過空気流量GaTHおよびターボ回転数Nと併せて、コンプレッサ入口側クリアランスCLICおよびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCが判ると、上記のコンプレッサマップを参照することにより、コンプレッサクリアランスの影響をも考慮した圧力比(P3/P0)およびコンプレッサ効率ηCを算出することができる。
【0061】
図2に示すルーチンでは、上記ステップ104の処理が終わると、次に、上記のコンプレッサマップに従って、圧力比(P3/P0)とコンプレッサ効率ηCとが算出される(ステップ106)。上記の処理によれば、ターボチャージャ10の個体差や経時変化に影響されることなく、つまり、コンプレッサクリアランスのばらつきや変動に影響されることなく、正確な圧力比(P3/P0)およびコンプレッサ効率ηCを算出することが可能である。
【0062】
図2に示すルーチンによれば、次に、温度センサ52および圧力センサ54の出力に基づいて、コンプレッサ入口側温度T0およびコンプレッサ入口側圧力P0が検出される(ステップ108)。
【0063】
圧力比(P3/P0)と共にコンプレッサ入口側圧力P0が判ると、それらを掛け合わせることにより、コンプレッサ出口側圧力P3を次式のように算出することができる。
P3=(P3/PO)*P0 ・・・(1)
【0064】
また、コンプレッサ出口側温度T3は、コンプレッサ入口側温度T1を用いて、次式のように表すことができる。但し、次式に含まれる「κ」は、コンプレッサ12に流入する空気の比熱比であり、コンプレッサ入口側温度T0の関数として定まる値である。
T3=[[{(P3/P0)(κ-1)/κ−1}/ηC]+1]*T1 ・・・(2)
【0065】
図2に示すルーチンでは、上記ステップ108の処理が終わると、上記(1)式および(2)式に基づいて、コンプレッサ出口側温度T3およびコンプレッサ出口側圧力P3が算出される(ステップ110)。以上の処理によれば、コンプレッサクリアランスの変動に関わらず、常に正確にコンプレッサ出口側の状態量、すなわち、コンプレッサ出口側温度T3およびコンプレッサ出口側圧力P3を算出することが可能である。
【0066】
(タービン出口側状態量の算出処理)
図4は、ECU50が、タービン出口側温度T7およびタービン出口側圧力P7を精度良く算出するために実行するルーチンのフローチャートである。ECU50は、図4に示すルーチンを実行することにより、コンプレッサ出口側状態量を算出する場合と実質的に同じ手順でタービン出口側温度T7およびタービン出口側圧力P7を算出することができる。
【0067】
すなわち、図4に示すルーチンによれば、先ず、筒内を通過してタービン14に流入する空気量、つまり、タービン流入空気量Q4が算出される(ステップ120)。本実施形態では、タービン流入空気量Q4は、スロットル通過空気流量GaTHと等しいものと見なすこととしている。従って、ここでは、具体的には、上記ステップ100の場合と同様の手法でタービン流入空気量Q4が算出される。
【0068】
ターボ回転数Nが算出され(ステップ122)、次いで、タービン入口側クリアランスCLITおよびタービン出口側クリアランスCLOTが計測された後(ステップ124)、タービンマップが参照される(ステップ126)。
【0069】
図5(A)は、特定のタービンクリアランス下で、タービン効率ηTと膨張比(P4/P7)との間に成立する関係を、ターボ回転数Nをパラメータとして定めたマップの一例である。また、図5(B)は、特定のタービンクリアランス下で、タービン流入空気流量Q4と膨張比(P4/P7)との間に成立する関係を、ターボ回転数Nをパラメータとして定めたマップの一例である。ここで、「膨張比(P4/P7)」とは、タービン入口側圧力P4とタービン出口側圧力P7との比である。
【0070】
ECU50は、タービン入口側クリアランスCLITおよびタービン出口側クリアランスCLOTの組み合わせに対して、図5(A)または図5(B)に示すマップと同様のマップを複数記憶している(ここでは、それらを総称して「タービンマップ」と称する)。タービンマップを参照すれば、現在のタービンクリアランス、ターボ回転数N、およびタービン流入空気量Q4に対応する膨張比(P4/P7)を特定することができる(図5(B)参照)。また、タービンマップによれば、現在のタービンクリアランス、ターボ回転数N、および膨張比(P4/P7)に対応するタービン効率ηTを特定することができる(図5(A)参照)。
【0071】
上記ステップ126では、具体的には、このような手法により膨張比(P4/P7)およびタービン効率ηTが特定される。以上の処理によれば、ターボチャージャ10の個体差や経時変化に影響されることなく、つまり、タービンクリアランスのばらつきや変動に影響されることなく、正確な膨張比(P4/P7)およびタービン効率ηTを算出することが可能である。
【0072】
図4に示すルーチンでは、タービン入口側温度T4およびタービン入口側圧力P4が検出された後(ステップ128)、次式に従って、タービン出口側圧力P7およびタービン出口側温度T7が算出される(ステップ130)。但し、次式(4)に含まれる「κ」は、タービン14に流入する空気の比熱比であり、タービン入口側温度T4の関数として定まる値である。
P7=(P7/P4)*P4 ・・・(3)
T7=[1−ηT*{1−(P4/P7)(κ-1)/κ}]*T4 ・・・(4)
【0073】
以上の処理によれば、タービンクリアランスの変動に関わらず、常に正確にタービン出口側の状態量、すなわち、タービン出口側温度T7およびタービン出口側圧力P7を算出することが可能である。
【0074】
ところで、上述した実施の形態1においては、スロットル通過空気流量GaTH、コンプレッサ12の入口側における温度T0および圧力P0、タービン14の入口側における温度T4および圧力P4、並びにターボ回転数Nを、それぞれエアフロメータ62、温度センサ52,56や圧力センサ54,58、或いは回転数センサ60の検出値より算出することとしているが、これらを取得する手法は上記の手法に限定されるものではない。すなわち、それらの値は、例えば、特願2003−392906号に開示されるようなモデル演算により算出することとしてもよい。この点は、以下に説明する他の実施形態においても同様である。
【0075】
また、上述した実施の形態1においては、コンプレッサクリアランス、およびタービンクリアランスを、何れも、入口側クリアランスと出口側クリアランスに分けて取り扱うこととしているが、それらを取り扱う手法は、必ずしも上記の手法に限定されるものではない。すなわち、入口側クリアランスと出口側クリアランスとを区別せずに、コンプレッサクリアランス、およびタービンクリアランスを、それぞれ単一の変数として取り扱うこととしてもよい。この点も、以下に説明する他の実施形態において同様である。
【0076】
尚、上述した実施の形態1においては、ECU50が、ステップ104の処理を実行することにより前記第1の発明における「コンプレッサクリアランス検出手段」が、ステップ106〜110の処理を実行することにより前記第1の発明における「コンプレッサ出口側状態量算出手段」が、それぞれ実現されている。
