遺伝子制御ネットワーク解析装置、遺伝子制御ネットワーク解析方法及び遺伝子制御ネットワーク解析プログラム
【課題】信頼性を向上し得る遺伝子制御ネットワーク解析装置、遺伝子制御ネットワーク解析方法及び遺伝子制御ネットワーク解析プログラムを提案する。
【解決手段】標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得し、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する。
【解決手段】標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得し、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子制御ネットワーク解析装置、遺伝子制御ネットワーク解析方法及び遺伝子制御ネットワーク解析プログラムに関し、遺伝子解析技術などの分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、NATs(Natural Antisense Transcripts)と呼ばれるコンセプトがある(例えば非特許文献1参照)。このNATsは、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域との相補配列がオーバーラップする部分をもち、一方の1本鎖DNAのコーディング領域の発現が、他方の1本鎖DNAのコーディング領域の発現によって抑制されるというものである。非特許文献1では、ケースA〜Dとして定義されている。
【非特許文献1】Michal Lapidot & Yitzhak Pilpel(Weizmann Institute ofSience,Rehovot,Israel)、Genome-wide natural antisense transcription:coupling itsregulation to its different regulatory mechanisms、 EMBO reports、 EUROPEANMOLECULAR BIOLOGY ORGANIZATION、Submitted 28 March 2006;accepted 18 October 2006、p.1216-1222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記非特許文献では、ケースCは実証されておらず仮説として存在するものである。また、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域との相補配列がオーバーラップする部分の発現量が示してあるが、これは推測に過ぎない。
【0004】
相補配列部分における遺伝子発現量から、遺伝子の発現と抑制との制御に関するネットワークを構築することができれば、該ネットワークの信頼性が向上するものと考えられる。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、信頼性を向上し得る遺伝子制御ネットワーク解析装置、遺伝子制御ネットワーク解析方法及び遺伝子制御ネットワーク解析プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明は、遺伝子制御ネットワーク解析装置であって、標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得部と、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類部とを有する。
【0007】
また本発明は、遺伝子制御ネットワーク解析方法であって、標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得ステップと、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類ステップとを有する。
【0008】
また本発明は、遺伝子制御ネットワーク解析プログラムであって、コンピュータに対して、標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得すること、 標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類することを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、構造レベルで発現抑制関係をもつ可能性を有する遺伝子(相補配列となる遺伝子)について、その遺伝子における実際の発現量の挙動パターンと、同じ染色体でのオーバーラップの有無とから、実際の機序レベルで発現抑制メカニズムの種を分類することができる。
【0010】
このように本発明は、発現と抑制の相互関係を実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析することができるため、遺伝子制御ネットワーク解析に関して信頼性を向上することができる。
【0011】
なお、引用文献1に記載のNATsは、特定の生物の特定部分だけ実証されたものであるが、この実証されたメカニズムが多岐にわたる各種生物にもあるのか、またある場合にはどの細胞のどの部分にあるのかということを確実に情報として得ることができるようになる点で、実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析できるということは非常に有用となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面について本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)遺伝子制御ネットワーク解析システムの全体構成
図1において、本実施の形態による遺伝子制御ネットワーク解析システム1の全体構成を示す。この遺伝子制御ネットワーク解析システム1は、ゲノムサーバ2と、蛍光強度測定装置3と、遺伝子制御ネットワーク解析装置4とによって構成される。
【0014】
ゲノムサーバ2には、真核生物又は原核生物における各種生物のゲノムに関するデータベースが保持される。ゲノムサーバ2は、インターネット等のコンピュータネットワークを通じてアクセスされる装置の要求に応じたゲノム情報を、該装置に提供し得るようになされている。
【0015】
蛍光強度測定装置3は、測定ステージを有し、該測定ステージには核酸チップCPがセットされる。核酸チップCPは、標的生物における全遺伝子に対応する核酸プローブが配される基盤である。
【0016】
この核酸チップCPでは、例えば図2に示すように、核酸プローブに(長波線で示す部分)対して、標的生物の細胞から抽出され、標識物質(黒丸で示す部分)を付加された標的核酸(短波線で示す部分)が与えられ、相補鎖の形成反応(以下、これをハイブリダイゼーションとも呼ぶ)が行われる。
【0017】
核酸プローブは、特定の遺伝子を検出するための探り針(検出子)として機能する1本鎖のヌクレオチドである。一般に、核酸プローブは、特定の遺伝子全体の配列に相補対となるヌクレオチドではなく、当該遺伝子において特異的とされる部分配列を含む複数のプローブ断片(以下、これをプローブセットとも呼ぶ)としてデザインされる。具体的には、18〜60[mer]程度のDNA(deoxyribonucleic acid) 断片、cDNA(complementary DNA) 断片又はPNA(peptide nucleic acid)などにデザインされる。
【0018】
一方、標的核酸は、核酸プローブとのハイブリダイゼーション対象とされる1本鎖のヌクレオチドである。一般に、標的核酸は、mRNA(pre-mRNAを含む)又はその断片そのものが用いられるのではなく、該mRNA又はその断片を逆転写酵素により変換したものが用いられる。
【0019】
他方、標識物質は、一般に、ビオチンまたはFITC(fluorescein isothiocyanate)等の蛍光色素とされるが、これに限定されるものではなく、例えば放射性同位元素等としてもよい。
【0020】
蛍光強度測定装置3(図1)は、測定指令が与えられた場合、測定ステージにセットされる核酸チップCPに対して、標的核酸に付加される標識物質の励起光を照射する。図2に示したように、核酸チップCPの核酸プローブが標的核酸と相補鎖を形成している場合、該標的核酸に付加された標識物質が励起光により発光する。この発光量は、標的核酸と核酸プローブとの相補鎖の形成量と相関があり、該核酸プローブと相補鎖が形成される標的核酸の量が多いほど発光量が強くなる。
【0021】
蛍光強度測定装置3は、励起光を照射した核酸チップCPから、該核酸チップに配される全遺伝子に対応する核酸プローブでの発光量をセンサCEにより読み取る。そして蛍光強度測定装置3は、例えば図3に示すように、読み取った各遺伝子の発光量EMi(i=1、2、……、m)に遺伝子固有の識別子giを割り当て、これら組み合わせに読取時刻やチップ番号等の付加情報TMを付加したデータ(以下、これを測定データと呼ぶ)を出力するようになされている。
【0022】
遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、ゲノムサーバ2からゲノム情報を取得し、蛍光強度測定装置3から相補鎖形成量データを取得する。そして遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、これらゲノム情報と、相補鎖形成量データとを用いて、標的細胞において相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類するようになされている。
【0023】
(2)遺伝子制御ネットワーク解析装置の構成
次に、遺伝子制御ネットワーク解析装置4の構成について説明する。この遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、図4に示すように、該遺伝子制御ネットワーク解析装置4全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)10に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。
【0024】
