説明

遮熱効果シミュレーションプログラム及び遮熱効果シミュレーションシステム

【課題】構造物に遮熱塗料を塗装することによる温度低減の効果を容易に算出し得ると共に、当該効果を理解し易い態様で示す。
【解決手段】コンピュータに、構造物の被塗布部の熱伝導に関する被塗布部情報、構造物に塗布しようとする遮熱塗料の熱伝導に関する遮熱塗料情報を記憶手段3に記憶させ、被塗布部の名称及び遮熱塗料の名称を出力手段に表示させ、被塗布部の名称及び複数の遮熱塗料の名称のそれぞれから入力手段を介して選択されたものである被塗布部の選択名称及び遮熱塗料の選択名称を取得させ、被塗布部情報及び遮熱塗料情報のそれぞれから被塗布部の選択名称及び遮熱塗料の選択名称に対応する被塗布部特性情報及び遮熱塗料特性情報を読み出させ、所定の計算式と被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報及び被塗布部の面積とから遮熱塗料における熱流入量を算出させて出力手段に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物に塗布されて日射による該構造物内部の温度上昇を抑える遮熱塗料の効果を算出する遮熱効果シミュレーションプログラム及び遮熱効果シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部の気温がその周辺に比べて異常な高温を示すヒートアイランドと呼ばれる現象が発生している。ヒートアイランド現象を緩和すべく、種々の対策が検討されているが、その一つとして、構造物を遮熱塗料で塗装することが注目されている。遮熱塗料とは、日射に対して高反射性を有し、構造物外部から内部への熱の流入を低減する断熱性を有する塗料である。
【0003】
遮熱塗料は日射を反射することから、日射により構造物外部から内部に流入する熱(熱流入量という。)を低く抑えることができる。これにより、例えば、構造物の屋根の温度上昇が抑えられ、ヒートアイランド現象の緩和が期待できる。また、室内の温度上昇も抑えられ、エアコンの運転に係る電力負荷を低減することができる。
【0004】
ここで、遮熱塗料が、熱流入量をどれだけ低減するかを測定する技術がある(例えば、特許文献1参照)。かかる技術は、遮熱塗料の日射吸収率を算出し、この日射吸収率に基づいて所定の計算式により熱流入量(貫流熱量)を算出するものである。
【0005】
しかしながら、前記計算式に日射吸収率等の数値を入力することは、特に一般需要者など専門家でない者にとっては煩雑であるという問題がある。遮熱塗料は、その色や塗膜の厚さが異なれば日射吸収率や熱伝導率など熱伝導に関する種々の特性が異なることから、一般需要者は、数ある遮熱塗料に関する特性のうち、塗装しようとするものに関する特性を選択しなければならず、更に、特性を選択したとしても、複雑な前記計算式を用いて熱流入量を計算しなければならない。また、熱流入量を計算したとしても、一般需要者は、その数値がどの程度の温度低減効果をもたらすものであるかを実感し難いという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−39977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、構造物に遮熱塗料を塗装することによる温度低減の効果を容易に算出し得ると共に、当該効果を理解し易い態様で示し得る遮熱効果シミュレーションプログラム及び遮熱効果シミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、構造物に塗布されて日射による該構造物内部の温度上昇を抑える遮熱塗料の効果を算出させる遮熱効果シミュレーションプログラムであって、コンピュータを、前記構造物の前記遮熱塗料が塗布される部位である被塗布部の熱伝導に関する被塗布部特性情報を該被塗布部の名称に関連付けたものである複数の被塗布部情報及び前記遮熱塗料の熱伝導に関する遮熱塗料特性情報に該遮熱塗料の名称を関連付けたものである複数の遮熱塗料情報を記憶手段に記憶させるデータ設定手段と、前記複数の被塗布部情報から複数の前記被塗布部の名称を抽出させて出力手段に表示させると共に、前記複数の遮熱塗料情報から複数の前記遮熱塗料の名称を抽出させて出力手段に表示させる候補表示手段と、前記候補表示手段により表示された複数の前記被塗布部の名称及び複数の前記遮熱塗料の名称のそれぞれから入力手段を介して選択されたものである被塗布部の選択名称及び遮熱塗料の選択名称を取得させる選択名称取得手段と、前記被塗布部情報及び前記遮熱塗料情報のそれぞれから前記被塗布部の選択名称及び前記遮熱塗料の選択名称に対応する被塗布部特性情報及び遮熱塗料特性情報を読み出させる特性情報検索手段と、前記入力手段を介して前記被塗布部の面積を取得させる面積取得手段と、前記構造物外部から内部への熱流入量を算出する所定の計算式に前記被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報及び前記面積を代入して、遮熱塗料における熱流入量を算出させる熱流入量算出手段と、前記遮熱塗料における熱流入量を出力手段に表示させる表示手段として機能させることを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラムにある。
【0009】
かかる第1の態様では、構造物の被塗布部情報、及び遮熱塗料情報が記憶手段に記憶される。これらのうちから遮熱塗料を塗装しようとする構造物の被塗布部の選択名称、及び塗装しようとする遮熱塗料の選択名称に対応する被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報が検索され、これらに基づき遮熱塗料における熱流入量が表示される。
【0010】
すなわち、一般需要者などの利用者には、熱流入量の算出に必要となる被塗布部特性情報、及び遮熱塗料特性情報そのものを調べて入力する必要がなく、被塗布部の名称、及び遮熱塗料の名称の中から、適切なものを選びさえすれば、予め専門家等が設定した正確な被塗布部情報、及び遮熱塗料情報に基づいて算出された熱流入量を得ることができる。このように、一般需要者にとっては、所定の計算式に各種の値を入力するような煩わしさを回避して、遮熱塗料を塗装した場合の熱流入量を容易に得ることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムにおいて、前記データ設定手段は、前記構造物に既に塗装されている旧塗膜の熱伝導に関する旧塗膜特性情報に該旧塗膜の名称を関連付けたものである複数の旧塗膜情報を記憶手段に記憶させ、前記候補表示手段は、前記複数の旧塗膜情報から複数の前記旧塗膜の名称を抽出させて出力手段に表示させ、前記選択名称取得手段は、前記候補表示手段により表示された複数の前記旧塗膜の名称から入力手段を介して選択されたものである旧塗膜の選択名称を取得させ、前記特性情報検索手段は、前記旧塗膜情報から前記旧塗膜の選択名称に対応する旧塗膜特性情報を読み出させ、前記熱流入量算出手段は、前記所定の計算式に前記被塗布部特性情報、前記旧塗膜特性情報及び前記面積を代入して旧塗布膜における熱流入量を算出させ、前記表示手段は、前記遮熱塗料における熱流入量を、前記旧塗膜における熱流入量と比較させて出力手段に表示させることを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラムにある。
