遺伝子発現プロフィールを使用する非小細胞肺癌の診断および処置のための方法および組成物
本発明は、正常肺および患部肺からの組織における遺伝子発現を試験することにより、非小細胞肺癌(NSCLC)に関係した遺伝子発現の変化を同定および定量する。本発明はまた、有用な診断マーカー、ならびに疾患状態、疾患進行、薬剤毒性、薬剤有効性および薬剤代謝をモニターするために有用なマーカーとして働く、発現プロフィールを同定および定量する。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/368,288号(2002年3月28日出願)、および第60/368,409号(2002年3月28日出願)の優先権を主張し、前記出願の開示は、特にその全体が本明細書に記載されているものとされる。
【0002】
本発明は、研究基金番号NIH CA85147および81126によりなされており、前記基金は本発明に対する特定の権利を所有することができる。
背景技術
非小細胞肺癌(NSCLC)は気管支原性癌の最も一般的な型である。より大きな効力を有する化学療法措置が開発され続けているが、最良の措置でも現在のところ、30−50%のみの全退行率しか与えない。この応答の欠如は、初めから存在する抵抗性、または処置に応答して顕出した抵抗性のためである。化学抵抗性の機構には、多数の遺伝子産物が関与するらしいと信じられている。腫瘍発生および増殖に関与する、特定の遺伝子の役割を明確にすること、および癌の診断、予防、モニタリングおよび処置のために、標的として働くことができる遺伝子および遺伝子産物を同定し、および定量することが重要である。
【0003】
特定の例において、最初は有効である治療剤が、時間とともに患者に対し無効になったり、有効性が低くなる。同一の治療剤が、異なった患者に対しては、より長い期間有効であり続けることがある。さらに、前記治療剤は、さらに他の患者には、無効かまたは有害であることもある。それ故、癌および既定の治療剤に関してマーカーとして働くことができる遺伝子および/または遺伝子産物を同定することは、有益となるであろう。処置において、そのような予測および訂正が行える能力によって、患者の処置過程の早期段階で、治療措置についてより正確に決定することが可能になる。
【0004】
現在、シスプラチンおよびカルボプラチンが、中でも最も広く使用される細胞毒性抗癌薬である。しかしながら、初めからのまたは誘導された機構を通したこれらの薬剤に対する耐性が、これらの治療可能性を害している。Perez,R.P.,シスプラチン耐性の細胞および分子決定因子,Eur.J.Cancer(1998),34,1535−1542。最近、白金化合物に対する化学耐性の、理解できる、考えられる様式の可能性が、細胞毒性とヌクレオチド除去修復(NER)(Dijt,F.,Fitchinger−Schepman,A.M.,Berends,F.,Reedikj,J.,培養された正常および修復−欠損ヒト線維芽細胞におけるDNAへのシスプラチン−誘導付加体の形成および修復,Cancer Res.(1988),48,6058−6062。Zamble,D.B.,Lippard,S.J.,癌化学療法におけるシスプラチンおよびDNA修復,Trends Biochem Sci(1995),20,435−439。States,J.C.,Reed,E.,シスプラチン−耐性ヒト卵巣癌において、増加したXPA mRNAレベルはXPA突然変異または遺伝子増幅とは関連しない,Cancer Lett.(1996),108,233−237。Ferry,K.V.,Fink,D.,Johnson,S.W.,Hamilton,T.C.,Howell,S.B.,インビトロDNA修復アッセイを使用する、誤対合修復欠損およびプロフィシエント(proficient)ヒト結腸直腸癌細胞株における白金−DNA付加体修復の定量,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.(1997),抄録,38,359。Jordan,P.,Carmo−Fonseca,M.,シスプラチン細胞毒性に含まれる分子機構,Cell Mol.Life Sci.(2000),57,1229−1235。Kartalou,M.,Essingmann,J.M.,シスプラチンに対する耐性の機構,Mutat.Res.(2001),478,23−43)、または薬剤取り込み/流出(Kartoluo,M.,Essingmann,J.M.,シスプラチンに対する耐性の機構,Mutat.Res.(2001),478,23−43。Berger,W.,Elbling,L.,Hauptmann,E.,Micksche,M.,ヒト非小細胞肺ガン細胞の多薬剤耐性−関連タンパク質(MRP)発現および化学耐性,Int.J.Cancer(1997),73,84−93。Borst,P.,Kool,M.,Evers,R.,cMOAT(MRP2)、その他のMRP同族体およびLRPはMDRで何らかの役割を果たしているか?Cancer Biol.(1997),8,205−213。Young,L.C.,Campling,B.G.,Voskoglou−Nomikos,T.,Cole,S.P.C.,Deeley,R.G.,Gerlach,J.H.,肺癌における多薬剤耐性タンパク質−関連遺伝子の発現:薬剤応答との関連,Clin.Cancer Res.(1999),5,673−680。Berger,W.,Elbling,L.,Micksche,M.,ヒト非小細胞肺癌細胞における主ヴォールト(vault)タンパク質の発現:抗新生物薬への短期暴露による活性化,Int.J.Cancer(2000),88,293−300。Borst,P.,Evers,R.,Kool,M.,Wijnholds,J.,薬剤輸送体ファミリー:多薬剤耐性−関連タンパク質,J Nat.Cancer Inst.(2000),92,1295−1302。Oguri,T.,Isobe,T.,Suzuki,T.,Nishio,K.,Fujiwara,Y.,Katoh,O.,Yamakido,M.,MRP5遺伝子発現の増加は、肺癌における白金薬剤への暴露に関連している,Int.J.Cancer(2000),86,95−100。)を関連づける研究を通して得られている。
【0005】
マイクロアレイおよび定量的RT−PCR法を含む、科学技術の最新の進歩は、組織形態学に対して機能性ゲノム科学を基礎にした、癌の型の分類を可能にしている。Golub,T.R.,Slonim,D.K.,Tamayo,P.,Huard,C.,Gaasenbeek,M.,Mesirov,J.P.,Coller,H.,Loh,M.L.,Downing,J.R.,Caligiuri,M.A.,Bloomfield,C.D.,Lander,E.S.,癌の分子的分類:遺伝子発現モニタリングによるクラス発見およびクラス予測,Science(1999),286,531−537。Alizadeh,A.A.,Eisen,M.B.,Davis,R.E.,Ma,C.,Lossos,I.S.,Rosenwald,A.,Boldrick,J.C.,Sabet,H.,Tran,T.,Yu,X.,Powell,J.L,Yang,L.,Marti,G.E.,Moore,T.,Hudson,Jr.,J.,Lu,L.,Lewis,D.B.,Tibshirani,R.,Sherlock,G.,Chan,W.C.,Greiner,T.C.,Weisenburger,D.D.,Armitage,J.O.,Warnke,R.,Staudt,L.M.,ら,遺伝子発現プロファイリングにより同定されたびまん性大B細胞の特有の型,Nature(2000),403,503−511。例えば、それらは遺伝子発現プロフィールに基づいた予測的マーカーの発見を可能にすることができる。マイクロアレイスクリーニング分析は、目下、遺伝子発現プロフィールに基づいた化学療法感受性を予測するために調べられている。Scherf,U.,Ross,D.T.,Waltham,M.,Smith,L.H.,Lee,J.K.,Tanabe,L.,Kohn,K.W.,Reinhold,W.C.,Myers,T.G.,Andrews,D.T.,Scudiero,D.A.,Eisen,M.B.,Sausville,E.A.,Pommier,Y.,Botstein,D.,Brown,P.O.,Weistein,J.N.,癌の分子薬理学のための遺伝子発現データベース,Nat.Genet.(2000),24,236−244。Kihara,C.Tsunoda,T.,Tanaka,T.,Yamana,H.,Furukawa,Y.,Ono,K.,Kitahara,O.,Zembutsu,H.,Yanagawa,R.,Hirata,K.,Takagi,T.,Nakamura,Y.,遺伝子発現プロフィールのcDNAマイクロアレイ分析による、アジュバント化学療法に対する食道腫瘍感受性の予測,Cancer Res.(2001),61,6474−6479。Zembutsu,H.,Ohnishi,Y.,Tsunoda,T.,Furukawa,Y.,Katagiri,T.,Ueyama,Y.,Tamaoki,N.,Nomura,T.,Kitahara,O.,Yanagawa,R.,Hirata,K.,Nakamura,Y.,遺伝子発現プロフィールと抗癌剤に対する85のヒト癌異種移植片の感受性を相関付けるためのゲノム−ワイド(genome−wide)cDNAマイクロアレイスクリーニング,Cancer Res.(2002),62,518−527。マイクロアレイ分析の利点は、数千の遺伝子を同時に評価することができることである。しかし、標準化されていないため、相対的に低感度で、および検出の閾値が相対的に不十分に低く、マイクロアレイ判定は、その後の定量法で確認する必要があると一般に認識されている。StaRT−PCRは、多くの遺伝子の、迅速な、再現性のある、標準化された、定量的測定を同時に可能にする方法である。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。Weaverら,カルボプラチンに対して変動した感受性を有する肺癌細胞株における、マイクロアレイおよび標準化RT−PCR分析による発現パターンの比較,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.2001(抄録)42,606。
【0006】
StaRT−PCRはまた、少量のバイオプシ(biopsy)組織における肺癌をより正確に診断するためにも使用できる。Warnerら,“高c−myc x E2F−1/p21はNSCLCの細胞学的診断を増強する” Prod.Am.Assoc.Cancer Res.43巻,抄録3738,2002年3月;Weaverら、“RT StarRT−PCRを利用する、非小細胞肺癌細胞株におけるシスプラチン化学耐性の遺伝子発現モデル化”,Prod.Am.Assoc.Cancer Res.43巻,抄録5471,2002年3月。
【0007】
発明の要約
本発明は、一つの例において、個々の遺伝子の発現値よりも化学耐性非小細胞肺癌(NSCLC)のより有効なマーカーであり、および別の例において、少量のバイオプシ組織における肺癌をより正確に診断するために使用することができる、多数の遺伝子の発現値を含んで成る、個々の、相互作用的遺伝子発現および/または指標(IGEI)のパターンを同定する。
【0008】
本発明は、治療薬に対する癌細胞の感受性を決定するために使用できるマーカーの同定および使用に関する。より具体的には、本発明は、癌組織で変化して発現され、そして治療薬に対する癌細胞の感受性を決定するために使用できる“多数のマーカー”を特色とする。さらにより具体的には、本発明は、治療薬の有用性を予測的に同定するための、生物学的試料の判定に有用な“相互作用的遺伝子発現指標”(IGEI)を特色とする。
【0009】
本発明は、従って、有用な診断マーカーとして、ならびに、疾病状態、疾病進行、薬剤毒性、薬剤有効性および薬剤代謝をモニターするために使用できるマーカーとして働く、遺伝子発現プロフィールを提供する。
【0010】
本発明はさらに、剤(agent)または剤の組合わせが、癌細胞の増殖を減少させるために使用できるかどうかを決定する、ならびに、癌処置のための新規剤を決定するための方法を提供する。
【0011】
本発明の多様な態様は、その発現が正常組織と比較された肺癌細胞または組織の正確な診断に相関している同定されたマーカー、およびその発現が治療薬による処置に対する感受性と相関している他のマーカーの使用に関している。特に、限定されるわけではないが、本発明は:1)特定の組織が肺癌であるかまたは非癌組織であるかどうかを決定するための方法;2)癌の処置に使用された治療薬の有効性をモニタリングするための方法;3)癌処置のための新規治療薬を開発するための方法;および4)癌処置のための治療薬の組合わせを同定するための方法、を提供する。
【0012】
癌細胞試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、どの治療薬または治療薬の組合わせが癌の増殖速度を最も減少させるようであるかを決定することがさらに可能であり、適した治療薬の選択にさらに使用することができる。
【0013】
癌細胞試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、どの治療薬または治療薬の組合わせが癌の増殖速度を最も減少させないようであるかを決定することがさらに可能である。
【0014】
一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、不適切な治療薬を排除することも可能である。
癌細胞または癌細胞株を抗癌剤の可能性を持つ薬剤へ暴露した場合、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、新規抗癌剤の効力を同定することが可能である。
【0015】
さらに、治療処置の過程間に、患者からとった癌細胞試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、治療処置が引き続いて有効であるかどうか、または癌が治療処置に対して耐性(抗治療性)になっているかどうかを決定することが可能である。これらの決定は、患者ごとの基準で、または剤(または剤の組合わせ)ごとの基準で行える。また、特定の治療処置が特定の患者または患者群/クラスに利益になりそうかどうか、または特定の処置を続けるべきかどうかを決定することも可能である。
【0016】
本発明はさらに、化学療法用化合物のごとき、抗癌剤の開発のための、以前には未知のまたは認識されていない標的を提供する。
本発明の同定された相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)は、癌のための処置(単一の剤かまたは多数の剤)の開発における標的として有用である。
【0017】
本発明は、正常肺からの組織における遺伝子発現を試験することにより、肺癌に関連した遺伝子発現の全体的な変化を同定する。本発明はまた、有用な診断マーカー、並びに、疾病状態、疾病進行、薬剤毒性、薬剤有効性および薬剤代謝をモニターするために使用できるマーカーとして働く発現プロフィールも同定する。
【0018】
いくつかの好ましい態様において、本明細書に記載した方法、遺伝子およびIGEIは、シスプラチン耐性癌を同定するために有用である(正常組織から癌を診断するのとは対照的に)。そのような態様は、ERCC2、ABCC5、XPAおよびXRCC1からなる群より選択される、一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを検出することを含むことができる。
【0019】
いくつかの好ましい態様において、本方法は、ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2、XPA/XPCおよびXRCC1/XPCからなる群より選択される、一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを検出することを含むことができる。
【0020】
いくつかの好ましい態様において、本方法は、ABCC5/GTF2H2およびERCC2/GTF2H2からなる群より選択される、一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを検出することを含むことができる。
【0021】
本発明はまた、NSCLCおよび/または分化性小細胞肺癌(SCLC)の進行、および/または転移性疾患から非転移性疾患を検出する方法も含んでいる。例えば、本発明の方法は、患者におけるNSCLCの進行を検出することを含んでおり、前記方法は、表1および/または5からの二つまたはそれより多くの遺伝子の、組織試料中の発現レベルを検出する工程を含んでなる;ここで、表1および/または5中の遺伝子の異なった発現は、NSCLC進行の指標である。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0022】
いくつかの様相において、本発明はNSCLCを患った患者の処置をモニタリングする方法を提供し、前記方法は、患者に医薬組成物を投与し、そして患者の細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し、そして患者の遺伝子発現プロフィールを、正常肺細胞を含んでなる細胞集団からの遺伝子発現と、または肺癌細胞を含んでなる細胞集団からの遺伝子発現プロフィールと、またはその両方と比較することを含んでなる。いくつかの好ましい態様において、遺伝子プロフィールは表1および5の一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを含んでいるであろう。別の好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0023】
別の様相において、本発明はNSCLCを患った患者を処置する方法を提供し、前記方法は、患者に表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現を変化させる医薬組成物を投与し、腫瘍細胞を含んでなる患者の細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し、そして患者の遺伝子発現プロフィールとNSCLC細胞を含んでなる非処置細胞集団からの遺伝子発現プロフィールを比較することを含んでなる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0024】
本発明は患者における肺癌の存在または非存在を診断する方法を含んでおり、前記方法は、c−myc遺伝子発現値(分子/106β−アクチン分子)にE2F−1発現値を掛け、そしてその結果をp21遺伝子発現値で割る、c−myc x E2F−1/p21を含んで成るIGEIの、組織試料中の発現レベルを検出する工程を含んでなる(各々の遺伝子は3つのプライマー配列を有しているので、配列番号40−48)。
【0025】
c−myc x E2F−1/p21指標はまた、例えば、肺癌の発達のような疾病進行のモニタリングのためのマーカーとしても使用することができる。例えば、患者からの肺組織試料またはその他の試料を本明細書に記載した任意の方法によりアッセイすることができ、そしてc−myc x E2F−1/p21の試料中の発現レベルを、正常肺組織、SCLCからの組織、転移性肺癌またはNSCLC組織中に観察された発現レベルと比較することができる。発現データ、ならびに入手可能な配列またはその他の情報の比較は、研究者または診断医により行うことができ、または本明細書に記載したようなコンピューターおよびデータベースの助けを借りて行うことができる。
【0026】
本発明はさらに、NSCLCの発生または進行を調節可能な剤をスクリーニングする方法も含んでおり、前記方法は、細胞を剤に暴露し;そしてc−myc x E2F−1/p21指標の発現レベルを検出する工程を含んでなる。
【0027】
本発明の一つの様相に従うと、表1および5で同定された遺伝子は、例えば、肺癌細胞または組織試料のような、細胞または組織試料に対する候補薬剤または剤の効果を評価するためのマーカーとして使用することができる。候補薬剤または剤は、既定のマーカーまたはマーカー遺伝子のセット(薬剤標的)の転写または発現を刺激する、またはマーカーまたはマーカー類の転写または発現を下方制御または相殺する能力でスクリーニング可能である。本発明に従うと、遺伝子発現マーカーに対する薬剤効果の特異性も比較でき、それらを比較することが可能である。より特異的な薬剤は、より少ない転写標的を有することができる。二つの薬剤に対して、同様のマーカーのセットが同定されることは、同様の効果を示している。
【0028】
上に記載した本発明の任意の方法は、表1および/または5またはc−myc x E2F−1/p21からの少なくとも二つの遺伝子の検出および定量を含むことができる。好ましい方法は、表中の遺伝子の全てまたはほとんど全てを含むことができる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0029】
別の様相に従うと、本発明は、患者における非小細胞肺癌を診断する方法に関しており、前記方法は:(a)c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量することを含んでなる;ここでc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は、非小細胞肺癌の指標である。
【0030】
別の様相において、本発明は、患者における非小細胞肺癌の進行を検出する方法に関しており、前記方法は:(a)c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量することを含んでなる;ここでc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は、非小細胞肺癌進行の指標である。
【0031】
さらに別の様相において、本発明は、非小細胞肺癌の患者の処置をモニタリングする方法に関しており、前記方法は:(a)患者に医薬組成物を投与し;(b)患者からの細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し;および(c)患者の遺伝子発現プロフィールと、正常肺細胞および非小細胞肺癌からなる群より選択される細胞集団からの遺伝子発現を比較する、ことを含んでなる。
【0032】
さらに別の様相において、本発明は、非小細胞肺癌の患者を処置する方法に関しており、前記方法は:(a)患者に医薬組成物を投与し、ここにおいて、組成物は表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の発現を改変する;(b)処置前に得られた腫瘍細胞を含んでなる細胞または組織試料および処置後に得られた別の試料から、StaRT−PCRを使用する、標準化遺伝子発現値を含んでなるIGEIを調製し;および(c)処置に先立って得られた試料と処置後に得られた試料を比較する、ことを含んでなる。
【0033】
本発明のさらに別の様相は、非小細胞肺癌の発生および進行を調節できる剤のためのスクリーニング法に関しており、前記方法は:(a)非小細胞癌細胞を含んでなる細胞集団の、StaRT−PCRを使用する、標準化遺伝子発現値を含んでなる第一のIGEIを調製し、ここにおいて、第一のIGEIは、表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを決定する;(b)細胞集団を剤に暴露し;(c)剤に暴露された細胞集団の、StaRT−PCRを使用する、標準化遺伝子発現値を含んでなる第二のIGEIを調製し;および(d)第一および第二のIGEIを比較する、ことを含んでなる。
【0034】
別の様相において、本発明は、標準化定量的RT−PCRに従ったPCR生成物を、標準化された様式で測定するための、一つまたはそれより多くの固相ハイブリダイゼーション鋳型に関しており、ここで鋳型は以下のように形成する:
a)少なくとも一つの固相ハイブリダイゼーション鋳型を調製し、ここにおいて、各々の遺伝子のため、競合的鋳型(CT)および天然の鋳型(NT)の両方に特異的に結合するであろう任意の長さのオリゴヌクレオチドをフィルターにスポットし;
b)フォワードプライマー(NTおよびCTの両方に共通)およびリバースCTプライマーの3’20bp間の領域が評価されるように、適したオリゴヌクレオチドを同定し;
c)前もって選定された位置で、固体支持体へオリゴヌクレオチドを結合させ;
d)CTおよびNT PCR生成物を増幅し、そしてフィルターのスポットへハイブリダイズし、そこでは各々の遺伝子(NTおよびCT)が別々に増幅される;
e)ハイブリダイゼーションのためにPCR生成物をプールし;および
f)各々の遺伝子に対して、各々が異なった蛍光で標識されている、二つのオリゴヌクレオチドプローブを調製し、ここにおいて、一つのオリゴヌクレオチドは、このオリゴヌクレオチドが、CTとは相同的ではなく、および異なった蛍光で標識されているNTの領域へ結合するように、PCR−増幅された遺伝子のためのNTに特有の配列に相同的であり、およびそれに結合するであろうし、およびここにおいて、他のオリゴヌクレオチドは、この他のオリゴヌクレオチドが、リバースプライマーの3’末端に広がるCT配列と相同的であり、およびそれに結合するであろうように、CTへ特異的でありおよび異なった蛍光で標識されている。特定の態様において、多数の遺伝子のためのNT−特異的およびCT−特異的オリゴヌクレオチドを等量で混合し、フィルター上にスポットした遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドへ結合された遺伝子−特異的PCR生成物とハイブリダイズさせる。また、スポットへ結合された蛍光間の比で、CTに対するNTの量を定量化する。NTおよびNTプローブ間の結合親和性と比較して、CTおよびCTプローブ間には異なった結合親和性があるけれども、この相違は判定された異なった試料間、および一つの実験と別の実験間では一致している。鋳型は、少なくとも一つの標準化された、マイクロアレイ、マイクロビーズ、ガラススライド、または光リソグラフィーにより製造されたチップを含むことができ、および固体支持体は膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、多量化物質、ビーズおよびシリカ支持体であり得ることに注目せねばならない。特定の態様において、オリゴヌクレオチドの各々が表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子中の少なくとも一つの遺伝子へ特異的にハイブリダイズする配列を含んでなる、少なくとも二つのオリゴヌクレオチドを固体支持体は含んでなる。また、オリゴヌクレオチドは固体支持体に共有結合で結合されていてもよいし、または若しくは固体支持体に非共有結合で結合されていてもよいことにも注目すべきである。
正常肺組織の遺伝子のセットに対して、分子/106β−アクチン分子の単位での発現レベル。
【0035】
本発明はさらに、表1および5中の少なくとも二つの遺伝子またはc−myc x E2F−1/p21を含んでなる遺伝子のセットの、肺組織における発現レベルを同定する情報を含んでいる、数的標準化データベースを含んでなるコンピューターシステム;および情報をみるためのユーザーインターフェイスを含んでいる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。数的標準化データベースはさらに、遺伝子の配列情報、正常肺組織および悪性組織(転移性および非転移性)における遺伝子のセットの発現レベルを同定する情報も含んでおり、そしてGenBankのごとき外部データベースへのリンクを含むことができる。
【0036】
本発明はさらに、本発明の一つまたはそれより多くの方法の実行に有用なキットを含んでなる。いくつかの好ましい態様において、キットは、一つまたはそれより多くのオリゴヌクレオチドが結合された、一つまたはそれより多くの固体支持体を含むことができる。固体支持体は高密度オリゴヌクレオチドアレイであることができる。キットはさらに、アレイで使用するための一つまたはそれより多くの試薬、一つまたはそれより多くの信号検出および/またはアレイ処理装置、一つまたはそれより多くの遺伝子発現データベース、および一つまたはそれより多くの分析およびデータベース管理ソフトウェアーパッケージを含むことができる。特定の好ましい態様において、キットは、標準化マイクロアレイへ適用するための試薬と一緒にStaRT−PCR試薬を有している。
【0037】
本発明はさらにまた、組織または細胞中の、表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを、データベースの遺伝子発現レベルを比較することを含んでなる、表1および5の少なくとも一つの遺伝子の、組織または細胞中の発現レベルを同定する現在の情報について開示されたコンピューターシステムを使用しているような、データベースを使用する方法を含んでいる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0038】
本発明の他の特色および利点は、発明の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書に記載した材料および方法と同様なまたは均等な材料および方法を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい材料および方法は以下に説明されている。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、一部、癌細胞が療法剤に対して感受性であるかどうかを決定するために使用できる、マーカーの同定および定量に基づいている。これらの同定および定量に基づき、本発明は、限定されるわけではないが、:1)療法剤(または剤の組み合わせ)が腫瘍増殖を停止させるのに、または遅延させるのに有効であるのであろうか、または有効ではないのであろうかどうかを決定するための方法;2)癌の処置に使用された療法剤(または剤の組み合わせ)の有効性をモニタリングするための方法;3)癌処置のための新規療法剤を同定するための方法;4)癌の処置に使用するための療法剤の組み合わせを同定するための方法;5)特定の患者における癌の処置に有効である、特定の療法剤および療法剤の組み合わせを同定するための方法;および癌を診断するための方法、を提供する。
【0040】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用されたすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により共通に理解されている意味と同一の意味を持っている。本明細書に記載した材料および方法と同様なまたは均等な材料および方法を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書に説明されている。本明細書に述べられたすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照文献は、その全体が本明細書に記載されているものとする。本出願を通して引用された(表を含んで)すべてのGenBank、およびIMAGE ConsortiumおよびUnigeneデータベースレコードその他のデータベースレコードのコンテンツもまた、本明細書に記載されているものとする。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先するであろう。加えて、材料、方法および実施例は例示のためのみであり、それによって限定されることは意図されていない。
【0041】
冠詞“a”および“an”は本明細書において、冠詞の文法的目的語が一つまたは一より多い(即ち、少なくとも一つ)ことを指すために使用される。例として、“an element”は一つのelementまたは一より多いelementを意味している。
【0042】
“マーカー”は、表1−5に掲げた核酸の少なくとも一つに対応する、天然に存在するポリマーである。例えば、マーカーには、限定するわけではないが、ゲノムDNAのセンスおよびアンチセンス鎖(即ち、その中に存在する任意のイントロンを含んで)、ゲノムDNAの転写により発生したRNA(即ち、スプライシングに先立った)、ゲノムDNAから転写されたRNAのスプライシングにより発生したRNA、スプライスされたRNAの翻訳により発生したタンパク質(即ち、膜貫通シグナル配列のごとき普通は切断される領域の、切断前および後の両方のタンパク質を含んで)、が含まれる。本明細書で使用するような“マーカー”はまた、ゲノムDNAの転写により発生したRNA(即ち、スプライスされたRNAを含んで)の逆転写により作製されたcDNAも含むことができる。
【0043】
用語“プローブ”とは、特別に意図された標的分子へ選択的に結合できる任意の分子を指している、例えば、本発明のマーカー。プローブは、当業者により合成されるか、または適した生物学的調製試料から誘導することが可能である。標的分子の検出の目的には、プローブは、本明細書に記載されているごとく、標識されているように特別に設計することができる。プローブとして利用することができる例には、限定されるわけではないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機モノマーが含まれる。
【0044】
マーカー発現の“正常”レベルとは、癌に苦しめられていない患者の細胞中でのマーカー発現レベルである。
本明細書で使用するような、用語“プロモーター/制御配列”とは、プロモーター/制御配列に機能可能であるように連結されている遺伝子産物の発現に必要とされる、核酸配列を意味している。いくつかの例において、この配列はコアプロモーター配列であってもよく、そして他の例では、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要とされる、エンハンサー配列および他の制御要素を含んでいてもよい。例えば、プロモーター/制御配列は、組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものであってもよい。
【0045】
“構成的”プロモーターとは、遺伝子産物をコードまたは特定しているポリヌクレオチドと機能可能であるように連結されている場合、細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下、生きているヒト細胞中で遺伝子産物の産生を引き起こす、ヌクレオチド配列である。
【0046】
“転写されたポリヌクレオチド”とは、本発明のマーカーに対応する、ゲノムDNAの転写、および、もしあれば、転写体の正常転写後プロセッシング(例えば、スプライシング)により作製された成熟RNAの全てまたは一部と相補的または相同的である、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、cDNA、またはRNAまたはcDNAの一つの類似体)である。
【0047】
