遺伝子発現プロファイルによるC型肝硬変及び肝癌の検出
【課題】C型肝硬変及び肝癌に関連して発現が変動する遺伝子を解析して、C型肝硬変及び肝癌を検出する方法並びに試薬の提供。
【解決手段】C型肝硬変又は肝癌において発現が変動する21の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法、並びにC型肝硬変又は肝癌において発現が変動する21の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【解決手段】C型肝硬変又は肝癌において発現が変動する21の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法、並びにC型肝硬変又は肝癌において発現が変動する21の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現解析を利用したC型肝硬変及び肝癌の検出診断に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌は、その大半が、ウイルス肝炎による慢性肝炎を背景として発生し、特にC型慢性肝炎の末期であるC型肝硬変では、肝細胞癌の発生率は、年率7%と極めて高率である。従って、C型肝硬変患者における診療では、肝細胞癌の早期発見が極めて重要である。これまで、肝細胞癌の診断には、Computed Tomology、Magnetic Resonance imaging等画像診断、及び血清中のα-フェトプロテインやPIVKA-II等の肝細胞癌マーカーの測定が行われていた。しかしながら、画像診断では、造影剤を用いる必要があり、一定の危険があった。また、マーカーを用いる方法では、すべての肝細胞癌患者で上記の腫瘍マーカーが有用とは限らなかった。従って、高精度で安全な肝細胞癌の診断方法の開発が望まれていた。
【0003】
DNAマイクロアレイ技術の発展、及びヒトゲノム解読によって、全遺伝子を対象とした網羅的遺伝子発現解析を行うことが可能になった。実際に、これまでに本発明者らは、慢性肝炎における遺伝子発現プロファイルの解析(非特許文献1から3を参照)、糖尿病患者における肝組織の遺伝子発現解析等、遺伝子発現解析を応用して、さまざまな疾患の病態解析、及び診断ツールの開発を目的とした開発を行ってきた。しかしながら、これらの解析においては、肝組織の採取を必要するので、その侵襲性が問題となっていた。
【0004】
【非特許文献1】MASAO HONDA et al., GASTROENTEROLOGY 2001;120:955-966
【非特許文献2】MASAO HONDA et al., Am J Gastroenterol 2005;100:2019-2030
【非特許文献3】YUKIHIRO SHIROTA et al., HEPATOLOGY Vol.33, No.4, 2001, 832-840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、C型肝硬変及び/又は肝癌に関連して発現が変動する遺伝子を解析して、C型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法並びに試薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
末梢血液は、比較的非侵襲的に採取可能であり、臨床検査においてその実用性、有用性は極めて大きい。末梢血液は、その細胞成分として、赤血球、血小板の他、リンパ球、単球、顆粒球を含む白血球によって構成される。フィコール比重遠心法によって、リンパ球、単球を含む単核球細胞を分離することが可能であるが、これらのリンパ球、単球は、体内の免疫機能を担う重要な細胞集団であり、体内環境の病変に応じて、単核球細胞は、その表現形及び機能を変化させると考えられる。
【0007】
本発明者らは、C型肝硬変患者20名、C型肝硬変に肝癌を合併した患者30名の末梢血液単核球細胞の遺伝子発現解析を行い、約5,000個の遺伝子発現データによって行ったクラスタリング解析により、2つのクラスターが形成され、肝硬変と肝癌を識別し得ることを見出した。C型肝硬変患者群及びC型肝硬変に肝癌を合併した患者群の2群の遺伝子の比較によって、各群間にて発現に有意差のある遺伝子として1003個の遺伝子を見出した。さらに、肝硬変患者の末梢血液単核球細胞を培養ディッシュを用いて、ヒト樹立肝細胞癌株とを共培養した際の遺伝子発現変化を、非共培養下の単核球細胞の遺伝子発現変化とを比較した場合、前述の1003個の遺伝子の中で、同様の傾向の発現強度減弱を示す遺伝子セットを同定した。この遺伝子セットを用いて、前記のC型肝硬変及び肝癌患者の階層クラスタリングを行ったところ、2つのクラスターを形成し、肝硬変と肝癌を識別し得ることを見出した。これらの結果より、患者末梢血液単核球細胞における、この遺伝子セットの発現変化を検討することにより、肝癌診断が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の方法は、DNAマイクロアレイ開発技術、real-time PCR法、ELISA法の応用によって、新しい肝癌診断の実用化診断キットの作成を可能にする。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【0009】
[2] 以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【0010】
[3] [1]の11の遺伝子及び[2]の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[4] [1]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[1]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[5] [2]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[2]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【0011】
[6] [1]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び[2]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに[1]の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び[2]の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[3]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[7] [1]の11の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[1]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[8] [2]の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[2]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[9] [1]の11の遺伝子及び[2]の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[3]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【0012】
[10] 遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドが基板に結合しているDNAマイクロアレイを含む、[1]〜[9]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[11] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である[1]〜[10]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[12] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である[1]〜[10]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[13] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である[1]〜[10]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【0013】
[14] 被験体における以下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【0014】
[15] 被験体における以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【0015】
[16] 被験体における[14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[17] [14]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[14]の方法。
[18] [14]の11の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[14]の方法。
[19] [15]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[15]の方法。
【0016】
[20] [15]の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[15]の方法。
[21] [14]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び[15]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに[14]の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び[15]の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[16]の方法。
[22] [14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[16]の方法。
[23] 被験体の遺伝子の発現プロファイルが、被験体の末梢血単核球由来のmRNAを用いて得られる[14]〜[22]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[24] 被験体の遺伝子の発現プロファイルを、C型肝硬変患者又は肝癌患者の遺伝子の発現プロファイルと比較することを含む[14]〜[23]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[25] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である[14]〜[24]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【0017】
[26] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である[14]〜[24]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[27] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である[14]〜[24]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[28] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、[14]、[16]〜[18]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[29] 遺伝子の発現プロファイルを、[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、[15]及び[19]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【0018】
[30] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、[16]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[31] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、[14]、[16]〜[18]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[32] 遺伝子の発現プロファイルを、[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、[15]及び[19]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[33] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、[16]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の21の遺伝子は、C型肝硬変及び/又は肝癌に罹患した場合に発現が変動し、特にC型肝硬変と肝癌の間で、発現が変動する。本発明の21の遺伝子の発現プロファイルを解析することにより、C型肝硬変及び/又は肝癌を検出することができ、さらにC型肝硬変と肝癌を判別診断することができる。特に、C型ウイルス感染陽性患者であってC型慢性肝炎又はC型肝硬変に罹患している患者において、肝癌の罹患の有無又は肝癌に罹患するリスク等を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の方法で用いる遺伝子は、C型肝硬変(LC)及び/又は肝癌(HCC)で発現レベルが変動する21個の遺伝子である。これらの21個の遺伝子の発現プロファイルによりC型肝硬変及び/又は肝癌を検出することができる。
