説明

遺伝子毒性試験法

組換えベクターが、光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列を含む組換え DNA 分子を含む。DNA 配列は、DNA 損傷に対する応答において DNA 配列の発現を活性化するように調整された調節エレメントに操作可能的に連結されている。細胞を形質転換するのに用いるとき、そのベクターは、ベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性に比して、細胞のゲネチシン感受性を実質的に変えない。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、DNA 損傷を起こすか、強化するものを検出する改善方法ならびにかかる方法に有効に使用し得る分子および形質転換された細胞に関する。
【0002】
DNA 損傷 は、種々のもの、例えば、紫外線、X 線、遊離ラジカル、メチル化剤および他の変異原性化合物により誘発される。これらのものは、生物体の遺伝子コードを含む DNA に損傷を起こし、遺伝子に変異を起こし得る。微生物において、かかる変異は微生物の新しい望ましくない株の進化をもたらすことがある。例えば、抗生物質または殺草剤に耐性の細菌が生じる。動物において、かかる変異は、癌遺伝子の生成をもたらし、あるいは配偶子を損傷して、子孫に先天的欠陥を与え得る。
【0003】
これらの DNA を損傷するものは、DNA を含むヌクレオチドを化学的に改変したり、ヌクレオチドを連結するホスホジエステルをこわすか、または塩基 (T-A or C-G) 間の結合を分裂せしめることがある。これらの DNA を損傷するものの作用に対抗するために、細胞は多数のメカニズムを進化せしめる。例えば、E. coli における SOS 応答が DNA 損傷 により誘発された非常に特徴的な細胞の応答であり、DNA 修復酵素を含む一連のタンパク質が発現されて、損傷された DNA が修復される。
【0004】
いかなるものが DNA 損傷を起こしまたは強化するかを同定することが重要であるとき、多数の状況が存在する。これらのものにヒトが暴露されるのが安全であるかを検定するとき、DNA 損傷を起こすものを検出することが特に重要である。例えば、これらのものを検出する方法を、候補の医薬、食品補助剤または化粧品となる所望の化合物を、DNA 損傷を誘発しないかどうかについてスクリーニングするための変異原性アッセイとして使用できる。あるいは、DNA 損傷を起こすものを検出する方法を、変異原性化合物を含有するもので汚染された水の供給をモニターするのに使用し得る。
【0005】
物質の毒性を調べるために Ames 試験 などの種々の方法が、知られているが、いくつかの理由により満足できない。例えば、サンプルのインキュベーションは多くの日数を要することがある。遺伝子毒性は短い時間内で得られることがしばしば望まれる。さらに、DNA 損傷を検出する多くの既知方法 (Ames 試験 および関連方法を含む) は、最終点として永続的な DNA 損傷を、誤修復 DNA (変異および組換え) の形態またはフラグメント DNA 形態での非修復の損傷で、調べる。しかし、大部分の DNA 損傷は最終点が測定できる前に修復され、永続的な DNA 損傷が起きるのは、修復メカニズムが飽和されているような厳しい状態のときのみである。
【0006】
遺伝子毒性試験の改善が WO 98/44149 に開示されている。その明細書は、DNA 損傷に対する応答における遺伝子発現を活性化し、光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列に操作可能的に結合する調節エレメントを含む組換え DNA 分子に関する。かかる DNA 分子は細胞を形質転換するのに使用でき、その細胞は DNA 損傷を起こすか強化する物質の存在を検出するための遺伝子毒性試験に使用できる。細胞をある物質の対象とし、細胞からの光放出レポーター・タンパク質の発現は、その物質が DNA 損傷を起こすことを表す。
【0007】
WO 98/44149 に記載された遺伝子毒性試験は、損傷の変異への転換を最小にするために進化した DNA 修復活性の誘発を検出する。従って、WO 98/44149 に記載された方法は DNA を損傷する物質の存在を検出するのに使用され得る。
【0008】
WO 98/44149 は、遺伝子毒性試験に使用され得る様に、細胞を形質転換するのに使用され得る多数の有用な遺伝子構築体を記載する。ひとつのこの構築体は yEGFP-444 (WO 98/44149 の図12に示される) であり、本発明は、yEGFP-444 についての開発研究において同定された新しい型の構築体に基づく。
【0009】
本発明の第1態様において、光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列を含む組換え DNA 分子を含む組換えベクターを提供する。それは、DNA 配列が DNA 損傷に対する応答において DNA 配列の発現を活性化するように調整された調節エレメントに操作可能的に連結されている。そこでは、細胞を形質転換するのに用いるとき、そのベクターは細胞のゲネチシン(geneticin)感受性を、ベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性に比して実質的に変えない。
【0010】
本発明の第2態様において、組換えベクターをつくる方法を提供する。この方法は下記の工程を含む:
(i) 光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列を有するベクター骨格を準備する;
(ii) DNA 配列を、DNA 損傷に対する応答において DNA 配列の発現を活性化するように調整された調節エレメントに操作可能的に連結する;
(iii) ゲネチシンに対する感受性を付与するために調整された選択可能なマーカーを有するベクター骨格を準備する;
(iv) 選択可能なマーカー細胞を非機能性とする。細胞を形質転換するのに用いるとき、そのベクターは細胞のゲネチシン感受性を、ベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性に比して実質的に変えない。
【0011】
本発明の第3態様において、本発明の第1態様に適合するか、または第2態様の方法でつくられた組換えベクターを含有する細胞を提供する。
【0012】
本発明の第4態様において、DNA 損傷を起こすか強化する物質の存在を検出する方法を提供する。この方法は、本発明の第3態様に適合する細胞を、ひとつの物質にあてがい、細胞からの光放出レポーター・タンパク質の発現をモニターすることを含む。
【0013】
"調節エレメント" は、DNA 配列と関連する遺伝子の転写を調節する DNA 配列を意味する。
"操作可能的に連結する" は、調節エレメントがレポーター・タンパク質の発現を誘発し得ることを意味する。
【0014】
"レポーター・タンパク質" は、本発明の DNA 分子の調節エレメントに対する応答で発現されたときに、適当なアッセイ手段で検出可能なタンパク質を意味する。"pWDH445" は、明細書の図 5 に示される発現ベクターを意味する。pWDH445 は最初 yEGFP444 といわれ、WO 97/44149 の図 12 に開示されている。
【0015】
"細胞のゲネチシン感受性を実質的に変えない" は、本発明の第1態様によるベクターで形質転換された細胞のゲネチシン感受性が、そのベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性の少なくとも 70% であることを意味する。このゲネチシン感受性は、そのベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性の少なくとも 80% であるのが好ましく、さらに好ましくは、少なくとも 90%、さらにいっそう好ましくは、少なくとも 95%、最も好ましくは、少なくとも 99% である。とりわけ好ましいのは、本発明の第1態様によるベクターで形質転換された細胞のゲネチシン感受性が、そのベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性と同じことである。逆にいえば、ベクターで形質転換された細胞のゲネチシンに対する耐性が、そのベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシンに対する耐性と同じである。
【0016】
本発明の第4態様の方法は、新規の費用効果的な遺伝子毒性スクリーンを表す。これは、試験される必要のある化合物が非常に多数である製薬産業などにおいて使用される予め調節のスクリーニングアッセイを提供するのに用い得る。これは、既存の真核性遺伝子毒性アッセイよりも処理能力が大きく、化合物消費が小さく、広範な変異誘発物質および染色体変異物質に対し感受性が高い。
【0017】
本発明の第4態様の方法は、物質が DNA 損傷を起こし得るかどうかを検定するのに適している。これは、DNA 損傷物質にヒトを暴露するのが安全かを検定するときに、DNA 損傷を起こす物質を検出するのに特に有用である。例えば、この方法は、変異原性アッセイとして、既知の物質、例えば候補医薬、食材または化粧品などが DNA 損傷を誘発しないかどうかをスクリーニングするのに使用し得る。あるいは、本発明の第4態様の方法は、DNA 損傷物質を含有する汚染物で水の供給が汚染されていないかをモニターするのに使用し得る。
【0018】
本発明の第4態様の方法は、ある物質が DNA 損傷を強化し得るかどうかを検定するのに等しく使用し得る。例えば、ある物質が DNA 損傷の蓄積を、DNA 修復(例えば、修復タンパク質の発現または機能を防御)を阻害することにより、DNA 損傷を直接的に加えないで、起こすことがある。これらの物質は補助変異原として知られている。
【0019】
本発明は、WO 98/44149 に開示されたベクターについてなされた研究を基礎とする。本発明者は、既知ベクター pWDH445 の自発的再編成が驚くべき輝きレポーターをもたらすことを見出した。
【0020】
用語 "輝きレポーター" によって、レポーターからの蛍光が驚くべきことに既知ベクター pWDH445 よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、最も好ましくは、既知ベクター pWDH445 の少なくとも12倍であることを意味する。
【0021】
従って、実施例に詳細に記載した実験を行い、この予想外の変異の特性を明かにし、本発明の第1態様による組換えベクターを単離した。
【0022】
ベクター pWDH445 を図 5 に表示する。本発明者は、驚くべきことに、 pWDH445 プラスミドからの kanMX3 モジュール機能の喪失 (すなわち、ゲネチシン耐性の除去) がレポーター・タンパク質 (pWDH445 における GFP) を発現し得るベクターをもたらすことを発見した。レポーターからのシグナルは、DNA 損傷が起きると、有意に大きい。kanMX3 モジュールは、ゲネチシン耐性が害されると、ヌクレオチドの欠失、置換または付加により変異が起きるように、分裂され得る。それで、ベクターは kanMX3 モジュールのヌクレオチド塩基を含み得るが、遺伝子が非機能的になるように、遺伝子が分裂される。従って、第1態様のベクターが、光放出レポーター・タンパク質、調節エレメントおよび非機能性 kanMX モジュールを含むことが好ましい。
【0023】
ベクター pWDH445 における kanMX3 モジュール機能の喪失を発見して、本発明の第1態様のベクターが遺伝子毒性試験に特に有用であることがわかった。また、第1態様の好ましいベクターをつくるための第2態様の方法を発明した。このベクターを第4態様の方法において使用し得る。
【0024】
従って、第2態様の方法で使用されるベクター骨格は、当業者に既知の適当なベクターを含み得る。これは、光放出レポーター・タンパク質、調節エレメントおよびゲネチシン耐性を付与する選択可能なマーカーを運ぶのに使用し得る。骨格は低複写数または高複写数のプラスミドを含み得る。骨格は、好ましくは既知のベクター pWDH445、pWDH443 (Walmsley et al, R.M., 1997)、pRS316 (Sikorski et al., 1989) から選択し得る。
【0025】
第1態様の組換えベクターは、細胞の核において自動的に複製されるように、設計し得る。この場合、DNA 複製を誘発するエレメントが組換えベクターにおいて必要となることがある。従って、ベクターは、好ましくはイーストについての複製原を含み得る。適切な複製原は当業者に既知である。例えば、適切なエレメントをイースト 2μプラスミドから誘導する。かかる複製ベクターは、複数コピーの DNA 分子を形質転換細胞中に生じせしめることができ、従って、レポーターの高発現(およびそれによる光放出の増加) が必要なときに有用である。この形質転換細胞は第3態様の細胞である。
【0026】
組換えベクターは、ベクターでトランスフェクトされた細胞の選択をなし得る、好ましくは、第1態様の DNA 分子を組み込んでいる組換えベクターを保持する細胞の選択をなし得る少なくとも1の選択可能なマーカーを含み得る。適当な選択可能なマーカーの例には、カナマイシンやアンピシリンなどの抗生物質に対する耐性を与える遺伝子がある。あるいは、または追加的に、選択可能なマーカーには、オートトロフィー・マーカー、すなわちプロトトロフィーを回復するもの、例えばイースト URA3 または LEU2 遺伝子がある。
【0027】
ゲネチシン耐性を付与する選択可能なマーカーは、なんらかの kanMX モジュール、例えば、kanMX2、kanMX3、kanMX4、kanMX6 を含み得る。しかし、選択可能なマーカーが kanMX3 モジュールを含むことが好ましい。従って、本発明の第1態様の好ましいベクターは、kanMX3 モジュールの分裂を有する pWDH445 (WO 98/44149 では y EGFP-444) を含む。
【0028】
光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列は、いかなる光放出タンパク質をもコードし得る。しかし、タンパク質をコードする DNA 配列が蛍光性であるのが好ましい。光放出レポーター・タンパク質をコードする好ましい DNA 配列は、グリーン蛍光蛍光タンパク質 (GFP) およびその光放出誘導体をコードする。GFP は、クラゲ Aequorea victoria に由来し、青色光を吸収でき、容易に検出可能なグリーン蛍光光を発色し、よってレポーター・タンパク質として適当である。GFP は、その測定が簡単であり、試薬を要せず、非毒性であるので、好都合に使用できる。
【0029】
GFP の誘導体は、GFP のポリペプチド・アナログまたはポリペプチド・フラグメントをコードする DNA 配列を含む。これらは光を放出し得る。これらの誘導体の多くは、Aequorea victoria に内因する GFP と異なる波長で、光を吸収し再放出する。例えば、本発明の第1態様で好ましい DNA 分子は、GFP の S65T 誘導体 (GFP のセリン 65 がトレオニンで置換されている) をコードする DNA 配列を有する。S65T GFP は、野生型 GFP よりも明るく(その最長波長ピークでの刺激で)、遅い光漂白のみを示すという利点がある。さらに、S65T GFP は、定量的な蛍光を生じ、蛍光活性化細胞ソーターで使用されるアルゴン・イオン・レーザーのアウトプットに適合する。S65T GFP をコードする DNA 分子を含有する本発明の第2態様における細胞は、本発明の第4態様の方法で使用でき、光放出を細胞抽出物から測定するとき特に有用である。
【0030】
最も好ましい DNA 配列は、Cormack et al. (1997) (Microbiology 143 p303-311) よる記載の GFP 誘導体などのイーストの高める GFP (yEGFP) をコードする。かかる yEGFP は、イーストでの使用に偏したアミノ酸配列を有する。すなわち、yEGFP は、本発明の第2態様の形質転換細胞がイーストのときに特に適している。さらに、イーストなどの yEGFP からの光放出が S65T 誘導体による光放出よりもかなり大きいことがわかった。yEGFP をコードする組換え DNA 分子も、元の GFP より熱感受性が低く、有用である。
【0031】
組換え DNA 分子の調節エレメントが、DNA 損傷が起きたときに、レポーター・タンパク質の発現を活性化することが好ましい。かかる調節エレメントは、できればプロモーター配列を含み、これが RNA ポリメラーゼを誘発し、DNA 分子に結合し、レポーター・タンパク質をコードする DNA の転写を開始する。調節エレメントはまた、リボソーム結合について翻訳開始配列などの他の機能性 DNA 配列、または DNA 損傷後の遺伝子発現を促進する転写因子を結合する DNA 配列を含み得る。調節エレメントは、調節遺伝子からの転写の阻害を移動するのに作用し、それにより遺伝子の転写を増加するタンパク質をコードし得る。
【0032】
好ましい調節エレメントは DNA 修復タンパク質の発現の調節に本来関連する DNA 配列である。例えば、遺伝子からの調節エレメント、イーストからの RAD2、RAD6、RAD7、RAD18、RAD23、RAD51、RAD54、CDC7、CDC8、CDC9、MAG1、PHR1、DIN1、DDR48 および UB14 などを、本発明の第1態様の組換え DNA 分子をつくるのに使用し得る。すなわち、第2態様で使用される調節エレメントは、イーストからの RAD2、RAD6、RAD7、RAD18、RAD23、RAD51、RAD54、CDC7、CDC8、CDC9、MAG1、PHR1、DIN1、DDR48 および UB14 などの遺伝子を含み得る。
【0033】
好ましい調節エレメントは、プロモーターおよび RAD54 修復遺伝子の 5' 調節配列を含む。かかる調節エレメントはイーストおよび特に Saccharomyces cerevisiae から誘導し得る。最も好ましくは、調節エレメントが、WO 98/44149 で同定された DNA 配列またはその機能性アナログもしくはフラグメントに対応する RAD54 修復遺伝子の 5' 調節配列およびプロモーターを含む。
【0034】
従って、最も好ましい組換え DNA 分子は、GFP またはその光放出誘導体をコードする DNA 配列に操作可能的に連結された RAD54 調節エレメントを含む。よって、第1態様の好ましい組換えベクターは、GFP またはその光放出誘導体に操作可能的に連結された RAD54 遺伝子を含む。ベクターが追加的に非機能性 kanMX3 モジュールを含むことが特に好ましい。すなわち、本発明の第1態様の最も好ましい組換えベクターは pGen001 であり、図 15 に表示する。pGen001 のヌクレオチド配列を図 16 および 17 に示す。
【0035】
pGen001 における組換え DNA 分子が交換可能であることが評価される。従って、図 15 に表示される RAD54 プロモーター yEGFP 発現カセットは容易に置き換えることができ (例えば、Bam H1 / Ascl 消化により)、本発明の他の組換え DNA 分子を挿入できる (参照、下記)。
【0036】
本発明者はまた、pGen001 における RAD54 調節エレメントを RNR 調節エレメントで置き換えて、第1態様の組換えベクターを提供できることを発見した。得られる組換えベクターは、DNA 損傷に暴露されたときに、光放出レポーター・タンパク質の驚くべき輝きのシグナルをつくる。このように、第1態様の組換えベクターの調節エレメントは、第2態様の方法で使用され、RNR 調節エレメントを含み得る。
"RNR 調節エレメント" とは、RNR 遺伝子の天然の調節物質である DNA 配列を意味する。
【0037】
本発明の好ましい遺伝子は、RNR 調節エレメントが RAD54 調節エレメントに置き換わる kanMX3 モジュールの分裂をもつ pWDH445 (WO 98/44149 では yEGFP-444) を含む。kanMX3 モジュールは、ゲネチシン耐性が害される限り、変異がヌクレオチドの欠失、置換または付加により起きるように、分裂され得る。
【0038】
組換え DNA 分子の RNR 調節エレメントは、DNA 損傷が起きたときに、レポーター・タンパク質の発現を活性化する。かかる調節エレメントは、できればプロモーター配列を含み、これが RNA ポリメラーゼを誘発し、DNA 分子に結合し、レポーター・タンパク質をコードする DNA の転写を開始する。調節エレメントはまた、リボソーム結合について翻訳開始配列などの他の機能性 DNA 配列、または DNA 損傷後の遺伝子発現を促進する転写因子を結合する DNA 配列を含み得る。調節エレメントは、調節遺伝子からの転写の阻害を移動するのに作用し、それにより遺伝子の転写を増加するタンパク質をコードし得る。
【0039】
好ましい調節エレメントは DNA 修復タンパク質の発現の調節に本来関連する DNA 配列である。例えば、遺伝子からの調節エレメント、イーストからの RNR1、RNR2 および RNR3 などを、本発明の第1態様の組換え DNA 分子をつくるのに使用し得る。すなわち、第2態様で使用される調節エレメントは、イーストからの RNR1、RNR2 または RNR3 などなどの遺伝子を含み得る。
【0040】
好ましい調節エレメントは、プロモーターおよび RNR2 遺伝子の 5' 調節配列を含む。RNR2 遺伝子は Saccharomyces cerevisiae の染色体Xに見られる。好ましい調節エレメントは、Saccharomyces cerevisiae ゲノム・データベースで同定されるように、染色体X上で RNR2 と連結する調整 387100 と 398299 との間に誘導できる。これは、調整 387100 と 393299 との間から、さらに好ましく誘導できる。データベースは World Wide Web により多くのサイトでアクセスできる。例えば、genome-www.stanford.edu。
