適正な溶解シーケンスを確保するための針取付要素
本願では、本体と、本体に対して移動可能な針取付面を有する医療用注入装置が提供され、針取付面は針を取り付けるための要素を有する。初期状態では、針取付面は本体の中に配置され、そこに針は取り付けられない。本体と針取付面の間の相対的移動により、針取付面が本体から押し出される。有利な面として、装置の準備、特に投与する薬剤の調合の後に装置に医療用針を取り付けることができるようにするステップに関して、適正なシーケンスが確保される医療用注入装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解のための装置、より詳しくは、適正な溶解シーケンスを確保する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある薬剤や医薬(これらの用語は、本明細書においては互換的に使用される)は、好ましくは、粉末または乾燥形態(凍結乾燥形態)で提供され、投与の前に溶解させる必要がある。たとえば、凍結乾燥薬剤は一般にフリーズドライ形態で供給され、希釈材と混合して溶解させ、その薬物を注入に適した形態にする必要がある。医薬はまた、それ以外の、溶解が必要な乾燥または粉末形態で提供されてもよい。
【0003】
上記に加え、薬剤は、投与の前に混合する必要のある多成分系(multi-part)として提供されてもよい。たとえば、投与前に混合が必要な1つまたは複数の液体(流動性(スラリまたは液体等))成分および/または乾性(粉末または粒状等)成分を薬剤容器または送達装置に入れて提供してもよい。これらの成分は、各種の投与可能な薬剤、たとえばインシュリンを生成するために混合し、使用することができる。
【0004】
湿性成分(液体等)と乾性成分(粉末等)が共通の容器の別のチャンバの中に入れて提供される先行技術の装置が開発されており、この容器は、湿性成分が乾性成分へと流れ、それらが混合されて、注入用の投与可能な溶液が調合されるように構成されている。フェッタ(Vetter)の「特許文献1」は混合用として構成されたバレルを有する注入装置に関し、アルストランド(Ahlstrand)らの「特許文献2」は混合用として構成されたバレルを有する薬剤カートリッジに関する。フェッタとアルストランドらのどちらの特許も、装置のバレルの中にバイパスチャネルが形成されている、一般的な混合用構成を開示している。このように、装置は特に混合のために構成されなければならない。
【0005】
複数の成分の混合を起こすには、溶解装置に手で力を加えてもよい。これに加えて、先行技術では、トリガ作動式自動溶解を提供する自動溶解装置が開発された。ジャンバティスタ(Giambattista)らの「特許文献3」は、自動溶解装置の一例である。
【0006】
一般的な溶解のための構成では、針を貯蔵部と連通させる前に、成分を混合することが好ましい。したがって、針が装置に取り付けられていない状態では、混合が行われている間、貯蔵部には排出口がない。これまでにわかっている点として、中にはうっかりと溶解の前の装置に針を取り付けてしまう人がいる。すると、混合が適正に行われず、および/または予期せず針から無駄な排出が生じることがある。
【0007】
先行技術では、溶解を起こさせてもよい自動注入装置が知られている。しかしながら、自動注入装置はトリガ作動式装置であり、溶解を起こさせるだけでなく、針が患者の皮膚を穿刺し、その後、自動プランジャの駆動によって流体が投与される。自動注入装置は一般に、投与量設定機能を持たない。これに加えて、針は装置に予め取り付けられている。このタイプの装置の例は、シフマン(Schiffmann)の「特許文献4」およびグリフィス(Griffiths)らの「特許文献5」に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,874,381号明細書
【特許文献2】米国特許第4,968,299号明細書
【特許文献3】米国特許第6,793,646号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0133163号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0142769号明細書
【発明の概要】
【0009】
本体と、本体に対して移動可能な針取付面を有し、針取付面は針を取り付けるための要素を有する医療用注入装置が提供される。初期状態では、針取付面は本体の中に配置され、そこに針は取り付けられていない。本体と針取付面との間の相対的移動により、針取付面は本体から押し出される。有利な面として、装置の準備において、特に投与される薬剤が調合された後に装置に医療用針を取り付けることができるようにするステップに関して、適正なシーケンスが確保される医療用注入装置が提供される。
【0010】
本発明の上記およびその他の特徴は、以下の詳細な説明と添付の図面をよく読み、参照することによってさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】針取付面の状態が変化している、溶解の前と後の医療用注入装置を示す図である。
【図2】針取付面の状態が変化している、溶解の前と後の医療用注入装置を示す図である。
【図3】針取付面の変化した状態を示す図である。
【図4】針取付面の変化した状態を示す図である。
【図5】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための構造を示す図である。
【図6】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための構造を示す図である。
【図7】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図8】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図9】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図10】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図11】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図12】針取付面の解放可能な保持およびロッキング構造を示す図である。
【図13】針取付面の解放可能な保持およびロッキング構造を示す図である。
【図14】針取付面の解放可能な保持およびロッキング構造を示す図である。
【図15】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図16】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図17】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図18】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図19】解放可能に取り付けられたオーバーキャップを利用する、本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図20】解放可能に取り付けられたオーバーキャップを利用する、本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図21】解放可能に取り付けられたオーバーキャップを利用する、本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図22】スライド可能のコレットおよび外側に偏向された弾性部材を利用する、本発明の第三の実施形態を示す図である。
