説明

遮水壁、二重遮水壁、床版一体遮水壁及び遮水壁の構築方法

【課題】曲げによる引張荷重が作用してもクラックの発生、成長が抑制される遮水壁を提供する。
【解決手段】遮水壁10は、汚染土12の周囲を地盤改良体14で構築された壁体で囲む構成とされている。地盤改良体14は、原位置の地盤18(非汚染土のもの)とセメントミルクを、オーガで混合攪拌して構築されている。このとき、隣接する地盤改良体14と外周の一部をオーバラップさせて一体化され、遮水性能を備えた連続壁体を形成している。地盤改良体14の下部14Dは、汚染土12の下層にある遮水層16に根入れされ、頭部14Uは汚染土12の上面12Uより高く形成されている。地盤改良体14には、ポリプロピレン繊維22が均一に混入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水壁、二重遮水壁、床版一体遮水壁及び遮水壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染土を除去せずに、外周を取り囲んで原位置で封じ込めるには、遮水性能の高い鋼製の矢板壁や、鉄筋コンクリート造の連続地中壁が遮水壁として広く用いられていた。しかし、近年の地盤改良体の施工技術、品質の向上を背景に、原位置の地盤とセメントミルクを混合攪拌した地盤改良体で構築した連続地中壁を、遮水壁として利用する技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に示す地盤改良体は、図13に示すように、汚染土70の周囲を側方から囲む側壁部72と、汚染土70の下方と上方に平板状に構築された底壁部74と天井壁部76を有し、底壁部74の端部を側壁部72の下部と接合し、天井壁部76の端部を側壁部72の上部と接合している。即ち、汚染土70の四周を地盤改良体72、74、76で囲み、汚染土70を封じ込めている。
【0004】
このとき、透水係数が1.0×10−6cm/sec以下となるように地盤改良体の圧縮強度を高くし、かつ地盤改良体の厚さを0.5m以上とすることで、所要とされる遮水性能(非特許文献1参照)を確保している。
【0005】
しかし、地盤改良体は引張強度が低いため、地震荷重等の水平荷重による曲げにより引張力が作用した場合、外周面にクラックが発生する。特許文献1に示す地盤改良体は、クラックの進行を抑制するための配慮がなされていないため、クラックが進行して遮水壁を横断し遮水性能が維持できなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−298831号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】土壌環境センター発行:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説、104頁、2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実に鑑み、曲げによる引張荷重が作用してもクラックの発生、成長及び横断が抑制される遮水壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係る遮水壁は、汚染土を囲み、遮水層に到達する深さまで構築された地盤改良体と、前記地盤改良体が曲げによる引張力を受けたとき、前記地盤改良体のクラックが発生する部分に混入された繊維と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、地盤改良体が遮水層に到達する深さで汚染土を囲み、遮水壁が形成されている。これにより、遮水壁と遮水層で汚染土を封じ込めることができる。遮水壁は、原位置の地盤とセメントミルクで構築されており、資源の有効活用が図れる。
【0011】
また、地盤改良体のクラックが発生する部分には、繊維が混入されている。地盤改良体が地震等の水平荷重による曲げにより引張力を受けたとき、地盤改良体に混入された繊維が引張力に抵抗する。この繊維の抵抗により、地盤改良体の表面でのクラックの発生、及びクラックの内部への成長が抑制される。これにより、遮水壁のクラックによる漏水が抑制され、遮水壁の遮水性能が維持される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遮水壁において、前記繊維が、前記地盤改良体の下部又は上部に混入されていることを特徴としている。
引張力が大きいと予測される部位に繊維を混入することで、効果的に地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制することができる。地盤改良体に大きな引張力が作用すると考えられる部位は、地下水の水位や周囲に建てられた構造物の荷重の条件等により異なる。
【0013】
例えば、地下水の水位が高い場合には、地盤改良体の下部に水位に応じた水圧が加わり、大きな引張力が作用する。一方、構造物が近くに建てられている場合には、構造物の荷重が地盤改良体の上部に作用し、大きな引張力が作用する。また、大きな地震荷重を想定する場合には、地盤改良体の全長に渡り大きな引張力が作用する。これらの条件を把握して、必要な部位に繊維を混入させる必要がある。
