説明

遺伝子検査データ管理システム

【課題】 検査結果データや薬データを容易に入手することのできる遺伝子検査データ管理システムを提供する。
【解決手段】 遺伝子検査データ管理システム1は、検査結果データベース2と薬データベース3と管理サーバ4と登録更新サーバ7を備えている。検査結果データベース2には、肝薬物代謝酵素に関する遺伝子検査の結果として得られる遺伝子タイプの情報(検査結果データ)が登録される。薬データベース3には、複数の肝薬物代謝酵素の各々についての薬物の代謝能の情報(薬データ)が記録される。ユーザ端末6から管理サーバ4に要求コマンドが送られると、検査結果データまたは薬データがユーザ端末6に送信される。この場合、登録更新サーバ7により、検査結果データの登録や薬データの更新が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肝薬物代謝酵素(CYP)が薬物の代謝に関与していることが知られている。従って、ある薬物の薬効と安全性を知るためには、その薬物が、どのCYP分子種により代謝されるのか、さらに個人個人によりかなりのCYPの多様性があるため、それぞれの個人が各自の多様性タイプを正確に知ることが重要である。近年では、様々なCYPの検査方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−148666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、CYPの検査結果は、医師や薬剤師にのみ伝えられることが多く、患者に検査結果が伝えられることは少なかった。しかし、場合によっては、患者自身もその検査結果を知っておきたいこともある。例えば、将来、何らかの薬物を投与しなければならないようなケースを想定して、事前に自分自身のCYPの遺伝子タイプを知っておくことは有利である。そこで、検査結果票などの紙を渡して、患者に検査結果を伝えることも考えられる。しかし、検査結果票を患者自身が管理する場合では、患者によっては検査結果票を紛失してしまい、いざという時に利用できないこともあり得る。また、検査結果票とあわせて、遺伝子タイプごとの薬物の代謝能の情報が記載された解説書を渡すことも考えられる。しかし、遺伝子タイプごとの薬物の代謝能については、現在も研究段階の途中であり、新しい情報が頻繁に見出される可能性は十分にある。そのため、最新の研究で新しい情報が見出されるたびに解説書を改訂するのが理想的ではある。しかし、現実的(コスト的)には、そのような改訂は困難である。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、肝薬物代謝酵素(CYP)に関する遺伝子検査の検査結果として得られる遺伝子タイプの情報や、遺伝子タイプごとの薬物の代謝能の情報を、容易に入手することのできる遺伝子検査データ管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遺伝子検査データ管理システムは、肝薬物代謝酵素に関する遺伝子検査の結果として得られる遺伝子タイプの情報が、検査結果データとして登録される検査結果データベースと、前記複数の肝薬物代謝酵素の各々についての薬物の代謝能の情報が、薬データとして記録される薬データベースと、ユーザ端末からの要求コマンドに応じて、前記検査結果データまたは前記薬データを前記ユーザ端末に送信する管理サーバと、前記検査結果データの登録または前記薬データの更新を行うための登録更新サーバと、を備えている。
【0007】
これにより、肝薬物代謝酵素(CYP)に関する遺伝子検査が行われると、検査結果データ(遺伝子タイプの情報)が検査結果データベースに登録される。薬データベースには、複数のCYPの各々についての薬物の代謝能の情報が、薬データとして記録されている。検査結果データや薬データが必要なユーザは、ユーザ端末から管理サーバへ要求コマンドを送信する。そうすると、検査結果データや薬データが検査結果データベースや薬データベースからユーザ端末に送信される。このようにして、ユーザは、検査結果データや薬データを容易に入手することができる。そのうえ、薬データベースでは適切に情報の更新が行われるので、新しい情報(薬データ)を入手することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肝薬物代謝酵素に関する遺伝子検査の検査結果として得られる遺伝子タイプの情報(検査結果データ)や、遺伝子タイプごとの薬物の代謝能の情報(薬データ)を、容易に入手することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における遺伝子検査データ管理システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の遺伝子検査データ管理システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、新生児の体質検査等に用いられる遺伝子検査データ管理システムの場合を例示する。
【0011】
本発明の実施の形態の遺伝子検査データ管理システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の遺伝子検査データ管理システムを示すブロック図である。図1に示すように、遺伝子検査データ管理システム1は、検査結果データベース2(検査結果DB)と薬データベース3(薬DB)を備えている。検査結果データベース2には、肝薬物代謝酵素(CYP)に関する遺伝子検査の結果として得られる遺伝子タイプの情報が、検査結果データとして登録される。薬データベース3には、複数のCYPの各々についての薬物の代謝能の情報が、薬データとして記録される。
【0012】
検査結果データベース2と薬データベース3は、管理サーバ4に接続されている。管理サーバ4は、ネットワーク5(例えば、インターネットなど)を介してユーザ端末6(例えば、携帯電話や携帯端末など)に接続されている。管理サーバ4は、ユーザ端末6からネットワーク5を介してアクセス可能であるともいえる。管理サーバ4は、ユーザ端末6からの要求コマンドに応じて、検査結果データや薬データをユーザ端末6に送信(返信)する。
【0013】
また、検査結果データベース2と薬データベース3は、登録更新サーバ7にも接続されている。登録更新サーバ7は、検査結果データベース2への検査結果データの登録や、薬データベース3への薬データの記録や更新に用いられる。