“相補的”とは、二つの核酸鎖の領域間または同一核酸鎖の二つの領域間の、配列相補性の広い概念を指している。第一の核酸領域のアデニン残基は、もし残基がチミンまたはウラシルであれば、第一の領域と逆平行である第二の核酸領域の残基と特定の水素結合を形成することができる(“塩基対形成”)ことは知られている。同様に、第一の核酸鎖のシトシン残基は、もし残基がグアニンであれば、第一の鎖と逆平行である第二の核酸鎖の残基と塩基対形成できることも知られている。もし、二つの領域が逆平行様式に配置された場合、第一の領域の少なくとも一つのヌクレオチド残基が第二の領域の残基と塩基対形成できるならば、第一の領域の核酸は、同一または異なった核酸の第二の領域と相補的である。好ましくは、第一の領域は第一の部分を含んでなり、および第二の領域は第二の部分を含んでなり、それにより、第一および第二の部分が逆平行様式に配置された場合、第一の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、および好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。より好ましくは、第一の部分の全ヌクレオチド残基が、第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
【0048】
本明細書で使用するような“相同的”とは、同一核酸鎖の二つの領域間、または二つの異なった核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列同一性を指している。両方の領域中のヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基で占有されている場合、領域はその位置で相同である。二つの領域間の相同性は、同一のヌクレオチド残基により占有されている、二つの領域のヌクレオチド残基位置の割合によって表現される。好ましくは、第一の領域が第一の部分を含んでなり、および第二の領域が第二の部分を含んでなり、それにより、各々の部分のヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、および好ましくは約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%が同一のヌクレオチド残基で占有されている。より好ましくは、各々の部分の全ヌクレオチド残基位置が、同一のヌクレオチド残基で占有されている。
【0049】
マーカーが、もし共有結合でまたは非共有結合で基質と結合されているとしたら、マーカーは基質へ“固定されて”おり、そのような基質は、基質から解離しているマーカーの実質的分画がなく、液体(例えば、標準クエン酸塩溶液、pH7.4)で洗い流すことができる。
【0050】
本明細書で使用するような“天然に存在する”核酸分子とは、天然に存在するヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNAを指している(例えば、天然のタンパク質をコードしている)。
【0051】
もし、癌の少なくとも一つの徴候が緩解され(alleviayrd)、終結され(terminated)、遅らされ(slowed)、または防止され(prevented)ているならば、癌は“抑制され”ている。本明細書で使用される場合、もし、癌の再発または転移が減少され(reduced)、遅らされ(slowed)、遅延され(delayed)、または防止され(prevented)ているならば、癌はまた“抑制され(inhibited)”ている。もし、細胞増殖が減少し、または細胞死速度が増加するならば、癌はまた抑制されている。
【0052】
“キット”は、本発明のマーカーを特異的に検出するための、少なくとも一つの試薬、例えば、プローブを含んでなる任意の製品(例えば、包装品または容器)であり、製品は本発明の方法を実行するためのユニットとして、販売促進され、配給され、または販売されている。
【0053】
具体的態様
以下に提供された例は、定義された化学療法剤、即ち、白金化合物に感受性を有する癌細胞株と、応答性でないものを区別するマーカーの同定および定量に関している。従って、その剤により首尾よく処置できた癌細胞を同定するために、一つまたはそれより多くのマーカーが使用できる。その剤により首尾よく処置できなかった癌細胞を同定するために、一つまたはそれより多くのマーカー発現の変化も使用できる。これらのマーカーは、それ故、剤での処置に不応になったまたは不応になる危険性がある癌を同定するための方法に使用できる。
【0054】
同定されたマーカーの発現レベルは:1)癌が剤または剤の組み合わせにより処置できるかどうかを決定する;2)癌が剤または剤の組み合わせによる処置に応答しているかどうかを決定する;3)癌を処置するために適した剤または剤の組み合わせを選択する;4)進行中の処置の有効性をモニターする;および5)新規癌処置(単一の剤または剤の組み合わせ)を同定する、ために使用することができる。
【0055】
特に、同定されたマーカーは、適した治療を決定するため、効力が試験されている薬剤の臨床治療およびヒト試行をモニターするため、および新規剤および治療の組み合わせを開発するために利用することができる。
【0056】
従って、本発明は、癌細胞を抑制するために剤が使用できるかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)表1および5に同定されたマーカーの、癌細胞中での発現レベルを決定し、および定量し;および
c)マーカーが特定のレベルで発現された場合、癌細胞を抑制するために剤が使用できることを同定する、工程を含んでなる。
【0057】
本発明はまた、剤が癌の処置において有効であるかどうかを決定するための方法も提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)試料を剤に暴露し;
c)剤へ暴露された試料中の、および剤へ暴露されていない試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現レベルを決定し、および定量し;および
d)マーカーの発現が、剤の存在下で変化した場合、剤が癌の処置に有効であることを同定する、工程を含んでなる。
【0058】
本発明はさらに、剤での処置を癌患者で続けるべきかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)剤での処置の過程間に、患者から癌細胞を含んでなる二つまたはそれより多くの試料を得;
b)二つまたはそれより多くの試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定し、および定量し;および
c)マーカーの発現レベルが特定のレベルである、例えば、処置過程の間に著しくは変化しない場合に処置を続ける、工程を含んでなる。
【0059】
本発明はまた、新規癌処置を同定する方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定し、および定量し;
c)試料を癌処置に暴露し;
d)癌処置に暴露した試料中のマーカーの発現のレベルを同定し;および
e)マーカーが特定のレベルで発現されている場合、前記癌処置が癌を処置することにおいて有効であることを同定する、工程を含んでなる。
【0060】
従って、別の様相において、本発明は癌を診断する方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞を含んでいるかもしれない組織の試料を得;および
b)組織中のc−mcy x E2F−1/p21指標の発現レベルを決定し、および定量する、工程を含んでなる。
【0061】
本明細書において使用するように、剤が癌細胞の増殖を少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%減少できる場合に、剤は癌細胞の増殖速度を減少させたと言える。そのような抑制はさらに、癌細胞の生存可能性の減少、および癌細胞の死亡速度の増加を含んでいる。この決定に使用される剤の量は、選択された剤に基づいて変化するであろう。典型的には、前記の量は前もって決められた治療量であろう。
【0062】
本明細書で使用するような、用語“剤”は、癌細胞が治療プロトコールで暴露されるであろう任意のものとして広く定義される。本発明の文脈において、そのような剤には、限定されるわけではないが、代謝拮抗剤、例えば、架橋剤、例えば、シスプラチンおよびCBDCAのような化学療法剤、放射線および紫外光が含まれる。
【0063】
上記に加え、術語“化学療法剤”は、細胞または組織の増殖が望まれないような、増殖している細胞または組織の増殖を抑制する、化学試薬を含むことも意図されている。
本方法で試験される剤は単一剤または剤の組み合わせが可能である。例えば、本方法はシスプラチンのごとき単一の化学療法剤が癌を処置するために使用できるかどうか、または二つまたはそれより多くの剤の組み合わせが使用できるかどうかを決定するために使用できる。好ましい組み合わせは、例えば、アルキル化剤と組み合わされた抗有糸分裂剤の使用のような、異なった作用機構を有する剤を含んでいるであろう。
【0064】
本明細書で使用するように、癌細胞とは、異常な(増加された)速度で分割する細胞を指している。特に、癌細胞には、限定されるわけではないが、非小細胞肺癌(NSCLC)が含まれる。本方法で使用される癌細胞の起源は、本発明の方法がどのように使用されているかに基づくであろう。例えば、もし本方法が、患者の癌が剤または剤の組み合わせで処置できるかどうかを決定するために使用されているとしたら、癌細胞の好ましい起源は、患者の癌バイオプシから得られた癌細胞であろう。もしくは、処置されている癌と類似の型の癌細胞株がアッセイ可能である。例えば、もし非小細胞肺癌(NSCLC)が処置されているならば、(NSCLC)細胞株が使用可能である。もし、本方法が療法プロトコールの有効性をモニターするために使用されているとしたら、処置されている患者からの組織試料が好ましい起源である。もし、本方法が新規療法剤または組み合わせを同定するために使用されているとしたら、例えば、癌細胞株のような任意の癌細胞が使用可能である。
【0065】
当業者は、本方法で使用される適した癌細胞を容易に選択および入手できる。癌細胞株については、実施例で使用されるNCI細胞は、The National Cancer Instituteのような供給源が好ましい。患者から得られる癌細胞については、針バイオプシのような、標準バイオプシ法を用いることができるが、mRNAの完全性を保護するため、本技術分野で知られている必要な予防処置を講じる。
【0066】
本発明の方法において、表1に同定されたマーカーからなる群より選択された、一つまたはそれより多くのマーカーの発現レベルまたは量を決定する。本明細書で使用するような発現のレベルまたは量とは、遺伝子によりコードされたmRNAの発現レベル、または遺伝子によりコードされたタンパク質の発現レベルを指している(即ち、癌細胞において発現が起こっているかまたは起こっていないのどちらにせよ)。それはまた、本明細書で開示した相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)の値を指すこともできる。当業者は、本発明の一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセットによりコードされているmRNAレベル検出に使用するための、既知のmRNA検出法を容易に適用できる。
【0067】
癌細胞からのタンパク質は、当業者には公知の技術を使用して単離することができる。用いられたタンパク質単離法は、例えば、HarlowおよびLane(HarlowおよびLane,1988,抗体:実験室マニュアル,Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク)に記載されているような方法が可能である。
【0068】
試料が、既定の抗体に結合するタンパク質を含んでいるかどうかを決定するために、多様な型式を用いることができる。そのような型式の例としては、限定されるわけではないが、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれる。当業者は、癌細胞が、本発明の一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセットによりコードされているタンパク質を発現するかどうかの決定に使用するための、既知のタンパク質/抗体検出法を容易に適用できる。
【0069】
一つの型式において、抗体または抗体断片が、発現されたタンパク質を検出するため、ウェスタンブロットまたは免疫蛍光技術のごとき方法で使用できる。そのような使用において、固体支持体上に抗体かまたはタンパク質を固定化することが好ましい。適した固相支持体または坦体には、抗原または抗体を結合できる任意の支持体が含まれる。公知の支持体または坦体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、および磁鉄鉱が含まれる。加えて、固体支持体は、膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、多量体材料、ビーズおよびシリカ支持体から選択できる。
【0070】
特定の態様において、固体支持体は少なくとも二つのオリゴヌクレオチドを含んでなり、ここで各々のオリゴヌクレオチドは、表1および5の少なくとも一つの遺伝子へ特異的にハイブリダイズする配列を含んでなる。また、固体支持体は、固体支持体に共有結合で結合されている、またはもしくは、固体支持体に非共有結合で結合されているオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0071】
当業者は、抗体または抗原を結合するために適した坦体を知っているであろうし、そして本発明で使用するためのそのような支持体を適用できるであろう。例えば、癌細胞から単離されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により泳動でき、およびニトロセルロースのごとき固相支持体上へ固定化できる。支持体は、次いで、適した緩衝液で洗浄でき、続いて検出可能に標識されたマーカー生成物特異的抗体で処理する。固相支持体は、次いで、非結合抗体を除去するため、緩衝液で二回目の洗浄を行うことができる。固体支持体上の結合された標識量は、次ぎに通常の手段により検出できる。
【0072】
本発明の別の態様は、本発明の一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセット発現を剤が刺激するかどうかを検出する工程を含んでいる。本(IGEI)マーカーセットのいくつかは、非処置癌細胞においても発現されているであろうが、剤による処置によって発現を変化させることができる(またはできない)。本発明の(IGEI)マーカーセットの発現レベルの変化は、剤が癌細胞の増殖速度を減少させることに有効であろうか、または有効ではないであろうかどうかのさらなる指標を提供することができる。
【0073】
そのような使用において、本発明は、剤、例えば、化学療法剤が癌細胞を抑制するために使用できるかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)癌細胞試料を一つまたはそれより多くの試験剤へ暴露し;
c)剤へ暴露した試料中の、または剤へ暴露されていない癌細胞試料中の、表1で同定されたマーカーからなる群より選択された一つまたはそれより多くのマーカーの、癌細胞中の発現のレベルを決定し、および定量し;および
d)一つまたはそれより多くのマーカーの発現が前記剤の存在下で増加した場合、および/または前記剤の存在下で一つまたはそれより多くのマーカーの発現が増加しなかった場合、癌を処置するために剤が使用できることを同定する、工程を含んでなる。
【0074】
本発明の方法のこの態様は、剤に対して癌細胞を暴露する工程を含んでいる。剤に対して癌細胞を暴露するために使用される方法は、主として、癌細胞の起源および性質、および試験されている剤に基づいているであろう。接触はインビトロまたはインビボで、試験/評価されている患者で、または癌の動物モデルで実行できる。癌細胞、細胞株および化学化合物に対して、癌細胞を暴露するとは、組織培養培地中でのように、癌細胞と化合物を接触させることを含んでいる。当業者は、癌細胞と特定の剤または剤の組み合わせを接触させるために適した手順を容易に適用できる。
【0075】
上で議論したように、同定された(IGEI)マーカーセットはまた、進行中の処置(例えば、化学療法処置)に対して、腫瘍が不応になったかどうかを判定するためにも使用できる。腫瘍が処置にこれ以上応答しない場合は、腫瘍細胞の発現プロフィールが変化するであろう:一つまたはそれより多くのマーカーの発現レベルが減少するであろう、および/または一つまたはそれより多くのマーカーの発現レベルが増加するであろう。
【0076】
そのような使用において、本発明は、癌患者で抗癌処置を続けるべきかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)抗癌療法をうけている患者から癌細胞の二つまたはそれより多くの試料を得;
b)剤に暴露された試料中の、および剤に暴露されていない癌細胞試料中の、群より選択された一つまたはそれより多くのマーカー、および一つまたはそれより多くの対応する(IGEI)マーカーセットの発現レベルを決定し、および定量し;および
c)一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセットの発現が変化した場合、処置を中止する、工程を含んでなる。
【0077】
本明細書で使用されるように、患者とは、癌のための処置をうけている任意の対象を指している。好ましい対象は、化学療法処置をうけているヒト患者であろう。
本発明のこの態様は、抗癌処置をうけている患者から得られた、二つまたはそれより多くの試料を比較することに頼っている。一般に、治療の開始に先立って患者から第一の試料を、そして処置間に一つまたはそれより多くの試料を得るのが好ましい。そのような使用において、治療に先立った発現のベースラインを決定し、次いで、治療の過程間に、発現のベースライン状態の変化をモニターする。もしくは、処置間に得られた二つまたはそれより多くの連続的試料が、処置前ベースライン試料の必要なしで使用できる。そのような使用においては、患者から得られた第一の試料を、特定のマーカーの発現が増加しているかまたは減少しているかどうかを決定するためのベースラインとして使用する。
【0078】
一般に、療法処置の有効性をモニタリングする場合、患者からの二つまたはそれより多くの試料を試験する。好ましくは、少なくとも一つの処置前試料を含む、三つまたはそれより多くの連続的に得られた試料を使用する。
【0079】
本発明はさらに、本発明の一つまたはそれより多くの(好ましくは二つまたはそれより多くの)マーカーおよび/または(IGEI)マーカーセットを検出するための試薬を含んでなる、区画化された容器を含んでなる、キットを提供する。本明細書で使用するように、キットは、その中に試薬が入れられている容器の、前もって包装されたセットとして定義される。キット中に含まれている試薬は、(IGEI)マーカーセット発現の検出に使用するためのプローブ/プライマーおよび/または抗体を含んでなる。加えて、本発明のキットは、好ましくは、適した検出アッセイを説明した説明書を含むことができる。そのようなキットは、癌の徴候を示している患者を診断するため、例えば、臨床設定に、便利に使用できる。
【0080】
本発明の多様な様相が、以下の副節により詳細に説明されている。
核酸試料
当業者には明らかであるが、本発明の方法およびアッセイで使用される核酸試料は、任意の利用可能な方法およびプロセスにより製造することができる。全mRNAを単離する方法もまた、当業者には公知である。そのような試料はmRNAを含むのみでなく、目的の細胞または組織から単離されたmRNA試料から合成されたcDNAも含んでいる。そのような試料はまた、cDNAから増幅されたDNA、および増幅されたDNAから転写されたRNAを含んでいる。当業者は、ホモジネートが使用される前に、ホモジネート中に存在するRNaseを阻害または破壊することが望ましいことを理解するであろう。
【0081】
生物学的試料は、生物体からの生物学的組織または細胞、ならびに、細胞株および組織培養細胞のごときインビトロで生じた細胞であることができる。しばしば、試料は、患者に由来する試料である、“臨床試料”であろう。典型的な臨床試料には、限定されるわけではないが、痰、血液、血液−細胞(例えば、白血球)、組織またはファインニードル(fine needle)バイオプシ試料、尿、腹膜液、および胸腔内液、またはそれらからの細胞が含まれる。生物学的試料にはまた、組織学的目的でとられた凍結切片またはホルマリン固定切片のごとき、組織切片も含まれる。
【0082】
それ故、本発明の一つの様相は、本発明のマーカーに対応するポリペプチド、またはそのようなポリペプチドの一部をコードする核酸を含む、本発明のマーカーに対応する、単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸分子はまた、例えば、核酸分子の増幅または突然変異のためのPCR反応プライマーとして使用するために適した、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸、およびそのような核酸分子の断片を含む、本発明のマーカーに対応する核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するために十分な核酸分子も含んでいる。本明細書で使用されるような、用語“核酸分子”とは、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA )およびRNA分子(例えば、mRNA)、およびヌクレオチド類似体を使用して作られたDNAおよびRNAの類似体を含むことを意図している。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0083】
“単離された”核酸分子とは、核酸分子の天然の供給源に存在する、他の核酸分子から分離されている核酸分子である。好ましくは、“単離された”核酸分子は、核酸分子が誘導された、生物体のゲノムDNA中の核酸に天然に隣接する配列(好ましくはタンパク質コード配列)を含んでいない(核酸の5’および3’末端に位置する配列)。
【0084】
例えば、表1に掲げたマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸のような、本発明の核酸分子は、標準分子生物学技術および本明細書に説明したデータベース記録中の配列情報を使用して単離できる。そのような核酸配列のすべてまたは一部を使用し、本発明の核酸分子は、標準ハイブリダイゼーションおよびクローニング技術(例えば、Sambrookら,編,分子クローニング:実験室マニュアル,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク,1989,に記載されているような)を使用して単離できる。
【0085】
本発明の核酸分子は、標準PCR増幅技術に従い、鋳型としてcDNA、mRNAまたはゲノムDNAを、および適したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅できる。そのように増幅された核酸は、適したベクター内へクローン化でき、そしてDNA配列分析により特徴付けできる。その上、本発明の核酸分子のすべてまたは一部に対応するオリゴヌクレオチドは、例えば、自動化DNAシンセサイザーを使用する、標準合成技術により製造できる。
【0086】
別の好ましい態様において、本発明の単離された核酸分子は、本発明のマーカーに対応する核酸のヌクレオチド配列、または本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する、核酸分子を含んでなる。既定のヌクレオチド配列に相補的である核酸分子とは、既定のヌクレオチド配列へハイブリダイズでき、それにより安定な二重鎖を形成する、既定のヌクレオチド配列と十分に相補的である配列である。
【0087】
さらに、本発明の核酸分子は、核酸配列のほんの一部を含むことができ、ここで、完全長核酸配列は、本発明のマーカーを含んでなるか、またはそれは本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードしている。そのような核酸は、例えば、プローブまたはプライマーとして使用できる。プローブ/プライマーは、典型的には一つまたはそれより多くの実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用される。典型的には、オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下、本発明の核酸の少なくとも約7、好ましくは約12またはそれより多い連続的ヌクレオチドへハイブリダイズする、ヌクレオチド配列領域を含んでなる。
【0088】
本発明の核酸分子の配列に基づいたプローブは、本発明の一つまたはそれより多くのマーカーに対応する、転写体またはゲノム配列を検出するために使用できる。プローブは、それに結合された、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補因子のような標識基を含んでなる。そのようなプローブは、例えば、mRNAレベルを検出し、またはタンパク質をコードしている遺伝子が突然変異を受けているまたは欠失されているかどうかを決定して、患者からの細胞試料中の、タンパク質をコードしている核酸分子のレベルを測定することによるように、タンパク質を発現しない、細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として使用できる。
【0089】
本発明はさらに、同一のタンパク質をコードしているが、遺伝子コードの縮重のため、本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸のヌクレオチド配列と異なった核酸分子を包含する。
【0090】
本明細書に記載されている、GenBankデータベース記録に記載されたヌクレオチド配列に加え、アミノ酸配列の変化を導くDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在できることが、当業者には理解されるであろう。そのような遺伝子多型は、天然の対立遺伝子変異のため、集団内の個体間で存在できる。対立遺伝子は、既定の遺伝子座位で代わりになるものとして生じる、遺伝子の群の一つである。加えて、RNA発現レベルに影響するDNA多型もまた存在可能であり、それはその遺伝子の全発現レベルに影響することができる(例えば、制御または分解に影響することにより)ことを理解されたい。
【0091】
本明細書で使用するような、句“対立遺伝子変異体”とは、既定の座位で生じたヌクレオチド配列、または前記ヌクレオチド配列によりコードされたポリペプチドを指している。
【0092】
本明細書で使用するような、用語“遺伝子”および“組換え遺伝子”とは、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードしている読み取り枠を含んでなる核酸分子を指している。そのような天然の対立遺伝子変異体は、典型的には、既定の遺伝子のヌクレオチド配列中に、1−5%の変異を生じてよい。代わりの対立遺伝子は、多数の異なった個体中の、目的とする遺伝子を配列決定することにより同定できる。このことは、多様な個体中の、同一遺伝子座位を同定するためのハイブリダイゼーションプローブを使用することにより、容易に実行できる。天然の対立遺伝子変異の結果であり、および機能的活性を変化させない、そのようなヌクレオチド変異体および結果としてのアミノ酸多型または変異体はひとつ残らず、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0093】
別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも7、15、20、25、30、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、またはそれより多いヌクレオチド長であり、ストリンジェント条件下、本発明のマーカーに対応する核酸、または本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする。本明細書で使用するような、用語“ストリンジェント条件下でハイブリダイズする”とは、少なくとも60%(65%、70%、好ましくは75%)お互いに同一であるヌクレオチド配列がお互いにハイブリダイズして残るような、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を記述することが意図される。そのようなストリンジェント条件は、当業者には知られており、分子生物学における最新のプロトコール,John Wiley & Sons,ニューヨーク(1989)の節6.3.1−6.3.6にみることができる。好ましいストリンジェント条件の非制限的例は、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45度Cでのハイブリダイゼーション、続いての0.2xSSC、0.1%SDSによる、50−65度Cでの1回またはそれより多くの洗浄である。
【0094】
集団中に存在できる、本発明の核酸分子の天然に存在する対立遺伝子変異体に加え、当業者は、コードされているタンパク質の生物学的活性を変えることなく、コードされているタンパク質のアミノ酸配列に変化を導く配列変化が、突然変異により導入できることを、さらに認めるであろう。例えば、“非必須”アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導く、ヌクレオチド置換体を作製することができる。“非必須”アミノ酸残基とは、生物学的活性を変化させることなく、野生型配列から変化できる残基であり、一方、“必須”アミノ酸残基は生物学的活性に必要とされる。例えば、多様な種の相同体間で、保存されていないまたは半保存されているだけのアミノ酸残基は、活性には非必須といってもさしつかえなく、それ故、改変の標的となるようである。あるいは、多様な種(例えば、マウスおよびヒト)の相同体間で保存されているアミノ酸残基は、活性に必要であるといってもさしつかえなく、それ故、改変の標的とはならないようである。
【0095】
従って、本発明の別の様相は、活性に必要とされないアミノ酸残基での変化を含む、本発明のポリペプチドをコードしている核酸分子に関する。そのようなポリペプチドは、本発明のマーカーに対応する天然に存在するタンパク質とは、アミノ酸配列が異なっているが、それでも生物学的活性は保持している。一つの態様において、そのようなタンパク質は、本発明のマーカーに対応するタンパク質の一つのアミノ酸配列と少なくとも40%同一、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%同一である、アミノ酸配列を有する。
【0096】
変異体タンパク質をコードしている単離された核酸分子は、コードされたタンパク質内へ一つまたはそれより多くのアミノ酸残基置換、付加または欠損が導入されるように、本発明の核酸のヌクレオチド配列内へ一つまたはそれより多くのヌクレオチド置換、付加または欠損を導入することにより創製できる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発およびPCR−仲介突然変異誘発のような、標準的技術により導入できる。好ましくは、保存的アミノ酸置換が、一つまたはそれより多くの推定非必須アミノ酸残基で行われる。“保存的アミノ酸置換”とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。もしくは、飽和突然変異誘発によるように、突然変異をコード配列の全てまたは一部に沿って無作為に導入でき、生じた突然変異体は、活性を保持する突然変異体を同定するため、生物学的活性でスクリーニングできる。突然変異誘発に続いて、コードされているタンパク質は、組換え的に発現でき、そしてタンパク質の活性を決定できる。
【0097】
本発明は、本発明のセンス核酸と相補的な、例えば、本発明のマーカーに対応する二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的な、または本発明のマーカーに対応するmRNA配列と相補的な、分子であるアンチセンス核酸分子を包含する。従って、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のセンス核酸へ水素結合(即ち、アニールする)できる。アンチセンス核酸は、全コード鎖と、またはその一部のみと、例えば、タンパク質コード領域(または読み取り枠)の全てまたは一部と相補的であり得る。アンチセンス核酸分子はまた、本発明のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全てまたは一部とアンチセンスでもあり得る。非コード領域(“5’および3’非翻訳領域”)とは、コード領域に隣接し、およびアミノ酸へは翻訳されない5’および3’配列である。
【0098】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50、またはそれ以上のヌクレオチド長であることができる。本発明のアンチセンス核酸は、当該分野で知られている手順を使用する、化学合成および酵素的ライゲーション(ligation)反応を使用して構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または、分子の生物学的安定性を増加させるように、またはアンチセンスおよびセンス核酸間で形成された二重鎖の物理学的安定性を増加させるように設計された、種々の修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成でき、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドヌクレオチドが使用できる。アンチセンス核酸を発生させるために使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニル−アデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5−メトキシカルボキシ−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンが含まれる。もしくは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配向でサブクローン化されている発現ベクターを使用して、生物学的に産生できる(即ち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的とする標的核酸に対してアンチセンス配向であろう、以下の副節でさらに説明されている)。
【0099】
