遮水壁の構築方法およびその方法に用いる施工装置
【課題】遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入し、引き出し端を固定した上でその遮水シートをシートロールから順次引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築する際のシートロールの倒れを防止する。
【解決手段】貫入母機６のリーダマストに、シートロール１を支持するロール貫入ポスト１１を昇降可能に装着し、当該ロール貫入ポスト１１をシートロール１ととともに地中に貫入した上で横行させる。ロール貫入ポスト１１の下端部に横行補助のための回転翼方式の横行補助装置４０を設けておく。ロール貫入ポスト１１の直立度合いの適否を監視しながら、横行補助装置４０からの横行補助力を受けて走行するロール貫入ポスト１１の下端部の動きに貫入母機６そのものの横行動作を同期させる。もって走行中のロール貫入ポスト１１の直立姿勢を維持する。
【解決手段】貫入母機６のリーダマストに、シートロール１を支持するロール貫入ポスト１１を昇降可能に装着し、当該ロール貫入ポスト１１をシートロール１ととともに地中に貫入した上で横行させる。ロール貫入ポスト１１の下端部に横行補助のための回転翼方式の横行補助装置４０を設けておく。ロール貫入ポスト１１の直立度合いの適否を監視しながら、横行補助装置４０からの横行補助力を受けて走行するロール貫入ポスト１１の下端部の動きに貫入母機６そのものの横行動作を同期させる。もって走行中のロール貫入ポスト１１の直立姿勢を維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、地中に遮水シート（止水シート）を主要素とする遮水壁を構築する方法および施工装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
この種の遮水壁の構築に関する技術として特許文献１に記載されたものが提案されている。
【０００３】
この特許文献１に記載された技術では、自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持させてなるロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上でシートロールからの遮水シートの引き出し端を固定し、次いで貫入母機を横行させることで遮水シートをシートロールから自律的に引き出しながら幕状に展開させて地中に遮水壁を構築するようになっている。なお、遮水壁を構築すべき地盤には、予め現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で、水またはセメントミルク等を加えて撹拌混合して、いわゆる泥水状に流動化しておくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００６−２９１４８７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
このような従来の技術では、地中に貫入したシートロールの直立姿勢に保ちながら、遮水シートの全幅にわたって均等に張力を付与して、弛みを生ずることなく上下均等に遮水シートを引き出すことが重要となる。
【０００６】
しかしながら、貫入母機のリーダマストと長尺なロール貫入ポストとの間の昇降案内部の遊びの影響が不可避であることから、貫入母機の横行時に泥水状の地盤の抵抗とも相俟ってロール貫入ポストには倒れまたは傾きが発生する。より具体的には、貫入母機による横行力は地中に貫入したロール貫入ポストの上端部に直接的に作用することから、横行方向においてロール貫入ポストの下端部が上端部よりも遅れ気味となる。そのため、ロール貫入ポストに支持されているシートロールも同様に傾くことになり、シートロールから引き出される遮水シートの上端部ではその張力が適正であっても遮水シートの下端部では弛みが発生し、シートロールからの遮水シートの引き出しが困難となったり、遮水シートが破れたりするなどのトラブルが発生しやすい。
【０００７】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、地中に貫入されたロール貫入ポストの直立姿勢を保ち、遮水シートをシートロールから上下均等に乱れなくスムーズに引き出すことを可能とした遮水壁の構築方法とその方法に用いる施工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１に記載の発明は、遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの引き出し端を固定した上でその遮水シートをシートロールから順次引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築する方法である。
【０００９】
その上で、自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるものとする。その際に、上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けておき、上記ロール貫入ポストの直立度合いの適否を監視しながら、走行補助手段からの走行補助力を受けて走行するロール貫入ポストの下端部の動きと貫入母機そのものの走行動作とを同期させ、もって横行中のロール貫入ポストの直立姿勢を維持するものである。
【００１０】
上記走行補助手段としては、例えば請求項２に記載のように、回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっているものとする。
【００１１】
請求項３に記載の発明は、上記技術を遮水壁を構築するための施工装置として捉えたものであって、遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの引き出し端を固定した上でその遮水シートをシートロールから順次引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築するための施工装置である。
【００１２】
その上で、自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるようになっているとともに、上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けてあり、上記貫入母機の走行時には、走行補助手段がロール貫入ポストの下端部に走行補助力を付与するようになっていることを特徴とする。
【００１３】
この場合に、本発明の目的からして、請求項４に記載のように、上記貫入母機はロール貫入ポストの直立度合いを監視する監視手段を備えていることが望ましい。
【００１４】
また、推力発生手段は、例えば請求項５に記載のように、駆動手段にて回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっているものとする。
【００１５】
また、上記回転翼の空転等を抑制して推進力を効率良く発生させるためには、請求項６に記載のように、回転翼の先端に地盤に食い込む刃先部を設けてあることが望ましい。
【００１６】
さらに、請求項７に記載のように、上記回転翼の最下部をロール貫入ポストの最下部よりもさらに下方に位置させてあることが、推進力を効率良く発生させる上で望ましい。
【００１７】
加えて、上記走行補助手段における駆動手段は、請求項８に記載のように、例えば油圧モータ等の油圧を駆動源とするものとする。
【００１８】
したがって、少なくも請求項１に記載の遮水壁の構築方法では、ロール貫入ポストの直立度合いの適否を監視しながら、走行補助手段からの走行補助力である推進力を受けて走行するロール貫入ポストの下端部の動きに対して、オペレータの操作による貫入母機そのものの走行動作を同期させることにより、走行中のロール貫入ポストの直立姿勢を常に安定して維持することができるようになる。
【発明の効果】
【００１９】
請求項１および請求項３，４に記載の発明によれば、ロール貫入ポストおよぼそのロール貫入ポストに支持されているシートロールの直立姿勢を維持することができるので、遮水シートの弛み発生によってシートロールからの遮水シートの引き出しが困難となることもなければ、遮水シートが破れたりするなどのトラブルの発生がなくなり、遮水壁の構築をスムーズに且つ効率的に行えるようになる。
【００２０】
請求項２，５に記載に発明によれば、走行補助手段は、回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっているので、効果的な走行補助を行うことができる。
【００２１】
請求項６に記載の発明によれば、回転翼の先端に地盤に食い込む刃先部を設けてあることで、回転翼の空転等を未然に防止して、走行補助力としての推進力の発生が安定したものとなる。
【００２２】
請求項７に記載の発明によれば、回転翼の最下部をロール貫入ポストの最下部よりもさらに下方に位置させてあることで、上記と同様に走行補助力としての推進力の発生が安定したものとなることで、より安定した走行補助を行える。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明の実施の形態で使用されるシートロールの分解斜視図。
【図２】図１に示すシートロールの平面説明図。
【図３】図１のシートロールを使用した遮水壁の施工手順を示す概略説明図。
【図４】本発明が前提とする施工装置の概略構造を示す図で、（Ａ）は側面説明図、（Ｂ）は正面説明図。
【図５】図４の状態からロール貫入ポストを地中に貫入した状態を示す図で、（Ａ）は側面説明図、（Ｂ）は正面説明図。
【図６】図４に示すロール貫入ポストの拡大説明図。
【図７】図６のＡ方向拡大矢視図。
【図８】図６のＢ−Ｂ線に沿う拡大断面図。
【図９】図６の下部拡大断面図。
【図１０】図６の上部拡大説明図。
【図１１】図１０に示す上側のグリッパ機構の平面説明図。
【図１２】図１０に示す下側のグリッパ機構の平面説明図。
【図１３】貫入母機の動きを中心とした施工手順の説明図。
【図１４】図１３に続く施工手順の説明図。
【図１５】図１４に続く施工手順の説明図。
【図１６】図４の施工装置でのロール貫入ポストの傾き発生状況を示す説明図。
【図１７】走行補助手段として横行補助装置を装備した施工装置の概略構造を示す説明図。
【図１８】図１７に示した横行補助装置の拡大図で、（Ａ）はその正面図、（Ｂ）は同図（Ａ）の右側面説明図。
【図１９】図１８に示した横行補助装置への油圧供給系を示す説明図。
【図２０】図１，２に示した雄ジョイントと雌ジョイントとの相対位置関係の変形例を示す説明図。
【図２１】走行補助手段としてウインチを用いた場合の施工装置の概略構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【００２４】
図１以下の図面は本発明を実施するためのより具体的な形態を示している。最初に、本発明が前提とする遮水壁の構築のための施工手順について説明する。
【００２５】