具体的にはROM(Read Only Memory)11、CPU10のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)12、操作部13、記憶部14、インターフェース15及び表示部16がバス17を介して接続される。
【0025】
ROM11には、遺伝子制御ネットワーク解析処理を実行するためのプログラム(以下、これを遺伝子制御ネットワーク解析プログラムとも呼ぶ)が格納され、またインターフェイス15は、ゲノムサーバ2及び蛍光強度測定装置3に対して個々に設けられる。
【0026】
CPU10は、ROM11に格納された遺伝子制御ネットワーク解析プログラムをRAM12に展開した場合、該遺伝子制御ネットワーク解析プログラムに基づいて記憶部14、インターフェース15及び表示部16を適宜制御し、遺伝子制御ネットワーク解析処理を実行するようになされている。
【0027】
(3)遺伝子制御ネットワーク解析プログラムに基づくCPUの処理内容
遺伝子制御ネットワーク解析プログラムをRAM12に展開したCPU10は、機能的には、図4に示したように、遺伝子発現量取得部21、ゲノム情報取得部22、発現量読出部23、バイナリ化部24及び分類部25の各処理部に分類することができる。
【0028】
遺伝子発現量取得部21は、例えば図5に示すように、継代した標的細胞から所定期間ごとに抽出される標的核酸と、核酸チップCPj(j=1、2、……、n)における核酸プローブとの相補鎖の形成量に基づいて、標的生物における細胞で発現される遺伝子ごとに測定時間t1〜tn当たりの遺伝子発現量GE1〜GEmを取得する。
【0029】
ここで、この遺伝子発現量取得部21における処理の具体例を1つ挙げる。
【0030】
遺伝子発現量取得部21は、ターゲットとされる細胞の生物種を、操作部13を用いて入力させ、該入力された生物種に応じた核酸チップの会社名及びその製品番号を内部又はインターネット上のデータベースから検索する。
【0031】
そして遺伝子発現量取得部21は、検索した核酸チップの会社名及びその製品番号を表示部16に提示するとともに、標的細胞におけるmRNAをある時間間隔で測定すべきこと及びその測定条件を提示する。
【0032】
具体的には、継代した標的細胞から標的核酸を抽出すべき時間間隔や、各時間帯で抽出される標的核酸を核酸チップの核酸プローブとハイブリダイゼーションする際に守るべき温度や湿度等の各種環境条件の範囲などの測定条件を提示する。このように遺伝子発現量取得部21は、測定上の条件を具体的に提示することで測定上のばらつきを抑えさせ、測定精度を高め得るようになされている。
【0033】
また遺伝子発現量取得部21は、核酸チップの会社名及びその製品番号等を提示した時点から蛍光強度測定装置3から出力される測定データの待ち受けを開始する。そして遺伝子発現量取得部21は、測定データを受けるごとに、該測定データに示される読取時刻TM(図3)と、その1つ前に読み取られた測定データに示される読取時刻TMとの差を算出する。
【0034】
この算出結果が、測定条件とされる時間間隔を基準として設定される上限閾値と下限閾値との許容範囲外となる場合、遺伝子発現量取得部21は、最初から測定しなおすべき旨を表示部16を用いて視覚的に通知する。これにより遺伝子発現量取得部21は、標的細胞における標的核酸量の推移を正確に取得し得るようになされている。なお、測定条件とされる時間間隔が狭いほど、標的生物の細胞で発現される遺伝子発現量の推移が詳細になることは理解できるであろう。
【0035】
一方、算出結果が許容範囲内となる場合、遺伝子発現量取得部21は、測定データに含まれる各遺伝子の発光量を遺伝子発現量に変換した後、該測定データを記憶部14に記憶させる。
【0036】
遺伝子発現量は、標的核酸と核酸プローブとの相補鎖の形成量に相関する発光量から、統計学的手法によりバックグラウンド(局所的な物理的影響)等を排除したものであり、標的細胞内において発現している遺伝子を示す量として信頼性が高いものとなる。
【0037】
例えば、Affymetrix社のMAS(Micro Array Suite)と呼ばれるデータ解析ソフトウェアを用いた場合、発光量の割合として遺伝子発現量が算出される。
【0038】
ちなみに、このMASのバージョン5を、ある1つの遺伝子に対応する核酸プローブに着目して簡単に説明する。MAS5では、(1)プローブセット(当該遺伝子において特異的とされる塩基配列を含む複数のプローブ断片)での発光量から、局所的な物理的影響(バックグランド)が排除される。(2)各プローブ断片(パーフェクトマッチプローブと呼ばれる)の発光量が、当該プローブ断片と対応する断片コントロール(ミスマッチプローブと呼ばれる)との差に応じて適宜補正される。(3)各プローブ断片の発光量が対数変換により遺伝子発現量として算出される。
【0039】
I.S.Kohane/A.T.Kho/A.J.Butte 星田有人著、統合ゲノミクスのためのマイクロアレイデータアナリシス、シュプリンガー・ジャパン出版、p.58−74を参照されたい。
【0040】
以上のように、遺伝子発現量取得部21における処理の具体例を挙げたが、該処理は、この例に限定されるものではない。
【0041】
ゲノム情報取得部22は、所定の更新期間ごとに、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースを更新する。
【0042】
このcis−NATsデータベースは、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域とが相補配列となり、かつその配列の一部がオーバーラップする遺伝子を、生物及び細胞の種別単位で対応付けしたものである。また、trans−NATsデータベースは、ある染色体上のコーディング領域と、別の染色体上のコーディング領域とで相補配列となる遺伝子を、生物及び細胞の種別単位で対応付けしたものである。
【0043】
ここで、このゲノム情報取得部22における処理の具体例を1つ挙げる。
【0044】
ゲノム情報取得部22は、更新期間を経過した場合、インターフェース15を用いてゲノムサーバ2へ自動的にアクセスし、該ゲノムサーバ2と相互認証する。そしてゲノム情報取得部22は、ゲノムサーバ2との相互認証が成立した場合、該ゲノムサーバ2に対してcis−NATsデータベース又はtrans−NATsデータベースが更新されたか否かを確認する。
【0045】
ここでゲノム情報取得部22は、更新されたことを確認した場合、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベースと、trans−NATsデータベースとの一方又は双方を更新する。
【0046】
ちなみに、このときゲノム情報取得部22は、操作部13により指定されたゲノム情報があった場合、該ゲノム情報を記憶部14に記憶する。ゲノム情報としては、例えば標的生物において発現され得る全ての成熟mRNA及びそれらの前駆mRNA(pre−mRNA)の塩基配列や、イントロン及びエキソン等がある。
【0047】
以上のように、ゲノム情報取得部22における処理の具体例を挙げたが、該処理は、この例に限定されるものではない。
【0048】
発現量読出部23は、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースにおける相補配列となる遺伝子のすべてを認識する。ちなみに、cis−NATsデータベースにおける遺伝子は、上述したように、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域とがオーバーラップする状態で相補配列となるものである。また、trans−NATsデータベースにおける遺伝子は、ある染色体上のコーディング領域と、別の染色体上のコーディング領域とで相補配列となるものである。
【0049】
そして発現量読出部23は、各相補配列の遺伝子に対応する測定時間t1〜tnごとの遺伝子発現量GE(図5)を示すデータを記憶部14から読み出し、当該データをバイナリ化部24に与える。
【0050】
なお、発現量読出部23は、各相補配列に対応する測定時間t1〜tnごとの遺伝子発現量GE(図5)を示すデータが記憶部14に記憶されていない場合、その旨を、表示部16を用いて視覚的に通知するようになされている。
【0051】
バイナリ化部24は、発現量読出部23から、各相補配列に対応する測定時間t1〜tnごとの遺伝子発現量GE1〜GEm(図5)を示すデータが与えられた場合、当該データを用いて、相補配列の各配列における遺伝子発現量の挙動をバイナリ化する。
【0052】
すなわち、バイナリ化部24は、遺伝子発現量GEごとに、観測点tnの時間経過方向における正又は負の差をとってバイナリ列(以下、これを発現量バイナリ列とも呼ぶ)を生成する。各観測点tnにおける遺伝子発現量GEが図5の場合、発現量バイナリ列は、図6に示すようになる。
【0053】
ちなみに、図6における各遺伝子発現量GEの値は便宜的に示したものであり、実際の数値ではない。なお、遺伝子発現量のバイナリ化に関しては、既に本発明者らによって提案されており、詳細は2008−213112を参照されたい。
【0054】
ここで、図7又は図8に示すように、ある配列の遺伝子発現量GEXと、該配列に相補となる配列の遺伝子発現量GEYとにおける挙動が同一または略同一にある場合、図9に示すように、発現量バイナリ列における正負のパターンは同一となる。
【0055】
一方、図10又は図11に示すように、ある配列の遺伝子発現量GEXと、該配列に相補となる配列の遺伝子発現量GEYとにおける挙動が一定の逆相関関係またはおおよその逆相関関係にある場合、図12に示すように、発現量バイナリ列における正負のパターンは反対となる。
【0056】
分類部25は、標的細胞において相補配列となる遺伝子に対応する発現量バイナリ列と、該相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する。
【0057】
すなわち分類部25は、相補配列の各配列に対応する発現量バイナリ列の正負パターンが同一又は反対となる場合、当該相補配列の遺伝子間には、発現と抑制の作用相関があるものとして検出する。
【0058】
そして分類部25は、作用相関があるとした相補配列の遺伝子が同じ染色体上の一部でオーバーラップするものであるか否かを、cisNATsデータベース及びtransNATsデータベースに基づいて調べる。
【0059】
