説明

遷移金属で触媒されるヒドロホルミル化用のビスホスファイト配位子

本発明は、式中のX=置換又は非置換の2価のビスアルキレン−又はビスアリーレン基であり、Y=置換又は非置換の2価のビスアリーレン−又はビスアルキレン基であり、Z=酸素又はNRであり、かつR、R、R、Rは同じ又は異なるもので、置換又は非置換の、結合した、結合していない又は縮合したアリール−又はヘテロアリール基であり、Rは、水素又は置換又は非置換のアルキル−又はアリール基である、式(I)のビスホスファイト、その製造法並びにこのホスファイトを触媒反応で、殊にオレフィン又はC−C−二重結合を有する有機化合物の触媒作用ヒドロホルミル化で使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式Iのビスホスファイト、その製造法並びにこのビスホスファイトを触媒反応で使用することに関する。
【0002】
触媒の存在下におけるアルケン(オレフィン)、一酸化炭素及び水素の間の反応で、炭素原子1個富化されたアルデヒドを生じさせることは、ヒドロホルミル化(オキシ化)と称されている。この反応での触媒としては、屡々、元素周期律表の第VIII群の遷移金属化合物、殊にロジウム及びコバルトの化合物が使用されている。ロジウムを用いるヒドロホルミル化は、コバルト触媒の使用に比べて通例は、より高い活性を提供し、従って概ねより経済的である。ロジウムで触媒されるヒドロホルミル化の場合には、概ねロジウム及び好ましくは配位子としての3価の燐化合物から成る錯体が使用されている。公知の配位子は、例えばホスファン(ホスフィン)、ホスフィナイト、ホスホナイト及びホスファイトの群からのものである。オレフィンのヒドロホルミル化の標準に関する良好な概観が、CORNILS,B.,HERRMANN,W.A.,"Applied Homogeneous Catalysis with Organo-metallic Compounds",Vol.1&2,VCH,Weinheim,New York 1996及びMattias Beller発行のWIESE,K,D.,OBST,D.,:Top.Organomet.Chem.Vol.18,Springer Verlag 2006,中に、並びに特にロジウム−触媒されるヒドロホルミル化に関して:VANLEEUWEN,P., CLAVER,C., "Rhodium catalyzed hydroformylation",Springer 2000及びVANLEEUWEN,P. "Homogeneous Catalysis:Understanding the Art",Springer 2005中に記載されている。
【0003】
触媒系(コバルト又はロジウム並びに好適な配位子)の選択は、それぞれ選択される基質及び所望の目標化合物に依存して決まっている。これに関して次にいくつかの例を記載する:
場合により極性基での置換によって形成される水溶性形のトリフェニルホスファンは、比較的低い圧力において、オレフィンを高い選択率で、末端位ヒドロホルミル化して、即ちn−アルデヒドにするために、高い配位子/ロジウム−比で使用されるべきである、最も頻繁に見出される配位子である。
【0004】
ビスホスファン配位子及び低い合成ガス圧におけるオレフィンのヒドロホルミル化でのその使用が、例えばUS4694109及びUS4879416中に記載されている。WO95/30680中には、触媒反応(更にヒドロホルミル化反応も)での2座ホスファン配位子の使用が明らかにされている。特許US4169861、US4201714及びUS4193943中には、ヒドロホルミル化用の配位子としてのフェロセン架橋されたビスホスファンが記載されている。
【0005】
モノホスファイトも、通常の場合に望まれる末端位ヒドロホルミル化された化合物に関する低い選択性にもかかわらず、内部位二重結合を有する分枝したオレフィンのロジウム触媒作用ヒドロホルミル化のための好適な配位子である。EP0155508は、立体障害されたオレフィン、例えばイソブテンのロジウム触媒作用ヒドロホルミル化の場合の、ビスアリーレン置換されたモノホスファイトの使用を記載している。
【0006】
ロジウム−ビスホスファイト−錯体は、末端位−及び内部位二重結合を有する線状オレフィンのヒドロホルミル化を触媒し、この際に、主に末端位アルデヒドが生じさせるが、95%を上回る選択率は珍しいことである。このようなホスファイトは、通常の場合には、非常に加水分解不安定である。ホスファイト配位子を得るための出発物質としての置換されたビスアリールジオールの使用は、EP0214622又はEP0472071中に記載のように著しい改良をもたらした。
【0007】
金属で触媒されるヒドロホルミル化反応で最も頻繁に起こる副反応又は後続反応は、例えばオレフィンからアルカンまで又はアルデヒドからアルコールまでの水素化並びに二重結合の異性化である。EP1201675及びUS2006100453中では、後者を、O−アシルホスファイト配位子を用いて、内部位アルケンを先ず異性化して末端位オレフィンにし、次いでこれを末端位でヒドロホルミル化してn−アルデヒドにするために利用している。EP0472071は、2−ブテンのヒドロホルミル化時に、中程度のn−選択率で高い異性化活性を示す、構造的に類似のロジウム−ビホスファイト触媒を記載している。しかしながらこの異性化活性は、逆に末端位オレフィンをも内部位アルケンまで異性化し、この際、後者は熱力学的に安定な特定物であるので、時として望ましくない。
【0008】
異性化しない配位子群は、B.Breit et al.によりChem. Eur.J.2006,12,6930−6939中に示されているホスファバレル(Phosphabarrelene)である。これを用いて、2−オクテンは充分に異性化なしに、単に62:38のレギオ選択性で、2−メチルオクタナール及び2−エチルヘプタナールに変換された。ここには、末端位オレフィンのヒドロホルミル化は記載されていなかった。
【0009】
しかしながら通常の場合には、末端位ヒドロホルミル化された生成物が望まれている。従って例えば、オレフィンの末端位ヒドロホルミル化及び引き続く水素化により得られるアルコール由来の可塑剤(例えばフタレート)は、プラスチック中での(例えばPVC中での)使用時に、例えば弾性に関して、分枝したアルデヒドをベースとする可塑剤よりもより好適な特性を有する。
【0010】
複数の二重結合を有する化合物のヒドロホルミル化も、概ね、非連続の(個々の)生成物を得るために、非異性化性で高選択性の触媒を必要としている。
【0011】
従って本発明の課題は、EP0472071中に記載のロジウム−ビスホスファイト触媒から出発して、特に末端位二重結合の末端ヒドロホルミル化(即ち高いn/イソ−比でアルデヒドをもたらす末端位ヒドロホルミル化)を促進し、特別好ましくは低い異性化活性を有する、選択的なビスホスファイト配位子を提供することでもあった。末端位二重結合は、特に非常に高いn/イソ−比で、ヒドロホルミル化されるべきである。更に、本発明によるビスホスファイト配位子は、特にEP0472071中の記載のそれよりも高い加水分解安定性を有すべきである。
【0012】
意外にもこの課題は、式I:
【化1】

