説明

選択反射素子及び液晶表示装置

【課題】斜め方向から観察した際の色相と、正面方向から観察した際の色相との際が少なく、且つ斜め方向から観察した際の輝度の低下が少ない液晶表示装置、ならびにそのような液晶表示装置を与える選択反射素子を提供する。
【解決手段】400〜750nmの波長範囲内において、選択反射を有する帯域と、選択反射が相対的に少ない透過帯域を有することを特徴とする選択反射素子;並びに当該選択反射素子、液晶パネル及びバックライト装置を備える液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択反射素子及び液晶表示装置に関し、特に、輝度が高く、且つ視野角特性が良好なバックライト装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置に求められる性能の一つとして、広い視野角特性が挙げられる。即ち、表示装置の多くの用途において、表示面の法線方向(以下、単に「正面方向」ということがある。)のみならず、そこから上下左右に角度を持った方向から観察しても、正面方向から観察したのと同様の画像が観察できることが好ましい。しかしながら、液晶パネル、偏光分離シート等の光学的に異方性を有する素子を含む表示装置においては、観察角度が変化するにつれ表示面の色相の変化が認められることが多い。そのような色相の変化は、観察角度と正面方向とのなす角が大きくなるにつれて赤みを帯びる場合が多い。
【0003】
そのような色相の変化を抑制する方法として、特許文献1には、コリメーターを用いて斜め出射光をカットすることが記載されている。しかしながら、斜め光をカットすれば輝度が落ちるため、視野角特性の改善にはつながらない。
【0004】
一方特許文献2には、正面方向に対する入射角が大きくなるに従い反射波長帯域が短波長側に変化する赤外反射層を用いることが記載されている。しかしながら、このような赤外反射層を用いた場合、赤領域の光をカットすることにより色相を補正するので、全体的な輝度が暗くなったり、別の色への色相の変化が発生しうるという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−169026号公報
【特許文献2】特開2004−309618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、斜め方向から観察した際の色相と、正面方向から観察した際の色相との際が少なく、且つ斜め方向から観察した際の輝度の低下が少ない液晶表示装置、ならびにそのような液晶表示装置を与える選択反射素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、これまで均一な広い波長帯域にわたって均一な選択反射をすることが好ましいと考えられていた選択反射素子において、特定の、選択反射の少ない透過帯域を設けることによって、意外にも上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、下記のものが提供される。
〔1〕 400〜750nmの波長範囲内において、選択反射を有する帯域と、選択反射が相対的に少ない透過帯域を有することを特徴とする選択反射素子。
〔2〕 前記透過帯域が、前記透過帯域を測定する方向と前記選択反射素子の主面の法線方向とがなす角θが大きくなるにつれて、短波長側にシフトすることを特徴とする、前記選択反射素子。
〔3〕 前記透過帯域が、400〜550nmの波長範囲内であることを特徴とする前記選択反射素子。
〔4〕 前記選択反射素子、液晶パネル及びバックライト装置を備える液晶表示装置。
〔5〕 前記バックライト装置の光源が、400〜500nmの範囲内に少なくとも1箇所の青色の発光領域を有し、前記選択反射素子の前記透過帯域が、前記発光領域より長波長の領域であることを特徴とする前記液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の選択反射素子を備える本発明の液晶表示装置は、斜め方向から観察した際の色相と、正面方向から観察した際の色相との際が少なく、且つ斜め方向から観察した際の輝度の低下が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.本発明の選択反射素子
本発明の選択反射素子は、400〜750nmの波長範囲内において、選択反射を有する帯域と、選択反射が相対的に少ない透過帯域を有する。本発明において、選択反射素子の選択反射とは、素子が特定の偏光を透過しそれ以外の光の少なくとも一部を反射する特性をいい、選択反射を有する帯域とは、選択反射素子の透過スペクトルを分光光度計(例えば、日本分光社製 JASCO V−550)にて測定し、透過率が50%以上60%未満にある波長帯域とすることができる。また、透過帯域とは同様の測定において、前記選択反射を有する帯域よりも選択反射が相対的に少ない波長帯域、具体的には透過率が60%以上にある波長帯域をいい、透過率が60%以上の単一のピーク上の領域であることが好ましい。当該ピークは、好ましくは半値幅が5nm以上10nm以下のピークであることが好ましい。当該ピークの半値幅が5nm未満だと、本発明によって得られる効果が得られず、逆に10nmを超えると、必要以上に効果が出てしまい、結果として色相が悪くなってしまう。またピークの透過率が70%以上80%未満であることが好ましい。ピークの透過率が70%未満だと選択反射帯域との相対的な差が小さくなり、本発明の効果が得られず、また80%以上だと必要以上に効果が出てしまい、結果として色相が悪くなってしまうことがある。このような透過率のピークを有する領域を、選択反射が相対的に少ない透過帯域とすることができる。
【0011】
後述するコレステリック樹脂層により選択反射素子を構成する場合、選択反射帯域において透過する特定の偏光は、特定の円偏光とすることができ、光線透過率が50%以上60%未満となる領域を選択反射帯域とすることができる。
【0012】
