説明

遮断桿折損判定支援システム、遮断桿折損判定装置及び遮断桿折損判定支援方法

【課題】踏切遮断機の遮断桿の折損判定を、簡易な構成で実現すること。
【解決手段】遮断桿折損判定支援システム1は、(A)列車10に搭載される撮影装置30と、(B)踏切遮断機20に設けられた発信器40と、(C)撮影装置30による撮像画像に基づく遮断桿の折損判定を行う判定装置50とを備えて構成される。撮影装置30は、列車10が踏切遮断機20の近傍を通過する際にこの踏切遮断機20を撮影し、撮影データとして蓄積記憶する。そして、一日の営業運転の終了後、撮影装置30に蓄積記憶された撮影データが判定装置50に入力され、判定装置50では、撮影装置30から取り込んだ撮影データをもとに、列車10が走行した路線に設置されている踏切遮断機20の遮断桿の折損を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切遮断機の遮断桿の折損判定を支援する遮断桿折損判定支援システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切道に設置される踏切遮断機では、自動車の衝突などによって遮断桿の折損が発生することがある。遮断桿が折損すると、車両等の踏切への進入防止の機能が失われるため、安全面から、速やかな遮断桿の交換・修理が求められる。
【0003】
従来、踏切遮断機の遮断桿の折損を検知する技術として、例えば、遮断桿の回動に伴って変動するトルクを検出し、検出したトルクに基づいて遮断桿の折損を判定する技術(特許文献1参照)や、パイプ材からなる遮断桿の内側に警報音を検出する内マイクロホンを配し、この内マイクロホンで検出された警報音に基づいて遮断桿の折損を判定する技術(特許文献2参照)、グラスファイバー製の複数の遮断桿部分を接続してなる遮断桿の基端部に、パルス状の振動波信号を発信する発信部と、その反射信号を受信する受信部とを設け、受信された振動波信号によって遮断桿の折損を判定する技術(特許文献3参照)、遮断桿に作用する衝撃力によって遮断桿の折損を判定する技術(特許文献4参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−234447号公報
【特許文献2】特開2007−261544号公報
【特許文献3】特開2007−320454号公報
【特許文献4】特開2005−145213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の遮断桿の折損の検知は、遮断機本体や遮断桿そのものに何らかの検知装置を設けることで実現していた。ところで、鉄道線路には多数の踏切があり、多数の踏切遮断機が設置されている。これらの多数の踏切遮断機それぞれに検知装置を設けることは、設置の費用や手間もかかるし、設置後の保守点検も必要である。更に、検知装置による遮断桿の折損の検知結果を、例えば管理センタに伝送するための通信装置も必要である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、踏切遮断機の遮断桿の折損判定を、簡易な構成で実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の形態は、
列車に搭載されて走行中に所定の踏切を撮影する撮影制御装置(例えば、図1の撮影装置30)と、判定装置(例えば、図1の判定装置50)とを具備した遮断桿折損判定支援システム(例えば、図1の遮断桿折損判定支援システム1)であって、
前記判定装置は、
前記撮影制御装置による撮影画像に写された前記所定の踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、当該遮断桿が異常か否かの状態判定を行う判定手段(例えば、図11の処理部400)と、
前記状態判定により異常と判定された場合に、その旨の報知を行う報知手段(例えば、図11の表示部530、音声出力部540)と、
を備えた遮断桿折損判定支援システムである。
【0008】
また、他の形態として、
列車に搭載されて走行中に所定の踏切を撮影する撮影制御装置によって撮影された撮影画像に写された前記所定の踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、当該遮断桿が異常か否かの状態判定を行う判定手段と、
前記状態判定により異常と判定された場合に、その旨の報知を行う報知手段と、
を備えた遮断桿折損判定装置を構成しても良い。
【0009】
また、他の形態として、
列車に搭載された撮影制御装置が列車走行中に所定の踏切を撮影する撮影ステップと、
前記撮影制御装置によって撮影された撮影画像に写された前記所定の踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、当該遮断桿が異常か否かの状態判定を行う判定ステップと、
前記状態判定により異常と判定された場合に、その旨の報知を行う報知ステップと、
を含む遮断桿折損判定支援方法を構成しても良い。
【0010】
この第1の形態等によれば、列車に搭載された撮影制御装置が、列車の走行中に所定の踏切を撮影し、撮影制御装置によって撮影された撮影画像に写された踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、遮断桿が異常か否かの状態判定を行い、異常と判定した場合にその旨の報知を行う。つまり、踏切それぞれに遮断桿の異常を検知するための装置を設ける必要がなく、遮断桿の異常判定を低コストで実現可能となる。
【0011】
また、例えば営業列車に撮影制御装置を搭載し、通過する複数の踏切それぞれを撮影することで、これら複数の踏切それぞれについて、遮断桿の異常を判定することができる。更に、遮断桿が異常と判定された場合にはその旨の報知が行われるため、この報知をうけて作業者が現場に出向き、異常と判定された遮断機について、遮断桿の折損の程度を判断して必要な修理・交換を行うといった踏切遮断機の保守作業の支援が実現される。
【0012】
第2の形態として、第1の形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記撮影制御装置は、撮影タイミングが異なることによって前記所定の踏切に対する相対位置が異なる複数の撮影位置から当該踏切を撮影し、
前記判定手段は、前記複数の撮影位置それぞれでの撮影画像を用いて遮断桿の折損を三次元的に判定することで前記状態判定を行う、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0013】
この第2の形態によれば、踏切に対する相対位置が異なる複数の撮影位置から撮影することになる。そして、それぞれの撮影位置で踏切を撮影した撮影画像を用いて、遮断桿の折損が三次元的に判定される。同一の踏切遮断機であっても、撮影位置が異なると撮影画像が異なる。このため、撮影位置が異なる複数の撮影画像を用いることで、遮断桿がどちら側にどの程度折れているのかといった判定が可能となる。
【0014】
