説明

適応変調システム、無線通信システム、移動局、基地局及び適応変調制御方法

【課題】OFDM方式の無線通信システムにおいてSISO伝送とMIMO伝送を切り替える場合に、適応変調において複数のMCS選択方針を切り替えて使用することを図る。
【解決手段】伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブル10を、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、それら適応変調テーブル10の内からストリーム数に応じた適応変調テーブル10を選択する選択部11と、該選択された適応変調テーブル10を用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応変調システム、無線通信システム、移動局、基地局及び適応変調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)伝送と適応変調を組み合わせた無線通信システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】郵政省通信総合研究所著、笹岡秀一編著、“ウェーブサミット講座 移動通信”、株式会社オーム社、1998年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の無線通信システムでは、以下に示す課題がある。
【0005】
本発明者は、OFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の無線通信システムにおいて、SISO(Single-Input Single-Output)伝送を行った場合とMIMO伝送を行った場合では、移動局と基地局の間の伝搬路状態に応じた「変調方式と誤り訂正符号化率(以下、単に「符号化率」と称する)の組合せ(MCS(Modulation and Coding Scheme))」を選択する際の選択方針(MCS選択方針)が異なることを発見した。具体的には、SISO伝送の場合は、同じ伝搬路状態であるならば、変調多値数が大きくて符号化率が低い方が受信品質は良いのに対して、MIMO伝送の場合には、同じ伝搬路状態であるならば、変調多値数が小さくて符号化率が高い方が受信品質は良い、というものである。しかしながら、従来の無線通信システムでは、MCS選択方針が一つのみであるので、適応変調において複数のMCS選択方針を切り替えて使用することができない。このため、OFDM方式の無線通信システムにおいて移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替える場合には、従来の無線通信システムにおける適応変調技術では対応することができない。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、OFDM方式の無線通信システムにおいてSISO伝送とMIMO伝送を切り替える場合に、適応変調において複数のMCS選択方針を切り替えて使用することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る適応変調システムは、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおいて、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更する適応変調システムであり、伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択する選択部と、前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る適応変調システムにおいては、前記適応変調テーブルは、伝搬路状態が良くなるほどに、変調多値数の大きい方の変調方式が選択可能となると共に、同じ変調方式と組合せ可能な符号化率が高くなるものであって、ストリーム数が1である前記適応変調テーブルは、ある伝搬路状態において、選択可能な変調方式の内から変調多値数が最大である変調方式が選択されるように構成されて成り、一方、ストリーム数が2以上である前記適応変調テーブルは、ある伝搬路状態において、選択可能な変調方式の内から変調多値数が最小である変調方式が選択されるように構成されて成る、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る適応変調システムにおいては、前記適応変調テーブル、前記選択部及び前記決定部を変調側と復調側の両方にそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無線通信システムは、移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替えることと、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更することとを行う、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおいて、前述のいずれかの適応変調システムを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る移動局は、移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替えることと、