【0077】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、ステップ100の処理を実行することにより前記第2の発明における「空気流量を検出する手段」が、ステップ102の処理を実行することにより前記第2の発明における「過給機回転数を検出する手段」が、ステップ108の処理を実行することにより前記第2の発明における「コンプレッサ入口側状態量を検出する手段」が、コンプレッサマップ、並びに上記(1)式および(2)式を記憶していることにより前記第2の発明における「コンプレッサ特性関係記憶手段」が、ステップ110の処理を実行することにより前記第2の発明における「コンプレッサ出口側状態量を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0078】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、ステップ100の処理を実行することにより前記第3の発明における「空気流量を検出する手段」が、ステップ102の処理を実行することにより前記第3の発明における「過給機回転数を検出する手段」が、ステップ108の処理を実行することにより前記第3の発明における「コンプレッサ入口側温度を検出する手段」および「コンプレッサ入口側圧力を検出する手段」が、ステップ106の処理を実行することにより前記第3の発明における「コンプレッサ圧力比算出手段」および「コンプレッサ効率算出手段」が、ステップ110の処理を実行することにより前記第3の発明における「コンプレッサ出口側圧力を推定する手段」および「コンプレッサ出口側温度を推定する手段」が、それぞれ実現されている。
【0079】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、ステップ124の処理を実行することにより前記第9の発明における「タービンクリアランス検出手段」が、ステップ126〜130の処理を実行することにより前記第9の発明における「タービン出口側状態量算出手段」が、それぞれ実現されている。
【0080】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、ステップ120の処理を実行することにより前記第10の発明における「タービン流入空気流量を検出する手段」が、ステップ122の処理を実行することにより前記第10の発明における「過給機回転数を検出する手段」が、ステップ128の処理を実行することにより前記第10の発明における「タービン入口側状態量を検出する手段」が、タービンマップ、並びに上記(3)式および(4)式を記憶していることにより前記第10の発明における「タービン特性関係記憶手段」が、ステップ130の処理を実行することにより前記第10の発明における「タービン出口側状態量を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0081】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、ステップ120の処理を実行することにより前記第11の発明における「タービン流入空気流量を検出する手段」が、ステップ122の処理を実行することにより前記第11の発明における「過給機回転数を検出する手段」が、ステップ128の処理を実行することにより前記第11の発明における「タービン入口側温度を検出する手段」および「タービン入口側圧力を検出する手段」が、ステップ126の処理を実行することにより前記第11の発明における「タービン圧力比算出手段」および「タービン効率算出手段」が、ステップ130の処理を実行することにより前記第11の発明における「タービン出口側圧力を推定する手段」および「タービン出口側温度を推定する手段」が、それぞれ実現されている。
【0082】
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
次に、図6および図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU50に、後述する図6に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0083】
上述した実施の形態1では、コンプレッサクリアランスがコンプレッサ出口側の状態量に与える影響を考慮するために、ECU50が記憶するべきコンプレッサマップに、図3(A)または図3(B)に示すマップと同様のマップをコンプレッサクリアランス毎に複数枚含めることとしている。同様に、タービンクリアランスがタービン出口側の状態量に与える影響を考慮するために、ECU50が記憶するべきタービンマップに、図5(A)または図5(B)に示すマップと同様のマップを複数枚含めることとしている。
【0084】
しかしながら、上述したようなコンプレッサマップ、およびタービンマップを記憶しておくためには、多大なメモリ容量が必要となる。また、コンプレッサクリアランスやタービンクリアランスの変化に伴う状態量の変化分は、モデル演算によりある程度の精度で推定することができる。そこで、本実施形態では、ECU50に記憶させるマップを、基準のコンプレッサクリアランスに対応する単一のマップ(以下、「コンプレッサベースマップ」と称す)と、基準のタービンクリアランスに対応する単一のマップ(以下、「タービンベースマップ」と称す)のみとし、コンプレッサクリアランスやタービンクリアランスのの変動に伴う影響分は、演算により状態量に反映させることとした。
【0085】
[実施の形態2における具体的処理]
図6は、コンプレッサ出口側の状態量を算出するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図6において、上記図2に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0086】
図6に示すルーチンでは、スロットル通過空気流量GaTHの算出(ステップ100)、およびターボ回転数Nの算出(ステップ102)に次いで、ステップ140の処理が実行される。ステップ140では、コンプレッサベースマップを参照して、圧力比(P3/P0)とコンプレッサ効率ηCとが算出される。
【0087】
図7は、コンプレッサベースマップの一例を示したものである。より具体的には、図7(A)は、基準のコンプレッサクリアランス下で、ターボ回転数Nと、コンプレッサ効率ηCと、スロットル通過空気流量GaTHとの間に成立する関係を定めたマップである。また、図7(B)は、基準のコンプレッサクリアランス下で、ターボ回転数Nと、圧力比(P3/P0)と、スロットル通過空気流量GaTHとの間に成立する関係を定めたマップである。
【0088】
本実施形態において、ECU50は、図7(A)および図7(B)に示すコンプレッサベースマップを記憶している。上記ステップ140では、ステップ100および102で算出したGaTHおよびNをこのコンプレッサベースマップに当てはめることにより、それらに対応する圧力比(P3/P0)およびコンプレッサ効率ηCが算出される。このような処理によれば、コンプレッサクリアランスが基準のクリアランスであった場合に発生すると予想される圧力比(P3/P0)およびコンプレッサ効率ηCを算出することができる。以下、このようにして算出された圧力比(P3/P0)およびコンプレッサ効率ηCを、それぞれ「基準圧力比」および「基準コンプレッサ効率」と称す。
