説明

過給機

【課題】
断熱カバー自体の断熱性能を増大させることなく、タービンハウジングの断熱性能を向上させた過給機を提供する。
【解決手段】
内燃機関に付属して設けられる過給機20であって、該過給機のタービンハウジング9に空気層成形部材21,22を介在して断熱カバー16を設け、該断熱カバーと前記タービンハウジングとの間に空気層17を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関に付属して設けられる過給機、特に舶用過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の出力増大、燃焼効率の向上の為、排気ガスのエネルギを利用して駆動され、内燃機関に過給する過給機が設けられる。
【0003】
図4に於いて、過給機について説明する。
【0004】
過給機1は、回転軸2を共有するタービン3とコンプレッサ4によって構成されている。
【0005】
前記回転軸2は軸受ハウジング5に軸受6を介して回転自在に支持され、前記回転軸2の一端にはタービン翼車7が設けられ、他端にはコンプレッサ翼車8が設けられている。
【0006】
前記タービン翼車7は前記軸受ハウジング5に取付けられたタービンハウジング9に収納され、前記コンプレッサ翼車8は前記軸受ハウジング5に取付けられたコンプレッサハウジング11に収納されている。
【0007】
前記タービン翼車7、前記タービンハウジング9等によって前記タービン3が構成され、前記コンプレッサ翼車8、前記コンプレッサハウジング11等によって前記コンプレッサ4が構成される。
【0008】
前記タービンハウジング9は排気ガス流入口12、排気ガス流出口13を有し、前記排気ガス流入口12には内燃機関からの排気ガスが流入し、前記排気ガス流出口13からは排気エネルギによって前記タービン翼車7を回転した後の排気ガスが排気される。
【0009】
前記コンプレッサハウジング11は、吸入口14、吐出口15を有し、前記コンプレッサ翼車8が前記回転軸2を介して前記タービン翼車7により回転されることで、前記吸入口14より吸入した空気を圧縮し、前記吐出口15より圧縮空気を内燃機関に給気する。
【0010】
上記過給機1に於いて、前記タービンハウジング9には前記排気ガス流入口12から流入した高温の排気ガスが流通する。この為、前記タービンハウジング9は排気ガスによって加熱され、高温となる。
【0011】
舶用内燃機関等では過給機が露出しており、作業者が触れる状態にある。内燃機関の作動中に作業者が触れた場合は、火傷する虞れがあるので、前記タービンハウジング9を断熱カバーによって覆い、表面温度が所定温度(220℃)以下となる様に、義務付けられている。
【0012】
図4中、16は断熱カバーを示しており、該断熱カバー16は、例えば硝子ウール等の断熱材料を所要の厚みに形成し、表面にアルミ等を蒸着したものである。
【0013】
従来の過給機では、前記断熱カバー16が前記タービンハウジング9に装着された状態では、前記断熱カバー16は前記タービンハウジング9の高温のガスが流通する流路部分9aに密着している。この為、前記断熱カバー16の表面温度を所定温度以下とするには、前記断熱材の厚みを厚くする等、前記断熱カバー16自体の断熱性能を大きくする必要がある。
【0014】
該断熱カバー16の厚みを厚くすると、該断熱カバー16の柔軟性がなくなり、前記タービンハウジング9への着脱作業性が悪くなる。或は、該タービンハウジング9を装着する為に該タービンハウジング9の周囲に空間を確保しなければならない等、前記過給機1を取付ける際の制約が大きくなる。又、前記断熱カバー16の厚みが厚くなるので、コストが上昇する等の問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開平7−189725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は斯かる実情に鑑み、断熱カバー自体の断熱性能を増大させることなく、タービンハウジングの断熱性能を向上させた過給機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、内燃機関に付属して設けられる過給機であって、該過給機のタービンハウジングに空気層成形部材を介在して断熱カバーを設け、該断熱カバーと前記タービンハウジングとの間に空気層を形成した過給機に係るものである。
【0018】
又本発明は、前記空気層成形部材は前記タービンハウジングの表面に形成されたリブである過給機に係り、又前記リブは排気ガス流路に沿って形成された縦リブと、前記排気ガス流路と交差し、所要間隔で設けられた横リブである過給機に係り、又前記縦リブの高さと、前記横リブの高さが異なる過給機に係り、更に又前記縦リブ、前記横リブの少なくとも一方の表面に、凹部を形成した過給機に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内燃機関に付属して設けられる過給機であって、該過給機のタービンハウジングに空気層成形部材を介在して断熱カバーを設け、該断熱カバーと前記タービンハウジングとの間に空気層を形成したので、タービンハウジングに対する断熱性能が向上し、断熱カバー自体が負担する断熱性能が減少するので、コストの低減、断熱カバー着脱の作業性の向上が図れる。
【0020】
又本発明によれば、前記空気層成形部材は前記タービンハウジングの表面に形成されたリブであるので、タービンハウジング製作時に一体成形でき、コストの低減が図れる。
【0021】
又本発明によれば、前記リブは排気ガス流路に沿って形成された縦リブと、前記排気ガス流路と交差し、所要間隔で設けられた横リブであり、又前記縦リブの高さと、前記横リブの高さが異なるので、前記縦リブ表面、前記横リブ表面と前記断熱カバーとの間に隙間が形成され、断熱性能が向上する。