【0012】
かかる第2の態様では、構造物に既に塗装された旧塗膜についても熱流入量を別途計算し、この結果である旧塗膜における熱流入量と、遮熱塗料における熱流入量とが比較されて表示される。すなわち、一般需要者等にとっては、遮熱塗料を構造物の被塗布部に塗布するときの効果を、塗装前と比較して知ることができ、実際に遮熱塗料の塗装を実施するか否かの判断を行い易くなる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムにおいて、前記表示手段は、前記旧塗膜における熱流入量と前記遮熱塗料における熱流入量とに基づいて、前記遮熱塗料を前記被塗布部に塗布する前後における前記構造物内部の温度を算出させることを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラムにある。
【0014】
かかる第3の態様では、旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量は、室内温度の低減の程度に換算されて表示されるので、遮熱塗料を塗装した場合の効果が一目瞭然となる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか一つの態様に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムにおいて、前記表示手段は、前記熱流入量算出手段により算出した熱流入量を電力料金に換算して表示することを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラムにある。
【0016】
かかる第4の態様では、旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量は、電力料金に換算されて表示されたため、遮熱塗料を塗装した場合の効果をより把握し易くなる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか一つに記載する遮熱効果シミュレーションプログラムを実行可能なコンピュータであるサーバ装置と、前記サーバ装置に通信手段を介して接続されたコンピュータであるクライアント装置とを具備し、前記遮熱効果シミュレーションプログラムに入力される情報は、前記通信手段を介して、前記クライアント装置の入力機器から入力され、前記遮熱効果シミュレーションプログラムから出力される情報は、前記通信手段を介して、前記クライアント装置の出力機器に表示されることを特徴とする遮熱効果シミュレーションシステムにある。
【0018】
かかる第5の態様では、いわゆるクライアント/サーバ方式により遮熱塗料の効果を算出することができる。これにより、例えば、遠隔地の利用者であっても、構造物の被塗布部の名称等を入力すれば、速やかに遮熱塗料の効果を知ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、構造物に遮熱塗料を塗装することによる温度低減の効果を容易に算出し得ると共に、当該効果を理解し易い態様で示し得る遮熱効果シミュレーションプログラム及び遮熱効果シミュレーションシステムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0021】
〈実施形態1〉
本実施形態に係る遮熱効果シミュレーションプログラムは、通常の塗料が既に塗装された構造物に遮熱塗料を塗装しようとする際に、遮熱塗料を塗装すると構造物外部から内部に流入する熱流入量がどの程度低減するのかを算出する。なお、既に塗装された塗料を旧塗膜という。また、構造物は、日射を受けうるものであれば特に限定されず、例えば、陸上、海上の各種建築物、自動車、船舶等である。
【0022】
図1は、実施形態1に係る遮熱効果シミュレーションプログラムを実行するコンピュータの機能ブロック図である。図示するように、コンピュータ1は、CPU2、RAMやハードディスクドライブ等の記憶手段3、キーボードやマウス等の入力手段4、ディスプレイなどの出力手段5及び通信手段6を備えている。
【0023】
遮熱効果シミュレーションプログラムは、例えば、ハードディスクドライブに記憶されており、CPU2によりハードディスクドライブから読み出され、RAMに書き込まれ、逐次実行される。そして、遮熱効果シミュレーションプログラムは、入力手段4を介してデータが入力され、出力するデータは出力手段5に表示されるようになっている。
【0024】
図2は、実施形態1に係る遮熱効果シミュレーションプログラムの機能ブロック図である。図示するように、遮熱効果シミュレーションプログラム10はデータ設定手段20と、候補表示手段21と、選択名称取得手段22と、特性情報検索手段23と、面積取得手段24と、熱流入量算出手段25と、表示手段26とから構成されている。これらの各手段20〜26は、コンピュータ1で実行されるプログラムとして実装されている。ただし、これらの各手段20〜26は、プログラムとして実行される場合に限定されず、例えば、複数のコンピュータでそれぞれ実行される個別のプログラムであってもよいし、電子回路等のハードウェアで構成されていてもよい。
【0025】
データ設定手段20は、コンピュータ1に、被塗布部情報、遮熱塗料情報及び旧塗膜情報を記憶手段3に記憶させる。
【0026】
被塗布部情報は、構造物の遮熱塗料が塗布される部位である被塗布部の熱伝導に関する被塗布部特性情報を該被塗布部の名称に関連付けたものである。詳言すると、被塗布部情報とは、被塗布部の名称が決まれば、その被塗布部特性情報が一意に定まるように被塗布部特性情報と被塗布部の名称とが組み合わされたものをいう。したがって、屋根の表面素材や断熱材は種々存在することから記憶手段3には複数の被塗布部情報が記憶されることになるが、或る被塗布部の名称を検索キーとすれば、複数の被塗布部情報の中から当該名称に対応する被塗布部特性情報を得ることができる。
【0027】
被塗布部特性情報とは、例えば、被塗布部の厚みや熱伝導率をいう。被塗布部が表面素材と断熱材とからなる場合、表面素材の厚み及び熱伝導率、断熱材の厚み及び熱伝導率が被塗布部特性情報となる。被塗布部の名称は、例えば、被塗布部の材質名、膜厚、又はこれらの組合せを用いることができる。なお、被塗布部は、必ずしも日射を直接受ける部位に限定されない。例えば建物の屋根に断熱材が設けられ、その上に表面素材が設けられている場合、この表面素材と断熱材とが被塗布部となる。
【0028】
