説明

遠心分離機およびそのロータおよび液体浄化装置

【課題】 ロータのコスト低減を達成できる単純構造の遠心分離機のためのロータを提供すること、さらに、そのようなロータを有した遠心分離機を提供する。
【解決手段】 潤滑油から固体汚染物質を分離するために自動車エンジンで使用されている遠心分離機のロータ40は、潤滑油の圧力によって運転され、その潤滑油の一部はロータのノズル88から放出される。ロータは、「開いた」タイプ(運転中、半径方向の厚さが出口通行72によって決定される環状の層として部分的に満たされる)の容器42を含む。ロータは、3部品から形成され、最初の2つのキャップ62と環状のカップ状の構成部品60とは、それぞれプラスチック材から成型され、容器40を形成するために結合される。構成部品60は、スピンドルを囲んで用いられ、スピンドル経由の加圧液体を連通路70によってカップ内に連通する入口領域を形成する内側管状壁50を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より濃厚な汚染物質の遠心分離機による汚染液の洗浄、特に、内燃機関で使用される潤滑油のような液体からの固体物の分離に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潤滑油洗浄のための遠心分離機の使用は、当該技術分野においては周知であるが、微粒子のような微細煤を排出し、そして潤滑油洗浄装置の整備や潤滑油の交換をせずに相当期間、運転しなければならないディーゼル燃料を使用する多くの車両にとって特に重要となってきている。
【0003】
固体の汚染物質の分離は、回転する分離・封じ込め容器に液を送ることによるものであり、分離の効率は、回転速度及び液体の容器通過時に要した時間の両方と関係する。
そのような汚染物質に対しては、従来必要とされた速度よりもより高速で遠心分離機・封じ込め容器を回転させることが必要であるが、更に複雑な設計になってしまう。従来の構造は、容器に満され、そして反動ジェットノズルから放出されて反動推力を生じるような圧力で通り抜ける液体に依存したが、十分に液体によって満たされた容器を回転することは不可能であると考えられ、高速回転のために必要とされる流れと容器内の半径方向の圧力勾配のために必要とされる流は、効果的な分離のために容器内に適当な滞留時間を得ることと対立することである。よりよい回転を達成するために、ロータを回転する液体と、浄化のためにそのロータを通過する液体とを分離することが提案されていた。特許文献1(GB 2297499)では、ロータ内で洗浄される液体と高圧源からの液体とを分離している。特許文献2(US 6454694)では、高圧力でロータに供給される汚染液を分割することと、分離・封じ込め室を通過することに補足してその分割した一部を直接反動ジェットノズルに供給することを示している。他の装置は、特許文献3(EP 0980714 A2)のように、高速回転を達成するために液体ジェツトタービンではなくインパルスタービンを使用することが知られている。
【0004】
前記分割による運転では、液体洗浄ができる滞留時間をより長くとることができるが、そのような構成にすると、結果として複雑で高価なロータ構造になってしまう。更に、とりわけ出願人は、回転速度を増加させることにより効率を良くしようとする努力が、液体で満たされた容器を回転させなければならないにもかかわらず、妥協する形で実現されてきたと考えている。そのような液体で満たされた容器は、頻繁なエンジンのスタート・ストップに適さない相当な慣性を有するだけでなく、もし液体の処理量を少なくする内部構造にしなければ、効率的な分離と矛盾する内部圧力勾配の特性を有してしまう。
【0005】
このような液体で満たされて操作され、そして容器内の液体と周囲環境との間に圧力差があるようなロータタイプは、「閉じられた」ロータタイプと見なされる可能性がある。
【0006】
従来から、このような遠心分離機の装着コストのために、整備期間内の使用頻度が高く且つ燃焼によって生成される微粒子が潤滑油に入るディーゼルエンジンを使用するトラックのような商用車に適用が制限されていた。しかしながら、このようなエンジンが乗用車においてより普通に使用されるようになるに従って、明らかに使用頻度が少ない乗用車のエンジンにおける遠心分離機の恩恵は、整備期間の長期化の要求を満たすこと以上のものがある。しかし、より小型化され、値段競争力を有する車両は、従来のろ過に加えてこのような分離を採用することは全体コストにおいて制約がある。
【0007】
車の潤滑油浄化システムの内にそのような分離機を備えるコストは、車自体のコストに関する直接定量化できる製造・処分コストだけでなく、車が持ち運ぶ追加重量及び作業中に消費される動力の定量化しにくいコストも含んでいる。例えば特許文献4(DE 19715661 A1)には、通常の鋼板の代わりにプラスチック材からそのような閉じたタイプのロータを製造することが提案されているが、液体が入れられた大きな容器の回転によって生じる圧力に対して、より軽い材料による代用品の簡素化を損なうような補強を必要する。
