説明

道路

【課題】 路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することができる道路を提供する。
【解決手段】 道路1では、所定の区間4における路面上の略全体に長円形状のパターン7が複数形成されているため、単色(例えば、アスファルトの色)の路面からなる従来一般的な道路に比べ、所定の区間4における路面形状を運転者が十分に認識することができる。従って、道路1によれば、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に関し、特に道路の路面デザインに関する。
【背景技術】
【0002】
下り勾配や上り勾配、或いはカーブ等、路面形状が変化する領域が多数存在するような道路を走行するに際しては、路面形状の変化に対する運転者の認識が薄れるといわれており、安全性向上の観点からも、そのような運転者の認識力の低下を抑制することが望まれている。かかる要請に応えるべく、従来においては、路面形状が変化する領域に、運転者に対して注意を喚起する標識等が設けられるのが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−207267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、路面形状が変化する領域が多数存在するような道路にあっては、運転者に対して注意を喚起する標識等の煩雑化を招き、運転者の注意力が散漫になる結果、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制し切れないおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することができる道路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る道路は、所定の区間における路面上の略全体にドット状のパターンが複数形成されていることを特徴とする。
【0006】
この道路では、所定の区間における路面上の略全体にドット状のパターンが複数形成されているため、単色(例えば、アスファルトの色)の路面からなる従来一般的な道路に比べ、所定の区間における路面形状を運転者が十分に認識することができる。従って、この道路によれば、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することが可能となる。
【0007】
本発明に係る道路においては、所定の区間は、下り勾配領域を含み、下り勾配領域におけるパターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど狭くなっていることが好ましい。このような構成によれば、運転者にとって下り勾配が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させ、自然と注意を促すことができる。更に、運転者に対してパターンの流れが速くなっていると感じさせ、自然と走行速度を下げさせることができる。これらにより、安全性の向上を図ることができる。
【0008】
本発明に係る道路においては、所定の区間は、上り勾配領域を含み、上り勾配領域におけるパターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど広くなっていることが好ましい。このような構成によれば、運転者にとって上り勾配が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させ、自然と注意を促すことができる。更に、運転者に対してパターンの流れが遅くなっていると感じさせ、自然と走行速度を上げさせることができる。これらにより、上り勾配領域での減速に伴う渋滞や追突等を防止することができる。
【0009】
本発明に係る道路においては、所定の区間は、下り勾配領域と、進行方向の前方側で下り勾配領域に連続する上り勾配領域と、を含み、下り勾配領域におけるパターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど狭くなっており、上り勾配領域におけるパターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど広くなっており、下り勾配領域から上り勾配領域に変化する底部の直後のライン間隔は、底部の直前のライン間隔よりも広くなっていることが好ましい。このような構成によれば、上述した下り勾配領域での効果及び上り勾配領域での効果に加え、下り勾配領域から上り勾配領域に変化する底部を運転者が十分に認識することができる。
【0010】
本発明に係る道路においては、所定の区間は、カーブ領域を含み、カーブ領域におけるパターンは、長尺状に形成され、その長手方向が進行方向の前方側でカーブの接線方向に対して内側に向くように配置されていることが好ましい。このような構成によれば、運転者にとってカーブの曲率が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させて、適切なハンドル操作を促し、安全性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明に係る道路においては、所定の区間のうち、注意を喚起すべき領域におけるパターンと、その他の領域におけるパターンとでは、形状、模様及び色の少なくとも1つが異なっていることが好ましい。例えば事故多発領域等、注意を喚起すべき領域におけるパターンを、形状、模様及び色の少なくとも1つの点でその他の領域におけるパターンと異ならせれば、所定の区間における路面形状を運転者が十分に認識することができるばかりか、運転者に対して自覚的な安全運転を促すことで、安全性の向上をも図ることができる。
