説明

過酸化ベンゾイルの安定分散液を得る方法

【課題】
【解決手段】 過酸化ベンゾイルを含有する粉末は、粉末をポリオール、ポリオールエーテル、および低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する液体に接触させることによってただちに湿潤化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化ベンゾイルの安定分散液およびミクロ分散液を調合する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化ベンゾイルは、皮膚用医薬組成物で広範に使用される。尋常性ざ瘡および酒さ性ざ瘡の処置のための多くの組成物は、例えば2.5%から10%の間の過酸化ベンゾイルを含有する。これらおよび他の皮膚状態の処置における過酸化ベンゾイルの有効性は、角質溶解剤としてのその有用性であり、それにより皮膚の代謝回転を向上させて、毛孔を清浄にする。過酸化ベンゾイルはさらに、直接抗菌活性も有する。
【0003】
過酸化ベンゾイルの水性流体中の安定分散液を得るのが非常に困難であるのは、過酸化ベンゾイルが高疎水性有機化合物であり、水でただちに湿潤化されないためである。この問題は、従来技術によって1若しくはそれ以上の方法で対処されてきた。
【0004】
過酸化ベンゾイルは有機溶媒に溶解され得るので、皮膚の罹患を処置する局所投与のために均質で外観が洗練されており、有効な過酸化ベンゾイル分散液を調製する問題は回避される。局所使用のための溶解した過酸化ベンゾイルを含有する初期の生成物は、過酸化ベンゾイルが有機溶媒、例えばアセトンまたはアルコールとアセトンとの組み合わせに溶解されたゲルであった。これらの生成物は有効であることが判明したが、これらは可燃性、皮膚の過乾燥、および多くのざ瘡罹患者における明らかな皮膚炎症の誘発を含む、いくつかの欠点を被っていた。最新の開発では、過酸化ベンゾイルを可溶化するために他の有機溶媒を使用している。しかしこれらの組成物は、皮膚の毛包脂腺器官への可溶化過酸化ベンゾイルのボーラス送達の問題のために、かなりの数の対象における重度の皮膚刺激の問題を解決しない。
【0005】
溶解によって発生する分解生成物の産生の増加を含む、これらおよび他の理由で、過酸化ベンゾイルの懸濁液は溶解よりも好ましい。ミクロ懸濁液、すなわち微粉化された過酸化ベンゾイルを含有する懸濁液は、以下の例示的な理由を含む、複数の理由で過酸化ベンゾイルの標準または非微粉化懸濁液よりも好ましい。第1に微粉化懸濁液は、毛包脂腺器官漏斗への過酸化ベンゾイルの小型粒子の有効な送達を提供し、毛包脂腺器官漏斗に小型粒子が滞留して、小型粒子はそこから皮脂および毛包脂腺組織中への薬物の非ボーラス送達を提供する。この送達は、最適効力と皮膚刺激反応の低減との適正なバランスを提供する。第2に、洗練された外観および患者による許容は、懸濁された微粉化過酸化ベンゾイルを含有する、滑らかで均質なゲル、クリームまたはローションによって改善される。特に顔面皮膚状態、例えばざ瘡または酒さ性ざ瘡を処置する際に、洗練された外観は、処置指示の良好な患者コンプライアンスを得るための重要な因子である。進行中の局所薬管理を伴う慢性疾患では、良好な患者コンプライアンスは、全体的な処置の成功を得るために不可欠である。
【0006】
界面活性剤は、過酸化ベンゾイルを水性流体に分散させて、過酸化ベンゾイルを安定懸濁液中に維持するのに役立つ湿潤化剤として使用されることが多い。しかし界面活性剤は、損傷または罹患した皮膚には刺激性であることが多く、無傷の皮膚に繰り返し塗布すると、界面活性剤は皮膚からの経表皮水分喪失の増加によって証明されるように、正常な皮膚バリア機能を妨害することが公知である。したがって医薬組成物、特に慢性皮膚状態を処置するために長期
間にわたって毎日使用される医薬組成物を、最小限の界面活性剤を用いて、または界面活性剤を用いずに調合することが所望である。過酸化ベンゾイルの分散を促進して、懸濁液への過酸化ベンゾイルの分散を維持するために、微粉化形の過酸化ベンゾイルが、時には界面活性剤と併せて使用されることが多い。
【0007】
Coxの米国特許第3,535,422号明細書は、過酸化ベンゾイルを含有する安定乳剤を開示している。Coxは、懸濁した過酸化ベンゾイルを含有する乳剤を得る2つの方法を開示している。第1の方法において、Coxは水、界面活性剤、および25%までの飽和有機化合物皮膚軟化薬を含有する乳剤を形成する。次に無水微粉化過酸化ベンゾイルをこの乳剤にブレンドして組成物を得る。第2の方法において、非微粉化過酸化ベンゾイルを使用して、水で湿潤化して包装された粉末の形の過酸化ベンゾイルの粗結晶を、界面活性剤および飽和有機化合物皮膚軟化薬を含む、組成物の構成要素すべてを含有する先に作製した乳剤と組み合わせる。微粉化過酸化ベンゾイルを含有する組成物を得るために、得られた組成物を次に粉砕する。
【0008】
Youngの米国特許第4,056,611号明細書は、懸濁した過酸化ベンゾイルを含有する単相組成物を開示している。Youngの組成物は、アルコール性溶媒、水および界面活性剤を必要な構成要素として含有する。Coxと同様に、Youngは組成物が無水微粉化過酸化ベンゾイル結晶を使用することによって作製され得ることを開示している。好ましくはYoungはCoxと同じく、過酸化ベンゾイルの粗結晶の湿潤包装を使用し、粉末は重量/重量(w/w)で70%の過酸化ベンゾイルおよび30%の水を含有する。組成物の構成成分すべてを共に混合して、次にこの混合物を粉砕して、懸濁した微粉化過酸化ベンゾイルを含有する組成物を得る。Youngは、組成物が過酸化ベンゾイル粒子の懸濁を維持するための懸濁化剤および粘度増強(ゲル化)剤を好都合に含有し得ることをさらに開示している。
【0009】
CoxおよびYoungの方法および組成物は、過酸化ベンゾイルを含有する組成物に関する複数の欠点を含有する。CoxおよびYoungの両方で界面活性剤が使用され、界面活性剤は損傷または罹患した皮膚に刺激性であることが多い。さらにCoxおよびYoungはどちらも、粗い非微粉化過酸化ベンゾイルを含有するその組成物のすべての構成物質を共に合せて混合物を形成して、次にこの混合物を粉砕して微粉化過酸化ベンゾイルを含有する組成物を得ることを開示している。Youngはゲル化剤が組成物中で組み合わされ得ることを開示しているが、過酸化ベンゾイルの微粉化に使用される機械的粉砕力には同様に、ゲル化剤として使用されたポリマーを妨害する傾向があることが周知である。それゆえ粉砕プロセスによって、ゲル化剤が所望される粘度を提供する能力の低下が生じる。
【0010】
Kleinの米国特許第4,387,107号明細書は、過酸化ベンゾイルを含有するゲル組成物を開示している。Kleinは、残りの成分との組み合わせ前に、事前に微粉化された過酸化ベンゾイルを使用することによって、過酸化ベンゾイルを含有する組成物を粉砕する問題を回避する。Kleinの組成物を作製するために、水をゲル化剤と組み合わせて第1の混合物を作製する。この混合物に、アルコール賦形剤(vehicle)および他の構成要素、例えば香料および他の治療剤、例えばサリチル酸メチルが選択的に添加される。最後に、微粉化過酸化ベンゾイル、界面活性剤、および水を含有する第2の混合物が第1の混合物に添加され、組成物を得る。微粉化過酸化ベンゾイルが使用されているため、組成物を機械的に粉砕する必要がない。それゆえポリマー性ゲル化剤は妨害されない。しかしKleinの方法は、事前に微粉化された過酸化ベンゾイルの使用および界面活性剤の存在を必要とする。