ここでは、図１，２に示すように所定幅の強靱な遮水シート（例えば、厚さが数ミリ程度の高密度ポリエチレンシート）Ｓを予めロール状に巻き付けたシートロール１を使用することを前提とし、遮水シート（以下、単に「シート」と言う。）Ｓの巻き取り始端部側にはジョイント部材として剛性があり且つ平面視にて略Ｃ字状をなす雌ジョイント２を、同じくシートＳの巻き取り終端部側にはジョイント部材として丸棒状の雄ジョイント３をそれぞれその全幅にわたり予め固定してあり、雌ジョイント２を芯材としてシートＳを巻き付けてある。なお、雌ジョイント２や雄ジョイント３とシートＳとの結合は、例えば雌ジョイント２または雄ジョイント３を、接着剤を併用しながらシートＳの端部にて袋状に包み込んだ上で溶着部Ｓｗにて溶着してある。
【００２６】
これらの雌ジョイント２と雄ジョイント３は、両者を同一軸線上に並べた上で相対移動させればいわゆる凹凸嵌合して、その状態では径方向に引張力を作用させただけでは容易に離脱しない構造となっている。そして、先にも述べたように、シートロール１は巻き取り始端部側の雌ジョイント２を芯材として用いて、巻き取り終端部側に雄ジョイント３を有する所定長さのシートＳを巻き付けることで構成される。
【００２７】
遮水壁を構築すべき地盤には、予め現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で水またはベントナイト液やセメントミルク等を加えて混合撹拌して、いわゆる泥水状に流動化させておくことが望ましい。
【００２８】
より具体的には、図３の平面図に示すように、遮水壁Ｗを構築すべき地盤には、現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で水またはベントナイト液やセメントミルク等を加えて混合撹拌して、いわゆる泥水状に流動化させて溝状流動化層４を形成しておく。
【００２９】
次いで、同図（Ａ）に示すように、この溝状流動化層４の中であって且つ遮水壁Ｗの施工開始部（始端部）となるべき位置に上記雌ジョイント２と同構造の平面略Ｃ字状の剛性のあるアンカーポスト５を鉛直姿勢にて貫入して固定する。
【００３０】
アンカーポスト５が移動しないように固定したならば、その近傍にシートロール１を鉛直姿勢にて貫入する。その際に、同図（Ｂ）に示すように、シートロール１を形成しているシートＳの巻き取り終端部側の雄ジョイント３を上記アンカーポスト５に凹凸嵌合させ、シートロール１を貫入し終えたならば、同図（Ｃ）に示すようにシートロール１そのものを溝状流動化層４の長手方向に沿って移動させる。こうすることにより、シートロール１を形成しているシートＳが徐々に引き出され、最終的には溝状流動化層４の中で幕状に展開する。つまり、溝状流動化層４の中には一端を雄ジョイント３とし、他端を雌ジョイント２とするシートＳが延在するかたちとなる。
【００３１】
こうして一本分のシートロール１の展開を終えたならば、同図（Ｄ）に示すように、既設のシートＳに付帯している雌ジョイント２に対して二本目のシートロール１側の雄ジョイント３を凹凸嵌合させながら、その二本目のシートロール１を先の場合と同様に溝状流動化層４の中に貫入する。
【００３２】
そして、同図（Ｅ）に示すように、その二本目のシートロール１を溝状流動化層４の中で移動させながらシートＳとして展開し、以降は上記のような動作を繰り返すことで、一本のシートロール１分のシートＳの長さを単位要素としてシートＳ，Ｓ‥が順次継ぎ足されて、溝状流動化層４の中に所定長さの遮水シート層が形成されることになる。特に、溝状流動化層４の中に予めセメントミルクを加えてある場合には、所定の養生期間を得ることにより、シートＳ，Ｓ‥が延在している溝状流動化層４そのものも固化することから、シートＳ，Ｓ‥を主要素としつつ実質的に三層のいわゆるサンドイッチ構造の遮水壁Ｗが構築されることになる。
【００３３】
しかし、上記動作を繰り返し行うには、既設のシートＳに付帯している雌ジョイント２に対して二本目のシートロール１側の雄ジョイント３を凹凸嵌合させる際に、雌ジョイント２が鉛直姿勢で自立していなければ雄ジョイント３を正しく凹凸嵌合させることが困難となる。
【００３４】
図４は、上記のようなシートロール１の地中への貫入とその展開とを司る施工装置の全体の概略構造を示しており、同図（Ａ）はその側面図を、同図（Ｂ）は正面図をそれぞれ示している。
【００３５】
この施工装置は、自走能力を有するクローラタイプの杭打ち機を貫入母機（ベースマシン）６として構成されているものであり、ブーム７およびキャッチフォーク８にて直立姿勢（鉛直姿勢）に支持されたリーダマスト９には昇降ベース１０が装着されていて、この昇降ベース１０には例えば角柱状のロール貫入ポスト１１が着脱可能に連結されている。そして、このロール貫入ポスト１１は、貫入母機６自体の機能、すなわちリーダマスト９に沿って昇降ベース１０を油圧（静圧）にて昇降動作させる機能により地中への圧入とその引き抜きが可能となっている。なお、図５の（Ａ）は図４の（Ａ）の状態からロール貫入ポスト１１を地中に圧入した状態を、同図（Ｂ）は図４の（Ｂ）の状態から同じくロール貫入ポスト１１を地中に圧入した状態をそれぞれ示している。
【００３６】
図６は図４の（Ｂ）におけるロール貫入ポスト１１の詳細を示しており、それぞれに角柱状をなす下部ポスト１２と上部ポスト１３およびそれらの間に介在する中間ポスト１４をボルト・ナットによる結合部１５をもって着脱可能に連結してあり、例えば中間ポスト１４を長さの異なるものと交換するか、もしくはさらに別の中間ポスト１４を加えることにより、ロール貫入ポスト１１の全長の調整が可能となっている。
【００３７】
図６のほか図７に示すように、ロール貫入ポスト１１（上部ポスト１３）の上端には取付フランジ１６が溶接固定されていて、この取付フランジ１６と取付ブラケット１７を介してロール貫入ポスト１１がリーダマスト９側の昇降ベース１０に連結されている一方、ロール貫入ポスト１１の下端部は図４，５に示すように同じくリーダマスト９側のスライド案内部１７にスライド可能に案内支持されている。そして、このロール貫入ポスト１１には、後述するように先に述べたシートロール１が直立姿勢にて並設するような形態で安定的に支持されることになる。
【００３８】
また、図６のほか図７，８に示すように、ロール貫入ポスト１１を形成している下部ポスト１２には下部支持手段として下部把持機構１８が装着されているほか、同じくロール貫入ポスト１１を形成している上部ポスト１３には上部支持手段として上部把持機構１９が装着されている。
【００３９】
下部把持機構１８は、図８，９に示すように、下部ポスト１２から水平方向に張り出すようにボルト・ナット結合した受け部材としての皿状のロール受けブラケット２０に軸受部材としての位置決めピン２１を上向きに形成したもので、シートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２側の下端の底板２２ａ付きのピン穴２２と嵌合することにより少なくともシートロール１の下端を回転可能に軸受支持することが可能となっている。
【００４０】
他方、上部把持機構１９は、図６のほか図１０に示すように、上部ポスト１３にボルト・ナット結合された共通のベースプレート２３に対し水平方向に張り出すように上下二段にわたってグリッパ機構２４，２５を配置したもので、これらのグリッパ機構２４，２５は共にロール貫入ポスト１１に並設支持されることになるシートロール１の上部を把持する機能を有するものの、上側のグリッパ機構２４はシートロール１を回転可能に軸受支持する回転許容型把持部として機能する一方、下側のグリッパ機構２５はシートロール１を回転不能に軸受支持する回転不能型把持部として機能し、これらの上側および下側のグリッパ機構２４，２５は二者択一的にその選択使用が可能となっている。
【００４１】
ここで、図１から明らかなように、シートロール１の下端では芯材として機能する雌ジョイント２を位置決めピン２１にて直接支持しているものの、シートロール１の上端では芯材として機能する雌ジョイント２を直接支持することはせず、雌ジョイント２の上端にエクステンションロッド２６を相対回転不能に且つ着脱可能に連結した上で、このエクステンションロッド２６を把持部として間接的にグリッパ機構２４または２５にて支持するようにしてある。そして、エクステンションロッド２６の上端部には軸受部材であるボールベアリングユニット２７を配設してある。
【００４２】
上側のグリッパ機構２４は、軸受部材であるボールベアリングユニット２７を把持する軸受部材把持手段として機能するもので、図１０のほか図１１に示すように、ベースプレート２３から水平方向に張り出す上下二段の固定側グリッパアーム２８，２８間に略鉤形状の単一の可動側グリッパアーム２９をヒンジピン３０にて回転可能に連結したもので、その可動側グリッパアーム２９の一端とロール貫入ポスト１１との間にはクレビス型のグリッパシリンダ（油圧シリンダ）３１を配設してある。つまり、グリッパシリンダ３１のシリンダチューブ３２をロール貫入ポスト１１に揺動可能に連結してあるとともに、そのピストンロッド３３を可動側グリッパアーム２９に連結してあることから、グリッパシリンダ３１の伸縮作動に応じて可動側グリッパアーム２９がスイング動作して、先に述べたエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７を把持したり、あるいは解放することになる。
【００４３】
より詳しくは、図６から明らかなように、上側のグリッパ機構２４の高さ位置はロール貫入ポスト１１が支えることになるシートロール１のボールベアリングユニット２７の位置、すなわちシートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２に接続されることになるエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７の高さ位置と一致させてあり、しかも固定側グリッパアーム２８にはボールベアリングユニット２７の外周面に当接する受け面２８ａを形成してあることから、図１１のように固定側グリッパアーム２８と可動側グリッパアーム２９とからなる上側のグリッパ機構２４をもってボールベアリングユニット２７の外周を把持することにより、シートロール１の上端を回転可能に軸受支持することができるようになっている。
【００４４】
一方、下側のグリッパ機構２５は雌ジョイント２とともに芯材の一部として機能するエクステンションロッド２６を直接把持する芯材把持手段として機能するもので、図１０のほか図１２に示すように、ベースプレート２３から水平方向に張り出す上下二段の固定側グリッパアーム３４，３４間に略鉤形状の単一の可動側グリッパアーム３５をヒンジピン３６にて回転可能に連結したもので、その可動側グリッパアーム３５の一端とロール貫入ポスト１１との間には上記と同様にクレビス型のグリッパシリンダ（油圧シリンダ）３７を配設してある。したがって、グリッパシリンダ３７の伸縮作動に応じて可動側グリッパアーム３５がスイング動作して、先に述べたエクステンションロッド２６のうちボールベアリングユニット２７の直下位置、すなわちエクステンションロッド２６そのものを直接把持したりあるいは解放することになる。