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、本発明の選択されたマーカーに対応するポリペプチドをコードしている細胞性mRNAおよび/またはゲノムDNAへハイブリダイズまたは結合し、それによりマーカーの発現を阻害(例えば、転写および/または翻訳を阻害することにより)するように、対象に投与するか、または生体内原位置で発生させる。ハイブリダイゼーションでは、通常のヌクレオチド相補性により安定な二重鎖を形成するか、または例えば、アンチセンス核酸分子の場合は、二重らせん主溝中の特異的相互作用を通してDNA二重鎖へ結合する。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路例には、組織部位での直接注射、または卵巣関連体液内へのアンチセンス核酸の注入が含まれる。もしくは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするように修飾でき、そして次ぎに全身的に投与する。例えば、全身投与のためには、例えば、細胞表面レセプターまたは抗原へ結合するペプチドまたは抗体へアンチセンス核酸分子を連結することにより、選択された細胞表面上に発現されるレセプターまたは抗原へ特異的に結合するように、アンチセンス分子を修飾できる。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記載したベクターを使用して細胞へ送達できる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、アンチセンス核酸分子が強力なpolIIまたはpolIIIプロモーターの調節下におかれている、ベクター構築物が好ましい。
【0100】
本発明はまたリボザイムも包含している。リボザイムは、相補的領域を有する、mRNAのような一本鎖核酸を切断できる、リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。それ故、リボザイムはmRNA転写体を触媒的に切断するために使用でき、それにより、mRNAによりコードされているタンパク質の翻訳を阻害する。本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードしている核酸分子に特異性を有するリボザイムは、マーカーに対応するcDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計できる。
【0101】
本発明はまた、三重らせん構造を形成する核酸分子も包含する。例えば、本発明のポリペプチドの発現は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的とし、標的細胞中の遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることにより、阻害できる。
【0102】
本発明はまた、RNA干渉(interference)または“RNAi”の使用も包含しており、それは、二本鎖RNA(dsRNA)を虫に導入した時、それが遺伝子発現を阻止できるという観察を説明するためにFireおよび共同研究者(Fireら(1998)Nature 391,806−811)により最初に造り出された用語である。dsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物体で、遺伝子特異的、転写後サイレンシング(silencing)を指図し、遺伝子機能研究のための新しい道具が提供された。
【0103】
RNA干渉の現象は、Bass,Nature 411:428−29(2001);Elbashirら,Nature 411:494−98(2001);およびFireら,Nature 391:806−11(1998)に説明および議論されており、そこには、干渉RNAを作製する方法も議論されている。“siRNA”および“RNAi”は、二本鎖RNAを形成する核酸を指しており、siRNAが遺伝子または標的遺伝子と同じ細胞中で発現された場合、その二本鎖RNAは前記遺伝子または標的遺伝子の発現を減少させるまたは抑制する能力を持っている。それ故、“siRNA”は、相補的鎖により形成された二本鎖RNAを指している。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成するsiRNAの相補的部分は、典型的には、実質的なまたは完全な同一性を有している。一つの態様において、siRNAは、標的遺伝子と実質的なまたは完全な同一性を有し、および二本鎖siRNAを形成する、核酸を指している。siRNAの配列は、完全長標的遺伝子またはその副配列に一致することができる。典型的には、siRNAは少なくとも約15−50ヌクレオチド長(例えば、二本鎖siRNAの各々の相補的配列は15−50ヌクレオチド長であり、および二本鎖siRNAは約15−50塩基対長である)、好ましくは約20−30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20−25ヌクレオチド長、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。
【0104】
多様な態様において、本発明の核酸分子は、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解性を改良するため、塩基部分、糖部分またはホスフェート主鎖で修飾できる。例えば、核酸のデオキシリボースホスフェート主鎖は、ペプチド核酸を発生するように修飾できる。本明細書で使用されるような、用語“ペプチド核酸”または“PNA”は、例えば、デオキシリボースホスフェート主鎖が偽ペプチド主鎖により置き換えられ、およびただ四つの天然の核酸塩基が保持されている、DNA模倣体のような核酸模倣体を指している。PNAの中性主鎖は、低イオン強度条件下、DNAおよびRNAへの特異的ハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、標準固相ペプチド合成を使用して実施できる。
【0105】
PNAは治療および診断応用に使用できる。例えば、PNAは、例えば、転写または翻訳停止または抑制性複製を導入することにより、遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンスまたはアンチジーン剤として使用できる。PNAはまた、例えば、RNA方向付けPCRクランピング(clamping)(他の酵素と組み合わせて使用した場合に人工制限酵素として)により、例えば、遺伝子中の単一塩基対の分析にも使用できる。
【0106】
他の態様において、オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞レセプターを標的にするため)または細胞膜または血液脳障壁を横切った輸送を容易にする剤のごとき、他の追加の基を含むことができる。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション−引き金(triggered)切断剤またはインターカレーティング剤で修飾できる。オリゴヌクレオチドは、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション−引き金架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション−引き金切断剤などのような別の分子とコンジュゲートできる。
【0107】
本発明はまた、分子ビーコン(beacon)が試料中の本発明の核酸の存在を定量するために有用であるように、本発明の核酸と相補的である少なくとも一つの領域を有する、分子ビーコン核酸も含んでいる。“分子ビーコン”核酸とは、相補的領域のセットを含んでなり、およびそれらに付随する蛍光体および蛍光消光剤を有する、核酸である。蛍光体および消光剤は、相補的領域がお互いにアニール化された場合、蛍光体による蛍光が消光剤により消光されるように、核酸の異なった部分に付随している。核酸の相補的領域がお互いにアニール化されなかった場合、蛍光体による蛍光の消光の程度は少ない。
【0108】
マイクロアレイ
別の様相において、本発明は、図9aおよび9bに示したように、本明細書で説明した方法によった標準化定量的RT−PCRに従い、PCR生成物を標準化様式で測定するための、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイまたは固体支持体の使用を説明している。
【0109】
特定の態様において、高密度オリゴヌクレオチドアレイは以下の特性を有して作製できる。各々の遺伝子に対し、競合的鋳型(CT)および天然の鋳型(NT)の両方に特異的に結合するであろう、任意の長さのオリゴヌクレオチドをフィルター上にスポットする。適したオリゴヌクレオチドを同定するため、フォワードプライマー(NTおよびCTの両方に共通)およびリバースプライマーの3’20bp間の領域を評価する。高融点、好ましくは約摂氏70度以上、を有するオリゴヌクレオチドを、図9aの前もって選定された位置に、固体支持体へ結合させる;各々の遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドは異なったバー(白抜き、斜線をつけた、横線をつけた)で示されている。
【0110】
次ぎに、上に記載した方法に従って増幅したCTおよびNT PCR生成物をスポットへハイブリダイズする。各々の遺伝子(CTおよびNT)を別々に増幅する。次ぎに、上記および図9aに図示したように、膜へのハイブリダイゼーションのためにPCR生成物をプールする。CTおよびNT PCR生成物は、図9aでは細い黒曲線として見られる。
【0111】
各々が異なった蛍光で標識されている、二つのオリゴヌクレオチドプローブを各々の遺伝子に対して調製する。一つのオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載した方法を使用してPCR−増幅した遺伝子のためのNTに特有の配列と相同的であり、それに結合するであろう。このオリゴヌクレオチドは、CTと相同的ではないNTの領域へ結合し、および異なった蛍光で標識されているであろう。他のオリゴヌクレオチドは、CTへ特異的であり、および異なった蛍光で標識されているであろう。それはリバースプライマーの3’末端に広がるCT配列と相同的であり、およびそれに結合するであろう。多数の遺伝子のためのNT−特異的およびCT−特異的オリゴヌクレオチドを等量で混合し、フィルター上にスポットした遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドへ結合された遺伝子−特異的PCR生成物とハイブリダイズさせる。スポットへ結合された蛍光間の比から、CTに対するNTの量を数量化できるであろう。蛍光タグ付けプローブ(黒く影付けした)はNTに特異的であり、および蛍光タグ付けプローブ(影付けしていない)はNTに特異的である。
【0112】
このアッセイにおいて、NTおよびNTプローブ間の結合親和性と比較して、CTおよびCTプローブ間には異なった結合親和性があるけれども、この相違は判定された異なった試料間、および一つの実験と別の実験間では一致しているであろう。
【0113】
この方法はまた、例えば、マイクロビーズ、ガラススライド、または光リソグラフィーにより製造されたチップを含む、他の固相ハイブリダイゼーション鋳型でも働く。たとえどんな鋳型を使用しても、競合鋳型の標準混合物を使用した標準化RT−PCRの生成物が、マイクロビーズ遺伝子の特異性を、マイクロアレイ上の位置ではなく、ビーズの蛍光色により与えている図9bのマイクロビーズで示されているように、出発点であろう。
【0114】
シスプラチン
以下に示された例は、シス−ジアミンジクロロ白金(II)、さもなくばシスプラチンとして知られている、および関連化合物に関する。シスプラチンは、関連化合物のファミリーであると当該分野で認められている、白金配位錯体のファミリー内の化学化合物である。シスプラチンは、抗悪性腫瘍特性を有することが示された最初の白金化合物である。術語“白金化合物”は、シスプラチン、シスプラチンと構造的に類似している化合物、ならびに、シスプラチンの類似体および誘導体を含むことが意図されている。術語“白金化合物”はまた、“模倣物”も含んでいる。“模倣物”は、シスプラチンと構造的に類似していなくても、インビボでシスプラチンまたは構造的に関連した化合物の治療活性を模倣する化合物を含むことも意図される。
【0115】
本発明の白金化合物は、対象(患者)における腫瘍増殖を抑制するために有用である化合物である。1000以上の白金含有化合物が合成されており、そして治療特性が試験されている。これらの内の一つ、カルボプラチンは卵巣癌の処置に承認されている。シスプラチンおよびカルボプラチンの両者とも静脈内送達に敏感に反応する。しかしながら、本発明の化合物は、かなり多数の戦略により、治療的送達のために処方できる。用語白金化合物はまた、医薬として受容可能な塩および関連化合物を含むことも意図されている。白金化合物は以前に、米国特許第6,001,817、5,945,122、5,942,389、5,922,689、5,902,610、5,866,617、5,849,790、5,824,346、5,616,613および5,578,571号に記載されており、それら全てが特に本明細書において援用される。
【0116】
シスプラチンおよび関連化合物は、拡散により細胞内へ入ると考えられており、そこで分子は代謝的処理を受けるようであり、薬剤の活性代謝物を生じ、それが次ぎに核酸およびタンパク質と反応する。シスプラチンは、二機能性アルキル化剤の生化学的特性と類似のものを有しており、DNAと架橋した鎖間、鎖内および一機能性付加物を産生する。
【0117】
データベース
本発明は、例えば、表1および5の遺伝子のための配列情報、ならびに多様な肺組織試料における遺伝子発現情報を含む、リレーショナル数的標準化データベースを含む。データベースはまた、配列情報に関連した遺伝子についての記述的情報、または組織試料の臨床的状態または試料が誘導された患者に関する記述的情報のごとき、既定の配列または組織試料に関連する情報も含んでいる。データベースは、例えば、配列データベースおよび遺伝子発現データベースのような異なった部分を含むように設計することができるそのようなデータベースの構造および構築のための方法は、広く入手可能である。
【0118】
本発明の数的標準化データベースは、外側または外部データベースとリンクすることができる。好ましい態様において、表1−5に記載されているように、外部データベースはGenBankおよびNational Center for Biotechnology Information(NCBI)により維持されている関連データベースである。
【0119】
配列情報、遺伝子発現情報およびデータベース内または入力として提供されている他の情報間の必要な比較を実施するため、任意の適したコンピュータープラットフォームを使用することができる。例えば、Silicon Graphics、Client−server environmentsから入手可能なように、多数のコンピューターワークステーションが多様な製造業者から入手可能であり、データベースサーバーおよびネットワークもまた、広く入手可能であり、および本発明のデータベースのために適したプラットフォームも入手可能である。
【0120】
本発明の標準化数的データのデータベースは、中でも、既定の遺伝子が発現された細胞型または組織をユーザーが決定することを可能にし、および特定の組織または細胞中の、既定の遺伝子の存在または発現レベルを可能にする、電子ノーザン(electronic Northern)を作るために使用することができる。
【0121】
本発明のデータベースはまた、組織中の表1−5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルとデータベース中の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを比較する工程を含んでなる、表1−5の少なくとも一つの遺伝子を含んでなる遺伝のセットの組織または細胞での発現レベルを同定する情報を提出するためにも使用することができる。そのような方法は、試料からの、表1−5の遺伝子または遺伝子類の発現レベルと、正常肺、悪性肺またはNSCLCからの組織で観察された発現レベルを比較することにより、既定の組織の生理学的状態を予測するために使用することができる。
【0122】
コンピューターシステム
別の様相において、本発明は、(a)表1−5の少なくとも二つの遺伝子またはc−myc x E2F−a/p21を含んでなる、遺伝子のセットの肺組織における発現レベルを同定する、標準化数的遺伝子発現情報を含んでいるデータベース;および(b)情報を見るためのユーザーインターフェイス、を含んでなるコンピューターシステムに関する。データベースはさらに、一つまたはそれより多くの下記のものを含むことができる:遺伝子の配列情報;正常肺組織における遺伝子のセットの発現レベルを同定する情報;非小細胞癌組織における遺伝子のセットの発現レベルを同定する情報;外部データベースからの記述的情報を含んでいる記録、その情報は前記遺伝子と外部データベース中の記録を関連付けている;例えば、外部データベースがGenBankの場合を含んで、および細胞または組織または患者に由来する情報または特別な特性。
【0123】
別の様相において、本発明は、組織または細胞中の表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルとデータベース中の遺伝子の発現レベルを比較することにより、表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを同定する情報を提供するため、上記のコンピューターシステムを使用する方法に関する。特定の態様において、少なくとも2、5、7および/または10の遺伝子が比較される。
【0124】
さらに別の様相において、本方法は、肺癌における発現レベルと比較された、組織または細胞試料中の、少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを示すことを含んでいる。
キット
本発明はさらに、高密度オリゴヌクレオチドアレイ、マイクロアレイで使用するための試薬、遺伝子特異的プライマーおよび内部標準の標準化混合物を含む、特定された遺伝子のStaRT−PCRのための試薬、信号検出およびアレイプロセッシング装置、遺伝子発現データベース、および上記の分析およびデータベース管理ソフトウェア、の少なくとも一つを、異なった組合わせで、併用しているキットを含んでいる。本キットは、例えば、試験化合物の毒性応答を予測するまたはモデル化するために、疾患状態の進行をモニターするために、新規薬剤標的としての見込みを示す遺伝子を同定するために、および本明細書に議論されたような既知のおよび新規に設計された薬剤をスクリーニングするために使用することができる。
【0125】
特定の態様において、本キットは、前記遺伝子の遺伝子発現情報とひとまとめにされた、本明細書に記載したような少なくとも一つの固体支持体を含んでいる。特定の態様において、遺伝子発現情報は、毒素に暴露された組織または細胞試料中の遺伝子発現レベルを含んでなる。また特定の態様において、遺伝子発現情報は、例えば、本明細書に記載した標準化遺伝子発現データベースを含んでいる、電子フォーマットの形である。キットにひとまとめにされたデータベースは、ヒトまたは実験動物遺伝子および遺伝子断片(表1および5の遺伝子に対応している)からの発現パターンの編集物である。データは正常および疾患両方の組織の宝庫(repository)から集められており、再現可能で、定量的結果(即ち、既定の条件下で遺伝子が上方制御されたかまたは下方制御されたかの程度で)を提供する。
【0126】
キットは、薬剤開発に関連する高い費用のため、早い薬剤試験が強く必要とされている、しかしバイオインフォマティックス、特に遺伝子発現インフォマティックスが未だ欠けている、製薬工業で有用である。これらのキットは、細胞培養および実験動物を使用する伝統的な新規薬剤スクリーニングに関連する、費用、時間および危険性を減少させる。前もって群分けした患者集団の大規模薬剤スクリーニング、薬理ゲノミクス試験の結果はまた、より大きな効力およびより少ない副作用を有する薬剤を選択するためにも応用できる。本キットはまた、そのような大規模試験を行うための施設をそれ自身では有していない、より小さなバイオテクノロジー企業および研究所でも使用することができる。
【0127】
マイクロアレイで使用するために設計されたデータベースおよびソフトウェアは、Balabanら、米国特許第6,229,911号、少量または大量のマイクロアレイから集められ、索引を付けた表として保存された情報を管理するためのコンピューター実行法、および米国特許第6,185,561号、多様な疑問に対する答えを出すためにデータに追加の属性を付加しおよび再配列する、遺伝子発現レベルデータを集めるためのデータ発掘能力を有する、コンピューターに基づく方法、に議論されている。Cheeetら、米国特許第5,974,164号は、基準配列へハイブリダイズした、野生型および突然変異体配列間の、プローブ蛍光強度の相違に基づいた、核酸配列中の突然変異を同定するための、ソフトウェアに基づいた方法を開示している。
【0128】
治療的および薬剤スクリーニング標的のアッセイおよび同定
特定の態様において、本明細書に記載したような、特に、図9aおよびbに示された例に関する、マイクロアレイは特に有用であることを理解しなければならない。しかしながら、特定の他の態様において、溶液に基づいた、および固体支持体に基づいたアッセイ形式を含む、他のハイブリダイゼーションアッセイ形式を使用することができることもまた理解しなければならない。本発明の差別的に発現された遺伝子のためのオリゴヌクレオチドプローブ含有固体支持体は、フィルター、ポリビニルクロリド皿、シリコンまたはガラスチップなどであることができる。そのようなウェハースおよびハイブリダイゼーション法は広く入手可能である。直接的または間接的に、共有結合的にまたは非共有結合的にオリゴヌクレオチドを結合できる固体表面が使用できる。固体支持体の例には、高密度アレイまたはDNAチップが含まれる。これらは、アレイ上の前もって決められた位置に特定のオリゴヌクレオチドプローブを含んでいる。各々の前もって決められた位置は、一つまたはそれより多くのプローブの分子を含むことができるが、前もって決められた位置内の各々の分子は同一配列を有している。そのような前もって決められた位置はフィーチャー(feature)と名付けられた。例えば、一つの固体支持体上に、約2、10、100、1000から10,000;100,000または400,000のそのようなフィーチャーが存在することができる。固体支持体またはその中のプローブが結合されている領域はおよそ平方センチメートル程度であることができる。
【0129】
発現モニタリングのためのオリゴヌクレオチドプローブアレイは、当該技術分野で知られている任意の技術に従って、作製および使用できる。そのようなプローブアレイは、本明細書に記載した、二つまたはそれより多くの遺伝子と相補的である、もしくはハイブリダイズする少なくとも二つまたはそれより多くのオリゴヌクレオチドを含むことができる。そのようなアレイはまた、本明細書に記載した、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、100またはそれより多くの遺伝子と相補的である、もしくはハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも含むことができる。
【0130】
最小数の合成工程でオリゴヌクレオチドの高密度アレイを形成する方法が知られている。オリゴヌクレオチド類似物アレイは、限定されるわけではないが、光指向性化学カップリング、機械的指向性カップリングを含む多様な方法により固体支持体上に合成できる。簡単には、ガラス表面でのオリゴヌクレオチドアレイの光指向性コンビナトリアル合成は、自動化ホスホロアミデート化学およびチップマスキング技術を使用して行われる。一つの具体的実行において、ガラス表面を官能基、例えば、感光性保護基によりブロックされたヒドロキシルまたはアミノ基を含んでいるシラン試薬で誘導体化する。光リソグラフィーマスクを通した光分解を、官能基を選択的に暴露するために使用すると、それらは到来する5’光保護ヌクレオシドホスホロアミデートと反応する調製ができている。ホスホロアミデートは、照射された部位(このように、感光性保護基の除去により暴露された)でのみ反応する。従って、ホスホロアミデートは、前工程で選択的に暴露された領域にのみ付加する。これらの工程を、固体表面上に配列の所望のアレイが合成されるまで繰り返す。アレイ上の異なった位置での、異なったオリゴヌクレオチド類似体のコンビナトリアル合成は、合成間の照射のパターンおよびカップリング試薬の添加の順序により決定される。
【0131】
前記のものに加え、単一基質上にオリゴヌクレオチドのアレイを発生させるため、追加の方法が使用できる。高密度核酸アレイはまた、あらかじめ決定された位置に、あらかじめ作製されたまたは天然核酸を沈着させることによっても製作できる。合成または天然核酸は、光指向性標的化およびオリゴヌクレオチド指向性標的化により、基質の特定の位置に沈着できる。別の態様は、特定のスポットに核酸を沈着するため、領域から領域へ移動する分配器を使用する。
【0132】
IGEIの決定
既定の薬剤への感受性が知られていない癌性細胞の試料は、患者から得られる。(IGEI)マーカーセットとして、本明細書に特許請求されたヌクレオチド配列の一つに対応する遺伝子について、試料中の発現レベルを測定する。試料中のマーカーの発現レベルを、既知の薬剤感受性を有する細胞において以前に測定されたマーカーの発現レベルと比較する。もし、試料中のマーカーの発現レベルが、既定の薬剤に対して低い感受性を有する細胞中のマーカーの発現レベルとほとんど同様であれば、その薬剤に対する低い感受性がその試料に対して予測される。もし、試料中のマーカーの発現レベルが、既定の薬剤に対して中程度の感受性を有する細胞中のマーカーの発現レベルとほとんど同様であれば、その薬剤に対する中程度の感受性がその試料に対して予測される。もし、試料中のマーカーの発現レベルが、既定の薬剤に対して高い感受性を有する細胞中のマーカーの発現レベルとほとんど同様であれば、その薬剤に対する高い感受性がその試料に対して予測される。
【0133】
それ故、癌細胞の試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験することにより、適した処置剤として使用するためには、どの治療剤(類)または剤の組合わせかを決定することが可能である。
【0134】
治療的処置の過程の間、患者からとられた癌細胞の試料における、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験することにより、治療剤が引き続いて働いているかどうか、または、癌が処置プロトコールに対して抵抗性(不応)になったかどうかを決定することが可能である。これらの決定は、患者ごとの基準で、または剤ごと(または剤の混み合わせ)に行うことができる。それ故、特定の治療処置が特定の患者または患者の群/クラスのためになっているらしいかどうか、または特定の処置をつづけるかどうか、を決定することができる。
【0135】
同定された(IGEI)マーカーセットはさらに、化学療法用化合物のごとき、抗癌剤の開発のための、以前には未知のまたは認識されていない標的を提供し、そして癌処置のための単一剤処置ならびに剤の組合わせの開発における標的として使用できる。
【実施例】
【0136】
実施例
当業者は、本発明の剤の構造的性質については制限がないことを容易に認識できる。そのようであるので、さらなる説明なしに、前述の説明および以下の例示的実施例を使用して、当業者は、本発明の化合物を作製および利用でき、および特許請求された方法を実施できると信じられる。ゆえに、以下の作業実施例は、本発明の好ましい態様を特別に指摘しており、開示の残りをいかなる点でも制限していると解釈すべきではない。
【0137】
一つの態様において、シスプラチンに対する感受性の既に決定された範囲を有する、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株のセットにおける多様な多薬剤耐性遺伝子を判定するため、標準化RT(StaRT)−PCRが用いられた。データは106β−アクチン(ACTB)分子と相対的な標的遺伝子分子の形で得られた。異なった細胞株間のACTB相違の影響を打ち消すため、個々の遺伝子発現値を、別の遺伝子に対する一つの遺伝子の比の中に組み込んだ。各々の2−遺伝子比を、多重回帰を使用して、8つのNSCLC細胞株の各々の化学耐性に対して、1変数として比較した。バリデーション(validation)後、化学耐性と最も相関した1変数モデル(p<0.001)を決定した。特定の態様において、変数モデルは:ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2、XPA/XPCおよびXRCC1/XPC、を含んでいた。すべての1変数モデルを、2変数モデルに達するように序列的に試験した。最も高い相関を有する2変数モデルは(ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2)であり、0.96のR2値であった(p<0.001)。特定の態様において、これらのマーカーは、シスプラチン耐性腫瘍の将来を見越して同定するための、ファインニードル吸引バイオプシのような、組織の少量試料の判定に適している。
【0138】
StaRT−PCRは、20のNSCLC細胞株間で、最も低い(H460)および最も高い(H1435)化学耐性であると以前に報告されている二つの細胞株における、DNA修復、多薬剤耐性、細胞周期およびアポトーシスに関与している35の遺伝子の発現を測定するために使用する、Weaver,D.A.,Zahorchak,R.,Varnavas,L.,Cawford,E.L.,Warner,K.A.,Willey,J.C.,カルボプラチンに対して変動した感受性を有する肺癌細胞株における、マイクロアレイおよび標準化RT−PCR分析による発現パターンの比較,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.2001(抄録)42,606。Tsai,C.M.,Chang,K.T.,Wu,L.H.,Chen,J.Y.,Gazdar,A.F.,Mitsudoni,T.,Chen,M.H.,Perng,R.P.,非小細胞肺癌細胞株における、固有の化学耐性とHER−2/neu遺伝子発現、p53突然変異および細胞増殖特性間の相関、Cancer Res(1996),56,206−109。DNA修復(ERCC2,XRCC1)および薬剤流入/流出(ABCC5)に関与する遺伝子が、化学耐性と関連している。これら二つのカテゴリーの各々からの遺伝子数を、総合されたDNA損傷認識および修復に関連する(DDIT3)、特にNERに関連する(LIG1、ERCC3、GTF2H2、XPA、XPC)、または薬剤輸送に関連する(ABCC1、ABCC4、ABCC10)、追加の代表的遺伝子を含むように拡大した。これら12の遺伝子の発現を、変動したシスプラチン耐性を有する8つのNSCLC細胞株で測定した。Tsai,C.M.,Chang,K.T.,Wu,L.H.,Chen,J.Y.,Gazdar,A.F.,Mitsudoni,T.,Chen,M.H.,Perng,R.P.,非小細胞肺癌細胞株における、固有の化学耐性とHER−2/neu遺伝子発現、p53突然変異および細胞増殖特性間の相関、Cancer Res(1996),56,206−109。StaRT−PCRデータは、基準遺伝子としてACTBを使用して得られた。それ故、データはmRNA分子/106 ACTB分子の形で報告されている。これらのデータは、Willey 米国特許第5,639,606、5,643,765および5,876,978号、Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−24、に記載されている定量的逆転写酵素−PCR法を使用し、表現型に直接関係する一つまたはそれより多くの遺伝子を分子に置き、および表現型に否定的に関係する一つまたはそれより多くの遺伝子を分母に置くことにより相互的遺伝子発現指標(IGEI)内へ結合させた。IGEIは、特定の癌表現型に対して、個々の遺伝子の発現レベルよりもより良好に表現型を予知するものである。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−24。Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者においては低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618。Rots,J.G.,Willey,J.C.,Jansen,G.,Van Zantwijk,C.H.,Noordhuis,P.,DeMuth,J.P.,Kuiper,E.,Verrman,A.J.,Pieters,R.,Peters,G.J.,標準化競合鋳型に基づいたRT−PCR法により決定した、小児期白血病におけるメトトレキセート耐性−関連タンパク質のmRNA発現レベル,Leukemia(2000),14,2166−2175。IGEIのさらなる利点は、一つの細胞株と別の細胞株間での、基準遺伝子値(この場合ACTB)において以前に観察されている変動をIGEIが調節することである。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−24。分子の1遺伝子が、分母の別の1遺伝子で割られた場合、基準値は数学的に相殺される。IGEI値を、変動した耐性を有する8つのNSCLC細胞株間で、シスプラチン化学耐性を比較した。結果は次ぎに、追加の6つのNSCLC細胞株で確認した。
【0139】
実施例1
材料および方法
細胞培養
非小細胞肺癌(NSCL)細胞株H460、H1155、H23、H838、H1334、H1437、H1355、H1435、H358、H322、H441、H522、H226およびH647はアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)(ロックビル,MD)から入手した。全ての細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および1mMグルタミンを含有するRPMI−1640培地(Biofluids,Inc.,ロックビル,MD)中、5%CO2存在下、37℃でインキュベートした。増殖性の、サブコンフルエント培養物を、RNA抽出および続いての分析に使用した。
【0140】
試薬
Rapidcyclerのための10X PCR緩衝液(500mMトリス,pH8.3;2.5mg/μl BSA;30mM MgCl2)は、Idaho Technology,Inc.(アイダホフォールズ,ID)から入手した。Taqポリメラーゼ(5U/μl)、オリゴdTプライマー、RNasin(25U/μl)およびdNTPはPromega(マディソン,WI)から入手した。M−MLV逆転写酵素(200U/μl)および5X第一鎖緩衝液(250mMトリス−HCl,pH8.3;375mM KCl; 15mM MgCl2;50mM DTT)はGibco BRL(ゲイサーブルグ,MD)から入手した。色素、マトリックスおよび基準物質を含んでいるDNA 7500アッセイキットはAgilent Technologies,Inc.(パロアルト,CA)から入手した。全ての他の化学薬品および試薬は、分子生物学用であった。