[式中、X=1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアルキレン−又はビスアリーレン基、
Y=1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアリーレン−又はビスアルキレン基、
Z=酸素又はNR
、R、R、Rは同一又は異なるもので、置換又は非置換の、結合した又は結合していない、縮合した又は縮合していないアリール−又はヘテロアリール基であり、
=水素又は1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換のアルキル−又はアリール基である]のビスホスファイト配位子によって解決されることを発見した。
【0013】
従って本発明の目的物は、式I:
【化2】

[式中、
X=1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアルキレン−又はビスアリーレン基、
Y=置換又は非置換の2価のビスアリーレン−又はビスアルキレン基、
Z=酸素又はNR
、R、R、Rは同一又は異なるもので、置換又は非置換の、結合した又は結合していない、縮合した又は縮合していないアリール−又はヘテロアリール基であり、
=水素又は置換又は非置換のアルキル−又はアリール基である]のビスホスファイト並びに配位子として式Iのようなビスホスファイトを有している金属錯体である。
【0014】
同様に本発明の目的は、式Iのビスホスファイトを製造する方法である。
【0015】
更に本発明の目的は、式Iのビスホスファイト又は式Iのビスホスファイトを含有している金属錯体を、触媒反応で、殊にヒドロホルミル化で使用することである。
【0016】
本発明による化合物は、次の利点を有する:EP0472071に記載の配位子に比べて本発明によるビスホスアイトは、ヒドロホルミル化における配位子としての使用の際に、低い異性化活性を有する。更に、本発明による配位子から形成される触媒を用いると、高選択率で末端位二重結合がヒドロホルミル化されるが、これに反して内部位二重結合は殆ど侵害されずに残る。従って、例えば内部位にも末端位にも二重結合を有するオレフィンのヒドロホルミル化の場合に、高選択率で、末端位二重結合がヒドロホルミル化されうる。又はオレフィン混合物から出発して、末端位二重結合を有する成分が選択的にヒドロホルミル化されうる。末端位二重結合は、高選択率で末端で、即ち高いn/イソ−比でヒドロホルミル化される。更に本発明による配位子は、殊に水性加水分解に対して高い安定性を示す。
【0017】
後の実施例で、本発明によるビスホスファイト及びその製造法並びにその使用を記載しているが、本発明はこれらの例示実施形のみに限定されるべきものではない。後に一般式又は化合物群の範囲が挙げられているが、これらは、具体的に記載されている化合物群の相当する範囲を包含するだけではなく、個々の値(範囲)又は化合物から引き出すことのできるすべての範囲及び群の化合物をも包含すべきである。本発明の明細書の範囲内で文献が引用されている場合は、それらの内容は本発明の明細書中に開示されているものと解すべきである。
【0018】
本発明によるビスホスファイトは、式I:
【化3】

[式中、
X=1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアルキレン−又はビスアリーレン基、
Y=1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアリーレン−又はビスアルキレン基、
Z=酸素又はNR
、R、R、Rは同一又は異なるもので、置換又は非置換の、結合した又は結合していない、縮合した又は縮合していないアリール−又はヘテロアリール基であり、
=水素又は1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換のアルキル−又はアリール基である]を有している。基R、R、R、R4、、X又はYは、例えば次のものから選択される少なくとも1個の基:炭素原子数1〜50を有する脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、混合脂肪族−脂環式、混合脂肪族−芳香族、ヘテロ環式、混合脂肪族−ヘテロ環式炭化水素基、F、Cl、Br、I、−CF、−(CH(CFCF(ここで、i=0〜9、j=0〜9)、−SiR21、−Si(OR21、−SiR21(OR21、−SiR21OR21、−OSiR21、−OSi(OR21、−OSiR21(OR21、−OSiR21OR21、−OR19、−COR19、−CO19、−COM、−SO19、−SOR19、−SO19、−SOM、−SONR1920、−NR1920又は−N=CR1920で置換されていてよく、この際、R19、R20及びR21は相互に無関係に、H、炭素原子数1〜25を有する置換又は非置換の1価の脂肪族又は芳香族炭化水素基から選択されている、但しこの際、R21=Hは排除されており、Mはアルカリ金属−、形式的に半分のアルカリ土類金属−、アンモニウム−又はホスホニウムイオンである。殊に基X及びYの好ましい置換基は、t−ブチル−及びメトキシ基である。基R、R、R、Rは特に非置換のフェニル基である。このような基は、例えば式I−1、I−2又はI−3に記載されているようなものであることができる:
【化4】

[式中、Qは例えば同じ又は異なるもので、CH、CR10、CHR、O、NH又はNRであってよく、この際、R及びR10は同じ又は異なるものであってよく、前記のRと同じものを表すことができる]。
【0019】
本発明によるビスホスファイト中で、基Xは殊に基Xaであることができる:
【化5】