【0012】
本発明に係る道路においては、所定の区間の前後の区間における路面上の略全体にドット状のパターンが複数形成されていることが好ましい。このような構成によれば、所定の区間の通過前及び通過後において、路面形状の変化に対する運転者の認識力の変化を緩衝し、運転者の走行快適性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
【0015】
図1及び2に示されるように、道路1は、下り勾配領域2と、進行方向Aの前方側で下り勾配領域2に連続する上り勾配領域3と、を含む所定の区間4を備えている。所定の区間4及びその前後の区間5,6におけるアスファルト製の路面上の略全体には、運転者の視線の誘導を促進し得る白色塗装によって、進行方向Aを長手方向とする長円形状のパターン7が複数形成されている。ここでは、パターン7は、進行方向Aを縦方向として行列状に配置されている。
【0016】
下り勾配領域2におけるパターン7は、進行方向Aと略直交する方向に延在する複数のラインL上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向Aの前方ほど狭くなっている。一方、上り勾配領域3におけるパターン7は、進行方向Aと略直交する方向に延在する複数のラインL上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向Aの前方ほど広くなっている。なお、下り勾配領域2から上り勾配領域3に変化する底部8の直後(上り勾配領域3側)のライン間隔は、底部8の直前(下り勾配領域2側)のライン間隔よりも広くなっている。
【0017】
以上のように構成された道路1では、所定の区間4における路面上の略全体に長円形状のパターン7が複数形成されているため、単色(例えば、アスファルトの色)の路面からなる従来一般的な道路に比べ、所定の区間4における路面形状を運転者が十分に認識することができる。従って、道路1によれば、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することが可能となる。
【0018】
しかも、パターン7が所定の区間4において連続的に形成されているため、運転者に対して注意を喚起する標識等で起こり得る運転者の見落としという問題を防止することができる。
【0019】
また、下り勾配領域2においては、進行方向Aと略直交する方向に延在し且つパターン7が複数配置される複数のラインLのライン間隔が進行方向Aの前方ほど狭くなっている。これにより、運転者にとって下り勾配が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させ、自然と注意を促すことができる。更に、運転者に対してパターン7の流れが速くなっていると感じさせ、自然と走行速度を下げさせることができる。これらにより、安全性の向上を図ることができる。
【0020】
また、上り勾配領域3においては、進行方向Aと略直交する方向に延在し且つパターン7が複数配置される複数のラインLのライン間隔が進行方向Aの前方ほど広くなっている。これにより、運転者にとって上り勾配が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させ、自然と注意を促すことができる。更に、運転者に対してパターン7の流れが遅くなっていると感じさせ、自然と走行速度を上げさせることができる。これらにより、上り勾配領域での減速に伴う渋滞や追突等を防止することができる。
【0021】
また、下り勾配領域2から上り勾配領域3に変化する底部8の直後のライン間隔が底部8の直前のライン間隔よりも広くなっているため、下り勾配領域2から上り勾配領域3に変化する底部8を運転者が十分に認識することができる。
【0022】
更に、所定の区間4の前後の区間5,6における路面上の略全体に長円形状のパターン7が複数形成されているため、所定の区間4の通過前及び通過後において、路面形状の変化に対する運転者の認識力の変化を緩衝し、運転者の走行快適性の向上を図ることができる。
[第2の実施形態]
【0023】
図3に示されるように、道路1は、カーブ領域9を含む所定の区間4を備えている。所定の区間4及びその前後の区間5,6におけるアスファルト製の路面上の略全体には、運転者の視線の誘導を促進し得る白色塗装によって、長円形状のパターン7が複数形成されている。ここでは、パターン7は、進行方向Aを縦方向として行列状に配置されている。
【0024】
カーブ領域9におけるパターン7は、図4に示されるように、その長手方向Bが進行方向Aの前方側でカーブの接線方向Cに対して内側に向くように配置されている。なお、区間5,6におけるパターン7は、その長手方向が進行方向Aと一致するように配置されている。
【0025】
以上のように構成された道路1では、所定の区間4における路面上の略全体に長円形状のパターン7が複数形成されているため、単色(例えば、アスファルトの色)の路面からなる従来一般的な道路に比べ、所定の区間4における路面形状を運転者が十分に認識することができる。従って、道路1によれば、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することが可能となる。
【0026】
また、カーブ領域9におけるパターン7は、その長手方向が進行方向Aの前方側でカーブの接線方向に対して内側に向くように配置されている。これにより、運転者にとってカーブの曲率が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させて、適切なハンドル操作を促し、安全性の向上を図ることができる。
【0027】