繊維を混入させることにより、大きな引張力が想定される部位の靭性が強化され、地盤改良体へのクラックの発生、クラックの成長を抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遮水壁において、前記繊維は、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維であり、前記ポリプロピレン繊維が前記地盤改良体に体積比で0.4〜2.0%の範囲内で混入されていることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維が、体積比で0.4〜2.0%の範囲内で地盤改良体に混入されている。
適切な寸法で、適切な量が混入されたポリプロピレン繊維が引張力に抵抗することにより、地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る二重遮水壁は、汚染土を囲み、遮水層に到達する深さまで構築された地盤改良体と、前記地盤改良体を囲み、前記遮水層に到達する深さまで構築された外周部地盤改良体と、前記地盤改良体又は前記外周部地盤改良体の少なくとも一方が曲げによる引張力を受けたとき、前記地盤改良体又は前記外周部地盤改良体の少なくとも一方のクラックが発生する部分に混入された繊維と、を有することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、地盤改良体が遮水層に到達する深さで汚染土を二重に囲み、二重遮水壁が形成されている。これにより、二重遮水壁と遮水層で汚染土を封じ込めることができる。遮水壁は、原位置の地盤とセメントミルクで構築されており、資源の有効活用が図れる。
【0018】
そして、二重遮水壁のうち、内側の地盤改良体又は外側の外周部地盤改良体の少なくとも一方に繊維が混入されている。これにより、二重遮水壁が地震等の水平荷重による曲げにより引張力を受けたとき、地盤改良体又は外周部地盤改良体の少なくとも一方に混入された繊維が引張力に抵抗する。この繊維の抵抗により、地盤改良体又は外周部地盤改良体の少なくとも一方の表面でのクラックの発生、内部へのクラックの成長が抑制される。
【0019】
これにより、二重遮水壁のクラックによる漏水が抑制され、二重遮水壁の遮水性能が維持される。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の二重遮水壁において、前記繊維が、前記地盤改良体又は前記外周部地盤改良体の少なくとも一方の下部又は上部に混入されていることを特徴としている。
【0021】
二重遮水壁においても、引張力が大きいと予測される部位に繊維を混入することで、効果的に地盤改良体又は外周部地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0022】
地盤改良体又は外周部地盤改良体に大きな引張力が作用すると考えられる部位は、例えば地下水の水位が高い場合には、水位に応じた水圧が加わる地盤改良体又は外周部地盤改良体の下部である。構造物が近くに建てられている場合には、構造物の荷重が作用する地盤改良体又は外周部地盤改良体の上部である。また、大きな地震荷重を想定する場合には、地盤改良体又は外周部地盤改良体の全長に渡り大きな引張力が作用する。これらの条件を把握して、必要な部位に繊維を混入させる必要がある。
繊維を混入させることにより、大きな引張力が想定される部位の靭性が強化され、地盤改良体又は外周部地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制できる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の二重遮水壁において、前記繊維は、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維であり、前記ポリプロピレン繊維が前記外周部地盤改良体に体積比で0.4〜2.0%の範囲内で混入されていることを特徴としている。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維が、体積比で0.4〜2.0%の範囲内で外周部地盤改良体に混入されている。
適切な寸法で、適切な量が混入されたポリプロピレン繊維が引張力に抵抗することにより、地盤改良体又は外周部地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明に係る床版一体遮水壁は、汚染土を囲み、前記汚染土の最深部より深い深度まで構築された第1地盤改良体と、前記第1地盤改良体が囲む範囲で前記汚染土の最深部の下方に平板状に設けられ、周囲が前記第1地盤改良体の下部と接合された第2地盤改良体と、前記第1地盤改良体又は前記第2地盤改良体の少なくとも一方が曲げによる引張力を受けたとき、前記第1地盤改良体又は前記第2地盤改良体の少なくとも一方のクラックが発生する部分に混入された繊維と、を有することを特徴としている。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、汚染土が床版一体遮水壁で、側方と下方の3方向から囲まれている。これにより、汚染土の下方に遮水層がなくても、汚染土を地盤改良体で封じ込めることができる。遮水壁は、原位置の地盤とセメントミルクで構築されており、資源の有効活用が図れる。