【0020】
基R、R、R、Rは相互に無関係に、炭素原子数1〜50を有する置換又は非置換の脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、混合脂肪族−脂環式、混合脂肪族−芳香族、ヘテロ環式、混合脂肪族−ヘテロ環式炭化水素基又はH、F、Cl、Br、I、−CF、−(CH(CFCF(ここで、i=0〜9、j=0〜9)、−SiR21、−Si(OR21、−SiR21(OR21、−SiR21OR21、−OSiR21、−OSi(OR21、−OSiR21(OR21、−OSiR21OR21、−OR19、−COR19、−CO19、−COM、−SO19、−SOR19、−SO19、−SOM、−SONR1920、−NR1920又は−N=CR1920であることができ、この際、R19、R20及びR21は相互に無関係に、H、炭素原子数1〜25を有する置換又は非置換の1価の脂肪族又は芳香族炭化水素基から選択される、但しこの際、R21=Hは排除されており、Mはアルカリ金属−、形式的に半分のアルカリ土類金属−、アンモニウム−又はホスホニウムイオンである。基R、R、R、Rは例えば次のものから選択される1個以上の基:炭素原子数1〜50を有する脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、混合脂肪族−脂環式、混合脂肪族−芳香族、ヘテロ環式、混合脂肪族−ヘテロ環式炭化水素基、F、Cl、Br、I、−CF、−(CH(CFCF(ここで、i=0〜9、j=0〜9)、−SiR21、−Si(OR21、−SiR21(OR21、−SiR21OR21、−OSiR21、−OSi(OR21、−OSiR21(OR21、−OSiR21OR21、−OR19、−COR19、−CO19、−COM、−SO19、−SOR19、−SO19、−SOM、−SONR1920、−NR1920又は−N=CR1920で置換されていてよくこの際、R19、R20及びR21及びMは前記のものを表すことができる。基Xaの場合に、基R〜Rは、好ましくは水素、アルコキシ基、殊にメトキシ基又はt−ブチル基を表す。基RとR及び基RとRはそれぞれ対になって同じものであることが好ましい。基RとRはメトキシ基であり、及び/又は基RとRはt−ブチル基であることが特別好ましい。
【0021】
本発明のビスホスファイト中で、Xは基R1’、R2’、R3’及びR4’で置換されたエチレン基であることが好ましく、この際、基R1’、R2’、R3’及びR4’は同じ又は異なるもので、置換又は非置換の、結合した、結合していない又は縮合したアリール−又はヘテロアリール基であることができる。基R1’〜R4’の可能な置換基は、基R〜Rについて挙げられている置換基である。特別好ましいビスホスファイトは、対称的であるもの、即ちXが基R1’、R2’、R3’及びR4’で置換されたエチレン基であるものであり、この際、基RとR1’、RとR2’、RとR3’及びRとR4’は、それぞれ同じものである。
【0022】
本発明によるビスホスファイト中の2価の基Yは、特に置換又は非置換のビスフェニル基又はビスナフチル基であることができる。可能な置換基は、前記の置換基であることができる。好ましい基Yは、式IIa〜IId:
【化6】

のビスフェノキシ基又は式III:
【化7】

のビスナフトキシ基から選択され、これらはラセミ形、アトロプ異性体富化された又はアトロプ異性体純粋な形で存在することができる。
【0023】
殊別好ましい本発明によるビスホスファイトは、下記の式Ia〜Icのビスホスファイトであり、この際、Icはラセミ体として又はアトロプ異性体富化された又はアトロプ異性体純粋な形で製造され、かつ使用されうる。
【0024】
【化8】

