説明

道路分離帯

【課題】 車道と歩道の分離帯に両道を吹き抜ける通風構造を設け、分離帯にメンテナンスの容易な植物の鉢植えを多数設置することで、都市環境の改善を図る。
【解決手段】 道路に車道と歩道間の枠体を通風構造にするとともに、該枠体には蒸散作用を有する鉢植えの植物を多数設置した道路分離帯である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市部などの車道と歩道間にある道路分離帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市街地の車道と歩道との分離帯には銀杏、山桃、白樺等の樹木が立設されているが、これには植生に適した土壌改良、水分補給、幼木までの生育と、生育後に目的地までの移植の他、何よりも毎年夏の枝葉の剪定や秋の落葉の清掃など維持管理の費用と労力は膨大である。
上記問題点を解決しようとした発明として特開平4−203008があるが、この発明は分離帯に網体などの透孔パネルを用いたものの、この透孔は元来蔓性植物を絡ませるためのものであり、したがって維持管理は比較的容易であるものの、蔓などによって透孔が塞がれてしまい車道と歩道間に通風性が失われてしまい、これが夏の涼を防げてしまうだけでなく通風性がないために植設した早期段階で枯死して実用的でないという欠点がある。なお、特開2000−248518の発明には開孔(13,21)が防音パネル(12)やカバー材(2)に存在するが、この孔は全て孔のない防音壁(1)と一体になって使用されるものであり、つまり一体となって壁高欄(31)、防音壁(32)、歩者道分離用の低層型防音壁(41)、中央分離帯用の低層型防音壁(42)として使用されるものであって、全て通風性を有するものではない。もちろん、緑葉樹などを用いた炭酸同化作用による自動車等の排気ガス中の炭酸ガスの吸収と都市緑化の環境形成に質するものでもない。
【特許文献1】特開平4−203008
【特許文献2】特開2000−248518
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の不都合を解決せんとするものであり、その第1の目的は少子高齢化社会における歩道を通る人と車道を通る車との環境保全を護り、第2に人と車の分離帯の通風による空気の淀みを失くし、第3には何よりもその環境の美化と維持を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決したものであり、その要旨は車道と歩道をガードレールで仕切る分離帯であって、該分離帯には前記車道と歩道へ通じる通風構造を備えた枠体と、該枠体には蒸散作用を有する鉢植えの植物列を多数設置したことを特徴とする道路分離帯にある。
この発明によれば、車道と歩道間の分離帯に単に通風構造を備えた枠体を設置して相互に通風性を良好にしただけでなく、その枠体の台座に植物列を置くことで蒸散作用による水蒸気を発散させることにより見た目だけでなく実質的な涼を人に与えるよう発明したものである。
なお、本発明で云う鉢とは陶磁製の他に、プランターなどプラスチック製や木製の物など植物を植えるに適したものが含まれる。
【0005】
また、本発明の構成の一つである蒸散作用を有する植物を植えた鉢を、通風構造としての枠体の底部中に設置してその葉茎を立設することで、鉢植えの植物の枠体外への落下を防止や盗難防止を図るとともに、新たなものと交換可能にした。
そして、このことは、鉢の台座を枠体の下部又は上部に設置することで、通風構造の下からもしくは上から植物を並設することで可能にした。
【0006】
さらに、通風構造としての枠体としては、網状か格子などの通風帯のものが考えられ、これを所要間隔毎に地盤に立設した多数の支柱間の上部に配置することで、ガードレールの上下の空間部はもちろん、枠体の通風構造により、鉢植えの植物列へも通気させてその蒸散作用を促進させることができる。
さらにまた、枠体の下方にあるガードレールを隠すように摸造植物を配置して、単なるガードレールよりも美しく仕上げることもできる。
【0007】
そして、本発明の別の構成として、通風構造である枠体の下部と上部の台座に立設及び垂下する植物を鉢植えし、このうちの垂下する植物の方は通風構造としての枠体にヒンジにより枢着した棚台と共に持ち上げ、これを保持するために支持部材として棚台と枠体間に棒材で落下を止めるかチェーンなどで引っ張ることで、蔓などを這わせた棚台を枠体とクロスして配置して棚台下の日陰を人工的に設け、その下方にある歩道側のベンチなどの休憩を安らぎのあるものにした。
