説明

選択的に開放することが可能なポートを有する熱サイクル適用デバイス。

複数のサンプルの熱サイクルのためのデバイスであって、前記デバイスは、複数のサンプル容器を収容するためのチェンバー(1)及び選択的に開放することが可能なポート(2)を含むデバイス。前記のサンプル容器は熱サイクルの適用時、把捉デバイス(3)を使用して導入されるまたは引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル適用デバイス、特に、核酸増幅のための熱サイクル適用デバイスに関する。しかしながら、本発明は、この特定の使用分野に限定されないことが了解されよう。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、以前の何らかの出版物(または、それから得られた情報)について、または、既知の何らかの資料について参照がなされた場合、それがいずれのものであれ、それは、その以前の出版物(またはそれから得られた情報)、またはその既知の資料が、本明細書が関連する努力分野における、共通の一般知識の一部を形成することを認識、または許容するものではなく、または、いずれの形でもそれを示唆するものでもなく、または、そのように解釈すべきでもない。
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とは、サイクルが完了する度毎に、ある種のポリヌクレオチド配列の指数関数的増幅をもたらす、複数サイクルを含む技術である。このPCR技術は周知であり、非特許文献1および2を含む多くの書物に記載されている。PCRはさらに、特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、および11を含む多くの米国特許にも記載されている。
【0004】
典型的には、PCR技術は、ポリヌクレオチドを変性する工程、次いで、この変性ポリヌクレオチドに、少なくとも一対のプライマーオリゴヌクレオチドをアニールする工程、すなわち、変性ポリヌクレオチド鋳型に対しプライマーをハイブリダイズする工程を含む。アニール工程の後、ポリメラーゼ活性を持つ酵素が、プライマーオリゴヌクレオチドを取り込んだ、新規ポリヌクレオチド鎖の合成を触媒し、この元の変性ポリヌクレオチドを合成鋳型として用いる。この一連の工程(変性、プライマーアニーリング、およびプライマー伸長)が一PCRサイクルを構成する。
【0005】
サイクルが繰り返されるにつれて、新たに合成されるポリヌクレオチドの量は指数関数的に増加する。なぜなら、以前のサイクルで得られた新規合成ポリヌクレオチドは、以後のサイクルにおいて合成のための鋳型として働くことが可能となるからである。プライマーオリゴヌクレオチドは、通常、ある任意の二本鎖ポリヌクレオチド配列において、対向する鎖にアニールし、その二つのアニール部位間の領域の増幅を可能とするペアとして選択される。
【0006】
DNAの変性は、通常、約90から95℃で起こり、その変性DNAに対するプライマーのアニーリングは、通常、約40から60℃で実行され、そのアニールプライマーの、ポリメラーゼによる伸長工程は、通常、約70から75℃で実行される。したがって、1回のPCRサイクル中に、反応混合物の温度を変動させなければならず、複数サイクルのPCR実験時には、多数回変動させなければならない。
【0007】
このPCR技術は、例えば、DNA配列分析、プローブ生成、核酸配列のクローニング、部位指定突然変異導入法、遺伝子突然変異の検出、ウィルス感染の診断、分子「フィンガープリンティング」、および、生物学的流体およびその他の試料における汚染微生物の監視などの、多様な生物学的応用に用いられる。
【0008】
PCRの外、他のインビトロ増幅手法、例えば、LandegrenおよびHoodの特許文献12に開示される、リガーゼ連鎖反応などの手法も開発されている。さらに一般的には、例えば、核酸ハイブリダイゼーションおよび配列決定のような生物工学技術分野で公知のいくつかの重要な方法も、サンプル分子を含む溶液の温度の調節的変化に依存している。
【0009】
PCRを含む従来技術は、通常、種々の温度域をサイクル経過する、個別ウェルまたは管の使用に頼っている。例えば、DNA増幅および配列決定反応のために使用される、多くの熱「サイクラー」が記述されてきているが、これらのサイクラーでは、温度調節要素、すなわち「ブロック」が、反応混合物を保持し、そのブロックの温度が継時的に変動する。このようなデバイス(例えば、一般に、96ウェルプレートが使用される)によって、比較的多数のサンプルを同時に処理することが可能であるが、このようなデバイスは、反応混合物のサイクル変動が比較的遅い、温度制御が理想的レベルよりも低い、および、インシトゥ(生体内)における反応混合物の検出が困難という点で種々の欠点がある。さらにこのようなブロックでは、全体ブロックが同時に冷却、加熱されるため、「バッチ」操作方式しか許容しない。さらに、次のことが了解されるであろう:操作すべきものが僅かの数のサンプルであるとブロック操作が比較的不便になるために、このようなデバイスのオペレータは、通常、利用可能なサンプル位置の大部分を占めるのに十分な数のサンプルが用意されるまで待機することを好む。これは、どんなに緊急なサンプルであっても待たなければならないことを意味する。その上さらに、温度サイクル定例工程が始まると、空いている位置は、それがいずれのものであれ、通常は、その熱サイクル定例工程が完了するまで利用することができないので、緊急のサンプルがあっても、そのサイクルが完了するまで再度待たなければならなくなる。
【0010】
このような欠点のいくつかを回避しようと努めた結果、最近の進歩として、例えば特許文献13および14に開示されるように、異なる温度プロフィールの同時運転を実現する、ブロック熱サイクラーの開発が出現した。しかしながら、これらの熱サイクラーにも固有の欠点がある。例えば、それらは比較的高価で、複雑であり、定期的な恒常メンテナンスを必要とし、温度制御は理想レベルよりも低く、反応容器で起こる反応(単数または複数)の検出は依然として困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許4,683,195
【特許文献2】米国特許4,683,202
【特許文献3】米国特許4,800,159
【特許文献4】米国特許4.965,188
【特許文献5】米国特許4,889,818
【特許文献6】米国特許5,075,216
【特許文献7】米国特許5,079,352
【特許文献8】米国特許5,104,792
【特許文献9】米国特許5,023,171
【特許文献10】米国特許5,091,310
【特許文献11】米国特許5,066,584
【特許文献12】米国特許4,988,617
【特許文献13】米国特許5,601,141
【特許文献14】米国特許6,558,947
【特許文献15】国際公開WO 92/20778
【特許文献16】国際公開WO 98/49340
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】PCR: A Practical Approach (「PCR:実技法」)M. J. McPherson, et al., IRL Press (1991), PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (「PCRプロトコール:方法および応用ガイド」)by Innis, et al., Academic Press (1990)