【0011】
微粉化過酸化ベンゾイルの使用は、Kleinで開示されているように、特に1若しくはそれ以上のポリマー性ゲル化剤を含有する半固体組成物の形成に関する利点を提供する。微粉化過酸化ベンゾイルは、非微粉化過酸化ベンゾイルとは対照的に、親水性流体中でただちに懸濁され、このような懸濁液は、非微粉化過酸化ベンゾイルで作製した同様の懸濁液よりも物理的に安定である。しかし微粉化過酸化ベンゾイルは、特に医薬グレード物質として入手するのが困難なことが多く、入手可能なときには微粉化過酸化ベンゾイルは高価である。実際に微粉化過酸化ベンゾイルは、現行適正製造基準(current Good Manufacturing Practices(cGMP))の下で調製された医薬グレードとして市販されていない。
【0012】
したがって医薬グレードでただちに利用可能であり、微粉化過酸化ベンゾイルよりもはるかに安価である非微粉化過酸化ベンゾイルを購入できること、および次に医薬製剤の製造に使用される過酸化ベンゾイルを微粉化できることは好都合であろう。
【0013】
CoxおよびYoungの両方の特許で開示されているように、固体結晶形の過酸化ベンゾイルは室温にて安定であるが、可燃性であり、細砕に関連する温度にさらされたときに爆発する可能性がある。結果として、過酸化ベンゾイルの乾式粉砕は好ましくない。むしろ微粉化形の過酸化ベンゾイルを得るために、過酸化ベンゾイルを湿式粉砕することが好ましい。過酸化ベンゾイルは、好ましい湿式粉砕プロセスで使用される水の存在下では、火災および爆発のリスクが最小限に抑えられるので、はるかに安全に処置される。
【0014】
過酸化ベンゾイルを湿式粉砕する際に生じる1つの困難は、上述のように、過酸化ベンゾイルが非常に疎水性であり、水による湿潤化に耐えることである。湿潤化が不十分なまたは湿潤化されていない過酸化ベンゾイルが湿式粉砕を妨害する可能性があるのは、過酸化ベンゾイル粉末の表面の凹所および割れ目に捕捉された空気によって与えられた浮力のために、過酸化ベンゾイル粉末が大量の分散流体の表面に上昇するときに、過酸化ベンゾイル粉末が「固まる」傾向を有し、すなわち過酸化ベンゾイルが捕捉された空気によって安定なクラストを形成するためである。さらに過酸化ベンゾイル粒子間の強い引力によって、製造プロセスおよび最終的な医薬製剤の品質の両方を損う、凝集の問題が生じる。界面活性剤は、Cox、Young、およびKleinの特許で開示されたように、この目的のために、および過酸化ベンゾイルの安定な非集塊化ミクロ懸濁液を維持するために使用されてきたが、界面活性剤は、損傷または罹患した皮膚を刺激するその傾向のために好ましくない。したがって過酸化ベンゾイルが、好ましくは界面活性剤の使用を伴わずに、ただちに湿潤され、好ましくは親水性または水性流体による懸濁液中に配置され得る方法は、非常に有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
過酸化ベンゾイル粉末がただちに湿潤化され、最小限の凝集を有するまたは凝集のない過酸化ベンゾイル懸濁液が、過酸化ベンゾイルを有機流体であって、それと組み合わされる過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに十分である、ポリオール、ポリオールエーテル、および低炭素有機アルコールから成る群より選択される1つ若しくはそれ以上の、ある濃度の有機流体を含有する、好ましくは水性ベースの湿潤化流体と機械的撹拌を用いてまたは用いずに組み合わされることによって取得され得ることが、予想外なことに発見された。この湿潤化が湿潤化剤、例えば界面活性剤を使用せずに得られることもさらに発見されている。
【0016】
本明細書で使用する場合、「過酸化ベンゾイル粉末」という用語は、過酸化ベンゾイルのいずれかの微粒子形を意味する。このような微粒子形の例は、細粒、結晶、および粗粒、微細または超微細のいずれかにかかわらず、ナノ微粒子粉末などのアモルファス粉末を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、「過酸化ベンゾイルを含有する粉末」という用語は、過酸化ベンゾイル粉末および選択的に過酸化ベンゾイル以外の1若しくはそれ以上の物質の微粒子形を含有する粉末を指す。例えば過酸化ベンゾイルを含有する粉末は、過酸化ベンゾイルの粒子および1若しくはそれ以上の他の粒子または液体を含有し得、粉末中の過酸化ベンゾイル以外の粒子の濃度は50%w/w若しくはそれ以下である。過酸化ベンゾイルを含有する粉末は、50%から100%の間、例えば50%から60%の間、60%から70%の間、70%から80%の間、80%から90%の間、または90%から100%の間の濃度の過酸化ベンゾイルを含有し得る。過酸化ベンゾイルを含有する粉末の例は、約26%の水を含有する粒状粉末である、水和過酸化ベンゾイル、USPである。
【0018】
本明細書で使用する場合、「非微粉化」という用語は、過酸化ベンゾイル粉末に関連して使用されるとき、平均過酸化ベンゾイル粒子が150ミクロン若しくはそれ以上のサイズである粉末を意味する。反対に「微粉化」という用語は、過酸化ベンゾイル粉末に関連して使用されるとき、平均過酸化ベンゾイル粒子が150ミクロン未満のサイズである粉末を意味する。好ましくは、しかし必ずではないが、非微粉化粉末中の過酸化ベンゾイル粒子の実質的にすべてが250ミクロン若しくはそれ以上である。
【0019】
本明細書で使用する場合、「湿潤化」という用語は、粉末の粒子が流体内に個別に離散して含まれるように、粉末を覆ったおよび粉末を通じた流体の広がりを指す。当分野で公知であるように、粉末は粒子のほぼすべて、例えば90%が流体内に含まれるときに湿潤化されていると見なされる。例えば粉末を好適な湿潤化流体と接触させることによって、粒子の少数、通例粒子の10%未満が湿潤化されていなくても、湿潤化と呼ばれることが起こる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「ポリオール」という用語は、「多価アルコール」と同義であり、1を超えるヒドロキシル基を含有するアルコールを指す。ポリオールの例は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、および糖アルコールを含む。
【0021】
本明細書で使用する場合、「ポリオールエーテル」という用語は、ヒドロキシル基およびエーテル基を含有するアルコールを指す。ポリオールエーテルの例は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)(Transcutol(登録商標)、Gattefosse Corporation,ニュージャージ州Paramus)、ペンタエリスリトールのエーテル、アルキレングリコールのエーテル、脂肪アルコールのエーテル、および糖のエーテルを含む。
【0022】