ここで、発現と抑制の作用相関にある相補配列が「同じ染色体上でオーバーラップ」し、該相補配列における発現量バイナリ列が「反対」の正負パターンである場合、このことは、上記非特許文献におけるケースAまたはケースDのcisNATsに相当することを意味する。この場合、分類部25は、相補配列がケースAまたはケースDのメカニズムの関係にあることを示す情報を生成し、これを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録する。
【0060】
また、発現と抑制の作用相関にある相補配列が「同じ染色体上でオーバーラップ」し、該相補配列における発現量バイナリ列が「同一」の正負パターンである場合、このことは、上記非特許文献におけるケースCのcisNATsに相当することを意味する。この場合、分類部25は、相補配列がケースCのメカニズムの関係にあることを示す情報を生成し、これを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録する。
【0061】
さらに、発現と抑制の作用相関にある相補配列が「オーバーラップ」しない場合、このことは、該相補配列における発現量バイナリ列が「同一」又は「反対」の正負パターンのいずれであっても、transNATsに相当することを意味する。この場合、分類部25は、相補配列がtransNATsのメカニズムの関係にあることを示す情報を生成し、これを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録する。
【0062】
具体的にこの遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースには、例えば、標的生物の名称、相補となる各配列に関する情報(当該配列をもつ染色体番号や、当該配列部分における遺伝子名や、当該配列における発現量バイナリ列等)、遺伝子制御メカニズムの種(ケースA、ケースC、transNATs)に割り当てられるコード(識別子)などとして登録される。ちなみに、名称には通称又は略称が含まれる。
【0063】
このようにして分類部25は、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を、当該相補配列における「同一染色体上でのオーバーラップの有無」と、「遺伝子発現量の簡易的な挙動パターン」とに応じて分類することができる。
【0064】
したがって、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、実証済みの遺伝子制御メカニズム(ケースAまたはケースDのcisNATs)と、仮説段階の遺伝子制御メカニズム(ケースCのcisNATs又はtransNATs)とのうち、該仮説段階の遺伝子制御メカニズムを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースから抹消する等といったように、その後のデータベースの編集を簡易化できる。
【0065】
また所定の表示ソフトを用いて、例えば図13に示すように、データベースに登録された遺伝子の相互作用関係を表示部16に表示する場合、当該発現と抑制の作用相関が実証段階にあるものであるか、仮説段階にあるものであるかを、色分け等により直感的に区別することが可能となる。
【0066】
(4)遺伝子制御ネットワーク解析処理手順
次に、遺伝子制御ネットワーク解析処理手順を、図14に示すフローチャートを用いて説明する。
【0067】
CPU10は、例えば電源投入時をトリガーとしてこの遺伝子制御ネットワーク解析処理を開始し、ステップSP1に進んで、遺伝子制御ネットワークの解析要求を待ち受ける。ここで、遺伝子制御ネットワークの解析要求を受けた場合、CPU10は、ステップSP2に進んで、標的細胞における観測点ごとの遺伝子発現量が既に取得されているか否かを確認する。
【0068】
ここで、当該遺伝子発現量が取得されていない場合、CPU10は、ステップSP3に進んで、遺伝子発現量取得部21として機能し、蛍光強度測定装置3から、標的生物における各観測点t1〜tnの遺伝子発現量GE1〜GEmを取得した後(図5)、次のステップSP4に進む。これに対して当該遺伝子発現量が取得されている場合、CPU10は、ステップSP3を経ずにステップSP4に進む。
【0069】
CPU10は、ステップSP4において、cis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースが既に取得されているか否かを確認する。
【0070】
ここで、ゲノム情報が取得されていない場合、CPU10は、ステップSP5に進んで、ゲノム情報取得部22として機能し、ゲノムサーバ2からcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースを取得した後、次のステップSP6に進む。
【0071】
これに対してcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースが取得されている場合、CPU10は、ステップSP5を経ずにステップSP6に進む。
【0072】
CPU10は、ステップSP6において、発現量読出部23として機能し、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースを参照し、相補配列となる遺伝子同士を探索する。
【0073】
ここで、1以上の相補配列となる遺伝子が検出された場合、このことは、標的細胞においてNATs機能が存在する可能性があることを意味する。この場合、CPU10は、ステップSP7に進んで、相補配列の遺伝子ごとに、当該遺伝子発現量の挙動(発現量バイナリ列(図6))を生成する。
【0074】
そしてCPU10は、ステップSP8に進んで、発現量バイナリ列のパターンと、該作用相関もつ相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列に対する発現と抑制のメカニズムの種を分類(遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録)した後、この遺伝子制御解析処理を終了する。
【0075】
一方、ステップSP6において1以上の相補配列となる遺伝子が検出されない場合、CPU10は、ステップSP9に進んで、標的生物では発現と抑制の相互関係をもつ遺伝子がない(NATs機能をもたない)旨を視覚的に通知した後、この遺伝子制御ネットワーク解析処理を終了する。
【0076】
このようにしてCPU10は、遺伝子制御ネットワーク解析処理を実行し、相補配列となる遺伝子ごとに発現抑制メカニズムの種を分類することができるようになされている。なお、各ステップの順序はこの図14に示すものに限定されるものではない。
【0077】
(5)動作及び効果
以上の構成において、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間t1〜tnごとの発現量GEの挙動パターンと、該遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じてNATsの種を分類する。
【0078】
したがってこの遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、構造レベルで発現抑制関係をもつ可能性を有する遺伝子(相補配列となる遺伝子)について、その遺伝子における実際の発現量の挙動パターンと、同じ染色体でのオーバーラップの有無とから、実際の機序レベルで発現抑制メカニズムの種を裏付け(証明)し分類することができる。
【0079】
この結果この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、発現と抑制の相互関係を実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析することができるため、遺伝子制御ネットワーク解析に関して信頼性を向上することができる。
【0080】
なお、引用文献1に記載のNATsは、特定の生物の特定部分だけ実証されたものであるが、この実証されたメカニズムが多岐にわたる各種生物にもあるのか、またある場合にはどの細胞のどの部分にあるのかということを確実に情報として得ることができるようになる点で、実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析できるということは非常に有用となるであろう。
【0081】
また、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、発現量GEの挙動パターンを生成する手法として、観測時間の時間経過方向における遺伝子発現量GEの正又は負の差をとってバイナリ列を生成する手法が採用される(図6)。
【0082】
従来、遺伝子を分類するという要請があるがあるものの、遺伝子発現量の時間的挙動がどのようなときにいかなるカテゴリに分類するのかという一般的な基準がないということが現状であった。しかしながら、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、各観測時間の発現量を、当該観測時間の時間推移に沿って「上がった」もしくは「下がった」とする挙動だけに着目した2値の系列(バイナリ列)に変換することで、該バイナリ列がとり得るパターン(正負パターン)を必然的に得ることができる。
【0083】
またこの遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、各遺伝子を、その発現量の時間的挙動から簡易にパターン化することができることができるため、数万個もある遺伝子からとり得る全ての組み合わせを比較する場合に効率的となる。
【0084】
また、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、NATsの種として、実証済みの遺伝子制御メカニズム(ケースAまたはケースDのcisNATs)と、仮説段階の遺伝子制御メカニズム(ケースCのcisNATs又はtransNATs)とに細分する。
【0085】
したがって、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、その後の仮説の立証等の研究動向に応じて、ネットワーク構築の編集を容易化することができる。
【0086】
またこの遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、標的生物の細胞で発現される遺伝子における発現量を単に取得するのではなく、該発現量の測定間隔が、設定される上限閾値と下限閾値との範囲となる当該発現量を、選択的に取得するようになされている。
