説明

道路灯及びこれを備えた可視光通信システム

【課題】スイッチング部を用いて可視光通信を行うに際して、電力損失を抑制することの可能な道路灯、および、これを備えた可視光通信システムを提供する。
【解決手段】電源部12により駆動され可視光を照射する発光部10と、可視光通信を行うための通信情報を生成する符号化部14と、電源部12と発光部10の間に介在し符号化部14からの通信情報に従いオン/オフ制御されるスイッチング部13と、を備え、電源部12と発光部10の間にスイッチング部13と並列に設けられるバイパス部15と、スイッチング部13とバイパス部15を制御する通信制御部と、を備え、この通信制御部は、通信情報に従いスイッチング部をオン/オフ制御する場合は、バイパス部15を不動作とし、通信情報に従いスイッチング部をオン/オフ制御しない場合は、バイパス部15を動作させるように制御し、バイパス部15を介して発光部10に給電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源部と、電源部により駆動され可視光を照射する発光部と、前記可視光を用いて通信を行うための通信情報を生成する通信情報生成部と、電源部と発光部の間に介在し通信情報生成部からの通信情報に従いオン/オフ制御されるスイッチング部と、を備えた道路灯、及び、これを備えた可視光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光部としてLED(発光ダイオード)を備えた照明器具と、その発光部から照射される可視光に通信情報を重畳して変調させる可視光通信システムが知られている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
発光部(LED)から照射させる可視光に通信情報を重畳するために、発光部に直列に半導体スイッチング素子が設けられる。通信信号におけるHレベルとLレベルの切り替えタイミングに合わせて、上記半導体スイッチング素子のスイッチング動作を行うことで、可視光に通信情報を重畳させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206087号公報
【特許文献2】特開2008−34988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記半導体スイッチング素子(スイッチング部)を用いた制御は、次のような課題がある。可視光通信を行う時は、半導体スイッチング素子を介して発光部に給電されることになるが、可視光通信を行わないときも、半導体スイッチング素子を介して給電される。本来、通信を行わない場合は、半導体スイッチング素子を介する必要はないが、通信を行うためには使用せざるをえない。しかし、この半導体スイッチング素子は、抵抗値も大きく、これを介することで熱が発生し電力損失が生じる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、スイッチング部を用いて可視光通信を行うに際して、電力損失を抑制することの可能な道路灯、および、これを備えた可視光通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る道路灯は、電源部と、電源部により駆動され可視光を照射する発光部と、前記可視光を用いて通信を行うための通信情報を生成する通信情報生成部と、電源部と発光部の間に介在し通信情報生成部からの通信情報に従いオン/オフ制御されるスイッチング部と、を備えた道路灯であって、
電源部と発光部の間に前記スイッチング部と並列に設けられるバイパス部と、
前記スイッチング部とバイパス部を制御する通信制御部と、を備え、この通信制御部は、通信情報に従いスイッチング部をオン/オフ制御する場合は、バイパス部を不動作とし、通信情報に従いスイッチング部をオン/オフ制御しない場合は、バイパス部を動作させるように制御し、バイパス部を介して発光部に給電するように構成したことを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成による道路灯の作用・効果を説明する。この道路灯は、電源部により駆動される発光部を備え、通信情報を重畳した可視光で通信を行うことができる。電源部と発光部の間には、スイッチング部が介在しており、このスイッチング部をオン/オフ制御することで、可視光を変調し、可視光に通信情報を重畳させることができる。通信情報は、通信情報生成部により生成されるものであり、通信情報としては、例えば、道路灯を構成する発光部等の故障情報、劣化診断情報、また、道路情報、防災情報等がある。
【0009】