【0008】
特許文献5(WO 02/055207)の内容を参照すると、いわゆる「オープン」ロータを用いることが提案されていて、そのロータ内で浄化される液体は、汚染物質の分離・封じ込め容器によって形成される室全体を満たさず、回転軸から離れた出口通路手段の存在によって容器の外壁近傍の半径方向に比較的薄いゾーンあるいは層に満たされ、そこを通過して液体は、容器への供給量より多い割合で放出される。容器へ導入された液体は、充満したロータの圧力勾配によらずに、最も効率的な分離が行われる外壁に隣接したゾーンに導かれる。また、減少された液体量に伴ってロータの慣性も減少する。
【特許文献1】GB 2297499号公報
【特許文献2】US 6454694号公報
【特許文献3】EP 0980714A2号公報
【特許文献4】DE 19715661A1号公報
【特許文献5】WO 02/055207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よりよい作動原理を決定してもなお、特別な車両に対するコスト制約がある場合には、経済的にこのような洗浄効果を提供することには問題が残る。上述したように、小型乗用車の潤滑油洗浄システムに遠心分離機を備えるためのコストは、製造と処分コスト、および運転コストの両方を含んでいる。
【0010】
運転コストのうちの間接コストのいくつかは、「オープン」ロータの使用と、適切な材料の選択によって低減されるが、初期生産のための構造と、異材料の分離と再利用に関する法規制に対応するための構造を、さらに考慮する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、従来ロータのコスト損失の低減をはかるような遠心分離機のための単純構造のロータを提供することを目的とする。さらに、本発明の目的は、そのようなロータを有した遠心分離機を提供すること、およびそのような遠心分離機を備えた液体浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明によれば、ベースとカバーと前記ベースから伸びてロータの回転を支持するスピンドル手段とよりなるハウジングと、前記ベースから前記ロータへ高圧力の流体を通す連通路とを有するタイプの流体駆動遠心分離機のためのロータであって、
該ロータは、回転軸を有し第1端と第2端の間を軸方向に伸びて汚染物質の分離と封じ込めの容器と、回転軸から半径方向に間隔を空けて囲むように配置され軸方向に伸びる内側管状壁によって規定される環状室と、該内側管状壁から半径方向に間隔をあけて囲むように配置され軸方向に伸びる外側管状壁と、前記内側管状壁と外側管状壁の間に伸びるように配置された第1端壁と、該第1端壁と反対の前記室の端に前記内側管状壁と外側管状壁の間に伸びるように配置された第2端壁とより成り、
前記内側管状壁は第1端から離れて貫通して伸びる液体連通路手段を有し、前記第1端壁は外側管状壁から半径方向に離れて貫通して伸びる容器出口通路手段を有して前記連通路手段より大きい割合で液体を通過させることができるようにし、
前記ロータは更に内側管状壁に規定されて半径方向内側の液体入口領域と、ハウジングに対してロータを支持するベアリング手段と、液体動力タービン手段とより成るものにおいて、
前記タービン手段は、液体反動駆動手段より成り、該液体反動手段は、容器に固定され前記入口領域の第1端にカラーを有して前記スピンドルを液密状態ではめ込むように配置された駆動部材と、容器の第1端に重なってカラーから半径方向に伸びる少なくとも1つのアームであって、それぞれのアームはカラーから離れた位置に接線方向に指向した反動噴射ノズルを保持し、入口側領域とノズルとの間に駆動液体通路を有するアームとを有し、
前記容器出口通路手段は、駆動手段の各ノズルよりも第1端壁から軸方向にさらに離れて液体を放出するように第1端壁から外に伸びる放出液体ガイドを有する少なくとも1の通路より成り、
さらに、スピンドルによって供給される液体を入口領域に高圧で供給し、連通路手段および液体反動駆動手段を通って放出させるために使用する前記スピンドルと協働する入口領域閉鎖手段を備えたことを特徴とするロータ。
【0013】
第2の発明によれば、液体から微粒子を分離するための遠心分離機であって、高圧で汚染液体源につながるように配置されたベースと、該ベースに取り付けられたスピンドルと、ベースから高圧液体を連通するためのダクトとを有するハウジングと、ベースに対して固定されたカバーとより成り、更にハウジング内で回転のためにスピンドルに取り付けられ該スピンドルから高圧の前記液体が供給されるロータを有し、該ロータが前段落に記載のロータである。
【0014】