第3の形態として、第2の形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記撮影制御装置は、車両運用において、前記所定の踏切に対する上り方向及び下り方向の少なくとも2方向からの相対位置を前記複数の撮影位置に含めて撮影する、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0015】
この第3の形態によれば、踏切に対する上り方向及び下り方向の少なくとも2方向から撮影することになる。
【0016】
第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記撮影制御装置は、前記列車への搭載位置が異なる複数の撮影手段を備え、
前記判定手段は、前記複数の撮影手段それぞれの撮影画像を用いて遮断桿の折損を三次元的に判定することで前記状態判定を行う、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0017】
この第4の形態によれば、列車への搭載位置が異なる複数の撮影手段それぞれの撮影画像を用いて、遮断桿の折損が三次元的に判定される。同一の踏切遮断機であっても、撮影位置が異なると撮影画像が異なる。このため、撮影位置が異なる複数の撮影画像を用いることで、遮断桿がどちら側にどの程度折れているのかといったことを判定可能となる。
【0018】
第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記撮影制御装置は、少なくとも前記所定の踏切を通過する際に連続的に撮影を行い、
前記判定手段は、前記撮影制御装置により連続的に撮影された連続画像の中から、前記所定の踏切が所定の被写体位置となっている画像を抽出する画像抽出手段を有し、この画像抽出手段により抽出された画像を用いて前記状態判定を行う、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0019】
この第5の形態によれば、踏切を通過する際に連続的に撮影された連続画像の中から抽出された、踏切が所定の被写体位置となっている画像を用いて、遮断桿が異常か否かの状態判定が行われる。これにより、定期的に、踏切を同じ撮影位置から撮影した画像を用いて、遮断桿の状態判定を行うことができる。
【0020】
第6の形態として、第5の形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記撮影制御装置は、搭載されている列車の位置情報及び/又は撮影時の時刻情報(以下、包括的に「撮影位置判定基準情報」という。)を前記連続画像と関連付けて記憶し、
前記画像抽出手段は、前記撮影位置判定基準情報を用いて、前記所定の被写体位置となっている画像を抽出する、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0021】
この第6の形態によれば、連続画像の中から踏切が所定の被写体位置となっている画像を抽出する処理は、連続画像と関連付けて記憶された、撮影制御装置が搭載された列車の撮影位置判定基準情報を用いて行われる。
【0022】
第7の形態として、第1〜第6の何れかの形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記判定手段は、前記撮影画像に写された、所定の配置基準に基づいて前記遮断桿の棹長手方向に沿って棹表面に設けられた複数のマーカを用いて、前記状態判定を行う、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0023】
この第7の形態によれば、遮断桿が異常か否かの判定は、遮断桿の表面に設けられた複数のマーカを用いて行われる。マーカは所定の配置基準に基づいて棹長手方向に沿って設けられているため、撮影画像に写されたマーカの配置や数によって、遮断桿が折損しているか否か、折損している場合にはその折損箇所を判定することが可能である。
【0024】
第8の形態として、第1〜第7の何れかの形態の遮断桿折損判定支援システムであって、
前記判定手段は、前記撮影画像に写された、所定の設置基準に基づいて踏切に設置された前記遮断桿の降下完了時の棹の長手方向を示す指標を用いて、前記状態判定を行う、
遮断桿折損判定支援システムを構成しても良い。
【0025】
この第8の形態によれば、遮断桿が異常か否かの判定は、踏切に設置された指標を用いて行われる。指標は遮断桿の降下完了時の長手方向を示すため、撮影画像に写された指標が示す方向と、遮断桿の長手方向とを比較することで、遮断桿が折損しているか否かを判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】遮断桿折損判定支援システムの概要図。
【図2】列車への撮影装置の搭載例。
【図3】第1実施例における遮断桿の折損判定の説明図。
【図4】撮影位置の一例。
【図5】異なる撮影位置での撮影画像の一例。
【図6】車両運用計画の一例。
【図7】撮影装置の構成図。
【図8】遮断機テーブルのデータ構成例。
【図9】撮影データ群のデータ構成例。
【図10】遮断機検知データのデータ構成例。
【図11】判定装置の構成例。
【図12】判定基準画像データのデータ構成例。
【図13】折損判定結果データのデータ構成例。
【図14】撮影処理のフローチャート。
【図15】折損判定処理のフローチャート。
【図16】第2実施例における遮断桿の折損判定の説明図。
【図17】撮影画像の一例。
【図18】折損判定処理(2)のフローチャート。
【図19】第3実施例における遮断桿の折損判定の説明図。
【図20】撮影画像の一例。
【図21】折損判定処理(3)のフローチャート。
【図22】列車に複数の撮影装置を搭載した例。
【図23】撮影画像の一例。
【図24】撮影画像の一例。
【図25】撮影画像の一例。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[システム構成]
図1は、本実施形態における遮断桿折損判定支援システム1の概要図である。遮断桿折損判定支援システム1は、踏切遮断機20の遮断桿22の折損判定を支援するためのシステムであり、図1に示すように、線路を走行する列車10に搭載される撮影装置30と、踏切遮断機20に設けられた発信器40と、撮影装置30による撮像画像に基づく遮断桿22の折損判定を行う判定装置50とを備えて構成される。
【0028】
この遮断桿折損判定支援システム1では、図1(a)に示すように、走行する列車10が踏切遮断機20の近傍を通過する際に、この列車10に搭載された撮影装置30が踏切遮断機20を撮影し、撮影データとして蓄積記憶する。このとき、撮影装置30は、通過した踏切遮断機20の発信器40と無線通信を行うことで、該踏切遮断機20との相対位置を算出する。
【0029】
次いで、図1(b)に示すように、例えば、一日の営業運転の終了後、撮影装置30に蓄積記憶された撮影データが判定装置50に送信され、判定装置50では、撮影装置30から取り込んだ撮影データをもとに、列車10が走行した路線に設置されている踏切遮断機20の遮断桿22の折損を判定する。
