説明

遮水シートの接合方法

【課題】遮水シート表面の砂、泥、油といった汚染または劣化した表面層を簡単な作業で除去することができ、融着による接合強度をかなり大きなものとすることができる遮水シートの接合方法の提供を課題とする。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタンからなる遮水シート1、2同士を熱融着する遮水シートの接合方法であって遮水シート1、2の接合面3、4に対してジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを混合した混合溶剤を塗布して乾燥させた後に接合面3、4同士を熱融着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場、貯水池、ダムなどに用いる遮水シートの接合方法に係り、詳しくは熱可塑性ウレタンシートを強固に接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歯器物最終処分場における環境汚染と安全性の問題がクローズアップされている。廃棄物最終処分場は厚生省の指針に遮水性を施すように義務付けられている。一般的には、遮水シートによる表面遮水工法が多く採用されている。
【0003】
この表面遮水工法は、工地基盤の安定性、遮水シ−トの敷設工事の確実性、遮水シートの耐久性、維持管理の確実性が必要である。
【0004】
表面遮水工の今までの問題は、施工時点では問題がなかったとしても、湧き水などによって洗掘された場合や地盤沈下によって安定な基盤の確保が困難であった。遮水シートが環境条件によって左右されやすいため、下地への敷設性、シートの接合性、耐クリープ性等を考慮したような確実な施工ができないこともあった。
【0005】
そういった環境の中で熱可塑性ウレタンからなる遮水シートがシート同士の接合を熱融着により行なえること、熱膨張率が小さいので環境温度に左右されにくく、耐外傷性や耐久性にも優れていることから用いられている(特許文献1)。
【0006】
このような廃棄物処分場で用いられる場合には、廃棄物中の有害成分の外部への漏洩を防ぐ必要性が極めて高いこと、また下地の沈下によって遮水シートに大きな応力がかかることもあり、遮水シート同士の接合部には高い接合強度が要求される。
【0007】
ところが、遮水シートの接合はシート表面の汚染状況に左右され、たとえ砂、泥、ほこり、油などが表面に付着した状態であったり、シートの表面に酸化被膜を形成した状態であったりするとそのまま熱融着しても十分な接合強度を得ることができない。従来遮水シートの接合部分を濡れ雑巾などで拭き取るといった方法が採られていたが、水分が乾くまでに時間がかかるといった問題や汚れの種類によっては水では拭き取れないという問題もあった。
【0008】
特許文献2には遮水シートの接合面を有機溶媒で浄化することによって、接合強度を向上させる方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には遮水シートの接合面に表面保護テープを取り付けておき、接合する際にその表面保護テープを除去してから接合するといった方法が開示されている。
【0010】
特許文献4には遮水シートを接合する際に研磨具により接合面の遮水シート表層部を研磨除去してから接合する方法が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開平6−465号公報
【特許文献2】特開2000−269375号公報
【特許文献3】特開2001−340825号公報
【特許文献4】特開2002−18388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献3では遮水シートに別途表面保護テープを積層配置しなければならないために、コスト的に不利であることと、シートの敷設現場で除去した表面保護テープがゴミとなってしまうことがある。
【0013】
特許文献4では遮水シートの表面を研磨することによって劣化していない新しい面を露出させることができ、その面同士を接合することによって接合強度を上げることはできるが、遮水シートの表面を研磨するのに研磨装置などを必要とし手間がかかってしまうことや研磨屑の発生などの問題がある。
【0014】
特許文献2の方法は有機溶媒による拭き取りで、中では比較的簡単な作業であるということはできるが、使用する溶媒の種類によっては十分な接合強度を得ることができないといったことがある。
【0015】
そこで本発明では、様々な形態の汚れや劣化した熱可塑性ウレタンの遮水シートに適用することができ、比較的簡単に行なえるので作業性やコスト的にも有利であり、しかも接合強度の面でも優れた遮水シートの接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
熱可塑性ポリウレタンからなる遮水シート同士を熱融着する遮水シートの接合方法において、少なくとも片方の遮水シートの接合面に対して、ジメチルホルムアミドにメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを混合した混合溶剤を塗布して乾燥させた後に接合面同士を熱融着することを特徴とする。
【0017】
請求項2では、混合溶剤中のジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランの比が15:85〜80:20の範囲内である遮水シートの接合方法としている。
【0018】
請求項3では、ジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランの比が15:85〜50:50の範囲である遮水シートの接合方法としている。
【0019】
混合溶剤を塗布した後の乾燥工程として風を吹き付けることにより強制乾燥を行なう遮水シートの接合方法。
【発明の効果】