本明細書で使用する場合、「低炭素有機アルコール」という用語は、式RCHOH(式中、RはHであるか、または1〜7個の炭素の直鎖若しくは分枝アルキル鎖であるかのどちらかである)を有する、またはヒドロキシル基に直接結合された若しくは炭素によってヒドロキシル基結合された環構造を有する、アルコールを指す。低炭素有機アルコールの例は、アルキルおよびアリールアルコール、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、フェノール、およびベンジルアルコールを含む。
【0023】
本明細書で使用する場合、「機械的撹拌」という用語は、液体内での粉末の湿潤化を促進するための、液体に接触した粉末への運動エネルギーの印加を指す。機械的撹拌の例は、これに限定されるわけではないが、混合、かき混ぜ、剪断、振とう、またはブレンドを含む。他の例は超音波処置、ボルテックス処理、および粉砕を含む。
【0024】
本明細書で使用する場合、局所投与のための医薬投薬形に関する「水性ゲル」は、増粘剤、例えばポリマーによってゲル化する担体または担体系を含む医薬投薬形を意味し、担体または担体系の大部分、すなわち50重量/重量%若しくはそれ以上は水である。
【0025】
本明細書で使用する場合、「集塊化」という用語は、粒子の多数が単一の粒子として現れる単一のより大型の塊に凝集するような、小型固体粒子間の強い物理的引力を意味するが、この塊は機械的撹拌などの十分なエネルギーによって分裂され得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一実施形態において、本発明は、過酸化ベンゾイルを含有する湿潤粉末を得る方法である。本発明の方法により、粉末は、液体と組み合わされた過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに十分である濃度のポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコールを含有する液体と接触させられる。粒子の著しい集塊化またはクラスト形成を伴わずに過酸化ベンゾイル粉末が効果的に分散され得るように、粉末および/または液体は、過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化のプロセスを促進、加速または完了させるために機械的に撹拌され得る。
【0027】
非微粉化過酸化ベンゾイルは、時には誤って「湿潤」過酸化ベンゾイルと呼ばれる、水和過酸化ベンゾイル、USPとして入手できる。水和過酸化ベンゾイルは、65.0%から82.0%の間の過酸化ベンゾイルを含有し得て、燃焼性および衝撃感度を低下させるために、通例約74%の過酸化ベンゾイルおよび26%の水を含有する。水和過酸化ベンゾイル中の過酸化ベンゾイルが湿潤化されないのは、この用語が当分野では上記のように使用されるためである。水和過酸化ベンゾイルはペーストでなく、水和過酸化ベンゾイル中の過酸化ベンゾイルは微結晶性状態であり、自由流動性粒状粉末として挙動する。水分子と過酸化ベンゾイル粉末間に化学的相互作用はなく、水は過酸化ベンゾイル粉末のコアまたは内部を湿潤化しない。それゆえ市販の「湿潤」過酸化ベンゾイルは湿潤化されていない。
【0028】
粉末中の過酸化ベンゾイルは微粉化であり得るか、または非微粉化であり得るため、非微粉化粉末に関する本明細書の記載は、微粉化粉末にも適用されることが理解されるであろう。微粉化過酸化ベンゾイル粉末は、湿潤化された過酸化ベンゾイルを含有する粉末および水として市販されることが多い。湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末の例は、商標名Benox(登録商標)(Syrgis Performance Initiators,Inc.,アーカンソ州Helena)で販売されているものである。微粉化過酸化ベンゾイルを含有する粉末はすでに湿潤化されているため、このような粉末は本発明の湿潤化実施形態には適用されない。しかし、微粉化過酸化ベンゾイルを含有する湿潤化された粉末の使用は、後述する本発明の他の実施形態に適用され得る。
【0029】
湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末を取得するための本発明の方法により、過酸化ベンゾイルを含有する粉末は好適な湿潤化流体と接触して配置され、この湿潤化流体は、ポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコールを、過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化を生じるのに十分な濃度で含有する。粉末および湿潤化流体は、過酸化ベンゾイルが湿潤化流体によって湿潤化されるように十分な時間にわたって、相互に接触したままにされる。所望ならば、または必要な場合、粉末および湿潤化流体は、湿潤化を促進または加速または完了するために機械的に撹拌され得る。
【0030】
好ましい有機流体はポリオールである。ポリオールの好ましい例は、プロピレングリコールおよびヘキシレングリコールを含む。別の好ましい有機流体はポリオールエーテルである。ポリオールエーテルの好ましい例はエトキシジグリコールである。あまり好ましくない有機流体はアルコールである。アルコールは、より好ましい有機流体より低い発火点を有する傾向があり、可燃性または爆発しやすい物質、例えば過酸化ベンゾイルと組み合わせるときには、十分な量の不燃性流体または発火点の高い流体、例えば水と組み合わせて使用すべきである。さらにアルコールは高濃度では、傷ついた皮膚に刺痛感覚を引き起こし得る。しかし低炭素有機アルコールは、特に刺痛が問題でない場合には、本発明の有機流体に好適である。
【0031】
湿潤化流体は、1若しくはそれ以上のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールに加えて、追加の構成要素、例えば溶媒を含有し得る。このような追加の構成要素は、湿潤化プロセスが行われる温度において好ましくは液体であり、使用されるポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールと好ましくは混和性である。好ましい追加の構成要素は水である。水は、粉砕の間の燃焼性および爆発のリスクの遅延を含む複数の理由のために、ならびにゲル、クリーム、懸濁液、およびローションを含む最終的な半固体医薬製剤中での好ましい担体としてのその有用性のために好ましい。湿潤化流体は選択的に、溶解した溶質、例えば追加の湿潤化剤または脱凝集剤を含有し得る。
【0032】