【００４５】
より詳しくは、図６から明らかなように、下側のグリッパ機構２５の高さ位置は、シートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２に接続されることになるエクステンションロッド２６上においてそのボールベアリングユニット２７の高さ位置よりも下方位置に設定してあり、しかも固定側グリッパアーム３４にはエクステンションロッド２６の外周面に当接する受け面３４ａを形成してあることから、図１２のように固定側グリッパアーム３４と可動側グリッパアーム３５とからなる上側のグリッパ機構２５をもってエクステンションロッド２６を直接把持することにより、シートロール１の上端を回転不能に拘束しつつ支持することができるようになっている。
【００４６】
なお、これらの上下のグリッパ機構２４，２５は両者が同時に把持動作することはなく、いずれか一方が選択的に把持動作することになる。
【００４７】
また、図６，９，１０に示すように、ロール貫入ポスト１１の上下二箇所にはそのロール貫入ポスト１１の直立度合いの検出手段としての傾斜計３８，３９を配置してあり、これらの傾斜計３８，３９の出力に基づいて、例えば貫入母機６のキャビン内に設置した図示外のモニタ画面にてロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）をリアルタイムで目視確認して監視できるようにしてある。これにより、後述するように、傾斜計３８，３９と貫入母機６のキャビン内に設置したモニタとで、ロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）を監視するための監視手段が構成されている。
【００４８】
次に、このように構成された遮水壁の構築のための施工装置による遮水シートＳの施工手順について説明する。
【００４９】
図３に示したしたように、シートロール１の貫入に先立って、遮水壁Ｗを構築すべき地盤には、現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で水またはセメントミルク等を加えて混合撹拌して、いわゆる泥水状に流動化させて溝状流動化層４を予め形成しておくことは先に述べた。
【００５０】
最初に、遮水壁Ｗの施工開始部（始端部）となるべき位置の近傍まで貫入母機６を移動させて図１３の状態とする。すなわち、図４のようなロール貫入ポスト１１の未貫入状態において、そのロール貫入ポスト１１に対し図６のようにシートロール１をセットする。より詳しくは、図１に示すシートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２の上端にエクステンションロッド２６を相対回転不能に且つ着脱可能に接続した上で、雌ジョイント２の下端のピン穴２２を図９に示す下部把持機構１８であるロール受けブラケット２０上の位置決めピン２１に嵌合させる一方、シートロール１の上端部側ではエクステンションロッド２６を図１２に示すように上部把持機構１９である下側のグリッパ機構２５にて直接把持する。ただし、この時には同じく上部把持機構１９を構成している上側のグリッパ機構２４は解放状態として把持機構としては機能しないようにしておく。
【００５１】
以上をもって、シートロール１はロール貫入ポスト１１に沿って並列且つ直立姿勢となるように支持されて、実質的に水平なロール受けブラケット２０上で自立姿勢に保たれている。
【００５２】
次いで、図３の（Ａ）および図１３に示すように、溝状流動化層４の中であって且つ遮水壁Ｗの施工開始部（始端部）となるべき位置に雌ジョイント２と同形状のアンカーポスト５を貫入して固定する。そして、図３の（Ｂ）および図１４に示すように、このアンカーポスト５に対しロール貫入ポスト１１側に支持されているシートロール１の巻き取り終端部側の雄ジョイント３（図１参照）を嵌合させて、貫入母機６本来の圧入機能を使ってロール貫入ポスト１１をシートロール１とともに徐々に貫入する。シートロール１の貫入過程ではその貫入抵抗をロール貫入ポスト１１の下端のロール受けブラケット１８が受ける一方で、シートロール１は図１２に示した下側のグリッパ機構２５によって回転不能に拘束されているので、貫入抵抗等によってシートロール１からシートＳが引き出されて弛みを生ずるようなことはない。
【００５３】
シートロール１が所定深度まで貫入されたならば以降の貫入動作を停止し、その深度位置にシートロール１を保持する。さらに、上部把持機構１９を形成している上下のグリッパ機構２４，２５によるシートロール１の持ち替えを行い、図１１に示した上側のグリッパ機構２４を把持動作させて固定側および可動側のグリッパアーム２８，２９にてエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７を把持し、代わってそれまでエクステンションロッド２６を把持していた図１２の下側のグリッパ機構２５を解放動作させる。これにより、シートロール１はそれまでの下側のグリッパ機構２５による拘束から解除され、代わってロール受けブラケット１８による軸受支持のほか上側のグリッパ機構２４とボールベアリングユニット２７とによる軸受支持によって回転可能に支持されることになる。
【００５４】
この後、貫入母機６を自走にて横行（横移動）させて、シートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の長手方向に沿って移動させる。すると、図３の（Ｃ）および図１４に示すように、シートロール１を形成しているシートＳが引き出されるようにして徐々に巻き戻され、最終的には溝状流動化層４の中で幕状に展開する。つまり、溝状流動化層４の中には一端を雄ジョイント３とし、他端を雌ジョイント２とするシートＳが延在するかたちとなる。なお、シートＳの延在状態は溝状流動化層４の流動化物の圧力によって保持される。また、上記のようなシートロール１の貫入もしくは展開過程においては、適宜傾斜計３８，３９のモニタ画面を見ながらロール貫入ポスト１１の鉛直度合いを監視し、その度合いに応じて鉛直となるようにオペレータが修正する。
【００５５】
こうして一本分のシートロール１の展開を終えたならば、それまでの上側のグリッパ機構２４によるボールベアリングユニット２７の把持を解除し、展開したばかりのシートＳの端部に付帯している雌ジョイント２から例えば作業者がエクステンションロッド２６を取り外す。なお、取り外したエクステンションロッド２６は再利用する。
【００５６】
その状態で、図９に示すように、ロール貫入ポスト１１の下端に付帯しているロール受けブラケット１８上の位置決めピン２１と、雌ジョイント２の下端のピン穴２２との嵌合状態を解除し得るストロークだけロール貫入ポスト１１を下降させるとともに、雌ジョイント２からロール貫入ポスト１１を引き離す方向に所定量だけ（平面視にて雌ジョイント２の位置からロール受けブラケット１８が外れるまで）貫入母機６とともにロール貫入ポスト１１を移動させた上で、図１５に示すようにロール貫入ポスト１１を地上に引き抜く。これより、それまでの位置決めピン２１とピン穴２２との嵌合状態が解除されて、雌ジョイント２はロール貫入ポスト１１から切り離されて溝状流動化層４に残されることになる。
【００５７】
こうして、ロール貫入ポスト１１が元の位置まで引き上げられたならば、先の場合と同様に、図３の（Ｄ）に示すように新しいシートロール１をロール貫入ポスト１１にセットし直して、二本目のシートロール１の貫入に移行する。この際には、既設の雌ジョイント２に対してシートロール１側の雄ジョイント３を嵌合させながらシートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の中に貫入し、以降は上記と同様に二本目のシートロール１からのシートＳの引き出し・展開を行う（図３の（Ｅ）参照）。これ以後は、三本目および四本目のシートロール１について上記のような一連の貫入および展開の動作を繰り返し、その都度展開したシートＳ，Ｓ同士の結合を行って、溝状流動化層４の中に長尺な遮水シート層を形成する。
【００５８】
この後、溝状流動化層４の中に予めセメントミルクを加えてある場合には、所定に養生期間を得ることにより、シートＳが延在している溝状流動化層４そのものも固化することから、シートＳを主要素としつつ実質的に三層のいわゆるサンドイッチ構造の遮水壁Ｗが構築されることになる。
【００５９】
ここまでに説明した施工手順では、貫入母機６を自走にて横行させて、シートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の長手方向に沿って移動させるのに伴って、シートＳがシートロール１から均等に引き出されるためには、ロール貫入ポスト１１の直立姿勢を保ち、シートＳがシートロール１１から上下均等に乱れなく引き出されることが必須条件となる。しかし、ロール貫入ポスト１１の下端部は、貫入母機６のそれ自体の横行（横移動）よりも遅れることとなっていわゆる傾きあるいは倒れが生じることから、シートロール１からのシートＳの引き出しが困難となったり、軸受部材としての位置決めピン２１に嵌合させているシートロール１の芯材のピン穴２２が外れるなどの課題を抱えていた。
【００６０】
図１６に、ロール貫入ポスト１１の下端部が上端部よりも遅れて傾きあるいは倒れが生じるイメージを示す。図１６では、貫入母機６の自走方向である横行方向（横移動方向）Ｒとは逆方向にロール貫入ポスト１１が傾き、そのロール貫入ポスト１１に把持されているシートロール１もロール貫入ポスト１１と同じ傾きとなる。
【００６１】
そこで、ロール貫入ポスト１１の下端部に走行補助手段としての横行補助装置４０、より具体的には、図１８に示すように、駆動手段としての油圧モータ４１にて回転駆動される回転翼４２を装備して、その回転翼４２を回転させることによりロール貫入ポスト１１の下端部に横行補助力（走行補助力）として横行方向の推進力を付与しつつ、そのロール貫入ポスト１１の動きに貫入母機６そのものの同方向の走行動作を同期させて、シートロール１の直立性（鉛直性）を保ちつつシートＳを順次引き出すようにした形態を図１７に示す。
【００６２】
図１８は、走行補助手段としての横行補助装置４０が装着されたロール貫入ポスト１１の下端部の詳細を示している。
【００６３】
図１８に示すように、ロール貫入ポスト１１、より具体的には下部ポスト１２の下端部であって且つロールシート１を支えるロール受けブラケット２０と反対側には、左右一対の支持ブラケット４３を介して回転翼４２を両持ち支持状態にて回転可能に支持させてある。この回転翼４２は、軸４４が貫通する筒状のボス部４５に放射状または十字状のアーム４６を介してリング状のリム４７を結合したもので、リム４７の外周側には羽根（翼）として機能する複数の刃先部４８を等ピッチで設けてある。これにより回転翼４２はいわゆる多羽根タイプのものとなっている。
【００６４】