【非特許文献2】PCR Technology: Principals and Applications for DNA Amplification (「PCR技法:DNA増幅の原理と応用」)H. A. Erlich, Stockton Press (1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、反応混合物の正確な温度制御を実現し、使用するのに複雑でなく、サンプル容器に起こる反応のリアルタイム分析の実現を可能とし、さらに、バッチ方式、または連続方式で操作することが可能であり、そのため、必要数の熱サイクルの一部しか受けていないサンプルにも熱的に悪影響を及ぼすことなく、サイクル適用時、該熱サイクラーに対し、連続的にサンプルを添加および/または排除することを可能とするPCR用熱サイクラーに対しては依然として需要が存在する。
【0014】
本発明は、前述の設備品の欠点の少なくとも一つを克服または緩和すること、または、既存の設備品に対する代替品を提供することを求めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1局面によれば、本発明において、複数のサンプルの熱サイクルのためのデバイスが提供され、前記デバイスは、複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを含み、前記チェンバーは、選択的に開放することが可能なポートを有し、前記デバイスでは、熱サイクル適用時、前記ポートを通じて、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出すことができる。
【0016】
ある実施態様では、この一つ以上の選ばれたサンプル容器の導入または引き出しは、熱サイクル適用時、複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し、ごく僅かな影響しか及ぼさない。
【0017】
ある実施態様では、ポートは、開放位置において、チェンバーが周囲の雰囲気に対して実質的に開放されることがないようなサイズを有している。ある実施態様では、開放位置のポートは開口部を画成し、該開口部は、チェンバーの内部表面積に比べると相対的に小さい。
【0018】
ある実施態様では、一つ以上の選ばれたサンプル容器を導入するまたは引き出すために、把捉デバイスが使用される。ある実施態様では、把捉デバイスが一つ以上のサンプル容器を導入できるまたは引き出せるようにするためにポートが開放位置にあるのはごく短時間である。把捉デバイスは、該把捉デバイスが、開放位置のポートによって画成される開口部と、緊密な適合関係を持つことができるようなサイズおよび形状を有していてもよい。さらに、ポートの外部辺縁は、ラバーシールを有していてもよく、把捉デバイスの外径は、該把捉デバイスが少なくとも部分的にポート中に挿入されているとき、気密シールを実現するようなサイズであってもよい。把捉デバイスはフランジを含んでいてもよく、かつ、このフランジは、把捉デバイスが少なくとも部分的にポート中に挿入されているとき、ポートに密着して気密となるような形状を持ってもよい。把捉デバイスは、実質的に円筒形であってもよく、ポートは円形開口部を有する。
【0019】
ある実施態様では、複数のサンプル容器は、チェンバーに収容されるプラットフォームの上に支持される。プラットフォームは、チェンバー内に回転可能的に登載される回転性円盤であってもよい。
【0020】
ある実施態様では、熱サイクル適用は核酸増幅用に構成される。
【0021】
ある実施態様では、複数のサンプル容器は、比較的速やかな熱平衡のために、また、反応混合物の検出を可能とするように構成される。複数のサンプル容器は、ガラスまたはプラスチック材料、またはそれらの組み合わせから形成されていてもよい。ある実施態様では、サンプル容器は管である。
【0022】
ある実施態様では、複数の、接続されたサンプル容器を、同時に、チェンバーへ導入する、または、チェンバーから引き出してもよい。複数の接続されたサンプル容器は、物理的に、例えば、クリップの一部を形成することによって接続されてもよい。クリップは、任意の数の個別サンプル容器を、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のサンプル容器を含んでいてもよい。
【0023】
ある実施態様では、デバイスは、選ばれた容器(単数または複数)を少なくとも部分的に持ち上げて、把捉デバイスが、該選ばれた容器(単数または複数)を把捉することを可能とする持ち上げデバイスを含む。
【0024】
第2局面によれば、ここに、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、デバイスのチェンバー内に導入するか、または、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、チェンバーから引き出すための方法が提供される。その際、複数のサンプル容器は、実質的に均一に熱サイクルを適用され、チェンバーは選択的に開放可能なポートを持ち、この方法は:
必要に応じて一時的に熱サイクルを停止し、温度を維持する工程;
前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;
前記の開放されたポートを通じて、前記の選ばれたサンプル容器(単数または複数)を、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出す工程;
前記ポートを閉鎖する工程;および、
一時的に停止されていた場合は、前記の熱サイクルを継続する工程、
を含む。
【0025】
前記の選ばれたサンプル容器(単数または複数)は、熱サイクルの適用を受ける複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し実質的に影響を及ぼすことなく、導入するまたは引き出すことができる。
【0026】
第3局面によれば、ここに、デバイス中の複数のサンプルに対し熱サイクルを実行するための方法が提供され、前記デバイスは、複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを有し、前記チェンバーは、選択的に開放が可能なポートを有し、この方法は、熱サイクルの適用時、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、該ポートを通じて、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出す工程を含む。
【0027】
ある実施態様では、方法は、第1局面によるデバイスによって実行される。
【0028】
第4局面によれば、ここに、複数サンプルについて連続的熱サイクルを実行するための方法が提供され、前記方法は:
複数のサンプル容器をデバイス内に導入する工程で、前記デバイスが該複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを有し、前記チェンバーが選択的に開放可能なポートを有する工程;
熱サイクルを開始する工程;および、
熱サイクルの適用時、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、該ポートを通じて、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出す工程、
を含む。
【0029】
