適合性スリーブを具えた締結具
【解決手段】
適合性スリーブとピン部材とを含むスリーブ型干渉締結具であって、前記適合性スリーブは、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、前記ピン部材は、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成り、XはYよりも十分に低いため、取付位置において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合することができ、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じることができる。
適合性スリーブとピン部材とを含むスリーブ型干渉締結具であって、前記適合性スリーブは、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、前記ピン部材は、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成り、XはYよりも十分に低いため、取付位置において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合することができ、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は、2009年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/166,664号「締結具用適合性スリーブ」、及び2009年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/166,618号「導電性固体フィルム材料」の優先権を主張し、それらの全体は引用を以て本明細書に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本発明は、干渉締結具(interference fasteners)と、該干渉締結具を取り付ける(installing)方法に関する。
【背景技術】
【0003】
<背景技術>
幾つかの適用において、干渉締結具は、該干渉締結具が配置される構造体と密接に接触している。幾つかの適用において、締結具と構造体との間に形成される空間(spaces)又は空隙(voids)は、数が最少であり、大きさは小さいものであるか、又は存在しないことが望ましいとされる。
【0004】
例えば、単一航空機において、非常に多くの干渉締結具及び付随のスリーブが用いられている。航空機が落雷(lightning strike)を受けた場合、締結具/スリーブと、該締結具/スリーブが挿入された構造体の孔の側壁とが密接に接触していないと、雷により生じた瞬間的熱エネルギーが、締結具/スリーブと側壁との間の空隙中の空気をイオン化し、プラズマアークを生成し、これがスパークという形で噴出する。これは航空機にとって非常に危険な状態であり、スパーク発生(sparking)が燃料タンク近傍で起こったときは特に危険である。
【0005】
例えば、カーボンファイバー強化プラスチックなどの複合材料から作製された航空機構造部品の場合、これらの空隙は、複合材料に締結具孔をドリル穿孔する工程で生じる。個々のカーボンファイバーは不規則な角度で破壊し、締結具/スリーブと孔との間に微小な空隙が形成される。切削工具は使用するにつれて摩耗し、構造体表面でチッピング(chipping)が増加するため、切削されないファイバーや樹脂の量が増え、剥離が増大する。これらは、機械加工によって生じる微細組織(machining-induced microtexture)としても知られる。
【0006】
金属締結具は複合構造体の様々な要素を取り付けるのに広く用いられているから、複合構造体の表面に落雷すると、金属締結具の周りで電流密度が大きくなり易い。これらの電流が、締結具から該締結具の中を通って構造体のある地点まで流れると、発火源となり、アーク放電を起こす。この状態を回避するには、電流は、締結具孔に直交するカーボンファイバーの中を通じて放散させなければならない。上述のように、締結具と孔の側壁とが密接に接触していないと、瞬間的熱エネルギーが空隙中の空気をイオン化してアークプラズマを生成し、スパークという形で噴出する。
【0007】
更に、導電性コーティングが、様々な用途に用いられている(例えば、電荷拡散や無線周波妨害シールディング(EMI/RFI)など)。必要とされる直流伝導度の大きさは、具体的な用途に依存する。例えば、他の材料と摩擦接触しているグラスファイバー構造のような誘電体基板により電荷が蓄積すると、非常に大きな静電気電圧となり、危険な放電スパークを起こす。この電荷を効果的に漸減させてスパーク発生を防ぐために必要な表面抵抗率は、通常は比較的低く、106乃至109Ω/cm2である。
【発明の概要】
【0008】
<発明の要旨>
幾つかの実施例において、複合構造体(composite structure)の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成る適合性スリーブ(conformable sleeve)と、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部(shank portion)とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、取付位置(installed position)において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触が生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌め(interference fit)を形成し、取付位置を構成する。
【0009】
幾つかの実施例において、複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内側基層及び外側コーティング層から成り、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、内側基層は硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、外側コーティング層は硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がZである少なくとも一つの第3材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度で、ZはXと等しいか或いはXより高い硬度であり、取付位置において、管状部の外側コーティング層の少なくとも一部分が、複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成し、取付位置を構成する。
【0010】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、適合性スリーブの外側層は、固着された固体コーティングである。
【0011】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、永久固着された固体コーティングは、
i)少なくとも一つの有機材料及び少なくとも一つの導電性フィラー材料と、
ii)金属材料と、
のうちの少なくとも一つから成る。
【0012】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、金属材料はAg、Al、Au及びNiのうちの少なくとも一種を有する。
【0013】
他の実施例において、本発明のスリーブ型干渉締結具は、硬度XがロックウェルBスケールで100HRBより低い。
【0014】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る他の実施例において、締結具が取付位置にあるとき、複合構造体の孔の内側表面はシーラントを有する。
【0015】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る他の実施例において、取付位置では、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料が、複合構造体の孔の内側表面にトラップされた(entrapped)過剰のシーラントを取り除く(expunge)。
【0016】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、取付位置では、適合性スリーブは、界面にてスパーク発生を十分に回避することができるよう構成される。
【0017】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、ピン部材が適合性スリーブの中を移動し易くするために、締結具は、
i)管状部の内側表面、及び
ii)ピン部材の軸部、
のうち少なくとも一つに潤滑剤を有する。
【0018】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、潤滑剤は導電性固体フィルム材料から成る。本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、導電性固体フィルム材料は、重量率で0.05%〜30%のカーボンナノチューブを含む。
【0019】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る他の幾つかの実施例において、潤滑剤は、
i)外部粒子の溶解、
ii)外部粒子の運搬、及び
iii)熱の分配、
のうち少なくとも一つを十分に実行できるよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来の締結具のスリーブと、複合構造体との接触を示す。
【0021】
【図2】図2は、図1に示される側壁の拡大図である。
【0022】
【図3】図3は、従来の締結具のスリーブと、複合構造体との接触を示す。
【0023】
【図4】図4は、図3に示される側壁の拡大図である。
【0024】
【図5】図5は、複合構造体中の典型的な孔の拡大図である。
【0025】
【図6】図6は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0026】
【図7】図7は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0027】
【図8】図8は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0028】
【図9】図9は、本発明の一実施例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の一実施例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の一実施例を示す図である。
【図13】図13は、本発明の一実施例を示す図である。
【0029】
【図14】図14は、本発明を用いない場合の典型的なスパーク発生について、スパーク発生の前及び後の例を示す。
【0030】
【図15】図15は、本発明の実施例を用いた場合の典型的なスパーク発生について、スパーク発生の前及び後の例を示す。
【0031】
【図16】図16は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0032】
【図17】図17は、本発明を用いない場合と本発明の実施例を用いた場合のスパーク発生について、スパーク発生の前及び後の例を示す。
【0033】
【図18】図18は、典型的なスパーク発生について、スパーク発生後の孔の表面の例を示す。
【0034】
【図19】図19は、本発明の実施例を用いた場合の典型的なスパーク発生について、スパーク発生後の孔の表面の例を示す。
【0035】
【図20】図20は、本発明の実施例を用いた場合のスパーク発生の例を示す。
【0036】
【図21】図21は、本発明を用いない従来の締結具のスリーブの、落雷試験後の拡大図を示す。
【0037】
【図22】図22は、取り付けられた従来の締結具の一部の拡大図である。
【0038】
【図23】図23は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【図24】図24は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【図25】図25は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【図26】図26は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【0039】
【図27】図27は、本発明の幾つかの実施例の拡大図である。
【0040】
【図28】図28は、本発明の他の実施例の拡大図である。
【0041】
【図29】図29は、本発明の幾つかの実施例に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
これらの利点や改良について開示するが、本発明の他の目的及び利点は、添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。図面は本明細書の一部を構成し、本発明の例示的実施例を含むと共に、それらに係る様々な目的や特徴を含むものである。
【0043】
<詳細な説明>
ここに、本発明の詳細な実施例を開示するが、開示される実施例は発明の例示に過ぎず、様々な形態で実施されてよいことは理解されるべきである。更に、発明の様々な実施例に関連して示される実験例の各々は例示を意図したものであり、制限するものではない。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの特徴については、特定の部品の細部を示すために誇張されている。そして、図面に示されたあらゆる測定結果や仕様等は例示を意図したものであり、制限するものではない。従って、本明細書に開示される具体的な構造上及び機能上の詳細は、限定するものと解されるべきではなく、当業者が本発明を様々に用いることができるよう説明するための単なる基礎と解されるべきである。
【0044】
本発明の一実施例におけるスリーブ型締結具は、コアピン及び該コアピンに適合可能な適合性スリーブを含む。スリーブは、機械加工によって生じる微細組織に適合するように設計されており、この微細組織は、材料(例えば、複合材料)にドリル穿孔された締結具用孔に固有の組織である。これにより、締結具を取り付ける間、過剰にトラップされたシーラントをえぐり取る(excavate)ことができ、スリーブは構造体と密接に接触した状態になる。
【0045】
適合性スリーブは様々な方法で得られることができ、そのうちの幾つかは特定の構造に対してより適切なものもある。
【0046】
幾つかの実施例において、複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、取付位置において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触が生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成し、取付位置を構成する。
【0047】
