説明

遠心分離機を組み込んだ安全キャビネット及びバイオクリーンベンチ

【課題】遠心分離槽内部の試料より発生する汚染エアロゾルの漏洩飛散を、遠心分離機を内装する安全キャビネット及びバイオクリーンベンチの気流のみで防止する。
【解決手段】清浄作業空間にクリーンエアを吹き出し清浄作業空間から排出されたエアを吸引し、前記エアを循環させるエア循環回路内に送風機、ヘパフィルターを設けてなり、前記エア循環回路内に遠心分離機の回転分離槽を設け、同槽を循環するエアの流れに囲繞させる。また、遠心分離機の回転分離槽は、エア循環回路内において、清浄作業空間の下流側に位置して設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離機を内蔵した安全キャビネット及びバイオクリーンベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、先端医療の一環となる再生医療に関する細胞培養に対し、患者より摘出した細胞(以下試料と称す)について無菌かつ、交差汚染を完全に防止した環境で作業を行うことが必要とされている。上記作業で遠心分離機は試料を高速回転させ、液中の物質を分離する時に利用される。対象となる試料は無菌操作が要求されるものや、感染性の試料はバイオハザード(生物災害)対策が必要となる場合がある。以前より、無菌操作は遠心分離機の周囲を囲い清浄空気を雰囲気に供給しクリーン化させ、また、バイオハザード対策は専用のフードにて試料から発生した汚染エアロゾルの漏洩を防止する方法がとられていた。
【0003】
試料が感染性の可能性がある場合、従来は遠心分離槽内部の試料より発生する汚染エアロゾルの飛散を防止する手段として、図1に示す如き装置1が使用されていた(特許文献1参照)。この装置1では、遠心分離槽2内の排気を排気ファン3で吸引し、その流路4の途中に設けたHEPAフィルタ5で清浄化し、装置1外に放出しているが、この様な汚染エアロゾルを、排気HEPAフィルタ5を用いて浄化後に実験室内に排気する方法では、遠心分離槽扉開放時実験室内へのエアロゾル飛散防止効果は低く、試料を取出し後は実験室内に暴露することによる交差汚染の可能性があった。また、試料が実験室内の空気に接触する可能性も高く、遠心分離作業中の試料の無菌保持も困難であった。
【特許文献1】実公昭62−36532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みて、遠心分離槽内部の試料より発生する汚染エアロゾルの漏洩飛散を、遠心分離機を内装する安全キャビネット及びバイオクリーンベンチの気流のみで防止することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明にあっては、清浄作業空間にクリーンエアを吹き出し清浄作業空間から排出されたエアを吸引し、前記エアを循環させるエア循環回路内に送風機、ヘパフィルターを設けてなり、前記エア循環回路内に遠心分離機の回転分離槽を設け、同槽を循環するエアの流れに囲繞させる。
請求項2記載の発明にあっては、遠心分離機の回転分離槽は、エア循環回路内において、清浄作業空間の下流側に位置して設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、遠心分離機からの汚染エアロゾル飛散をクリーンベンチの気流のみで防止することが出来、なお且つ、遠心分離、及びそれに伴う試料の操作が省スペースな清浄作業空間にて行う事が可能となった。
即ち、安全キャビネットまたはバイオクリーンベンチと遠心分離機を一体構造とし、遠心分離機より発生する汚染エアロゾルを装置内部の循環気流を用いて機外への流出を防止できるため、遠心分離機の汚染飛散防止用排気ファンを不要とした。かつ、安全キャビネットもしくはバイオクリーンベンチにて循環される無菌空気を遠心機チャンバー内へ送る為試料の無菌操作が可能となった。
遠心分離機内の試料の操作を、全て安全キャビネットやバイオクリーンベンチ内で行うことが可能であり、遠心分離機からの試料取り出し時、実験従事者へのエアロゾル感染を防ぎ、かつ無菌空間で試料を扱う事で、実験室内の試料の交差汚染防止が出来る。