【0089】
図6に示すルーチンでは、次に、コンプレッサ入口側クリアランスCLICおよびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCが計測される(ステップ104)。次いで、それらのクリアランスCLICおよびCLOCに基づいて、圧力比(P3/P0)に生ずると予測される変化量(圧力比変化量ΔPC)、およびコンプレッサ効率ηCに生ずると予測される変化量(効率変化量ΔηC)が算出される(ステップ142)。
【0090】
コンプレッサクリアランスと、その変化に起因する圧力比変化量ΔPCおよび効率変化量ηCとの間には有意な相関が認められる。このため、それらの関係は、モデル式により模擬することができる。より具体的には、圧力比変化量ΔPCは、例えば、コンプレッサ入口側クリアランスCLIC、コンプレッサ出口側クリアランスCLOC、ターボ回転数N、および基準クリアランス下での圧力比(P3/P0)、つまり、上記ステップ140で算出される基準圧力比(P3/P0)を変数とするモデル式f(CLIC,CLOC,N,P3/P0)により推定することができる。また、効率変化量ΔηCは、例えば、コンプレッサ入口側クリアランスCLIC、コンプレッサ出口側クリアランスCLOC、ターボ回転数N、および基準クリアランス下でのコンプレッサ効率ηC、つまり、上記ステップ140で算出される基準コンプレッサ効率ηCを変数とするモデル式g(CLIC,CLOC,N,ηC)により推定することができる。ECU50は、それらのモデル式f(CLIC,CLOC,N,P3/P0)およびg(CLIC,CLOC,N,ηC)を記憶しており、上記ステップ142では、そのモデル式に従って圧力比変化量ΔPCおよび効率変化量ΔηCを算出する。
【0091】
図6に示すルーチンでは、次に、修正後の圧力比(P3/P0)、および修正後のコンプレッサ効率ηCが算出される(ステップ144)。ここでは、具体的には、上記ステップ140において算出された基準圧力比に、上記ステップ142において算出された圧力比変化量ΔPCが加算されることにより修正後の圧力比(P3/P0)が算出される。また、上記ステップ140において算出された基準コンプレッサ効率に、上記ステップ142において算出された効率変化量ΔηCが加算されることにより修正後のコンプレッサ効率ηCが算出される。以上の処理によれば、コンプレッサクリアランスの影響を加味した圧力比(P3/P0)およびコンプレッサ効率ηCを精度良く算出することができる。
【0092】
尚、図7(A)は、以上の処理が実行されることにより、修正後のコンプレッサ効率ηCが、効率変化量ΔηCだけ基準コンプレッサ効率より小さな値とされた場合を例示している。また、図7(B)は、修正後の圧力比(P3/P0)が、圧力比変化量ΔPCだけ基準圧力比より小さな値とされた場合を例示している。
【0093】
以後、実施の形態1の場合と同様にステップ108および110の処理が実行される。その結果、コンプレッサクリアランスの影響をも考慮したコンプレッサ出口側状態量(温度P3および圧力T3)が精度良く算出される。
【0094】
以上説明した通り、本実施形態のシステムによれば、コンプレッサマップのメモリ量を十分に少量に抑えつつ、実施の形態1の場合と同様の機能を実現することができる。つまり、コンプレッサクリアランスの影響をも考慮してコンプレッサ出口側温度P3および圧力T3を推定することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、少ないメモリ容量により、高精度な状態量推定を実現することができる。
【0095】
本実施形態のシステムは、タービン出口側の状態量(温度T7および圧力P7)を算出する際にも、コンプレッサ出口側の状態量(温度T3および圧力P3)を算出するのと同様の手法を用いる。つまり、タービン出口側の温度T7および圧力P7を算出する際には、先ず、基準のタービンクリアランス下での発生が予想される圧力比(P7/P4)およびタービン効率ηTが、それぞれタービンベースマップ(図5(A)および図5(B)に示すマップと同様のマップ)に従って算出される。そして、それらの算出値を、モデル演算により算出した圧力比変化量ΔPTおよび効率変化量ΔηTで修正することにより、修正後の圧力比(P7/P4)およびタービン効率ηTを算出する。以上の処理によれば、タービン出口側の状態量を算出する処理に関しても、少ないメモリ容量で、高い精度を得るという利益を享受することができる。
【0096】
尚、上述した実施の形態2においては、ECU50が、ステップ140の処理を実行することにより前記第4の発明における「コンプレッサ圧力比基準値を算出する手段」が、ステップ142において圧力比変動量ΔPCを算出することにより前記第4の発明における「コンプレッサ圧力比変動量を算出する手段」が、ステップ144において修正後のコンプレッサ圧力比(P3/P0)を算出することにより前記第4の発明における「コンプレッサ圧力比を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0097】
また、上述した実施の形態2においては、ECU50が、ステップ140の処理を実行することにより前記第5の発明における「コンプレッサ効率基準値を算出する手段」が、ステップ142において効率変化量ΔηCを算出することにより前記第5の発明における「コンプレッサ効率変動量を算出する手段」が、ステップ144において修正後のコンプレッサ効率ηCを算出することにより前記第5の発明における「コンプレッサ効率を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0098】
また、上述した実施の形態2においては、ECU50が、タービンベースマップを参照して基準タービンクリアランス下での圧力比(P7/P4)を算出することにより前記第12の発明における「タービン圧力比基準値を算出する手段」が、モデル演算により圧力比(P7/P4)の変動量ΔPTを算出することにより前記第12の発明における「タービン圧力比変動量を算出する手段」が、修正後のタービン圧力比(P7/P4)を算出することにより前記第12の発明における「タービン圧力比を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0099】
また、上述した実施の形態2においては、ECU50が、タービンベースマップを参照して基準タービンクリアランス下でのタービン効率ηTを算出することにより前記第13の発明における「タービン効率基準値を算出する手段」が、モデル演算によりタービン効率ηTの変動量ΔηTを算出することにより前記第13の発明における「タービン効率変動量を算出する手段」が、修正後のタービン効率ηTを算出することにより前記第13の発明における「タービン効率を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0100】
実施の形態3.