【0025】
本発明によるビスホスホスファイトは、高い加水分解安定性により優れており、従って配位子として使用するために特別好適である。エナンチオマー純粋なビスホスファイトの使用によって、このヒドロホルミル化を、不斉ヒドロホルミル化として実施することができる。
【0026】
本発明によるビスホスファイトは、元素周期律表の第4、5、6、7、8、9又は10族の金属の錯体形成のために好適な配位子である。本発明によるホスファイト金属錯体は、元素周期律表の第4、5、6、7、8、9又は10族の金属1個及び本発明のビスホスファイト1個以上を含有していることを特徴としている。この錯体は、ホスファイト配位子1個以上及び場合により更なる配位子を含有することができる。好適な金属の例は、ロジウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、ルテニウム、オスミウム、クロム、モリブデン及びタングステンである。本発明によるホスファイト金属錯体中の金属は、ロジウム、パラジウム、ニッケル、白金、コバルト又はルテニウムが有利である。
【0027】
本発明によるビスホスファイト又は本発明による金属錯体は、触媒反応、殊に均一系触媒反応で使用することができる。殊に第8、9又は10族の金属を用いて生じる金属錯体は、ヒドロホルミル化−、カルボニル化−、水素化−及びヒドロシアン化反応のための触媒として使用することができ、ロジウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金及びルテニウムが特別好ましい。
【0028】
本発明によるビスホスファイト又は本発明による金属錯体が、オレフィン、特に炭素原子数2〜50、好ましくは3〜25、特別好ましくは6〜12、全く特別好ましくは8、9、10、11又は12を有するオレフィンの触媒作用ヒドロホルミル化で使用される場合が特別有利でありうる。金属としてロジウム又はコバルトを有する金属錯体が、ヒドロホルミル化で好ましく使用される。ヒドロホルミル化の反応混合物中の金属、特に第8族の金属とビスホスファイトとのモル比は、特に1:1〜1:500、好ましくは1:1:〜1:200、特別好ましくは1:2〜1:50である。金属とビスホスファイトとのモル比1:1以上、特に好ましくは1:2以上によって、本発明によるビスホスファイトが遊離の配位子として反応混合物中に存在することを達成することができる。
【0029】
触媒金属としてのロジウムの使用の際に、ヒドロホルミル化反応で特別高い触媒活性を得ることができる。ロジウム及び本発明によるビスホスファイトを含有している触媒は、極めて低い異性化活性並びに末端二重結合に関する高い優先性及び線状生成物形成の高割合で優れており、従って殊に末端オレフィンの選択的な末端ヒドロホルミル化のために好適である。これらは、オレフィン混合物又は末端位−及び内部位二重結合を有する化合物からヒドロホルミル化により末端位オレフィンを得るために使用することもでき、この際、内部位二重結合は充分に侵害されずに残る。
【0030】
触媒金属を、塩又は錯体の形で、ロジウムの場合には、例えばロジウムカルボニル、硝酸ロジウム、塩化ロジウム、Rh(CO)(acac)(acac=アセチルアセトネート)、酢酸ロジウム又はカルボン酸ロジウム、例えばオクタン酸ロジウムの形で使用することができる。
【0031】
本発明によるビスホスファイト配位子及び触媒金属から、反応条件下で、均一系触媒反応用の活性触媒特定物が生じる。ヒドロホルミル化の場合に、本発明によるビスホスファイト配位子及び触媒金属と合成ガスとの接触時に、おそらくカルボニルヒドリドホスファイト−錯体が活性触媒特定物として生じる。ビスホスファイト及び場合による更なる配位子を、遊離の形で、触媒金属(塩又は錯体としての)と一緒に反応混合物中に加えて、活性触媒特定物をその場で得ることができる。更に、前記のビスホスファイト配位子及び触媒金属を含有している本発明によるホスファイト金属錯体を、特有の触媒活性錯体の前駆物として使用することも可能である。このホスファイト金属錯体は、第4〜10族の相応する触媒金属を化合物の形で又は酸化段階0で、本発明によるビスホスファイト配位子と反応させることにより製造される。
【0032】
例えば遊離の配位子の濃度を一定に維持するために、本発明による新鮮ビスホスファイトを、反応の任意の時点で添加することができる。
【0033】
反応混合物、殊にヒドロホルミル化混合物中の金属の濃度は、特に反応混合物の全質量に対して1質量ppm〜1000質量ppm、好ましくは5質量ppm〜300質量ppmである。
【0034】
本発明によるビスホスファイト又は相応する金属錯体を用いて実施されるヒドロホルミル化反応は、例えばJ.FALBE,"New Syntheses with Carbon Monoxide",Springer Verlag,Berlin,Heidelberg,New York,95頁以降(1980)中に記載されているような公知の処方に従って実施することができる。この場合に、オレフィン化合物は、触媒の存在下に、COとHとからの混合物(合成ガス)との反応で、C−原子1個だけ富化されたアルデヒドに変じられる。
【0035】
本発明によるビスホスファイト又はホスファイト金属錯体を使用することのできるヒドロホルミル化法のための反応温度は、特に40℃〜180℃、好ましくは75℃〜140℃、特別好ましくは90〜120℃であることができる。ヒドロホルミル化が実施される圧力は、特に合成ガス1〜300バール、好ましくは10〜64バールである。合成ガス中の水素と一酸化炭素との間のモル比(H/CO)は、特に10/1〜1/10、特に好ましくは1/1〜2/1である。
【0036】
触媒又は配位子/本発明によるビスホスファイトは、出発物質(オレフィン及び合成ガス)及び生成物(アルデヒド、アルコール、このプロセスで生じる副産物、殊に高沸点物)から成るヒドロホルミル化混合物中に特に均一に溶けている。場合によっては付加的に溶剤又は溶剤混合物及び/又は安定剤化合物又は助触媒を使用することができる。
【0037】
その比較的高い分子量に基づき、本発明によるビスホスファイトは、低い揮発性を有する。従ってこれは、簡単に易揮発性の反応生成物から分離することができる。これは、慣用の有機溶剤中に充分良好に可溶である。
【0038】
ヒドロホルミル化用の出発物質は、有機化合物、殊にオレフィン又はオレフィンの混合物、特に炭素原子数2〜50、好ましくは3〜25を有し、殊に1個以上の末端位−又は内部位C=C−二重結合を有するオレフィンであることができる。これらは、直鎖、分枝鎖又は環状構造であることができる。例は次のものである:プロペン、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、イソブテン、ブタジエン、C−オレフィンの混合物;C−オレフィン、例えば1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチルブテン−1、2−メチルブテン−2、3−メチルブテン−1、C−オレフィン、例えば1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、プロペンの二量化の際に生じるC−オレフィン混合物(ジプロペン);C−オレフィン、例えば1−ヘプテン、他のn−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘキセン;C−オレフィン、例えば1−オクテン、他のn−オクテン、2−メチルヘプテン、3−メチルヘプテン、5−メチルヘプテン−2、6−メチルヘプテン−2、2−エチルヘキセン−1、ブテンの二量化の際に生じる異性C−オレフィン混合物(ジブテン)、C−オレフィン、例えば1−ノネン、他のn−ノネン、2−メチルオクテン、3−メチルオクテン、プロペンの三量化の際に生じるC−オレフィン混合物(トリプロペン)、C10−オレフィン、例えばn−デセン、2−エチル−1−オクテン;C12−オレフィン、例えばn−ドデセン、プロペンの四量化又はブテンの三量化の際に生じるC12−オレフィン混合物(テトラプロペン又はトリブテン)、C14−オレフィン、例えばn−テトラデセン、C16−オレフィン、例えばn−ヘキサデセン、ブテンの四量化の際に生じるC16−オレフィン混合物(テトラブテン)並びに種々異なるC−数(好ましくは2〜4)を有するオレフィンのコオリゴマー化により製造されるオレフィン混合物(場合によっては同じ又は類似C−数を有するフラクシヨンへの蒸留分離後の)。同様に、フィッシャートロプシュ−合成により得られるオレフィン又はオレフィン混合物、並びにエテンのオリゴマー化により得られるか又は複分解反応又はテロマー化反応により入手されているオレフィン又はC−C−二重結合を有する有機化合物、例えばメチルオクタ−2,7−ジエニルエーテルを使用することができる。
【0039】
好ましい出発物質は、一般的に、α−オレフィン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテン、ブテンのジマー又はトリマー(ジブテン、ジ−n−ブテン、ジ−イソ−ブテン、トリブテン)並びにメチルオクタ−2,7−ジエニルエーテルである。
【0040】
ヒドロホルミル化−反応混合物中に、安定化特性、殊に配位子又は錯体−触媒の安定性に関して安定化特性を有する化合物が存在する場合が有利であり得る。このような安定剤として使用可能な化合物は、例えばWO2005/039762中に記載されているような立体障害されたアミン、殊に例えばDE102005042464中に記載されているような立体障害された第2級アミンであることができる。
【0041】
このヒドロホルミル化は、連続的に又は非連続的に実施することができる。工業的実施のための例は、撹拌タンク、気泡塔、ジェットノズル反応器、管形反応器又はループ形反応器であ理、これらは部分的にカスケード結合されて及び/又はビルトインを備えていてよい。
【0042】
反応は、直通で又は複数工程で行うことができる。生じたアルデヒド化合物及び触媒の分離は、慣用の方法により実施することができる。工業的にはこのことを、例えば蒸留、流下液膜式蒸発器又は薄膜蒸発器によって行うことができる。高沸点溶剤中に溶かされている触媒を、低沸点生成物から分離する場合に、このことが特別に当て嵌まる。分離された触媒溶液を、更なるヒドロホルミル化のために使用することができる。低級オレフィン(例えばプロペン、ブテン、ペンテン)の使用の場合には、反応器から生成物を、気相を経て取り出すことも可能である。
【0043】
本発明によるビスホスファイトは、ハロゲン化燐とアルコールとの一連の反応(この際に燐に付いているハロゲン原子が酸素基により置換される)によって製造することができる。好適な合成過程を以下に記載する。
【0044】
本発明によるビスホスファイトは、例えば、次の工程:
1)ジオールAa又はアルコールアミンAbと三ハロゲン化隣との反応により、中間体Aを生じさせる工程、
2)同じ又は異なる、置換又は非置換の、結合した又は結合していない、縮合した又は縮合していないアリール−又はヘテロアリール基を有していてよいテトラアリールエタンジオールCaと三ハロゲン化隣との反応により、中間体Cを生じさせる工程、
3)中間体A又はCとジオールBaとの反応により、中間体Bを生じさせる工程及び
4)中間体Bと工程3)で使用されなかった中間体A又はCとを反応させる工程
を包含している方法によって得ることができる。
【0045】
ジオールと三ハロゲン化燐との反応は直接行うことができるか、又は中間工程を含んでいることもできる。ジオールAa、Ba、Ca、アルコールアミンAb及び/又は中間体Cが工程1)、2)、3)及び/又は4)で金属化合物と反応して相応する金属塩に変換され、次いでこれが三ハロゲン化隣と反応される場合が有利であり得る。この方法では、この反応の際にハロゲン化水素−不純物、殊に比較的分離困難なアミンヒドロクロリド−不純物は生じず、反応媒体中で比較的難溶性であり、従って例えば濾過により容易に分離除去可能である塩が生じる。更に、この中間工程は、親核性塩基の使用を可能としている。金属化合物としては、例えば水素化ナトリウム、メチルリチウム又はブチルリチウムを使用することができる。三ハロゲン化燐としては、例えばPCl、PBr及びPIを使用することができる。三ハロゲン化燐として、三塩化燐(PCl)を使用することが有利である。
【0046】
塩基の存在下に三ハロゲン化燐との反応を実施する場合が有利であり得る。好適な塩基の使用によって、ハロゲン化燐の反応の際に生じるハロゲン化水素は捕捉されうるか又は触媒されうる。塩基として、第3級アミンを使用することが有利である。第3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、ピリジン又はN−ブチルジメチルアミンを使用することができる。生じるハロゲン化水素の捕捉のために、少なくとも、生じるハロゲン化水素を完全に捕捉することのできる程度の量の塩基を使用することが有利である。
【0047】
使用されるジオール及びその後続生成物は屡々固体であるので、この反応を溶剤中で実施することが有利である。溶剤としては、例えば、アルコールとも燐化合物とも反応しない非プロトン性溶剤を使用することができる。好適な溶剤は、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)又はMTBE(メチル−t−ブチルエーテル)のようなエーテル又はトルエンのような芳香族炭化水素である。
【0048】
使用される溶剤は、特に、充分に水−又は酸素不含であるべきである。0〜500質量ppm、特別好ましくは5〜250質量ppmの水含有率を有している溶剤を使用することが好ましい。この水含有率は、例えばカールフィッシャーの方法によって測定することができる。
【0049】
場合により必要である使用溶剤の乾燥は、適当な乾燥剤上の溶剤の蒸留により、又は溶剤を例えばモレキュラーシーブ4Å充填されたカートリッジ又はカラムを通過させることにより行うことができる。
【0050】
ビスホスファイトを製造するための本発明の方法における方法工程を、特に−80℃〜150℃、好ましくは−20℃〜110℃、特別好ましくは0℃〜80℃の温度で実施することが有利である。
【0051】
以下に、この方法の4つの部分工程を例により記載する。本発明の方法のこの実施形では、差し当たりジオールAaと三塩化燐とを反応させて、中間体Aを生じさせる。
【0052】
【化9】