湿潤化流体がポリオール、ポリオールエーテル、および/若しくはまたは低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する、またはポリオール、ポリオールエーテル、および/若しくは低炭素有機アルコールならびに水の混合物を含有する液体であり、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度(%w/w)が過酸化ベンゾイルを含有する粉末を湿潤化することができる所望のレベル若しくはそれ以上であることが驚くべきことに発見された。湿潤化流体中のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、使用されるポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコールなどの因子、ならびに使用される過酸化ベンゾイル粉末、湿潤化流体の相対体積、ならびに使用される機械的撹拌の種類および程度によって変わるであろう。概して、湿潤化流体中のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、1%w/wから100%w/wの間である。好ましくは、濃度は約5%若しくはそれ以上、さらに好ましくは約10%若しくはそれ以上、および最も好ましくは少なくとも約15%である。先行する文で「約」という用語は、示された量に四捨五入される量を意味するものとする。それゆえ約5%は4.5%若しくはそれ以上を意味し、約10%は9.5%若しくはそれ以上を意味し、約15%は14.5%若しくはそれ以上を意味する。粉末および湿潤化流体は、湿潤化を促進、加速、または完了するために機械的に撹拌され得る。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する液体と組み合わされる湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末であり、液体中のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに十分である。別の実施形態において、本発明は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する液体と組み合わされている湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末であり、液体中のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに、ならびに粒子の機械的微粉化および分散を可能にするのに十分である。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する液体と組み合わされる湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末であり、液体中のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに、ならびにそれにより局所薬生成物またはその構成成分の製造プロセスの間に微粉化されているか否かにかかわらず、過酸化ベンゾイル粒子の集塊化および/またはクラスト形成を低減および制御するのに十分である。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、例えば過酸化ベンゾイルを活性成分として含有する局所医薬製剤の作製に使用するための微粉化過酸化ベンゾイルを調製する方法である。
【0036】
別の実施形態において、本発明は過酸化ベンゾイルの懸濁液である。本実施形態により、懸濁液は、過酸化ベンゾイルを1%w/wから30%w/wの間の、好ましくは10%若しくはそれ以下の、および最も好ましくは5%若しくはそれ以下の濃度で含有する単相組成物である。過酸化ベンゾイルは、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する懸濁化流体中に懸濁される。懸濁化流体は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールのみを含有し得る。代わりに懸濁化流体は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコール以外である1若しくはそれ以上の流体状賦形剤(vehicle fluid)を含有し得る。ポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコール以外である流体状賦形剤の例は水である。
【0037】
懸濁化流体はポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコールのみを含有することが好ましい。ポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコール以外の流体状賦形剤、例えば水が使用される場合、このような流体状賦形剤は医薬的に許容され、1若しくはそれ以上の使用されるポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールと混和性であるべきである。さらに懸濁化流体中の1若しくはそれ以上のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、ポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコール以外である流体状賦形剤の非存在下で、それと組み合わされる過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに十分である濃度であるべきである。
【0038】
懸濁液中の過酸化ベンゾイルは微粉化であり得るか、または非微粉化であり得る。過酸化ベンゾイルが非微粉化である場合、懸濁液は、懸濁液中の過酸化ベンゾイルが微粉化されるようになるプロセスによって処置され得る。好適な微粉化プロセスは、粉砕、細砕、破砕、切断、衝突、キャビテーション、および剪断を含む。湿式粉砕は、微粉化の好ましい方法である。
【0039】
非微粉化過酸化ベンゾイルは、本発明の方法によって湿潤化されて懸濁されるときに、集塊化またはクラスト形成する傾向が非常に低く、したがって過酸化ベンゾイル粒子が媒体ミルまたはGaulinミル(Delavan、ウィスコンシン州)の小型オリフィスに詰まるようになる問題はほどんどまたは全くない。本発明の方法によって湿潤化され、次に微粉化された過酸化ベンゾイル粒子は、安定な懸濁液のままであり、医薬製剤、例えばゲル、クリームまたはローションに包含される前にかなりの程度まで集塊化またはクラスト形成することはない。本発明によって得られた安定なミクロ懸濁液はそれゆえ、良好な医薬的均質性および皮膚、特に毛包脂腺器官への最適な非ボーラス送達を生じ、それゆえ効力を損うことなく刺激の可能性を最小限に抑える。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、例えば過酸化ベンゾイルを活性成分として含有する局所医薬製剤の作製に使用するための微粉化過酸化ベンゾイルを調製する方法である。本方法により、過酸化ベンゾイル粉末は上述のように湿潤化されて、懸濁され、次に過酸化ベンゾイル懸濁液は適切な微粉化処置を受けて、微粉化過酸化ベンゾイルを含有する懸濁液が得られる。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、本発明によって微粉化された微粉化過酸化ベンゾイルを含有する懸濁液である。本発明の過酸化ベンゾイルの微粉化プロセスおよび懸濁は、過酸化ベンゾイルを活性成分として含有する局所医薬生成物、特に半固体投薬形である局所生成物を調合するのに有用である。本発明の方法は、「使用前によく振ってください」というラベルを用いない最適な医薬的認容性のために、および最適な薬物送達のために、分散された微粉化過酸化ベンゾイルを安定な非集塊化および非クラスト形成状態に維持する。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの1若しくはそれ以上を含有する液体中に懸濁した過酸化ベンゾイルを含有する医薬製剤であり、1若しくはそれ以上のポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、製剤のすべての液体構成要素の非存在下で製剤中に存在する過酸化ベンゾイルの濃度において、過酸化ベンゾイルを含有する粉末を湿潤化するのに十分である。好ましくは、過酸化ベンゾイルは微粉化されている。好ましくは、過酸化ベンゾイルは本発明によって微粉化されている。所望ならば、医薬製剤は上記のように、1若しくはそれ以上の追加の流体状賦形剤、例えば水を含有する。医薬製剤は、医薬製剤で一般に使用される賦形剤、例えば保湿剤、皮膚軟化薬、pH安定剤、保存料、および酸化防止剤をさらに含有し得る。