【0030】
撮影装置30は、高速連写による動画撮影が可能なデジタルカメラ或いはデジタルビデオカメラを内蔵する可搬型の装置であり、例えば、運転士等の乗務員によって持ち運ばれて列車10の所定位置に所定姿勢で設置される。
【0031】
図2は、列車における撮影装置30の設置例を示す図である。図2に示すように、撮影装置30は、先頭車両の運転台近傍に、路側の踏切遮断機20を撮影可能なよう、撮影方向を前方に向けて設置される。図2では、撮影装置30は、右斜め前方の踏切遮断機20を撮影するように、運転台の右側に撮影方向を右斜め前方に向けて設置されている。なお、本実施形態では、撮影装置30は、列車10の進行方向右側の踏切遮断機20を撮影することとして説明するが、左右両側の踏切遮断機20を含む広角に撮影することとしても良いのは勿論である。
【0032】
判定装置50は、コンピュータシステムによって実現され、例えば管理センタ等に設置される。そして、この判定装置50は、撮影装置30による撮影データをもとに、踏切遮断機20の遮断桿22の折損を判定する。
【0033】
以下、この遮断桿折損判定支援システム1についての3つの実施例を説明する。
【0034】
[第1実施例]
先ず、第1実施例を説明する。
【0035】
<原理>
(1)遮断桿22の折損判定
第1実施例では、遮断桿22の折損(屈曲及び切断)の判定は、撮影装置30による撮影画像(判定対象画像)を、予め用意された「判定基準画像」と比較することで行う。判定基準画像は、例えば遮断桿22の取り付け直後など、遮断桿22の折損が無い状態(正常状態)での撮影画像である。また、判定対象画像と判定基準画像とは、ともに、判定対象の踏切遮断機20を同じ撮影位置から撮影した画像である。つまり、両方の画像において、踏切遮断機20が写っている位置はほぼ一致している。
【0036】
図3は、第1実施例における遮断桿22の折損(屈曲)の判定方法を説明するための図である。図3(a)は、判定基準画像であり、図3(b),(c)は、判定対象画像である。但し、何れも、同一の踏切遮断機20を同一の撮影位置から撮影した画像である。
【0037】
図3(a)に示すように、判定基準画像には、遮断桿22が屈曲しているか否かを判定するための「判定領域24」が設定されている。判定領域24は、正常状態での遮断桿22を含み、遮断機本体への遮断桿22の支持位置を頂点とする円錐形状の領域である。そして、判定対象画像と判定基準画像とを重ねたときに、判定対象画像中の遮断桿22が、判定基準画像中の判定領域24内であるか否かによって、遮断桿22の屈曲の有無を判定する。すなわち、図3(b)の判定対象画像では「屈曲無し」と判定され、図3(c)の判定対象画像では「屈曲有り」と判定される。
【0038】
また、本実施例では、異なる複数の撮影位置からの撮影画像それぞれを判定対象画像とし、これらの判定対象画像それぞれを対応する判定基準画像と比較することで、遮断桿22の屈曲を三次元的に判定する。これは、撮影装置30による一枚の撮影画像は二次元であるため、例えば、遮断桿22の屈曲の方向によっては、その屈曲を判定できない可能性があるからである。
【0039】
更に、本実施例では、各判定対象画像中の遮断桿22の画像部分を抽出し、遮断桿22の長さによって遮断桿22の切断を判定する。より具体的には、対応する判定基準画像中の遮断桿22の長さと比較して、切断を判定する。この場合も、複数の撮影位置での撮影画像(判定対象画像)を用いることで、遮断桿22の切断を総合的に判定する。
【0040】
図4は、走行する列車とその撮影位置との関係の一例を示す図である。図4に示すように、列車10が走行することで、撮影装置30による撮影位置が変化する。そして、図4に示すように、列車10が前方の踏切遮断機20に接近してゆく場合、三箇所の撮影位置(1)〜(3)それぞれにおける撮影装置30の撮影画像は、例えば図5に示すようになる。
【0041】
図5は、異なる撮影位置それぞれでの撮影画像の一例を示す図である。図5(a)は、図4における撮影位置(1)での撮影画像であり、図5(b)は、図4における撮影位置(2)での撮影画像であり、図5(c)は、図4における撮影位置(3)での撮影画像である。図5に示すように、撮影位置が異なると、撮影画像中の遮断機の位置や大きさが異なる。これらの撮影位置が異なる複数の撮影画像それぞれについて、遮断桿22の折損判定を行い、これらの判定結果を総合して、最終的な折損を判定する。
【0042】
(2)撮影位置の特定
上述の折損判定は、撮影装置30による撮影画像(判定対象画像)と、予め用意された判定基準画像とを比較することでなされる。また、撮影装置30による踏切の撮影は、動画撮影である。このため、撮影装置30による撮影画像データ(連続画像)の中から、判定基準画像と同じ撮影位置からの撮影画像を特定する必要がある。
【0043】
本実施例では、列車の踏切遮断機20の通過時に、撮影装置30が、該踏切遮断機20に設けられた発信器40との間で所定の無線通信を行うことで、通過した踏切遮断機20を特定するとともに、撮影装置30と踏切遮断機20との間の距離を算出する。
【0044】
すなわち、踏切遮断機20に設けられた発信器40は、一定時間間隔で、該遮断機を識別する遮断機ID及び送出時刻を示す情報を含む信号を送出する。そして、撮影装置30では、受信信号に含まれる遮断機IDによって踏切遮断機20を特定するとともに、該受信信号の受信時刻と、該受信信号の送出時刻との時間差(伝搬遅延時間)から、発信器40(すなわち、踏切遮断機20)との間の距離を算出する。この発信器40(踏切遮断機20)との間の距離によって、判定装置50は、所定の撮影位置からの撮影画像を特定する。
【0045】
(3)撮影回数
また、列車10は、定められた車両運用計画に従って運行される。車両運用計画とは、列車ダイヤを実現するよう、列車ダイヤを構成する各列車への車両の割り当てを定めたものである。つまり、同一車両が複数の異なる列車として運用されるため、撮影装置30では、同じ踏切遮断機20について複数回の撮影を行うことが可能である。
【0046】
図6は、車両運用計画の一例を示す図である。図6では、ある車両についての車両運用計画を示しており、この車両は、A駅〜Z駅間を2往復するように運用される。
【0047】
つまり、撮影装置30が搭載された車両が、それぞれ異なる列車として対象路線を複数回走行することから、対象路線に設置されている各踏切遮断機20の撮影画像として、撮影時刻が異なる複数の撮影画像を得ることができる。またこのとき、列車の進行方向(上り/下り)の違いによって、撮影方向が異なる、すなわち踏切遮断機20に対する相対位置が異なる撮影画像を得ることができる。そして、判定装置50では、各踏切遮断機20について、撮影時刻や撮影方向が異なる複数の撮影画像をもとに、遮断桿22の折損を総合的に判定する。
【0048】
<機能構成>
(A)撮像装置30
図7は、第1実施例における撮影装置30の内部構成図である。図7によれば、撮影装置30は、処理部100と、撮影部210と、GPS部220と、データ入出力部230と、無線通信部240と、記憶部300とを備えて構成される。