本発明において記載される、前記選択反射を有する帯域及び前記透過帯域の波長範囲の数値は、別に断らない限り、前記選択反射素子の主面の法線方向(正面方向)から測定した場合の数値である。本発明の選択反射素子においては、前記透過帯域は、前記透過帯域を測定する方向と前記選択反射素子の主面の法線方向(正面方向)とがなす角θが大きくなるにつれて、短波長側にシフトするものとすることができる。ここで、透過帯域を測定する方向が正面方向である場合θは0°となる。
【0013】
前記透過帯域は、選択反射を有する帯域の間に存在するものとすることができる。例えば、前記透過帯域のピークが500〜520nmの範囲にあった場合、選択反射を有する帯域は500nmより短波長側及び520nmより長波長側の両方に存在するものとすることができる。
【0014】
選択反射素子に上述のような透過帯域を設ける方法は特に限定されないが、例えば、後述するコレステリック樹脂層により選択反射素子を構成し、その樹脂の組成及び硬化の条件を適宜選択することにより実現することができる。コレステリック樹脂層の観察方向と透過帯域ピークのシフトとの間には、下記式(A)の関係が成立しうる。
【0015】
λ=n×p×cosθ 式(A)
【0016】
ここで、λは正面方向から観察した際のピーク波長、nはコレステリック樹脂層の平均屈折率、pはコレステリック樹脂層のハーフピッチ、θは角度θから観察した際のピーク波長であり、コレステリック樹脂層の螺旋軸と平行方向を0度とする。
【0017】
このような態様を有する本発明の選択反射素子の一例を、図1を参照してより具体的に説明する。図1のグラフにおける実線は、本発明の選択反射素子の一例における、正面方向から観察した場合の波長と透過率との関係を示す。この例の選択反射素子は、約400〜約750nmの選択反射帯域を有し、その平均の透過率は約55%である。そして、約520nmにピークを有する透過帯域を有している。この選択反射素子は、選択反射特性を有する層として、コレステリック樹脂層を有しており、観察方向とコレステリック樹脂層の螺旋軸とがなす角θが大きくなるにつれて、図1の点線で示すようにピークが短波長側にシフトする。
【0018】
本発明において、選択反射素子は、1枚の素子のみからなるものであってもよく、複数枚の素子の組み合わせからなる積層体であって、積層体全体として上記特徴を有するものであってもよい。
【0019】
本発明に用いる選択反射素子は、上記選択反射帯域を有する限りにおいて、如何なる材質のものを用いてもよくまた如何なる原理の選択反射をするものであってもよいが、好ましい選択反射素子の例として、円偏光分離シートを含むもの、又はこの円偏光分離シートと位相差フィルムとを組み合わせて含むものが挙げられる。
【0020】
選択反射素子が円偏光分離シートを有し位相差フィルムを有しない場合、かかる選択反射素子は、選択反射帯域において、特定の円偏光のみを透過しその他の光(他の円偏光、直線偏光等)を反射するものとなる。一方、選択反射素子が円偏光分離シート及び位相差フィルムを有する積層体であって、かかる選択反射素子を、円偏光分離シートを光源側、位相差フィルムを出射面側として配置した場合、選択反射帯域において、特定の円偏光が直線偏光に変換された光が出射することになる。反射された光は、バックライト装置内を反射して、再び選択反射素子に入射した際に特定の円偏光となっていれば出射する。
【0021】
前記円偏光分離シートの例としては、コレステリック液晶相を呈しうる組成物(コレステリック液晶組成物)を透明樹脂基材に塗布して液晶層を得、次いで少なくとも1回の、光照射及び/又は加温処理により硬化してなる円偏光分離シートを挙げることができる。
【0022】
前記コレステリック液晶組成物としては、棒状液晶性化合物であって、それ自体または他の物質と共に硬化しうるものを含む組成物を用いることができる。具体的には例えば、Δnが0.18以上であって、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶化合物を挙げることができる。
より具体的には、前記棒状液晶性化合物としては、式(1)で表される化合物を挙げることができる。
3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 式(1)
(式中、R3及びR4は反応性基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D3及びD4は単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C3〜C6は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
前記、メソゲン基Mが有しうる置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R5、−O−C(=O)−R5、−C(=O)−O−R5、−O−C(=O)−O−R5、−NR5−C(=O)−R5、−C(=O)−NR5、または−O−C(=O)−NR5を表す。ここで、R5及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、アルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR6−C(=O)−、−C(=O)−NR6−、−NR6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R6は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