【0022】
更に又本発明によれば、前記縦リブ、前記横リブの少なくとも一方の表面に、凹部を形成したので、前記縦リブ、前記横リブと前記断熱カバーとの接触面積が減少し、断熱性能が向上する等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明が実施された過給機20の一例を示すものであり、図1中、図4中で示したものと同等のものには同符号を付してある。又、過給機としての基本的な構造は同一であるので、説明を省略する。
【0025】
本発明では、タービン3、即ちタービンハウジング9に対する断熱の為、該タービンハウジング9に断熱カバー16を装着するが、前記タービンハウジング9に対する断熱性能を向上させる為、前記タービンハウジング9の表面と前記断熱カバー16との間に空気層17を形成する。
【0026】
以下、該空気層17を形成する一例を説明する。
【0027】
図2は、過給機20に使用されるタービンハウジング9の一例を示しており、該タービンハウジング9の流路部分9aの表面に、流れ方向に沿って縦リブ21を形成し、又、流れ方向に直交する横リブ22を所要角度間隔で形成する。
【0028】
尚、前記タービンハウジング9を鋳型成型する場合は、前記縦リブ21は鋳抜き方向に対して垂直な面に形成し、前記横リブ22は鋳抜き方向と平行となる様に形成する。
【0029】
前記縦リブ21、前記横リブ22を形成することで、前記タービンハウジング9に前記断熱カバー16を装着した場合、前記流路部分9aの表面と前記断熱カバー16の内面との間に前記空気層17が形成される。
【0030】
空気は、熱伝導率が小さく、大きな断熱性能を有する。従って、前記流路部分9aの表面と前記断熱カバー16の内面との間に前記空気層17が形成されることで、前記タービンハウジング9に対する断熱性能が向上する。従って、前記断熱カバー16の厚みを薄くでき、コストが低減すると共に前記断熱カバー16の柔軟性を確保でき、該断熱カバー16の着脱の作業性が向上する。
【0031】
尚、前記縦リブ21と前記横リブ22の表面は、前記断熱カバー16の内面に直接接触することになるので、図2、図3に示される様に、前記縦リブ21と前記横リブ22の高さを変えることで、前記縦リブ21、前記横リブ22と前記断熱カバー16の内面との間に間隙23(図1参照)が形成され、接触面積が減少すると共に前記縦リブ21、前記横リブ22と前記断熱カバー16の内面との間にも空気層が形成される。
【0032】
本実施の形態に於いて、前記縦リブ21、前記横リブ22を形成することで、前記タービンハウジング9と前記断熱カバー16との接触面積は、従来の過給機に比して30%に減少する。
【0033】
又、前記縦リブ21、前記横リブ22の表面と前記断熱カバー16との接触面積を、更に減少させる為、図3に示す様に、前記縦リブ21、前記横リブ22の両方、又は一方の表面に所要間隔で凹部24を形成してもよい(図3は前記横リブ22に形成した凹部24のみが現れている)。
【0034】
前記凹部24を形成することで、前記縦リブ21、前記横リブ22と前記断熱カバー16との接触面積が減少し、前記縦リブ21、前記横リブ22、前記凹部24から前記断熱カバー16に直接熱伝達される熱量が減少し、断熱性能が向上する。
【0035】
上記実施の形態では、前記空気層17を形成する為の空気層成形部材である前記縦リブ21、前記横リブ22を前記タービンハウジング9と一体に形成したが、前記縦リブ21、前記横リブ22を前記タービンハウジング9とは別部材とし、該タービンハウジング9に後付けしてもよい。或は、該タービンハウジング9の表面、又は、前記断熱カバー16の内面に、空気層を形成する為の突起物を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る過給機の断面図である。
【図2】該過給機に使用されるタービンハウジングの斜視図である。
【図3】該過給機の部分断面図である。
【図4】従来の過給機の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 過給機
3 タービン
4 コンプレッサ
7 タービン翼車
8 コンプレッサ翼車
9 タービンハウジング
9a 流路部分
16 断熱カバー
17 空気層
21 縦リブ
22 横リブ
23 間隙
24 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に付属して設けられる過給機であって、該過給機のタービンハウジングに空気層成形部材を介在して断熱カバーを設け、該断熱カバーと前記タービンハウジングとの間に空気層を形成したことを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記空気層成形部材は前記タービンハウジングの表面に形成されたリブである請求項1の過給機。
【請求項3】
前記リブは排気ガス流路に沿って形成された縦リブと、前記排気ガス流路と交差し、所要間隔で設けられた横リブである請求項2の過給機。
【請求項4】
前記縦リブの高さと、前記横リブの高さが異なる請求項3の過給機。
【請求項5】
前記縦リブ、前記横リブの少なくとも一方の表面に、凹部を形成した請求項3の過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−202467(P2008−202467A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38148(P2007−38148)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】