【0020】
請求項1によると熱可塑性ウレタンからなる遮水シートの接合面に対して、ジメチルホルムアミドにメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを混合した混合溶剤を塗布することによって、接合面の遮水シート表面が溶解して汚染または劣化した表面層を除去することができ、表面層を除去した状態で熱融着するので融着による接合強度をかなり大きなものとすることができる。しかも、混合溶剤を塗布するだけなので手間やコストの面でもわずかなもので済ませることができる。
【0021】
請求項2では塗布する混合溶剤の中のジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを15:85〜80:20しており、より効果的に遮水シートの汚染または劣化した表面層を除去することができる。
【0022】
請求項3ではジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを15:85〜50:50の範囲としており、溶剤を塗布した後の乾燥時間も短くて済み、より作業性の面で優れているといえる。
【0023】
混合溶剤を塗布した後の乾燥工程として風を吹き付け強制乾燥を行なうことで混合溶剤の乾燥時間を短縮することができる。また、乾燥時に発生する結露水を乾燥できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の接合方法により2枚の遮水シート1、2を接合するところの断面図であり、図2は熱融着しているところの斜視概要図、図3は接合後の断面図である。
【0025】
熱可塑性ウレタンからなる遮水シート1および遮水シート2の端部を重ね合わせて接合する場合の接合面3、4の少なくとも片方、好ましくは両方に対してジメチルホルムアミドにメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを混合した混合溶剤を塗布して乾燥させた後に熱融着したものである。
【0026】
遮水シートは表面に砂、泥、油などの汚れが付着していたり、表面が参加して被膜を形成していたりすることがあり、その状態のまま熱融着しても十分な接合強度を得られないことがあったが、前記のように熱可塑性ウレタンからなる遮水シート同士を熱融着にて接合するに際して、接合面3、4に対して、ジメチルホルムアミドにメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを混合した混合溶剤を塗布することによって、表面に付着した汚れを除去することができるのみならず表面を溶解して酸化被膜も除去することができるので、熱融着の接合強度を向上させることができ廃棄物処分場に用いる遮水シートの接合部として十分な接合強度を得ることができる。
【0027】
本発明において、混合溶剤中にジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランが含まれることが必須の要件であるが、それ以外の溶剤が加わることを制限するものではなく、前記必須の溶剤を含んでいれば本発明の範囲である。また、ジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランは15:85〜80:20の範囲であることが好ましい。
【0028】
混合溶剤中にジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを有することによって前記のような汚れや酸化被膜を除去する効果が十分に得られなくなる。また、ジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランの比率でジメチルホルムアミドの割合が15%を切ると、遮水シートの表面を十分に溶解することができなくなるので接合強度を向上させる効果が少なくなる。逆にメチルエチルケトンの割合が20%を切ると混合溶剤を塗布した後の乾燥時間が長くなってしまうので好ましくない。乾燥時間の長さなど作業性も含めると更に好ましい範囲はジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランは15:85〜50:50である。また乾燥時間を短くして作業性をより高いものとするには15:85〜40:60の範囲であることが好ましい。
【0029】
混合溶剤の塗布は接合面3、4に刷毛や布などを用いて行なうことができる。汚れを取り除くために混合溶剤に浸した布で接合面3、4を拭ったり、接合面3、4に混合溶剤を塗布した後に布で拭ったりすることは必ずしも必須ではなく、混合溶剤を塗布して乾燥させるだけでも熱融着の接合強度を向上させる効果が認められる。
【0030】
混合溶剤を塗布した後の乾燥の程度は、十分に乾燥させてしまうことがその後の熱融着を行なう上で望ましいが、乾燥に要する時間は気温や混合溶剤の調整等によって変化するものであり、高い気温や乾燥しやすい溶剤の調整で乾燥時間が短くなる。熱融着の際に熱風による加熱を行なうことから、条件によっては別途乾燥時間を設けなくとも熱融着の際の熱風により十分な乾燥が行なえ、そのような場合は熱風による乾燥も本発明の接合方法における乾燥の工程に相当するものである。もちろん送風機や団扇等で風を送り込んで強制的に乾燥させることも可能であり、乾燥時間を短縮することができる。また、湿度の高い時期には結露が発生しやすいが結露水を乾燥させることもできる。
【0031】
遮水シート1、2は熱可塑性ウレタンの組成物からなるものであり、熱可塑性ウレタンとしては少なくとも1分子中に2個以上の活性水素を有するポリエステルポリオールやポリエーテルポリエーテルからなるポリオールと、ポリイソシアネートから得られる直鎖状のもので、平均分子量10〜20万のものが挙げられる。
【0032】