本発明において、該棒状液晶性化合物は非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、一般式(1)において、メソゲン基Mを中心としてR3−C3−D3−C5−と−C6−D4−C4−R4が異なる構造のことをいう。該棒状液晶性化合物として、非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0023】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、そのΔn値が0.18以上、好ましくは0.22以上であることが好ましい。Δn値が0.30以上の化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔn値を有することにより、高い光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離シートを与えることができる。
【0024】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有することが好ましい。前記反応性基としては、具体的にはエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基が挙げられる。これらの反応性基を有することにより、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、安定した硬化物を得ることができる。
【0025】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有することができる。当該架橋剤としては、液晶組成物を塗布した液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して液晶層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができ、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、該架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
前記架橋剤の配合割合は、コレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中に0.1〜15重量%となるようにすることが好ましい。該架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られず、逆に15重量%より多いと液晶層の安定性を低下させてしまうため好ましくない。
【0026】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意に光開始剤を含有することができる。当該光開始剤としては、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、所望する物性に応じて2種以上の化合物を混合することができ、必要に応じて公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を添加して硬化性をコントロールすることもできる。
該光開始剤の配合割合はコレステリック液晶組成物中0.03〜7重量%であることが好ましい。該光開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなってしまい膜強度が低下してしまう場合があるため好ましくない。逆に7重量%より多いと、液晶の配向を阻害してしまい液晶相が不安定になってしまう場合があるため好ましくない。
【0027】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。当該界面活性剤としては、具体的には、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤は、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。界面活性剤の配合割合はコレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。該界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合があるため好ましくない。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合があるため好ましくない。
【0028】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有することができる。当該他の任意成分としては、カイラル剤、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。これらの任意成分は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加できる。
【0029】
コレステリック液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記必須成分及び任意成分を混合することにより製造することができる。
【0030】
前記円偏光分離シートは、前記コレステリック液晶組成物を透明樹脂基材に塗布して液晶層を得、次いで少なくとも1回の、光照射及び/又は加温処理により硬化して調製することができる。
【0031】
前記透明樹脂基材は、特に限定されず1mm厚で全光透過率80%以上の基材を使用することができる。具体的には、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂からなる単層又は積層のフィルムが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィンポリマー又は鎖状オレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式オレフィンポリマーが特に好ましい。
【0032】