【0043】
医薬製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度は、好ましくは1%w/wから10%w/wの間であり、好ましい濃度は2%から5%の間である。所望ならば、皮膚障害、例えば尋常性ざ瘡または酒さ性ざ瘡の処置に有用である追加の薬剤が製剤に含まれ得る。好ましくは、追加の抗ざ瘡化合物は溶媒または複数の溶媒に可溶性であり、そのため製剤に溶解される。
【0044】
1つのこのような好ましい抗ざ瘡化合物は抗生剤である。好ましい抗生剤は、マクロライド系の抗生剤、例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、チルミコシン、およびチロシン、ならびにリンコマイシン系の抗生剤、例えばクリンダマイシンおよびリンコマイシンを含む。本発明の製剤で過酸化ベンゾイルと組み合わせて使用される特に好ましい抗生剤は、クリンダマイシン、例えば塩酸クリンダマイシンまたはリン酸クリンダマイシンである。抗生剤の包含を伴ってまたは伴わずにのどちらかで、本発明の製剤に含有され得る追加の局所抗ざ瘡活性成分は、サリチル酸、アゼライン酸、硫黄、スルファセタミド、レゾルシノール、アルファ−ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、ナイアシンアミド、尿素、ならびにレチノイド、例えばトレチノイン、アダパレン、およびタザロテンを含む。
【0045】
追加の抗ざ瘡化合物は、本発明の製剤中に存在する場合、好ましくは、過酸化ベンゾイルの非存在下で実証可能な抗ざ瘡効果のある濃度で存在する。例えばクリンダマイシンが本発明の製剤中に存在する場合、クリンダマイシンの濃度は少なくとも0.5%、例えば1%であることが好ましい。製剤では0.5%未満若しくは1%を超える、例えば2.5%から5.0%若しくはそれ以上の濃度のクリンダマイシンが使用され得る。
【0046】
要求されていないが、製剤はゲル、好ましくは水性ゲルの形であることが好ましい。したがって本発明の製剤は、ゲル化剤または増粘剤を含有し得る。水分散性であるいずれのゲル化剤も上皮組織、例えば皮膚での使用に好適であり、実質的に均質な粘稠度の水性ゲルを形成し、本発明の組成物での使用に好適である。1つの好ましいゲル化剤はヒドロキシプロピルセルロース、例えば商標名KLUCEL(登録商標)(Hercules Incorporated、米国デラウウェア州Wilmington)で販売されているものである。別の好ましいゲル化剤はヒドロキシエチルセルロース、例えば商標名NATROSOL(登録商標)(Hercules Incorporated)で販売されているものである。他の好適なゲル化剤は、カルボマーとしても公知のカルボキシビニルポリマーであり、例えば商標名CARBOPOL(登録商標)934、940、941、980、および981(B.F.Goodrich Co.、米国オハイオ州Akron)、ETD 2020(商標)、およびULTREZ(登録商標)(Noveon,Inc.、米国オハイオ州クリーブランド)として販売されている。追加の好適なゲル化剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレングリコールアルギネート、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび天然ポリマー系ゴム、例えばキサンタン、およびカラゲナンである。組成物中のゲル化剤の濃度は、ゲル組成物の所望の濃度を含む、複数の因子に応じて変化し得る。
【0047】
所望ならば、本発明の製剤は、製剤で通例使用され、当業者に公知の追加の医薬的に許容される賦形剤をさらに含み得る。このような賦形剤は、例えば保湿剤、皮膚軟化薬、pH安定剤、保存料、および酸化防止剤をさらに含む。
【0048】
本発明の医薬製剤の半固体投薬形は、乳剤、例えばクリームまたはローションの形でもあり得る。好ましくは、このようなクリームまたはローションは、界面活性剤が皮膚に刺激となる、または皮膚バリア機能を損う傾向のために、界面活性剤を用いずに調合される。それゆえ本発明のクリームまたはローション製剤は、Dowの米国特許第7,368,122号明細書に開示されているような、このような有害な影響を示さない高分子量ポリマー系乳化剤を用いて、または低レベルの弱い乳化剤、例えばポロキサマーを用いて作製されることが好ましい。
【0049】
本発明は、以下の非限定的な実施例でさらに詳細に説明される。続いての実施例において、本発明は主にポリオール、特にプロピレングリコールを用いて、ポリオールエーテル、特にエトキシジグリコールを用いて、および低炭素有機アルコール、特にエチルアルコールを用いて説明される。しかし実施例は実例となるものであることと、本発明は他のポリオール、他のポリオールエーテル、および/または他の低炭素有機アルコールを用いて実施され得ることが理解される。
【実施例1】
【0050】
ポリオールを使用する過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化
過酸化ベンゾイルの湿潤性試験を以下のように行った。約5cmの直径を有し、精製水30ml(試料A)、5%のプロピレングリコールおよび95%の精製水から成る流体30ml(試料B)、または50%のプロピレングリコールおよび50%の精製水から成る流体30ml(試料C)のいずれかを含有するガラス製ビーカーに含有された3つの試験流体それぞれの表面に、水和過酸化ベンゾイル粉末1.5グラムを広げた。各ビーカーの底に12mm×8mm磁気撹拌棒を置いた。過酸化ベンゾイル粉末を表面に載せて、各流体を1200rpmで撹拌した。撹拌の5および10分後に、過酸化ベンゾイルの湿潤化度について試料を目視検査した。集塊化および/またはクラスト形成がほとんどまたは全くないことが目視で判定されると、良好な湿潤化が証明された。湿潤化がほとんどまたは全くないことが目視により証明され、試料Aの過酸化ベンゾイルの湿潤化は不十分であることが判定された。過酸化ベンゾイル粉末のかなりの部分の湿潤化が目視により証明され、試料Bの過酸化ベンゾイルの湿潤化は良好であることが判定された。過酸化ベンゾイル粉末の大部分の湿潤化が目視により証明され、試料Cの過酸化ベンゾイルの湿潤化は非常に良好であることが判定された。
【実施例2】
【0051】