【0141】
RNA抽出および逆転写
全RNAは、TriReagentプロトコール(Molecular Research Center,Inc.,シンシナチ,OH)により、細胞培養物から単離した。Chomczynski,P.,細胞および組織試料からのRNA、DNAおよびタンパク質の一工程同時単離のための試薬,Biotechniques(1993),15,536−537。抽出に続いて、各々の細胞株について約1μgの全RNAを、Willey,J.C.,Coy,E.,Brolly,C.,Utell,M.J.,Frampton,M.W.,Hammersley,J.,Thilly,W.G.,Olson,D.,Cairns,K.,ヒト上皮および肺胞マクロファージ細胞における生体異物代謝酵素遺伝子発現,Am.J.Respir.Cell Biol.(1996),14,262−271、において以前に記載されているように、M−MLV逆転写酵素およびオリゴdTプライマーを使用して逆転写した。
【0142】
定量的標準化RT(StaRT)−PCR
遺伝子発現を、米国特許第5,639,606;5,643,765;および5,876,978号、およびWilley,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、Willey,J.C.,Coy,E.,Brolly,C.,Utell,M.J.,Frampton,M.W.,Hammersley,J.,Thilly,W.G.,Olson,D.,Cairns,K.,ヒト上皮および肺胞マクロファージ細胞における生体異物代謝酵素遺伝子発現,Am.J.Respir.Cell Biol.(1996),14,262−271、Apostolakos,M.J.,Schuermann,W.H.,Frampton,M.W.,Utell,M.J.,Willey,J.C.,多発性競合的ポリメラーゼ連鎖反応による遺伝子発現の測定,Anal.Biochem.(1993),213,277−284.Willey,J.C.,Coy,E.L.,Frampton,M.W.,Torres,A.,Apostolakos,M.J.,Hoehn,G.,Schuermann,W.H.,Thilly,W.G.,Olson,D.,Hammersley,J.,Crepsi,C.L.Utell,M.J.,喫煙者および非喫煙者の肺細胞における、チトクロームp4a50 1A1,1B1,および2B7、ミクロソームエポキシド加水分解酵素およびNADPH酸化還元酵素発現の、定量的RT−PCR測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1997)17,114−124に記載されている定量的StaRT−PCRプロトコールを使用して決定した。簡単には、緩衝液、MgCl2、dNTP、試料cDNA、Taqポリメラーゼおよび競合的鋳型(CT)混合物を含んでいるマスター混合物を調製し、その9μlずつを、1μlの遺伝子特異的プライマーを含んでいる0.6mlの微量遠心管内へ分配した。CT混合物は、お互いに関して決められた濃度での遺伝子特異的内部標準競合的鋳型(CT)を、およびまた、すべての特異的遺伝子データの規格化を可能にする、ハウスキーピング遺伝子(ACTB)のためのCTも含んでいる。PCTのために使用されたすべてのプライマー、およびCTの構築に使用されたプライマーは、表1に掲げられている。PCR反応は、Rapidcycler(Idaho Technology,Inc.)中、94℃での変性を5秒、58℃でのアニーリングを10秒、および72℃での伸長を15秒、のPCRを35サイクル行った。PCR生成物は電気泳動で分離し、DNA 7500アッセイキットを用い、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies,Inc.)で定量した。
【0143】
NSCLC細胞株の化学耐性
いくつかの化学療法剤に対して使用されたNSCLC細胞株の化学耐性IC50(μM)値は、Tsai,C.M.,Chang,K.T.,Wu,L.H.,Chen,J.Y.,Gazdar,A.F.,Mitsudoni,T.,Chen,M.H.,Perng,R.P.,非小細胞肺癌細胞株における、固有の化学耐性とHER−2/neu遺伝子発現、p53突然変異および細胞増殖特性間の相関、Cancer Res(1996),56,206−109、に記載されているように以前に決定されており、表2でシスプラチンについて要約されている。
【0144】
統計分析
最初の8NSCLC細胞株の各々からの、別の遺伝子に対した一つの遺伝子の比を、シスプラチン耐性を最もよく予測する遺伝子の組合わせを決定するため、SAS(バージョン6,第4版、第2巻)統計パッケージ(SAS Institute Inc.,キャリー,NC)による多重回帰分析にかけた。各々の比を別々に化学耐性と比較し、次ぎに最も高いR2値に基づいた2変数モデルを達成するため、耐性に有意な相関(R2≧0.88、p<0.001)を有する比を序列的に試験した。追加の6細胞株の判定後、14すべてのNSCLC細胞株の結果を合併し、説明したような分析にかけた。
【0145】
結果:再現性
三つまたはそれより多くの反復値が得られた、遺伝子発現測定間では、平均変動係数は38.5%であった(生データはウェブサイトで入手可能)。これは、StaRT−PCR法を使用した他の遺伝子発現研究で観察された再現性と同等である。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者では低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618。
【0146】
個々の遺伝子発現測定および化学耐性
8細胞株についての、個々の遺伝子発現平均値対シスプラチン化学耐性の直接比較の結果が表3に示されている。すべてのStaRT−PCRデータ値は、分子/106ACTB分子の形で示されている。判定された遺伝子の8/12に対して、有意な(p<0.05)相関が存在した。
【0147】
相互作用的遺伝子発現比の確立
最初の8NSCLC細胞株(グループ1)から得られたデータについて、一つの遺伝子の発現値を別の遺伝子の発現値で割る、全ての可能な組合わせを含んでなるIGEIを確立した。各々の発現値は、分子/106ACTB分子として計算した。それ故、これらのIGEIにおいて、基準遺伝子(ACTB)の影響は打ち消されている。例えば、
ERCC2分子/106ACTB分子÷XPC分子/106ACTB分子=
ERCC2分子/XPC分子。
【0148】
各々の2遺伝子対対応するシスプラチンIC50化学耐性値の二変量分析を8細胞株間で実施した(表4)。判定される遺伝子が12で、各々の遺伝子について11のセットがあるため、132の比を生じる。各々の遺伝子に対する11の比のセットを、最初にリストに掲げられた比のセットが、化学耐性との平均相関が最も高く、および最後にリストに掲げられた比セットが、化学耐性との平均相関が最も低くなるように、降順に組織的構成した。それ故、ERCC2と他の11遺伝子の各々との間の比が、評価された12の遺伝子間で最も明確であったので、分子にERCC2を有する比セットが最初にリストに掲げられた。対照的に、XPCと他の11遺伝子の各々との間の比は、化学耐性とは最も否定的な相関を有していたので、分子にXPCを有する比セットは最後にリストに掲げられた。
【0149】
化学耐性を有する遺伝子発現のモデル化
比、ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、ERCC2/XRCC1、ERCC2/GTF2H2、XPA/XPC、XRCC1/XPCおよびABCC5/XPCは、単純線形回帰により、最初の8NSCLC細胞株中で同定された、最良の1変数モデル(即ち、それらはR2>0.87)であった(表5)。モデルへ第二の変数を加えた影響を次ぎに判定した。最良の2変数モデルは、0.96のをR2を有する(ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2)であった。
【0150】
モデルのバリデーション
これらの1および2変数モデルを、追加の6NSCLC細胞株で試験した。14すべてのNSCLC細胞株について合併したデータの統計分析から、三つの一変数モデル(ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、XRCC1/XPC)、ならびに二変数モデルについてはp値が改良され、またはそのままであった。ERCC2/GTF2H2およびXPA/XPCに対するp値の下落は小さく、そして有意ではなかった。対照的に、ERCC2/XRCC1は化学耐性に関係してもはや有意ではなく、およびABCC5/XPCに対してはp値が著しく下落した。
【0151】
結果の分析
個々の遺伝子に対する値をIGEI内に取り込み、そしてIGEIを化学耐性と相関付ける、StaRT−PCRで遺伝子発現を測定することにより得られた結果は、培養NSCLC細胞におけるシスプラチン化学耐性を予言するものとして有用な、いくつかのモデルを提供する。これらのモデルは、ABCC5、ERCC2、XPAおよびXRCC1を含んでいる、シスプラチン化学耐性に関係する遺伝子を含んでなる。MRP5としても知られているABCC5の増加した発現は、インビボでの肺癌における白金薬剤への暴露、および/または生体異物への慢性薬剤応答に関係している。それ故、増加したABCC5レベルを伴う、白金薬剤に対して増加した耐性は、グルタチオン S−白金複合体流入によるものであろう。
【0152】
化学耐性に直接関係する残りの遺伝子、XPAおよびERCC2は、シスプラチンのごとき化学療法剤により誘導されるDNA損傷に応答する主修復応答であると一般的に認識されている、ヌクレオチド除去修復(NER)機構の成分である。NERにおいて、XPAは主DNA破壊認識タンパク質であり(Asahina,H.,Kuraoka,I.,Shirakawa,M.,Morita,E.H.,Miura,N.,Miyamoto,I.,Ohtsuka,E.,Okada,Y.,Tanaka,K.,XPAタンパク質は多様な種類のDNA損傷を認識する能力を有する亜鉛金属タンパク質である,Mutat.Res.DNA Repair(1994),315,229−237)、および破壊部位へいくつかの他のタンパク質を動員することにより、NER複合体の組み立ての鍵となる要素である、Li,L.,Peterson,C.A.,Lu,X.,Legerski,R.J.,ERCC1の会合を妨げるXPA中の突然変異は、ヌクレオチド除去修復における欠陥を生じさせる,Mol Cell Biol(1995),15,1993−1998。促進されたNER遺伝子発現は、シスプラチンおよび他のDNA損傷化学療法剤に対する耐性の主な原因であることが示されており(Zamble,D.B.,Lippard,S.J.,癌化学療法におけるシスプラチンおよびDNA修復,Trends Biochem.Sci.(1995),20,435−439、Reed,E.,抗癌薬剤:白金類似体、癌:腫瘍学の原理および実際、中、(1993),390−399,編集者V.T.Devita Jr.,S.HellmanおよびS.A.Rosenberg,リッピンコット,フィラデルフィア)、およびNERのXPA遺伝子成分の過剰発現は、ヒト卵巣癌におけるシスプラチンへの耐性に関係していた。Dabholkar,M.,Vionnet,J.,Bostick−Bruton,F.,Yu,J.J.,Reed,E.,白金に基づいた化学療法への応答と相関した、卵巣癌中のXPACおよびERCC1のメッセンジャーRNAレベル,J.Clin.Invest.(1994),94,703−708。ERCC2は特に、7つのポリペプチドから成る転写因子IIH(TFIIH)の成分であり(Mu,D.,Park,C.H.,Matsunaga,T.,Hsu,D.S.,Reardon,J.T.,Sancar,A.,高度に限定されたシステムにおけるヒトDNA修復除去ヌクレアーゼの再構築,J.Biol.Chem.(1995),270,2415−2418、Mu,D.,Hus,D.S.,Sancar,A.,ヒトDNA修復除去ヌクレアーゼの反応機構,J.Biol.Chem.(1996),271,8285−8294)、および全体として修復因子である。Schaeffer,L.,Moncollin,V.,Roy,R.,Staub,A.,Mezzina,M.,Sarasin,A.,Weeda,G.,Hoeijmakers,J.H.,Egly,J.M.,ERCC2/DNA修復タンパク質はクラスII BTF2/TFIIH転写因子と関係している,EMBO J (1994),13,2388−2392、Drapkin,R.,Reardon,J.T.,Ansari,A.,Huang,J.C.,Zawel,L.,Ahn,K.,Sancar,A.,Reinberg,D.,DNA除去修復およびRNAポリメラーゼIIによる転写における、TFIIHの二重の役割,Nature (1994),368,769−772、Wang,Z.,Svejstrup,J.Q.,Feaver,W.J.,Wu,X.,Kornberg,R.D.,Friedberg,E.C.,転写因子b(TFIIH)は、酵母におけるヌクレオチド除去修復の間に必要とされる,Nature(1994),368,74−76。NERにおいて、ERCC2(またはXPD)はTFIIHヘリカーゼ活性に必須であり(Prakash,S.,Sung,P.,Prakash,L.,サッカロミセス セレビジエのDNA修復遺伝子およびタンパク質,Annu.Rev.Genet.(1993),27,33−70)、および、ERCC2はGTF2H2(またはp44)と特異的に相互作用し、そしてこの相互作用は5’から3’のヘリカーゼ活性の刺激を生じることが、より最近に示されている。Coin,F.,Marinoni,J.C.,Rodoflo,C.,Fribourg,S.,Pedrinin,A.M.,Egly,J.M.,XPDヘリカーゼ遺伝子の突然変異は、XPDおよびTFIIHのp44サブユニット間の相互作用を妨げる、XPおよびTTD表現型を生じる,Nature Genet,20,184−188。
【0153】
マイクロアレイ分析では、数千の遺伝子が同時に判定されるので、測定された全ての遺伝子の指標は、一つのマイクロアレイと別のマイクロアレイとに添加された試料量に対する安定な基準を提供する。典型的には、定量的RT−PCR研究においては、ACTB、GAPDH、シクロフィリンまたはリボソームRNAのごとき、単一の制御されない遺伝子が添加基準として使用される。しかしながら、これらの遺伝子の全てが、多数の試料間で変動することが報告されている。多数の試料間の基準遺伝子発現における試料内変動を判定する一つの方法は、二つの基準遺伝子間の変動を比較することである。β−アクチンおよびGAPDHは、気管支上皮細胞(BEC)間のお互いに関して50倍、およびBECおよび他の細胞型間ではさらに大きく変動する。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。Rots,J.G.,Willey,J.C.,Jansen,G.,Van Zantwijk,C.H.,Noordhuis,P.,DeMuth,J.P.,Kuiper,E.,Verrman,A.J.,Pieters,R.,Peters,G.J.,標準化競合鋳型に基づいたRT−PCR法により決定した、小児期白血病におけるメトトレキセート耐性−関連タンパク質のmRNA発現レベル,Leukemia(2000),14,2166−2175。限定された数の遺伝子が測定される状況においては(< 200)、データの規格化のための全遺伝子の指標は、十分に安定ではない。試料間の基準遺伝子発現における未知の影響を取り除くため、別の遺伝子発現値に対するStaRT−PCRにより得られた一つの遺伝子発現値の平衡比を分析した。これらの平衡比は、比を含んでなる、個々の遺伝子の実際の細胞濃度変化を示してはいないが、しかし、別のものに対する遺伝子の発現に関係しており、化学耐性のごとき表現型決定因子を比較するためには使用される。この研究において、IGEI分析(表5)で、化学耐性に関する個々の遺伝子発現値の分析により得られた結果(表3)のほとんどが確認された。特に、XPCは化学耐性に関して判定された12の遺伝子で最も安定であり、同様に8の遺伝子が、分母としてβ−アクチンを使用する場合(表3)のように、分母としてXPCを使用し、化学耐性に相関していた。それ故、cDNA試料のこのグループ間のβ−アクチンにおいての変動は有意ではなかった。特定の態様において、いつでも可能な、基準遺伝子発現における変動の潜在的影響に関する疑問を取り除くため、IGEIを使用することは有用である。
【0154】
表4に示されたように、測定された遺伝子すべてのための発現値から誘導された平衡比(IGEI)の経験的誘導セットを評価することにより、遺伝子のセットと表現型間の関連の強さに関する序列を確立することが可能である。さらに、他の各々に関する各々の遺伝子の二変量相関は、分析の力を著しく増強し、そしてさらなるバリデーションを必要とする潜在的アウトライアー(outlier)を同定するのを助ける。本明細書の実施例において、最も明白なアウトライアーは、ERCC2/XRCC1と化学耐性間の高い相関である。これは、(a)分子にERCC2あるいはXRCC1を有する比のセットは、各々の最もおよび四番目に高い範囲のr値を有していた、さらに、(b)高いr値を有していた、分子にERCC2を有する他の比のすべてが、分母に表4の下部からの遺伝子(即ち、XPC、GTF2H2、ABCC10、ERCC3およびLIG1すべてが表の最小の中に存在した)を有していた、のでアウトライアーである。ERCC2/XRCC1がアウトライアーであることと一致して、グループ2細胞株が評価された場合、ERCC2/XRCC1はもはや化学耐性とは有意に関連していない(表5)。これらの発見は、標準、数的形式で遺伝子発現を測定する価値の、さらなる証拠を提供している。それ故、ERCC2、ABCC5、XPAおよびXRCC1と化学耐性の関係は、(a)多くの異なった機能的クラスを示している遺伝子の、第一回目のスクリーニング、(b) 第一回目で正に関係している遺伝子により代表された遺伝子の拡大されたグループを評価し、(c)正に連結されたデータを、相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)内に合併し、(d)アウトライアーを同定するためにIGEI分析を使用し、(e)モデルを組み立て、および(f)データをバリデーションする、ことを含んでいる、連続的プロセスを通して確立された。
【0155】
本発明の方法は、シスプラチン化学耐性に関与する一つより多くの遺伝子の相互作用、および化学耐性を生じさせることができる多数の経路の相互作用を評価する必要性を強調している。
【0156】
実施例II
多くの遺伝子の同定および具体的表現型とのそれらの関係は、おそらく分子癌分類へと導くであろう。(Venter,J.C.ヒトゲノムの配列,Science,291:1304−1351(2001)、Lander,E.S.,ヒトゲノムの最初の配列決定および分析,Nature,409:860−921(2001))。この新規分類システムは重要な臨床的意味を有しており、患者看護を非常に改良することができる。特に、関係する表現型を有する特定の遺伝子型の認識は、個々の予後マーカー、化学感受性体質を明らかにし、そして患者結果を予測することができる。肺癌の分子分類は、細胞学的診断を非常に促進させることができる。肺癌は未だに、組織病理学的基準を使用して主として診断されている。肺腫瘍の不均一性は、悪性および正常、および転移性肺腫瘍および原発性腫瘍を区別することの困難さ(Shirakusa,T.,Tsutsui,M.,Motomaga,R.Ando,K.およびKusano T.,A.Surg.,54:655−658,1966;Fling,A.およびLloyd,R.V.,Arch.Pathol.Lab.Med.166:39−42,1992)を含む、しばしば相反する診断を導く(Sorenson,J.B.,Hirsch,F.R.,Gazdar,A.,およびOlsen,J.E.,Cancer,71:2971−2976,1993)。
【0157】
遺伝子発現パターンは、肺および乳癌患者において、臨床結果を明白にした。Garberらは,Proc.Natl.Acad.Sci.98:13874−13789(2001)、伝統的な形態学的分類と相関した肺腫瘍の遺伝子発現プロフィールを報告している。加えて、遺伝子発現パターンに基づいて、腺癌をさらに、患者生存率が有意に異なっている三つのサブタイプへ分割した。Bhattacharjeeらは,Proc.Natl.Acad.Sci.,98:13799990−13795(2001)、類似の結果を報告した。肺腺癌を遺伝子発現パターンに基づいて、四つのサブクラスへグループ分けし、および患者は統計的に有意な生存率の相違を有していた。彼らはまた、遺伝子発現プロフィールに基づいて、形態学的には原発性肺腫瘍と同定された、三つの転移性肺腫瘍も同定した。遺伝子発現プロフィールに基づいた乳癌腫瘍の分子分類、および患者の結果および細胞増殖速度との相関も、遺伝性乳癌、散発性乳癌およびヒト乳腺上皮細胞の場合に報告されている(Hendenfalkら,New Eng.J.of Med.344:539−548,2001;Sorlieら,Proc.Natl.Acad.Sci.98:10869−10874,2001;およびPerouら,ヒト乳腺上皮細胞および乳癌における特有の遺伝子発現パターン,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96巻,16号:9212−9217,1999)。
【0158】
ほとんどの肺癌は、主としてファインニードル吸引(FNA)バイオプシ組織、胸膜液試料および気管支上皮細胞のブラッシング(brushing)により診断される。これらの少量の再生できない組織試料は、遺伝子発現研究に使用するには挑戦的である。マイクロアレイ法は、多数の癌表現型に関与する可能性のある数千の遺伝子のスクリーニングには適しているが、しかし、必要とされる大量の初期RNA量、内部標準の欠如、費用および時間のため、FNA遺伝子発現分析には適していない。(Tyagi,S.およびKramer,F.R.,Nature Biotech.14:303−308,1996;DeRisi,J.L.,Science,278:6860−6866,1997)。標的遺伝子同定後、遺伝子発現分析を、定量的、標準化遺伝子発現法でさらに評価すべきである。
【0159】
StaRT−PCR(標準化逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応)は、少量の臨床試料で使用するには理想的な遺伝子発現法である。それは数百の遺伝子を同時に測定するのに有用であり、少量のRNAしか必要とせず、安価な装置を使用し、感度が高く、標準化されており、および高度に再現できる(Willeyら、,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.19:6−17,1998、Crawfordら,Crawford,E.L.,Godfridus,J.Peters,Noordhuis,P.,Rots,M.G.,Vondracek,M.,Grafstrom,R.C.,Lieuallen,K.,Lennon,G.,Zahorchak,R.J.,Georgeson,M.J.,Wali,A.,Lechner,J.F.,Fan,P−S.,Kahaleh,B.,Khuder,S.A.,Warner,K.A.,Weaver,D.A.,およびWilley,J.C.(2001),標準化RT(StaRT)−PCRを使用する、盲検試験で得られた、多実験室間の再現性のある遺伝子発現測定,Molecular Diagnosis 6:217−225,2001)。悪性、化学耐性および転移性表現型は、多くの遺伝子の相互作用的影響から生じるようである。StaRT−PCR研究においてはデータが数的であるため、表現型は相互作用的遺伝子発現指標((IGEI)により表すことができる。Demuthらは、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.19:18−24,1998、c−myc x E2F−1/p21の遺伝子発現指標は、測定された個々の遺伝子よりも良好にヒト気管支上皮細胞における悪性度を予測することを報告している。同様の研究において、mGST x GSTM3 x GSHPX X GSHPXA x GSTP1の胃が指標は感度が高く(90%)、そして気管支原性癌の患者からの正常気管支原性上皮細胞の検出が76%特異的であった(Crawfordら、,Cancer Research,60:1609−1618,2000)。特に、この相互作用的遺伝子発現指標は、任意の単一遺伝子よりも良好に気管支原性癌発生の危険性を有する個体を同定した。
【0160】
StsRT−PCR反応ごとに標準化された競合鋳型を包含させることによって、直接的実験室内および実験室間データ比較が可能になる(Willeyら,1998)。Crawfordら(2001)は、StaRT−PCRを使用する高実験室間再現性を報告している(Crawford,E.L.,Godfridus,J.Peters,Noordhuis,P.,Rots,M.G.,Vondracek,M.,Grafstrom,R.C.,Lieuallen,K.,Lennon,G.,Zahorchak,R.J.,Georgeson,M.J.,Wali,A.,Lechner,J.F.,Fan,P−S.,Kahaleh,B.,Khuder,S.A.,Warner,K.A.,Weaver,D.A.,およびWilley,J.C.(2001),標準化RT(StaRT)−PCRを使用する、盲検試験で得られた、多実験室間の再現性のある遺伝子発現測定,Molecular Diagnosis 6:217−225,2001)標準化された数的データの産生は、共通の多施設データベースを確立するために必要とされる。多重標準化RT−PCRと称される、StaRT−PCRの最近の改変は、遺伝子発現研究に必要とされる出発材料の量をさらに減少させた(Crawford,E.L.,Warner,K.A.,Khuder,S.A.,Zahorchak,R.J.,およびWilley,J.C.,少量の臨床試料における多くの遺伝子の発現分析のための多重標準化RT−PCR,Biochemical and biophysical Research Communications,293:509−516,2002)。多重StaRT−PCRを使用し、少なくとも96の遺伝子が、1つの遺伝子の測定のために普通使用されるcDNA量と同じ量を使用して、同時に評価することができる(Crawfordら、上記文献)。この方法は、FNAにより得られた気管支原性癌試料中の、化学耐性に関連すると推定される18の遺伝子を、同時に測定するために使用した。
【0161】
この実施例は、高いc−myc x E2F−1/p21遺伝子発現指標が気管支原性癌の細胞病理学的診断を増強できるかどうかを決定する。c− myc、E2F−1およびp21の標準化遺伝子発現値および相互作用的遺伝子悪性度指標は、8つの原発性肺FNA試料について決定した。
【0162】
材料および方法
細胞培養
H1155ヒトNSCLC細胞株はATCC(マナサス,VA)から購入し、ゲンタマイシン(0.1%)(Biofluids,ロックビル,MD)および10%ウシ胎児血清(FBS)(Sigma,セントルイス,MO)を補給したRPMI中で培養した(37℃、5.0%CO2)。
【0163】
RNA保存、抽出および逆転写の評価
H1155ヒトNSCLC細胞株(1.0 E6)を、RNA抽出に先立って、Preservcyt(CYTYC/ボックスボロー,MA)、RNA−Later Ambion/オースチン,テキサス)またはTri−Reagent(Molecular Research Center,シンシナチ,OH)に置いた。RNAの質が評価された時間点および温度は、1、3、10および30日および室温、4℃および−20℃であった。RNAは、製造業者のプロトコールに従って、Tri Reagentを使用して抽出した。抽出後、RNAの質を、18sおよび28sリボソームピーク検出のためのAgilent 2100 Bioanalyzerで評価した。mRNA試料は、前に記載したようにM−MLV逆転写酵素(Gibco BRL,ゲイサーブルグ,MD)およびオリゴ(dT)プライマー(Promega,マディソン,WI)を使用して逆転写した。(DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−2、Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者では低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618)。
【0164】
ユニプレックス(uniplex)−StaRT−PCR
StaRT−PCRは、G.E.N.Eシステム1発現キット(Gene Express National Enterprises,Inc.)を用い、以前に公表されているプロトコールを使用して実施した(Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−2、Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者では低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618、Crawford,E.L.,Godfridus,J.P., Noordhuis,P.,Rots,M.G.,Vondracek,M.,Grafstrom,R.C.,Lieuallen,K.,Lennon,G.,Zahorchak,R.J.,Georgeson,M.J.,Wali,A.,Lechner,J.F.,Fan,P−S.,Kahaleh,B.,Khuder,S.A.,Warner,K.A.,Weaver,D.A.,Willey,J.C.,(2001),標準化RT(StaRT)−PCRを使用する、盲検試験で得られた、多実験室間の再現性のある遺伝子発現測定,投稿中、遺伝子発現システム1説明書、Gene Express National Enterprises,Inc.(2000),www.genexnat.com.)。
【0165】
システム1キットには、6つのCT混合物A−Fおよび適切なプライマーが含まれている。“標的遺伝子”CTの濃度は、“基準遺伝子”アクチンの濃度と比較し、各々の混合物中で変化する。マスター混合物は、RNaseを含まない水、MgCl2緩衝液、dNTP、cDNA、G.E.N.E.システム1キットからのCT混合物、およびTaqポリメラーゼを含んでいた。マスター混合物を、個々の遺伝子プライマーを含んでいるチューブに入れ、Rapidcycler(Idaho Technology,Inc.,アイダホフォールズ,ID)でサイクルを回した。各々のサイクルに対し、変性温度は94℃であり、アニーリング温度は58℃であり、および伸長温度は72℃であった。増幅後、各々のPCR生成物を、Agilent 2100 Bioanalyzer試験機でのキャピラリー電気泳動により分析した。遺伝子発現値を決定するため、各々の天然鋳型(NT)の曲線下の領域を、その関係する競合鋳型(CT)の領域と比較した。各々の発現値の単位は、106β−アクチン分子数当たりの分子数であった。
【0166】
気管支原性癌試料の取得
原発性肺癌のファインニードル吸引(FNA)物は、オハイオの医科大学で患者から得られた。各々の手順に先立って、NIHおよび施設のガイドラインに従って、通知され、署名された同意を患者から得た。ほとんどの細胞は、診断目的のため、スライド上に直接置いた。診断目的に必要とされない細胞は、Preservcyt(登録商号)溶液(CYTYC/ボックスボロー,MA)に集めた。最後の細胞病理学的診断後、Preservcyt中に残っている細胞を、我々の実験室でペレット化し、そしてRNAを抽出した。細胞数および生存度を、ガラススライド上の細胞の分析を通して細胞で評価した。
【0167】
結果
FNA検体におけるRNAの最適収集および保存を決定するための試みにおいて、H1155細胞(NSCLC)を3つの保存試薬RNA Later、PreservcytおよびTri Reagent、に置いた。RNAに対する時間および温度の影響を決定するため、H1155を4℃または−20℃で、1、3、10および30日保った。
【0168】
++として示されている高質RNA(18sおよび28sリボソームバンドの存在を示した)は、各々の試薬中で10日まで保存されたH1155 NSCLC細胞で検出された(表6)。30日保存後でも、PreservcytおよびTri Reagent中では、同じように良好に保存された。RNAは、RNA Later中、30日保存後に、4℃では部分的に分解しており(+−)、−20℃では保存されなかった。
【0169】
RNAがStaRT−PCRに適しているかどうかを決定するため、それを逆転写し、そしてβ−アクチン発現を評価した。高質または部分的に分解したRNAを示しているすべての試料でβ−アクチンを検出した(図6−表6)。予想されるように、RNA Later中、−20℃で30日保存した細胞においては、β−アクチンが検出されなかった。RNAの質は、PCR増幅される能力と高度に相関した。短期保存(1−10日)のための最適保存試薬はPreservcytおよびRNA Laterであり、10日を超える長期保存のためには、Preservcytが推薦される。Preservcytはまた、細胞学的分析にThin Prep Systemを利用する施設で使用するためにも便利である。
【0170】
最適収集および保存条件の決定後、肺FNA検体は、Preservcyt中に置き、4℃で保存した。H1155細胞と同様に、FNA検体10の内の9でRNAの質を評価した(図7−表7)。5つの試料が高質(++)または部分的に分解された(+−)RNAを有していた。予想されるように、5つすべての試料がPCR増幅可能であり、そしてβ−アクチンが検出された。逆転写に先立って、1つの試料は評価されてなく(NE)、および4つの試料は低質RNA(― ―)を示した。β−アクチンがNE検体で検出され、意外にも、2つのRNA(― ―)試料でβ−アクチンが検出された。高質RNAが存在する場合、それはPCR実験に高度に適している。低質RNAが存在する場合、PCR増幅可能ではないようであるが、それにもかかわらず使用することができる。
【0171】