可視光通信を行う時は、スイッチング部を介して発光部と電源部が接続される。このスイッチング部と並列にバイパス部が設けられている。可視光通信を行わないときは、バイパス部を介して発光部と電源部が接続される。従って、抵抗値の大きなスイッチング部を介さないで発光部を駆動することができ、電力損失を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る前記バイパス部は、マグネットスイッチであることが好ましい。かかるスイッチを介して電力を供給することで、電力損失を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記通信を行う時に発光部に流す電流を、通信を行わない時に発光部に流す電流よりも増大させる電流制御部を設けたことが好ましい。
【0012】
スイッチング部をオン/オフ制御して発光部に給電すると、発光部から照射される可視光の照度が低下する。従って、道路灯の周囲にいる人から見ると、違和感のある照明になってしまう。そこで、可視光通信を行う時の照度低下を補償するために、通信を行う時に発光部に流す電流を、前記通信を行う時に発光部に流す電流を、通信を行わない時に発光部に流す電流よりも増大させるように制御する。これにより、通信を行っているときと、行っていないときとで、照度を均一化することができ、違和感のない照明を行うことができる。
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る可視光通信システムは、上記の本発明に係る道路灯と、移動車両と、を備え、この移動車両は、
前記発光部から照射される可視光を受信する受光部と、
受信された可視光に含まれる通信情報を解析する情報解析部と、
解析された通信情報を表示させる表示部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
かかる移動車両を走行させることで、道路灯からの通信情報を受信することができる。例えば、故障情報を受信するのであれば、移動車両を走行させながら行うことができ、効率よく情報収集をすることができる。
【0015】
本発明において、前記受光部を複数設け、ダイバーシチ方式で受信することが好ましい。移動車両で受信を行う場合、フェージングにより受信精度が低下する可能性がある。そこで、受光部を複数設けて、通信状態のよい信号を優先的に用いる等の処理を行うことで、通信精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】可視光通信システムの構成を示す概念図
【図2】可視光通信システムの概要を示す機能ブロック図
【図3】本発明の主要部の構成を示す模式図
【図4】可視光通信時の照度の大きさを説明する図
【図5】照度補償を行うときの機能ブロック図
【図6】外乱光を取り除く原理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る道路灯及び可視光通信システムの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、可視光通信システムの構成を示す概念図である。
【0018】
<可視光通信システムの構成>
道路に沿って多数の道路灯1(あるいは街路灯)が設置されており、柱状の本体1aに支持される発光部10から可視光が照射される。発光部10は、LED(発光ダイオード)により構成される。通常は、発光部10から照射される可視光の照度は、変化のない一定レベルである。可視光通信を行う時は、可視光を通信情報に基づいて変調し明滅させる。移動車両Aは、発光部10から照射される可視光を受光して、通信情報を解析して表示させる機能を備えている。
【0019】
移動車両Aを走行させながら道路灯1から通信情報を順次取得していくので、効率よく情報収集を行うことができる。移動車両Aは、道路灯1の位置でいちいち停車する必要はなく、道路灯1の近傍を単に通過するだけでよい。
【0020】
ここで、通信情報としては、種々の情報が例示される。例えば、道路灯1の保守情報を可視光通信で取得することができる。保守情報とは、発光部を構成するLEDの故障情報、劣化診断情報(LEDの照度低下情報等)等である。かかる保守情報は、定期的に取得する必要がある。
【0021】
また、その他の通信情報として、道路情報、防災情報等がある。道路情報としては、渋滞情報の提供(渋滞個所、渋滞距離)、この先渋滞中である旨の情報がある。また、防災情報としては、落石危険、地震発生等の情報がある。
【0022】
図2は、可視光通信システムの概要を示す機能ブロック図である。図3は、本発明の主要部の構成を示す模式図である。
【0023】
道路灯1の内部の構成をまず説明する。交流電源11と、この交流電源11から所定の直流電圧に変換する電源部12が設けられている。電源部12には、電源回路と電子回路が設けられており、道路灯1の各部の故障情報や劣化診断情報を常時モニターしている。例えば、発光部10のLEDの照度をセンサーによりモニターしており、LEDが劣化しているか否か、LEDを交換すべきか否か、等の判定を可能にしている。
【0024】