【図23】スライド可能のコレットおよび外側に偏向された弾性部材を利用する、本発明の第三の実施形態を示す図である。
【図24】スライド可能のコレットおよび外側に偏向された弾性部材を利用する、本発明の第三の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照すると、本発明が提供する医療用注入装置10では、注入を行うための医療用注入装置10の適正な準備シーケンスが確保される。詳しくは、医療用注入装置10は、医療用注入装置10の中に収容された混合可能な成分を溶解させた後という適正なシーケンスにおいてのみ針12を取り付けることができるように構成されている。医療用注入装置10は、その中に収容される混合可能な成分を溶解させて投与可能な液体にすることができる、シリンジまたはペン型注入装置等、どのような医療用注入装置の形態であってもよい。医療用注入装置10はまた、投与量固定式または投与量可変式(投与量設定機構を有するもの等)のいずれの注入装置であってもよい。さらに、医療用注入装置10は、単回投与または複数回投与用装置のいずれであってもよい。
【0013】
針12は、どのような形態であってもよい。好ましくは、針12はハブ14を含み、ここに針カニューレ16が固定される。針カニューレ16の遠位端18は、患者に挿入するように形成され、近位端20は、最適な形として、尖らせてあってもよい。ハブ14には、医療用注入装置10に取り付けるためのねじ山等の取付用要素22が形成されていてもよく、これについては後述する。
【0014】
本明細書において、「遠位」という用語とその派生語は、使用中に患者側にあたる方向を意味するものとし、「近位」という用語とその派生語は、使用中に患者と反対側にあたる方向を意味するものとする。
【0015】
医療用注入装置10は本体24を含み、これは1つまたは複数の構成要素から形成されていてもよい。医療用注入装置10はまた、そこに針12を取り付けるための要素28を有する針取付部または取付面26を含む。要素28は、針12を取り付けるための周知のどのようなタイプであってもよく、これには、針12と協働的な機械的ロック状態を発生させるため、特に取付用要素22と協働するための、たとえばねじ山、バヨネットロック部材、戻り止め、溝その他の要素および/または、たとえばテーパ付ルア構成によるもの等のハブ14との摩擦係合が含まれる。
【0016】
医療用注入装置10は溶解用装置であり、図1に示されるように、初期状態において、少なくとも第一と第二の混合可能な成分30,32を含んでいる。貯蔵部34が、第一と第二の混合可能な成分30,32を収容するために本体24の中に配置される。少なくとも1つのストッパ36が貯蔵部34に関連付けられ、ストッパ36が所定の距離だけ遠位方向に進められると、第一と第二の混合可能な成分30,32の混合が起こるように構成されている。このような混合を起こさせるものであれば、どのような周知の構造を利用してもよい。非限定的な例として、第一と第二の混合可能な成分30,32は、第二のストッパ38で分離されていてもよい。第二のストッパ38は、貯蔵部34を第一と第二のチャンバ40,42に分割し、それぞれ、第一と第二の混合可能な成分30,32を収容する。隔壁44は第一のチャンバ40の遠位端を密閉し、ストッパ36は第二のチャンバ42の近位端を密閉するように位置付けられる。好ましくは、混合可能な成分の1つとして乾性成分が使用される場合、乾性の混合可能な成分は第一のチャンバ40の中に位置付けられる。
【0017】
貯蔵部34の壁には、1つまたは複数のバイパスチャンネル46が形成される。初期状態においては、図1に示されるように、第二のストッパ38は少なくとも部分的に、バイパスチャネル46の付近に位置付けられて、第一と第二のチャンバ40,42の間の密封部を画定し、第二のチャンバ42とバイパスチャネル46の間の密封部を画定する。ストッパ36が遠位方向に進み、第二の混合可能な成分32が湿性で一般に圧縮可能であると、ストッパ36の移動の力が第二の混合可能な成分32を通じて第二のストッパ38に伝えられる。第二のストッパ38が十分に遠位側に移動すると、第二のチャンバ42はバイパスチャネル46と連通するようになり、したがって、ストッパ36がさらに遠位側に移動すると、第二の混合可能な成分30は第一のチャンバ40の中に押し込まれる。図2を参照すると、ストッパ36が十分に遠位側に進んだところで、第二のチャンバ42はつぶれ、その中には第二の成分32がまったく、または略まったく残っていない。これに加え、第二のストッパ38は第一のチャンバ40とバイパスチャネル46の間の密封部を画定するように位置付けられる。第一と第二の混合可能な成分30,32は、たとえば医療用注入装置10の動揺等によって第一のチャンバ40の中で混合され、注入可能な状態の注入可能溶液48が生成される。
【0018】
当業者であればわかるように、溶解が可能なその他の構造を利用してもよい。これに加え、2つより多い成分系、たとえば3成分系等を使用してもよい。活性医薬成分を第一と第二の混合可能な成分30,32の一方または両方に含めてもよい。第一の混合可能な成分30は、乾性(粉末または粒状薬物等)および/または液体(流動物(スラリまたは液体)等)であってもよい。前述のように、第二の混合可能な成分32は、好ましくは湿性の流動性成分、たとえば液体またはスラリだけである。
【0019】
第一の実施形態において、針取付面16は、貯蔵部34を格納する薬剤カートリッジ52に取り付けられたアダプタ50に画成されてもよい。薬剤カートリッジ52は、本体24の中に、それに対して移動可能に配置される。初期状態において、図1と図3に示されるように、薬剤カートリッジ52は、針取付面26が本体24の中に配置されるように位置付けられる。初期状態において、針12は針取付面26に取り付けられていない。それに加えて、本体24の中に針取付面26を位置付けることによって、針12を取り付けることができなくなる。針取付面26と本体24の周辺部の間の半径方向の間隔を十分に縮小して、針12を針取付面26に取り付けることができないようにすることが好ましい。そのために、少なくとも部分的に針取付面26の円周付近において本体24から半径方向に内側に延びる肩状部54を設けてもよい。
【0020】
図2と図4を参照すると、医療用注入装置10が使用可能な状態となったところで、本体24と薬剤カートリッジ52の間の相対的移動、すなわち本体24と針取付面26の間の相対的移動によって、針取付面26が本体24から突出し、そこに針12を取り付けることができる状態となる。本体24と薬剤カートリッジ52の間の相対的移動は、貯蔵部34に収容された第一と第二の混合可能な成分30,32の溶解中および/または溶解後に行われることが好ましい。このように、針取付面26には、溶解が始まってからのみ、アクセス可能となる。
【0021】