第5局面によれば、ここに、選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて実質的に均一に熱サイクルが適用される複数のサンプルの熱サイクルを実行するための方法が提供され、前記方法は:
前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;および、
チェンバーの温度または熱均一性に及ぼす影響が最小となるように、熱サイクルの適用時、一つ以上のサンプル容器を、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出す工程を含む。
【0030】
第6局面によれば、ここに、選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて、実質的に均一に熱サイクルを適用される複数のサンプルに対して熱サイクルを実行するための方法が提供され、前記方法は:
必要に応じて熱サイクルを一時的に停止し、チェンバーの温度を維持する工程;
前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;
一つ以上のサンプル容器を、前記の開放されたポートを通じて、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出す工程;
前記ポートを閉鎖する工程、および、
一時的に停止された場合は前記熱サイクルを継続する工程を含み、ここで、一つ以上のサンプル容器の、チェンバーへの導入、またはチェンバーからの引き出しは、前記複数サンプルの温度または熱均一性に対し最小の影響しか及ぼさない。
【0031】
さらにここに開示されるものは、実質的に均等に熱サイクルを適用される、複数のサンプル容器にサンプル容器を導入する、または複数のサンプル容器からサンプル容器を引き出すためのデバイスであり、前記デバイスは、前記の複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを含み、前記チェンバーは、熱サイクルの適用時、前記の複数のサンプル受容器の温度または熱均一性に実質的に影響を及ぼすことなく、前記のサンプル容器を導入するまたは引き出すための把捉デバイスを受容する、選択的に開放可能なポートを有する。
【0032】
さらにここに開示されるものは、選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて実質的に均等に熱サイクルを適用される、複数のサンプル容器にサンプル容器を導入する、または複数のサンプル容器からサンプル容器を引き出すための方法であり、前記方法は:前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;および、熱サイクル適用時、前記の複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し実質的に影響を及ぼすことなく、前記の複数のサンプル容器にサンプル容器を導入するか、または前記の複数のサンプル容器からサンプル容器を引き出す工程を含む。このサンプル容器は、把捉デバイスを用いて導入するまたは引き出してもよい。典型的には、選択的に開放可能なポートは、サンプル容器がチェンバーに導入されるか、またはチェンバーから引き出された後に閉鎖される。
【0033】
本明細書に記載される局面および実施態様に鑑みれば、サンプル容器を、チェンバーへ導入するか、またはチェンバーから引き出すプロセスが、必要数の熱サイクルをほんの一部しか受けていない、既存のサンプル容器に対して及ぼす影響を最小とするには、選択的に開放可能なポートは、その開放位置にあるとき、チェンバーが、周辺の雰囲気に対して実質的に開放することがないようなサイズでなければならないことが了解されよう。言い換えれば、その開放位置にあるポートによって画成される開口部は、熱サイクルの適用を受ける複数のサンプル容器を収容するチェンバーの内部表面積に対し、相対的に小さい。したがって、ポートの開放によってチェンバーから漏出する加熱または冷却流体の損失は、仮にあるとしても、少ないか、または無視できるほどであり、そのため、既存のサンプル容器に対する影響はごく僅かである。典型的には、熱サイクルを与える加熱および冷却手段は、開放ポートを通じてチェンバーから漏出する流体の損失が仮にあるとしても、それを収容することが可能なほど十分な容量を持ち、そのため、チェンバー内の温度は、所望の、または指定のレベルに維持され、さらに重要なことには、既存のサンプルのいずれも、その温度は実質的に影響を受けない。典型的には、加熱/冷却流体は、空気であるが、当該技術分野で周知の他の流体があるならばそれでもよい。さらに、一実施態様によれば、選択的に開放可能なポートは、把捉デバイスが、サンプル容器を、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出すのに必要な最短時間、開放位置にあるように適合される。
【0034】
ある実施態様では、把捉デバイスは、流体のチェンバーへの浸入、またはチェンバーからの浸出を最小とするために、開放位置のポートによって画成される開口部と緊密な適合関係を持てるようなサイズおよび形状を有している。他の実施態様では、ポートの周囲にラバーシールを設けてもよく、把捉デバイスの外径は、気密シールを実現するようなサイズを有していてもよい。さらに別の実施態様では、ポートとのシールを実現するために、把捉デバイスにフランジを設けてもよい。さらに、把捉デバイスは、実質的に真正な円筒形であってもよく、ポートは円形である。しかし当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の形状および構成も可能であることが了解されるであろう。
【0035】
さらに別の実施態様によれば、上記複数のサンプル容器は、熱サイクルを適用するため、例えば、核酸増幅(例えば、PCR)を実行するため、加熱または冷却されるように適合されるチェンバー内に収容されるプラットフォーム上に支持されていてもよい。このプラットフォームは、特定の一実施態様では、チェンバー内に回転可能に登載される回転性円盤であり、スロットまたは開口部中にサンプル容器を受容するように適合される。このチェンバーは、通常、反応混合物をサンプル容器の基底部に維持するために、サイクル適用時、回転性円盤を駆動してサンプル容器に対し遠心力を印加する駆動手段を含む。本発明にしたがって使用される、熱サイクラーの例としては、Corbett Life Sciences Pty Limited (www.corbettlifescience.com) によって製造、市販される熱サイクラーの、Rotor-Gene(商標)ファミリーが挙げられる。他の類似のデバイスが、国際公開WO 92/20778、および国際公開WO 98/49340(特許文献15および16)に開示される。しかしながら、他の市販の熱サイクラーも、本明細書に記載されるように改変が可能であることが了解されよう。注目すべきことに、熱サイクラーのRotor-Gene(商標)ファミリーは特に応用性が高い。なぜなら、それらの場合、同じ容器対容器条件、熱サイクルを適用されるサンプルの優れた熱制御、および反応混合物のリアルタイム分析が得られるからである。これは、一部は、ローターの使用、加熱および冷却システムの設計、および、PCR反応のリアルタイム分析を実行するための連携光学系を用いることによって達成される。サンプルが回転するという事実によって、全てのサンプルが同じ速度で加熱、冷却されることが確実となる。したがって、設定点に達したとき、平衡時間は不要である。