[実施の形態3におけるシステム構成]
次に、図8乃至図11を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図8は、本実施形態のシステムの構成を説明するための図である。尚、図8において、図1に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0101】
図8に示す構成は、ギャップセンサ26,28,38,40に代えて温度センサ64および圧力センサ66が配置されている点を除き、図1に示す構成と同様である。すなわち、本実施形態におけるハードウェア構成は、実施の形態1におけるハードウェア構成から、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCを測定するためのギャップセンサ26,28およびタービンクリアランスCLIT,CLOTを測定するためのギャップセンサ38,40を取り除き、その代わりに、コンプレッサ12の出口側に温度T3および圧力P3を測定するための温度センサ64および圧力センサ66を取り付けることにより実現される。
【0102】
[実施の形態3の特徴]
(コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCの算出)
上述した実施の形態2の説明において述べた通り、コンプレッサの圧力比変化量ΔPCおよび効率変化量ηCは、それぞれコンプレッサクリアランスCLIC,CLOCとの間に有意な相関を有している。そして、それらの値は、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCを変数とするモデル式により、ΔPC=f(CLIC,CLOC,N,P3/P0)、ΔηC=g(CLIC,CLOC,N,ηC)として推定することができる。
【0103】
換言すると、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCは、モデル式fの逆関数f-1を用いることにより、ターボ回転数N、圧力比P3/P0、および圧力比変化量ΔPCの関数として表すことが可能である。また、モデル式gの逆関数g-1を使用すれば、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCは、ターボ回転数N、コンプレッサ効率ηC、および効率変化量ΔηCの関数として表すことが可能である。
【0104】
本実施形態のシステムによれば、圧力センサ54,66の出力に基づいて、圧力比(P3/P0)の現実値を実測することが可能である。また、コンプレッサベースマップを参照すれば、スロットル通過空気流量GaTHとターボ回転数Nとに基づいて、基準のコンプレッサクリアランス下で生ずるべき基準圧力比を算出することもできる。そして、圧力比(P3/P0)の実測値と基準圧力比との差を取ることで、圧力比変化量ΔPCを検知することができる。このため、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCは、逆関数f-1を用いることにより、既知の変数のみで表すことが可能である。
【0105】
更に、本実施形態のシステムによれば、温度センサ52,64により、コンプレッサ入口側の温度T0とその出口側の温度T3の双方を実測することが可能である。コンプレッサ入口側および出口側の圧力P0,P3に加えてこれらの温度T0、T3が判ると、上記(2)式の関係式を用いることにより、コンプレッサ効率ηCの現実値を算出することが可能である。そして、コンプレッサ効率ηCの現実値が判れば、効率変化量ΔηCを算出することも可能である。このため、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCは、逆関数g-1を用いても、既知の変数のみで表すことができる。
【0106】
コンプレッサクリアランスとして、その入口側のクリアランスCLICと、その出口側のクリアランスCLOCとを考慮する場合、未知の変数が2つとなるから、2つの関係式が判明すれば、それら2つの変数CLIC,CLOCを算出することが可能である。このため、本実施形態のシステムによれば、特定の運転状況下でP0、T0、P3およびT3を実測し、それらに基づいて逆関数f-1を用いた関係式と、逆関数g-1を用いた関係式とを作成すれば、それらの関係式を解くことで、コンプレッサ入口側クリアランスCLIC、およびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCを演算により求めることが可能である。
【0107】
(タービンクリアランスCLIT,CLOTの算出)
コンプレッサ12のインペラ20と、タービン14のタービンホイル30とは、同一の回転軸により機械的に連結されている。このため、インペラ20とタービンホイル30とは、互いに拘束された状態で一体物として移動する。インペラ20に軸方向の移動が生ずると、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCに大きな変化が生じ、同時に、タービン入口側クリアランスCLITにも大きな変化が生ずる。そして、それらの変化量間には実質的に不変の相関が成立する(図1(B)参照)。
【0108】
図9(A)は、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCとタービン入口側クリアランスCLITとの間に成立する相関の一例を示したものである。ターボチャージャ10の個体差が無視できるとすれば、図9(A)に示す関係を予め把握しておくことにより、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCに基づいて、タービン入口側クリアランスCLITを検知することができる。また、ターボチャージャ10の個体差が無視できない場合でも、初期の段階で個体毎に図9(A)に示す関係を把握しておけば、経時変化後のタービン入口側クリアランスCLITは、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCに基づいて検知することが可能である。
【0109】
上述した通り、本実施形態のシステムは、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCを演算により求めることができる。このため、このシステムによれば、図9(A)に示す関係を記憶しておくことにより、タービン14側にギャップセンサを配置することなく、タービン入口側クリアランスCLITを精度良く算出することが可能である。
【0110】
タービン入口側クリアランスCLITおよびタービン出口側クリアランスCLOTは、何れもタービン12内部でタービンホイル30が移動することにより変化する。そして、それらのクリアランスCLIT, CLOT間にも、実質的に不変の相関が成立する(図1(B)参照)。
【0111】
図9(B)は、タービン入口側クリアランスCLITとタービン出口側クリアランスCLOTとの間に成立する相関の一例を示したものである。ターボチャージャ10の個体差が無視できるとすれば、図9(B)に示す関係を予め把握しておくことにより、タービン入口側クリアランスCLITに基づいて、タービン出口側クリアランスCLOTを検知することができる。また、ターボチャージャ10の個体差が無視できない場合でも、初期の段階で個体毎に図9(B)に示す関係を把握しておけば、経時変化後のタービン出口側クリアランスCLOTは、タービン入口側クリアランスCLITに基づいて検知することが可能である。
【0112】