本体24と薬剤カートリッジ52との間の相対的移動は自動化されていることが好ましく、溶解中に起こることがより好ましい。トリガ作動式自動溶解の各種の構成が先行技術において知られており、たとえばジャンバチスタらの「特許文献3」に開示されたものがあり、同特許の全体を引用によって本願に援用する。「特許文献3」に示されているように、また図1、図2を参照すると、ばね56を設けて、プランジ58を前方に駆動してもよい。プランジャ58は、前述のように、第一と第二の混合可能な成分30,32の自動溶解を実現する中で、ストッパ36へと作用する。ばね56は、プランジャ58またはその他の中間要素を介して、図1に示される初期位置から図2に示される第二の位置へと薬剤カートリッジ52を遠位方向に駆動するように作用してもよい。プランジャ58にはカラー60を設置してもよく、カラー60は、ばね56の力を受けて遠位方向に所定程度移動した薬剤カートリッジ52と係合し、さらに遠位方向に進むと、薬剤カートリッジ52は図2に示される状態へと変位する。本体24は、たとえば、肩状部54と薬剤カートリッジ52の間の相互係合等によって、薬剤カートリッジ52の遠位方向への前進を限定するストッパとして機能してもよい。
【0022】
ばね56は、図1の第一の位置に、周知のいずれかの方法による保持機構で保持される。保持機構を解放して、自動溶解と薬剤カートリッジ52の前進を起こすためのトリガを設けてもよい。
【0023】
第一と第二の混合可能な成分30,32の溶解は、針12が医療用注入装置10に取り付けられていない状態で行われる。したがって、混合が行われている間、貯蔵部34には排出口がない。混合後に針12が医療用注入装置10に取り付けられると、貯蔵部34の中に捕捉されていた残留気体が針12から排出される。溶解中のプランジャ58の遠位方向への前進に対して物理的なストッパを提供しないことが好ましいかもしれない。このようにすると、混合された成分は、ばね56の力を受けて最大限に圧縮されるかもしれない。針12が医療用注入装置10に取り付けられると、貯蔵部34には排出口ができ、したがって、プランジャ58はさらに遠位方向に前進することができる。この二次的な遠位方向の前進は、針を使用可能な状態に準備する上で一助となるかもしれない。物理的ストッパ(肩状部54等)を、二次的な遠位方向への前進が行われた後に薬剤カートリッジ52と係合するように位置付けてもよい。
【0024】
当業者であればわかるように、本体24と薬剤カートリッジ52の間の相対的移動は、成分の一方または両方の移動によって起こされてもよい。図1と図2を参照すると、薬剤カートリッジ52は本体24に対して変位される。本発明では他の構造も利用可能である。たとえば、図5と図6を参照すると、本体24が薬剤カートリッジ52に対して変位される構成が示されている。図のように、薬剤カートリッジ52と本体24の間に、ねじ山付の中間カラー62が位置付けられている。これに加えて、プランジャ58には、ねじ山付カラー62の内側に位置付けられた協働ねじ山66と係合するように形成された大きなねじ山64が位置づけられている。本体のねじ山68は、ねじ山付カラー62の外側部分に形成された外側ねじ山70と係合するように位置付けられている。協働ねじ山66のピッチは比較的急勾配であるのに対して、外側ねじ山70のピッチは比較的浅く、すなわち急勾配でない(協働ねじ山66のピッチは外側ねじ山70のピッチより急勾配である)。プランジャ58はまた、医療用注入装置10に回転不能に配置される。この構造では、大きなねじ山64が遠位方向に前進することによって、ねじ山付カラー62がプランジャ58の周囲で回転し、その結果、本体24は薬剤カートリッジ52に対して後退する。図5と図6に示されるように、その結果、本体24から針取付面26が突出し、使用可能な状態となる。プランジャ58は、ばね56によって駆動されてもよい。
【0025】
図7から図11を参照すると、薬剤カートリッジ52は、医療用注入装置10に加えられる機械的な力を受けて移動させられてもよい。非限定的例として、図7から図11を参照すると、本体24は、2つの構成要素24a,24bとして提供されてもよく、これらはヒンジ連結部72を通じて枢動的に連結される。構成要素24a,24bは、図7から図9に示されるように、ヒンジ連結部72を中心に回転して、スナップ式に係合して1つとなり、本体24を形成する。構成要素24aは、薬剤カートリッジ52を格納してもよい。構成要素24a,24bは、構成要素24a,24bを組み立てることで、薬剤カートリッジ52の内容物の溶解をトリガするように構成されていてもよい。このようなスナップ式の溶解のための構造は、本願と同時係属中の出願第 号(代理人整理番号第P−8591.70(102−741PCT))に開示されており、同出願を引用によって本願に援用する。
【0026】
当業者であればわかるように、針取付面26を移動させるための力を供給する各種の態様が提供されてもよい。自動溶解の構成からの力を利用することが好ましく、たとえば、駆動ばねからの力および/または医療用注入装置にかけられる力を利用する。これに加え、プランジャ58に直接手で力をかけて、手で溶解を起こさせてもよく、これは針取付面26を変位させるためにも利用される。
【0027】
上記に加え、図10から図11に示されるように、複数の歯76を有するラック74を薬剤カートリッジ52に形成してもよい。ヒンジ連結部72は、歯76と噛み合い、係合するように形成された複数のピニオン歯80を有するピニオン78を含んでいてもよい。したがって、構成要素24a,24bがヒンジ連結部72を中心として回転すると、ピニオン78はラック74と係合し、歯76はピニオン歯80と噛み合い係合する。ピニオン78の回転によってラック74が直線移動して、その結果、薬剤カートリッジ52は本体24に対して遠位方向に前進する。したがって、図9に示されるように、針取付面26が本体24から突出する。
【0028】
薬剤カートリッジ52が変位する前に、針取付面26を解放可能に保持して、不測の変位を最小限にするために、解放可能な保持構造を設けることがさらに好ましい。図3と図4を参照すると、解放可能な保持構造は、協働リブ82と溝84の構造を含んでいてもよく、この場合、リブ82が溝84の中に入り込み、保持する。同じく図面に示されるように、リブ82はアダプタ50に形成され、溝84は本体24に形成されることが好ましいが、逆の関係も利用可能である。したがって、薬剤カートリッジ52に最初に動力を加える際、薬剤カートリッジ52を解放可能な保持構造から外して、遠位方向に前進できるようにするには、抵抗量の閾値を超えなければならない。
【0029】
針取付面26を突出状態にロックするために、ロッキング構造を設けることがさらに好ましい。図4を参照すると、いったん突出した針取付面26の近位方向への移動に対抗するように構成された第二のストッパ86が本体24に形成されてもよい。さらに、肩状部54は、遠位方向への運動に対抗するように形成されてもよい。肩状態部54と第二のストッパ86の組み合わせで、針取付面26を突出状態にロックする効果を提供してもよい。
【0030】
当業者であればわかるように、本発明では上記以外の保持およびロッキング構造も利用できる。図12から図14を参照すると、アダプタ50が設けられていてもよく、その1つまたは複数の屈折可能なアーム88が本体24に形成された留め具90によって解放可能に保持される。プランジャ58は、溶解中にプランジャ58とともに遠位方向に前進する外側解放部材92を有するように形成されてもよい。図13に示されるように、十分に遠位方向に移動すると、解放部材92はアーム88と係合し、それによって、アーム88は内側に屈折して留め具90から外れ、その結果、針取付面26は遠位方向に前進して、本体24から外に突出した状態となる。アーム88、解放部材92および本体24は、溶解後の状態において、解放部材92がアーム88と本体24の間にしっかりと挟み込まれて、針取付面26を突出状態にロックする効果を発生させてもよいように構成される。