【0049】
処理部100は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、データ入出力部230からの入力データ、GPS部220からの位置データ等に基づいて、撮影装置30を構成する各部への指示やデータ転送を行い、撮影装置30の全体制御を行う。
【0050】
また、処理部100は、撮影プログラム310に従って、踏切遮断機20を撮影する撮影処理を実行する。具体的には、撮影処理では、自装置が搭載された列車(自列車)の踏切遮断機20への接近を判断する。すなわち、GPS部220により測位された自列車の現在位置と、次に通過する踏切遮断機20との距離が所定距離以下となると、該踏切遮断機20に「接近した」と判断する。ここで、次の踏切遮断機20及びその位置は、遮断機テーブル320を参照して判断する。
【0051】
図8は、遮断機テーブル320のデータ構成の一例を示す図である。図8によれば、遮断機テーブル320は、列車10の走行する路線(対象路線)に設置されている踏切遮断機20それぞれについて、遮断機ID321と、その設置位置322とを対応付けて格納している。設置位置322は、緯度経度といった絶対位置で格納される。
【0052】
処理部100は、自列車が踏切遮断機20に接近したと判断すると、撮影部210による撮影を開始させる。また、接近する踏切遮断機20に設けられた発信器40の発信信号を受信し、受信毎に、受信信号を基に自装置と発信器40との距離を算出する。
【0053】
その後、自列車が踏切遮断機20を通過して離れたと判断すると、撮影部210による撮影を終了させる。ここで、自列車が踏切遮断機20から離れたことは、接近と同様に、GPS部220により測位された自列車の位置と踏切遮断機20との距離が所定距離以上となったことで判断する。
【0054】
また、処理部100は、一つの踏切遮断機20の撮影毎に、該踏切遮断機20についての遮断機撮影データ360を生成する。図9は、遮断機撮影データ360のデータ構成の一例を示す図である。図9によれば、遮断機撮影データ360は、該当する踏切遮断機20の遮断機ID361と、撮影開始時刻362と、撮影終了時刻363と、撮影部210による撮影画像データ364と、遮断機検知データ365とを含む。
【0055】
撮影画像データ364は、連続された複数枚の画像データであり、各々が撮影時刻と対応付けて記憶される。
【0056】
図10は、遮断機検知データ365のデータ構成の一例を示す図である、図10によれば、遮断機検知データ365は、該当する踏切遮断機20の検知時刻365aと、検知距離365bを対応付けて格納している。検知時刻365aは、該当する踏切遮断機20の発信器40からの発信信号の受信時刻である。検知距離365bは、対応する発信信号をもとに算出された自装置と踏切遮断機20との間の距離である。
【0057】
そして、処理部100は、1回の列車の運行が終了すると、該運行において生成した遮断機撮影データ360の集合を、対応する列車番号351と対応付けて、該列車についての撮影データ350とする。この列車毎の撮影データ350の集合が、撮影データ群340となる。なお、運行された列車の列車番号などは、撮影装置30が搭載される車両の運用計画のデータである車両運用データ370を参照して判断される、車両運用データ370は、運行される各列車の列車番号や運行スケジュール(各駅の着発時刻等)、進行方向(上り/下り)等が格納されている。
【0058】
撮影部210は、撮影レンズや、撮影レンズを通過した入射光をデジタル信号に変換するCCDやCMOS等の撮像素子で実現され、処理部100の撮影指示に従った撮影を行い、撮影した画像データを処理部100に出力する。この撮影部210は、高速連写可能なデジタルカメラ或いはデジタルビデオカメラで実現可能であるが、何れも高速度カメラであるとより好適である。
【0059】
GPS部220は、複数のGPS衛星から送信される衛星信号(GPS信号)の捕捉・抽出を行って現在位置を測位する測位演算を行い、算出した現在位置を処理部100に出力する。
【0060】
データ入出力部230は、無線通信装置や有線ケーブルのジャック、CD−ROMやメモリカード、ICメモリ等の記憶媒体の読出/書込装置で実現され、外部装置(主に、判定装置50)との間でデータの入出力を行う。
【0061】
無線通信部240は、所定の通信方式によって、所定距離内に位置する踏切遮断機20に設けられた発信器40との無線通信を行う。
【0062】
記憶部300は、ハードディスクやROM、RAM等の記憶装置で構成され、処理部100が撮影装置30を統括的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部100の作業領域として用いられ、処理部100が各種プログラムを実行した演算結果等が一時的に格納される。本実施例では、記憶部300には、プログラムとして撮影プログラム310が記憶されるとともに、データとして、遮断機テーブル320と、走行データ330と、撮影データ群340と、車両運用データ370とが記憶される。
【0063】
走行データ330は、GPS部220による自列車の位置と時刻とを対応付けたデータであり、自列車の走行中、随時、蓄積・更新される。
【0064】
(B)判定装置50
図11は、第1実施例における折損判定装置50の内部構成図である。図11によれば、判定装置50は、処理部400と、操作部510と、データ入出力部520と、表示部530と、音声出力部540と、記憶部600とを備えて構成される。
【0065】
処理部400は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部600に記憶されたプログラムやデータ、操作部510からの操作信号、データ入出力部520からの入力データ等に基づいて、判定装置50を構成する各部への指示やデータ転送を行い、判定装置50の全体制御を行う。
【0066】
また、処理部400は、折損判定プログラム610に従った折損判定処理を行う。この折損判定処理では、処理部400は、先ず、データ入出力部520を介して、撮影装置30から撮影データ群340及び走行データ330を取り込む。そして、取り込んだ撮影データ群340及び走行データ330をもとに、対象路線に設けられている踏切遮断機20それぞれについての遮断桿22の折損の有無を判定する。
【0067】
具体的には、運行された列車それぞれを順に判定対象として、対応する撮影データ350をもとに、判定対象の列車が通過した踏切遮断機20それぞれについて遮断桿22の折損(屈曲及び切断)を判定する。すなわち、判定対象の踏切遮断機20に対応する判定基準画像データ630を参照して、該踏切遮断機20に定められている、判定対象の列車の進行方向(上り/下り)に応じた判定位置を特定する。次いで、判定対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる遮断機検知データ365を参照して、これらの判定位置それぞれの通過時刻を特定する。続いて、判定対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる撮影画像データ364から、特定した通過時刻それぞれに対応する撮影画像を特定し、判定位置それぞれの判定対象画像とする。