一実施例において、適合性スリーブ材の組成物(composition)が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約100HRB(或いは、ロックウェルCスケールで25HRC)以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約90HRB(或いは、ロックウェルCスケールで9HRC)以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約35〜100HRBの範囲である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約80HRB(或いは、ロックウェルCスケールで0HRC)以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約70HRB以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約35〜80HRBの範囲である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約50〜100HRBの範囲である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約60〜100HRBの範囲である。
【0048】
一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約30HRCであるかそれより高い。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約40HRCであるかそれより高い。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルCスケールで、約25〜60HRCの範囲である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約50HRCであるかそれより高い。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約70HRC以下である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルCスケールで、約40〜70HRCの範囲である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルCスケールで、約30〜50HRCの範囲である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約25HRC(或いは、ロックウェルBスケールで100HRB)であるかそれより低くてよいが、適合性スリーブ材組成物の硬度Xよりは十分に高いため、取付け中にスリーブを拡大させて孔と締まり嵌めを形成するピンの能力を保つことができる。
【0049】
幾つかの実施例において、ピン部材の組成物における硬度YはロックウェルCスケールでRC35であるかそれより高く、また、適合性スリーブ材における硬度XはロックウェルCスケールで約25HRC以下である。
【0050】
幾つかの実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約5HRC(或いは、ロックウェルBスケールで5HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約10HRC(或いは、ロックウェルBスケールで10HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約20HRC(或いは、ロックウェルBスケールで20HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約1〜40HRC或いはロックウェルBスケールで約1〜40HRB高い。
【0051】
一実施例において、スリーブが構造体の孔の形状に嵌合する際、適合性スリーブの材料が変形することで、スリーブと構造体との間の空隙を埋めることができる。実施例では、適合性スリーブは種々のニッケル合金又はそれと同様な物理的特性を有する材料から作られる。実施例では、適合性スリーブはA286ステンレス鋼合金から作られ、A286ステンレス鋼合金はロックウェルBスケールで85HRBの硬度を有する。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約20%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約30%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約50%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約70%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約90%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約100%であるかそれより高い。
【0052】
一実施例において、コアピンは、適合性スリーブの内径よりも大きい直径を有しており、該コアピンは、適合性スリーブの中を通って移動すると、スリーブは変形して、該スリーブの外径は、複合物(composite)がドリル穿孔中に生成される小さな空隙の中に充満する。一実施例において、ピンは例えば、Ti−6Al−4V合金又はそれと同様な物理的特性を有する材料で作られる。
【0053】
取付け前に孔の内側表面にシーラントが施される用途において、適合性スリーブが空隙の中に変形するとき、トラップされたシーラントを移動させる。そのため、締結具を取り付ける間、適合性スリーブは過剰にトラップされたシーラントをえぐり取り、複合構造体と密接に接触した状態になる。本発明を説明する目的において、“シーラント(sealant)”という用語は粘着性物質を意味するが、この硬度値はスリーブ材の値Xよりも十分に低いため、締結具を取り付ける間、適合性スリーブ材は、複合構造体の孔の表面にある空隙からシーラントを移動させることができる。幾つかの実施例において、シーラントは非金属組成物から構成される。
【0054】
一実施例において、複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内側基層及び外側コーティング層から成り、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、内側基層は硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、外側コーティング層は硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がZである少なくとも一つの第3材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、ZはXと等しいか或いはXより高い硬度であり、取付位置において、管状部の外側コーティング層の少なくとも一部分が、複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成し、取付位置を構成する。
【0055】
コーティングとは物体に施される被覆(covering)のことであり、通常、ベース材料の表面特性を向上させる目的で用いられ、基材(substrate)と称される。このような表面特性としては、とりわけ、外観、粘着性(adhesion)、濡れ性、耐食性、耐摩耗性、及びスクラッチ特性が挙げられる。コーティングは液体、気体又は固体として施されることができる。本発明の一実施例において、複合材料の例としてのワークピースの孔の中に適合する締結具を取り付ける間、外側コーティング層は、スリーブの内側基層に十分に取り付けられた状態を維持する。
【0056】
実施例では、内側基層は高い硬度特性と、低い展性又は延性を有する。実施例において、内側基層はステンレス鋼又はそれと同様な硬度特性をもつ材料で作られる。別の実施例において、外側コーティング層は低い硬度特性と、高い展性又は延性を有する。
【0057】
一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約25HRCであるかそれより高い。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約30HRCであるかそれより高い。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xの値は、ロックウェルCスケールで約25〜50HRCの範囲である。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約40HRCであるかそれより高い。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約60HRCであるかそれより高い。
【0058】
一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約100HRB(或いは、ロックウェルCスケールで約25HRC)かそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約90HRBかそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約35〜100HRBの間である。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約80HRBかそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約70HRBかそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約35〜80HRBの間である。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約50〜100HRBの間である。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約60〜100HRBの間である。
【0059】
一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約25HRCかそれより高い。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約40HRCかそれより高い。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約23〜80HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約50HRCかそれより高い。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約70HRCかそれより低い。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約40〜70HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約30〜70HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約25〜60HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約25HRC(或いは、ロックウェルBスケールで約100HRB)かそれより低くてよいが、スリーブの内側基層の組成物の硬度Xと同じかそれより十分に高いため、取付け中にスリーブを拡張させて孔に締まり嵌めを形成するピンの作用を保持することができる。
【0060】
幾つかの実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約5HRC(或いは、ロックウェルBスケールで5HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約10HRC(或いは、ロックウェルBスケールで10HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約20HRC(或いは、ロックウェルBスケールで20HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約1〜40HRC(或いはロックウェルBスケールで1〜40HRB)高い。
【0061】
一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約20%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約30%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約50%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約70%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約90%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約100%かそれより高い。
【0062】
幾つかの実施例において、外側コーティング層の厚さは約3ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約5ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約3ミクロン(μm)〜15ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約10ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約10ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約3ミクロン(μm)〜10ミクロン(μm)の間である。
【0063】
例えば、幾つかの実施例において、外側コーティング層は、比較的軟らかく、つまり展性又は延性が高く、導電性で、複合構造体に電食適合性(galvanically compatible)であることが知られた金属材料の群より選択される材料から成る。これらの材料には、限定されるものではないが、金、銀、ニッケル、銅及びスズが含まれる。他の材料としては、金、銀、ニッケル、銅及びスズの合金を含む様々な合金がある。実施例において、変形可能な種々の金属コーティングがベース材料の上に層として設けられることができる。その方法として、例えば電気めっき、イオン蒸着の他、適合性スリーブをワークピース(例えばドリル穿孔穴)の中に配置する間、変形可能なコーティングがベース材料に十分に取り付けられた状態を維持できるものであれば、他のあらゆる技術を用いることができる。
【0064】
他の実施例において、本発明の変形可能コーティングの組成物は、有機材料と導電性フィラーとの組合せで構成することができる。例として、有機材料にはエポキシなどのポリマー族が含まれ、導電性フィラーには金属粉末や、カーボンナノチューブなどの非伝導性材料が含まれる。実施例において、様々な有機ベースの変形可能なコーティングがベース材料の上に層として設けられることができる。その方法として、例えばスプレー法の他、適合性スリーブをワークピース(例えばドリル穿孔穴)の中に配置する間、変形可能なコーティングがベース材料に十分に取り付けられた状態を維持できるものであれば、他のあらゆる技術を用いることができる。
【0065】
幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する硬度Yは、ロックウェルBスケールで約100HRB(或いは、ロックウェルCスケールで約25HRC)以下である。一実施例において、スリーブの有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する硬度Yは、ロックウェルBスケールで約90HRB以下である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約35〜100HRBの範囲である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yは、ロックウェルBスケールで約80HRB以下である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約35〜80HRBの範囲である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブのーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約50〜100HRBの範囲である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約60〜100HRBの範囲である。
【0066】
幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率(volume resistivity)は、10V(ohm−m)で約103ohm−mより低い(例えば、ASTM D257に準拠して計測した場合)。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約102ohm−mより低い。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約10ohm−mより低い。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約10-3ohm−mより低い。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約1×10-8ohm−m〜4×10-5ohm−mの間である。
【0067】
締結具を取り付ける前に、孔の内側表面にシーラントが施される用途において、適合性スリーブの変形可能な外側コーティング層が、孔の内側表面の空隙の中に入るとき、トラップされたシーラントを移動させる。そのため、締結具を取り付ける間、適合性スリーブの変形可能なコーティングは過剰にトラップされたシーラントをえぐり取り、スリーブと複合構造体との間で、密接な電気接触が生じる。
【0068】
上記の一例として、界面を通る電圧降下が小さくなると、今度は、シーラントによる誘電効果が弱まる。このことにより、スリーブと複合パネルとの間でアーク放電が起こる可能性が最小限に抑えられるか、又は取り除かれる。一実施例において、いかなるアーク放電もスパーク発生に至らない。
【0069】
適合性スリーブの実施例では、マクロレベル及びミクロレベルでの優れた間隙充填、また、スリーブと構造体との間で密接な接触がもたらされる。
【0070】
適合性スリーブの実施例では、締結具から航空機パネルへの電流伝達の効率の向上をもたらすことができる。
【0071】
適合性スリーブの実施例は、孔の性質やミクロ間隙に対する感受性がより低い。
【0072】
適合性スリーブの実施例では、スリーブとパネルとの間にトラップされるシーラントの量を少なくすることができる。
【0073】
図1及び図3は、従来の締結具のスリーブと複合構造体とが接触している写真である。矢印は、締結具を収容するスロットの側壁を指しており、該側壁は、締結具のドリル穿孔中に生じた粗い不均一な空隙を数多く有している。
【0074】
図2及び図4は、夫々、図1及び図3のスロット側壁の状態のミクロレベル写真である。丸印は、スリーブとスロット側壁との間に存在する空隙を示している。
【0075】
図5は、個々のカーボンファイバーのミクロレベル写真であり、前記カーボンファイバーは不規則な角度で破壊し、スリーブとカーボンファインバー強化構造体との間に微小な空隙を形成する。これらの空隙に過剰のシーラントがトラップすると、スリーブと構造体との密接な接触が妨げられる。
【0076】
図6は、本発明に基づいて作製されたスリーブの実施例と、締結具を収容するスロットの側壁との適合(conformance)を示すマクロレベル写真である。この写真は、スリーブの材料が側壁に存在する不完全部分(imperfections)を充填していることを示している。
【0077】
図7及び図8は、本発明に基づいて作製されたスリーブの実施例の変形例のミクロレベル写真である。この写真は、スリーブが変形して、機械加工により生じた微細な空隙に充満しており、スリーブと個々のカーボンファイバーとの間の密接な接触を示している。
【0078】
図9は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、電気めっきにより、変形可能な金が永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0079】
図10は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、電気めっきにより、変形可能な銀が永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0080】
図11は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、電気めっきにより、変形可能なニッケルが永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0081】
図12は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、イオン蒸着により、変形可能なアルミニウムが永久的に固着されたコーティングが層状に形成されている。
【0082】
図13は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、スプレーにより、カーボンナノチューブで作られた有機物質が永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0083】
図14は、スパークによる生成物の蓄積と、従来の締結具を収容するスロット側壁に及ぼす前記蓄積の効果について、その試験結果の写真である。左上の写真は、スロットについて粗い面に破壊された(fractured)側壁を示す。右上と右下の写真は、スロット側壁と従来スリーブとの間に蓄積されたスパーク生成物を示す。
【0084】
図15は、本発明に基づいて作製されたスリーブを収容するスロットの側壁に、スパーク生成物が蓄積していないことを示す試験結果写真である。左側の写真で矢印が示す側壁は、一様で滑らかな境界を有しているが、これは、締結具の適合性スリーブがスロットの中に装入され、スリーブのベース材料又はスリーブの変形可能なコーティングの材料が、側壁に存在するあらゆる空隙に入り込んだためである。
【0085】
図16は、適合性スリーブ型締結具の実施例とスロットの側壁との適合性(conformance)を示すミクロレベル写真である。この写真は、スリーブ材料又はスリーブの変形可能なコーティングがどのようにして個々のカーボンファイバーに適合するか、即ち、個々のカーボンファイバーの中で破損により生じた空隙にどのように充満するかを示している。
【0086】
図17は、従来の締結具のスリーブと、本発明に基づいて作製された適合性スリーブ型締結具の実施例とにおいて、側壁の状態を対比した試験結果写真である。左上及び左下の写真は、従来のファスナーを用いた場合の状態を示す。右上と右下の写真は、本発明に基づく締結具の実施例を用いた場合の状態を示しており、スロット側壁の空隙が埋まっている。
【0087】
図18は、落雷(lightning strike)試験後に撮影されたミクロレベル写真であり、従来の標準的なA286スリーブが用いられたときのスロットの側壁を示している。写真から、このスリーブは、スロットの複合構造体のミクロ組織(micro texture)に適合しないことが分かる。この試験は、残留するシーラントの位置に、高いアーク密度と激しいアーク放電を示している。
【0088】
図18との対比において、図19は、落雷試験後に撮影されたミクロレベル写真であり、本発明の適合性スリーブが用いられたときのスロット側壁を示している。写真から、適合性スリーブでは、アーク密度が低く、強い電気的活性は低減し、ファイバーとスリーブとの接触がより密接であることが分かる。
【0089】
表1は、従来の締結具と、本発明の適合性スリーブの実施例とを用いて直結型(direct attachment)落雷試験を行なった試験結果を示す。これらの試験は、カーボンファイバー複合材料で作られたパネル(厚さ0.25インチ)と、RXLタイプのロックボルト(RXL4BC−VC08−08のピン、カラー及びスリーブ)のファスナーとを用いて行なった。一つのパネルにつき18個のファスナーを使用した。一つのパネルにつき、4つの別個のファスナーに落雷を加えた。試験の幾つかは、最悪の取付け条件(例えば、取り付ける把持部は最小で、孔サイズは最大、即ち、干渉或いは接触は最小)を再現するべく設計された。試験は、試料のカラー側に光源が検知されないことを基準にして、合格/不合格を記録した。試験結果は、適合性スリーブ(A286又は300シリーズ)ではスリーブ/構造体の界面におけるスパーク発生が最小であること、前記適合性スリーブは、機械加工によって生じる組織に対する許容性がより高いことを示している。
【表1】
【0090】
図20は、表1のパネルI(本発明の適合性スリーブ型締結具に対応する)に実施した直結型落雷試験の写真である。白色の点は基準光を表しており、実際のスパークではない。
【0091】
一実施例において、コアピンのスリーブの中の移動を促進するために、潤滑剤が用いられる。潤滑剤は、移動する2つの表面の間に導入され、それら表面間の摩擦を低減させる物質(液体の場合が多い)であって、効率を改善し摩耗を減らすことができる。潤滑剤はまた、外部粒子を溶解又は運搬して、熱を分配する作用も有する。
【0092】
他の実施例において、潤滑剤は例えば導電性固体フィルム材料/コーティングである。幾つかの実施例では、導電性固体フィルム材料をベースとする潤滑剤は、ピンとスリーブとの間の内部アーク放電を減少させるか又は無くす作用がある。
【0093】
本発明は、カーボンナノチューブ(carbon nano-tubes“CNTs”)を含有する導電性固体フィルム(conductive solid film“CSF”)材料(“CSF−CNTs 材料”)を提供する。CSF材料の実施例は、典型的には、主要成分として濃度が<30〜40%のメチルエチルケトン、濃度が<5〜10%のフェノール樹脂、及び濃度が<30〜40%のエチルアルコールを有する。
【0094】
一実施例において、CSF材料は流体の様な挙動を示す。一実施例において、CSFの粘度は低くてよい。幾つかの実施例では、CSF材料は潤滑剤(即ち、二つの移動する表面の間に導入されることによりそれら表面間の摩擦を低減させる物質(液体の場合が多い))として用いられ、効率を改善し摩耗を減らすことができ、また、外部粒子を溶解又は運搬して、熱を分配する作用も有する。
【0095】
他の幾つかの実施態様において、CSF材料はコーティング(即ち、物体に施される被覆)として、通常は、ベース材料(通常は基材と称される)の表面特性を向上させる目的で用いられる。このような表面特性として、とりわけ、外観、粘着性、濡れ性、耐食性、耐摩耗性、及びスクラッチ特性が挙げられる。コーティングは液体、気体又は固体として施されることができる。
【0096】
幾つかの実施例において、好ましいCSF材料の摩擦係数は低く、1よりも実質的に低い。幾つかの実施例において、市販の締結具コーティング(例えば、Incotec Corp.の8Gアルミニウムコーティング、Teclubeコーティング、又はあらゆるアルミニウム顔料コーティングなど)が、CSF材料として用いられることができる。
【0097】
CNTsは、ナノ直径が約3〜200nmの間のカーボン化合物であり、長さと直径の比が28,000,000:1ほどもある。CNTsの長さは、最大で約1.0mmである。CNTsは、チューブの軸方向に非常に優れた熱伝導性を示し、チューブ軸の横方向に優れた断熱性を示す。CNTsの引張強度は、鋼よりも約50倍高い。CNTsは、その構造に応じて、金属又は半導電性材料に匹敵する電気伝導性を有する。通常、CNTsの密度は約1.3〜2g/cm3である。CNTsは、単一壁又は複数壁の構造である。CNTsは、金属及び/又は非晶質カーボンなどの不純物を少量含んでいる。CNTsは通常、耐酸化性が非常に強く、強酸中での長時間の浸漬にも耐えることができる。更にCNTsは、急性毒性や環境への有害性は問題とはならず、希少で限られた供給前駆体(supply precursors)から作られる。
【0098】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、Cheap Tubes, Inc.が販売しているCNTs(IGMWNTs90重量%及びIGMWNTs90重量%COOH)を用いて作られる。Nanocylのような他の供給者によるCNTsを用いてもよい。
【0099】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、スプレー法により、或いはそれと同等の他の技術を用いることによって、製品の表面に施される。幾つかの実施例において、CNTsの(及び、CSF−CNTs材料の特定組成物の他の成分)物品表面での成長、及び/又は該表面への付着、及び/又は蒸着を促進する環境下(例えば、CNTsの反応溶液)に維持されるとき、CSF−CNTs材料は物品の表面に蒸着(deposition)される。
【0100】
CSF−CNTs材料の実施例では、CNTsは、少量の界面活性湿潤剤(surfactant-wetting agent)が添加された溶媒中に分散される。前記界面活性湿潤剤は、液体の表面張力を低下させて拡散を容易にするので、CNTsは、2種類の液体間の界面張力を低下させる。
【0101】
一実施例において、CSF−CNTs材料は、直径が約3〜30nmのCNTsを含んでいる。
【0102】
一実施例において、CSF−CNTs材料におけるCNTsの量が十分であれば、CSF−CNTs材料のスティフネス(stiffness)を実質的に増大させることなく、CSF−CNTs材料の導電性を高めることができる。
【0103】
実施例において、CNTsを添加すると、CSF−CNTs材料と同じ特性を達成するのに、高導電性を有する金属を用いる必要性は有意に低下するか又はなくなるので、ベースCSF材料のスティフネス特性とは異なり、スティフネスを実質的に増大させることはない。
【0104】
CNTsを約1%の濃度で含むCSF−CNTs材料の実施例では、抵抗率は、>1012Ω/スクエアから約105Ω/スクエアまで低下した。CNTsを1%を超える濃度で含むCSF−CNTs材料の実施例では、抵抗率が約500Ω/スクエアまで更に低下した。CSF−CNTs材料を航空宇宙の締結具コーティングとして用いる実施例では、例えば、金属粒子が最少であるか全く無くても高伝導性という望ましい特性を具えた締結具が提供される。なお、CSF−CNTs材料の幾つかの実施例において、CNTsのサイズ及び負荷の低さは、CSF−CNTs材料で施されたコーティングの表面品質に利点をもたらす。
【0105】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、0.05%〜30%の濃度のCNTを含有する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、0.1%〜10%の濃度のCNTを含有する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、1%〜10%の濃度のCNTを含有する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、3%〜15%の濃度のCNTを含有する。
