説明

遠心式気水分離器

【課題】 簡易な構造で圧力損失の少ない遠心式気水分離器を提供する。
【解決手段】 縦向き円筒状の胴15、この胴15の周側壁に設けられる蒸気入口管16、胴15の上部に設けられる蒸気出口管17、胴15の下部に設けられる分離水出口管18、蒸気入口管16から胴15内への蒸気導入部に設けられるガイド板19、このガイド板19の上部に設けられる蓋板20を備える。ガイド板19は、蒸気入口管16から導入される蒸気の旋回を促進する曲線状の板材である。また、ガイド板19は、蒸気入口管16から胴15内へ導入される蒸気と、その蒸気が胴15内で旋回されることで分離される水との衝突を防止する。一方、蓋板20は、蒸気入口管16から導入される蒸気が胴15に衝突した際の水の跳ね上げを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠心式の気水分離器(セパレータ)に関するものである。特に、ボイラに取り付けて蒸気の乾き度を向上させる遠心式気水分離器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心式気水分離器は、縦向き円筒状の胴を備え、その周側部に蒸気入口管、上部に蒸気出口管、下部に分離水出口管が設けられる。そして、蒸気入口管から胴内に、ボイラからの蒸気が接線方向で導入される。この際、ボイラからの蒸気は、気水混合体としての湿り飽和蒸気とされる。胴内へ導入された蒸気は、胴内で旋回して気水分離が図られる。すなわち、旋回による遠心力で、水分は外周部へ飛ばされて下方へ脱落する一方、そのような遠心分離により乾き度を向上された蒸気は、上方の蒸気出口管から導出される。
【0003】
このような遠心式気水分離器の改良として、下記特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示される発明が提案されている。いずれの発明も、胴および蒸気入口管を内外二重にして、乾き度の向上を図ろうとするものである。
【特許文献1】特開平3−249962号公報
【特許文献2】特開2002−119815号公報
【特許文献3】特開2005−349318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記各特許文献に記載の発明は、胴および蒸気入口管を内外二重に構成しており、構造が複雑で、製造に手間とコストを要する。また、特に蒸発量の大きなボイラでは、水位の制御幅を十分に確保するために、気水分離器における圧力損失の一層の低減が求められる。以下、後者について、より具体的に説明する。
【0005】
まず前提として、ボイラの缶体の水位制御では、水位を下げ過ぎると、水管が過熱するおそれがある一方、水位を上げ過ぎると、導出される蒸気の乾き度が落ちるおそれがある。そこで、水管の過熱を防止しつつ、乾き度の高い蒸気を得るために、適正範囲に水位を維持する必要がある。この適正範囲は、バーナの燃焼量の他、缶内圧力および給水温度に基づき求められ、また場合により缶水電気伝導度なども考慮して求められる。
【0006】
上述したように、水位の適正範囲の内、下限は過熱限界との関係で決まるが、上限は乾き度との関係で決まる。水位の制御幅を十分に確保するには、上限を上げればよいが、乾き度との関係で制約がある。しかも、気水分離器とそれへの配管の圧力損失により、気水分離器内の水位は、缶体内の水位よりも高くなる。この際、圧力損失が大きい程、缶体と気水分離器との水位差は大きくなる。従って、水位の制御幅の上限は、気水分離器との関係でも制約される。そこで、水位の制御幅を十分に確保するために、気水分離器における圧力損失の一層の低減が求められる。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、簡易な構造で、圧力損失の少ない遠心式気水分離器を提供することにある。これにより、たとえば、ボイラの水位の適正範囲の上限を高め、ボイラの水位の制御幅をより大きく確保できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、縦向き円筒状で、上部に蒸気出口管が設けられる一方、下部に分離水出口管が設けられる胴と、横向き円筒状で、前記胴の周側壁に対し接線方向に接続される蒸気入口管と、この蒸気入口管から前記胴内へ導入される蒸気と、その蒸気が前記胴内で旋回されることで分離される水とが衝突しないように、前記蒸気入口管から前記胴内への蒸気導入部に設けられるガイド板と、このガイド板の上部に配置され、前記蒸気入口管から導入される蒸気が前記胴に衝突した際の水の跳ね上げを防止する蓋板とを備えることを特徴とする遠心式気水分離器である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、胴および蒸気入口管を内外二重にすることなく、簡易な構造で有効に気水分離を図ることができる。