6.26%の過酸化ベンゾイル局所ゲルの製造に使用される安定微粉化懸濁液の調製を促進するための、プロピレングリコールおよび水流体による過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化
34.0%w/wのプロピレングリコールおよび66%w/wの水を含有する分散流体を使用して、33.2%w/wの水和過酸化ベンゾイルを含有する懸濁液を調製した。200ガロンのステンレス鋼タンク内で精製水175kgおよびプロピレングリコール90kgを合せた。合せたものをプロペラミキサによって撹拌して混合物を生成した。混合中に、水和過酸化ベンゾイル132kg(74.5%の過酸化ベンゾイル)粉末を添加した。混合を1024rpmで約20分間継続して、過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化および分散させて、過酸化ベンゾイル懸濁液を得た。
【0052】
目視検査時に、懸濁液は滑らかで塊がないように見え、過酸化ベンゾイルは均質に湿潤化された。湿式粉砕法を使用する微粉化のために、懸濁液をGaulinミルに通過させた。粉砕手順は効率的および問題なく進み(すなわち粉砕機の詰まりはなかった)、安定なミクロ懸濁液が産生された。この懸濁液は最終局所投薬形である6.26%の過酸化ベンゾイルゲルに包含され、活性過酸化ベンゾイル薬物物質は界面活性剤を使用せずに安定なミクロ懸濁液として存在していた。過酸化ベンゾイル懸濁液の最終局所投薬形への包含時にプロピレングリコール含有率を希釈して、6.26%の過酸化ベンゾイルゲルを作製した。
【実施例3】
【0053】
3.13%の過酸化ベンゾイル局所ゲルの製造に使用される安定微粉化懸濁液の調製を促進するための、プロピレングリコールおよび水を含む流体による過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化
9.4%w/wのプロピレングリコールおよび90.6%w/wの水を含有する分散流体を使用して、24.8%w/wの水和過酸化ベンゾイルを含有する懸濁液を調製した。ステンレス鋼タンク内で精製水36kgおよびプロピレングリコール3.75kgを合せた。合せたものをプロペラミキサによって撹拌して混合物を生成した。混合中に、水和過酸化ベンゾイル13.12kg(74.5%の過酸化ベンゾイル)を添加した。混合を1450rpmで約10分間継続して、過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化および分散させて、過酸化ベンゾイル懸濁液を得た。
【0054】
目視検査時に、懸濁液は滑らかで塊がないように見え、過酸化ベンゾイルは均質に湿潤化された。湿式粉砕法を使用する微粉化のために、懸濁液をGaulinミルに移した。粉砕手順は効率的および問題なく進み(すなわち粉砕機の詰まりはなかった)、安定なミクロ懸濁液が産生された。この懸濁液は、短期間取置かれた後に、最終局所投薬形である3.13%の過酸化ベンゾイルゲルに包含され、活性過酸化ベンゾイル薬物物質は界面活性剤を使用せずに安定なミクロ懸濁液として存在していた。
【実施例4】
【0055】
過酸化ベンゾイルおよびクリンダマイシンを含有するゲル組成物の製造に使用される安定微粉化懸濁液の調製を促進するための、プロピレングリコールおよび水を含む流体による過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化
47.6%w/wのプロピレングリコールおよび52.4%w/wの水を含有する分散流体を使用して、24.7%の過酸化ベンゾイル(水和)を含有する懸濁液を調製した。ステンレス鋼タンク内で精製水27.5kgおよびプロピレングリコール25kgを合せた。合せたものをプロペラミキサによって撹拌して混合物を生成した。混合中に、水和過酸化ベンゾイル17.19kg(74.5%の過酸化ベンゾイル)を添加した。混合を858rpmで約1時間継続して、過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化および分散させて、過酸化ベンゾイル懸濁液を得た。
【0056】
懸濁液は目視検査時に滑らかで塊がないように見え、過酸化ベンゾイルは均質に湿潤化された。湿式粉砕法を使用する微粉化のために、この懸濁液をGaulinミルに通過させた。粉砕手順は効率的および問題なく進み(すなわち粉砕機の詰まりはなかった)、安定なミクロ懸濁液が産生された。この懸濁液はゲル化剤と混合され、短期間取置かれた後に、クリンダマイシン溶液と合されて、最終局所投薬形である2.5%の過酸化ベンゾイルおよび1%のクリンダマイシンのゲルが形成され、活性過酸化ベンゾイル薬物物質は界面活性剤を使用せずに安定なミクロ懸濁液として存在していた。過酸化ベンゾイル懸濁液をクリンダマイシン溶液と合せるときにプロピレングリコール含有率を希釈して、最終医薬製剤を作製した。
【実施例5】
【0057】
低炭素有機アルコールを使用する過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化
過酸化ベンゾイル粉末1.5グラムならびに7.5%のエタノールおよび92.5%の水で構成される流体30mlを使用して、実施例1の湿潤化試験を反復した。流体を過酸化ベンゾイル粉末と共に実施例1に記載するように撹拌した。過酸化ベンゾイル粉末の大部分、約90%の湿潤化が目視により証明され、流体中の過酸化ベンゾイルの湿潤化は非常に良好であることが判定された。
【実施例6】
【0058】
ポリオールエーテルを使用する過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化
過酸化ベンゾイル粉末1.5グラムならびに20%のポリエチレングリコール(PEG200)および80%の水で構成される流体30mlを使用して、実施例1の湿潤化試験を反復した。流体を過酸化ベンゾイル粉末と共に実施例1に記載するように撹拌した。過酸化ベンゾイル粉末の大部分、約90%の湿潤化が目視により証明され、流体中の過酸化ベンゾイルの湿潤化は非常に良好であることが判定された。
【0059】
上の実施例は、疎水性過酸化ベンゾイル粉末がポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコールを含有する水によって容易に湿潤化されることを示している。過酸化ベンゾイル粉末の湿潤化は、ポリオール、ポリオールエーテル、または低炭素有機アルコールの水中濃度を上昇させて、機械的撹拌によってさらに促進される。所望ならば、本発明の方法により湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末は、湿式粉砕または微粉化過酸化ベンゾイルを含有する医薬製剤を製造するための他のプロセスによって、効果的および安全に微粉化され得る。
【0060】
