説明

選択された細孔サイズ分布を有する触媒、このような触媒の製造方法、原油生成物の製造方法、このような方法から得られる生成物および得られる生成物の使用

触媒および前記触媒の調製方法が本明細書で説明される。この触媒は周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物、105Aから150Aの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の60%がメジアン細孔径の60A以内の細孔径を有し、細孔におけるこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Aの細孔径を有し、および細孔におけるこの細孔溶液の5%から25%が1000Aから5000Aの細孔径を有する細孔サイズ分布を含む。前記触媒を生成する方法が本明細書で説明される。原油生成物および前記原油生成物から製造される生成物が本明細書で説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された細孔サイズ分布を有する触媒、このような触媒の製造方法、原油生成物の製造方法、このような方法から得られる生成物および得られる生成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経済的に輸送され、または従来の設備を用いて処理されることを許容しない1以上の不適切な特性を有する原油は、通常、「不利な原油」と呼ばれる。不利な原油は、この不利な原油を従来の輸送および/または処理設備にとって望ましくないものにする高粘性を有することがある。加えて、高粘性を有する不利な原油は水素欠乏炭化水素を含むこともある。水素欠乏炭化水素を有する不利な原油を処理するとき、特には高温および高圧が不利な原油の処理に用いられる場合、コークス形成を阻害するのに水素一致量を添加することが必要となり得る。しかしながら、水素は製造に経費がかさみ、および/または処理施設に輸送するのに経費がかさむ。
【0003】
不利な原油の高粘性を低下させる従来法は、高温および高圧の不利な原油を触媒の存在下で水素と接触させることを含む。処理の間に形成される沈殿は触媒のより大きい細孔内に堆積し得るが、その一方で、粘性および/または他の特性は沈殿および/または粘性に寄与し得る大化合物が侵入できない触媒のより小さい細孔内で活性金属を含有する供給物の接触によって低下する。従来の触媒の不利な点は、これらが水素欠乏炭化水素を処理するために水素相当量を必要とし、触媒の大細孔が充填されていくことである。従って、触媒の活性が低下し、触媒の寿命が減少する。低下する活性に対向し、および/または供給体積あたりのスループットを高めるため、触媒は金属および/または金属の組み合わせ相当量を含有することができる。触媒においてより多量の金属が用いられるため、触媒の細孔は充填されていき、細孔内の金属占有空間のため細孔サイズが減少している触媒が生じる。より多くの金属に対応するため、より大きい細孔径を有する触媒を製造することができるが、細孔径の増加は触媒の表面積を減少させ得る。
【0004】
不利な原油の粘性を選択された温度および最小圧力で低下させるための方法および/または触媒があることが望ましい。このような触媒は高温および最小圧力で用いることができる。
【0005】
HensleyへのU.S.Patent No.4,225,421;Sherwood,Jr.らへのU.S.Patent No.5,928,499、ReynoldsらへのU.S.Patent No.6,554,994、HarleらへのU.S.Patent No.6,436,280、SudhakarらへのU.S.Patent No.5,928,501、AngevineらへのU.S.Patent No.4,937,222、MillerへのU.S.Patent No.4,886,594、PeckらへのU.S.Patent No.4,746,419、SimpsonへのU.S.Patent No.4,548,710、MoralesらへのU.S.Patent No.4,525,472、ToulhoatらへのU.S.Patent No.4,499,203、DahlbergらへのU.S.Patent No.4,389,301およびFukuiらへのU.S.Patent No.4,191,636は原油および/または不利な原油を処理するための様々な方法、システムおよび触媒を記載する。
【0006】
BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050133414からU.S.Published Patent Application No.20050133418まで;BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050139518からU.S.Published Patent Application No.20050139522まで、BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050145543、BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050150818、BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050155908、BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050167320、BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050167324からU.S.Published Patent Application No.20050167332まで、BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050173301からU.S.Published Patent Application No.20050173303まで、BhanへのU.S.Published Patent Application No.20060060510;BhanへのU.S.Published Patent Application No.20060231465;BhanへのU.S.Published Patent Application No.20060231456;BhanへのU.S.Published Patent Application No.20060234876;BhanへのU.S.Published Patent Application No.20060231457およびBhanへのU.S.Published Patent Application No.20060234877;BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20070000810;BhanへのU.S.Published Patent Application No.20070000808;BhanらへのU.S.Published Patent Application No.20070000811並びに2007年10月3日出願のBhanらへのU.S.Patent
Application No.11/866,909;U.S.Patent Application No.11/866,916;U.S.Patent Application No.11/866,921からU.S.Patent Application No.11/866,923まで;U.S.Patent Application No.11/866,926;U.S.Patent Application No.11/866,929およびU.S.Patent Application No.11/855,932は関連特許出願であり、原油および/または不利な原油を処理するための様々な方法、システムおよび触媒を記載する。
【0007】
HensleyらへのU.S.Patent No.4,225,421は二峰性細孔構造並びに金属含有炭化水素流の脱硫および脱金属における改善された効果を有する触媒を記載する。この触媒は140から300m/gの表面積を有し、窒素吸着法を用いる決定で、細孔内のこの細孔容積の60から95%は2から200Åの細孔径を有し、細孔内のこの細孔容積の1から15%は200から600Åの細孔径を有し、および細孔内のこの細孔容積の3から30%は600から10,000Åの細孔径を有する。作動圧力は5.5MPaから20.7MPaの範囲である。作動温度は371℃から454℃の範囲である。表IからIIIにおいて、触媒の平均細孔径は137Åから162Åの範囲である。
【0008】
Sherwood,Jr.らへのU.S.Patent No.5,928,499は、1000°F超で沸騰する成分並びにイオウ、金属および炭素残滓を含有する炭化水素供給物を水素処理するための方法であって、指定された細孔サイズ分布、表面積によるメジアン細孔径および体積による細孔モードを有する不均一触媒を用いて、1000°F超で沸騰する成分の含有率が低下し、並びにイオウ、金属および炭素残滓が減少している生成物を得る方法を記載する。この触媒は、完成触媒基準で2.5重量%以下のシリカを含有する、並びにVIII族金属酸化物2.2重量%から6重量%、VIB族金属酸化物7重量%から24重量%および、好ましくは、酸化リン0.2重量%未満を有する多孔性アルミナ支持体を含む。この触媒は、215から245m/gの全表面積、0.82から0.98cc/gの合計細孔容積、91から104Åの表面積によるメジアン細孔径並びに合計細孔容積の22.0から33.0%が250Åを上回る直径の大孔として存在し、および合計細孔容積の67.0から78.0%が250Å未満の直径の微小孔として存在する細孔径分布を有するものとして特徴付けることができる。細孔容積は水銀圧入細孔測定(mercury porosity measurements)を用いて決定した。作動圧力は1800から2500psig(約12MPaから17MPa)の範囲である。作動温度は700°Fから900°F(371℃から384℃)の範囲である。
【0009】
ClarkらへのU.S.Patent No.5,221,656は、220m/gを上回る表面積、約600半径Åを上回る細孔における約0.23から0.30cc/gの細孔容積、600Å未満の細孔における約30から70Åの平均細孔半径および約25から50Å半径に最大を有する増分細孔容積曲線(incremental pore volume curve)を有する水素化触媒を記載する。炭化水素供給物は約13.8MPa(2000psig)の作動圧力範囲および421℃(790°F)の温度で接触させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,225,421号明細書
【特許文献2】米国特許第5,928,499号明細書
【特許文献3】米国特許第6,554,994号明細書
【特許文献4】米国特許第6,436,280号明細書
【特許文献5】米国特許第5,928,501号明細書
【特許文献6】米国特許第4,937,222号明細書
【特許文献7】米国特許第4,886,594号明細書
【特許文献8】米国特許第4,746,419号明細書
【特許文献9】米国特許第4,548,710号明細書
【特許文献10】米国特許第4,525,472号明細書
【特許文献11】米国特許第4,499,203号明細書
【特許文献12】米国特許第4,389,301号明細書
【特許文献13】米国特許第4,191,636号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0133414号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0133415号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2005/0133416号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2005/0133417号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2005/0133418号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2005/0139518号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2005/0139519号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2005/0139520号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2005/0139521号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2005/0139522号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2005/0145543号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2005/0150818号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2005/0155908号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2005/0167320号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2005/0167324号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2005/0167325号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2005/0167326号明細書