遮熱塗料情報は、構造物に塗布される遮熱塗料の熱伝導に関する遮熱塗料特性情報を該遮熱塗料の名称に関連付けたものである。詳言すると、遮熱塗料情報とは、遮熱塗料の名称が決まれば、その遮熱塗料特性情報が一意に定まるように遮熱塗料特性情報と遮熱塗料の名称とが組み合わされたものをいう。したがって、遮熱塗料は種々存在することから記憶手段3には複数の遮熱塗料情報が記憶されることになるが、或る遮熱塗料の名称を検索キーとすれば、複数の遮熱塗料特性情報の中から当該名称に対応する遮熱塗料特性情報を得ることができる。
【0029】
遮熱塗料特性情報とは、例えば、構造物に塗布されたときの遮熱塗料の厚みや、遮熱塗料の熱伝導率、更に相当外気温度をいう。相当外気温度とは、構造物表面に当たる日射量の影響を見込むため、日射量を等価温度に換算し外気温に加えた温度のことをいう。この相当外気温度は、遮熱塗料の日射反射率・日射吸収率に基づいて定められるものである。遮熱塗料が構造物の屋根に複数層塗装される場合、各層毎に、厚み及び熱伝導率を設定する。遮熱塗料の名称としては、例えば、遮熱塗料の商品名、厚さ、若しくは色又はこれらの組合せを用いることができる。
【0030】
旧塗膜情報は、構造物に既に塗布されている旧塗膜の熱伝導に関する旧塗膜特性情報を該旧塗膜の名称に関連付けたものである。詳言すると、旧塗膜情報とは、旧塗膜の名称が決まれば、その旧塗膜特性情報が一意に定まるように旧塗膜特性情報と旧塗膜の名称とが組み合わされたものをいう。したがって、旧塗膜は種々存在することから記憶手段3には複数の旧塗膜情報が記憶されることになるが、或る旧塗膜の名称を検索キーとすれば、複数の旧塗膜特性情報の中から当該名称に対応する旧塗膜特性情報を得ることができる。
【0031】
旧塗膜特性情報とは、例えば、構造物に塗布された旧塗膜の厚みや、旧塗膜の熱伝導率、更に相当外気温度をいう。旧塗膜が構造物の屋根に複数層塗装されている場合、各層毎に、厚み及び熱伝導率を設定する。旧塗膜の名称としては、例えば、旧塗膜の商品名、厚さ、若しくは色又はこれらの組合せを用いることができる。
【0032】
データ設定手段20は、主として、塗装業者などの専門家のために実装されたものである。すなわち、データ設定手段20は、専門家が、測定や知識や経験から得られた被塗布部等についての情報を被塗布部情報、遮熱塗料情報、旧塗膜情報として入力するための手段である。
【0033】
なお、被塗布部特性情報と、被塗布部の名称との関連付けは、例えば被塗布部の名称をキーとし、被塗布部特性情報を値とするハッシュテーブルや、被塗布部の名称及び被塗布部特性情報を一つのレコードとするリレーショナルデータベースなどを利用して実装することができるが、特にこれらに限定されるものではない。遮熱塗料の名称・特性情報、旧塗膜の名称・特性情報の関連付けに関しても同様である。
【0034】
また、被塗布部情報、遮熱塗料情報、及び旧塗膜情報は、キーボード等の入力手段4を介して入力されて設定されてもよいし、CD−ROMなどの記憶媒体を介して入力されて設定されてもよいし、通信手段6を介してダウンロードされて設定されてもよい。
【0035】
候補表示手段21は、コンピュータ1に、記憶手段3に記憶された被塗布部情報から被塗布部の名称を抽出させ、抽出した被塗布部の名称を出力手段5に表示させる。遮熱塗料情報及び旧塗膜情報についても同様であり、候補表示手段21は、コンピュータ1に、記憶手段3に記憶された遮熱塗料情報から遮熱塗料の名称を抽出させ、抽出した遮熱塗料の名称を出力手段5に表示させ、また、記憶手段3に記憶された旧塗膜情報から旧塗膜の名称を抽出させ、抽出した旧塗膜の名称を出力手段5に表示させる。このように、候補表示手段21により、記憶手段3に記憶された全ての被塗布部の名称、遮熱塗料の名称、及び旧塗膜の名称が出力手段5に表示されることになる。
【0036】
なお、出力手段5に表示される各名称の配置、書式等は特に限定はないが、利用者にとって、複数の名称のうち一つを選択しやすいような形式で表示することが好ましい。例えば、被塗布部、遮熱塗料及び旧塗膜のそれぞれについて、GUI部品の一つであるプルダウンリストを用いて名称を表示させてもよい。
【0037】
選択名称取得手段22は、コンピュータ1に、候補表示手段21により表示された複数の被塗布部の名称のうち入力手段4を介して選択されたものである被塗布部の選択名称を取得させる。遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称についても同様であり、選択名称取得手段22は、コンピュータ1に、候補表示手段21により表示された複数の遮熱塗料の名称のうち入力手段4を介して選択されたものである遮熱塗料の選択名称を取得させ、また、候補表示手段21により表示された複数の旧塗膜の名称のうち入力手段4を介して選択されたものである旧塗膜の選択名称を取得させる。
【0038】
特性情報検索手段23は、コンピュータ1に、記憶手段3に記憶された被塗布部情報から選択名称取得手段22により取得した被塗布部の選択名称に対応する被塗布部特性情報を読み出させる。遮熱塗料特性情報及び旧塗膜特性情報についても同様であり、特性情報検索手段23は、コンピュータ1に、記憶手段3に記憶された遮熱塗料情報から選択名称取得手段22により取得した遮熱塗料の選択名称に対応する遮熱塗料特性情報を読み出させ、また、記憶手段3に記憶された旧塗膜情報から選択名称取得手段22により取得した旧塗膜の選択名称に対応する旧塗膜特性情報を読み出させる。
【0039】
ここで、被塗布部特性情報は、被塗布部の名称に関連付けられているので、被塗布部の選択名称と一致する被塗布部の名称を記憶手段3から検索することで、被塗布部の選択名称に対応する被塗布部特性情報が特定される。遮熱塗料特性情報、旧塗膜特性情報についても同様である。
【0040】
面積取得手段24は、コンピュータ1に、入力手段4を介して被塗布部の面積を取得させる。取得された面積は、後述の熱流入量算出手段25により用いられる。なお、被塗布部の面積を直接取得してもよいが、例えば被塗布部の幅と長さをそれぞれ取得し、取得した幅と長さを掛け合わせることで間接的に面積を取得してもよい。
【0041】
熱流入量算出手段25は、コンピュータ1に、遮熱塗料における熱流入量と、旧塗膜における熱流入量とを算出させる。遮熱塗料における熱流入量とは、構造物の被塗布部に遮熱塗料を塗装した際に、構造物外部から内部に流入する熱をいう。また、旧塗膜における熱流入量とは、被塗布部に旧塗膜が塗装されている構造物の外部から内部に流入する熱をいう。
【0042】
遮熱塗料における熱流入量は、所定の計算式に、特性情報検索手段23により読み出された被塗布部特性情報及び遮熱塗料特性情報と、面積取得手段により取得した面積とを代入して算出される。同様に、旧塗膜における熱流入量は、所定の計算式に、特性情報検索手段23により読み出された被塗布部特性情報及び旧塗膜特性情報と、面積取得手段により取得した面積とを代入して算出される。具体的な計算式は後述する。
【0043】