【0041】
RNR3 の調節エレメントは特に好ましい。この RNR3 エレメントの配列は周知であり、図 33 に示す。遺伝子は YIL066C であり、図 33 は ATG 開始コドンの 1000bp 上流も示す。これを太字で表示する。RNR3 の全配列長は 2610bp の長さである。RNR3 プロモーターは、その導入が DNA 損傷特異的であるので、特に適している:正常な状態では発現レベルが低く、損傷に応答して有意の誘発が生じる。
【0042】
最も好ましい組換え DNA 分子は、GFP またはその光放出誘導体をコードする DNA 配列に操作可能的に連結された RNR2 または RNR3 調節エレメントを含む。従って、第1態様の好ましい組換えベクターは、GFP またはその光放出誘導体をコードする DNA 配列に操作可能的に連結された RNR2 または RNR3 遺伝子を含む。ベクターが追加的に非機能性 kanMX3 モジュールを含むことが特に好ましい。すなわち、本発明の第1態様の最も好ましい組換えベクターは pGenRNR2 であり、図 24 に表示する。pGenRNR2 のヌクレオチド配列を図 26 に示す。
本発明の第1態様の別の好ましい組換えベクターは pGenRNR3 であり、図 25 に表示する。pGenRNR3 のヌクレオチド配列を図 27 に示す。
【0043】
従って、最も好ましい組換えベクターは 、GFP またはその光放出誘導体をコードする DNA 配列に操作可能的に連結された RAD54、RNRNR2 または RNR3 調節エレメントを含む。これはさらに非機能性 kanMX3 モジュールを含むのが好ましい。
【0044】
本発明の第1態様の組換えベクターは、例えば、プラスミド、コスミドまたはファージであり得る。かかる組換えベクターは、DNA 分子を複製するときに、大きい有用性をもつ。さらに、組換えベクターは、DNA 分子で細胞を形質転換するのに非常に有用であり、レポーター・タンパク質の発現を促進もする。
【0045】
第1態様のベクターは、第2態様の方法を用いてつくられ、研究室で新規化合物の遺伝子毒性スクリーンを実施するのに、製薬産業で特に有用である。特に、各ベクターは、宿主イースト細胞において 2μエレメントの存在で自動的に複製することができる。遺伝学的に修飾される生物体の使用に関する規制のゆえに、遺伝子が閉鎖環境でのみ使用されて、環境に放出されないのが特に好ましいことが評価されるであろう。
【0046】
しかし、ある種の環境において、pGen001 の RAD54 および GFP (図 15)、pGenRNR2 の RNR2 および GFP (図 24) または pGenRNR3 の RNR3 および GFP (図 25) を利用するのが好ましいが、研究室に代わる環境においては、環境へのベクターの放出を要することがある。従って、発明者は、複製の細菌性源およびアンピシリン耐性を付与する遺伝子もこれらの各ベクターから除外してきた。これを表すために、図 34 は、Apa L1 で消化された pGen001 (図 34a) をベクター pGenEM001(図 34b)をつくるために示す。pGenRNR2 または pGenRNR3 の Apa L1 による類似の消化(表示せず) も複製の細菌源およびアンピシリン耐性遺伝子を除去する。
【0047】
自動的複製ベクターの代わりに、第1態様のベクターおよび DNA 分子が宿主細胞の染色体に組み込まれるように、組換えベクターを設計できる。かかる組み込みは、複製プラスミドに比して改善された安定性という利点をもつ。この場合、標的化された組み込みをもたらす DNA 配列(例えば、相同的組換えによる)が望ましい。例えば、S.cerevisiae の染色体 IV からの HO 遺伝子フラグメントの組換えベクターへの組み込みは、S.cerevisiae またはそれから誘導される系への組み込みをもたらす。HO 遺伝子のフラグメントが図 35 に示される配列またはその誘導体を有することが好ましい。複数の組み込みベクターを宿主細胞のゲノムに組み込むことも可能である。これは、大きい発現を可能にし、光放出レポーター・タンパク質のシグナル・アウトプットを一層増加する。
【0048】
従って、好ましいベクターは、GFP またはその光放出誘導体に操作可能的に連結された RAD54 遺伝子または RNR2 遺伝子または RNR3 遺伝子、非機能性 kanMX3 モジュール、および標的細胞のゲノムへ組み込まれるために調整されたヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は HO 遺伝子のフラグメントであり得る。
【0049】
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、LEU2-d 遺伝子 (Saccaromyces cerevisiae 野生型 LEU2 遺伝子、29bp 末端切除プロモーターをもつ) を、プラスミド pEMBL-yex4 (Cesareni et al, 1987) からのフランキング AatII クローニング部位で増幅した。このフラグメントを pWDH443 (Walmsley et al, 1997) にクローン化して、プラスミド pGenIn011 を得た。このプラスミドをさらに、Sac I 消化および再連結反応による KanMX モジュールの 2.1kb 除去により修飾し、非機能性 KanMX モジュールを得た。このプラスミドを pGenIn012 と名付けた。このプラスミドを Bam HI で、イースト株 FF18984 への形質転換の前に切断して、HO 座でのプラスミド組み込みが容易になった。
【0050】
従って、本発明の好ましい組み込みベクターは pGenIn012 であり、図 36 に表示する。このベクターの完全配列を図:41 に示す。長さは 7515 bp である。pGenIn012 は RAD54 を含み、RNR2 または RNR3 を含む類似の組み込みベクターは、表示していないが、本発明に適合すると判定できる。pGenIn012 は LEU2-d 選択可能マーカーおよび非機能性 kanMX3 モジュールを含む。
【0051】
ゲノムへの標的化された組み込みをもたらし、組換えベクターへ組み込まれ得る他の DNA 配列に、S.cerevisiae のリボソーム DNA アレイの配列がある。かかる rDNA 配列は、S.cerevisiae またはそれから誘導される細胞系の染色体 XII における標的化された組み込みをもたらす。rDNA 配列が図 37 に示される配列を有するかまたはその誘導体であることが好ましい。
【0052】
Saccaromyces cerevisiae ゲノム由来の 4.5kb Bgl II カット rDNA フラグメントを上記の Bam HI カット pGenIn012 にクローン化した。このフラグメントは2つの異なる方向にクローン化されたので (組み込みの相違する方向を導く)、これらの2種のプラスミドを pGenIn022A および pGenIn022B と名付けた。プラスミド pGenIn022A を、イースト株 FF18984 への形質転換の前に Sph I で切断し、Saccaromyces cerevisiae ゲノムのタンデム rDNA リピート内のプラスミド組み込みを容易にした。
【0053】
従って、好ましいベクターは、GFP またはその光放出誘導体に操作可能的に連結された RAD54 遺伝子または RNR2 遺伝子または RNR3 遺伝子、非機能性 kanMX3 モジュール、および標的細胞のゲノムへ組み込まれるために調整されたヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は rDNA 配列であり得る。
【0054】
従って、本発明の好ましい組み込みベクターは pGenIn012 A-型であり、図 38 に表示する。このベクターの完全配列を図:42 に示す。長さは 12093 bp である。pGenIn012 A-型は RAD54 を含み、RNR2 または RNR3 を含む類似の組み込みベクターは、表示していないが、本発明に適合すると判定できる。pGenIn012 A-型は LEU2-d 選択可能マーカーおよび非機能性 kanMX3 モジュールを含む。
【0055】
図 40 は、(i) kanMX 存在の pGenIn012 輝きに対する作用、すなわち染色体に HO で組み込まれたときの RAD54-GFP-HO の組み込み型 (すべて MMS なし) (HO int); および (ii) kanMX 存在の pGenIn012A 輝きに対する作用、すなわち RAD54-GFP-rDNA の組み込み型を示す。評価すべきは、rDNA B int ならびに rDNA A int A および B が染色体におけるレポーター・カセットの方向付けをなすことである。明らかに、rDNA A int A が最も輝く構築体であり、おそらく、周りの DNA 配列 およびそれとのタンパク質相互作用、例えば構造的妨害によるのであろう。
【0056】
好ましい組換えベクターは pFA ベクターまたはその誘導体から形成し得る。これらは当技術分野で既知である (参照、Wach et al. (1994) イースト 10 p1793-1808)。
好ましい組換えベクターは WO 97/44149 (出典明示により本明細書の一部とする) に開示されている yEGFP-444 から誘導する。yEGFP-444 は pWDH445 としても知られている。
【0057】
本発明の第3態様により、組換えベクターを細胞中に組み込む。かかる宿主細胞は真核または原核であり得る。適当な宿主細胞には、細菌、植物、イースト、昆虫および哺乳動物の細胞がある。好ましい宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae などのイースト細胞である。イーストは、細菌のように操作しやすいにもかかわらず、真核細胞であるので、細菌よりもヒトに密接に関連する DNA 修復系をもつので、好ましい。 宿主としてイースト細胞を用いる他の利点は、修復系が大きく構築されているヒトと異なりイーストでは DNA 修復系が誘導可能なことである。
【0058】
好ましいイースト細胞は下記を含む:
(i) Y485 半数体;
(ii) Y486 (FF18984 としても知られる) 半数体;
(iii) Y485/486 二倍体;
(iv) FY73;
(v) YLR030w.α;
(vi) Y300.
これらの株はすべてナショナル・イースト株コレクションにある。
【0059】
上記の (i)、(ii) および (iii) が本発明方法における使用のために特に有用であることがわかった。好ましい株は GenT01 を含む。レポーター株 (GenT01) は、イーストの高める Aequorea victoria GFP 遺伝子に融合された RAD54 遺伝子の全上流非コード DNA 配列を含有する複製プラスミド (pGen001、図 15) を含有するイースト FF18984 を含む。
【0060】
DNA 分子によりコードされたタンパク質の発現に使用される宿主細胞は、理想的には恒常的に形質転換されているが、非恒常的に形質転換された (一時的な) 細胞の使用を排除しない。
【0061】
本発明の第3態様で形質転換された細胞は、実施例に記載の下記の方法によって形成し得る。理想的には、細胞はイースト細胞である (例えば、上記の株のひとつ)。かかる形質転換された細胞を、あるものが DNA 損傷を誘発または強化するかどうかを調べるために本発明の第4態様で使用し得る。GFP 発現が DNA 損傷に応答して誘発され、GFP による光放出が起きた DNA 損傷の指標として蛍光計で容易に測定できる。例えば、DNA 損傷に応答において 511 nm で GFP による光放出 (475 と 495 nm の間の惹起後、例えば、488 nm) を、全細胞の定義数の懸濁液中または分解後の細胞から放出される物質の定義量から調べ得る。あるいは、GFP による光放出を 520 nm で 535nm フィルターにより検査できる。
【0062】
本発明の第4態様の方法は、誘発 DNA 損傷を誘発する物質を低濃度で検出するのに特に有用である。この方法は、候補の医薬、食品添加物または化粧品などの化合物をスクリーンし、ヒトなどの生物体をかかる化合物に暴露するのが安全であるかを調べるのに使用し得る。
【0063】
あるいは、本発明の第4態様の方法は、水の供給が DNA 損傷物質または DNA 損傷を強化する物質で汚染されていないかを検出するのに用い得る。例えば、この方法は、汚染に暴露されたヒトなどの生物体において DNA 損傷の増加をもたらしかねない汚染物の存在について工業的にモニターするのに使用し得る。
【0064】
この方法を水の供給が汚染されているかどうかを検出するのに使用するとき、本発明の第2態様の細胞は、理想的には単細胞生物体、例えば、細菌、藻類、原虫類、および特にイーストである。
【0065】
光放出レポーター・タンパク質の発現を細胞抽出物または無傷の全細胞を含有するサンプルから本発明の方法に従ってモニターできる。
【0066】
全細胞の使用に関連するいくつかの利点がある。細胞を解裂する必要がないので、処理工程の数が減じる。抽出物の産生は、抽出物を清浄にするために、細胞播種、洗浄、ガラスビードによる解裂、遠心分離を必要とする。処理工程の減少は、操作で起きる誤りのおそれを少なくし、方法を速くする。さらに、細胞密度および光放出を同時に大きい感度をもってなし得る。従って、本発明の方法は、本発明の第1態様の組換えベクター (例えば、pGen001、pGenRNR2、pGenRNR3、pGenEM001、pGenIn012 または pGenIn022A) で形質転換された細胞を生育し、DNA 損傷を起こすかもしれない物質とともに細胞を予め定めた時間でインキュベートし、細胞のサンプルから直接的に光放出レポーター・タンパク質の発現をモニターすることにより実施するのが好ましい。
【0067】
全細胞を用いるとき、細胞が低蛍光成長培地に含有されているのが好ましい。これは、測定の前に細胞を洗う必要をなくすることで、この方法における工程数をさらに減じる。例えば、本発明の第3態様による好ましいイーストを F1 培地で生育できる (Walmsley et al. (1983) Mol. Gen. Genet. 192 p361-365 および実施例)。
【0068】
本発明の第4態様の方法の好ましい実施態様において、FF18984 細胞を pGen001 で形質転換し、F1 培地中で生育できる。本発明の方法の別の好ましい実施態様において、FF18984 細胞を pGenRNR2 または pGenRNR3 で形質転換し、F1 培地中で生育できる。加えて、FF18984 細胞を pGenEM001、pGenIn012 または pGenIn022A のいずれかで形質転換し、F1 培地中で生育できる。
【0069】
推定の DNA 損傷物質 (例えば、食品添加物、可能性の医薬または水サンプルや廃水サンプルに含有される物質) を、細胞を含有する F1 培地に加える。ついで、細胞を一定時間生育せしめた後、サンプルの細胞を取り出し、それからの蛍光を測定する。この測定は、ネフェロ分析 (光散乱) を用いて、サンプル中の細胞濃度および蛍光を検定する。例えば、細胞を 600 nm で照射し、散乱光 (600 nm で) を入射ビームに対し 90 度で調べる。GFP により放出された光を 475-495 nm (例えば、487 nm) で、518 nm での蛍光放出を入射ビームに対し 90 度で測定する。両測定を単一のキュベットで行い得る。正常化 GFP 光放出を、GFP 蛍光価を全細胞光散乱価で割ることにより (600 nm) 計算する。本発明のこの実施態様は、最少の工程で容易に実施できるという利点がある (すなわち、インキュベーション後、直接の蛍光測定)。
【0070】
本発明方法は、光放出をレポーター・タンパク質から正確に測定できるように、理想的には感度のよい蛍光分析計を用い、光散乱を少なくする。蛍光分析計のサンプル室と放出検出器との間に 487 nm フィルターを導入すると感度を改善し得ることがわかった。さらに、このフィルターは、光散乱の衝撃を減じ、全細胞を含有するサンプルを用いるときに方法の感度を改善する。
【0071】
蛍光の検出および定量の好ましい方法を実施例に示す。
蛍光検出の好ましい方法が US 6,509,161 に記載されている。この方法は、光放出レポーターが GFP またはその誘導体であるときに、特に有用である。
【0072】
本発明の第4態様による DNA 損傷を試験する好ましい方法は、下記の工程を含む: (1) アッセイに使用のためのマイクロプレートを調製する; (2) マイクロプレートおいてアッセイを行う; (3) データを収集し分析する; (4) DNA 損傷および結果を判定する。
【0073】
DNA 損傷についての最も好ましい試験を行うための工程 (1) (4) の詳細を下記する。
(1) マイクロプレート調製
アッセイを 96 ウエル、黒色、透明底マイクロプレートにおいて行った。例えば、Matrix ScreenMates, Cat. No. 4929, Apogent Discoveries, USA または Corning (BV, Netherlands: Cat. No. 3651)。多数の別のマイクロプレートを調べたが、個々の製造業者からのプレート間および内での変化する背景の吸収度および蛍光は一般的に受け入れられず、この好ましい選択となった。従って、本発明で使用のマイクロプレートがプレートおよびそのバッチ間で一致した吸収度および蛍光を持つと評価できる。
【0074】
アッセイ・プレートは液体操作ロボットで充填できる。例えば、MicroLabS シングル・プローブ、Hamilton GB Ltd.、Birmingham または Genesis 8-プローブ・ロボット (Tecan UK Ltd. Theale. UK)。マイクロプレートもマルチチャネル・ピペットで迅速かつ効果的に充填できる。
【0075】
(2) アッセイ
下記の標準的プロトコールにより行い得る。1 mM 量の試験化学物質または DNA 損傷を起こすかも知れない物質を含有するサンプルを、2% v/v 水性 DMSO で調製し、96 ウエルのマイクロプレートでの2同一希釈系および 対照' (下記参照) をつくるのに使用した。このために、150 ml の試験化学物質溶液を 2 マイクロプレート・ウエルに入れた。各サンプルの連続的な希釈を、75 ml を 75 ml の 4% DMSO に入れ、混合し、ついで 75 ml を取り出し、次のウエルに入れることで行った。これで、9 連続的希釈の各 75 ml をつくった。
【0076】
対照を下記のように加えた:
a. 試験化合物/ 物質含有のサンプルのみ、化合物の吸収度/蛍光についての情報を準備するために
b. 4% DMSO で希釈されたイースト培養基のみ、最大増殖力価を得るために
c. 遺伝毒性対照としての MMS : 高' = 0.00125% v/v、低' = 0.0001875% v/v
d. 細胞毒性対照としてのメタノール: 高' = 3.5% v/v、低' = 1.5% v/v
e. 生育培地のみ、無菌/汚染の欠如を確認するために
【0077】
本発明によるイースト細胞 (例えば、GenT0) の静止相培養基および非機能性レポーターをもつ対照のイースト (例えば、GenC01) を光学濃度 (OD600nm) = 0.2 まで二重強度 F1 培地 (Billinton et al., 1998) 中で希釈した。75 ml のイースト懸濁液を各ウエルの希釈化学物質に加えた: GenT01 を1系に、GenC01 を第2系に、そして適当な標準および対照に。プレートを充填した後、ガス浸透性膜 (例えば、Breath-easy, Diversified Biotech, USA) またはプラスチック蓋で封をし、攪拌せずに一夜 25 ℃でインキュベートした。
【0078】
(3) データ収集および操作
一夜インキュベーションの後、蛍光および吸収度のデータをマイクロプレートから収集した。蛍光と吸収度との機能性を組み合わす2つの異なるマイクロプレート・リーダーを用い、比較可能なデータを得た。これらは、Tecan Ultra-384 (Tecan UK Ltd.): 励起 485 nm / 放出 535 nm、追加の光二色性鏡をもつ (反射 320 nm 500 nm、透過 520 nm 800 nm) と、BMG PolarStar (BMG Labtechnologies, Germany): 励起 485 nm / 放出 520 nm である。吸収度は 620 nm フィルターを介して両機器とも測定した。データを Microsoft Excel スプレッドシートに移し、図表データに転換した (参照、実施例2についての図 18 および 19 における典型的データ)。データ処理が最少:吸収度データが増殖力価における減少を表し、これらのデータを非処理対照 (=100% 成長) に対し整える。蛍光データを吸収度データで除して、輝き単位'、細胞ごとの平均 GFP 誘導の測定を得た。これらのデータを非処理対照 (=1) に対して整えた。このようにして、少数の強い蛍光の細胞と多数の弱い蛍光の細胞を識別できる。誘発された細胞の自動蛍光と内在性化合物の蛍光とを正すために、GenC01 株についての輝度を GenT01 の輝度から引いた。これで、データの視覚検定がより信頼すべきものとなる。すべてのデータについて、この補正の有無で検討し、化合物が遺伝子毒性に分類されるかどうかの決定 (下記参照) が影響されなかった。
【0079】
(4) 決定閾値
日常的なアッセイからの肯定的および否定的な結果についての明確な定義をもつことは有用である。かかる定義は、系における最大のノイズならびに遺伝子毒性および作用メカニズムについて明白な同意がある化学物質からのデータを考慮して誘導する。勿論、使用者が数字および図式のデータを検討し、自身の結論を引き出すことも可能である。例えば、閾値を越えなかった遺伝子毒性データにおける上方傾向が2化合物を識別することもある。決定閾値は下記に規定する。
