説明

遮熱用木製パネル

【課題】屋上屋根、ベランダ、バルコニーに設置する遮熱効果が高く、パネル同士の連結が容易であり現場施工がしやすく、さらに、廃棄時において分離分別廃棄処理がしやすい木製パネルを提供する。
【解決手段】木製の矩形板材を複数枚並べて正方形に形成した天板100、200、300に中脚部材500、天板と同様に形成した中敷板400、下脚部材600を交互に接合して2段構造のパネルとし、かつ、木製の連結部材によって複数パネルを連結可能にした遮熱用木製パネル10とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上屋根、ベランダ、バルコニーなどにおいて使用する遮熱用木製パネル(以下パネルという)に関する。
【背景技術】
【0002】
特願2001−373564号(以下、特許文献1という)に、木製の矩形の床板2を復数枚並べて正方形を形成したものの裏面側をゴム等の硬質柔軟性部材からなる連結材3によって連結してなる床板1の周側面に中央部分に間隙材9を有する連結棒8からなる連結具7によって相互に連結するための連結穴5を形成したこと(解決手段)の記載がある。
【特許文献1】特願2001−373564号(解決手段)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1には、具体的な遮熱効果が明記されていないこと、木製の床板2を連結材3で連結するためにボルト等の係止具4で止着していることから廃棄時において係止具4に錆が発生し分離分別廃棄処理がしにくいこと、床板1同士を連結するためには連結穴5と連結具7と接合する方法では現場施工が困難などの問題点がある。
本発明は、遮熱効果が明確なこと、パネル同士の連結を容易にすることなどの課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、木製の矩形の板材複数枚並べて正方形を形成した天板に中脚部材と中敷板と下脚部材とを交互に接合した天板と中敷板との2段構造とし、天板と中敷板との間および中敷板と設置下部地面との間の空気層による断熱作用によって、屋上屋根、ベランダ、バルコニーの表面温度を下げる遮熱効果を有し、かつ、木製の連結部材によって複数連結を可能とした、新規なパネルを実現したものである。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように本発明により、市場の要請する遮熱効果を有し、パネル同士の連結が容易で現場施工しやすいパネルができた。また、廃棄時には分離分別が容易であり木質バイオマス資源として再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明パネルの一例を示す図である。図1に示すように、本発明パネル10は、天板100(4枚)と、天板200(1枚)と、天板300(2枚)と、中敷板400(6枚)と、中脚部材500(3本)と、下脚部材600(3本)と、丸棒700(6本)からなる。
パネル上で人が歩行することが想定されることと遮熱性の向上を目的とし、天板100、200、300同士の隙間は設けない。
天板100、200、300と中敷板間400との間の排水性の向上を目的とし、中敷板間400同士の隙間は遮熱性に影響を及ぼさない20mm以下とした。
図2に示すように、天板100、200、300及び中敷板400が中脚部材500及び下脚部材600から逸脱しないように、下脚部材600の両端の裏面の6箇所から、板材300にいたる部分に、穴を開け丸棒700を挿入する。図3に示すように、接合部材800を連結溝910、920、930、940にかみ合せて挿入し複数枚のパネル10を連結する。
【0007】
図4、図5に示すように、天板100、天板200は、矩形の板材の裏面の3箇所に中脚部材を嵌め込み接合するための凹部110、120、130を形成したものである。
図6に示すように、天板材300は、矩形の板材の裏面の3箇所に中脚部材を嵌め込み接合するための凹部110、120、130を形成し、長さ方向片側の前後の3箇所に連結部材800を用いて遮熱用木製パネル10同士を連結するための溝340、350を形成したものである。
図7に示すように、中敷板400は、矩形の板材の表面と裏面の6箇所に中脚部材や下脚部材を嵌め込み接合するための凹部410、420、430、440、450、460を形成したものである。
図8に示すように、中脚部材500は、断面が矩形の角材の上面と下面に天板100、200、300や中敷板材400を嵌め込み接合するための凸部を形成したものである。
凸部510と凹部110、210、310とが接着剤や金属接合具等の補助資材を必要とすることなくかみ合わせることが可能なように、凸部510の幅を凹部110、210、310の幅と同一か少しだけ大きく形成し、天板材100、200、300及び中敷板400は中脚部材500及び下脚部材600で蟻接合等によってかみ合うように形成した。
図9に示すように、下脚部材600は、断面が矩形の角材の上面に中敷板材400を嵌め込み接合するための凸部を形成したものである。
図10に示すように、丸棒700は、天板100、200、300及び中敷板400が中脚部材500及び下脚部材600から逸脱しないように下脚部材600の裏面から天板材300にいたる部分の6箇所に挿入するための丸棒である。
図11、図12に示すように、連結部材800は、中心部に溝820がある矩形の板850を十字状に組み合わせたものである。
【0008】
本発明品の遮熱用パネル上で人が歩行することが想定されることから、安全を考慮し一般床用フローリング材の最低厚さの12mmを天板や中敷板材の厚さの下限とし、かつ、ビル屋上などで本発明品のパネルを持ち運びや設置が容易にできるように、パネル1台の総重量が20kgを越えないように算出した22mmを天板や中敷板材の厚さの上限とした。
天板や中敷板材の厚さを22mmの場合の中脚部材や下脚部材の断面の最大寸法はパネル1台の総重量が20kgを越えないように算出し42×42mmとした。
天板や中敷板材の厚さを12mmの場合の中脚部材や下脚部材の断面の最大寸法はパネル1台の総重量が20kgを越えないように算出し70×70mmとした。
中脚部材や下脚部材の断面の最低寸法は接合加工が可能な有効加工寸法の20×20mmとした。
ビル屋上などで本発明品のパネルを持ち運びや設置が容易にできるように、パネル1台の総重量が20kgを越えないように算出し、幅(500〜1000mm)×奥行き(500〜1000mm)×高さ(64〜164mm)とした。