表示手段26は、コンピュータ1に、熱流入量算出手段25により算出された遮熱塗料における熱流入量及び旧塗膜における熱流入量を出力手段5に表示させる。表示手段26は、熱流入量を様々な態様で表示することが可能である。例えば、表示手段26は、遮熱塗料における熱流入量と旧塗膜における熱流入量とを比較して表示する。さらに、表示手段26は、各熱流入量を他の尺度に換算して表示する。例えば旧塗膜における熱流入量と遮熱塗料における熱流入量とに基づいて、遮熱塗料を被塗布部に塗布する前後における構造物内部の温度を算出して表示したり、熱流入量を電力料金に換算して表示する。
【0044】
次に、遮熱効果シミュレーションプログラムの処理手順について説明する。図3は、実施形態1に係る遮熱効果シミュレーションプログラムの処理のフローを示す図である。図示するように、コンピュータ1では、7つの処理が実行される。まず、被塗布部情報、遮熱塗料情報及び旧塗膜情報を記憶するデータ設定処理(ステップS1)が実行される。次に、被塗布部等の名称を表示する候補表示処理(ステップS2)が実行され、この表示に基づいて被塗布部等の選択名称を取得する選択名称取得処理(ステップS3)が実行される。更に、被塗布部の面積を取得する面積取得処理(ステップS4)が実行される。ステップS1、S2、S4は、利用者の選択により任意の順序で実行される。
【0045】
そして、ステップS3で取得した被塗布部等の選択名称から被塗布部特性情報等を検索する特性情報検索処理(ステップS5)が実行され、被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報及び旧塗膜特性情報と、被塗布部の面積から遮熱塗料における熱流入量、及び旧塗膜における熱流入量とを算出する熱流入量算出処理(ステップS6)が実行される。最後に、各熱流入量を出力手段5に表示する表示処理(ステップS7)が実行される。
【0046】
なお、データ設定処理(ステップS1)は、塗装業者等の専門家により少なくとも一度実行され、候補表示処理以降の処理(ステップS2〜ステップS7)は、遮熱塗料を塗装しようとする構造物の所有者などの一般需要者等により、様々な条件で熱流入量を算出しようとするたびに実行される。
【0047】
以下、各処理について詳細に説明する。
[データ設定処理]
データ設定処理は、データ設定手段20により実行されるものであり、被塗布部情報、遮熱塗料情報及び旧塗膜情報を記憶手段3に記憶させる処理である。
【0048】
図4は、データ設定処理の処理フローである。図示するように、データ設定手段20は、被塗布部の名称及び被塗布部特性情報と、遮熱塗料の名称及び遮熱塗料特性情報と、旧塗膜の名称及び旧塗膜特性情報とを入力するための入力フォームをディスプレイに表示させる(ステップS10)。次に、データ設定手段20は、遮熱効果シミュレーションプログラムの利用者からキーボード等を介して被塗布部の名称及び被塗布部特性情報と、遮熱塗料の名称及び遮熱塗料特性情報と、旧塗膜の名称及び旧塗膜特性情報とが入力される(ステップS11)。
【0049】
そして、データ設定手段20は、入力フォームに入力された被塗布部特性情報を被塗布部の名称に関連付けたものを被塗布部情報として記憶手段3に記憶させる。同様に、入力フォームに入力された遮熱塗料特性情報を遮熱塗料の名称に関連付けたものを遮熱塗料情報として記憶手段3に記憶させ、また、入力フォームに入力された旧塗膜特性情報を旧塗膜の名称に関連付けたものを旧塗膜情報として記憶手段3に記憶させる(ステップS12)。
【0050】
データ設定処理でのデータ入力は、主として塗装業者などの専門家により行われる。記憶手段3がハードディスクドライブなどの二次記憶装置のように半永続的に記憶可能な媒体であるならば、データ設定処理は一度実行するだけでよく、熱流入量を算出しようとする度に、次に説明する候補表示処理から実行すればよい。
【0051】
表1に被塗布部を構成する表面素材についての被塗布部情報の一例を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1には、表面素材についての被塗布部情報が計10個示されている。被塗布部番号は、各被塗布部情報を識別するための番号である。例えば被塗布部情報番号が「1000」である被塗布部情報は、被塗布部の名称が「コンクリート(t=50mm)」のように被塗布部の素材と厚さを表す名称となっており、被塗布部特性情報は、膜厚が「50」(単位は[mm])、熱伝導率が「1.38」(単位は[kcal/m・h・℃])となっている。
【0054】
表2に被塗布部を構成する断熱材についての被塗布部情報の一例を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2には、断熱材についての被塗布部情報が計6個示されている。例えば被塗布部情報番号が「1011」である被塗布部情報は、被塗布部の名称が「発泡ウレタン(t=25mm)」のように被塗布部の素材と厚さを表す名称となっており、被塗布部特性情報は、膜厚が「25」(単位は[mm])、熱伝導率が「0.05」(単位は[kcal/m・h・℃])となっている。
【0057】
表3に遮熱塗料特性情報の一例を示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3には、遮熱塗料情報が計13個示されている。遮熱塗料情報番号は、各遮熱塗料情報を識別するための番号である。例えば遮熱塗料情報番号が「2000」である遮熱塗料情報は、遮熱塗料の名称が「白(エコクール)」のように被塗布部の色と商品名を表す名称となっており、被塗布部特性情報は、プライマー膜厚が「0.05」(単位は[mm])、プライマー熱伝導率が「0.43」(単位は[kcal/m・h・℃])、中塗膜厚が「0.1」、中塗熱伝導率が「0.18」、上塗膜厚が「0.06」、上塗熱伝導率が「0.27」、相当外気温度が「40」(単位は[℃])となっている。
【0060】
膜厚と熱伝導率とが、プライマー、中塗、上塗毎に設定されているが、これは遮熱塗料の塗装方法に起因している。つまり、遮熱塗料を構造物に塗装する際には、プライマー塗布工程、遮熱塗料の中塗工程、及び遮熱塗料の上塗工程という3つの工程を行うため、プライマー、中塗及び上塗毎に、膜厚、熱伝導率が設定されている。
【0061】
表4に旧塗膜特性情報の一例を示す。
【0062】
【表4】

【0063】
表4には、旧塗膜情報が計13個示されている。旧塗膜情報番号は、各旧塗膜情報を識別するための番号である。例えば旧塗膜情報番号が「3000」である旧塗膜情報は、遮熱塗料の名称が「カラートタン(コン色)」のように被塗布部の材質と色を表す名称となっており、旧塗膜特性情報は、プライマー膜厚が「0.05」(単位は[mm])、プライマー熱伝導率(単位は[kcal/m・h・℃])が「0.43」、上塗膜厚が「0.06」、上塗熱伝導率が「0.35」、相当外気温度が「75」(単位は[℃])となっている。
【0064】
膜厚と熱伝導率とが、プライマー、上塗毎に設定されているが、これは旧塗膜の塗装方法に起因している。つまり、構造物に塗装された旧塗膜は、プライマー塗布工程、及び旧塗膜の塗料の上塗工程という2つの工程から形成されたため、プライマーと上塗毎に、膜厚、熱伝導率が設定されている。