【0036】
本発明にしたがって使用される場合、サンプル容器は、通常、比較的速やかな熱平衡のために、また、反応混合物の検出を可能とするように適合されるが、ガラス、またはプラスチック材料から形成されてもよい。例えば、サンプル容器はエッペンドルフ管であってもよい。容器の中にはどのような反応混合物を含めてもよいが、ここで考慮の対象とされる例では、反応混合物は、核酸増幅のためのものであり、熱サイクラーも、それにしたがって構成される、すなわち、熱サイクル定例工程は、特に、前述のような核酸増幅用に適合される。
【0037】
一実施態様では、把捉デバイスは、サンプル容器に対し実質的に軸方向運動として、サンプル容器を円盤上の、その座席/支持体に対し導入するまたは引き出す。しかしながら、把捉デバイスは、サンプル容器を挟んで、ローターの側面から入ったり出たりしてもよいし、あるいは、サンプル容器は、ローターの下から導入/引き出ししてもよいことが了解されるであろう。しかしながら、実際の導入または引き出し方式は、熱サイクル適用時に、サンプル容器を導入するまたは引き出すことが可能であり、かつ、既存のサンプルを熱的にまったく妨げることないことに比べれば、それほど重要ではない。
【0038】
当業者には、ここに記載される局面および実施態様は、バッチ処理方式によるサンプルの熱サイクル適用を可能とするばかりでなく、「連続」操作方式も可能とし、指定数の熱サイクルを受容する途中にある一組のサンプルに対し、新規サンプルの付加を可能することが了解されるであろう。この連続方式は、オペレータが、バッチが完了するまで待つ必要がないことを意味する。なぜなら、完了サンプル(すなわち、必要数の熱サイクルを既に受容したサンプル)は、チェンバーへのそれらの導入時間に応じて定期的にチェンバーから引出すことが可能であり、そのため、残余のサンプルに対するサイクル適用が継続され、同時に、新規サンプルの導入用として、その位置を空けることが可能となるからである。さらに、後の段階で追加サンプルを導入することが可能であるという柔軟性があるために、熱サイクルの適用は、ごく少数のサンプルで始めることができる。例えば、本明細書に記載される局面および実施態様によれば、例えば、医学診断の分野で要求される場合があるように、緊急対応としてサンプルを分析することが可能であり、しかもその際、既存の熱サイクルバッチを終了する必要はなく、または、全体デバイスが使用可能となる必要もない。
【0039】
当業者には、遠心型デバイスを操作する場合、サンプルをバランスさせる問題を考慮する必要のあることが了解されるであろう。例えば、高速回転デバイスの場合、このことは、通常、同じ重量を持つ、正反対向きのサンプル容器を含めることによって調整される。しかしながら、PCRの場合、試料の量がごく僅かであるので、通常バランス問題は現れない。さらに、比較的遅い、例えば、400から1000 RPMの回転では、バランス形成はあまり大した問題とはならない。高速回転デバイスの場合、または、大きなサンプル容量を用いる場合、選ばれたサンプル容器(単数または複数)と共に、正反対向きの釣り合いおもりを確実に導入する/引き出すことによって、または、確実に正反対向きペアとしてサンプルを付加または撤去することによって、デバイスは、このバランス問題を考慮するように構成される。
【0040】
さらに当業者であれば、ローター装備デバイスおよびPCR系反応の場合において連続操作方式による運転時、熱サイクルのアニール段階中(すなわち、40から60℃の温度)、ローターは、通常、一時的に回転を中止させられ、かつ、選ばれたサンプル容器の導入/引き出しを可能とするために、必要に応じて温度が一時的に定常に維持されることを了解するであろう。次に、ローターは、コンピュータ制御を介して、引き出される予定のサンプル容器の位置に指示されてもよいし、あるいは、新鮮なサンプル容器を導入するために、空の位置に指示されてもよい。当業者であれば、サンプルは、PCR用熱サイクルのアニール段階だけでなく、変性または伸長段階(すなわち、それぞれ、90から95℃、または70から75℃)においても、導入または引き出しが可能で、同様の効果が得られることを了解するであろう。しかしながら、各サンプルが、確実に同じ熱履歴を受けるようにするために、サンプル容器は、熱サイクル定例工程(ルーチン)の同一地点でチェンバーへ導入され、またはチェンバーから引き出され、それによって、本明細書に記載される局面および実施態様にしたがって改変される熱サイクラー用の連続規定サイクルが可能となる。次に、選択的に開放可能なポートが開放されて、サンプル容器へのアクセスを可能とし、一つ以上のサンプル(必要数の熱サイクルを経過した)が引き出され、および/または、一つ以上の新規サンプルが導入された後、該ポートは閉鎖され、ローターは再び指定の速度で回転させられる。導入/引き出しを可能とするために、熱サイクルルーチンは一時的に停止されても、今度は継続が可能とされる。さらに、とりわけ、サンプル容器の中で起こっている反応も、サンプル容器の導入および/または引き出しの前、最中、および後において連続的に分析が可能であることである。
【0041】
さらに本明細書では、一つ以上の選ばれたサンプル容器をチェンバーに導入する、または、一つ以上の選ばれたサンプル容器をチェンバーから引き出すための方法が開示され、この方法においては、複数のサンプル容器が回転可能な円盤の上に支持され、チェンバーにおいて実質的に均一な熱サイクルが適用され、チェンバーが選択的に開放可能なポートを有し、回転性円盤がチェンバーにおいて回転され、前記の方法は:
必要に応じて熱サイクルを一時的に停止し、温度を維持する工程;
円盤の回転を止め、引き出しを必要とするサンプル容器、あるいは、サンプル容器を受容するための円盤上の空の位置を指示する工程;
前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;
前記の開放ポートを通じて、一つ以上の選ばれたサンプル容器を導入するまたは引き出す工程;
前記ポートを閉鎖する工程;
前記円盤の回転を継続する工程;および、
一時的に停止された場合、熱サイクルを継続する工程
を含む。
【0042】
選ばれたサンプル容器(単数または複数)は、複数のサンプル容器の温度または熱均一性に実質的に影響を及ぼすことなく導入するまたは引き出すことができる。
【0043】
本明細書に記載される局面および実施態様によれば、その遠位末端に前記把捉デバイスを持つ、コンピュータ制御ロボットアームを用いて、サンプル容器を、チェンバーへ、または、チェンバーから、自動的に導入するまたは引き出すことができる。例えば、ラックの上にサンプル容器を集合させ、オペレータは、熱サイクラーとロボットアームの両方を操作するソフトウェアをプログラムし、必要に応じて前述の熱保持期間に、ラックから指定の順序でサンプル容器を取得し、それらを、チェンバー内に導入することができる。次に、ソフトウェアはさらに進んで、サンプル受容器が受ける熱サイクルの数をカウントし、指定の数のサイクルに達したときにその容器を自動的に引き出し、ラックの上に該容器を戻し、必要に応じて、ラックから得た新規サンプル容器を、今、空になったばかりの円盤位置に導入することができる。ローター上の使用可能位置を満たすのに十分な数のサンプルが手元に無い場合、熱サイクラーは熱サイクルプロセスを継続し、最終的にこれらのサンプルが必要数のサイクルを受けた後に、これらのサンプルを自動的に引き出すことができることが了解されよう。さらに、ローターが満杯である場合には、新規サンプルは一列に並べておいて、位置の使用が可能となったとき、チェンバーに導入されてもよいことが了解されるであろう。さらに、サンプルの緊急分析の場合には、チェンバー内において位置が利用可能となったら、直ちにそれらのサンプルをチェンバー内に導入することが可能であることが了解されよう。