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更することとを行う、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおける、前記移動局において、伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択する選択部と、前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る基地局は、移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替えることと、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更することとを行う、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおける、前記基地局において、伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択する選択部と、前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る適応変調制御方法は、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおいて、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更する適応変調システムにおける、適応変調制御方法であって、伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、適応変調テーブルを選択する手段が、前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択するステップと、変調方式と符号化率の組合せを決定する手段が、前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、OFDM方式の無線通信システムにおいてSISO伝送とMIMO伝送を切り替える場合に、適応変調において複数のMCS選択方針を切り替えて使用することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るOFDM方式の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す移動局200のMCS選択部217の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す基地局100のMCS抽出部117の構成を示すブロック図である。
【図4】適応変調テーブル10の構成例である。
【図5】ストリーム数が1である適応変調テーブル10の構成方法を説明するための概念図である。
【図6】ストリーム数が2以上である適応変調テーブル10の構成方法を説明するための概念図である。
【図7】2つの適応変調テーブルを一つにまとめた構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るOFDM方式の無線通信システムの構成を示すブロック図である。この図1には、基地局100から移動局200へユーザデータを送信する構成のみを示している。以下、説明の便宜上、基地局100から移動局200へユーザデータを送信する場合を例に挙げて説明するが、移動局200から基地局100へユーザデータを送信する場合についても同様である。
【0017】
図1において、基地局100及び移動局200は、複数(本実施形態では2本とする)のアンテナを有し、基地局100と移動局200の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替える。SISO伝送の場合、同時に送信されるデータストリームの数は1である。MIMO伝送の場合、同時に送信されるデータストリームの数は2である。以下、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数のことを「ストリーム数」と称する。
【0018】
また、基地局100及び移動局200は、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を基地局100と移動局200の間の伝搬路状態に応じて適応的に変更する、適応変調を行う。変調方式としては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4相位相偏移変調)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation:16値直交振幅変調)、64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation:64値直交振幅変調)などが挙げられる。各変調方式の変調多値数(単位は、ビット/変調シンボル)は、QPSKが2であり、16QAMが4であり、64QAMが6である。
【0019】
まず、図1を参照して基地局100を説明する。
ユーザデータ符号化部101は、MCS抽出部117から指定された符号化率で、ユーザデータを誤り訂正符号化する。ユーザデータ変調部102は、MCS抽出部117から指定された変調方式で、ユーザデータ符号化部101で誤り訂正符号化された符号化データを変調する。MIMO送信処理部103は、ストリーム数抽出部116から指定されたストリーム数の分だけ、ユーザデータ変調部102変調された変調シンボルを多重する。このとき、ストリーム数が2である場合は、MIMO伝送されるように、2つの変調シンボルを多重する。MIMO送信処理部103は、ストリーム数分の変調シンボルが多重された多重化データストリームを混合部105へ出力する。