前記透明樹脂基材は、必要に応じて、配向膜を有することができる。配向膜を有することにより、その上に塗布されたコレステリック液晶組成物を所望の方向に配向させることができる。配向膜は、基材表面上に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを水又は溶剤に溶解させた溶液等を、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法を用いて塗布し、乾燥させ、その後乾燥塗膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。配向膜の厚さは、所望する液晶層の配向均一性が得られる膜厚であればよく、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがさらに好ましい。
【0033】
前記透明樹脂基材への液晶組成物の塗布は、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法により行うことができる。液晶組成物の塗布層の厚さは、後述する所望の液晶層乾燥膜厚が得られるよう、適宜調整することができる。
【0034】
前記塗布により得られた塗布層を硬化する前に、必要に応じて、配向処理を施すことができる。配向処理は、例えば塗布層を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行うことができる。当該配向処理を施すことにより、コレステリック液晶層を良好に配向させることができる。
【0035】
必要に応じて配向処理を施した後、コレステリック液晶組成物を硬化させることにより、コレステリック液晶組成物の硬化層(即ち硬化液晶層)を有する円偏光分離シートを得ることができる。前記硬化の工程は、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。加温条件は、具体的には例えば、温度40〜200℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは50〜140℃、時間は1秒〜3分、好ましくは5〜120秒とすることができる。本発明において光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、具体的には例えば波長200〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。また、例えば0.01〜50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返し、反射帯域の広い円偏光分離シートとすることもできる。上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50〜10,000mJ/cm2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させ、硬化液晶層とすることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行うこともできる。
【0036】
本発明において、透明樹脂基材上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返し2層以上の硬化液晶層を形成することもできる。
【0037】
前記円偏光分離シートにおいて、硬化液晶層(コレステリック樹脂層)の乾燥膜厚は好ましくは3.0μm〜10.0μm、より好ましくは3.5〜8.0μmとすることができる。前記硬化液晶層の乾燥膜厚が3.0μmより薄いと反射率が低下してしまい、逆に10.0μmより厚いと、硬化液晶層に対して斜め方向から観察した時に着色してしまうため、それぞれ好ましくない。なお、前記乾燥膜厚は、硬化液晶層が2以上の層である場合は、各層の膜厚の合計を、硬化液晶層が1層である場合にはその膜厚をさす。
【0038】
本発明において、選択反射素子は、前記円偏光分離シートに加えて位相差フィルムを備えることができる。具体的には、円偏光分離シート及び位相差フィルムを積層して、選択反射素子とすることができる。当該積層は、円偏光分離シート及び位相差フィルムを、接着剤又は粘着剤を介して一体化させることにより達成しうる。さらには輝度向上シートの耐久性や剛性を向上させることを目的として、透明樹脂基材上及び/又は位相差フィルム上に、さらに接着剤又は粘着剤を介して、追加の透明樹脂基材を一体化させることもできる。
【0039】
本発明に用いる位相差フィルムとしては、(i)フィルム状のポリマーを延伸したもの、又は(ii)液晶性の材料を透明樹脂基材上に塗布し、配向させ、硬化させたものを用いることができる。(ii)の位相差フィルムを用いる場合は、適当な基材上に液晶性の材料を塗布し、配向させ、硬化させて得た当該位相差フィルムを円偏光分離シートと一体化させて選択反射素子とすることもでき、あるいは、本発明の円偏光分離シート上に、必要に応じて配向膜を設け種々の配向処理を行なって、その上に液晶性の材料を塗布し、配向させ、硬化させることで、円偏光分離シートと一体化した位相差フィルムの層を設け、選択反射素子とすることもできる。
【0040】
本発明に用いる位相差フィルムの好ましい例として、以下に述べる光学異方性素子を挙げることができる。
【0041】
本発明において、光学異方性素子は、その正面方向のリターデーションRe(以下、「Re」と略記することがある。)を透過光の略1/4波長とすることができる。ここで、透過光の波長範囲は、本発明の輝度向上フィルムに求められる所望の範囲とすることができ、具体的には例えば400nm〜750nmである。また、正面方向のリターデーションReが透過光の略1/4波長であるとは、Re値が、透過光の波長範囲の中心値において、中心値の1/4の値から±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であることをいう。
【0042】
