説明

遮熱金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物

【課題】金網を使用することにより、建造物の外装材の損傷や、植物の根が外壁の隙間等に侵入することがあり、また金網自体が高熱を帯び、植物の生長を妨げ、枯らせてしまう問題がある。
【解決手段】植物の蔓を巻きつける金網に遮熱性塗料を塗布し、金網自体が高熱を帯びることを防ぎ、また、該金網にプラスチック、ポリカルボナート製等のペレットを装着することにより植物の生長を促す役目をし、植物育成ブロックを取り入れることから、簡易に接合可能な金網工法を使用し、該ブロック内の土壌となるものは、土を使わず貯水と排水の2つの機能をもつスポンジやマット等を取り入れることにより、メンテナンス費の削減につながる低層及び中高層用工法。単体ブロックの接続によりブロックを約幅3m、長さ約3m程度のブロックパネルとし、ブロックの大型化を図り中高層工法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の壁面を緑化する壁面緑化工法に於いて、真球度の高い球状金属酸化物粒子を含有する塗料(以下、遮熱性塗料という)を塗布した金網基材を使用し、植物育成ブロックを構築する。また、植物育成ブロックを固定させるものは、軽量のH型鋼を使用し、施工時間を短縮させる。さらに詳しくは、植物育成ブロックの接合部分は、プラスチック、ポリカルボナート製等のペレットを装着し、植物の生長が促進される工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な気温上昇は、日々、深刻化しているのが現状である。日本においては、屋上緑化や壁面緑化は、自治体による助成金制度の対象となり、また、企業においては環境改善の最大のアピールとなり、ヒートアイランド現象の緩和に貢献するだけでなく、省エネ、外観からのリラックス効果、集客等など注目を集めている。しかしながら、壁面の緑は、土壌の量や、厚みが少ないため強い日差しと建造物風にさらされ乾燥しやすく、植物繁殖性においては問題点となっている。
【0003】
また、熱吸収の研究は進んでいるものの、壁面緑化による外装材の損傷を避ける方法や、植物の根が外壁の隙間に侵入するのを回避する方法などの周辺の研究はあまり進んでいない。つまり、壁面緑化に使用される金網自体が高熱を帯び、植物の生長を妨げ、さらには枯らせてしまうケースが多い。植物が枯れた際の損害は、撤去や植え替えなどの費用が甚大なものになってしまう。
【0004】
さらには、灌水設備工事等をする緑化壁面の場合、施工期間が長くかかり、しかも工事費用は莫大なものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/104290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、以上の事実を鑑み、本発明は、壁面緑化による外壁の損傷をなくし、植物の育成を助長し、且つ、緑化壁面の簡易な工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、本発明者は、植物の蔓などが巻きつく金網に遮熱性塗料を塗布することで、太陽熱等による金網自体の温度を上げることなく、植物の育成を助けることが可能であることを見いだした。
【0008】
遮熱性塗料金網には、植物の蔓が巻きつき易くするために、プラスチック、ポリカルボナート製等のペレットを装着することを特徴とする。
【0009】
植物育成プランターには、気温の変化に応じて、植物に最適な状態を提供できる貯水と排水の2つの機能をもつ長期使用可能なスポンジやマット等を、土の代替物として使用することを特徴とする。さらには、雨露を植物育成プランターに貯めやすくするため、風雨に強く劣化しづらい板状物をプランターの両脇に設置する。
【0010】
植物育成プランターに遮熱性塗料を塗布した金網で被覆し、1つの植物育成ブロックとし、設置時間の短縮を図る。
【0011】
また、さらに施工時間の短縮を目的として、軽量H型鋼を支柱に取り付け、植物育成ブロックを固定し敷設する。植物育成(幅(直径)約50cm、奥行約20cm、高さ20cm程度)の単体のブロックを包み込む金網の接合部分には、凹凸状のジョイント面をもつブロックを装着させる。また、前記単体ブロックを接合した幅約3m、長さ3m程度のブロック接合パネルを用いて中高層植物壁を構築する。
【発明の効果】
【0012】
本発明を実施すると以下の効果が得られる。
<1> 建物自体に外装の損傷がなくなり、さらには、都市型ヒートアイランドを防ぎ、CO2削減及び環境への効果が得られる。