第3の発明によれば、高圧の汚染液体を供給する手段と請求項25に記載の遠心分離機とよりなる液体浄化装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
図1を参照して、内燃機関10は、潤滑を必要とする可動部品(不図示)を含んでいるシリンダーブロック11及び、底にシリンダーブロックから排出される液体潤滑油13の収集及び貯蔵のための貯蔵部を含む油溜め12より成る。潤滑システムは14で一般に示され、液体ピック・アップ15を含み、ポンプ16へと繋がり、ポンプ16は、フルフローフィルタエレメント17を通りエンジンの可動部品へと液体を運び、そこから重力によって油溜めへと流出する。さらに、ポンプから送り込まれた液体の一部は、回路18でライン19と遠心分離機20を流れるように送られ、さらに、それがエンジンの可動部品を迂回して、油溜めへ重力によって放出される。
【0016】
図2を参照して、遠心分離機20は、鋳造あるいは成型されたベース24と、そのベースに対してそのまま装着して実質的な液体密封をする取り外し可能なカバー26とを備えたハウジング22とから成る。ハウジング内に液体を有する限りでは、ハウジングから液体が、重力によってベースを経由して油溜めへ流出することができ、ハウジングは、周囲と同じ圧力であり、カバーとベース間の密閉は緩やかである。
【0017】
ハウジングは、単一の軸という形でスピンドル手段30を含んでおり、それはベース24の内に組み込まれ固定され、またそれはカバー26へハウジングに沿って伸びている。遠心分離機において従来からなされていたように、スピンドルはベース24から上方へ伸び、長手方向中心線32は実質的に垂直であるが、その方向からのずれは予測範囲内で許容可能である。
【0018】
スピンドルは、その長さに沿って伸び、ポンプ16からの高圧力の液体をその下端35に供給するダクト34を有する。その供給は、図示されるように直接行ってもよいし、ベースを介するダクト(不図示)によって行ってもよい。スピンドルの端部から軸方向に離れた位置に設けられた横孔36が、スピンドルの横方向に液体を放出する。
【0019】
スピンドルは、運転中にハウジング内に収納されたロータ40をサポートし、その回転を可能にする。
【0020】
図3〜7を参照して、ロータ40は、汚染物質の分離と封じ込めの容器42、スピンドル上に支持し回転可能にするベアリング手段43、回転をもたらす液体動力タービン手段44から成る。
【0021】
容器42は、長手方向中心線46に沿って、およびその長手方向中心線の周りに位置決めされ、容器がスピンドルに対して配置される場合には、長手方向中心線46は、スピンドルの長手方向中心線32と一致し、回転中心線を構成する。容器42は、一般に47で示された第1端部と、48で示された第2端部の間を軸方向に延在しており、またその端部の間で環状の分離と封入室49が、軸方向に伸びる内側管状壁50によって位置決めされ、その内側管状壁は、半径方向に隙間を存してスピンドル30を取り囲んで配置され、また軸方向に伸びる外側管状壁52が、内側管状壁の周囲を間隔を置いて囲むように構成される。
【0022】
容器の第1端部47には、第1端壁54が内側管状壁と外側管状壁の間に延び、第2端部48には、第2端壁56が、内側管状壁と外側管状壁の間に延設される。
【0023】
ロータはスピンドルから分離することを考慮するとどのような方向もとり得るが、ハウジングのスピンドルの直立状態とハウジングに対する容器の所定の方向とを考慮すると、つまり垂直な長手方向中心線46を考慮すると、第1端部47が最下端でベース24に近接して使用される場合を、説明の便宜および容易さからそのような配置に関して説明する。
【0024】
この具体化では、内側管状壁50が、外側管状壁52より軸方向に長い。また、容器は、2つの構成部品60と62とが組み合わされて作られている。更に、その部品の各々は、例えばナイロン66のようなプラスチック材料で作られている。同素材は、型成形することができ、高温潤滑油を有する高温エンジンの作動を可能にするのに十分な構造上の強さおよび温度許容度を備えている。
【0025】
第1構成部品60は、内側管状壁50および外側管状壁52、ならびに第1端壁54が、図6に(部分的に切り取り)示されているように、単一成型として一体的に形成されるカップより成る。第2構成部品62は、内側管状壁50を囲むように開口部64を有したキャップより成り、第2端壁56を位置決めするために外側管状壁52の端部に装着される。
【0026】
内側管状壁50は、半径方向内向きに液体入口領域66を設ける。勿論、使用においては、液体入口領域がスピンドルのまわりに形成され、スピンドルの横孔36を通って液体が供給される。液体入口領域66は、それがカップ60によって形成される限りでは、第1端に向かって開口しているが、組み立てられたロータにおけるその領域は、入口領域閉鎖手段68によって軸方向に閉鎖され、そしてスピンドルからの高い圧力の供給液体がその領域に保持される。このことを以下に説明する。