【0087】
したがって遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、実際の機序レベルで裏付けする際の判定基準となる推移量を、一定の基準のもとで取得するため、多岐にわたる標的生物の発現と抑制の相互関係を、同等の基準で発現と抑制の作用相関があるか否かを判定することができる。
【0088】
以上の構成によれば、標的生物における発現と抑制の相互関係を実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析することができるようにしたことにより、信頼性を向上し得る遺伝子制御ネットワーク解析装置4を実現し得る。
【0089】
(6)他の実施の形態
上述の実施の形態では、蛍光強度測定装置3を用いて細胞中の標的核酸の遺伝子発現量を示す発現量データが取得された。しかしながら、取得態様はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、標的細胞で発現される各mRNAを抽出し、これらをリアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)を用いて、一定量に増殖することにより直接的に取得するといった態様も適用可能である。
【0090】
また例えば、所定の機関において蛍光強度測定装置やリアルタイムPCRを用いて測定され、その結果得られるmRNAの量を示すデータを格納したデータ格納媒体から取得するといった態様も適用可能である。この態様を適用した場合、例えば遠方となる複数の実験場所で得られたものから、当該実験場所で平均的な指標値として、mRNAの量を示すデータを格納するといったことが可能となる。
【0091】
なお、データ格納媒体としては、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等のパッケージメディアや、データが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリや磁気ディスク等がある。またこれらデータ格納媒体からデータを取得する方法としては、ローカルエリアネットワークやインターネット、ディジタル衛星放送等の有線又は無線の通信媒体を利用することができる。
【0092】
また、読取量として、上述の実施の形態では光学的に発光量を読み取るようにした。しかしながら、読取量はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、電磁学的に電気量又はインピーダンス量等を適用することもできる。要は、所定の物理量を読み取るセンサによって読み取られた読取量を適用することができる。なお、核酸チップCPとしては、例えば、Affymetorix社製、スタンフォード型等を適用することができ、これら以外のものを適用することもできる。
【0093】
また、読取場所として、上述の実施の形態では核酸チップCPとした。しかしながら、読取場所はこれに限定されるものではない。例えば、組織切片を適用することができ、これ以外の場所も適用することができる。
【0094】
また、遺伝子発現量の演算手法として、上述の実施の形態ではMASを適用した。しかしながら、演算手法はこれに限定されるものではない。例えば、RMA等の既知のデータ解析ソフトウェア、その他の新規の演算手法を適用することができる。要は、センサから読み取られた、相補鎖の形成量を示すデータを統計学的手法を用いて補正するものであればよい。
【0095】
また上述の実施の形態では、各観測点(t1〜tn(図6参照))における挙動パターンに発現と抑制の作用相関がある場合として、観測時間の時間経過方向における遺伝子発現量GEの正又は負の差をとったバイナリ列(発現量バイナリ列)の符号が完全に同一又は反対となるパターンとなる場合とされた。しかしながら、必ずしも、完全に同一又は反対となる場合でなくてもよい。すなわち、符号の1つあるいは2つが相違していても、発現と抑制の作用相関がある場合とすることができる。この符号の相違数は、バイナリ列が長い(バイナリ列を構成する符号数が多い)ほど、大きく設定することができる。
【0096】
また、バイナリ列(発現量バイナリ列)のパターンに代えて、別のものを採用してもよい。例えば、比較対象とされる各観測点(t1〜tn(図6参照))における発現量の相関係数を算出し、この相関係数が発現と抑制の作用相関があるとすべき最低値以上となる場合とすることができる。
【0097】
また別例として、発現量の総測定時間長(tn−t1)に対する、比較される発現量に一定の比例関係がある推移部分の時間長の割合を算出し、この割合が発現と抑制の作用相関があるとすべき最低値以上となる場合とすることができる。
【0098】
また別例として、発現量における推移量(図6におけるt1〜tn)を形状パターンとして捉えてマッチングし、該形状パターンの重なりの程度が最も大きくなる場合の重なり量と角度が、発現と抑制の作用相関があるとすべき最低値以上となる場合とすることができる。
【0099】
また上述の実施の形態では、非特許文献におけるケースAまたはケースDのcisNATsと、ケースCのcisNATsと、transNATsとが分類要素とされた。しかしながら、これら以外の発現抑制メカニズムを分類要素とするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、遺伝子実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本実施の形態による遺伝子制御ネットワーク解析システムの全体構成を示す略線図である。
【図2】ハイブリダイゼーションの説明に供する略線図である。
【図3】測定データの構造例を示す略線図である。
【図4】遺伝子制御ネットワーク解析装置の構成を示すブロック図である。
【図5】標的生物における単位時間当たりの遺伝子発現量の取得の説明に供する略線図である。
【図6】遺伝子発現量のバイナリ化の説明に供する略線図である。
【図7】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移に一定の比例関係がある場合(1)を示すグラフである。
【図8】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移に一定の比例関係がある場合(2)を示すグラフである。
【図9】遺伝子発現量の挙動が同一又は略同一の関係にある場合の発現量バイナリ列を示す略線図である。
【図10】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移におおよその比例関係がある場合(1)を示すグラフである。
【図11】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移におおよその比例関係がある場合(2)を示すグラフである。
【図12】遺伝子発現量の挙動が反対又は略反対の関係にある場合の発現量バイナリ列を示す略線図である。
【図13】遺伝子制御ネットワークの表示例を示す略線図である。
【図14】遺伝子制御ネットワーク解析処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1……遺伝子制御ネットワーク解析システム、2……ゲノムサーバ、3……蛍光強度測定装置、4……遺伝子制御ネットワーク解析装置、10……CPU、11……ROM、12……RAM、13……操作部、14……記憶部、15……インターフェイス、16……表示部、21……遺伝子発現量取得部、22……ゲノム情報取得部、23……発現量読出部、24……バイナリ化部、25……分類部。
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子制御ネットワーク解析装置、遺伝子制御ネットワーク解析方法及び遺伝子制御ネットワーク解析プログラムに関し、遺伝子解析技術などの分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、NATs(Natural Antisense Transcripts)と呼ばれるコンセプトがある(例えば非特許文献1参照)。このNATsは、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域との相補配列がオーバーラップする部分をもち、一方の1本鎖DNAのコーディング領域の発現が、他方の1本鎖DNAのコーディング領域の発現によって抑制されるというものである。非特許文献1では、ケースA〜Dとして定義されている。
【非特許文献1】Michal Lapidot & Yitzhak Pilpel(Weizmann Institute ofSience,Rehovot,Israel)、Genome-wide natural antisense transcription:coupling itsregulation to its different regulatory mechanisms、 EMBO reports、 EUROPEANMOLECULAR BIOLOGY ORGANIZATION、Submitted 28 March 2006;accepted 18 October 2006、p.1216-1222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記非特許文献では、ケースCは実証されておらず仮説として存在するものである。また、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域との相補配列がオーバーラップする部分の発現量が示してあるが、これは推測に過ぎない。
【0004】
相補配列部分における遺伝子発現量から、遺伝子の発現と抑制との制御に関するネットワークを構築することができれば、該ネットワークの信頼性が向上するものと考えられる。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、信頼性を向上し得る遺伝子制御ネットワーク解析装置、遺伝子制御ネットワーク解析方法及び遺伝子制御ネットワーク解析プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明は、遺伝子制御ネットワーク解析装置であって、標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得部と、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類部とを有する。
