説明

遠赤外線偽装用布帛およびその製造方法

【課題】
撥水性を有し、遠赤外線に対して優れた偽装性を有する遠赤外線偽装布帛ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の遠赤外線偽装布帛は、布帛の少なくとも片面に、金属薄膜層、着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層をこの順に積層せしめ、前記撥水樹脂層表面のJIS L1092−19986.2法に基づいて測定される撥水性が3級以上であることを特徴とする。その製造方法は、布帛の少なくとも片面に、金属蒸着によって金属薄膜層を形成した後、その金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂からなる処理液を塗布、乾燥して着色剤含有樹脂層を形成し、次いで、その着色剤含有樹脂層の表面に撥水樹脂からなる処理液を塗布し、乾燥するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線偽装布帛の改良に関するものであり、詳しくは布帛表面に金属薄膜層、着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層が形成された遠赤外線偽装布帛およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境における偽装技術として、可視および0.8〜1.2μmの波長領域の近赤外線に対する偽装に加え、8〜14μmの波長領域の遠赤外線に対する偽装について鋭意検討がなされている。その遠赤外線に対する偽装技術として、布帛表面に蒸着法、メッキ法等により金属薄膜層を形成した後、迷彩着色剤をプリント法またはコーティング法により付着せしめて得られる遠赤外線偽装布帛等が開示されている。例えば、布帛表面に金属薄膜層を形成し、その表面に着色剤含有樹脂を積層した遠赤外線偽装布帛(例えば、特許文献1)、シート表面に金属薄膜層を形成し、その表面に迷彩プリントを施し、多段階の熱放射率を付与した遠赤外線偽装シート(例えば、特許文献2,3)が提案されている。また、迷彩シートとして、2層以上の防水樹脂層の層間に迷彩プリントが施し、摩擦堅牢度等を向上させた迷彩シート(例えば、特許文献4)が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1、特許文献2および 特許文献3に開示されている遠赤外線偽装布帛は、可視、近赤外線および遠赤外線偽装性は認められるが、撥水性が得られず、撥水性を必要とする分野には適用できなかった。一方、特許文献4に開示されている迷彩シートは、撥水性および可視、近赤外線偽装は認められるが、遠赤外線偽装性が得られないのが実状であった。
【特許文献1】特開平2−48940号公報
【特許文献2】特開2003−260751号公報
【特許文献3】特開2004−53039号公報
【特許文献4】特開2004−132650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点に鑑み、撥水性を有し、遠赤外線に対して優れた偽装性を有する遠赤外線偽装布帛ならびにその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような構成を有する。
【0006】
すなわち、本発明の遠赤外線偽装布帛は、布帛の少なくとも片面に金属薄膜層、着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層をこの順に積層せしめ、前記撥水樹脂層表面のJIS L1092−1998 6.2法に基づいて測定される撥水性が3級以上であることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の遠赤外線偽装布帛の製造方法は、布帛の少なくとも片面に、金属蒸着によって金属薄膜層を形成した後、その金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂からなる処理液を塗布、乾燥して着色剤含有樹脂層を形成し、次いでその着色剤含有樹脂層の表面に撥水樹脂からなる処理液を塗布し、乾燥せしめることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撥水性に優れ、森林や草原などの自然環境に対し、優れた遠赤外線偽装布帛を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、優れた撥水性を有し、自然環境に対して優れた遠赤外線偽装特性を有する布帛を提供せんと鋭意検討したところ、布帛表面に金属薄膜層、着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層を形成せしめることにより、かかる課題を解決できることを見い出したものである。
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。なお、図面に記載のものは一実施例であって、これに限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の遠赤外線偽装布帛の概略図の一例を示したもので、本発明の遠赤外線偽装布帛は、布帛1に接着材2を介して、金属薄膜層であるアルミニウム薄膜層3と、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層4と、撥水樹脂層5とがこの順に積層されて形成されたものである。すなわち、本発明の遠赤外線偽装布帛は、布帛1の少なくとも片面に、接着剤2を介して、金属薄膜層3、着色剤含有樹脂層4および撥水樹脂層5がこの順に形成され、JIS L1092−1998 6.1A法に基づいて測定される撥水性が3級以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明における布帛1とは、織物、編地、不織布をいう。その中でも、布帛強力の面からは、織物が好ましく用いられる。