【0044】
本明細書に記載されるデバイスは、バッチ方式の操作、または連続方式に備えることができることが了解されよう。バッチ方式では、チェンバー内の全ての位置に負荷し、例えば40サイクルでサイクルを適用し、その一方で、サンプル容器中で起こっている反応に関するデータを取得してもよい。次に、全ての容器を取り出し、新規バッチのサンプル容器を導入してもよい。それとは別に、前述の連続方式も、実施しようと思えば可能である。
【0045】
さらに本明細書に記載したように、把捉デバイスがサンプル容器を把捉するのを補佐するために、チェンバー内の支持体からサンプル容器を少なくとも部分的に持ち上げるための持ち上げデバイスを設けてもよい。この例では、ローターの下で、選択的に開放可能なポートと一致させて、アクチュエータが設けられてもよい。
【0046】
PCR系反応の状況下では、サンプルは、油状皮膜を持つサンプル容器中に負荷され、該容器を別の95℃の加熱ブロックに暴露することによって指定時間95℃で加熱し、こうしてサンプルを変性させ、次いで、このサンプル容器を熱サイクラーのチェンバー内に導入してもよい。ローター装備熱サイクルを用いる場合、一実施態様では、この最初の変性工程の終了時、熱サイクラーを制御するソフトウェアは、自動的にローターを遅くし、それを、該ローター中の次に利用可能な位置に指示し、上記変性サンプルの導入を可能とする。注意すべきことには、この段階で、完了したサンプルはいずれも引き出すことができる。次に、後続サンプルが、熱プロフィールの同一地点で導入され、そのため、各サンプルが、同じ熱処理を受けることが可能とされる。
【0047】
上記形態、例、局面、および実施態様は、そのいずれも、単独で実施することも、あるいは組み合わせて実施することもできることが了解されるであろう。
【0048】
ここで、本明細書に記載されるデバイスおよび方法の実施態様が、添付の図面を参照しながら実施例のみに基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】閉鎖位置にある、選択的に開放可能なポートを示す、本発明によるチェンバーの平面図である。
【図2】開放位置にあるポートを示す、図1と同様の図である。
【図3】見やすくするためにチェンバーの頂上カバーを外したところを示す、図1と同様の図であって、ポートは、その開放位置が示され、チェンバーの冷却ポートは、その閉鎖位置が示されている。
【図4】その閉鎖位置にあるポート、および、その開放位置にある、チェンバーの冷却ポートを示す、図3と同様の図である。
【図5】本発明によるデバイスの、一部を切り欠いた正面斜視図であって、把捉デバイスが、サンプル容器をローター中に導入しているところを示す。
【図6】複数回の熱サイクルを既に受けたローターにおける、負荷/未負荷位置のサンプル容器を示す、図5と同様の図である。
【図7】把捉デバイスが、サンプル容器を引き出すために、チェンバー内に進入するところを示す、図6と同様の図である。
【図8】サンプル容器を下から押し上げ、該サンプル容器をローターから十分に突出させ、それによって、把捉デバイスが該サンプル容器を把捉し、それをチェンバーから引き出すことを可能とする持ち上げデバイスを示す、図7と同様の図である。
【図9】チェンバーから完全に引き出されたサンプル容器を示す、図8と同様の図である。
【図10】図4と同様の斜視図である。
【図11】チェンバーを冷却するための、エアークーラー(ブローワー)を示す、本発明によるデバイスの、一部を切り欠いた側面図である。
【図12】熱サイクルを実行する例示の方法のフローチャートである。
【図13】熱サイクルを実行する例示の方法の、別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ここで図面が参照されるが、図面全体を通じて、同じ参照数字は、類似部品を参照する。
【0051】
先ず図1を参照すると、複数のサンプルに熱サイクルを適用するためのデバイス11が示される。
【0052】
この特定の実施例では、デバイス11は、複数のサンプル容器(これについてはさらに詳しく後述する)を収容するためのもので、かつ、頂上カバー5を有する、チェンバー1を含む。チェンバー1は、選択的に開放可能なポート2を有し、このポート2を通じて、熱サイクル適用時、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、チェンバー1へ導入する、またはチェンバー1から引き出すことができる。
【0053】
特定の一実施例では、一つ以上の選ばれたサンプル容器の導入または引き出しは、熱サイクル時において、複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し最小の影響しか及ぼさない。さらに、ポート2は、開放位置にあっても、チェンバー1が周囲雰囲気に対し実質的に開放されることがないようなサイズとすることができる。
【0054】
ここで図1から11を参照すると、複数のサンプル容器(図示せず)を収容するためのチェンバー1が提示される。チェンバー1は、選択的に開放可能なポート2を含み、該ポートは、管状で、この特定の例では、エッペンドルフ管などであってもよいサンプル容器4を、チェンバーへ導入する、またはチェンバーから引き出すための把捉デバイス3を受容し、チェンバーへの導入またはチェンバーからの引き出しは、熱サイクルの適用を受ける複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し実質的に影響を及ぼすことなく、および/または、ごく僅少の影響しか及ぼすことなく行われる。
【0055】
通常、選択的に開放可能なポート2は、図2においてもっともよく示されるように、開放位置にあるとき、チェンバー1が、周辺雰囲気に対し実質的に開放されることがないようなサイズを有していればよい。したがって、ポート2を開放することによりチェンバー1から加熱または冷却空気の損失が仮にあるとしても、それは僅かであるか、または無視できるほどで、そのため、既存のサンプル容器に対しては仮にあるとしても最小の影響しか及ぼさない。さらに、選択的に開放可能なポート2は、把捉デバイス3が、サンプル容器4を、チェンバーへ導入する、または、チェンバーから引き出すのに必要な最短時間しかその開放位置にないように適合される。
【0056】
図3は、見やすくするために、チェンバー1の頂上カバー5を取り去ったチェンバー1の平面図である。ポート2は、その開放位置が示され、チェンバー1の冷却ポート6は、その閉鎖位置が示される。図4は、図3と同様の図であるが、ただし、閉鎖位置のポート2、および、開放位置の、チェンバー1の冷却ポート6を示す。
【0057】
図8においてもっとも良く示されるように、該把捉デバイス3は、典型的には、流体のチェンバーへの浸入またはチェンバーからの浸出を最小とするために、開放位置のポート2によって画成される開口部と、緊密な適合関係を持つことができるようなサイズおよび形状を有している。図6から9においてもっとも良く示されるように、把捉デバイス3は、サンプル容器4に対して実質的に軸方向の運動においてサンプル容器4を導入するまたは引き出す。したがって、把捉デバイス3は、管などのサンプル容器の辺縁と嵌合してもよい。