【0068】
そして、判定位置毎に、判定対象画像と、判定対象の列車の進行方向(上り/下り)に応じた該判定位置に対応する判定基準画像とを比較し、判定対象画像中の遮断桿22の位置及び形状が、判定基準画像中の判定領域24内であるか否かによって、遮断桿22の屈曲の有無を判定する。また、判定対象画像中の遮断桿22の長さが、判定対象基準画像中の遮断桿22の長さにほぼ一致するか否かによって、遮断桿22の切断の有無を判定する。
【0069】
図12は、判定基準画像データ630のデータ構成の一例を示す図である。図12によれば、判定基準画像データ630は、踏切遮断機20毎に用意され、該当する踏切遮断機20の遮断機ID631と、上り列車から撮影した場合の上り用基準画像データ632と、下り列車から撮影した場合の下り用基準画像データ633とを格納している。上り用基準画像データ632及び下り用基準画像データ633は、ともに同一構成であり、判定位置632aと、判定基準画像632bとを対応付けて格納している。判定位置632aは、緯度経度等の絶対位置として格納される。
【0070】
そして、処理部400は、全ての列車について、通過した全ての踏切遮断機20についての遮断桿22の折損の判定を行うと、続いて、踏切遮断機20それぞれについて、列車毎の判定結果をもとに、最終的な遮断桿22の折損を判定する。具体的には、例えば、判定結果が「折損有り」である数が所定数以上(或いは、所定割合以上)の場合に、最終的な判定結果を「折損有り」とする。
【0071】
処理部400による遮断桿22の折損の判定結果は、折損判定結果データ660として記憶される。図13は、折損判定結果データ660のデータ構成の一例を示す図である。図13によれば、折損判定結果データ660は、対象路線に設置されている踏切遮断機20毎に生成され、該当する踏切遮断機20の遮断機ID661と、個別判定結果662と、この個別判定結果662に基づく総合判定結果663とを格納している。個別判定結果662は、列車毎の判定結果であり、各列車の列車番号662aと、進行方向662bと、判定位置662cと、の判定結果662dとを対応付けて格納している。判定結果662dは、遮断桿22の屈曲及び切断それぞれについての判定結果であり、各判定位置における判定結果である地点別判定結果と、各地点別判定結果に基づく、いわば三次元的な判定結果である多地点判定結果とが含まれる。
【0072】
その後、処理部400は、判定結果に応じた表示画面を表示部530に表示させたり、報知音声を音声出力部540から出力させるといった報知を行う。具体的には、例えば、折損判定結果データ660に基づき、踏切遮断機20それぞれの判定結果(折損有り/無しや、折損有りの場合には屈曲/切断)を一覧表示させたり、或いは、「折損有り」と判定した踏切遮断機20を一覧表示させる。更に、「折損有り」と判定した踏切遮断機20の撮影画像や、折損の種別(屈曲/切断)を表示させても良い。
【0073】
操作部510は、ボタンスイッチやレバー、キーボード、マウス、タッチパネル、各種センサ等の入力装置によって実現され、操作指示に応じた操作信号を処理部400に出力する。
【0074】
データ入出力部520は、無線通信装置や有線ケーブルのジャック、CD−ROMやメモリカード、ICメモリ等の記憶媒体の読出/書込装置で実現され、外部装置(主に、撮影装置30)との間でデータの入出力を行う。
【0075】
表示部530は、CRTやLCD、ELD、PDP等の表示装置で実現され、処理部400からの表示信号に基づく表示画面を表示する。
【0076】
音声出力部540は、スピーカ等の音声出力装置で実現され、処理部400からの音声信号に基づく音声を出力する。
【0077】
記憶部600は、ハードディスクやROM、RAM等の記憶装置で構成され、処理部400が撮影装置30を統括的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部400の作業領域として用いられ、処理部400が各種プログラムを実行した演算結果等が一時的に格納される。本実施例では、記憶部600には、プログラムとして折損判定プログラム610が記憶されるとともに、データとして、踏切遮断機20毎の判定基準画像データ630の集合である判定基準画像DB620と、撮影装置30から入力された撮影データ群340及び走行データ330と、折損判定結果データ660とを記憶する。
【0078】
<処理の流れ>
(A)撮影処理
図14は、撮影装置30における撮影処理の流れを説明するフローチャートである。この撮影処理は、搭載された列車の運行開始等によって装置外部からの開始指示がなされると、実行が開始される。
【0079】
図14によれば、撮影処理では、処理部100は、GPS部220からの自列車の現在位置をもとに、遮断機テーブル320にて定められる、次に通過する踏切遮断機20への接近を監視する。そして、自列車と踏切遮断機20との距離が所定距離以下となって該踏切遮断機20に接近したと判断したならば(ステップA1:YES)、撮影部210に撮影を開始させる(ステップA3)。
【0080】
それとともに、踏切遮断機20の発信器40からの発信信号を受信し、受信毎に、自装置と踏切遮断機20との間の距離を算出する(ステップA5)。そして、自列車と該踏切遮断機20との距離が所定距離以上となって該踏切遮断機20から離れたと判断したならば(ステップA7:YES)、撮影部210による撮影を終了させる(ステップA9))。
【0081】
その後、自列車の走行終了(終着駅への到着)等による撮影処理の終了指示がなされたか否かを判断し、なされていないならば(ステップA11:NO)、ステップA1に戻り、同様の処理を行う。一方、終了指示がなされたならば(ステップA11:YES)、撮影処理を終了する。
【0082】
(B)折損判定処理
図15は、折損判定装置50における折損判定処理の流れを説明するフローチャートである。図15によれば、折損判定処理では、処理部400は、先ず、データ入出力部520を介して、撮影装置30から撮影データ群340及び走行データ330を入力する(ステップB1)。
【0083】
次いで、入力された撮影データ群340を参照し、撮影対象となっている踏切遮断機20それぞれを対象としたループAの処理(繰り返し処理)を行う。このループAの処理では、先ず、対象の踏切遮断機20を通過した列車それぞれを対象としたループBの処理(繰り返し処理)を行う。
【0084】
ループBでは、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360を参照して、遮断桿22の折損を判定する。すなわち、対象の踏切遮断機20に対応する判定基準画像データ630を参照して、対象の列車の進行方向(上り/下り)に応じた、該踏切遮断機20に定められた各判定位置を特定する(ステップB3)。次いで、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる遮断機検知データ365を参照して、特定した判定位置それぞれの通過時刻を特定する(ステップB5)。