また、通風構造の枠体をアコーデオン式に左右に折り畳むことができるようにして、枠体内の鉢植えの植物をこれとは別の新たな鉢植え植物に交換可能にすることにより常に生きの良い植物を配置することもできる。
【0008】
なお、本発明では枠体にある鉢植えの植物を、ある期間毎に新たな鉢植え植物と変える必要があるが、その交換のため別途用意する新たな鉢植え植物と交換要員との物的・人的費用を賄うために、枠体、支柱、あるいは分離帯の歩道側又は車道側の一部に広告表示体を配置することによって収入に当てることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車道と歩道間の分離帯に通風構造を備えた枠体により、単に車道と歩道間に風を通すことができるだけでなく、枠体の台座に鉢植えの植物列を多数設置することで前記通風作用と相俟って植物の蒸散作用を促すことで、風が通過した側の涼を促すようにした。また、本発明ではガードレールとして車自体と歩道側の人間を守る本来の機能を併せ持つことはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
車道と歩道の分離帯を、風通しを良くし、かつその風を分離帯の枠体にある植物の蒸散作用により涼風を起こさせることで、美しく、しかも自然に優しい環境を整備した。
【実施例1】
【0011】
本発明の好ましい一実施例を添付の図1と図2により説明する。
図1は本発明を歩道側から見た部分正面図であり、図2は図1の鉢植え植物である箇所の縦断面図である。図において、車道1側より歩道2側はやや高くなっており、その高くなった方の境界部分に3m毎に上端にキャップ6を有する円柱状の支柱3を立設し、その下方にガードレール4を架設している。また、ガードレール4の上方の各支柱3間には台座5を有する縦断面が縦長長方形の枠体7を設置している。この枠体7は、台座5の歩道2側を12cmおきに25本の通風構造としての仕切棒8を有する。仕切棒8としての桟状の通風帯体には図8に示すように、仕切棒の上下部を接続する繋棒9があり、繋棒9の上下端にはそれぞれ下向きと上向きに開き、しかもその開放部端を少し内側に曲げた相対向する略コの字状のレール10内に摺動するローラ(図示せず)を設けて、前記各支柱3の中央部11で両側に開閉できるようにしている。さらに、枠体7の車道1側は縦と横が12cm角の通風構造としての網目12を上下の角筒枠13間に配置している。下の角筒枠13は前記台座5の一端に固定しており、上の角筒枠は連結棒15によりレール10と連結している。
【0012】
なお、枠体7下方のガードレール4の反対側の支柱3間には、上下に間隔を置いて並設した枠材17と前記支柱3間の中央部16及び支柱3の両側に沿って設けた区轄枠18によって区分された広い四角の開口部19にはプラスチックなどで作られた模造の葉付き樹木20が配置され、樹木20が存在しない箇所は車道1と歩道2の風通し透き間となっている。
【0013】
しかして、台座5上には植物としてのヴァルト(登録商標)21や黄楊又は寒椿など上方に育成する植物を植えた鉢22が載置されている。このヴァルト21は、大きく成長しても高さが30〜50cm程度で成長が止まるものであり、截断などのメンテナンスに便利である。
したがって、上記構成からなる本発明の道路分離帯は、その上方部分の枠体7において、植木としてのヴァルト21を介して仕切棒8と網目12とを通して、左右どちらからも通風が可能である。また、道路分離帯の下方部分でも、左右からの風はガードレール4の上方と下方で、しかも樹木20の存在しない箇所を通ることができる。
【実施例2】
【0014】
本発明の別の実施例を添付の図3と図4により説明する。
この実施例が前の実施例と違うところは、車道1’と歩道2’との境にあるガードレール4’が板状体のものから2本の丸筒状のものに代えて支柱3’に取り付けた点にある。
また、特に注目する点は枠体7’の上部にあるレール10’と角筒枠13’間に台座5’を設置し、その台座5’に鉢22’を載置して植物としての蔦23やポトス又はアイビー、ヘリックス、カナリエンシス等のヘデラ系の植物を植えてその茎と葉を仕切棒8側に垂らしたことにある。