【0027】
また、床版一体遮水壁が、地震荷重等の水平荷重による曲げにより引張力を受けたとき、第1地盤改良体又は第2地盤改良体の少なくとも一方に混入された繊維が、引張力に抵抗する。この繊維の抵抗により、第1地盤改良体又は第2地盤改良体の少なくとも一方の表面でのクラックの発生、内部へのクラックの成長が抑制される。
これにより、床版一体遮水壁のクラックによる漏水が抑制され、床版一体遮水壁の遮水性能が維持される。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の床版一体遮水壁において、前記繊維が、前記第1地盤改良体と前記第2地盤改良体の接合部、又は前記第1地盤改良体の上部に混入されていることを特徴としている。
【0029】
床版一体遮水壁においても、引張力が大きいと予測される部位に繊維を混入することで、効果的に地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0030】
床版一体遮水壁に地震荷重等の大きな引張力が作用すると考えられる部位は、例えば地下水の水位が高い場合には、水位に応じた水圧が加わる第1地盤改良体と第2地盤改良体の接合部である。構造物が近くに建てられている場合には、構造物の荷重が作用する第1地盤改良体の上部である。また、大きな地震荷重を想定する場合には、地盤改良体の全長に渡り大きな引張力が作用する。これらの条件を把握して、必要な部位に繊維を混入させる必要がある。
繊維を混入させることにより、大きな引張力が想定される部位の靭性が強化され、床版一体遮水壁へのクラックの発生、成長が抑制される。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の床版一体遮水壁において、前記繊維は、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維であり、前記ポリプロピレン繊維が前記第1地盤改良体及び前記第2地盤改良体に、体積比で0.4〜2.0%の範囲内で混入されていることを特徴としている。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維が、体積比で0.4〜2.0%の範囲内で床版一体遮水壁を構成する地盤改良体に混入されている。
適切な寸法で、適切な量が混入されたポリプロピレン繊維が引張力に抵抗することにより、地盤改良体へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明に係る遮水壁の構築方法は、汚染土の周囲の地盤を、遮水層に到達する深さまでオーガを下降させながら前記地盤を掘削するオーガ下降工程と、前記オーガを引き上げながら前記地盤を攪拌するオーガ上昇工程と、前記オーガ下降工程又は前記オーガ上昇工程の少なくとも1つの工程において、前記オーガの先端からセメントミルクを吐出させながら、前記オーガで前記地盤と前記セメントミルクを攪拌混合させ、地盤改良体を構築する地盤改良体構築工程と、前記セメントミルクの吐出開始前、前記セメントミルクの吐出開始と同時、又は前記セメントミルクの吐出開始後に、前記地盤又は前記セメントミルクに繊維を投入し、前記オーガで、前記地盤、前記セメントミルク及び前記繊維を攪拌混合させ、前記地盤改良体が曲げによる引張力を受けたとき、前記地盤改良体のクラックが発生する部分に前記繊維を混入させる繊維混入工程と、を有することを特徴としている。
【0034】
請求項10に記載の遮水壁の構築方法によれば、原位置の地盤とセメントミルクで遮水壁が構築され、遮水壁を構成する地盤改良体に繊維を混入させる。このとき、地盤改良体のクラックが発生する部分に繊維を混入することで、繊維が曲げによる引張力に抵抗する。これにより、地盤改良体の表面でのクラックの発生、クラックの内部への成長が抑制される。クラックの発生、成長が抑制されることで、遮水壁の遮水性能が維持される。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、上記構成としてあるので、遮水壁に曲げによる引張荷重が作用してもクラックの発生、成長が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る遮水壁の基本構成を示す斜視図及び断面図である。
【図2】地盤改良体に混入させる繊維の模式図である。
【図3】本発明の遮水壁を構成する地盤改良体に混入させる繊維の模式図である。
【図4】本発明の繊維を混入させた遮水壁の効果を検証する実験方法を示す図である。
【図5】本発明の繊維を混入させた遮水壁の効果を検証する実験の結果を示す図である。
【図6】繊維を混入させた地盤改良体を構築する掘削装置の構成図である。