【0065】
このように、データ設定処理では、被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報、及び旧塗膜特性情報が、被塗布部の名称、遮熱塗料の名称、及び旧塗膜の名称により関連付けられて記憶される。
【0066】
[候補表示処理]
候補表示処理は、候補表示手段21により実行されるものであり、被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称を出力手段5に表示させる処理である。
【0067】
図5は、候補表示処理の処理フローである。図示するように、候補表示手段21は、記憶手段3に記憶されている被塗布部情報、遮熱塗料情報及び旧塗膜情報のうち全ての被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称を読み込む(ステップS20)。次に、これらを所定の配置、書式に整形して出力手段5に表示させる(ステップS21)。
【0068】
出力手段5の一例であるディスプレイに表示した被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称の一例を図6に示す。図6は、出力手段に表示された被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称の画面である。本実施形態では、各名称を、GUI部品の一つであるプルダウンリストによって表示してある。図6(a)に示すように、プルダウンリスト30には、全ての旧塗膜の名称のうちの一つである「ラシッドレッド」が表示されている。これはその表示された「ラシッドレッド」が選択された状態、すなわち選択名称であることを表している。図6(b)に示すように、プルダウンボタン30aをマウスでクリックすることで全ての旧塗膜の名称の一覧30bが表示され、何れか一つ、例えば「モスグリーン」をマウスでクリックすれば、「モスグリーン」が選択名称となる。
【0069】
他の名称についても同様であり、被塗布部を構成する表面素材の名称はプルダウンリスト31により表示され、被塗布部を構成する断熱材の名称はプルダウンリスト32により表示され、遮熱塗料の名称はプルダウンリスト33により表示される。そして、プルダウンボタン31a〜33aをマウスでクリックすることで、被塗布部を構成する表面素材の名称、被塗布部を構成する断熱材の名称及び遮熱塗料の名称を一覧表示させ、いずれか一つを選択することができるようになっている。
【0070】
[選択名称取得処理]
選択名称取得処理は、選択名称取得手段22により実行されるものであり、被塗布部の選択名称、遮熱塗料の選択名称及び旧塗膜の選択名称を取得させる処理である。
【0071】
図7は、選択名称取得処理の処理フローである。図示するように、選択名称取得手段22は、候補表示処理により表示された旧塗膜の名称のうち利用者により選択されたものである旧塗膜の選択名称を取得する(ステップS30)。本実施形態では、図6に示したように、プルダウンリスト30で表示されているものが旧塗膜の選択名称として取得されることとなる。
【0072】
同様に、選択名称取得手段22は、候補表示処理により表示された被塗布部(表面素材、断熱材のそれぞれについて)の名称のうち利用者により選択されたものである被塗布部の選択名称を取得し(ステップS31)、候補表示処理により表示された遮熱塗料の名称のうち利用者により選択されたものである遮熱塗料の選択名称を取得する(ステップS32)。そして、取得した旧塗膜の選択名称、被塗布部の選択名称及び遮熱塗料の選択名称を記憶手段3に記憶させる(ステップS33)。
【0073】
選択名称取得処理でのデータ入力、及び後述する面積取得処理でのデータ入力は、主として遮熱塗料を塗装仕様とする構造物の所有者などの一般需要者や、遮熱塗料の営業担当者などにより行われることを想定している。熱流入量を算出しようとする度に、一般需要者は、選択名称取得処理及び後述する面積取得処理でデータ入力をすることとなる。
【0074】
本実施形態では、選択名称取得処理により、例えば、被塗布部(表面素材)の選択名称として「電気亜鉛メッキ(t=2.5)」(表1参照)が取得され、被塗布部(断熱材)の選択名称として「グラスウール(t=50mm)」(表2参照)が取得され、遮熱塗料の選択名称として「白(エコクール)」(表3参照)が取得され、旧塗膜の選択名称として「電気亜鉛メッキ(ρ=0.6)」(表4参照)が取得されたとする。
【0075】
[特性情報検索処理]
特性情報検索処理は、特性情報検索手段23により実行されるものであり、ユーザにより入力された被塗布部の選択名称、遮熱塗料の選択名称及び旧塗膜の選択名称に対応する被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報及び旧塗膜特性情報を記憶手段3から検索する処理である。
【0076】
図8は、特性情報検索処理の処理フローである。図示するように、特性情報検索手段23は、記憶手段3に記憶された被塗布部情報から、選択名称取得処理で取得した被塗布部の選択名称に対応する被塗布部特性情報を検索する(ステップS40)。本実施形態では被塗布部は表面素材と断熱材とからなるので、表面素材と断熱材のそれぞれについて被塗布部特性情報を検索する。表5、表6に、検索結果を示す。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
表5に示すように、記憶手段3の被塗布部情報(表面素材)から、選択名称取得処理で取得された被塗布部(表面素材)の選択名称である「電気亜鉛メッキ(t=2.5)」に対応する被塗布部特性情報が検索される。すなわち、被塗布部(表面素材)の選択名称「電気亜鉛メッキ(t=2.5)」が取得されると、膜厚が「2.5」[mm]であり、熱伝導率が「97.2」[kcal/m・h・℃]である被塗布部特性情報が検索される。
【0080】
同様に、表6に示すように、記憶手段3の被塗布部情報(断熱材)から、選択名称取得処理で取得された被塗布部(断熱材)の選択名称である「グラスウール(t=50mm)」に対応する被塗布部特性情報が検索される。すなわち、被塗布部(断熱材)の選択名称「グラスウール(t=50mm)」が取得されると、膜厚が「50.0」[mm]であり、熱伝導率が「0.04」[kcal/m・h・℃]である被塗布部特性情報が検索される。
【0081】
以降、遮熱塗料及び旧塗膜についてもそれぞれ特性情報を検索する。すなわち、特性情報検索手段23は、記憶手段3に記憶された遮熱塗料情報から、選択名称取得処理で取得した遮熱塗料の選択名称に対応する遮熱塗料特性情報を検索する(ステップS41)。次いで、特性情報検索手段23は、記憶手段3に記憶された旧塗膜情報から、選択名称取得処理で取得した旧塗膜の選択名称に対応する旧塗膜特性情報を検索する(ステップS42)。表7、表8に、検索結果を示す。