【0080】
細胞毒性の閾値を非処理の対照細胞により達せられる細胞密度の 80 % とする。これは、背景の標準偏差の 3 倍よりも大きい。1 または 2 化合物希釈が 80% 閾値よりも低い最終細胞密度を生じると、陽性の細胞毒性結果 (+) となる。強い陽性の細胞毒性結果 (++) となるのは、(i) 3以上の化合物希釈が 80% 閾値よりも低い最終細胞密度を生じるか、または (ii) 少なくとも1化合物希釈が 50% 閾値よりも低い最終細胞密度を生じるときである。陰性結果 (-) となるのは、いずれの化合物希釈も 80% 閾値未満の最終細胞密度を生じないときである。最低有効濃度 (LEC) は 80% 閾値を下回る最終細胞密度を生じる最低の試験化合物濃度である。
【0081】
化合物吸収度対照が、試験化合物が有意に吸収しているかの警告をつくり得る。化合物対照ウエルの希釈液のみで充填されたウエルに対する吸収度比率が > 2 であると、解釈による妨害のおそれがある。細胞毒性対照は、イーストが正常に挙動していることを表す。高い' メタノール標準は、最終細胞密度を 80% 閾値以下に減じるべきであり、低い' 標準よりも低い値であるべきである。
【0082】
遺伝子毒性閾値を相対的 GFP 誘発 1.3 (すなわち、30% 増加) で規定する。これは、3 倍の背景の標準偏差より大きい。陽性の遺伝子毒性結果 (+) となるのは、1 または 2 化合物希釈が 1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じるときである。強い陽性の遺伝子毒性結果 (++) となるのは、(i) 3 以上の化合物希釈が 1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じるか、または (ii) 少なくとも1の化合物希釈が 1.6 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じるときである。陰性の遺伝子毒性結果 (-) となるのは、いずれの化合物希釈も 1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じないときである。LEC は、1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じる最低の試験化合物濃度である。遺伝子毒性対照は、株が DNA 損傷に正常に応答していることを表す。高い' MMS 標準は、蛍光誘発 > 2 を生じ、低い' MMS 標準よりも大きい価でなければならない。変則的な輝きのデータが生じるのは、毒性がブランクの 30% 未満の最終細胞密度を導くときである。遺伝子毒性データはこの毒性閾値を超えて計算しない。遺伝子毒性が陰性の化合物は、10mM までまたは溶解性または細胞毒性の限度まで再試験した。
【0083】
化合物蛍光対照が、試験化合物が高度に自動蛍光性であるときに警告をつくり得る。化合物対照ウエルの希釈液充填ウエルに対する蛍光の比率が > 5 であると、解釈による妨害のおそれがある。これらの場合 (この試験では4)、蛍光分極を用いて、GFP を蛍光の別の源から識別できる (Knight et al., 2000, 2002)。両 Tecan および BMG 機器がこの能力を有す。時に、化合物が蛍光自体でなく細胞自動蛍光を誘発する。これは、対照 (GenC01) 株に輝きがあり、化学物質のみの対照に蛍光がないことからわかる。GenT01 データから GenC01 を普通に引くことで、この干渉をデータから除去できる。
【0084】
本発明のさらなる態様により、光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列に操作可能的に連結され、DNA 損傷に対する応答において遺伝子発現を活性化する調節エレメントを含む組換え DNA 分子を含む組換えベクター、ならびにベクターが複製の1源および少なくとも1の選択可能マーカーを含み、そして細胞を形質転換するのに用いたときに細胞のゲネチシンに対する感受性を変えないことを特徴とする DNA ベクターを提供する。
【0085】
本発明のさらなる態様により、光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列に操作可能的に連結される RNR 調節エレメントを含む組換え DNA 分子を含む組換えベクター、ならびにベクターが複製の1源および少なくとも1の選択可能マーカーを含み、そして細胞を形質転換するのに用いたときに細胞のゲネチシンに対する感受性を変えないことを特徴とする DNA ベクターを提供する。
【0086】
本明細書 (添付の請求項、要約および図面を含む) に記載されたすべての特性および/または開示された方法のいずれかのすべての工程を、かかる特性および/または工程が相互に排他的である組合せを除き、いかなる組合せにおける上記態様のいずれとも組合せることができる。
【0087】
本発明を、添付の図面を参照しながら例示として下記のように記述する。
図1は、pWDH445 で形質転換された FF18984 細胞から得られた輝度間の相違を示し、MMS に対する暴露の有無で、通常レベルの輝き (黒色) および高められた輝き (灰色) を表示する。U は MMS で処理されていない非形質転換 FF18984 細胞; U MMS は 0.005% MMS に暴露 (15 時間) された非形質転換細胞; T は pWDH445 で形質転換されたが、MMS で処理されていない細胞; T MMS は pWDH445 で形質転換され、0.005% MMS に暴露された細胞; 輝き、蛍光強度 (F int) は 600 nm での散乱光 (Neph600) を用いて培養密度について補正した。各棒グラフは3別個の培養基の平均輝度を示す。非誘発および MMS-誘発の両方の輝度が正常の形質転換体に比して新たな形質転換体で明らかに有意に高い。
【0088】
図2は、BamH I および Asc I で切断された pWDH445 の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記を含有する:枠 1、pWDH445; 枠 2、高められた輝きの形質転換体から単離されたプラスミド; 枠 3、正常の輝きのイースト形質転換体から単離された pWDH445; 枠 4、高められた輝きをもつ形質転換体からの第2単離物。pWDH445 の BamH I-Asc I 制限が HO-RAD54プロモーター-yEGFP カセットをもつフラグメント 3.2 kb (箱囲み) を遊離する。3.2 kb-フラグメントのバンドは全4枠で可視である。
【0089】
図3は、pWDH445 で形質転換された FF18984 細胞、再単離の pWDH445 で再形質転換された細胞、あるいは高められた輝きの形質転換体から単離された再編成プラスミド(2独立の単離体)を示す。4種の形質転換体をウラシル欠乏の SD 培地および 200μgml-1 ゲネチシン (G418) を含む YPD 培地に入れ、30 ℃で 3 日間インキュベートした。全4種の形質転換体が SD-ura で成長するが、pWDH445 および再単離 pWDH445 をもつ細胞のみが YPD+G418 では成長した。
【0090】
図4は、再編成プラスミドで再形質転換された FF18984 細胞(灰色) が pWDH445 を持つ FF18984 細胞 (黒色) よりも 0.005% MMS 暴露の有無で輝くことを示す。U は MMS に暴露されていない非形質転換 FF18984 細胞;U MMS は 0.005% MMS (15 時間)暴露された非形質転換細胞;T は MMS に暴露されていない pWDH445 または再編成プラスミドで形質転換された細胞;T MMS は 0.005% MMS に暴露され pWDH445 または再編成プラスミドで形質転換された細胞。輝き、蛍光強度 (F int) は 600 nm での散乱光 (Neph600) を用いて培養密度について補正した。各棒グラフは6別個の培養基の平均輝度を示す。再単離の再編成プラスミドで再形質転換されたプラスミドが正常 pWDH445 形質転換体よりも MMS への暴露の有無でなお輝く。
【0091】
図5は、この試験でつくられ使用される pWDH445 の制限マップを示す。プラスミド構築体の塩基対配列を、Stanford Genome Database (SGD) ウエブサイトで利用可能のソフトウエアーで制限酵素解裂部位について解析した。主要なプラスミド構成成分をプラスミド骨格の囲み部分 (主に複製源などの細菌性配列) として線で表示する。RAD54 プロモーター (灰色)、-yEGFPカセット (黒色) および kanMX3 カセット (灰色) を、所望の主要領域を明白にするために、色つけし、一方、Ampr および URA3 は白色の矢印で示した。矢印は個々の構成成分の転写方向を表す。
【0092】
図6は、Xba I で消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離の pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記を有する: 枠 1、pWDH445; 枠 2、再編成プラスミド; 枠 3、再単離 pWDH445; 枠 4、第2再編成プラスミド; 枠 5、500 bp ラダー (5-0.5 kb) マーカー DNA。2つの再編成プラスミドの Xba I 制限が〜4.4 kb のフラグメントを表す新しいバンドをつくる。これは pWDH445 および再単離 pWDH445 で検出されなかった。再編成プラスミドも pWDH445 消化について観測される 6 kb ダブレットの1バンドを欠くようである。枠 2 におけるエキストラバンドは、1再編成プラスミドが pWDH445 よりも大きいことを表し、一方、ダブレットからのバンドの無 (エキストラバンドなし) は、枠 4 にある再編成プラスミドが pWDH445 よりも小さいことを示唆する。
【0093】
図7は、Sca I で制限消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記を有する:枠 1、500 bp ラダー (5-0.5 kb) 分子量マーカー DNA; 枠 2、pWDH445; 枠 3、より大きい再編成プラスミド; 枠 4、再単離 pWDH445; 枠 5、より小さい再編成プラスミド。フラグメントの大きさ〜1.8 kb および〜4.1 kb を表すバンドが全4枠 (枠 2-5) に存在するが、フラグメント 1.3 kb を表すバンド (pWDH445 および再単離 pWDH445 について存在) は、再編成プラスミドの消化のいずれ (枠 3 および 5) でも見られない。
【0094】
図8は、Pst I. Sca I で制限消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記を有する:枠 1、500 bp ラダー分子量マーカー DNA; 枠 2、pWDH445; 枠 3、より大きい再編成プラスミド; 枠 4、再単離 pWDH445; 枠 5、より小さい再編成プラスミド。枠 2 および 4 は同じパターンのバンドをつくったが、枠 3 および 5 (再編成プラスミド)のバンドは有意に相違した。枠 2 および 4 のみがフラグメント 〜2.5 kb を表すバンドを有する。 枠 2 5 のすべてがフラグメント〜1.6、〜1.4 および〜1.3 kb バンドを有するが、枠 3 および 5 はフラグメント 1.5 kb を表すエキストラバンドも示した。
【0095】
図9は、Pvu I-d で制限消化された pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記を有する: 枠 1、pWDH445; 枠 2、より大きい再編成プラスミド; 枠 3、再単離 pWDH445; 枠 4、より小さい再編成プラスミド; 枠 5、500 bp ラダー分子量マーカー DNA。枠 1 および 3 期待されたパターンのバンドを有したが、再編成 (枠 2 および 4) プラスミドはフラグメント 1.2 および 0.7 kb を表すバンドを有さなかった。大きい再編成プラスミド (枠 2) はフラグメント〜3.5 kb および 1 kb を表す2新規バンドも示す。
【0096】
図10は、Sca I で消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記の消化プラスミドを有する:枠 1、pWDH445; 枠 2、より大きい再編成プラスミド; 枠 3、再単離 pWDH445; 枠 4、より小さい再編成プラスミド;枠 5、500 bp ラダー分子量マーカー DNA。Sac I は pWDH445 から 2.1 kb kanMX 内在フラグメントを遊離する。両枠 1 および 3 が 2.1 kb フラグメントを表すバンドを有する。いずれの再編成プラスミド (枠 2 および 4) もかかるバンドを Sac I 制限後に示さない。
【0097】
図11は、Xba I で消化された pWDH445 および pWDH445(酵素的に除去される kanMX をもつ)の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。枠は下記を有する:枠 1 および 13、pWDH445; 枠 2-6、8、9、11、12、アンピシリン耐性、カナマイシン感受性の E. coli 形質転換体から単離されたプラスミド; 枠 10、アンピシリン耐性、カナマイシン耐性の E. coli 形質転換体から単離されたプラスミド;枠 7、500 bp ラダー分子量マーカー DNA。枠 1 および 13 は2フラグメント〜6 kb を表すダブレットを有する。これはまた、カナマイシン耐性コロニーからのプラスミドについて見られる (枠 10)。消化されたプラスミドを含有するすべての他の枠は、フラグメント〜6 kb を表す単一バンドおよびフラグメント〜4.5 kb を表す第2バンドを示す。
【0098】
図12は、修飾 pWDH445 (酵素的に除去される kanMX) で形質転換された FF18984 細菌の輝度 (灰色) を pWDH445 で形質転換された細胞からのもの(白色) と比較して示す。U は MMS に暴露されていない非形質転換 FF18984 細胞;U MMS は 0.005% MMS (15 時間)暴露された非形質転換細胞;T は MMS に暴露されていない pWDH445 または修飾 pWDH445 で形質転換された細胞;T MMS は 0.005% MMS に暴露され pWDH445 または修飾 pWDH445 で形質転換された細胞。輝き、蛍光強度 (F int) は 600 nm での散乱光 (Neph600) を用い培養密度について補正した。各棒グラフは6別個の培養基の平均輝度を示す。修飾 pWDH445 をもつ細胞が、単離の再編成プラスミドで再形質転換された細胞に比較して高い輝きを示す。
【0099】
図13は、フロー蛍光の検出器についての模式図、ならびに光のもれないボックス内での検出器の説明についての拡大模式図およびフロー細胞に関する励起ビームおよび放出についてのさらなる拡大模式図を示す。上部は、装置の全体的レイアウトを示し、攪拌水浴中での培養基インキュベートで始まる。あるいは、サンプルをサンプル注入弁から注入できる。培養基/サンプルを光閉じこめ装置 (灰色ボックス) に蠕動的にポンプで送り、そこで励起が生じ、放出を検出する。励起ビームの源はアルゴンイオン・レーザーである (四角内○)。閉じこめ装置内に (参照、灰色ボックスから拡大したパネル) 2通りの検出器を設ける。ビーム拡散キューブが励起光 (488 nm) を2組の検出器に送る。この各々は光フロー細胞、光増加管 (PMT)、シリコン・ホトダイオード (SPD) および光フィルターからなる (参照、表示のための略号パネル)。蛍光を PMT で検出し、一方、散乱光 (細胞または特定の密度の測定として)を SPD で検出する。両者とも励起ビームの方向に垂直的に置かれる。励起ビームおよび放出検出の説明を下部のパネルで簡単に行う。
【0100】
図14は、フロー蛍光検出器による蛍光分極の検出を図示する。フロー細胞を介して循環するサンプルが平面偏光のレーザー光により励起され(垂直の矢印は分極平面を表す)、散乱光が励起ビームの反対側のフロー細胞に置かれた SPD で検出される。放出蛍光は励起光よりも偏光が小さく、これはポラロイド・フィルターを読む前に、放出の周りの垂直、水平および斜めの矢印で表す。フロー細胞の両側の2ポラロイド・フィルターを相反する方向に置き、1フィルターが蛍光の垂直構成因子の伝達を可能にし (励起光の平面偏光に関し平行方向)、他方のフィルターが水平構成因子の伝導を可能にする (吸収光の平面分極に関し垂直の方向)。ポラロイド・フィルターにより伝達された蛍光を2 PMT (PMT1 および PMT2) で検出する。
【0101】
図15は、本発明の好ましい組換えベクター pGen001 についての制限マップを示す。
図16は、FASTA フォーマットにおける pGen001 の完全配列を示す。
図17は、GeneBank フォーマットにおける pGen001 の完全配列を示す。
【0102】
図18は、メチルメタンスルホネートが強い細胞毒性および遺伝子毒性であることを明らかにする実施例2からのデータを示す。
図19は、ベンズアルデヒドが強い細胞毒性および遺伝子毒性であることを明らかにする実施例2からのデータを示す。
図20は、試験濃度および検出限界を含む実施例2に記載のアッセイからの遺伝子毒性および細胞毒性データを、実施例2の他の遺伝子毒性試験からのデータと比較して、提供する。
【0103】
図21は、実施例2による、GreenScreen アッセイ、Ames 試験結果、および陽性 Ames 結果についての S9 代謝活性化を必要とする化合物を明らかにする比較の遺伝子毒性データを抽出したものである。
図22は、実施例3の Greenrack 保有の配列を示す。
図23は、実施例3のマイクロプレート・レイアウトを示す。
【0104】
図24は、本発明の好ましい組換えベクター pGenRNR2 の制限マップを示す。 図25は、本発明の好ましい組換えベクター pGenRNR3 の制限マップを示す。
図26は、GeneBank フォーマットにおける pGenRNR2 の完全配列を示す。
【0105】
図27は、GeneBank フォーマットにおける pGenRNR3 の完全配列を示す。
図28は、実施例2において pGenRNR2 でトランスフェクトされ、試験化合物として MMS を用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
図29は、実施例2において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物として MMS を用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【0106】
図30は、実施例4において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物として MMS を用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
図31は、実施例4において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物として 1,2-ジメチルヒドラジンを用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
図32は、実施例4において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物としてエチルメタンスルホネートを用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【0107】
図33は、GeneBank フォーマットにおける開始コドンの 1kb 上流を含む RNR3 配列の完全配列を示す。
図34は、本発明の好ましいベクター pGenEM001 をつくるための、複製および Amp 耐性の細菌源の除去を示す。
図35は、HO 配列のフラグメントを示す。
【0108】
図36は、本発明の好ましい組換えベクター pGenIn012 の制限マップを示す。
図37は、本発明のプラスミドを組み込む複数コピー rDNA に用いられる rDNA 配列を示す。
図38は、本発明の好ましい組換えベクター pGenIn022A の制限マップを示す
【0109】
図39は、空の pRS316 ベクターと RAD54-GFP レポーター・カセットおよび kanMX モジュールを含有する pRS316 ならびに RAD54-GFP カセットを含有するが kanMX を含有しない pRS316 とを比較して、輝度の相違を示す。
【0110】
図40は、kanMX 存在の RAD54-GFP 輝き (すべて MMS なし) に対する作用を、HO (HO int) での染色体および rDNA アレイに組み込まれたときに (rDNA B int および rDNA A int、A および B は方向を意味する) 示す。
図41は、GeneBank フォーマットにおける pGenIn012 の完全配列を示す。
図42は、GeneBank フォーマットにおける pGenIn022A の完全配列を示す。
【0111】
実施例1
変異 pWDH445 を保持する輝く細胞の発見について記述する。この輝く株の典型的な pWDH445-保有株との比較を、この新しい株の表現型分析およびこれらの株から生じるプラスミドの分子生物学的検査により行う。最後に、基本的な遺伝子操作による輝く株の産生を開示する。
【0112】
材料および方法
株およびプラスミド