【0053】
前記工程1)からのジオールと同じであってよいが同じである必要はないテトラアリールエタンジオールCaを三塩化燐と反応させて、モノハロゲンホスファイトCを生じさせる。
【0054】
【化10】

【0055】
中間体AをジオールBaと反応させて、モノホスファイトBを生じさせる。
【0056】
【化11】

【0057】
引き続き、中間体Bを中間体Cと反応させて、所望のビスホスファイトDを生じさせる。
【0058】
【化12】

【0059】
この合成方法は、多くの処置の一つであり、原則的な処置を示しているだけである。例えば、差し当たりCをHO−Y−OH(Ba)と反応させ、引き続きAを加えることもできる。対称的ビスホスファイトの場合、即ちX=RC−CRである場合には、それぞれ、方法工程1)と2)とを、並びに3)と4)とを一つの工程に統合することができる。
【0060】
この本発明の方法では、出発化合物としてジオールAa又はアルコールアミンAbを使用することができる。
【0061】
【化13】

【0062】
使用される化合物がジオールAaである場合には、基Xは、特に置換又は非置換の2価のビスアルキレン−又はビスアリーレン基である。ビスアルキレン−又はビスアリーレン基の可能な置換基は、式Iに対して挙げられている置換基であることができる。
【0063】
本発明の方法でジオールAaとして、式中の基Xが殊に基Xaである化合物を使用することが有利である。
【0064】
【化14】

【0065】
基R、R、R、Rは相互に無関係に、炭素原子数1〜50を有する、置換又は非置換の脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、混合脂肪族−脂環式、混合脂肪族−芳香族、ヘテロ環式、混合脂肪族−ヘテロ環式炭化水素基又はH、F、Cl、Br、I、−CF、−(CH(CFCF(ここで、i=0〜9、j=0〜9)、−SiR21、−Si(OR21、−SiR21(OR21、−SiR21OR21、−OSiR21、−OSi(OR21、−OSiR21(OR21、−SiR21OR21、−OR19、−COR19、−CO19、−COM、−SO19、−SOR19、−SO19、−SOM、−SONR1920、−NR1920又は−N=CR1920であることができ、この際、R19、R20及びR21は相互に無関係に、H、炭素原子数1〜25を有する置換又は非置換の1価の脂肪族及び芳香族炭化水素基から選択される、但しこの際、R21=Hは排除されており、Mはアルカリ金属−、形式的に半分のアルカリ土類金属−、アンモニウム−又はホスホニウムイオンである。基R、R、R、Rは例えば次のものから選択される少なくとも1個の基:炭素原子数1〜50を有する脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、混合脂肪族−脂環式、混合脂肪族−芳香族、ヘテロ環式、混合脂肪族−ヘテロ環式炭化水素基、F、Cl、Br、I、−CF、−(CH(CFCF(ここで、i=0〜9、j=0〜9)、−SiR21、−Si(OR21、−SiR21(OR21、−SiR21OR21、−OSiR21、−OSi(OR21、−OSiR21(OR21、−OSiR21OR21、−OR19、−COR19、−CO19、−COM、−SO19、−SOR19、−SO19、−SOM、−SONR1920、−NR1920又は−N=CR1920(ここで、R19、R20及びR21及びMは前記のものを表すことができる)で置換されていることができる。基Xaの場合に、基R〜Rは水素、アルコキシ基、殊にメトキシ基又はt−ブチル基を表すことが好ましい。基RとR及び基RとRは、それぞれ対になって同じであることが好ましい。基R及びRはメトキシ基であり及び/又は基R及びRはt−ブチル基であることが特別好ましい。
【0066】
式中のXは好ましくは基R1’、R2’、E3’及びR4’で置換されたエチレン基であり、この際に、基R1’、R2’、R3’及びR4’は同じ又は異なるもので、置換又は非置換のアリール基であってよい、ジオールAaが使用される場合が有利でありうる。基R1’〜R4’の可能な置換基は、基R〜Rに対して挙げられている置換基である。基R〜Rを有するジオールCa及び式中のXが基R1’、R2’、R3’及びR4’で置換されたエチレン基であり、基RとR1’、RとR2’、RとR3’及びR4とR4’がそれぞれ同じであるジオールAaが使用される場合には、本発明による対称的なビスホスファイト、例えば式Ia又はIcの化合物を製造することができる。既に広く先に記述されているように、出発化合物Aa及びCaが同じである場合には、それぞれ方法工程1)と2)とを、もしくは3)と4)とを統合するか又は一緒に実施することができる。
【0067】
ジオールHO−Y−OH(Ba)としては、殊に、式中の2価の基Yが置換又は非置換のビスアリーレン−又はビスアルキレン基、特にビスフェノキシ−又はビスナフトキシ基であるものを使用することができる。可能な置換基は、式Iについて挙げられている置換基であることができる。好ましくは、式中の基Yが式IIa〜IId:
【化15】