【特許文献31】米国特許出願公開第2005/0167327号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2005/0167328号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2005/0167329号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2005/0167330号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2005/0167331号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2005/0167332号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2005/0173301号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2005/0173302号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2005/0173303号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2006/0060510号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2006/0231465号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2006/0231456号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2006/0234876号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2006/0231457号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2006/0234877号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2007/0000810号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第2007/0000808号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2007/0000811号明細書
【特許文献49】米国特許出願第11/866,909号明細書
【特許文献50】米国特許出願第11/866,916号明細書
【特許文献51】米国特許出願第11/866,921号明細書
【特許文献52】米国特許出願第11/866,922号明細書
【特許文献53】米国特許出願第11/866,923号明細書
【特許文献54】米国特許出願第11/866,926号明細書
【特許文献55】米国特許出願第11/866,929号明細書
【特許文献56】米国特許出願第11/855,932号明細書
【特許文献57】米国特許第5,221,656号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上で概述されるように、不利な原油を使用可能な生成物に経済的に変換する方法およびシステムを開発するのに相当の努力がなされている。高粘性を有し、従って、経済的価値が低い原油を、沈殿形成が最小量である触媒と原油を接触させることにより、粘性含有物が減少している原油生成物に変換することが可能であることは有利である。処理の間に水素最小量を消費することも有利である。生じる原油生成物は、その後、従来の水素化触媒を用いて選択された炭化水素生成物に変換することができる。
【0012】
高粘性を有する炭化水素供給物を、特定の触媒を用いることにより、沈殿形成を少なく保ったまま、粘性が低下している原油生成物に変換できることがいまや見出されている。結果として、触媒は長期の有用な寿命を有することができる。加えて、このような変換は最小限の水素消費で実施可能であることが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、幾つかの実施形態において、本発明は:
周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を支持体と共混練(co−mulling)して金属/支持体組成物を生成し;並びに
金属/支持体組成物を315℃から760℃の範囲の温度で焼成して、細孔サイズ分布が105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径60Å以内の細孔径を有し、細孔内のこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔内のこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有する焼成触媒を得る、
ことを含み、細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定される、触媒の製造方法を提供する。
【0014】
幾つかの実施形態において、本発明は:
周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を含む触媒であって;
105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径少なくとも60Å以内の細孔径を有し、細孔内のこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔内のこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有し、細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定される、
触媒を提供する。
【0015】
幾つかの実施形態において、本発明は原油生成物の製造方法であって:
炭化水素供給物を1以上の触媒と接触させて原油生成物を含む全生成物を生成することを含み、触媒の少なくとも1つは周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を含み;6から10列金属触媒は105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径少なくとも60Å以内の細孔径を有し、細孔内のこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔内のこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有し、表面積がASTM法D3663によって決定され、および細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定され;並びに
細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定される、
方法を提供する。
【0016】
本発明は、本明細書で説明される方法によって生成される原油生成物をも提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、本発明は、さらに:
ASTM法D5708による決定で少なくとも150重量ppmの合計Ni/Fe/V含有量;
ASTM法D5307による決定で炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの残滓含有量;
ASTM法D5307による決定で炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの蒸留物含有量;
ASTM法E385による決定で炭化水素組成物のグラムあたり多くとも0.1グラムの酸素含有量;および
ASTM法D4530による決定で炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.05グラムの微小炭素残滓含有量
を含み、並びに37.8℃で多くとも100cStの粘度を有し、粘度はASTM法D445によって決定される、炭化水素組成物を提供する。
【0018】
幾つかの実施形態において、本発明は、原油生成物または本明細書で説明される原油生成物から製造される1以上の蒸留画分を含む輸送燃料を提供する。
【0019】
幾つかの実施形態において、本発明は、原油生成物または本明細書で説明される原油生成物から製造される1以上の蒸留画分を含む希釈剤を提供する。
【0020】
さらなる実施形態において、特定の実施形態からの特徴を他の実施形態からの特徴と組み合わせることができる。例えば、1実施形態からの特徴を他の実施形態のいずれかからの特徴と組み合わせることができる。
【0021】
さらなる実施形態において、追加の特徴を本明細書で説明される特定の実施態様に加えることができる。
【0022】
本発明は以下の図によって説明されている:
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】接触システムの1実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で用いられる用語は以下のように定義される。
【0025】
「ASTM」は米国材料試験協会(American Standard Testing and Materials)を指す。
【0026】
「API比重」は15.5℃(60°F)でのAPI比重を指す。API比重はASTM法D6822によって決定される。
【0027】
炭化水素供給物および原油生成物の原子状水素パーセンテージおよび原子状炭素パーセンテージはASTM法D5291によって決定される。
【0028】
「二峰性触媒」は、細孔容積の少なくとも過半数が細孔径の2つの統計分布で分布し、各々の統計分布が細孔容積対細孔径プロット上に示されるときに有意のピークを有する触媒を指す。例えば、二峰性触媒は、50Åから100Å(80Åに示されるピークを有する。)の細孔径を有する細孔に分布するこの細孔容積の30%および300Åから350Å(320Åに示されるピークを有する。)の細孔径を有する細孔に分布するこの細孔容積の25%を有することができる。
【0029】
炭化水素供給物、全生成物および/または原油生成物の沸騰範囲分布は、他に言及されない限り、ASTM法D5307によって決定される。
【0030】
「Cアスファルテン」はn−ペンタンに不溶であるアスファルテンを指す。Cアスファルテン含有率はASTM法D2007によって決定される。
【0031】
「Cアスファルテン」はn−ヘプタンに不溶であるアスファルテンを指す。Cアスファルテン含有率はASTM法D3279によって決定される。
【0032】
「X列金属」は周期律表の第X列の1以上の金属および/または周期律表の第X列の1以上の金属の1以上の化合物を指し、Xは周期律表の列数(例えば、1から12)に相当する。例えば、「6列金属」は周期律表の第6列からの1以上の金属および/または周期律表の第6列からの1以上の金属の1以上の化合物を指す。
【0033】
「X列元素」は周期律表の第X列の1以上の元素および/または周期律表の第X列の1以上の元素の1以上の化合物を指し、Xは周期律表の列数(例えば、13から18)に相当する。例えば、「15列元素」は周期律表の第15列からの1以上の元素および/または周期律表の第15列からの1以上の元素の1以上の化合物を指す。
【0034】
本出願の範囲において、周期律表からの金属の重量、周期律表からの金属の化合物の重量、周期律表からの元素の重量、または周期律表からの元素の化合物の重量は金属の重量または元素の重量として算出する。例えば、MoO 0.1グラムが触媒のグラムあたりに用いられる場合、触媒中のモリブデン金属の算出重量は触媒のグラムあたりモリブデン金属0.067グラムである。
【0035】
「共混練(comulling)」は、少なくとも2つの物質が機械的および物理的力によって混合されるような、少なくとも2つの物質の接触、組み合わせまたは粉砕を指す。共混練は実質的に均一または均質な混合物を形成することができる。共混練には物質を接触させてペーストを得ることが含まれ、このペーストは、あらゆる公知の押出し、成形、錠剤化、圧縮、ペレット化または転動法により、押出物、粒子、回転楕円体、ピル、錠剤、円柱、不規則押出しまたは緩やかに結合した凝集体もしくはクラスタに押出しまたは形成することができる。共混練には、形成された固体を液体または気体中に浸漬して液体または気体から成分を吸収/吸着させる含浸法は含まれない。
【0036】
「含有量」は、基質の総重量を基準にして重量分率または重量パーセンテージとして表される、基質(例えば、炭化水素供給物、全生成物または原油生成物)中の成分の重量を指す。「重量ppm」は重量基準での百万分率を指す。
【0037】
「蒸留物」は、0.101MPaで182℃(360°F)から343℃(650°F)の沸騰範囲分布を有する炭化水素を指す。蒸留物含有量はASTM法D5307によって決定される。
【0038】
「ヘテロ原子」は炭化水素の分子構造内に含有される酸素、窒素および/またはイオウを指す。ヘテロ原子含有量は、酸素についてはASTM法E385、全窒素についてはD5762、およびイオウについてはD4294によって決定される。「全塩基性窒素」は40未満のpKaを有する窒素化合物を指す。塩基性窒素(「bn」)はASTM法D2896によって決定される。
【0039】
「炭化水素供給物/全生成物」は処理の間に触媒に接触する混合物を指す。
【0040】
「水素源」は水素の源を指し、これには水素ガス並びに/または、炭化水素供給物および触媒の存在下にあるとき、反応して水素をもたらす化合物(1種類)および/もしくは化合物(複数)が含まれる。水素源には、これらに限定されるものではないが、炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパンおよびブタンのようなCからC炭化水素)、水またはこれらの混合物が含まれ得る。もたらされる水素の正味の量を評価するのに物質収支を実施することができる。
【0041】
「LHSV」は触媒の総体積あたりの体積液体供給速度(volumetric liquid feed rate)を指し、時間(h−1)で表される。触媒の総体積は本明細書で説明される接触域内のすべての触媒体積の合計によって算出される。
【0042】
「液体混合物」は、標準温度および圧力(25℃、0.101MPa、以下「STP」と呼ぶ)で液体である1以上の化合物を含む組成物またはSTPで液体である1以上の化合物とSTPで固体である1以上の化合物との組み合わせを含む組成物を指す。
【0043】
「有機酸の金属塩中の金属」はアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、ヒ素、クロムまたはこれらの組み合わせを指す。有機酸の金属塩中の金属の含有量はASTM法D1318によって決定される。
【0044】
「微小炭素残滓」(「MCR」)含有量は基質の蒸発および熱分解の後に残留する炭素残滓の量を指す。MCR含有量はASTM法D4530によって決定される。
【0045】
「炭化水素供給物中のモリブデン含有量」は供給物中のモリブデンの含有量を指す。モリブデン含有量には供給物中の無機モリブデンおよび有機モリブデンの量が含まれる。炭化水素供給物中のモリブデン含有量はASTM法D5807によって決定される。
【0046】
「単峰性触媒」は、細孔容積の少なくとも過半数が細孔径の1つの統計分布で分布し、この統計分布が細孔容積対細孔径プロット上に示されるときに有意のピークを有する触媒を指す。例えば、単峰性触媒は70Åから300Å(150Åにピークを有する。)の細孔径を有する細孔においてこの細孔容積の50%を有し得る。
【0047】