【0106】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約103ohm−m(例えば、ASTM D257に基づいて計測した場合)より小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約102ohm−mより小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約10ohm−mより小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約10-3ohm−mより小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、1x10-8ohm−m乃至4x10-5ohm−mである。
【0107】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.12μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.10μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.2μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.3μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.5μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.8μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.04μ〜0.5μの間である(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.04μ〜1μの間である(例えば、Falex試験機で計測した場合)。
【0108】
実施例では、CSF−CNTs材料の望ましい特性として、その単純特性、例えば、成分数の少なさ、特別な取扱い処理の不要性も含まれる。
【0109】
次の表2は、市販のTeclubeコーティングをベースにしたCSF−CNTs材料の実施例における幾つかの特性と、Teclubeコーティング自体の特性とを比較するものである。表2は、CNTsを0.02%含有するCSF−CNTs材料の実施例が、ベースであるTeclubeコーティングよりも実質的に体積抵抗率が低いことを示す。表2は、CNTsの添加が、CNTsなしのTeclubeコーティングと比べて、CNTsを有するTeclubeコーティングの流動性、即ち厚さに実質的な影響を与えなかったことを示す。
【表2】
【0110】
このCSF−CNTs材料は、様々な用途に用いられることができる。一実施例において、CSF−CNTs材料は航空宇宙産業の締結具のコーティング用に用いられる。CSF−CNTs材料の実施例は、落雷から少なくとも部分的に保護され得るのに十分な高導電性を有する。とりわけ金属締結具の近傍では、高導電性は、例えば航空機の複合構造体に落雷を受けたときの大電流を方向づけるのに必要である。CSF−CNTs材料の実施例により、高い熱伝導性と、より小さな重量、そして強い耐酸化性という特性を具える締結具がもたらされる。実施例において、CNTsは典型的に、密度が約2.0g/cm3(通常8g/cm3の密度を有する典型的な金属粒子又は薄片(flakes)の約4分の1)であるため、CSF−CNTs材料を用いることによって、航空宇宙産業における締結具コーティングの重量、及び航空機全体の重量を減らすのに役立つ。更に、CSF−CNTs材料の実施例を航空宇宙産業の締結具コーティングとして用いると、従来の金属ベース導電性コーティングの金属濃度よりもCNTsの濃度が低い場合、電気伝導性及び熱伝導性、換算質量(reduce mass)、靱性及び耐久性を含む物理的特性が実質的に高められる。
【0111】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料はスリーブの外側表面に施されるが、該スリーブは、締結具を収容するスロット壁に接触する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、スリーブの内側及び外側表面の両方に施される。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、ピンの表面及びスリーブの内部表面の両方に施される。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、ピンの表面に施される。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、ピン及びスリーブの全ての表面に施される。CSF−CNTs材料をスリーブの内壁又はピンの外部表面のいずれかに、或いは、これら両方の表面に施すことによって、ピンがスリーブに導入される間に受ける抵抗が少なくなる。幾つかの実施例において、ピンの表面とスリーブの内側表面との間にCSF−CNTsコーティングがあると、落雷から少なくとも部分的に保護されることができる。
【0112】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約3ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約5ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約3ミクロン(μm)〜15ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約10ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約10ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約3ミクロン(μm)〜10ミクロン(μm)であるときに得られる。
【0113】
図21は、CSF−CNTsコーティングなしの従来の締結具スリーブについて落雷試験後のマクロレベル写真であり、スリーブの表面が重度の損傷を受けていることを示す。
【0114】
図22は、従来の締結具スリーブと、締結具を収容するスロット壁との間にの空隙にある孔を示すマクロレベル写真である。本発明の実施例において、この孔は、CSF−CNTsコーティングにより実質的に埋められるので、雷に起因するスパーク発生の可能性を回避するか又は減少させることができる。
【0115】
図23は、CSF−CNTsの幾つかの実施例において、CNTs濃度(総重量%)の増加が、これら実施例のコーティングとしての表面抵抗率にどのように大きな影響を及ぼすかを示すグラフである。コーティングは、グラスファイバー基材に施された。
【0116】
図24は、CSF−CNTs材料の一実施例において、CNTs濃度(総重量%)の増加が、実施例の体積抵抗率に対してどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。グラフは、この特定の実施例に対するもので、0.050%のCNTsを添加することにより、体積抵抗率に望ましい低下がみられることを示す。コーティングは、金属基材に施された。
【0117】
図25は、CSF−CNTs材料(試料1)の一実施例において、CNTs濃度の増加が、実施例の摩擦係数に対してどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。グラフは、この特定のCSF−CNTsコーティングにおいて、CNTs濃度の増加が徐々に摩擦係数の増大をもたらすことを示している。摩擦係数の測定は、Falex試験機を用いて200ポンドの負荷で行なった。
【0118】
図26は、CSF−CNTs材料の他の実施例において、高CNTs濃度(総重量%)が、実施例の摩擦係数にどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。グラフは、この特定のCSF−CNTsコーティングにおいて、CNTs濃度の増加が摩擦係数の安定した増大をもたらすことを示している。摩擦係数の測定は、Falex試験機を用いて500ポンドの負荷で行なった。
【0119】
図27は、様々なCNTs濃度(総重量%)を有するCSF−CNTsコーティングの実施例について、物理的一貫性(physical consistency)を示すマクロレベル写真である。左上写真は、CNTsなしのCSFコーティングの物理的一貫性を示す。左下写真は、CNTsを0.05%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。右上写真は、CNTsを0.5%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。右下写真は、CNTsを1%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。
【0120】
図28は、様々なCNTs濃度(総重量%)を有するCSF−CNTsコーティングの実施例について、物理的一貫性を示すマクロレベル写真である。低倍率撮影の左上写真は、CNTsを10%含有するCSFコーティングの物理的一貫性を示す。高解像度撮影の右上写真は、CNTsを10%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。下の写真は、CNTsを5%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。
【0121】
図29は、種々のCNTs濃度(総重量%)を有するCSF−CNTs材料の実施例について、表面の導電性(上から下のピンク色の線)及び摩擦係数(下から上の青色の線)における影響を示すグラフである。幾つかの実施例において、CNTs濃度が約0.05%〜約3.0%であるとき、その摩擦係数は実質的に増大することなく、表面導電性において望ましい増大がもたらされる。
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は、2009年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/166,664号「締結具用適合性スリーブ」、及び2009年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/166,618号「導電性固体フィルム材料」の優先権を主張し、それらの全体は引用を以て本明細書に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本発明は、干渉締結具(interference fasteners)と、該干渉締結具を取り付ける(installing)方法に関する。
【背景技術】
【0003】
<背景技術>
幾つかの適用において、干渉締結具は、該干渉締結具が配置される構造体と密接に接触している。幾つかの適用において、締結具と構造体との間に形成される空間(spaces)又は空隙(voids)は、数が最少であり、大きさは小さいものであるか、又は存在しないことが望ましいとされる。
【0004】
例えば、単一航空機において、非常に多くの干渉締結具及び付随のスリーブが用いられている。航空機が落雷(lightning strike)を受けた場合、締結具/スリーブと、該締結具/スリーブが挿入された構造体の孔の側壁とが密接に接触していないと、雷により生じた瞬間的熱エネルギーが、締結具/スリーブと側壁との間の空隙中の空気をイオン化し、プラズマアークを生成し、これがスパークという形で噴出する。これは航空機にとって非常に危険な状態であり、スパーク発生(sparking)が燃料タンク近傍で起こったときは特に危険である。
【0005】
例えば、カーボンファイバー強化プラスチックなどの複合材料から作製された航空機構造部品の場合、これらの空隙は、複合材料に締結具孔をドリル穿孔する工程で生じる。個々のカーボンファイバーは不規則な角度で破壊し、締結具/スリーブと孔との間に微小な空隙が形成される。切削工具は使用するにつれて摩耗し、構造体表面でチッピング(chipping)が増加するため、切削されないファイバーや樹脂の量が増え、剥離が増大する。これらは、機械加工によって生じる微細組織(machining-induced microtexture)としても知られる。
【0006】
金属締結具は複合構造体の様々な要素を取り付けるのに広く用いられているから、複合構造体の表面に落雷すると、金属締結具の周りで電流密度が大きくなり易い。これらの電流が、締結具から該締結具の中を通って構造体のある地点まで流れると、発火源となり、アーク放電を起こす。この状態を回避するには、電流は、締結具孔に直交するカーボンファイバーの中を通じて放散させなければならない。上述のように、締結具と孔の側壁とが密接に接触していないと、瞬間的熱エネルギーが空隙中の空気をイオン化してアークプラズマを生成し、スパークという形で噴出する。
【0007】
更に、導電性コーティングが、様々な用途に用いられている(例えば、電荷拡散や無線周波妨害シールディング(EMI/RFI)など)。必要とされる直流伝導度の大きさは、具体的な用途に依存する。例えば、他の材料と摩擦接触しているグラスファイバー構造のような誘電体基板により電荷が蓄積すると、非常に大きな静電気電圧となり、危険な放電スパークを起こす。この電荷を効果的に漸減させてスパーク発生を防ぐために必要な表面抵抗率は、通常は比較的低く、106乃至109Ω/cm2である。
【発明の概要】
【0008】
<発明の要旨>
幾つかの実施例において、複合構造体(composite structure)の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成る適合性スリーブ(conformable sleeve)と、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部(shank portion)とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、取付位置(installed position)において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触が生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌め(interference fit)を形成し、取付位置を構成する。
【0009】
幾つかの実施例において、複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内側基層及び外側コーティング層から成り、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、内側基層は硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、外側コーティング層は硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がZである少なくとも一つの第3材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度で、ZはXと等しいか或いはXより高い硬度であり、取付位置において、管状部の外側コーティング層の少なくとも一部分が、複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成し、取付位置を構成する。
【0010】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、適合性スリーブの外側層は、固着された固体コーティングである。