また、下部ポスト１２のうち回転翼４２の上方側には支持ブラケット４９を介して駆動手段としての油圧モータ４１を配置してあり、油圧モータ４１の出力軸側のスプロケット５０と回転翼４２側のボス部４５に設けたスプロケット５１との間には巻掛伝達手段としてのチェーン５２を巻き掛けてある。そして、先に述べたようにロール貫入ポスト１１の横行方向を矢印Ｒとするならば、この油圧モータ４１の起動により、回転翼４２が図１８の矢印Ｍ方向に回転駆動されるようになっている。
【００６５】
ここで、図１８から明らかなように、回転翼４２の取付位置を可及的に下部ポスト１２の下端面に近い位置としてあることで、回転翼４２の最下部を下部ポスト１２の最下部である下端面よりもさらに下方に位置させてある。これにより、回転翼４２が溝状流動化層４の底壁部に相当する地盤Ｇに接地することで下部ポスト１２の下端面は地盤Ｇに接地しなくなり、下部ポスト１２の下端面と地盤Ｇとの間には所定の隙間が確保される。そして、回転翼４２の回転に伴いその回転翼４２の刃先部４８が溝状流動化層４の底壁部に相当する地盤Ｇに食い込み、横行補助力としてロール貫入ポスト１１の横行方向Ｒと同方向の推進力を発生することになる。
【００６６】
なお、油圧モータ４１の起動に必要な油圧は、貫入母機６に装備されている油圧源を用いても良いが、ここでは図１９に示すように外部の発電機５３によって駆動される油圧パワーユニット５４から供給される。
【００６７】
このような横行補助装置４０を備えた施工装置によるシートＳの施工手順は次のとおりである。
【００６８】
先に図３の（Ｂ）および図１４に基づいて説明したように、シートロール１が所定深度まで貫入されてから、以降の貫入動作を停止し、その深度位置にシートロール１を保持する。さらに、上部把持機構１９を形成している上下のグリッパ機構２４，２５によるシートロール１の持ち替えを行い、図１１に示した上側のグリッパ機構２４を把持動作させて固定側および可動側のグリッパアーム２８、２９にてエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７を把持し、代わってそれまでエクステンションロッド２６を把持していた図１２の下側のグリッパ機構２５を解放動作させる。これにより、シートロール１はそれまでの下側のグリッパ機構２５による拘束から解除され、代わってロール受けブラケット１８による軸受支持のほか上側のグリッパ機構２４とボールベアリングユニット２７とによる軸受支持によって回転可能に支持されるまでの動作は、従前と同様である。
【００６９】
この後、図１８に示した回転翼４２の刃先部４８を溝状流動化層４の底壁部に相当する地盤Ｇに食い込ませて、回転翼４２を図１８の矢印Ｍ方向に回転させつつ貫入母機６を自走方向である矢印Ｒ方向に横行（横移動）させる。つまり、回転駆動される回転翼４２を地盤Ｇに食い込ませることによって得られる反力をロール貫入ポスト１１の下端部が貫入母機６とともに横行するための横行補助力たる推進力（推力）とするものである。
【００７０】
貫入母機６の横行にあたっては、回転翼４２によって横行補助力としての推進力が付与されるロール貫入ポスト１１の下端部の動きに対して、貫入母機６そのものの自走走行動作を同期させるべく、ロール貫入ポスト１１の下端部の横行に合わせてオペレータが貫入母機６の横行速度を制御しながら移動させる。その際、ロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）の適否を先に述べた傾斜計３８，３９の出力に基づくモニタ画面にて監視・確認して、ロール貫入ポスト１１ひいてはそのロール貫入ポスト１１に支持されているシートロール１の直立姿勢（鉛直姿勢）を保ちつつ貫入母機６の横行速度を制御して、シートロール１からシートＳを順次引き出すようにする。なお、上記傾斜計３８，３９とその出力を表示しているモニタは、ロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）を監視またはモニタリングするための監視手段として機能する。
【００７１】
こうして一本分のシートロール１の展開を終えた後、ロール貫入ポスト１１を地上に引き抜くまでの動作は従前と同様である。
【００７２】
ロール貫入ポスト１１が元の位置まで引き上げられたならば、先の場合と同様に、図３の（Ｄ）に示すように新しいシートロール１をロール貫入ポスト１１にセットし直して、二本目のシートロール１の貫入に移行する。この際には、既設の雌ジョイント２に対してシートロール１側の雄ジョイント３を嵌合させながらシートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の中に貫入し、以降は上記と同様に二本目のシートロール１からのシートＳの引き出し・展開を行う（図３の（Ｅ）参照）。これ以後は、三本目および四本目のシートロール１について上記のような一連の貫入および展開の動作を繰り返し、その都度展開したシートＳ，Ｓ同士の結合を行って、溝状流動化層４の中に長尺な遮水シート層を形成する。
【００７３】
これら一連の作業中においても、展開されたシートＳやシートロール１側の雄ジョイント３も常に鉛直が保たれており、既設の雌ジョイント２に対する雄ジョイント３のスムーズな嵌合やシートロール１からのシートＳの引き出し・展開を容易にすることが可能となる。
【００７４】
このような横行補助装置４０を備えた施工装置によるシートＳの施工によれば、図１６に示したようなロール貫入ポスト１１ひいてはシートロール１の倒れあるいは傾きが抑制されてその直立姿勢を保つことが可能であり、シートロール１からのシートＳの引き出し・展開がスムーズに行われる。その結果、シートロール１からのシートＳの引き出しが困難となることもなければ、シートＳが破れたりするなどのトラブルの発生がなくなり、遮水壁Ｗの構築をスムーズに且つ効率的に行える。
【００７５】
ここで、図１，２に示した例では、シートロール１側を雌ジョイント２とし、シートＳの引き出し端側を雄ジョイント３としているが、両者の相対位置関係は逆であっても良い。具体的には、図２０に示すように、シートロール１側を単純中空円筒状の雄ジョイント６２とし、シートＳの引き出し端側を断面Ｃ字状の雌ジョイント６３としても良い。
【００７６】
図２１は上記施工装置の第２の実施の形態を示す図で、図１７と共通する部分には同一符号を付してある。
【００７７】
この第２の実施の形態では、ロール貫入ポスト１１の直立姿勢を維持するための走行補助手段たる横行補助装置として、先の回転翼タイプのものに代えて、ウインチ５５を採用したものである。図２１に示すように、貫入母機６の横行方向前方側であって且つ溝状流動化層４の中には架台５６を立設するとともに、地面側には横行補助装置としてのウインチ５５を設置してある。ウインチ５５から引き出されたワイヤ５７は架台５６に設置したガイドローラ５８ａ，５８ｂに案内された上でロール貫入ポスト１１の中間部に連結してある。
【００７８】
そして、ロール貫入ポスト１１に支持されたシートロール１からのシートＳの引き出しとその展開に際しては、ウインチ５５を低速にて起動させてロール貫入ポスト１１を牽引することでその牽引力による横行補助力として推進力を付与する。その一方、ウインチ５５にて牽引されているロール貫入ポスト１１の直立度合いの適否をモニタ画面にて確認しながら、ロール貫入ポスト１１が常に直立姿勢になるようにオペレータが貫入母機６の走行速度を制御する。こうすることにより、ウインチ５５の牽引力に基づく横行補助力（走行補助力）としての推進力を受けて走行するロール貫入ポスト１１の下端部の動きに対して、オペレータの操作による貫入母機６そのものの横行動作（走行動作）を同期させることができ、結果として常に走行中のロール貫入ポスト１１およびそれに支持されているシートロール１の直立姿勢を維持することができるようになる。
【符号の説明】
【００７９】
１…シートロール
２…芯材としての雌ジョイント（ジョイント部材）
３…雄ジョイント（ジョイント部材）
４…溝状流動化層
５…アンカーポスト
６…貫入母機（杭打ち機）
９…リーダマスト
１１…ロール貫入ポスト
３８…傾斜計（監視手段）
３９…傾斜計（監視手段）
４０…横行補助装置（走行補助手段）
４１…油圧モータ（駆動手段）
４２…回転翼
４８…刃先部
５５…横行補助装置としてのウインチ（走行補助手段）
Ｓ…遮水シート
Ｗ…遮水壁
【技術分野】
【０００１】
本発明は、地中に遮水シート（止水シート）を主要素とする遮水壁を構築する方法および施工装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
この種の遮水壁の構築に関する技術として特許文献１に記載されたものが提案されている。
【０００３】
この特許文献１に記載された技術では、自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持させてなるロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上でシートロールからの遮水シートの引き出し端を固定し、次いで貫入母機を横行させることで遮水シートをシートロールから自律的に引き出しながら幕状に展開させて地中に遮水壁を構築するようになっている。なお、遮水壁を構築すべき地盤には、予め現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で、水またはセメントミルク等を加えて撹拌混合して、いわゆる泥水状に流動化しておくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００６−２９１４８７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
このような従来の技術では、地中に貫入したシートロールの直立姿勢に保ちながら、遮水シートの全幅にわたって均等に張力を付与して、弛みを生ずることなく上下均等に遮水シートを引き出すことが重要となる。
【０００６】
しかしながら、貫入母機のリーダマストと長尺なロール貫入ポストとの間の昇降案内部の遊びの影響が不可避であることから、貫入母機の横行時に泥水状の地盤の抵抗とも相俟ってロール貫入ポストには倒れまたは傾きが発生する。より具体的には、貫入母機による横行力は地中に貫入したロール貫入ポストの上端部に直接的に作用することから、横行方向においてロール貫入ポストの下端部が上端部よりも遅れ気味となる。そのため、ロール貫入ポストに支持されているシートロールも同様に傾くことになり、シートロールから引き出される遮水シートの上端部ではその張力が適正であっても遮水シートの下端部では弛みが発生し、シートロールからの遮水シートの引き出しが困難となったり、遮水シートが破れたりするなどのトラブルが発生しやすい。
【０００７】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、地中に貫入されたロール貫入ポストの直立姿勢を保ち、遮水シートをシートロールから上下均等に乱れなくスムーズに引き出すことを可能とした遮水壁の構築方法とその方法に用いる施工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１に記載の発明は、遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの引き出し端を固定した上でその遮水シートをシートロールから順次引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築する方法である。