実施例1で使用される Saccharomyces cerevisiae および Escherichia coli 株を表1に、その各々の遺伝子型とともに示す。
【0113】
表1
【表1】

【0114】
プラスミド
pWDH445 は、図5に表示され、WO 97/44149 に開示される yEGFP-444 に対応する (例えば、参照、図 12)。
【0115】
培養基
滅菌法
すべての培地の調製を、特にことわらない限り、成分を蒸留水に溶解し、ついで 20 分間 15 lbin-2 でのオートクレーブによる滅菌で行った。あるいは、オートクレーブ処理が適当でないとき、0.22 μm 直径穴の Millipore フィルターでろ過して滅菌した。
【0116】
イースト培養基
バクト-アガーを各生育培地に最終濃度 (w/v) 2% まで加えた。イースト抽出物、ペプトンおよびアガーは、すべて Difco (Becton Dickinson, Sparks, MD 21152, USA) から得た。下記の培地を使用した (Sherman et al. "Methods in yeast genetics" Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0117】
YPD (イースト抽出物、ペプトンおよびデキストロース)
表2
【表2】

*固体培地の調製において加えられたバクト-アガー
【0118】
YPG (合成デキストロース)
表3-YPG
【表3】

*固体培地の調製において加えられたバクト-アガー
【0119】
SD
表4-SD 培地
【表4】

*固体培地の調製において加えられたバクト-アガー
【0120】
** バクト-イースト窒素ベースをアミノ酸または硫酸アンモニウムなしで購入した。これは窒素源のコントロールを可能にし、選択的培地の調製を容易にする。34gL-1 バクト-イースト窒素ベースおよび 100 gL-1 (NH4)2SO4 を含む 20x YNB ストックを暗所 4℃で保存した。
【0121】
表 5 SD 補助物
【表5】

【0122】
F1 培地 (発酵物)
表6-F1 培地 - 塩ストック (6.7x)
【表6】

【0123】
表7 - F1 培地 - 痕跡エレメント・ストック (10000x)
【表7】

【0124】
表8 -F1 培地 ビタミン・ストック (600x)
【表8】

【0125】
F1 培地は、背景の自己蛍光の特に低い、発酵に用いられる定義された最小培地である [Brown et al, 1981, adapted by Walmsley et al., 1983]。塩、痕跡エレメントおよび塩化鉄 (III) の濃縮ストックをオートクレーブ処理し、個々に保存し、必要時に無菌水で必要時に希釈した。濃縮ビタミン・ストックを無菌水で調製し、シリンジおよび滅菌 0.20 μm 穴フィルター (Sartorius, Gottingen, Germany) で滅菌ろ過し、アリコートに -20℃で保存した。ついで、ビタミンを順次 F1 のオートクレーブに加え、その分解を避けた。全 F1 を 4 ℃でグルコース不存在で保存した。
【0126】
扱いにくいイースト株におけるフロキュレーション作用を小さくするために、F1 のその後の変種型をビタミン・ストック表 8 における表示よりも 50% 少ないイノシトールとともに用いた。この減じたイノシトール F1 をさらに修飾し、水の代わりにリン酸緩衝液中 pH 6 でつくった (Varley, 1967. Practical Clinical Bi℃hemistry, 4th Edition, William Heinemann Medical Books, pp. 759 に記載のように)。緩衝培地を KH2PO4 および Na2HPO4 の混合 0.067 M 溶液またはその濃縮ストック (参照、表9) で産生し、塩、痕跡エレメント、塩化鉄および栄養補助物を加えた。緩衝混合物をオートクレーブ処理し、室温に冷却して、ビタミンを加えた。
【0127】
表9 - F1 培地についてのリン酸緩衝液
【表9】

【0128】
細菌性培地
LB 培地
表10 -LB 培地
【表10】


ブロス培養のための Luria-Bertani 培地 (LB) を [Sambrook et al., second edition, 1989] に記載のように調製し、LB ブロスおよび 2% バクト-アガーを固体培養のために使用した。
【0129】
抗生物質
アンピシリン
アンピシリンを水性溶液中ストック濃度 10 mgml-1 で調製し、作業濃度 100 μgml-1 までで使用した。アンピシリン・ストック溶液をアリコート 1 ml -20℃で保存した。
【0130】
ゲネチシン (G418)
G418 ジ硫酸塩を水性溶液中でストック溶液として濃度 20 mgml-1 で調製し、作業濃度 200 μg/ml で使用した。G418 ストック溶液を 4℃で保存した。
【0131】
カナマイシン
カナマイシンを水性溶液中でストック濃度 50 mgml-1 で調製し、作業濃度 50 μgml-1 で使用した。カナマイシン・ストック溶液を 20℃で保存した。
ここで使用する標準溶液および緩衝液を Sambrook et al (second edition, 1989) から入手した。
標準イーストおよび E.coli 技法、例えば、バイオマス生産、形質転換、プラスミド DNA の単離、制限酵素消化は公知の方法に合わせて使用した。
【0132】
蛍光の検出および定量
細胞抽出物での蛍光アッセイ
細胞抽出物における GFP 蛍光の検定を基本的に Walmsley et al., 1997 (Yeast 13 p1535-1545) に記載のように行った。SD 培地で生育された細胞の静止培養基を接種源として使用した。15μl アリコートの細胞を 1.5 ml の SD に 15 ml 試験管中で接種した。半数の試験管に 0.01% MMS を補った(残りの試験管を対照とする)。試験管を 25℃で (GFP の S65T 誘導体の厳密なフォルディングは温度に敏感である) 16 時間、軌道攪拌培養器中 120 rpm で、または水浴攪拌機中でインキュベートした。16 時間後に培養基を 0.02% NaN3 に調整して、振動を保持しながら、呼気を抑制し、氷上で 90 分間インキュベートした。ついで、細胞を 1.5 ml マイクロヒュージ管に移し、遠心分離 (10s) で採取し、無菌蒸留水で2回洗い、ついで 1 ml の "抽出" 緩衝液 (20 mM Tris-Cl pH 7.5, 0.1 M NaCl, 1 mM EDTA) で洗った。遠心分離で細胞を採取した後、上澄み液を吸引除去し、細胞ペレットを 250μl "粉砕" 緩衝液 (20 mM Tris-HCL, pH 7.5, 0.1 M NaCl, 1 mM PMSF) に再懸濁した。 250 μl の 400-600 nm 径ガラスビードを細胞の試験管に加え、これを BIO101 Fastprep FP120 (Savant, purchased from Anachem Ltd, Luton, UK) にスピード 4 で 30 秒間入れ、機械的に細胞を分裂させた。試験管を氷上で 1 分間インキュベートし、ついで Fastprep にさらに 30 秒入れた。この工程を繰り返して、各管が 1 分間氷インキュベーションで分けられた Fastprep の3期間となるようにした。30 秒間の遠心分離後、上澄み液をきれいな管に移した。ペレットのビードを 250μl の粉砕緩衝液でさらに洗い、これを前の抽出からの上澄み液に加えた。抽出物を 0.1 M Tris、pH 11 に 1 M Tris 塩基の添加で調整し、200μl の合わせた抽出物および 2.8 ml の水をアクリル・キュベット (Sarstedt Ltd, Numbrecht, Germany) に移した。
【0133】
無傷イースト細胞での蛍光アッセイ
開始培養を、1.5 ml の F1 培地 (適当の栄養補助物および 2% グルコースが加わる) を無菌の 15 ml ポリテン遠心管中で少量のコロニーとともにインキュベートすることで開始し、ストック・プレートからループをインキュベートして採取した。これらの開始培養基を 24 時間まで 30 ℃で攪拌しながら (120 rpm) 生育し、アッセイ培養の接種源として使用した。細胞を 1.5 ml F1 培養基に 15 ml ポリテン遠心管に接種して、最初の OD600nm 〜0.1 (典型的には、1.5 ml 培養基につき10-15μl 接種) を得た。管の蓋を4分の1開いておき、そのままマスキングテープで保持して GFP 成熟のための最大酸化を確保した。半数の管を 0.005% メチルメタンスルホネート (MMS、メタンスルホン酸エチルエステル) で処置し、半数をそのままの対照として残した。MMS を液体として購入し、このストック溶液を 100% で得た。これを必要に応じ小アリコートの 0.5% ストックに希釈し、ついでアッセイ培養基のために 1:100 に希釈した (1.5 ml 培養基につき 15μl の 0.5% ストック)。アッセイ培養基を 25℃ (S65T-GFP を熱により安定である yEGFP で置き換えたときは、30 ℃) で攪拌水浴培養器中 14-16 時間インキュベートした。各 1.5 ml 培養基を 4-ウインドのアクリルキュベット (Sarstedt Ltd, Numbrecht, Germany) に移し、測定前に 1 ml の無菌水で希釈した。YPD または SD 中で生育された細胞の無傷イースト細胞蛍光の測定のために、細胞を2回無菌水中で洗い、自動蛍光培地の痕跡を除去し、1.5 ml の無菌水中に再懸濁した。洗った細胞を、1 ml の無菌蒸留水を含有する 4-ウインドのアクリルキュベットに直接移した。4-ウインドのキュベットは、蛍光放出の測定が励起光の経路に垂直的になされるので、必要である。
【0134】
蛍光測定および "輝き" 計数
蛍光測定を Perkin-Elmer LS50B 蛍光分光計 (Perkin-Elmer Ltd., Beaconsfield, UK) で実施した。励起および放出の波長をそれぞれ 488 nm および 511 nm に、スリット幅 10 nm で S65T GFP 誘導-発現レポーターについて設定した。yEGFP 発現レポーターについて、励起および放出の波長をそれぞれ 490 nm および 518 nm に (yEGFP の変更された蛍光特性により)、スリット幅 5 nm で設定した。YPD または SD アッセイ培養基間の細胞数の相違を数えるために、OD600nm を各キュベットにつき記録した。同様に、タンパク質抽出効率を測定するために、光吸収度を 280 nm (OD280nm) で素細胞抽出物につき測定した。これらの測定の両者に Cecil Instruments CE505 二重ビーム紫外線分光計を用いた。アクリルキュベットは後者の測定のために、紫外 (UV) 光の大きい透過を可能にするので基本である。F1 培地培養についての細胞密度判定を、LS50B ルミネセンス分光計により、励起および放出の両波長 600 nm およびスリット幅 2.5 nm (Neph600) で光散乱を測定することで (ネフェロ分析) 行った。蛍光定量計で得られた蛍光値を吸収/散乱の読み取りにより分けると、"輝度" を得る。これは、サンプル濃度に独立的であるが、蛍光定量計によって相違する任意の単位である。未補正の蛍光スキャン上の y-軸が、機器が定義する蛍光強度 ("INT") 単位の形で素データをもたらす。
【0135】
誘発比率
誘発比率を用いて、GFP シグナルに関する "シグナル-対-ノイズの比率" を計算する。すべての検出されたシグナルは、純粋の GFP シグナルでなく、組み込み汚染の素性蛍光シグナル (自動蛍光) である。自動蛍光は培養基の成長相の変化で顕著に変わり、株の素性に依存的である。従って、異なる成長相の同じ株の培養基から、または異なる株の培養基のシグナル-対-ノイズの比率を比較し得るために、可変の自動蛍光成分を輝度から除去する必要がある。
【0136】
最初に、いくつかの用語 (本論で用いられる) を定義する。
"U" は、非形質転換の細胞、すなわちレポーター・プラスミド (または具体的に記す他のプラスミド) を持たない細胞に由来する輝度である。これは MMS などのゲノトキシンに暴露されておらず、それで、この値は誘発されていない自動蛍光を表す。
【0137】
"U MMS" は、ゲノトキシン (この場合、MMS) に暴露された非形質転換の細胞に由来する輝度である。この値は、自動蛍光のゲノトキシン誘発レベルを表し、誘発されていない自動蛍光の値よりもしばしば大きい。
【0138】
"T" は、ゲノトキシンに暴露されておらない RAD54-GFP レポーター・プラスミド (または具体的に記す他のプラスミド) のひとつで形質転換された細胞に由来する輝度である。この値は、RAD54 プロモーターからの継続的低レベル発現による GFP 蛍光の構成的レベルを表し、そして誘発されない自動蛍光も組み込む。
【0139】
"T MMS" は、ゲノトキシン (この場合、MMS) に暴露されたプラスミドで形質転換された細胞から得られる輝度である。 T MMS は、RAD54 プロモーターからの発現の損傷-誘発の上方調整による GFP シグナル、構成的 GFP シグナルおよび損傷-誘発の自動蛍光シグナルの組合せを表す。
【0140】
GFP からのシグナルにのみ基づく真正のシグナル-対-ノイズ比率のために、所望の2パラメーターは、RAD54 の損傷-誘発の応答および損傷のない構成的 GFP 応答による GFP シグナルである。構成的シグナルは非誘発の自動蛍光を T から引くこと(すなわち、T U) により得られ、誘発の GFP シグナルは誘発の自動蛍光を T MMS から引くこと(すなわち、T MMS U MMS) により計算する。(T − U) は構成的シグナルすなわち C 値を与え、(T MMS U MMS) は誘発された値すなわち I 値を提供する。誘発比率は I 対 C の簡単な比率であり、下記のように表し得る:
【数1】

【0141】
フロー蛍光検出器による
イースト培養基からの GFP シグナルの測定についての継続的フロー検出器の開発は、以前に発表されており [Knight et al., 1999, Mesurement Science and Technology, 10: 211, 217]、蛍光分極法に適用される [Knight et al., 2000a, The Analyst, 125: 499-506]。図 13 は、蛍光フロー細胞で開発された装置の基本的なレイアウトについての模式図である。そこでは、イースト培養基または GFP 抽出物が Gilson Minipuls 3 蠕動的ポンプ (Anachem Ltd, Luton, UK より購入) により循環される。488 nm 励起が空気冷の 40 mW アルゴンイオン・レーザー (LG Laser Graphics GmbH, Dieberg, Germany) により準備され、ろ過により 5 mW に減じる。光増幅管 (PMT) を蛍光検出器として用い、シリコン・ホトダイオード (SPD) を細胞密度の比濁測定のための散乱光検出器として用いる。フロー細胞、PMT、SPD および関連電子器具を光のもれないボックスに入れる (図 13 に複製)。PMT フロー細胞のひとつの側に置き、蛍光を励起光の経路に対して 90 度で検出する。SPD を励起光の経路において光源からのフロー細胞の別の側、PMT と同じようにフロー細胞のひとつの側に置く。散乱光をいずれかの方向で検出できる。データ取得および処理をリアルタイムで、12-ビット・アナログからデジタルへのコンバーター (ADC) および関連ソフトウエアー (Pico Technology Ltd., Cambridge, UK) を介してパーソナル・コンピューター上で行う。
【0142】
蛍光分極
図 14 は、フロー-蛍光による検出器を用いる蛍光分極の検出を示す。偏光レーザー光 (垂直矢印により示される分極) を用いて、フロー細胞を循環するサンプルを励起する。この図において、蛍光をフロー細胞のいずれかの側上 90 度で、フロー細胞と各 PMT 間の単一ポラロイドで検出する。フロー細胞におけるサンプルからの蛍光は、励起光よりも偏光が少ない (垂直、水平および斜めの矢印で示される)。フロー細胞のいずれかの側に対するポラロイド・フィルターが反対方向に調整されて、ひとつのフィルターが蛍光の垂直成分の通過を可能にし (平行方向、投射光の分極平面に関して)、別のフィルターが蛍光の水平成分のみの透過を許す (垂直方向、投射光の分極平面に関して)。
【0143】
この操作で測定された蛍光分極の程度 (P) を次のように定義した:
【数2】