また、簡易な構造とすることで、圧力損失を低減することもできる。従って、ボイラの水位の適正範囲の上限を高め、ボイラの水位の制御幅をより大きく確保することも可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、円筒状でその軸線を上下方向へ沿って配置され、上部に蒸気出口管が設けられる一方、下部に分離水出口管が設けられる胴と、この胴よりも小径の円筒状で、その軸線を左右方向へ沿って配置され、軸方向一端部の周側壁後端部を前記胴の周側壁後端部に配置して、前記胴の周側壁に接続される蒸気入口管と、この蒸気入口管の周側壁前端部と前記胴の周側壁との接続部から、前記胴の内方かつ後方へ延出するガイド板と、このガイド板の上部に配置される蓋板とを備えることを特徴とする遠心式気水分離器である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、胴および蒸気入口管を内外二重にすることなく、簡易な構造で有効に気水分離を図ることができる。また、簡易な構造とすることで、圧力損失を低減することもできる。従って、ボイラの水位の適正範囲の上限を高め、ボイラの水位の制御幅をより大きく確保することも可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記ガイド板は、前記蒸気入口管と対応した高さにおいて、前記蒸気入口管の周側壁前端部と前記胴の周側壁との接続部から、前記胴の内方へ行くに従って後方へ延出した後、前記胴の左右方向中央部よりも延出部は前方へまわり込むように、円弧状に湾曲された垂直板から構成され、前記蓋板は、前記蒸気入口管の周側壁上端部と対応した高さにおいて、前記ガイド板の上端部と前記胴の周側壁後部との隙間を閉塞するように保持される水平板から構成されることを特徴とする請求項2に記載の遠心式気水分離器である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ガイド板は、蒸気入口管から胴内へ導入される蒸気と、その蒸気が胴内で旋回されることで分離される水との衝突を、一層確実に防止すると共に、胴内における蒸気および分離水の旋回を妨げることもない。また、蓋板は、蒸気入口管から導入される蒸気が胴に衝突した際の水の跳ね上げを、一層確実に防止する。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記胴の下端部の中央部に、下方へ延出して前記分離水出口管が接続され、前記胴内の下部には、バッフル板が設けられ、このバッフル板は、その外周部と前記胴の内周部との間に隙間を空けて、水平に保持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠心式気水分離器である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、胴内における分離水の渦を防止して、胴から分離水出口管への分離水の排出を円滑かつ確実に行うことができる。また、胴内における分離水の渦を防止して、分離水の蒸気への巻き込みを防止し、蒸気の乾き度を向上することもできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、簡易な構造で、圧力損失の少ない遠心式気水分離器を提供することができる。これにより、たとえば、ボイラの水位の適正範囲の上限を高め、ボイラの水位の制御幅をより大きく確保することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
遠心式気水分離器は、縦向き円筒状の胴、この胴の周側壁に設けられる蒸気入口管、前記胴の上部に設けられる蒸気出口管、前記胴の下部に設けられる分離水出口管を備える。
【0018】
蒸気入口管は、横向き円筒状で、胴の周側壁に対し接線方向に接続される。従って、蒸気入口管から胴内へ蒸気(気水混合体)を導入すると、その蒸気は胴内において旋回して気水分離が図られる。そして、気水分離により分離された水は、胴下部の分離水出口管から導出可能とされ、気水分離により乾き度を向上された蒸気は、胴上部の蒸気出口管から導出される。
【0019】