【0085】
続いて、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる撮影画像データ364の中から、特定した通過時刻それぞれでの撮影画像を抽出し、判定対象画像とする(ステップB7)。そして、特定した判定位置それぞれについて、遮断桿22の折損(屈曲及び切断)を判定する。
【0086】
すなわち、判定位置それぞれについて、判定対象画像を、判定基準画像データ630にて定められる、対象の列車の進行方向(上り/下り)に応じた判定基準画像と比較し、判定対象画像中の遮断桿22が判定基準画像中の判定領域24内であるか否かによって、遮断桿22の屈曲の有無を判定(地点別判定)する(ステップB9)。そして、判定位置それぞれについての屈曲の有無の判定結果に基づき、遮断桿22の屈曲を三次元的に判定(多地点判定)する(ステップB11)。但し、この時点の判定は、当該遮断機の当該列車に関する判定である。
【0087】
また、判定位置それぞれについて、判定対象画像と判定基準画像とを比較し、判定対象画像中の遮断桿22の長さが、判定基準画像中の遮断桿22の長さにほぼ一致するか否かによって、遮断桿22の切断の有無を判定(地点別判定)する(ステップB13)。そして、判定位置それぞれの切断の有無の判定結果に基づき、遮断桿22の切断を三次元的に判定(多地点判定)する(ステップB15)。但し、この時点の判定は、当該遮断機の当該列車に関する判定である。ループBはこのように行われる。
【0088】
対象の踏切遮断機20を通過した全ての列車についてループBの処理を行ったならば、続いて、列車毎の判定結果に基づき、対象の踏切遮断機20の総合的な折損の判定を行う(ステップB17)。ループAはこのように行われる。
【0089】
全ての踏切遮断機20についてループAの処理を行ったならば、各踏切遮断機20の折損の判定結果を報知する所定の報知処理を行う(ステップB19)。以上の処理を行うと、折損判定処理を終了する。
【0090】
[第2実施例]
次に、第2実施例を説明する。なお、以下において、上述の第1実施例と同一の構成要素については同符号を付し、詳細な説明を省略・簡略する。第2実施例では、遮断桿22に設けられた所定のマーカを検出することで、遮断桿22の折損の有無を判定する。
【0091】
<折損判定の原理>
図16は、第2実施例における遮断機の構成を示す外観図である。図16に示すように、遮断桿22の表面には、複数のマーカ26が所定の配置基準に従って設けられている。配置基準としては、例えば、棹長手方向の長さが所定の長さ(例えば、30cm)のマーカ26を、所定間隔(30cm間隔)で設けるといった基準である。このマーカ26は、例えば、反射材の貼付や、塗料の塗布によって構成される。また、マーカ26は、遮断桿22の線路側に設けるよう配置基準に定められており、線路を走行する列車10から視認可能とする。
【0092】
図17は、撮影装置30による撮影画像の一例である。図17(a)は、遮断桿22の折損が無い場合の撮像画像であり、図17(b)は、遮断桿22が折損している(途中で折れている)場合の撮像画像である。この撮影画像において検出されたマーカ26の数や並びによって、遮断桿22の折損(屈曲及び切断)を判定することができる。
【0093】
すなわち、図17(a)に示すように、遮断桿22の折損が無い場合には、全てのマーカ26が一直線状に並んでいる。一方、図17(b)に示すように、遮断桿22が途中で折れている場合には、全てのマーカ26は一直線状に並ばない。従って、遮断桿22に設けられている全てのマーカ26が一直線状に並んでいるならば「折損無し」と判定し、全てのマーカ26が一直線状に並んでいないならば「折損有り」と判定する。更に、「折損有り」の場合、一直線状に並んでいるマーカ26の数によって、遮断桿22の切断位置を判定することができるとともに、隣り合うマーカ26同士の並びから、遮断桿22の屈曲位置を判定することができる。
【0094】
<処理の流れ>
図18は、第2実施例における折損判定処理(2)の流れを説明するフローチャートである。なお、第1実施例における折損判定処理(図15参照)と同一の処理ステップには同一のステップ番号を付している。
【0095】
図18によれば、折損判定処理(2)では、処理部400は、先ず、撮影装置30から撮影データ群340及び走行データ330を入力する(ステップB1)。次いで、撮影データ群340を参照し、撮影対象となっている踏切遮断機20それぞれを対象としたループAの処理を行う。
【0096】
ループAでは、対象の踏切遮断機20を通過した列車それぞれを対象としたループBの処理を行う。ループBでは、対象の踏切遮断機20に対応する判定基準画像データ620を参照して、対象の列車の進行方向に応じた、該踏切遮断機20に定められた各判定位置を特定する(ステップB3)。次いで、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる遮断機検知データ365を参照して、特定した各判定位置の通過時刻を特定する(ステップB5)。
【0097】
続いて、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる撮影画像データ364の中から、特定した各通過時刻での撮影画像を抽出して判定対象画像とする(ステップB7)。次いで、判定対象画像中のマーカ26を抽出し(ステップC8)、検出したマーカ26をもとに、遮断桿22の折損(屈曲及び切断)を判定する。
【0098】
すなわち、各判定位置について、判定対象画像中のマーカ26の並びから、遮断桿22の屈曲の有無を判定(地点別判定)する(ステップC9)。そして、判定位置それぞれについての屈曲の有無の判定結果に基づき、遮断桿22の屈曲を三次元的に判定(多地点判定)する(ステップC11)。
【0099】
また、各判定位置について、判定対象画像において、一直線状に並んでいるマーカ26の数が、対象の踏切遮断機20に設けられているマーカ26の総数に一致するか少ないかに応じて、遮断桿22の切断の有無を判定(地点別判定)する(ステップC13)。そして、判定位置それぞれについての切断の有無の判定結果に基づき、遮断桿22の屈曲を三次元的に判定(多地点判定)する(ステップC15)。ループBはこのように行われる。
【0100】
対象の踏切遮断機20を通過した全ての列車についてループBの処理を行ったならば、続いて、列車毎の判定結果に基づき、対象の踏切遮断機20の総合的な折損判定を行う(ステップB17)。ループAはこのように行われる。
【0101】
全ての踏切遮断機20についてループAの処理を行ったならば、各踏切遮断機20の判定結果を報知する所定の報知処理を行う(ステップB19)。以上の処理を行うと、折損判定処理(2)を終了する。
【0102】