また、光学異方性素子は、厚み方向のリターデーションRth(以下、「Rth」と略記することがある。)が0nm未満であることが望ましい。厚み方向のリターデーションRthの値は、透過光の波長範囲の中心値において、好ましくは−30nm〜−1000nm、より好ましくは−50nm〜−300nmとすることができる。このようなRe値及びRthを有する光学異方性素子を採用することにより、輝度を向上させ輝度ムラを低減させながら、出射光の色ムラをも低減させることができる。
ここで、前記正面方向のリターデーションReは、式I:Re=(nx−ny)×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(正面方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値であり、厚み方向のリターデーションRthは、式II:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。
なお、前記正面方向のリターデーションRe及び厚み方向のリターデーションRthは、市販の位相差測定装置を用いて、光学異方性素子を長手方向及び幅方向に100mm間隔(長手方向又は横方向の長さが200mmに満たない場合は、その方向へは等間隔に3点指定する)で、全面にわたり、格子点状に測定を行い、その平均値とする。
【0043】
前記光学異方性素子を構成する材質は、特に限定されないが、スチレン系樹脂からなる層を有するものを好ましく用いることができる。ここでスチレン系樹脂とは、スチレン構造を繰り返し単位の一部又は全部として有するポリマー樹脂であり、ポリスチレン、又は、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系単量体と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどのその他の単量体との共重合体などを挙げることができる。これらの中で、ポリスチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体を好適に用いることができる。
【0044】
光学異方性素子に用いるスチレン系樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000である。
【0045】
前記光学異方性素子は、好ましくは、前記スチレン系樹脂からなる層と、他の熱可塑性樹脂を含む層との積層構造を有する。当該積層構造を有することにより、スチレン系樹脂による光学的特性と、他の熱可塑性樹脂による機械的強度とを兼ね備えた素子とすることができる。他の熱可塑性樹脂としては、脂環式オレフィンポリマー、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができる。これらの中で、脂環式構造を有する樹脂やメタクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0046】
脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/または側鎖にシクロアルカン構造又はシクロアルケン構造を有する非晶性のオレフィンポリマーである。具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。これらの脂環式構造を有する樹脂は、特開平05−310845号公報、特開平05−097978号公報、米国特許第6,511,756号公報に記載されているものが挙げられる。
【0047】
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。
【0048】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルとその他の単量体との共重合体が挙げられる、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。共重合体とする場合は、メタクリル酸エステルと共重合するその他の単量体としては、アクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0049】
本発明に用いる光学異方性素子の好ましい具体的態様として、ポリスチレン樹脂からなるフィルム(a層)の両面に、他の熱可塑性樹脂からなるフィルム(b層)を積層してなる複層フィルムを延伸してなる延伸複層フィルムを挙げることができる。以下、この具体的態様について説明する。
【0050】
前記a層を構成するポリスチレン樹脂しては、上記「スチレン系樹脂」と同様のものを用いることができる。
【0051】
a層を構成するポリスチレン樹脂は、ガラス転移温度が120℃以上であることが好ましく、120〜200℃であることがより好ましく、120〜140℃であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明において、前記ポリスチレン樹脂及び前記他の熱可塑性樹脂は、それらのガラス転移温度をそれぞれTg(a)(℃)及びTg(b)(℃)としたとき、Tg(a)>Tg(b)+20℃の関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことにより、延伸した際にポリスチレン樹脂からなるa層に有効に光学的異方性を与え、良好な光学異方性素子を得ることができる。
【0053】
a層の材料である前記ポリスチレン樹脂及びb層の材料である前記他の熱可塑性樹脂を積層して、複層フィルムに成形する方法は、特に限定されないが、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及びコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出による成形方法が好ましい。押出し温度は、使用する前記ポリスチレン樹脂、及び前記他の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択され得る。
【0054】