上述した通り、本実施形態のシステムは、図9(A)に示す関係に基づいて、タービン入口側クリアランスCLITを検知することができる。このため、このシステムによれば、図9(B)に示す関係を記憶しておくことにより、タービン14側にギャップセンサを配置することなく、タービン出口側クリアランスCLOTを精度良く算出することが可能である。
【0113】
以上説明した通り、本実施形態のシステムでは、タービン14側にギャップセンサを配置することなく、タービン入口側クリアランスCLITおよびタービン出口側クリアランスCLOTの双方を精度良く検知することができる。タービン14は、高温の排気ガスに晒される。このため、タービン14側に配置したギャップセンサにより、高い信頼性を伴って精度良くクリアランスを検出することは必ずしも容易ではない。この点、上述した手法は、高温環境下にギャップセンサを配置する必要がないため、タービンクリアランスを正確に測定する手法として好適である。
【0114】
[実施の形態3における具体的処理]
(コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCの算出)
以下、図10および図11を参照して、上記の機能を実現するために、本実施形態において実行される具体的処理の内容を説明する。図10は、逆関数f-1およびg-1を用いてコンプレッサクリアランスCLIC,CLOCを算出するためにECU50において実行されるルーチンのフローチャートである。尚、図10において、図2或いは図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0115】
図10に示すルーチンでは、先ず、コンプレッサベースマップ(図7参照)に従って、基準のコンプレッサクリアランス下で発生する基準圧力比(P3/P0)および基準コンプレッサ効率ηCが算出される(ステップ100,102,140)。
【0116】
次に、コンプレッサ入口側温度T0および圧力P0、並びにコンプレッサ出口側の温度T3および圧力P3が、温度センサ52,64および圧力センサ54,66により実測される(ステップ108,150)。
【0117】
次いで、実測した温度T0、T3および圧力P0、P3を次式に当てはめることにより「実圧力比」および「実コンプレッサ効率」が算出される(ステップ152)。
実圧力比=P3/P0 ・・・(5)
実コンプレッサ効率ηc={(P3/P0)(κ-1)/κ−1}/ {(T3/T1)−1}・・・(6)
【0118】
次に、ステップ140の処理により算出した基準圧力比と上記(5)式により算出した実圧力比との差を取ることにより、圧力比変化量ΔPCが算出される。また、ステップ140において算出された基準コンプレッサ効率と上記(6)式に従って算出された実コンプレッサ効率ηCとの差を取ることにより、効率変化量ΔηCが算出される(ステップ154)。
【0119】
ECU50には、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCと、ターボ回転数N、圧力比P3/P0、および圧力比変化量ΔPCとの間に成立する関数(上述した逆関数f-1)、並びに、コンプレッサクリアランスCLIC,CLOCと、ターボ回転数N、コンプレッサ効率ηC、および効率変化量ΔηCとの間に成立する関数(上述した逆関数g-1)が記憶されている。ECU50は、それらの関数に基づいて生成される連立2元方程式を解くことにより、コンプレッサ入口側クリアランスCLICおよびコンプレッサ出口側クリアランスCLOCを算出する(ステップ156)。
【0120】
(タービン出口側状態量P7,T7の算出)
図11は、タービンクリアランスCLIT,CLOTを演算により求め、更に、その結果を利用してタービン出口側状態量を算出するためにECU50が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図11において、図4に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0121】
図11に示すルーチンでは、筒内を通過してタービン14に流入する空気流量Q4が算出され(ステップ120)、更にターボ回転数Nが算出された後に(ステップ122)、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCが計測される(ステップ160)。本実施形態では、図10に示すルーチンに従ってコンプレッサ出口側クリアランスCLOCが算出されているため、ここでは、その算出値が読み込まれる。
【0122】
次に、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCに基づいて、タービン入口側クリアランスCLITが算出される(ステップ162)。ECU50は、当該システムが備えるターボチャージャ10の個体について成立するCLOC-CLITマップ(図9(A)参照)を記憶している。本ステップ162では、そのマップを参照することにより、タービン入口側クリアランスCLITが算出される。
【0123】
次に、タービン入口側クリアランスCLITに基づいて、タービン出口側クリアランスCLOTが算出される(ステップ164)。ECU50は、当該システムが備えるターボチャージャ10の個体について成立するCLIT-CLOTマップ(図9(B)参照)を記憶している。本ステップ164では、そのマップを参照することにより、タービン出口側クリアランスCLOTが算出される。
【0124】
以後、タービンマップを参照して膨張比(P4/P7)およびタービン効率ηTを算出する処理(ステップ126)、タービン入口側の温度T4および圧力P4を検出する処理(ステップ128)、およびタービン出口側の状態量(温度T7および圧力P7)を算出する処理(ステップ130)が、実施の形態1の場合と同様の手順で順次実行される(図4参照)。
【0125】
以上の処理によれば、タービン14側にギャップセンサを配置することなく、タービンクリアランスCLIT,CLOTを算出し、更に、それらの算出値CLIT,CLOTに基づいて、タービン出口側の状態量(温度T7および圧力P7)を算出することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、ハードウェア構成を簡素化しつつ、実施の形態1または2の場合と同等以上の精度で、タービン出口側の状態量を算出することができる。
【0126】
ところで、上述した実施の形態3では、コンプレッサ12側からもギャップセンサを排除することとしている。つまり、コンプレッサ12の入口側および出口側の双方において温度T0、T3および圧力P0、P3を検出し、それらに基づいてコンプレッサクリアランスCLIC、CLOCを算出することとしている。しかしながら、コンプレッサクリアランスCLIC、CLOCを取得する手法はこれに限定されるものではなく、それらはギャップセンサにより実測することとしてもよい。
【0127】
また、上述した実施の形態3では、コンプレッサ出口側クリアランスCLOCを先ず取得し、そのCLOCを基礎としてタービンクリアランスCLIT、CLOTを算出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、実測或いは演算により、先ず、タービン入口側クリアランスCLITを取得し、そのCLITを基礎としてコンプレッサクリアランスCLIC、CLOCを算出することとしてもよい。
【0128】
また、上述した実施の形態3では、コンプレッサクリアランスを入口側と出口側とに分けて算出することとし、その算出のために、連立2元方程式を生成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、コンプレッサクリアランスは単一の変数として取り扱うこととしてもよい。そして、その場合には、コンプレッサクリアランスを算出するために、逆関数f-1またはg-1を基礎として、一次方程式を準備すればよい。