【0021】
本発明の方法で用いる遺伝子は、以下に述べる方法で選択することができる。C型肝炎ウイルスの非キャリアーである正常人群、C型肝硬変患者群及び肝癌患者群から末梢血単核球を採取し、該単核球からトータルmRNAを単離する。単離したmRNAをヒト遺伝子を含むDNAマイクロアレイに適用し、遺伝子の発現レベルを測定し、階層的クラスタリング分析を行い、C型肝硬変患者群と肝癌群において発現レベルが変動する遺伝子を選択する。一方、肝癌患者群から採取した末梢血単核球をヒト肝癌細胞由来細胞株、例えばHuH7細胞と共培養する。共培養した単核球及び共培養しない単核球からmRNAを採取し、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子の発現レベルを測定する。その結果、共培養した単核球で非共培養の単核球に比べ発現が亢進しているか、又は発現が減弱している遺伝子を選択する。この際、細胞癌細胞株が産生する物質により発現が変動する遺伝子を選択するために、単核球と肝癌細胞株は直接接触させず、半透膜等を用いて隔てた上で共培養する。最終的に臨床サンプルを用いた階層的クラスタリングにより選択され、かつ共培養により発現が変動する遺伝子を選択して本発明の方法に用いることができる。
【0022】
本発明で用いる遺伝子は以下に示す11個の遺伝子である。このうち(1)から(6)の遺伝子は、肝癌患者で発現が亢進し、(7)から(11)の遺伝子は、肝癌患者で発現が減弱する。また、図1に11個の遺伝子のSymbol、RefSeqID(GenBank登録番号又はEnsembleデータベース登録番号)、AceGene(登録商標)Human Oligo Chip 30K(日立ソフト、東京)での遺伝子ID番号を示す。
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)
GenBank登録番号:NM_007199、配列番号1
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)
GenBank登録番号:NM_004385、配列番号2
(3)interleukin 1, beta (IL1B)
GenBank登録番号:NM_000576、配列番号3
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU)
GenBank登録番号:NM_003937、配列番号4
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA)
GenBank登録番号:NM_005566、配列番号5
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1)
GenBank登録番号:NM_005746、配列番号6
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3)
GenBank登録番号:NM_020322、配列番号7
(8)WD repeat domain 75 (WDR75)
GenBank登録番号:NM_032168又はAK023276、配列番号8
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3)、(Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp434P1018 (from clone DKFZp434P1018)
GenBank登録番号:AL137527、配列番号9
(10)Bcl-XL-binding protein t25
GenBank登録番号:AF357524、配列番号10
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2)
GenBank登録番号:NM_015360又はEnsembleデータベース登録番号ENSG00000039123、配列番号11
【0023】
さらに、本発明においては、以下に示す10個の遺伝子も用いることができる。このうち(12)から(16)の遺伝子は、肝癌患者で発現が亢進し、(17)から(21)の遺伝子は、肝癌患者で発現が減弱する。
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds
GenBank登録番号:D17390、配列番号12
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)
GenBank登録番号:XM_048092、配列番号13
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds
GenBank登録番号:AK024465、配列番号14
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds
GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882)、配列番号15
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA
GenBank登録番号:XM_045845、配列番号16
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds
GenBank登録番号:BC007122、配列番号17
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA
GenBank登録番号:NM_002956、配列番号18
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA
GenBank登録番号:NM_005381、配列番号19
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA
GenBank登録番号:NM_004855、配列番号20
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA
GenBank登録番号:NM_002979、配列番号21
【0024】
上記11の遺伝子(1)〜(11)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号1〜11に示す。さらに、10の遺伝子(12)〜(21)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号12〜21に示す。
【0025】
本発明で用いるヌクレオチドは上記配列を含むヌクレオチド及びその断片配列からなるヌクレオチドを含む。また、本発明に用いるヌクレオチドは、上記配列番号で示される塩基配列を有するヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド及びその断片配列からなるヌクレオチドも含まれる。このようなヌクレオチドとしては、例えば、上記塩基配列との相同性の程度が、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上である塩基配列を含有するヌクレオチド等を挙げることが出来る。ハイブリダイゼーションは、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、「1XSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5XSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2XSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するヌクレオチドを単離し得る。ただし、上記のSSC、SDS及びに温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であればハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記もしくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーションの反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。さらに、これらの遺伝子はバリアントを有する場合もあり、本発明で用いる遺伝子には上記遺伝子のバリアントも含まれる。バリアントの塩基配列は遺伝子データベースにアクセスすることにより得ることができる。本発明のヌクレオチドは該バリアントの塩基配列を含むヌクレオチド又はその断片配列からなるヌクレオチドも含む。
【0026】
また、本発明で用いるヌクレオチドは、上記遺伝子のセンス鎖よりなるヌクレオチド、アンチセンス鎖よりなるヌクレオチドのいずれをも用いることができる。
【0027】
本発明において、遺伝子の発現レベルとは、遺伝子の発現量、発現強度又は発現頻度をいい、通常、遺伝子に対応する転写産物の産生量、又はその翻訳産物の産生量、活性等により解析することができる。また、発現プロファイルとは、各遺伝子の発現レベルに関する情報をいう。遺伝子の発現レベルは、絶対値で表してもよく、また相対値で表してもよい。なお、発現プロファイルを発現パターンという場合もある。
【0028】
本発明の方法において、被験体における上記21の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は21個の発現レベルを測定する。また、肝癌患者群において発現が亢進する遺伝子の少なくとも1個及び肝癌患者群において発現が減弱する遺伝子の少なくとも1個を組合せて選択し、それらの遺伝子の発現レベルを測定してもよい。また、(1)〜(11)の11の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個の発現レベルを測定してもよいし、(12)〜(21)の10の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の発現レベルを測定してもよい。好ましくは(1)〜(11)の11個の遺伝子、(12)〜(21)の10個の遺伝子、又は(1)〜(21)の21個の遺伝子の発現レベルを測定する。発現レベルの測定は、遺伝子の転写産物、すなわちmRNAの測定により行ってもよいし、遺伝子の翻訳産物、すなわちタンパク質の測定により行ってもよい。好ましくは、遺伝子の転写産物の測定により行なう。遺伝子の転写産物には、mRNAから逆転写されて得られたcDNAも含まれる。
【0029】
遺伝子の転写産物の測定は、上記の遺伝子の塩基配列の全部又は一部を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて遺伝子発現の程度を測定すればよい。遺伝子発現の程度は、マイクロアレイ(マイクロチップ)を用いた方法、ノーザンブロット法、定量しようとする遺伝子又はその断片をターゲットとした定量PCR法等で測定することが可能である。定量PCR法としては、アガロースゲル電気泳動法、蛍光プローブ法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、ATAC-PCR法(Kato,K.et al.,Nucl.Acids Res.,25,4694-4696,1997)、Taqman PCR法(SYBR(登録商標)グリーン法)(Schmittgen TD,Methods25,383-385,2001)、Body Map法(Gene,174,151-158(1996))、Serial analysis of gene expression(SAGE)法(米国特許第527,154号、第544,861号、欧州特許公開第0761822号)、MAGE法(Micro-analysis of Gene Expression)(特開2000-232888号)等がある。ここに挙げた方法はいずれも公知の方法で行うことができる。これらの方法を用いて、上記遺伝子の全部又は一部から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量を測定すればよく、該mRNAにハイブリダイズするヌクレオチドプローブ又はプライマーの使用により測定することができる。測定に用いるプローブ又はプライマーの塩基長は、10〜50bp、好ましくは15〜25bpである。
【0030】
DNAマイクロアレイ(DNAチップ)は、前記遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを適当な基板上に固定化することにより作製することができる。
【0031】
固定基板としては、ガラス板、石英板、シリコンウェハーなどが挙げられる。基板の大きさとしては、例えば3.5mm×5.5mm、18mm×18mm、22mm×75mmなどが挙げられるが、これは基板上のプローブのスポット数やそのスポットの大きさなどに応じて様々に設定することができる。ポリヌクレオチド又はその断片の固定化方法としては、ヌクレオチドの荷電を利用して、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミンなどのポリ陽イオンで表面処理した固相担体に静電結合させたり、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などの官能基を導入した固相表面に、アミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入したヌクレオチドを共有結合により結合させることもできる。固定化は、アレイ機を用いて行えばよい。上記11の遺伝子の少なくとも1個の遺伝子又はその断片を基板に固相化してDNAマイクロアレイを作製し、該DNAマイクロアレイと蛍光物質で標識した被験体由来のmRNAまたはcDNAを接触させ、ハイブリダイズさせ、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度を測定することにより、mRNAの種類と量を決定することができる。その結果、被験体において発現が変動している遺伝子がわかり、遺伝子発現プロファイルを得ることができる。被験体由来のmRNAを標識する蛍光物質は、限定されず、市販の蛍光物質を用いることができる。例えば、Cy3、Cy5等を用いればよい。mRNAの標識は公知の方法で行うことができる。