【0020】
パイロット信号生成部104は、基地局100と移動局200で既知のパイロット信号を生成する。混合部105は、そのパイロット信号とMIMO送信処理部103から受け取った多重化データストリームを多重する。この多重化後の信号は、無線送信部106でOFDM変調されてから下りリンク(基地局から移動局方向のリンク)で無線送信される。
【0021】
無線受信部110において上りリンク(移動局から基地局方向のリンク)で無線受信された信号は、分離器111でパイロット信号と制御情報に分離される。伝搬路情報推定部112は、分離器111で分離されたパイロット信号を用いて上りリンクの伝搬路状態を推定する。制御情報検波部113は、伝搬路情報推定部112の推定結果である上りリンクの伝搬路情報を用いて、伝搬路による制御情報の波形歪みを補償する。この補償後の制御情報は、制御情報復調部114で復調されてから制御情報復号部115で復号される。
【0022】
ストリーム数抽出部116は、制御情報復号部115で復号された信号から、移動局200から送られたストリーム数(下りリンクの次回のデータ送信用)を抽出する。ストリーム数抽出部116は、抽出したストリーム数を、次回のデータ送信用のストリーム数としてMIMO送信処理部103及びMCS抽出部117へ指定する。
【0023】
MCS抽出部117は、制御情報復号部115で復号された信号から、移動局200から送られたMCS番号(下りリンクの次回のデータ送信用)を抽出する。MCS抽出部117は、抽出したMCS番号とストリーム数抽出部116から指定されたストリーム数に基づいて、変調方式と符号化率の組合せ(MCS)を決定する。MCS抽出部117の詳細については後述する。MCS抽出部117は、決定した符号化率を、次回のデータ送信用の符号化率としてユーザデータ符号化部101へ指定する。同様に、MCS抽出部117は、決定した変調方式を、次回のデータ送信用の変調方式としてユーザデータ変調部102へ指定する。
【0024】
次に、図1を参照して移動局200を説明する。
無線受信部210において下りリンクで無線受信された信号は、OFDM復調されてから分離器211でパイロット信号とユーザデータに分離される。伝搬路情報推定部212は、分離器211で分離されたパイロット信号を用いて下りリンクの伝搬路状態を推定する。MIMO検波部213は、伝搬路情報推定部212の推定結果である下りリンクの伝搬路情報を用いて、分離器211で分離されたユーザデータから、ストリーム数抽出部216から指定されたストリーム数分のデータストリームを分離する。これにより、伝搬路で混合された各データストリームが分離される。
【0025】
ユーザデータ復調部214は、MCS選択部217から指定された変調方式で、MIMO検波部213で分離された各データストリームを復調する。ユーザデータ復号部215は、MCS選択部217から指定された符号化率で、ユーザデータ復調部214で復調された復調データを復号する。
【0026】
ストリーム数選択部216は、伝搬路情報推定部212の推定結果である下りリンクの伝搬路情報を用いて、ストリーム数の候補の内から次回のデータ送信用のストリーム数を選択する。具体的には、ストリーム数選択部216は、伝搬路情報を行列演算することによって伝搬路行列のランク数又はデータストリーム間の伝搬路情報の相関値を算出し、該算出結果に基づいてストリーム数を選択する。ストリーム数選択部216は、選択結果のストリーム数を、次回のデータ送信用のストリーム数としてMIMO検波部213、MCS選択部217及び制御情報符号化部201へ指定する。
【0027】
MCS選択部217は、伝搬路情報推定部212の推定結果である下りリンクの伝搬路情報とストリーム数抽出部216から指定されたストリーム数に基づいて、変調方式と符号化率の組合せ(MCS)を決定する。MCS選択部217の詳細については後述する。MCS選択部217は、決定した変調方式を、次回のデータ送信用の変調方式としてユーザデータ復調部214へ指定する。同様に、MCS選択部217は、決定した符号化率を、次回のデータ送信用の符号化率としてユーザデータ復号部215へ指定する。同様に、MCS選択部217は、決定したMCSを示すMCS番号を、次回のデータ送信用のMCS番号として制御情報符号化部201へ指定する。
【0028】
制御情報符号化部201は、MCS選択部217から指定されたMCS番号とストリーム数選択部216から指定されたストリーム数を誤り訂正符号化する。制御情報変調部202は、制御情報符号化部201で誤り訂正符号化された符号化データを変調する。パイロット信号生成部204は、基地局100と移動局200で既知のパイロット信号を生成する。混合部205は、そのパイロット信号と制御情報変調部202による変調データを多重する。この多重化後の信号は、無線送信部206により上りリンクで無線送信される。これにより、次回のデータ送信用のMCS番号とストリーム数が基地局100に通知される。
【0029】
図2は、図1に示す移動局200のMCS選択部217の構成を示すブロック図である。図2において、MCS選択部217は、複数の適応変調テーブル10と選択部11とMCS決定部12とSNR算出部13を有する。
【0030】