【0027】
内側管状壁50は、少なくとも1つからなる連通路手段70を有し、その壁を通過し、第1端部47から離れて位置されている。それぞれの連通路は、液体入口領域と容器によって形成される室との間を連通し、好ましくは噴霧の形で連通する。
【0028】
容器の第1端壁54は、72で示される容器出口通行手段を有し、容器出口通行手段は、少なくとも1つの好ましくは複数の長手方向中心線46の周りに、容器の外側管状壁52から半径方向に離れて配置された出口通路72、72、…72を有する。通路72等は、移動通路手段よりもより多く液体を通すことができる大きさ決められ、その通路の半径方向の位置によって、前述のWO 02/055207に記述されているように容器内の環状の分離・封入ゾーン74の半径方向の厚さが定められる。
【0029】
図2〜図5に示すように、それぞれの出口通路72等には、放出液体ガイドが設けられ、境界スカート76が、回転する容器からの放出液体でロータが汚されないように排出するために、第1端壁から軸方向に伸びて設けられている。そのガイドについては以下に詳述する。
【0030】
ロータは、さらに前述の液体動力タービン手段44を含み、スピンドル周りにハウジングに対して回転させる。
【0031】
タービン手段は、第1端部で容器に固定された駆動部材80によって主に構成される反動駆動手段を含む。その駆動部材は、入口領域の第1端部で、スピンドルの周りを実質的に液密状態にはめ込むために配置されたカラー82、及び容器の第1端壁の外側に重なり前記カラーから半径方向に伸びる1対のアーム84、86を含む。便利なことに、カラーおよびアームは、カップ60と同じ材料で、一部品として若しくは単一成型品として一体に形成される。各アームは、カラーとは離れて、実質接線方向に向けられた反動噴射ノズル88を保持し、また入口領域とノズルの間には駆動液体通路90を設ける。駆動部材には、ノズルに繋がる通路が形成されるが、好ましくは、容器の端壁の表面によって少なくとも駆動液体通路の一部を形成する。この実施例では、容器の第1端壁は、駆動部材の各半径方向に伸びるアームに対応して凹部92を有している。また、各アームは、それぞれ半径方向に延びる凹部を覆い閉じ、その結果、前記凹部のうちの少なくとも一部に駆動液体通路90を形成し、この通路壁は、容器の壁と液体閉じ込め面94を形成する駆動部材のアームとからなる。
【0032】
当然のことながら、駆動液体通路は、ノズルを除いては実質的に平らなカバープレートの形で駆動部材のアームを有して完全に埋め込まれて構成されるが、好ましくは図示されるように、各駆動部材のアームが第1端壁の凹部92に取り付けられるように直立状の周囲リブ96を有することから、駆動部材は、端壁の方へ開いた樋のような容器として、それぞれの液体閉じ込み面を定義できる。その液体閉じ込み面と容器壁の間の液密性を改善するために、各アームと第1端壁との結合によって駆動部材が容器に対して固着される。そのようなリブ96は、機械的に液密性のある結合を達成するかもしれないが、一般に、駆動部材は接着剤あるいは溶接(プラスチック材の場合、超音波溶接)によって取り付けられるため、そのようなリブは液密性とは無関係に設けられる。当然のことながらもし駆動部材のアーム84、86が、液体閉じ込め面94を樋のような容器形状であると定義すると、駆動液体通路はそのアームと容器壁との間で、容器壁に凹部を設けることなく形成されるかもしれないが、そのような容器壁の凹部は、駆動手段が容器の端壁から軸方向へ出っ張ることを最小限に抑えることを可能にする。
【0033】
容器の第1端壁54が、駆動液体通路を形成するために凹部を設けていることに加えて、内側管状壁は、前記第1端壁に隣接して駆動部材のカラー82を収容する大径の凹部98を有する。その凹部98には、締りばめとしてカラー82の装着を容易にするとともに、入口領域と駆動液体通路との間の通路を提供するために突起100が並べて設けられている。
【0034】
駆動手段の両反動噴射ノズル88と、出口通路72等とが共に、ロータ容器の第1端壁の下のハウジング内に駆動液体を放出する限り、回転効率を害さない方法で液体の流れを維持することが望ましい。この目的のため実施例では、端壁の凹部92と駆動部材のアーム84、86とは、出口通路72等より半径方向外側に伸びて配置され、各出口通路の境界を示す液体放出のガイドスカート76が、各ノズルよりも更に第1端壁54から軸方向に離れたところに液体を放出できるような軸方向の長さを有し、各ノズルよりも半径方向では回転軸により近い位置にある。そして、駆動部材に液体放出ガイドスカート76との干渉を避けるために、部分的に凹所を設けることよってより実用的に製造することができる。
【0035】