このような構成の遠心式気水分離器において、本発明の一実施形態では、蒸気入口管から胴内への蒸気導入部に、ガイド板が設けられる。このガイド板は、蒸気入口管から胴内へ導入される蒸気と、その蒸気が胴内で旋回されることで分離される水とが衝突しないように、また蒸気および分離水の旋回を妨げないように設けられる。そして、そのガイド板の上部には、蒸気入口管から導入される蒸気が胴に衝突した際の水の跳ね上げを防止する蓋板が設けられる。
【0020】
より具体的には、以下のとおりである。ここでは、蒸気入口管を胴の後方で左右方向へ沿って配置した状態で説明する。すなわち、胴よりも小径の円筒状の蒸気入口管は、その軸線を左右方向へ沿って配置されると共に、軸方向一端部の周側壁後端部を胴の周側壁後端部に配置されて、胴の周側壁に接続される。
【0021】
この場合、ガイド板は、蒸気入口管の周側壁前端部と胴の周側壁との接続部から、胴の内方かつ後方へ延出して設けられる。この際、ガイド板は、蒸気入口管と対応した高さにおいて、蒸気入口管の周側壁前端部と胴の周側壁との接続部から、胴の内方へ行くに従って後方へ延出した後、胴の左右方向中央部よりも延出部は前方へまわり込むように、円弧状に湾曲された垂直板から構成されるのがよい。一実施形態において、この垂直板の高さは、蒸気入口管の直径と対応している。
【0022】
一方、蓋板は、ガイド板の上部に配置される板材である。この際、蓋板は、蒸気入口管の周側壁上端部と対応した高さにおいて、ガイド板の上端部と胴の周側壁後部との隙間を閉塞するように保持される水平板から構成されるのがよい。具体的には、蓋板は、胴の平面視において、胴の後方半周部に設けられると共に、ガイド板の上端部と胴の周側壁との隙間を閉塞するよう設けられる。
【0023】
以上のとおり、本実施形態の遠心式気水分離器では、旋回促進を目的として、蒸気入口管から胴内への蒸気導入部に、曲線状のガイド板を取り付けた。このガイド板により、蒸気入口管から胴内へ導入される蒸気と、その蒸気が胴内で旋回されることで分離される水との衝突が防止される。しかも、胴内における蒸気および分離水の旋回は、ガイド板により妨げられることはない。
【0024】
また、本実施形態の遠心式気水分離器では、蒸気入口管から導入される蒸気が胴に衝突した際の水の跳ね上げを防止することを目的として、ガイド板の上部に蓋板を取り付けた。この蓋板により、旋回による気水分離後の蒸気に、前記跳ね上げによる水が混入するのが防止される。
【0025】
このようにして、簡易な構成にて、確実な気水分離を図ることができる。しかも、簡易な構造とすることで、圧力損失を低減することもできる。これにより、ボイラ缶体と気水分離器との水位差が抑制される。従って、ボイラの水位の適正範囲の上限を高め、ボイラの水位の制御幅をより大きく確保することも可能となる。
【0026】
ところで、一実施形態において、分離水出口管は、胴の下端部の中央部に、下方へ延出して設けられる。この場合、胴内において分離水が渦を巻くと、分離水出口管への排出に支障を来したり、分離水を巻き込んで蒸気の乾き度を下げたりするおそれがある。そこで、胴内の下部にはバッフル板を設けるのがよい。この場合、バッフル板の外周部と胴の内周部との間に隙間を空けて、その隙間を介して上下の空間を連通させるのが簡易である。
【実施例】
【0027】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の遠心式気水分離器の一実施例を備えるボイラを示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例の遠心式気水分離器1は、各種のボイラに設置可能であるが、図1では、円筒状の缶体2を備える多管式貫流ボイラ3に設置されている。
【0028】
図示例のボイラ3の場合、缶体2は、円環状の上部管寄せ4と下部管寄せ5との間を、円筒状に配列された多数の水管6,6,…、7,7,…で接続して構成される。上部管寄せ4と下部管寄せ5とは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ中空の円環状とされている。また、上部管寄せ4と下部管寄せ5とは、それぞれ水平に配置されると共に、同一軸線上に配置される。
【0029】
各水管6,7は、垂直に配置され、上端部が上部管寄せ4に接続される一方、下端部が下部管寄せ5に接続される。各水管6,7は、上部管寄せ4と下部管寄せ5との周方向へ順次に配列されることで、円筒状の水管列を構成する。図示例では、内側水管列8と外側水管列9とが同心円筒状に配列される。内側水管列8を構成する内側水管6と、外側水管列9を構成する外側水管7とは、缶体2の周方向へ行くに従って互い違いに配置される。
【0030】