適応変調テーブル10は、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設けられる。本実施形態では、図2に示されるように、ストリーム数の候補である「1」と「2」の各各に対応した、2つの適応変調テーブル10が設けられる。
【0031】
適応変調テーブル10は、伝搬路状態に対応したMCSの候補を格納する。図4は、適応変調テーブル10の構成例である。図4において、適応変調テーブル10は、MCS毎に、MCS番号と変調方式の名称と符号化率と帯域効率と信号対雑音電力比の組が格納される。本実施形態では、伝搬路状態の良し悪しを表す尺度として信号対雑音電力比(SNR)を用いる。なお、帯域効率(単位は、ビット/変調シンボル)は、1変調シンボル当たり何ビットの情報を送ることができるのかを表し、次式で算出される。
帯域効率=変調多値数×符号化率
【0032】
適応変調テーブル10は、SNR(伝搬路状態)が良くなるほどに、変調多値数の大きい方の変調方式が選択可能となると共に、同じ変調方式と組合せ可能な符号化率が高くなるものである。例えば、図4中のSNRが良くなるほど、QPSK(変調多値数が2)から16QAM(変調多値数が4)へ、そして16QAM(変調多値数が4)から64QAM(変調多値数が6)へ、というように変調多値数の大きい方の変調方式が選択可能となる。さらに、図4中のSNRが良くなるほど、同じ変調方式と組合せ可能な符号化率、例えばQPSKと組合せ可能な符号化率が「1/12」から「7/12」まで、というように段階的に高くなる。
【0033】
選択部11は、ストリーム数抽出部216から指定されたストリーム数に対応する適応変調テーブル10を選択する。具体的には、選択部11は、ストリーム数抽出部216から指定されたストリーム数が「1」である場合は、ストリーム数が1である適応変調テーブル10とMCS決定部12を接続する。これにより、MCS決定部12は、ストリーム数が1である適応変調テーブル10を参照することができる。また、選択部11は、ストリーム数抽出部216から指定されたストリーム数が「2」である場合は、ストリーム数が2である適応変調テーブル10とMCS決定部12を接続する。これにより、MCS決定部12は、ストリーム数が2である適応変調テーブル10を参照することができる。
【0034】
SNR算出部13は、伝搬路情報推定部212の推定結果である下りリンクの伝搬路情報に基づいて、SNRを算出する。
【0035】
MCS決定部12は、選択部11による選択結果の適応変調テーブル10を参照し、SNR算出部13の算出結果のSNRを満たすMCSの内から、最大の帯域効率を有するMCSを選択する。例えば、SNRが9dBである場合、図4中、MCS番号が0から6までのMCSが選択可能であるが、その中から最大の帯域効率を有するMCS番号「6」のMCSを選択する。MCS決定部12は、選択したMCSのMCS番号と変調方式の名称と符号化率を当該適応変調テーブル10から読み出す。MCS決定部12は、適応変調テーブル10から読み出したMCS番号と変調方式の名称と符号化率に従って、所定の各部へ、次回のデータ送信用のMCS番号と変調方式と符号化率を指定する。
【0036】
図3は、図1に示す基地局100のMCS抽出部117の構成を示すブロック図である。図3において、図2に示すMCS選択部217に対応する部分には同一の符号を付している。MCS抽出部117は、MCS選択部217のSNR算出部13の代わりに、MCS番号抽出部20を有する。
【0037】
基地局100のMCS抽出部117は、移動局200のMCS選択部217が有する適応変調テーブル10と同じものを有する。従って、本実施形態では、図2、図3に示されるように、ストリーム数の候補である「1」と「2」の各各に対応した、2つの適応変調テーブル10が、基地局100のMCS抽出部117と移動局200のMCS選択部217とに共通に設けられる。
【0038】
選択部11は、ストリーム数抽出部116から指定されたストリーム数に対応する適応変調テーブル10を選択する。この選択動作は、移動局200のMCS選択部217のものと同様である。
【0039】
MCS番号抽出部20は、制御情報復号部115で復号された信号から、移動局200から送られたMCS番号を抽出する。MCS決定部12は、選択部11による選択結果の適応変調テーブル10を参照し、MCS番号抽出部20の抽出結果のMCS番号のMCSを選択する。MCS決定部12は、選択したMCSの変調方式の名称と符号化率を当該適応変調テーブル10から読み出す。MCS決定部12は、適応変調テーブル10から読み出した変調方式の名称と符号化率に従って、所定の各部へ、次回のデータ送信用の変調方式と符号化率を指定する。
【0040】
図5、図6は、本実施形態に係る適応変調テーブル10の構成方法を説明するための概念図である。図5はストリーム数が1である適応変調テーブル10の構成方法を説明するための概念図であり、図6はストリーム数が2以上である適応変調テーブル10の構成方法を説明するための概念図である。
【0041】
[ストリーム数が1(SISO伝送)の場合]
ストリーム数が1である場合は、SISO伝送である。本発明者は、OFDM方式の無線通信システムにおいてSISO伝送の場合には、同じ伝搬路状態であるならば、変調多値数が大きくて符号化率が低い方が受信品質は良いことを発見した。つまり、変調多値数が小さい方の変調方式を伝搬路状態の良化に伴い該変調方式と組合せる符号化率を高くしながら使い続けるよりも、変調多値数が大きい方の変調方式を選択可能な伝搬路状態に到達次第(このときの符号化率は変調多値数が小さい方の変調方式の符号化率よりも低くなるが)、変調多値数が大きい方の変調方式に切り替える方が受信品質は良くなる。この知見に基づき、ある伝搬路状態において、選択可能な変調方式の内から変調多値数が最大である変調方式が選択されるように、ストリーム数が1である適応変調テーブル10を構成する。