【0011】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、永久固着された固体コーティングは、
i)少なくとも一つの有機材料及び少なくとも一つの導電性フィラー材料と、
ii)金属材料と、
のうちの少なくとも一つから成る。
【0012】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、金属材料はAg、Al、Au及びNiのうちの少なくとも一種を有する。
【0013】
他の実施例において、本発明のスリーブ型干渉締結具は、硬度XがロックウェルBスケールで100HRBより低い。
【0014】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る他の実施例において、締結具が取付位置にあるとき、複合構造体の孔の内側表面はシーラントを有する。
【0015】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る他の実施例において、取付位置では、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料が、複合構造体の孔の内側表面にトラップされた(entrapped)過剰のシーラントを取り除く(expunge)。
【0016】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、取付位置では、適合性スリーブは、界面にてスパーク発生を十分に回避することができるよう構成される。
【0017】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、ピン部材が適合性スリーブの中を移動し易くするために、締結具は、
i)管状部の内側表面、及び
ii)ピン部材の軸部、
のうち少なくとも一つに潤滑剤を有する。
【0018】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、潤滑剤は導電性固体フィルム材料から成る。本発明のスリーブ型干渉締結具に係る幾つかの実施例において、導電性固体フィルム材料は、重量率で0.05%〜30%のカーボンナノチューブを含む。
【0019】
本発明のスリーブ型干渉締結具に係る他の幾つかの実施例において、潤滑剤は、
i)外部粒子の溶解、
ii)外部粒子の運搬、及び
iii)熱の分配、
のうち少なくとも一つを十分に実行できるよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来の締結具のスリーブと、複合構造体との接触を示す。
【0021】
【図2】図2は、図1に示される側壁の拡大図である。
【0022】
【図3】図3は、従来の締結具のスリーブと、複合構造体との接触を示す。
【0023】
【図4】図4は、図3に示される側壁の拡大図である。
【0024】
【図5】図5は、複合構造体中の典型的な孔の拡大図である。
【0025】
【図6】図6は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0026】
【図7】図7は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0027】
【図8】図8は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0028】
【図9】図9は、本発明の一実施例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の一実施例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の一実施例を示す図である。
【図13】図13は、本発明の一実施例を示す図である。
【0029】
【図14】図14は、本発明を用いない場合の典型的なスパーク発生について、スパーク発生の前及び後の例を示す。
【0030】
【図15】図15は、本発明の実施例を用いた場合の典型的なスパーク発生について、スパーク発生の前及び後の例を示す。
【0031】
【図16】図16は、本発明に基づいて作製され、取り付けられた締結具のスリーブの一実施例の一部の拡大図である。
【0032】
【図17】図17は、本発明を用いない場合と本発明の実施例を用いた場合のスパーク発生について、スパーク発生の前及び後の例を示す。
【0033】
【図18】図18は、典型的なスパーク発生について、スパーク発生後の孔の表面の例を示す。
【0034】
【図19】図19は、本発明の実施例を用いた場合の典型的なスパーク発生について、スパーク発生後の孔の表面の例を示す。
【0035】
【図20】図20は、本発明の実施例を用いた場合のスパーク発生の例を示す。
【0036】
【図21】図21は、本発明を用いない従来の締結具のスリーブの、落雷試験後の拡大図を示す。
【0037】
【図22】図22は、取り付けられた従来の締結具の一部の拡大図である。
【0038】
【図23】図23は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【図24】図24は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【図25】図25は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【図26】図26は、本発明の一実施例に関するグラフである。
【0039】
【図27】図27は、本発明の幾つかの実施例の拡大図である。
【0040】
【図28】図28は、本発明の他の実施例の拡大図である。
【0041】
【図29】図29は、本発明の幾つかの実施例に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
これらの利点や改良について開示するが、本発明の他の目的及び利点は、添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。図面は本明細書の一部を構成し、本発明の例示的実施例を含むと共に、それらに係る様々な目的や特徴を含むものである。
【0043】
<詳細な説明>
ここに、本発明の詳細な実施例を開示するが、開示される実施例は発明の例示に過ぎず、様々な形態で実施されてよいことは理解されるべきである。更に、発明の様々な実施例に関連して示される実験例の各々は例示を意図したものであり、制限するものではない。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの特徴については、特定の部品の細部を示すために誇張されている。そして、図面に示されたあらゆる測定結果や仕様等は例示を意図したものであり、制限するものではない。従って、本明細書に開示される具体的な構造上及び機能上の詳細は、限定するものと解されるべきではなく、当業者が本発明を様々に用いることができるよう説明するための単なる基礎と解されるべきである。
【0044】
本発明の一実施例におけるスリーブ型締結具は、コアピン及び該コアピンに適合可能な適合性スリーブを含む。スリーブは、機械加工によって生じる微細組織に適合するように設計されており、この微細組織は、材料(例えば、複合材料)にドリル穿孔された締結具用孔に固有の組織である。これにより、締結具を取り付ける間、過剰にトラップされたシーラントをえぐり取る(excavate)ことができ、スリーブは構造体と密接に接触した状態になる。
【0045】
適合性スリーブは様々な方法で得られることができ、そのうちの幾つかは特定の構造に対してより適切なものもある。
【0046】
幾つかの実施例において、複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、取付位置において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触が生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成し、取付位置を構成する。
【0047】
一実施例において、適合性スリーブ材の組成物(composition)が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約100HRB(或いは、ロックウェルCスケールで25HRC)以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約90HRB(或いは、ロックウェルCスケールで9HRC)以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約35〜100HRBの範囲である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約80HRB(或いは、ロックウェルCスケールで0HRC)以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xは、ロックウェルBスケールで、約70HRB以下である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約35〜80HRBの範囲である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約50〜100HRBの範囲である。一実施例において、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xの値は、ロックウェルBスケールで、約60〜100HRBの範囲である。
【0048】
一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約30HRCであるかそれより高い。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約40HRCであるかそれより高い。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルCスケールで、約25〜60HRCの範囲である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約50HRCであるかそれより高い。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約70HRC以下である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルCスケールで、約40〜70HRCの範囲である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルCスケールで、約30〜50HRCの範囲である。一実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、ロックウェルCスケールで、約25HRC(或いは、ロックウェルBスケールで100HRB)であるかそれより低くてよいが、適合性スリーブ材組成物の硬度Xよりは十分に高いため、取付け中にスリーブを拡大させて孔と締まり嵌めを形成するピンの能力を保つことができる。
【0049】
幾つかの実施例において、ピン部材の組成物における硬度YはロックウェルCスケールでRC35であるかそれより高く、また、適合性スリーブ材における硬度XはロックウェルCスケールで約25HRC以下である。
【0050】
幾つかの実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約5HRC(或いは、ロックウェルBスケールで5HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約10HRC(或いは、ロックウェルBスケールで10HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約20HRC(或いは、ロックウェルBスケールで20HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Yは、適合性スリーブ材の組成物が有する硬度Xよりも、ロックウェルCスケールで約1〜40HRC或いはロックウェルBスケールで約1〜40HRB高い。
【0051】
一実施例において、スリーブが構造体の孔の形状に嵌合する際、適合性スリーブの材料が変形することで、スリーブと構造体との間の空隙を埋めることができる。実施例では、適合性スリーブは種々のニッケル合金又はそれと同様な物理的特性を有する材料から作られる。実施例では、適合性スリーブはA286ステンレス鋼合金から作られ、A286ステンレス鋼合金はロックウェルBスケールで85HRBの硬度を有する。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約20%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約30%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約50%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約70%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約90%であるかそれより高い。一実施例において、適合性スリーブの組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約100%であるかそれより高い。
【0052】
一実施例において、コアピンは、適合性スリーブの内径よりも大きい直径を有しており、該コアピンは、適合性スリーブの中を通って移動すると、スリーブは変形して、該スリーブの外径は、複合物(composite)がドリル穿孔中に生成される小さな空隙の中に充満する。一実施例において、ピンは例えば、Ti−6Al−4V合金又はそれと同様な物理的特性を有する材料で作られる。
【0053】
取付け前に孔の内側表面にシーラントが施される用途において、適合性スリーブが空隙の中に変形するとき、トラップされたシーラントを移動させる。そのため、締結具を取り付ける間、適合性スリーブは過剰にトラップされたシーラントをえぐり取り、複合構造体と密接に接触した状態になる。本発明を説明する目的において、“シーラント(sealant)”という用語は粘着性物質を意味するが、この硬度値はスリーブ材の値Xよりも十分に低いため、締結具を取り付ける間、適合性スリーブ材は、複合構造体の孔の表面にある空隙からシーラントを移動させることができる。幾つかの実施例において、シーラントは非金属組成物から構成される。
【0054】
一実施例において、複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具は、
a.)一端部にヘッド部と、管状部とを有し、前記管状部は内側基層及び外側コーティング層から成り、前記管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、内側基層は硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、外側コーティング層は硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がZである少なくとも一つの第3材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、ZはXと等しいか或いはXより高い硬度であり、取付位置において、管状部の外側コーティング層の少なくとも一部分が、複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大して、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成し、取付位置を構成する。