【図7】繊維を混入させた地盤改良体の構築手順を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る遮水壁の第1展開例、及び第2展開例を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る二重遮水壁の基本構成を示す斜視図及び断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る二重遮水壁の第1展開例、及び第2展開例を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る床版一体遮水壁の基本構成を示す斜視図及び断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る床版一体遮水壁の第1展開例、及び第2展開例を示す断面図である。
【図13】従来例の遮水壁の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係る遮水壁10は、地盤改良体14の壁体が汚染土12の周囲を囲む構成とされている。
【0038】
汚染土12は、例えば、既に撤去された工場20から排出された有害物質が含まれた土壌(汚染水も含む)であり、根本的な除去処理がなされるまで、周囲に拡散しないよう、遮水壁10で原位置に封じ込められている。
【0039】
地盤改良体14は、原位置の地盤18(非汚染土のもの)とセメントミルクを、後述するオーガで混合攪拌して構築されており、隣接する地盤改良体14と外周の一部をオーバラップさせて一体化され、遮水性能を備えた連続壁体を形成している。
【0040】
地盤改良体14の下部14Dは、汚染土12の下層にある遮水層16に根入れされ、頭部14Uは汚染土12の上面12Uより高く形成されている。これにより、汚染土12を、側面と底面から囲むことができる。なお、汚染土12のみならず汚染水についても、地盤改良体14と遮水層16で封じ込めている。このため、遮水層16の内部には、降雨で汚染水が地盤改良体14の頭部14Uから溢れ出ることのないように、図示しない排水ポンプが設けられ水位を調節している。
【0041】
地盤改良体14は、汚染水を封じ込めるに、透水係数が1.0×10−6cm/sec以下となるように、地盤改良体14の圧縮強度が高くされている。更に、地盤改良体の厚さは0.5m以上で構築されている(非特許文献1参照)。
【0042】
また、図1(B)に示すように、地盤改良体14には、全長に渡り補強用の繊維22が混入されている。これにより、地盤改良体14が地震時の水平力等により曲げによる引張力を受けたとき、地盤改良体14の表面へのクラック(図示は省略)の発生、及び発生したクラックの成長が抑制される。
【0043】
クラックは、地盤改良体14の表面に留まっている場合には問題はない。しかし、地震が繰返し発生した場合等、クラックが地盤改良体14の中心部へ向けて成長し、中心部を通過して反対側の表面まで横断した場合には、汚染水がクラックを通して遮水壁10の外へ漏れ出てしまう。このため、クラックの発生、成長を抑制することが重要となる。
【0044】
クラックの発生、成長を抑制するために混入する繊維22は、破断強度が200〜1200MPaでヤング係数が2〜15GPaの機械的性質を有するものが望ましい。例えば、ポリプロピレン繊維が該当する。
【0045】
また、繊維22の直径は10〜50μmの範囲内が望ましい。これは、地盤改良体14と繊維22の接触を十分に確保するためには、ある程度の大きさが必要なこと、一方、繊維22の直径が大きくなり過ぎると、繊維22を屈曲させて相互に絡み合わせるのが困難になるため、大きさに限界があるためである。
【0046】
なお、繊維23の直径が適切な大きさであっても、図2(A)に示すように、形状が直線状の繊維23では、繊維23と繊維23が相互に絡み合うことはない。このため、地盤改良体14と繊維23の間に十分大きな摩擦抵抗を得ることはできない。この結果、図2(B)に示すように、繊維23が混入されていても、地盤改良体14の表面でのクラック36の発生、クラック36の成長を抑制できない。
【0047】
一方、図3(A)に示すように、屈曲された形状の繊維22では、繊維22と繊維22が相互に絡み合うことが容易となり、引抜時の摩擦抵抗を増すことができる。この結果、図3(B)に示すように、地盤改良体14と繊維23の間に十分大きな摩擦抵抗が作用する。この摩擦抵抗により、地盤改良体14の表面でのクラック36の発生、クラック36の成長を抑制できる。
【0048】
なお、繊維22が屈曲された形状となり、地盤改良体14と繊維22の間に十分大きな摩擦抵抗を作用させるためには、アスペクト比(繊維の太さに対する長さの比)は大きいほど有利である。具体的には、アスペクト比は1000以上が望ましい。
【0049】
更に、繊維22の両端部に、繊維の径より10ミクロン以上大きい、こぶ状又は塊状のアンカー部を設ければ、地盤改良体14と繊維23の間の摩擦抵抗を、更に増大できる。
【0050】
地盤改良体14と繊維22の混合割合は、アスペクト比を1000以上に調整した繊維22を、地盤改良体14との体積比にして0.4〜2.0%の範囲内で混入するのが望ましい。これにより、繊維22が引張力に抵抗し、地盤改良体14の表面でのクラック36の発生、成長を抑制できる。
【0051】
次に、繊維の混入効果を実験した結果について説明する。
実験は、繊維を混入させた試験体と繊維を混入していない試験体を、同じ条件で構築した地盤改良体から切り出し、それぞれに1軸圧縮試験を行い、特性を比較する方法で実施した。