【０００９】
その上で、自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるものとする。その際に、上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けておき、上記ロール貫入ポストの直立度合いの適否を監視しながら、走行補助手段からの走行補助力を受けて走行するロール貫入ポストの下端部の動きと貫入母機そのものの走行動作とを同期させ、もって横行中のロール貫入ポストの直立姿勢を維持するものである。
【００１０】
上記走行補助手段としては、例えば請求項２に記載のように、回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっているものとする。
【００１１】
請求項３に記載の発明は、上記技術を遮水壁を構築するための施工装置として捉えたものであって、遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの引き出し端を固定した上でその遮水シートをシートロールから順次引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築するための施工装置である。
【００１２】
その上で、自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるようになっているとともに、上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けてあり、上記貫入母機の走行時には、走行補助手段がロール貫入ポストの下端部に走行補助力を付与するようになっていることを特徴とする。
【００１３】
この場合に、本発明の目的からして、請求項４に記載のように、上記貫入母機はロール貫入ポストの直立度合いを監視する監視手段を備えていることが望ましい。
【００１４】
また、推力発生手段は、例えば請求項５に記載のように、駆動手段にて回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっているものとする。
【００１５】
また、上記回転翼の空転等を抑制して推進力を効率良く発生させるためには、請求項６に記載のように、回転翼の先端に地盤に食い込む刃先部を設けてあることが望ましい。
【００１６】
さらに、請求項７に記載のように、上記回転翼の最下部をロール貫入ポストの最下部よりもさらに下方に位置させてあることが、推進力を効率良く発生させる上で望ましい。
【００１７】
加えて、上記走行補助手段における駆動手段は、請求項８に記載のように、例えば油圧モータ等の油圧を駆動源とするものとする。
【００１８】
したがって、少なくも請求項１に記載の遮水壁の構築方法では、ロール貫入ポストの直立度合いの適否を監視しながら、走行補助手段からの走行補助力である推進力を受けて走行するロール貫入ポストの下端部の動きに対して、オペレータの操作による貫入母機そのものの走行動作を同期させることにより、走行中のロール貫入ポストの直立姿勢を常に安定して維持することができるようになる。
【発明の効果】
【００１９】
請求項１および請求項３，４に記載の発明によれば、ロール貫入ポストおよぼそのロール貫入ポストに支持されているシートロールの直立姿勢を維持することができるので、遮水シートの弛み発生によってシートロールからの遮水シートの引き出しが困難となることもなければ、遮水シートが破れたりするなどのトラブルの発生がなくなり、遮水壁の構築をスムーズに且つ効率的に行えるようになる。
【００２０】
請求項２，５に記載に発明によれば、走行補助手段は、回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっているので、効果的な走行補助を行うことができる。
【００２１】
請求項６に記載の発明によれば、回転翼の先端に地盤に食い込む刃先部を設けてあることで、回転翼の空転等を未然に防止して、走行補助力としての推進力の発生が安定したものとなる。
【００２２】
請求項７に記載の発明によれば、回転翼の最下部をロール貫入ポストの最下部よりもさらに下方に位置させてあることで、上記と同様に走行補助力としての推進力の発生が安定したものとなることで、より安定した走行補助を行える。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明の実施の形態で使用されるシートロールの分解斜視図。
【図２】図１に示すシートロールの平面説明図。
【図３】図１のシートロールを使用した遮水壁の施工手順を示す概略説明図。
【図４】本発明が前提とする施工装置の概略構造を示す図で、（Ａ）は側面説明図、（Ｂ）は正面説明図。
【図５】図４の状態からロール貫入ポストを地中に貫入した状態を示す図で、（Ａ）は側面説明図、（Ｂ）は正面説明図。
【図６】図４に示すロール貫入ポストの拡大説明図。
【図７】図６のＡ方向拡大矢視図。
【図８】図６のＢ−Ｂ線に沿う拡大断面図。
【図９】図６の下部拡大断面図。
【図１０】図６の上部拡大説明図。
【図１１】図１０に示す上側のグリッパ機構の平面説明図。
【図１２】図１０に示す下側のグリッパ機構の平面説明図。
【図１３】貫入母機の動きを中心とした施工手順の説明図。
【図１４】図１３に続く施工手順の説明図。
【図１５】図１４に続く施工手順の説明図。
【図１６】図４の施工装置でのロール貫入ポストの傾き発生状況を示す説明図。
【図１７】走行補助手段として横行補助装置を装備した施工装置の概略構造を示す説明図。
【図１８】図１７に示した横行補助装置の拡大図で、（Ａ）はその正面図、（Ｂ）は同図（Ａ）の右側面説明図。
【図１９】図１８に示した横行補助装置への油圧供給系を示す説明図。
【図２０】図１，２に示した雄ジョイントと雌ジョイントとの相対位置関係の変形例を示す説明図。
【図２１】走行補助手段としてウインチを用いた場合の施工装置の概略構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【００２４】
図１以下の図面は本発明を実施するためのより具体的な形態を示している。最初に、本発明が前提とする遮水壁の構築のための施工手順について説明する。
【００２５】
ここでは、図１，２に示すように所定幅の強靱な遮水シート（例えば、厚さが数ミリ程度の高密度ポリエチレンシート）Ｓを予めロール状に巻き付けたシートロール１を使用することを前提とし、遮水シート（以下、単に「シート」と言う。）Ｓの巻き取り始端部側にはジョイント部材として剛性があり且つ平面視にて略Ｃ字状をなす雌ジョイント２を、同じくシートＳの巻き取り終端部側にはジョイント部材として丸棒状の雄ジョイント３をそれぞれその全幅にわたり予め固定してあり、雌ジョイント２を芯材としてシートＳを巻き付けてある。なお、雌ジョイント２や雄ジョイント３とシートＳとの結合は、例えば雌ジョイント２または雄ジョイント３を、接着剤を併用しながらシートＳの端部にて袋状に包み込んだ上で溶着部Ｓｗにて溶着してある。
【００２６】
これらの雌ジョイント２と雄ジョイント３は、両者を同一軸線上に並べた上で相対移動させればいわゆる凹凸嵌合して、その状態では径方向に引張力を作用させただけでは容易に離脱しない構造となっている。そして、先にも述べたように、シートロール１は巻き取り始端部側の雌ジョイント２を芯材として用いて、巻き取り終端部側に雄ジョイント３を有する所定長さのシートＳを巻き付けることで構成される。
【００２７】
遮水壁を構築すべき地盤には、予め現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で水またはベントナイト液やセメントミルク等を加えて混合撹拌して、いわゆる泥水状に流動化させておくことが望ましい。
【００２８】
より具体的には、図３の平面図に示すように、遮水壁Ｗを構築すべき地盤には、現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で水またはベントナイト液やセメントミルク等を加えて混合撹拌して、いわゆる泥水状に流動化させて溝状流動化層４を形成しておく。
【００２９】
次いで、同図（Ａ）に示すように、この溝状流動化層４の中であって且つ遮水壁Ｗの施工開始部（始端部）となるべき位置に上記雌ジョイント２と同構造の平面略Ｃ字状の剛性のあるアンカーポスト５を鉛直姿勢にて貫入して固定する。
【００３０】
アンカーポスト５が移動しないように固定したならば、その近傍にシートロール１を鉛直姿勢にて貫入する。その際に、同図（Ｂ）に示すように、シートロール１を形成しているシートＳの巻き取り終端部側の雄ジョイント３を上記アンカーポスト５に凹凸嵌合させ、シートロール１を貫入し終えたならば、同図（Ｃ）に示すようにシートロール１そのものを溝状流動化層４の長手方向に沿って移動させる。こうすることにより、シートロール１を形成しているシートＳが徐々に引き出され、最終的には溝状流動化層４の中で幕状に展開する。つまり、溝状流動化層４の中には一端を雄ジョイント３とし、他端を雌ジョイント２とするシートＳが延在するかたちとなる。
【００３１】
こうして一本分のシートロール１の展開を終えたならば、同図（Ｄ）に示すように、既設のシートＳに付帯している雌ジョイント２に対して二本目のシートロール１側の雄ジョイント３を凹凸嵌合させながら、その二本目のシートロール１を先の場合と同様に溝状流動化層４の中に貫入する。
【００３２】
そして、同図（Ｅ）に示すように、その二本目のシートロール１を溝状流動化層４の中で移動させながらシートＳとして展開し、以降は上記のような動作を繰り返すことで、一本のシートロール１分のシートＳの長さを単位要素としてシートＳ，Ｓ‥が順次継ぎ足されて、溝状流動化層４の中に所定長さの遮水シート層が形成されることになる。特に、溝状流動化層４の中に予めセメントミルクを加えてある場合には、所定の養生期間を得ることにより、シートＳ，Ｓ‥が延在している溝状流動化層４そのものも固化することから、シートＳ，Ｓ‥を主要素としつつ実質的に三層のいわゆるサンドイッチ構造の遮水壁Ｗが構築されることになる。
【００３３】
しかし、上記動作を繰り返し行うには、既設のシートＳに付帯している雌ジョイント２に対して二本目のシートロール１側の雄ジョイント３を凹凸嵌合させる際に、雌ジョイント２が鉛直姿勢で自立していなければ雄ジョイント３を正しく凹凸嵌合させることが困難となる。
【００３４】
図４は、上記のようなシートロール１の地中への貫入とその展開とを司る施工装置の全体の概略構造を示しており、同図（Ａ）はその側面図を、同図（Ｂ）は正面図をそれぞれ示している。
【００３５】