【0032】
遺伝子の翻訳産物の測定は、翻訳されたタンパク質を定量するか、又はタンパク質の活性を測定すればよい。タンパク質の定量はELISA等の免疫測定法により行うことができる。
【0033】
遺伝子の転写産物を測定する場合の試料は、被験体の細胞を用い、細胞からmRNAを抽出単離すればよい。細胞は、血液中の細胞が好ましく、その中でも末梢血液中の白血球、特に単核球(PBMC)が好ましい。単核球は、血液成分分離装置を用いたアフェレーシスによって単離することもできるし、末梢血液から密度勾配遠心分離法により単離してもよい。密度勾配遠心分離による単核球の単離は、公知のFicoll-Paque(登録商標)比重遠心法により行うことができる。
【0034】
本発明の方法により、C型肝炎ウイルスに感染している被験体(HCVキャリア)における病態予測、予後予測が可能になる。すなわち、C型肝炎ウイルスに感染している被験体におけるC型肝硬変及び/又は肝癌の存在又は進行を検出することができる。
【0035】
被験体は、病態が未知の被験体でもよく、病態が未知の被験体を用いた場合、該被験体が正常であるか、C型肝硬変に罹患しているか、又は肝癌に罹患しているかを判別診断することができる。また、被験体がC型肝硬変に罹患するリスク及び/又はC型肝炎に罹患するリスクを評価判定することができる。
【0036】
好ましくは、C型肝炎ウイルスに感染しているキャリアー、C型肝炎ウイルスに感染しているキャリアーであってC型慢性肝炎に罹患していることが判明している患者を被験体とする。これらの被験体について、C型肝硬変に罹患しているか、又は肝癌に罹患しているかを判別診断することができる。また、これらの被験体がC型肝硬変に罹患するリスク及び肝癌に罹患するリスクを評価判定することができる。
【0037】
さらに好ましくは、C型肝硬変に罹患していることが判明している患者を被験体とする。これらの被験体について、病態がC型肝硬変から肝癌に進行しているか、又は肝癌に進行するリスクを評価判定することができる。すなわち、これらの被験体のC型肝硬変が肝癌に進行するかを予測診断することができる。
【0038】
例えば、被験体において、上記21個の遺伝子のうち、肝癌患者群において発現が亢進する遺伝子の発現が亢進しているか、肝癌患者において発現が減弱する遺伝子の発現が減弱しているか、あるいは肝癌患者において発現が亢進する遺伝子の発現が亢進し、かつ肝癌患者において発現が減弱する遺伝子の発現が減弱している場合、被験体は肝癌に罹患していると判定することができ、又は被験体は肝癌に罹患するリスクが大きいと評価判定することができる。例えば、肝癌患者において発現が亢進する遺伝子の発現が正常人に比べ有意に亢進している場合、又は肝癌患者において発現が減弱する遺伝子の発現が正常人に比べ有意に減弱している場合、被験体は肝癌に罹患しているか、又は肝癌に罹患するリスクが高いと評価判定することができる。ここで、有意に亢進しているとは、統計学的に有意差をもって発現が亢進していると決定できることをいい、例えば遺伝子発現の絶対値又は相対値が1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上に亢進している場合をいう。また、有意に減弱しているとは、統計学的に有意差をもって発現が減弱していると決定できることをいい、例えば遺伝子発現の絶対値又は相対値が3分の2以下、好ましくは2分の1以下、さらに好ましくは3分の1以下に減弱している場合をいう。
【0039】
本発明において、上記のC型肝硬変、肝癌に関する病態の決定、病態の予測、予後の予測等を広くC型肝硬変及び/又は肝癌の検出という。
【0040】
また、上記21個の遺伝子の1個以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、発現プロファイルを解析することにより、被験体の病態又は肝癌に罹患するリスクを判定することができる。被験体から得られた発現プロファイルがC型肝硬変患者群で得られた発現プロファイルと類似している場合、被験体はC型肝硬変に罹患していると判定することができ、被験体から得られた発現プロファイルが肝癌患者群で得られた発現プロファイルと類似している場合、被験体は肝癌に罹患しているか、又は肝癌に罹患するリスクが大きいと評価判定することができる。また、被験体から得られた発現プロファイルを正常人で得られた発現プロファイルと比較し、正常人の発現プロファイルとの相違により、評価判定することもできる。
【0041】
遺伝子発現プロファイルは、蛍光強度等の発現シグナルのパターンが、デジタル数値で又は色を有する画像で記録される。遺伝子発現プロファイルの比較は、例えばパターン比較ソフトウェアを用いて行うことができ、コックスハザード分析、判別分析等を利用することができる。あらかじめ病態、病態予測又は予後予測を評価判定するための判別分析モデルを構築し、該判別分析モデルに被験体から得られた遺伝子発現プロファイルに関するデータを入力し、病態、病態予測又は予後予測を行うこともできる。例えば、判別分析により判別式を得て、蛍光強度と病態、病態予測又は予後予測を関連付け、判別式に被験体の発現シグナル数値を代入することにより、病態、病態予測又は予後予測を評価判定することができる。
【0042】
本発明は、本発明の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び肝癌を検出するための試薬又はキットを包含する。該試薬は、前記遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして含む試薬であり、また前記遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイ等の基板である。
【0043】
この試薬又はキットは、上記21の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は21個を含む。また、(1)〜(11)の11の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個を含んでいてもよいし、(12)〜(21)の10の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個を含んでいてもよい。また、肝癌患者群において発現が亢進する遺伝子の少なくとも1個及び肝癌患者群において発現が減弱する遺伝子の少なくとも1個を組合せて含んでいてもよい。好ましくは(1)〜(11)の11個の遺伝子、(12)〜(21)の10個の遺伝子、又は(1)〜(21)の21個を含む。
【0044】
本発明は本発明のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法により、被験体のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するシステムを包含する。
【0045】
本発明のC型肝硬変及び肝癌を検出するシステムは、
(a) 被験体の遺伝子発現プロファイルに関するデータを入力する手段、ここで入力される遺伝子発現プロファイルに関するデータとは、例えば、各遺伝子におけるシグナル数値等の各遺伝子の発現レベルを示すデータである;
(b) 構築した判別モデルを記憶している記憶手段、
(c) (a)の入力手段を用いて入力したデータを(b)の記憶手段に記憶されている判別モデルに適用して、C型肝硬変及び肝癌の病態の決定、病態予測、予後予測を行うためのデータ処理手段、及び
(d) 予測されたC型肝硬変及び肝癌の病態の決定、病態予測、予後予測を出力する出力手段、
とを含むシステムである。
【0046】
(a)のデータを入力する手段は、キーボード又はデータを記憶した外部記憶装置等を含む。(b)の記憶手段はハードディスク等を含む。データ処理手段は、記憶手段から判別モデルを受け取るとともに、入力されたデータを処理して、処理結果を出力手段に送り、出力手段で処理結果が表示される。データ処理手段は、データを演算処理する中央演算処理装置(CPU)等を含む。また、出力手段は、結果を表示するモニタやプリンタを含む。
【0047】
本発明のシステムは、市販のパーソナルコンピュータ等を用いて構築することが可能である。
【実施例】
【0048】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
本実施例において、用いた材料及び実験の方法は以下の通りであった。
対象
C型肝炎ウイルス感染に伴う肝硬変患者、及び肝硬変に肝細胞癌を合併した患者を対象とした。肝硬変の診断は、肝生検組織にて新犬山分類にてF4、あるいは、肝生検組織が得られない場合、腹部超音波検査、CT、MRI、血小板数、血清ヒアルロン酸、インドシアン・グリーン試験にて診断した。患者臨床背景は、表1及び表2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
末梢血液単核球細胞分離
ヘパリン添加採血管にて、患者より末梢血液を採取し、フィコール・ハイパック比重遠心法にて、単核球細胞層を回収した。
【0053】
RNA抽出
回収した末梢血液単核球細胞より、MicroRNA Isolation kit (Stratagene, La Jolla, CA) を用いて、プロトコールにしたがってRNAを抽出した。抽出したRNAについて、Amino-allyl MessageAmp aRNA kit (Ambion, Austin, TX)にて、アンチセンスRNAを2回増幅した。対照には、健常者(29歳、男性)より採取した末梢血液単核球細胞より同様に抽出、増幅したRNAを用いた。等量の、患者由来及び健常者由来の増幅RNAをそれぞれCy5、Cy3色素にてラベルし、混合した後、オリゴDNAチップAceGene(登録商標)Human Oligo DNA Chip 30K(日立ソフト、東京)に、プロトコールに従ってハイブリダイゼーションを行った。
【0054】
DNAマイクロアレイのイメージ解析及びデータ解析
オリゴDNAチップ上の各スポットの蛍光強度は、Scan Array G (PerkinElmer, Wellesely, MA)にて獲得した。獲得したイメージは、DNAsis array v2.6 (日立ソフト)にて定量した。各色素間の補正は、以下の如く行った。各スポットの蛍光強度より、同一ブロック内の、オリゴDNAの存在しないスポットの蛍光強度を差し引いた。有効スポットは、各ブロックにおいて、標準偏差の2倍以内に位置するものとした。こうして得られた全スポットの蛍光強度につき、中央値に位置するスポットのCy5とCy3の蛍光強度が1対1になるように、全スポットの蛍光強度を補正した。
【0055】
各遺伝子の発現増強減弱を示す、補正された蛍光強度を用い、BRB Array Tools (http://linus.nci.nih.gov/BRB-ArrayTools.html)にて、階層クラスタリングを行った。また、同様にBRB Array Toolを用いて、C型肝硬変患者群、肝細胞癌群の間において発現に差の認められる遺伝子を、単変量Fテストに基づいたclass comparisonにて検討した。Class Comparisonにて、p<0.005を有為として遺伝子を抽出した。
【0056】
遺伝子の機能的解析には、MetaCore(商標)(GeneGo, Inc. St. Joseph, MI)を用いて検討を行った。
【0057】
in vitro培養実験
C型肝硬変患者(71歳、男性)より採取した末梢血液単核球細胞を、24ウェル培養プレートの各ウェルに挿入したculture insert(Beckton Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)内に5x106個、ウェル底に1x105個のヒト樹立肝癌細胞株Huh7を、非動化ウシ血清10%を添加したRPMI 1640(Invitrogen Japan, 東京)培地にて共培養した。共培養の方法を図2に示す。対照は、非共培養末梢血液単核球細胞とした。24時間後、末梢血液単核球細胞を回収し、RNAを上記と同様に抽出、増幅し、共培養下末梢血液単核球細胞由来の増幅RNAをCy5、対照からの増幅RNAをCy3にてラベルし、上記と同様に遺伝子発現の亢進減弱を検討した。
【0058】
本実施例において以下の結果が得られた。
階層クラスタリング
BRB Array Toolの階層クラスタリングツールを用いて、フィルターをかけて抽出された5235個の遺伝子によって検討したところ、2つのクラスターを形成し、第1クラスターでは、21例中20例(95%)が肝細胞癌、第2クラスターでは、29例中19例(66%)がC型肝硬変を占め、肝細胞癌とC型肝硬変が群別された(図3)。
【0059】
C型肝硬変群、肝細胞癌群間に発現に差を認めた遺伝子
同じくBRB Array toolのClass Comparisonツールを用いて、肝細胞癌群とC型肝硬変群を判別しうる遺伝子を検討したところ、p<0.005にて、1003遺伝子が両群間において発現に差を認めた。
【0060】
抽出1003遺伝子についてのGene Ontology
MetaCore(商標)ソフトウェアにて、上記にて抽出された1003遺伝子についてのGene Ontology(GO)を検討したところ、図4に示すOntologyに分類されることが判明した。また、1003遺伝子について、代謝(Metabolism)、細胞シグナル伝達(Cell Signaling)に含まれるmapを、図5及び6に示した。また、免疫関連遺伝子、細胞シグナル伝達および代謝に関する遺伝子のリストを図7〜9に示した。
【0061】
in vitro共培養実験:
肝硬変患者由来末梢血液細胞を肝細胞癌とin vitroにおいて共培養によって発現変化が認められる遺伝子を検討したところ、353遺伝子が2倍以上の発現亢進、378遺伝子が0.5倍以下の発現減弱を認めた。そのうち、上記1003遺伝子のうち、in vitro共培養にても同様に発現亢進、減弱を呈した遺伝子は11個であった。11個の遺伝子を図1に示す。