「ナフサ」は、0.101MPaで38℃(100°F)から182℃(360°F)の沸騰範囲分布を有する炭化水素成分を指す。ナフサ含有量はASTM法D5307によって決定される。
【0048】
「Ni/V/Fe」はニッケル、バナジウム、鉄またはこれらの組み合わせを指す。
【0049】
「Ni/V/Fe含有量」はニッケル、バナジウム、鉄またはこれらの組み合わせの含有量を指す。Ni/V/Fe含有量には無機ニッケル、バナジウムおよび鉄化合物並びに/または有機ニッケル、有機バナジウムおよび有機鉄化合物が含まれる。Ni/V/Fe含有率はASTM法D5708によって決定される。
【0050】
「Nm/m」は炭化水素供給物の立方メートルあたりの気体の標準立方メートルを指す。
【0051】
「非濃縮性気体」はSTPで気体である成分および/または成分の混合物を指す。
【0052】
「P(解膠)値」または「P−値」は炭化水素供給物中でのアスファルテンの凝集傾向を表す数値を指す。P−値はASTM法D7060によって決定される。
【0053】
「周期律表」は国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC)、2003年11月によって指定される周期律表を指す。
【0054】
「細孔径」、「メジアン細孔径」および「細孔容積」はASTM法D4284(140°に等しい接触角での水銀圧入法)によって決定される細孔径、メジアン細孔径および細孔容積を指す。micromeritics(登録商標)A9220機器(Micromeritics Inc.,Norcross,Georgia,U.S.A.)をこれらの値の決定に用いることができる。
【0055】
「残滓」は、ASTM法D5307による決定で、538℃(1000°F)を上回る沸騰範囲分布を有する成分を指す。
【0056】
「沈殿」は炭化水素供給物/全生成物混合物に不溶である不純物および/またはコークスを指す。沈殿はASTM法D4807によって決定される。沈殿はJour.Inst.Pet.,1951,pages 596−604においてVan Kernoortらによって記述されるシェルホット濾過試験(Shell Hot Filtration Test)(「SHFST」)によって決定することもできる。
【0057】
「SCFB」は炭化水素供給物のバーレルあたりの気体の標準立方フィートを指す。
【0058】
触媒の「表面積」はASTM法D3663によって決定される。
【0059】
「VGO」は0.101MPaで343℃(650°F)から538℃(1000°F)の沸騰範囲分布を有する炭化水素を指す。VGO含有量はASTM法D5307によって決定される。
【0060】
「粘性」は37.8℃(100°F)での動粘性を指す。粘性はASTM法D445を用いて決定される。
【0061】
本出願の脈絡において、試験した基質の特性について得られた値がこの試験法の限界外にある場合、このような特性を試験するように試験法を修正し、および/または再較正できることは理解される。
【0062】
「炭化水素供給物」は炭化水素を含む供給物を指す。炭化水素供給物には、これらに限定されるものではないが、原油、不利な原油、安定化原油、精製プロセスから得られる炭化水素またはこれらの混合物が含まれ得る。精製プロセスから得られる炭化水素供給物の例には、これらに限定されるものではないが、ロングレジデュー(long residue)、ショートレジデュー(short residue)、ナフサ、ガスオイルおよび/もしくは538℃(1000°F)超で沸騰する炭化水素またはこれらの混合物が含まれる。
【0063】
一実施形態において、炭化水素供給物は原油であり、本明細書では原油供給物とも呼ばれる。原油または原油供給物は、炭化水素含有層から生成および/またはレトルト処理されており、特定の沸騰範囲分布を有する複数の成分を生成するために処理施設において蒸留および/または分画蒸留されていない、例えば、大気圧蒸留法および/または真空蒸留法がなされていない炭化水素の供給物を指す。原油は固体、半固体および/または液体であり得る。原油には、例えば、コール、ビチューメン、タールサンドまたは原油が含まれ得る。原油または原油供給物を安定化し、安定化原油供給物とも呼ばれる安定化原油を形成することができる。安定化には、これらに限定されるものではないが、非濃縮性気体、水、塩またはこれらの組み合わせを原油から除去して安定化原油を形成することが含まれ得る。このような安定化は生成および/もしくはレトルト処理現場で、またはこの近くでしばしば行われ得る。
【0064】
安定化原油は、特定の沸騰範囲分布を有する複数の成分(例えば、ナフサ、蒸留物、VGOおよび/または潤滑油)を生成するために処理施設において蒸留および/または分画蒸留されていない。蒸留には、これらに限定されるものではないが、大気圧蒸留法および/または真空蒸留法が含まれる。非蒸留および/または非分画安定化原油は4を上回る炭素数を有する成分を原油のグラムあたり成分少なくとも0.5グラムの量で含み得る。安定化原油の例には、全原油、抜頭原油、脱塩原油、脱塩抜頭原油またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0065】
「抜頭」は、0.101MPaで35℃(1atmで95°F)未満の沸点を有する成分の少なくとも幾つかが除去されているように処理されている原油を指す。抜頭原油は、抜頭原油のグラムあたりこのような成分多くとも0.1グラム、多くとも0.05グラムまたは多くとも0.02グラムの含有量を有することができる。
【0066】
幾つかの安定化原油は、この安定化原油を通常の処理施設まで輸送手段(例えば、パイプライン、トラックまたは船)によって輸送することを可能にする特性を有する。他の原油はこれらを不利にする1以上の不適切な特性を有する。不利な原油は輸送手段および/または処理施設に受け入れられないことがあり、従って、不利な原油には低い経済的価値が付与される。この経済的価値は、この不利な原油を含む容器を製造、輸送および/または処理するのに経費がかかりすぎると見なされるようなものであり得る。
【0067】
原油または不利な原油のような炭化水素供給物の特性は広範に変化し得る。
【0068】
原油供給物のような炭化水素供給物は37.8℃で少なくとも10cSt、37.8℃で少なくとも100cSt、少なくとも1000cStまたは少なくとも2000cStの粘度を有し得る。
【0069】
原油供給物のような炭化水素供給物は多くとも19、多くとも15または多くとも10のAPI比重を有し得る。これは、さらに、少なくとも5のAPI比重を有し得る。
【0070】
原油供給物のような炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたりNi/V/Fe少なくとも0.00002グラムまたは少なくとも0.0001グラムの合計Ni/V/Fe含有量を有し得る;
原油供給物のような炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたりヘテロ原子少なくとも0.005グラムの合計へテロ原子含有量を有し得る。
【0071】
幾つかの実施形態において、炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたり酸素含有化合物少なくとも0.001グラムを有し、原油生成物は炭化水素供給物酸素含有化合物含有量の多くとも90%の酸素含有化合物含有量を有し、酸素はASTM法E385によって決定される。
【0072】
原油供給物のような炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたり残滓少なくとも0.01グラムの残滓含有量を有し得る。幾つかの実施形態において、炭化水素または原油供給物は、供給物のグラムあたり、残滓少なくとも0.2グラム、残滓少なくとも0.3グラム、残滓少なくとも0.5グラムまたは残滓少なくとも0.9グラムを含み得る。
【0073】
原油供給物のような炭化水素供給物は、炭化水素供給物のグラムあたり、少なくとも0.005、少なくとも0.01または少なくとも0.02グラムのイオウ含有量を有し得る。
【0074】
原油供給物のような炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたりCアスファルテン少なくとも0.04グラムもしくは少なくとも0.08グラムのCアスファルテン含有量;および/または炭化水素供給物のグラムあたりCアスファルテン少なくとも0.02グラムもしくは少なくとも0.04グラムを有し得る。
【0075】
原油供給物のような炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたりMCR少なくとも0.002グラムのMCR含有量を有し得る。
【0076】
原油供給物のような炭化水素供給物は炭化水素供給物のグラムあたり金属少なくとも0.00001グラムの有機酸の金属塩中の金属の含有量を有し得る。
【0077】
原油供給物のような炭化水素供給物は少なくとも0.1重量ppmのモリブデン含有量をさらに有し得る;
原油供給物のような炭化水素供給物は上記特性の組み合わせのあらゆる種類をさらに有し得る。
【0078】
原油供給物のような炭化水素供給物は、供給物のグラムあたり:0.101MPaで95℃から200℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;0.101MPaで200℃から300℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;0.101MPaで300℃から400℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;および0.101MPaで400℃から650℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラムを含み得る。
【0079】
さらなる実施形態において、原油供給物のような炭化水素供給物は、供給物のグラムあたり:0.101MPaで高くとも100℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;0.101MPaで100℃から200℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;0.101MPaで200℃から300℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;0.101MPaで300℃から400℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラム;および0.101MPaで400℃から650℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラムを含み得る。
【0080】
幾つかの炭化水素供給物または原油供給物は、供給物のグラムあたり、0.101MPaで高くとも100℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラムを、より高温沸騰性の成分に加えて含み得る。典型的には、不利な原油は、不利な原油のグラムあたり、多くとも0.2グラムまたは多くとも0.1グラムのこのような炭化水素の含有量を有する。
【0081】
幾つかの炭化水素供給物または原油供給物は、供給物のグラムあたり、0.101MPaで少なくとも200℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラムを含み得る。
【0082】
幾つかの炭化水素供給物または原油供給物は、供給物のグラムあたり、少なくとも650℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラム、少なくとも0.005グラムまたは少なくとも0.01グラムを含み得る。
【0083】
本明細書で説明される方法を用いて処理することができる原油の例には、これらに限定されるものではないが、世界の以下の地域からの原油が含まれる:米国メキシコ湾および南カリフォルニア、カナダ・タールサンド、ブラジル・サントスおよびカンポス盆地、エジプト・スエズ湾、チャド、英国北海、アンゴラ沖合、中国渤海湾、ベネズエラ・ズリア、マレーシアおよびインドネシア・スマトラ。
【0084】
不利な原油の処理はこれらの原油が輸送および/または処理で受容されるように不利な原油の特性を強化し得る。
【0085】
炭化水素供給物は本明細書で説明されるように抜頭することができる。本明細書で説明される炭化水素供給物の処理から生じる原油生成物は、一般には、輸送および/または処理に適する。本明細書で説明されるように生成される原油生成物の特性は炭化水素供給物よりもWest Texas Intermediate原油の対応する特性に近く、または炭化水素供給物よりもBrent原油の対応する特性に近く、それにより炭化水素供給物の経済的価値が高められる。このような原油生成物はより少ない前処理で、または前処理なしで、精製することができ、それにより精製効率が高められる。前処理には脱硫、脱金属および/または不純物を除去するための大気圧蒸留が含まれ得る。
【0086】
例えば、幾つかの実施形態においては、炭化水素供給物を他の触媒と接触させる前に、炭化水素供給物からの有機金属化合物および/または金属の少なくとも一部の除去を行う。例えば、炭化水素供給物中の有機モリブデンおよび/または有機銅少量(例えば、多くとも50重量ppm、多くとも20重量ppmまたは多くとも10重量ppm)は、炭化水素供給物と触媒との接触の際に、触媒の活性を低下させ得る。
【0087】
反応器内での堆積物または不溶性成分の蓄積は接触域内の圧力変化につながり、従って、炭化水素供給物が接触域を望ましい流速で通過することを妨げる可能性がある。例えば、接触域の導入口圧が出発圧と比較して短期間にわたって急速に増加し得る。圧力の急速な増加は触媒の詰まりを示すものであり得る。短期間にわたる少なくとも3MPa、少なくとも5MPa、少なくとも7MPaまたは少なくとも10MPaの圧力の変化は触媒の詰まりを示すものであり得る。本明細書で説明される実施形態に従う炭化水素供給物の処理は、接触域および/または2以上の接触域の組み合わせにおいて炭化水素供給物を触媒と接触させることを含み得る。接触域においては、炭化水素供給物の少なくとも1つの特性が、炭化水素供給物と1以上の触媒との接触により、炭化水素供給物の同じ特性に対して変化し得る。幾つかの実施形態において、接触は炭化水素源の存在下で行う。幾つかの実施形態において、炭化水素源は水素ガスである。幾つかの実施形態において、炭化水素源は、特定の接触条件下で反応して水素比較的少量を炭化水素供給物中の化合物にもたらす、1以上の炭化水素である。
【0088】