どうして4試料が低質RNAを有するのかを決定する試みにおいて、各々の検体に対して、病理学者により独立して細胞学的特性が決定された。細胞性、生存度およびパーセント腫瘍/正常細胞を各々の試料で決定した(表7)。10試料の内の7つが、低細胞性(L)および低生存度(L)を有していた。これらの試料の内の3つが(++)または(+−)RNA状態を有しており、すべてがPCR増幅可能であった(+β−アクチン)。低細胞性および低生存度を有する残りの4試料で、2つはPCR増幅可能であったが、2つは不可能であった。10試料の内の3つは、中程度(I)または高(H)細胞性および生存度を有していた。3つすべてが良好な質のRNAを有しており、PCR増幅可能であった。細胞性が抽出されたRNA量に関係しているようであり、および生存度が、これらの細胞から得られたRNAの質に関係しているかもしれない。中程度から高細胞性の検体は、遺伝子発現研究に最適であり、低細胞性および低生存度の細胞も、7つの内の5つがPCR増幅可能であったので、それにもかかわらず適している。
【0172】
10試料の内の7つにおいて、腫瘍細胞の%は60から90%まで変動していた。2つの試料は20%腫瘍細胞を有し、1つは10%腫瘍細胞であった。同一取得時に決定されたFNA診断は、6試料でNSCLC、および4試料で非定型であった。悪性表現型の存在を確認するため、悪性度に関係する3遺伝子、c−myc、E2F−1およびp21を、10FNAの内の8つで評価し、悪性度指標、c−myc x E2F−1/p21を決定した(図8−表8)。予想されたように、+NSCLCの5つは、1.0E4から3.6E6(106β−アクチン分子当たりの分子として)の範囲にわたる非常に高い指標値を有していた。4つの非定型試料の内の3つもまた、7.2E3−5.0E4の範囲にわたる値を有する高い遺伝子発現指標を示した。追加の分析後、遺伝子発現データが得られた3つの非定型試料は、後に小細胞肺癌(SCLC)であると確認された。非定型試料中の腫瘍細胞のパーセンテージは20から80%の範囲であり、少数の異常細胞でも十分であり、遺伝子発現指標c−myc x E2F−1/p21により検出されたことを示している。
【0173】
肺小結節のFNA分析が通常の診断法であるが、本方法は、ヒト肺FNA試料に対して標準化、定量的遺伝子発現法を使用することの最初の例である。これら少量の再生できない細胞集団の遺伝子発現プロフィールは診断的および予後的意味を有しており、個別化された患者看護を導く。異なった遺伝子発現パターンはSCLCおよびNSCLC間を識別するために有用であり、悪性表現型の早期同定は、臨床処置を最適化するであろう。加えて、StaRT−PCRはまた、遺伝子発現パターン、および患者の予後を改善するための、例えば、化学耐性および転移可能性のような、それらに関係する臨床関連表現型を同定するためにも有用である。
【0174】
この実施例において、最初にNSCLCと診断され、そして後にNSCLCであると確認されたFNA試料の内の5つは、高い指標値を有していた。これら+NSCLC検体の発現の範囲は、1.0E4から3.6E6であった。この試料セットにおいて、4つは90.0%腫瘍細胞であり、そして試料#172は20%のみの腫瘍細胞しか有していなかったが、それでも最も高い指標値、6.5E5を有していた。細胞学的に非定型と診断され、後になってSCLCであると確認された、FNA試料の内の3つもまた、高い指標値を有していた。それらは、106分子β−アクチンmRNA当たり7.2E3−5.0E4mRNA分子の範囲であった。これらの試料における腫瘍細胞のパーセンテージは20−80%の範囲であった。
【0175】
他の態様
本明細書に記載した遺伝子およびIGEIマーカーセットは、NSCLCに対する新規薬剤標的の同定のための価値ある情報を提供し、そしてその情報は、他の組織における発癌の研究に使用するために拡大することができる。これらの配列は、本発明の方法において使用することができ、そして本発明のプローブおよびアレイを産生するために使用することができる。
【0176】
本発明は、本明細書に記載した具体的態様による範囲に制限されるわけではなく、本発明の個々の様相の一つの例示として意図されており、そして、本明細書に示されおよび説明されたものに加え、機能的に均等な方法および成分は本発明の範囲内であり、上記の説明および付随する図面から、それは当業者には明らかになるであろう。そのような改変は、付記された特許請求の範囲内であることが意図されている。
【0177】
雑誌論文、特許およびデータベースを含む、本明細書に引用したすべての参考文献は、特に本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1a】図1aおよび1bは、PCR増幅に使用したプライマーを示している表1である。表1はPCR増幅に使用したプライマーを示しており、遺伝子名称、GenBank寄託番号、配列番号、プライマー、cDNA中のbp位置、および生成物長を含んでいる(bp)。発現マーカー遺伝子の配列は公開データベース中に存在する。表1および5はこれらの遺伝子のためのGenBank寄託番号を提供している。GenBank中の遺伝子の配列は、GenBankまたは他の公開データベースに存在する均等物および関連配列のように、本明細書において特に援用される。“配列番号”と表示されたカラムは、表に掲げられた遺伝子を、本出願の配列表内に提供されているような配列情報と相関させている配列同定番号を指している。
【図1b】図1aおよび1bは、PCR増幅に使用したプライマーを示している表1である。表1はPCR増幅に使用したプライマーを示しており、遺伝子名称、GenBank寄託番号、配列番号、プライマー、cDNA中のbp位置、および生成物長を含んでいる(bp)。発現マーカー遺伝子の配列は公開データベース中に存在する。表1および5はこれらの遺伝子のためのGenBank寄託番号を提供している。GenBank中の遺伝子の配列は、GenBankまたは他の公開データベースに存在する均等物および関連配列のように、本明細書において特に援用される。“配列番号”と表示されたカラムは、表に掲げられた遺伝子を、本出願の配列表内に提供されているような配列情報と相関させている配列同定番号を指している。
【図2】図2は、NSCLC細胞株のIC50およびシスプラチンレベルを示している表2である。
【図3a】図3aおよび3bは、NSCLC細胞株における遺伝子発現(mRNA/106 ACTB mRNA)を示している表3である。
【図3b】図3aおよび3bは、NSCLC細胞株における遺伝子発現(mRNA/106 ACTB mRNA)を示している表3である。
【図4】図4は、NSCLC細胞株における遺伝子発現とシスプラチン化学耐性の相関を示している表4である。
【図5】図5は、NSCLC細胞株におけるシスプラチン化学耐性モデルの統計判定を示している表5である。
【図6】図6は、肺癌診断のためのファインニードル(Fine Needle)分析(FNA)に使用されたIEGIに関連する、実施例IIのH1155ヒトNSCLC細胞におけるRNAの質に対する収集法の影響を示している表6である。
【図7】図7は、実施例におけるFNA検体細胞の細胞学的情報および診断を示している表7である。
【図8】図8は、FNA試料中のc−myc、E2F1およびp21の遺伝子発現値および指標値を示している表8である。
【図9a】図9aは、マイクロアレイおよびマイクロビーズを用いる標準化RT−PCR生成物の分析を図により例示している:図9aは、遺伝子の同一性がマイクロアレイの位置により区別できる、マイクロアレイを示している。
【図9b】図9bは、マイクロアレイおよびマイクロビーズを用いる標準化RT−PCR生成物の分析を図により例示している:図9bは、ビーズの蛍光色により区別できる、マイクロビーズを示している。
【配列表】
【発明の開示】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/368,288号(2002年3月28日出願)、および第60/368,409号(2002年3月28日出願)の優先権を主張し、前記出願の開示は、特にその全体が本明細書に記載されているものとされる。
【0002】
本発明は、研究基金番号NIH CA85147および81126によりなされており、前記基金は本発明に対する特定の権利を所有することができる。
背景技術
非小細胞肺癌(NSCLC)は気管支原性癌の最も一般的な型である。より大きな効力を有する化学療法措置が開発され続けているが、最良の措置でも現在のところ、30−50%のみの全退行率しか与えない。この応答の欠如は、初めから存在する抵抗性、または処置に応答して顕出した抵抗性のためである。化学抵抗性の機構には、多数の遺伝子産物が関与するらしいと信じられている。腫瘍発生および増殖に関与する、特定の遺伝子の役割を明確にすること、および癌の診断、予防、モニタリングおよび処置のために、標的として働くことができる遺伝子および遺伝子産物を同定し、および定量することが重要である。
【0003】
特定の例において、最初は有効である治療剤が、時間とともに患者に対し無効になったり、有効性が低くなる。同一の治療剤が、異なった患者に対しては、より長い期間有効であり続けることがある。さらに、前記治療剤は、さらに他の患者には、無効かまたは有害であることもある。それ故、癌および既定の治療剤に関してマーカーとして働くことができる遺伝子および/または遺伝子産物を同定することは、有益となるであろう。処置において、そのような予測および訂正が行える能力によって、患者の処置過程の早期段階で、治療措置についてより正確に決定することが可能になる。
【0004】
現在、シスプラチンおよびカルボプラチンが、中でも最も広く使用される細胞毒性抗癌薬である。しかしながら、初めからのまたは誘導された機構を通したこれらの薬剤に対する耐性が、これらの治療可能性を害している。Perez,R.P.,シスプラチン耐性の細胞および分子決定因子,Eur.J.Cancer(1998),34,1535−1542。最近、白金化合物に対する化学耐性の、理解できる、考えられる様式の可能性が、細胞毒性とヌクレオチド除去修復(NER)(Dijt,F.,Fitchinger−Schepman,A.M.,Berends,F.,Reedikj,J.,培養された正常および修復−欠損ヒト線維芽細胞におけるDNAへのシスプラチン−誘導付加体の形成および修復,Cancer Res.(1988),48,6058−6062。Zamble,D.B.,Lippard,S.J.,癌化学療法におけるシスプラチンおよびDNA修復,Trends Biochem Sci(1995),20,435−439。States,J.C.,Reed,E.,シスプラチン−耐性ヒト卵巣癌において、増加したXPA mRNAレベルはXPA突然変異または遺伝子増幅とは関連しない,Cancer Lett.(1996),108,233−237。Ferry,K.V.,Fink,D.,Johnson,S.W.,Hamilton,T.C.,Howell,S.B.,インビトロDNA修復アッセイを使用する、誤対合修復欠損およびプロフィシエント(proficient)ヒト結腸直腸癌細胞株における白金−DNA付加体修復の定量,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.(1997),抄録,38,359。Jordan,P.,Carmo−Fonseca,M.,シスプラチン細胞毒性に含まれる分子機構,Cell Mol.Life Sci.(2000),57,1229−1235。Kartalou,M.,Essingmann,J.M.,シスプラチンに対する耐性の機構,Mutat.Res.(2001),478,23−43)、または薬剤取り込み/流出(Kartoluo,M.,Essingmann,J.M.,シスプラチンに対する耐性の機構,Mutat.Res.(2001),478,23−43。Berger,W.,Elbling,L.,Hauptmann,E.,Micksche,M.,ヒト非小細胞肺ガン細胞の多薬剤耐性−関連タンパク質(MRP)発現および化学耐性,Int.J.Cancer(1997),73,84−93。Borst,P.,Kool,M.,Evers,R.,cMOAT(MRP2)、その他のMRP同族体およびLRPはMDRで何らかの役割を果たしているか?Cancer Biol.(1997),8,205−213。Young,L.C.,Campling,B.G.,Voskoglou−Nomikos,T.,Cole,S.P.C.,Deeley,R.G.,Gerlach,J.H.,肺癌における多薬剤耐性タンパク質−関連遺伝子の発現:薬剤応答との関連,Clin.Cancer Res.(1999),5,673−680。Berger,W.,Elbling,L.,Micksche,M.,ヒト非小細胞肺癌細胞における主ヴォールト(vault)タンパク質の発現:抗新生物薬への短期暴露による活性化,Int.J.Cancer(2000),88,293−300。Borst,P.,Evers,R.,Kool,M.,Wijnholds,J.,薬剤輸送体ファミリー:多薬剤耐性−関連タンパク質,J Nat.Cancer Inst.(2000),92,1295−1302。Oguri,T.,Isobe,T.,Suzuki,T.,Nishio,K.,Fujiwara,Y.,Katoh,O.,Yamakido,M.,MRP5遺伝子発現の増加は、肺癌における白金薬剤への暴露に関連している,Int.J.Cancer(2000),86,95−100。)を関連づける研究を通して得られている。
【0005】
マイクロアレイおよび定量的RT−PCR法を含む、科学技術の最新の進歩は、組織形態学に対して機能性ゲノム科学を基礎にした、癌の型の分類を可能にしている。Golub,T.R.,Slonim,D.K.,Tamayo,P.,Huard,C.,Gaasenbeek,M.,Mesirov,J.P.,Coller,H.,Loh,M.L.,Downing,J.R.,Caligiuri,M.A.,Bloomfield,C.D.,Lander,E.S.,癌の分子的分類:遺伝子発現モニタリングによるクラス発見およびクラス予測,Science(1999),286,531−537。Alizadeh,A.A.,Eisen,M.B.,Davis,R.E.,Ma,C.,Lossos,I.S.,Rosenwald,A.,Boldrick,J.C.,Sabet,H.,Tran,T.,Yu,X.,Powell,J.L,Yang,L.,Marti,G.E.,Moore,T.,Hudson,Jr.,J.,Lu,L.,Lewis,D.B.,Tibshirani,R.,Sherlock,G.,Chan,W.C.,Greiner,T.C.,Weisenburger,D.D.,Armitage,J.O.,Warnke,R.,Staudt,L.M.,ら,遺伝子発現プロファイリングにより同定されたびまん性大B細胞の特有の型,Nature(2000),403,503−511。例えば、それらは遺伝子発現プロフィールに基づいた予測的マーカーの発見を可能にすることができる。マイクロアレイスクリーニング分析は、目下、遺伝子発現プロフィールに基づいた化学療法感受性を予測するために調べられている。Scherf,U.,Ross,D.T.,Waltham,M.,Smith,L.H.,Lee,J.K.,Tanabe,L.,Kohn,K.W.,Reinhold,W.C.,Myers,T.G.,Andrews,D.T.,Scudiero,D.A.,Eisen,M.B.,Sausville,E.A.,Pommier,Y.,Botstein,D.,Brown,P.O.,Weistein,J.N.,癌の分子薬理学のための遺伝子発現データベース,Nat.Genet.(2000),24,236−244。Kihara,C.Tsunoda,T.,Tanaka,T.,Yamana,H.,Furukawa,Y.,Ono,K.,Kitahara,O.,Zembutsu,H.,Yanagawa,R.,Hirata,K.,Takagi,T.,Nakamura,Y.,遺伝子発現プロフィールのcDNAマイクロアレイ分析による、アジュバント化学療法に対する食道腫瘍感受性の予測,Cancer Res.(2001),61,6474−6479。Zembutsu,H.,Ohnishi,Y.,Tsunoda,T.,Furukawa,Y.,Katagiri,T.,Ueyama,Y.,Tamaoki,N.,Nomura,T.,Kitahara,O.,Yanagawa,R.,Hirata,K.,Nakamura,Y.,遺伝子発現プロフィールと抗癌剤に対する85のヒト癌異種移植片の感受性を相関付けるためのゲノム−ワイド(genome−wide)cDNAマイクロアレイスクリーニング,Cancer Res.(2002),62,518−527。マイクロアレイ分析の利点は、数千の遺伝子を同時に評価することができることである。しかし、標準化されていないため、相対的に低感度で、および検出の閾値が相対的に不十分に低く、マイクロアレイ判定は、その後の定量法で確認する必要があると一般に認識されている。StaRT−PCRは、多くの遺伝子の、迅速な、再現性のある、標準化された、定量的測定を同時に可能にする方法である。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。Weaverら,カルボプラチンに対して変動した感受性を有する肺癌細胞株における、マイクロアレイおよび標準化RT−PCR分析による発現パターンの比較,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.2001(抄録)42,606。
【0006】
StaRT−PCRはまた、少量のバイオプシ(biopsy)組織における肺癌をより正確に診断するためにも使用できる。Warnerら,“高c−myc x E2F−1/p21はNSCLCの細胞学的診断を増強する” Prod.Am.Assoc.Cancer Res.43巻,抄録3738,2002年3月;Weaverら、“RT StarRT−PCRを利用する、非小細胞肺癌細胞株におけるシスプラチン化学耐性の遺伝子発現モデル化”,Prod.Am.Assoc.Cancer Res.43巻,抄録5471,2002年3月。
【0007】
発明の要約
本発明は、一つの例において、個々の遺伝子の発現値よりも化学耐性非小細胞肺癌(NSCLC)のより有効なマーカーであり、および別の例において、少量のバイオプシ組織における肺癌をより正確に診断するために使用することができる、多数の遺伝子の発現値を含んで成る、個々の、相互作用的遺伝子発現および/または指標(IGEI)のパターンを同定する。
【0008】
本発明は、治療薬に対する癌細胞の感受性を決定するために使用できるマーカーの同定および使用に関する。より具体的には、本発明は、癌組織で変化して発現され、そして治療薬に対する癌細胞の感受性を決定するために使用できる“多数のマーカー”を特色とする。さらにより具体的には、本発明は、治療薬の有用性を予測的に同定するための、生物学的試料の判定に有用な“相互作用的遺伝子発現指標”(IGEI)を特色とする。
【0009】
本発明は、従って、有用な診断マーカーとして、ならびに、疾病状態、疾病進行、薬剤毒性、薬剤有効性および薬剤代謝をモニターするために使用できるマーカーとして働く、遺伝子発現プロフィールを提供する。
【0010】
本発明はさらに、剤(agent)または剤の組合わせが、癌細胞の増殖を減少させるために使用できるかどうかを決定する、ならびに、癌処置のための新規剤を決定するための方法を提供する。
【0011】
本発明の多様な態様は、その発現が正常組織と比較された肺癌細胞または組織の正確な診断に相関している同定されたマーカー、およびその発現が治療薬による処置に対する感受性と相関している他のマーカーの使用に関している。特に、限定されるわけではないが、本発明は:1)特定の組織が肺癌であるかまたは非癌組織であるかどうかを決定するための方法;2)癌の処置に使用された治療薬の有効性をモニタリングするための方法;3)癌処置のための新規治療薬を開発するための方法;および4)癌処置のための治療薬の組合わせを同定するための方法、を提供する。
【0012】
癌細胞試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、どの治療薬または治療薬の組合わせが癌の増殖速度を最も減少させるようであるかを決定することがさらに可能であり、適した治療薬の選択にさらに使用することができる。
【0013】
癌細胞試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、どの治療薬または治療薬の組合わせが癌の増殖速度を最も減少させないようであるかを決定することがさらに可能である。
【0014】
一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、不適切な治療薬を排除することも可能である。
癌細胞または癌細胞株を抗癌剤の可能性を持つ薬剤へ暴露した場合、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、新規抗癌剤の効力を同定することが可能である。
【0015】
さらに、治療処置の過程間に、患者からとった癌細胞試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験し、および定量することにより、治療処置が引き続いて有効であるかどうか、または癌が治療処置に対して耐性(抗治療性)になっているかどうかを決定することが可能である。これらの決定は、患者ごとの基準で、または剤(または剤の組合わせ)ごとの基準で行える。また、特定の治療処置が特定の患者または患者群/クラスに利益になりそうかどうか、または特定の処置を続けるべきかどうかを決定することも可能である。
【0016】
本発明はさらに、化学療法用化合物のごとき、抗癌剤の開発のための、以前には未知のまたは認識されていない標的を提供する。
本発明の同定された相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)は、癌のための処置(単一の剤かまたは多数の剤)の開発における標的として有用である。
【0017】
本発明は、正常肺からの組織における遺伝子発現を試験することにより、肺癌に関連した遺伝子発現の全体的な変化を同定する。本発明はまた、有用な診断マーカー、並びに、疾病状態、疾病進行、薬剤毒性、薬剤有効性および薬剤代謝をモニターするために使用できるマーカーとして働く発現プロフィールも同定する。
【0018】
いくつかの好ましい態様において、本明細書に記載した方法、遺伝子およびIGEIは、シスプラチン耐性癌を同定するために有用である(正常組織から癌を診断するのとは対照的に)。そのような態様は、ERCC2、ABCC5、XPAおよびXRCC1からなる群より選択される、一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを検出することを含むことができる。
【0019】
いくつかの好ましい態様において、本方法は、ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2、XPA/XPCおよびXRCC1/XPCからなる群より選択される、一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを検出することを含むことができる。
【0020】
いくつかの好ましい態様において、本方法は、ABCC5/GTF2H2およびERCC2/GTF2H2からなる群より選択される、一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを検出することを含むことができる。
【0021】
本発明はまた、NSCLCおよび/または分化性小細胞肺癌(SCLC)の進行、および/または転移性疾患から非転移性疾患を検出する方法も含んでいる。例えば、本発明の方法は、患者におけるNSCLCの進行を検出することを含んでおり、前記方法は、表1および/または5からの二つまたはそれより多くの遺伝子の、組織試料中の発現レベルを検出する工程を含んでなる;ここで、表1および/または5中の遺伝子の異なった発現は、NSCLC進行の指標である。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0022】
いくつかの様相において、本発明はNSCLCを患った患者の処置をモニタリングする方法を提供し、前記方法は、患者に医薬組成物を投与し、そして患者の細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し、そして患者の遺伝子発現プロフィールを、正常肺細胞を含んでなる細胞集団からの遺伝子発現と、または肺癌細胞を含んでなる細胞集団からの遺伝子発現プロフィールと、またはその両方と比較することを含んでなる。いくつかの好ましい態様において、遺伝子プロフィールは表1および5の一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを含んでいるであろう。別の好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0023】
別の様相において、本発明はNSCLCを患った患者を処置する方法を提供し、前記方法は、患者に表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現を変化させる医薬組成物を投与し、腫瘍細胞を含んでなる患者の細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し、そして患者の遺伝子発現プロフィールとNSCLC細胞を含んでなる非処置細胞集団からの遺伝子発現プロフィールを比較することを含んでなる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0024】
本発明は患者における肺癌の存在または非存在を診断する方法を含んでおり、前記方法は、c−myc遺伝子発現値(分子/106β−アクチン分子)にE2F−1発現値を掛け、そしてその結果をp21遺伝子発現値で割る、c−myc x E2F−1/p21を含んで成るIGEIの、組織試料中の発現レベルを検出する工程を含んでなる(各々の遺伝子は3つのプライマー配列を有しているので、配列番号40−48)。
【0025】
c−myc x E2F−1/p21指標はまた、例えば、肺癌の発達のような疾病進行のモニタリングのためのマーカーとしても使用することができる。例えば、患者からの肺組織試料またはその他の試料を本明細書に記載した任意の方法によりアッセイすることができ、そしてc−myc x E2F−1/p21の試料中の発現レベルを、正常肺組織、SCLCからの組織、転移性肺癌またはNSCLC組織中に観察された発現レベルと比較することができる。発現データ、ならびに入手可能な配列またはその他の情報の比較は、研究者または診断医により行うことができ、または本明細書に記載したようなコンピューターおよびデータベースの助けを借りて行うことができる。
【0026】
本発明はさらに、NSCLCの発生または進行を調節可能な剤をスクリーニングする方法も含んでおり、前記方法は、細胞を剤に暴露し;そしてc−myc x E2F−1/p21指標の発現レベルを検出する工程を含んでなる。
【0027】
本発明の一つの様相に従うと、表1および5で同定された遺伝子は、例えば、肺癌細胞または組織試料のような、細胞または組織試料に対する候補薬剤または剤の効果を評価するためのマーカーとして使用することができる。候補薬剤または剤は、既定のマーカーまたはマーカー遺伝子のセット(薬剤標的)の転写または発現を刺激する、またはマーカーまたはマーカー類の転写または発現を下方制御または相殺する能力でスクリーニング可能である。本発明に従うと、遺伝子発現マーカーに対する薬剤効果の特異性も比較でき、それらを比較することが可能である。より特異的な薬剤は、より少ない転写標的を有することができる。二つの薬剤に対して、同様のマーカーのセットが同定されることは、同様の効果を示している。
【0028】
上に記載した本発明の任意の方法は、表1および/または5またはc−myc x E2F−1/p21からの少なくとも二つの遺伝子の検出および定量を含むことができる。好ましい方法は、表中の遺伝子の全てまたはほとんど全てを含むことができる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0029】
別の様相に従うと、本発明は、患者における非小細胞肺癌を診断する方法に関しており、前記方法は:(a)c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量することを含んでなる;ここでc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は、非小細胞肺癌の指標である。
【0030】
別の様相において、本発明は、患者における非小細胞肺癌の進行を検出する方法に関しており、前記方法は:(a)c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量することを含んでなる;ここでc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は、非小細胞肺癌進行の指標である。
【0031】
さらに別の様相において、本発明は、非小細胞肺癌の患者の処置をモニタリングする方法に関しており、前記方法は:(a)患者に医薬組成物を投与し;(b)患者からの細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し;および(c)患者の遺伝子発現プロフィールと、正常肺細胞および非小細胞肺癌からなる群より選択される細胞集団からの遺伝子発現を比較する、ことを含んでなる。
【0032】
さらに別の様相において、本発明は、非小細胞肺癌の患者を処置する方法に関しており、前記方法は:(a)患者に医薬組成物を投与し、ここにおいて、組成物は表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の発現を改変する;(b)処置前に得られた腫瘍細胞を含んでなる細胞または組織試料および処置後に得られた別の試料から、StaRT−PCRを使用する、標準化遺伝子発現値を含んでなるIGEIを調製し;および(c)処置に先立って得られた試料と処置後に得られた試料を比較する、ことを含んでなる。
【0033】
本発明のさらに別の様相は、非小細胞肺癌の発生および進行を調節できる剤のためのスクリーニング法に関しており、前記方法は:(a)非小細胞癌細胞を含んでなる細胞集団の、StaRT−PCRを使用する、標準化遺伝子発現値を含んでなる第一のIGEIを調製し、ここにおいて、第一のIGEIは、表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを決定する;(b)細胞集団を剤に暴露し;(c)剤に暴露された細胞集団の、StaRT−PCRを使用する、標準化遺伝子発現値を含んでなる第二のIGEIを調製し;および(d)第一および第二のIGEIを比較する、ことを含んでなる。
【0034】
別の様相において、本発明は、標準化定量的RT−PCRに従ったPCR生成物を、標準化された様式で測定するための、一つまたはそれより多くの固相ハイブリダイゼーション鋳型に関しており、ここで鋳型は以下のように形成する:
a)少なくとも一つの固相ハイブリダイゼーション鋳型を調製し、ここにおいて、各々の遺伝子のため、競合的鋳型(CT)および天然の鋳型(NT)の両方に特異的に結合するであろう任意の長さのオリゴヌクレオチドをフィルターにスポットし;
b)フォワードプライマー(NTおよびCTの両方に共通)およびリバースCTプライマーの3’20bp間の領域が評価されるように、適したオリゴヌクレオチドを同定し;
c)前もって選定された位置で、固体支持体へオリゴヌクレオチドを結合させ;
d)CTおよびNT PCR生成物を増幅し、そしてフィルターのスポットへハイブリダイズし、そこでは各々の遺伝子(NTおよびCT)が別々に増幅される;
e)ハイブリダイゼーションのためにPCR生成物をプールし;および
f)各々の遺伝子に対して、各々が異なった蛍光で標識されている、二つのオリゴヌクレオチドプローブを調製し、ここにおいて、一つのオリゴヌクレオチドは、このオリゴヌクレオチドが、CTとは相同的ではなく、および異なった蛍光で標識されているNTの領域へ結合するように、PCR−増幅された遺伝子のためのNTに特有の配列に相同的であり、およびそれに結合するであろうし、およびここにおいて、他のオリゴヌクレオチドは、この他のオリゴヌクレオチドが、リバースプライマーの3’末端に広がるCT配列と相同的であり、およびそれに結合するであろうように、CTへ特異的でありおよび異なった蛍光で標識されている。特定の態様において、多数の遺伝子のためのNT−特異的およびCT−特異的オリゴヌクレオチドを等量で混合し、フィルター上にスポットした遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドへ結合された遺伝子−特異的PCR生成物とハイブリダイズさせる。また、スポットへ結合された蛍光間の比で、CTに対するNTの量を定量化する。NTおよびNTプローブ間の結合親和性と比較して、CTおよびCTプローブ間には異なった結合親和性があるけれども、この相違は判定された異なった試料間、および一つの実験と別の実験間では一致している。鋳型は、少なくとも一つの標準化された、マイクロアレイ、マイクロビーズ、ガラススライド、または光リソグラフィーにより製造されたチップを含むことができ、および固体支持体は膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、多量化物質、ビーズおよびシリカ支持体であり得ることに注目せねばならない。特定の態様において、オリゴヌクレオチドの各々が表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子中の少なくとも一つの遺伝子へ特異的にハイブリダイズする配列を含んでなる、少なくとも二つのオリゴヌクレオチドを固体支持体は含んでなる。また、オリゴヌクレオチドは固体支持体に共有結合で結合されていてもよいし、または若しくは固体支持体に非共有結合で結合されていてもよいことにも注目すべきである。
正常肺組織の遺伝子のセットに対して、分子/106β−アクチン分子の単位での発現レベル。
【0035】
本発明はさらに、表1および5中の少なくとも二つの遺伝子またはc−myc x E2F−1/p21を含んでなる遺伝子のセットの、肺組織における発現レベルを同定する情報を含んでいる、数的標準化データベースを含んでなるコンピューターシステム;および情報をみるためのユーザーインターフェイスを含んでいる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。数的標準化データベースはさらに、遺伝子の配列情報、正常肺組織および悪性組織(転移性および非転移性)における遺伝子のセットの発現レベルを同定する情報も含んでおり、そしてGenBankのごとき外部データベースへのリンクを含むことができる。
【0036】
本発明はさらに、本発明の一つまたはそれより多くの方法の実行に有用なキットを含んでなる。いくつかの好ましい態様において、キットは、一つまたはそれより多くのオリゴヌクレオチドが結合された、一つまたはそれより多くの固体支持体を含むことができる。固体支持体は高密度オリゴヌクレオチドアレイであることができる。キットはさらに、アレイで使用するための一つまたはそれより多くの試薬、一つまたはそれより多くの信号検出および/またはアレイ処理装置、一つまたはそれより多くの遺伝子発現データベース、および一つまたはそれより多くの分析およびデータベース管理ソフトウェアーパッケージを含むことができる。特定の好ましい態様において、キットは、標準化マイクロアレイへ適用するための試薬と一緒にStaRT−PCR試薬を有している。