【0062】
図1中、in vitroで示すカラムは、共培養した単核球細胞における発現レベルと共培養しない単核球細胞における発現レベルの比を示す。また、HCC/LC (Pt)で示すカラムは、肝細胞群30例、C型肝硬変群20例の末梢血単核球細胞による遺伝子発現の比を示す。
【0063】
11遺伝子による階層クラスタリング:
上記の11遺伝子を用いて、対象のC型肝硬変、肝細胞癌患者につき、階層クラスタリングを行ったところ、図10に示すような、92%を肝細胞癌が占めるクラスター、72%をC型肝硬変が占めるクラスターを形成した。
【0064】
また、肝硬変群と肝癌群の2群間の比較で、統計学的に最も優位な差を認めた遺伝子について、発現が亢進したもの同数ずつを抽出し、その遺伝子セットによって、肝硬変群、肝細胞癌群の判別率をプロットした。結果を図12に示す。図12に示すように、発現が亢進したもの5つ、減少したもの5つの計10個の遺伝子の場合が最も高い判別率となった。該10個の遺伝子を図11に示す。予測(Prediction)(%)は、BRB array toolによるclass prediction解析を用いて、6つの手法(Compound covariate predictor、Diagonal linear discrminant analysis、1-nearest neighbor、3-nearest neighbors、nearest centroid、及びsupport vector machines)によるpredictionの平均によって算出した。図12に示すように上記10遺伝子を用いた場合の予測(%)は約90%であった。また、上記10遺伝子及び図1に示す(1)〜(11)の遺伝子の計21遺伝子を用いた場合の予測(%)は、91%であった。
【0065】
さらに、既に階層クラスタリングを行なった図1の11遺伝子に、図11の10遺伝子を加えた21遺伝子について階層クラスタリングを行なった。結果を図13に示す。図13に示すように、21遺伝子を用いた場合、C型肝硬変を多数占めるクラスターについては90%がC型肝硬変症例であった。また、肝細胞癌を多数占めるクラスターについては、29例中28例(約97%)が肝細胞癌症例であった。この結果は、図10に示す11遺伝子を用いた場合よりも優れたクラスタリングを示している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明で用いる(1)〜(11)の11遺伝子を示す図である。
【図2】共培養の方法を示す図である。
【図3】抽出された5235遺伝子による階層クラスタリングを示す図である。
【図4】抽出された1003遺伝子のGene Ontology(GO)を示す図である。
【図5】抽出された1003遺伝子についてのMetabolismに含まれるmapを示す図である。
【図6】抽出された1003遺伝子についてのCell Signalingに含まれるmapを示す図である。
【図7】免疫関連遺伝子のリストを示す図である。
【図8】細胞シグナル伝達に関連する遺伝子のリストを示す図である。
【図9】代謝に関連する遺伝子のリストを示す図である。
【図10】本発明で用いる11遺伝子による階層クラスタリングを示す図である。
【図11】本発明で用いる(12)〜(21)の10遺伝子を示す図である。
【図12】肝硬変群と肝癌群の2群間の比較で、統計学的に最も優位な差を認めた遺伝子について発現が亢進したもの同数ずつを抽出し、その遺伝子セットによって、肝硬変群、肝細胞癌群の判別率をプロットした結果を示す図である。
【図13】21遺伝子について階層クラスタリングを行なった結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現解析を利用したC型肝硬変及び肝癌の検出診断に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌は、その大半が、ウイルス肝炎による慢性肝炎を背景として発生し、特にC型慢性肝炎の末期であるC型肝硬変では、肝細胞癌の発生率は、年率7%と極めて高率である。従って、C型肝硬変患者における診療では、肝細胞癌の早期発見が極めて重要である。これまで、肝細胞癌の診断には、Computed Tomology、Magnetic Resonance imaging等画像診断、及び血清中のα-フェトプロテインやPIVKA-II等の肝細胞癌マーカーの測定が行われていた。しかしながら、画像診断では、造影剤を用いる必要があり、一定の危険があった。また、マーカーを用いる方法では、すべての肝細胞癌患者で上記の腫瘍マーカーが有用とは限らなかった。従って、高精度で安全な肝細胞癌の診断方法の開発が望まれていた。
【0003】
DNAマイクロアレイ技術の発展、及びヒトゲノム解読によって、全遺伝子を対象とした網羅的遺伝子発現解析を行うことが可能になった。実際に、これまでに本発明者らは、慢性肝炎における遺伝子発現プロファイルの解析(非特許文献1から3を参照)、糖尿病患者における肝組織の遺伝子発現解析等、遺伝子発現解析を応用して、さまざまな疾患の病態解析、及び診断ツールの開発を目的とした開発を行ってきた。しかしながら、これらの解析においては、肝組織の採取を必要するので、その侵襲性が問題となっていた。
【0004】
【非特許文献1】MASAO HONDA et al., GASTROENTEROLOGY 2001;120:955-966
【非特許文献2】MASAO HONDA et al., Am J Gastroenterol 2005;100:2019-2030
【非特許文献3】YUKIHIRO SHIROTA et al., HEPATOLOGY Vol.33, No.4, 2001, 832-840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、C型肝硬変及び/又は肝癌に関連して発現が変動する遺伝子を解析して、C型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法並びに試薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
末梢血液は、比較的非侵襲的に採取可能であり、臨床検査においてその実用性、有用性は極めて大きい。末梢血液は、その細胞成分として、赤血球、血小板の他、リンパ球、単球、顆粒球を含む白血球によって構成される。フィコール比重遠心法によって、リンパ球、単球を含む単核球細胞を分離することが可能であるが、これらのリンパ球、単球は、体内の免疫機能を担う重要な細胞集団であり、体内環境の病変に応じて、単核球細胞は、その表現形及び機能を変化させると考えられる。
【0007】
本発明者らは、C型肝硬変患者20名、C型肝硬変に肝癌を合併した患者30名の末梢血液単核球細胞の遺伝子発現解析を行い、約5,000個の遺伝子発現データによって行ったクラスタリング解析により、2つのクラスターが形成され、肝硬変と肝癌を識別し得ることを見出した。C型肝硬変患者群及びC型肝硬変に肝癌を合併した患者群の2群の遺伝子の比較によって、各群間にて発現に有意差のある遺伝子として1003個の遺伝子を見出した。さらに、肝硬変患者の末梢血液単核球細胞を培養ディッシュを用いて、ヒト樹立肝細胞癌株とを共培養した際の遺伝子発現変化を、非共培養下の単核球細胞の遺伝子発現変化とを比較した場合、前述の1003個の遺伝子の中で、同様の傾向の発現強度減弱を示す遺伝子セットを同定した。この遺伝子セットを用いて、前記のC型肝硬変及び肝癌患者の階層クラスタリングを行ったところ、2つのクラスターを形成し、肝硬変と肝癌を識別し得ることを見出した。これらの結果より、患者末梢血液単核球細胞における、この遺伝子セットの発現変化を検討することにより、肝癌診断が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の方法は、DNAマイクロアレイ開発技術、real-time PCR法、ELISA法の応用によって、新しい肝癌診断の実用化診断キットの作成を可能にする。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【0009】
[2] 以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【0010】
[3] [1]の11の遺伝子及び[2]の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[4] [1]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[1]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[5] [2]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[2]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【0011】
[6] [1]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び[2]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに[1]の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び[2]の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[3]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[7] [1]の11の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[1]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[8] [2]の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[2]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[9] [1]の11の遺伝子及び[2]の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、[3]のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【0012】
[10] 遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドが基板に結合しているDNAマイクロアレイを含む、[1]〜[9]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[11] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である[1]〜[10]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[12] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である[1]〜[10]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
[13] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である[1]〜[10]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【0013】
[14] 被験体における以下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【0014】
[15] 被験体における以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【0015】
[16] 被験体における[14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[17] [14]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[14]の方法。
[18] [14]の11の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[14]の方法。
[19] [15]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[15]の方法。
【0016】
[20] [15]の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[15]の方法。
[21] [14]の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び[15]の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに[14]の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び[15]の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[16]の方法。
[22] [14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、[16]の方法。
[23] 被験体の遺伝子の発現プロファイルが、被験体の末梢血単核球由来のmRNAを用いて得られる[14]〜[22]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[24] 被験体の遺伝子の発現プロファイルを、C型肝硬変患者又は肝癌患者の遺伝子の発現プロファイルと比較することを含む[14]〜[23]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[25] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である[14]〜[24]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【0017】