複層フィルムは、前記a層の両面に、前記b層を積層してなる。a層とb層の間には、接着層や粘着層を設けることができるが、a層とb層とを直接に積層させる(つまり、b層/a層/b層の3層構成の積層体とする)ことが好ましい。また、複層フィルムにおいて、前記a層及びその両面に積層されたb層の厚みは特に制限はないが、好ましくはそれぞれ10〜300μm及び10〜400μmとすることができる。
【0055】
前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムを延伸してなる。前記延伸複層フィルムは、a層の延伸により設けられたA層、及びb層の延伸により設けられたB層を含むことができる。前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムのb層/a層/b層の3層構造の積層体を延伸してなり、B層/A層/B層の3層構造の延伸フィルムであることが好ましい。
当該延伸は、好ましくは一軸延伸又は斜め延伸により行うことができ、さらに好ましくはテンターによる一軸延伸又は斜め延伸により行うことができる。
【0056】
光学異方性素子の正面方向リターデーションReや厚み方向のリターデーションRthは、延伸温度や延伸倍率等の延伸条件を適宜調整することにより製造することができる。延伸温度は、前記Tg(a)−10℃〜前記Tg(a)+20℃が好ましく、前記Tg(a)−5℃〜前記Tg(a)+15℃の範囲であることがより好ましい。延伸倍率は、1.05〜30倍が好ましく、1.1〜10倍であることがより好ましい。延伸温度や延伸倍率が、上記範囲を外れると、配向が不十分で屈折率異方性、ひいてはリターデーションの発現が不十分になったり、積層体が破断したりするおそれがある。
【0057】
光学異方性素子の厚みは、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは50〜600μmである。
【0058】
2.本発明の液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の選択反射素子、液晶パネル及びバックライト装置を備える。
【0059】
本発明の液晶表示装置において、前記本発明の選択反射素子が設けられる箇所は、特に限定されないが、位相差フィルムと組み合わせて構成されたものを備える場合は、好ましくは液晶パネルとバックライト装置との間に設けられる。
【0060】
前記液晶パネルは、特に限定されず液晶表示装置に用いられているものを適宜用いることができる。例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶パネル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶パネル、IPS(In Plane Switching)型液晶パネル、VA(Vertical Alignment)型液晶パネル、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶パネル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶パネルなどが挙げられる。
【0061】
本発明の液晶表示装置が備えるバックライト装置は、特に限定されず液晶パネルに光源を供給しうる任意の構成とすることができ、直下型バックライト、サイドライト型バックライト等の構成を有することができ、通常、光源、反射板、光拡散板等の構成要素を含むことができる。
【0062】
本発明において、バックライト装置は、さらに、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を有することができる。これらを設ける位置は、特に限定されないが、通常、光拡散板の光出射面上に、任意の積層順序で設けることができる。
【0063】
前記バックライト装置は、他に、装置を構成するのに必要な筐体、電源供給装置等の構成要素を適宜有することができる。
【0064】
本発明の液晶表示装置の特に好ましい態様においては、前記バックライト装置が光源として冷陰極管を有し、前記冷陰極管が400〜500nmの範囲内に少なくとも1箇所の青色の発光領域を有し、前記選択反射素子をその主面の法線方向から観察した際の前記透過帯域が前記発光領域より長波長の領域であり、且つ前記透過帯域が、前記角θが大きくなるにつれて、前記発光領域に近づく。
【0065】
本発明においてバックライト装置の光源として好ましく用いうる冷陰極管の例を、図2を参照して説明する。図2には、約430〜500nmの範囲にピーク波長約490nmのピークを含む複数のピークから構成される青色輝線、ピーク波長約540nmの緑色輝線、及びピーク波長約611nmの赤色輝線を有する、3波長輝線の冷陰極管(以下「3CCFL」という場合がある。)、及びさらにピーク波長約658nmの赤色輝線を有する、4波長輝線の冷陰極管(以下「4CCFL」という場合がある。)のスペクトルの例を示している。これらはいずれも、400〜500nmの範囲に1箇所以上の青色の発光領域を有するものであり、本発明の液晶表示装置において好ましく用いることができる。また、ここに示す例に加えて、赤色輝線としてピーク波長658nmの輝線のみを有する冷陰極管(以下「長波長3CCFL」という場合がある。)も好ましい例として挙げることができる。
【0066】
バックライト装置に、冷陰極管として、図2に示す3CCFL又は4CCFLのように、ピーク波長約490nmの範囲の青色輝線を有するものを採用し、これを、図1に示すような約520nmにピークを有する透過帯域を有する本発明の選択反射素子を組み合わせて、本発明の液晶表示装置の好ましい態様を構成することができる。
【0067】
液晶表示装置の一般的な性質として、観察方向と正面方向とがなす角θが大きくなるにつれて、表示面の色相が赤みを帯びる。しかし、上記の如く構成された本発明の液晶表示装置においては、観察方向と正面方向とがなす角θが大きくなるにつれて、選択反射素子の透過帯域が、冷陰極管の高い青色のピークに近づき、青色の出射光が増加し、表示面の色相が赤みを帯びるのを補償することができる。それにより、観察角度が変化しても、色相の変化が少ない液晶表示装置を実現することができる。