【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
表7に示すように、ステップS41の処理によれば、記憶手段3の遮熱塗料情報から、選択名称取得処理で取得された遮熱塗料の選択名称である「白(エコクール)」に対応する遮熱塗料特性情報が検索される。すなわち、遮熱塗料の選択名称「白(エコクール)」が取得されると、プライマー膜厚・熱伝導率、中塗膜厚・中塗熱伝導率、上塗膜厚・上塗熱伝導率、及び相当外気温度が表7の如く検索される。
【0085】
同様に、表8に示すように、ステップS42の処理によれば、記憶手段3の旧塗膜情報から、選択名称取得処理で取得された旧塗膜の選択名称である「電気亜鉛メッキ(ρ=0.6)」に対応する旧塗膜特性情報が検索される。すなわち、旧塗膜の選択名称「電気亜鉛メッキ(ρ=0.6)」が取得されると、プライマー膜厚・熱伝導率、上塗膜厚・上塗熱伝導率、及び相当外気温度が表8の如く検索される。
【0086】
[面積取得処理]
面積取得処理は、面積取得手段24により実行されるものであり、被塗布部の面積を取得させる処理である。
【0087】
図9は、面積取得処理の処理フローである。図示するように、面積取得手段24は、被塗布部の面積を入力するための入力フォームをディスプレイに表示させる(ステップS50)。次に、面積取得手段24は、コンピュータ1に、遮熱効果シミュレーションプログラムの利用者からキーボード等を介して被塗布部の面積を入力させる(ステップS51)。そして、面積取得手段24は、入力フォームに入力された被塗布部の面積を記憶手段3に記憶させる(ステップS52)。
【0088】
被塗布部の面積を入力するための入力フォームをディスプレイに表示した例を図10に示す。図10は、出力手段に表示された被塗布部の面積の入力画面である。本実施形態では、被塗布部の面積を、GUI部品の一つであるテキストボックスに入力させる。図10に示すように、ラベル40には、被塗布部の面積を入力すべきことを促す文字列が表示され、テキストボックス41には、利用者から被塗布部の面積が入力される。
【0089】
[熱流入量算出処理]
熱流入量算出処理は、熱流入量算出手段25により実行されるものであり、特性情報検索処理で検索された各特性情報と、面積取得処理で取得された面積とを、所定の計算式に代入して、遮熱塗料における熱流入量と、旧塗膜における熱流入量とを算出する処理である。
【0090】
図11は、熱流入量算出処理の処理フローである。図示するように、熱流入量算出手段25は、特性情報検索処理で検索された被塗布部特性情報及び旧塗膜特性情報と、面積取得処理で取得された面積とを、以下の計算式に代入して、旧塗膜における熱流入量を算出する(ステップS60)
【0091】
【数1】

【0092】
表9に各変数の意味を示すと共に、具体例として、表5〜表7に示した特性情報検索処理により検索された値と、面積取得処理により取得した値と、これらの値から計算された旧塗膜における熱流入量Qとを示す。なお、表9中、外表面熱伝達率の逆数、及び内表面熱伝達率の逆数は、ユーザの選択にかかわらず用いられる定数である。
【0093】
【表9】

【0094】
次に、熱流入量算出手段25は、特性情報検索処理で検索された被塗布部特性情報及び遮熱塗料特性情報と、面積取得処理で取得された面積とを、以下の計算式に代入して、遮熱塗料における熱流入量を算出する(ステップS61)。
【0095】
【数2】

【0096】
表10に各変数の意味を示すと共に、具体例として、表5、表6、表8に示した特性情報検索処理により検索された値と、面積取得処理により取得した値と、これらの値から計算された遮熱塗料における熱流入量Qとを示す。
【0097】
【表10】

【0098】
[表示処理]
表示処理は、表示手段26により実行されるものであり、旧塗膜における熱流入量、遮熱塗料における熱流入量を出力手段5に表示させる処理である。
【0099】
図12は、表示処理の処理フローである。図示するように、表示手段26は、熱流入量算出処理で算出された旧塗膜における熱流入量をディスプレイに表示させ(ステップS70)、熱流入量算出処理で算出された遮熱塗料における熱流入量をディスプレイに表示させる(ステップS71)。
【0100】
ここで、各熱流入量は、種々の態様で表示することができる。図13及び図14は、旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量の表示例である。図13に示すように、旧塗膜における熱流入量と、遮熱塗料における熱流入量とを比較して表示することができる。更に、各熱流入量を例えばキロワットアワー(KWh)に換算して表示させてもよい。また、旧塗膜における熱流入量と遮熱塗料における熱流入量との比率を計算して、この結果を、遮熱塗料を塗装した場合の熱流入量低減効果として表示させてもよい。
【0101】
また、図14に示すように、各熱流入量を換算したキロワットアワーに係る電力料金を算出して、旧塗膜のときの電力料金と遮熱塗料に塗装したときの電力料金とを比較・表示させてもよい。また、各熱流入量やこの比較例、換算結果は文字列として表示する場合だけではなく、図形や画像とともに表示させてもよい。
【0102】
その他、遮熱塗料における熱流入量から、構造物内部の温度がどの程度変化するかを算出してもよい。また、遮熱塗料における熱流入量やこれを換算した電力料金等を、構造物の被塗布部の面積で割った商を、単位面積当たりの熱流入量や電力料金として表示させてもよい。
【0103】
上記に説明した遮熱効果シミュレーションプログラムでは、専門家等により、データ設定処理によって構造物の被塗布部情報、遮熱塗料情報、及び旧塗膜情報が記憶手段3に記憶される。一方、遮熱効果シミュレーションプログラムは、遮熱塗料を塗装しようとする構造物の被塗布部や旧塗膜の名称、及び塗装しようとする遮熱塗料の名称が選択されれば、旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量を一般需要者に表示する。
【0104】
すなわち、一般需要者は、熱流入量の算出に必要となる被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報、及び旧塗膜特性情報そのものを調べて入力する必要がなく、被塗布部の名称、旧塗膜の名称、及び遮熱塗料の名称の中から、適切なものを選びさえすれば、予め専門家が設定した正確な被塗布部情報、遮熱塗料情報及び旧塗膜情報に基づいて算出された熱流入量を得ることができる。このように、一般需要者にとっては、数1・数2に示したような計算式に各種の値を入力するような煩わしさを回避して、遮熱塗料を塗装した場合の熱流入量を容易に得ることができる。
【0105】
また、表示処理において、旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量は、比較されて表示されたり、電力料金や室内温度の低減の程度など別の尺度に換算されて表示されたため、遮熱塗料を塗装した場合と旧塗膜のままである場合との差異が一目瞭然となる。すなわち、一般需要者にとっては、遮熱塗料を構造物の被塗布部に塗布した場合の効果を容易に知ることができ、実際に遮熱塗料の塗装を実施するか否かの判断を行い易くなる。
