説明

遠心式送風機

【課題】冷却通路部内に浸入した流体の回転駆動源内への浸入を防ぐことにより、回転駆動源の故障を防ぐことが可能な遠心式送風機を提供する。
【解決手段】遠心式送風機10の冷却通路部36は、回転駆動源12を冷却する冷却風を取り込むための冷却風導入孔30a、30bと、冷却風導入孔30a、30bよりも下流に形成された流体貯留室37を有し、流体貯留室37は第1リブ50を有する。第2リブ48によって冷却風導入孔30から導入された流体の漏出を阻止する。また、冷却通路部36は、さらに、流体貯留室37の第1底面46に形成されたドレン穴52と、ドレン穴52と第1リブ50との間に設けられ、第1底面46からの高さが第1リブ50の高さよりも低い第2リブ48を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心式送風機に関し、一層詳細には、車両に搭載される空調装置に組み込まれる遠心式送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置には、車室内空気又は車室外空気を取り込むファンと、前記ファンを回転させるモータを備えた遠心式送風機が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来の遠心式送風機の概略説明図である。遠心式送風機100は、回転駆動源102と、前記回転駆動源102によって回転駆動されるファン104と、前記回転駆動源102を囲繞するように保持する保持部108が形成されたハウジング106とを備える。
【0004】
ハウジング106には、回転駆動源102を冷却するための冷却風を流通させる冷却通路110が形成され、前記冷却通路110には開口部112が形成されている。
【0005】
このように構成される遠心式送風機100では、回転駆動源102を駆動して、ファン104を回転させることにより車室内に空気を送り込んでいるが、長時間にわたって回転駆動源102を駆動させていると、回転駆動源102自体が発熱する場合がある。そこで、この遠心式送風機100では、回転駆動源102の発熱を抑えるために、ファン104で発生した風を回帰させて開口部112から、冷却風を矢印に示すように冷却通路110内に取り込み、回転駆動源102まで流通させて回転駆動源102の周囲を冷却している。
【0006】
【特許文献1】特開2003−328994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のような構造では、開口部112から冷却通路110内に液体、例えば水が浸入した場合には、冷却風とともに回転駆動源102にまで前記水が到達し、回転駆動源102の故障の原因となる場合があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、冷却通路を介した回転駆動源への流体の浸入を防ぐことにより、回転駆動源の故障を回避することが可能な遠心式送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る遠心式送風機は、回転駆動源と、前記回転駆動源を囲繞して保持する保持部が形成されたハウジングと、前記回転駆動源の回転駆動軸に連結されたファンとからなり、前記ハウジングは、前記回転駆動源を冷却するための空気を導出する冷却通路部を備え、前記冷却通路部は、前記回転駆動源を冷却する冷却風を取り込むための冷却風導入孔と、前記冷却風導入孔よりも下流に形成された流体貯留室と、を有し、前記流体貯留室には第1リブが立設され、前記第1リブによって前記冷却風導入孔から導入された流体の漏出を阻止することを特徴とする。
【0010】
また、前記流体貯留室にはドレン穴が設けられ、さらに、前記ドレン穴と前記第1リブとの間に設けられ、前記流体貯留室の底面部からの高さが前記第1リブの高さよりも低い第2リブと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、流体貯留室に流体が浸入した場合であっても、第1リブによって前記流体が貯留される。流体貯留室に貯留された流体の一部は、ドレン穴から排出される。従って、前記流体の回転駆動源への浸入を妨げ、回転駆動源の故障を防ぐことができる。また、流体貯留室の底面部に流体が貯留し生じる表面張力によって流体の表面が盛り上がった場合にも、第1リブによって回転駆動源への浸入を防ぐことができる。さらに、第2リブを設けることにより、冷却通路部内を流通する冷却風がドレン穴から外部へ漏出するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る遠心式送風機について好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係る遠心式送風機10の一部縦断正面図、図2は遠心式送風機10のファンと保持部を縦断した一部正面断面図、図3は遠心式送風機10のファンと保持部の概略斜視説明図、図4は遠心式送風機10の概略分解斜視説明図である。