【0052】
繊維を混入させた試験体50、51、52は、以下の要領で作成した。
【0053】
図4(A)に示すように、図示しない掘削ロッドを用いて、原地盤の掘削を行いながら、杭孔56の中央に繊維混じり砂54とセメントミルクを投入し、繊維22、セメントミルク及び地盤を混合攪拌して、地盤改良体58を構築した。
【0054】
次に、図4(B)に示すように、繊維22が混入された3つの地盤改良体58から、それぞれ1個ずつ、所定寸法の試験体50、51、52を切り出した。
なお、繊維を混入していない試験体50N、51N、52N(図示せず)は、繊維を投入せず、セメントミルク及び地盤のみを攪拌混合し、構築された地盤改良体から同じ要領で切り出した。
【0055】
図5に、1軸圧縮試験を行った結果を示す。横軸はひずみ(%)であり、縦軸は1軸圧縮強度(Kgf/cm)で示している。
【0056】
図5(A)に示す特性A、B、Cは、繊維22を混入させた試験体50、51、52の特性であり、図5(B)に示す特性AN、BN、CNは、繊維22が混入されていない試験体50N、51N、52Nの特性を示している。
【0057】
図5(A)と図5(B)を比較すると、繊維22を混入させた試験体50、51、52の方が、繊維22が混入されていない試験体50N、51N、52Nより、いずれの試験体においても、1軸圧縮強度が5Kgf/cm程度高くなっている。また、ひずみも1.0%程度大きい範囲まで計測されている。このことから、1軸圧縮強度が増していると共に、靭性も増強されているといえる。この差が繊維22による地盤の改良効果であることが分かる。
【0058】
また、3つの試験体50、51、52のバラツキについて検討すると、いずれも、概ね同じ傾向を示していることから、中央に投入した繊維22が、3本の地盤改良体58にほぼ一様に混入されているといえる。
【0059】
次に、繊維が混入された地盤改良体の構築方法について説明する。
図6に示すように、掘削装置60は、下端にオーガ部62が取り付けられた2本のロッド64A、64Bを有し、2本のロッド64A、64Bの間には、繊維22を供給する供給管61が取り付けられている。
【0060】
供給管61の内部には繊維22を送る貫通孔が設けられ、上端部は図示しない繊維供給部に接続され、供給管61の下端部の噴射口61Eから、必要に応じて、繊維22を空気圧で噴射する。
【0061】
ロッド64A、64Bの下端部には、セメントミルクを吐出する吐出口65A、65Bが形成されている。セメントミルクは、ロッド64A、64Bの内部を流下して供給される。
【0062】
ロッド64A、64Bは、上下2箇所に配置された固定部材66U、66Lにより所定距離をあけて回転可能に保持されている。また、ロッド64A、64Bの側壁から半径方向外側に向けて、傾斜面を有する複数の攪拌翼67と、複数の掘削翼68が設けられている。掘削翼68には、ロッド64A、64Bの回転時に地盤18を掘削するための刃部を備えた掘削ビット54が設けられている。
【0063】
図7(a)〜(e)は、掘削装置60で、地盤改良体14を構築する場合の施工手順の一例を示している。
【0064】
図7(a)に示すように、まず、掘削装置60を地盤18上に配置する。
次に、図7(b)に示すように、掘削装置60の駆動装置63を駆動させ、ロッド64A、64Bを旋回させると共に駆動装置63及びオーガ部62を降下させながら、掘削翼68の掘削ビット69によって縦孔78を削孔する。
【0065】
また、このオーガ部62による縦孔78の削孔と共にポンプを作動させ、ロッド64A、64Bの吐出口65A、65Bからセメントミルクを吐出させる。
【0066】
オーガ部62による縦孔78の削孔、及びロッド64A、64Bから地盤改良範囲へのセメントミルクの吐出は、オーガ部62(吐出口65A、65B)が地盤改良体の構築深度に到達するまで行う。このときオーガ部62の攪拌翼67によって、原地盤18の土壌とセメントミルクとが攪拌混合される。
【0067】
ここまでのオーガ下降工程では、オーガ部62を下降させながら、オーガ部62が地盤改良体の構築深度に到達するまで原地盤18をオーガ30で削孔すると共に、ロッド64A、64Bの吐出口65A、65Bからセメントミルクを吐出させて、セメントミルクと原地盤18の土壌をオーガ部62によって攪拌混合させる。
【0068】
次に、図7(c)に示すように、オーガ部62が地盤改良体の構築深度に到達した後に、駆動装置63を上昇させる。これによって、オーガ部62が上昇して引き抜きが開始される。なお、ロッド64A、64Bは継続して旋回している。
【0069】
次に、図7(d)に示すように、駆動装置63を引き上げてオーガ部62を上昇させながら、供給管61の噴射口61Eから繊維22を噴射する。繊維22の噴射は、遮水層16に到達してからオーガ部62が地盤18の地上面上方に完全に引き上げられるまでの間継続する。このとき、ロッド64A、64Bは継続して旋回しているので、繊維22とセメントミルクと原地盤18の土壌とがオーガ部62の攪拌翼67によって均等に攪拌混合される。
【0070】