更に、所定の区間4の前後の区間5,6における路面上の略全体に長円形状のパターン7が複数形成されているため、所定の区間4の通過前及び通過後において、路面形状の変化に対する運転者の認識力の変化を緩衝し、運転者の走行快適性の向上を図ることができる。
【0028】
本発明は、上述した第1及び第2の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、図5に示されるように、所定の区間4のうち、注意を喚起すべき領域11におけるパターン7と、その他の領域12におけるパターン7とで、形状、模様及び色の少なくとも1つを異ならせれば、所定の区間4における路面形状を運転者が十分に認識することができるばかりか、運転者に対して自覚的な安全運転を促すことで、安全性の向上をも図ることができる。ここでは、注意を喚起すべき領域11におけるパターン7が長円形状であり、その他の領域12におけるパターン7が長円環形状であるが、例えば、注意を喚起すべき領域11におけるパターン7と、その他の領域12におけるパターン7とで、形状を異ならせる一態様として、単に大きさのみを異ならせてもよい。
【0030】
また、図6に示されるように、所定の区間4において、路面上だけでなく側壁面上にもパターン7を形成すれば、渋滞時等におけるパターン7の視認性を向上させることができる。
【0031】
また、パターン7の形状は、長円形状に限定されない。例えば円形状等、パターン7の形状がドット状であれば、車線を示すラインとの混同を防止しつつ、路面形状の変化に対する運転者の認識力の低下を抑制することができる。更に、例えば楕円形状等、パターン7の形状が長尺状であり、その長手方向が進行方向Aの前方側でカーブの接線方向に対して内側に向くようにパターン7が配置されていれば、運転者にとってカーブの曲率が強調された状態で認識されるため、運転者に対して路面形状の変化を十分に認識させて、適切なハンドル操作を促し、安全性の向上を図ることができる。なお、パターン7の色は、白色に限定されず、コントラストがはっきりする明色であればよい。
【0032】
また、パターン7の配置は、行列状に限定されず、例えば進行方向Aにおいて千鳥状であってもよい。
【0033】
また、所定の区間4は、下り勾配領域2のみを含むものであってもよいし、上り勾配領域3のみを含むものであってもよい。更に、所定の区間4は、下り勾配領域2及び上り勾配領域3の少なくとも1つと、カーブ領域9と、を含むものであってもよいし、下り勾配領域2又は上り勾配領域3であって且つカーブ領域9である領域を含むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る道路の第1の実施形態の平面図である。
【図2】本発明に係る道路の第1の実施形態の平面図である。
【図3】本発明に係る道路の第2の実施形態の平面図である。
【図4】図3に示されたパターンの配置の説明図である。
【図5】本発明に係る道路の他の実施形態の平面図である。
【図6】本発明に係る道路の他の実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…道路、2…下り勾配領域、3…上り勾配領域、4…所定の区間、5…前の区間、6…後の区間、7…パターン、8…底部、9…カーブ領域、11…注意を喚起すべき領域、12…その他の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の区間における路面上の略全体にドット状のパターンが複数形成されていることを特徴とする道路。
【請求項2】
前記所定の区間は、下り勾配領域を含み、
前記下り勾配領域における前記パターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど狭くなっていることを特徴とする請求項1記載の道路。
【請求項3】
前記所定の区間は、上り勾配領域を含み、
前記上り勾配領域における前記パターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど広くなっていることを特徴とする請求項1記載の道路。
【請求項4】
前記所定の区間は、下り勾配領域と、進行方向の前方側で前記下り勾配領域に連続する上り勾配領域と、を含み、
前記下り勾配領域における前記パターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど狭くなっており、
前記上り勾配領域における前記パターンは、進行方向と略直交する方向に延在する複数のライン上のそれぞれに複数配置され、そのライン間隔は、進行方向の前方ほど広くなっており、
前記下り勾配領域から前記上り勾配領域に変化する底部の直後のライン間隔は、前記底部の直前のライン間隔よりも広くなっていることを特徴とする請求項1記載の道路。
【請求項5】
前記所定の区間は、カーブ領域を含み、
前記カーブ領域における前記パターンは、長尺状に形成され、その長手方向が進行方向の前方側でカーブの接線方向に対して内側に向くように配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の道路。
【請求項6】
前記所定の区間のうち、注意を喚起すべき領域における前記パターンと、その他の領域における前記パターンとでは、形状、模様及び色の少なくとも1つが異なっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の道路。
【請求項7】
前記所定の区間の前後の区間における路面上の略全体にドット状のパターンが複数形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の道路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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