[26] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である[14]〜[24]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[27] C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である[14]〜[24]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[28] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、[14]、[16]〜[18]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[29] 遺伝子の発現プロファイルを、[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、[15]及び[19]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【0018】
[30] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、[16]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[31] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、[14]、[16]〜[18]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[32] 遺伝子の発現プロファイルを、[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、[15]及び[19]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
[33] 遺伝子の発現プロファイルを、[14]の11の遺伝子及び[15]の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、[16]及び[21]〜[27]のいずれかのC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の21の遺伝子は、C型肝硬変及び/又は肝癌に罹患した場合に発現が変動し、特にC型肝硬変と肝癌の間で、発現が変動する。本発明の21の遺伝子の発現プロファイルを解析することにより、C型肝硬変及び/又は肝癌を検出することができ、さらにC型肝硬変と肝癌を判別診断することができる。特に、C型ウイルス感染陽性患者であってC型慢性肝炎又はC型肝硬変に罹患している患者において、肝癌の罹患の有無又は肝癌に罹患するリスク等を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の方法で用いる遺伝子は、C型肝硬変(LC)及び/又は肝癌(HCC)で発現レベルが変動する21個の遺伝子である。これらの21個の遺伝子の発現プロファイルによりC型肝硬変及び/又は肝癌を検出することができる。
【0021】
本発明の方法で用いる遺伝子は、以下に述べる方法で選択することができる。C型肝炎ウイルスの非キャリアーである正常人群、C型肝硬変患者群及び肝癌患者群から末梢血単核球を採取し、該単核球からトータルmRNAを単離する。単離したmRNAをヒト遺伝子を含むDNAマイクロアレイに適用し、遺伝子の発現レベルを測定し、階層的クラスタリング分析を行い、C型肝硬変患者群と肝癌群において発現レベルが変動する遺伝子を選択する。一方、肝癌患者群から採取した末梢血単核球をヒト肝癌細胞由来細胞株、例えばHuH7細胞と共培養する。共培養した単核球及び共培養しない単核球からmRNAを採取し、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子の発現レベルを測定する。その結果、共培養した単核球で非共培養の単核球に比べ発現が亢進しているか、又は発現が減弱している遺伝子を選択する。この際、細胞癌細胞株が産生する物質により発現が変動する遺伝子を選択するために、単核球と肝癌細胞株は直接接触させず、半透膜等を用いて隔てた上で共培養する。最終的に臨床サンプルを用いた階層的クラスタリングにより選択され、かつ共培養により発現が変動する遺伝子を選択して本発明の方法に用いることができる。
【0022】
本発明で用いる遺伝子は以下に示す11個の遺伝子である。このうち(1)から(6)の遺伝子は、肝癌患者で発現が亢進し、(7)から(11)の遺伝子は、肝癌患者で発現が減弱する。また、図1に11個の遺伝子のSymbol、RefSeqID(GenBank登録番号又はEnsembleデータベース登録番号)、AceGene(登録商標)Human Oligo Chip 30K(日立ソフト、東京)での遺伝子ID番号を示す。
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)
GenBank登録番号:NM_007199、配列番号1
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)
GenBank登録番号:NM_004385、配列番号2
(3)interleukin 1, beta (IL1B)
GenBank登録番号:NM_000576、配列番号3
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU)
GenBank登録番号:NM_003937、配列番号4
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA)
GenBank登録番号:NM_005566、配列番号5
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1)
GenBank登録番号:NM_005746、配列番号6
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3)
GenBank登録番号:NM_020322、配列番号7
(8)WD repeat domain 75 (WDR75)
GenBank登録番号:NM_032168又はAK023276、配列番号8
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3)、(Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp434P1018 (from clone DKFZp434P1018)
GenBank登録番号:AL137527、配列番号9
(10)Bcl-XL-binding protein t25
GenBank登録番号:AF357524、配列番号10
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2)
GenBank登録番号:NM_015360又はEnsembleデータベース登録番号ENSG00000039123、配列番号11
【0023】
さらに、本発明においては、以下に示す10個の遺伝子も用いることができる。このうち(12)から(16)の遺伝子は、肝癌患者で発現が亢進し、(17)から(21)の遺伝子は、肝癌患者で発現が減弱する。
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds
GenBank登録番号:D17390、配列番号12
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)
GenBank登録番号:XM_048092、配列番号13
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds
GenBank登録番号:AK024465、配列番号14
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds
GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882)、配列番号15
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA
GenBank登録番号:XM_045845、配列番号16
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds
GenBank登録番号:BC007122、配列番号17
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA
GenBank登録番号:NM_002956、配列番号18
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA
GenBank登録番号:NM_005381、配列番号19
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA
GenBank登録番号:NM_004855、配列番号20
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA
GenBank登録番号:NM_002979、配列番号21
【0024】
上記11の遺伝子(1)〜(11)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号1〜11に示す。さらに、10の遺伝子(12)〜(21)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号12〜21に示す。
【0025】
本発明で用いるヌクレオチドは上記配列を含むヌクレオチド及びその断片配列からなるヌクレオチドを含む。また、本発明に用いるヌクレオチドは、上記配列番号で示される塩基配列を有するヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド及びその断片配列からなるヌクレオチドも含まれる。このようなヌクレオチドとしては、例えば、上記塩基配列との相同性の程度が、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上である塩基配列を含有するヌクレオチド等を挙げることが出来る。ハイブリダイゼーションは、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、「1XSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5XSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2XSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するヌクレオチドを単離し得る。ただし、上記のSSC、SDS及びに温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であればハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記もしくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーションの反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。さらに、これらの遺伝子はバリアントを有する場合もあり、本発明で用いる遺伝子には上記遺伝子のバリアントも含まれる。バリアントの塩基配列は遺伝子データベースにアクセスすることにより得ることができる。本発明のヌクレオチドは該バリアントの塩基配列を含むヌクレオチド又はその断片配列からなるヌクレオチドも含む。
【0026】
また、本発明で用いるヌクレオチドは、上記遺伝子のセンス鎖よりなるヌクレオチド、アンチセンス鎖よりなるヌクレオチドのいずれをも用いることができる。
【0027】
本発明において、遺伝子の発現レベルとは、遺伝子の発現量、発現強度又は発現頻度をいい、通常、遺伝子に対応する転写産物の産生量、又はその翻訳産物の産生量、活性等により解析することができる。また、発現プロファイルとは、各遺伝子の発現レベルに関する情報をいう。遺伝子の発現レベルは、絶対値で表してもよく、また相対値で表してもよい。なお、発現プロファイルを発現パターンという場合もある。
【0028】
本発明の方法において、被験体における上記21の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は21個の発現レベルを測定する。また、肝癌患者群において発現が亢進する遺伝子の少なくとも1個及び肝癌患者群において発現が減弱する遺伝子の少なくとも1個を組合せて選択し、それらの遺伝子の発現レベルを測定してもよい。また、(1)〜(11)の11の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個の発現レベルを測定してもよいし、(12)〜(21)の10の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の発現レベルを測定してもよい。好ましくは(1)〜(11)の11個の遺伝子、(12)〜(21)の10個の遺伝子、又は(1)〜(21)の21個の遺伝子の発現レベルを測定する。発現レベルの測定は、遺伝子の転写産物、すなわちmRNAの測定により行ってもよいし、遺伝子の翻訳産物、すなわちタンパク質の測定により行ってもよい。好ましくは、遺伝子の転写産物の測定により行なう。遺伝子の転写産物には、mRNAから逆転写されて得られたcDNAも含まれる。
【0029】