従来は、安全キャビネットまたはバイオクリーンベンチと遠心分離機の両方の設置スペースを必要としたが、一体構造とし省スペース化出来る。なお且つ遠心分離機上部も安全キャビネットまたはバイオクリーンベンチの作業台構造とすることで作業スペースを拡大している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態を次に説明する。
図2は、本発明安全キャビネット及びバイオクリーンベンチ10(以下清浄装置10と云う)の概略縦断側面図で、図3は、その遠心分離槽部分の拡大断面図である。清浄装置10は、機台中央に清浄作業空間12を有し、清浄作業空間12の作業台面13の下部及び背面壁14の外側に沿ってリターンダクト15が設けられ、清浄作業空間12の天井部には、リターンダクト15内のエアを吸引する送風機16、送風機16からのエアを清浄装置10外と清浄作業空間12とに振り分けるダクト17が設けられ、装置外への排気はヘパフィルタ18を経て、清浄作業空間への送気はヘパフィルタ19を経て行うよう構成され、清浄作業空間12を通過する空気は、清浄作業空間12の背面壁14下部に設けた通気孔11を通りリターンダクト15,送風機16,ダクト17,ヘパフィルター19,清浄作業空間12の経路で循環する循環回路が構成されている。尚、清浄作業空間12の前面にはシャッター20が設けられている。
【0008】
上記安全キャビネットもしくはバイオクリーンベンチ等よりなる清浄装置10に遠心分離機21が組み込まれ両者を一体構造としている。
遠心分離機21の分離槽22は、清浄作業空間12の下部に、リターンダクト15を挟んで設けられ、クリーンベンチ作業台面13と分離槽22にはそれぞれ蓋23,24を有する開口25,26が設けられている。蓋23を閉じることにより遠心分離機上部にバイオクリーンベンチの作業スペースを確保すると共に、蓋23,24を開くことにより開口25,26を通して遠心分離槽22と清浄作業空間12とが連通し、かつ、清浄作業空間12と遠心分離槽22がリターンダクト15とも連通する。蓋24は遠心分離槽22内へ材料を入れるためのものであって、安全ロック27が付いており、遠心分離中に作業者が誤って蓋を開く事を防止している。
【0009】
遠心分離槽22の開口26の周囲には、仕切板28を囲繞し、万が一作業台上でこぼした試料等が遠心分離機21内に侵入することを防止している。遠心分離機21の周囲は、パッキン29,30を付けた密閉式の蓋31,32で覆い陰圧を保持することで装置外への汚染空気の流出を防ぐ構造としている。
【0010】
遠心分離槽22内部には図示しないローターが設けられ、該ローターに試料をセットしローターを回転することにより遠心分離を行うが、ローターを回転する駆動機構等は遠心分離槽外に設置され槽内に通じる部材はシーリングされて槽22内外に圧力変動が生じないようになされている。
【0011】
次に、遠心分離槽22周囲における流路は次のように構成される。清浄作業空間12のシャッター20を閉じた際の清浄作業空間12内に位置する前面作業台33のシャッター20内側に位置する場所に通気孔34が設けられている。そして前面作業台30の内部の遠心分離機21に接する側には通気孔35が設けられている。また、遠心分離機21内の分離槽22の支持部材にはリターンダクト15に通じる通気孔36が設けられており、前面作業台36の通気孔34から遠心分離機21内に入った気流は分離槽22を囲うようにして流れ通気孔36からリターンダクト15に流入する。
【0012】
作業者が試料を取り扱う場合は、まず図2に示す安全キャビネット又はバイオクリーンベンチの送風機16を動作させる。清浄作業空間12内は、上部に設置されたヘパフィルター19にて浄化された空気が供給され清浄(無菌)化される。清浄空気の供給は常に行われている為、試料の取扱い時、シャッタ20を開いて作業を行ってもシャッタ開口部から侵入した外気は前面作業台33の通気孔34に吸引され流入気流によるエアバリアとなり同時に清浄作業空間12からの気流も通気孔34に吸入され外部から清浄作業空間12への汚染空気の侵入はなく装置外部の汚染された空気にさらされる事なく無菌,無塵状態で試料の混合等の操作を行える。また、遠心分離槽22周囲も循環気流で覆うことで清浄空間に保つことが出来る。