ここまでのオーガ上昇工程では、オーガ部62を上昇させながら、繊維22を供給管61の噴射口61Eから空気圧で噴射させている。この繊維22とセメントミルクと原地盤18の土壌とをオーガ部62によって攪拌混合させている。
【0071】
次に、図7(e)に示すように、オーガ部62が地盤18の地上面上方に完全に引き上げられるタイミングで、ロッド64A、64Bの旋回を停止させると共に、セメントミルクの吐出及び繊維22の噴射を停止させる。
【0072】
上述したように、掘削装置60に供給管61を取り付け、地盤18の掘削時に、ゼメントミルクと共に供給管61から繊維22を噴射させ、オーガで繊維22とセメントミルクと原地盤18を攪拌混合させれば、地盤改良体に繊維を混入させることができる。
【0073】
しかし、この方法に限定されるものではなく、下記に示す方法でもよい。
即ち、汚染土12の周囲の地盤18を、遮水層16に到達する深さまでオーガを回転させながら下降させて掘削するオーガ下降工程と、オーガを回転させながら引き上げ、掘削された地盤18を攪拌するオーガ上昇工程のいずれかの時点において、掘削装置の構造や地盤状況等に応じて、セメントミルクの注入時期、及び繊維の投入時期を決定する。
【0074】
例えば、オーガ下降工程又はオーガ上昇工程の少なくとも1つの工程において、地盤改良体生成工程を実行する。即ち、オーガ下降工程又はオーガ上昇工程の少なくとも1つの工程において、オーガの先端からセメントミルクを吐出させながら、オーガで地盤とセメントミルクを攪拌混合させ、地盤改良体を構築する。
【0075】
また、セメントミルクの吐出開始前、セメントミルクの吐出開始と同時、又はセメントミルクの吐出開始後のいずれかの時期において、繊維22を投入し、繊維混入工程を実行する。繊維混入工程は、地盤又はセメントミルクに繊維を投入し、オーガで、地盤、セメントミルク及び繊維を攪拌混合させる。
【0076】
具体的には、予めセメントミルクに繊維22を混入しておき、オーガ下降工程又はオーガ上昇工程の少なくとも1つの工程でセメントミルクと繊維22を同時に吐出する方法や、予め、オーガ下降工程で繊維22を噴射させながら地盤を掘削し、オーガ上昇工程でセメントミルクを注入する方法等がある。
【0077】
次に、遮水壁10の展開例について説明する。
図1では、繊維22を地盤改良体14の全体に均一に混入させている。このように、繊維22を全体に均一に混入する方法は、大きな地震荷重が発生し、地盤改良体14の全長に渡り大きな引張力が作用すると予測される場合に効果的である。
【0078】
一方、引張力が大きく作用すると予測される部位にのみ、繊維22を混入する方法もある。これにより、安価で効果的に地盤改良体のクラックを抑制することができる。ここに、地盤改良体に大きな引張力が作用すると考えられる部位は、例えば、地下水の水位や周囲に建てられた構造物による荷重等の条件により異なる。
【0079】
図8(A)に第1の展開例を示す。汚染土12を囲んで遮水壁24が設けられている。遮水壁24は地盤改良体25で構成され、地盤改良体25の下部には、繊維22が混入されている。
【0080】
汚染土12を囲む地盤18は、地下水の水位が変化する地盤であり、地盤改良体24の下部に加わる水圧P1が水位により変化する。遮水壁10の内部の水位による水圧P2と、遮水壁10の外部の水圧P1の差(P1−P2)が大きくなる場合には、地盤改良体14の下部に曲げによる大きな引張力が作用する。このとき、地盤18と遮水層16の境に最大の引張力が作用する。
【0081】
このため、地盤改良体14の下部(地盤18と遮水層16の境を中心として、下方の根入れ部方向及び上方の杭頭側の所定の範囲)に繊維22を混入している。繊維22を混入させることにより、曲げによる引張力が想定される部位の靭性が強化され、地盤改良体14へのクラックの発生、及び成長を抑制することができる。この結果、遮水性能を維持することができる。
【0082】
また、図8(B)に第2の展開例を示す。汚染土12を囲んで遮水壁26が設けられている。遮水壁26は地盤改良体27で構成され、地盤改良体27の上部には、繊維22が混入されている。
【0083】
汚染土12を囲む地盤18には、構造物28が建てられている。このため、構造物28の荷重が地盤改良体27の上部に、曲げによる引張力P3を作用させる。この引張力が作用する上部に繊維22を混入し、地盤改良体27の靭性を高めている。
【0084】
このように、クラックが発生すると予測される部分に繊維22を混入させることにより、曲げによる引張力が想定される部位の靭性が強化され、クラックの発生、及び成長を抑制することができ、遮水性能を維持することができる。
【0085】
(第2の実施の形態)
図9に示すように、第2の実施の形態に係る二重遮水壁30は、汚染土12を囲み、遮水層16に到達する深さまで壁状に構築された地盤改良体32を有している。更に、地盤改良体32の外側には、地盤改良体32を囲み、遮水層16に到達する深さまで構築された外周部地盤改良体33が構築されている。
【0086】
地盤改良体32と外周部地盤改良体33は、いずれも、原位置の地盤18とセメントミルクで構築されており、外周部の一部がオーバラップされ、一体化されている。外周部地盤改良体33には繊維22が混入されている。繊維22は、外周部地盤改良体33に均一に、かつ全長に渡り混入されている。