【実施例1】
【0009】
図1、図2に示すように本発明のパネル10は、天板100(4枚)と、天板200(1枚)と、天板300(2枚)と、中敷板400(6枚)と、中脚部材500(3本)と、下脚部材600(3本)と、丸棒700(6本)からなる。
【0010】
図4に示すように天板100は厚み22mm幅150mm長さ1000mmの矩形板である。天板100裏面には蟻溝110、120、130がある。110の上面111は25mmである。下面112は18.7mmである。深さ113は8mmである。蟻溝120、130は110と同様の寸法である。天板100の裏面部171、174の長さは40.7mmである。天板裏面172、173は431.3mmである。
【0011】
図5に示すように天板200は厚み22mm幅100mm長さ1000mmの矩形板である。天板200裏面には蟻溝210、220、230がある。蟻溝210、220、230は天板100の蟻溝110、120、130と同寸法で同位置にある。
【0012】
図6に示すように天板300は厚み22mm幅150mm長さ1000mmの矩形板である。 天板300裏面には蟻溝310、320、330がある。蟻溝310、320、330は天板100の蟻溝110、120、130と同寸法で同位置にある。 天板300には溝340、350がある。溝340は341が141mm、342が6mm、343が22mm、344が17.9mm、345が10mmの溝である。350は340と対称な位置にあり同寸法である。
【0013】
図8に示すように中脚部材500は長さ1000mm厚み45mm幅45mmの角材を552が29mm、553が45mm、554が25mm、555が18.7mmに加工した部材である。
【0014】
図7に示すように中敷板400は長さ1000mm厚み22mm幅150mmの矩形板である。中敷板400表面には蟻溝440、450、460がある。蟻溝440、450、460は天板100の蟻溝110、120、130と対称な位置にあり同寸法である。中敷板400裏面には蟻溝410、420、430がある。蟻溝410、420、430は天板100の蟻溝110、120、130と同寸法で同位置にある。
【0015】
図9に示すように下脚部材600は長さ1000mm厚み45mm幅45mmの角材を652が37mm、653が45mm、654が25mm、655が18.7mmに加工した部材である。
【0016】
図10に示すように接合丸棒材700は直径711が10.5mm、長さ712が101mmの円柱状の木材棒である。
【0017】
図1に示すように天板100、4枚と天板200、1枚と天板300、2枚を中脚部材500、3本に接合した。天板100、天板200、天板300それぞれの裏面にある3箇所の蟻溝凹部に中脚部材の凸部510を組み込んだ。天板100、200、300が中脚部材500に組み込まれる配列は端から300、100、100、200、100、100、300である。
【0018】
中脚部材500の凸部520に中敷板400の上面凹部440、450,460を組み合わせた。中敷板を組み合わせた時、中敷板材の間隔を20mm空けた。
【0019】
中敷板下面凹部410、420、430に下脚部材600の凸部610を組み合わせた。
【0020】
図2に示すようにパネル10の裏面下脚部材600の幅の中央部で端から75mmの位置6箇所で天板300に至る穴をあけ丸棒700を挿入した。
【0021】
図11に示すように接合部材800は厚み6mm幅50mm長さ51mmの矩形板850を2枚、十字状に組み合わせたものである。850の中央部には幅6mm、深さ25.5mmの溝がある。パネル10を複数枚並べて設置する場合、溝340、350が十字形状の連結溝910として形成される。 図3に示すように接合部材800を連結溝910にかみ合せて挿入し複数枚のパネル10を連結した。
【実施例2】
【0022】
3月下旬のコンクリート面に1段構造の遮熱用木製パネルおよび2段構造のパネルを設置し、パネルを設置していないコンクリート表面とパネルの設置下部のコンクリート表面の温度を測定した。
パネルの寸法を縦1000×横1000×高さ140mmとした。1段構造のパネルには厚さが22mm、隙間0mmの天板を取りつけた。2段構造のパネルには厚さが22mm、隙間0mmの天板と厚さが22mm、隙間20mmの中敷板を取りつけた。
表1に測定結果を示す。パネルを設置していないコンクリート面の最高到達温度が42.4℃を示したのに対し、1段構造のパネル下面の同温度が20.7℃を、2段構造のパネル下面の同温度が19.5℃を示し、いずれも遮熱性が得られることを確認した。両者を比較すると、2段構造のパネルがより遮熱性に優れることを確認した。
[比較例1]
【0023】
実施例と同様に、市販されている「すのこ」を1段(1枚)または2段(2枚重ね)にしてコンクリート面に設置し、設置下部の温度を測定した。
「すのこ」は「杉製すのこ」と「桐製すのこ」の2種を用いた。「杉製すのこ」の寸法は縦853×横630×高さ40mmであり、厚さが12mm、隙間9mmの天板が取り付けてある。「桐製すのこ」の寸法は縦780×横750×高さ30mmであり、厚さが10mm、隙間43mmの天板が取り付けてある。
表1に測定結果を示す。「すのこ」を1段設置するより2段にして設置するほうが最高到達温度を抑えることができた。しかし、本発明の2段パネルのほうが、1.3〜5.8℃も遮熱効果が高いことを確認した。
【0024】
【表1】