スイッチング部13は、半導体スイッチング素子により構成され、図3はMOS−FETを図示しているが、バイポーラトランジスタ等の他の半導体スイッチング素子を用いてもよい。電源部12により直流の定電流が創成されて、発光部10のLEDに供給されるが、スイッチング部13を介して供給される。
【0025】
半導体スイッチング素子のゲート13aにオン/オフ信号を供給することで、スイッチング部13をオン/オフさせることができる。オンのときは、スイッチング部13が導通し、発光部10を点灯させることができ、オフのときは、スイッチング部13が不導通となり、発光部10が消灯する。このように、通信情報に応じてゲート13aにオン/オフ信号を供給し、発光部10を明滅させることができる。これにより、可視光に通信情報を重畳させることができる。
【0026】
符号化部14(通信情報生成部及び通信制御部に相当)は、通信情報を符号化(オン/オフ信号)する機能を有する。前述の保守情報、道路情報、防災情報等を符号化し、スイッチング部13と、後述のバイパス部15を制御する。
【0027】
バイパス部15は、図3に示すように、マグネットスイッチにより構成される。符号化部14からのオン信号によりスイッチが入り、バイパス部15が導通する。オフ信号によりバイパス部15が遮断される。マグネットスイッチは、良導体の金属により構成され、抵抗値を小さく抑えることができる。
【0028】
符号化部14からスイッチング部13とバイパス部15の制御は、次のように行われる。すなわち、可視光通信を行う時は、スイッチング部13をオン/オフ制御すると同時に、バイパス部15はオフにする。可視光通信を行わない時は、スイッチング部13をオフにし、バイパス部15をオンにする。可視光通信を行わないときもスイッチング部13を介して給電すると、抵抗損失が大きく、発熱という問題もある。ただし、スイッチング部13は、マグネットスイッチに比べて、オン/オフの動作速度を速くできるという利点がある。そこで、スイッチング部13と、バイパス部15のそれぞれの特性を生かすことで、効率のよい可視光通信を行うことができる。
【0029】
なお、多数の道路灯1を管理する管理用コンピュータ2が設けられており、道路情報や防災情報は、管理用コンピュータ2から各道路灯1へと送信される。また、可視光通信を行うタイミングは、管理用コンピュータ2から制御することができる。道路情報や防災情報は、必要な時にタイミングよく送信する必要があるからである。また、道路灯1ごとに異なる情報を送信するように制御することができる。保守情報については、管理用コンピュータ2からタイミングを制御してもよいし、予め、保守情報を送信する時間帯を設定しておき、きめられた時間帯に送信するようにしてもよい。
【0030】
次に、移動車両Aの機能を図2により説明する。受光部30は受光素子により構成され、発光部10からの可視光を受信する。復号化部31(情報解析部に相当)は、受信した信号を復号化し、通信情報のみを取り出す。表示部32は、得られた通信情報を表示させる。表示部32は、液晶パネル等の表示パネルを用いることができる。
【0031】
通信情報が保守情報であれば、道路灯1ごとにその保守情報を記憶部33に記憶させる。道路情報や防災情報であれば、記憶部33に記憶させる必要はない。
【0032】
<可視光通信時の照度補償>
次に、可視光通信を行う時の可視光の照度補償について説明する。図4のグラフは、可視光の照度の大きさを説明する図である。
【0033】
可視光通信を行っていないときの基準照度をH1とすると、可視光通信を行っているときの照度はH2に下がる。可視光通信を行う時は、発光部10をオン/オフするため、可視光を照射していない時間帯(人間の目には感じることはできない消灯時間)が存在するためである。従って、可視光通信を行うと、違和感のある照明となってしまう。この照度が低下する度合いは、オン/オフ信号の比率(デューティ比)により変わる。
【0034】
そこで、図4(b)に示すように、可視光通信を行う時の可視光の強さはH3に持ち上げるようにして、可視光通信を行わないときの照度(基準照度)を下回らないようにする。これにより、可視光通信の有無にかかわらず、均一な照度の照明を行うことができる。
【0035】
図5は、照度補償を行うときの機能ブロック図を示す。符号化部14に、照度補正信号生成部14aを設けている。これは符号化部14により生成される符号化された通信情報に基づいて、照度補正信号を生成する。通信情報のデューティ比から、オフ時間が多いほど、より可視光の強度を持ちあげるような照度補正信号を生成する。なお、デューティ比は、通信を行うトータルの時間と、トータルの通信時間に含まれるオフ時間に基づいて、求めることができる。
【0036】
電源部12には、電流制御部12aが設けられており、符号化部14から送信される照度補正信号に基づいて、発光部10に供給する電流の大きさを設定する。
【0037】
<外乱光対策>
次に、可視光通信を行う時の外乱光対策について説明する。可視光通信を行う時に、道路灯1の付近には外乱となる光が存在する。例えば、ネオンサインからの照射光が移動車両Aの受光部30により受光され、ノイズ成分となり、正確な通信情報を取り出せなくなる可能性がある。