【0058】
さらに、把捉デバイスは、該把捉デバイス3が、開放位置のポートによって定められる開口部と、緊密な適合関係を持つことができるようなサイズおよび形状を有していてもよい。特定の一実施態様によれば、ポート2の外部辺縁は、ラバーシールを有しており、把捉デバイス3の外径は、把捉デバイス3が少なくとも部分的に該ポート中に挿入されているとき、気密シールを実現するようなサイズを有している。
【0059】
把捉デバイス3はさらにフランジを含んでいてもよく、その場合、特定の一実施態様では、このフランジは、把捉デバイス3が少なくとも部分的に該ポート中に挿入されているとき、ポート2に密着して封印するような形状を持つ。ただし、フランジがシールを実現することは不要で、ただポート2と嵌合することが可能であればよい。さらに、把捉デバイス3は、実質的に円筒形であってもよく、その場合、ポート2は、把捉デバイス3の挿入および引き出しを可能とするように円形開口部を有する。
【0060】
特に、サンプル容器を導入する、または引き出すためには、他にも、様々な形の把捉デバイスを使用することが可能であることが了解されよう。そのようなものとしては、種々の力を用いて、サンプル容器をチェンバーから引っ張り出す、および/またはチェンバー内に押し込む真空または磁気デバイスが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0061】
チェンバー1において均一な熱サイクルを適用できるサンプル容器は、いずれのものも、チェンバー1内に回転可能的に登載される回転性円盤の周辺に配置される開口部7の中に保持されてもよい。チェンバーが回転性円盤を含む場合、チェンバーはさらに、回転性円盤8を駆動し、それによって、サイクル適用時、反応混合物をサンプル容器4の基部に維持するように、サンプル容器に遠心力を印加するための駆動手段9を含む。
【0062】
ここで図5から9を参照すると、図5は、本明細書に記載されるデバイスの、一部を切り欠いた前面斜視図であり、把捉デバイス3がサンプル容器4を回転性円盤8の中に導入するところを示す。図6は、図5と同様の図であるが、複数の熱サイクルを既に受け、引き出されるのを待つ、回転性円盤8の脱負荷位置におけるサンプル容器4を示す。図7は、図6と同様の図であるが、把捉デバイス3が、サンプル容器4を引き出すために、開放ポート2を通じてチェンバー1の中に進入するところを示す。図8は、図7と同様の図であるが、「押しピン」の形状を持ち、図9においてもっとも示されるように、サンプル容器4を下から押すことによって該サンプル容器4が回転性円盤8から十分に突出するようにし把捉デバイス3が該サンプル容器4を把捉しチェンバー1から引き出すことを可能にする、持ち上げデバイス10を示す。
【0063】
一実施態様では、PCRサンプルは、油状皮膜を持つサンプル容器4に負荷され、ホットプレートにおいて95℃で2分加熱されて酵素を活性化し、該サンプルを変性する。次に、ローターは一時的に回転を停止され、一方、チェンバーは40から60℃の温度に置かれる。次に、選択的に開放可能なポートが、ローター8へのアクセスのために開放され、サンプル容器4が、把捉デバイス3によって、回転性円盤8に導入される。把捉デバイス3は、引き戻され、ポート2は閉鎖され、回転性円盤8は再びその指定速度で回転される。さらに、サンプル容器4の中で起こる反応も連続的に分析してもよい。サンプル容器4の導入の時点で、必要数の熱サイクルを受けた、既存のサンプル容器があるならば、それらを引き出すことができる。
【0064】
前述のデバイスは、熱サイクルプロセス/法を実行するのに使用することができることは了解されるであろう。熱サイクルの例示プロセスを図12に示す。この特定の実施例では、図12の工程20に示すように、複数のサンプルが熱サイクルを適用される一方で、選ばれたサンプル容器を、該デバイスに導入する、または該デバイスから引き出すことが可能である(工程22において)。
【0065】
別の実施例によれば、熱サイクル適用法は:複数のサンプル容器において熱サイクルを開始する工程、選択的に開放可能なポート2を開放し、熱サイクル適用時、複数のサンプル容器の温度または熱均一性に実質的に影響を及ぼさずに、サンプル容器4を、チェンバーへ導入するか、またはチェンバーから引き出す工程を含むことができる。
【0066】
さらに別の実施例としては、熱サイクル適用法はさらに:複数のサンプル容器において熱サイクルを開始する工程、必要に応じて熱サイクルを一時的に停止し、温度を維持する工程、選択的に開放可能なポート2を開放する工程、および、該開放ポート2を通じて、サンプル容器4を導入するまたは引き出す工程、を含むこともできる。次に、ポート2は閉鎖され、熱サイクルは継続され(一時的に停止された場合)、その場合、複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し実質的に影響を及ぼさずに、サンプル容器4は導入されるまたは引き出される。
【0067】
さらに、熱サイクル適用法は:複数のサンプル容器において熱サイクルを開始する工程、必要に応じて熱サイクルを一時的に停止し、温度を維持する工程、円盤8の回転を止める工程、及び引き出しを要するサンプル容器、または、サンプル容器4を受容するための、円盤8上の空いた位置を指示する工程、を含むことができる。次に、選択的に開放可能なポート2が開放され、該開放ポートを通じてサンプル容器4が導入されまたは引き出され、次いで、ポートは閉鎖される。次に、回転性円盤8の回転が、一時的に停止された場合の熱サイクルと同様に、継続され、ここで、複数のサンプル容器の温度またな熱均一性に対して実質的に影響を及ぼさずにサンプル容器4が導入されるまたは引き出される。この特定の実施例のフローチャートを図13に示す。
【0068】
さらに別の実施例では、デバイスにおける熱サイクル適用法が提供される。この方法では、デバイスは、回転性円盤の上に支持され、かつ、選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて実質的に均一に熱サイクルを適用される複数のサンプル容器を含むことが可能であり、該デバイスにおいて、回転性円盤は、チェンバーの中で回転させられる。本法は、必要に応じて熱サイクルを一時的に停止し、温度を維持する工程;円盤の回転を止め、引き出しを要するサンプル容器か、または、サンプル容器を受容するための円盤上の空いた位置を指示する工程;選択的に開放可能なポートを開放する工程;該開放ポートを通じて、一つ以上の選ばれたサンプル容器を導入するまたは引き出す工程;該ポートを閉鎖する工程;円盤の回転を継続する工程;および、熱サイクルを、一時的に停止された場合には、継続する工程、を含むことができ、本法では、複数のサンプル容器の温度またな熱均一性に対して実質的に影響を及ぼさないで、および/または、最小の影響しか及ぼさないで、サンプル容器が導入されるまたは引き出される。
【0069】
さらに別の実施例について、デバイスにおける熱サイクル適用法が提供される。この方法では、デバイスは、回転性円盤の上に支持され、かつ、選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて実質的に均一に熱サイクルを適用される複数のサンプル容器を含み、回転性円盤は、チェンバーの中で回転させられる。本法は:必要に応じて熱サイクルを一時的に停止し、温度を維持する工程;円盤の回転を止め、引き出しを要するサンプル容器か、または、サンプル容器を受容するための円盤上の空いた位置を指示する工程;選択的に開放可能なポートを開放する工程;該開放ポートを通じて、サンプル容器を導入するまたは引き出す工程;該ポートを閉鎖する工程;円盤の回転を継続する工程;および、熱サイクルを、一時的に停止された場合には、継続する工程、を含むことができ、本法では、複数のサンプル容器の温度またな熱均一性に対して実質的に影響を及ぼさないで、および/または、いずれのものであれ最小の影響しか及ぼさないで、サンプル容器が導入されるまたは引き出される。