上記の発明の各種の変更は、当業者に明らかとなるであろう。このような変更は以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化する方法であって、前記過酸化ベンゾイル粉末を、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールから成る群より選択される有機流体を含有する湿潤化流体と接触させる工程を有し、前記有機流体は、前記湿潤化流体が前記過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化させるのに十分な濃度で前記湿潤化流体中に存在するものである、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、粉末の前記過酸化ベンゾイルは微粉化されていないものである、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記粉末は水和過酸化ベンゾイル、USP(Hydrous Benzoyl Peroxide、USP)である、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記湿潤化流体は前記有機流体に加えて溶媒を含有するものである、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記溶媒和は前記有機流体と混和性のものである、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記溶媒は水である、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記有機流体はポリオールである、方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記ポリオールはプロピレングルコールまたはヘキシレングリコールである、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記有機流体はポリオールエーテルである、方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記ポリオールエーテルはエトキシジグリコールである、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記有機流体は低炭素有機アルコールである、方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、前記粉末と接触した前記湿潤化流体を機械的に撹拌する工程をさらに有するものである、方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法において、前記湿潤化流体は界面活性剤を含まないものである、方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、前記湿潤化流体中の前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、約5%w/w若しくはそれ以上のものである、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記濃度は約10%若しくはそれ以上のものである、方法。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、前記濃度は約15%若しくはそれ以上のものである、方法。
【請求項17】
湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末であって、前記過酸化ベンゾイル粉末は、ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールのうち1若しくはそれ以上を含有する液体と組み合わされ、前記液体中の前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、前記過酸化ベンゾイル粉末を湿潤化するのに十分なものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項18】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記過酸化ベンゾイル粉末は微粉化されていないものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項19】
請求項18記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記粉末は水和過酸化ベンゾイル、USPである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項20】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記液体は、前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールに加えて溶媒を含有するものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項21】
請求項20記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記溶媒は、前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールと混和性のものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項22】
請求項21記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記溶媒は水である、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項23】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記液体はポリオールを含有するものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項24】
請求項23記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記ポリオールはプロピレングルコールまたはヘキシレングリコールである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項25】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記液体はポリオールエーテルを含有するものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項26】
請求項25記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記ポリオールエーテルはエトキシジグリコールである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項27】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記液体は低炭素有機アルコールを含有するものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項28】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、界面活性剤を含まないものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項29】