当然のことながら、分離機使用において、スピンドルに対してベアリング手段43によってロータを支持することと、連通路手段70とタービン駆動手段44とへの液体の供給源となる入口領域66に高圧液体を供給することの両方が必要となる。従って、入口領域において高圧力のスピンドル供給液体が、容器連通路手段70を通ることとタービン駆動手段44に供給すること以外に流れること、すなわちスピンドルに沿って流出することを禁ずる必要がある。そのために、ベアリング手段43が軸方向に離れて2つのベアリングブッシュ102、103を備えており、第1または下方ブッシュ102は、駆動手段のカラー82によって支持され、第2または上方ブッシュ104は、第2端部で内側管状壁50によって支持されている。これらブッシュがスピンドルにきっちり接合して使われると共に、入口領域から漏出した液体の層によって潤滑するために選ばれる限りでは、この一対のブッシュは、ベアリング手段と閉鎖手段との両方の性質を有する。
【0036】
液体が、連通路の面積と入口領域の圧力によって決定される割合で連通路手段を経由して容器へ導入される点に関しては、作用は本質的に前述のWO 02/055207に記載の通りである。入口領域からの液体は、またロータを回転させる駆動手段にも送られる。容器内の液体は、側壁42の方向に遠心力によって向けられ、破線110によって示される半径方向の表面を有する環状の層を側壁42上に形成する。
【0037】
容器内の大気は、大体周囲の気圧くらいであるが、環状になっている容器内液体には半径方向に圧力勾配がある。環状層の表面が出口通路の端に位置するように構成される場合には、各出口通路の開口縁は、せきとして機能して液体はガイドされて、容器へ流入されるのと同じ割合で出口通路に沿って放出される。
【0038】
当然のことながら、各出口通路経由で放出された液体は、通路のふちから離れる場合および自由になる場合、液体の運動は分離の時にそれに作用する力によって決定され、回転する容器の端壁54近くと異なりだいたい直線方向に取られ、そのように放出される液体と容器壁の接触は、容器の適切な回転の妨げとなる。
【0039】
したがって、放出液体のガイドは、容器を出る液体を方向付け、その結果ロータのベースすなわち端壁54及びその端壁より突き出て重なる駆動部材80の両方から軸方向に空間をあけてロータから放出される。
【0040】
当然のことながら、原則として放出液体のガイドスカートは、通路の半径方向外側および回転方向の後縁側にのみ必要であり、またどの出口通路に関してもガイドスカートによる通路の包囲がされなくてもよい。更に、どの出口通路および/または放出液体ガイドも図示されたような円弧形状に限られない。
【0041】
容器および各出口通路内の液体は、遠心力を受け切り離されると出口通路の回転方向後縁から放出される傾向があり、この場合放出された液体のガイド自体からの分離がまた障害を生じる可能性もあるが、その障害は多くの方法によって軽減されると考えられる。
【0042】
本発明によれば、これを達成するための配置は、望ましくは効率と同様にロータの製造コストの低減にも配慮される。
【0043】
よりシンプルに、上記変形例として、放出液体のガイドスカートが、軸方向に対して半径方向にもしくは回転方向後縁方向に若しくはその両方向に、傾いていてもよい。
【0044】
図8(a)に示すように、ロータ140は、凹部192が設けられた第1端壁154を有する容器142と、駆動部材180と、ずらりと並んだ出口通路172、172等と、個々にスカートが設けられた複数の出口通路72等の代わりに、複数の出口通路172、172等を包囲するように設けられた単一環状の放出液体のガイドスカート176とより成る。ロータ140の構成要素を示す図8(b)及び8(c)を参照し、端壁に凹部192を有する容器142、およびその凹部内に収容される駆動部材180の形態を考慮すると、環状の放出液体のガイドスカート176は、容器の端壁に一体に設けられた1761、176のような部分と、駆動部材のアーム184、186に一体に設けられた176及び176のような部分とによって形成してもよい。その駆動部材が容器の端壁に固定されることで環状の放出液体のガイドスカートが形成される。
【0045】
この変形例として、図9に示すように、環状リング176´を備えた駆動部材180´が容器の端壁に固定されたときに、出口通路手段全体の周囲に位置して放出液体のガイドを形成する。
【0046】
放出液体のガイドを備えた出口通路手段の更なる別の構造が、図10(a)および10(b)のロータ340に示される。この構造において、ロータ容器342は、1もしくは複数の出口通路372、372等より成る出口通路手段372を有し、上記実施例の細長孔状の通路とは異なり、それぞれの通路372、372等は、軸方向に閉じられ、その終端部にノズル373等が設けられ、そのノズル373等は、容器の端壁および駆動部材380の噴射反動ノズルから軸方向に間隔をあけた位置に設けられている。これは絶対不可欠な要素ではないが、それぞれの放出出口ノズルは、容器の回転方向に対して接線方向若しくは半径外側方向若しくはその両方の方向に向けている。