【0070】
本明細書に記載される方法は、サンプル容器に含まれるサンプルを熱的に前処理する前工程を含んでもよいことが了解されるであろう。さらに、サンプルは、90℃で2分熱的に処理されてもよく、サンプルはさらに、蒸発を抑えるために油状皮膜を含んでもよい。
【0071】
サンプル容器は、チェンバーが熱サイクル反応の任意の所望の段階にあるとき、導入するまたは引き出してもよいことが了解されるであろう。例えば、チェンバーが約40から60℃の温度にあるときに、サンプル容器を導入または引き出してもよい。熱サイクルの数は、ケースバイケースで決めてよく、例示として挙げれば、約20と50の間であってもよい。さらに、サンプル容器の中で起こる反応は、熱サイクル適用時に連続的に分析してもよく、このような分析が、本明細書に記載されるデバイスおよび方法を採用することによって損なわれることはないことが了解されるであろう。さらに、図面を参照すると、サンプル容器は、チェンバーからの引き出し時、何らかの適切な手段によって少なくとも部分的に持ち上げられてもよいことが了解されるであろう。
【0072】
本明細書で用いる「サンプル容器」とは、単一サンプルを含む、保持するなどに適応される容器であれば、どのような形の容器も意味する。例えば、前述したように、サンプル容器は、典型的には、管など、例えば、エッペンドルフ管である。サンプル容器は、適切なものであればいずれの材料から構成されていてもよく、例えば、ガラスおよび/またはプラスチックでもよい。熱サイクル用途のためには、通常、管が、容器内の効率的熱伝導を可能とする点で好適であり、サンプルのリアルタイム分析を実行するのに十分な光学的明度を有しうる。サンプル容器は、当業者には了解されるように、適切なものであれば、いずれのサイズのものであってもよい。
【0073】
典型的には、チェンバーの開放ポートは、管を、チェンバーに負荷し、かつ、チェンバーから出すための把捉デバイスと協力するように構成され、サンプル容器の最大径と同様のサイズとなるように適合されてもよい。
【0074】
複数のサンプル容器を、同時に、チェンバーへ導入する、またはチェンバーから引き出してもよい。このようなサンプル容器は、何らかの適切な手段によって物理的に接続されてもよい。例えば、複数のサンプル容器が、クリップの一部を形成していてもよい。接続された複数のサンプル容器は、任意の数の、例えば、2、3、4、5、6、8、または10本の、個別サンプル容器を含んでもよい。
【0075】
さらに、本明細書に記載されるように、選択的に開放可能なポートのサイズは、一実施態様によれば、チェンバーにおける複数のサンプルの温度または熱均一性に対する影響が最小化されるようなものである。ポートの例示サイズは、20から30 mmの開口を含むことが可能である。さらに、さらに別の実施例によれば、選ばれたサンプル容器を挿入/引き出すのにかかる時間は、1秒から1分の間の任意の時間であればよいことが了解されるであろう。
【0076】
さらにまた、熱サイクル適用のための前述の方法およびデバイスは、バッチ操作方式、または連続操作方式のために使用することができることが了解されるであろう。
【0077】
本発明はこれまで特異的実施例を参照しながら説明されてきたわけであるが、当業者であれば、本発明は、外にもたくさんの形において具体化してよいことが了解されるであろう。特に、前述の各種実施例のいずれか一つの特徴を、他の記載実施例のいずれかと何らかの組み合わせとして提供することも可能である。
【0078】
操作実施例、または別様に指示される場合は別として、ここで使用される成分または反応条件の量を表現する数字は皆、全ての事例において、「約」という用語によって修飾されるものと理解しなければならない。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではないことが意図される。
【0079】
「ある」および「一つの」という品詞は、本明細書では、一つ、または一を超える数の(すなわち、少なくとも一つの)、該品詞の文法的目的語を指すのに使用される。例として挙げると、「ある要素」とは、一要素、または一つを超える要素を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサンプルの熱サイクルのためのデバイスであって、前記デバイスは、複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを含み、前記チェンバーは、選択的に開放することが可能なポートを有し、前記デバイスでは、熱サイクル適用時、前記ポートを通じて、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、チェンバーに導入する、またはチェンバーから引き出すことができるデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、前記の一つ以上の選ばれたサンプル容器の導入または引き出しが、熱サイクル適用時、複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し、ごく僅かな影響しか及ぼさないデバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデバイスであって、前記ポートが、開放位置において、前記チェンバーが周囲の雰囲気に対して実質的に開放されることがないようなサイズを有しているデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、前記の開放位置のポートが開口部を画成し、前記開口部は、前記チェンバーの内部表面積に比べると相対的に小さいデバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のデバイスであって、前記の一つ以上の選ばれたサンプル容器を導入するまたは引き出すために把捉デバイスが使用されるデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイスであって、前記把捉デバイスが前記の一つ以上のサンプル容器を導入できるまたは引き出せるようにするために、前記ポートが、ごく短時間、開放位置にあるデバイス。
【請求項7】