遺伝子の転写産物の測定は、上記の遺伝子の塩基配列の全部又は一部を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて遺伝子発現の程度を測定すればよい。遺伝子発現の程度は、マイクロアレイ(マイクロチップ)を用いた方法、ノーザンブロット法、定量しようとする遺伝子又はその断片をターゲットとした定量PCR法等で測定することが可能である。定量PCR法としては、アガロースゲル電気泳動法、蛍光プローブ法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、ATAC-PCR法(Kato,K.et al.,Nucl.Acids Res.,25,4694-4696,1997)、Taqman PCR法(SYBR(登録商標)グリーン法)(Schmittgen TD,Methods25,383-385,2001)、Body Map法(Gene,174,151-158(1996))、Serial analysis of gene expression(SAGE)法(米国特許第527,154号、第544,861号、欧州特許公開第0761822号)、MAGE法(Micro-analysis of Gene Expression)(特開2000-232888号)等がある。ここに挙げた方法はいずれも公知の方法で行うことができる。これらの方法を用いて、上記遺伝子の全部又は一部から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量を測定すればよく、該mRNAにハイブリダイズするヌクレオチドプローブ又はプライマーの使用により測定することができる。測定に用いるプローブ又はプライマーの塩基長は、10〜50bp、好ましくは15〜25bpである。
【0030】
DNAマイクロアレイ(DNAチップ)は、前記遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを適当な基板上に固定化することにより作製することができる。
【0031】
固定基板としては、ガラス板、石英板、シリコンウェハーなどが挙げられる。基板の大きさとしては、例えば3.5mm×5.5mm、18mm×18mm、22mm×75mmなどが挙げられるが、これは基板上のプローブのスポット数やそのスポットの大きさなどに応じて様々に設定することができる。ポリヌクレオチド又はその断片の固定化方法としては、ヌクレオチドの荷電を利用して、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミンなどのポリ陽イオンで表面処理した固相担体に静電結合させたり、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などの官能基を導入した固相表面に、アミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入したヌクレオチドを共有結合により結合させることもできる。固定化は、アレイ機を用いて行えばよい。上記11の遺伝子の少なくとも1個の遺伝子又はその断片を基板に固相化してDNAマイクロアレイを作製し、該DNAマイクロアレイと蛍光物質で標識した被験体由来のmRNAまたはcDNAを接触させ、ハイブリダイズさせ、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度を測定することにより、mRNAの種類と量を決定することができる。その結果、被験体において発現が変動している遺伝子がわかり、遺伝子発現プロファイルを得ることができる。被験体由来のmRNAを標識する蛍光物質は、限定されず、市販の蛍光物質を用いることができる。例えば、Cy3、Cy5等を用いればよい。mRNAの標識は公知の方法で行うことができる。
【0032】
遺伝子の翻訳産物の測定は、翻訳されたタンパク質を定量するか、又はタンパク質の活性を測定すればよい。タンパク質の定量はELISA等の免疫測定法により行うことができる。
【0033】
遺伝子の転写産物を測定する場合の試料は、被験体の細胞を用い、細胞からmRNAを抽出単離すればよい。細胞は、血液中の細胞が好ましく、その中でも末梢血液中の白血球、特に単核球(PBMC)が好ましい。単核球は、血液成分分離装置を用いたアフェレーシスによって単離することもできるし、末梢血液から密度勾配遠心分離法により単離してもよい。密度勾配遠心分離による単核球の単離は、公知のFicoll-Paque(登録商標)比重遠心法により行うことができる。
【0034】
本発明の方法により、C型肝炎ウイルスに感染している被験体(HCVキャリア)における病態予測、予後予測が可能になる。すなわち、C型肝炎ウイルスに感染している被験体におけるC型肝硬変及び/又は肝癌の存在又は進行を検出することができる。
【0035】
被験体は、病態が未知の被験体でもよく、病態が未知の被験体を用いた場合、該被験体が正常であるか、C型肝硬変に罹患しているか、又は肝癌に罹患しているかを判別診断することができる。また、被験体がC型肝硬変に罹患するリスク及び/又はC型肝炎に罹患するリスクを評価判定することができる。
【0036】
好ましくは、C型肝炎ウイルスに感染しているキャリアー、C型肝炎ウイルスに感染しているキャリアーであってC型慢性肝炎に罹患していることが判明している患者を被験体とする。これらの被験体について、C型肝硬変に罹患しているか、又は肝癌に罹患しているかを判別診断することができる。また、これらの被験体がC型肝硬変に罹患するリスク及び肝癌に罹患するリスクを評価判定することができる。
【0037】
さらに好ましくは、C型肝硬変に罹患していることが判明している患者を被験体とする。これらの被験体について、病態がC型肝硬変から肝癌に進行しているか、又は肝癌に進行するリスクを評価判定することができる。すなわち、これらの被験体のC型肝硬変が肝癌に進行するかを予測診断することができる。
【0038】
例えば、被験体において、上記21個の遺伝子のうち、肝癌患者群において発現が亢進する遺伝子の発現が亢進しているか、肝癌患者において発現が減弱する遺伝子の発現が減弱しているか、あるいは肝癌患者において発現が亢進する遺伝子の発現が亢進し、かつ肝癌患者において発現が減弱する遺伝子の発現が減弱している場合、被験体は肝癌に罹患していると判定することができ、又は被験体は肝癌に罹患するリスクが大きいと評価判定することができる。例えば、肝癌患者において発現が亢進する遺伝子の発現が正常人に比べ有意に亢進している場合、又は肝癌患者において発現が減弱する遺伝子の発現が正常人に比べ有意に減弱している場合、被験体は肝癌に罹患しているか、又は肝癌に罹患するリスクが高いと評価判定することができる。ここで、有意に亢進しているとは、統計学的に有意差をもって発現が亢進していると決定できることをいい、例えば遺伝子発現の絶対値又は相対値が1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上に亢進している場合をいう。また、有意に減弱しているとは、統計学的に有意差をもって発現が減弱していると決定できることをいい、例えば遺伝子発現の絶対値又は相対値が3分の2以下、好ましくは2分の1以下、さらに好ましくは3分の1以下に減弱している場合をいう。
【0039】
本発明において、上記のC型肝硬変、肝癌に関する病態の決定、病態の予測、予後の予測等を広くC型肝硬変及び/又は肝癌の検出という。
【0040】
また、上記21個の遺伝子の1個以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、発現プロファイルを解析することにより、被験体の病態又は肝癌に罹患するリスクを判定することができる。被験体から得られた発現プロファイルがC型肝硬変患者群で得られた発現プロファイルと類似している場合、被験体はC型肝硬変に罹患していると判定することができ、被験体から得られた発現プロファイルが肝癌患者群で得られた発現プロファイルと類似している場合、被験体は肝癌に罹患しているか、又は肝癌に罹患するリスクが大きいと評価判定することができる。また、被験体から得られた発現プロファイルを正常人で得られた発現プロファイルと比較し、正常人の発現プロファイルとの相違により、評価判定することもできる。
【0041】
遺伝子発現プロファイルは、蛍光強度等の発現シグナルのパターンが、デジタル数値で又は色を有する画像で記録される。遺伝子発現プロファイルの比較は、例えばパターン比較ソフトウェアを用いて行うことができ、コックスハザード分析、判別分析等を利用することができる。あらかじめ病態、病態予測又は予後予測を評価判定するための判別分析モデルを構築し、該判別分析モデルに被験体から得られた遺伝子発現プロファイルに関するデータを入力し、病態、病態予測又は予後予測を行うこともできる。例えば、判別分析により判別式を得て、蛍光強度と病態、病態予測又は予後予測を関連付け、判別式に被験体の発現シグナル数値を代入することにより、病態、病態予測又は予後予測を評価判定することができる。
【0042】
本発明は、本発明の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び肝癌を検出するための試薬又はキットを包含する。該試薬は、前記遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして含む試薬であり、また前記遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイ等の基板である。
【0043】
この試薬又はキットは、上記21の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は21個を含む。また、(1)〜(11)の11の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個を含んでいてもよいし、(12)〜(21)の10の遺伝子の少なくとも一つ、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個を含んでいてもよい。また、肝癌患者群において発現が亢進する遺伝子の少なくとも1個及び肝癌患者群において発現が減弱する遺伝子の少なくとも1個を組合せて含んでいてもよい。好ましくは(1)〜(11)の11個の遺伝子、(12)〜(21)の10個の遺伝子、又は(1)〜(21)の21個を含む。
【0044】
本発明は本発明のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法により、被験体のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するシステムを包含する。
【0045】
本発明のC型肝硬変及び肝癌を検出するシステムは、
(a) 被験体の遺伝子発現プロファイルに関するデータを入力する手段、ここで入力される遺伝子発現プロファイルに関するデータとは、例えば、各遺伝子におけるシグナル数値等の各遺伝子の発現レベルを示すデータである;
(b) 構築した判別モデルを記憶している記憶手段、
(c) (a)の入力手段を用いて入力したデータを(b)の記憶手段に記憶されている判別モデルに適用して、C型肝硬変及び肝癌の病態の決定、病態予測、予後予測を行うためのデータ処理手段、及び
(d) 予測されたC型肝硬変及び肝癌の病態の決定、病態予測、予後予測を出力する出力手段、
とを含むシステムである。
【0046】
(a)のデータを入力する手段は、キーボード又はデータを記憶した外部記憶装置等を含む。(b)の記憶手段はハードディスク等を含む。データ処理手段は、記憶手段から判別モデルを受け取るとともに、入力されたデータを処理して、処理結果を出力手段に送り、出力手段で処理結果が表示される。データ処理手段は、データを演算処理する中央演算処理装置(CPU)等を含む。また、出力手段は、結果を表示するモニタやプリンタを含む。
【0047】
本発明のシステムは、市販のパーソナルコンピュータ等を用いて構築することが可能である。
【実施例】
【0048】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
本実施例において、用いた材料及び実験の方法は以下の通りであった。
対象
C型肝炎ウイルス感染に伴う肝硬変患者、及び肝硬変に肝細胞癌を合併した患者を対象とした。肝硬変の診断は、肝生検組織にて新犬山分類にてF4、あるいは、肝生検組織が得られない場合、腹部超音波検査、CT、MRI、血小板数、血清ヒアルロン酸、インドシアン・グリーン試験にて診断した。患者臨床背景は、表1及び表2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
末梢血液単核球細胞分離
ヘパリン添加採血管にて、患者より末梢血液を採取し、フィコール・ハイパック比重遠心法にて、単核球細胞層を回収した。
【0053】
RNA抽出
回収した末梢血液単核球細胞より、MicroRNA Isolation kit (Stratagene, La Jolla, CA) を用いて、プロトコールにしたがってRNAを抽出した。抽出したRNAについて、Amino-allyl MessageAmp aRNA kit (Ambion, Austin, TX)にて、アンチセンスRNAを2回増幅した。対照には、健常者(29歳、男性)より採取した末梢血液単核球細胞より同様に抽出、増幅したRNAを用いた。等量の、患者由来及び健常者由来の増幅RNAをそれぞれCy5、Cy3色素にてラベルし、混合した後、オリゴDNAチップAceGene(登録商標)Human Oligo DNA Chip 30K(日立ソフト、東京)に、プロトコールに従ってハイブリダイゼーションを行った。
【0054】
DNAマイクロアレイのイメージ解析及びデータ解析
オリゴDNAチップ上の各スポットの蛍光強度は、Scan Array G (PerkinElmer, Wellesely, MA)にて獲得した。獲得したイメージは、DNAsis array v2.6 (日立ソフト)にて定量した。各色素間の補正は、以下の如く行った。各スポットの蛍光強度より、同一ブロック内の、オリゴDNAの存在しないスポットの蛍光強度を差し引いた。有効スポットは、各ブロックにおいて、標準偏差の2倍以内に位置するものとした。こうして得られた全スポットの蛍光強度につき、中央値に位置するスポットのCy5とCy3の蛍光強度が1対1になるように、全スポットの蛍光強度を補正した。
【0055】