請求項17記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記液体中の前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、約5%w/w若しくはそれ以上のものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項30】
請求項29記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記濃度は約10%若しくはそれ以上のものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項31】
請求項29記載の湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末において、前記濃度は約15%若しくはそれ以上のものである、湿潤化された過酸化ベンゾイル粉末。
【請求項32】
過酸化ベンゾイルの懸濁液を作製する方法であって、過酸化ベンゾイルを含有する粉末を、ポリオール、ポリオールエーテル、および低炭素有機アルコールから成る群より選択される有機流体のうち1若しくはそれ以上を含む懸濁化流体に懸濁させる工程を有し、前記懸濁化流体中の前記ポリオール、ポリオールエーテル、および低炭素有機アルコールの濃度は、前記懸濁化流体に含まれ得るその他の流体状賦形剤の非存在下であっても前記過酸化ベンゾイル粉末を完全かつ均質に湿潤化するのに十分なものである、方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、粉末の前記過酸化ベンゾイルは微粉化されていないものである、方法。
【請求項34】
請求項33記載の方法において、前記粉末は水和過酸化ベンゾイル、USPである、方法。
【請求項35】
請求項32記載の方法において、前記懸濁化流体は前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールに加えて溶媒を含有するものである、方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法において、前記溶媒は前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールと混和性のものである、方法。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記溶媒は水である、方法。
【請求項38】
請求項32記載の方法において、前記有機流体はポリオールである、方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、前記ポリオールはプロピレングルコールまたはヘキシレングリコールである、方法。
【請求項40】
請求項32記載の方法において、前記有機流体はポリオールエーテルである、方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法において、前記ポリオールエーテルはエトキシジグリコールである、方法。
【請求項42】
請求項32記載の方法において、前記有機流体は低炭素有機アルコールである、方法。
【請求項43】
請求項43記載の方法において、前記懸濁させる工程は、前記懸濁化流体および前記粉末を機械的に撹拌する工程を有するものである、方法。
【請求項44】
請求項32記載の方法において、前記懸濁液は界面活性剤を使用せずに作製されるものである、方法。
【請求項45】
請求項32記載の方法において、前記懸濁化流体中の前記ポリオール、ポリオールエーテル、および/または低炭素有機アルコールの濃度は、約5%w/w若しくはそれ以上のものである、方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、前記濃度は約10%若しくはそれ以上のものである、方法。
【請求項47】
請求項45記載の方法において、前記濃度は約15%若しくはそれ以上のものである、方法。
【請求項48】
請求項33記載の方法において、この方法は、さらに、
前記懸濁液に微粉化処置を施す工程と、微粉化過酸化ベンゾイルを含有する懸濁液を得る工程と、を有するものである、方法。
【請求項49】
請求項48記載の方法によって得た微粉化過酸化ベンゾイルを有する懸濁液。
【請求項50】
請求項49記載の懸濁液において、1若しくはそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含むものである、懸濁液。
【請求項51】
請求項49記載の懸濁液において、前記懸濁液中の過酸化ベンゾイルの濃度は、1%w/wから10%w/wの間のものである、懸濁液。
【請求項52】
請求項51記載の懸濁液において、過酸化ベンゾイルの濃度は、2%から5%の間のものである、懸濁液。
【請求項53】
請求項51記載の懸濁液において、皮膚障害の治療に有用な追加的な医薬剤を更に含有するものである、懸濁液。
【請求項54】
請求項53記載の懸濁液において、前記皮膚障害は、尋常性ざ瘡または酒さ性ざ瘡である、懸濁液。
【請求項55】
請求項54記載の懸濁液において、前記医薬剤は抗生剤である、懸濁液。
【請求項56】
請求項55記載の懸濁液において、前記抗生剤はクリンダマイシンである、懸濁液。
【請求項57】
請求項51記載の懸濁液において、半固体の形である、懸濁液。
【請求項58】
請求項57記載の懸濁液において、前記半固体はクリーム、ローション、およびゲルから成る群より選択されるものである、懸濁液。
【請求項59】
微粉化過酸化ベンゾイルを作製する方法であって、過酸化ベンゾイルの懸濁液を得る工程であり、
前記過酸化ベンゾイルは、ポリオール、ポリオールエーテル、および低炭素有機アルコールから成る群より選択される1若しくはそれ以上の有機流体を含む懸濁化流体に懸濁され、前記懸濁化流体中の前記ポリオール、ポリオールエーテル、および低炭素有機アルコールの濃度は、前記懸濁化流体に含まれ得るその他の流体状賦形剤の非存在下において前記過酸化ベンゾイル粉末を完全かつ均質に湿潤化するのに十分なものである、過酸化ベンゾイルの懸濁液を得る工程と、
微粉化過酸化ベンゾイルを得るよう前記懸濁液に微粉化処置を施す工程と、を有するものである、方法。
【請求項60】
請求項59記載の方法において、前記懸濁化流体は界面活性剤を含まないものである、方法。
【請求項61】
請求項59記載の方法において、前記懸濁液中の過酸化ベンゾイルの濃度は、1%w/wから10%w/wの間のものである、方法。
【請求項62】
請求項59記載の方法において、過酸化ベンゾイルの濃度は、2%から5%の間のものである、方法。

【公表番号】特表2012−505886(P2012−505886A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532097(P2011−532097)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/005710
【国際公開番号】WO2010/047784
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(510061667)ドウ ファーマシューティカル サイエンシーズ、インク. (7)
【Fターム(参考)】