【0037】
本発明はさらにまた、組織または細胞中の、表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを、データベースの遺伝子発現レベルを比較することを含んでなる、表1および5の少なくとも一つの遺伝子の、組織または細胞中の発現レベルを同定する現在の情報について開示されたコンピューターシステムを使用しているような、データベースを使用する方法を含んでいる。いくつかの好ましい態様において、一つまたはそれより多くの遺伝子は、表5に掲げた遺伝子からなる群より選択することができる。
【0038】
本発明の他の特色および利点は、発明の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書に記載した材料および方法と同様なまたは均等な材料および方法を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい材料および方法は以下に説明されている。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、一部、癌細胞が療法剤に対して感受性であるかどうかを決定するために使用できる、マーカーの同定および定量に基づいている。これらの同定および定量に基づき、本発明は、限定されるわけではないが、:1)療法剤(または剤の組み合わせ)が腫瘍増殖を停止させるのに、または遅延させるのに有効であるのであろうか、または有効ではないのであろうかどうかを決定するための方法;2)癌の処置に使用された療法剤(または剤の組み合わせ)の有効性をモニタリングするための方法;3)癌処置のための新規療法剤を同定するための方法;4)癌の処置に使用するための療法剤の組み合わせを同定するための方法;5)特定の患者における癌の処置に有効である、特定の療法剤および療法剤の組み合わせを同定するための方法;および癌を診断するための方法、を提供する。
【0040】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用されたすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により共通に理解されている意味と同一の意味を持っている。本明細書に記載した材料および方法と同様なまたは均等な材料および方法を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書に説明されている。本明細書に述べられたすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照文献は、その全体が本明細書に記載されているものとする。本出願を通して引用された(表を含んで)すべてのGenBank、およびIMAGE ConsortiumおよびUnigeneデータベースレコードその他のデータベースレコードのコンテンツもまた、本明細書に記載されているものとする。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先するであろう。加えて、材料、方法および実施例は例示のためのみであり、それによって限定されることは意図されていない。
【0041】
冠詞“a”および“an”は本明細書において、冠詞の文法的目的語が一つまたは一より多い(即ち、少なくとも一つ)ことを指すために使用される。例として、“an element”は一つのelementまたは一より多いelementを意味している。
【0042】
“マーカー”は、表1−5に掲げた核酸の少なくとも一つに対応する、天然に存在するポリマーである。例えば、マーカーには、限定するわけではないが、ゲノムDNAのセンスおよびアンチセンス鎖(即ち、その中に存在する任意のイントロンを含んで)、ゲノムDNAの転写により発生したRNA(即ち、スプライシングに先立った)、ゲノムDNAから転写されたRNAのスプライシングにより発生したRNA、スプライスされたRNAの翻訳により発生したタンパク質(即ち、膜貫通シグナル配列のごとき普通は切断される領域の、切断前および後の両方のタンパク質を含んで)、が含まれる。本明細書で使用するような“マーカー”はまた、ゲノムDNAの転写により発生したRNA(即ち、スプライスされたRNAを含んで)の逆転写により作製されたcDNAも含むことができる。
【0043】
用語“プローブ”とは、特別に意図された標的分子へ選択的に結合できる任意の分子を指している、例えば、本発明のマーカー。プローブは、当業者により合成されるか、または適した生物学的調製試料から誘導することが可能である。標的分子の検出の目的には、プローブは、本明細書に記載されているごとく、標識されているように特別に設計することができる。プローブとして利用することができる例には、限定されるわけではないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機モノマーが含まれる。
【0044】
マーカー発現の“正常”レベルとは、癌に苦しめられていない患者の細胞中でのマーカー発現レベルである。
本明細書で使用するような、用語“プロモーター/制御配列”とは、プロモーター/制御配列に機能可能であるように連結されている遺伝子産物の発現に必要とされる、核酸配列を意味している。いくつかの例において、この配列はコアプロモーター配列であってもよく、そして他の例では、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要とされる、エンハンサー配列および他の制御要素を含んでいてもよい。例えば、プロモーター/制御配列は、組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものであってもよい。
【0045】
“構成的”プロモーターとは、遺伝子産物をコードまたは特定しているポリヌクレオチドと機能可能であるように連結されている場合、細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下、生きているヒト細胞中で遺伝子産物の産生を引き起こす、ヌクレオチド配列である。
【0046】
“転写されたポリヌクレオチド”とは、本発明のマーカーに対応する、ゲノムDNAの転写、および、もしあれば、転写体の正常転写後プロセッシング(例えば、スプライシング)により作製された成熟RNAの全てまたは一部と相補的または相同的である、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、cDNA、またはRNAまたはcDNAの一つの類似体)である。
【0047】
“相補的”とは、二つの核酸鎖の領域間または同一核酸鎖の二つの領域間の、配列相補性の広い概念を指している。第一の核酸領域のアデニン残基は、もし残基がチミンまたはウラシルであれば、第一の領域と逆平行である第二の核酸領域の残基と特定の水素結合を形成することができる(“塩基対形成”)ことは知られている。同様に、第一の核酸鎖のシトシン残基は、もし残基がグアニンであれば、第一の鎖と逆平行である第二の核酸鎖の残基と塩基対形成できることも知られている。もし、二つの領域が逆平行様式に配置された場合、第一の領域の少なくとも一つのヌクレオチド残基が第二の領域の残基と塩基対形成できるならば、第一の領域の核酸は、同一または異なった核酸の第二の領域と相補的である。好ましくは、第一の領域は第一の部分を含んでなり、および第二の領域は第二の部分を含んでなり、それにより、第一および第二の部分が逆平行様式に配置された場合、第一の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、および好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。より好ましくは、第一の部分の全ヌクレオチド残基が、第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
【0048】
本明細書で使用するような“相同的”とは、同一核酸鎖の二つの領域間、または二つの異なった核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列同一性を指している。両方の領域中のヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基で占有されている場合、領域はその位置で相同である。二つの領域間の相同性は、同一のヌクレオチド残基により占有されている、二つの領域のヌクレオチド残基位置の割合によって表現される。好ましくは、第一の領域が第一の部分を含んでなり、および第二の領域が第二の部分を含んでなり、それにより、各々の部分のヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、および好ましくは約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%が同一のヌクレオチド残基で占有されている。より好ましくは、各々の部分の全ヌクレオチド残基位置が、同一のヌクレオチド残基で占有されている。
【0049】
マーカーが、もし共有結合でまたは非共有結合で基質と結合されているとしたら、マーカーは基質へ“固定されて”おり、そのような基質は、基質から解離しているマーカーの実質的分画がなく、液体(例えば、標準クエン酸塩溶液、pH7.4)で洗い流すことができる。
【0050】
本明細書で使用するような“天然に存在する”核酸分子とは、天然に存在するヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNAを指している(例えば、天然のタンパク質をコードしている)。
【0051】
もし、癌の少なくとも一つの徴候が緩解され(alleviayrd)、終結され(terminated)、遅らされ(slowed)、または防止され(prevented)ているならば、癌は“抑制され”ている。本明細書で使用される場合、もし、癌の再発または転移が減少され(reduced)、遅らされ(slowed)、遅延され(delayed)、または防止され(prevented)ているならば、癌はまた“抑制され(inhibited)”ている。もし、細胞増殖が減少し、または細胞死速度が増加するならば、癌はまた抑制されている。
【0052】
“キット”は、本発明のマーカーを特異的に検出するための、少なくとも一つの試薬、例えば、プローブを含んでなる任意の製品(例えば、包装品または容器)であり、製品は本発明の方法を実行するためのユニットとして、販売促進され、配給され、または販売されている。
【0053】
具体的態様
以下に提供された例は、定義された化学療法剤、即ち、白金化合物に感受性を有する癌細胞株と、応答性でないものを区別するマーカーの同定および定量に関している。従って、その剤により首尾よく処置できた癌細胞を同定するために、一つまたはそれより多くのマーカーが使用できる。その剤により首尾よく処置できなかった癌細胞を同定するために、一つまたはそれより多くのマーカー発現の変化も使用できる。これらのマーカーは、それ故、剤での処置に不応になったまたは不応になる危険性がある癌を同定するための方法に使用できる。
【0054】
同定されたマーカーの発現レベルは:1)癌が剤または剤の組み合わせにより処置できるかどうかを決定する;2)癌が剤または剤の組み合わせによる処置に応答しているかどうかを決定する;3)癌を処置するために適した剤または剤の組み合わせを選択する;4)進行中の処置の有効性をモニターする;および5)新規癌処置(単一の剤または剤の組み合わせ)を同定する、ために使用することができる。
【0055】
特に、同定されたマーカーは、適した治療を決定するため、効力が試験されている薬剤の臨床治療およびヒト試行をモニターするため、および新規剤および治療の組み合わせを開発するために利用することができる。
【0056】
従って、本発明は、癌細胞を抑制するために剤が使用できるかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)表1および5に同定されたマーカーの、癌細胞中での発現レベルを決定し、および定量し;および
c)マーカーが特定のレベルで発現された場合、癌細胞を抑制するために剤が使用できることを同定する、工程を含んでなる。
【0057】
本発明はまた、剤が癌の処置において有効であるかどうかを決定するための方法も提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)試料を剤に暴露し;
c)剤へ暴露された試料中の、および剤へ暴露されていない試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現レベルを決定し、および定量し;および
d)マーカーの発現が、剤の存在下で変化した場合、剤が癌の処置に有効であることを同定する、工程を含んでなる。
【0058】
本発明はさらに、剤での処置を癌患者で続けるべきかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)剤での処置の過程間に、患者から癌細胞を含んでなる二つまたはそれより多くの試料を得;
b)二つまたはそれより多くの試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定し、および定量し;および
c)マーカーの発現レベルが特定のレベルである、例えば、処置過程の間に著しくは変化しない場合に処置を続ける、工程を含んでなる。
【0059】
本発明はまた、新規癌処置を同定する方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定し、および定量し;
c)試料を癌処置に暴露し;
d)癌処置に暴露した試料中のマーカーの発現のレベルを同定し;および
e)マーカーが特定のレベルで発現されている場合、前記癌処置が癌を処置することにおいて有効であることを同定する、工程を含んでなる。
【0060】
従って、別の様相において、本発明は癌を診断する方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞を含んでいるかもしれない組織の試料を得;および
b)組織中のc−mcy x E2F−1/p21指標の発現レベルを決定し、および定量する、工程を含んでなる。
【0061】
本明細書において使用するように、剤が癌細胞の増殖を少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%減少できる場合に、剤は癌細胞の増殖速度を減少させたと言える。そのような抑制はさらに、癌細胞の生存可能性の減少、および癌細胞の死亡速度の増加を含んでいる。この決定に使用される剤の量は、選択された剤に基づいて変化するであろう。典型的には、前記の量は前もって決められた治療量であろう。
【0062】
本明細書で使用するような、用語“剤”は、癌細胞が治療プロトコールで暴露されるであろう任意のものとして広く定義される。本発明の文脈において、そのような剤には、限定されるわけではないが、代謝拮抗剤、例えば、架橋剤、例えば、シスプラチンおよびCBDCAのような化学療法剤、放射線および紫外光が含まれる。
【0063】
上記に加え、術語“化学療法剤”は、細胞または組織の増殖が望まれないような、増殖している細胞または組織の増殖を抑制する、化学試薬を含むことも意図されている。
本方法で試験される剤は単一剤または剤の組み合わせが可能である。例えば、本方法はシスプラチンのごとき単一の化学療法剤が癌を処置するために使用できるかどうか、または二つまたはそれより多くの剤の組み合わせが使用できるかどうかを決定するために使用できる。好ましい組み合わせは、例えば、アルキル化剤と組み合わされた抗有糸分裂剤の使用のような、異なった作用機構を有する剤を含んでいるであろう。
【0064】
本明細書で使用するように、癌細胞とは、異常な(増加された)速度で分割する細胞を指している。特に、癌細胞には、限定されるわけではないが、非小細胞肺癌(NSCLC)が含まれる。本方法で使用される癌細胞の起源は、本発明の方法がどのように使用されているかに基づくであろう。例えば、もし本方法が、患者の癌が剤または剤の組み合わせで処置できるかどうかを決定するために使用されているとしたら、癌細胞の好ましい起源は、患者の癌バイオプシから得られた癌細胞であろう。もしくは、処置されている癌と類似の型の癌細胞株がアッセイ可能である。例えば、もし非小細胞肺癌(NSCLC)が処置されているならば、(NSCLC)細胞株が使用可能である。もし、本方法が療法プロトコールの有効性をモニターするために使用されているとしたら、処置されている患者からの組織試料が好ましい起源である。もし、本方法が新規療法剤または組み合わせを同定するために使用されているとしたら、例えば、癌細胞株のような任意の癌細胞が使用可能である。
【0065】
当業者は、本方法で使用される適した癌細胞を容易に選択および入手できる。癌細胞株については、実施例で使用されるNCI細胞は、The National Cancer Instituteのような供給源が好ましい。患者から得られる癌細胞については、針バイオプシのような、標準バイオプシ法を用いることができるが、mRNAの完全性を保護するため、本技術分野で知られている必要な予防処置を講じる。
【0066】
本発明の方法において、表1に同定されたマーカーからなる群より選択された、一つまたはそれより多くのマーカーの発現レベルまたは量を決定する。本明細書で使用するような発現のレベルまたは量とは、遺伝子によりコードされたmRNAの発現レベル、または遺伝子によりコードされたタンパク質の発現レベルを指している(即ち、癌細胞において発現が起こっているかまたは起こっていないのどちらにせよ)。それはまた、本明細書で開示した相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)の値を指すこともできる。当業者は、本発明の一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセットによりコードされているmRNAレベル検出に使用するための、既知のmRNA検出法を容易に適用できる。
【0067】
癌細胞からのタンパク質は、当業者には公知の技術を使用して単離することができる。用いられたタンパク質単離法は、例えば、HarlowおよびLane(HarlowおよびLane,1988,抗体:実験室マニュアル,Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク)に記載されているような方法が可能である。
【0068】
試料が、既定の抗体に結合するタンパク質を含んでいるかどうかを決定するために、多様な型式を用いることができる。そのような型式の例としては、限定されるわけではないが、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれる。当業者は、癌細胞が、本発明の一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセットによりコードされているタンパク質を発現するかどうかの決定に使用するための、既知のタンパク質/抗体検出法を容易に適用できる。
【0069】
一つの型式において、抗体または抗体断片が、発現されたタンパク質を検出するため、ウェスタンブロットまたは免疫蛍光技術のごとき方法で使用できる。そのような使用において、固体支持体上に抗体かまたはタンパク質を固定化することが好ましい。適した固相支持体または坦体には、抗原または抗体を結合できる任意の支持体が含まれる。公知の支持体または坦体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、および磁鉄鉱が含まれる。加えて、固体支持体は、膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、多量体材料、ビーズおよびシリカ支持体から選択できる。
【0070】
特定の態様において、固体支持体は少なくとも二つのオリゴヌクレオチドを含んでなり、ここで各々のオリゴヌクレオチドは、表1および5の少なくとも一つの遺伝子へ特異的にハイブリダイズする配列を含んでなる。また、固体支持体は、固体支持体に共有結合で結合されている、またはもしくは、固体支持体に非共有結合で結合されているオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0071】
当業者は、抗体または抗原を結合するために適した坦体を知っているであろうし、そして本発明で使用するためのそのような支持体を適用できるであろう。例えば、癌細胞から単離されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により泳動でき、およびニトロセルロースのごとき固相支持体上へ固定化できる。支持体は、次いで、適した緩衝液で洗浄でき、続いて検出可能に標識されたマーカー生成物特異的抗体で処理する。固相支持体は、次いで、非結合抗体を除去するため、緩衝液で二回目の洗浄を行うことができる。固体支持体上の結合された標識量は、次ぎに通常の手段により検出できる。
【0072】
本発明の別の態様は、本発明の一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセット発現を剤が刺激するかどうかを検出する工程を含んでいる。本(IGEI)マーカーセットのいくつかは、非処置癌細胞においても発現されているであろうが、剤による処置によって発現を変化させることができる(またはできない)。本発明の(IGEI)マーカーセットの発現レベルの変化は、剤が癌細胞の増殖速度を減少させることに有効であろうか、または有効ではないであろうかどうかのさらなる指標を提供することができる。
【0073】
そのような使用において、本発明は、剤、例えば、化学療法剤が癌細胞を抑制するために使用できるかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)癌細胞の試料を得;
b)癌細胞試料を一つまたはそれより多くの試験剤へ暴露し;
c)剤へ暴露した試料中の、または剤へ暴露されていない癌細胞試料中の、表1で同定されたマーカーからなる群より選択された一つまたはそれより多くのマーカーの、癌細胞中の発現のレベルを決定し、および定量し;および
d)一つまたはそれより多くのマーカーの発現が前記剤の存在下で増加した場合、および/または前記剤の存在下で一つまたはそれより多くのマーカーの発現が増加しなかった場合、癌を処置するために剤が使用できることを同定する、工程を含んでなる。
【0074】
本発明の方法のこの態様は、剤に対して癌細胞を暴露する工程を含んでいる。剤に対して癌細胞を暴露するために使用される方法は、主として、癌細胞の起源および性質、および試験されている剤に基づいているであろう。接触はインビトロまたはインビボで、試験/評価されている患者で、または癌の動物モデルで実行できる。癌細胞、細胞株および化学化合物に対して、癌細胞を暴露するとは、組織培養培地中でのように、癌細胞と化合物を接触させることを含んでいる。当業者は、癌細胞と特定の剤または剤の組み合わせを接触させるために適した手順を容易に適用できる。
【0075】
上で議論したように、同定された(IGEI)マーカーセットはまた、進行中の処置(例えば、化学療法処置)に対して、腫瘍が不応になったかどうかを判定するためにも使用できる。腫瘍が処置にこれ以上応答しない場合は、腫瘍細胞の発現プロフィールが変化するであろう:一つまたはそれより多くのマーカーの発現レベルが減少するであろう、および/または一つまたはそれより多くのマーカーの発現レベルが増加するであろう。
【0076】
そのような使用において、本発明は、癌患者で抗癌処置を続けるべきかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は:
a)抗癌療法をうけている患者から癌細胞の二つまたはそれより多くの試料を得;
b)剤に暴露された試料中の、および剤に暴露されていない癌細胞試料中の、群より選択された一つまたはそれより多くのマーカー、および一つまたはそれより多くの対応する(IGEI)マーカーセットの発現レベルを決定し、および定量し;および
c)一つまたはそれより多くの(IGEI)マーカーセットの発現が変化した場合、処置を中止する、工程を含んでなる。
【0077】
本明細書で使用されるように、患者とは、癌のための処置をうけている任意の対象を指している。好ましい対象は、化学療法処置をうけているヒト患者であろう。
本発明のこの態様は、抗癌処置をうけている患者から得られた、二つまたはそれより多くの試料を比較することに頼っている。一般に、治療の開始に先立って患者から第一の試料を、そして処置間に一つまたはそれより多くの試料を得るのが好ましい。そのような使用において、治療に先立った発現のベースラインを決定し、次いで、治療の過程間に、発現のベースライン状態の変化をモニターする。もしくは、処置間に得られた二つまたはそれより多くの連続的試料が、処置前ベースライン試料の必要なしで使用できる。そのような使用においては、患者から得られた第一の試料を、特定のマーカーの発現が増加しているかまたは減少しているかどうかを決定するためのベースラインとして使用する。
【0078】
一般に、療法処置の有効性をモニタリングする場合、患者からの二つまたはそれより多くの試料を試験する。好ましくは、少なくとも一つの処置前試料を含む、三つまたはそれより多くの連続的に得られた試料を使用する。
【0079】
本発明はさらに、本発明の一つまたはそれより多くの(好ましくは二つまたはそれより多くの)マーカーおよび/または(IGEI)マーカーセットを検出するための試薬を含んでなる、区画化された容器を含んでなる、キットを提供する。本明細書で使用するように、キットは、その中に試薬が入れられている容器の、前もって包装されたセットとして定義される。キット中に含まれている試薬は、(IGEI)マーカーセット発現の検出に使用するためのプローブ/プライマーおよび/または抗体を含んでなる。加えて、本発明のキットは、好ましくは、適した検出アッセイを説明した説明書を含むことができる。そのようなキットは、癌の徴候を示している患者を診断するため、例えば、臨床設定に、便利に使用できる。
【0080】
本発明の多様な様相が、以下の副節により詳細に説明されている。
核酸試料
当業者には明らかであるが、本発明の方法およびアッセイで使用される核酸試料は、任意の利用可能な方法およびプロセスにより製造することができる。全mRNAを単離する方法もまた、当業者には公知である。そのような試料はmRNAを含むのみでなく、目的の細胞または組織から単離されたmRNA試料から合成されたcDNAも含んでいる。そのような試料はまた、cDNAから増幅されたDNA、および増幅されたDNAから転写されたRNAを含んでいる。当業者は、ホモジネートが使用される前に、ホモジネート中に存在するRNaseを阻害または破壊することが望ましいことを理解するであろう。
【0081】
生物学的試料は、生物体からの生物学的組織または細胞、ならびに、細胞株および組織培養細胞のごときインビトロで生じた細胞であることができる。しばしば、試料は、患者に由来する試料である、“臨床試料”であろう。典型的な臨床試料には、限定されるわけではないが、痰、血液、血液−細胞(例えば、白血球)、組織またはファインニードル(fine needle)バイオプシ試料、尿、腹膜液、および胸腔内液、またはそれらからの細胞が含まれる。生物学的試料にはまた、組織学的目的でとられた凍結切片またはホルマリン固定切片のごとき、組織切片も含まれる。
【0082】
それ故、本発明の一つの様相は、本発明のマーカーに対応するポリペプチド、またはそのようなポリペプチドの一部をコードする核酸を含む、本発明のマーカーに対応する、単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸分子はまた、例えば、核酸分子の増幅または突然変異のためのPCR反応プライマーとして使用するために適した、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸、およびそのような核酸分子の断片を含む、本発明のマーカーに対応する核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するために十分な核酸分子も含んでいる。本明細書で使用されるような、用語“核酸分子”とは、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA )およびRNA分子(例えば、mRNA)、およびヌクレオチド類似体を使用して作られたDNAおよびRNAの類似体を含むことを意図している。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0083】
“単離された”核酸分子とは、核酸分子の天然の供給源に存在する、他の核酸分子から分離されている核酸分子である。好ましくは、“単離された”核酸分子は、核酸分子が誘導された、生物体のゲノムDNA中の核酸に天然に隣接する配列(好ましくはタンパク質コード配列)を含んでいない(核酸の5’および3’末端に位置する配列)。
【0084】
例えば、表1に掲げたマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸のような、本発明の核酸分子は、標準分子生物学技術および本明細書に説明したデータベース記録中の配列情報を使用して単離できる。そのような核酸配列のすべてまたは一部を使用し、本発明の核酸分子は、標準ハイブリダイゼーションおよびクローニング技術(例えば、Sambrookら,編,分子クローニング:実験室マニュアル,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク,1989,に記載されているような)を使用して単離できる。
【0085】
本発明の核酸分子は、標準PCR増幅技術に従い、鋳型としてcDNA、mRNAまたはゲノムDNAを、および適したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅できる。そのように増幅された核酸は、適したベクター内へクローン化でき、そしてDNA配列分析により特徴付けできる。その上、本発明の核酸分子のすべてまたは一部に対応するオリゴヌクレオチドは、例えば、自動化DNAシンセサイザーを使用する、標準合成技術により製造できる。
【0086】
別の好ましい態様において、本発明の単離された核酸分子は、本発明のマーカーに対応する核酸のヌクレオチド配列、または本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する、核酸分子を含んでなる。既定のヌクレオチド配列に相補的である核酸分子とは、既定のヌクレオチド配列へハイブリダイズでき、それにより安定な二重鎖を形成する、既定のヌクレオチド配列と十分に相補的である配列である。
【0087】
さらに、本発明の核酸分子は、核酸配列のほんの一部を含むことができ、ここで、完全長核酸配列は、本発明のマーカーを含んでなるか、またはそれは本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードしている。そのような核酸は、例えば、プローブまたはプライマーとして使用できる。プローブ/プライマーは、典型的には一つまたはそれより多くの実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用される。典型的には、オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下、本発明の核酸の少なくとも約7、好ましくは約12またはそれより多い連続的ヌクレオチドへハイブリダイズする、ヌクレオチド配列領域を含んでなる。
【0088】
本発明の核酸分子の配列に基づいたプローブは、本発明の一つまたはそれより多くのマーカーに対応する、転写体またはゲノム配列を検出するために使用できる。プローブは、それに結合された、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補因子のような標識基を含んでなる。そのようなプローブは、例えば、mRNAレベルを検出し、またはタンパク質をコードしている遺伝子が突然変異を受けているまたは欠失されているかどうかを決定して、患者からの細胞試料中の、タンパク質をコードしている核酸分子のレベルを測定することによるように、タンパク質を発現しない、細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として使用できる。
【0089】
本発明はさらに、同一のタンパク質をコードしているが、遺伝子コードの縮重のため、本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸のヌクレオチド配列と異なった核酸分子を包含する。
【0090】
本明細書に記載されている、GenBankデータベース記録に記載されたヌクレオチド配列に加え、アミノ酸配列の変化を導くDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在できることが、当業者には理解されるであろう。そのような遺伝子多型は、天然の対立遺伝子変異のため、集団内の個体間で存在できる。対立遺伝子は、既定の遺伝子座位で代わりになるものとして生じる、遺伝子の群の一つである。加えて、RNA発現レベルに影響するDNA多型もまた存在可能であり、それはその遺伝子の全発現レベルに影響することができる(例えば、制御または分解に影響することにより)ことを理解されたい。
【0091】
本明細書で使用するような、句“対立遺伝子変異体”とは、既定の座位で生じたヌクレオチド配列、または前記ヌクレオチド配列によりコードされたポリペプチドを指している。
【0092】
本明細書で使用するような、用語“遺伝子”および“組換え遺伝子”とは、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードしている読み取り枠を含んでなる核酸分子を指している。そのような天然の対立遺伝子変異体は、典型的には、既定の遺伝子のヌクレオチド配列中に、1−5%の変異を生じてよい。代わりの対立遺伝子は、多数の異なった個体中の、目的とする遺伝子を配列決定することにより同定できる。このことは、多様な個体中の、同一遺伝子座位を同定するためのハイブリダイゼーションプローブを使用することにより、容易に実行できる。天然の対立遺伝子変異の結果であり、および機能的活性を変化させない、そのようなヌクレオチド変異体および結果としてのアミノ酸多型または変異体はひとつ残らず、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0093】