例えば、長鎖ジポリオール、短鎖ジポリオール、そしてジイソシアネートから得られる直鎖状の熱可塑性ウレタンがあり、この場合には、長鎖ジポリオールはエラストマーのソフトセグメントになり、ジイソシアネートと短鎖ジポリオールはハードセグメントを形成する。
【0033】
ポリオールは、エチレンングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、トリメチロールプロパン等のグリコール類、グリセリン等のトリオール類等の短鎖ポリオール類、またポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレンプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール、またポリ(3−メチルペンタンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ(ヘキサンアジペート)ジオール等のポリエステルポリオール、あるいはポリブタジエンポリオール等の長鎖ポリオールなどが挙げられる。これらの一種または二種以上の混合物として用いられる。
【0034】
また、ポリイソシアネートは、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、公知の方法で液状化した液状ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、トリレンジイソシアネートの粗製物(クルードTDI)、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは一種または二種以上混合して使用することができる。
【0035】
本発明で使用する熱可塑性ウレタンエラストマーは、ポリエステルタイプでもポリエーテルタイプでも特に限定されるわけではなくいずれも使用することができるが、耐加水分解性が大きく、低温でも柔軟性が大きい、そして微生物分解の耐性が大きいポリエーテルタイプが遮水シートとして好ましい。
【0036】
そして、上記熱可塑性ウレタンエラストマーは、廃棄物最終処分場に用いる遮水シートにするために通常は紫外線吸収剤、酸化防止剤、カーボンブラックを添加して使用する場合が多い。
【0037】
上記熱可塑性ウレタンに添加される紫外線吸収剤としては、2,2’−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系有機化合物、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−メチル−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロ−フタルイミジルメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系有機化合物、2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリルなどのシアノアクリレート系有機化合物、〔2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)〕−2−エチルヘキシルアミン−ニッケルなどの金属錯塩等が挙げられる。
【0038】
上記紫外線吸収剤の添加量は、0.1〜1.0重量%であり、0.1重量%未満の場合には紫外線の吸収が不充分であり、一方1.0重量%を越えると、遮水シート表面のブルーム等によって接着時における熱融着性が阻害される。
【0039】
また、補強剤としてカーボンブラック2〜10重量%が添加される。他に、酸化防止剤を添加してもよい。
【0040】
熱融着作業は図2にも示すように熱風発生機5を用いて、混合溶剤を塗布して乾燥させた接合面を加熱しつつ接合面3、4同士を重ね合わせて、ローラー(図示しない)などを用いて転圧することによって行なうことができる。
【0041】
次に本発明の実施例と比較例とを挙げて比較試験を行なってみた。もちろん本発明は以下の実施例の形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
熱可塑性ウレタンからなる1.5mm厚みの遮水シート(三ツ星ベルト社製)を用いて接合面にジメチルホルムアミド(DMF):メチルエチルケトン(MEK)が20:80の混合溶剤を刷毛で塗布して乾燥させた後に熱風発生機で接合面を加熱して熱融着による接合を行ない、その剥離強度を測定した。剥離強度の測定はJIS K 6850に準じて試験片は25mm幅短冊状、引張速度50mm/minで行なった。また混合溶剤を塗布してから乾燥までに要する時間を測定した。乾燥完了の判断は指触にて行なった。その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0043】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):メチルエチルケトン(MEK)が50:50の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0044】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):メチルエチルケトン(MEK)が75:25の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0045】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):テトラヒドロフラン(THF)が20:80の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0046】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):テトラヒドロフラン(THF)が50:50の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【実施例6】