図1は接触域102を含む接触システム100の模式図である。炭化水素供給物は接触域102の上流から炭化水素供給物導管104を介して侵入する。接触域は反応器、反応器の一部、反応器の複数の部分またはこれらの組み合わせであり得る。接触域の例には、積層床反応器、固定床反応器、沸騰床反応器、連続撹拌タンク反応器(「CSTR」)、流動床反応器、噴霧反応器および液/液接触器が含まれる。1以上の接触域の配置がBhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050133414に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、接触システムは沖合施設上に存在するか、またはこれに連結される。接触システム100における炭化水素供給物と触媒との接触は連続プロセスであってもバッチプロセスであってもよい。
【0089】
接触域は1以上の触媒(例えば、2種類の触媒)を収容することができる。幾つかの実施形態において、炭化水素供給物と2種類の触媒のうちの第1の触媒との接触は炭化水素供給物の粘性を低下させ得る。粘性が低下した炭化水素供給物と第2触媒との次の接触は金属含有量および/またはヘテロ原子含有量を減少させる。他の実施形態においては、残滓含有量、MCR含有量または原油生成物のこれらの特性の組み合わせが、炭化水素供給物が1以上の触媒と接触した後、炭化水素供給物の同じ特性に対して少なくとも10%変化する。
【0090】
特定の実施形態において、接触域内での触媒の体積は接触域内の炭化水素供給物の総体積の10vol%から60vol%、20vol%から50vol%または30vol%から40vol%の範囲である。幾つかの実施形態において、触媒および炭化水素供給物のスラリーは、接触域内の炭素供給物の100グラムあたり、触媒0.001グラムから10グラム、0.005グラムから5グラムまたは0.01グラムから3グラムを含むことができる。
【0091】
接触域における接触条件には、これらに限定されるものではないが、温度、圧力、水素源流、炭化水素供給流またはこれらの組み合わせが含まれ得る。選択条件は、幾つかの実施形態において、特定の特性を有する原油生成物が生成されるように制御される。接触域における温度は50℃から500℃、好ましくは、100℃から450℃の範囲を取り得る。幾つかの実施形態において、接触域における温度は350℃から450℃、360℃から440℃または370℃から430℃の範囲を取り得る。炭化水素供給物のLHSVは、一般には、0.1h−1から30h−1、0.4h−1から25h−1、0.5h−1から20h−1、1h−1から15h−1、1.5h−1から10h−1または2h−1から5h−1の範囲を取る。幾つかの実施形態において、LHSVは少なくとも5h−1、少なくとも11h−1、少なくとも15h−1または少なくとも20h−1である。接触域における水素の分圧は0.1MPaから8MPa、1MPaから7MPa、2MPaから6MPaまたは3MPaから5MPaの範囲を取り得る。幾つかの実施形態において、水素の分圧は高くとも7MPa、高くとも6MPa、高くとも5MPa、高くとも4MPa、高くとも3MPaまたは高くとも3.5MPaであり得る。幾つかの実施形態において、水素の分圧は接触域の全圧と同じである。
【0092】
水素源が気体(例えば、水素ガス)として供給される実施形態において、気体状水素源の炭化水素供給物に対する(20℃温度および1.013バール圧の標準状態で決定される、別名Nm/mの)比は、典型的には、触媒と接触する0.1Nm/mから100,000Nm/m、0.5Nm/mから10,000Nm/m、1Nm/mから8,000Nm/m、2Nm/mから5,000Nm/m、5Nm/mから3,000Nm/mまたは10Nm/mから800Nm/mの範囲をとる。水素源は、幾つかの実施形態において、キャリアガスと組み合わされ、接触域を介して再循環される。キャリアガスは、例えば、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンであり得る。キャリアガスは接触域における炭化水素供給物の流れおよび/または水素源の流れを容易にすることができる。キャリアガスは接触域における混合を強化することもできる。幾つかの実施形態においては、水素源(例えば、水素、メタンまたはエタン)をキャリアガスとして用い、接触域を介して再循環させることができる。
【0093】
水素源は炭化水素供給導管104を介して炭化水素供給物と同時に、または気体導管106を介して別に、接触域102に入れることができる。接触域102において、炭化水素供給物と触媒との接触が原油生成物および、幾つかの実施形態においては、気体を含む全生成物を生成する。幾つかの実施形態においては、導管106においてキャリアガスが炭化水素供給物および/または水素源と組み合わされる。全生成物は接触域102から出し、導管108を介して他の処理域、保存容器またはこれらの組み合わせに輸送することができる。
【0094】
幾つかの実施形態において、全生成物は処理ガスおよび/または処理の間に形成される気体を含有することができる。このような気体には、例えば、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、過剰の気体状水素源および/またはキャリアガスが含まれ得る。必要ならば、過剰の気体を全生成物から分離し、接触システム100に再循環させ、精製し、他の処理域、保存容器またはこれらの組み合わせに輸送することができる。幾つかの実施形態において、処理の間に生成される気体は、全生成物を基準にして多くとも10vol%、全生成物を基準にして多くとも5vol%または生成される全生成物を基準にして多くとも1vol%である。幾つかの実施形態においては、供給物と触媒との接触の間に生成される気体は最小量または検出不能量である。このような場合、全生成物は原油生成物と考えられる。
【0095】
幾つかの実施形態においては、接触域102において1以上の触媒と接触させる前に原油(抜頭または非抜頭のいずれか)を分離する。分離プロセスの間、原油の少なくとも一部を当分野において公知の技術(例えば、散布、膜分離、圧力低下)を用いて分離して炭化水素供給物を生成する。例えば、水を原油から少なくとも部分的に分離することができる。別の例においては、95℃未満または100℃未満の沸騰範囲分布を有する成分を原油から少なくとも部分的に分離して炭化水素供給物を生成することができる。幾つかの実施形態においては、ナフサおよびナフサよりも揮発性である化合物の少なくとも一部を不利な原油から分離する。
【0096】
幾つかの実施形態においては、原油生成物を炭化水素供給物と同じであるか、または異なる原油と配合する。例えば、原油生成物を異なる粘度を有する原油と組み合わせ、それにより原油生成物の粘度と原油の粘度との間にある粘度を有する配合生成物を生じることができる。別の例においては、原油生成物を異なるTAN、粘度および/またはAPI比重を有する原油と配合し、それにより原油生成物および原油の選択された特性の間にある選択された特性を有する生成物を生成することができる。配合生成物は輸送および/または処理に適するものであり得る。幾つかの実施形態においては、不利な原油を分離して炭化水素供給物を形成する。次に、この炭化水素供給物を1以上の触媒と接触させて炭化水素供給物の選択された特性を変化させ、全生成物を形成する。全生成物の少なくとも一部および/または全生成物からの原油生成物の少なくとも一部を不利な原油の少なくとも一部および/または異なる原油と配合し、望ましい特性を有する生成物を得ることができる。
【0097】
幾つかの実施形態においては、原油生成物および/または配合生成物を精製装置に輸送し、蒸留および/または分画蒸留して1以上の炭化水素画分を生成する。これらの炭化水素画分を処理して、輸送燃料、潤滑油または化学薬品のような商用生成物を生成することができる。不利な原油および/または炭化水素供給物、全生成物および/または原油生成物の配合および分離はBhanらへのU.S.Published Patent Application No.20050133414に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
幾つかの実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物のモリブデン含有量の多くとも90%、多くとも50%、多くとも10%、多くとも5%または多くとも3%の全モリブデン含有量を有する。特定の実施形態において、原油生成物は0.001重量ppmから1重量ppm、0.005重量ppmから0.1重量ppmまたは0.01から0.05重量ppmの範囲の全モリブデン含有量を有する。
【0099】
幾つかの実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物の銅含有量の多くとも90%、多くとも50%、多くとも10%、多くとも5%または多くとも3%の銅含有量を有する。特定の実施形態において、原油生成物は0.001重量ppmから1重量ppm、0.005重量ppmから0.1重量ppmまたは0.01から0.05重量ppmの範囲の全銅含有量を有する。
【0100】
幾つかの実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物中の有機酸の金属塩中の金属の総含有量の多くとも90%、多くとも50%、多くとも10%または多くとも5%の有機酸の金属塩中の金属の総含有量を有する。金属塩を一般に形成する有機酸には、これらに限定されるものではないが、カルボン酸、チオール、イミド、スルホン酸およびスルホネートが含まれる。カルボン酸の例には、これらに限定されるものではないが、ナフテン酸、フェナントレン酸(phenanthrenic acids)および安息香酸が含まれる。金属塩の金属部分にはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウムおよびバリウム)、第12列金属(例えば、亜鉛およびカドミウム)、第15列金属(例えば、ヒ素)、第6列金属(例えば、クロム)またはこれらの混合物が含まれ得る。
【0101】
特定の実施形態において、原油生成物は、原油生成物のグラムあたり有機酸の金属塩中の全金属0.1重量ppmから50重量ppm、3重量ppmから20重量ppmグラムまたは原油生成物のグラムあたり10重量ppmから1重量ppmの範囲の有機酸の金属塩中の金属の総含有量を有する。
【0102】
特定の実施形態において、接触条件で炭化水素供給物と触媒との接触から生成される原油生成物のAPI比重は、炭化水素供給物のAPI比重に対して少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5または少なくとも10だけ増加する。特定の実施形態において、原油生成物のAPI比重は7から40、10から30または12から25の範囲を取る。
【0103】
特定の実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物の粘度の多くとも90%、多くとも80%または多くとも70%の粘度を有する。幾つかの実施形態において、原油生成物の粘度は多くとも1000、多くとも500または多くとも100cStである。
【0104】
幾つかの実施形態において、原油生成物は原油生成物の多くとも0.1重量%の沈殿含有量を有する。原油生成物の沈殿含有量は原油生成物の0.0001重量%から0.1重量%、0.001重量%から0.05重量%または0.005重量%から0.01重量%の範囲を取り得る。
【0105】
幾つかの実施形態において、原油生成物のイオウ含有量は炭化水素供給物のイオウ含有量の多くとも90%、多くとも80%または多くとも70%である。幾つかの実施形態において、原油生成物のイオウ含有量は原油生成物のグラムあたり少なくとも0.02グラムである。原油生成物のイオウ含有量は原油生成物のグラムあたり0.001グラムから0.1グラム、0.005から0.08グラムまたは0.01から0.05グラムの範囲を取り得る。
【0106】
幾つかの実施形態において、原油生成物の窒素含有量は炭化水素供給物の窒素含有量の70%から130%、80%から120%または90%から110%である。
【0107】
幾つかの実施形態において、原油生成物は原油生成物のグラムあたり窒素少なくとも0.02グラムの窒素含有量を有する。幾つかの実施形態において、原油生成物の窒素含有量は原油生成物のグラムあたり0.001グラムから0.1グラム、0.005グラムから0.08グラムまたは0.01から0.05グラムの範囲を取り得る。
【0108】
幾つかの実施形態において、原油生成物は、この分子構造内に、原油生成物のグラムあたり水素0.05グラムから0.15グラムまたは0.09グラムから0.13グラムを含む。原油生成物は、この分子構造内に、原油生成物のグラムあたり炭素0.8グラムから0.9グラムまたは0.82グラムから0.88グラムを含み得る。原油生成物の原子水素の原子炭素に対する比(H/C)は炭化水素供給物の原子H/C比の70%から130%、80%から120%または90%から110%内であり得る。炭化水素供給物の原子H/C比の10%から30%内の原油生成物の原子H/C比は、このプロセスにおける水素の取り込みおよび/もしくは消費が比較的小さく、並びに/または水素がこの場で生成されることを示す。
【0109】
原油生成物は一連の沸点を有する成分を含む。幾つかの実施形態において、原油生成物は、原油生成物のグラムあたり:0.101MPaで高くとも100℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムまたは0.001グラムから0.5グラム;0.101MPaで100℃から200℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムまたは0.001グラムから0.5グラム;0.101MPaで200℃から300℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムまたは0.001グラムから0.5グラム;0.101MPaで300℃から400℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムまたは0.001グラムから0.5グラム;および0.101MPaで400℃から538℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムまたは0.001グラムから0.5グラムを含む。
【0110】
幾つかの実施形態において、原油生成物は、原油生成物のグラムあたり、0.101MPaで高くとも100℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムおよび/または0.101MPaで100℃から200℃の沸騰範囲分布を有する炭化水素少なくとも0.001グラムを含む。
【0111】
幾つかの実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物の蒸留物含有量の少なくとも110%、少なくとも120%または少なくとも130%の蒸留物含有量を有する。原油生成物の蒸留物含有量は、原油生成物のグラムあたり、0.00001グラムから0.6グラム(0.001から60重量%)、0.001グラムから0.5グラム(0.1から50重量%)または0.01グラムから0.4グラム(1から40重量%)の範囲であり得る。