【0007】
また本発明は、遺伝子制御ネットワーク解析方法であって、標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得ステップと、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類ステップとを有する。
【0008】
また本発明は、遺伝子制御ネットワーク解析プログラムであって、コンピュータに対して、標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得すること、 標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類することを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、構造レベルで発現抑制関係をもつ可能性を有する遺伝子(相補配列となる遺伝子)について、その遺伝子における実際の発現量の挙動パターンと、同じ染色体でのオーバーラップの有無とから、実際の機序レベルで発現抑制メカニズムの種を分類することができる。
【0010】
このように本発明は、発現と抑制の相互関係を実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析することができるため、遺伝子制御ネットワーク解析に関して信頼性を向上することができる。
【0011】
なお、引用文献1に記載のNATsは、特定の生物の特定部分だけ実証されたものであるが、この実証されたメカニズムが多岐にわたる各種生物にもあるのか、またある場合にはどの細胞のどの部分にあるのかということを確実に情報として得ることができるようになる点で、実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析できるということは非常に有用となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面について本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)遺伝子制御ネットワーク解析システムの全体構成
図1において、本実施の形態による遺伝子制御ネットワーク解析システム1の全体構成を示す。この遺伝子制御ネットワーク解析システム1は、ゲノムサーバ2と、蛍光強度測定装置3と、遺伝子制御ネットワーク解析装置4とによって構成される。
【0014】
ゲノムサーバ2には、真核生物又は原核生物における各種生物のゲノムに関するデータベースが保持される。ゲノムサーバ2は、インターネット等のコンピュータネットワークを通じてアクセスされる装置の要求に応じたゲノム情報を、該装置に提供し得るようになされている。
【0015】
蛍光強度測定装置3は、測定ステージを有し、該測定ステージには核酸チップCPがセットされる。核酸チップCPは、標的生物における全遺伝子に対応する核酸プローブが配される基盤である。
【0016】
この核酸チップCPでは、例えば図2に示すように、核酸プローブに(長波線で示す部分)対して、標的生物の細胞から抽出され、標識物質(黒丸で示す部分)を付加された標的核酸(短波線で示す部分)が与えられ、相補鎖の形成反応(以下、これをハイブリダイゼーションとも呼ぶ)が行われる。
【0017】
核酸プローブは、特定の遺伝子を検出するための探り針(検出子)として機能する1本鎖のヌクレオチドである。一般に、核酸プローブは、特定の遺伝子全体の配列に相補対となるヌクレオチドではなく、当該遺伝子において特異的とされる部分配列を含む複数のプローブ断片(以下、これをプローブセットとも呼ぶ)としてデザインされる。具体的には、18〜60[mer]程度のDNA(deoxyribonucleic acid) 断片、cDNA(complementary DNA) 断片又はPNA(peptide nucleic acid)などにデザインされる。
【0018】
一方、標的核酸は、核酸プローブとのハイブリダイゼーション対象とされる1本鎖のヌクレオチドである。一般に、標的核酸は、mRNA(pre-mRNAを含む)又はその断片そのものが用いられるのではなく、該mRNA又はその断片を逆転写酵素により変換したものが用いられる。
【0019】
他方、標識物質は、一般に、ビオチンまたはFITC(fluorescein isothiocyanate)等の蛍光色素とされるが、これに限定されるものではなく、例えば放射性同位元素等としてもよい。
【0020】
蛍光強度測定装置3(図1)は、測定指令が与えられた場合、測定ステージにセットされる核酸チップCPに対して、標的核酸に付加される標識物質の励起光を照射する。図2に示したように、核酸チップCPの核酸プローブが標的核酸と相補鎖を形成している場合、該標的核酸に付加された標識物質が励起光により発光する。この発光量は、標的核酸と核酸プローブとの相補鎖の形成量と相関があり、該核酸プローブと相補鎖が形成される標的核酸の量が多いほど発光量が強くなる。
【0021】
蛍光強度測定装置3は、励起光を照射した核酸チップCPから、該核酸チップに配される全遺伝子に対応する核酸プローブでの発光量をセンサCEにより読み取る。そして蛍光強度測定装置3は、例えば図3に示すように、読み取った各遺伝子の発光量EMi(i=1、2、……、m)に遺伝子固有の識別子giを割り当て、これら組み合わせに読取時刻やチップ番号等の付加情報TMを付加したデータ(以下、これを測定データと呼ぶ)を出力するようになされている。
【0022】
遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、ゲノムサーバ2からゲノム情報を取得し、蛍光強度測定装置3から相補鎖形成量データを取得する。そして遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、これらゲノム情報と、相補鎖形成量データとを用いて、標的細胞において相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類するようになされている。
【0023】
(2)遺伝子制御ネットワーク解析装置の構成
次に、遺伝子制御ネットワーク解析装置4の構成について説明する。この遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、図4に示すように、該遺伝子制御ネットワーク解析装置4全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)10に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。
【0024】
具体的にはROM(Read Only Memory)11、CPU10のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)12、操作部13、記憶部14、インターフェース15及び表示部16がバス17を介して接続される。
【0025】
ROM11には、遺伝子制御ネットワーク解析処理を実行するためのプログラム(以下、これを遺伝子制御ネットワーク解析プログラムとも呼ぶ)が格納され、またインターフェイス15は、ゲノムサーバ2及び蛍光強度測定装置3に対して個々に設けられる。
【0026】
CPU10は、ROM11に格納された遺伝子制御ネットワーク解析プログラムをRAM12に展開した場合、該遺伝子制御ネットワーク解析プログラムに基づいて記憶部14、インターフェース15及び表示部16を適宜制御し、遺伝子制御ネットワーク解析処理を実行するようになされている。
【0027】
(3)遺伝子制御ネットワーク解析プログラムに基づくCPUの処理内容
遺伝子制御ネットワーク解析プログラムをRAM12に展開したCPU10は、機能的には、図4に示したように、遺伝子発現量取得部21、ゲノム情報取得部22、発現量読出部23、バイナリ化部24及び分類部25の各処理部に分類することができる。
【0028】
遺伝子発現量取得部21は、例えば図5に示すように、継代した標的細胞から所定期間ごとに抽出される標的核酸と、核酸チップCPj(j=1、2、……、n)における核酸プローブとの相補鎖の形成量に基づいて、標的生物における細胞で発現される遺伝子ごとに測定時間t1〜tn当たりの遺伝子発現量GE1〜GEmを取得する。
【0029】
ここで、この遺伝子発現量取得部21における処理の具体例を1つ挙げる。
【0030】
遺伝子発現量取得部21は、ターゲットとされる細胞の生物種を、操作部13を用いて入力させ、該入力された生物種に応じた核酸チップの会社名及びその製品番号を内部又はインターネット上のデータベースから検索する。
【0031】
そして遺伝子発現量取得部21は、検索した核酸チップの会社名及びその製品番号を表示部16に提示するとともに、標的細胞におけるmRNAをある時間間隔で測定すべきこと及びその測定条件を提示する。
【0032】
具体的には、継代した標的細胞から標的核酸を抽出すべき時間間隔や、各時間帯で抽出される標的核酸を核酸チップの核酸プローブとハイブリダイゼーションする際に守るべき温度や湿度等の各種環境条件の範囲などの測定条件を提示する。このように遺伝子発現量取得部21は、測定上の条件を具体的に提示することで測定上のばらつきを抑えさせ、測定精度を高め得るようになされている。
【0033】
また遺伝子発現量取得部21は、核酸チップの会社名及びその製品番号等を提示した時点から蛍光強度測定装置3から出力される測定データの待ち受けを開始する。そして遺伝子発現量取得部21は、測定データを受けるごとに、該測定データに示される読取時刻TM(図3)と、その1つ前に読み取られた測定データに示される読取時刻TMとの差を算出する。
【0034】
この算出結果が、測定条件とされる時間間隔を基準として設定される上限閾値と下限閾値との許容範囲外となる場合、遺伝子発現量取得部21は、最初から測定しなおすべき旨を表示部16を用いて視覚的に通知する。これにより遺伝子発現量取得部21は、標的細胞における標的核酸量の推移を正確に取得し得るようになされている。なお、測定条件とされる時間間隔が狭いほど、標的生物の細胞で発現される遺伝子発現量の推移が詳細になることは理解できるであろう。