のビスフェニル基又は式III:
【化16】

のビスナフチル基から選択されているジオールBaが、ラセミ形、エナンチオマー富化された又はエナンチオマー純粋な形で使用される。
【0068】
テトラアリールエタンジオールCa:
【化17】

として、置換又は非置換の、結合した又は結合していない又は縮合したアリール−又はヘテロアリール基R〜Rを有しているテトラアリールエタンジオールを使用することができる。基R〜Rは同じ又は異なるものであることができる。可能なアリール基は、例えばフェニル基、ナフチル基である。基R〜Rは相互に結合又は縮合していてもよく、例えば9−フルオレニル基、フェナンスリル基、キサンテニル基並びにヘテロ芳香族基であることができる。
【0069】
テトラアリールエタンジオールCaとして、ベンゾピナコール又はフェニル基に置換基を有するベンゾピナコールを使用することが有利である。基R〜R又はベンゾピナコールの可能な置換基は、式Iに対して挙げられている置換基である。
【0070】
次の実施例につき本発明の方法を説明するが、明細書及び特許請求の範囲から明らかである用途範囲を限定するものではない。
【0071】
実施例
全ての製造を、保護ガスとしてのアルゴン(アルゴン5.0、Linde AG)の使用下に、標準−スウィング容器−技術を用いて実施した。テトラヒドロフラン及びトルエンを、使用前に、カリウム(THF)又はナトリウム(トルエン)により乾燥させた。NMR−スペクトルを、Bruker ARX400を用い、元素分析をLECO CHNS 932を用いて実施した。
【0072】
例1:1−クロル−3,3,4,4−テトラフェニルホスホラン(C−1)の合成
【化18】

【0073】
テトラヒドロフラン(Sigma-Aldrich、99.9%)30ml中のベンゾピナコール(Acros、98%)1.878g(5.12ミリモル)の懸濁液に、−40℃で撹拌下に、テトラヒドロフラン中の三塩化燐(Aldrich、99%)の0.768モル溶液(10.7ml;8.22ミリモル)を滴加し、引き続きテトラヒドロフラン4ml中のトリエチルアミン(Aldrich,p.a.)1.56g(15.4ミリモル)の溶液を滴加すると、嵩張った無色の沈殿が生じた。混合物を室温まで温度を加温し、これを更に5時間撹拌した。反応混合物を、G4−フリットを通して濾過し、濾液を、20ミリバール、40℃で1.5時間乾燥させた。粘稠性残分をトルエン(15ml)中に入れた。この溶液をG4−フリットを通して濾過し、濾液を20ミリバールで濃縮させ、引き続き浴温40℃、10−1ミリバールで2時間乾燥させた。高粘稠性液体(なおトルエン0.8当量を含有している)2.32g(トルエン−付加生成物として計算して理論量の90%)が得られた。
【0074】
分析:31P{1H}−NMR(C)δ=173.44ppm 。
【0075】
D−1の合成
【化19】

【0076】
テトラヒドロフラン(Riedel-de-Haen,Chromasolv)(8ml)中の化合物2,2’−ビス(6−t−ブチル−1−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)(F.R.Hewgill und D.G.HewittによりJournal of the Chemical Society C,1967,8,726-73に記載された方法で製造)0.717g(2ミリモル)に、−20℃で、撹拌下に、ヘキサン(Riedel-de-Haen、97%)8ml中のn−ブチルリチウム(Aldrich)の溶液4ミリモルを滴加した。−20℃で20分間撹拌し、引き続き室温まで加温し、その後にテトラヒドロフラン(16ml)中のC−1の1.90g(4.4ミリモル)の溶液を滴加した。25℃で一晩撹拌の後に、溶剤を10-1ミリバールで除去した。得られた生成物をトルエン(Riedel-de-Haen、99.7%)40mlと共に撹拌し、濾過し、濾過残分をトルエンで洗浄した。得られた濾液を10-1ミリバールで濃縮させ、残分を40℃で2時間乾燥させた。得られた固体を、アセトニトリル(Riedel-de-Haen、99.9%)32ml中に入れ、澄明溶液が存在するまで短時間加熱した。冷却時にD−1が沈殿した。これを濾過し、残りの溶剤を10-1ミリバール、40℃で3時間吸引除去すると、目標物質1.9g(82%)が得られた。
【0077】
31P{H}−NMR(C、202MHz):δ=145.62ppm。H−NMR(500MHz、C):δ=1.39(s、18H)、3.32(s、6H)、6.84−6.88(m、7H)、6.89−6.94(m、7H)、6.95−7.00(m、4H)、7.04−7.09(m、8H)、7.21−7.30(m、10H)、7.57(d、J=7.5Hz、4H)、7.65(d、J=7.5Hz、4H)ppm。 元素分析(C7468=1147.29g/モルの計算値):
C77.00(77.47);H5.66(5.97);P5.82(5.40)%。
【0078】
例2:A−1の合成
【化20】

【0079】
2,2’−ビス(6−t−ブチル−1−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)(F.R.Hewgill und D.G.HewittによりJournal of the Chemical Society C,1967,8,726-730中に記載されている方法で製造)から、EP1209164中に記載の方法によって、A1を製造した。
【0080】
B−2の合成
【化21】