【0047】
これら全ての実施例において、出口通路は、ロータ容器に入った液体は、外部側壁42、142等から半径方向に環状層を形成するので、その環状液体の半径方向に圧力勾配が存在するにもかかわらず、半径方向内側面は実質的に大気圧であり、その結果表面が出口通路の縁に達するときに、その縁はせきを形成し、表面は、ごくわずかに縁を越えて液体が通路に沿って流れて、放出されるようにしなければならない。流れを妨害するものがない場合は、容器内に液体の環状層の最大の半径方向の厚さが達成される。
【0048】
容器42の出口通路手段72において、出口通路72等は、連通路70より明らかに大きい。従って、液体供給圧力に関係なく、出口通路の縁の半径方向の位置を越えて容器に満たされることなく液体を放出することを常に可能にしている。さらに、放出液体のガイドが、放出方向の変更によって簡単に液体をガイドする場合には、ノズル形の出口通路372なども、また同じ条件で液体を通過させるように配置にしてもよい。
【0049】
しかしながら、連通路の断面積と差圧との両方の選択または変更によって、連通路手段から容器への流れを操作できることを考慮すると、出口通路手段も、同様の方法で操作することができる。最も適しているのは、ノズル373等の出口通路を、容器からの液体の流出量が連通路手段の液体の流出量を簡単に超えないような大きさにすることによって、容器中の環状の液体層が、図10(a)の310で示されるように、その表面が出口通路手段の半径方向内側になるように半径方向に広がることができる。しかしながら、環状の半径方向の表面は、出口通路手段370を越えて移動し出口通路手段が液体内に隠れると、出口通路も、旋回する液体の半径方向の圧力勾配によって、各出口通路の軸方向には容器から液体を放出させる圧力差が生じる。実際の放出率は、連通路手段70および入口領域圧力に対応して出口通路手段の大きさを決めることによって、容器内への液体の流入に応じて、容器内の液体環状が連続して半径方向に広がるのを防ぐように定められる。このように、容器からの液体の放出をバランスさせることが可能であり、小さいがしかし重要な液体圧力が放出を促進するが容器が液体によって充満されることはない。このように、出口通路手段は回転によって生じた液体中の圧力勾配に依存するにもかかわらず、連通手段によって流入される以上のより大きい割合で容器から液体を放出できるという開放遠心分離機の作動原理を失わないようにしている。
【0050】
ノズル形式の出口通路に限られるわけではないが、このような圧力差の助けによる放出と、方向を変えるようにするノズル形式の出口通路の使用とを組み合わせることにより、ロータの回転方向とは反対側にある少なくとも1つの構成部品の方向へ放出液体を向けることにより、容器からの放出によるエネルギを利用することができ、回転抵抗等の影響を軽減してタービン駆動手段のノズル88によって与えられる駆動力を増加させることができる。
【0051】
また当然のことながら、駆動手段の放出ノズル88、及び容器出口通路72等や371等が、それぞれ半径方向に離れて配置されている限りは、ハウジングベース24は、液体の放出後すぐにそれぞれの液体流を集める手段を備え、かつ相互に干渉することなくハウジングから流出するように形成されている(不図示)。
【0052】
他の変形例は、当業者によって容易に考えられるだろう。容器は、多数の構成要素および/または異なる素材から作られてもよい。ベアリング手段は、ブッシュ以外で設けられていてもよいし、ベアリングの形式にもかかわらず図示される以外の構成で組み込まれていても良い。例えば、下方のベアリングが、駆動手段のカラーではなく、内側管状壁の内に組み込まれていても良い。
【0053】
出口通路手段のダクトの数が様々なように、駆動手段のアームの数も様々でよい。更に、アームと容器の端壁の凹部は、厳密には半径方向に伸びて示されているが、円周方向の要素を持っていてもよい。
【0054】
ロータが実施例に示され、そのロータには、駆動手段と出口通路手段が、そのロータの下端に両方示されているが、駆動手段と出口通路手段のどちらか若しくは両方が、開方ロータ遠心分離装置の常識に従って、ロータの上端に配置されていてもよい。
【0055】
更に、本発明は、ハウジングに固定されその内に伸びるスピンドルを有し、スピンドルの周りをロータが回転する遠心分離機に関するものである。当然のことであるが、示されているロータが、ハウジングベース24とカバー26とから伸びる一対のスピンドル残部(スタブ)によって回転支持されてもよく、そのスピンドル残部は、ハウジングベース24とカバー26とのそれぞれから内側領域すべてに渡って伸びていなくてもよい。もう一つの方法として、細長いスピンドルや一対のスピンドル残部(スタブ)を内側部管状壁に対して固定しても良いし、また必要に応じて、駆動手段のカラーに固定して、容器がスピンドルに対してではなくハウジングに対して回転するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による液体駆動の遠心分離機を含む、加圧液体潤滑システム、及び液体浄化装置を組み込んだ内燃機関の配置図である。
