説明

遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造

【課題】 発電効率の向上とコストの低減化が可能であり、かつ、設置作業の効率化が可能な遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造の提供。
【解決手段】 高速道路等の側部に沿って所定間隔の基に立設されたH型鋼からなる遮音パネル取付用支柱11、11間に掛け渡して取り付け可能な取付基台2と、該取付基台2に取り付け可能な複数枚の太陽電池パネル3と、を備え、取付基台2における太陽電池パネル3の取付面が、遮音パネル取付用支柱11に対する取付基台2の取付面に対し上向きに所定角度傾斜している構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路等の側部に設置される遮音壁に太陽電池パネルを後付けするための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遮音壁を構成する遮音パネルの片面に太陽電池を一体に組み込んだ構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−2117号公報
【特許文献2】特開2010−229770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構造にあっては、以下に述べる問題点があった。
すなわち、従来の構造は、太陽電池が遮音パネルと一体構造であったため、コストが高く付く。
また、遮音壁に太陽電池一体型遮音パネルを取り付けると、太陽電池が垂直状態になって太陽光の受光傾斜角度が大きくなるため、発電効率が悪くなる。
さらに、既に設置されている遮音パネルを取り外し、太陽電池一体型遮音パネルを取り付ける必要があるため、既に設置されている遮音壁の取り外し作業の手間が余分にかかるだけでなく、既に設置された遮音壁が無駄になる。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、発電効率の向上とコストの低減化が可能であり、かつ、設置作業の効率化が可能な遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、
高速道路等の側部に沿って所定間隔の基に立設されたH型鋼などからなる遮音パネル取付用支柱間に掛け渡して取り付け可能な取付基台と、
該取り付け基台に取り付け可能な複数枚の太陽電池パネルと、
を備え、
前記取付基台における前記太陽電池パネルの取付面が、前記遮音パネル取付用支柱に対する取付基台の取付面に対し上向きに所定角度傾斜していることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記太陽電池パネルの傾斜角度が上向きに30度以上であることを特徴とする手段とした。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記複数枚の太陽電池パネルは太陽電池モジュールと該太陽電池モジュールの外周4辺を囲むフレームを備え、
前記各太陽電池パネルにおけるフレームの左右両上部には落下防止用ワイヤを挿通可能な挿通孔を備えていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明では、上述のように、高速道路等の側部に沿って所定間隔の基に立設されたH型鋼などからなる遮音パネル取付用支柱間に掛け渡して取り付け可能な取付基台と、該取付基台に取り付け可能な複数枚の太陽電池パネルと、を備えた構成としたことで、既に設置されている遮音パネルを取り外すことなしに遮音壁に太陽電池パネルを取り付けることができる。
従って、既に設置された遮音パネルをそのまま利用することができるため、全体としてコストの低減化が可能であり、かつ、設置作業の効率化が可能になる。
また、取付基台における太陽電池パネルの取付面が、遮音パネル取付用支柱に対する取付基台の取付面に対し上向きに所定角度傾斜している構成としたことで、太陽電池パネルを上向き傾斜状態で設置することができる。
従って、太陽電池パネルを垂直状態に設置する場合に比べ、太陽光の受光傾斜角度が小さくなるため、発電効率を向上させることができる。
なお、受光傾斜角度とは、太陽電池パネルの受光面に対し直交する線からの傾斜角度を意味し、この受光傾斜角度が小さい程発電効率がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】太陽電池パネルの取り付けが行われる遮音壁を示す平面図である。
【図2】本発明実施例1の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造を示す正面図である。
【図3】本発明実施例1の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造を示す拡大側面図である。
【図4】図3のA−A線における横断面図である。
【図5】傾斜台座を示す拡大斜視図である。
【図6】太陽電池パネルを示す拡大縦断面図である。
【図7】落下防止用ワイヤを示す一部切欠正面図である。