【0112】
特定の実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物のVGO含有量の70%から130%、80%から120%または90%から110%の、0.101MPa、343℃から538℃で沸騰する、VGO含有量を有する。幾つかの実施形態において、原油生成物は、原油生成物のグラムあたり、0.00001グラムから0.8グラム、0.001グラムから0.7グラム、0.01グラムから0.6グラムまたは0.1グラムから0.5グラムの範囲のVGO含有量を有する。
【0113】
幾つかの実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物の残滓含有量の多くとも90%、多くとも80%または多くとも50%の残滓含有量を有する。原油生成物は、原油生成物のグラムあたり、0.00001グラムから0.8グラム、0.001グラムから0.7グラム、0.01グラムから0.6グラム、0.05グラムから0.5グラムまたは0.1から0.3グラムの範囲の残滓含有量を有し得る。
【0114】
幾つかの実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物の全CおよびCアスファルテン含有量の多くとも90%、多くとも80%、多くとも75%または多くとも50%の全CおよびCアスファルテン含有量を有する。他の実施形態において、炭化水素供給物のCアスファルテン含有量は炭化水素供給物のCアスファルテン含有量の少なくとも10%、少なくとも30%または少なくとも40%である。特定の実施形態において、炭化水素供給物は、炭化水素供給物のグラムあたり、0.001グラムから0.2グラム、0.01から0.15グラムまたは0.05グラムから0.15グラムの範囲の全CおよびCアスファルテン含有量を有する。
【0115】
特定の実施形態において、原油生成物は炭化水素供給物のMCR含有量の多くとも95%、多くとも90%または多くとも80%のMCR含有量を有する。幾つかの実施形態において、比較的安定なMCR含有量を維持しながら炭化水素供給物のCアスファルテン含有量を減少させることが炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性を高め得る。
【0116】
原油生成物は、幾つかの実施形態において、原油生成物のグラムあたりMCR 0.0001グラムから0.20グラム、0.005グラムから0.15グラムまたは0.01グラムから0.010グラムを有する。
【0117】
幾つかの実施形態において、原油生成物は、少なくとも150重量ppmの全Ni/Fe/V含有量;炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの残滓含有量;炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの蒸留物含有量、炭化水素組成物のグラムあたり多くとも0.1グラムの酸素含有量;炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.05グラムの微小炭素残滓含有量を有し、および37.8℃で多くとも100cStの粘度を有する炭化水素組成物である。
【0118】
幾つかの実施形態において、原油生成物は、原油生成物のグラムあたり全触媒を0グラムを上回るが0.01グラム未満、0.000001グラムから0.001グラムまたは0.00001グラムから0.0001グラム含む。原油生成物中に存在する触媒は輸送および/または処理の間の原油生成物の安定化に役立ち得る。原油生成物中の触媒は腐食を阻止し、摩擦を阻止し、および/または原油生成物の水分離能力を高めることができる。本明細書で説明される方法を、本明細書で説明される1以上の触媒が処理の間に原油生成物に添加されるように構成することができる。
【0119】
炭化水素供給物中のNi/V/Feおよび/またはイオウの量を有意に変化させることなしに炭化水素供給物中の1以上の成分(例えば、残滓および/または粘性)のみを選択的に減少させることが望ましいものであり得る。このようにして、他の成分の減少ではなく残滓の減少で、接触の最中の水素取り込みを「濃縮」することができる。炭化水素供給物において他の成分の減少にも用いられているこのような水素はそれほどでもないため、プロセスの間に用いられる水素の量を最少化することができる。例えば、不利な原油は、処理および/または輸送仕様を満たすのに許容し得るNi/V/Fe含有量を除いて、多くの残滓を有することができる。このような炭化水素供給物は、Ni/V/Feをも減少させることなしに残滓を減少させることにより、より効率的に処理することができる。
【0120】
幾つかの実施形態において、本明細書で説明される触媒を本明細書で説明される温度および圧力で用いる炭化水素供給物の接触は、37.8℃で多くとも100cStの粘度、少なくとも150重量ppmの全Ni/Fe/V含有量、原油生成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの残滓含有量、原油生成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの蒸留物含有量、原油生成物のグラムあたり多くとも0.1グラムの酸素含有量および原油生成物のグラムあたり少なくとも0.05グラムの微小炭素残滓含有量を有する原油生成物を生成する。
【0121】
本発明の1以上の実施形態において用いられる触媒には1以上のバルク金属および/または支持体上の1以上の金属が含まれ得る。これらの金属は元素状形態であっても金属の化合物の形態であってもよい。本明細書で説明される触媒は、接触域に前駆体として導入した後、接触域内で触媒として活性にすることができる(例えば、イオウおよび/またはイオウを含有する炭化水素供給物を前駆体と接触させるとき)。
【0122】
幾つかの実施形態において、炭化水素供給物の特性の変更に用いられる触媒は支持体上の1以上の6から10列金属を含む。6から10列金属には、これらに限定されるものではないが、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金またはこれらの混合物が含まれる。触媒は、触媒のグラムあたり、少なくとも0.0001グラム、少なくとも0.001グラム、少なくとも0.01グラムの範囲、または0.0001グラムから0.6グラム、0.001グラムから0.3グラム、0.005グラムから0.1グラムもしくは0.01グラムから0.08グラムの範囲の全6から10列金属含有量を有し得る。幾つかの実施形態において、触媒は6から10列金属に加えて15列金属を含む。15列元素の例にはリンが含まれる。触媒は、触媒のグラムあたり、0.000001グラムから0.1グラム、0.00001グラムから0.06グラム、0.00005グラムから0.03グラムまたは0.0001グラムから0.001グラムの範囲の全15列元素含有率を有し得る。
【0123】
特定の実施形態において、触媒は6列金属を含む。6列金属には、これらに限定されるものではないが、クロム、モリブデン、タングステンまたはこれらの混合物が含まれる。触媒は、触媒のグラムあたり、少なくとも0.00001、少なくとも0.01グラム、少なくとも0.02グラムおよび/または0.0001グラムから0.6グラム、0.001グラムから0.3グラム、0.005グラムから0.1グラムもしくは0.01グラムから0.08グラムの範囲の全6列金属含有量を含み得る。幾つかの実施形態において、触媒は、触媒のグラムあたり、6列金属0.0001グラムから0.06グラムを含む。幾つかの実施形態において、6列金属の化合物には三酸化モリブデンおよび/または三酸化タングステンのような酸化物が含まれる。特定の実施形態において、触媒は6列金属のみまたは6列化合物のみを含む。一実施形態において、触媒はモリブデンおよび/または酸化モリブデンのみを含む。一実施形態において、6から10列金属触媒は触媒のグラムあたりモリブデン少なくとも0.1グラムを含む。
【0124】
幾つかの実施形態において、触媒は6列金属と7から10列からの1以上の金属との組み合わせを含む。7から10列金属には、これらに限定されるものではないが、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金またはこれらの混合物が含まれる。触媒は、触媒のグラムあたり、少なくとも0.0001グラム、少なくとも0.001グラム、少なくとも0.01グラムの範囲、または0.0001グラムから0.6グラム、0.001グラムから0.3グラム、0.005グラムから0.1グラムもしくは0.01グラムから0.08グラムの範囲の全6から10列含有量を有し得る。一実施形態において、7から10列金属の少なくとも1つにはニッケルおよび/またはコバルトが含まれる。
【0125】
幾つかの実施形態において、触媒は6から10列金属に加えて15列元素を含む。幾つかの実施形態において、触媒は、触媒のグラムあたり、7から10列金属多くとも0.03グラム、多くとも0.02グラムまたは0.01グラムを有する。幾つかの実施形態において、触媒は7から10列金属を含まない。
【0126】
6列金属の7から10列金属に対するモル比は0.1から20、1から10または2から5の範囲内であり得る。幾つかの実施形態において、触媒は、6列金属と7から10列からの1以上の金属との組み合わせに加えて、15列元素を含む。他の実施形態において、触媒は6列金属および10列金属を含む。触媒中の全10列金属の全6列金属に対するモル比は1から10または2から5の範囲内であり得る。
【0127】
幾つかの実施形態において、触媒は6列金属に加えて15列元素を含む。15列元素の例にはリンが含まれる。触媒は、触媒のグラムあたり、0.000001グラムから0.1グラム、0.00001グラムから0.06グラム、0.00005グラムから0.03グラムまたは0.0001グラムから0.001グラムの範囲の全15列元素含有量を有し得る。
【0128】
幾つかの実施形態においては、6から10列金属が支持体と共に組み込まれて触媒を形成する。特定の実施形態においては、15列元素と組み合わされた6から10列金属が支持体と共に組み込まれて触媒を形成する。金属および/または元素が支持される実施形態において、触媒の重量にはすべての支持体、すべての金属およびすべての元素が含まれる。幾つかの実施形態において、支持体には耐火性酸化物、多孔性炭素系材料、ゼオライトまたはこれらの組み合わせが含まれる。耐火性酸化物には、これらに限定されるものではないが、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物が含まれ得る。支持体はCriterion Catalysts and Technologies LP(米国テキサス州ヒューストン)のような商業製造者から入手することができる。多孔性炭素系材料には、これらに限定されるものではないが、活性炭および/または多孔性グラファイトが含まれる。ゼオライトの例には、Y−ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM−5ゼオライトおよびフェリエ沸石型ゼオライトが含まれる。ゼオライトはZeolyst(米国ペンシルバニア州Valley Forge)のような商業製造者から入手することができる。
【0129】
幾つかの実施形態においては、6から10列金属が支持体と共に組み込まれて触媒を形成する。特定の実施形態においては、15列元素と組み合わされた6から10列金属が支持体と共に組み込まれて触媒を形成する。金属および/または元素が支持される実施形態において、触媒の重量にはすべての支持体、すべての金属およびすべての元素が含まれる。支持体は多孔性であってもよく、耐火性酸化物、多孔性炭素系材料、ゼオライトまたはこれらの組み合わせが含まれ得る。耐火性酸化物には、これらに限定されるものではないが、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物が含まれ得る。支持体はCriterion Catalysts and Technologies LP(米国テキサス州ヒューストン)のような商業製造者から入手することができる。多孔性炭素系材料には、これらに限定されるものではないが、活性炭および/または多孔性グラファイトが含まれる。ゼオライトの例には、Y−ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM−5ゼオライトおよびフェリエ沸石型ゼオライトが含まれる。ゼオライトはZeolyst(米国ペンシルバニア州Valley Forge)のような商業製造者から入手することができる。
【0130】
特定の実施形態において、支持体にはγアルミナ、δアルミナ、αアルミナまたはこれらの組み合わせが含まれる。触媒支持体のグラムあたりのγアルミナ、δアルミナ、αアルミナまたはこれらの組み合わせの量は、X線回折による決定で、0.0001グラムから0.99グラム、0.001グラムから0.5グラム、0.01グラムから0.1グラムまたは多くとも0.1グラムの範囲であり得る。幾つかの実施形態において、支持体はシリカ0.0001グラムから0.10グラム、0.001グラムから0.05グラムまたは0.01グラムから0.03グラム;およびアルミナ0.90グラムから0.9999グラム、0.95グラムから0.999グラムまたは0.99から0.97グラムを含む。シリカのようなブレンステッド塩基の支持体への組み込みは高温でのコークスの形成を阻止し得る。
【0131】
周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を支持体と共混練して混合物を形成することができる。この混合物は粒子状に形成することができる。
【0132】
触媒の表面上に触媒性金属(例えば、6から10列金属)最少量を有する、大表面積を有する触媒は、触媒性金属を支持体と共に共混練することによって調製することができる。支持体および触媒性金属の共混練は実質的に均一または均質な混合物を形成し得る。幾つかの実施形態においては、水および/または溶媒を添加して混合物をペースト状に形成することを容易にすることができ、このペーストはあらゆる公知の押出し、成型、錠剤化、圧縮、ペレット化または転動法により、押出すか、または押出物粒子、回転楕円体、ピル、錠剤、円柱体、不規則押出または緩やかに結合した凝集体もしくはクラスタに形成することができる。
【0133】