【図2】図1の遠心分離機の一部断面立面図であり、スピンドルを含むハウジングを示し、そのハウジングに対して相対回転するロータがスピンドルに取り付けられている。
【図3】図2のロータの断面図であり、上部開口の環状カップ成形物とそこに取り付けられる蓋によって閉じられた容器の構成、および容器の下に配置された反動タービン駆動手段を示す。
【図4】図3における容器の環状カップの断面図である。
【図5】図4の矢印55に沿って下から見た環状のカップを示す図である。
【図6】図4の環状カップの一部断面の斜視図であり、各出口通路に関した、放出液体ガイドを示す。
【図7】容器と離れた図3の駆動手段の平面図である。
【図8】(a)は放出液体ガイドの変形例を示すロータの端面図であり、(b)は(a)のロータの容器の端部の平面図であり、(c)は(a)の駆動部材の端部の平面図である。
【図9】図8(a)の液体放出ガイドの変形例を示す駆動部材の平面図である。
【図10】(a)は液体放出ガイドのさらなる変形例であり、軸方向終端部に接線方向に指向されたノズルを示すロータ容器の断面正面図であり、(b)は(a)の容器の一部断面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとカバーと前記ベースから伸びてロータの回転を支持するスピンドル手段とよりなるハウジングと、前記ベースから前記ロータへ高圧力の流体を通す連通路とを有するタイプの流体駆動遠心分離機のためのロータであって、
該ロータは、回転軸を有し第1端と第2端の間を軸方向に伸びて汚染物質の分離と封じ込めの容器と、回転軸から半径方向に間隔を空けて囲むように配置され軸方向に伸びる内側管状壁によって規定される環状室と、該内側管状壁から半径方向に間隔をあけて囲むように配置され軸方向に伸びる外側管状壁と、前記内側管状壁と外側管状壁の間に伸びるように配置された第1端壁と、該第1端壁と反対の前記室の端に前記内側管状壁と外側管状壁の間に伸びるように配置された第2端壁とより成り、
前記内側管状壁は第1端から離れて貫通して伸びる液体連通路手段を有し、前記第1端壁は外側管状壁から半径方向に離れて貫通して伸びる容器出口通路手段を有して前記連通路手段より大きい割合で液体を通過させることができるようにし、
前記ロータは更に内側管状壁に規定されて半径方向内側の液体入口領域と、ハウジングに対してロータを支持するベアリング手段と、液体動力タービン手段とより成るものにおいて、
前記タービン手段は、液体反動駆動手段より成り、該液体反動手段は、容器に固定され前記入口領域の第1端にカラーを有して前記スピンドルを液密状態ではめ込むように配置された駆動部材と、容器の第1端に重なってカラーから半径方向に伸びる少なくとも1つのアームであって、それぞれのアームはカラーから離れた位置に接線方向に指向した反動噴射ノズルを保持し、入口側領域とノズルとの間に駆動液体通路を有するアームとを有し、
前記容器出口通路手段は、駆動手段の各ノズルよりも第1端壁から軸方向にさらに離れて液体を放出するように第1端壁から外に伸びる放出液体ガイドを有する少なくとも1の通路より成り、
さらに、スピンドルによって供給される液体を入口領域に高圧で供給し、連通路手段および液体反動駆動手段を通って放出させるために使用する前記スピンドルと協働する入口領域閉鎖手段を備えたことを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記容器の第1端壁は、駆動部材の半径方向に伸びるアームのそれぞれに対応して凹部を有し、それぞれのアームは半径方向に伸びる凹部に重なり閉じるようになっており、凹部の少なくとも一部に前記駆動液体通路を形成する請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
各駆動部材のアームは、直立の周辺リブを有し、対応する第1端壁の凹部は、前記リブを受け入れる大きさに形成された請求項1に記載のロータ。
【請求項4】
各駆動部材のアームは、容器の第1端壁に向かって開口するような液体貯留面を備え、前記第1端壁によって入口領域とノズルとの間に伸びる前記駆動液体通路を形成する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
駆動部材のアームは、樋形状のような液体貯留面を備えている請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
駆動部材のカラーを受け入れるために径の大きい凹部を内側管状壁の第1端に隣接して設けられる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項7】