【0031】
図1から図4に示されるように、医療用注入装置10の遠位端は部分的に開放していてもよい。図15から図18を参照すると、遠位端は複数の拡張可能な薄板94によって画成されていてもよい。薄板94は弾性を有し、図15と図16に示されるように、本来的に閉じた状態に偏向されている。薬剤カートリッジ52と本体24との間の相対的移動により、薄板94は広がって開いてもよく(図17)、そこから針取付面26が突出して、そこに針12を取り付けることができる。
【0032】
上記に加え、本体24と薬剤カートリッジ52との逆の相対的移動が実現可能であれば(針取付面26を突出状態にロックするためのロッキング構成が設けられていない等)、使用後に針取付面26が本体24の内部に収納されるようにすることができる。図18に示されるように、針12が医療用注入装置10に取り付けられた状態で、薄板94は再び閉じてもよく、したがって、使用済みの状態の針12が遮蔽される。
【0033】
本発明の第二の実施形態において、第二の要素を使って針取付面26を被覆し、溶解前には針をそこに取り付けることができないようにしてもよい。溶解が行われて、第二の要素が解放されると、針を針取付面26に取り付けてもよい。図19から図21を参照すると、オーバーキャップ(覆いキャップ;overcap)96が、解放可能に本体24に取り付けられ、溶解前に針取付面26を被覆して、針をそこに取り付けることができないように構成されてもよい。特に、オーバーキャップ96はカップ形で、針取付面26を包囲し、1つまたは複数の突起98が突出する壁100に形成されている。側壁100は、本体24の肩状部54に形成された1つまたは複数の穴102の中に延びる。突起98は、本体24の内部の、穴102の付近に位置付けられる。突起は、オーバーキャップ96が本体24から外れないようにするための抵抗を与えるような大きさである。図21に示されるように、プランジャ58が解放部材92を有している場合、プランジャ58が十分に遠位方向に前進すると、オーバーキャップ96は遠位方向に押され、突起98が穴102から出て、オーバーキャップ96が解放される。このようにして、オーバーキャップ96は、溶解が行われたところで解放されてもよい。オーバーキャップ96が本体24から解放されると、針取付面26には自由に針を取り付けることができる。
【0034】
本発明の第三の実施形態において、医療用注入装置10は、針取付面26が針をそこに取り付けることができない初期状態で提供されてもよく、その後、状態が変化して、針取付面26に針を取り付けて利用可能となる。図22から図24を参照すると、針取付面26は、複数の弾性部材104によって画成されてもよく、これらは本来的に外側に偏向されている。弾性部材104は、針取付面26が分離されて、針をそこに取り付けて利用することができない状態となるように、十分に外側に偏向されている。弾性部材104は内側に屈折可能で、図24に示されるように、これらが集合して、利用可能な状態の針取付面26を形成する。弾性部材104を内側に屈折させるのは、スライド可能なコレット106によって行ってもよく、コレット106は別の要素であっても、あるいは本体24によって画成されてもよい。図22と図24を参照すると、コレット106が弾性部材104に対して遠位方向に前進することにより、弾性部材104は内側に屈折し、したがって、利用可能な状態の針取付面26を画成する。コレット106の遠位方向への前進は、上述の構成のいずれかを利用して、溶解が行われたところで起こされてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解のための装置、より詳しくは、適正な溶解シーケンスを確保する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある薬剤や医薬(これらの用語は、本明細書においては互換的に使用される)は、好ましくは、粉末または乾燥形態(凍結乾燥形態)で提供され、投与の前に溶解させる必要がある。たとえば、凍結乾燥薬剤は一般にフリーズドライ形態で供給され、希釈材と混合して溶解させ、その薬物を注入に適した形態にする必要がある。医薬はまた、それ以外の、溶解が必要な乾燥または粉末形態で提供されてもよい。
【0003】
上記に加え、薬剤は、投与の前に混合する必要のある多成分系(multi-part)として提供されてもよい。たとえば、投与前に混合が必要な1つまたは複数の液体(流動性(スラリまたは液体等))成分および/または乾性(粉末または粒状等)成分を薬剤容器または送達装置に入れて提供してもよい。これらの成分は、各種の投与可能な薬剤、たとえばインシュリンを生成するために混合し、使用することができる。
【0004】
湿性成分(液体等)と乾性成分(粉末等)が共通の容器の別のチャンバの中に入れて提供される先行技術の装置が開発されており、この容器は、湿性成分が乾性成分へと流れ、それらが混合されて、注入用の投与可能な溶液が調合されるように構成されている。フェッタ(Vetter)の「特許文献1」は混合用として構成されたバレルを有する注入装置に関し、アルストランド(Ahlstrand)らの「特許文献2」は混合用として構成されたバレルを有する薬剤カートリッジに関する。フェッタとアルストランドらのどちらの特許も、装置のバレルの中にバイパスチャネルが形成されている、一般的な混合用構成を開示している。このように、装置は特に混合のために構成されなければならない。
【0005】
複数の成分の混合を起こすには、溶解装置に手で力を加えてもよい。これに加えて、先行技術では、トリガ作動式自動溶解を提供する自動溶解装置が開発された。ジャンバティスタ(Giambattista)らの「特許文献3」は、自動溶解装置の一例である。
【0006】
一般的な溶解のための構成では、針を貯蔵部と連通させる前に、成分を混合することが好ましい。したがって、針が装置に取り付けられていない状態では、混合が行われている間、貯蔵部には排出口がない。これまでにわかっている点として、中にはうっかりと溶解の前の装置に針を取り付けてしまう人がいる。すると、混合が適正に行われず、および/または予期せず針から無駄な排出が生じることがある。
【0007】
先行技術では、溶解を起こさせてもよい自動注入装置が知られている。しかしながら、自動注入装置はトリガ作動式装置であり、溶解を起こさせるだけでなく、針が患者の皮膚を穿刺し、その後、自動プランジャの駆動によって流体が投与される。自動注入装置は一般に、投与量設定機能を持たない。これに加えて、針は装置に予め取り付けられている。このタイプの装置の例は、シフマン(Schiffmann)の「特許文献4」およびグリフィス(Griffiths)らの「特許文献5」に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,874,381号明細書
【特許文献2】米国特許第4,968,299号明細書