別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも7、15、20、25、30、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、またはそれより多いヌクレオチド長であり、ストリンジェント条件下、本発明のマーカーに対応する核酸、または本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする。本明細書で使用するような、用語“ストリンジェント条件下でハイブリダイズする”とは、少なくとも60%(65%、70%、好ましくは75%)お互いに同一であるヌクレオチド配列がお互いにハイブリダイズして残るような、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を記述することが意図される。そのようなストリンジェント条件は、当業者には知られており、分子生物学における最新のプロトコール,John Wiley & Sons,ニューヨーク(1989)の節6.3.1−6.3.6にみることができる。好ましいストリンジェント条件の非制限的例は、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45度Cでのハイブリダイゼーション、続いての0.2xSSC、0.1%SDSによる、50−65度Cでの1回またはそれより多くの洗浄である。
【0094】
集団中に存在できる、本発明の核酸分子の天然に存在する対立遺伝子変異体に加え、当業者は、コードされているタンパク質の生物学的活性を変えることなく、コードされているタンパク質のアミノ酸配列に変化を導く配列変化が、突然変異により導入できることを、さらに認めるであろう。例えば、“非必須”アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導く、ヌクレオチド置換体を作製することができる。“非必須”アミノ酸残基とは、生物学的活性を変化させることなく、野生型配列から変化できる残基であり、一方、“必須”アミノ酸残基は生物学的活性に必要とされる。例えば、多様な種の相同体間で、保存されていないまたは半保存されているだけのアミノ酸残基は、活性には非必須といってもさしつかえなく、それ故、改変の標的となるようである。あるいは、多様な種(例えば、マウスおよびヒト)の相同体間で保存されているアミノ酸残基は、活性に必要であるといってもさしつかえなく、それ故、改変の標的とはならないようである。
【0095】
従って、本発明の別の様相は、活性に必要とされないアミノ酸残基での変化を含む、本発明のポリペプチドをコードしている核酸分子に関する。そのようなポリペプチドは、本発明のマーカーに対応する天然に存在するタンパク質とは、アミノ酸配列が異なっているが、それでも生物学的活性は保持している。一つの態様において、そのようなタンパク質は、本発明のマーカーに対応するタンパク質の一つのアミノ酸配列と少なくとも40%同一、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%同一である、アミノ酸配列を有する。
【0096】
変異体タンパク質をコードしている単離された核酸分子は、コードされたタンパク質内へ一つまたはそれより多くのアミノ酸残基置換、付加または欠損が導入されるように、本発明の核酸のヌクレオチド配列内へ一つまたはそれより多くのヌクレオチド置換、付加または欠損を導入することにより創製できる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発およびPCR−仲介突然変異誘発のような、標準的技術により導入できる。好ましくは、保存的アミノ酸置換が、一つまたはそれより多くの推定非必須アミノ酸残基で行われる。“保存的アミノ酸置換”とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。もしくは、飽和突然変異誘発によるように、突然変異をコード配列の全てまたは一部に沿って無作為に導入でき、生じた突然変異体は、活性を保持する突然変異体を同定するため、生物学的活性でスクリーニングできる。突然変異誘発に続いて、コードされているタンパク質は、組換え的に発現でき、そしてタンパク質の活性を決定できる。
【0097】
本発明は、本発明のセンス核酸と相補的な、例えば、本発明のマーカーに対応する二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的な、または本発明のマーカーに対応するmRNA配列と相補的な、分子であるアンチセンス核酸分子を包含する。従って、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のセンス核酸へ水素結合(即ち、アニールする)できる。アンチセンス核酸は、全コード鎖と、またはその一部のみと、例えば、タンパク質コード領域(または読み取り枠)の全てまたは一部と相補的であり得る。アンチセンス核酸分子はまた、本発明のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全てまたは一部とアンチセンスでもあり得る。非コード領域(“5’および3’非翻訳領域”)とは、コード領域に隣接し、およびアミノ酸へは翻訳されない5’および3’配列である。
【0098】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50、またはそれ以上のヌクレオチド長であることができる。本発明のアンチセンス核酸は、当該分野で知られている手順を使用する、化学合成および酵素的ライゲーション(ligation)反応を使用して構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または、分子の生物学的安定性を増加させるように、またはアンチセンスおよびセンス核酸間で形成された二重鎖の物理学的安定性を増加させるように設計された、種々の修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成でき、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドヌクレオチドが使用できる。アンチセンス核酸を発生させるために使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニル−アデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5−メトキシカルボキシ−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンが含まれる。もしくは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配向でサブクローン化されている発現ベクターを使用して、生物学的に産生できる(即ち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的とする標的核酸に対してアンチセンス配向であろう、以下の副節でさらに説明されている)。
【0099】
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、本発明の選択されたマーカーに対応するポリペプチドをコードしている細胞性mRNAおよび/またはゲノムDNAへハイブリダイズまたは結合し、それによりマーカーの発現を阻害(例えば、転写および/または翻訳を阻害することにより)するように、対象に投与するか、または生体内原位置で発生させる。ハイブリダイゼーションでは、通常のヌクレオチド相補性により安定な二重鎖を形成するか、または例えば、アンチセンス核酸分子の場合は、二重らせん主溝中の特異的相互作用を通してDNA二重鎖へ結合する。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路例には、組織部位での直接注射、または卵巣関連体液内へのアンチセンス核酸の注入が含まれる。もしくは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするように修飾でき、そして次ぎに全身的に投与する。例えば、全身投与のためには、例えば、細胞表面レセプターまたは抗原へ結合するペプチドまたは抗体へアンチセンス核酸分子を連結することにより、選択された細胞表面上に発現されるレセプターまたは抗原へ特異的に結合するように、アンチセンス分子を修飾できる。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記載したベクターを使用して細胞へ送達できる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、アンチセンス核酸分子が強力なpolIIまたはpolIIIプロモーターの調節下におかれている、ベクター構築物が好ましい。
【0100】
本発明はまたリボザイムも包含している。リボザイムは、相補的領域を有する、mRNAのような一本鎖核酸を切断できる、リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。それ故、リボザイムはmRNA転写体を触媒的に切断するために使用でき、それにより、mRNAによりコードされているタンパク質の翻訳を阻害する。本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードしている核酸分子に特異性を有するリボザイムは、マーカーに対応するcDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計できる。
【0101】
本発明はまた、三重らせん構造を形成する核酸分子も包含する。例えば、本発明のポリペプチドの発現は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的とし、標的細胞中の遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることにより、阻害できる。
【0102】
本発明はまた、RNA干渉(interference)または“RNAi”の使用も包含しており、それは、二本鎖RNA(dsRNA)を虫に導入した時、それが遺伝子発現を阻止できるという観察を説明するためにFireおよび共同研究者(Fireら(1998)Nature 391,806−811)により最初に造り出された用語である。dsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物体で、遺伝子特異的、転写後サイレンシング(silencing)を指図し、遺伝子機能研究のための新しい道具が提供された。
【0103】
RNA干渉の現象は、Bass,Nature 411:428−29(2001);Elbashirら,Nature 411:494−98(2001);およびFireら,Nature 391:806−11(1998)に説明および議論されており、そこには、干渉RNAを作製する方法も議論されている。“siRNA”および“RNAi”は、二本鎖RNAを形成する核酸を指しており、siRNAが遺伝子または標的遺伝子と同じ細胞中で発現された場合、その二本鎖RNAは前記遺伝子または標的遺伝子の発現を減少させるまたは抑制する能力を持っている。それ故、“siRNA”は、相補的鎖により形成された二本鎖RNAを指している。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成するsiRNAの相補的部分は、典型的には、実質的なまたは完全な同一性を有している。一つの態様において、siRNAは、標的遺伝子と実質的なまたは完全な同一性を有し、および二本鎖siRNAを形成する、核酸を指している。siRNAの配列は、完全長標的遺伝子またはその副配列に一致することができる。典型的には、siRNAは少なくとも約15−50ヌクレオチド長(例えば、二本鎖siRNAの各々の相補的配列は15−50ヌクレオチド長であり、および二本鎖siRNAは約15−50塩基対長である)、好ましくは約20−30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20−25ヌクレオチド長、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。
【0104】
多様な態様において、本発明の核酸分子は、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解性を改良するため、塩基部分、糖部分またはホスフェート主鎖で修飾できる。例えば、核酸のデオキシリボースホスフェート主鎖は、ペプチド核酸を発生するように修飾できる。本明細書で使用されるような、用語“ペプチド核酸”または“PNA”は、例えば、デオキシリボースホスフェート主鎖が偽ペプチド主鎖により置き換えられ、およびただ四つの天然の核酸塩基が保持されている、DNA模倣体のような核酸模倣体を指している。PNAの中性主鎖は、低イオン強度条件下、DNAおよびRNAへの特異的ハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、標準固相ペプチド合成を使用して実施できる。
【0105】
PNAは治療および診断応用に使用できる。例えば、PNAは、例えば、転写または翻訳停止または抑制性複製を導入することにより、遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンスまたはアンチジーン剤として使用できる。PNAはまた、例えば、RNA方向付けPCRクランピング(clamping)(他の酵素と組み合わせて使用した場合に人工制限酵素として)により、例えば、遺伝子中の単一塩基対の分析にも使用できる。
【0106】
他の態様において、オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞レセプターを標的にするため)または細胞膜または血液脳障壁を横切った輸送を容易にする剤のごとき、他の追加の基を含むことができる。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション−引き金(triggered)切断剤またはインターカレーティング剤で修飾できる。オリゴヌクレオチドは、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション−引き金架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション−引き金切断剤などのような別の分子とコンジュゲートできる。
【0107】
本発明はまた、分子ビーコン(beacon)が試料中の本発明の核酸の存在を定量するために有用であるように、本発明の核酸と相補的である少なくとも一つの領域を有する、分子ビーコン核酸も含んでいる。“分子ビーコン”核酸とは、相補的領域のセットを含んでなり、およびそれらに付随する蛍光体および蛍光消光剤を有する、核酸である。蛍光体および消光剤は、相補的領域がお互いにアニール化された場合、蛍光体による蛍光が消光剤により消光されるように、核酸の異なった部分に付随している。核酸の相補的領域がお互いにアニール化されなかった場合、蛍光体による蛍光の消光の程度は少ない。
【0108】
マイクロアレイ
別の様相において、本発明は、図9aおよび9bに示したように、本明細書で説明した方法によった標準化定量的RT−PCRに従い、PCR生成物を標準化様式で測定するための、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイまたは固体支持体の使用を説明している。
【0109】
特定の態様において、高密度オリゴヌクレオチドアレイは以下の特性を有して作製できる。各々の遺伝子に対し、競合的鋳型(CT)および天然の鋳型(NT)の両方に特異的に結合するであろう、任意の長さのオリゴヌクレオチドをフィルター上にスポットする。適したオリゴヌクレオチドを同定するため、フォワードプライマー(NTおよびCTの両方に共通)およびリバースプライマーの3’20bp間の領域を評価する。高融点、好ましくは約摂氏70度以上、を有するオリゴヌクレオチドを、図9aの前もって選定された位置に、固体支持体へ結合させる;各々の遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドは異なったバー(白抜き、斜線をつけた、横線をつけた)で示されている。
【0110】
次ぎに、上に記載した方法に従って増幅したCTおよびNT PCR生成物をスポットへハイブリダイズする。各々の遺伝子(CTおよびNT)を別々に増幅する。次ぎに、上記および図9aに図示したように、膜へのハイブリダイゼーションのためにPCR生成物をプールする。CTおよびNT PCR生成物は、図9aでは細い黒曲線として見られる。
【0111】
各々が異なった蛍光で標識されている、二つのオリゴヌクレオチドプローブを各々の遺伝子に対して調製する。一つのオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載した方法を使用してPCR−増幅した遺伝子のためのNTに特有の配列と相同的であり、それに結合するであろう。このオリゴヌクレオチドは、CTと相同的ではないNTの領域へ結合し、および異なった蛍光で標識されているであろう。他のオリゴヌクレオチドは、CTへ特異的であり、および異なった蛍光で標識されているであろう。それはリバースプライマーの3’末端に広がるCT配列と相同的であり、およびそれに結合するであろう。多数の遺伝子のためのNT−特異的およびCT−特異的オリゴヌクレオチドを等量で混合し、フィルター上にスポットした遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドへ結合された遺伝子−特異的PCR生成物とハイブリダイズさせる。スポットへ結合された蛍光間の比から、CTに対するNTの量を数量化できるであろう。蛍光タグ付けプローブ(黒く影付けした)はNTに特異的であり、および蛍光タグ付けプローブ(影付けしていない)はNTに特異的である。
【0112】
このアッセイにおいて、NTおよびNTプローブ間の結合親和性と比較して、CTおよびCTプローブ間には異なった結合親和性があるけれども、この相違は判定された異なった試料間、および一つの実験と別の実験間では一致しているであろう。
【0113】
この方法はまた、例えば、マイクロビーズ、ガラススライド、または光リソグラフィーにより製造されたチップを含む、他の固相ハイブリダイゼーション鋳型でも働く。たとえどんな鋳型を使用しても、競合鋳型の標準混合物を使用した標準化RT−PCRの生成物が、マイクロビーズ遺伝子の特異性を、マイクロアレイ上の位置ではなく、ビーズの蛍光色により与えている図9bのマイクロビーズで示されているように、出発点であろう。
【0114】
シスプラチン
以下に示された例は、シス−ジアミンジクロロ白金(II)、さもなくばシスプラチンとして知られている、および関連化合物に関する。シスプラチンは、関連化合物のファミリーであると当該分野で認められている、白金配位錯体のファミリー内の化学化合物である。シスプラチンは、抗悪性腫瘍特性を有することが示された最初の白金化合物である。術語“白金化合物”は、シスプラチン、シスプラチンと構造的に類似している化合物、ならびに、シスプラチンの類似体および誘導体を含むことが意図されている。術語“白金化合物”はまた、“模倣物”も含んでいる。“模倣物”は、シスプラチンと構造的に類似していなくても、インビボでシスプラチンまたは構造的に関連した化合物の治療活性を模倣する化合物を含むことも意図される。
【0115】
本発明の白金化合物は、対象(患者)における腫瘍増殖を抑制するために有用である化合物である。1000以上の白金含有化合物が合成されており、そして治療特性が試験されている。これらの内の一つ、カルボプラチンは卵巣癌の処置に承認されている。シスプラチンおよびカルボプラチンの両者とも静脈内送達に敏感に反応する。しかしながら、本発明の化合物は、かなり多数の戦略により、治療的送達のために処方できる。用語白金化合物はまた、医薬として受容可能な塩および関連化合物を含むことも意図されている。白金化合物は以前に、米国特許第6,001,817、5,945,122、5,942,389、5,922,689、5,902,610、5,866,617、5,849,790、5,824,346、5,616,613および5,578,571号に記載されており、それら全てが特に本明細書において援用される。
【0116】
シスプラチンおよび関連化合物は、拡散により細胞内へ入ると考えられており、そこで分子は代謝的処理を受けるようであり、薬剤の活性代謝物を生じ、それが次ぎに核酸およびタンパク質と反応する。シスプラチンは、二機能性アルキル化剤の生化学的特性と類似のものを有しており、DNAと架橋した鎖間、鎖内および一機能性付加物を産生する。
【0117】
データベース
本発明は、例えば、表1および5の遺伝子のための配列情報、ならびに多様な肺組織試料における遺伝子発現情報を含む、リレーショナル数的標準化データベースを含む。データベースはまた、配列情報に関連した遺伝子についての記述的情報、または組織試料の臨床的状態または試料が誘導された患者に関する記述的情報のごとき、既定の配列または組織試料に関連する情報も含んでいる。データベースは、例えば、配列データベースおよび遺伝子発現データベースのような異なった部分を含むように設計することができるそのようなデータベースの構造および構築のための方法は、広く入手可能である。
【0118】
本発明の数的標準化データベースは、外側または外部データベースとリンクすることができる。好ましい態様において、表1−5に記載されているように、外部データベースはGenBankおよびNational Center for Biotechnology Information(NCBI)により維持されている関連データベースである。
【0119】
配列情報、遺伝子発現情報およびデータベース内または入力として提供されている他の情報間の必要な比較を実施するため、任意の適したコンピュータープラットフォームを使用することができる。例えば、Silicon Graphics、Client−server environmentsから入手可能なように、多数のコンピューターワークステーションが多様な製造業者から入手可能であり、データベースサーバーおよびネットワークもまた、広く入手可能であり、および本発明のデータベースのために適したプラットフォームも入手可能である。
【0120】
本発明の標準化数的データのデータベースは、中でも、既定の遺伝子が発現された細胞型または組織をユーザーが決定することを可能にし、および特定の組織または細胞中の、既定の遺伝子の存在または発現レベルを可能にする、電子ノーザン(electronic Northern)を作るために使用することができる。
【0121】
本発明のデータベースはまた、組織中の表1−5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルとデータベース中の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを比較する工程を含んでなる、表1−5の少なくとも一つの遺伝子を含んでなる遺伝のセットの組織または細胞での発現レベルを同定する情報を提出するためにも使用することができる。そのような方法は、試料からの、表1−5の遺伝子または遺伝子類の発現レベルと、正常肺、悪性肺またはNSCLCからの組織で観察された発現レベルを比較することにより、既定の組織の生理学的状態を予測するために使用することができる。
【0122】
コンピューターシステム
別の様相において、本発明は、(a)表1−5の少なくとも二つの遺伝子またはc−myc x E2F−a/p21を含んでなる、遺伝子のセットの肺組織における発現レベルを同定する、標準化数的遺伝子発現情報を含んでいるデータベース;および(b)情報を見るためのユーザーインターフェイス、を含んでなるコンピューターシステムに関する。データベースはさらに、一つまたはそれより多くの下記のものを含むことができる:遺伝子の配列情報;正常肺組織における遺伝子のセットの発現レベルを同定する情報;非小細胞癌組織における遺伝子のセットの発現レベルを同定する情報;外部データベースからの記述的情報を含んでいる記録、その情報は前記遺伝子と外部データベース中の記録を関連付けている;例えば、外部データベースがGenBankの場合を含んで、および細胞または組織または患者に由来する情報または特別な特性。
【0123】
別の様相において、本発明は、組織または細胞中の表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルとデータベース中の遺伝子の発現レベルを比較することにより、表1および5の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを同定する情報を提供するため、上記のコンピューターシステムを使用する方法に関する。特定の態様において、少なくとも2、5、7および/または10の遺伝子が比較される。
【0124】
さらに別の様相において、本方法は、肺癌における発現レベルと比較された、組織または細胞試料中の、少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを示すことを含んでいる。
キット
本発明はさらに、高密度オリゴヌクレオチドアレイ、マイクロアレイで使用するための試薬、遺伝子特異的プライマーおよび内部標準の標準化混合物を含む、特定された遺伝子のStaRT−PCRのための試薬、信号検出およびアレイプロセッシング装置、遺伝子発現データベース、および上記の分析およびデータベース管理ソフトウェア、の少なくとも一つを、異なった組合わせで、併用しているキットを含んでいる。本キットは、例えば、試験化合物の毒性応答を予測するまたはモデル化するために、疾患状態の進行をモニターするために、新規薬剤標的としての見込みを示す遺伝子を同定するために、および本明細書に議論されたような既知のおよび新規に設計された薬剤をスクリーニングするために使用することができる。
【0125】
特定の態様において、本キットは、前記遺伝子の遺伝子発現情報とひとまとめにされた、本明細書に記載したような少なくとも一つの固体支持体を含んでいる。特定の態様において、遺伝子発現情報は、毒素に暴露された組織または細胞試料中の遺伝子発現レベルを含んでなる。また特定の態様において、遺伝子発現情報は、例えば、本明細書に記載した標準化遺伝子発現データベースを含んでいる、電子フォーマットの形である。キットにひとまとめにされたデータベースは、ヒトまたは実験動物遺伝子および遺伝子断片(表1および5の遺伝子に対応している)からの発現パターンの編集物である。データは正常および疾患両方の組織の宝庫(repository)から集められており、再現可能で、定量的結果(即ち、既定の条件下で遺伝子が上方制御されたかまたは下方制御されたかの程度で)を提供する。
【0126】
キットは、薬剤開発に関連する高い費用のため、早い薬剤試験が強く必要とされている、しかしバイオインフォマティックス、特に遺伝子発現インフォマティックスが未だ欠けている、製薬工業で有用である。これらのキットは、細胞培養および実験動物を使用する伝統的な新規薬剤スクリーニングに関連する、費用、時間および危険性を減少させる。前もって群分けした患者集団の大規模薬剤スクリーニング、薬理ゲノミクス試験の結果はまた、より大きな効力およびより少ない副作用を有する薬剤を選択するためにも応用できる。本キットはまた、そのような大規模試験を行うための施設をそれ自身では有していない、より小さなバイオテクノロジー企業および研究所でも使用することができる。
【0127】
マイクロアレイで使用するために設計されたデータベースおよびソフトウェアは、Balabanら、米国特許第6,229,911号、少量または大量のマイクロアレイから集められ、索引を付けた表として保存された情報を管理するためのコンピューター実行法、および米国特許第6,185,561号、多様な疑問に対する答えを出すためにデータに追加の属性を付加しおよび再配列する、遺伝子発現レベルデータを集めるためのデータ発掘能力を有する、コンピューターに基づく方法、に議論されている。Cheeetら、米国特許第5,974,164号は、基準配列へハイブリダイズした、野生型および突然変異体配列間の、プローブ蛍光強度の相違に基づいた、核酸配列中の突然変異を同定するための、ソフトウェアに基づいた方法を開示している。
【0128】
治療的および薬剤スクリーニング標的のアッセイおよび同定
特定の態様において、本明細書に記載したような、特に、図9aおよびbに示された例に関する、マイクロアレイは特に有用であることを理解しなければならない。しかしながら、特定の他の態様において、溶液に基づいた、および固体支持体に基づいたアッセイ形式を含む、他のハイブリダイゼーションアッセイ形式を使用することができることもまた理解しなければならない。本発明の差別的に発現された遺伝子のためのオリゴヌクレオチドプローブ含有固体支持体は、フィルター、ポリビニルクロリド皿、シリコンまたはガラスチップなどであることができる。そのようなウェハースおよびハイブリダイゼーション法は広く入手可能である。直接的または間接的に、共有結合的にまたは非共有結合的にオリゴヌクレオチドを結合できる固体表面が使用できる。固体支持体の例には、高密度アレイまたはDNAチップが含まれる。これらは、アレイ上の前もって決められた位置に特定のオリゴヌクレオチドプローブを含んでいる。各々の前もって決められた位置は、一つまたはそれより多くのプローブの分子を含むことができるが、前もって決められた位置内の各々の分子は同一配列を有している。そのような前もって決められた位置はフィーチャー(feature)と名付けられた。例えば、一つの固体支持体上に、約2、10、100、1000から10,000;100,000または400,000のそのようなフィーチャーが存在することができる。固体支持体またはその中のプローブが結合されている領域はおよそ平方センチメートル程度であることができる。
【0129】
発現モニタリングのためのオリゴヌクレオチドプローブアレイは、当該技術分野で知られている任意の技術に従って、作製および使用できる。そのようなプローブアレイは、本明細書に記載した、二つまたはそれより多くの遺伝子と相補的である、もしくはハイブリダイズする少なくとも二つまたはそれより多くのオリゴヌクレオチドを含むことができる。そのようなアレイはまた、本明細書に記載した、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、100またはそれより多くの遺伝子と相補的である、もしくはハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも含むことができる。
【0130】
最小数の合成工程でオリゴヌクレオチドの高密度アレイを形成する方法が知られている。オリゴヌクレオチド類似物アレイは、限定されるわけではないが、光指向性化学カップリング、機械的指向性カップリングを含む多様な方法により固体支持体上に合成できる。簡単には、ガラス表面でのオリゴヌクレオチドアレイの光指向性コンビナトリアル合成は、自動化ホスホロアミデート化学およびチップマスキング技術を使用して行われる。一つの具体的実行において、ガラス表面を官能基、例えば、感光性保護基によりブロックされたヒドロキシルまたはアミノ基を含んでいるシラン試薬で誘導体化する。光リソグラフィーマスクを通した光分解を、官能基を選択的に暴露するために使用すると、それらは到来する5’光保護ヌクレオシドホスホロアミデートと反応する調製ができている。ホスホロアミデートは、照射された部位(このように、感光性保護基の除去により暴露された)でのみ反応する。従って、ホスホロアミデートは、前工程で選択的に暴露された領域にのみ付加する。これらの工程を、固体表面上に配列の所望のアレイが合成されるまで繰り返す。アレイ上の異なった位置での、異なったオリゴヌクレオチド類似体のコンビナトリアル合成は、合成間の照射のパターンおよびカップリング試薬の添加の順序により決定される。
【0131】
前記のものに加え、単一基質上にオリゴヌクレオチドのアレイを発生させるため、追加の方法が使用できる。高密度核酸アレイはまた、あらかじめ決定された位置に、あらかじめ作製されたまたは天然核酸を沈着させることによっても製作できる。合成または天然核酸は、光指向性標的化およびオリゴヌクレオチド指向性標的化により、基質の特定の位置に沈着できる。別の態様は、特定のスポットに核酸を沈着するため、領域から領域へ移動する分配器を使用する。
【0132】
IGEIの決定
既定の薬剤への感受性が知られていない癌性細胞の試料は、患者から得られる。(IGEI)マーカーセットとして、本明細書に特許請求されたヌクレオチド配列の一つに対応する遺伝子について、試料中の発現レベルを測定する。試料中のマーカーの発現レベルを、既知の薬剤感受性を有する細胞において以前に測定されたマーカーの発現レベルと比較する。もし、試料中のマーカーの発現レベルが、既定の薬剤に対して低い感受性を有する細胞中のマーカーの発現レベルとほとんど同様であれば、その薬剤に対する低い感受性がその試料に対して予測される。もし、試料中のマーカーの発現レベルが、既定の薬剤に対して中程度の感受性を有する細胞中のマーカーの発現レベルとほとんど同様であれば、その薬剤に対する中程度の感受性がその試料に対して予測される。もし、試料中のマーカーの発現レベルが、既定の薬剤に対して高い感受性を有する細胞中のマーカーの発現レベルとほとんど同様であれば、その薬剤に対する高い感受性がその試料に対して予測される。
【0133】
それ故、癌細胞の試料中の、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験することにより、適した処置剤として使用するためには、どの治療剤(類)または剤の組合わせかを決定することが可能である。
【0134】
治療的処置の過程の間、患者からとられた癌細胞の試料における、一つまたはそれより多くの同定されたマーカーの発現を試験することにより、治療剤が引き続いて働いているかどうか、または、癌が処置プロトコールに対して抵抗性(不応)になったかどうかを決定することが可能である。これらの決定は、患者ごとの基準で、または剤ごと(または剤の混み合わせ)に行うことができる。それ故、特定の治療処置が特定の患者または患者の群/クラスのためになっているらしいかどうか、または特定の処置をつづけるかどうか、を決定することができる。
【0135】
同定された(IGEI)マーカーセットはさらに、化学療法用化合物のごとき、抗癌剤の開発のための、以前には未知のまたは認識されていない標的を提供し、そして癌処置のための単一剤処置ならびに剤の組合わせの開発における標的として使用できる。
【実施例】
【0136】
実施例
当業者は、本発明の剤の構造的性質については制限がないことを容易に認識できる。そのようであるので、さらなる説明なしに、前述の説明および以下の例示的実施例を使用して、当業者は、本発明の化合物を作製および利用でき、および特許請求された方法を実施できると信じられる。ゆえに、以下の作業実施例は、本発明の好ましい態様を特別に指摘しており、開示の残りをいかなる点でも制限していると解釈すべきではない。
【0137】