【0013】
本実施形態に係る遠心式送風機10は、モータ等からなる回転駆動源12と、前記回転駆動源12の駆動作用下に回転駆動するファン14と、前記回転駆動源12を囲繞し保持するための円筒状の保持部18を有するハウジング16とを備える。
【0014】
保持部18の内周壁には、回転駆動源12との隙間を形成するために等間隔に複数のリブ20が軸線方向に沿って膨出形成される。また、保持部18から半径方向に円盤状のフランジ22が延在し、前記フランジ22の表面には、半径方向に等間隔且つ等角度で5本の棒状の整流部材24が配設されている。前記整流部材24は、ファン14の回転によって生起され、フランジ22の表面を流れる空気を整流するためのものである。
【0015】
フランジ22の周縁部には、周回して凹部26が形成され、前記凹部26の外周の一部が膨出形成され、この膨出部28a、28bに孔部44a、44bが形成される。前記孔部44a、44bは、ボルトを挿通し、この図示しないボルトにナット(図示せず)を螺合させてハウジング16を固定するためのものである。
【0016】
さらに、前記周回する凹部26には、矩形状の膨出部32が半径外方向に突出形成される。前記膨出部32の内部には、平面矩形状の冷却風導入孔30a、30bが形成され、前記膨出部32の下側は蓋部材34によって閉塞される。後述するように、前記膨出部32と蓋部材34によって冷却通路部36が形成される。前記冷却通路部36の内部空間は、流体貯留室37として形成され(図5、図6参照)、この流体貯留室37は、保持部18の側壁に形成された開口部38を介して回転駆動源12の周囲に冷却風を導出して、これを冷却する。
【0017】
冷却風の回転駆動源12への供給について、さらに詳細に説明すれば、冷却通路部36を構成する蓋部材34には、図5〜図7に示すように、冷却風導入孔30a、30bに対応する位置に通路凹部40a、40bが設けられ、これら通路凹部40aと通路凹部40bとの間に矩形状の膨出部42が形成される。実際、前記流体貯留室37の一部はこれら通路凹部40a、40bによって形成される。前記膨出部42の頂部中央には前記膨出部28a、28bに設けられた孔部44a、44bと共働してハウジング16をボルト、ナットで固定するための孔部44cが形成されている。
【0018】
前記流体貯留室37の第1底面46には、前記膨出部42が終端する位置の近傍に一方のリブ48が立設され、さらに前記一方のリブ48に平行に他方のリブ50が立設される。図2から容易に諒解されるように、本実施形態では、一方のリブ48(以下、第2リブと称する)よりも他方のリブ50(以下、第1リブと称する)が高く形成されている。その理由は、追って説明する。
【0019】
なお、前記第2リブ48の立ち上がり部位近傍の上流にドレン穴52を設けておく。ドレン穴52は流体貯留室37から流体を外部に排出するためのものである。
【0020】
前記流体貯留室37の第1底面46は、その終端部分が第1リブ50の立設部位近傍から延在する傾斜面54に続き、この傾斜面54の終端部分は垂直面56を経て第2底面58に続く。
【0021】
前記回転駆動源12の上部には、図1、図2に示すように円錐台状のカバー部材60が設けられ、前記カバー部材60を貫通して、回転駆動源12の回転駆動軸62が突出する。回転駆動軸62にはファン14の中央部位が嵌合し、ナット64によって緊締されてファン14が回転駆動源12に固着される。ファン14は従来技術に係るものであるためにここでは詳細には説明しない。なお、カバー部材60の拡開する側面には、回転駆動源12を冷却した冷却風を排出するための複数の排風孔66が形成されている。
【0022】
前記のとおり、第2リブ48の第1底面46からの高さは、第1リブ50よりもその高さを低くしている。この第2リブ48は、冷却風導入孔30a、30bより導入する回転駆動源12からの冷却風が流体を排出させるドレン穴52より漏れることを防ぐためのものである。従って、冷却風の漏出防止が達成され且つ円滑に冷却風を回転駆動源12側に導くために第2リブ48の高さを第1リブ50のそれよりも低くした。
【0023】
この場合、ドレン穴52は、図示しない車室内の乗員側に指向させることなく、むしろ乗員の着席する位置と反対側に指向させると良い。乗員に無用な冷却風を当てないためである。
【0024】
前記のように蓋部材34に冷却風導入孔30a、30bを介して流入する流体を貯留する流体貯留室37を形成した。そして、この流体貯留室37からの流体は第1リブ50によって所定の高さに至るまで漏出しないように構成されている。なお、この第1リブ50に代えて、蓋部材34の第1底面46をさらに深く形成してもよい。流体の漏出阻止の効果においては同一だからである。