【0035】
一方、算出結果が許容範囲内となる場合、遺伝子発現量取得部21は、測定データに含まれる各遺伝子の発光量を遺伝子発現量に変換した後、該測定データを記憶部14に記憶させる。
【0036】
遺伝子発現量は、標的核酸と核酸プローブとの相補鎖の形成量に相関する発光量から、統計学的手法によりバックグラウンド(局所的な物理的影響)等を排除したものであり、標的細胞内において発現している遺伝子を示す量として信頼性が高いものとなる。
【0037】
例えば、Affymetrix社のMAS(Micro Array Suite)と呼ばれるデータ解析ソフトウェアを用いた場合、発光量の割合として遺伝子発現量が算出される。
【0038】
ちなみに、このMASのバージョン5を、ある1つの遺伝子に対応する核酸プローブに着目して簡単に説明する。MAS5では、(1)プローブセット(当該遺伝子において特異的とされる塩基配列を含む複数のプローブ断片)での発光量から、局所的な物理的影響(バックグランド)が排除される。(2)各プローブ断片(パーフェクトマッチプローブと呼ばれる)の発光量が、当該プローブ断片と対応する断片コントロール(ミスマッチプローブと呼ばれる)との差に応じて適宜補正される。(3)各プローブ断片の発光量が対数変換により遺伝子発現量として算出される。
【0039】
I.S.Kohane/A.T.Kho/A.J.Butte 星田有人著、統合ゲノミクスのためのマイクロアレイデータアナリシス、シュプリンガー・ジャパン出版、p.58−74を参照されたい。
【0040】
以上のように、遺伝子発現量取得部21における処理の具体例を挙げたが、該処理は、この例に限定されるものではない。
【0041】
ゲノム情報取得部22は、所定の更新期間ごとに、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースを更新する。
【0042】
このcis−NATsデータベースは、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域とが相補配列となり、かつその配列の一部がオーバーラップする遺伝子を、生物及び細胞の種別単位で対応付けしたものである。また、trans−NATsデータベースは、ある染色体上のコーディング領域と、別の染色体上のコーディング領域とで相補配列となる遺伝子を、生物及び細胞の種別単位で対応付けしたものである。
【0043】
ここで、このゲノム情報取得部22における処理の具体例を1つ挙げる。
【0044】
ゲノム情報取得部22は、更新期間を経過した場合、インターフェース15を用いてゲノムサーバ2へ自動的にアクセスし、該ゲノムサーバ2と相互認証する。そしてゲノム情報取得部22は、ゲノムサーバ2との相互認証が成立した場合、該ゲノムサーバ2に対してcis−NATsデータベース又はtrans−NATsデータベースが更新されたか否かを確認する。
【0045】
ここでゲノム情報取得部22は、更新されたことを確認した場合、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベースと、trans−NATsデータベースとの一方又は双方を更新する。
【0046】
ちなみに、このときゲノム情報取得部22は、操作部13により指定されたゲノム情報があった場合、該ゲノム情報を記憶部14に記憶する。ゲノム情報としては、例えば標的生物において発現され得る全ての成熟mRNA及びそれらの前駆mRNA(pre−mRNA)の塩基配列や、イントロン及びエキソン等がある。
【0047】
以上のように、ゲノム情報取得部22における処理の具体例を挙げたが、該処理は、この例に限定されるものではない。
【0048】
発現量読出部23は、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースにおける相補配列となる遺伝子のすべてを認識する。ちなみに、cis−NATsデータベースにおける遺伝子は、上述したように、一方の1本鎖DNAのコーディング領域と、他方の1本鎖DNAのコーディング領域とがオーバーラップする状態で相補配列となるものである。また、trans−NATsデータベースにおける遺伝子は、ある染色体上のコーディング領域と、別の染色体上のコーディング領域とで相補配列となるものである。
【0049】
そして発現量読出部23は、各相補配列の遺伝子に対応する測定時間t1〜tnごとの遺伝子発現量GE(図5)を示すデータを記憶部14から読み出し、当該データをバイナリ化部24に与える。
【0050】
なお、発現量読出部23は、各相補配列に対応する測定時間t1〜tnごとの遺伝子発現量GE(図5)を示すデータが記憶部14に記憶されていない場合、その旨を、表示部16を用いて視覚的に通知するようになされている。
【0051】
バイナリ化部24は、発現量読出部23から、各相補配列に対応する測定時間t1〜tnごとの遺伝子発現量GE1〜GEm(図5)を示すデータが与えられた場合、当該データを用いて、相補配列の各配列における遺伝子発現量の挙動をバイナリ化する。
【0052】
すなわち、バイナリ化部24は、遺伝子発現量GEごとに、観測点tnの時間経過方向における正又は負の差をとってバイナリ列(以下、これを発現量バイナリ列とも呼ぶ)を生成する。各観測点tnにおける遺伝子発現量GEが図5の場合、発現量バイナリ列は、図6に示すようになる。
【0053】
ちなみに、図6における各遺伝子発現量GEの値は便宜的に示したものであり、実際の数値ではない。なお、遺伝子発現量のバイナリ化に関しては、既に本発明者らによって提案されており、詳細は2008−213112を参照されたい。
【0054】
ここで、図7又は図8に示すように、ある配列の遺伝子発現量GEXと、該配列に相補となる配列の遺伝子発現量GEYとにおける挙動が同一または略同一にある場合、図9に示すように、発現量バイナリ列における正負のパターンは同一となる。
【0055】
一方、図10又は図11に示すように、ある配列の遺伝子発現量GEXと、該配列に相補となる配列の遺伝子発現量GEYとにおける挙動が一定の逆相関関係またはおおよその逆相関関係にある場合、図12に示すように、発現量バイナリ列における正負のパターンは反対となる。
【0056】
分類部25は、標的細胞において相補配列となる遺伝子に対応する発現量バイナリ列と、該相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する。
【0057】
すなわち分類部25は、相補配列の各配列に対応する発現量バイナリ列の正負パターンが同一又は反対となる場合、当該相補配列の遺伝子間には、発現と抑制の作用相関があるものとして検出する。
【0058】
そして分類部25は、作用相関があるとした相補配列の遺伝子が同じ染色体上の一部でオーバーラップするものであるか否かを、cisNATsデータベース及びtransNATsデータベースに基づいて調べる。
【0059】
ここで、発現と抑制の作用相関にある相補配列が「同じ染色体上でオーバーラップ」し、該相補配列における発現量バイナリ列が「反対」の正負パターンである場合、このことは、上記非特許文献におけるケースAまたはケースDのcisNATsに相当することを意味する。この場合、分類部25は、相補配列がケースAまたはケースDのメカニズムの関係にあることを示す情報を生成し、これを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録する。
【0060】
また、発現と抑制の作用相関にある相補配列が「同じ染色体上でオーバーラップ」し、該相補配列における発現量バイナリ列が「同一」の正負パターンである場合、このことは、上記非特許文献におけるケースCのcisNATsに相当することを意味する。この場合、分類部25は、相補配列がケースCのメカニズムの関係にあることを示す情報を生成し、これを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録する。
【0061】
さらに、発現と抑制の作用相関にある相補配列が「オーバーラップ」しない場合、このことは、該相補配列における発現量バイナリ列が「同一」又は「反対」の正負パターンのいずれであっても、transNATsに相当することを意味する。この場合、分類部25は、相補配列がtransNATsのメカニズムの関係にあることを示す情報を生成し、これを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録する。
【0062】
具体的にこの遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースには、例えば、標的生物の名称、相補となる各配列に関する情報(当該配列をもつ染色体番号や、当該配列部分における遺伝子名や、当該配列における発現量バイナリ列等)、遺伝子制御メカニズムの種(ケースA、ケースC、transNATs)に割り当てられるコード(識別子)などとして登録される。ちなみに、名称には通称又は略称が含まれる。
【0063】
このようにして分類部25は、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を、当該相補配列における「同一染色体上でのオーバーラップの有無」と、「遺伝子発現量の簡易的な挙動パターン」とに応じて分類することができる。
【0064】
したがって、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、実証済みの遺伝子制御メカニズム(ケースAまたはケースDのcisNATs)と、仮説段階の遺伝子制御メカニズム(ケースCのcisNATs又はtransNATs)とのうち、該仮説段階の遺伝子制御メカニズムを、遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースから抹消する等といったように、その後のデータベースの編集を簡易化できる。
【0065】
また所定の表示ソフトを用いて、例えば図13に示すように、データベースに登録された遺伝子の相互作用関係を表示部16に表示する場合、当該発現と抑制の作用相関が実証段階にあるものであるか、仮説段階にあるものであるかを、色分け等により直感的に区別することが可能となる。
【0066】
(4)遺伝子制御ネットワーク解析処理手順
次に、遺伝子制御ネットワーク解析処理手順を、図14に示すフローチャートを用いて説明する。
【0067】