かかる布帛を構成する素材としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合した共重合ポリエステルなどからなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ナイロン6成分とナイロン6・6成分を共重合した共重合ポリアミドなどからなるポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどに代表されるアラミド繊維、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、 ポリプロピレン、ポリウレタンなどの繊維がある。 かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤などを適宜含有せしめてもよい。また、これらの繊維からなる布帛は、染色等により着色されていてもよい。これらの繊維の中でも、金属薄膜加工性、特にスパッタリング加工においてはポリエステル繊維、N66からなるポリアミド繊維、アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0013】
接着剤2としては、例えばアクリル系接着剤、ウレタン接着剤、ゴム系接着剤などが用いられる。かかる接着剤は、金属薄膜層つまり金属箔を布帛上に貼着、あるいはフィルム上に形成した金属薄膜層を布帛上に転写する場合等に用いられる。なお、布帛上に直接、蒸着、つまり真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等により形成する場合は接着剤は必要としない。すなわち、本発明では必ずしも接着剤を必要とするものではない。
【0014】
金属薄膜層3を形成する金属としては、チタン、ステンレス、ニッケル、クロム、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム等や、これらの合金等が適宜使用される。その中でも加工性および遠赤外線偽装性の面から、チタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銀から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく用いられる。一方、かかる金属薄膜層は、布帛上に箔状に形成されるが、前記のように圧延法により作製された箔を接着剤を介して貼着してもよく、布帛上に直接、蒸着、により形成してもよく、また一旦、別なシート、例えばフィルム上に真空金属蒸着した後、金属蒸着層を接着剤を介して布帛に転写する転写方式を採用することもできる。また、必要に応じ、前記金属を複数積層形成させてもよい。布帛表面における金属薄膜層の厚さとしては、柔軟性、遠赤外線偽装性の点から0.01〜0.1μmであることが好ましい。0.01μm未満では、十分な遠赤外線偽装性が得られ難く、0.1μmを越えると十分な柔軟性が得られ難くなるともに製造費が高くなる。
【0015】
着色剤含有樹脂層4は、可視および800〜1200μmの近赤外線領域において、偽装性を付与するものであり、布帛表面に形成された上記金属薄膜層上に形成される。かかる着色剤としては、顔料、染料が挙げられるが、主として無機顔料、有機顔料が用いられる。例えば、無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベンガラ、カーボンブラック等を主成分とする顔料、有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、スレン顔料、イソインドリン顔料等が挙げられる。また、樹脂層を形成する樹脂としては、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系、アルキッド系等の樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、金属層への接着性および柔軟性の面からウレタン系樹脂が好ましく用いられる。また、樹脂は水系であっても、溶剤系であってもよい。これらからなる着色剤含有樹脂の処理液を、コーティング方式、プリント(顔料捺染)方式、噴霧方式、印刷方式等で金属薄膜層上に塗布し、乾燥して着色剤含有樹脂層は形成されるが、薄膜形成つまり表面の遠赤外線偽装性の面から、印刷方式が好ましく、特に凸版印刷が好ましく用いられる。印刷における着色剤含有樹脂とはインキ組成液を言い、色剤(顔料、染料)、ビヒクル(油脂、樹脂、溶剤)、補助剤(分散剤、消泡剤、可塑剤等)が適宜組み合わせられる。
【0016】
また、着色剤含有樹脂層の厚さとしては、柔軟性、色調の点から0.5〜10μmが好ましい。0.5μm未満では、十分な色調が得られ難くなり、また10μmを越えると柔軟性および遠赤外線偽装性が得られ難くなる。また、着色剤含有樹脂層は、単色でもよいが、複数色で迷彩模様を有していることが可視偽装、近赤外線偽装および遠赤外線偽装の面から好ましい。
【0017】
一方、本発明で言う撥水樹脂層5は、上記着色剤含有樹脂層の表面に形成され、その撥水樹脂層の表面は、JIS L1092−1998 6.2法に基づいて測定される撥水性が3級以上であることが必須であり、さらに好ましくは、JIS L1092−1998 6.1A法に基づいて測定される耐水度が2000mm以上であることである。かかる撥水樹脂層を形成する樹脂は、通常、撥水性または防水性樹脂として使用されるものが適宜使用されるが、好ましくはポリウレタン樹脂、例えばポリエステル共重合系、ポリエーテル共重合系、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂、およびアミノ酸、シリコーン、フッ素系モノマーを共重合してなる変性ポリウレタン樹脂等が使用される。また、必要に応じ、エポキシ系、イソシアネート系等の架橋剤を併用することもできる。撥水樹脂層の厚さは、柔軟性、遠赤外線偽装性および撥水性の点から0.01〜5μmが好ましい。0.01μm未満では、十分な撥水性が得られ難くなり、5μmを越えると柔軟性および遠赤外線偽装性が得られ難くなる。かかる撥水樹脂層の形成方法としては、ナイフコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、リバースロールコーティング等のコーティング方式、または凸版印刷、グラビア印刷等の印刷方式、またはパッデイング方式を採用することができる。また、かかる撥水樹脂からなる処理液は、水系あるいは溶剤系のどちらであってもよい。