各管寄せ4,5と各水管6,7との接続部には、耐火材10,10が設けられる。この際、下部管寄せ5側の耐火材10は、下部管寄せ5の中央部を閉塞するように設けられる。上部管寄せ4と下部管寄せ5との間にはさらに、外側水管列9を取り囲むように、円筒状の缶体カバー11が設けられる。缶体カバー11は、上端部において、上部管寄せ4との隙間が封止され、下端部において、下部管寄せ5との隙間が封止される。そして、缶体カバー11の所望箇所には、煙道12が接続される。この煙道12は、エコノマイザ13を介して、煙突(図示省略)に接続される。エコノマイザ13では、缶体2からの排ガスを利用して、下部管寄せ5への給水が予熱される。
【0031】
上部管寄せ4の中央部には、下方へ向けてバーナ14が設けられる。このバーナ14には、燃料が供給されると共に、燃焼用空気が供給される。バーナ14を作動させることで、缶体2内において燃料の燃焼が行われる。その燃焼ガスは、各水管6,7内の水と熱交換し、排ガスとして煙道12から排出される。この間、燃焼ガスは、各水管6,7内の水と熱交換し、各水管6,7内の水を加熱する。これにより、上部管寄せ4から蒸気を取り出すことができ、その蒸気は気水分離器1へ送られ、乾き度を向上された後、蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。
【0032】
図2は、本実施例の遠心式気水分離器1の縦断面図である。また、図3は、そのIII−III断面図、図4はIV−IV断面図である。さらに、図5は、本実施例の遠心式気水分離器1の内部構造を示す概略斜視図である。
【0033】
本実施例の遠心式気水分離器1は、縦向き円筒状の胴15、この胴15の周側壁に設けられる蒸気入口管16、前記胴15の上部に設けられる蒸気出口管17、前記胴15の下部に設けられる分離水出口管18、前記蒸気入口管16から前記胴15内への蒸気導入部に設けられるガイド板19、このガイド板19の上部に設けられる蓋板20、および前記胴15内の下部に設けられるバッフル板21を備える。
【0034】
胴15は、上下の開口部に鏡板22,23が設けられた円筒状で、その軸線を上下方向へ沿って配置される。上側の鏡板22は、上方へ膨出した緩やかな球面状に形成されており、その中央部には、円管状の蒸気出口管17が上方へ延出して設けられる。一方、下側の鏡板23は、下方へ膨出した緩やかな球面状に形成されており、その中央部には、円管状の分離水出口管18が下方へ延出して設けられる。また、胴15の周側壁上部には、略L字形状のエルボ管24が設けられており、このエルボ管24には、安全弁(図示省略)が取り付けられる。
【0035】
蒸気入口管16は、胴15より小径の円筒状で、添付図面では、その軸線を左右方向へ沿って配置される。蒸気入口管16は、胴15の上下方向中央部において、胴15の周側壁に接続される。その際、蒸気入口管16は、その軸方向一端部を胴15内に突入して、胴15の周側壁に接続される。
【0036】
蒸気入口管16の軸方向一端部は、図3に示すように、斜めに切り落とされた形状である。具体的には、蒸気入口管16の軸方向一端部は、軸方向一端側へ行くに従って後方へ傾斜した形状である。
【0037】
蒸気入口管16は、このように傾斜した軸方向一端部が胴15内に差し込まれて、胴15の周側壁に接続される。その際、蒸気入口管16は、その軸方向一端部において、周側壁後端部が胴15の周側壁後端部に配置される。具体的には、蒸気入口管16は、前記傾斜の先端部(前記傾斜により軸方向一端側へ最も延出する部分)25の外面が、胴15の左右方向中央部の後方内周面に当接されて配置される。そして、その状態では、蒸気入口管16は、その軸方向一端部において、周側壁前端部が胴15の周側壁の前後方向中央部に配置される。具体的には、蒸気入口管16は、前記傾斜の基端部26が、胴15の周側壁の前後方向中央部に配置される。
【0038】
蒸気入口管16は、その軸方向他端部に、フランジ27を備える。このフランジ27を用いて、蒸気入口管16には、上部管寄せ4からの管路28(図1)が接続される。このようにして、ボイラ3の缶体2からの蒸気は、蒸気入口管16を介して、胴15内に接線方向で導入される。
【0039】
蒸気出口管17は、胴15より小径の円管状で、その軸線を上下方向へ沿って配置される。蒸気出口管17は、その下端部が胴15の上側の鏡板22の中央部に接続される。また、蒸気出口管17は、その上端部にフランジ29を備える。このフランジ29を用いて、蒸気出口管17には、蒸気使用設備への管路(図示省略)が接続される。
【0040】