式中、 I は吸収平面-偏光照射に平行の偏光についての蛍光強度であり、I は吸収された照射に対して垂直のものである。P は次元なしのパラメーターであり、放出光の強度または蛍光体の濃度に依存しない。GFP シグナルを自動蛍光と識別するために、(I - I) 条件の計算で十分である。なぜなら、この条件は比較的偏光しない蛍光を放出する分子 (例えば、フルオレセンスのような小さい分子) については0になりやすく、一方、顕著な分極を発揮する蛍光を放出する分子については相対的に大きいからである。
【0144】
結果
pWDH445 を持つ輝く FF18984 形質転換体
輝く pWDH445-保持 FF18984 細胞の自発的産生
新しい pWDH445-含有株の産生の後、マーカー選択によりスクリーンされた形質転換体を、MMS に対する応答における輝き変化についてアッセイし、機能性 pWDH445 の存在を確認した。
【0145】
散発的に、pWDH445 形質転換体 (標準実験手法による形質転換) は典型的な形質転換体よりも、MMS に対する応答が有意に輝くことを確認した。図 1 は、pWDH445 を保持する正常の FF18984 細胞の 3 複製物の平均的輝き (黒色棒) および pWDH445 を保持する輝く FF18984 細胞の 3 複製物の平均的輝き (灰色棒) を示す。この例において、T' (形質転換された細胞、MMS でない) が新しい変種 FF18984 細胞において典型的なシグナルレベルよりも 12 倍明るく、T MMS' が 9 倍明るかった。変種細胞における高められた輝きが誘発比率を 7.72 から 3.27 に低下せしめた。しかし、高められたシグナル・アウトプットでの変種細胞の容易な検出は、常に輝くレポーターの開発のために魅力的である。
【0146】
高められたシグナル・アウトプットとゲネチシン耐性との間に関係がある
上記した輝く変種体を最初に表現型分析にかけ、実際に FF18984 形質転換体であることを確認した。株をウラシル排除の培地に入れ、pWDH445 の存在を調べた。これは、抗生物質 (この場合、G418) の使用を少なくするために形質転換体の選択に好ましい方法である。正常細胞と変種形質転換細胞の両者を、ウラシルを欠く SD 培地で生育した。細胞を、ロイシン、リシンまたはヒスチジンの1つを欠く SD 培地に再び入れ、今一度、正常株および変種株が応答した:すなわちこれらは成長し得なかった。このことは、正常細胞および変種細胞の両者が FF18984 について正しい遺伝素性を有することを示唆する。
【0147】
pWDH445 をもつ細胞について G418 に対する耐性を試験した。この耐性は pWDH445 上にある kanMX モジュール で付与される。典型的な輝きの細胞は G418 耐性であり、G418 (200 μgml-1) 含有の YPD プレート上で成長し得た。しかし、輝く変種細胞は、かかる培地上で、ウラシル欠損培地上での成長により pWDH445 の存在が前に確認されたのにもかかわらず、成長し得なかった。これは、レポーター・プラスミドの変異または再編成が変種細胞で起きたことを示唆する。
【0148】
RAD54-GFP カセットが全体の再編成を有する
プラスミドが再編成または変異を行うという仮説を調べるために、正常細胞および変種細胞の両方から pWDH445 を単離する必要がある。プラスミドをイーストから標準的手法で調製し、DNA ペレットを 40μl の無菌水に溶解した。5μl の各プラスミド調製物を用い、DH5α E. coli 細胞を標準的方法で形質転換した。イーストから調製されたプラスミドで形質転換された E. coli を、80μgml-1 アンピシリンを含有する LB アガー上での成長により選択した。形質転換体培養基およびプラスミド調製物を方法の項に記載のようにつくり、DNA ペレットを 50μl の TE および RNAase (20μgml-1) に再懸濁した。
【0149】
pWDH445 中の RAD54-GFP カセットの完全性についての簡単な試験は、プラスミドの調整性を利用して、制限エンドヌクレアーゼ消化によりカセットを遊離する。このモジュールは BamH I および Asc I 制限酵素による pWDH445 の二重消化で放出され、3177 bp フラグメントを正常プラスミドからもたらす。pWDH445、2 独立的に輝く形質転換体から調製されたプラスミド、および正常形質転換体から単離されたプラスミドを BamH I および Asc I で消化せしめ、結果の DNA フラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離した。図 2 は、上記制限消化体について臭化エチジウム染色後につくられたバンドを示す。全 4 pWDH445 反応がバンド〜3.2 kb をつくり、HO-RAD54プロモーター-yEGFP カセット が正常 pWDH445 (枠 1 および 3) と輝く変種 (枠 2 および 4) とで変化していないことを示す。しかし、プラスミドの残余を表すバンドは、変種のひとつ (枠 2) で大きく、他 (枠 4) で小さい。一方、それは、形質転換に使用された DNA と正常輝きレベルをもつ形質転換体から単離された DNA とで一定であった。
【0150】
再編成プラスミドで再形質転換されたイーストは G418 感受性である
イーストから単離され、ついで増殖後に E. coli から調製されたプラスミド DNA を用いて、FF18984 イーストを正常および再編成の pWDH445 で、酢酸リチウム / PEG / SS-DNA プロトコールにより再形質転換した。形質転換体をウラシル欠損の培地上で成長する能力により選択した。これは変種における変異 / 再編成により明らかに影響を受けなかった。形質転換体の栄養要求型マーカーを、pWDH445 により付与されるウラシルなしで成長する能力を除いて、前もって調べ、FF18984 素性のものと対応せしめた。今一度、G418 に対する耐性を、200μgml-1 G418 を含有する YPD プレートへの形質転換体の転移で試験した。図 3 は、G418 を含有する YPD プレート上およびウラシルを欠く SD プレート上でインキュベートされた再形質転換 FF18984 についての写真を示す。ウラシルを欠くプレートは右側列であり、予想のようにすべての例で成長を示した。しかし、G418 プレート (左側列) は、イーストから単離された対照 pWDH445 および正常 pWDH445 をもつ細胞が予想のように G418 耐性であるが、2 異常プラスミドのいずれかをもつ細胞が 200μgml-1 G418 に感受性であることを表す。このことは、変異または再編成が安定であって、形質転換手法にしばしば関連する変異作用により戻されなかったことを示唆する。
【0151】
再形質転換された G418-感受性イーストがなお、より輝くシグナル・アウトプットを与える
変更されたレポーター・プラスミドで形質転換された FF18984 細胞を、0.005% MMS に対する応答においてレポーターを誘発するその能力について試験し、正常 pWDH445 を有する細胞と比較した。MMS との 15 時間インキュベーション後に、蛍光および散乱を測定し、輝度を決定した。図 4 は、正常 pWDH445 を有する細胞 (黒色棒) および変更されたプラスミドをもつ細胞 (灰色棒) からの輝きシグナルを表す。すでに述べたように、形質転換された細胞についての灰色棒は、対応の黒色棒よりも有意に大きい。修飾プラスミドは、未変化の pWDH445 をもつ細胞に比して、非処置の輝きシグナルにおいて 3.3 倍の増加、MMS-誘発シグナルにおいて 4.6 倍の増加をもたらす。全般的に、これらの増加は、誘発比率に対してほとんど作用がなく、修飾プラスミドをもつ細胞において 5.5 から 5.2 へのわずかな減少をつくる。しかし、再形質転換体での輝きシグナルの増加は、単離された元の変種についてほど大きくない。
【0152】
pWDH445 およびその輝く誘導体についての制限分析
輝きシグナルの高まりと G418 耐性の喪失とに関係があると仮定した。これは kanMX モジュールにおける変化またはその喪失を示唆する。この判定には、診断的制限消化の使用を必要とする。
この研究で明確にされた pWDH445 の制限マップを図5に示す。
【0153】
Xba I 消化が再編成プラスミドにおけるサイズ相違を表した
無傷の HO-RAD54 プロモーター-yEGFP モジュールの存在を確認するために前に用いた BamH I および Asc I 二重消化は、1再編成プラスミドが pWDH445 より大きく、他の1がより小さいことも明らかにした。Xba I 消化を用いて、アガロースゲル電気泳動による DNA フラグメントの分画後に、再編成プラスミドにおけるサイズ変化を確認した。マップから、Xba I 消化から完了が、正常の輝きを発揮する細胞から単離された pWDH445 およびプラスミドについて、〜6 kb での二重形成における2バンドをもたらすと思われた。図 6 において、枠 1 および 3 は、1% アガロースゲルから分離され、臭化エチジウムで標識された正常輝きの細胞に由来する pWDH445 およびプラスミドの Xba I 消化でつくられたフラグメントを表す。両枠は、約サイズ 6 kb でダブレットの形成において同じバンドを示す(枠 5 は 500 bp ラダー分子量マーカー DNA を最大フラグメント 5 kb とともに含有する)。枠 4 は再編成プラスミドについての Xba I フラグメントを表し、これは BamH I Asc I 二重消化においてより小さいようである。小さいサイズは、ダブレットからの大きいバンド (〜6 kb) のバンド〜4.4 kb での置換を反映し、12 kb pWDH445 に対しベクターサイズ〜10.4 kb を提供する。 枠 2 は、BamH I Asc I 消化において pWDH445 よりも大きいようである他の再編成プラスミドについての Xba I フラグメントを示す。小さい再編成プラスミドに関し、6kb ダブレットからの大きいバンドが消失するが、バンド〜4.4 kb だけでなく、さらに 2 新バンド〜3.2 および 3.0 kb で置き替わる。このことは、ベクターサイズ〜16.6 kb、pWDH445 に比して〜4.6 kb の増加を示唆する。これは、再編成プラスミドを持つ細胞における輝きの増加が、純粋にベクターのサイズに関連する現象でないことを示唆する (通常、サイズとコピー数とに逆の関係がある)。これは、両再編成が、大きい〜6 kb バンドが各例で消失するので、ベクターの同じ半分で生じることも示唆する。大きいバンドは Ampr、kanMX3 および yEGFP を持つプラスミドの半分を表す。これはさらに、HO-RAD54 プロモーター-yEGFP モジュールが再編成後に無傷であったという BamH I Asc I 消化からの示唆を確証する。
【0154】
Sca I 消化が再編成の領域をさらに制限した
pWDH445 が Sca I 制限酵素についての4認識部位を含有するので、Sca I 消化が4フラグメントの産生をもたらしている。4フラグメントは、電気泳動後に約 4.7、4.1、1.9 および 1.3 kb で表される。図 7 は、フラグメントの分画に使用された臭化エチジウム染色 1% アガロースゲルの写真を示し、pWDH445 (枠 2)、大きい再編成プラスミド (枠 3)、再単離の pWDH445 (枠 4)、小さい再編成 プラスミド (枠 5) からである。枠 2 および 4 は、4 と 5 kb 間( 4.7 および 4.1 kb フラグメントを表す) のダブレットをもつ同じパターンのバンド、および単一のバンド〜1.8 k およびバンド 1.3 kb を示す。いずれの再編成プラスミド (枠 3 および 5) も、1.3 kb Sca I バンドを発揮せず、その産生には、無傷である kanMX3 の Sca I 認識部位を必要とする。〜1.8 および 4.1 kb バンドが全 4 消化プラスミドに存在し、変化が HO、URA3、2 ミクロン オリジンまたは Ampr を含有する領域で生じなかったことを意味する。従って、再編成が起こり得たベクターの部分は、全 kanMX3 モジュールを含む Ampr における独自の Asc I 認識部位と Sca I 認識部位との間の領域に限定される。
【0155】
kanMX3 モジュール内の Pst I 解裂部位が再編成プラスミドでなくなる
一旦、再編成を組み込むプラスミドの領域が確立されると、このセクションで解裂部位について制限酵素を調べる必要がある。Pst I 解裂は 7 回 pWDH445 で生じるが、6 バンドのみが Pst I フラグメントの電気泳動分離後の臭化エチジウム染色 1% アガロースミニゲルで検出可能であった。第7フラグメントは小さすぎてこの条件では検出し得なかった。6 バンドのサイズは、約 4.2、2.5、2.2 または 1.6、1.4、1.3, および 0.9 kb であった。2.2 または 1.6 kb で検出されであろうフラグメントは、HO および URA3 内の部位での解裂の結果であるはずであるが、そのサイズは URA3 遺伝子の方向に依存する。
【0156】
図8は、Pst I 消化のプラスミドからフラグメントが分離される臭化エチジウム染色ゲルの写真を示す。pWDH445 および再単離の pWDH445 が枠 2 および 4 にそれぞれ載せられ、一方、大きいおよび小さい再編成プラスミドが枠 3 および 5 にそれぞれ載せられる。すべての4プラスミドは、URA3 遺伝子が HO-RAD54 プロモーター-yEGFP-kanMX3 カセットに対し反対の方向で転写されることを示唆する 1.6 kb バンドを表す。kanMX3 モジュール中に Pst I 解裂部位を含む 2 バンドは 2.5 および 0.9 kb フラグメントである。消化 pWDH445 および消化再単離 pWDH445 を含有する枠 2 および 4 のみがバンドを 2.5 および 0.9 kb で産生し(0.9 kb バンドは図8では見えない)、一方、再編成プラスミド (枠 3 および 5) では存在しなかった。両再編成プラスミドからの 2.5 kバンドおよび 0.9 kb バンドの喪失は、再編成が kanMX 内で起き、kanMX Pst I 解裂部位の喪失を起こすことを示唆する。両再編成プラスミドの Pst I 消化は、pWDH445 消化で存在しない新しい 1.5 kb バンドを産生した。もし、kanMX3 中の Pst I 解裂部位のみが、その解裂を防ぐように変更されていると、〜3.5 kb バンドが現れると思われる (2.5 および 0.9 kb フラグメントの組合せ)。しかし、kanMX3 モジュールにおいて Kanr 遺伝子をフランクする直接リピート・エレメント間の再結合が 3.5 kb フラグメントの 2 kb 部分の喪失をもたらし得た。このことは、枠 3 および 5 において検出される 1.5 kb バンドを説明できる。
【0157】
3Pvu I 解裂部位のうち2が両再編成プラスミドで失われた
pWDH445 中の Pvu I 制限エンドヌクレアーゼについて4解裂部位があり、そのうち3が kanMX3 モジュール内にある。考えられる4フラグメントは、サイズ〜9、1.2、1.1 および 0.7 kb である。4プラスミドは Pvu I で消化され、結果のフラグメントを 1% アガロースゲルで電気泳動により分画した。消化のプラスミドをゲルに、枠 1 にストック pWDH445 、枠 2 に大きい再編成プラスミド、枠 3 に単離 pWDH445、枠 4 に小さい再編成プラスミドを載せた。図 9 は臭化エチジウム染色 Pvu I フラグメントの写真を示す。両枠 1 および 3 は予測のバンド全4を示し、一方、枠 2 および 4 は異なるバンド分子量マーカーを表す。枠 4 における小さい再編成プラスミドは大きいバンドを示し、プラスミドのバルクおよび全4プラスミドが発揮する 1.1 kb でのバンドを表す。1.1 kb バンドは Ampr および Kanr 遺伝子において Pvu I による解裂から生じ、kanMX3 の 5' 末端での Pvu I 解裂部位が無傷であったことを示唆する。しかし、いずれの再編成プラスミドも、1.2 および 0.7 kb kanMX3 内部フラグメントを表すバンドを示さない。このことは、kanMX3 モジュール内で DNA の喪失が起きていることを示唆する。大きい再編成プラスミドも 2 の新しいバンド 1 kb および〜3.5 kb を示した。
【0158】
Sac I は〜2.1 kb の kanMX3 を再編成プラスミドからの放出しない
pWDH445 において 2 Sac I 解裂部位があり、kanMX3 中 Kanr をフランクする直接リピート各配列のひとつである。すなわち、〜2.1 kバンドおよび〜10 kb の 2 フラグメントを表す 2 バンドが pWDH445 の Sac I 消化によりつくられる。2.1 kb フラグメントが kanMX3 から放出され、より大きいフラグメントが残りのプラスミドを表す。4プラスミドが Sac I 制限エンドヌクレアーゼで消化され、フラグメントを電気泳動で 1% アガロースゲルで分離した。図 10 は、枠 1 が pWDH445 の臭化エチジウム染色ゲル、枠 2 が大きい再編成プラスミド、枠 3 が単離 pWDH445、枠 4 が小さい再編成プラスミドである。枠 1 および 3 のみが kanMX3 から放出された予想の 2.1 kb フラグメントを示し、一方、枠 2 および 4 が非切断プラスミドを表す単一バンドのみを示す。上記の他の証拠と合わせて、このことは、両再編成プラスミドが直接リピート配列における Sac I 解裂部位の間またはそれを含む kanMX3 の部分をなくすることを示唆する。
【0159】
pWDH445 から kanMX3 の酵素的除去
上記の検査の特性からして、再編成を精密に明確にするのに、かなりの時間がかかるであろう。有意の再編成が kanMX モジュール内で明確になるので、この修飾を酵素的に切断された kanMX3 で再作成することとした。これは、再編成プラスミドをもつ細胞からの輝きの高まりが kanMX3 モジュールの部分喪失によるとの仮定を調べる手段を提供する。
【0160】
pWDH445 の Sac I 消化に続く再連結反応
〜2.1 kb フラグメントを kanMX3 モジュールから除くために、ストック pWDH445 を Sac I で完全に消化した。3μl アリコートの Sac I-消化 pWDH445 を 1% アガロースゲルに掛け、消化の成功を調べるためにフラグメントを電気泳動で分離した (データは示さない)。Sac I 酵素の不活性化を 65 ℃で 20 分間インキュベーションで行った後、消化された pWDH445 を再連結した。連結反応を 3 相違濃度の消化プラスミド DNA (非希釈、1 / 10 希釈、1 / 100 希釈) で、T4 DNA リガーゼとの 16 ℃一夜のインキュベーションにより行った。分子内連結反応を促進するために、希釈の消化 DNA を用いた。10 μl アリコートの各連結反応混合物を用いて、E. coli を形質転換し、形質転換体を、アンピシリンを含有する LB プレート上で 37 ℃で一夜インキュベートして、選択した。アンピシリン耐性の形質転換体をカナマイシン含有の LB プレート上に置いた。カナマイシン・プレート上での一夜インキュベーション後にひじょうに少ないコロニーが成長し得た。
【0161】
カナマイシン耐性でもある1形質転換体を含む 10 アンピシリン耐性コロニーを選択し、アンピシリン含有の LB ブロス中で 37 ℃一夜攪拌しながらインキュベートした。プラスミド調製物をこれらの培養基から標準的方法ででつくり、単離 DNA を Xba I および正常 pWDH445 で消化した。フラグメントを電気泳動により 1% アガロースゲルで分離し、臭化エチジウム染色ゲルを図 11 に示す。 枠 1 および 13 は、pWDH445 からの Xba I フラグメントを表すバンドを示す。過剰負荷が 6 kb フラグメントを識別するのを困難にした。枠 7 は最大バンド 5 kb をもつ 500 bp ラダー 分子量マーカーを含有し、枠 1 および 13 のバンドは〜6 kb であった。枠 10 はカナマイシン耐性コロニーからの DNA を含有し、枠 1 および 13 においては対照と同じ 6 kb バンドを示す。残りの枠はカナマイシン感受性コロニーからの DNA を含有し、すべてバンド〜6 kb を発揮するが、第2バンドは〜4.5 kb であった。これは、小さい再編成プラスミドの Xba I-消化についてみられるのと同じバンドである (参照、枠 4、図 6)。
【0162】
新プラスミドはイーストにおいて pWDH445 よりも輝く
FF18984 細胞を新プラスミド調製物からの DNA で標準的方法により形質転換した。形質転換体を、ウラシルを欠く SD プレート上でのインキュベーションにより選択し、栄養要求性マーカーを調べた。10 形質転換体を 0.005% MMS に対する応答の輝きについての検査のために取り上げた。蛍光および散乱の測定の前に MMS とのインキュベーションを 15 時間続けた。新プラスミドを持つ細胞についての平均輝度 (灰色棒) を、pWDH445 をもつ細胞からの輝度 (黒色棒) と図 12 で比較した。kanMX3 酵素的に切断の部分のプラスミドをもつ細胞についての輝度 (図 12) は、イーストから単離された自発的修飾のプラスミドをもつ細胞のものに匹敵した。新プラスミドをもつ非処置細胞は pWDH445 をもつものより4倍輝く。一方、輝きが MMS での処置細胞について5倍増加した。しかし、誘発比率が輝きの構成的レベルの増加にためにより輝く細胞で減少した。
【0163】
要約
1. pWDH445 での FF18984 の形質転換は、典型的な pWDH445-保持の FF18984 細胞よりも 12 倍輝く構成的シグナルおよび 9 倍輝く MMS-誘発のシグナルをもついくつかの形質転換体を産生した。誘発比率は輝く細胞で半分であった。
【0164】
2. 輝く形質転換体は、G418 含有の培地で成長できず、pWDH4454 の kanMX3 モジュール内での変化を示唆した。
【0165】
3. 輝く形質転換体から単離されたプラスミドの BamH I および Asc I による二重制限は、pWDH445 と同じサイズのバンドをつくり、HO-RAD54 プロモーター-yEGFP モジュールが未変化であることを示唆した。しかし、1再編成プラスミドが pWDH445 よりも大きく、他はより小さかった。
【0166】
4. 再編成プラスミドで再形質転換されたイースト細胞 (FF18984) は G418 に感受性であり、輝きの変化が染色体変異に反してプラスミド変化によることを明確にした。
【0167】
5. 非処理および MMS-誘発の再形質転換イースト細胞は pWDH445-を持つ細胞よりもそれぞれ 3.3 倍および 4.6 倍明るかった。しかし、pWDH445 または再編成プラスミドをもつ細胞間の誘発比率にほとんど変化がなかった。
【0168】
6. Xba I での消化は、BamH I-Asc I 二重消化の知見と一致し、pWDH445 よりも1プラスミドが大きく、1プラスミドが小さかった。再編成により変更されたフラグメントは Ampr、kanMX3、および yEGFP をもつ。
【0169】
7. Sca I 消化は、再編成が HO、URA3、2 ミクロン源および Ampr の部分をもつ領域で生じなかったことを示唆する。BamH I-Asc I および Xba I 消化からの知見と合わせると、再編成が全 kanMX3 モジュール組み込む領域において、Ampr において独自の Asc I 解裂部位と Sca I 解裂部位との間に起きたに違いない。
【0170】
8. Pst I 消化により形成された 2 バンドは、kanMX3 中の Pst I 部位が無傷であると、再編成プラスミドのいずれについても存在しない。
【0171】
9. kanMX3 中の 3 Pvu I 解裂部位の2が再編成プラスミドにおいて存在せず、kanMX3 モジュール中の DNA の喪失を示唆する。
【0172】
10. Sac I は、予想の〜2.1 kb kanMX3 フラグメントを再編成プラスミドから放出しない。
【0173】
11. kanMX3 の〜2.1 kb フラグメントは Sac I 付着末端の再連結反応の前に Sac I により pWDH445 から解裂される。新プラスミドで形質転換されたイースト細胞は自発的再編成プラスミドをもつイースト細胞と同じ輝きであった。
【0174】
考察