各遺伝子の発現増強減弱を示す、補正された蛍光強度を用い、BRB Array Tools (http://linus.nci.nih.gov/BRB-ArrayTools.html)にて、階層クラスタリングを行った。また、同様にBRB Array Toolを用いて、C型肝硬変患者群、肝細胞癌群の間において発現に差の認められる遺伝子を、単変量Fテストに基づいたclass comparisonにて検討した。Class Comparisonにて、p<0.005を有為として遺伝子を抽出した。
【0056】
遺伝子の機能的解析には、MetaCore(商標)(GeneGo, Inc. St. Joseph, MI)を用いて検討を行った。
【0057】
in vitro培養実験
C型肝硬変患者(71歳、男性)より採取した末梢血液単核球細胞を、24ウェル培養プレートの各ウェルに挿入したculture insert(Beckton Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)内に5x106個、ウェル底に1x105個のヒト樹立肝癌細胞株Huh7を、非動化ウシ血清10%を添加したRPMI 1640(Invitrogen Japan, 東京)培地にて共培養した。共培養の方法を図2に示す。対照は、非共培養末梢血液単核球細胞とした。24時間後、末梢血液単核球細胞を回収し、RNAを上記と同様に抽出、増幅し、共培養下末梢血液単核球細胞由来の増幅RNAをCy5、対照からの増幅RNAをCy3にてラベルし、上記と同様に遺伝子発現の亢進減弱を検討した。
【0058】
本実施例において以下の結果が得られた。
階層クラスタリング
BRB Array Toolの階層クラスタリングツールを用いて、フィルターをかけて抽出された5235個の遺伝子によって検討したところ、2つのクラスターを形成し、第1クラスターでは、21例中20例(95%)が肝細胞癌、第2クラスターでは、29例中19例(66%)がC型肝硬変を占め、肝細胞癌とC型肝硬変が群別された(図3)。
【0059】
C型肝硬変群、肝細胞癌群間に発現に差を認めた遺伝子
同じくBRB Array toolのClass Comparisonツールを用いて、肝細胞癌群とC型肝硬変群を判別しうる遺伝子を検討したところ、p<0.005にて、1003遺伝子が両群間において発現に差を認めた。
【0060】
抽出1003遺伝子についてのGene Ontology
MetaCore(商標)ソフトウェアにて、上記にて抽出された1003遺伝子についてのGene Ontology(GO)を検討したところ、図4に示すOntologyに分類されることが判明した。また、1003遺伝子について、代謝(Metabolism)、細胞シグナル伝達(Cell Signaling)に含まれるmapを、図5及び6に示した。また、免疫関連遺伝子、細胞シグナル伝達および代謝に関する遺伝子のリストを図7〜9に示した。
【0061】
in vitro共培養実験:
肝硬変患者由来末梢血液細胞を肝細胞癌とin vitroにおいて共培養によって発現変化が認められる遺伝子を検討したところ、353遺伝子が2倍以上の発現亢進、378遺伝子が0.5倍以下の発現減弱を認めた。そのうち、上記1003遺伝子のうち、in vitro共培養にても同様に発現亢進、減弱を呈した遺伝子は11個であった。11個の遺伝子を図1に示す。
【0062】
図1中、in vitroで示すカラムは、共培養した単核球細胞における発現レベルと共培養しない単核球細胞における発現レベルの比を示す。また、HCC/LC (Pt)で示すカラムは、肝細胞群30例、C型肝硬変群20例の末梢血単核球細胞による遺伝子発現の比を示す。
【0063】
11遺伝子による階層クラスタリング:
上記の11遺伝子を用いて、対象のC型肝硬変、肝細胞癌患者につき、階層クラスタリングを行ったところ、図10に示すような、92%を肝細胞癌が占めるクラスター、72%をC型肝硬変が占めるクラスターを形成した。
【0064】
また、肝硬変群と肝癌群の2群間の比較で、統計学的に最も優位な差を認めた遺伝子について、発現が亢進したもの同数ずつを抽出し、その遺伝子セットによって、肝硬変群、肝細胞癌群の判別率をプロットした。結果を図12に示す。図12に示すように、発現が亢進したもの5つ、減少したもの5つの計10個の遺伝子の場合が最も高い判別率となった。該10個の遺伝子を図11に示す。予測(Prediction)(%)は、BRB array toolによるclass prediction解析を用いて、6つの手法(Compound covariate predictor、Diagonal linear discrminant analysis、1-nearest neighbor、3-nearest neighbors、nearest centroid、及びsupport vector machines)によるpredictionの平均によって算出した。図12に示すように上記10遺伝子を用いた場合の予測(%)は約90%であった。また、上記10遺伝子及び図1に示す(1)〜(11)の遺伝子の計21遺伝子を用いた場合の予測(%)は、91%であった。
【0065】
さらに、既に階層クラスタリングを行なった図1の11遺伝子に、図11の10遺伝子を加えた21遺伝子について階層クラスタリングを行なった。結果を図13に示す。図13に示すように、21遺伝子を用いた場合、C型肝硬変を多数占めるクラスターについては90%がC型肝硬変症例であった。また、肝細胞癌を多数占めるクラスターについては、29例中28例(約97%)が肝細胞癌症例であった。この結果は、図10に示す11遺伝子を用いた場合よりも優れたクラスタリングを示している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明で用いる(1)〜(11)の11遺伝子を示す図である。
【図2】共培養の方法を示す図である。
【図3】抽出された5235遺伝子による階層クラスタリングを示す図である。
【図4】抽出された1003遺伝子のGene Ontology(GO)を示す図である。
【図5】抽出された1003遺伝子についてのMetabolismに含まれるmapを示す図である。
【図6】抽出された1003遺伝子についてのCell Signalingに含まれるmapを示す図である。
【図7】免疫関連遺伝子のリストを示す図である。
【図8】細胞シグナル伝達に関連する遺伝子のリストを示す図である。
【図9】代謝に関連する遺伝子のリストを示す図である。
【図10】本発明で用いる11遺伝子による階層クラスタリングを示す図である。
【図11】本発明で用いる(12)〜(21)の10遺伝子を示す図である。
【図12】肝硬変群と肝癌群の2群間の比較で、統計学的に最も優位な差を認めた遺伝子について発現が亢進したもの同数ずつを抽出し、その遺伝子セットによって、肝硬変群、肝細胞癌群の判別率をプロットした結果を示す図である。
【図13】21遺伝子について階層クラスタリングを行なった結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【請求項2】
以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【請求項3】
請求項1に記載の11の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項4】
請求項1に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項1記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項5】
請求項2に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項2記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項6】
請求項1に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに請求項1に記載の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項3記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項7】
請求項1に記載の11の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項1記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項8】
請求項2に記載の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項2記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項9】
請求項1に記載の11の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項3記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項10】
遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドが基板に結合しているDNAマイクロアレイを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項11】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である請求項1〜10のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項12】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である請求項1〜10のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項13】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である請求項1〜10のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項14】
被験体における以下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【請求項15】
被験体における以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【請求項16】
被験体における請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15記載の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項17】
請求項14に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
請求項14に記載の11の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
請求項15に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
請求項15に記載の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項15記載の方法。
【請求項21】
請求項14に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに請求項14に記載の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項16記載の方法。
【請求項23】
被験体の遺伝子の発現プロファイルが、被験体の末梢血単核球由来のmRNAを用いて得られる請求項14〜22のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項24】
被験体の遺伝子の発現プロファイルを、C型肝硬変患者又は肝癌患者の遺伝子の発現プロファイルと比較することを含む請求項14〜23のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項25】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である請求項14〜24のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項26】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である請求項14〜24のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項27】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である請求項14〜24のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項28】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、請求項14、16〜18及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項29】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、請求項15及び19〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項30】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、請求項16及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項31】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、請求項14、16〜18及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項32】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、請求項15及び19〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項33】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、請求項16及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項1】