放出液体ガイドは、各出口通路に関して、通路の周囲の少なくとも一部にスカートを備える前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
少なくとも1の放出液体ガイドの終端は、軸方向に対して傾いた放出方向のノズルを備える請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
少なくとも1つのノズルの放出方向が、軸方向にほぼ垂直に傾いている請求項8に記載のロータ。
【請求項10】
少なくとも1つのノズルは、放出方向に開口しており、ロータの回転方向に対して半径方向外側若しくは接線方向後側若しくはその両方向に少なくとも放出成分を有する請求項8又は9記載のロータ。
【請求項11】
放出液体ガイドは、複数出口通路の全てを囲むように形成されたスカートよりなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項12】
スピンドルがハウジングに対して固定され、ベアリング手段が軸方向に分離した少なくとも2つのベアリングより成り、少なくとも1のベアリングが入口領域の前記液体によって潤滑化され、スピンドルの周囲にカラーを形成するために配設されたブッシュであり、また該ブッシュによって前記閉鎖手段が構成される前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項13】
前記ベアリング手段は、前記第2端で内側管状壁によって保持されるベアリングよりなる前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項14】
前記ベアリング手段は、駆動手段のカラーによって保持されるベアリングよりなる前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項15】
内側管状壁の第1端は、駆動部材のカラーによって回転軸方向に支持される請求項14に記載のロータ。
【請求項16】
容器の第2端壁は、前記第2端に内側管状壁を囲む環状のキャップとして形成され、外側管状壁の第2端に固定される前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項17】
容器の内側管状壁、外側管状壁および容器の第1端壁は、互いに一体形成される前記請求項のいずれか1項に規制のロータ。
【請求項18】
容器の内側管状壁、外側管状壁および容器の第1端壁は、プラスチック素材の単一成型として形成される請求項17に記載のロータ。
【請求項19】
スカートは、少なくとも一部が容器の端壁と一体形成される請求項11に従属する場合の請求項18に記載のロータ。
【請求項20】
駆動部材は、各アーム及び第1端壁を介して容器に固定される前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項21】
駆動部材がプラスチック素材の単一成型として形成される前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項22】
スカートは、少なくとも一部が駆動部材と一体形成される請求項11に従属する場合の請求項18に記載のロータ。
【請求項23】
駆動部材が接着又は超音波溶接によって容器に固着される請求項21又は22に記載のロータ。
【請求項24】
前記ロータは、実質的に垂直方向の回転軸と第1端壁の最下部によって作動可能なように配置されている前記請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項25】
液体から微粒子を分離するための遠心分離機であって、高圧で汚染液体源につながるように配置されたベースと、該ベースに取り付けられたスピンドルと、ベースから高圧液体を連通するためのダクトと、ベースに対して固定されたカバーとより成るハウジングと、更にハウジング内で回転のためにスピンドルに取り付けられ該スピンドルから高圧の前記液体が供給されるロータとを有し、該ロータが前記請求項のいずれか1項に記載のロータである遠心分離機。
【請求項26】
高圧の汚染液体を供給する手段と請求項25に記載の遠心分離機とよりなる液体浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−82078(P2006−82078A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261529(P2005−261529)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(505229863)マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (86)
【Fターム(参考)】