CPU10は、例えば電源投入時をトリガーとしてこの遺伝子制御ネットワーク解析処理を開始し、ステップSP1に進んで、遺伝子制御ネットワークの解析要求を待ち受ける。ここで、遺伝子制御ネットワークの解析要求を受けた場合、CPU10は、ステップSP2に進んで、標的細胞における観測点ごとの遺伝子発現量が既に取得されているか否かを確認する。
【0068】
ここで、当該遺伝子発現量が取得されていない場合、CPU10は、ステップSP3に進んで、遺伝子発現量取得部21として機能し、蛍光強度測定装置3から、標的生物における各観測点t1〜tnの遺伝子発現量GE1〜GEmを取得した後(図5)、次のステップSP4に進む。これに対して当該遺伝子発現量が取得されている場合、CPU10は、ステップSP3を経ずにステップSP4に進む。
【0069】
CPU10は、ステップSP4において、cis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースが既に取得されているか否かを確認する。
【0070】
ここで、ゲノム情報が取得されていない場合、CPU10は、ステップSP5に進んで、ゲノム情報取得部22として機能し、ゲノムサーバ2からcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースを取得した後、次のステップSP6に進む。
【0071】
これに対してcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースが取得されている場合、CPU10は、ステップSP5を経ずにステップSP6に進む。
【0072】
CPU10は、ステップSP6において、発現量読出部23として機能し、記憶部14に記憶されるcis−NATsデータベース及びtrans−NATsデータベースを参照し、相補配列となる遺伝子同士を探索する。
【0073】
ここで、1以上の相補配列となる遺伝子が検出された場合、このことは、標的細胞においてNATs機能が存在する可能性があることを意味する。この場合、CPU10は、ステップSP7に進んで、相補配列の遺伝子ごとに、当該遺伝子発現量の挙動(発現量バイナリ列(図6))を生成する。
【0074】
そしてCPU10は、ステップSP8に進んで、発現量バイナリ列のパターンと、該作用相関もつ相補配列における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列に対する発現と抑制のメカニズムの種を分類(遺伝子制御ネットワーク解析用のデータベースに登録)した後、この遺伝子制御解析処理を終了する。
【0075】
一方、ステップSP6において1以上の相補配列となる遺伝子が検出されない場合、CPU10は、ステップSP9に進んで、標的生物では発現と抑制の相互関係をもつ遺伝子がない(NATs機能をもたない)旨を視覚的に通知した後、この遺伝子制御ネットワーク解析処理を終了する。
【0076】
このようにしてCPU10は、遺伝子制御ネットワーク解析処理を実行し、相補配列となる遺伝子ごとに発現抑制メカニズムの種を分類することができるようになされている。なお、各ステップの順序はこの図14に示すものに限定されるものではない。
【0077】
(5)動作及び効果
以上の構成において、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間t1〜tnごとの発現量GEの挙動パターンと、該遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じてNATsの種を分類する。
【0078】
したがってこの遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、構造レベルで発現抑制関係をもつ可能性を有する遺伝子(相補配列となる遺伝子)について、その遺伝子における実際の発現量の挙動パターンと、同じ染色体でのオーバーラップの有無とから、実際の機序レベルで発現抑制メカニズムの種を裏付け(証明)し分類することができる。
【0079】
この結果この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、発現と抑制の相互関係を実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析することができるため、遺伝子制御ネットワーク解析に関して信頼性を向上することができる。
【0080】
なお、引用文献1に記載のNATsは、特定の生物の特定部分だけ実証されたものであるが、この実証されたメカニズムが多岐にわたる各種生物にもあるのか、またある場合にはどの細胞のどの部分にあるのかということを確実に情報として得ることができるようになる点で、実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析できるということは非常に有用となるであろう。
【0081】
また、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、発現量GEの挙動パターンを生成する手法として、観測時間の時間経過方向における遺伝子発現量GEの正又は負の差をとってバイナリ列を生成する手法が採用される(図6)。
【0082】
従来、遺伝子を分類するという要請があるがあるものの、遺伝子発現量の時間的挙動がどのようなときにいかなるカテゴリに分類するのかという一般的な基準がないということが現状であった。しかしながら、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、各観測時間の発現量を、当該観測時間の時間推移に沿って「上がった」もしくは「下がった」とする挙動だけに着目した2値の系列(バイナリ列)に変換することで、該バイナリ列がとり得るパターン(正負パターン)を必然的に得ることができる。
【0083】
またこの遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、各遺伝子を、その発現量の時間的挙動から簡易にパターン化することができることができるため、数万個もある遺伝子からとり得る全ての組み合わせを比較する場合に効率的となる。
【0084】
また、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、NATsの種として、実証済みの遺伝子制御メカニズム(ケースAまたはケースDのcisNATs)と、仮説段階の遺伝子制御メカニズム(ケースCのcisNATs又はtransNATs)とに細分する。
【0085】
したがって、この遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、その後の仮説の立証等の研究動向に応じて、ネットワーク構築の編集を容易化することができる。
【0086】
またこの遺伝子制御ネットワーク解析装置4は、標的生物の細胞で発現される遺伝子における発現量を単に取得するのではなく、該発現量の測定間隔が、設定される上限閾値と下限閾値との範囲となる当該発現量を、選択的に取得するようになされている。
【0087】
したがって遺伝子制御ネットワーク解析装置4では、実際の機序レベルで裏付けする際の判定基準となる推移量を、一定の基準のもとで取得するため、多岐にわたる標的生物の発現と抑制の相互関係を、同等の基準で発現と抑制の作用相関があるか否かを判定することができる。
【0088】
以上の構成によれば、標的生物における発現と抑制の相互関係を実際の機序レベルを経て自動的かつ網羅的に解析することができるようにしたことにより、信頼性を向上し得る遺伝子制御ネットワーク解析装置4を実現し得る。
【0089】
(6)他の実施の形態
上述の実施の形態では、蛍光強度測定装置3を用いて細胞中の標的核酸の遺伝子発現量を示す発現量データが取得された。しかしながら、取得態様はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、標的細胞で発現される各mRNAを抽出し、これらをリアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)を用いて、一定量に増殖することにより直接的に取得するといった態様も適用可能である。
【0090】
また例えば、所定の機関において蛍光強度測定装置やリアルタイムPCRを用いて測定され、その結果得られるmRNAの量を示すデータを格納したデータ格納媒体から取得するといった態様も適用可能である。この態様を適用した場合、例えば遠方となる複数の実験場所で得られたものから、当該実験場所で平均的な指標値として、mRNAの量を示すデータを格納するといったことが可能となる。
【0091】
なお、データ格納媒体としては、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等のパッケージメディアや、データが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリや磁気ディスク等がある。またこれらデータ格納媒体からデータを取得する方法としては、ローカルエリアネットワークやインターネット、ディジタル衛星放送等の有線又は無線の通信媒体を利用することができる。
【0092】
また、読取量として、上述の実施の形態では光学的に発光量を読み取るようにした。しかしながら、読取量はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、電磁学的に電気量又はインピーダンス量等を適用することもできる。要は、所定の物理量を読み取るセンサによって読み取られた読取量を適用することができる。なお、核酸チップCPとしては、例えば、Affymetorix社製、スタンフォード型等を適用することができ、これら以外のものを適用することもできる。
【0093】
また、読取場所として、上述の実施の形態では核酸チップCPとした。しかしながら、読取場所はこれに限定されるものではない。例えば、組織切片を適用することができ、これ以外の場所も適用することができる。
【0094】
また、遺伝子発現量の演算手法として、上述の実施の形態ではMASを適用した。しかしながら、演算手法はこれに限定されるものではない。例えば、RMA等の既知のデータ解析ソフトウェア、その他の新規の演算手法を適用することができる。要は、センサから読み取られた、相補鎖の形成量を示すデータを統計学的手法を用いて補正するものであればよい。
【0095】