【0055】
コーティングとは物体に施される被覆(covering)のことであり、通常、ベース材料の表面特性を向上させる目的で用いられ、基材(substrate)と称される。このような表面特性としては、とりわけ、外観、粘着性(adhesion)、濡れ性、耐食性、耐摩耗性、及びスクラッチ特性が挙げられる。コーティングは液体、気体又は固体として施されることができる。本発明の一実施例において、複合材料の例としてのワークピースの孔の中に適合する締結具を取り付ける間、外側コーティング層は、スリーブの内側基層に十分に取り付けられた状態を維持する。
【0056】
実施例では、内側基層は高い硬度特性と、低い展性又は延性を有する。実施例において、内側基層はステンレス鋼又はそれと同様な硬度特性をもつ材料で作られる。別の実施例において、外側コーティング層は低い硬度特性と、高い展性又は延性を有する。
【0057】
一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約25HRCであるかそれより高い。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約30HRCであるかそれより高い。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xの値は、ロックウェルCスケールで約25〜50HRCの範囲である。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約40HRCであるかそれより高い。一実施例において、スリーブの内側基層の組成物における硬度Xは、ロックウェルCスケールで約60HRCであるかそれより高い。
【0058】
一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約100HRB(或いは、ロックウェルCスケールで約25HRC)かそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約90HRBかそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約35〜100HRBの間である。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約80HRBかそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約70HRBかそれより低い。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約35〜80HRBの間である。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約50〜100HRBの間である。一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物における硬度Yは、ロックウェルBスケールで約60〜100HRBの間である。
【0059】
一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約25HRCかそれより高い。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約40HRCかそれより高い。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約23〜80HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約50HRCかそれより高い。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約70HRCかそれより低い。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約40〜70HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約30〜70HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約25〜60HRCの間である。一実施例において、スリーブのピン部材の組成物における硬度Zは、ロックウェルCスケールで約25HRC(或いは、ロックウェルBスケールで約100HRB)かそれより低くてよいが、スリーブの内側基層の組成物の硬度Xと同じかそれより十分に高いため、取付け中にスリーブを拡張させて孔に締まり嵌めを形成するピンの作用を保持することができる。
【0060】
幾つかの実施例において、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約5HRC(或いは、ロックウェルBスケールで5HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約10HRC(或いは、ロックウェルBスケールで10HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約20HRC(或いは、ロックウェルBスケールで20HRB)高い。実施例によっては、ピン部材の組成物が有する硬度Z、及び/又は内側基層の組成物が有する硬度Xは、外側コーティング層の組成物が有する硬度Yよりも、ロックウェルCスケールで約1〜40HRC(或いはロックウェルBスケールで1〜40HRB)高い。
【0061】
一実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約20%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約30%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約50%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約70%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約90%かそれより高い。ある実施例において、スリーブの外側コーティング層の組成物が有する導電率は、IACS(国際軟銅規格)で約100%かそれより高い。
【0062】
幾つかの実施例において、外側コーティング層の厚さは約3ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約5ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約3ミクロン(μm)〜15ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約10ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約10ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)の間である。実施例によっては、外側コーティング層の厚さは約3ミクロン(μm)〜10ミクロン(μm)の間である。
【0063】
例えば、幾つかの実施例において、外側コーティング層は、比較的軟らかく、つまり展性又は延性が高く、導電性で、複合構造体に電食適合性(galvanically compatible)であることが知られた金属材料の群より選択される材料から成る。これらの材料には、限定されるものではないが、金、銀、ニッケル、銅及びスズが含まれる。他の材料としては、金、銀、ニッケル、銅及びスズの合金を含む様々な合金がある。実施例において、変形可能な種々の金属コーティングがベース材料の上に層として設けられることができる。その方法として、例えば電気めっき、イオン蒸着の他、適合性スリーブをワークピース(例えばドリル穿孔穴)の中に配置する間、変形可能なコーティングがベース材料に十分に取り付けられた状態を維持できるものであれば、他のあらゆる技術を用いることができる。
【0064】
他の実施例において、本発明の変形可能コーティングの組成物は、有機材料と導電性フィラーとの組合せで構成することができる。例として、有機材料にはエポキシなどのポリマー族が含まれ、導電性フィラーには金属粉末や、カーボンナノチューブなどの非伝導性材料が含まれる。実施例において、様々な有機ベースの変形可能なコーティングがベース材料の上に層として設けられることができる。その方法として、例えばスプレー法の他、適合性スリーブをワークピース(例えばドリル穿孔穴)の中に配置する間、変形可能なコーティングがベース材料に十分に取り付けられた状態を維持できるものであれば、他のあらゆる技術を用いることができる。
【0065】
幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する硬度Yは、ロックウェルBスケールで約100HRB(或いは、ロックウェルCスケールで約25HRC)以下である。一実施例において、スリーブの有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する硬度Yは、ロックウェルBスケールで約90HRB以下である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約35〜100HRBの範囲である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yは、ロックウェルBスケールで約80HRB以下である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約35〜80HRBの範囲である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブのーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約50〜100HRBの範囲である。一実施例において、有機ベースの変形可能なスリーブコーティングの組成物が有する硬度Yの値は、ロックウェルBスケールで約60〜100HRBの範囲である。
【0066】
幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率(volume resistivity)は、10V(ohm−m)で約103ohm−mより低い(例えば、ASTM D257に準拠して計測した場合)。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約102ohm−mより低い。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約10ohm−mより低い。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約10-3ohm−mより低い。幾つかの実施例において、有機ベースの変形可能なコーティングの組成物が有する体積抵抗率は、10V(ohm−m)で約1×10-8ohm−m〜4×10-5ohm−mの間である。
【0067】
締結具を取り付ける前に、孔の内側表面にシーラントが施される用途において、適合性スリーブの変形可能な外側コーティング層が、孔の内側表面の空隙の中に入るとき、トラップされたシーラントを移動させる。そのため、締結具を取り付ける間、適合性スリーブの変形可能なコーティングは過剰にトラップされたシーラントをえぐり取り、スリーブと複合構造体との間で、密接な電気接触が生じる。
【0068】
上記の一例として、界面を通る電圧降下が小さくなると、今度は、シーラントによる誘電効果が弱まる。このことにより、スリーブと複合パネルとの間でアーク放電が起こる可能性が最小限に抑えられるか、又は取り除かれる。一実施例において、いかなるアーク放電もスパーク発生に至らない。
【0069】
適合性スリーブの実施例では、マクロレベル及びミクロレベルでの優れた間隙充填、また、スリーブと構造体との間で密接な接触がもたらされる。
【0070】
適合性スリーブの実施例では、締結具から航空機パネルへの電流伝達の効率の向上をもたらすことができる。
【0071】
適合性スリーブの実施例は、孔の性質やミクロ間隙に対する感受性がより低い。
【0072】
適合性スリーブの実施例では、スリーブとパネルとの間にトラップされるシーラントの量を少なくすることができる。
【0073】
図1及び図3は、従来の締結具のスリーブと複合構造体とが接触している写真である。矢印は、締結具を収容するスロットの側壁を指しており、該側壁は、締結具のドリル穿孔中に生じた粗い不均一な空隙を数多く有している。
【0074】
図2及び図4は、夫々、図1及び図3のスロット側壁の状態のミクロレベル写真である。丸印は、スリーブとスロット側壁との間に存在する空隙を示している。
【0075】
図5は、個々のカーボンファイバーのミクロレベル写真であり、前記カーボンファイバーは不規則な角度で破壊し、スリーブとカーボンファインバー強化構造体との間に微小な空隙を形成する。これらの空隙に過剰のシーラントがトラップすると、スリーブと構造体との密接な接触が妨げられる。
【0076】
図6は、本発明に基づいて作製されたスリーブの実施例と、締結具を収容するスロットの側壁との適合(conformance)を示すマクロレベル写真である。この写真は、スリーブの材料が側壁に存在する不完全部分(imperfections)を充填していることを示している。
【0077】
図7及び図8は、本発明に基づいて作製されたスリーブの実施例の変形例のミクロレベル写真である。この写真は、スリーブが変形して、機械加工により生じた微細な空隙に充満しており、スリーブと個々のカーボンファイバーとの間の密接な接触を示している。
【0078】
図9は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、電気めっきにより、変形可能な金が永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0079】
図10は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、電気めっきにより、変形可能な銀が永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0080】
図11は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、電気めっきにより、変形可能なニッケルが永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0081】
図12は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、イオン蒸着により、変形可能なアルミニウムが永久的に固着されたコーティングが層状に形成されている。
【0082】
図13は、本発明の一実施例の写真であり、スリーブには、スプレーにより、カーボンナノチューブで作られた有機物質が永久的に固着されたコーティングが形成されている。
【0083】
図14は、スパークによる生成物の蓄積と、従来の締結具を収容するスロット側壁に及ぼす前記蓄積の効果について、その試験結果の写真である。左上の写真は、スロットについて粗い面に破壊された(fractured)側壁を示す。右上と右下の写真は、スロット側壁と従来スリーブとの間に蓄積されたスパーク生成物を示す。
【0084】
図15は、本発明に基づいて作製されたスリーブを収容するスロットの側壁に、スパーク生成物が蓄積していないことを示す試験結果写真である。左側の写真で矢印が示す側壁は、一様で滑らかな境界を有しているが、これは、締結具の適合性スリーブがスロットの中に装入され、スリーブのベース材料又はスリーブの変形可能なコーティングの材料が、側壁に存在するあらゆる空隙に入り込んだためである。