【0129】
また、上述した実施の形態3では、逆関数f-1を用いた関係と、逆関数g-1を用いた関係の双方を用いることにより、連立2元方程式を生成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、P0、T0、P3およびT3を2つの点で測定したうえで、逆関数f-1およびg-1の一方のみを利用して連立2元方程式を生成することとしてもよい。
【0130】
尚、上述した実施の形態3においては、ECU50に、先ず、タービンクリアランスを検出させることにより前記第6の発明における「タービンクリアランス検出手段」を実現することができる。更に、ECU50に、そのタービンクリアランスに基づいてコンプレッサクリアランスを算出させることにより(ステップ162,164参照)、前記第6の発明における「コンプレッサクリアランスを検出する手段」を実現することができる。
【0131】
また、上述した実施の形態3においては、ECU50に、タービン入口側圧力P4を検出させることにより(ステップ108参照)前記第7の発明における「タービン入口側圧力を検出する手段」を、タービン出口側圧力P7を検出させることにより(ステップ150参照)前記第7の発明における「タービン出口側圧力を検出する手段」を、それらの検出値に基づいてタービン前後の実圧力比を算出させることにより(ステップ152参照)前記第7の発明における「実タービン圧力比を算出する手段」を、タービン流輸入空気流量Q4を検出させることにより(ステップ100参照)前記第7の発明における「タービン流入空気流量を検出する手段」を、ターボ回転数Nを検出させることにより(ステップ102参照)前記第7の発明における「過給機回転数を検出する手段」を、タービンクリアランス、タービン流入空気流量Q4、ターボ回転数N、およびタービン前後の圧力比(P4/P7)の間に成立する関数(逆関数f-1に対応する関数)を記憶させることにより前記第7の発明における「タービン圧力比関係記憶手段」を、その関数に従ってタービンクリアランスを算出させることにより(ステップ156参照)前記第7の発明における「タービンクリアランスを算出する手段」を、それぞれ実現することができる。
【0132】
また、上述した実施の形態3においては、ECU50に、タービン入口側温度T4および圧力P4を検出させることにより(ステップ108参照)前記第8の発明における「タービン入口側温度を検出する手段」および「タービン入口側圧力を検出する手段」を、タービン出口側温度T7および圧力P7を検出させることにより(ステップ150参照)前記第8の発明における「タービン出口側温度を検出する手段」および「タービン出口側圧力を検出する手段」を、それらの検出値に基づいてタービンの実効率を算出させることにより(ステップ152参照)前記第8の発明における「実タービン効率を算出する手段」を、タービン流輸入空気流量Q4を検出させることにより(ステップ100参照)前記第8の発明における「タービン流入空気流量を検出する手段」を、ターボ回転数Nを検出させることにより(ステップ102参照)前記第8の発明における「過給機回転数を検出する手段」を、タービンクリアランス、タービン流入空気流量Q4、ターボ回転数N、およびタービン効率ηTの間に成立する関数(逆関数g-1に対応する関数)を記憶させることにより前記第8の発明における「タービン効率関係記憶手段」を、その関数に従ってタービンクリアランスを算出させることにより(ステップ156参照)前記第8の発明における「タービンクリアランスを算出する手段」を、それぞれ実現することができる。
【0133】
また、上述した実施の形態3においては、ECU50が、図10に示すルーチンを実行することにより前記第14の発明における「コンプレッサクリアランス検出手段」が実現されている。更に、ECU50が、ステップ162および164の処理を実行することにより前記第14の発明における「タービンクリアランスを検出する手段」が実現されている。
【0134】
また、上述した実施の形態3においては、ECU50が、ステップ108の処理を実行することにより前記第15の発明における「コンプレッサ入口側圧力を検出する手段」が、ステップ150の処理を実行することにより前記第15の発明における「コンプレッサ出口側圧力を検出する手段が、ステップ152の処理を実行することにより前記第15の発明における「実コンプレッサ圧力比を算出する手段」が、ステップ100の処理を実行することにより前記第15の発明における「空気流量を検出する手段」が、ステップ102の処理を実行することにより前記第15の発明における「過給機回転数を検出する手段」が、逆関数f-1を記憶することにより前記第15の発明における「コンプレッサ圧力比関係記憶手段」が、ステップ156の処理を実行することにより前記第15の発明における「コンプレッサクリアランスを算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0135】
また、上述した実施の形態3においては、ECU50が、ステップ108の処理を実行することにより前記第16の発明における「コンプレッサ入口側温度を検出する手段」および「コンプレッサ入口側圧力を検出する手段」が、ステップ150の処理を実行することにより前記第16の発明における「コンプレッサ出口側温度を検出する手段」および「コンプレッサ出口側圧力を検出する手段」が、ステップ152の処理を実行することにより前記第16の発明における「実コンプレッサ効率を算出する手段」が、ステップ100の処理を実行することにより前記第16の発明における「空気流量を検出する手段」が、ステップ102の処理を実行することにより前記第16の発明における「過給機回転数を検出する手段」が、逆関数g-1を記憶することにより前記第16の発明における「コンプレッサ効率関係記憶手段」が、ステップ156の処理を実行することにより前記第16の発明における「コンプレッサクリアランスを算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1において、コンプレッサ出口側温度T3およびコンプレッサ出口側圧力P3を精度良く算出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1において参照されるコンプレッサマップの例を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態1において、タービン出口側温度T4およびコンプレッサ出口側圧力P4を精度良く算出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1において参照されるタービンマップの例を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態2において、コンプレッサ出口側温度T3およびコンプレッサ出口側圧力P3を精度良く算出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2において参照されるコンプレッサベースマップの例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態3の構成を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態3においてタービンクリアランスを算出するために参照されるマップの例を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態3において、コンプレッサクリアランスを算出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態3において、タービン出口側状態量を算出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