【0087】
これにより、二重遮水壁30と遮水層16で、汚染土12を側方と底方から封じ込めることができる。また、原位置の地盤18が活用でき、資源の有効活用が図れる。
【0088】
二重遮水壁30のうち、外側の外周部地盤改良体33には、繊維22が混入されているため、二重遮水壁30が地震等による引張力を受けたとき、外周部地盤改良体33に混入された繊維22が引張力に抵抗する。この結果、万一、地盤改良体32にクラックが進行して外周部地盤改良体32を横断しても、外周部地盤改良体33へのクラックの発生、進行が抑制される。即ち、二重遮水壁30全体として捉えた場合、二重遮水壁30の遮水性能が維持される。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0089】
次に、二重遮水壁30の展開例について説明する。
図10(A)に第1の展開例を示す。汚染土12を囲む二重遮水壁38は、地盤改良体32と外周部地盤改良体34を有し、外周部地盤改良体34の下部には繊維22が混入されている。
【0090】
これにより、上述したように、地盤18において、地下水の水位が変化する場合には、外周部地盤改良体34の下部に、水位に応じた水圧(P1−P2)が加わる。外周部地盤改良体34の、曲げによる大きな引張力が作用すると考えられる下部に繊維22を混入させることにより、効果的に外周部地盤改良体34へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0091】
図10(B)に第2の展開例を示す。汚染土12を囲む二重遮水壁39は、地盤改良体32と外周部地盤改良体35を有し、外周部地盤改良体35の上部には、繊維22が混入されている。
【0092】
これにより、例えば、構造物28が近くに建てられている場合には、上述したように、外周部地盤改良体35の上部に曲げによる引張力P3が作用する。外周部地盤改良体35の大きな引張力が作用すると考えられる上部に繊維22を混入させることにより、効果的に外周部地盤改良体35へのクラックの発生、成長を抑制することができる。
【0093】
以上説明した二重遮水壁30、38、39は、いずれも外周部地盤改良体33、34、35に繊維22を混入させた構成である。しかし、繊維22の混入位置はこれに限定されることはなく、内周部地盤改良体32に繊維22を混入させた構成でもよい。これにより、万一、繊維22を混入させていない外周部地盤改良体33、34、35が破損しても、繊維22を混入させた内周部地盤改良体32へのクラックの発生、成長が抑制され、内周部地盤改良体32が汚染土12の流出を防止する。これにより、二重遮水壁30、38、39の目的を達成することができる。
【0094】
更に、内周部地盤改良体32及び外周部地盤改良体33、34、35の両方に繊維22を混入させてもよい。これにより、より強固な二重遮水壁30、38、39が提供される。
【0095】
また、二重遮水壁30、38、39を構成する内周部地盤改良体32と外周部地盤改良体33、34、35は、外周部の一部をオーバラップさせて構築する例について説明した。しかし、内周部地盤改良体32と外周部地盤改良体33、34、35をオーバラップさせなくてもよい。オーバラップさせなくても、二重構造とすることによる目的は達成されるためである。
【0096】
(第3の実施の形態)
図11(A)に示すように、第3の実施の形態に係る床版一体遮水壁40は、汚染土12の最深部より深い深度において、汚染土12の下方に平板状に構築された短尺地盤改良体42を有している。
【0097】
短尺地盤改良体42は、地盤改良体44と同じ要領で構築されるが、高さを一定の高さHに限定し、汚染土12覆う広さで構築されている。
【0098】
また、通常の地盤改良体44が、汚染土12、及び短尺地盤改良体42の周囲を囲んで構築されている。地盤改良体44の下部と短尺地盤改良体42は接合されている。これにより、汚染土12の下方に遮水層16がなくても、地盤改良体44と短尺地盤改良体42で、汚染土12を側面と底面から囲むことができる。
【0099】
図11(B)の断面図に示すように、床版一体遮水壁40において、地盤改良体44と短尺地盤改良体42には、いずれも、繊維22が全体に混入されている。これにより。地震による引張力が作用したとき、地盤改良体44と短尺地盤改良体42に混入された繊維22が引張力に抵抗し、地盤改良体44と短尺地盤改良体42へのクラックの発生、成長が抑制される。これにより、床版一体遮水壁40の遮水性能を維持することができる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0100】
次に、床版一体遮水壁40の展開例について説明する。
図12(A)に第1の展開例を示す。汚染土12の側面及び下面を囲んで、床版一体遮水壁46が設けられている。床版一体遮水壁46は、短尺地盤改良体42、43と地盤改良体45を有している。ここに、地盤改良体45の下部と短尺地盤改良体42には繊維22が混入され、短尺地盤改良体43には、繊維22が混入されていない。
【0101】