【0085】
図16は、適合性スリーブ型締結具の実施例とスロットの側壁との適合性(conformance)を示すミクロレベル写真である。この写真は、スリーブ材料又はスリーブの変形可能なコーティングがどのようにして個々のカーボンファイバーに適合するか、即ち、個々のカーボンファイバーの中で破損により生じた空隙にどのように充満するかを示している。
【0086】
図17は、従来の締結具のスリーブと、本発明に基づいて作製された適合性スリーブ型締結具の実施例とにおいて、側壁の状態を対比した試験結果写真である。左上及び左下の写真は、従来のファスナーを用いた場合の状態を示す。右上と右下の写真は、本発明に基づく締結具の実施例を用いた場合の状態を示しており、スロット側壁の空隙が埋まっている。
【0087】
図18は、落雷(lightning strike)試験後に撮影されたミクロレベル写真であり、従来の標準的なA286スリーブが用いられたときのスロットの側壁を示している。写真から、このスリーブは、スロットの複合構造体のミクロ組織(micro texture)に適合しないことが分かる。この試験は、残留するシーラントの位置に、高いアーク密度と激しいアーク放電を示している。
【0088】
図18との対比において、図19は、落雷試験後に撮影されたミクロレベル写真であり、本発明の適合性スリーブが用いられたときのスロット側壁を示している。写真から、適合性スリーブでは、アーク密度が低く、強い電気的活性は低減し、ファイバーとスリーブとの接触がより密接であることが分かる。
【0089】
表1は、従来の締結具と、本発明の適合性スリーブの実施例とを用いて直結型(direct attachment)落雷試験を行なった試験結果を示す。これらの試験は、カーボンファイバー複合材料で作られたパネル(厚さ0.25インチ)と、RXLタイプのロックボルト(RXL4BC−VC08−08のピン、カラー及びスリーブ)のファスナーとを用いて行なった。一つのパネルにつき18個のファスナーを使用した。一つのパネルにつき、4つの別個のファスナーに落雷を加えた。試験の幾つかは、最悪の取付け条件(例えば、取り付ける把持部は最小で、孔サイズは最大、即ち、干渉或いは接触は最小)を再現するべく設計された。試験は、試料のカラー側に光源が検知されないことを基準にして、合格/不合格を記録した。試験結果は、適合性スリーブ(A286又は300シリーズ)ではスリーブ/構造体の界面におけるスパーク発生が最小であること、前記適合性スリーブは、機械加工によって生じる組織に対する許容性がより高いことを示している。
【表1】
【0090】
図20は、表1のパネルI(本発明の適合性スリーブ型締結具に対応する)に実施した直結型落雷試験の写真である。白色の点は基準光を表しており、実際のスパークではない。
【0091】
一実施例において、コアピンのスリーブの中の移動を促進するために、潤滑剤が用いられる。潤滑剤は、移動する2つの表面の間に導入され、それら表面間の摩擦を低減させる物質(液体の場合が多い)であって、効率を改善し摩耗を減らすことができる。潤滑剤はまた、外部粒子を溶解又は運搬して、熱を分配する作用も有する。
【0092】
他の実施例において、潤滑剤は例えば導電性固体フィルム材料/コーティングである。幾つかの実施例では、導電性固体フィルム材料をベースとする潤滑剤は、ピンとスリーブとの間の内部アーク放電を減少させるか又は無くす作用がある。
【0093】
本発明は、カーボンナノチューブ(carbon nano-tubes“CNTs”)を含有する導電性固体フィルム(conductive solid film“CSF”)材料(“CSF−CNTs 材料”)を提供する。CSF材料の実施例は、典型的には、主要成分として濃度が<30〜40%のメチルエチルケトン、濃度が<5〜10%のフェノール樹脂、及び濃度が<30〜40%のエチルアルコールを有する。
【0094】
一実施例において、CSF材料は流体の様な挙動を示す。一実施例において、CSFの粘度は低くてよい。幾つかの実施例では、CSF材料は潤滑剤(即ち、二つの移動する表面の間に導入されることによりそれら表面間の摩擦を低減させる物質(液体の場合が多い))として用いられ、効率を改善し摩耗を減らすことができ、また、外部粒子を溶解又は運搬して、熱を分配する作用も有する。
【0095】
他の幾つかの実施態様において、CSF材料はコーティング(即ち、物体に施される被覆)として、通常は、ベース材料(通常は基材と称される)の表面特性を向上させる目的で用いられる。このような表面特性として、とりわけ、外観、粘着性、濡れ性、耐食性、耐摩耗性、及びスクラッチ特性が挙げられる。コーティングは液体、気体又は固体として施されることができる。
【0096】
幾つかの実施例において、好ましいCSF材料の摩擦係数は低く、1よりも実質的に低い。幾つかの実施例において、市販の締結具コーティング(例えば、Incotec Corp.の8Gアルミニウムコーティング、Teclubeコーティング、又はあらゆるアルミニウム顔料コーティングなど)が、CSF材料として用いられることができる。
【0097】
CNTsは、ナノ直径が約3〜200nmの間のカーボン化合物であり、長さと直径の比が28,000,000:1ほどもある。CNTsの長さは、最大で約1.0mmである。CNTsは、チューブの軸方向に非常に優れた熱伝導性を示し、チューブ軸の横方向に優れた断熱性を示す。CNTsの引張強度は、鋼よりも約50倍高い。CNTsは、その構造に応じて、金属又は半導電性材料に匹敵する電気伝導性を有する。通常、CNTsの密度は約1.3〜2g/cm3である。CNTsは、単一壁又は複数壁の構造である。CNTsは、金属及び/又は非晶質カーボンなどの不純物を少量含んでいる。CNTsは通常、耐酸化性が非常に強く、強酸中での長時間の浸漬にも耐えることができる。更にCNTsは、急性毒性や環境への有害性は問題とはならず、希少で限られた供給前駆体(supply precursors)から作られる。
【0098】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、Cheap Tubes, Inc.が販売しているCNTs(IGMWNTs90重量%及びIGMWNTs90重量%COOH)を用いて作られる。Nanocylのような他の供給者によるCNTsを用いてもよい。
【0099】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、スプレー法により、或いはそれと同等の他の技術を用いることによって、製品の表面に施される。幾つかの実施例において、CNTsの(及び、CSF−CNTs材料の特定組成物の他の成分)物品表面での成長、及び/又は該表面への付着、及び/又は蒸着を促進する環境下(例えば、CNTsの反応溶液)に維持されるとき、CSF−CNTs材料は物品の表面に蒸着(deposition)される。
【0100】
CSF−CNTs材料の実施例では、CNTsは、少量の界面活性湿潤剤(surfactant-wetting agent)が添加された溶媒中に分散される。前記界面活性湿潤剤は、液体の表面張力を低下させて拡散を容易にするので、CNTsは、2種類の液体間の界面張力を低下させる。
【0101】
一実施例において、CSF−CNTs材料は、直径が約3〜30nmのCNTsを含んでいる。
【0102】
一実施例において、CSF−CNTs材料におけるCNTsの量が十分であれば、CSF−CNTs材料のスティフネス(stiffness)を実質的に増大させることなく、CSF−CNTs材料の導電性を高めることができる。
【0103】
実施例において、CNTsを添加すると、CSF−CNTs材料と同じ特性を達成するのに、高導電性を有する金属を用いる必要性は有意に低下するか又はなくなるので、ベースCSF材料のスティフネス特性とは異なり、スティフネスを実質的に増大させることはない。
【0104】
CNTsを約1%の濃度で含むCSF−CNTs材料の実施例では、抵抗率は、>1012Ω/スクエアから約105Ω/スクエアまで低下した。CNTsを1%を超える濃度で含むCSF−CNTs材料の実施例では、抵抗率が約500Ω/スクエアまで更に低下した。CSF−CNTs材料を航空宇宙の締結具コーティングとして用いる実施例では、例えば、金属粒子が最少であるか全く無くても高伝導性という望ましい特性を具えた締結具が提供される。なお、CSF−CNTs材料の幾つかの実施例において、CNTsのサイズ及び負荷の低さは、CSF−CNTs材料で施されたコーティングの表面品質に利点をもたらす。
【0105】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、0.05%〜30%の濃度のCNTを含有する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、0.1%〜10%の濃度のCNTを含有する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、1%〜10%の濃度のCNTを含有する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、典型的には、潤滑剤組成物の合計重量に対し、3%〜15%の濃度のCNTを含有する。
【0106】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約103ohm−m(例えば、ASTM D257に基づいて計測した場合)より小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約102ohm−mより小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約10ohm−mより小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、約10-3ohm−mより小さい。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する体積抵抗率は、1x10-8ohm−m乃至4x10-5ohm−mである。
【0107】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.12μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.10μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.2μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.3μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.5μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.8μより低い(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.04μ〜0.5μの間である(例えば、Falex試験機で計測した場合)。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の組成物が有する摩擦係数は、約0.04μ〜1μの間である(例えば、Falex試験機で計測した場合)。
【0108】
実施例では、CSF−CNTs材料の望ましい特性として、その単純特性、例えば、成分数の少なさ、特別な取扱い処理の不要性も含まれる。
【0109】
次の表2は、市販のTeclubeコーティングをベースにしたCSF−CNTs材料の実施例における幾つかの特性と、Teclubeコーティング自体の特性とを比較するものである。表2は、CNTsを0.02%含有するCSF−CNTs材料の実施例が、ベースであるTeclubeコーティングよりも実質的に体積抵抗率が低いことを示す。表2は、CNTsの添加が、CNTsなしのTeclubeコーティングと比べて、CNTsを有するTeclubeコーティングの流動性、即ち厚さに実質的な影響を与えなかったことを示す。
【表2】
【0110】
このCSF−CNTs材料は、様々な用途に用いられることができる。一実施例において、CSF−CNTs材料は航空宇宙産業の締結具のコーティング用に用いられる。CSF−CNTs材料の実施例は、落雷から少なくとも部分的に保護され得るのに十分な高導電性を有する。とりわけ金属締結具の近傍では、高導電性は、例えば航空機の複合構造体に落雷を受けたときの大電流を方向づけるのに必要である。CSF−CNTs材料の実施例により、高い熱伝導性と、より小さな重量、そして強い耐酸化性という特性を具える締結具がもたらされる。実施例において、CNTsは典型的に、密度が約2.0g/cm3(通常8g/cm3の密度を有する典型的な金属粒子又は薄片(flakes)の約4分の1)であるため、CSF−CNTs材料を用いることによって、航空宇宙産業における締結具コーティングの重量、及び航空機全体の重量を減らすのに役立つ。更に、CSF−CNTs材料の実施例を航空宇宙産業の締結具コーティングとして用いると、従来の金属ベース導電性コーティングの金属濃度よりもCNTsの濃度が低い場合、電気伝導性及び熱伝導性、換算質量(reduce mass)、靱性及び耐久性を含む物理的特性が実質的に高められる。
【0111】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料はスリーブの外側表面に施されるが、該スリーブは、締結具を収容するスロット壁に接触する。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、スリーブの内側及び外側表面の両方に施される。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、ピンの表面及びスリーブの内部表面の両方に施される。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、ピンの表面に施される。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料は、ピン及びスリーブの全ての表面に施される。CSF−CNTs材料をスリーブの内壁又はピンの外部表面のいずれかに、或いは、これら両方の表面に施すことによって、ピンがスリーブに導入される間に受ける抵抗が少なくなる。幾つかの実施例において、ピンの表面とスリーブの内側表面との間にCSF−CNTsコーティングがあると、落雷から少なくとも部分的に保護されることができる。
【0112】
幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約3ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約5ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約3ミクロン(μm)〜15ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約10ミクロン(μm)〜25ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約10ミクロン(μm)〜20ミクロン(μm)であるときに得られる。幾つかの実施例において、CSF−CNTs材料の層を設けることによりもたらされる利点は、CSF−CNTs層の厚さが約3ミクロン(μm)〜10ミクロン(μm)であるときに得られる。
【0113】
図21は、CSF−CNTsコーティングなしの従来の締結具スリーブについて落雷試験後のマクロレベル写真であり、スリーブの表面が重度の損傷を受けていることを示す。
【0114】