【0081】
EP1209164(例2)中に記載の方法により、A−1からB−2を製造した。
【0082】
D−2の合成
【化22】

【0083】
THF(8ml)中のB−2(1.5g;2.014ミリモル)の−20℃に冷却された溶液に、撹拌下に、ヘキサン(4ml)中のn−ブチルリチウム(2.014ミリモル)を滴加した。添加終了の後20分に、この混合物を室温にし、THF(8ml)中の2−クロル−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,3,2−ジオキサホスホラン(C−1)(0.868g;2.014ミリモル)の溶液をゆっくり滴加した。室温で4時間撹拌し、その後、40ミリバールで溶剤を除去し、40℃、10-1ミリバールで乾燥させた残分を、引き続きトルエン(30ml)と共に撹拌した。濾過の後に、濾液を濃縮させ、得られた白色固体を10-1ミリバールで乾燥させた(40℃、2時間)。粗製生成物を沸騰アセトニトリル40mlと共に撹拌した。この混合物を冷蔵庫中での貯蔵の後に濾過し、濾過ケーキを氷冷アセトニトリルで洗浄した。10-1ミリバールでの乾燥により、生成物1.6g(1.404ミリモル=理論量の70%)が得られた。
【0084】
分析(C707610=1139.31g/モルの計算値);
C73.61(73.80);H6.99(6.72);P5.46(5.44)%。 31P−NMR(CDCl)δ135.4(d、Jpp=38.9Hz);142.9ppm(d、Jpp=38.9Hz)。H−NMR(CDCl)δ1.26;1.28;1.38;1.46(4×s、各々9H);3.48;3.81;3.82;3.86(4×s、各々3H);6.42(m、1H);6.69(m、1H);6.78(m、1H);6.94−7.10(m、18H);7.19−7.25(m、5H);7.61(m、2H)ppm。
【0085】
例3:D−3の合成
【化23】

【0086】
トルエン18ml中のrac−1,1’−ビ(2−ナフトール)(0.891g、3.113ミリモル、Aldrich、99%)の懸濁液に、先ず室温でトリエチルアミン(0.992g;9.81ミリモル)を加え、次いで、0℃で撹拌下に、トルエン26ml中のC−1(2.951g;6.85ミリモル)の溶液を加えた。なお0℃で45分間、次いで80℃で16時間撹拌した。得られた生成物を濾過し、溶剤を20ミリバールで除去し、残分をトルエン10mlと共に撹拌の後に改めて濾過した。濾液を濃縮させ、得られた高粘稠性残分を55℃、10-1ミリバールで2時間乾燥させ、引き続きアセトニトリルから再結晶させた。収量:2.684g(2.496ミリモル;理論量の80%)。
【0087】
分析(C7752=1075.14g/モルの計算値);
C79.63(80.43);H4.69(4.87);P6.03(5.76)%。 31P−NMR(CDCl)δ140.5ppm。
【0088】
例4:配位子D−1、D−2、D−3及び比較配位子D−4を用いるヒドロホルミル化に関する比較実験
比較配位子として、EP0472071中に記載のビスホスファイトD−4を選択した。D−4の合成を、EP0472071に相当して行った。公知の配位子D−4を用いる全ての例は、比較のために使用しているだけであり、従って本発明によるものではない。
【0089】
【化24】

【0090】
ヒドロホルミル化を、Fa.Premex Reactor AG Lengau,Schweiz社の、定圧保持装置、ガス流測定器、ガス吹き込み攪拌機及び圧力ピペットを備えた200ml−オートクレーブ中で実施した。この実験のために、オートクレーブ中にアルゴン雰囲気下で、トルエン中の触媒前駆物としての[(acac)Rh(COD)](acac=アセチルアセトネート−アニオン;COD=1,5−シクロオクタジエン)(OMG AG&Co.KG,Hanau,DE)の形のロジウムの次の溶液を導入した:ロジウム38.4質量−ppmを用いる実験のために、1.724ミリモル溶液10ml及びロジウム96質量ppmを用いる実験のために4.31ミリモル溶液10ml。引き続き、トルエン中に溶かされたホスファイト化合物の相当量を、通例は、ロジウム1当量当たり5配位子当量を添加混合した。更なるトルエンの添加により、触媒溶液の当初量を41mlに調節した。圧力ピペット中に、第1表中にそれぞれ指示されているオレフィン又はオレフィン混合物15mlを加え、この際、予めそれらの質量を測定した。合成ガス(Linde、H(99.999%):CO(99.997%)=1:1)でのパージによるアルゴン雰囲気の置換の後に、a)50バールの最終圧について、33バールの、b)20バールの最終圧について、12バールの及びc)10バールの最終圧について、7バールの合成ガス圧で、撹拌(1500U/min)下にそれぞれの記載温度まで加熱した。反応温度の到達後に、合成ガス圧を、a)50バールの最終圧について、48バールまで、b)20バールの最終圧について、19バールまで、かつc)10バールの最終圧について、9.5バールまで高め、かつ、それぞれ第1表中に挙げられているオレフィン(−混合物)を、圧力ピペット中で標定される約3バールの超過圧で圧入した。この反応を、それぞれ50又は20又は10バールの一定圧(Fa.Bronkhorst,NLの持続圧力調節器)で、それぞれ4時間の反応時間に渡り実施した。反応時間の経過後にオートクレーブを室温まで冷却させ、撹拌下に放圧させ、アルゴンでパージした。反応混合物それぞれ1mlを攪拌機のスイッチ切断の直後に取り出し、ペンタン5mlで希釈し、ガスクロマトグラフィ分析を行った。
【0091】
GC−データ:HP5890 Series II plus,PONA,50m×0.2mm×0.5μm;内部標準としての溶剤トルエンに対する残留オレフィン及びアルデヒドの定量測定。
【0092】
第1表は、1−オクテン(Aldrich、98%)、2−ペンテン、プロペン(ABCR、シス+トランス、99%)及びオクテンの異性体混合物(これは、DE10053272、例9〜19中に記載されているような組成を有する)のロジウム触媒されたヒドロホルミル化の結果を示している。
【0093】
加えて、第1表は、EP0472071の2−ブテンのヒドロホルミル化について記載されている結果も示している。オクテン混合物又は2−ペンテン及び2−ブテンの場合の低い変換率は、低い異性化活性を証明しており、高い変換率は著しい不所望な異性化活性を示している。選択率は、末端位ヒドロホルミル化された基質の割合を示している。
【0094】
【表1】