地盤18は、地下水の水位が変化する地盤である。このため、水位が高くなった場合には、水位差に応じた水圧P1−P2が加わり、地盤改良体45と短尺地盤改良体42の接合部には曲げによる大きな引張力が作用する。この引張力が大きく作用する接合部に繊維22を混入することで、効果的に床版一体遮水壁46へのクラックの発生、及び成長を抑制することができる。
【0102】
また、図12(B)に第2の展開例を示す。汚染土12の側面及び下面を囲む床版一体遮水壁48において、地盤改良体47の上部に繊維22が混入されている。一方、短尺地盤改良体43には、繊維22は混入されていない。
【0103】
これにより、上述したように、例えば、構造物28が近くに建てられている場合には、構造物28の荷重が地盤改良体47の上部に曲げによる引張力P3を作用させる。曲げによる引張力が大きく作用する地盤改良体47の上部に繊維22を混入することで、効果的に地盤改良体47へのクラックの発生及び成長を抑制することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 遮水壁
12 汚染土
14 地盤改良体
16 遮水層
22 ポリプロピレン繊維(繊維)
30 二重遮水壁
32 地盤改良体
33 外周部地盤改良体
36 クラック
40 床版一体遮水壁
42 短尺地盤改良体(第1地盤改良体)
44 地盤改良体(第2地盤改良体)
62 オーガ部(オーガ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土を囲み、遮水層に到達する深さまで構築された地盤改良体と、
前記地盤改良体が曲げによる引張力を受けたとき、前記地盤改良体のクラックが発生する部分に混入された繊維と、
を有する遮水壁。
【請求項2】
前記繊維が前記地盤改良体の下部又は上部に混入されている請求項1に記載の遮水壁。
【請求項3】
前記繊維は、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維であり、前記ポリプロピレン繊維が前記地盤改良体に体積比で0.4〜2.0%の範囲内で混入されている請求項1又は2に記載の遮水壁。
【請求項4】
汚染土を囲み、遮水層に到達する深さまで構築された地盤改良体と、
前記地盤改良体を囲み、前記遮水層に到達する深さまで構築された外周部地盤改良体と、
前記地盤改良体又は前記外周部地盤改良体の少なくとも一方が曲げによる引張力を受けたとき、前記地盤改良体又は前記外周部地盤改良体の少なくとも一方のクラックが発生する部分に混入された繊維と、
を有する二重遮水壁。
【請求項5】
前記繊維が、前記地盤改良体又は前記外周部地盤改良体の少なくとも一方の下部又は上部に混入されている請求項4に記載の二重遮水壁。
【請求項6】
前記繊維は、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維であり、前記ポリプロピレン繊維が前記外周部地盤改良体に体積比で0.4〜2.0%の範囲内で混入されている請求項4又は5に記載の二重遮水壁。
【請求項7】
汚染土を囲み、前記汚染土の最深部より深い深度まで構築された第1地盤改良体と、
前記第1地盤改良体が囲む範囲で前記汚染土の最深部の下方に平板状に設けられ、周囲が前記第1地盤改良体の下部と接合された第2地盤改良体と、
前記第1地盤改良体又は前記第2地盤改良体の少なくとも一方が曲げによる引張力を受けたとき、前記第1地盤改良体又は前記第2地盤改良体の少なくとも一方のクラックが発生する部分に混入された繊維と、
を有する床版一体遮水壁。
【請求項8】
前記繊維が、前記第1地盤改良体と前記第2地盤改良体の接合部、又は前記第1地盤改良体の上部に混入されている請求項7に記載の床版一体遮水壁。
【請求項9】
前記繊維は、繊維素材の太さに対する長さの比率が1000以上に調整されたポリプロピレン繊維であり、前記ポリプロピレン繊維が前記第1地盤改良体及び前記第2地盤改良体に、体積比で0.4〜2.0%の範囲内で混入されている請求項7又は8に記載の床版一体遮水壁。
【請求項10】
汚染土の周囲の地盤を、遮水層に到達する深さまでオーガを下降させながら前記地盤を掘削するオーガ下降工程と、
前記オーガを引き上げながら掘削された前記地盤を攪拌するオーガ上昇工程と、
前記オーガ下降工程又は前記オーガ上昇工程の少なくとも1つの工程において、前記オーガの先端からセメントミルクを吐出させながら、前記オーガで前記地盤と前記セメントミルクを攪拌混合させ、地盤改良体を構築する地盤改良体構築工程と、
前記セメントミルクの吐出開始前、前記セメントミルクの吐出開始と同時、又は前記セメントミルクの吐出開始後に、前記地盤又は前記セメントミルクに繊維を投入し、前記オーガで、前記地盤、前記セメントミルク及び前記繊維を攪拌混合させ、前記地盤改良体が曲げによる引張力を受けたとき、前記地盤改良体のクラックが発生する部分に前記繊維を混入させる繊維混入工程と、
を有する遮水壁の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−57334(P2012−57334A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200345(P2010−200345)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】