なお、図18のループBの処理において、判定位置を1箇所としても良い。その場合には、多地点判定の処理(ステップC11,C15)が不要となり、1箇所の判定位置での判定結果のみが得られることになる。
【0103】
[第3実施例]
次に、第3実施例を説明する。なお、以下において、上述の第1実施例及び第2実施例と同一の構成要素については同符号を付し、詳細無い説明を省略する。第3実施例では、踏切遮断機20近傍に設置された所定の指標を用いることで、遮断桿22の折損の有無を判定する。この第3実施例は、屈曲に係る折損の判定に特に好適である。
【0104】
<折損判定の原理>
図19は、第3実施例における踏切遮断機20の構成を示す外観図である。図19に示すように、踏切遮断機20には、遮断桿22の遮断機本体での支持位置付近に指標42Aが設置され、踏切遮断機20が遮断する通行路を挟んで遮断機本体と反対の位置に指標42Bが設置されている。これらの指標42A,42Bは所定の設置基準に基づいて設置され、各指標42A,42Bを結ぶ直線が、踏切遮断機20の遮断桿22の降下が完了している状態での遮断桿22の長手方向と平行になるように、ポールや支柱を用いて設置される。
【0105】
図20は、撮影装置30による撮影画像の一例を示す図である。図20に示すように、列車10に搭載された撮影装置30は、踏切遮断機20を通過時に該踏切遮断機20を撮影するため、撮影画像に写されている踏切遮断機20は、遮断桿22が完全に降りた状態となっている。このため、撮影画像における遮断桿22の長手方向と、2つの指標42A,42Bを結ぶ直線とが一致するか否かによって、遮断桿22の折損の有無を判定する。すなわち、一致するならば「折損無し」と判定し、一致しないならば「折損有り」と判定する。ここで、撮影画像中の遮断桿22の長手方向の抽出は、例えば、遮断桿22に固有の配色の規則性(黄色と黒色の繰り返しパターン)を抽出することで実現される。
【0106】
<処理の流れ>
図21は、第3実施例における折損判定処理(3)の流れを説明するフローチャートである。なお、第1実施例における折損判定処理(図15参照)と同一の処理ステップには同一のステップ番号を付している。
【0107】
図21によれば、折損判定処理(2)では、処理部400は、先ず、撮影装置30から撮影データ群340及び走行データ330を入力する(ステップB1)。次いで、撮影データ群340を参照し、撮影対象となっている踏切遮断機20それぞれを対象としたループAの処理を行う。
【0108】
ループAでは、対象の踏切遮断機20を通過した列車それぞれを対象としたループBの処理を行う。ループBでは、対象の踏切遮断機20に対応する判定基準画像データ620を参照して、対象の列車の進行方向に応じた、該踏切遮断機20に定められた判定位置を特定する(ステップB3)。次いで、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる遮断機検知データ365を参照して、特定した判定位置の通過時刻を特定する(ステップB5)。
【0109】
続いて、対象の踏切遮断機20に対応する遮断機撮影データ360に含まれる撮影画像データ364の中から、特定した通過時刻での撮影画像を抽出して判定対象画像とする(ステップB7)。そして、判定対象画像中の指標42A,42B及び遮断桿22を検出し(ステップD9)、検出した2つの指標42A,42Bを結ぶ直線と、遮断桿22の長手方向とが一致するか否かに応じて、遮断桿22の折損の有無を判定する(ステップD11)。ループBはこのように行われる。
【0110】
対象の踏切遮断機20を通過した全ての列車についてループBの処理を行ったならば、続いて、列車毎の判定結果に基づき、対象踏切遮断機20の総合的な折損判定を行う(ステップB17)。ループAはこのように行われる。
【0111】
全ての踏切遮断機20についてループAの処理を行ったならば、各踏切遮断機20の判定結果を報知する所定の報知処理を行う(ステップB19)。以上の処理を行うと、折損判定処理(3)を終了する。
【0112】
[作用・効果]
このように、本実施形態の遮断桿折損判定支援システム1では、列車10に搭載される撮影装置30が、踏切遮断機20の近傍を通過する際にこの踏切遮断機20を動画撮影し、撮影データとして蓄積記憶する。そして、例えば、一日の営業運転の終了後、撮影装置30に蓄積記憶された撮影データが判定装置50に入力され、判定装置50では、撮影装置30から取り込んだ撮影データをもとに、列車10が走行した路線に設置されている踏切遮断機20の遮断桿22の折損を判定する。
【0113】
つまり、踏切遮断機20を撮影した画像をもとに、この踏切遮断機20の遮断桿22の折損を判定するので、踏切遮断機20それぞれに遮断桿22の異常を検知するための装置を設ける必要がなく、遮断桿22の折損判定を低コストで実現可能となる。
【0114】
また、例えば営業列車に撮影装置を搭載し、通過する複数の踏切遮断機20それぞれを撮影することができるので、これら複数の踏切遮断機20それぞれについて、遮断桿22の異常を判定することができる。更に、判定装置では、遮断桿22の折損判定結果に基づく報知が行われるため、この報知をうけて作業者が現場に出向き、折損と判定された踏切遮断機20について、遮断桿22の折損の程度を判断して必要な修理・交換を行うといった踏切遮断機20の保守作業の支援が実現される。
【0115】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0116】
(A)撮影装置30の搭載位置
例えば、上述の実施形態では、撮影装置30を先頭車両の運転台近傍に設置し、進行方向前方の踏切遮断機20を撮影することにしたが、撮影装置30を最後尾車両に設置し、進行方向後方の踏切遮断機20を撮影することにしても良い。勿論、先頭車両と最後尾車両との両方に設置することにしても良い。
【0117】
(B)複数の撮影装置30
例えば、列車に複数の撮影装置30を搭載することにしても良い。この場合、複数の撮影装置30の搭載位置を異ならせ、異なる方向から踏切遮断機20を撮影する。
【0118】
例えば、図22は、二つの撮影装置30A,30Bを搭載した例である。図22では、撮影装置30Aは、先頭車両の運転台近傍に、撮影方向を進行方向前方に向けて搭載され、撮影装置30Bは、先頭車両の側部上方に、撮影方向を進行方向に対して右方向に向けて搭載されている。そして、図23は、撮影装置30Aの撮影画像であり、図24は、撮影装置30Bの撮影画像である。図23,図24に示すように、搭載位置が異なると、同じ撮影位置(列車位置)であっても、撮影画像が異なる。このため、この場合、判定位置を一箇所とし、この判定位置での撮影装置30A,30Bそれぞれの撮影画像を用いて、踏切遮断機20の遮断桿22の折損を三次元的に判定できる。
【0119】
(C)判定対象画像の特定
また、上述の実施形態では、撮影装置30が、踏切遮断機20に設けられた発信器40からの送出信号を受信することで該踏切遮断機20との距離を算出し、この踏切遮断機20との距離をもとに、撮影画像の中から所定の判定位置における撮影画像(判定対象画像)を特定することにしたが、これを、GPS部220によって測位される列車位置を用いても良い。