pWDH445 の再編成 (本発明の第1態様による組換えベクターの形成) が、おそらく形質転換に依存的に起きた。形質転換は変異原性プロセスであると知られ、正常の形質転換体よりも明るかった。この形質転換体は、イースト細胞でゲネチシン耐性を付与するアミノグリコシド・ポスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子を組み込む kanMX モジュールをもつ pWDH445 にもかかわらず、200μgml-1 ゲネチシンを含有する培地での成長に感受性であることが分かった。これは、kanMX モジュールの変異または喪失が起きて細胞をゲネチシン感受性にすることを示唆する。kanMX がおそらくプラスミドから失われ、欠失事象がプラスミドのサイズを減少し、安定性およびコピー数を増加するのではないかと思われた。
【0175】
しかし、輝く形質転換体からのプラスミド DNA の単離および HO-RAD54プロモーター-yEGFP カセットを放出する消化の後に、ゲル電気泳動により分離された DNA フラグメントを表すバンドからして、1の輝く形質転換体が小さいレポータープラスミドをもち、他が pWDH445 の大きい誘導体をもつことは明らかであった。これは、高められたレポーター・アウトプットがプラスミドサイズ関連現象であるとの仮定を排除するので、さらに詳細な検証を必要とする。再編成プラスミドのついてのさらなる制限分析の結果は、kanMX が小さいおよび大きい両プラスミドにおいて失われ、大きいプラスミドが数 kb の DNA をもつことを示した。
【0176】
小さいプラスミドは、おそらく kanMX モジュール内で kanr 遺伝子をフランクする直接リピートおよびプロモーター配列の組換えによりつくられる。Sac I 消化により放出される kanMX フラグメントは、小さいプラスミドにより失われたフラグメントのサイズに近い〜2.1 kb である。
【0177】
シャトルベクターによりつくられる細菌性配列が異種宿主生物体に対し毒性であり得ること、S. cerevisiae における保持のために不必要であるかかる配列が組換え事象により自動的に消失され得ることが以前から言われている。全 pWDH445 形質転換体を、ウラシルを欠く SD 培地で成長するその能力について主に選択したので、kanMX モジュールはプラスミド保持のために不必要であった。
【0178】
レポーターの輝き増加は、再編成プラスミドのひとつがサイズ増加的であるので、サイズの減少およびコピー数の増加に関連しない。これは、糸状性真菌 Ashbya gossipyii からの翻訳伸張因子 1α (AgTEF) に由来のプロモーターにより駆動されたアミノグリコシド・ポスホトランスフェラーゼの構成的発現が、RAD54 プロモーターからの yEGFP 発現になんらか影響することを示唆する。kanMX モジュールは HO-RAD54プロモーター-yEGFP カセットのすぐ下流であり、AgTEF から yEGFP を分離する直接リピート配列 (465 bp) のみをもつ。仮説にとらわれるわけでないが、アミノグリコシド・ポスホトランスフェラーゼについて偏在する (構成的発現による) 転写複合体が yEGFP 転写の終了を妨害し、不完全な転写体および未完の yEGFP ポリペプチドをもたらし、これらが成熟 GFP をつくるための正当なホルディングになり得ないのではないかと考え得る。kanMX の喪失が妨害を排除し、より大きい割合の yEGFP が構成および誘発レポーター状態で正しく蛍光体をおりたたみ得るのであろう。
【0179】
yEGFP の効率的な転写の妨害は、プラスミドの立体配座から来るのであろう。kanMX をもつ pWDH445 のサイズおよび配列は、プラスミドが転写複合体の成分の RAD54 プロモーターへのアクセスを制限する立体配座を帯びるようなものであろう。しかし、メカニズムにかかわらず kanMX の喪失は、サイズおよび配列の変化により、立体配座を変える結果になり得、より大きいアクセス性の RAD54 プロモーターを導く。この場合、pWDH445 が制限的立体配座を可能にする主要なサイズであらねばならない。従って、サイズの変化、増加または減少のいずれかが立体配座を十分に変更する。
【0180】
kanMX の不存在での高められた輝きについての別の説明は、一般的転写因子のより大きい利用性である。kanMX 中でコードされるアミノグリコシド・ホトトランスフェラーゼは、構成的に発現されるので、一般的転写因子について恒常的な必要があるに違いなかった。すなわち、RAD54 プロモーターからの転写のためのかかる因子の利用性が kanMX の存在で減じ、このモジュールの除去がレポーター・カセットに対する拘束を無くする。これは、プラスミドにより占拠された "局所的" 欠損のみのようであり、AgTEF プロモーターにおける転写因子についての高いアフィニティーを反映するのであろう。
【0181】
最終に、レポーター発現に kanMX 関連干渉が転写後に起きるのであろう。yEGFP およびアミノグリコシド・ホトトランスフェラーゼの両者は、GFP が Aequorea victoria からおよび Kanr が E. coli トランスポソン Tn903 から由来するので、異種タンパク質である。2 外来タンパク質が相互作用し、yEGFP の効率的なホルディングおよび成熟を防ぐことは可能である。kanMX の喪失がイレジティメイト相互作用を無くし、蛍光 yEGFP の比率を増す。
【0182】
kanMX が無くされ、レポーター・アウトプットが高められるメカニズムは、輝きレポーターが明らかに有益なので、レポーターの商業的開発に基本的に無関係である (応答が検出可能である限り)。kanMX モジュールを研究目的に便利な選択可能なマーカーとして用いたが、抗生物質耐性を付与する遺伝子の放出を支配するストリジェント・ルールが商業化のためのこの置換に必要であろう。
【0183】
もし pWDH445 でみられる kanMX 作用が純粋にプラスミド関連現象であるなら、この作用が pWDH445 特異的であるかを調べるために、レポーター・カセットを異なるプラスミド背景に再クローン化できる。ヒグロマイシン B (hph; hphMX)、ヌルセオテリシン (nat; natMX) およびビアラホス (pat; patMX) などの抗生物質の耐性を付与する種々の遺伝子で kanMX を置換すると、作用が pWDH445 に対し kanMX 特異的であるかがわかるであろう。遺伝子間領域を pWDH445 上の yEGFP と kanMX との間に挿入し、yEGFP の終末コドン対する kanMX の AgTEF プロモーターの近位性によるのかどうかを調べ得る。これらの新しいベクターの検定は構成的および誘発の輝度によって、FF18984 株で生じたときに、なし得る。輝く形質転換体を他のイースト株から単離したが、プラスミド DNA を単離して、輝く FF18984 細胞からと同じように検定しなかった。しかし、類似の再編成が他の株から単離されたプラスミドで検出されると推定され、これは株特異的作用を軽減する。
【0184】
実施例2
GreenScreen(登録商標)アッセイ (GSA) というイースト DNA 修復レポーター・アッセイを記述する。このアッセイは、本発明の第3態様に従い DNA 損傷を起こす物質の存在を検出する好ましい方法を表す。
【0185】
簡単で確実なプロトコール、開発および有効な研究を記述する。この結果は、陽性応答を与える化合物が1以上の調節試験 (Ames, 小枝およびマウスリンパ腫試験または腫瘍原性バイオアッセイ) における対応の陽性応答に高い類似性を (96%) を有することを示す。偽の陽性率は非常に低い。試験の終了点は、Saccharomyces cerevisiae の典型的真核染色体および DNA 代謝酵素を反映する。代謝性活性化 (MA) の容量は哺乳動物肝またはその抽出物に比して制限されるが、このアッセイは既存の遺伝子毒性試験において MA を必要とするであろう一連の化合物を検出する。GSA は、細菌性遺伝子毒性に対し異なるスペクトルの化合物を検出し、すなわち、シリコ構造活性関連 (SAR) スクリーンとともに、場合により高度のスループット細菌性スクリーンとともに、調節セットの遺伝子毒性試験について効果的な予知を提供する。
【0186】
導入
SOS umu および SOS lux 試験などの高度のスループット細菌性スクリーンの導入は、薬剤発見プロセスの初期段階で利用可能な少量の試験化合物に遺伝子毒性試験を用い得ることを示す。このタイプのアッセイは、環境モニターおよび食品工業や軍事分野の試験などの様々な制約においても重要な役割を持つ。これらの細菌性アッセイは、その効果を証明されているが、いくつかの問題点がある。特に、非真核細胞を用いないので、真核細胞特異的標的と相互作用するゲノトキシンを検出しないからである。
【0187】
本発明者は以前に、イーストに基づく遺伝子毒性試験システム、RAD54-GFP の構築および予備的有効性について報告した (参照、WO 98/44149)。RAD54 プロモーターの誘発が非常に安定なグリーン蛍光タンパク質 (GFP) をつくる。このものはブルー光で照射されたときグリーンスペクトルでの蛍光である。イーストにおいて変異を起こし得るいかなる物質も RAD54 誘発を導くようである。DNA 損傷に対する特異性は DNA-損傷物質に対する全般的転写応答を DNA マイクロアッセイで調べることで確認されている。RAD54 が熱ショック、酸化ショック、還元ショック、浸透圧ショックまたはアミノ酸不足などの他の非遺伝子毒性ショックに対して応答しないことがわかった。
【0188】
RAD54 は、相同性組換え (HR) 修復経路の構造的エレメントをコードするが、広いスペクトルのゲノトキシンに応答し、イースト DNA 損傷に反応する経路が他の修復経路のないための欠失として HR 経路を活性化することを示す。このことはいくつかの系統の遺伝子証拠で支持される。例えば、イーストにおける非相同性末端結合表 (NHEJ) 経路の喪失は、RAD52 (HR) 経路も切除されないと、検出し得ない。さらに、RAD54 のメチルメタンスルホネート (MMS) による誘発が RAD9 および DDC1 チェックポイントにより制御される クラシカル' DNA-損傷反応経路における変異に対し非感受性であることが知られている。このことは、RAD54 活性化に導く追加の DNA 損傷反応経路があること、およびこれがその広い応答プロファイルを説明することを示唆する。HR DNA-修復プロセスはよく特徴解明されており、すべての真核生物体で明らかに高度に保存されている。イーストにおけるヒト相同性 hRAD54 の発現は元のコピーの欠損からおきる表現型を抑制する。従って、ゲノトキシンへの暴露の結果としてのイーストにおける RAD54 の発現増加は、哺乳動物における DNA 修復活性の増加を予測できるようである。
【0189】
ロボット液体操作の使用に適したプロトコールおよび明確な図示的アウトプットを提供する本簡単データ操作プロトコールを記述する。種々の遺伝子毒性の可能性ある 102 化合物について試験したアッセイ有効化プログラムの結果を報告する。
【0190】
材料および方法
株およびプラスミド
本研究で使用されるイースト株、プラスミドおよび成長培地 (F1) は以前に記載されており (Walmsley et al., 1997) および Saccharomyces cerevisiae からの DNA 損傷誘発の遺伝子 RAD54 についてのレポーターとしてのグリーン蛍光光タンパク質 (GFP) の使用も記載されている (Billinton, et al., 1998)。Saccharomyces cerevisiae 株 FF18984 (MATa、leu2-3、112 ura3-52 lys2-1 his7-1) は Francis Fabre (French Atomic Energy Commission (CEA), Fontenay-aux-Roses, France) から取得した。
【0191】
レポーター株 (GenT01) は、イーストの高める Aequorea victoria GFP 遺伝子に融合された RAD54 遺伝子の全上流非コード DNA 配列を含有する複製プラスミドを含有の FF18984 である(pGen001、図 15)。対照株 (GenC01) は同じプラスミドを含有する FF18984 であるが、ただ 2 塩基対が GFP 遺伝子の開始で除去されて、GFP がつくられない。
【0192】
マイクロプレート調製
アッセイを 96 ウエル、黒色、透明底マイクロプレート(Matrix ScreenMates, Cat. No. 4929, Apogent Discoveries, USA) において行った。多数の別のマイクロプレートを調べたが、個々の製造業者からのプレート間および内での変化する背景の吸収度および蛍光は一般的に受け入れられず、Matrix or Corning (BV, Netherlands: Cat. No. 3651) プレートのみが本アッセイで適切であった。アッセイを、液体操作ロボット (MicroLabS single probe, Hamilton GB Ltd., Birmingham. UK) により、単一 96 ウエルマイクロプレートでの試験につき4化合物を設定するように設計されたプロトコールで 30 分間行った。1サブセットの化合物についての結果を Genesis 8-プローブロボット (Tecan UK Ltd. Theale. UK) で再製した。これは類似のマイクロプレートを 5 未満に設定できる。マイクロプレートスキャン複数チャネルピペットで迅速かつ効果的に充填できる。
【0193】
アッセイのマイクロプレート版は以前に報告されているが (Afanassiev et al., 2000)、異なるマイクロプレートおよび対照を本研究では使用した。詳細を下記する。下記の標準的プロトコールにより行い得る。1 mM 量の試験化学物質を、2% v/v 水性 DMSO で調製し、96 ウエルのマイクロプレートでの2同一希釈系および 対照 (下記参照) をつくるのに使用した。このために、150 ml の試験化学物質溶液を 2 マイクロプレート・ウエルに入れた。各サンプルの連続的な希釈を、75 ml を 75 ml の 4% DMSO に入れ、混合し、ついで 75 ml を取り出し、次のウエルに入れることで行った。これで、9 連続的希釈の各 75 ml をつくった。
【0194】
対照を下記のように加えた:
a. 試験化合物のみ、化合物の吸収度/蛍光についての情報を準備するために
b. 2% DMSO で希釈されたイースト培養基のみ、最大増殖力価を得るために
c. 遺伝毒性対照としての MMS : "高" = 0.00125% v/v, "低" = 0.0001875% v/v
d. 細胞毒性対照としてのメタノール: "高" = 3.5% v/v, "低" = 1.5% v/v
e. 生育培地のみ、無菌/汚染の欠如を確認するために。
【0195】
GenT001 および GenC01 の静止相培養基を光学濃度 (OD600nm) = 0.2 まで二重強度 F1 培地 (Billinton et al., 1998) 中で希釈した。75 ml のイースト懸濁液を各ウエルの希釈化学物質に加えた: GenT01 を1系に、GenC01 を第2系に、そして適当な標準および対照に。プレートを充填した後、ガス浸透性膜 (例えば、Breath-easy, Diversified Biotech, USA) またはプラスチック蓋で封をし、攪拌せずに一夜 25 ℃でインキュベートした。
【0196】
試験のために選択された化合物
発明者の研究所で偏らない化学物質のリストをつくるために、多数の製薬会社および契約研究機関に新試験の検定に興味のある化合物を挙げてもらうことを依頼した。すべての化合物は分析純度で入手可能であった (Sigma, Aldrich, Fluka, BDH, Av℃ado)。
【0197】
データ収集および操作
一夜インキュベーションの後、蛍光および吸収度のデータをマイクロプレートから収集した。蛍光と吸収度との機能性を組み合わす2つの異なるマイクロプレート・リーダーを用い、比較可能なデータを得た。これらは、Tecan Ultra-384 (Tecan UK Ltd.): 励起 485 nm / 放出 535 nm、追加の光二色性鏡をもつ (反射 320 nm 500 nm、透過 520 nm 800 nm) と、BMG PolarStar (BMG Labtechnologies, Germany): 励起 485 nm / 放出 520 nm である。吸収度は 620 nm フィルターを介して両機器とも測定した。データを Microsoft Excel スプレッドシートに移し、図表データに転換した (参照、図 18 における典型的データ)。データ処理が最少:吸収度データが増殖力価における減少を表し、これらのデータを非処理対照 (=100% 成長) に対し整える。蛍光データを吸収度データで除して、"輝き単位"、細胞ごとの平均 GFP 誘導の測定を得た。これらのデータを非処理対照 (=1) に対して整えた。このようにして、少数の強い蛍光の細胞と多数の弱い蛍光の細胞を識別できる。誘発された細胞の自動蛍光と内在性化合物の蛍光とを正すために、GenC01 株についての輝度を GenT01 の輝度から引いた。これで、データの視覚検定がより信頼すべきものとなる。すべてのデータについて、この補正の有無で検討し、化合物が遺伝子毒性に分類されるかどうかの決定 (下記参照) が影響されなかった。
【0198】
決定閾値
日常的なアッセイからの肯定的および否定的な結果についての明確な定義をもつことは有用である。かかる定義は、系における最大のノイズならびに遺伝子毒性および作用メカニズムについて明白な同意がある化学物質からのデータを考慮して誘導されている。勿論、使用者が数字および図式のデータを検討し、自身の結論を引き出すことも可能である。例えば、閾値を越えなかった遺伝子毒性データにおける上方傾向が2化合物を識別することもある。決定閾値は下記に規定する。
【0199】
細胞毒性の閾値を非処理の対照細胞により達せられる細胞密度の 80 % とする。これは、背景の標準偏差の 3 倍よりも大きい。1 または 2 化合物希釈が 80% 閾値よりも低い最終細胞密度を生じると、陽性の細胞毒性結果 (+) となる。強い陽性の細胞毒性結果 (++) となるのは、(i) 3以上の化合物希釈が 80% 閾値よりも低い最終細胞密度を生じるか、または (ii) 少なくとも1化合物希釈が 50% 閾値よりも低い最終細胞密度を生じるときである。陰性結果 (-) となるのは、いずれの化合物希釈も 80% 閾値未満の最終細胞密度を生じないときである。最低有効濃度 (LEC) は 80% 閾値を下回る最終細胞密度を生じる最低の試験化合物濃度である。
【0200】
化合物吸収度対照が、試験化合物が有意に吸収しているかの警告をつくり得る。化合物対照ウエルの希釈液のみで充填されたウエルに対する吸収度比率が > 2 であると、解釈による妨害のおそれがある。細胞毒性対照は、イーストが正常に挙動していることを表す。"高い" メタノール標準は、最終細胞密度を 80% 閾値以下に減じるべきであり、"低い" 標準よりも低い値であるべきである。
【0201】
遺伝子毒性閾値を相対的 GFP 誘発 1.3 (すなわち、30% 増加) で規定する。これは、3 倍の背景の標準偏差より大きい。陽性の遺伝子毒性結果 (+) となるのは、1 または 2 化合物希釈が 1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じるときである。強い陽性の遺伝子毒性結果 (++) となるのは、(i) 3 以上の化合物希釈が 1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じるか、または (ii) 少なくとも1の化合物希釈が 1.6 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じるときである。陰性の遺伝子毒性結果 (-) となるのは、いずれの化合物希釈も 1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じないときである。LEC は、1.3 閾値より大きい相対的 GFP 誘発を生じる最低の試験化合物濃度である。遺伝子毒性対照は、株が DNA 損傷に正常に応答していることを表す。"高い" MMS 標準は、蛍光誘発 > 2 を生じ、低い' MMS 標準よりも大きい価でなければならない。変則的な輝きのデータが生じるのは、毒性がブランクの 30% 未満の最終細胞密度を導くときである。遺伝子毒性データはこの毒性閾値を超えて計算しない。遺伝子毒性が陰性の化合物は、10mM までまたは溶解性または細胞毒性の限度まで再試験した。
【0202】
化合物蛍光対照が、試験化合物が高度に自動蛍光性であるときに警告をつくり得る。化合物対照ウエルの希釈液充填ウエルに対する蛍光の比率が > 5 であると、解釈による妨害のおそれがある。これらの場合 (この試験では4)、蛍光分極を用いて、GFP を蛍光の別の源から識別できる (Knight et al., 2000, 2002)。両 Tecan および BMG 機器がこの能力を有す。時に、化合物が蛍光自体でなく細胞自動蛍光を誘発する。これは、対照 (GenC01) 株に輝きがあり、化学物質のみの対照に蛍光がないことからわかる。GenT01 データから GenC01 を普通に引くことで、この干渉をデータから除去できる。
【0203】
比較
他の遺伝子毒性試験および癌試験からの公表結果を表にする。これは、Ames 試験、マウスリンパ種アッセイ (MLA)、インビトロおよびインビボ、細胞遺伝 (染色体異常アッセイ) およびげっ歯類小枝試験 (MNT) を含む。データは、探索再読文献および最新の利用可能なインターネット源から収集した。それらには、 CCRIS (Chemical Carcinogeneis Research Information System: http://toxnet.nlm.nih.gov)、NTP (National Toxiciology Program Reports: http://ntp-server.niehs.nih.gov)、IARC (International Agency for Research on Cancer: http://www.iarc.fr)、NIOHS (National Institute for ℃cupational Health and Safety: http://www.cdc.gov/niosh/homepage.html) および USEPA (Environmental Protection Agency: http://www.epa.gov/iris/search.htm) がある。
【0204】
相違する源からの一致しないデータをもついくつかの化合物があった (+/- と記録)。しかし、比較が引かれると、これらは 陽性 (+) と記録する。この唯一の例外は、NTP が明白な指定を示唆している場合である。本明細書において、他の試験結果に基づいて化学物質を再分類することを意図しない。本作成者はすべての不注意な相違および混同した決定を謝る。
【0205】
結果
102 化学物質についての有効試験の結果を完全に図20に示す。完成のために、これは、非常に高い濃度で試験されたいくつかの化合物を含み、陽性の遺伝子毒性結果が他の試験よりも高い濃度でもって結論されている。
【0206】
他の試験データと比較すると、この試験の感度が高いことは明らかである。55 化合物が GSA での遺伝子毒性が陽性であり、うち 50 が他の遺伝子毒性および癌試験に匹敵した。癌結果を除き、47/50 GSA 陽性化合物が Ames、MLA、MNT または染色体異常のいずれかで陽性であった。哺乳動物試験データ (すなわち、Ames データを除外) を考慮すると、44 のうち 42 GSA 陽性化合物 (91%) が MLA、MNT または染色体異常試験からの陽性のデータを有した。しかし、データを含めると (すなわち、哺乳動物、Ames および陽性癌データのみをもつ 2 追加化合物 (3-アミノ-1,2,4-トリアゾールおよびフルファメトキサゾール))、遺伝子損傷に対する試験感度が 96% (48/50) に増加する。全試験からの第2の重要な統計は、GSA において2陽性化合物のみが他の試験で対応の陽性データでなかった。これらはトリトリルホスフェートおよびシメチジンであった。
【0207】
表 12: 示唆される最大耐容の溶媒濃度
【表11】