以下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【請求項2】
以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【請求項3】
請求項1に記載の11の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含むC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項4】
請求項1に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項1記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項5】
請求項2に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項2記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項6】
請求項1に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに請求項1に記載の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項3記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項7】
請求項1に記載の11の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項1記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項8】
請求項2に記載の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項2記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項9】
請求項1に記載の11の遺伝子及び請求項2に記載の10の遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを含む、請求項3記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項10】
遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドが基板に結合しているDNAマイクロアレイを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項11】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である請求項1〜10のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項12】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である請求項1〜10のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項13】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である請求項1〜10のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出するための試薬。
【請求項14】
被験体における以下の11の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(1)interleukin-1 receptor-associated kinase 3 (IRAK3)(GenBank 登録番号NM_007199)、
(2)chondroitin sulfate proteoglycan 2 (versican) (CSPG2)(GenBank 登録番号NM_004385)、
(3)interleukin 1, beta (IL1B) (GenBank 登録番号NM_000576)、
(4)kynureninase (L-kynurenine hydrolase) (KYNU) (GenBank 登録番号NM_003937)、
(5)lactate dehydrogenase A (LDHA) (GenBank 登録番号NM_005566)、
(6)pre-B-cell colony enhancing factor 1 (PBEF1) (GenBank 登録番号NM_005746)、
(7)amiloride-sensitive cation channel 3 (ACCN3) (GenBank 登録番号NM_020322)、
(8)WD repeat domain 75 (WDR75) (GenBank 登録番号NM_032168若しくはAK023276)、
(9)leucine-rich repeats and calponin homology (CH) domaincontaining 3 (LRCH3) (GenBank 登録番号AL137527)、
(10)Bcl-XL-binding protein t25(GenBank登録番号AF357524)、並びに
(11)superkiller viralicidic activity 2-like 2 (S. cerevisiae) (SKIV2L2) (GenBank 登録番号NM_015360若しくはEnsembleデータベース登録番号ENGS00000039123)。
【請求項15】
被験体における以下の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法;
(12)Homo sapiens mRNA for MDC protein, complete cds(GenBank登録番号:D17390)、
(13)Homo sapiens KIAA1387 protein (KIAA1387)(GenBank登録番号:XM_048092)、
(14)Homo sapiens mRNA for FLJ00058 protein, partial cds(GenBank登録番号:AK024465)、
(15)Homo sapiens mRNA for KIAA1650 protein, partial cds(GenBank登録番号:AB051437(Ensemble ID No.:ENSG00000099882))、
(16)Homo sapiens similar to hypothetical protein DKFZp434F142 (LOC92567), mRNA(GenBank登録番号:XM_045845)、
(17)Homo sapiens SEC22 vesicle trafficking protein homolog A (S. cerevisiae), mRNA (cDNA clone MGC:4981 IMAGE:3459649), complete cds(GenBank登録番号:BC007122)、
(18)Homo sapiens restin (Reed-Steinberg cell-expressed intermediate filament-associated protein) (RSN), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002956)、
(19)Homo sapiens nucleolin (NCL), mRNA(GenBank登録番号:NM_005381)、
(20)Homo sapiens phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis, class B (PIGB), mRNA(GenBank登録番号:NM_004855)、並びに
(21)Homo sapiens sterol carrier protein 2 (SCP2), transcript variant 1, mRNA(GenBank登録番号:NM_002979)。
【請求項16】
被験体における請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15記載の10の遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項17】
請求項14に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(7)から(11)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
請求項14に記載の11の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
請求項15に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
請求項15に記載の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項15記載の方法。
【請求項21】
請求項14に記載の11の遺伝子のうち(1)から(6)の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子のうち(12)から(16)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子、並びに請求項14に記載の11の遺伝子のうち(7)から(11)の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子のうち(17)から(21)の遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいてC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する、請求項16記載の方法。
【請求項23】
被験体の遺伝子の発現プロファイルが、被験体の末梢血単核球由来のmRNAを用いて得られる請求項14〜22のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項24】
被験体の遺伝子の発現プロファイルを、C型肝硬変患者又は肝癌患者の遺伝子の発現プロファイルと比較することを含む請求項14〜23のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項25】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝炎ウイルス感染患者におけるC型肝硬変と肝癌の判別である請求項14〜24のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項26】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌の存在又は進行の検出である請求項14〜24のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項27】
C型肝硬変及び/又は肝癌の検出が、C型肝硬変患者における肝癌への進行の予測の判定である請求項14〜24のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項28】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、請求項14、16〜18及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項29】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、請求項15及び19〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項30】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドを固相化したマイクロアレイを用いて得る、請求項16及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項31】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、請求項14、16〜18及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項32】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、請求項15及び19〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【請求項33】
遺伝子の発現プロファイルを、請求項14に記載の11の遺伝子及び請求項15に記載の10の遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の塩基配列からなるヌクレオチド又はその一部配列を含むヌクレオチドをターゲットとした定量PCRにより得る、請求項16及び21〜27のいずれか1項に記載のC型肝硬変及び/又は肝癌を検出する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−126(P2008−126A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294933(P2006−294933)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】
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