【0120】
或いは、撮影画像に対する画像処理によって、判定位置の撮影画像(判定対象画像)を特定することにしても良い。すなわち、撮影画像中の踏切遮断機20の本体部分を抽出(トリミング)し、抽出した画像部分の位置及び大きさが、判定基準画像中の踏切遮断機20の本体部分の位置及び大きさが一致する撮影画像を、判定対象画像とする。
【0121】
更には、判定基準画像が無くとも良い。この場合、撮影画像中の踏切遮断機20の本体部分を抽出し、抽出した本体部分の位置及び大きさが所定位置及び大きさである撮影画像を判定対象画像とする。そして、判定対象画像中の遮断機本体への遮断桿22の支持位置を特定し、特定した支持位置に合わせて判定領域24を定めることで、遮断桿22の折損を判定する。
【0122】
(D)判定領域24
また、第1実施例において、判定領域24は、円錐形状に限らず、円柱形状や角柱形状等、正常状態の遮断桿22を含む領域であって、許容する遮断桿22の折損を考慮した領域であれば、どのような形状であっても良い。
【0123】
(E)指標42
また、第3実施例において、設置する指標42を1つとしても良い。具体的には、図25の撮影画像に示すように、踏切遮断機20が遮断する通行路を挟んで遮断機本体と反対の位置に、1つの指標42Bを設置する。この指標42Bは所定の設置基準に基づいて設置され、踏切遮断機20の遮断桿22の降下が完了している状態での遮断桿22の長手方向の延長線上に一致するように設置される。そして、撮影画像において、遮断桿の長手方向の延長線上に、指標42Bが位置するか否かによって、遮断桿22の折損の有無を判定する。すなわち、位置するならば「折損無し」と判定し、位置しないならば「折損有り」と判定する。
【符号の説明】
【0124】
1 遮断桿折損判定支援システム
30 撮影装置
100 処理部、210 撮影部、220 GPS部
230 データ入出力部、240 無線通信部
300 記憶部
310 撮影プログラム、320 遮断機テーブル
330 走行データ、340 撮影データ群
40 発信器
50 判定装置
400 処理部、510 操作部、520 データ入出力部
530 表示部、540 音声出力部
600 記憶部
610 折損判定プログラム、620 判定基準画像DB
340 撮影データ群、330 走行データ
660 折損判定結果データ
10 列車
20 踏切遮断機、22 遮断桿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載されて走行中に所定の踏切を撮影する撮影制御装置と、判定装置とを具備した遮断桿折損判定支援システムであって、
前記判定装置は、
前記撮影制御装置による撮影画像に写された前記所定の踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、当該遮断桿が異常か否かの状態判定を行う判定手段と、
前記状態判定により異常と判定された場合に、その旨の報知を行う報知手段と、
を備えた遮断桿折損判定支援システム。
【請求項2】
前記撮影制御装置は、前記所定の踏切に対する相対位置が異なる複数の撮影位置から当該踏切を撮影し、
前記判定手段は、前記複数の撮影位置それぞれでの撮影画像を用いて遮断桿の折損を三次元的に判定することで前記状態判定を行う、
請求項1に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項3】
前記撮影制御装置は、車両運用において、前記所定の踏切に対する上り方向及び下り方向の少なくとも2方向からの相対位置を前記複数の撮影位置に含めて撮影する、
請求項2に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項4】
前記撮影制御装置は、前記列車への搭載位置が異なる複数の撮影手段を備え、
前記判定手段は、前記複数の撮影手段それぞれの撮影画像を用いて遮断桿の折損を三次元的に判定することで前記状態判定を行う、
請求項1〜3の何れか一項に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項5】
前記撮影制御装置は、少なくとも前記所定の踏切を通過する際に連続的に撮影を行い、
前記判定手段は、前記撮影制御装置により連続的に撮影された連続画像の中から、前記所定の踏切が所定の被写体位置となっている画像を抽出する画像抽出手段を有し、この画像抽出手段により抽出された画像を用いて前記状態判定を行う、
請求項1〜4の何れか一項に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項6】
前記撮影制御装置は、搭載されている列車の位置情報及び/又は撮影時の時刻情報(以下、包括的に「撮影位置判定基準情報」という。)を前記連続画像と関連付けて記憶し、
前記画像抽出手段は、前記撮影位置判定基準情報を用いて、前記所定の被写体位置となっている画像を抽出する、
請求項5に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項7】
前記判定手段は、前記撮影画像に写された、所定の配置基準に基づいて前記遮断桿の棹長手方向に沿って棹表面に設けられた複数のマーカを用いて、前記状態判定を行う、
請求項1〜6の何れか一項に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項8】
前記判定手段は、前記撮影画像に写された、所定の設置基準に基づいて踏切に設置された前記遮断桿の降下完了時の棹の長手方向を示す指標を用いて、前記状態判定を行う、
請求項1〜7の何れか一項に記載の遮断桿折損判定支援システム。
【請求項9】
列車に搭載されて走行中に所定の踏切を撮影する撮影制御装置によって撮影された撮影画像に写された前記所定の踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、当該遮断桿が異常か否かの状態判定を行う判定手段と、
前記状態判定により異常と判定された場合に、その旨の報知を行う報知手段と、
を備えた遮断桿折損判定装置。
【請求項10】
列車に搭載された撮影制御装置が列車走行中に所定の踏切を撮影する撮影ステップと、
前記撮影制御装置によって撮影された撮影画像に写された前記所定の踏切の遮断桿の撮影部分に基づいて、当該遮断桿が異常か否かの状態判定を行う判定ステップと、
前記状態判定により異常と判定された場合に、その旨の報知を行う報知ステップと、
を含む遮断桿折損判定支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−56514(P2012−56514A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203441(P2010−203441)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】