【特許文献3】米国特許第6,793,646号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0133163号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0142769号明細書
【発明の概要】
【0009】
本体と、本体に対して移動可能な針取付面を有し、針取付面は針を取り付けるための要素を有する医療用注入装置が提供される。初期状態では、針取付面は本体の中に配置され、そこに針は取り付けられていない。本体と針取付面との間の相対的移動により、針取付面は本体から押し出される。有利な面として、装置の準備において、特に投与される薬剤が調合された後に装置に医療用針を取り付けることができるようにするステップに関して、適正なシーケンスが確保される医療用注入装置が提供される。
【0010】
本発明の上記およびその他の特徴は、以下の詳細な説明と添付の図面をよく読み、参照することによってさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】針取付面の状態が変化している、溶解の前と後の医療用注入装置を示す図である。
【図2】針取付面の状態が変化している、溶解の前と後の医療用注入装置を示す図である。
【図3】針取付面の変化した状態を示す図である。
【図4】針取付面の変化した状態を示す図である。
【図5】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための構造を示す図である。
【図6】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための構造を示す図である。
【図7】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図8】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図9】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図10】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図11】薬剤カートリッジと医療用注入装置の本体との間の相対的移動を発生させるための別の構造を示す図である。
【図12】針取付面の解放可能な保持およびロッキング構造を示す図である。
【図13】針取付面の解放可能な保持およびロッキング構造を示す図である。
【図14】針取付面の解放可能な保持およびロッキング構造を示す図である。
【図15】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図16】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図17】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図18】本発明で使用できる分離可能な薄板の構造を示す図である。
【図19】解放可能に取り付けられたオーバーキャップを利用する、本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図20】解放可能に取り付けられたオーバーキャップを利用する、本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図21】解放可能に取り付けられたオーバーキャップを利用する、本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図22】スライド可能のコレットおよび外側に偏向された弾性部材を利用する、本発明の第三の実施形態を示す図である。
【図23】スライド可能のコレットおよび外側に偏向された弾性部材を利用する、本発明の第三の実施形態を示す図である。
【図24】スライド可能のコレットおよび外側に偏向された弾性部材を利用する、本発明の第三の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照すると、本発明が提供する医療用注入装置10では、注入を行うための医療用注入装置10の適正な準備シーケンスが確保される。詳しくは、医療用注入装置10は、医療用注入装置10の中に収容された混合可能な成分を溶解させた後という適正なシーケンスにおいてのみ針12を取り付けることができるように構成されている。医療用注入装置10は、その中に収容される混合可能な成分を溶解させて投与可能な液体にすることができる、シリンジまたはペン型注入装置等、どのような医療用注入装置の形態であってもよい。医療用注入装置10はまた、投与量固定式または投与量可変式(投与量設定機構を有するもの等)のいずれの注入装置であってもよい。さらに、医療用注入装置10は、単回投与または複数回投与用装置のいずれであってもよい。
【0013】
針12は、どのような形態であってもよい。好ましくは、針12はハブ14を含み、ここに針カニューレ16が固定される。針カニューレ16の遠位端18は、患者に挿入するように形成され、近位端20は、最適な形として、尖らせてあってもよい。ハブ14には、医療用注入装置10に取り付けるためのねじ山等の取付用要素22が形成されていてもよく、これについては後述する。
【0014】
本明細書において、「遠位」という用語とその派生語は、使用中に患者側にあたる方向を意味するものとし、「近位」という用語とその派生語は、使用中に患者と反対側にあたる方向を意味するものとする。
【0015】
医療用注入装置10は本体24を含み、これは1つまたは複数の構成要素から形成されていてもよい。医療用注入装置10はまた、そこに針12を取り付けるための要素28を有する針取付部または取付面26を含む。要素28は、針12を取り付けるための周知のどのようなタイプであってもよく、これには、針12と協働的な機械的ロック状態を発生させるため、特に取付用要素22と協働するための、たとえばねじ山、バヨネットロック部材、戻り止め、溝その他の要素および/または、たとえばテーパ付ルア構成によるもの等のハブ14との摩擦係合が含まれる。
【0016】
医療用注入装置10は溶解用装置であり、図1に示されるように、初期状態において、少なくとも第一と第二の混合可能な成分30,32を含んでいる。貯蔵部34が、第一と第二の混合可能な成分30,32を収容するために本体24の中に配置される。少なくとも1つのストッパ36が貯蔵部34に関連付けられ、ストッパ36が所定の距離だけ遠位方向に進められると、第一と第二の混合可能な成分30,32の混合が起こるように構成されている。このような混合を起こさせるものであれば、どのような周知の構造を利用してもよい。非限定的な例として、第一と第二の混合可能な成分30,32は、第二のストッパ38で分離されていてもよい。第二のストッパ38は、貯蔵部34を第一と第二のチャンバ40,42に分割し、それぞれ、第一と第二の混合可能な成分30,32を収容する。隔壁44は第一のチャンバ40の遠位端を密閉し、ストッパ36は第二のチャンバ42の近位端を密閉するように位置付けられる。好ましくは、混合可能な成分の1つとして乾性成分が使用される場合、乾性の混合可能な成分は第一のチャンバ40の中に位置付けられる。
【0017】