請求項5または6に記載のデバイスであって、前記把捉デバイスが開放位置の前記ポートによって画成される開口部と緊密な適合関係を持つことができるようなサイズおよび形状を、前記把捉デバイスが有しているデバイス。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のデバイスであって、前記ポートの外部辺縁が、ラバーシールを有し、前記把捉デバイスの外径が、前記把捉デバイスが少なくとも部分的にポート中に挿入されているとき、気密シールを実現するようなサイズであるデバイス。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載のデバイスであって、前記把捉デバイスがフランジを含み、前記フランジが、前記把捉デバイスが少なくとも部分的に挿入されているとき、前記ポートに密着して気密となるような形状を持っているデバイス。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載のデバイスであって、前記把捉デバイスが実質的に円筒形であり、前記ポートは円形開口部を有するデバイス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のデバイスであって、前記の複数のサンプル容器が、前記チェンバーに収容されるプラットフォームの上に支持されているデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスであって、前記プラットフォームが、前記チェンバー内に回転可能的に登載される回転性円盤であるデバイス。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のデバイスであって、前記の熱サイクル適用が核酸増幅用に構成されるデバイス。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のデバイスであって、前記の複数のサンプル容器が、比較的速やかな熱平衡のために、また、反応混合物の検出を可能とするように構成されるデバイス。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のデバイスであって、前記の複数のサンプル容器が、ガラスまたはプラスチック材料、またはそれらの組み合わせから形成されているデバイス。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のデバイスであって、複数の接続されたサンプル容器が、同時に、前記チェンバーへ導入されてもよい、または、前記チェンバーから引き出されてもよいデバイス。
【請求項17】
請求項16に記載のデバイスであって、前記の複数の接続されたサンプル容器がクリップの一部を形成しているデバイス。
【請求項18】
請求項16または17に記載のデバイスであって、前記の複数の接続されたサンプル容器が5つの個別サンプル容器を含んでいるデバイス。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のデバイスであって、前記の選ばれた容器を少なくとも部分的に持ち上げて、把捉デバイスが、前記の選ばれた容器を把捉することを可能とする持ち上げデバイスを含むデバイス。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のデバイスであって、前記サンプル容器が管であるデバイス。
【請求項21】
一つ以上の選ばれたサンプル容器を、デバイスのチェンバー内に導入するか、または、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、デバイスのチェンバーから引き出すための方法であって、
複数のサンプル容器は、実質的に均一に熱サイクルを適用され、前記チェンバーは選択的に開放可能なポートを持ち、前記方法は:
a)必要に応じて一時的に前記熱サイクルを停止し、温度を維持する工程;
b)前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;
c)前記の開放されたポートを通じて、前記の選ばれたサンプル容器を、前記チェンバーに導入する、または前記チェンバーから引き出す工程;
d)前記ポートを閉鎖する工程;および、
e)一時的に停止されていた場合は、前記の熱サイクルを継続する工程、
を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記の選ばれたサンプル容器が、熱サイクルの適用を受ける複数のサンプル容器の温度または熱均一性に対し実質的に影響を及ぼすことなく、導入されるまたは引き出される方法。
【請求項23】
デバイス中の複数のサンプルに対し熱サイクルを実行するための方法であって、前記デバイスは、複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを有し、前記チェンバーは、選択的に開放が可能なポートを有し、前記方法は、熱サイクルの適用時、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、前記ポートを通じて、前記チェンバーに導入する、または前記チェンバーから引き出す工程を含む方法。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれかに記載の方法であって、前記方法が、請求項1〜20のいずれかまたは組み合わせのデバイスによって実施される方法。
【請求項25】
複数サンプルについて連続的熱サイクルを実行するための方法であって、前記方法が:
a)複数のサンプル容器をデバイス内に導入する工程で、前記デバイスが前記の複数のサンプル容器を収容するためのチェンバーを有し、前記チェンバーが選択的に開放可能なポートを有する工程;
b)熱サイクルを開始する工程;および、
c)熱サイクルの適用時、一つ以上の選ばれたサンプル容器を、前記ポートを通じて、前記チェンバーに導入する、または前記チェンバーから引き出す工程、
を含む方法。
【請求項26】
選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて実質的に均一に熱サイクルが適用される複数のサンプルの熱サイクルを実行するための方法であって、前記方法が:
a)前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;および、
b) 前記チェンバーの温度または熱均一性に及ぼす影響が最小となるように、熱サイクルの適用時、一つ以上のサンプル容器を、前記チェンバーに導入する、または前記チェンバーから引き出す工程
を含む方法。
【請求項27】
選択的に開放可能なポートを持つチェンバーにおいて、実質的に均一に熱サイクルを適用される複数のサンプルに対して熱サイクルを実行するための方法であって、前記方法が:
a)必要に応じて前記熱サイクルを一時的に停止し、前記チェンバーの温度を維持する工程;
b)前記の選択的に開放可能なポートを開放する工程;
c)一つ以上のサンプル容器を、前記の開放されたポートを通じて、前記チェンバーに導入する、または前記チェンバーから引き出す工程;
d)前記ポートを閉鎖する工程、および、
e)一時的に停止された場合は前記熱サイクルを継続する工程を含み、
一つ以上のサンプル容器の、前記チェンバーへの導入、または前記チェンバーからの引き出しが、前記の複数サンプルの温度または熱均一性に対し最小の影響しか及ぼさない方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−537204(P2010−537204A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522131(P2010−522131)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001272
【国際公開番号】WO2009/026639
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509245728)コーベット リサーチ プロプライエタリー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】