【0025】
本実施形態の遠心式送風機10は基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果を以下のとおり説明する。遠心式送風機10では、回転駆動源12の駆動によりファン14が回転駆動し、車室内空気又は車室外空気を取り込んだファン14から発生した風の一部が冷却風導入孔30a、30bより回転駆動源12を冷却するための冷却風として取り込まれる。冷却風導入孔30aから取り込まれた冷却風は通路凹部40aを通じて、また、冷却風導入孔30bから取り込まれた冷却風は通路凹部40bを通じて、前記冷却通路部36内を流通する。
【0026】
冷却通路部36内を通過した冷却風は、保持部18の開口部38からその内部に取り込まれ、回転駆動源12と保持部18の複数のリブ20によって形成された隙間68を流通するとともに、回転駆動源12内を流通し排風孔66から排出される。回転駆動源12の内部及び側面を冷却風が流通することにより、回転駆動源12の駆動に伴い発生する発熱を抑えることができる。
【0027】
遠心式送風機10では、冷却風導入孔30a、30bから通路凹部40a、40bを介して冷却通路部36内に流体が浸入した場合には、第1リブ50によって前記流体が流体貯留室37に貯留されドレン穴52から排出される。従って、前記流体の回転駆動源12への浸入を妨げ、回転駆動源12に故障が発生することを防ぐことができる。また、第1リブ50がある程度の高さを有するので、流体が貯留して生じる表面張力によって流体の表面が盛り上がった場合にも、回転駆動源12への浸入を防ぐことができる。さらに、第2リブ48に近接する位置にドレン穴52が設けられているので、冷却通路部36内を流通する冷却風がドレン穴52から外部へ漏出するのを防ぐことができる。
【0028】
また、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の遠心式送風機の一部縦断正面図である。
【図2】図1の遠心式送風機のファンと保持部を縦断した一部正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態の遠心式送風機のファンと保持部の概略斜視説明図である。
【図4】本発明の実施形態の遠心式送風機の概略分解斜視説明図である。
【図5】本発明の実施形態の遠心式送風機を構成するハウジングの一部断面分解斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の遠心式送風機の冷却通路部の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の遠心式送風機の冷却通路部の平面図である。
【図8】従来の遠心式送風機の概略説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10、100…遠心式送風機 12、102…回転駆動源
14、104…ファン 16、106…ハウジング
18、108…保持部 20…リブ
22…フランジ 24…整流部材
26…凹部 28a、28b、32、42…膨出部
30a、30b…冷却風導入孔 34…蓋部材
36…冷却通路部 37…流体貯留室
38、112…開口部 40a、40b…通路凹部
44a〜44c…孔部 46…第1底面
48…第2リブ 50…第1リブ
52…ドレン穴 54…傾斜面
56…垂直面 58…第2底面
60…カバー部材 62…回転駆動軸
64…ナット 66…排風孔
68…隙間 110…冷却通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源と、前記回転駆動源を囲繞して保持する保持部が形成されたハウジングと、前記回転駆動源の回転駆動軸に連結されたファンとからなり、
前記ハウジングは、前記回転駆動源を冷却するための空気を導出する冷却通路部を備え、
前記冷却通路部は、
前記回転駆動源を冷却する冷却風を取り込むための冷却風導入孔と、
前記冷却風導入孔よりも下流に形成された流体貯留室と、
を有し、
前記流体貯留室には第1リブが立設され、前記第1リブによって前記冷却風導入孔から導入された流体の漏出を阻止することを特徴とする遠心式送風機。
【請求項2】
請求項1記載の遠心式送風機において、
前記流体貯留室にはドレン穴が設けられ、さらに、前記ドレン穴と前記第1リブとの間に設けられ、前記流体貯留室の底面部からの高さが前記第1リブの高さよりも低い第2リブと、
を有することを特徴とする遠心式送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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