【図8】他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、この実施例1の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造を図面に基づいて説明する。
【0013】
この遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造は、図1〜4に示すように、遮音壁1と、取付基台2と、4枚の太陽電池パネル3と、を備えている。
遮音壁1は、高速道路等の側部に沿って所定間隔の基に立設されたH型鋼からなる遮音パネル取付用支柱11、11と、隣接する両支柱11、11の溝部に差し込み装着される複数枚の遮音パネル12とで構成されている。
【0014】
取付基台2は、既に設置されている遮音壁1に太陽電池パネル3を上向き傾斜状に後付けするためのもので、隣接する両支柱11、11間に掛け渡して取り付ける構造になっている。
【0015】
すなわち、この取付基台2は、隣接する両支柱11、11間に掛け渡した状態で取り付ける上下2本の取付部材21、21と、該取付部材21の両端部をそれぞれ支柱11に固定するためのブラケット22と、取付部材21、21に対し太陽電池パネル3を上向き傾斜状に取付固定するための傾斜台座23と、隣接する両傾斜台座23、23間における上下2本の取付部材21、21間を斜めに連結する第1補強部材24と、隣接する両傾斜台座23、23の底部を斜めに連結する第2補強部材25とで構成されている。
【0016】
上下両取付部材21は下面側を開放した断面コ字状のアルミ−亜鉛合金メッキ鋼板で構成されている。
ブラケット22は、断面L字状のアルミ−亜鉛合金メッキ鋼板で構成されている。
第1補強部材24と第2補強部材25は、断面L字状のアルミ−亜鉛合金メッキ鋼板で構成されている。
【0017】
傾斜台座23は、図3に示すように、遮音壁1側の垂直辺23aと底辺23bがほぼ直角の直角三角形で、太陽電池パネル取付辺23c側が垂直辺23aに対し上向き30度の角度で傾斜する形状をなしている。
また、図5に示すように、傾斜台座23の垂直辺23aには取付部材21、21に取付固定するための取付片23dが折曲形成され、太陽電池パネル取付辺23cには太陽電池パネル3を取付固定するための取付片23eが折曲形成されている。
また、傾斜台座23の底辺23bには第2補強部材25を取付固定するための取付片23fが折曲形成されている。
また、傾斜台座23には、軽量化と風圧抵抗軽減化のための開口部23gが形成されている。
【0018】
太陽電池パネル3は、図6に示すように、太陽電池モジュール31と、該太陽電池モジュール31の外周4辺を囲む状態で組み付けられるフレーム32とで構成されている。
フレーム32は、内側が開口するコ字状断面に形成され、その左右両上部には後述の落下防止用ワイヤ4の係合部41を挿通可能な挿通孔32aが形成されている。
【0019】
落下防止用ワイヤ4は、その長さが両支柱11、11間の距離Wより少し長めに形成され、図7に示すように、その両端に落下防止用ワイヤ4より大径の係合部41を備えている。
そして、図5に示すように、取付部材21、21の両端部にそれぞれ取付固定された傾斜台座23、23の上部には、落下防止用ワイヤ4の両端部に備えた係合部41を挿通可能な挿通穴26aと幅が係合部41より小径でかつワイヤ4の径より広い係合スリット26bからなる鍵穴状係合部26が形成されている。
なお、各部材の取付固定部には、ボルト挿通孔が形成されている。
【0020】
次に、実施例1の作用を説明する。
この実施例1の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造にあっては、上述のように構成されるため、遮音壁1に太陽電池パネル3を取り付けるには、まず、両支柱11、11間に掛け渡す状態で取付基台2を取り付ける。
すなわち、まず、両支柱11、11間に掛け渡す状態で上下両取付部材21、21をブラケット22を介して取り付ける。
次に、上下両取付部材21、21に傾斜台座23を取り付け固定する。
次に、隣接する両傾斜台座23、23間における上下2本の取付部材21、21間に斜めに第1補強部材24を取り付け、隣接する両傾斜台座23、23の底部間に斜めに第2補強部材25を取り付けて補強する。
【0021】
次に、所定間隔の基に隣接する両傾斜台座23の取付片23eに太陽電池パネル3のフレーム32を取り付け固定することにより、消音壁1に対する太陽電池パネル3の取り付けを完了する。
なお、各部材の取付はボルト締結で行われるが、溶接するようにしてもよい。
【0022】
また、各太陽電池パネル3のフレーム32に形成された挿通孔32aに落下防止用ワイヤ4を挿通し、該落下防止用ワイヤ4の両端部に備えた係合部41を、図5に示すように、左右端部位置の傾斜台座23に形成された鍵穴状係合部26の挿通穴26aに挿通した後、落下防止用ワイヤ4を係合スリット26bに移動させることにより、落下防止用ワイヤ4の両端部を傾斜台座23に固定する。
【0023】
次に、この実施例1の効果を説明する。