貯蔵部34の壁には、1つまたは複数のバイパスチャンネル46が形成される。初期状態においては、図1に示されるように、第二のストッパ38は少なくとも部分的に、バイパスチャネル46の付近に位置付けられて、第一と第二のチャンバ40,42の間の密封部を画定し、第二のチャンバ42とバイパスチャネル46の間の密封部を画定する。ストッパ36が遠位方向に進み、第二の混合可能な成分32が湿性で一般に圧縮可能であると、ストッパ36の移動の力が第二の混合可能な成分32を通じて第二のストッパ38に伝えられる。第二のストッパ38が十分に遠位側に移動すると、第二のチャンバ42はバイパスチャネル46と連通するようになり、したがって、ストッパ36がさらに遠位側に移動すると、第二の混合可能な成分30は第一のチャンバ40の中に押し込まれる。図2を参照すると、ストッパ36が十分に遠位側に進んだところで、第二のチャンバ42はつぶれ、その中には第二の成分32がまったく、または略まったく残っていない。これに加え、第二のストッパ38は第一のチャンバ40とバイパスチャネル46の間の密封部を画定するように位置付けられる。第一と第二の混合可能な成分30,32は、たとえば医療用注入装置10の動揺等によって第一のチャンバ40の中で混合され、注入可能な状態の注入可能溶液48が生成される。
【0018】
当業者であればわかるように、溶解が可能なその他の構造を利用してもよい。これに加え、2つより多い成分系、たとえば3成分系等を使用してもよい。活性医薬成分を第一と第二の混合可能な成分30,32の一方または両方に含めてもよい。第一の混合可能な成分30は、乾性(粉末または粒状薬物等)および/または液体(流動物(スラリまたは液体)等)であってもよい。前述のように、第二の混合可能な成分32は、好ましくは湿性の流動性成分、たとえば液体またはスラリだけである。
【0019】
第一の実施形態において、針取付面16は、貯蔵部34を格納する薬剤カートリッジ52に取り付けられたアダプタ50に画成されてもよい。薬剤カートリッジ52は、本体24の中に、それに対して移動可能に配置される。初期状態において、図1と図3に示されるように、薬剤カートリッジ52は、針取付面26が本体24の中に配置されるように位置付けられる。初期状態において、針12は針取付面26に取り付けられていない。それに加えて、本体24の中に針取付面26を位置付けることによって、針12を取り付けることができなくなる。針取付面26と本体24の周辺部の間の半径方向の間隔を十分に縮小して、針12を針取付面26に取り付けることができないようにすることが好ましい。そのために、少なくとも部分的に針取付面26の円周付近において本体24から半径方向に内側に延びる肩状部54を設けてもよい。
【0020】
図2と図4を参照すると、医療用注入装置10が使用可能な状態となったところで、本体24と薬剤カートリッジ52の間の相対的移動、すなわち本体24と針取付面26の間の相対的移動によって、針取付面26が本体24から突出し、そこに針12を取り付けることができる状態となる。本体24と薬剤カートリッジ52の間の相対的移動は、貯蔵部34に収容された第一と第二の混合可能な成分30,32の溶解中および/または溶解後に行われることが好ましい。このように、針取付面26には、溶解が始まってからのみ、アクセス可能となる。
【0021】
本体24と薬剤カートリッジ52との間の相対的移動は自動化されていることが好ましく、溶解中に起こることがより好ましい。トリガ作動式自動溶解の各種の構成が先行技術において知られており、たとえばジャンバチスタらの「特許文献3」に開示されたものがあり、同特許の全体を引用によって本願に援用する。「特許文献3」に示されているように、また図1、図2を参照すると、ばね56を設けて、プランジ58を前方に駆動してもよい。プランジャ58は、前述のように、第一と第二の混合可能な成分30,32の自動溶解を実現する中で、ストッパ36へと作用する。ばね56は、プランジャ58またはその他の中間要素を介して、図1に示される初期位置から図2に示される第二の位置へと薬剤カートリッジ52を遠位方向に駆動するように作用してもよい。プランジャ58にはカラー60を設置してもよく、カラー60は、ばね56の力を受けて遠位方向に所定程度移動した薬剤カートリッジ52と係合し、さらに遠位方向に進むと、薬剤カートリッジ52は図2に示される状態へと変位する。本体24は、たとえば、肩状部54と薬剤カートリッジ52の間の相互係合等によって、薬剤カートリッジ52の遠位方向への前進を限定するストッパとして機能してもよい。
【0022】
ばね56は、図1の第一の位置に、周知のいずれかの方法による保持機構で保持される。保持機構を解放して、自動溶解と薬剤カートリッジ52の前進を起こすためのトリガを設けてもよい。
【0023】
第一と第二の混合可能な成分30,32の溶解は、針12が医療用注入装置10に取り付けられていない状態で行われる。したがって、混合が行われている間、貯蔵部34には排出口がない。混合後に針12が医療用注入装置10に取り付けられると、貯蔵部34の中に捕捉されていた残留気体が針12から排出される。溶解中のプランジャ58の遠位方向への前進に対して物理的なストッパを提供しないことが好ましいかもしれない。このようにすると、混合された成分は、ばね56の力を受けて最大限に圧縮されるかもしれない。針12が医療用注入装置10に取り付けられると、貯蔵部34には排出口ができ、したがって、プランジャ58はさらに遠位方向に前進することができる。この二次的な遠位方向の前進は、針を使用可能な状態に準備する上で一助となるかもしれない。物理的ストッパ(肩状部54等)を、二次的な遠位方向への前進が行われた後に薬剤カートリッジ52と係合するように位置付けてもよい。
【0024】
当業者であればわかるように、本体24と薬剤カートリッジ52の間の相対的移動は、成分の一方または両方の移動によって起こされてもよい。図1と図2を参照すると、薬剤カートリッジ52は本体24に対して変位される。本発明では他の構造も利用可能である。たとえば、図5と図6を参照すると、本体24が薬剤カートリッジ52に対して変位される構成が示されている。図のように、薬剤カートリッジ52と本体24の間に、ねじ山付の中間カラー62が位置付けられている。これに加えて、プランジャ58には、ねじ山付カラー62の内側に位置付けられた協働ねじ山66と係合するように形成された大きなねじ山64が位置づけられている。本体のねじ山68は、ねじ山付カラー62の外側部分に形成された外側ねじ山70と係合するように位置付けられている。協働ねじ山66のピッチは比較的急勾配であるのに対して、外側ねじ山70のピッチは比較的浅く、すなわち急勾配でない(協働ねじ山66のピッチは外側ねじ山70のピッチより急勾配である)。プランジャ58はまた、医療用注入装置10に回転不能に配置される。この構造では、大きなねじ山64が遠位方向に前進することによって、ねじ山付カラー62がプランジャ58の周囲で回転し、その結果、本体24は薬剤カートリッジ52に対して後退する。図5と図6に示されるように、その結果、本体24から針取付面26が突出し、使用可能な状態となる。プランジャ58は、ばね56によって駆動されてもよい。
【0025】