【0208】
表12は、溶解などを促進するために、試験サンプルとともにしばしば使用される化学物質/溶媒を表示する。これらの化合物のすべてが膜に対する浸透作用のために高濃度で毒性であり、データ判断を妨害する。これらの化合物は、化合物ストック溶液を溶解するのに使用すると、化合物希釈系をつくるのに使用される希釈液にも含まれるはずである。この試験における DMSO の日常的使用はある種の化合物との予想可能な干渉を明らかにした。例えば、シスプラチンは、希釈液として 2% DMSO の代わりに水を用いて再試験したときのみ陽性であった。いくつかの酸化剤の再組合せ的性質における DMSO、遊離ラジカル・スカベンジャーの干渉は前に報告されている。
【0209】
【表12】

【0210】
いくつかの異なる指標を用いて新試験の有用性を検定した。これらの相対的な値については別に説明されている (Cooper et al., 1979)。適当な用語およびその定義は後者の表1になされているが、下記に言い換える。
【0211】
GSA での試験は陽性の結果を持ち得る。それについて他の試験 (例えば、MLA) から陽性の結果 ("a") または陰性の結果 ("b") であり得る。従って、GSA に陽性の全数は a + b' である。同様に、GSA での試験は陰性の結果を持ち得る。それについて第2試験 (例えば、MLA) から陽性の結果 ("c") または陰性の結果 ("d") であり得る。従って、GSA に陰性の全数は "c + d" である。第2試験から陽性の結果の全数は"a + c"、 第2試験から陰性の結果の全数は "b + d" となる。同様に、両試験についてのデータが存する化合物の全数 "n" は "a + b + c + d" である。これらのデータから下記を計算した:
感度 a/(a+c); 特異 d/(b+d); 予測値 a/(a+b); 顕在数 (a+c)/n
【0212】
図21は、Ames データが存するデータのサブセットを含有し、GSA および細菌性遺伝子毒性結果についての明確に相違する終了点に焦点を当てる。この群には 93 化合物がある。GSA で陽性であった 18 化合物が Ames 試験 (S9 あり、またはなし) について陰性であり、うち 17 が動物癌原性または哺乳動物細胞試験で陽性であり、Ames 陽性である 31 GSA 陽性のうち6が Ames 結果についての代謝活性化を要した。15 Ames 陽性化合物が GSA で陰性であり、うち 6 のみが代謝活性化で Ames 陽性である。
【0213】
考察
イースト RAD54 遺伝子の誘発をプロモーター-GFP 融合によりモニターした。以前の研究において (Afanassiev et al., 2000)、小さいサンプルの化学物質 (12) を選択して、検出し得た。 DNA 損傷物質の領域についての指標が準備された。この試験では、僅かに異なる実験プロトコールを用いたが、その結果は、 DNA 損傷物質ならびに DNA ポリメラーゼ (アフィジコリン) およびトポイソメラーゼ 1 (カンポトテシン) 阻害剤を含む酵素阻害剤を十分含み得ることを示した。
【0214】
この伸張試験のための化合物の選択において、予想の結果を持つ化合物の非常に制限されたリスト (あいまいでない変異誘発物質および非変異誘発物質) が終了点の非常に広い定義を与えないと決定した。他の研究における "明白な" についての広い選択が、なにが予想の結果であるべきかについて、論争をかって引き起こした。すなわち、ここに示される結果は、著者によって選択されなかった試験化合物の収集から由来する。もちろん、これは、多くの明白な変異誘発物質および非変異誘発物質を含む。これはまた、他の源からの相対する遺伝子毒性データまたは非常に少ない他のデータをもつ化合物を含む。後者は著者に明確に示唆し、試験終了点についてのよい考えを与える。
【0215】
102 化合物についての広い試験 (図 20) は、RAD54 遺伝子が直接作用物質で起こされる DNA 損傷により誘発されることを確認する。これらの例には、塩基変更 (MMS、臭化エチジウム)、染色体破壊 (染色体解裂: ブレオマイシン、カテコール、1,2-ジメチルヒドラジン、メチルビオロゲン、メタピラリン、フタール酸ビス(2-エチルヘキシル)エステル、フレオマイシン) および橋かけ (マイトマイシン C、シスプラチン) がある。酸化剤のうちクメンペルオキシドは著しく陰性である。光変異誘発物質プソラレンが正常の試験室光にのみ暴露して GSA 陽性であったことは興味深い。このレポーターはまた、DNA に直接作用しないであろう種々のゲノトキシンに応答する。これらには、トポイソメラーゼを標的にする化合物 (エトポシド、エリプチシン) ならびにコルヒチンおよびエコナゾルなどの抗有糸分裂・紡錘糸標的化合物 (アヌゲン) がある。後者の結果は、いくつかのアヌゲンが間接的に DNA 損傷をもたらすことを示唆するので、興味深い。提案のスクリーニング試験について、2陽性結果のみがイースト、トリトリルホスフェートおよびシメチジンに独特であるのが重要である。これらの結果の背後にある化学の発見が興味深いであろう。後者 (シアノメチルグアニジン) が周知の変異誘発物質であるメチルニトロニトロソグアニジン (MNNG) に化学的に関連しているのがおもしろい。
【0216】
Ames で検出できない他の腫瘍原物質の群 (サフロール、ウレタン、アリニンおよびチオウレアを含む) に興味があり、GSA 結果がイースト DEL アッセイによる同様の観察結果を確認する。
【0217】
イーストにより発現される代謝性酵素のスペクトルは哺乳動物細胞のものより複雑でない。例えば、CYP (チトクローム P450) 型酵素 (ERG5 / CYP61; DIT2 / CYP56; P45014-DM / ERG11 / CYP51; P450 オキシドレダクターゼ NCP1 / CPR1 ならびにグルタチオン-S-トランスフェラーゼ GTT1 および GTT2 がある。この技量は、Ames 陽性結果について S9 を必要とする GSA で陽性のデータをつくる6化合物 (ニュートラルレッド、2-アミノ-4-ニトロフェノール、プロフラビン・ヘミスルファート、臭化エチジウム、ベンゾ[a]ピレン、1-ナフチルアミン) の同定により反映される。 S9 はこの報告での GSA 試験のいずれでも使用しなかった。
【0218】
イーストの代謝能力は、大部分のプロ変異誘発物質の活性化に必要とされる S9 の高められた活性と対照をなし、GSA により検出されない化合物のもっとも明白な群:第一級芳香族アミンおよび芳香族アミドを説明する。9該化合物を試験した。2化合物:2-アミノ-4-ニトロフェノールおよび 1-ナフチルアミンが GSA 陽性であった。他の化合物は GSA 陰性で、インビトロ試験で陽性であった。すなわち、2-アセトアミドフルオレン、9-アミノアクリジン、2-アミノアントラセン、4,4-オキシジアニリン、o-アニシジン、アニリンおよび 4-アミノフェノールである。これらのうち最後の2化合物は S9 の有無で Ames で陰性である。芳香族アミンモチーフ自体は、SAR プログラムで認識されるが、GSA では見過ごされる。かかる化合物は新薬候補に適さないであろう。イースト株の代謝能力がヒトチトクローム P450 遺伝子の発現により高められ得ることが示された。本試験で使用されたイースト株における Sengstag 群からのプラスミドによる予備実験で、RAD54-GFP レポーターもその応答スペクトルを増加した。これらの株の完全な検定は実施中であり (S9 プロトコールの検定を含む)、完了すると報告する。
【0219】
GSA の相対的化合物必要性を、細菌スクリーニング試験と比較して調べるために、有効化化学物質の小サンプルの最小有効濃度 (LEC) を表13で比較した。
【0220】
この比較は、GSA が SOS umuC クロモテストおよび SOS lux バイオルミネセンス・アッセイ に対し類似の感受性であることを示す (非常に限られたデータセットに基づく)。従って、GSA の全化合物必要性は、他の普通に使用される短期間スクリーンに匹敵する。
【0221】
GSA は、明確に決定し得る閾値をもつ簡単で定まったマイクロプレート・プロトコールを有する。これらの性質を考慮すると、高度の一貫した力量が得られ、相反する試験データがつくられるのを少なくする。このことは、いずれの有用なスクリーンに重要な必要性である。このスクリーンで試験された化合物は、GSA での陽性結果が試験の調節セットにおける陽性結果について関連の警告を提供し、現形態で細菌性試験に対し補足のデータを提供するのを示すのに十分なデータを準備する。 各々は有意に重複しない終了点を提供する。さらなるデータが利用可能になるにつれて、終了点がいかに明白にされるかを知ることは興味深い。
【0222】
引用文献
Afanassiev, V., Sefton, M., Anantachaiyong, T., Barker, M.G., Walmsley, R.M., and Woelfl, S. (2000). Application of yeast cells transformed with GFP expression constructs containing the RAD54 or RNR2 promotor as a test for the genotoxic potential of chemical substances. Mutat. Res., 464, 297-308.
Billinton, N., Barker, M.G., Michel, C.E., Knight, A.W., Heyer, W. D., Goddard, N.J., Fielden, P.R. and Walmsley, R.M. (1998). Development of a green fluorescence protein reporter for a yeast genotoxic biosensor. Biosens. Bioelectron., 13, 831-838.
Cesareni, G. & Murray, J. A.H. (1987) in Genetic Engineering: Principals and Methods, eds. Setlow, J. K. & Hollaender, A. (Plenum, New York), Vol. 9, pp. 135-154.
Sikorski RS, Hieter P . A system of shuttle vectors and yeast host strains designed for efficient manipulation of DNA in Saccharomyces cerevisiae. Genetics 122: 19-27, 1989..
Walmsley, R.M., Billinton, N. and Heyer W. D. (1997). Green fluorescence protein as a reporter for the DNA damage-incuced gene RAD54 in Saccharomyces cerevisiae. Yeast, 13, 1535-1545.
【0223】
表13:GSA、umuC および lux アッセイからの LEC データについての比較
【表13】

略号
M = モル濃度
NT = 試験せず
MNNG = N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン
【0224】
実施例3
本実施例は、プレート・アッセイ法による本発明方法の実施のために好ましいプロトコールを提供する。
【0225】
1)開始培養基の調製
2 種の株: GenC01 (対照株) および GenT01 (試験株) を試験ごとに使用する。培養基を軌道攪拌器中 200 rpm で、30 ℃ 3日間 (72 時間) 接種しインキュベートすると、細胞が‘静止相' になる。培養基フラスコを冷蔵庫 (+ 4 ℃) に保存し、7日間までの期間がすぎてから試験に使用できる。
【0226】
各開始培養基を下記のように調製する:
滅菌 250 ml 円錐フラスコに下記のものを入れる-
10 ml 無菌水
10 ml 2X F1 培地 (参照、添付 1)
冷凍細胞の 1 x 250 μl カラーコード・アリコート
フラスコをインキュベーションの前に泡栓で密封する (フラスコをテープする)。
【0227】
2)試験化合物の調製
試験化合物の標準溶液は各試験開始の直前に新たに調製すべきである。特別の試験濃度を必要としないときは、試験化合物の推奨最大濃度は 4 % DMSO v/v 水で 1 mM である。試験化合物の最終濃度が連続的希釈のためにロボットに供給されるのと同じ希釈につくられているかを確認することを要する。希釈液は 4 % DMSO v/v 水であるが、なし、水のみを置換できる。
【0228】
1 ml の試験化合物溶液を"試験ラン" ごとに要する。4 試験ランについての 96-ウエルプレートで十分な容量がある。従って、各プレートにつき、1 ml の各試験化合物をそれぞれ含有する2管をつくり、標識し、黒い蓋をし、必要になるまでヒューム蓋板で置いておく。参照のために試験化合物、その濃度、希釈計算および使用の希釈液を記録する。
【0229】
3)対照化合物の調製
対照化合物を 4% DMSO v/v 水において下記の濃度で調製する:
MMS 高 = 0.002500 % v/v*
MMS 低 = 0.000375 % v/v*
メタノール 高 = 7 % v/v*
メタノール 低 = 3 % v/v*
200 μl の各対照化学物質をプレートごとに必要とする (これは安全な自動ピペット操作距離を可能にするための容積を含む)。従って、1セットの 4 プレートにつき、少なくとも 800 μl の各対照をつくる。
* プレートから出したときに全濃度のものを等分し、同量 75 μl を 75 μl のイースト培養基と合わせて、50:50 希釈をつくる。
【0230】
MMS およびメタノールを 100% ストック溶液から 4 % DMSO / 水 (v/v)希釈液でつくる。
MMS:
5μl 100 % MMS + 995μl 希釈液 = 0.5 % MMS 溶液
標準 1 (高): 20μl 0.5 % MMS + 3980μl 希釈液 = 0.002500 % MMS
標準 2 (低): 450μl 0.0025 % MMS + 2550μl 希釈液 = 0.000375 % MMS
メタノール
標準 1 (高): 280μl + 3720μl 希釈液 = 7 % メタノール
標準 2 (低): 120μl + 3880μl 希釈液 = 3 % メタノール
【0231】
細胞の調製
1 cm 径長の 1 ml ディスポーザブル・キュベットを用い、"静止相" GenT01 および GenC01 開始培養基ならびに比較ブランクとしての水の光学密度 (600 nm) を測定する。開始培養基の高密度のために、20 倍に希釈し (950μl 無菌水 + 50μl 細胞培養基)、直線範囲内での測定を可能にする。非希釈培養基の OD (Y) を下記式で計算する。
非希釈培養基の OD (Y) = 測定された OD x 20
註:冷所 (+ 4℃) 一旦入れると、細胞密度は1週間以上有意に変化しないので、各日での使用の前に再測定をする必要がない。
【0232】
2X F1 培地において両 GenT01 および GenC01 細胞の新鮮な懸濁液を最初の OD 0.2 単位s/ml で調製する。4 ml の GenC01 および GenT01 細胞懸濁液をプレートごとに要する (3.3 ml + 余裕量)。従って、4 マイクロプレートについての必要な新鮮細胞懸濁液の全量は GenC01 につき 16 ml、GenT01 につき 16 ml である。
【0233】
下記式を用いて、V、新しい細胞懸濁液の調製に必要な開始培養基を計算する:
【数3】