この施工装置は、自走能力を有するクローラタイプの杭打ち機を貫入母機（ベースマシン）６として構成されているものであり、ブーム７およびキャッチフォーク８にて直立姿勢（鉛直姿勢）に支持されたリーダマスト９には昇降ベース１０が装着されていて、この昇降ベース１０には例えば角柱状のロール貫入ポスト１１が着脱可能に連結されている。そして、このロール貫入ポスト１１は、貫入母機６自体の機能、すなわちリーダマスト９に沿って昇降ベース１０を油圧（静圧）にて昇降動作させる機能により地中への圧入とその引き抜きが可能となっている。なお、図５の（Ａ）は図４の（Ａ）の状態からロール貫入ポスト１１を地中に圧入した状態を、同図（Ｂ）は図４の（Ｂ）の状態から同じくロール貫入ポスト１１を地中に圧入した状態をそれぞれ示している。
【００３６】
図６は図４の（Ｂ）におけるロール貫入ポスト１１の詳細を示しており、それぞれに角柱状をなす下部ポスト１２と上部ポスト１３およびそれらの間に介在する中間ポスト１４をボルト・ナットによる結合部１５をもって着脱可能に連結してあり、例えば中間ポスト１４を長さの異なるものと交換するか、もしくはさらに別の中間ポスト１４を加えることにより、ロール貫入ポスト１１の全長の調整が可能となっている。
【００３７】
図６のほか図７に示すように、ロール貫入ポスト１１（上部ポスト１３）の上端には取付フランジ１６が溶接固定されていて、この取付フランジ１６と取付ブラケット１７を介してロール貫入ポスト１１がリーダマスト９側の昇降ベース１０に連結されている一方、ロール貫入ポスト１１の下端部は図４，５に示すように同じくリーダマスト９側のスライド案内部１７にスライド可能に案内支持されている。そして、このロール貫入ポスト１１には、後述するように先に述べたシートロール１が直立姿勢にて並設するような形態で安定的に支持されることになる。
【００３８】
また、図６のほか図７，８に示すように、ロール貫入ポスト１１を形成している下部ポスト１２には下部支持手段として下部把持機構１８が装着されているほか、同じくロール貫入ポスト１１を形成している上部ポスト１３には上部支持手段として上部把持機構１９が装着されている。
【００３９】
下部把持機構１８は、図８，９に示すように、下部ポスト１２から水平方向に張り出すようにボルト・ナット結合した受け部材としての皿状のロール受けブラケット２０に軸受部材としての位置決めピン２１を上向きに形成したもので、シートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２側の下端の底板２２ａ付きのピン穴２２と嵌合することにより少なくともシートロール１の下端を回転可能に軸受支持することが可能となっている。
【００４０】
他方、上部把持機構１９は、図６のほか図１０に示すように、上部ポスト１３にボルト・ナット結合された共通のベースプレート２３に対し水平方向に張り出すように上下二段にわたってグリッパ機構２４，２５を配置したもので、これらのグリッパ機構２４，２５は共にロール貫入ポスト１１に並設支持されることになるシートロール１の上部を把持する機能を有するものの、上側のグリッパ機構２４はシートロール１を回転可能に軸受支持する回転許容型把持部として機能する一方、下側のグリッパ機構２５はシートロール１を回転不能に軸受支持する回転不能型把持部として機能し、これらの上側および下側のグリッパ機構２４，２５は二者択一的にその選択使用が可能となっている。
【００４１】
ここで、図１から明らかなように、シートロール１の下端では芯材として機能する雌ジョイント２を位置決めピン２１にて直接支持しているものの、シートロール１の上端では芯材として機能する雌ジョイント２を直接支持することはせず、雌ジョイント２の上端にエクステンションロッド２６を相対回転不能に且つ着脱可能に連結した上で、このエクステンションロッド２６を把持部として間接的にグリッパ機構２４または２５にて支持するようにしてある。そして、エクステンションロッド２６の上端部には軸受部材であるボールベアリングユニット２７を配設してある。
【００４２】
上側のグリッパ機構２４は、軸受部材であるボールベアリングユニット２７を把持する軸受部材把持手段として機能するもので、図１０のほか図１１に示すように、ベースプレート２３から水平方向に張り出す上下二段の固定側グリッパアーム２８，２８間に略鉤形状の単一の可動側グリッパアーム２９をヒンジピン３０にて回転可能に連結したもので、その可動側グリッパアーム２９の一端とロール貫入ポスト１１との間にはクレビス型のグリッパシリンダ（油圧シリンダ）３１を配設してある。つまり、グリッパシリンダ３１のシリンダチューブ３２をロール貫入ポスト１１に揺動可能に連結してあるとともに、そのピストンロッド３３を可動側グリッパアーム２９に連結してあることから、グリッパシリンダ３１の伸縮作動に応じて可動側グリッパアーム２９がスイング動作して、先に述べたエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７を把持したり、あるいは解放することになる。
【００４３】
より詳しくは、図６から明らかなように、上側のグリッパ機構２４の高さ位置はロール貫入ポスト１１が支えることになるシートロール１のボールベアリングユニット２７の位置、すなわちシートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２に接続されることになるエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７の高さ位置と一致させてあり、しかも固定側グリッパアーム２８にはボールベアリングユニット２７の外周面に当接する受け面２８ａを形成してあることから、図１１のように固定側グリッパアーム２８と可動側グリッパアーム２９とからなる上側のグリッパ機構２４をもってボールベアリングユニット２７の外周を把持することにより、シートロール１の上端を回転可能に軸受支持することができるようになっている。
【００４４】
一方、下側のグリッパ機構２５は雌ジョイント２とともに芯材の一部として機能するエクステンションロッド２６を直接把持する芯材把持手段として機能するもので、図１０のほか図１２に示すように、ベースプレート２３から水平方向に張り出す上下二段の固定側グリッパアーム３４，３４間に略鉤形状の単一の可動側グリッパアーム３５をヒンジピン３６にて回転可能に連結したもので、その可動側グリッパアーム３５の一端とロール貫入ポスト１１との間には上記と同様にクレビス型のグリッパシリンダ（油圧シリンダ）３７を配設してある。したがって、グリッパシリンダ３７の伸縮作動に応じて可動側グリッパアーム３５がスイング動作して、先に述べたエクステンションロッド２６のうちボールベアリングユニット２７の直下位置、すなわちエクステンションロッド２６そのものを直接把持したりあるいは解放することになる。
【００４５】
より詳しくは、図６から明らかなように、下側のグリッパ機構２５の高さ位置は、シートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２に接続されることになるエクステンションロッド２６上においてそのボールベアリングユニット２７の高さ位置よりも下方位置に設定してあり、しかも固定側グリッパアーム３４にはエクステンションロッド２６の外周面に当接する受け面３４ａを形成してあることから、図１２のように固定側グリッパアーム３４と可動側グリッパアーム３５とからなる上側のグリッパ機構２５をもってエクステンションロッド２６を直接把持することにより、シートロール１の上端を回転不能に拘束しつつ支持することができるようになっている。
【００４６】
なお、これらの上下のグリッパ機構２４，２５は両者が同時に把持動作することはなく、いずれか一方が選択的に把持動作することになる。
【００４７】
また、図６，９，１０に示すように、ロール貫入ポスト１１の上下二箇所にはそのロール貫入ポスト１１の直立度合いの検出手段としての傾斜計３８，３９を配置してあり、これらの傾斜計３８，３９の出力に基づいて、例えば貫入母機６のキャビン内に設置した図示外のモニタ画面にてロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）をリアルタイムで目視確認して監視できるようにしてある。これにより、後述するように、傾斜計３８，３９と貫入母機６のキャビン内に設置したモニタとで、ロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）を監視するための監視手段が構成されている。
【００４８】
次に、このように構成された遮水壁の構築のための施工装置による遮水シートＳの施工手順について説明する。
【００４９】
図３に示したしたように、シートロール１の貫入に先立って、遮水壁Ｗを構築すべき地盤には、現位置にて原土を溝状に掘削してほぐす一方で水またはセメントミルク等を加えて混合撹拌して、いわゆる泥水状に流動化させて溝状流動化層４を予め形成しておくことは先に述べた。
【００５０】
最初に、遮水壁Ｗの施工開始部（始端部）となるべき位置の近傍まで貫入母機６を移動させて図１３の状態とする。すなわち、図４のようなロール貫入ポスト１１の未貫入状態において、そのロール貫入ポスト１１に対し図６のようにシートロール１をセットする。より詳しくは、図１に示すシートロール１の芯材として機能する雌ジョイント２の上端にエクステンションロッド２６を相対回転不能に且つ着脱可能に接続した上で、雌ジョイント２の下端のピン穴２２を図９に示す下部把持機構１８であるロール受けブラケット２０上の位置決めピン２１に嵌合させる一方、シートロール１の上端部側ではエクステンションロッド２６を図１２に示すように上部把持機構１９である下側のグリッパ機構２５にて直接把持する。ただし、この時には同じく上部把持機構１９を構成している上側のグリッパ機構２４は解放状態として把持機構としては機能しないようにしておく。
【００５１】
以上をもって、シートロール１はロール貫入ポスト１１に沿って並列且つ直立姿勢となるように支持されて、実質的に水平なロール受けブラケット２０上で自立姿勢に保たれている。
【００５２】
次いで、図３の（Ａ）および図１３に示すように、溝状流動化層４の中であって且つ遮水壁Ｗの施工開始部（始端部）となるべき位置に雌ジョイント２と同形状のアンカーポスト５を貫入して固定する。そして、図３の（Ｂ）および図１４に示すように、このアンカーポスト５に対しロール貫入ポスト１１側に支持されているシートロール１の巻き取り終端部側の雄ジョイント３（図１参照）を嵌合させて、貫入母機６本来の圧入機能を使ってロール貫入ポスト１１をシートロール１とともに徐々に貫入する。シートロール１の貫入過程ではその貫入抵抗をロール貫入ポスト１１の下端のロール受けブラケット１８が受ける一方で、シートロール１は図１２に示した下側のグリッパ機構２５によって回転不能に拘束されているので、貫入抵抗等によってシートロール１からシートＳが引き出されて弛みを生ずるようなことはない。
【００５３】
シートロール１が所定深度まで貫入されたならば以降の貫入動作を停止し、その深度位置にシートロール１を保持する。さらに、上部把持機構１９を形成している上下のグリッパ機構２４，２５によるシートロール１の持ち替えを行い、図１１に示した上側のグリッパ機構２４を把持動作させて固定側および可動側のグリッパアーム２８，２９にてエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７を把持し、代わってそれまでエクステンションロッド２６を把持していた図１２の下側のグリッパ機構２５を解放動作させる。これにより、シートロール１はそれまでの下側のグリッパ機構２５による拘束から解除され、代わってロール受けブラケット１８による軸受支持のほか上側のグリッパ機構２４とボールベアリングユニット２７とによる軸受支持によって回転可能に支持されることになる。