図7から図11を参照すると、薬剤カートリッジ52は、医療用注入装置10に加えられる機械的な力を受けて移動させられてもよい。非限定的例として、図7から図11を参照すると、本体24は、2つの構成要素24a,24bとして提供されてもよく、これらはヒンジ連結部72を通じて枢動的に連結される。構成要素24a,24bは、図7から図9に示されるように、ヒンジ連結部72を中心に回転して、スナップ式に係合して1つとなり、本体24を形成する。構成要素24aは、薬剤カートリッジ52を格納してもよい。構成要素24a,24bは、構成要素24a,24bを組み立てることで、薬剤カートリッジ52の内容物の溶解をトリガするように構成されていてもよい。このようなスナップ式の溶解のための構造は、本願と同時係属中の出願第 号(代理人整理番号第P−8591.70(102−741PCT))に開示されており、同出願を引用によって本願に援用する。
【0026】
当業者であればわかるように、針取付面26を移動させるための力を供給する各種の態様が提供されてもよい。自動溶解の構成からの力を利用することが好ましく、たとえば、駆動ばねからの力および/または医療用注入装置にかけられる力を利用する。これに加え、プランジャ58に直接手で力をかけて、手で溶解を起こさせてもよく、これは針取付面26を変位させるためにも利用される。
【0027】
上記に加え、図10から図11に示されるように、複数の歯76を有するラック74を薬剤カートリッジ52に形成してもよい。ヒンジ連結部72は、歯76と噛み合い、係合するように形成された複数のピニオン歯80を有するピニオン78を含んでいてもよい。したがって、構成要素24a,24bがヒンジ連結部72を中心として回転すると、ピニオン78はラック74と係合し、歯76はピニオン歯80と噛み合い係合する。ピニオン78の回転によってラック74が直線移動して、その結果、薬剤カートリッジ52は本体24に対して遠位方向に前進する。したがって、図9に示されるように、針取付面26が本体24から突出する。
【0028】
薬剤カートリッジ52が変位する前に、針取付面26を解放可能に保持して、不測の変位を最小限にするために、解放可能な保持構造を設けることがさらに好ましい。図3と図4を参照すると、解放可能な保持構造は、協働リブ82と溝84の構造を含んでいてもよく、この場合、リブ82が溝84の中に入り込み、保持する。同じく図面に示されるように、リブ82はアダプタ50に形成され、溝84は本体24に形成されることが好ましいが、逆の関係も利用可能である。したがって、薬剤カートリッジ52に最初に動力を加える際、薬剤カートリッジ52を解放可能な保持構造から外して、遠位方向に前進できるようにするには、抵抗量の閾値を超えなければならない。
【0029】
針取付面26を突出状態にロックするために、ロッキング構造を設けることがさらに好ましい。図4を参照すると、いったん突出した針取付面26の近位方向への移動に対抗するように構成された第二のストッパ86が本体24に形成されてもよい。さらに、肩状部54は、遠位方向への運動に対抗するように形成されてもよい。肩状態部54と第二のストッパ86の組み合わせで、針取付面26を突出状態にロックする効果を提供してもよい。
【0030】
当業者であればわかるように、本発明では上記以外の保持およびロッキング構造も利用できる。図12から図14を参照すると、アダプタ50が設けられていてもよく、その1つまたは複数の屈折可能なアーム88が本体24に形成された留め具90によって解放可能に保持される。プランジャ58は、溶解中にプランジャ58とともに遠位方向に前進する外側解放部材92を有するように形成されてもよい。図13に示されるように、十分に遠位方向に移動すると、解放部材92はアーム88と係合し、それによって、アーム88は内側に屈折して留め具90から外れ、その結果、針取付面26は遠位方向に前進して、本体24から外に突出した状態となる。アーム88、解放部材92および本体24は、溶解後の状態において、解放部材92がアーム88と本体24の間にしっかりと挟み込まれて、針取付面26を突出状態にロックする効果を発生させてもよいように構成される。
【0031】
図1から図4に示されるように、医療用注入装置10の遠位端は部分的に開放していてもよい。図15から図18を参照すると、遠位端は複数の拡張可能な薄板94によって画成されていてもよい。薄板94は弾性を有し、図15と図16に示されるように、本来的に閉じた状態に偏向されている。薬剤カートリッジ52と本体24との間の相対的移動により、薄板94は広がって開いてもよく(図17)、そこから針取付面26が突出して、そこに針12を取り付けることができる。
【0032】
上記に加え、本体24と薬剤カートリッジ52との逆の相対的移動が実現可能であれば(針取付面26を突出状態にロックするためのロッキング構成が設けられていない等)、使用後に針取付面26が本体24の内部に収納されるようにすることができる。図18に示されるように、針12が医療用注入装置10に取り付けられた状態で、薄板94は再び閉じてもよく、したがって、使用済みの状態の針12が遮蔽される。
【0033】
本発明の第二の実施形態において、第二の要素を使って針取付面26を被覆し、溶解前には針をそこに取り付けることができないようにしてもよい。溶解が行われて、第二の要素が解放されると、針を針取付面26に取り付けてもよい。図19から図21を参照すると、オーバーキャップ(覆いキャップ;overcap)96が、解放可能に本体24に取り付けられ、溶解前に針取付面26を被覆して、針をそこに取り付けることができないように構成されてもよい。特に、オーバーキャップ96はカップ形で、針取付面26を包囲し、1つまたは複数の突起98が突出する壁100に形成されている。側壁100は、本体24の肩状部54に形成された1つまたは複数の穴102の中に延びる。突起98は、本体24の内部の、穴102の付近に位置付けられる。突起は、オーバーキャップ96が本体24から外れないようにするための抵抗を与えるような大きさである。図21に示されるように、プランジャ58が解放部材92を有している場合、プランジャ58が十分に遠位方向に前進すると、オーバーキャップ96は遠位方向に押され、突起98が穴102から出て、オーバーキャップ96が解放される。このようにして、オーバーキャップ96は、溶解が行われたところで解放されてもよい。オーバーキャップ96が本体24から解放されると、針取付面26には自由に針を取り付けることができる。
【0034】
本発明の第三の実施形態において、医療用注入装置10は、針取付面26が針をそこに取り付けることができない初期状態で提供されてもよく、その後、状態が変化して、針取付面26に針を取り付けて利用可能となる。図22から図24を参照すると、針取付面26は、複数の弾性部材104によって画成されてもよく、これらは本来的に外側に偏向されている。弾性部材104は、針取付面26が分離されて、針をそこに取り付けて利用することができない状態となるように、十分に外側に偏向されている。弾性部材104は内側に屈折可能で、図24に示されるように、これらが集合して、利用可能な状態の針取付面26を形成する。弾性部材104を内側に屈折させるのは、スライド可能なコレット106によって行ってもよく、コレット106は別の要素であっても、あるいは本体24によって画成されてもよい。図22と図24を参照すると、コレット106が弾性部材104に対して遠位方向に前進することにより、弾性部材104は内側に屈折し、したがって、利用可能な状態の針取付面26を画成する。コレット106の遠位方向への前進は、上述の構成のいずれかを利用して、溶解が行われたところで起こされてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に対して移動可能であり、針を取り付けるための要素を有する針取付部と、