【0042】
図5の例では、SNRが良くなるにつれて、変調多値数が最小のQPSKから変調多値数が大きい16QAMへと、16QAMを選択可能なSNRに到達次第、16QAMを選択可能としている。そして16QAMからさらに変調多値数が大きい64QAMへと、64QAMを選択可能なSNRに到達次第、64QAMを選択可能としている。同じ変調方式においては、SNRが良くなるにつれて、組合せ可能な符号化率が段階的に高くなる。図5の例では、SNRが良くなるにつれて、QPSKは#0から#3までの4段階で、16QAMは#4から#5までの2段階で、64QAMは#6から#10までの5段階で、それぞれに組合せ可能な符号化率が高くなる。なお、図5中の#0から#10までの各段階に対応するSNR範囲は、一律に同じである。これにより、QPSKの選択可能なSNR範囲は#0から#3までの4段階分に留まっている。16QAMの選択可能なSNR範囲は、16QAMの選択可能なSNRのところから、#4から#5までの2段階分に留まっている。一方、64QAMの選択可能なSNR範囲は、64QAMの選択可能なSNRのところから、#6から#10までの5段階分と非常に大きくなっている。
【0043】
[ストリーム数が2以上(MIMO伝送)の場合]
ストリーム数が2以上である場合は、MIMO伝送である。本発明者は、OFDM方式の無線通信システムにおいてMIMO伝送の場合には、同じ伝搬路状態であるならば、変調多値数が小さくて符号化率が高い方が受信品質は良いことを発見した。つまり、変調多値数が大きい方の変調方式を選択可能な伝搬路状態に到達次第、符号化率を変調多値数が小さい方の変調方式の符号化率よりも低くして変調多値数が大きい方の変調方式に切り替えるよりも、変調多値数が小さい方の変調方式を伝搬路状態の良化に伴い該変調方式と組合せる符号化率を高くしながら使い続ける方が受信品質は良くなる。この知見に基づき、ある伝搬路状態において、選択可能な変調方式の内から変調多値数が最小である変調方式が選択されるように、ストリーム数が2以上である適応変調テーブル10を構成する。
【0044】
図6の例では、16QAMを選択可能なSNR(#4の段階)に到達しても尚、16QAMを選択可能とせず、変調多値数が最小のQPSKを選択するようにしている。そして、QPSKの符号化率をこれ以上に高くすることができない段階(#6)になってからようやく、16QAMを選択可能としている。同様に、64QAMを選択可能なSNR(#6の段階)に到達しても尚、64QAMを選択可能とせず、変調多値数が小さい方の16QAMを選択するようにしている。そして、16QAMの符号化率をこれ以上に高くすることができない段階(#8)になってからようやく、64QAMを選択可能としている。これにより、QPSKの選択可能なSNR範囲は#0から#5までの6段階分と非常に大きくなっている。一方、16QAMの選択可能なSNR範囲は、#6から#7までの2段階分に留まっている。64QAMの選択可能なSNR範囲は、#8から#10までの3段階分に留まっている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、複数の適応変調テーブルを一つにまとめるようにしてもよい。図7は、2つの適応変調テーブルを一つにまとめた構成例である。図7の例では、MCS番号は一桁目にストリーム数を有する。これにより、MCS番号の一桁目によって、どのストリーム数に対応するMCSであるのかを識別することができる。
【0046】
また、上述の実施形態では、移動局200(受信側)でストリーム数とMCSを選択するようにしたが、移動局200(受信側)が伝搬路情報を基地局100(送信側)に送り、基地局100(送信側)でストリーム数とMCSを選択するようにしてもよい。この場合、基地局100(送信側)はストリーム数とMCS番号を制御情報に含めてデータと同時に送信し、移動局200(受信側)は制御情報に含まれるストリーム数とMCS番号を抽出し、該ストリーム数とMCS番号を使って適応変調テーブル及びMCSの選択を行い、データの復調、復号を行う。
【0047】
また、上述の実施形態では、基地局100及び移動局200が備えるアンテナの本数を2としてストリーム数の候補を「1」と「2」の2つとしたが、アンテナの本数を3以上としてストリーム数の候補を「1」と「2」に加えてアンテナ数に応じた「3」以上の整数を追加するようにしてもよい。例えば、アンテナ数が4である場合、ストリーム数の候補は「1」、「2」、「3」及び「4」の4つとなり、SISO伝送のストリーム数は1であるが、MIMO伝送のストリーム数は2から4までのいずれかとなる。
【0048】
上述の実施形態によれば、OFDM方式の無線通信システムにおいてSISO伝送とMIMO伝送を切り替える場合に、適応変調において複数のMCS選択方針を切り替えて使用することができるという効果が得られる。これにより、同じ伝搬路状態であってもSISO伝送に適したMCSとMIMO伝送に適したMCSは異なるが、SISO伝送とMIMO伝送のそれぞれに適したMCSを用いることが可能となる。この結果、OFDM方式の無線通信システムにおいて格段の性能向上が期待できる。
【0049】