このようにすることで、この実施例2は前記実施例1と同様な作用・効果を得ることができる。
【実施例3】
【0015】
本発明の更に他の実施例を添付の図5と図6により説明する。
この実施例が前記2つの実施例と違うところは、ガートレール3”の歩道2”側にベンチ24を設置したことにある。また、この実施例の特異な点は、植物としてのヴァルト21’と蔦23’をそれぞれ下方と上方の台座5”,5”’に載置し、そのうちの上方の台座5”’に載置した蔦23’の葉茎を通風構造としての仕切棒8’の上端部にあるレール10”に設けたヒンジ25を介した棚台26に沿って載せ、この棚台26を左上方に保持する状態にするために支え棒としての支持部材27を棚台26と仕切棒の中程に固定することにより、棚台26の下方にあるベンチ24を日陰にしたところにある。
その他に、本発明では、図9に示すように歩道2”’側のベンチ24の背もたれ28や、支柱3の上部の街灯29下の、車道か歩道のいずれか又は双方、または図示しないが枠体の車道か歩道のいずれか又は双方に広告板28,30を設置し、その収入を本発明の植木鉢の交換等のメンテナンス費用に当てることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、車道と歩道の境界にある分離帯に着目し、その周辺はもちろん、都市環境の美化と、空気中の炭酸ガスを少なくし、車と人との環境の改善を図ったものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明である道路分離帯の実施例1を示す歩道側から見た正面図
【図2】図1の側縦断面図
【図3】本発明の実施例2を示す歩道側から見た道路分離帯の正面図
【図4】図3の側縦断面図
【図5】本発明の実施例3を示す歩道側から見た道路分離帯の正面図
【図6】図5の側縦断面図
【図7】図1の鉢入れの植物を除いた側断面図
【図8】枠体の歩道側の仕切棒を横方向に両開きした状態の平面横断面図
【図9】道路分離帯とベンチに広告表示を施した歩道側からの正面図
【符号の説明】
【0018】
1,1’ 車道
2,2’,2” 歩道
4,4’ ガードレール
5,5’,5” 台座
7,7’ 枠体
8 仕切棒
12,12’ 網目
20 模造の樹木
21 植物(ヴァルト)
22 鉢
23 植物(蔦)
24 ベンチ
26 棚台
27 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道と歩道をガードレールで仕切る分離帯であって、該分離帯には前記車道と歩道へ通じる通風構造を備えた枠体と、該枠体には蒸散作用を有する鉢植えの植物列を多数設置したことを特徴とする道路分離帯。
【請求項2】
前記枠体の台座が前記通風構造の下部に有り、その台座には蒸散作用を有する上方に伸びる植物を植設し、その植物の葉を前記通風構造に沿って前記鉢から立設したものである請求項1に記載の道路分離帯。
【請求項3】
前記枠体の台座が前記通風構造の上部に有り、その台座には蒸散作用を有する下方にも垂下できる蔓性植物を植設し、その植物の葉を前記通風構造に沿って前記鉢から垂下したものである請求項1に記載の道路分離帯。
【請求項4】
前記通風構造の枠体が、前記ガードレールを支えるために所定間隔毎に立設した多数の支柱間に架設した網状や桟状の通風帯体である請求項1乃至3のいずれかに記載の道路分離帯。
【請求項5】
前記通風構造の枠体の下方に、ガードレールを隠す通風性の模造植物を配置した請求項1乃至4のいずれかに記載の道路分離帯。
【請求項6】
通風構造の下部と上部にある台座のそれぞれに蒸散作用を有する植物を立設及び垂下した構造であって、そのうち通風構造に垂下した植物を前記通風構造に枢着した棚台上に載置し、これを持ち上げて支持部材により保持してなる請求項2に記載の道路分離帯。
【請求項7】
前記通風構造の枠体を、その歩道側の上下に設置したレールと、該上下レールに沿って左右に折り畳む格子枠とから構成することで、枠体内部の植物を新たな植物と取り替え可能にした請求項2に記載の道路分離帯。
【請求項8】
前記枠体に、前記支柱、あるいは分離帯に備設したベンチのうちいずれか1以上に広告表示板を配置した請求項1乃至7のいずれかに記載の道路分離帯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate