説明

遠心分離機

【課題】
ケーシングを密閉構造とし、ケーシングの内外で圧力差を生じる遠心分離機に於いて、軸シール部に非接触型シール装置であるガスシールを用い、而も処理液中の固形物による焼付きを防止し、又清掃等の保守作業の軽減を図る。
【解決手段】
高速回転する外胴ボウル4と、該外胴ボウル内に所要の回転差で回転する様に設けられた内胴スクリュウ7と、該内胴スクリュウ内に挿通され原液を供給するフィードパイプ13を具備し、前記外胴ボウルが密閉構造のケーシング12に収納された遠心分離機に於いて、前記外胴ボウルを含む回転部と前記ケーシングとの間に非接触型のシール装置が設けられ、該シール装置の機内側に該シール装置のシール面より大径のフリンガを前記回転部に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して原液を固体分と液体分とに分離する遠心分離機、特にスクリュウにより分離した固体分を連続的に排出可能なスクリュウデカンタ型遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理、各種産業排水処理等の処理に於いて、固体分と液体分とを分離する処理に使用されるものに遠心分離機があり、又遠心分離機には分離した固体分を、内蔵したスクリュウコンベアにより連続的に排出するスクリュウデカンタ型遠心分離機がある。
【0003】
特許文献1に示される様に、スクリュウデカンタ型遠心分離機では、高速回転される外胴ボウルと、該外胴内部に該外胴と所要の回転差で高速回転されるスクリュウコンベアを有し、前記外胴ボウルはケーシングに収納されている。
【0004】
前記外胴ボウルに供給された固体を含む原液は、遠心力により液体と固体とに分離され、分離された液体は前記外胴ボウルの一端から前記ケーシングに流出し、前記外胴ボウルの壁面に堆積した固体は前記スクリュウコンベアにより掻取られ、前記外胴ボウルの他方の端面に向って送られ、前記外胴ボウルに穿設された排出孔より前記ケーシングに排出される。
【0005】
スクリュウデカンタ型遠心分離機に於いて、処理する原液が有害物を含む場合、或は原液の液体が有機溶剤である場合は、ケーシングを密閉構造とする必要があり、更に、ケーシング内部が外気に対して正圧となる場合は、ケーシング内部の液体(固形分を含むミスト)が外部に漏出しない様に前記ケーシングの回転軸貫通部はシールされなければならない。
【0006】
従来、回転軸貫通部(図2参照)をシールするシール装置としては、特許文献2に見られる様に、ラビリンスシールが知られている。
【0007】
更に、ラビリンスシールとガスシールを併用したシール装置も知られている。
【0008】
図6に於いて、ラビリンスシールとガスシールを併用したシール装置18について説明する。
【0009】
図6中、19は装置の構造部材であり、該構造部材19には孔22が穿設され、該孔22には回転軸21が挿通され、該回転軸21は細径となったネック部24を有している。尚、前記構造部材19の右側が装置の内部側を示している。
【0010】
前記構造部材19にはシール座23が固着され、該シール座23は環部23aを有し、該環部23aは前記孔22に気密に内嵌している。
【0011】
前記回転軸21にはスリーブ25が気密に嵌合され、前記回転軸21は細径となった前記ネック部24を有する。前記スリーブ25の一端には前記ネック部24に遊嵌する内縁部26が形成され、他端には外径方向に延出するフランジ部27が形成されている。該フランジ部27に重合する様に回転環28が回止されて前記スリーブ25に設けられ、前記回転環28の外周面と前記フランジ部27の外周面とは面一となっている。前記スリーブ25には回転環押え29が外嵌し、該回転環押え29によって前記回転環28は前記フランジ部27に押圧されている。前記回転軸21と、前記スリーブ25と、前記回転環28と、前記回転環押え29とは一体に回転し、回転部を構成する。
【0012】
前記シール座23にシールケース31が固着され、該シールケース31の前記シール座23側端部には該シール座23との境界部を跨ぐ様にラビリンスシール部32が形成され、該ラビリンスシール部32は前記フランジ部27、前記回転環押え29の外周面に所要の間隙を介して対峙している。前記シールケース31は前記スリーブ25の周囲にドーナツ状の空間を形成し、該空間を塞ぐ様にシールフランジ33が前記シールケース31に固着される。
【0013】
前記スリーブ25の周囲には、前記回転環押え29と前記シールケース31と前記シールフランジ33により囲まれた空間が残置され、該空間にリング状のシールリング34が収納され、該シールリング34は前記シールフランジ33に対して軸心方向に摺動自在に設けられ、スプリング35により前記回転環押え29に向って付勢されると共にピン40によって回止されている。前記回転環28の前記シールリング34に対峙する面にはシール座36が埋設され、前記シールリング34の前記シール座36に対峙する面にはエアポケット溝37が円状に形成されている。
【0014】
前記シールリング34と前記シールケース31との間には間隙が形成され、又前記シールリング34と前記シールケース31との間に2本のOリング等のシール部材38,38が設けられ、前記シールリング34と前記シールケース31との間に前記シール部材38によって封止された気密なリング状の間隙39が形成される。
【0015】
該間隙39には窒素ガス等不活性ガスのシールガス供給源に接続されたシールガス供給路41が連通され、前記シールリング34の所要箇所にはL字状の連絡路42が穿設され、該連絡路42の一端は前記間隙39に開口し、他端は前記エアポケット37に開口している。
【0016】
前記シールガス供給路41、前記間隙39にシールガスを供給すると、前記連絡路42、前記エアポケット37を通って前記シール座36と前記シールリング34との間隙からシールガスが全周から流出し、前記シール座36と前記シールリング34との間にガスシール層が形成され、前記シールリング34、前記回転環28間でガスシール部30が構成される。
【0017】
前記装置内部が外部に対して正圧となった場合、前記回転軸21等からなる回転部と前記構造部材19等の固定部との間は、前記ラビリンスシール部32、及び前記ガスシール部30によってシールされる。
【0018】
ラビリンスシール、又はラビリンスシールとガスシールを併用した前記シール装置18が、スクリュウデカンタ型遠心分離機に適用された場合、シールの対象は液、固形物のミスト状であり、これらが前記ラビリンスシール部32に浸入すると、固形物でラビリンスシールの溝が埋り、前記ガスシール部30のシール面に付着し焼付きを生じ、シール不良を招く虞れがあった。
【0019】
又、従来ではシール不良を防止する為、定期的な清掃を必要としていた。
【0020】
【特許文献1】実開平3−56652号公報
【0021】
【特許文献2】特開2001−132640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は斯かる実情に鑑み、ケーシングを密閉構造とし、ケーシングの内外で圧力差を生じる遠心分離機に於いて、軸シール部に非接触型シール装置であるガスシールを用い、而も処理液中の固形物による焼付きを防止し、又清掃等の保守作業の軽減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、高速回転する外胴ボウルと、該外胴ボウル内に所要の回転差で回転する様に設けられた内胴スクリュウと、該内胴スクリュウ内に挿通され原液を供給するフィードパイプを具備し、前記外胴ボウルが密閉構造のケーシングに収納された遠心分離機に於いて、前記外胴ボウルを含む回転部と前記ケーシングとの間に非接触型のシール装置が設けられ、該シール装置の機内側に該シール装置のシール面より大径のフリンガを前記回転部に設けた遠心分離機に係るものである。
【0024】
又本発明は、前記フリンガの周縁部に機内側に向って液返しが突設された遠心分離機に係り、又前記フリンガの外周面に所要の間隙を隔てて対峙する円筒部が前記ケーシング側に設けられた遠心分離機に係るものである。
【0025】
又本発明は、前記シール装置は機内側から第1ラビリンスシール部、ガスシール部、第2ラビリンスシール部が配設されて構成された遠心分離機に係るものである。
【0026】
又本発明は、前記フィードパイプの支持部と回転部との間にガスシール部が設けられ、前記回転部の端部に前記ガスシール部を遮蔽する円筒状の液受けが設けられた遠心分離機に係るものである。
【0027】
更に又本発明は、前記液受けの先端部内縁に液返しが突設された遠心分離機に係り、又前記フィードパイプの支持部の内側に位置し、前記液返しに対峙する様にリング突条が設けられた遠心分離機に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、高速回転する外胴ボウルと、該外胴ボウル内に所要の回転差で回転する様に設けられた内胴スクリュウと、該内胴スクリュウ内に挿通され原液を供給するフィードパイプを具備し、前記外胴ボウルが密閉構造のケーシングに収納された遠心分離機に於いて、前記外胴ボウルを含む回転部と前記ケーシングとの間に非接触型のシール装置が設けられ、該シール装置の機内側に該シール装置のシール面より大径のフリンガを前記回転部に設けたので、高速で回転する前記フリンガによって液、ミストが前記シール装置に浸入するのが防止され、焼付き等の虞れが解消され、長期に亘り安定した運転が可能となる。
【0029】
又本発明によれば、前記フリンガの周縁部に機内側に向って液返しが突設され、又前記フリンガの外周面に所要の間隙を隔てて対峙する円筒部が前記ケーシング側に設けられたので、前記フリンガの回転により、液が前記シール装置により離反する方向に飛ばされ、更に前記フリンガの外周面と前記円筒部間の間隙により液、ミストの前記シール装置への浸入を抑制する。
【0030】
又本発明によれば、前記シール装置は機内側から第1ラビリンスシール部、ガスシール部、第2ラビリンスシール部が配設されて構成されたので、回転部と固定部間のシール性能が向上する。
【0031】
又本発明によれば、前記フィードパイプの支持部と回転部との間にガスシール部が設けられ、前記回転部の端部に前記ガスシール部を遮蔽する円筒状の液受けが設けられたので、液、ミストのシール装置への浸入が防止される。
【0032】
更に又本発明によれば、前記液受けの先端部内縁に液返しが突設され、又前記フィードパイプの支持部の内側に位置し、前記液返しに対峙する様にリング突条が設けられたので、前記液返しから飛ばされた液が飛散することなく、前記リング突条に効果的に捕捉される等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0034】
図1に於いて、スクリュウデカンタ型遠心分離機について略述する。
【0035】
フレーム1に軸受ユニット2,3を介して、外胴ボウル4が回転自在に支持され、該外胴ボウル4の一端にはプーリ10が取付けられ、該プーリ10に本体駆動用モータ5がベルト6を介して連結され、前記本体駆動用モータ5により前記ベルト6、前記プーリ10を介して前記外胴ボウル4が高速回転される様になっている。
【0036】
該外胴ボウル4の内部には内胴スクリュウ7が同心に回転自在に内蔵され、該内胴スクリュウ7と前記外胴ボウル4の回転軸は遊星歯車式の差動変速機8により連結され、該差動変速機8の太陽歯車の差速回転軸9は減速機用制動モータ11によって回転され、該減速機用制動モータ11により前記差速回転軸9が回転されることで、前記外胴ボウル4と前記内胴スクリュウ7の相対回転比が設定され、該内胴スクリュウ7は高速で回転すると共に前記外胴ボウル4に対してもゆっくり回転する様になっている。
【0037】
該外胴ボウル4は、前記フレーム1に取付けられたケーシング12によって覆われ、前記内胴スクリュウ7の内部には該内胴スクリュウ7と同軸に延びるフィードパイプ13が連通され、該フィードパイプ13により前記内胴スクリュウ7内部に固体分を含むスラリー状の原液が供給される様になっている。
【0038】
前記ケーシング12は、下部に液体排出口14、固体排出口15を有しており、該液体排出口14、前記固体排出口15から、分離された液体、固体を排出する様になっている。
【0039】
図2により、スクリュウデカンタ型遠心分離機の作用について概略を説明する。
【0040】
前記本体駆動用モータ5により前記外胴ボウル4が高速で回転され、前記減速機用制動モータ11により前記内胴スクリュウ7が高速で回転される。前記差動変速機8により前記外胴ボウル4と前記内胴スクリュウ7には回転差が設けられ、両者の回転差により該内胴スクリュウ7は前記外胴ボウル4に対してゆっくりと相対回転する。
【0041】
前記フィードパイプ13から前記内胴スクリュウ7内に原液が送給され、原液は該内胴スクリュウ7内部を通って前記外胴ボウル4へ移動し、該外胴ボウル4内部では遠心力により固体と液体とが分離され、固体は該外胴ボウル4の内壁に沈殿する。
【0042】
分離された液体は、前記外胴ボウル4の一方の端面に設けられた排出孔16から、前記ケーシング12に流出し、前記固体は前記内胴スクリュウ7により前記外胴ボウル4の他方の端面に向って送られ、前記外胴ボウル4に穿設された排出孔17より前記ケーシング12に排出される。更に該ケーシング12より吐出され、分離液は前記液体排出口14より排出され、固体は前記固体排出口15より排出される。
【0043】
前記スクリュウデカンタ型遠心分離機に於いて、前記外胴ボウル4は高速で回転し、前記ケーシング12は固定しているので、前記外胴ボウル4の回転軸が前記ケーシング12を貫通する部分にはシール装置が設けられる。
【0044】
特に、前記ケーシング12内部が外気に対して正圧となる場合、原液に有害物が含まれる場合、或は原液の液体が有機溶剤である様な場合は、前記ケーシング12内部の液体(固形分を含むミスト)が外部に漏出しない様に該ケーシング12の回転軸貫通部A(図2参照)はシールされなければならない。
【0045】
本発明の実施の形態では、該回転軸貫通部Aに以下に説明する非接触型のシール装置45が設けられ、前記フィードパイプ13の軸端部の支持部Bに非接触型のシール装置46がそれぞれ設けられる。
【0046】
図3、図4に於いて、前記シール装置45について説明する。尚、図6中で示したものと同等のものには同符号を付し、その詳細については説明を省略する。
【0047】
前記ケーシング12の回転軸貫通部Aに前記シール装置45が気密に設けられる。
【0048】
回転軸21は機外側に向って第1細径部51、第2細径部54、第3細径部55と段階的に径が細くなる段付形状となっており、前記第1細径部51にドーナツ円板状のフリンガ52が嵌着され、該フリンガ52は後述する回転環28より大径であり、該回転環28の外周面より更に外側迄延出している。該フリンガ52の外周部には機内側に向って突出する液返し53が形成されている。該液返し53は中心から外周に向って機内側に傾斜する傾斜面、或は湾曲する湾曲面となっている。
【0049】
前記第2細径部54には前記回転環28が嵌着され、更に前記第2細径部54には回転環押え29が外嵌されており、該回転環押え29により前記回転環28が軸の段差面に押圧され、前記フリンガ52が前記回転環28を介して軸の段差面にそれぞれ押圧されている。
【0050】
前記ケーシング12の回転軸貫通部A(図2参照)には、シール装置取付け孔56が設けられ、該シール装置取付け孔56にシールケース57が嵌合され、嵌合部はOリング等のシール部材58によりシールされている。前記シールケース57の機内側端部(以下内端部)にはラビリンスリング59が内嵌され、該ラビリンスリング59は前記回転環28の外周面と対峙し、第1ラビリンスシール部61を構成する。
【0051】
前記ラビリンスリング59を固定する様にラビリンスリング押え62が前記シールケース57の内端に固着されており、前記ラビリンスリング押え62の内周部には円筒部63が形成され、該円筒部63は前記フリンガ52の外周面と僅かな隙間を隔てて対向している。前記円筒部63の内端は前記液返し53の頂点と軸心方向で同位置となっている。又、前記ラビリンスリング押え62の最下位置には前記円筒部63を径方向に貫通するドレン孔60が設けられている。
【0052】
前記シールケース57の機外側端(以下外端)にはシールフランジ64が固着され、該シールフランジ64、前記シールケース57、前記回転環28によってリング状のシールリング収納空間が形成され、該シールリング収納空間にシールリング34が収納されている。
【0053】
該シールリング34の収納構造は、図6に於いて説明したと同様であり、スプリング35により前記回転環28に向って付勢され、又ピン40によって回止されている。前記シールリング34と前記シールケース57との間にはシール部材38,38によって封止された間隙39が形成され、該間隙39は連絡路42によってエアポケット37に連通され、又シールガス供給路41によって図示しないシールガス供給源に接続されている。前記シールリング34、前記回転環28によりガスシール部30が形成される。
【0054】
前記シールフランジ64の外端にはシールカップリング65が固着され、該シールカップリング65と前記第3細径部55との間には第2ラビリンスシール部66が設けられている。
【0055】
前記シール装置45の作用について説明する。
【0056】
前記スクリュウデカンタ型遠心分離機の運転状態では、前記ケーシング12内が正圧となっており、又該ケーシング12内部では前記回転軸21、前記外胴ボウル4が高速で回転している。
【0057】
遠心分離で分離された液体は、前記排出孔16よりオーバフローし、高速回転により前記ケーシング12の内壁に飛ばされ、該内壁を伝って流下し、前記液体排出口14より排出される。又、ミスト状となった液体は、前記外胴ボウル4の回転に追従して回転される。前記フリンガ52周辺のミスト、或は該フリンガ52に付着した液体は、該フリンガ52の回転に連回り、中心から外方に沿って移動する。前記フリンガ52の周縁には前記液返し53が形成されているので、連回ったミスト、液体は周囲に飛ばされると共に機内側に向けられる。
【0058】
従って、ミスト、液体は前記液返し53と前記円筒部63間の間隙から、前記ラビリンスリング59側に浸入することが防止される。
【0059】
更に、機内と機外とは前記第1ラビリンスシール部61、前記ガスシール部30、前記第2ラビリンスシール部66の3段階でシールされ、高い気密性が得られる。
【0060】
次に、スクリュウデカンタ型遠心分離機が停止される場合、前記外胴ボウル4による回転の遠心力が無くなるので、前記ケーシング12内の液体が一度に落下する。
【0061】
前記フリンガ52の外周面は前記円筒部63により覆われており、更に液体の落下方向と、前記フリンガ52と前記円筒部63との間の隙間の方向は、直交しているので、液体の落下により前記間隙から前記第1ラビリンスシール部61側に液体が浸入することはない。
【0062】
又、停止行程で外胴ボウル4の回転が低くなると外胴ボウル4内に保持されていた原液(又は水)が遠心力に打勝って一気に落下する。この際、原液が排出孔16から軸方向に吐出し、シール装置45側、例えばフリンガ52に噴流となって衝突する。この時フリンガ52の回転が低い為回転による振飛ばし効果は期待できない。衝突した原液はフリンガ52側面と先端の液返し53の作用により、外胴ボウル4側へ噴流の向きを変える。これによりシール装置45への噴流の浸入を最小限とする。僅に浸入した液はラビリンス59の側面に当り向きを変えられ、ラビリンスリング62の下部に流下し、更に前記ドレン孔60からシール装置45側へ排出される。
【0063】
而して、固形物によりラビリンスシールの溝が埋り、或は前記ガスシール部30のシール面に固形物が付着することが防止される。
【0064】
次に、図5に於いて、前記シール装置46について説明する。尚、図5中、図1〜図4中で示したものと同等のものには同符号を付してある。又、図5中、68はフレーム1(図2参照)に設けられたブラケットを示している。
【0065】
ブラケット68にリング状のシールケース69が固着され、該シールケース69の反プーリ10側にシールフランジ71が固着されている。該シールフランジ71は、前記プーリ10側に突出するリング状の凸部72を有し、該凸部72が前記シールケース69に嵌合している。又、前記凸部72の先端内縁部全周には土手部73が形成され、前記凸部72の内側にはリング突条74が同心に突設されている。前記シールフランジ71の下部にはドレン流路80が穿設され、該ドレン流路80の一端は前記凸部72の内周面の最下位置に開口すると共に他端は前記シールフランジ71の下面に開口している。
【0066】
前記プーリ10を貫通する前記フィードパイプ13が前記シールフランジ71に支持され、該シールフランジ71と前記フィードパイプ13間はOリング等のシール部材70が介設されている。
【0067】
前記プーリ10の前記ブラケット68に対峙する端面にリング状の環座75が固着されている。該環座75は円筒部76を有し、該円筒部76に嵌合された回転環28が前記環座75に取付けられ、前記回転環28は前記環座75に回止されている。又、前記プーリ10と前記環座75間、該環座75と前記回転環28間にはそれぞれシール部材81,82が介設され接合面がシールされている。
【0068】
前記円筒部76の端面に略円筒形状の液受け77が固着され、前記環座75と前記液受け77とにより前記回転環28の内周部が挾持されている。前記液受け77は前記凸部72と前記リング突条74との間に延出しており、先端部は前記リング突条74と対向し、先端部内縁には液返し78が突設されている。前記シールケース69、前記凸部72、前記回転環28、前記液受け77とで形成される空間にはシールリング34が収納されている。該シールリング34の収納構造については、前記シール装置45で説明したと同様である。前記液受け77は前記シールリング34を収納する空間と前記フィードパイプ13の周囲とを遮蔽するカバーとしても機能している。
【0069】
前記本体駆動用モータ5により前記プーリ10が高速回転されると、前記環座75、前記回転環28、前記液受け77が一体に高速回転する。シールガス供給路41からシール座36と前記シールリング34との間にシールガスが供給されることでガスシールが形成される。
【0070】
前記フィードパイプ13の周囲から前記液受け77の内部に浸入した液体、或はミストは、前記液受け77と連回り、更に前記液返し78により中心側に飛ばされる。飛ばされた液体は前記リング突条74に当接して流下し、前記液受け77の下側に溜り、前記液返し78を越え前記ドレン流路80から排出される。