【００５４】
この後、貫入母機６を自走にて横行（横移動）させて、シートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の長手方向に沿って移動させる。すると、図３の（Ｃ）および図１４に示すように、シートロール１を形成しているシートＳが引き出されるようにして徐々に巻き戻され、最終的には溝状流動化層４の中で幕状に展開する。つまり、溝状流動化層４の中には一端を雄ジョイント３とし、他端を雌ジョイント２とするシートＳが延在するかたちとなる。なお、シートＳの延在状態は溝状流動化層４の流動化物の圧力によって保持される。また、上記のようなシートロール１の貫入もしくは展開過程においては、適宜傾斜計３８，３９のモニタ画面を見ながらロール貫入ポスト１１の鉛直度合いを監視し、その度合いに応じて鉛直となるようにオペレータが修正する。
【００５５】
こうして一本分のシートロール１の展開を終えたならば、それまでの上側のグリッパ機構２４によるボールベアリングユニット２７の把持を解除し、展開したばかりのシートＳの端部に付帯している雌ジョイント２から例えば作業者がエクステンションロッド２６を取り外す。なお、取り外したエクステンションロッド２６は再利用する。
【００５６】
その状態で、図９に示すように、ロール貫入ポスト１１の下端に付帯しているロール受けブラケット１８上の位置決めピン２１と、雌ジョイント２の下端のピン穴２２との嵌合状態を解除し得るストロークだけロール貫入ポスト１１を下降させるとともに、雌ジョイント２からロール貫入ポスト１１を引き離す方向に所定量だけ（平面視にて雌ジョイント２の位置からロール受けブラケット１８が外れるまで）貫入母機６とともにロール貫入ポスト１１を移動させた上で、図１５に示すようにロール貫入ポスト１１を地上に引き抜く。これより、それまでの位置決めピン２１とピン穴２２との嵌合状態が解除されて、雌ジョイント２はロール貫入ポスト１１から切り離されて溝状流動化層４に残されることになる。
【００５７】
こうして、ロール貫入ポスト１１が元の位置まで引き上げられたならば、先の場合と同様に、図３の（Ｄ）に示すように新しいシートロール１をロール貫入ポスト１１にセットし直して、二本目のシートロール１の貫入に移行する。この際には、既設の雌ジョイント２に対してシートロール１側の雄ジョイント３を嵌合させながらシートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の中に貫入し、以降は上記と同様に二本目のシートロール１からのシートＳの引き出し・展開を行う（図３の（Ｅ）参照）。これ以後は、三本目および四本目のシートロール１について上記のような一連の貫入および展開の動作を繰り返し、その都度展開したシートＳ，Ｓ同士の結合を行って、溝状流動化層４の中に長尺な遮水シート層を形成する。
【００５８】
この後、溝状流動化層４の中に予めセメントミルクを加えてある場合には、所定に養生期間を得ることにより、シートＳが延在している溝状流動化層４そのものも固化することから、シートＳを主要素としつつ実質的に三層のいわゆるサンドイッチ構造の遮水壁Ｗが構築されることになる。
【００５９】
ここまでに説明した施工手順では、貫入母機６を自走にて横行させて、シートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の長手方向に沿って移動させるのに伴って、シートＳがシートロール１から均等に引き出されるためには、ロール貫入ポスト１１の直立姿勢を保ち、シートＳがシートロール１１から上下均等に乱れなく引き出されることが必須条件となる。しかし、ロール貫入ポスト１１の下端部は、貫入母機６のそれ自体の横行（横移動）よりも遅れることとなっていわゆる傾きあるいは倒れが生じることから、シートロール１からのシートＳの引き出しが困難となったり、軸受部材としての位置決めピン２１に嵌合させているシートロール１の芯材のピン穴２２が外れるなどの課題を抱えていた。
【００６０】
図１６に、ロール貫入ポスト１１の下端部が上端部よりも遅れて傾きあるいは倒れが生じるイメージを示す。図１６では、貫入母機６の自走方向である横行方向（横移動方向）Ｒとは逆方向にロール貫入ポスト１１が傾き、そのロール貫入ポスト１１に把持されているシートロール１もロール貫入ポスト１１と同じ傾きとなる。
【００６１】
そこで、ロール貫入ポスト１１の下端部に走行補助手段としての横行補助装置４０、より具体的には、図１８に示すように、駆動手段としての油圧モータ４１にて回転駆動される回転翼４２を装備して、その回転翼４２を回転させることによりロール貫入ポスト１１の下端部に横行補助力（走行補助力）として横行方向の推進力を付与しつつ、そのロール貫入ポスト１１の動きに貫入母機６そのものの同方向の走行動作を同期させて、シートロール１の直立性（鉛直性）を保ちつつシートＳを順次引き出すようにした形態を図１７に示す。
【００６２】
図１８は、走行補助手段としての横行補助装置４０が装着されたロール貫入ポスト１１の下端部の詳細を示している。
【００６３】
図１８に示すように、ロール貫入ポスト１１、より具体的には下部ポスト１２の下端部であって且つロールシート１を支えるロール受けブラケット２０と反対側には、左右一対の支持ブラケット４３を介して回転翼４２を両持ち支持状態にて回転可能に支持させてある。この回転翼４２は、軸４４が貫通する筒状のボス部４５に放射状または十字状のアーム４６を介してリング状のリム４７を結合したもので、リム４７の外周側には羽根（翼）として機能する複数の刃先部４８を等ピッチで設けてある。これにより回転翼４２はいわゆる多羽根タイプのものとなっている。
【００６４】
また、下部ポスト１２のうち回転翼４２の上方側には支持ブラケット４９を介して駆動手段としての油圧モータ４１を配置してあり、油圧モータ４１の出力軸側のスプロケット５０と回転翼４２側のボス部４５に設けたスプロケット５１との間には巻掛伝達手段としてのチェーン５２を巻き掛けてある。そして、先に述べたようにロール貫入ポスト１１の横行方向を矢印Ｒとするならば、この油圧モータ４１の起動により、回転翼４２が図１８の矢印Ｍ方向に回転駆動されるようになっている。
【００６５】
ここで、図１８から明らかなように、回転翼４２の取付位置を可及的に下部ポスト１２の下端面に近い位置としてあることで、回転翼４２の最下部を下部ポスト１２の最下部である下端面よりもさらに下方に位置させてある。これにより、回転翼４２が溝状流動化層４の底壁部に相当する地盤Ｇに接地することで下部ポスト１２の下端面は地盤Ｇに接地しなくなり、下部ポスト１２の下端面と地盤Ｇとの間には所定の隙間が確保される。そして、回転翼４２の回転に伴いその回転翼４２の刃先部４８が溝状流動化層４の底壁部に相当する地盤Ｇに食い込み、横行補助力としてロール貫入ポスト１１の横行方向Ｒと同方向の推進力を発生することになる。
【００６６】
なお、油圧モータ４１の起動に必要な油圧は、貫入母機６に装備されている油圧源を用いても良いが、ここでは図１９に示すように外部の発電機５３によって駆動される油圧パワーユニット５４から供給される。
【００６７】
このような横行補助装置４０を備えた施工装置によるシートＳの施工手順は次のとおりである。
【００６８】
先に図３の（Ｂ）および図１４に基づいて説明したように、シートロール１が所定深度まで貫入されてから、以降の貫入動作を停止し、その深度位置にシートロール１を保持する。さらに、上部把持機構１９を形成している上下のグリッパ機構２４，２５によるシートロール１の持ち替えを行い、図１１に示した上側のグリッパ機構２４を把持動作させて固定側および可動側のグリッパアーム２８、２９にてエクステンションロッド２６上のボールベアリングユニット２７を把持し、代わってそれまでエクステンションロッド２６を把持していた図１２の下側のグリッパ機構２５を解放動作させる。これにより、シートロール１はそれまでの下側のグリッパ機構２５による拘束から解除され、代わってロール受けブラケット１８による軸受支持のほか上側のグリッパ機構２４とボールベアリングユニット２７とによる軸受支持によって回転可能に支持されるまでの動作は、従前と同様である。
【００６９】
この後、図１８に示した回転翼４２の刃先部４８を溝状流動化層４の底壁部に相当する地盤Ｇに食い込ませて、回転翼４２を図１８の矢印Ｍ方向に回転させつつ貫入母機６を自走方向である矢印Ｒ方向に横行（横移動）させる。つまり、回転駆動される回転翼４２を地盤Ｇに食い込ませることによって得られる反力をロール貫入ポスト１１の下端部が貫入母機６とともに横行するための横行補助力たる推進力（推力）とするものである。
【００７０】
貫入母機６の横行にあたっては、回転翼４２によって横行補助力としての推進力が付与されるロール貫入ポスト１１の下端部の動きに対して、貫入母機６そのものの自走走行動作を同期させるべく、ロール貫入ポスト１１の下端部の横行に合わせてオペレータが貫入母機６の横行速度を制御しながら移動させる。その際、ロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）の適否を先に述べた傾斜計３８，３９の出力に基づくモニタ画面にて監視・確認して、ロール貫入ポスト１１ひいてはそのロール貫入ポスト１１に支持されているシートロール１の直立姿勢（鉛直姿勢）を保ちつつ貫入母機６の横行速度を制御して、シートロール１からシートＳを順次引き出すようにする。なお、上記傾斜計３８，３９とその出力を表示しているモニタは、ロール貫入ポスト１１の直立度合い（鉛直度合い）を監視またはモニタリングするための監視手段として機能する。
【００７１】
こうして一本分のシートロール１の展開を終えた後、ロール貫入ポスト１１を地上に引き抜くまでの動作は従前と同様である。
【００７２】
ロール貫入ポスト１１が元の位置まで引き上げられたならば、先の場合と同様に、図３の（Ｄ）に示すように新しいシートロール１をロール貫入ポスト１１にセットし直して、二本目のシートロール１の貫入に移行する。この際には、既設の雌ジョイント２に対してシートロール１側の雄ジョイント３を嵌合させながらシートロール１をロール貫入ポスト１１とともに溝状流動化層４の中に貫入し、以降は上記と同様に二本目のシートロール１からのシートＳの引き出し・展開を行う（図３の（Ｅ）参照）。これ以後は、三本目および四本目のシートロール１について上記のような一連の貫入および展開の動作を繰り返し、その都度展開したシートＳ，Ｓ同士の結合を行って、溝状流動化層４の中に長尺な遮水シート層を形成する。
【００７３】
これら一連の作業中においても、展開されたシートＳやシートロール１側の雄ジョイント３も常に鉛直が保たれており、既設の雌ジョイント２に対する雄ジョイント３のスムーズな嵌合やシートロール１からのシートＳの引き出し・展開を容易にすることが可能となる。