【0038】
図6は、外乱光を取り除く原理を説明する図である。図6の横軸は波長を示し、縦軸は光の強さを示す。図6(a)において、L1は、道路灯1から照射される可視光の強度分布を示す。発光部10は白色光を照射するものであるが、発光部10を構成するLEDは、青色に発光するLEDと、青色の光があたると黄色を発光する蛍光体を使用した白色LEDを用いる。従って、青色の波長領域にピークを有する。L2は、外乱光の強度分布を示している。青色の波長成分はほとんどない。L3は、L1とL2を合成した光の強度分布を示している。
【0039】
そこで、図2に示す移動車両Aの受光部30の手前に波長選択フィルタ(不図示)を設ける。この波長選択フィルタは、図6(a)のWで示す帯域の波長の光のみを通過させるフィルタである。従って、受光部30で受信される可視光は、図6(b)のように、青色の帯域のみとなり、外乱光を除去した信号を受信することができる。
【0040】
なお、発光部10の白色LEDは、上記に限定されるものではなく、例えば、赤色LED、緑色LED、青色LEDの3つのLEDを用いて白色LEDを構成してもよい。
【0041】
また、受光部30を複数設け、ダイバーシチ方式で受信することが好ましい。移動車両Aで受信を行う場合、フェージングにより受信精度が低下する可能性がある。そこで、受光部30を複数設けて、通信状態のよい信号を優先的に用いる等の処理を行うことで、通信精度を向上させることができる。
【0042】
通信情報を受信する移動車両Aは、保守情報を取得する場合は、保守点検を行う管理会社の所有する車が移動車両として機能する。道路情報や防災情報の場合は、一般車両、タクシー、バス等が移動車両として機能する。この場合、図2に示す、受光部30、復号化部31、表示部32を搭載することになる。
【0043】
<別実施形態>
図2や図5に示す各機能は、道路灯の柱状の本体1aの内部に設けてもよいし、外付けで外部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 道路灯
11 交流電源
12 電源部
12a 電流制御部
13 スイッチング部
13a ゲート
14 符号化部(通信情報生成部)
14a 照度補正信号生成部
15 バイパス部
30 受光部
31 復号化部
32 表示部
33 記憶部
A 移動車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、電源部により駆動され可視光を照射する発光部と、前記可視光を用いて通信を行うための通信情報を生成する通信情報生成部と、電源部と発光部の間に介在し通信情報生成部からの通信情報に従いオン/オフ制御されるスイッチング部と、を備えた道路灯であって、
電源部と発光部の間に前記スイッチング部と並列に設けられるバイパス部と、
前記スイッチング部とバイパス部を制御する通信制御部と、を備え、この通信制御部は、通信情報に従いスイッチング部をオン/オフ制御する場合は、バイパス部を不動作とし、通信情報に従いスイッチング部をオン/オフ制御しない場合は、バイパス部を動作させるように制御し、バイパス部を介して発光部に給電するように構成したことを特徴とする道路灯。
【請求項2】
前記バイパス部は、マグネットスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の道路灯。
【請求項3】
前記通信を行う時に発光部に流す電流を、通信を行わない時に発光部に流す電流よりも増大させる電流制御部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の道路灯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の道路灯と、移動車両と、を備えた可視光通信システムであって、
前記移動車両は、
前記発光部から照射される可視光を受信する受光部と、
受信された可視光に含まれる通信情報を解析する情報解析部と、
解析された通信情報を表示させる表示部と、を備えていることを特徴とする可視光通信システム。
【請求項5】
前記受光部を複数設け、ダイバーシチ方式で受信することを特徴とする請求項4に記載の可視光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228907(P2011−228907A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96276(P2010−96276)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(593042007)株式会社因幡電機製作所 (25)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】