6から10列金属および支持体は適切な混合装置で共混練することができる。1を超える金属が存在する場合、これらの金属は一緒に、または別々に添加することができる。適切な混合装置の例にはタンブラ、固定シェルもしくはトラフ、マラーミキサ(例えば、バッチタイプもしくは連続タイプ)、衝撃ミキサおよび他のあらゆる一般に公知のミキサまたは、6から10列金属/支持体混合物を適切にもたらす、一般に公知の装置が含まれる。特定の実施形態においては、6から10列金属が支持体中に実質的に均質に分散するまで材料を混合する。支持体中の6から10列金属の分散は高温および/または高圧での6から10列金属のコークス化を阻止し、従って、残滓相当量および/または高粘性を含有する炭化水素供給物を、含浸技術を用いて製造される従来の触媒を用いることによっては得ることができない速度、温度および圧力で処理することを可能にする。幾つかの実施形態において、シリカを含有する支持体および6から10金属の共混練はより平滑な触媒表面を形成する。より平滑な触媒表面は、露出されるアルミナ部位がより少ないため、触媒表面のブレンステッド酸性を低下させることが可能である。
【0134】
単独の、または7から10列金属との組み合わせにある、6列金属の支持体との共混練は、(支持体の含浸とは対照的に)金属の少なくとも一部を(例えば、支持体に埋め込まれた)埋込金属触媒の表面下に存在させ、これが非埋込金属触媒において異なるように生じるものよりも少ない表面上の金属につながる。幾つかの実施形態において、触媒の表面上の金属を少なくすることは、使用の最中に金属の少なくとも一部を触媒の表面に移動させることにより、触媒の寿命および/または触媒活性を拡大する。金属は、触媒の表面の浸食により、触媒と炭化水素供給物との接触の間に触媒の表面に移動し得る。
【0135】
いかなる種類の理論のよっても束縛されることを望むものではないが、触媒の化合物のインターカレーションおよび/または混合は6から10列金属酸化物結晶構造内の6から10列金属の構造化された配列を埋込触媒の結晶構造における6から10列金属の実質的に無作為の配列に変化させ得る。6から10列金属の配列は粉末X線回折法を用いて決定することができる。金属酸化物中の元素金属の配列に対する触媒中の元素金属の配列は、6から10列金属酸化物のX線回折スペクトルにおける6から10列金属ピークの配列を触媒のX線回折スペクトルにおける6から10列金属ピークの配列と比較することによって決定することができる。X線回折スペクトルにおける6から10列金属に関連するパターンの広がりおよび/または欠如から、6から10列金属が結晶構造内で実質的に無作為に配列することを見積もることができる。例えば、三酸化モリブデンおよび少なくとも180Åのメジアン細孔径を有するアルミナ支持体を組み合わせてアルミナ/三酸化モリブデン混合物を形成することができる。三酸化モリブデンは明確なパターン(例えば、明確なD001、D002および/またはD003ピーク)を有する。アルミナ/三酸化モリブデン混合物を少なくとも316℃(600°F)、少なくとも427℃(800°F)または少なくとも538℃(1000°F)の温度で加熱処理し、X線回折スペクトルにおいて二酸化モリブデンのパターンを示さない(例えば、D001ピークの欠如)触媒を生成することができる。
【0136】
幾つかの実施形態において、6から10列金属を支持体と共に共混練することで6から10列金属/支持体混合物が形成される。幾つかの実施形態においては、酸および/または水を6から10列金属/支持体混合物に添加し、混合物を粒子状に形成することを助ける。水および/または希酸は、粒子として形成するのに適切な望ましい堅さを混合物に付与するの必要とされるような量で、および/またはこのような方法によって添加する。酸の例には、これらに限定されるものではないが、硝酸、酢酸、硫酸および塩酸が含まれる。
【0137】
6から10列金属/支持体混合物は押出しのような当分野における公知技術を用いて粒子として形成することができる。粒子(押出物)は公知触媒切断法を用いて切断し、粒子を形成することができる。これらの粒子は65℃から260℃または85℃から235℃の範囲の温度で所定期間(例えば、0.5から8時間または1から5時間)および/または粒子の含水量が望ましいレベルに到達するまで加熱処理(乾燥)することができる。
【0138】
6から10列金属/支持体および/または6から10列金属/支持体粒子は熱風および/または酸素に富む空気の存在下、315℃から760℃、535℃から700℃または500℃から680℃の範囲の温度で所定の期間(例えば、0.5から8時間または1から5時間)焼成し、6から10列金属の少なくとも一部が対応する金属酸化物に変換されるように揮発性物質を除去することができる。粒子を焼成する温度条件は最終焼成混合物の細孔構造が本明細書で説明される触媒の細孔構造および表面積を形成するように制御されるようなものであり得る。760℃を上回る温度での焼成は触媒の細孔容積を増加させることがあり、従って、高粘性に寄与する化合物および/または残滓の除去においてこの触媒が有効ではないように細孔の分布および表面積を変化させる。
【0139】
望ましくない特性(例えば、望ましくない粘度、API比重、MCR含有量、アスファルテン含有量、金属含有量および/または残滓含有量)を有する炭化水素供給物と積層構造を有する6から10列金属触媒(例えば、含浸技術を用いて形成される触媒)との接触は、選択された特性を有する原油生成物を生成するのに高温および/または高圧を必要とすることがある。高温または高圧は触媒が失活しないように触媒と炭化水素供給物との最小限の接触を許容する。触媒と高い残滓含有量を有する供給物との接触は、触媒の細孔を詰まらせる炭化水素供給物中の高分子量化合物および/または金属のため、触媒寿命を短縮させ得る。
【0140】
対照的に、本明細書で説明される触媒に望ましい表面トポロジーを形成する分散金属クラスタを有する触媒(例えば、共混練によって形成される触媒)との供給物の接触は供給物に対する有利な変化がより高い温度および/またはより低い圧力で生じることを可能にし得る。この望ましいトポロジーは触媒の活性金属部位に対する有害作用なしに炭化水素供給物を触媒の表面に長期間接触させることを可能にし、従って、分散金属クラスタ触媒は高温および低圧(例えば、少なくとも400℃の温度および3.8MPa、5MPaまたは7MPaの圧力)で従来の水素化処理触媒よりも長い寿命を有し得る。選択されたトポロジー触媒は触媒の再投入または変更なしにプロセスを実施することを可能にし、従って、炭化水素供給物の処理の経費が経済的に有利であり得る。
【0141】
幾つかの実施形態において、触媒は細孔構造によって特徴付けることができる。様々な細孔構造パラメータには、これらに限定されるものではないが、細孔径、細孔容積、表面積またはこれらの組み合わせが含まれる。触媒は細孔径に対する細孔サイズの総量の分布を有することができる。細孔サイズ分布のメジアン細孔径は105Åから150Å、110Åから130Åまたは110Åから120Åの範囲であり得る。幾つかの実施形態において、触媒は、105Åから150Å、110Åから130Åまたは110Åから120Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径60Å、45Å、35Åまたは25Å以内の細孔径を有する細孔サイズ分布を有する。
【0142】
幾つかの実施形態において、細孔の細孔容積は少なくとも0.3cm/g、少なくとも0.7cm/gまたは少なくとも0.9cm/gであり得る。特定の実施形態において、細孔の細孔容積は0.3cm/gから0.99cm/g、0.4cm/gから0.8cm/gまたは0.5cm/gから0.7cm/gの範囲を取り得る。
【0143】
触媒の細孔容積には1Åから5000Åの細孔径を有する細孔および5000Åを上回る細孔径を有する細孔が含まれる。幾つかの実施形態において、触媒はこの細孔容積の大部分を多くとも600Å、多くとも500Å、多くとも300Åまたは多くとも200Åの細孔径を有する細孔に有する。
【0144】
幾つかの実施形態において、触媒は、約105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径60Å以内の細孔径を有し、この細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有する細孔にあり、およびこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有する細孔にある、細孔サイズ分布を有し得る。
【0145】
幾つかの実施形態において、触媒はこの細孔容積の多くとも10%、多くとも5%または多くとも4%を少なくとも5000Åの細孔に有する。
【0146】
このような触媒は少なくとも200m/gの表面積を有し得る。このような表面積は250m/gから500m/gまたは260m/gから400m/gの範囲であり得る。
【0147】
特定の表面トポロジー、大表面積および上述の細孔分布を有する触媒は商業用途において低圧および高温で強化された実行時間を示し得る。例えば、触媒は実行時間の少なくとも1年後に失活することはない。強化された実行時間は触媒の大表面積および/または触媒の細孔容積における細孔径の狭い分布に帰することができる。従って、触媒の金属は長期間露出されたままであり、それ故、触媒の細孔の詰まりは最少である。触媒の大表面積および細孔容積における細孔の選択された分布は、同じ細孔分布を有するが表面積はより小さい従来の触媒では処理することができない、高粘性および/または高残滓原油の処理を可能にする。混練触媒を315℃から760℃の範囲の温度で焼成することで、大表面積と共に類似の細孔径および狭い細孔分布を有する細孔の形成が容易になり得る。
【0148】
特定の実施形態において、触媒は造形品、例えば、ペレット、円柱体および/または押出品中に存在する。幾つかの実施形態においては、当分野において公知の技術(例えば、ACTICAT(商標)プロセス、CRI International,Inc.)を用いて触媒および/または触媒前駆体を硫化し、金属硫化物を形成する(使用前)。幾つかの実施形態においては、触媒を乾燥させた後、硫化することができる。その代わりに、含硫化合物を含む炭化水素供給物との触媒の接触により、触媒をこの場で硫化することもできる。原位置硫化は気体状硫化水素を水素の存在下で用いるか、または有機イオウ化合物(アルキルスルフィド、ポリスルフィド、チオールおよびスルホキシドを含む。)のような液相硫化剤を用いることができる。原位置外硫化プロセスはSeamansらへのU.S.Patent No.5,468,372およびSeamansらへのU.S.Patent No.5,688,736に記載され、これらのすべては参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
特定の実施形態において、触媒は6から10列金属を支持体と共混練することによって得ることができる。6列金属を支持体と共混練することで混合物または実質的に均質な混合物を形成することができる。幾つかの実施形態において、この混合物を押出し、および/または乾燥させることができる。この混合物を315℃から700℃の温度で焼成し、触媒を生成することができる。
【0150】
支持体にはアルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物が含まれ得る。
【0151】
触媒は、触媒のグラムあたり、6から10列金属0.001グラムから0.3グラム、0.005グラムから0.2グラムまたは0.01グラムから0.1グラムを有し得る。幾つかの実施形態において、触媒は、触媒のグラムあたり、6列金属少なくとも0.1グラムを含み得る。幾つかの実施形態において、触媒は、触媒のグラムあたり、6列金属少なくとも0.05グラムから0.2グラムを含み得る。幾つかの実施形態において、触媒は、触媒のグラムあたり、10列金属0.001グラムから0.1グラム、0.005から0.05グラムまたは0.01グラムから0.03グラムを含み得る。特定の実施形態において、触媒は、触媒のグラムあたり、9列金属0.001グラムから0.1グラム、0.005から0.05グラムまたは0.01グラムから0.03グラムを含み得る。
【0152】
焼成が後に続くこのような金属および支持体の共混練は、105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔総数の少なくとも60%がメジアン細孔の少なくとも60Å以内の細孔径を有し、この細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有する細孔にあり、およびこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有する細孔にある細孔サイズ分布を有する二峰性触媒を生成し得る。幾つかの実施形態において、触媒は110Åから130Åのメジアン細孔径を有し得る。
【0153】
幾つかの実施形態において、触媒は多くとも120Åのメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%は60Å以内の細孔径を有し、この細孔容積の少なくとも50%は105Åから150Åの細孔径を有する細孔にあり、この細孔容積の5%から25%は1000Åから5000Åの細孔径を有する細孔にあり得る。
【0154】
触媒は250m/gから約300m/gの表面積および約0.7cc/gの細孔容積を有し得る。
【0155】
この触媒は高粘性に寄与する成分の少なくとも一部、残滓に寄与する成分の一部および/または酸素含有化合物の一部を減少させることができる。選択された細孔分布を有する二峰性6から10列金属触媒での炭化水素供給物の処理は、これが少ない水素消費で粘性が低下した生成物の生成を可能にするため、経済的に有利であり得る。
【0156】
本出願の触媒は、少ない水素消費で、炭化水素供給物と比較して粘性が低い原油生成物を生成することができる。幾つかの実施形態において、3.5MPaの全圧の接触条件で、水素消費は多くとも60Nm/m、多くとも50Nm/mまたは多くとも30Nm/mであり得る。幾つかの実施形態において、3.5MPaの全圧の接触条件で、水素消費は1Nm/mから60Nm/m、1Nm/mから50Nm/mまたは5Nm/mから30Nm/mであり得る。
【0157】
本出願の触媒を用い、操作条件を制御することで、炭化水素供給物の他の特性は大きく変化させずに選択された特性が炭化水素供給物に対して変更されている原油生成物を生成することができる。生じる原油生成物は炭化水素供給物に対して強化された特性を有することができ、従って、輸送および/または精製によりふさわしい。
【0158】
選択された系列における2以上の触媒の配置で供給物の特性改善の系列を制御することができる。例えば、炭化水素供給物中のAPI比重、Cアスファルテンの少なくとも一部、有機酸の金属塩中の金属の少なくとも一部、鉄の少なくとも一部、ニッケルの少なくとも一部および/またはバナジウムもしくはモリブデンの少なくとも一部を、供給物中のヘテロ原子の少なくとも一部を減少させる前に減少させることができる。
【0159】
触媒の配置および/または選択は、幾つかの実施形態において、触媒の寿命および/または炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性を改善し得る。処理の最中の触媒寿命および/または炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性の改善は、接触域内の触媒の交換なしに、接触システムが少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間または少なくとも1年間稼動することを可能にする。