【0068】
本発明の液晶表示装置は、上記の構成要素に加えて、偏光板等の、液晶表示装置を構成するのに必要な他の構成要素を適宜有することができる。
【0069】
図3は、本発明の液晶表示装置の構成の具体的な一例を示す図である。図3に示す液晶表示装置は、反射板20、冷陰極管19、拡散板18、プリズムシート(図示せず)、基材16上に形成された配向膜17、コレステリック樹脂層15及び位相差フィルム14からなる本発明の選択反射素子、偏光子B 13、液晶セル12、及び偏光子A 11をこの順に備えている。そして、基材16、配向膜17、コレステリック樹脂層15及び位相差フィルム14からなる本発明の選択反射素子は一体となっている。光源からの光には右偏光と左偏光とが含まれている。その光がコレステリック樹脂層15に入射すると、一方の回転方向の円偏光(図中光の進行方向に向って右回転の円偏光)はそのままの回転方向を維持したままコレステリック樹脂層15を透過し、それ以外の偏光は反射される。透過した円偏光は位相差フィルム14により偏光子Bの透過軸と平行な直線偏光に変換される。一方、反射された円偏光は光源の背後に配置された反射板によって反射され、再び円偏光分離シートに入射する。このようにして、光源から出射した光が有効利用され、画面の表示輝度を向上させることができる。
【0070】
本発明の選択反射素子及び液晶表示装置は勿論上記態様に限られず、本願の特許請求の範囲及びその均等の範囲内において任意の付加、削除及び置換を加えることができる。例えば、本発明の選択反射素子において、コレステリック樹脂層は1層のみであってもよく、複数層を積層したものであってもよい。また、本発明の液晶表示装置は、選択反射素子として前記本発明の選択反射素子を一枚有していてもよく複数枚有していてもよい。さらには、選択反射素子として、一枚以上の前記本発明の選択反射素子に加え、特定の透過帯域を有しない他の選択反射素子をさらに有していてもよい。かかる他の選択反射素子としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明を実施例及び比較例を参照してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0072】
製造例1:円偏光分離シートの調製
(1−1:透明樹脂基材の調製)
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(株式会社オプテス製、商品名「ゼオノアフィルムZF14−100」、厚み100μm)の両面をコロナ放電処理した。5%のポリビニルアルコールの水溶液を当該フィルムの片面に♯2のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を乾燥し、膜厚0.1μmの配向膜を形成した。次いで当該配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材を調製した。
【0073】
(1−2:硬化液晶層の形成)
下記の組成で、硬化液晶層を構成するためのコレステリック液晶組成物を調製した。
固形分率40重量%
重合性液晶化合物(Δn(ne−no)=0.22) 29.1重量%
重合性非液晶化合物 7.28重量%(下記構造を有する単官能アクリレート)
【0074】
【化1】

【0075】
光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名OXE02) 1.2重量%
界面活性剤(セイミケミカル株式会社製、商品名KH−40) 0.04重量%
カイラル剤(BASF社製、商品名LC756) 2.38重量%
溶媒 シクロペンタノン 60重量%
【0076】
このコレステリック液晶組成物を♯10のワイヤーバーを使用して、上記(1−1)で調製した配向膜を有する透明樹脂基材の、配向膜を有する面に塗布した。塗膜を100℃で5分間乾燥及び配向熟成した。塗膜にさらに0.1〜45J/cmの微弱な紫外線(波長365nm)の照射処理と、それに続く100℃で1分間の加温処理からなるプロセスを2回繰り返した後、窒素雰囲気化で2000mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜厚5μmの硬化液晶層(コレステリック樹脂層)を有する円偏光分離シートを作製した。
【0077】
得られた円偏光分離シートの透過スペクトルを分光器(日本分光社製 JASCO V−550)を用いて測定したところ、図1の実線で示した通りの結果が得られていることを確認した。即ち、この円偏光分離シートは、波長510nm付近に透過率約70%のピーク(ピーク半値幅約7nm)を有する他は、波長400〜700nmの帯域において、50〜55%程度の略均一な透過率を有していた。
【0078】
製造例2:位相差フィルムの調製
メタクリル酸メチル97.8重量%とアクリル酸メチル2.2重量%とからなるモノマー組成物を、バルク重合法により重合させ、樹脂ペレットを得た。
【0079】
特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて、ゴム粒子を製造した。このゴム粒子は、球形3層構造を有し、芯内層が、メタクリル酸メチル及び少量のメタクリル酸アリルの架橋重合体であり、内層が、主成分としてのアクリル酸ブチルとスチレン及び少量のアクリル酸アリルとを架橋共重合させた軟質の弾性共重合体であり、外層が、メタクリル酸メチル及び少量のアクリル酸エチルの硬質重合体である。また、内層の平均粒子径は0.19μmであり、外層をも含めた粒径は0.22μmであった。
【0080】
上記樹脂ペレット70重量部と、上記ゴム粒子30重量部とを混合し、二軸押出機で溶融混練して、メタクリル酸エステル重合体組成物A(ガラス転移温度105℃)を得た。