【0018】
遠赤外線偽装布帛の製造方法は、上述したように布帛1の少なくとも片面に、金属蒸着によって金属薄膜層3を形成した後、その金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂4からなる処理液を塗布、乾燥して着色剤含有樹脂層を形成し、次いで、その着色剤含有樹脂層の表面に撥水樹脂からなる処理液を塗布、乾燥し、撥水樹脂層5を形成せしめる。なお、優れた撥水性および遠赤外線偽装性を得るには、金属薄膜層、着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層の厚さは、それぞれ上記範囲の厚さになるように調整することが好ましい。
【0019】
また、必要に応じ、布帛の片面あるいは両面に、撥水樹脂層が形成された布帛を使用し、その表面に金属薄膜層および着色剤含有樹脂層を形成せしめ、次いで、本撥水樹脂層を形成せしめると耐水性がさらに向上する。また、かかる布帛表面における金属薄膜層および着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層の層形状としては、連続被膜形状(線状被膜)であっても、非連続被膜形状(点の集合被膜)であってもよい。特に、撥水樹脂層表面の平均熱放射率が、0.3〜0.75であること遠赤外線偽装効果の面で好ましい。
【0020】
本発明の熱的迷彩布帛は、被服、バッグ、テント、カバー類などの用途に好ましく用いられ、撥水性と遠赤外線に対する偽装性を備えたものとなる。
【実施例】
【0021】
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0022】
なお、実施例中における特性は、下記の方法により求めた。
【0023】
(1)撥水性
JIS L1092−1998 6.2法に基づき測定した。
【0024】
(2)耐水性
JIS L1092−1998 6.1A法に基づき測定した。
【0025】
(3)平均熱放射率
各色を含む4箇所をD and S AERD熱放射率計(Devices Servicens社製)にて測定し、 その平均値を求めた。
【0026】
(4)偽装性
試料をポンチョ形状に縫製して着用し、森林を背景にA〜Cの条件で偽装性を観 察し、次の基準で判定した。
【0027】
識別困難 ○○
識別やや困難 ○
偽装効果有り △
識別容易 ×
A.遠赤外線偽装性
検出波長8〜14μmの赤外線画像装置(遠赤外線カメラ)を用いて、100m の距離から観察し、判定した。
【0028】
B.近赤外線偽装性
赤外線写真法(可視光カメラに赤外線用フィルターを装着)により、撮影し、判 定した。
【0029】
C.可視偽装性
目視で判定した。
【0030】
実施例1
原糸強力3.8cN/dtex、総繊度167dtex、フィラメント数48本のポリ エステル繊維100%からなる235g/m2のツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。一方、ポリエステルフィルム上に離型層を介して真空蒸着により、アルミニウムの膜厚が0.05μmになるように蒸着加工を施した。しかる後、5μmの膜厚を有するポリウレタン系樹脂を介して上記フィルム上に形成されたアルミニウム薄膜層をかかる織物表面に転写した。次いで、アルミニウム薄膜層上に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により塗布、乾燥し、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層を形成した。しかる後、着色剤含有樹脂層上に、フッ素系モノマーを共重合してなる変性ポリウレタン樹脂1.5%(有効成分)に調整したをキシレン系処理液で、ナイフコーティングにて膜厚が1.5μmになるように塗布、乾燥した。
【0031】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例1からも判るように本発明の遠赤外線偽装布帛は、撥水性が4〜5級と優れた特性を有し、かつ、森林に混和した可視・近赤外線偽装および遠赤外線偽装性が認められた。
【0032】
比較例1,2
比較例1として、実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付235g/m2のツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。一方、ポリエステルフィルム上に離型層を介して真空蒸着により、アルミニウムの膜厚が0.05μmになるように蒸着加工を施した。しかる後、5μmの膜厚を有するポリウレタン系樹脂を介して上記フィルム上に形成されたアルミニウム薄膜層をかかる織物表面に転写した。次いで、アルミニウム薄膜層上に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により塗布、乾燥し、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層を形成した。また、比較例2として、実施例1と同一の精練・熱セットしたツイル組織の織物の表面に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により迷彩模様に塗布、乾燥し、着色剤含有樹脂層を形成した。次いで、着色剤含有樹脂層上に、フッ素系モノマーを共重合してなる変性ポリウレタン樹脂1.5%(有効成分)に調整したキシレン系処理液で、ナイフコーティングにて膜厚が1.5μmになるように塗布、乾燥した。
【0033】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例1の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められるが、撥水性が1〜2級で十分でなかった。また、比較例2の偽装布帛は、撥水性が4〜5級と優れ、また可視・近赤外線偽装性も優れていたが、遠赤外線偽装性が認められなかった。