【0160】
選択される触媒の組み合わせは、炭化水素供給物の他の特性が変化する前に、処理の最中の炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性を維持しながら(例えば、1.5を上回る炭化水素供給物P−値を維持しながら)、炭化水素供給物からの粘性に寄与する成分の少なくとも一部、残滓に寄与する成分の少なくとも一部、TANに寄与する成分の少なくとも一部またはこれらの組み合わせの減少を可能にし得る。その代わりに、選択された触媒との炭化水素供給物の接触により、Cアスファルテンおよび/またはAPI比重を増加的に減少させることができる。炭化水素供給物の特性を増加的に、および/または選択的に変更する能力は、炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性を処理の間維持することを可能にし得る。
【0161】
幾つかの実施形態において、(上述の)触媒は一連の触媒の上流に位置し得る。このような触媒の位置決めは、炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性を維持しながら、高分子量混入物質および/または有機酸の金属塩中の金属の除去を可能にし得る。
【0162】
触媒は、幾つかの実施形態において、炭化水素供給物からの酸素含有化合物の少なくとも一部の除去、システム内の他の触媒の寿命の減少に寄与する成分の除去またはこれらの組み合わせを可能にする。例えば、炭化水素供給物に対する炭化水素供給物/全生成物混合物中のCアスファルテンの少なくとも一部の減少は下流に位置付けられる他の触媒の詰まりを阻止し、従って、触媒の補充なしにこの接触システムを稼動することができる時間の長さを増加させる。粘性の低下は、幾つかの実施形態において、本明細書で説明される触媒の後に位置付けられる1以上の触媒の寿命を高め得る。
【0163】
幾つかの実施形態において、商業的に入手可能な触媒を本明細書で説明される触媒の顆粒および/または上流に位置付け、供給物の選択された特性を減少させることができる。例えば、脱金属触媒をこの触媒の下流および/または上流に位置付け、供給物のNi/V/Feと比較して原油生成物のNi/V/Fe含有量を減少させることができる。脱硫触媒をこの触媒の下流に位置付け、供給物の含硫化合物含有量と比較して原油生成物の含硫化合物含有量を減少させることができる。
【0164】
指定された接触域に水素を送達する能力は接触の最中の水素利用を最少化する傾向にある。接触の最中の水素の生成を促進する触媒および接触の最中に水素の比較的少量を取り込む触媒の組み合わせは、原油生成物の選択された特性を炭化水素供給物の同じ特性に対して変化させるのに用いることができる。触媒の配列および/または数は、炭化水素供給物/全生成物の安定性を維持しながら正味の水素取り込みが最少化されるように選択することができる。最少正味水素取り込みは、原油生成物のAPI比重および/または粘度は炭化水素供給物のAPI比重および/または粘度の多くとも90%でありながら、炭化水素供給物の残滓含有量、VGO含有量、上流物含有量、API比重またはこれらの組み合わせを炭化水素供給物のそれぞれの特性の20%以内で維持することを可能にする。
【0165】
炭化水素供給物による正味水素取り込みの減少は、炭化水素供給物の沸点分布に類似する沸騰範囲分布を有する原油生成物を生成し得る。原油生成物の原子H/Cも炭化水素供給物の原子H/Cと比較して比較的少量変化するのみであり得る。
【0166】
幾つかの実施形態において、触媒選択および/または制御された接触条件(例えば、温度および/または炭化水素供給物流速)との組み合わせにおける触媒の配列は、炭化水素供給物による水素取り込みの減少、処理の最中の炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性の維持および炭化水素供給物のそれぞれの特性に対する原油生成物の1以上の特性の変更に役立ち得る。炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性は炭化水素供給物/全生成物混合物から分離する様々な相による影響を受けることがある。相分離は、例えば、炭化水素供給物/全生成物混合物中での炭化水素供給物および/または原油生成物の不溶性、炭化水素供給物/全生成物混合物からのアスファルテンの凝集、炭化水素供給物/全生成物混合物からの成分の沈殿またはこれらの組み合わせによって生じ得る。
【0167】
接触期間の最中の特定の時間で、炭化水素供給物/全生成物混合物中の炭化水素供給物および/または全生成物の濃度が変化し得る。炭化水素供給物/全生成物混合物中の全生成物の濃度が原油生成物の形成によって変化するため、炭化水素供給物/全生成物混合物中の炭化水素供給物の成分および/または全生成物の成分の溶解度は変化する傾向にある。例えば、炭化水素供給物は処理の開始時に炭化水素供給物に可溶である成分を含有することができる。炭化水素供給物の特性が変化する(例えば、API比重、粘度、MCR、Cアスファルテン、P−値、沈殿またはこれらの組み合わせ)ため、これらの成分は炭化水素供給物/全生成物混合物に可溶でなくなる傾向にあり得る。幾つかの場合において、炭化水素供給物および全生成物は2相を形成し、および/または互いに不溶になり得る。溶解度変化は2以上の相を形成する炭化水素供給物/全生成物混合物を生じることもある。アスファルテンの凝集、炭化水素供給物および全生成物の濃度の変化並びに/または成分の沈殿による2相の形成は触媒1以上の寿命を低下させる傾向にある。加えて、プロセスの効率が低下することがある。例えば、望ましい特性を有する原油生成物を生成するのに炭化水素供給物/全生成物混合物の反復処理が必要となることがある。
【0168】
処理の最中、炭化水素供給物/全生成物混合物のP−値および/または沈殿値を監視することができ、プロセス、炭化水素供給物および/または炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性を評価することができる。典型的には、多くとも1.0であるP−値は炭化水素供給物からのアスファルテンの凝集が一般に生じることを示す。P−値が最初に少なくとも1.0であり、このようなP−値が接触の間に増加するか、または比較的安定である場合、これは炭化水素供給物が接触の間比較的安定であることを示す。P−値によって評価される炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性は、接触条件の制御により、触媒の選択により、触媒の選択的順序付けにより、またはこれらの組み合わせにより制御することができる。このような接触条件の制御には、LHSV、温度、圧力、水素取り込み、炭化水素供給物流の制御またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0169】
処理の間の沈殿値の監視は高分子化合物の形成、高分子化合物の沈殿または金属の沈殿を示し得る。接触の最中に減少するか、または比較的安定である沈殿値はこの炭化水素供給物が接触の間比較的安定であることを示す。
【0170】
処理の最中、固定床反応器の接触域の導入口圧を監視することができる。導入口圧の急速な増加は触媒を通過する流れが妨げられていることを示す。流れの阻止は堆積または沈殿形成の増加によって生じ得る。堆積または沈殿の増加は触媒の細孔を詰まらせることがあり、従って、接触域を通過する炭化水素供給物の流れが制限される。
【0171】
典型的には、炭化水素供給物を輸送し、および/または汲み上げることを阻止する粘度を有する炭化水素供給物は、高水素圧(例えば、少なくとも7MPa、少なくとも10MPaまたは少なくとも15MPa)で接触させてより流体である生成物を生成する。高水素圧ではコークス形成が阻止され、従って、炭化水素供給物の特性が最少コークス生成で変化し得る。粘度、残滓およびC/Cアスファルテンの減少は水素圧に依存しないため、これらの特性の減少は接触温度が少なくとも300℃になるまで生じない。幾つかの炭化水素供給物では、炭化水素供給物の所望の特性を減少させて望ましい仕様を満たす生成物を生成するのに少なくとも350℃の温度が必要であり得る。高温では、高水素圧であってさえも、コークス形成が生じ得る。炭化水素供給物の特性が変化するため、炭化水素供給物/全生成物のP−値が1.0未満に低下することがあり、および/または沈殿が形成されることがあり、これらが生成物混合物を不安定にする。高水素圧は水素を大量に必要とするため、最少温度で圧力と無関係である特性を減少させることができるプロセスが望ましい。
【0172】
37.8℃で少なくとも10cSt(例えば、少なくとも100cSt、少なくとも1000cStまたは少なくとも2000cSt)の粘度を有する炭化水素供給物を、3.5MPa、5MPaまたは7MPaの圧力、370℃から450℃、390℃から440℃または400℃から430℃の制御温度範囲内で、本明細書で説明される触媒と接触させることで、炭化水素供給物のそれぞれの特性の多くとも50%、多くとも30%、多くとも20%、多くとも10%または多くとも1%の変更された特性(例えば、粘度、残滓およびC/Cアスファルテン)を有する原油生成物が生成される。接触の最中、接触温度を制御することによって留まるP−値を1.0を上回って保持することができる。例えば、幾つかの実施形態において、温度が450℃を上回って上昇する場合、P−値は1.0未満に低下し、炭化水素供給物/全生成物混合物は不安定になる。温度が370℃未満に低下する場合、炭化水素供給物の特性に対して生じる変化は最小である。
【0173】
幾つかの実施形態においては、炭化水素供給物のMCR含有量を維持しながらCアスファルテンおよび/または他のアスファルテンが除去されるように接触温度を制御する。水素取り込みおよび/またはより高い接触温度によるMCR含有量の減少は2相の形成を生じることがあり、これは炭化水素供給物/全生成物混合物の安定性および/または1以上の触媒の寿命を減少させ得る。本明細書で説明される触媒との組み合わせにある接触温度の制御および水素取り込みは、炭化水素供給物のMCR含有量は比較的少量だけ変化させるのみでありながら、Cアスファルテンを減少させる。
【0174】
幾つかの実施形態においては、設定流速および高温(例えば、少なくとも200℃、少なくとも300℃または少なくとも400℃の温度)で接触域の全分圧が望ましい圧力で維持されるように接触条件を制御する。多くとも5MPaまたは多くとも3.5MPaの全圧で稼動する能力は、多くとも5MPaまたは多くとも3.5MPaの全圧での接触と同じであるか、またはより長い触媒寿命で、LHSVの増加(例えば、少なくとも0.5h−1、少なくとも1h−1、少なくとも2h−1、少なくとも5h−1または少なくとも10h−1への増加)を可能にする。水素のより低い分圧またはより低い全圧での稼動は稼動の経費を減少させ、利用可能である水素の量が限定されている接触を実施することを可能にする。幾つかの実施形態において、全圧は接触域に供給されている水素の全分圧と同じである。
【0175】
炭化水素供給物を本明細書で説明される1以上の触媒と接触させることによって生成される原油生成物は広範囲の用途において有用であり得、この用途には、これらに限定されるものではないが、精製装置への供給物としての使用、輸送燃料を生成するための供給物、希釈剤または地下油回収プロセスの増強剤が含まれる。例えば、多くとも10のAPI比重を有する炭化水素供給物(例えば、ビチューメンおよび/または重油/タールサンド原油)は分解装置(例えば、沸騰床分解装置、流動接触分解装置、熱分解装置または炭化水素供給物を軽量成分に変換することが公知である他の装置)を用いる一連の処理工程によって様々な炭化水素流に変換することができる。
【0176】
分解装置内で処理することができる供給流を生成するための炭化水素供給物の粘度および/または残滓含有量の減少は炭化水素供給物の処理速度を強化し得る。本明細書で説明される方法および触媒を炭化水素供給物の特性の変更に用いるシステムを1以上の分解装置の上流に位置付けることができる。本明細書で説明される1以上のシステムにおける炭化水素供給物の処理は分解装置の処理速度を少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍または少なくとも100倍改善する供給物を生成し得る。例えば、37.8℃で少なくとも100cStの粘度および/または炭化水素供給物のグラムあたり残滓0.1グラムを有する炭化水素供給物を処理するためのシステムが分解装置の上流に位置する本明細書で説明される1以上の接触システムを含むことができる。接触システムは、37.8℃で炭化水素供給物の粘度の多くとも50%の粘度および/または炭化水素供給物の残滓の多くとも90%を有する原油生成物を生成することが可能である、本明細書で説明される1以上の触媒を含むことができる。原油生成物並びに/または原油生成物および炭化水素供給物の混合物が分解装置に入り得る。原油生成物並びに/または原油生成物および炭化水素供給物の混合物は元の炭化水素供給物よりも低い粘度を有するため、分解装置による処理速度が改善され得る。
【0177】
幾つかの実施形態において、Cアスファルテン少なくとも0.01グラムを有する炭化水素供給物を、精製装置操作における水素化処理に先立ち、脱瀝することができる。脱瀝プロセスは溶媒抽出および/またはアスファルテンを除去するための原油と触媒との接触を含み得る。脱瀝プロセスに先立つ、粘度に寄与する成分の少なくとも一部、残滓に寄与する成分の少なくとも一部および/またはアスファルテンの減少は、溶媒抽出の必要性を取り除き、必要とされる溶媒の量を減少させ、および/または脱瀝プロセスの効率を高め得る。例えば、炭化水素供給物のグラムあたりCアスファルテン少なくとも0.01グラムおよび/または残滓0.1グラム並びに37.8℃で少なくとも10cStの粘度を有する炭化水素供給物を処理するためのシステムは、脱瀝装置の上流に位置する、本明細書で説明される1以上の接触システムを含み得る。接触システムは、炭化水素供給物Cアスファルテン含有量の多くとも50%のCアスファルテン含有量、炭化水素供給物残滓含有量の多くとも90%の残滓含有量、炭化水素粘度の多くとも50%の粘度またはこれらの組み合わせを有する原油生成物を生成することが可能な、本明細書で説明される1以上の触媒を含むことができる。原油生成物並びに/または原油生成物および炭化水素供給物の混合物が脱瀝装置に入り得る。原油生成物並びに/または原油生成物および炭化水素供給物の混合物が有するアスファルテン、残滓および/または粘度は元の炭化水素供給物よりも少ないため、脱瀝装置の処理効率は元の効率の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも50%だけ増加し得る。