分離水出口管18は、胴15より小径の細長い円管状で、その軸線を上下方向へ沿って配置される。分離水出口管18は、その上端部が胴15の下側の鏡板23の中央部に接続される。また、分離水出口管18は、その下端部にフランジ30を備える。このフランジ30を用いて、分離水出口管18には、下部管寄せ5への管路31(図1)が接続される。
【0041】
分離水出口管18は、前記フランジ30よりも少し上方位置に、缶水の電気伝導度を計測するための電気伝導度センサ(図示省略)の取付部32と、遠心式気水分離器1内の水を外部へ排水するための電磁弁(図示省略)の取付部33とが設けられる。
【0042】
ガイド板19は、略長方形状の板材で、その板面を前後へ向けて配置される。ガイド板19は、図3に示すように、後方へ膨出するよう湾曲されている。ガイド板19は、図2に示すように、上下方向の高さが、蒸気入口管16の外径と同一寸法とされている。そして、ガイド板19は、蒸気入口管16と対応した高さに設置される。
【0043】
ガイド板19は、前述したように、平面視において、後方へ膨出するよう湾曲されている。この湾曲は、適宜に設定されるが、本実施例では図3に示すように、「へ」の字状とされている。具体的には、蒸気入口管16の軸方向一端部に形成した前記傾斜の基端部(蒸気入口管16の周側壁前端部と胴15の周側壁との接続部)26から、胴15の内方へ行くに従って後方へ延出した後、胴15の左右方向中央部よりも延出部は前方へまわり込むように、円弧状に湾曲されている。この際、図3に示す平面視において、ガイド板19の延出側の端部は、分離水出口管18の後方から回り込むのと対応した形状とされている。
【0044】
蓋板20は、略半円形状の板材で、その板面を上下へ向けて、ガイド板19の上端縁に水平に配置される。具体的には、蓋板20は、図3および図5に示すように、平面視において、胴15の後方半周部に設けられると共に、ガイド板19の上端縁から後方へ延出して設けられる。このようにして、蓋板20は、図2に示すように、蒸気入口管16の周側壁上端部と対応した高さにおいて、ガイド板19の上端部と胴15の周側壁後部との隙間を閉塞するように、胴15の後方半周部に設けられる。
【0045】
バッフル板21は、略円板状の板材で、その板面を上下へ向けて、胴15内の下部に水平に配置される。具体的には、バッフル板21は、胴15の内径よりも若干小径の円板状であり、その外周部には、周方向等間隔に、円弧状の切欠き34が形成されている。図示例では、外周部に四つの切欠き34が形成されている。このバッフル板21の底面には、十字状に板材が立てられて、脚部35が設けられている。この脚部35の下端部は、下側の鏡板23の円弧と対応した形状とされている。
【0046】
このような構成であるから、下側の鏡板23の上部に、脚部35で安定してバッフル板21を水平に保持することができる。このようにして、分離水出口管18の上部開口を塞ぐことなく、その上部開口よりも少し上方に離隔した位置に、バッフル板21が設けられる。また、バッフル板21の外周部に形成した切欠き34により、バッフル板21の上下は連通される。
【0047】
本実施例の遠心式気水分離器1は、以上のような構成であるから、ボイラ3の上部管寄せ4からの蒸気は、蒸気入口管16を介して、胴15内に接線方向へ導入される。これにより、胴15内において蒸気の旋回流が生じ、気水分離が図られる。具体的には、上部管寄せ4からの蒸気は、気水混合体としての湿り飽和蒸気とされるが、胴15内で旋回されることで、遠心力により気水分離が図られる。すなわち、遠心力により水分は外方へ飛ばされて下方へ脱落する一方、そのような遠心分離により乾き度を向上された蒸気は、上方の蒸気出口管17から導出される。
【0048】
本実施例の遠心式気水分離器1は、蒸気入口管16から胴15内への蒸気導入部に、曲線状のガイド板19を取り付けたので、胴15内における蒸気の旋回が促進される。また、このガイド板19は、蒸気入口管16から胴15内へ導入される蒸気と、その蒸気が胴15内で旋回されることで分離される水との衝突を防止する。さらに、胴15内における蒸気および分離水の旋回は、ガイド板19により妨げられることはない。
【0049】
また、本実施例の遠心式気水分離器1は、蒸気入口管16から胴15内への蒸気導入部において、ガイド板19の上部に蓋板20を取り付けた。これにより、蒸気入口管16から導入される蒸気が胴15に衝突した際の水の跳ね上げが防止される。従って、旋回による気水分離後の蒸気に、前記跳ね上げによる水が混入されるのが防止される。
【0050】