<2> 壁面緑化建造物の外観は、癒しとリラックス効果を周囲の人たちに提供できる。企業においては、環境改善をアピールすることができ、企業全体のイメージアップにつながる。
<3> 遮熱性塗料を塗布した金網を使用することにより、世界中の熱帯地方や日本の夏場など、強い日差しによる影響で金網が高熱を帯びることなく、植物の生長を助けることが可能になる。
<4> プラスチック、ポリカルボナート製等のペレットを蔓が絡む金網に装着することにより、植物の生長を助長する役目をする。
<5> 育成ブロックの接合部分を簡易化することにより、従来の施工期間に比べ、大幅な時間短縮及び施工費用の削減につながる。
<6> 土を使用しないことにより、定期的にかかるメンテナンス費の削減が可能となり、また、土の代替物として使用されるスポンジやマット等は、植物に最適な貯水と排水機能をもつことから、植物の乾燥を防ぎ、植物が萎びたり、枯れる被害を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の全体構成図(側面図)である。
【図2】本発明の一実施形態における植物育成プランターの概念を示した全体構成図である。
【図3】本発明の一実施形態における植物育成プランターの概念を示した真上図である。
【図4】本発明の一実施形態における植物育成プランターの概念を示した側面図である。
【図5】本発明の一実施形態における植物育成ブロックの概念を示した図である。
【図6】本発明の一実施形態における金網接合ブロックの概念を示した図である。
【図7】本発明の一実施形態における軽量H型鋼及びペレットを装着した金網の概念を示した全体構成図である。
【図8】本発明の一実施形態における中高層建造物用に使用する植物育成ブロックを接合したブロック接合パネルの概念を示した全体図である。
【図9】本発明の一実施形態における低層建造物用に使用する植物育成ブロックの概念を示した全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が行いうる変更、改良を施した種々の形態について実施することができる。本発明全体の概略構成について説明すると、図1、図2、図3及び図8の全体構成図に示すように、植物育成プランター(1−1)、雨露収集用板状物(1−2)、土の代替物として使用されるスポンジやマット(1−3)、植物育成ブロック(1−1、1−2、1−3及び1−4)、遮熱性塗料を塗布した金網(2)、ペレット(4)、金網結合ブロック(3−1及び3−2)、軽量H型鋼(5)、遮熱金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物の支柱から構成させることを特徴とする。
【0015】
まず、植物育成ブロック(1−5)に関して説明する。図3に示すように、植物育成プランター本体に(1−1)、雨露の収集率を上げる板状物(1−2)を装着する。植物育成プランター内には、風雨に流されやすい土を使用せず、貯水と給排水に優れたスポンジまたはマット(1−3)を使用、気温の変化に応じて低温では水を吸収・保持、高温では水分の蒸発を防御、また、雨水が多量に貯まる際は、排水機能を持ち合わせる。これにより、植物に最適な状態での貯水、給水、排水を繰り返すことが可能となる。また、該スポンジまたはマットに緩効性固形化成肥料(1−4)を設置することにより、雨露による給水のたびに少しずつ溶けだしゆっくりと長い間肥効が可能となる。
【0016】
次に、前記の植物育成をさらに伸長させるために、図6及び図7に記載のある遮熱性塗料を塗布した金網(2)、ペレット(4)について詳しく説明する。壁面緑化に使用される金網自体が高熱を帯び、植物の生長を妨げないように、遮熱性塗料を塗布した金網を該発明全体に使用する。また、金網にペレットを装着し凹凸をつけることにより植物の蔓が金網に巻きつき易くなり、植物育成を助長させる。
【0017】
壁面緑化工事の施工時間短縮のため、図6に記載のある金網結合ブロック(3−1及び3−2)について詳しく説明する。該結合ブロックは、凹凸の形状から成り、植物育成プランターを金網で覆う際等に使用される。結合ブロックは、各隅等に使用し、左右上下に凹凸を結合して相当数のブロックが一体的構造となるように配する。この工法により遮熱性塗料金網で、植物育成プランターを覆い、1つの植物育成ブロック(1−5)が完成し、施工時間をさらに短縮することが可能となる。
【0018】
軽量H型鋼(5)に関して説明する。図7が示すように、金網結合ブロックにより固定された植物育成ブロック(1−5)を軽量H型鋼にはめ込むように敷設する。軽量H型鋼は、支柱(6)に取り付け、H型鋼は建造物の大きさにより数個設置する。