【0178】
実施例
触媒調製およびこのような触媒を制御された接触条件下で用いる方法の非限定的な実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0179】
6から10列金属触媒の調製。
【0180】
MoO(789.96グラム)、リン酸(73.66グラム、85.9Mol%)および脱イオン水(2400グラム)を組み合わせてスラリーを形成することによって第1溶液を調製した。固体の溶解までこのスラリーを82℃に加熱した。
【0181】
このスラリーに、あらゆる観察される発熱を制御する速度で、Ni(OH)(210.32グラム)を添加した後、固体の溶解まで96℃に加熱した。この加熱混合物にあらゆる観察される発熱を制御するのに十分な速度でクエン酸一水和物(5Mol%、200.46グラム)を添加した。クエン酸の添加の後、このモリブデン/ニッケル/リン溶液が透明になるまで100℃に加熱し、モリブデン/ニッケル/リン溶液の容積を1249.80グラムに減少させた。
【0182】
支持体のグラムあたりシリカ0.02グラムおよびアルミナ0.98グラムを含有する支持体(4076.09グラム)をマラーに添加した。マラーを作動させながら、モリブデン/ニッケル/リン溶液(1249.80グラム)を支持体に添加し、得られる混合物を25分間粉砕した。脱イオン水(211.90グラム)をモリブデン/ニッケル/リン/支持体混合物に添加し、得られる混合物を15分粉砕した。さらなる脱イオン水(109.69グラム)を混合物に添加し、得られる混合物を20分粉砕した。粉砕したモリブデン/ニッケル/リン/支持体混合物は5.05のpHおよび混合物のグラムあたり.5689グラムの強熱減量を有していた。
【0183】
1.3mm三葉ダイを用いて粉砕混合物を押出し、1.3三葉押出し粒子を形成した。これらの押出し粒子を125℃で数時間乾燥させた後、676.7℃(1250°F)で2時間焼成した。この触媒はモリブデン0.133グラム、ニッケル0.032グラムおよびリン0.005グラムを含有し、残部は支持体であった。この触媒は、117Åのメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の60%がメジアン細孔径の59Å以内の細孔径を有する細孔サイズ分布、0.69cc/gの全細孔容積、277m/gの表面積を有していた。水銀ポロシメトリを用いて140の接触角で測定した細孔サイズ分布を表1に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
この実施例は、支持体および周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を含む触媒を示す。この触媒は少なくとも250m/gの表面積、105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%はメジアン細孔径の少なくとも60Åの範囲内の細孔径を有し、細孔におけるこの細孔容積の少なくとも50%は多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔におけるこの細孔容積の5%から25%は1000Åから5000Åの細孔径を有する。
【実施例2】
【0186】
炭化水素供給物と6列金属触媒との接触。
【0187】
サーモウェルが中心に位置する管状反応器は触媒床全体にわたって温度を測定する熱電対を備えていた。触媒床は、反応器のサーモウェルと内壁との間の空間を触媒および炭化ケイ素(20−グリッド、Stanford Materials;Aliso Viejo、CA)で充填することによって形成した。このような炭化ケイ素は、本明細書で説明されるプロセス条件下では、あったとしても低い、触媒特性を有するものと信じられる。触媒を炭化ケイ素等容積量と配合した後、この混合物を反応器の接触域に入れた。
【0188】
反応器への炭化水素供給物流は反応器の頂部から反応器の底部へのものであった。炭化ケイ素は反応器の底部に位置し、底部支持体としての役目を果たした。
【0189】
実施例1において説明されるように調製した6列金属触媒を炭化水素と混合し(合計50cm)、接触域に配置した。
【0190】
デッドスペースを充填し、および予備加熱域として役立てるため、炭化ケイ素は頂部接触域の頂部に配置した。触媒床は、予備加熱域、接触域および底部支持体に相当する4つの加熱域を含むリンドバーグ炉に装填した。
【0191】
5vol%硫化水素および95vol%水素ガスの気体状混合物を全触媒(炭化ケイ素は触媒の体積の一部としては計算しなかった)の容積(mL)あたり気体状混合物1.5リットルの割合で接触域に導入することによって触媒を硫化した。接触域の温度を1時間にわたって204℃(400°F)まで上昇させ、204℃で2時間保持した。204℃で保持した後、接触域を毎時10℃(50°F)の割合で316℃(600°F)まで増加的に上昇させた。接触域を316℃で1時間維持した後、1時間にわたって370℃(700°F)まで増加的に上昇させ、370℃で2時間保持した。接触域を周囲温度まで冷却した。
【0192】
触媒の硫化の後、接触域の温度を410℃の温度に上昇させた。表2に列挙される特性を有する炭化水素供給物(Peace River)。炭化水素供給物は反応器の予備加熱域、頂部接触域、底部接触域および底部支持体を通して流動した。炭化水素供給物は水素ガスの存在下で触媒の各々と接触した。接触条件は以下の通りであった:水素ガスの供給物に対する比は318Nm/m(2000SCFB)であり、LHSVは約0.5h−1であった。炭化水素供給物が反応器を通して流動するとき、2つの接触域を400℃に加熱し、3.5MPa(500psig)の圧力で3436時間、400℃から420℃で保持した。
【0193】
表2に示されるように、原油生成物は37.8℃で58cStの粘度を有していた。
【0194】
この実施例は、炭化水素供給物と、周期律表の6列からの1以上の金属および/または周期律表の6列からの1以上の金属の1以上の化合物を含み、105から150Åの範囲のメジアン細孔径を有する細孔サイズ分布を有し、細孔におけるこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも130Åの細孔径を有し、および細孔におけるこの細孔容積の10%から20%が1000Åから5000Åの細孔径を有する触媒との;3.5MPaの圧力での接触が、37.8℃で炭化水素供給物粘度の多くとも50%の粘度含有量を有する原油精製物を生成することを示す。この実施例は、37.8℃で少なくとも1000cStの粘度を有する炭化水素供給物を、触媒の詰まりおよび/または不安定生成物の生成なしに、低圧で接触させることができることも示す。例えば、接触の最中のP−値は1.2であり、重量基準で沈殿0.007%が生成された。
【実施例3】
【0195】
炭化水素供給物と6列金属触媒との接触。
【0196】
稼働中(1389時間)の圧力が約7MPaであったことを除いて、炭化水素供給物、触媒、接触条件および硫化は実施例2と同じであった。表2に示されるように、原油生成物は37.8℃で65cStの粘度を有していた。
【0197】
実施例2および3からのデータの比較は、3.5MPaの圧力および400℃から420℃の温度での炭化水素供給物の接触が、より高い圧力および同じ温度で得られる原油生成物との比較で強化された粘度低下および少ない水素消費が観察される原油生成物を生成することを示す。より低い圧力での稼動は、接触システムを稼働させるのに必要とされる水素が少ないため、経済的な利点を提供する。
【0198】
比較例
炭化水素供給物、接触条件および硫化は実施例2と同じであった。
【0199】
存在するアップグレードに用いられる商用二峰性モリブデン/ニッケル触媒(RM5030、Criterion Catalysts & Technologies、ヒューストン、TX、24cm)を調製し、炭化ケイ素(54cmの全触媒/炭化ケイ素混合物のための30cm)と混合し、接触域内に配置した。稼動は、圧力変化の急速な増加(13MPa(約1872psig)を上回る導入口圧)のため、1872時間で終了した。圧力の急速な増加は、1未満のP−値による生成物の幾らかの高レベルの堆積および/または沈殿から、触媒が詰まったためであった。
【0200】
実施例2および3と比較例との比較において、すべての実施例で原油生成物は同様の値を有する。実施例2および3の接触時間は比較例の接触時間より有意に長い。このようなものとして、実施例1において説明されるように調製される二峰性触媒の存在下での炭化水素供給物と水素との接触は、低圧および高温で、同じ温度および圧力の比較触媒より長い期間行うことができるものと結論付けることができる。
【0201】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を支持体と共混練して金属/支持体組成物を生成し;並びに
金属/支持体組成物を315℃から760℃の範囲の温度で焼成して、105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径60Å以内の細孔径を有し、細孔におけるこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔におけるこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有する細孔サイズ分布を有する焼成触媒を得る、
ことを含み、細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定される、触媒の製造方法。
【請求項2】
周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を含む触媒であって;105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%がメジアン細孔径少なくとも60Å以内の細孔径を有し、細孔におけるこの細孔容積の少なくとも50%が多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔におけるこの細孔容積の5%から25%が1000Åから5000Åの細孔径を有し、細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定される触媒。
【請求項3】
触媒が二峰性である請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒が支持体を含み、この支持体がシリカ0.0001グラムから0.10グラム;およびアルミナ0.90グラムから0.9999グラムを含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項5】
原油生成物の製造方法であって:
炭化水素供給物を1以上の触媒と接触させて原油生成物を含む全生成物を生成することを含み、触媒の少なくとも1つは周期律表の6から10列からの1以上の金属および/または周期律表の6から10列からの1以上の金属の1以上の化合物を含み;6から10列金属触媒は105Åから150Åの範囲のメジアン細孔径を有し、細孔サイズ分布における細孔の総数の少なくとも60%はメジアン細孔径少なくとも60Å以内の細孔径を有し、細孔におけるこの細孔容積の少なくとも50%は多くとも600Åの細孔径を有し、および細孔におけるこの細孔容積の5%から25%は1000Åから5000Åの細孔径を有し、表面積はASTM法D3663によって決定され、並びに細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定され;並びに
細孔径および細孔容積はASTM法D4284によって測定される、
方法。
【請求項6】
原油生成物が25℃および0.101Mpaで液体混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
炭化水素供給物が37.8℃で少なくとも100cStの粘度を有し、原油生成物が25℃および0.101MPaで液体混合物であり、並びに原油生成物が37.8℃の炭化水素供給物の粘度の多くとも90%の37.8℃での粘度を有するように接触条件を制御することをさらに含み、粘度はASTM法D445によって測定される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
多くとも5MPaの全圧および少なくとも200℃の温度で接触条件を制御することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
原油生成物が原油生成物のグラムあたり多くとも0.01グラムの沈殿含有量を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
原油生成物を1以上の蒸留物画分に分画し、蒸留物画分の少なくとも1つから輸送燃料を生成することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかにおいて請求される方法によって生成される原油生成物。
【請求項12】
炭化水素組成物であって:
ASTM法D5708による決定で少なくとも150重量ppmの合計Ni/Fe/V含有量;
ASTM法D5307による決定で炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの残滓含有量;
ASTM法D5307による決定で炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.1グラムの蒸留物含有量;
ASTM法E385による決定で炭化水素組成物のグラムあたり多くとも0.1グラムの酸素含有量;および
ASTM法D4530による決定で炭化水素組成物のグラムあたり少なくとも0.05グラムの微小炭素残滓含有量、
を含み、並びに37.8℃で多くとも100cStの粘度を有し、粘度はASTM法D445によって決定される、炭化水素組成物。
【請求項13】
請求項11において主張される原油生成物または請求項12において主張される炭化水素組成物から製造される1以上の蒸留物画分を含む輸送燃料。
【請求項14】
請求項11において主張される原油生成物または請求項12において主張される炭化水素組成物から製造される1以上の蒸留物画分を含む希釈剤。

【図1】
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【公表番号】特表2012−529358(P2012−529358A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504245(P2011−504245)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/046917
【国際公開番号】WO2009/126973
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】