また、上述の実施形態によれば、適応変調テーブル10、選択部11及びMCS決定部12を基地局100と移動局200の両方にそれぞれ設けたことにより、移動局200から基地局100へ送信する情報量を削減することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…適応変調テーブル、11…選択部、12…MCS決定部、13…SNR算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおいて、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更する適応変調システムであり、
伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、
前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択する選択部と、
前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部と、
を備えたことを特徴とする適応変調システム。
【請求項2】
前記適応変調テーブルは、伝搬路状態が良くなるほどに、変調多値数の大きい方の変調方式が選択可能となると共に、同じ変調方式と組合せ可能な符号化率が高くなるものであって、
ストリーム数が1である前記適応変調テーブルは、ある伝搬路状態において、選択可能な変調方式の内から変調多値数が最大である変調方式が選択されるように構成されて成り、
一方、ストリーム数が2以上である前記適応変調テーブルは、ある伝搬路状態において、選択可能な変調方式の内から変調多値数が最小である変調方式が選択されるように構成されて成る、
ことを特徴とする請求項1に記載の適応変調システム。
【請求項3】
前記適応変調テーブル、前記選択部及び前記決定部を変調側と復調側の両方にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の適応変調システム。
【請求項4】
移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替えることと、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更することとを行う、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおいて、
請求項1から3のいずれか1項に記載の適応変調システムを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替えることと、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更することとを行う、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおける、前記移動局において、
伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、
前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択する選択部と、
前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部と、
を備えたことを特徴とする移動局。
【請求項6】
移動局と基地局の間でSISO伝送とMIMO伝送を切り替えることと、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更することとを行う、直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおける、前記基地局において、
伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、
前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択する選択部と、
前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定する決定部と、
を備えたことを特徴とする基地局。
【請求項7】
直交周波数分割多重方式の無線通信システムにおいて、SISO伝送又はMIMO伝送で送信されるデータストリームの変調方式及び符号化率を伝搬路状態に応じて適応的に変更する適応変調システムにおける、適応変調制御方法であって、
伝搬路状態に対応した変調方式と符号化率の組合せの候補を格納する適応変調テーブルを、SISO伝送又はMIMO伝送で同時に送信されるデータストリームの数(ストリーム数)の候補の各各に対応して設け、
適応変調テーブルを選択する手段が、前記適応変調テーブルの内から前記ストリーム数に応じた適応変調テーブルを選択するステップと、
変調方式と符号化率の組合せを決定する手段が、前記選択された適応変調テーブルを用いて、伝搬路状態に応じた変調方式と符号化率の組合せを決定するステップと、
を含むことを特徴とする適応変調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−219949(P2010−219949A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65102(P2009−65102)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】