【0081】
上記メタクリル酸エステル重合体組成物A(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を温度280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が45/70/45(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得た。この積層フィルムを、テンター延伸機で、遅相軸がMD方向に対して45度傾いた方向になるように、延伸温度134℃、延伸倍率1.8倍で斜め方向に延伸し、光学異方性層を得た。
【0082】
光学異方性層の正面方向のリターデーションは、140nm、厚み方向のリターデーションは−85nm(各数値は延伸後の測定値である。)であった。さらにこの光学異方性層の片面を、濡れ指数が56dyne/cmになるようにコロナ放電処理を施した。この光学異方性層を、下記において位相差フィルムとして用いた。
【0083】
実施例1:選択反射素子及び液晶表示装置の作製及び評価
(1−a:選択反射素子の作製)
製造例1で得た円偏光分離シートと、製造例2で得た位相差フィルムとを、粘着剤にて貼り合わせ、選択反射素子を得た。ここで、粘着剤については、アクリル系粘着剤(綜研化学社製 SKダイン2094)71.2重量部、硬化剤(綜研化学社製 E−AX)1.9重量部、酢酸エチル19.6重量部からなる、粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物に直径4μmの微粒子(形状:球状、材料:ポリスチレン、屈折率:1.59)をヘイズ(ヘイズガードII(東洋精機社製)を用いて、JIS K7136に準拠して測定)が60%となるように混合したものを用いた。この粘着剤を、前記円偏光分離シートの硬化液晶層上に平均厚み20μmとなるように積層し、この面と、前記位相差フィルムのコロナ処理面とをラミネーターを用いて、2kgf/50mmのニップ圧にて貼り合わせを行い、選択反射素子を得た。
【0084】
(1−b:液晶表示装置の作製)
光源として4CCFLを搭載する市販の液晶表示装置(i)(Sharp社製 AQUOS LC−42RX1W)を分解し、上記(1−a)で得た選択反射素子を、バックライトの出射面上に装着し、組み立て直し、液晶表示装置(ii)を得た。液晶表示装置(ii)は、主要な構成要素として、バックライト装置(4CCFL、反射板、光拡散板、拡散シート、プリズムシート及び上で装着した選択反射素子を含む)、偏光板、液晶パネル及び偏光板をこの順で有していた。
液晶表示装置(i)及び(ii)の光源である4CCFLは、ピーク波長約430〜500nmの範囲の青色輝線、ピーク波長約540nmの緑色輝線に加えて、ピーク波長約610nm及び約660nmに、2本の赤色輝線を有していた。
【0085】
(1−c:評価)
上記(1−b)で得た液晶表示装置(ii)を白表示させ、そのときの正面方向と、観察角度を正面方向から60度傾けた方向(60度方向)の色度を、視野角測定評価装置(メーカー:Autronic−MELCHERS社製、商品名:ErgoScope)で測定し、正面方向と60度方向の色度の差(Δx、Δy)を算出した。なお、前記Δx、Δyは小さいほどよい。
【0086】
比較例1
前記液晶表示装置(i)について、実施例1の(1−c)と同様に、白表示させ、正面方向及び60度方向の色度の差を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示す結果より、実施例の液晶表示装置では斜め方向においても良好な色相を呈した一方、比較例の液晶表示装置においては、斜め方向から観察した際の色相が不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の選択反射素子の一例における、正面方向及び斜め方向から観察した場合の波長と透過率との関係を示すグラフである。
【図2】本発明のバックライト装置に光源として用いうる冷陰極管の発光スペクトルを示すグラフである。
【図3】本発明の液晶表示装置の具体的な構成の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
20 反射板
19 冷陰極管
18 拡散板
16 基材
17 配向膜
15 コレステリック樹脂層
14 位相差フィルム
13 偏光子B
12 液晶セル
11 偏光子A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
400〜750nmの波長範囲内において、選択反射を有する帯域と、選択反射が相対的に少ない透過帯域を有することを特徴とする選択反射素子。
【請求項2】
前記透過帯域が、前記透過帯域を測定する方向と前記選択反射素子の主面の法線方向とがなす角θが大きくなるにつれて、短波長側にシフトすることを特徴とする、請求項1に記載の選択反射素子。
【請求項3】
前記透過帯域が、400〜550nmの波長範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の選択反射素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の選択反射素子、液晶パネル及びバックライト装置を備える液晶表示装置。
【請求項5】
前記バックライト装置の光源が、400〜500nmの範囲内に少なくとも1箇所の青色の発光領域を有し、前記選択反射素子の前記透過帯域が、前記発光領域より長波長の領域であることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−192983(P2009−192983A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35764(P2008−35764)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】