図22は、従来の締結具スリーブと、締結具を収容するスロット壁との間にの空隙にある孔を示すマクロレベル写真である。本発明の実施例において、この孔は、CSF−CNTsコーティングにより実質的に埋められるので、雷に起因するスパーク発生の可能性を回避するか又は減少させることができる。
【0115】
図23は、CSF−CNTsの幾つかの実施例において、CNTs濃度(総重量%)の増加が、これら実施例のコーティングとしての表面抵抗率にどのように大きな影響を及ぼすかを示すグラフである。コーティングは、グラスファイバー基材に施された。
【0116】
図24は、CSF−CNTs材料の一実施例において、CNTs濃度(総重量%)の増加が、実施例の体積抵抗率に対してどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。グラフは、この特定の実施例に対するもので、0.050%のCNTsを添加することにより、体積抵抗率に望ましい低下がみられることを示す。コーティングは、金属基材に施された。
【0117】
図25は、CSF−CNTs材料(試料1)の一実施例において、CNTs濃度の増加が、実施例の摩擦係数に対してどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。グラフは、この特定のCSF−CNTsコーティングにおいて、CNTs濃度の増加が徐々に摩擦係数の増大をもたらすことを示している。摩擦係数の測定は、Falex試験機を用いて200ポンドの負荷で行なった。
【0118】
図26は、CSF−CNTs材料の他の実施例において、高CNTs濃度(総重量%)が、実施例の摩擦係数にどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。グラフは、この特定のCSF−CNTsコーティングにおいて、CNTs濃度の増加が摩擦係数の安定した増大をもたらすことを示している。摩擦係数の測定は、Falex試験機を用いて500ポンドの負荷で行なった。
【0119】
図27は、様々なCNTs濃度(総重量%)を有するCSF−CNTsコーティングの実施例について、物理的一貫性(physical consistency)を示すマクロレベル写真である。左上写真は、CNTsなしのCSFコーティングの物理的一貫性を示す。左下写真は、CNTsを0.05%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。右上写真は、CNTsを0.5%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。右下写真は、CNTsを1%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。
【0120】
図28は、様々なCNTs濃度(総重量%)を有するCSF−CNTsコーティングの実施例について、物理的一貫性を示すマクロレベル写真である。低倍率撮影の左上写真は、CNTsを10%含有するCSFコーティングの物理的一貫性を示す。高解像度撮影の右上写真は、CNTsを10%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。下の写真は、CNTsを5%含有するCSF−CNTsコーティングの物理的一貫性を示す。
【0121】
図29は、種々のCNTs濃度(総重量%)を有するCSF−CNTs材料の実施例について、表面の導電性(上から下のピンク色の線)及び摩擦係数(下から上の青色の線)における影響を示すグラフである。幾つかの実施例において、CNTs濃度が約0.05%〜約3.0%であるとき、その摩擦係数は実質的に増大することなく、表面導電性において望ましい増大がもたらされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具であって、
a.)一端部にヘッド部と、内径及び外径を有する管状部とを含み、該管状体の外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部の内径よりも大きく、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、取付位置において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触が生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大し、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成して、取付位置を構成する、スリーブ型干渉締結具。
【請求項2】
XはロックウェルBスケールで100HRBより低い、請求項1に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項3】
締結具が取付位置にあるとき、複合構造体の孔の内側表面はシーラントを有する、請求項1に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項4】
ピン部材が適合性スリーブの中を移動し易くするために、締結具は潤滑剤を更に含んでいる、請求項1に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項5】
潤滑剤は導電性固体フィルム材料を含む、請求項4に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項6】
導電性固体フィルム材料は、カーボンナノチューブを含み、濃度は、導電性固体フィルム材料の全重量の0.05%〜30%である、請求項5に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項7】
複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具であって、
a.)一端部にヘッド部と、内側基層及び外側コーティング層から成る管状部とを有し、該管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、内側基層は硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、外側コーティング層は硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がZである少なくとも一つの第3材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、ZはXと等しいか或いはXより高い硬度であり、取付位置において、管状部の外側コーティング層の少なくとも一部分が、複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大し、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成して、取付位置を構成する、スリーブ型干渉締結具。
【請求項8】
外側層は固定された固体コーティングである、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項9】
固定された固定コーティングは、
i)少なくとも一つの有機材料、及び
ii)少なくとも一つの導電性フィラー材料
を含む、請求項11に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項10】
固定された固定コーティングは金属材料を含む、請求項11に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項11】
金属材料は、銀、アルミニウム、金、及びニッケルから成る群より選択される1又は複数の金属元素を含む、請求項13に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項12】
XはロックウェルBスケールで100HRBより低い、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項13】
締結具が取付位置にあるとき、複合構造体の孔の内側表面はシーラントを有する、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項14】
ピン部材が適合性スリーブの中を移動し易くするために、締結具は潤滑剤を更に有する、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項15】
潤滑剤は導電性固体フィルム材料を含む、請求項14に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項16】
導電性固体フィルム材料は、カーボンナノチューブを含み、濃度は、導電性固体フィルム材料の全重量の0.05%〜30%である、請求項15に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項1】
複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具であって、
a.)一端部にヘッド部と、内径及び外径を有する管状部とを含み、該管状体の外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部の内径よりも大きく、硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、取付位置において、適合性スリーブの少なくとも一つの第1材料の少なくとも一部分が複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触が生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大し、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成して、取付位置を構成する、スリーブ型干渉締結具。
【請求項2】
XはロックウェルBスケールで100HRBより低い、請求項1に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項3】
締結具が取付位置にあるとき、複合構造体の孔の内側表面はシーラントを有する、請求項1に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項4】
ピン部材が適合性スリーブの中を移動し易くするために、締結具は潤滑剤を更に含んでいる、請求項1に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項5】
潤滑剤は導電性固体フィルム材料を含む、請求項4に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項6】
導電性固体フィルム材料は、カーボンナノチューブを含み、濃度は、導電性固体フィルム材料の全重量の0.05%〜30%である、請求項5に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項7】
複合構造体の孔に取り付けられることができるスリーブ型干渉締結具であって、
a.)一端部にヘッド部と、内側基層及び外側コーティング層から成る管状部とを有し、該管状部は内径及び外径を有し、管状部の前記外径は複合構造体の孔の内径よりも小さく、内側基層は硬度がXである少なくとも一つの第1材料から成り、外側コーティング層は硬度がYである少なくとも一つの第2材料から成る適合性スリーブと、
b.)一端部に少なくともピンヘッドと、該ピンヘッドの反対側端部にロッキング部と、それらの間に軸部とを有し、前記軸部はピンヘッドの下方に位置し、直径が適合性スリーブの管状部内径よりも大きく、硬度がZである少なくとも一つの第3材料から成るピン部材と、を具えており、
c.)XはYよりも十分に低い硬度であり、ZはXと等しいか或いはXより高い硬度であり、取付位置において、管状部の外側コーティング層の少なくとも一部分が、複合構造体の孔の内側表面の形状に適合して、複合構造体の孔の内側表面と適合性スリーブとの界面で連続的電気接触を生じるようにし、
d.)適合性スリーブは、ピン部材の軸部から圧力を受けると、複合構造体の孔の内側表面を越えて径方向に拡大し、スリーブの外径と複合構造体の孔との間で締まり嵌めを形成して、取付位置を構成する、スリーブ型干渉締結具。
【請求項8】
外側層は固定された固体コーティングである、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項9】
固定された固定コーティングは、
i)少なくとも一つの有機材料、及び
ii)少なくとも一つの導電性フィラー材料
を含む、請求項11に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項10】
固定された固定コーティングは金属材料を含む、請求項11に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項11】
金属材料は、銀、アルミニウム、金、及びニッケルから成る群より選択される1又は複数の金属元素を含む、請求項13に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項12】
XはロックウェルBスケールで100HRBより低い、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項13】
締結具が取付位置にあるとき、複合構造体の孔の内側表面はシーラントを有する、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項14】
ピン部材が適合性スリーブの中を移動し易くするために、締結具は潤滑剤を更に有する、請求項10に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項15】
潤滑剤は導電性固体フィルム材料を含む、請求項14に記載のスリーブ型干渉締結具。
【請求項16】
導電性固体フィルム材料は、カーボンナノチューブを含み、濃度は、導電性固体フィルム材料の全重量の0.05%〜30%である、請求項15に記載のスリーブ型干渉締結具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図14】
【図15】
【図17】
【図20】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図14】
【図15】
【図17】
【図20】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2012−522683(P2012−522683A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503737(P2012−503737)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029758
【国際公開番号】WO2010/115084
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(500277629)アルコア インコーポレイテッド (49)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029758
【国際公開番号】WO2010/115084
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(500277629)アルコア インコーポレイテッド (49)
【Fターム(参考)】
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