【0013】
遠心分離を行う際の試料設置は、まず遠心分離槽22への蓋24の安全ロック27を解除し蓋24をスライドさせ開放する。安全ロック27は遠心分離動作中は解除されない為、作業者の誤操作を防止できる。
【0014】
遠心分離動作中は、シャッタ20を閉じ、外気の侵入を防止しているため、清浄作業空間の清浄空気のみが前面作業台33の通気孔24,25から遠心分離槽22の周囲を循環することで、遠心分離機の扉等の隙間部から発生する汚染エアロゾルの作業者側への漏洩を防止する。
【0015】
遠心分離槽よりの試料取出しは図3に示す如く蓋24を開放する。この時遠心分離機チャンバー内に入る空気はクリーンベンチ内の清浄空気の為無菌が確保でき、また、遠心分離機内で発生した汚染エアロゾルはクリーンベンチ内の循環気流によりベンチ背面リターンダクトへ流れ、作業者側への汚染エアロゾル流出を防止できる。リターンダクトへ流れた空気は、給気用ヘパフィルター19により浄化され、庫内を循環する。また一部空気は排気用ヘパフィルター18により浄化後、クリーンベンチ外へ排気される。
【0016】
遠心分離作業の終了した試料は、外気の汚染された空気にさらされる事なく安全キャビネット及びバイオクリーンベンチ内へ移す事が出来る。また、作業台上に取り出した試料を誤ってこぼし、遠心分離機上の作業台との隙間に侵入した場合も仕切板28により遠心分離機駆動部等への侵入を防止し、容易に清掃可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明にあっては、安全キャビネット,バイオクリーンベンチに遠心分離機を一体に設置することにより、安全キャビネット等のクリーンエアの流れを利用して遠心分離機をクリーンエアで囲むことが可能であり、汚染エアロゾルの外部への流出を防止することを可能とし、遠心分離機で処理する試料の操作も安全キャビネットの清浄作業空間をで行えるため試料の操作段階での周囲への汚染の影響を無くすことを可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の装置の概略断面図。
【図2】本発明装置の概略断面図。
【図3】遠心分離槽周囲の拡大断面図。
【符号の説明】
【0019】
10 清浄装置
11 通気孔
12 清浄作業空間
13 作業台面
14 背面壁
15 リターンダクト
16 送風機
17 ダクト
18,19 ヘパフィルター
20 シャッタ
21 遠心分離機
22 分離槽
23,24 蓋
25,26 開口
27 安全ロック
28 仕切板
29,30 パッキン
31,32 蓋
33 前面作業台
34,35,36 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄作業空間にクリーンエアを吹き出し清浄作業空間から排出されたエアを吸引し、前記エアを循環させるエア循環回路内に送風機、ヘパフィルターを設けてなり、前記エア循環回路内に遠心分離機の回転分離槽を設け、同槽を循環するエアの流れに囲繞させることを特徴とする遠心分離機を組み込んだ安全キャビネット及びバイオクリーンベンチ。
【請求項2】
遠心分離機の回転分離槽は、エア循環回路内において、清浄作業空間の下流側に位置して設けたことを特徴とする請求項1記載の遠心分離機を組み込んだ安全キャビネット及びバイオクリーンベンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−111596(P2007−111596A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303802(P2005−303802)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(591066465)日本エアーテック株式会社 (27)
【出願人】(501005092)株式会社リンフォテック (7)
【出願人】(596160746)株式会社コクサン (4)
【Fターム(参考)】