Y = 開始培養基の光学密度 (O.D)
【0234】
V ml のストック細胞培養基を、4 ml の 2x F1 培地を含有する無菌 5ml ガラス試験管に移す。
よって、4 マイクロプレートにつき、16 ml の GenC01 を 4 x 4 ml アリコートに (ブルー蓋) 試験管で、16 ml の GenT01 を 4 x 4 ml アリコートに (レッド蓋) 試験管で分割する。低番号のプレートをスケールダウンする。
【0235】
5)追加の管および溶液の調製
3.5 ml の 90 % エタノールを単一管に入れる。
3.5 ml の "培地のみ" (1xF1) 単一管に入れる。
約 900 ml の 10 % Chloros' を 1 L 容器に消毒薬として入れ、毒性化学物質中和溶液を、洗浄、オートクレーブおよび再循環の前に滅菌できる蓋と管のものに入れる。
【0236】
6)ピペット操作ロボット装置およびデッキのレイアウト
稼働およびソフトウエアー装置
i. 下記の順序での機器の稼働する。
ヒューム・フード
コンピューター
MVP (希釈選別器単位)、主栓で
ロボット、右手側でのスイッチを用いる
Microlab Sampler ソフトウエアー'を積み込む
【0237】
ロボットが無菌水以外のなにかで充填されていたら、使用の前に洗浄プログラムにより無菌水で系を洗浄する。下記の方法を利用できる。動かすために、File / Open を用い、"Run Method" "Start" をクリックし、画面上の指示に従う。
針/系の洗浄.Ame MVP 位置 1 に連結された 10 ml の 溶液を"漂白洗浄" 位置に置かれた水容器中に入れ洗う。
場/管の洗浄.Ame 針を洗い、"場を洗い"、"洗浄" 保存器から排泄口への10秒周期のためのポンプ管を連結するすべてを洗う。
【0238】
ii.コントロール・プログラムが、各プレートにつき、選択の希釈液、サンプル量、イースト量および各連続希釈で実施される量の準備を読む。デフォルト値は下記の通り。
【0239】
【表14】

値を変えるかまたは現配座を調べるために、Notepad 中のファイル C:/Program Files/Hamilton/Microlab Sampler/Methods/4COMPOUND.レイを開く。変更をなし、ついで File / Exit を選択し、"ファイル中の本文が変更された。この変更をしますか?" を推進するときのみ、Yes を選んで、ファイルを再セーブする。
【0240】
iii. Microlab Sampler ソフトウエアーにおいて、File / Open を選び、4COMPOUND.レイを開く。
iv. "Run Method" を選ぶ。
【0241】
ロボット・デックの坦持およびプレートアウト
i. すべての方法を始める前に、針の外側を手で柔らかい布に浸したエタノールできれいにする。
ii. 必要な数の Matrix マイクロプレートをロボット・デックに画面に示されるような位置でロードする。
iii. GREEN RACK を、イースト培養基、サンプル、標準物、90 % エタノール、プレート・ブランクおよび坦持配列にしたがう試験化合物(参照、図 21)の廃量についての追加物を含有する適当な管で坦持する。
【0242】
iv. 適当な希釈溶液をデックの右側位置に、対応の MVP セレクター位置に結合された管ラインとともに置く (位置 1 デフォルトによる)。
v. "きれいな洗浄" 管を殺菌水の容器に入れる (プレートにつき約 300 ml)。
vi. 許容の "汚水" が供給洗浄液を集めるのに十分な容量をもつことを確認する。
【0243】
vii. すべての管の栓をはずし、適当な消毒剤 / 化合物の中和溶液 (すなわち、10 % Chloros)に入れる。
viii. Run Method' ソフトウエアー中の START を選択する。
【0244】
ix. 図 22 に記載のレイアウトにしたがって各プレートが準備され約 30 分間、方法が進行する。
x. 方法が完了すると、Green Rack における試験管の残りに内容物を、適当な吸収材料を含有する密封可能なプラスチックのバッグにすべて入れる。密封し、オートクレーブにかけ、局所的な調整にしたがってバッグを処理する。空のガラス試験管を Chloros 溶液に、続く洗浄および再循環の前に、殺菌および脱汚染のために入れる。
【0245】
7) プレートのインキュベーション
プレートが完備すると、通気膜またはプレート蓋で覆い、はっきりと標識する。プレートを 30 秒間マイクロタイタープレート攪拌機で揺さぶり (各ウエルの内容物が完全に混合するまで)、ついで 25 ℃で攪拌しないで約 16 時間 (または一夜) インキュベートする。
【0246】
8) ロボット保持
ピペット用ロボットを無菌水で洗う (詳細はセクション 7 i 参照)。系を長時間置き (すなわち、> 2 日間)、70 % エタノール v/v 水で充填する。約1回1週間、系を適当な消毒剤で洗い (すなわち、希釈 Chloros 溶液)、ついで無菌水で完全に洗って、今後の使用者の溶液が汚染されていないようにする。
【0247】
針の外側を、エタノールを浸した柔らかい布できれいにする。
針を、針の傾きが Green Rack において試験管中に含有される無菌水に浸されているように、位置 A1 に置く。(針をスイッチオフにすると、ロボット腕を手で、針を曲げたり、損傷しないように注意しながら動かし得る。この位置は新方法を始めるときに自動的に再セットされる)。
【0248】
9) プレートの読み取りおよびデータ解析
プレートの読み取りおよび解析のために、使用されるプレートについて適当なプロトコールを参照する。すなわち、Tecan Ultra または BMG Polar Star。
【0249】
10) 処置
すべての結果プロセスが完了すると、使用のマイクロプレートを、適当な吸収剤を含有する密封プラスチックバッグに入れる。密封し、オートクレーブにかけ、局所的調整にしたがって処理する。
【0250】
実施例4
上記の実施例に記載の RAD54 ベクターに加えて、RNR 調節エレメントをもつ複製プラスミドを含有する FF18984 レポーター株を構築した。ベクター pGenRNR2 または pGenRNR3 をそれぞれ図 24 および 25 に示す。これらは、イースト-高められた Aequorea victoria GFP 遺伝子に融合する RNR2 遺伝子または RNR3 遺伝子の上流非コード DNA 配列を含有する。同じく調べた対照 FF18984 株 は同じプラスミドを含有するが、ただ、2 塩基対が GFP 遺伝子の開始点で除去されており、GFP がつくられない。
【0251】
pGenRNR2
RNR2 構築体についてのレポーターの輝きを試験するために、上記に実施例に記載の RAD54 構築体について用いたのと類似の方法を使用した。ただし代わりの pGENRNR2 を使用した。
【0252】
図28は、pGenRNR2 で形質転換されたイースト試験株で得られた結果を示す。輝き/蛍光が遺伝子毒性の化合物 MMS により誘発された。この化合物が RNR2 調節エレメントを活性化すると考える。このものが順次 GFP の発現をもたらし、それによって本発明方法に従って測定可能なシグナルをつくる。
【0253】
pGenRNR3
RNR3 構築体についてのレポーターの輝きを試験するために、上記に実施例に記載の RAD54 構築体について用いたのと類似の方法を使用した。ただし代わりの pGENRNR3 を使用した。
図29は、図 28 に示されたのと類似のデータを示す。ただ、イースト株は pGenRNR3 で形質転換されている。
【0254】
図30−32は、MMS、1,2-ジメチルヒドラジン (2HCl) および EMS それぞれに対する RNR3-GFP レポーターの応答についてのグラフを示す。各事例において、レポーターにより誘発される蛍光が試験化合物の濃度の増加とともに増加していることがわかる。
【0255】
実施例5
また、第1態様によるベクターを、バックボーンとして動原体プラスミドであるベクター pRS316 を用いても構築した。pRS316 は選択された URA3 である。図39は、空の pRS316 ベクターを、RAD54-GFP レポーター・カセット + kanMX モジュールを含有する pRS316 と、および RAD54-GFP カセットを含有するが kanMX のない pRS316 と、比較して示す。RAD54-GFP カセットを含有するが kanMX のない pRS316 が輝くレポーター・シグナルをもたらすと判定できる。さらに、この輝度は、pRS316 が動原体プラスミドで低いコピー数であるので、pWDH445 よりも低いと判定する。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【図1】図1は、pWDH445 で形質転換された FF18984 細胞から得られた輝度間の相違を示す。
【図2】図2は、BamH I および Asc I で切断された pWDH445 の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図3】図3は、pWDH445 で形質転換された FF18984 細胞、再単離の pWDH445 で再形質転換された細胞、あるいは高められた輝きの形質転換体から単離された再編成プラスミド(2独立の単離体)を示す。
【図4】図4は、再編成プラスミドで再形質転換された FF18984 細胞(灰色) が pWDH445 を持つ FF18984 細胞 (黒色) よりも 0.005% MMS 暴露の有無で輝くことを示す。
【図5】図5は、この試験でつくられ使用される pWDH445 の制限マップを示す。プラスミド構築体の塩基対配列を、Stanford Genome Database (SGD) ウエブサイトで利用可能のソフトウエアーで制限酵素解裂部位について解析した。
【0257】
【図6】図6は、Xba I で消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離の pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図7】図7は、Sca I で制限消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図8】図8は、Pst I. Sca I で制限消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図9】図9は、Pvu I-d で制限消化された pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図10】図10は、Sca I で消化された4種プラスミド (pWDH445、再単離 pWDH445 および2再編成プラスミド) の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図11】図11は、Xba I で消化された pWDH445 および pWDH445(酵素的に除去される kanMX をもつ)の臭化エチジウム染色アガロースゲルを示す。
【図12】図12は、修飾 pWDH445 (酵素的に除去される kanMX) で形質転換された FF18984 細菌の輝度 (灰色) を pWDH445 で形質転換された細胞からのもの(白色) と比較して示す。
【0258】
【図13】図13は、フロー蛍光の検出器についての模式図、ならびに光のもれないボックス内での検出器の説明についての拡大模式図およびフロー細胞に関する励起ビームおよび放出についてのさらなる拡大模式図を示す。
【図14】図14は、フロー蛍光検出器による蛍光分極の検出を図示する。フロー細胞を介して循環するサンプルが平面偏光のレーザー光により励起され(垂直の矢印は分極平面を表す)、散乱光が励起ビームの反対側のフロー細胞に置かれた SPD で検出される。
【図15】図15は、本発明の好ましい組換えベクター pGen001 についての制限マップを示す。
【図16】図16は、FASTA フォーマットにおける pGen001 の完全配列を示す。
【図17】図17は、GeneBank フォーマットにおける pGen001 の完全配列を示す。
【0259】
【図18】図18は、メチルメタンスルホネートが強い細胞毒性および遺伝子毒性であることを明らかにする実施例2からのデータを示す。
【図19】図19は、ベンズアルデヒドが強い細胞毒性および遺伝子毒性であることを明らかにする実施例2からのデータを示す。
【図20】図20は、試験濃度および検出限界を含む実施例2に記載のアッセイからの遺伝子毒性および細胞毒性データを、実施例2の他の遺伝子毒性試験からのデータと比較して、提供する。
【図21】図21は、実施例2による、GreenScreen アッセイ、Ames 試験結果、および陽性 Ames 結果についての S9 代謝活性化を必要とする化合物を明らかにする比較の遺伝子毒性データを抽出したものである。
【0260】
【図22】図22は、実施例3の Greenrack 保有の配列を示す。
【図23】図23は、実施例3のマイクロプレート・レイアウトを示す。
【図24】図24は、本発明の好ましい組換えベクター pGenRNR2 の制限マップを示す。
【図25】図25は、本発明の好ましい組換えベクター pGenRNR3 の制限マップを示す。
【図26】図26は、GeneBank フォーマットにおける pGenRNR2 の完全配列を示す。
【図27】図27は、GeneBank フォーマットにおける pGenRNR3 の完全配列を示す。
【0261】
【図28】図28は、実施例2において pGenRNR2 でトランスフェクトされ、試験化合物として MMS を用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【図29】図29は、実施例2において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物として MMS を用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【図30】図30は、実施例4において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物として MMS を用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【図31】図31は、実施例4において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物として 1,2-ジメチルヒドラジンを用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【図32】図32は、実施例4において pGenRNR3 でトランスフェクトされ、試験化合物としてエチルメタンスルホネートを用いる試験株についての (A) キュベット・アッセイおよび (B) マイクロプレート・アッセイの結果を示す。
【0262】
【図33】図33は、GeneBank フォーマットにおける開始コドンの 1kb 上流を含む RNR3 配列の完全配列を示す。
【図34】図34は、本発明の好ましいベクター pGenEM001 をつくるための、複製および Amp 耐性の細菌源の除去を示す。
【図35】図35は、HO 配列のフラグメントを示す。
【図36】図36は、本発明の好ましい組換えベクター pGenIn012 の制限マップを示す。
【図37】図37は、本発明のプラスミドを組み込む複数コピー rDNA に用いられる rDNA 配列を示す。
【図38】図38は、本発明の好ましい組換えベクター pGenIn022A の制限マップを示す
【図39】図39は、空の pRS316 ベクターと RAD54-GFP レポーター・カセットおよび kanMX モジュールを含有する pRS316 ならびに RAD54-GFP カセットを含有するが kanMX を含有しない pRS316 とを比較して、輝度の相違を示す。
【0263】
【図40】図40は、kanMX 存在の RAD54-GFP 輝き (すべて MMS なし) に対する作用を、HO (HO int) での染色体および rDNA アレイに組み込まれたときに (rDNA B int および rDNA A int、A および B は方向を意味する) 示す。
【図41】図41は、GeneBank フォーマットにおける pGenIn012 の完全配列を示す。
【図42】図42は、GeneBank フォーマットにおける pGenIn022A の完全配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列を含む組換え DNA 分子を含む組換えベクターであって、DNA 配列が DNA 損傷に対する応答において DNA 配列の発現を活性化するように調整された調節エレメントに操作可能的に連結されており、そこでは、細胞を形質転換するのに用いるとき、そのベクターは細胞のゲネチシン感受性を、ベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性に比して実質的に変えない、組換えベクター。
【請求項2】
光放出レポーター・タンパク質がグリーン蛍光タンパク質またはその光放出誘導体である、請求項1の組換えベクター。
【請求項3】
組換え DNA 分子がグリーン蛍光タンパク質の S65T 誘導体をコードする DNA 配列を含む、請求項2の組換えベクター。
【請求項4】
組換え DNA 分子がグリーン蛍光タンパク質のイーストの高める誘導体をコードする DNA 配列を含む、請求項3の組換えベクター。
【請求項5】
ベクターを細胞内で自動的に複製されるように設計する、請求項1−4いずれかの組換えベクター。
【請求項6】
ベクターが 2μ プラスミドからの DNA を含有する、請求項5の組換えベクター。
【請求項7】
ベクターを細胞のゲノム DNA 中に組み込まれるように設計する、請求項1−4いずれかの組換えベクター。
【請求項8】
ベクターがイーストの染色体 IV からの HO 遺伝子の部分をコードする DNA を含む、請求項7の組換えベクター。
【請求項9】
ベクターが S.cerevisiae のリボソーム DNA アレイからの配列を含む、請求項7の組換えベクター。
【請求項10】
調節エレメントがイースト RAD54 遺伝子を含む、請求項1−9のいずれかの組換えベクター。
【請求項11】
調節エレメントがイースト RNR 調節エレメントを含む、請求項1−9のいずれかの組換えベクター。
【請求項12】
調節エレメントが RNR2 または RNR3 遺伝子を含む、請求項11の組換えベクター。
【請求項13】
ベクターが pFA ベクターである、請求項1−12のいずれかの組換えベクター。
【請求項14】
光放出レポーター・タンパク質、調節エレメントおよび非機能性 kanMX モジュールを含む、請求項1の組換えベクター。
【請求項15】
ベクターが非機能性 kanMX モジュールを含む、請求項14の組換えベクター。
【請求項16】
KanMX3 モジュールを欠失、置換または付加で分裂させる、請求項15の組換えベクター。
【請求項17】
図15のベクターまたはその機能性誘導体を含む、請求項1の組換えベクター。
【請求項18】
図24のベクターまたはその機能性誘導体を含む、請求項1の組換えベクター。
【請求項19】
図25のベクターまたはその機能性誘導体を含む、請求項1の組換えベクター。
【請求項20】
図34のベクターまたはその機能性誘導体を含む、請求項1の組換えベクター。
【請求項21】
図36または図38のベクターまたはその機能性誘導体を含む、請求項1の組換えベクター。
【請求項22】
請求項1−21のいずれかの組換えベクターを含有する細胞。
【請求項23】
細胞がイーストである、請求項22の細胞。
【請求項24】
イーストが Saccharomyces cerevisiae である、請求項23のイースト。
【請求項25】
半数体形態において FF18984 または Y486 である、請求項24のイースト。
【請求項26】
DNA 損傷を起こすかまたは強化する物質の存在を検出する方法であって、請求項22−25のいずれかの細胞に物質を当て、細胞からの光放出レポーター・タンパク質の発現をモニターすることを含み、その物質の存在における発現の増加は物質が DNA 損傷を起こすかまたは強化することを示すものである方法。
【請求項27】
生物体を物質に暴露するのが安全であるかを判定するために、その物質をスクリーンする、請求項26の方法。
【請求項28】
物質が候補の医薬、食材または化粧品である、請求項26の方法。
【請求項29】
物質が水供給の汚染物である、請求項26の方法。
【請求項30】
物質が工業廃水の汚染物である、請求項26の方法。
【請求項31】
光放出レポーター・タンパク質を全細胞から測定する、請求項26の方法。
【請求項32】
光放出レポーター・タンパク質がグリーン蛍光タンパク質である、請求項26の方法。
【請求項33】
請求項1−21のいずれかの組換えベクターで形質転換された細胞を生育し、細胞を物質とともに予め定めた時間インキュベートし、細胞のサンプルから直接的にグリーン蛍光タンパク質の発現をモニターする、請求項32の方法。
【請求項34】
細胞を低い蛍光の成長培地で生育する、請求項26−33のいずれかの方法。
【請求項35】
低い蛍光の成長培地が F1 培地 である、請求項34の方法。
【請求項36】
組換えベクターをつくる方法であって、下記の工程:
(i) 光放出レポーター・タンパク質をコードする DNA 配列を有するベクター骨格を準備する;
(ii) DNA 配列を、DNA 損傷に対する応答において DNA 配列の発現を活性化するように調整された調節エレメントに操作可能的に連結する;
(iii) ゲネチシンに対する感受性を付与するために調整された選択可能なマーカーを有するベクター骨格を準備する;
(iv) 選択可能なマーカー細胞を非機能性とし、細胞を形質転換するのに用いるとき、そのベクターは細胞のゲネチシン感受性を、ベクターで形質転換されていない細胞のゲネチシン感受性に比して実質的に変えない、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図16−4】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図17−4】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図26−3】
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【図26−4】
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【図27−1】
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【図27−2】
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【図27−3】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37−1】
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【図37−2】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41−1】
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【図41−2】
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【図41−3】
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【図42−1】
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【図42−2】
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【図42−3】
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【図42−4】
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【図42−5】
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【公表番号】特表2007−500506(P2007−500506A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521675(P2006−521675)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003337
【国際公開番号】WO2005/012533
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(301016492)ジェントロニクス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】