【0106】
他に、塗装業者の営業担当者が、顧客に代わり遮熱効果シミュレーションプログラムを操作するという利用態様も可能である。この場合、営業担当者が顧客にヒアリングを行い、被塗布部の名称、旧塗膜の名称、及び遮熱塗料の名称から顧客の現状・要望に該当するものを遮熱効果シミュレーションプログラムに入力すれば、速やかに遮熱塗料を塗装した場合の効果を顧客に伝えることができる。
【0107】
なお、表示処理においては、旧塗膜における熱流入量と、遮熱塗料における熱流入量とを比較させて出力手段5に表示させたが、必ずしも比較して表示させる必要はなく、遮熱塗料における熱流入量を単独で表示させてもよい。この場合においても、遮熱塗料における熱流入量を計算する煩雑さを回避して、遮熱塗料による効果を知ることができる。
【0108】
〈実施形態2〉
実施形態1では、一台のコンピュータ1で実行された遮熱効果シミュレーションプログラムについて説明したが、通信手段を介して接続されたコンピュータであるサーバ装置とクライアント装置とで実行されてもよい。
【0109】
図15は、実施形態2に係る遮熱効果シミュレーションシステムの概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し重複する説明を省略する。図示するように、サーバ装置100は、インターネット(図示せず)を介してクライアント装置200、クライアント装置210、クライアント装置220及びクライアント装置230に所定のデータを送受信可能にそれぞれ接続されている。
【0110】
図16は、実施形態2に係る遮熱効果シミュレーションシステムの機能ブロック図である。なお、クライアント装置210、220、230は、クライアント装置200と同様に機能するので表示を省略してある。
【0111】
図示するように、サーバ装置100は、実施形態1のコンピュータと同様にCPU、記憶手段、入力装置、出力装置、及び通信手段6等のハードウェアを具備し、遮熱効果シミュレーションプログラム10を実行するよう構成されている。一方、クライアント装置200〜230は、CPU、記憶装置(RAM・ハードディスク等)、入力手段204(キーボード・マウス等)、出力手段205(ディスプレイ等)、通信手段206等を備える一般的なコンピュータである。なお通信手段6及び通信手段206はインターネットを介してクライアント装置200〜230及びサーバ装置100とデータの送受信を行う機能を実現するものである。
【0112】
また、サーバ装置100はウェブサーバ機能を有し、クライアント装置200〜230はウェブブラウザがインストールされている。サーバ装置100の各手段20〜26から各クライアント装置200〜230に対する情報は、HTMLで記述されて送信される。一方、各クライアント装置200〜230からサーバ装置100の各手段20〜26に対する情報は、ウェブブラウザにより、ウェブサーバで解釈可能な形式で記述されて送信される。
【0113】
上記サーバ装置100で実行される遮熱効果シミュレーションプログラム10は、候補表示手段21、選択名称取得手段22、面積取得手段24、及び表示手段26についての入出力が、通信手段6・通信手段206を介してクライアント装置200の入力手段204及び出力手段205との間で行われる。
【0114】
詳言すると、実施形態2に係る候補表示処理は、候補表示手段21により実行されるものであり、被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称を通信手段6を介してクライアント装置200の出力手段205に表示させる処理である。
【0115】
候補表示手段21は、記憶手段3に記憶されている被塗布部情報、遮熱塗料情報及び旧塗膜情報のうち全ての被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称を読み込む。次に、これらをHTMLなどの所定の書式に整形して通信手段6を介してクライアント装置200に送信する。この所定の書式に整形された被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称は、クライアント装置200のウェブブラウザにより解釈されて、図6と同様に、被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称が出力手段205に表示される。
【0116】
実施形態2に係る選択名称取得処理は、選択名称取得手段22により実行されるものであり、被塗布部の選択名称、遮熱塗料の選択名称及び旧塗膜の選択名称を通信手段6を介してクライアント装置200から取得させる処理である。
【0117】
まず、入力手段204の操作により、旧塗膜の名称のうち利用者により選択されたものである旧塗膜の選択名称がサーバ装置100に送信される。次に、送信された旧塗膜の選択名称が、選択名称取得手段22に入力される。
【0118】
同様に、入力手段204の操作により、被塗布部(表面素材、断熱材のそれぞれについて)の名称のうち利用者により選択されたものである被塗布部の選択名称がサーバ装置100に送信される。次に、送信された被塗布部の選択名称が、選択名称取得手段22に入力される。また、入力手段204の操作により、遮熱塗料の名称のうち利用者により選択されたものである遮熱塗料の選択名称がサーバ装置100に送信される。次に、送信された遮熱塗料の選択名称が、選択名称取得手段22に入力される。
【0119】
実施形態2に係る面積取得処理は、面積取得手段24により実行されるものであり、被塗布部の面積を通信手段6を介してクライアント装置200から取得させる処理である。
【0120】
まず、面積取得手段24により面積を取得するための入力フォームが通信手段6を介してクライアント装置200に送信され、その入力フォームが出力手段205に表示される。次に、入力手段204の操作により、入力フォームに面積が入力され、該面積がサーバ装置100に送信される。そして、送信された被塗布部の面積が、面積取得手段24に入力される。
【0121】
実施形態2に係る表示処理は、表示手段26により実行されるものであり、旧塗膜における熱流入量、遮熱塗料における熱流入量を通信手段6を介してクライアント装置200の出力手段205に表示させる処理である。
【0122】
表示手段26は、熱流入量算出処理で算出された旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量をHTMLなどの所定の書式に整形して通信手段6を介してクライアント装置200に送信する。この所定の書式に整形された旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量は、クライアント装置200のウェブブラウザにより解釈されて、図13乃至図14のように出力手段205に表示される。