【0034】
実施例2
原糸強力25.2cN/dtex、総繊度444dtex、フィラメント数267本のパラフェニレンテレフタルアミド繊維100%からなる120g/m2のツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。次いで、スパッタリング装置を用い、この織物の表面に、チタンの膜厚が0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中で蒸着加工を施し、織物表面にチタン薄膜層を形成した。次いで、チタン薄膜層上に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により塗布、乾燥し、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層を形成した。しかる後、着色剤含有樹脂層上に、フッ素系モノマーを共重合してなる変性ポリウレタン樹脂1.5%(有効成分)、イソシアネート系架橋剤0.05%に調整したキシレン系処理液で、ナイフコーティングにて膜厚が1μmになるように塗布、乾燥した。
【0035】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例1からも判るように本発明の遠赤外線偽装布帛は、優れた撥水性が5級と優れ、かつ、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められた。
【0036】
比較例3,4
比較例3として、実施例2と同一のメタパラフェニレンテレフタルアミド繊維100%からなる120g/m2のツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。次いで、スパッタリング装置を用い、この織物の表面に、チタンの膜厚が0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中で蒸着加工を施し、織物表面にチタン薄膜層を形成した。次いで、チタン薄膜層上に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により塗布、乾燥し、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層を形成した。また、比較例4として、実施例2と同一の平組織の織物の表面に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により迷彩模様に塗布、乾燥し、着色剤含有樹脂層を形成した。次いで、着色剤含有樹脂層上に、フッ素系モノマーを共重合してなる変性ポリウレタン樹脂1.5%(有効成分)に調整したキシレン系処理液で、ナイフコーティングにて膜厚が1μmになるように塗布、乾燥した。
【0037】
このようにして得られた偽装布帛の特性を次の表1に示した。
【0038】
比較例1の偽装布帛は、森林に混和した遠赤外線偽装性が認められるが、十分な撥水性が1〜2級で十分でなかった。また、比較例2の偽装布帛は、撥水性および可視・近赤外線偽装性は優れていたが、遠赤外線偽装性が認められなかった。
【0039】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この図は、本発明の遠赤外線偽装布帛の概略図の一例を示したものである。
【符号の説明】
【0041】
1 布帛
2 接着剤
3 金属薄膜層
4 着色剤含有樹脂層
5 撥水樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の少なくとも片面に、金属薄膜層、着色剤含有樹脂層および撥水樹脂層をこの順に形成せしめ、前記撥水樹脂層表面のJIS L1092−1998 6.2法に基づいて測定される撥水性が3級以上であることを特徴とする遠赤外線偽装布帛。
【請求項2】
金属薄膜層が、チタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銀から選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項3】
金属薄膜層の厚さが、0.01〜0.1μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項4】
着色剤含有樹脂層の厚さが、0.5〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項5】
撥水性樹脂層の厚さが、0.01〜5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項6】
着色剤含有樹脂層が、迷彩模様を形成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項7】
撥水樹脂層表面の平均熱放射率が、0.3〜0.75の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項8】
布帛は、JIS L1092−1998 6.1A法に基づいて測定される耐水度が2000mm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の遠赤外線偽装布帛。
【請求項9】
布帛の少なくとも片面に、金属蒸着によって金属薄膜層を形成した後、その金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂からなる処理液を塗布、乾燥して着色剤含有樹脂層を形成し、次いで、その着色剤含有樹脂層の表面に撥水樹脂からなる処理液を塗布し、乾燥せしめることを特徴とする遠赤外線偽装布帛の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−110784(P2006−110784A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298588(P2004−298588)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】