10 ターボチャージャ
12 コンプレッサ
14 タービン
20 インペラ
30 タービンホイル
26,28,38,40 ギャップセンサ
52,56 温度センサ
54,58 圧力センサ
50 ECU(Electronic Control Unit)
CLIC コンプレッサ入口側クリアランス
CLOC コンプレッサ出口側クリアランス
CLIT タービン入口側クリアランス
CLOT タービン出口側クリアランス
P0 コンプレッサ入口側圧力
T0 コンプレッサ入口側温度
P3 コンプレッサ出口側圧力
T3 コンプレッサ出口側温度
P4 タービン入口側圧力
T4 タービン入口側温度
P7 タービン出口側圧力
T7 タービン出口側温度
GaTH スロットル通過空気流量
Q4 タービン流入空気流量
ηC コンプレッサ効率
ηT タービン効率
N ターボ回転数
ΔPC 圧力変化量
ΔηC 効率変化量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサを含む過給機と、
前記コンプレッサのハウジングとインペラ間のクリアランスをコンプレッサクリアランスとして検出するコンプレッサクリアランス検出手段と、
前記コンプレッサクリアランスを基礎データの一つとして、コンプレッサ出口側状態量を算出するコンプレッサ出口側状態量算出手段と、
を備えることを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項2】
内燃機関の筒内に流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
コンプレッサ入口側状態量を検出する手段とを備え、
前記コンプレッサ出口側状態量算出手段は、
前記コンプレッサクリアランス、前記コンプレッサ出口側状態量、前記空気流量、前記過給機回転数、および前記コンプレッサ入口側状態量の間に成立するコンプレッサ特性関係を記憶するコンプレッサ特性関係記憶手段と、
前記コンプレッサ特性関係に、前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、前記過給機回転数、および前記コンプレッサ入口側状態量の検出値を当てはめることにより、前記コンプレッサ出口側状態量を算出する手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項3】
内燃機関の筒内に流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
コンプレッサ入口側温度を検出する手段と、
コンプレッサ入口側圧力を検出する手段とを含み、
前記コンプレッサ出口側状態量は、コンプレッサ出口側温度と、コンプレッサ出口側圧力とを含み、
前記コンプレッサ出口側状態量算出手段は、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数に基づいてコンプレッサ前後の圧力比であるコンプレッサ圧力比を算出するコンプレッサ圧力比算出手段と、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数に基づいてコンプレッサ効率を算出するコンプレッサ効率算出手段と、
前記コンプレッサ圧力比と前記コンプレッサ入口側圧力とに基づいて前記コンプレッサ出口側圧力を推定する手段と、
前記コンプレッサ効率と前記コンプレッサ入口側温度と前記コンプレッサ圧力比とに基づいて前記コンプレッサ出口側温度を推定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記コンプレッサ圧力比算出手段は、
前記空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のコンプレッサクリアランスに対応するコンプレッサ圧力比基準値を算出する手段と、
前記コンプレッサクリアランスに基づいて、前記コンプレッサ圧力比に生ずると予測されるコンプレッサ圧力比変動量を算出する手段と、
前記コンプレッサ圧力比基準値に前記コンプレッサ圧力比変動量を加えることにより前記コンプレッサ圧力比を算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項3記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記コンプレッサ効率算出手段は、
前記空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のコンプレッサクリアランスに対応するコンプレッサ効率基準値を算出する手段と、
前記コンプレッサクリアランスに基づいて、前記コンプレッサ効率に生ずると予測されるコンプレッサ効率変動量を算出する手段と、
前記コンプレッサ効率基準値に前記コンプレッサ効率変動量を加えることにより前記コンプレッサ効率を算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項3または4記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記過給機は、内燃機関の排気通路に配置されたタービンを備え、
前記タービンのハウジングとタービンホイル間のクリアランスをタービンクリアランスとして検出するタービンクリアランス検出手段を備え、
前記コンプレッサクリアランス検出手段は、前記タービンクリアランスに基づいて前記コンプレッサクリアランスを検出する手段を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記タービンクリアランス検出手段は、
タービン入口側圧力を検出する手段と、
タービン出口側圧力を検出する手段と、
前記タービン入口側圧力、および前記タービン出口側圧力に基づいて、タービン前後の実圧力比である実タービン圧力比を算出する手段と、
前記タービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数と、タービン前後の圧力比であるタービン圧力比との間に成立するタービン圧力比関係を記憶するタービン圧力比関係記憶手段と、
前記タービン圧力比関係に、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記実タービン圧力比を当てはめることにより、前記タービンクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項6記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記タービンクリアランス検出手段は、
タービン入口側温度を検出する手段と、
タービン入口側圧力を検出する手段と、
タービン出口側温度を検出する手段と、
タービン出口側圧力を検出する手段と、
前記タービン入口側圧力、前記タービン出口側圧力、前記タービン入口側温度、および前記タービン出口側温度に基づいて、タービンの実効率である実タービン効率を算出する手段と、
前記タービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数と、タービン効率との間に成立するタービン効率関係を記憶するタービン効率関係記憶手段と、