(1)この実施例1の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造では、上述のように、高速道路等の側部に沿って所定間隔の基に立設されたH型鋼からなる遮音パネル取付用支柱11、11間に掛け渡して取り付け可能な取付基台2と、該取付基台2に取り付け可能な複数枚の太陽電池パネル3と、を備えた構成としたことで、既に設置されている遮音パネル12を取り外すことなしに遮音壁1に太陽電池パネル3を取り付けることができる。
従って、既に設置された遮音パネル12をそのまま利用することができるため、全体としてコストの低減化が可能であり、かつ、設置作業の効率化が可能になる。
【0024】
(2)また、取付基台2における太陽電池パネル3の取付面が、遮音パネル取付用支柱11に対する取付基台2の取付面に対し上向きに所定角度傾斜している構成としたことで、太陽電池パネル3を上向き傾斜状態で設置することができる。
従って、太陽電池パネル3を垂直状態に設置する場合に比べ、太陽光の受光傾斜角度が小さくなるため、発電効率を向上させることができる。
なお、受光傾斜角度とは、太陽電池パネル3の受光面に対し直交する線からの傾斜角度を意味し、この受光傾斜角度が小さい程発電効率がよくなる。
【0025】
(3)また、太陽電池パネル3の傾斜角度を上向きに30度以上とすることで、太陽電池パネルの取付作業性を高めることができる。すなわち、太陽電池パネル3の傾斜角度が小さいと遮音壁1と太陽電池パネル3との間の隙間が狭くなるため、作業性が悪くなる。
【0026】
(4)また、複数枚の太陽電池パネル3は、そのフレーム32の左右両上部に落下防止用ワイヤ4の係合部41を挿通可能な挿通孔32aを備えることで、この挿通孔32aに挿通した落下防止用ワイヤ4の両端を取付基台2や支柱11に固定することで、太陽電池パネル3の落下を防止することができる。
【0027】
(5)また、落下防止用ワイヤ4の両端に係合部41を備え、傾斜台座23の上部に、鍵穴状係合部26を備えることで、該落下防止用ワイヤ4の両端部に備えた係合部41を、傾斜台座23に形成された鍵穴状係合部26の挿通穴26aに挿通した後、落下防止用ワイヤ4を係合スリット26bに移動させることにより、落下防止用ワイヤ4の両端部を傾斜台座23に対し簡単に固定することができる。
【0028】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0029】
例えば、実施例では、太陽電池パネル3のフレーム32に落下防止用ワイヤ4を挿通可能な挿通孔32aを形成したが、図8に示すように、落下防止用ワイヤ4の係合部41を挿通可能な挿通孔51を有する金具5をフレーム32に取り付けるようにしてもよい。
【0030】
また、取付基台は、防音パネル取付用支柱11への取付面に対し、太陽電池パネル取付面が上向き傾斜状になる物であれば、実施例1の取付基台2の構造には限定されない。
【符号の説明】
【0031】
1 遮音壁
11 遮音パネル取付用支柱
12 遮音パネル
2 取付基台
21 取付部材
22 ブラケット
23 傾斜台座
23a 垂直辺
23b 底辺
23c 太陽電池パネル取付辺
23d 取付片
23e 取付片
23f 取付片
23g 開口部
24 第1補強部材
25 第2補強部材
26 鍵穴状係合部
26a 挿通穴
26b 係合スリット
3 太陽電池パネル
31 太陽電池モジュール
32 フレーム
32a 挿通孔
4 落下防止用ワイヤ
41 係合部
W 支柱間の距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速道路等の側部に沿って所定間隔の基に立設されたH型鋼などからなる遮音パネル取付用支柱間に掛け渡して取り付け可能な取付基台と、
該取り付け基台に取り付け可能な複数枚の太陽電池パネルと、
を備え、
前記取付基台における前記太陽電池パネルの取付面が、前記遮音パネル取付用支柱に対する取付基台の取付面に対し上向きに所定角度傾斜していることを特徴とする遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造において、
前記太陽電池パネルの傾斜角度が上向きに30度以上であることを特徴とする遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造において、
前記複数枚の太陽電池パネルは太陽電池モジュールと該太陽電池モジュールの外周4辺を囲むフレームを備え、
前記各太陽電池パネルにおけるフレームの左右両上部には落下防止用ワイヤを挿通可能な挿通孔を備えていることを特徴とする遮音壁に対する太陽電池パネルの後付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−180665(P2012−180665A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43699(P2011−43699)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(508001431)西日本高速道路メンテナンス九州株式会社 (7)
【出願人】(506192803)大東金属株式会社 (5)
【出願人】(511054466)日創プロニティ株式会社 (3)
【出願人】(591060544)ヒノマル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】