また上述の実施の形態では、各観測点(t1〜tn(図6参照))における挙動パターンに発現と抑制の作用相関がある場合として、観測時間の時間経過方向における遺伝子発現量GEの正又は負の差をとったバイナリ列(発現量バイナリ列)の符号が完全に同一又は反対となるパターンとなる場合とされた。しかしながら、必ずしも、完全に同一又は反対となる場合でなくてもよい。すなわち、符号の1つあるいは2つが相違していても、発現と抑制の作用相関がある場合とすることができる。この符号の相違数は、バイナリ列が長い(バイナリ列を構成する符号数が多い)ほど、大きく設定することができる。
【0096】
また、バイナリ列(発現量バイナリ列)のパターンに代えて、別のものを採用してもよい。例えば、比較対象とされる各観測点(t1〜tn(図6参照))における発現量の相関係数を算出し、この相関係数が発現と抑制の作用相関があるとすべき最低値以上となる場合とすることができる。
【0097】
また別例として、発現量の総測定時間長(tn−t1)に対する、比較される発現量に一定の比例関係がある推移部分の時間長の割合を算出し、この割合が発現と抑制の作用相関があるとすべき最低値以上となる場合とすることができる。
【0098】
また別例として、発現量における推移量(図6におけるt1〜tn)を形状パターンとして捉えてマッチングし、該形状パターンの重なりの程度が最も大きくなる場合の重なり量と角度が、発現と抑制の作用相関があるとすべき最低値以上となる場合とすることができる。
【0099】
また上述の実施の形態では、非特許文献におけるケースAまたはケースDのcisNATsと、ケースCのcisNATsと、transNATsとが分類要素とされた。しかしながら、これら以外の発現抑制メカニズムを分類要素とするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、遺伝子実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本実施の形態による遺伝子制御ネットワーク解析システムの全体構成を示す略線図である。
【図2】ハイブリダイゼーションの説明に供する略線図である。
【図3】測定データの構造例を示す略線図である。
【図4】遺伝子制御ネットワーク解析装置の構成を示すブロック図である。
【図5】標的生物における単位時間当たりの遺伝子発現量の取得の説明に供する略線図である。
【図6】遺伝子発現量のバイナリ化の説明に供する略線図である。
【図7】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移に一定の比例関係がある場合(1)を示すグラフである。
【図8】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移に一定の比例関係がある場合(2)を示すグラフである。
【図9】遺伝子発現量の挙動が同一又は略同一の関係にある場合の発現量バイナリ列を示す略線図である。
【図10】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移におおよその比例関係がある場合(1)を示すグラフである。
【図11】発現と抑制の関係をもつと推定された遺伝子ペアの各遺伝子発現量の増減推移におおよその比例関係がある場合(2)を示すグラフである。
【図12】遺伝子発現量の挙動が反対又は略反対の関係にある場合の発現量バイナリ列を示す略線図である。
【図13】遺伝子制御ネットワークの表示例を示す略線図である。
【図14】遺伝子制御ネットワーク解析処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1……遺伝子制御ネットワーク解析システム、2……ゲノムサーバ、3……蛍光強度測定装置、4……遺伝子制御ネットワーク解析装置、10……CPU、11……ROM、12……RAM、13……操作部、14……記憶部、15……インターフェイス、16……表示部、21……遺伝子発現量取得部、22……ゲノム情報取得部、23……発現量読出部、24……バイナリ化部、25……分類部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得部と、
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類部と
を有する遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項2】
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、上記観測時間の時間経過方向における上記発現量の正又は負の差をとってバイナリ列を生成する生成部
をさらに有し、
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する、請求項1に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項3】
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、NATsの種を分類する、請求項2に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項4】
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、少なくとも実証済みのNATsと仮説のNATsに分類する、請求項3に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項5】
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、少なくともcis−NATsとtrans−NATsに分類する、請求項3に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項6】
上記取得部は、
上記標的生物の細胞で発現される遺伝子における発現量の測定間隔が、設定される上限閾値と下限閾値との範囲となる当該発現量を取得する、請求項3に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項7】
標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得ステップと、
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類ステップと
を有する遺伝子制御ネットワーク解析方法。
【請求項8】
コンピュータに対して、
標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得すること、
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類すること
を実行させる遺伝子制御ネットワーク解析プログラム。
【請求項1】
標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得部と、
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類部と
を有する遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項2】
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、上記観測時間の時間経過方向における上記発現量の正又は負の差をとってバイナリ列を生成する生成部
をさらに有し、
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する、請求項1に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項3】
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、NATsの種を分類する、請求項2に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項4】
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、少なくとも実証済みのNATsと仮説のNATsに分類する、請求項3に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項5】
上記分類部は、
上記バイナリ列のパターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、少なくともcis−NATsとtrans−NATsに分類する、請求項3に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項6】
上記取得部は、
上記標的生物の細胞で発現される遺伝子における発現量の測定間隔が、設定される上限閾値と下限閾値との範囲となる当該発現量を取得する、請求項3に記載の遺伝子制御ネットワーク解析装置。
【請求項7】
標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得する取得ステップと、
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類する分類ステップと
を有する遺伝子制御ネットワーク解析方法。
【請求項8】
コンピュータに対して、
標的細胞における複数の遺伝子に対する測定時間ごとの発現量を取得すること、
上記標的細胞において相補配列となる遺伝子ごとに、当該遺伝子に対応する測定時間ごとの発現量の挙動パターンと、上記相補配列となる遺伝子における同じ染色体でのオーバーラップの有無とに応じて、相補配列となる遺伝子に対する発現抑制メカニズムの種を分類すること
を実行させる遺伝子制御ネットワーク解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図13】
【公開番号】特開2010−113413(P2010−113413A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283456(P2008−283456)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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