【0095】
EP0472071(例9、第6表、装入物3)から引用
EP0472071(例3)から引用
Tinuvin S(Ciba)0.0636gの存在下;5時間後の変換率及び
選択率。
【0096】
第1表が示しているように、全ての配位子は、末端位オレフィンのヒドロホルミル化の場合に、類似の活性及び選択率を示しており、この際に、D−1は従来達成されなかった選択率を達成した。しかしながら、オクテン混合物の場合及び2−ペンテンの反応の場合には明白な違いが明らかであり:D1〜D3は、内部位二重結合を充分に侵害しないが、比較物質D−4は著しい異性化反応活性を示しており、このことは高い変換率(2−ペンテンの場合の86%)によって証明されている。更にD−4の場合の低い選択率は、分枝されたアルデヒドが多大に形成されたことを示している。これに反して、D−1の使用の場合には、少量(14%)で1−ペンテンまで異性化される2−ペンテンが99%の直線性でヒドロホルミル化された。更に基質としてプロペンを用いる比較は、本発明による配位子又は触媒錯体の優れたn/イソ−選択率を証明している。
【0097】
例5:メチルオクタ−2,7−ジエニルエーテル(MODE)のヒドロホルミル化
【化25】

【0098】
メチルオクタ−2,7−ジエニルエーテル(MODE)は、1個の末端位二重結合及び1個の内部位二重結合を有する化合物である。この例では、末端位二重結合をヒドロホルミル化し、内部位をできるだけ侵害せずに残すことを目指すべきである。ヒドロホルミル化を例4の記載と同様に実施した。
【0099】
【表2】

【0100】
これに反して、EP0472071中に記載の、本発明によらない比較化合物D−4の使用の場合には、単一の生成物は得られなかった。9−メトキシノネ−7−エナール約50質量%を含有している生成物混合物が得られた。従って、本発明によるホスファイトは、本発明によらない比較物質よりも明らかにより選択性である。
【0101】
例6:加水分解安定性:
第3表中にそれぞれ挙げられている化合物0.05モルを、それぞれトルエン−d(Fluka)1ml中に溶かし、31P−NMR−スペクトルを記録した。引き続き、これに水18mg(1ミリモル、20当量)を加え、1分間激しく振動させた。室温でこの混合物を静置し、先ず2時間後に、次いで6日後に、31P−NMR−スペクトルを記録した。
【0102】
【表3】

【0103】
物質は検知不可能な程度に完全に分解。
【0104】
第3表は、本発明によるホスファイトが、EP0472071からの本発明によらない比較ホスファイトD−4よりも明白に高い加水分解安定性を示すことを明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、Xは、1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアルキレン−又はビスアリーレン基であり、Yは、1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換の2価のビスアリーレン−又はビスアルキレン基であり、Zは、酸素又はNRであり、R、R、R、Rは同じ又は異なるもので、置換又は非置換の、結合した、結合していない又は縮合したアリール−又はヘテロアリール基であり、Rは、水素又は1個以上のヘテロ原子を含有していてよい、置換又は非置換のアルキル−又はアリール基である]のビスホスファイト。
【請求項2】
Xは、基Xa:
【化2】

[式中、基R、R、R、Rは相互に無関係に、炭素原子数1〜50を有する、置換又は非置換の脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、混合脂肪族−脂環式、混合脂肪族−芳香族、ヘテロ環式、混合脂肪族−ヘテロ環式炭化水素基又はH、F、Cl、Br、I、−CF、−(CH(CFCF(ここで、i=0〜9及びj=0〜9)、−SiR21、−Si(OR21、−SiR21(OR21、−SiR21OR21、−OSiR21、−OSi(OR21、−OSiR21(OR21、−OSiR21OR21、−OR19、−COR19、−CO19、−COM、−SO19、−SOR19、−SO19、−SOM、−SONR1920、−NR1920又は−N=CR1920でありこの際、R19、R20及びR21は相互に無関係に、H、炭素原子数1〜25を有する置換又は非置換の1価の脂肪族又は芳香族炭化水素基から選択されている、但しこの際、R21=Hは排除されており、Mはアルカリ金属−、形式的に半分のアルカリ土類金属−、アンモニウム−又はホスホニウムイオンである]であることを特徴とする、請求項1に記載のビスホスファイト。
【請求項3】
Xは、基R1’、R2’、R3’及びR4’で置換されたエチレン基であることを特徴とする、請求項1に記載のビスホスファイト。
【請求項4】
Xは、基R1’、R2’、R3’及びR4’で置換されたエチレン基であり、この際、基RとR1’、RとR2’、RとR3’及びRとR4’は、それぞれ同じものであることを特徴とする、請求項3に記載のビスホスファイト。
【請求項5】
基R、R、R、Rは非置換のフェニル基であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のビスホスファイト。
【請求項6】
Yは、式IIa〜IId:
【化3】

のビスフェノキシ基又は式III:
【化4】

のビスナフトキシ基から選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のビスホスファイト。
【請求項7】
元素周期律表の第4、5、6、7、8、9又は10族の金属1個及び請求項1から6までのいずれか1項に記載のビスホスファイト1個以上を含有している、ホスファイト金属錯体。
【請求項8】
金属は、ロジウム、パラジウム、ニッケル、白金、コバルト又はルテニウムであることを特徴とする、請求項7に記載のホスファイト金属錯体。
【請求項9】
触媒反応で使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のビスホスファイト又は請求項7又は8に記載の金属錯体の使用。
【請求項10】
触媒反応は均一系触媒反応であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
触媒される反応はオレフィンのヒドロホルミル化であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
金属としてロジウム又はコバルトを有している金属錯体を、ヒドロホルミル化で使用することを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
反応混合物中の金属とビスホスファイトとのモル比は1:1〜1:500であることを特徴とする、請求項11又は12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のビスホスファイトを製造する方法であって、次の工程:
1)ジオールAa又はアルコールアミンAbと三ハロゲン化隣との反応により、中間体Aを生じさせる工程、
2)同じ又は異なる、置換又は非置換の、結合した又は結合していない、縮合した又は縮合していないアリール−又はヘテロアリール基を有している、テトラアリールエタンジオールCaと三ハロゲン化隣との反応により、中間体Cを生じさせる工程、
3)中間体A又はCとジオールBaとの反応により、中間体Bを生じさせる工程及び
4)中間体Bと工程3)で使用されなかった中間体A又はCとを反応させる工程
を包含していること特徴としている、ビスホスファイトを製造する方法。
【請求項15】
ジオールAa、Ba、Ca又はアルコールアミンAb及び/又は工程1)、2)、3)及び/又は4)での中間体Cを金属化合物と反応させて、相応する金属塩を生じさせ、次いで、これを三ハロゲン化燐と反応させることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
金属化合物として、水素化ナトリウム、メチルリチウム又はブチルリチウムを使用することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
三ハロゲン化燐との反応を、塩基の存在下に実施することを特徴とする、請求項14から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
塩基として第3級アミンを使用することを特徴とする、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513236(P2010−513236A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540686(P2009−540686)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062248
【国際公開番号】WO2008/071508
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】