また、胴15内の下部には、バッフル板21が設けられている。これにより、胴15内の水が分離水出口管18へ排出される際に渦が生じるのが防止される。従って、分離水出口管18への排水が円滑になされると共に、蒸気出口管17への蒸気に分離水が巻き込まれるのが防止される。
【0051】
このようにして、簡易な構成で、確実に気水分離を図ることができる。しかも、簡易な構成とすることで、圧力損失を低減することもできる。これにより、気水分離器1と缶体2との水位差を抑制できる。従って、ボイラ3の限界水位の上限を高め、ボイラ3の水位の制御幅をより大きく確保することができる。
【0052】
本発明の遠心式気水分離器1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、ガイド板19および蓋板20は、前述した機能を発揮すれば、その形状および大きさは適宜に変更可能である。
【0053】
また、前記実施例では、円筒状の缶体2を備えるボイラ3に適用したが、缶体構造は、図1の構成に限らない。たとえば、角型の缶体で、その左右方向一端部にバーナが設けられ、左右方向他端部から排ガスを導出するタイプの缶体にも、同様に適用可能である。また、図1では、内側水管列8の内側で燃料を燃焼させたが、バーナ14を設ける代わりに、内側水管列8の内側に排ガスを導入する缶体であってもよい。すなわち、ボイラ3は、廃熱ボイラや排ガスボイラであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の遠心式気水分離器の一実施例を備えるボイラの一例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【図2】本発明の遠心式気水分離器の一実施例の縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】図2の遠心式気水分離器の内部構造を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 遠心式気水分離器
2 缶体
3 ボイラ
15 胴
16 蒸気入口管
17 蒸気出口管
18 分離水出口管
19 ガイド板
20 蓋板
21 バッフル板
25 傾斜の先端部
26 傾斜の基端部
34 切欠き
35 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向き円筒状で、上部に蒸気出口管が設けられる一方、下部に分離水出口管が設けられる胴と、
横向き円筒状で、前記胴の周側壁に対し接線方向に接続される蒸気入口管と、
この蒸気入口管から前記胴内へ導入される蒸気と、その蒸気が前記胴内で旋回されることで分離される水とが衝突しないように、前記蒸気入口管から前記胴内への蒸気導入部に設けられるガイド板と、
このガイド板の上部に配置され、前記蒸気入口管から導入される蒸気が前記胴に衝突した際の水の跳ね上げを防止する蓋板と
を備えることを特徴とする遠心式気水分離器。
【請求項2】
円筒状でその軸線を上下方向へ沿って配置され、上部に蒸気出口管が設けられる一方、下部に分離水出口管が設けられる胴と、
この胴よりも小径の円筒状で、その軸線を左右方向へ沿って配置され、軸方向一端部の周側壁後端部を前記胴の周側壁後端部に配置して、前記胴の周側壁に接続される蒸気入口管と、
この蒸気入口管の周側壁前端部と前記胴の周側壁との接続部から、前記胴の内方かつ後方へ延出するガイド板と、
このガイド板の上部に配置される蓋板と
を備えることを特徴とする遠心式気水分離器。
【請求項3】
前記ガイド板は、前記蒸気入口管と対応した高さにおいて、前記蒸気入口管の周側壁前端部と前記胴の周側壁との接続部から、前記胴の内方へ行くに従って後方へ延出した後、前記胴の左右方向中央部よりも延出部は前方へまわり込むように、円弧状に湾曲された垂直板から構成され、
前記蓋板は、前記蒸気入口管の周側壁上端部と対応した高さにおいて、前記ガイド板の上端部と前記胴の周側壁後部との隙間を閉塞するように保持される水平板から構成される
ことを特徴とする請求項2に記載の遠心式気水分離器。
【請求項4】
前記胴の下端部の中央部に、下方へ延出して前記分離水出口管が接続され、
前記胴内の下部には、バッフル板が設けられ、
このバッフル板は、その外周部と前記胴の内周部との間に隙間を空けて、水平に保持される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠心式気水分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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