【0123】
以上に説明したように、実施形態2に係る遮熱効果シミュレーションシステムでは、いわゆるクライアント/サーバ方式により遮熱塗料の効果を算出することができる。これにより、例えば、遠隔地の利用者であっても、構造物の被塗布部の名称等を入力すれば、速やかに遮熱塗料の効果を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】実施形態1に係る遮熱効果シミュレーションプログラムを実行するコンピュータの機能ブロック図である。
【図2】実施形態1に係る遮熱効果シミュレーションプログラムの機能ブロック図である。
【図3】実施形態1に係る遮熱効果シミュレーションプログラムの処理のフローを示す図である。
【図4】データ設定処理の処理フローである。
【図5】候補表示処理の処理フローである。
【図6】出力手段に表示された被塗布部の名称、遮熱塗料の名称及び旧塗膜の名称の画面である。
【図7】選択名称取得処理の処理フローである。
【図8】特性情報検索処理の処理フローである。
【図9】面積取得処理の処理フローである。
【図10】出力手段に表示された被塗布部の面積の入力画面である。
【図11】熱流入量算出処理の処理フローである。
【図12】表示処理の処理フローである。
【図13】旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量の表示例である。
【図14】旧塗膜における熱流入量及び遮熱塗料における熱流入量の表示例である。
【図15】実施形態2に係る遮熱効果シミュレーションシステムの概略構成図である。
【図16】実施形態2に係る遮熱効果シミュレーションシステムの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0125】
1 コンピュータ
2 CPU
3 記憶手段
4 入力手段
5 出力手段
6 通信手段
10 遮熱効果シミュレーションプログラム
20 データ設定手段
21 候補表示手段
22 選択名称取得手段
23 特性情報検索手段
24 面積取得手段
25 熱流入量算出手段
26 表示手段
30〜33 プルダウンリスト
30a プルダウンボタン
30b 一覧
40 ラベル
41 テキストボックス
100 サーバ装置
200、210、220、230 クライアント装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に塗布されて日射による該構造物内部の温度上昇を抑える遮熱塗料の効果を算出させる遮熱効果シミュレーションプログラムであって、コンピュータを、
前記構造物の前記遮熱塗料が塗布される部位である被塗布部の熱伝導に関する被塗布部特性情報を該被塗布部の名称に関連付けたものである複数の被塗布部情報及び前記遮熱塗料の熱伝導に関する遮熱塗料特性情報に該遮熱塗料の名称を関連付けたものである複数の遮熱塗料情報を記憶手段に記憶させるデータ設定手段と、
前記複数の被塗布部情報から複数の前記被塗布部の名称を抽出させて出力手段に表示させると共に、前記複数の遮熱塗料情報から複数の前記遮熱塗料の名称を抽出させて出力手段に表示させる候補表示手段と、
前記候補表示手段により表示された複数の前記被塗布部の名称及び複数の前記遮熱塗料の名称のそれぞれから入力手段を介して選択されたものである被塗布部の選択名称及び遮熱塗料の選択名称を取得させる選択名称取得手段と、
前記被塗布部情報及び前記遮熱塗料情報のそれぞれから前記被塗布部の選択名称及び前記遮熱塗料の選択名称に対応する被塗布部特性情報及び遮熱塗料特性情報を読み出させる特性情報検索手段と、
前記入力手段を介して前記被塗布部の面積を取得させる面積取得手段と、
前記構造物外部から内部への熱流入量を算出する所定の計算式に前記被塗布部特性情報、遮熱塗料特性情報及び前記面積を代入して、遮熱塗料における熱流入量を算出させる熱流入量算出手段と、
前記遮熱塗料における熱流入量を出力手段に表示させる表示手段として機能させる
ことを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムにおいて、
前記データ設定手段は、前記構造物に既に塗装されている旧塗膜の熱伝導に関する旧塗膜特性情報に該旧塗膜の名称を関連付けたものである複数の旧塗膜情報を記憶手段に記憶させ、
前記候補表示手段は、前記複数の旧塗膜情報から複数の前記旧塗膜の名称を抽出させて出力手段に表示させ、
前記選択名称取得手段は、前記候補表示手段により表示された複数の前記旧塗膜の名称から入力手段を介して選択されたものである旧塗膜の選択名称を取得させ、
前記特性情報検索手段は、前記旧塗膜情報から前記旧塗膜の選択名称に対応する旧塗膜特性情報を読み出させ、
前記熱流入量算出手段は、前記所定の計算式に前記被塗布部特性情報、前記旧塗膜特性情報及び前記面積を代入して旧塗布膜における熱流入量を算出させ、
前記表示手段は、前記遮熱塗料における熱流入量を、前記旧塗膜における熱流入量と比較させて出力手段に表示させる
ことを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラム。
【請求項3】
請求項2に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムにおいて、
前記表示手段は、前記旧塗膜における熱流入量と前記遮熱塗料における熱流入量とに基づいて、前記遮熱塗料を前記被塗布部に塗布する前後における前記構造物内部の温度を算出させる
ことを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムにおいて、
前記表示手段は、前記熱流入量算出手段により算出した熱流入量を電力料金に換算して表示する
ことを特徴とする遮熱効果シミュレーションプログラム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する遮熱効果シミュレーションプログラムを実行可能なコンピュータであるサーバ装置と、
前記サーバ装置に通信手段を介して接続されたコンピュータであるクライアント装置とを具備し、
前記遮熱効果シミュレーションプログラムに入力される情報は、前記通信手段を介して、前記クライアント装置の入力機器から入力され、
前記遮熱効果シミュレーションプログラムから出力される情報は、前記通信手段を介して、前記クライアント装置の出力機器に表示される
ことを特徴とする遮熱効果シミュレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図6】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−229238(P2009−229238A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74716(P2008−74716)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】