を備える医療用注入装置であって、
初期状態において、前記針取付部は前記本体の中に配置され、針はそこに取り付けられず、
前記本体と前記針取付部との間の相対的移動によって、前記針取付部は、前記本体から押し出され、前記本体から延出して突出状態となることを特徴とする医療用注入装置。
【請求項2】
前記本体の中に配置された薬剤カートリッジをさらに備え、前記針取付部は前記薬剤カートリッジに画成され、前記薬剤カートリッジは前記本体に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の医療用注入装置。
【請求項3】
前記針取付部を前記本体の中に保持するための解放可能な保持手段をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の医療用注入装置。
【請求項4】
前記薬剤カートリッジは少なくとも2つの混合可能な成分を収容し、前記初期状態において、前記混合可能な成分は分離されており、前記本体と前記針取付部との間の前相対的移動は、前記混合可能な成分が混合されると実現されることを特徴とする、請求項2に記載の医療用注入装置。
【請求項5】
前記針取付部を前記突出状態にロックするためのロッキング手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の医療用注入装置。
【請求項6】
複数の拡張可能な薄板をさらに備え、前記薄板は本来的に閉じた状態に偏向されており、前記本体と前記針取付部との間の前記相対的移動によって、前記針取付部は前記薄板を通過して、前記突出状態になることを特徴とする、請求項1に記載の医療用注入装置。
【請求項7】
本体と、
針を取り付けるための要素を有する針取付部と、
前記本体の中に配置され、少なくとも第一と第二の混合可能な成分を収容する薬剤貯蔵部と、
前記本体に解放可能に取り付けられ、前記本体に取り付けられている時には前記針取付部を被覆して、針を前記針取付部に取り付けることができないようにするように構成されているオーバーキャップと、
を備える医療用注入装置であって、
前記オーバーキャップは、前記混合可能な成分が混合されると解放され、前記オーバーキャップの前記解放によって、針を前記針取付部に取り付けることができることを特徴とする、医療用注入装置。
【請求項8】
本体と、
前記本体の中に配置され、少なくとも第一と第二の混合可能な成分を収容する薬剤貯蔵部と、
第一と第二の状態の間で屈折可能な複数の弾性部材であって、前記第一の状態では、前記部材が集合して、針を取り付けられるように構成された針取付部を画成し、前記第二の状態では、前記部材が前記第一の状態から半径方向に外側に配置され、前記針取付部が十分に分離されて、前記針を前記針取付部に取り付けることができないような弾性部材と、
前記部材を前記第二の状態から前記第一の状態にするように構成されたスライド可能なコレットと、
を備える医療用注入装置であって、
初期状態において、前記弾性部材は前記第二の状態にあり、
前記混合可能な成分が混合されると、前記コレットが前記部材を前記第一の状態にすることを特徴とする医療用注入装置。
【請求項1】
本体と、
前記本体に対して移動可能であり、針を取り付けるための要素を有する針取付部と、
を備える医療用注入装置であって、
初期状態において、前記針取付部は前記本体の中に配置され、針はそこに取り付けられず、
前記本体と前記針取付部との間の相対的移動によって、前記針取付部は、前記本体から押し出され、前記本体から延出して突出状態となることを特徴とする医療用注入装置。
【請求項2】
前記本体の中に配置された薬剤カートリッジをさらに備え、前記針取付部は前記薬剤カートリッジに画成され、前記薬剤カートリッジは前記本体に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の医療用注入装置。
【請求項3】
前記針取付部を前記本体の中に保持するための解放可能な保持手段をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の医療用注入装置。
【請求項4】
前記薬剤カートリッジは少なくとも2つの混合可能な成分を収容し、前記初期状態において、前記混合可能な成分は分離されており、前記本体と前記針取付部との間の前相対的移動は、前記混合可能な成分が混合されると実現されることを特徴とする、請求項2に記載の医療用注入装置。
【請求項5】
前記針取付部を前記突出状態にロックするためのロッキング手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の医療用注入装置。
【請求項6】
複数の拡張可能な薄板をさらに備え、前記薄板は本来的に閉じた状態に偏向されており、前記本体と前記針取付部との間の前記相対的移動によって、前記針取付部は前記薄板を通過して、前記突出状態になることを特徴とする、請求項1に記載の医療用注入装置。
【請求項7】
本体と、
針を取り付けるための要素を有する針取付部と、
前記本体の中に配置され、少なくとも第一と第二の混合可能な成分を収容する薬剤貯蔵部と、
前記本体に解放可能に取り付けられ、前記本体に取り付けられている時には前記針取付部を被覆して、針を前記針取付部に取り付けることができないようにするように構成されているオーバーキャップと、
を備える医療用注入装置であって、
前記オーバーキャップは、前記混合可能な成分が混合されると解放され、前記オーバーキャップの前記解放によって、針を前記針取付部に取り付けることができることを特徴とする、医療用注入装置。
【請求項8】
本体と、
前記本体の中に配置され、少なくとも第一と第二の混合可能な成分を収容する薬剤貯蔵部と、
第一と第二の状態の間で屈折可能な複数の弾性部材であって、前記第一の状態では、前記部材が集合して、針を取り付けられるように構成された針取付部を画成し、前記第二の状態では、前記部材が前記第一の状態から半径方向に外側に配置され、前記針取付部が十分に分離されて、前記針を前記針取付部に取り付けることができないような弾性部材と、
前記部材を前記第二の状態から前記第一の状態にするように構成されたスライド可能なコレットと、
を備える医療用注入装置であって、
初期状態において、前記弾性部材は前記第二の状態にあり、
前記混合可能な成分が混合されると、前記コレットが前記部材を前記第一の状態にすることを特徴とする医療用注入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−502764(P2012−502764A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527997(P2011−527997)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/057483
【国際公開番号】WO2010/033806
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/057483
【国際公開番号】WO2010/033806
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】
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