【００７４】
このような横行補助装置４０を備えた施工装置によるシートＳの施工によれば、図１６に示したようなロール貫入ポスト１１ひいてはシートロール１の倒れあるいは傾きが抑制されてその直立姿勢を保つことが可能であり、シートロール１からのシートＳの引き出し・展開がスムーズに行われる。その結果、シートロール１からのシートＳの引き出しが困難となることもなければ、シートＳが破れたりするなどのトラブルの発生がなくなり、遮水壁Ｗの構築をスムーズに且つ効率的に行える。
【００７５】
ここで、図１，２に示した例では、シートロール１側を雌ジョイント２とし、シートＳの引き出し端側を雄ジョイント３としているが、両者の相対位置関係は逆であっても良い。具体的には、図２０に示すように、シートロール１側を単純中空円筒状の雄ジョイント６２とし、シートＳの引き出し端側を断面Ｃ字状の雌ジョイント６３としても良い。
【００７６】
図２１は上記施工装置の第２の実施の形態を示す図で、図１７と共通する部分には同一符号を付してある。
【００７７】
この第２の実施の形態では、ロール貫入ポスト１１の直立姿勢を維持するための走行補助手段たる横行補助装置として、先の回転翼タイプのものに代えて、ウインチ５５を採用したものである。図２１に示すように、貫入母機６の横行方向前方側であって且つ溝状流動化層４の中には架台５６を立設するとともに、地面側には横行補助装置としてのウインチ５５を設置してある。ウインチ５５から引き出されたワイヤ５７は架台５６に設置したガイドローラ５８ａ，５８ｂに案内された上でロール貫入ポスト１１の中間部に連結してある。
【００７８】
そして、ロール貫入ポスト１１に支持されたシートロール１からのシートＳの引き出しとその展開に際しては、ウインチ５５を低速にて起動させてロール貫入ポスト１１を牽引することでその牽引力による横行補助力として推進力を付与する。その一方、ウインチ５５にて牽引されているロール貫入ポスト１１の直立度合いの適否をモニタ画面にて確認しながら、ロール貫入ポスト１１が常に直立姿勢になるようにオペレータが貫入母機６の走行速度を制御する。こうすることにより、ウインチ５５の牽引力に基づく横行補助力（走行補助力）としての推進力を受けて走行するロール貫入ポスト１１の下端部の動きに対して、オペレータの操作による貫入母機６そのものの横行動作（走行動作）を同期させることができ、結果として常に走行中のロール貫入ポスト１１およびそれに支持されているシートロール１の直立姿勢を維持することができるようになる。
【符号の説明】
【００７９】
１…シートロール
２…芯材としての雌ジョイント（ジョイント部材）
３…雄ジョイント（ジョイント部材）
４…溝状流動化層
５…アンカーポスト
６…貫入母機（杭打ち機）
９…リーダマスト
１１…ロール貫入ポスト
３８…傾斜計（監視手段）
３９…傾斜計（監視手段）
４０…横行補助装置（走行補助手段）
４１…油圧モータ（駆動手段）
４２…回転翼
４８…刃先部
５５…横行補助装置としてのウインチ（走行補助手段）
Ｓ…遮水シート
Ｗ…遮水壁
【特許請求の範囲】
【請求項１】
遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの一端を固定した上でその遮水シートをシートロールから引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築する方法であって、
自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるにあたり、
上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けておき、
上記ロール貫入ポストの直立度合いの適否を監視しながら、走行補助手段からの走行補助力を受けて走行するロール貫入ポストの下端部の動きと貫入母機そのものの走行動作とを同期させ、
もって走行中のロール貫入ポストの直立姿勢を維持するようにしたことを特徴とする遮水壁の構築方法。
【請求項２】
上記走行補助手段は、回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっていることを特徴とする請求項１に記載の遮水壁の構築方法。
【請求項３】
遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの一端を固定した上でその遮水シートをシートロールから引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築するための施工装置であって、
自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるようになっているとともに、
上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けてあり、
上記貫入母機の走行時には、走行補助手段がロール貫入ポストの下端部に走行補助力を付与するようになっていることを特徴とする遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項４】
上記貫入母機はロール貫入ポストの直立度合いを監視する監視手段を備えていることを特徴とする請求項３に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項５】
上記走行補助手段は駆動手段にて回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっていることを特徴とする請求項３または４に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項６】
上記回転翼の先端には地盤に食い込む刃先部を設けてあることを特徴とする請求項５に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項７】
上記回転翼の最下部をロール貫入ポストの最下部よりもさらに下方に位置させてあることを特徴とする請求項５または６に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項８】
上記走行補助手段における駆動手段は油圧を駆動源とするものであることを特徴とする請求項３〜７のいずれか一つに記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項１】
遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの一端を固定した上でその遮水シートをシートロールから引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築する方法であって、
自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるにあたり、
上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けておき、
上記ロール貫入ポストの直立度合いの適否を監視しながら、走行補助手段からの走行補助力を受けて走行するロール貫入ポストの下端部の動きと貫入母機そのものの走行動作とを同期させ、
もって走行中のロール貫入ポストの直立姿勢を維持するようにしたことを特徴とする遮水壁の構築方法。
【請求項２】
上記走行補助手段は、回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっていることを特徴とする請求項１に記載の遮水壁の構築方法。
【請求項３】
遮水シートをロール状に巻き付けてなるシートロールを地中に貫入するとともに、遮水シートの一端を固定した上でその遮水シートをシートロールから引き出しながら展開させて地中に遮水壁を構築するための施工装置であって、
自走能力を有する貫入母機のリーダマストに、シートロールを直立姿勢で支持するロール貫入ポストを昇降可能に装着して、当該ロール貫入ポストをシートロールととともに地中に貫入した上で走行させるようになっているとともに、
上記ロール貫入ポストの下端部に走行補助のための走行補助手段を設けてあり、
上記貫入母機の走行時には、走行補助手段がロール貫入ポストの下端部に走行補助力を付与するようになっていることを特徴とする遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項４】
上記貫入母機はロール貫入ポストの直立度合いを監視する監視手段を備えていることを特徴とする請求項３に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項５】
上記走行補助手段は駆動手段にて回転駆動される回転翼によって走行方向に向かう推進力を発生するようになっていることを特徴とする請求項３または４に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項６】
上記回転翼の先端には地盤に食い込む刃先部を設けてあることを特徴とする請求項５に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項７】
上記回転翼の最下部をロール貫入ポストの最下部よりもさらに下方に位置させてあることを特徴とする請求項５または６に記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【請求項８】
上記走行補助手段における駆動手段は油圧を駆動源とするものであることを特徴とする請求項３〜７のいずれか一つに記載の遮水壁の構築のための施工装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【公開番号】特開２０１２−２０７４４６（Ｐ２０１２−２０７４４６Ａ）
【公開日】平成２４年１０月２５日（２０１２．１０．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−７３８６４（Ｐ２０１１−７３８６４）
【出願日】平成２３年３月３０日（２０１１．３．３０）
【出願人】（０００００２２９９）清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】（０００２０４１９２）太陽工業株式会社 (174)
【出願人】（０００１４０６９４）株式会社加藤建設 (50)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１０月２５日（２０１２．１０．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年３月３０日（２０１１．３．３０）
【出願人】（０００００２２９９）清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】（０００２０４１９２）太陽工業株式会社 (174)
【出願人】（０００１４０６９４）株式会社加藤建設 (50)
【Ｆターム（参考）】
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