【0014】
検査結果データには、CYPに関する遺伝子検査の結果が含まれる。遺伝子検査では、5つのCYP分子種(CYP1A21C、CYP2C93、CYP2C192、CYP2C193、CYP2D6 100C>T)に関する遺伝子に変異が含まれているか否かが検査される。検査対象者の遺伝子に含まれる2つの塩基の両方ともが変異遺伝子を持たない場合には、遺伝子タイプが「平均タイプ」であると判定される。また、2つの塩基の一方が変異遺伝子を持つ場合には、遺伝子タイプが「少し効き過ぎタイプ」であると判定される。また、2つの塩基の両方ともが変異遺伝子を持つ場合には、遺伝子タイプが「効き過ぎ要注意タイプ」であると判定される。これらの遺伝子タイプの情報が、検査結果データとして検査結果データベース2に登録される。また、そのCYP分子種によって代謝される薬物の情報が登録されてもよい。
【0015】
例えば、CYP1A21Cについて、「平均タイプ」という情報と、CYP1A2で代謝される薬物(カフェインが含まれる薬剤など)が登録される。また、CYP2C93について、「少し効き過ぎタイプ」という情報と、CYP2C9で代謝される薬物(例えば、ワルファリン、フェニトイン、トルブタミド、ロサルタンなど)が登録される。また、CYP2C192とCYP2C193について、「平均タイプ」という情報と、CYP2C19で代謝される薬物(例えば、クロピドグレル、オメプラゾール、ランソプラゾール、ジアゼパム、ラベプラゾールなど)が登録される。また、CYP2D6 100C>Tについて、「効き過ぎ要注意タイプ」という情報と、CYP2D6で代謝される薬物(例えば、タモキシフェン、メトプロロール、プロプラノロール、コデイン、アトモキセチンなど)が登録される。
【0016】
薬データには、複数のCYP(例えば、CYP1A21C、CYP2C93、CYP2C192、CYP2C193、CYP2D6 100C>T)の各々についての薬物の代謝能の情報が記録されている。薬データには、多数の薬物についての情報が記録される。例えば、一つの薬物(アミノフィリンなど)について、その販売名、製造販売業者の名称、代謝されるCYP分子種(CYP1A2)の情報が記録される。
【0017】
次に、遺伝子検査データ管理システム1における処理の流れを説明する。
【0018】
本発明の実施の形態の遺伝子検査データ管理システム1を利用する場合、まず、病院やクリニックなどでスワブを使って採取した唾液サンプルが検査機関に送られる。検査機関では、採取した唾液サンプルを用いて遺伝子検査を行い、その検査結果をクリニックへ伝える。また、検査機関には、登録更新サーバ7が設置されており、登録更新サーバ7を用いて、検査結果のデータ(検査結果データ)が検査結果データベース2に登録される。薬データベース3には、多数の薬物の薬データが記録されている。検査機関では、薬データに関する新しい情報が得られるたびに、登録更新サーバ7を用いて、薬データベース3の薬データを更新する。
【0019】
ユーザは、検査結果データや薬データが必要になったときに、自分が所持しているユーザ端末6を用いて管理サーバ4にアクセスする。管理サーバ4は、検査結果データの要求コマンドを受信すると、検査結果データを検査結果データベース2から読み出して、ユーザ端末6に送信(返信)する。また、管理サーバ4は、薬データの要求コマンドを受信すると、薬データベース3から薬データを読み出して、ユーザ端末6に送信(返信)する。このようにして、管理サーバ4からユーザ端末6に、検査結果データや薬データが送信される。
【0020】
このような本発明の実施の形態の遺伝子検査データ管理システム1によれば、CYPに関する遺伝子検査の検査結果として得られる遺伝子タイプの情報(検査結果データ)や、遺伝子タイプごとの薬物の代謝能の情報(薬データ)を、いつでも簡単に入手することができる。
【0021】
すなわち、本実施の形態では、CYPに関する遺伝子検査が行われると、検査結果データ(遺伝子タイプの情報)が検査結果データベース2に登録される。薬データベース3には、複数のCYPの各々についての薬物の代謝能の情報が、薬データとして記録されている。検査結果データや薬データが必要なユーザは、ユーザ端末6から管理サーバ4へ要求コマンドを送信する。そうすると、検査結果データや薬データが検査結果データベース2や薬データベース3からユーザ端末6に送信される。このようにして、ユーザは、検査結果データや薬データを容易に入手することができる。そのうえ、薬データベース3では適切に情報の更新が行われるので、新しい情報(薬データ)を入手することができる。
【0022】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明にかかる遺伝子検査データ管理システムは、検査結果データや薬データを容易に入手できるという効果を有し、新生児の体質検査等として有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 遺伝子検査データ管理システム
2 検査結果データベース
3 薬データベース
4 管理サーバ
5 ネットワーク
6 ユーザ端末
7 登録更新サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝薬物代謝酵素に関する遺伝子検査の結果として得られる遺伝子タイプの情報が、検査結果データとして登録される検査結果データベースと、
前記複数の肝薬物代謝酵素の各々についての薬物の代謝能の情報が、薬データとして記録される薬データベースと、
ユーザ端末からの要求コマンドに応じて、前記検査結果データまたは前記薬データを前記ユーザ端末に送信する管理サーバと、
前記検査結果データの登録または前記薬データの更新を行うための登録更新サーバと、
を備えることを特徴とする遺伝子検査データ管理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−57961(P2012−57961A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198703(P2010−198703)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(301034223)株式会社メディビック (4)
【Fターム(参考)】