【実施例3】
【0025】
7月下旬の炎天下のコンクリート面に1段構造の遮熱用木製パネルおよび2段構造のパネルを設置し、パネルを設置していないコンクリート表面とパネルの設置下部のコンクリート表面の温度を測定した。表2に測定結果を示す。最高到達温度は、パネルを設置していないコンクリート面62.9℃、1段構造の木製パネル設置下部のコンクリート面41.0℃、2段構造の木製パネル設置下部のコンクリート面38.1℃となり、22.6〜25.5℃の温度上昇抑制を確認した、また、2段構造のパネルの方が約3℃も遮熱効果が高いことを確認した。
【0026】
【表2】

【実施例4】
【0027】
9月初旬の炎天下のコンクリート面に天板の隙間を0mm又は5mmや中敷板の隙間0mm又は20mmとしたパネル構造の異なる2段構造の遮熱用木製パネルを設置し、パネルを設置していないコンクリート表面とパネルの設置下部のコンクリート表面の温度を測定した。表3に測定結果を示す。パネルを設置していないコンクリート面の最高到達温度は68.0℃、パネル設置下部のコンクリート面では36.1℃、コンクリート面との最大温度差は33.0℃となり、2段構造の本パネルの遮熱効果が高いことを確認した。天板や中敷板の隙間によるパネル構造の違いによる温度分布の変化は特に認められなかった。
【0028】
【表3】


【実施例5】
【0029】
秋季および冬季の1ヶ月間、家屋を想定した実験箱の頭上に、天板の隙間を0mm又は5mmや中敷板の隙間0mm又は20mmとしたパネル構造の異なる二段構造の遮熱用木製パネル2種設置し、実験箱内の温度を測定した。表4に測定結果を示す。秋季では、木製パネルを設置した実験箱内の最高到達温度が約30.5℃を示し、パネル未設置の実験箱内の温度に比べ約7℃下回ることを確認した。冬季では、14.6〜15.2℃を示し、同じく約5℃下回ることを確認した。また、最高温度−最低温度で示される温度差についても、秋季では、約21.5℃を示し、パネル未設置の実験箱内の温度に比べて約7℃下回ることを確認した。冬季では、17.4〜18.2℃を示し、同じく約6〜7℃下回ることを確認した。天板や中敷板の隙間によるパネル構造の違いによる温度分布の変化は特に認められなかった。これらの結果からパネルを設置することにより室内において温度上昇の抑制と温度変化の緩和効果があると確認した。
【0030】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に関わる遮熱用木製パネル10の一実施の形態を示す斜視図
【図2】図1に関わる遮熱用木製パネルの一実施の形態を示す裏面の斜視図
【図3】図1に関わる遮熱用木製パネルの一実施の形態を示す複数連結の斜視図
【図4】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材天板100の形態を示す斜視図
【図5】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材天板200の形態を示す斜視図
【図6】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材天板300の形態を示す斜視図
【図7】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材中敷板400の形態を示す斜視図
【図8】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材中脚部材500の形態を示す斜視図
【図9】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材下脚部材600の形態を示す斜視図
【図10】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材丸棒材700の形態を示す斜視図
【図11】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材接合部材800の使用形態を示す斜視図
【図12】図1に関わる遮熱用木製パネルの一部材接合部材850の形態を示す斜視図
【符号の説明】
【0032】
10 遮熱用木製パネル
100 天板1
200 天板2
300 天板3
400 中敷板
500 中脚部材
600 下脚部材
700 丸棒
800 接合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の天板と中敷板との2段構造からなる遮熱用木製パネル。
【請求項2】
木製の連結部材によって、複数連結を可能とした、請求項1に記載の遮熱用木製パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−57271(P2008−57271A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237646(P2006−237646)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(306031456)佐藤製材株式会社 (1)
【出願人】(591224788)大分県 (31)
【Fターム(参考)】