【0071】
従って、前記フィードパイプ13の支持部に漏出した液体、ミストが前記シールリング34、前記回転環28のシール面に浸入することはなく、固形物がシール面に付着することが防止される。
【0072】
又、スクリュウデカンタ型遠心分離機が停止された場合、前記液受け77と連回っていた液体は一度に落下するが、一旦前記液受け77の下部に溜り、更に前記凸部72の内周面の下部に落下し、前記土手部73により機内側への移動が妨げられ前記ドレン流路80から排出される。
【0073】
従って、スクリュウデカンタ型遠心分離機の停止時にも、ガスシール部に液体が浸入することが防止される。
【0074】
上述した様に、回転部と固定部との間は、ガスシール、ラビリンスシールでシールされ、前記ケーシング12が気密に保持され、処理する原液が有害物を含む場合、或は原液の液体が有機溶剤である場合にも、ケーシング12から有害物、有機溶剤が漏出することが防止される。又、回転部と固定部との間は非接触でシールされているので、摩耗が無く、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明が実施されるスクリュウデカンタ型遠心分離機を示す一部を破断した斜視図である。
【図2】該スクリュウデカンタ型遠心分離機の概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の要部を示す断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態の要部を示す断面図である。
【図6】従来のシール構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 フレーム
4 外胴ボウル
5 本体駆動用モータ
7 内胴スクリュウ
8 差動変速機
10 プーリ
11 減速機用制動モータ
12 ケーシング
13 フィードパイプ
14 液体排出口
15 固体排出口
21 回転軸
30 ガスシール部
34 シールリング
36 シール座
39 間隙
41 シールガス供給路
42 連絡路
45 シール装置
52 フリンガ
53 液返し
56 シール装置取付け孔
57 シールケース
59 ラビリンスリング
62 ラビリンスリング押え
63 円筒部
68 ブラケット
71 シールフランジ
72 凸部
73 土手部
74 リング突条
76 円筒部
77 液受け
78 液返し
80 ドレン流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速回転する外胴ボウルと、該外胴ボウル内に所要の回転差で回転する様に設けられた内胴スクリュウと、該内胴スクリュウ内に挿通され原液を供給するフィードパイプを具備し、前記外胴ボウルが密閉構造のケーシングに収納された遠心分離機に於いて、前記外胴ボウルを含む回転部と前記ケーシングとの間に非接触型のシール装置が設けられ、該シール装置の機内側に該シール装置のシール面より大径のフリンガを前記回転部に設けたことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記フリンガの周縁部に機内側に向って液返しが突設された請求項1の遠心分離機。
【請求項3】
前記フリンガの外周面に所要の間隙を隔てて対峙する円筒部が前記ケーシング側に設けられた請求項1の遠心分離機。
【請求項4】
前記シール装置は機内側から第1ラビリンスシール部、ガスシール部、第2ラビリンスシール部が配設されて構成された請求項1の遠心分離機。
【請求項5】
前記フィードパイプの支持部と回転部との間にガスシール部が設けられ、前記回転部の端部に前記ガスシール部を遮蔽する円筒状の液受けが設けられた請求項1の遠心分離機。
【請求項6】
前記液受けの先端部内縁に液返しが突設された請求項5の遠心分離機。
【請求項7】
前記フィードパイプの支持部の内側に位置し、前記液返しに対峙する様にリング突条が設けられた請求項6の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−38160(P2007−38160A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226511(P2005−226511)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】