【0047】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):テトラヒドロフラン(THF)が75:25の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【比較例1】
【0048】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):メチルエチルケトン(MEK)が10:90の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【比較例2】
【0049】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF):テトラヒドロフラン(THF)が10:90の混合溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度および混合溶剤が乾燥するのに要する時間を測定した。その結果を表1に示す。
【比較例3】
【0050】
接合面に塗布する溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF)単独の溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【比較例4】
【0051】
接合面に塗布する溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)単独の溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【比較例5】
【0052】
接合面に塗布する溶剤としてメタノール単独の溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【比較例6】
【0053】
接合面に塗布する溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)単独の溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【比較例7】
【0054】
接合面に塗布する溶剤としてトルエン単独の溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【比較例8】
【0055】
接合面に塗布する溶剤としてアセトン単独の溶剤を用いた以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【比較例9】
【0056】
接合面への溶剤の塗布を行なわなかった以外は実施例1と全く同様にして接合を行ない、剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1の結果からわかるように溶剤により塗布を行なわなかった比較例9と比べると溶剤を塗布したもの(比較例3〜8)は剥離強度が向上していることがわかるが、ジメチルホルムアミド(DMF)とメチルエチルケトン(MEK)もしくはテトラヒドロフラン(THF)の混合溶剤を用いた実施例1〜6では更に大きな値を示しており、本発明の効果を確認することができた。
【0060】
さらに実施例1〜6の中で混合溶剤を塗布した後に乾燥するまでの時間を比較するとジメチルホルムアミドの比率の少ない実施例1、2、3、4において、更にその中でも実施例1、2において乾燥時間が短くなることがわかり、作業性に優れていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は廃棄物処分場や貯水池などに用いられる熱可塑性ウレタン遮水シートにおいて漏水の問題の発生しない接合方法として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の接合方法により遮水シートを接合するところの断面図である。
【図2】熱融着しているところの斜視概要図である。
【図3】本発明により接合後の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 遮水シート
2 遮水シート
3 接合面
4 接合面
5 熱風発生機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンからなる遮水シート同士を熱融着する遮水シートの接合方法において、少なくとも片方の遮水シートの接合面に対して、ジメチルホルムアミドにメチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを混合した混合溶剤を塗布して乾燥させた後に接合面同士を熱融着することを特徴とする遮水シートの接合方法。
【請求項2】
混合溶剤中のジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランの比が15:85〜80:20の範囲内である請求項1記載の遮水シートの接合方法。
【請求項3】
混合溶剤中のジメチルホルムアミド:メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランの比が15:85〜50:50の範囲である請求項1記載の遮水シートの接合方法。
【請求項4】
混合溶剤を塗布した後の乾燥工程として風を吹き付けることにより強制乾燥を行なう請求項1〜3記載の遮水シートの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−76289(P2006−76289A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228842(P2005−228842)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】