前記タービン効率関係に、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記実タービン効率を当てはめることにより、前記タービンクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項6または7記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項9】
内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサと、内燃機関の排気通路に配置されたタービンとを含む過給機と、
前記タービンのハウジングとタービンホイル間のクリアランスをタービンクリアランスとして検出するタービンクリアランス検出手段と、
前記タービンクリアランスを基礎データの一つとして、タービン出口側状態量を算出するタービン出口側状態量算出手段と、
を備えることを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項10】
内燃機関の筒内からタービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
タービン入口側状態量を検出する手段とを備え、
前記タービン出口側状態量算出手段は、
前記タービンクリアランス、前記タービン出口側状態量、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記タービン入口側状態量の間に成立するタービン特性関係を記憶するタービン特性関係記憶手段と、
前記タービン特性関係に、前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、前記過給機回転数、および前記タービン入口側状態量の検出値を当てはめることにより、前記タービン出口側状態量を算出する手段とを備えることを特徴とする請求項9記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項11】
内燃機関の筒内からタービンに流入するタービン流入空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
タービン入口側温度を検出する手段と、
タービン入口側圧力を検出する手段とを含み、
前記タービン出口側状態量は、タービン出口側温度と、タービン出口側圧力とを含み、
前記タービン出口側状態量算出手段は、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数に基づいてタービン前後の圧力比であるタービン圧力比を算出するタービン圧力比算出手段と、
前記タービンクリアランス、前記タービン流入空気流量、および前記過給機回転数に基づいてタービン効率を算出するタービン効率算出手段と、
前記タービン圧力比と前記タービン入口側圧力とに基づいて前記タービン出口側圧力を推定する手段と、
前記タービン効率と前記タービン入口側温度と前記タービン圧力比とに基づいて前記タービン出口側温度を推定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項9記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項12】
前記タービン圧力比算出手段は、
前記タービン流入空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のタービンクリアランスに対応するタービン圧力比基準値を算出する手段と、
前記タービンクリアランスに基づいて、前記タービン圧力比に生ずると予測されるタービン圧力比変動量を算出する手段と、
前記タービン圧力比基準値に前記タービン圧力比変動量を加えることにより前記タービン圧力比を算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項11記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項13】
前記タービン効率算出手段は、
前記タービン流入空気流量および前記過給機回転数に基づいて、基準のタービンクリアランスに対応するタービン効率基準値を算出する手段と、
前記タービンクリアランスに基づいて、前記タービン効率に生ずると予測されるタービン効率変動量を算出する手段と、
前記タービン効率基準値に前記タービン効率変動量を加えることにより前記タービン効率を算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項11または12記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項14】
前記コンプレッサのハウジングとインペラ間のクリアランスをコンプレッサクリアランスとして検出するコンプレッサクリアランス検出手段を備え、
前記タービンクリアランス検出手段は、前記コンプレッサクリアランスに基づいて前記タービンクリアランスを検出する手段を含むことを特徴とする請求項9乃至13の何れか1項記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項15】
前記コンプレッサクリアランス検出手段は、
コンプレッサ入口側圧力を検出する手段と、
コンプレッサ出口側圧力を検出する手段と、
前記コンプレッサ入口側圧力、および前記コンプレッサ出口側圧力に基づいて、コンプレッサ前後の実圧力比である実コンプレッサ圧力比を算出する手段と、
内燃機関の筒内に流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数と、コンプレッサ前後の圧力比であるコンプレッサ圧力比との間に成立するコンプレッサ圧力比関係を記憶するコンプレッサ圧力比関係記憶手段と、
前記コンプレッサ圧力比関係に、前記空気流量、前記過給機回転数、および前記実コンプレッサ圧力比を当てはめることにより、前記コンプレッサクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項14記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項16】
前記コンプレッサクリアランス検出手段は、
コンプレッサ入口側温度を検出する手段と、
コンプレッサ入口側圧力を検出する手段と、
コンプレッサ出口側温度を検出する手段と、
コンプレッサ出口側圧力を検出する手段と、
前記コンプレッサ入口側圧力、前記コンプレッサ出口側圧力、前記コンプレッサ入口側温度、および前記コンプレッサ出口側温度に基づいて、コンプレッサの実効率である実コンプレッサ効率を算出する手段と、
前記コンプレッサに流入する空気流量を検出する手段と、
過給機回転数を検出する手段と、
前記コンプレッサクリアランス、前記空気流量、および前記過給機回転数と、コンプレッサ効率との間に成立するコンプレッサ効率関係を記憶するコンプレッサ効率関係記憶手段と、
前記コンプレッサ効率関係に、前記コンプレッサ流入空気流量、前記過給機回転数、および前記実コンプレッサ効率を当てはめることにより、前記コンプレッサクリアランスを算出する手段と、
を含むことを特徴とする請求項14または15記載の過給機付き内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−9767(P2006−9767A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192113(P2004−192113)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】