【0019】
さらに、単体ブロックの接合によるブロック壁(図9)は低層用とし、図8は単体ブロックを接合した幅約3m、長さ3m程度を1枚のブロックパネルとして中高層用の植物壁を構築する。尚、このブロックパネルの大きさは、建造物の大きさに応じて適宜変更できるものとする。
【符号の説明】
【0020】
1 遮熱金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物全体図
1−1 遮熱性塗料を塗布した植物育成プランター
1−2 遮熱性塗料を塗布した雨露収集用板状物
1−3 培養土代用基材
1−4 緩効性化成肥料(置き肥)
1−5 遮熱性塗料を塗布した植物育成ブロック
2 遮熱性塗料を塗布した金網
3 3−1 金網接合ブロック凹部分
3−2 金網接合ブロック凸部分
4 遮熱性塗料を塗布したペレット
5 遮熱性塗料を塗布した軽量H型鋼
6 遮熱性塗料を塗布した支柱
7 建造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物は、縦横鋼線の金網に真球度の高い球状金属酸化物粒子を含有する水系塗料組成物からなる熱線反射層が少なくとも該基材に2重に被覆し、さらにプラスチック、ポリカルボナート製等のペレットを備えることによりつる等が絡みやすくなり、中空においての風圧に耐えて安定する緑壁をつくり、植物の育成を助長することを特徴とする金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項2】
請求項1の熱線反射層を形成する水系塗料組成物は、水系アクリル塗料、水系アルキドーポリエステル塗料、水系ポリウレタン塗料、水系フッ素樹脂塗料、水系エポキシ塗料、シリコーン変性アクリル塗料など一般的に水系塗料組成物に含有される組成物を適宜、含有することができることを特徴とする請求項1の金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項3】
前記熱線反射層の水系塗料組成物に配合される真球度の高い球状金属酸化物粒子がシリカであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項4】
請求項1の球状金属酸化物粒子の真球度が0.7以上である請求項1〜3のいずれかの金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項5】
請求項1〜4の水系塗料組成物を塗布した植物育成プランターの外側はプラスチック系の軽くて丈夫な基材を使用し、その中に敷く土の代替物は貯水と給排水に優れたスポンジまたはマットを使用し、気温の変化に応じて低温では水を吸収・保持、高温では水分の蒸発を防御、また、雨水が多量に貯まる際は、排水機能を持ち合わせることを特徴とする金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項6】
請求項5の植物育成プランターの雨露の収集率を上げるため、水系塗料組成物を塗布した板状物を該植物育成プランターに斜めに敷設することを特徴とする金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項7】
請求項5および請求項6は、建造物の大きさに応じて請求項1〜4の金網に数個のブロックを設置させる単体ブロック、中高層はブロックパネルを構築することを特徴とする金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項8】
請求項7において請求項1〜4の水系塗料組成物を塗布した金網の接合部分は、凹凸からなるジョイント面を持ち合わせることを特徴とする金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。
【請求項9】
請求項7の数個の植物育成ブロックは、請求項1〜4の水系塗料組成物を塗布した軽量のH型鋼とすることを特徴とする金網基材の植物育成ブロック及び壁面構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−92040(P2011−92040A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247252(P2009−247252)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(596018137)
【Fターム(参考)】