一つの態様において、シスプラチンに対する感受性の既に決定された範囲を有する、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株のセットにおける多様な多薬剤耐性遺伝子を判定するため、標準化RT(StaRT)−PCRが用いられた。データは106β−アクチン(ACTB)分子と相対的な標的遺伝子分子の形で得られた。異なった細胞株間のACTB相違の影響を打ち消すため、個々の遺伝子発現値を、別の遺伝子に対する一つの遺伝子の比の中に組み込んだ。各々の2−遺伝子比を、多重回帰を使用して、8つのNSCLC細胞株の各々の化学耐性に対して、1変数として比較した。バリデーション(validation)後、化学耐性と最も相関した1変数モデル(p<0.001)を決定した。特定の態様において、変数モデルは:ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2、XPA/XPCおよびXRCC1/XPC、を含んでいた。すべての1変数モデルを、2変数モデルに達するように序列的に試験した。最も高い相関を有する2変数モデルは(ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2)であり、0.96のR2値であった(p<0.001)。特定の態様において、これらのマーカーは、シスプラチン耐性腫瘍の将来を見越して同定するための、ファインニードル吸引バイオプシのような、組織の少量試料の判定に適している。
【0138】
StaRT−PCRは、20のNSCLC細胞株間で、最も低い(H460)および最も高い(H1435)化学耐性であると以前に報告されている二つの細胞株における、DNA修復、多薬剤耐性、細胞周期およびアポトーシスに関与している35の遺伝子の発現を測定するために使用する、Weaver,D.A.,Zahorchak,R.,Varnavas,L.,Cawford,E.L.,Warner,K.A.,Willey,J.C.,カルボプラチンに対して変動した感受性を有する肺癌細胞株における、マイクロアレイおよび標準化RT−PCR分析による発現パターンの比較,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.2001(抄録)42,606。Tsai,C.M.,Chang,K.T.,Wu,L.H.,Chen,J.Y.,Gazdar,A.F.,Mitsudoni,T.,Chen,M.H.,Perng,R.P.,非小細胞肺癌細胞株における、固有の化学耐性とHER−2/neu遺伝子発現、p53突然変異および細胞増殖特性間の相関、Cancer Res(1996),56,206−109。DNA修復(ERCC2,XRCC1)および薬剤流入/流出(ABCC5)に関与する遺伝子が、化学耐性と関連している。これら二つのカテゴリーの各々からの遺伝子数を、総合されたDNA損傷認識および修復に関連する(DDIT3)、特にNERに関連する(LIG1、ERCC3、GTF2H2、XPA、XPC)、または薬剤輸送に関連する(ABCC1、ABCC4、ABCC10)、追加の代表的遺伝子を含むように拡大した。これら12の遺伝子の発現を、変動したシスプラチン耐性を有する8つのNSCLC細胞株で測定した。Tsai,C.M.,Chang,K.T.,Wu,L.H.,Chen,J.Y.,Gazdar,A.F.,Mitsudoni,T.,Chen,M.H.,Perng,R.P.,非小細胞肺癌細胞株における、固有の化学耐性とHER−2/neu遺伝子発現、p53突然変異および細胞増殖特性間の相関、Cancer Res(1996),56,206−109。StaRT−PCRデータは、基準遺伝子としてACTBを使用して得られた。それ故、データはmRNA分子/106 ACTB分子の形で報告されている。これらのデータは、Willey 米国特許第5,639,606、5,643,765および5,876,978号、Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−24、に記載されている定量的逆転写酵素−PCR法を使用し、表現型に直接関係する一つまたはそれより多くの遺伝子を分子に置き、および表現型に否定的に関係する一つまたはそれより多くの遺伝子を分母に置くことにより相互的遺伝子発現指標(IGEI)内へ結合させた。IGEIは、特定の癌表現型に対して、個々の遺伝子の発現レベルよりもより良好に表現型を予知するものである。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−24。Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者においては低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618。Rots,J.G.,Willey,J.C.,Jansen,G.,Van Zantwijk,C.H.,Noordhuis,P.,DeMuth,J.P.,Kuiper,E.,Verrman,A.J.,Pieters,R.,Peters,G.J.,標準化競合鋳型に基づいたRT−PCR法により決定した、小児期白血病におけるメトトレキセート耐性−関連タンパク質のmRNA発現レベル,Leukemia(2000),14,2166−2175。IGEIのさらなる利点は、一つの細胞株と別の細胞株間での、基準遺伝子値(この場合ACTB)において以前に観察されている変動をIGEIが調節することである。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−24。分子の1遺伝子が、分母の別の1遺伝子で割られた場合、基準値は数学的に相殺される。IGEI値を、変動した耐性を有する8つのNSCLC細胞株間で、シスプラチン化学耐性を比較した。結果は次ぎに、追加の6つのNSCLC細胞株で確認した。
【0139】
実施例1
材料および方法
細胞培養
非小細胞肺癌(NSCL)細胞株H460、H1155、H23、H838、H1334、H1437、H1355、H1435、H358、H322、H441、H522、H226およびH647はアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)(ロックビル,MD)から入手した。全ての細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および1mMグルタミンを含有するRPMI−1640培地(Biofluids,Inc.,ロックビル,MD)中、5%CO2存在下、37℃でインキュベートした。増殖性の、サブコンフルエント培養物を、RNA抽出および続いての分析に使用した。
【0140】
試薬
Rapidcyclerのための10X PCR緩衝液(500mMトリス,pH8.3;2.5mg/μl BSA;30mM MgCl2)は、Idaho Technology,Inc.(アイダホフォールズ,ID)から入手した。Taqポリメラーゼ(5U/μl)、オリゴdTプライマー、RNasin(25U/μl)およびdNTPはPromega(マディソン,WI)から入手した。M−MLV逆転写酵素(200U/μl)および5X第一鎖緩衝液(250mMトリス−HCl,pH8.3;375mM KCl; 15mM MgCl2;50mM DTT)はGibco BRL(ゲイサーブルグ,MD)から入手した。色素、マトリックスおよび基準物質を含んでいるDNA 7500アッセイキットはAgilent Technologies,Inc.(パロアルト,CA)から入手した。全ての他の化学薬品および試薬は、分子生物学用であった。
【0141】
RNA抽出および逆転写
全RNAは、TriReagentプロトコール(Molecular Research Center,Inc.,シンシナチ,OH)により、細胞培養物から単離した。Chomczynski,P.,細胞および組織試料からのRNA、DNAおよびタンパク質の一工程同時単離のための試薬,Biotechniques(1993),15,536−537。抽出に続いて、各々の細胞株について約1μgの全RNAを、Willey,J.C.,Coy,E.,Brolly,C.,Utell,M.J.,Frampton,M.W.,Hammersley,J.,Thilly,W.G.,Olson,D.,Cairns,K.,ヒト上皮および肺胞マクロファージ細胞における生体異物代謝酵素遺伝子発現,Am.J.Respir.Cell Biol.(1996),14,262−271、において以前に記載されているように、M−MLV逆転写酵素およびオリゴdTプライマーを使用して逆転写した。
【0142】
定量的標準化RT(StaRT)−PCR
遺伝子発現を、米国特許第5,639,606;5,643,765;および5,876,978号、およびWilley,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、Willey,J.C.,Coy,E.,Brolly,C.,Utell,M.J.,Frampton,M.W.,Hammersley,J.,Thilly,W.G.,Olson,D.,Cairns,K.,ヒト上皮および肺胞マクロファージ細胞における生体異物代謝酵素遺伝子発現,Am.J.Respir.Cell Biol.(1996),14,262−271、Apostolakos,M.J.,Schuermann,W.H.,Frampton,M.W.,Utell,M.J.,Willey,J.C.,多発性競合的ポリメラーゼ連鎖反応による遺伝子発現の測定,Anal.Biochem.(1993),213,277−284.Willey,J.C.,Coy,E.L.,Frampton,M.W.,Torres,A.,Apostolakos,M.J.,Hoehn,G.,Schuermann,W.H.,Thilly,W.G.,Olson,D.,Hammersley,J.,Crepsi,C.L.Utell,M.J.,喫煙者および非喫煙者の肺細胞における、チトクロームp4a50 1A1,1B1,および2B7、ミクロソームエポキシド加水分解酵素およびNADPH酸化還元酵素発現の、定量的RT−PCR測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1997)17,114−124に記載されている定量的StaRT−PCRプロトコールを使用して決定した。簡単には、緩衝液、MgCl2、dNTP、試料cDNA、Taqポリメラーゼおよび競合的鋳型(CT)混合物を含んでいるマスター混合物を調製し、その9μlずつを、1μlの遺伝子特異的プライマーを含んでいる0.6mlの微量遠心管内へ分配した。CT混合物は、お互いに関して決められた濃度での遺伝子特異的内部標準競合的鋳型(CT)を、およびまた、すべての特異的遺伝子データの規格化を可能にする、ハウスキーピング遺伝子(ACTB)のためのCTも含んでいる。PCTのために使用されたすべてのプライマー、およびCTの構築に使用されたプライマーは、表1に掲げられている。PCR反応は、Rapidcycler(Idaho Technology,Inc.)中、94℃での変性を5秒、58℃でのアニーリングを10秒、および72℃での伸長を15秒、のPCRを35サイクル行った。PCR生成物は電気泳動で分離し、DNA 7500アッセイキットを用い、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies,Inc.)で定量した。
【0143】
NSCLC細胞株の化学耐性
いくつかの化学療法剤に対して使用されたNSCLC細胞株の化学耐性IC50(μM)値は、Tsai,C.M.,Chang,K.T.,Wu,L.H.,Chen,J.Y.,Gazdar,A.F.,Mitsudoni,T.,Chen,M.H.,Perng,R.P.,非小細胞肺癌細胞株における、固有の化学耐性とHER−2/neu遺伝子発現、p53突然変異および細胞増殖特性間の相関、Cancer Res(1996),56,206−109、に記載されているように以前に決定されており、表2でシスプラチンについて要約されている。
【0144】
統計分析
最初の8NSCLC細胞株の各々からの、別の遺伝子に対した一つの遺伝子の比を、シスプラチン耐性を最もよく予測する遺伝子の組合わせを決定するため、SAS(バージョン6,第4版、第2巻)統計パッケージ(SAS Institute Inc.,キャリー,NC)による多重回帰分析にかけた。各々の比を別々に化学耐性と比較し、次ぎに最も高いR2値に基づいた2変数モデルを達成するため、耐性に有意な相関(R2≧0.88、p<0.001)を有する比を序列的に試験した。追加の6細胞株の判定後、14すべてのNSCLC細胞株の結果を合併し、説明したような分析にかけた。
【0145】
結果:再現性
三つまたはそれより多くの反復値が得られた、遺伝子発現測定間では、平均変動係数は38.5%であった(生データはウェブサイトで入手可能)。これは、StaRT−PCR法を使用した他の遺伝子発現研究で観察された再現性と同等である。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者では低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618。
【0146】
個々の遺伝子発現測定および化学耐性
8細胞株についての、個々の遺伝子発現平均値対シスプラチン化学耐性の直接比較の結果が表3に示されている。すべてのStaRT−PCRデータ値は、分子/106ACTB分子の形で示されている。判定された遺伝子の8/12に対して、有意な(p<0.05)相関が存在した。
【0147】
相互作用的遺伝子発現比の確立
最初の8NSCLC細胞株(グループ1)から得られたデータについて、一つの遺伝子の発現値を別の遺伝子の発現値で割る、全ての可能な組合わせを含んでなるIGEIを確立した。各々の発現値は、分子/106ACTB分子として計算した。それ故、これらのIGEIにおいて、基準遺伝子(ACTB)の影響は打ち消されている。例えば、
ERCC2分子/106ACTB分子÷XPC分子/106ACTB分子=
ERCC2分子/XPC分子。
【0148】
各々の2遺伝子対対応するシスプラチンIC50化学耐性値の二変量分析を8細胞株間で実施した(表4)。判定される遺伝子が12で、各々の遺伝子について11のセットがあるため、132の比を生じる。各々の遺伝子に対する11の比のセットを、最初にリストに掲げられた比のセットが、化学耐性との平均相関が最も高く、および最後にリストに掲げられた比セットが、化学耐性との平均相関が最も低くなるように、降順に組織的構成した。それ故、ERCC2と他の11遺伝子の各々との間の比が、評価された12の遺伝子間で最も明確であったので、分子にERCC2を有する比セットが最初にリストに掲げられた。対照的に、XPCと他の11遺伝子の各々との間の比は、化学耐性とは最も否定的な相関を有していたので、分子にXPCを有する比セットは最後にリストに掲げられた。
【0149】
化学耐性を有する遺伝子発現のモデル化
比、ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、ERCC2/XRCC1、ERCC2/GTF2H2、XPA/XPC、XRCC1/XPCおよびABCC5/XPCは、単純線形回帰により、最初の8NSCLC細胞株中で同定された、最良の1変数モデル(即ち、それらはR2>0.87)であった(表5)。モデルへ第二の変数を加えた影響を次ぎに判定した。最良の2変数モデルは、0.96のをR2を有する(ABCC5/GTF2H2、ERCC2/GTF2H2)であった。
【0150】
モデルのバリデーション
これらの1および2変数モデルを、追加の6NSCLC細胞株で試験した。14すべてのNSCLC細胞株について合併したデータの統計分析から、三つの一変数モデル(ERCC2/XPC、ABCC5/GTF2H2、XRCC1/XPC)、ならびに二変数モデルについてはp値が改良され、またはそのままであった。ERCC2/GTF2H2およびXPA/XPCに対するp値の下落は小さく、そして有意ではなかった。対照的に、ERCC2/XRCC1は化学耐性に関係してもはや有意ではなく、およびABCC5/XPCに対してはp値が著しく下落した。
【0151】
結果の分析
個々の遺伝子に対する値をIGEI内に取り込み、そしてIGEIを化学耐性と相関付ける、StaRT−PCRで遺伝子発現を測定することにより得られた結果は、培養NSCLC細胞におけるシスプラチン化学耐性を予言するものとして有用な、いくつかのモデルを提供する。これらのモデルは、ABCC5、ERCC2、XPAおよびXRCC1を含んでいる、シスプラチン化学耐性に関係する遺伝子を含んでなる。MRP5としても知られているABCC5の増加した発現は、インビボでの肺癌における白金薬剤への暴露、および/または生体異物への慢性薬剤応答に関係している。それ故、増加したABCC5レベルを伴う、白金薬剤に対して増加した耐性は、グルタチオン S−白金複合体流入によるものであろう。
【0152】
化学耐性に直接関係する残りの遺伝子、XPAおよびERCC2は、シスプラチンのごとき化学療法剤により誘導されるDNA損傷に応答する主修復応答であると一般的に認識されている、ヌクレオチド除去修復(NER)機構の成分である。NERにおいて、XPAは主DNA破壊認識タンパク質であり(Asahina,H.,Kuraoka,I.,Shirakawa,M.,Morita,E.H.,Miura,N.,Miyamoto,I.,Ohtsuka,E.,Okada,Y.,Tanaka,K.,XPAタンパク質は多様な種類のDNA損傷を認識する能力を有する亜鉛金属タンパク質である,Mutat.Res.DNA Repair(1994),315,229−237)、および破壊部位へいくつかの他のタンパク質を動員することにより、NER複合体の組み立ての鍵となる要素である、Li,L.,Peterson,C.A.,Lu,X.,Legerski,R.J.,ERCC1の会合を妨げるXPA中の突然変異は、ヌクレオチド除去修復における欠陥を生じさせる,Mol Cell Biol(1995),15,1993−1998。促進されたNER遺伝子発現は、シスプラチンおよび他のDNA損傷化学療法剤に対する耐性の主な原因であることが示されており(Zamble,D.B.,Lippard,S.J.,癌化学療法におけるシスプラチンおよびDNA修復,Trends Biochem.Sci.(1995),20,435−439、Reed,E.,抗癌薬剤:白金類似体、癌:腫瘍学の原理および実際、中、(1993),390−399,編集者V.T.Devita Jr.,S.HellmanおよびS.A.Rosenberg,リッピンコット,フィラデルフィア)、およびNERのXPA遺伝子成分の過剰発現は、ヒト卵巣癌におけるシスプラチンへの耐性に関係していた。Dabholkar,M.,Vionnet,J.,Bostick−Bruton,F.,Yu,J.J.,Reed,E.,白金に基づいた化学療法への応答と相関した、卵巣癌中のXPACおよびERCC1のメッセンジャーRNAレベル,J.Clin.Invest.(1994),94,703−708。ERCC2は特に、7つのポリペプチドから成る転写因子IIH(TFIIH)の成分であり(Mu,D.,Park,C.H.,Matsunaga,T.,Hsu,D.S.,Reardon,J.T.,Sancar,A.,高度に限定されたシステムにおけるヒトDNA修復除去ヌクレアーゼの再構築,J.Biol.Chem.(1995),270,2415−2418、Mu,D.,Hus,D.S.,Sancar,A.,ヒトDNA修復除去ヌクレアーゼの反応機構,J.Biol.Chem.(1996),271,8285−8294)、および全体として修復因子である。Schaeffer,L.,Moncollin,V.,Roy,R.,Staub,A.,Mezzina,M.,Sarasin,A.,Weeda,G.,Hoeijmakers,J.H.,Egly,J.M.,ERCC2/DNA修復タンパク質はクラスII BTF2/TFIIH転写因子と関係している,EMBO J (1994),13,2388−2392、Drapkin,R.,Reardon,J.T.,Ansari,A.,Huang,J.C.,Zawel,L.,Ahn,K.,Sancar,A.,Reinberg,D.,DNA除去修復およびRNAポリメラーゼIIによる転写における、TFIIHの二重の役割,Nature (1994),368,769−772、Wang,Z.,Svejstrup,J.Q.,Feaver,W.J.,Wu,X.,Kornberg,R.D.,Friedberg,E.C.,転写因子b(TFIIH)は、酵母におけるヌクレオチド除去修復の間に必要とされる,Nature(1994),368,74−76。NERにおいて、ERCC2(またはXPD)はTFIIHヘリカーゼ活性に必須であり(Prakash,S.,Sung,P.,Prakash,L.,サッカロミセス セレビジエのDNA修復遺伝子およびタンパク質,Annu.Rev.Genet.(1993),27,33−70)、および、ERCC2はGTF2H2(またはp44)と特異的に相互作用し、そしてこの相互作用は5’から3’のヘリカーゼ活性の刺激を生じることが、より最近に示されている。Coin,F.,Marinoni,J.C.,Rodoflo,C.,Fribourg,S.,Pedrinin,A.M.,Egly,J.M.,XPDヘリカーゼ遺伝子の突然変異は、XPDおよびTFIIHのp44サブユニット間の相互作用を妨げる、XPおよびTTD表現型を生じる,Nature Genet,20,184−188。
【0153】
マイクロアレイ分析では、数千の遺伝子が同時に判定されるので、測定された全ての遺伝子の指標は、一つのマイクロアレイと別のマイクロアレイとに添加された試料量に対する安定な基準を提供する。典型的には、定量的RT−PCR研究においては、ACTB、GAPDH、シクロフィリンまたはリボソームRNAのごとき、単一の制御されない遺伝子が添加基準として使用される。しかしながら、これらの遺伝子の全てが、多数の試料間で変動することが報告されている。多数の試料間の基準遺伝子発現における試料内変動を判定する一つの方法は、二つの基準遺伝子間の変動を比較することである。β−アクチンおよびGAPDHは、気管支上皮細胞(BEC)間のお互いに関して50倍、およびBECおよび他の細胞型間ではさらに大きく変動する。Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17。Rots,J.G.,Willey,J.C.,Jansen,G.,Van Zantwijk,C.H.,Noordhuis,P.,DeMuth,J.P.,Kuiper,E.,Verrman,A.J.,Pieters,R.,Peters,G.J.,標準化競合鋳型に基づいたRT−PCR法により決定した、小児期白血病におけるメトトレキセート耐性−関連タンパク質のmRNA発現レベル,Leukemia(2000),14,2166−2175。限定された数の遺伝子が測定される状況においては(< 200)、データの規格化のための全遺伝子の指標は、十分に安定ではない。試料間の基準遺伝子発現における未知の影響を取り除くため、別の遺伝子発現値に対するStaRT−PCRにより得られた一つの遺伝子発現値の平衡比を分析した。これらの平衡比は、比を含んでなる、個々の遺伝子の実際の細胞濃度変化を示してはいないが、しかし、別のものに対する遺伝子の発現に関係しており、化学耐性のごとき表現型決定因子を比較するためには使用される。この研究において、IGEI分析(表5)で、化学耐性に関する個々の遺伝子発現値の分析により得られた結果(表3)のほとんどが確認された。特に、XPCは化学耐性に関して判定された12の遺伝子で最も安定であり、同様に8の遺伝子が、分母としてβ−アクチンを使用する場合(表3)のように、分母としてXPCを使用し、化学耐性に相関していた。それ故、cDNA試料のこのグループ間のβ−アクチンにおいての変動は有意ではなかった。特定の態様において、いつでも可能な、基準遺伝子発現における変動の潜在的影響に関する疑問を取り除くため、IGEIを使用することは有用である。
【0154】
表4に示されたように、測定された遺伝子すべてのための発現値から誘導された平衡比(IGEI)の経験的誘導セットを評価することにより、遺伝子のセットと表現型間の関連の強さに関する序列を確立することが可能である。さらに、他の各々に関する各々の遺伝子の二変量相関は、分析の力を著しく増強し、そしてさらなるバリデーションを必要とする潜在的アウトライアー(outlier)を同定するのを助ける。本明細書の実施例において、最も明白なアウトライアーは、ERCC2/XRCC1と化学耐性間の高い相関である。これは、(a)分子にERCC2あるいはXRCC1を有する比のセットは、各々の最もおよび四番目に高い範囲のr値を有していた、さらに、(b)高いr値を有していた、分子にERCC2を有する他の比のすべてが、分母に表4の下部からの遺伝子(即ち、XPC、GTF2H2、ABCC10、ERCC3およびLIG1すべてが表の最小の中に存在した)を有していた、のでアウトライアーである。ERCC2/XRCC1がアウトライアーであることと一致して、グループ2細胞株が評価された場合、ERCC2/XRCC1はもはや化学耐性とは有意に関連していない(表5)。これらの発見は、標準、数的形式で遺伝子発現を測定する価値の、さらなる証拠を提供している。それ故、ERCC2、ABCC5、XPAおよびXRCC1と化学耐性の関係は、(a)多くの異なった機能的クラスを示している遺伝子の、第一回目のスクリーニング、(b) 第一回目で正に関係している遺伝子により代表された遺伝子の拡大されたグループを評価し、(c)正に連結されたデータを、相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)内に合併し、(d)アウトライアーを同定するためにIGEI分析を使用し、(e)モデルを組み立て、および(f)データをバリデーションする、ことを含んでいる、連続的プロセスを通して確立された。
【0155】
本発明の方法は、シスプラチン化学耐性に関与する一つより多くの遺伝子の相互作用、および化学耐性を生じさせることができる多数の経路の相互作用を評価する必要性を強調している。
【0156】
実施例II
多くの遺伝子の同定および具体的表現型とのそれらの関係は、おそらく分子癌分類へと導くであろう。(Venter,J.C.ヒトゲノムの配列,Science,291:1304−1351(2001)、Lander,E.S.,ヒトゲノムの最初の配列決定および分析,Nature,409:860−921(2001))。この新規分類システムは重要な臨床的意味を有しており、患者看護を非常に改良することができる。特に、関係する表現型を有する特定の遺伝子型の認識は、個々の予後マーカー、化学感受性体質を明らかにし、そして患者結果を予測することができる。肺癌の分子分類は、細胞学的診断を非常に促進させることができる。肺癌は未だに、組織病理学的基準を使用して主として診断されている。肺腫瘍の不均一性は、悪性および正常、および転移性肺腫瘍および原発性腫瘍を区別することの困難さ(Shirakusa,T.,Tsutsui,M.,Motomaga,R.Ando,K.およびKusano T.,A.Surg.,54:655−658,1966;Fling,A.およびLloyd,R.V.,Arch.Pathol.Lab.Med.166:39−42,1992)を含む、しばしば相反する診断を導く(Sorenson,J.B.,Hirsch,F.R.,Gazdar,A.,およびOlsen,J.E.,Cancer,71:2971−2976,1993)。
【0157】
遺伝子発現パターンは、肺および乳癌患者において、臨床結果を明白にした。Garberらは,Proc.Natl.Acad.Sci.98:13874−13789(2001)、伝統的な形態学的分類と相関した肺腫瘍の遺伝子発現プロフィールを報告している。加えて、遺伝子発現パターンに基づいて、腺癌をさらに、患者生存率が有意に異なっている三つのサブタイプへ分割した。Bhattacharjeeらは,Proc.Natl.Acad.Sci.,98:13799990−13795(2001)、類似の結果を報告した。肺腺癌を遺伝子発現パターンに基づいて、四つのサブクラスへグループ分けし、および患者は統計的に有意な生存率の相違を有していた。彼らはまた、遺伝子発現プロフィールに基づいて、形態学的には原発性肺腫瘍と同定された、三つの転移性肺腫瘍も同定した。遺伝子発現プロフィールに基づいた乳癌腫瘍の分子分類、および患者の結果および細胞増殖速度との相関も、遺伝性乳癌、散発性乳癌およびヒト乳腺上皮細胞の場合に報告されている(Hendenfalkら,New Eng.J.of Med.344:539−548,2001;Sorlieら,Proc.Natl.Acad.Sci.98:10869−10874,2001;およびPerouら,ヒト乳腺上皮細胞および乳癌における特有の遺伝子発現パターン,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96巻,16号:9212−9217,1999)。
【0158】
ほとんどの肺癌は、主としてファインニードル吸引(FNA)バイオプシ組織、胸膜液試料および気管支上皮細胞のブラッシング(brushing)により診断される。これらの少量の再生できない組織試料は、遺伝子発現研究に使用するには挑戦的である。マイクロアレイ法は、多数の癌表現型に関与する可能性のある数千の遺伝子のスクリーニングには適しているが、しかし、必要とされる大量の初期RNA量、内部標準の欠如、費用および時間のため、FNA遺伝子発現分析には適していない。(Tyagi,S.およびKramer,F.R.,Nature Biotech.14:303−308,1996;DeRisi,J.L.,Science,278:6860−6866,1997)。標的遺伝子同定後、遺伝子発現分析を、定量的、標準化遺伝子発現法でさらに評価すべきである。
【0159】
StaRT−PCR(標準化逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応)は、少量の臨床試料で使用するには理想的な遺伝子発現法である。それは数百の遺伝子を同時に測定するのに有用であり、少量のRNAしか必要とせず、安価な装置を使用し、感度が高く、標準化されており、および高度に再現できる(Willeyら、,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.19:6−17,1998、Crawfordら,Crawford,E.L.,Godfridus,J.Peters,Noordhuis,P.,Rots,M.G.,Vondracek,M.,Grafstrom,R.C.,Lieuallen,K.,Lennon,G.,Zahorchak,R.J.,Georgeson,M.J.,Wali,A.,Lechner,J.F.,Fan,P−S.,Kahaleh,B.,Khuder,S.A.,Warner,K.A.,Weaver,D.A.,およびWilley,J.C.(2001),標準化RT(StaRT)−PCRを使用する、盲検試験で得られた、多実験室間の再現性のある遺伝子発現測定,Molecular Diagnosis 6:217−225,2001)。悪性、化学耐性および転移性表現型は、多くの遺伝子の相互作用的影響から生じるようである。StaRT−PCR研究においてはデータが数的であるため、表現型は相互作用的遺伝子発現指標((IGEI)により表すことができる。Demuthらは、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.19:18−24,1998、c−myc x E2F−1/p21の遺伝子発現指標は、測定された個々の遺伝子よりも良好にヒト気管支上皮細胞における悪性度を予測することを報告している。同様の研究において、mGST x GSTM3 x GSHPX X GSHPXA x GSTP1の胃が指標は感度が高く(90%)、そして気管支原性癌の患者からの正常気管支原性上皮細胞の検出が76%特異的であった(Crawfordら、,Cancer Research,60:1609−1618,2000)。特に、この相互作用的遺伝子発現指標は、任意の単一遺伝子よりも良好に気管支原性癌発生の危険性を有する個体を同定した。
【0160】
StsRT−PCR反応ごとに標準化された競合鋳型を包含させることによって、直接的実験室内および実験室間データ比較が可能になる(Willeyら,1998)。Crawfordら(2001)は、StaRT−PCRを使用する高実験室間再現性を報告している(Crawford,E.L.,Godfridus,J.Peters,Noordhuis,P.,Rots,M.G.,Vondracek,M.,Grafstrom,R.C.,Lieuallen,K.,Lennon,G.,Zahorchak,R.J.,Georgeson,M.J.,Wali,A.,Lechner,J.F.,Fan,P−S.,Kahaleh,B.,Khuder,S.A.,Warner,K.A.,Weaver,D.A.,およびWilley,J.C.(2001),標準化RT(StaRT)−PCRを使用する、盲検試験で得られた、多実験室間の再現性のある遺伝子発現測定,Molecular Diagnosis 6:217−225,2001)標準化された数的データの産生は、共通の多施設データベースを確立するために必要とされる。多重標準化RT−PCRと称される、StaRT−PCRの最近の改変は、遺伝子発現研究に必要とされる出発材料の量をさらに減少させた(Crawford,E.L.,Warner,K.A.,Khuder,S.A.,Zahorchak,R.J.,およびWilley,J.C.,少量の臨床試料における多くの遺伝子の発現分析のための多重標準化RT−PCR,Biochemical and biophysical Research Communications,293:509−516,2002)。多重StaRT−PCRを使用し、少なくとも96の遺伝子が、1つの遺伝子の測定のために普通使用されるcDNA量と同じ量を使用して、同時に評価することができる(Crawfordら、上記文献)。この方法は、FNAにより得られた気管支原性癌試料中の、化学耐性に関連すると推定される18の遺伝子を、同時に測定するために使用した。
【0161】
この実施例は、高いc−myc x E2F−1/p21遺伝子発現指標が気管支原性癌の細胞病理学的診断を増強できるかどうかを決定する。c− myc、E2F−1およびp21の標準化遺伝子発現値および相互作用的遺伝子悪性度指標は、8つの原発性肺FNA試料について決定した。
【0162】
材料および方法
細胞培養
H1155ヒトNSCLC細胞株はATCC(マナサス,VA)から購入し、ゲンタマイシン(0.1%)(Biofluids,ロックビル,MD)および10%ウシ胎児血清(FBS)(Sigma,セントルイス,MO)を補給したRPMI中で培養した(37℃、5.0%CO2)。
【0163】
RNA保存、抽出および逆転写の評価
H1155ヒトNSCLC細胞株(1.0 E6)を、RNA抽出に先立って、Preservcyt(CYTYC/ボックスボロー,MA)、RNA−Later Ambion/オースチン,テキサス)またはTri−Reagent(Molecular Research Center,シンシナチ,OH)に置いた。RNAの質が評価された時間点および温度は、1、3、10および30日および室温、4℃および−20℃であった。RNAは、製造業者のプロトコールに従って、Tri Reagentを使用して抽出した。抽出後、RNAの質を、18sおよび28sリボソームピーク検出のためのAgilent 2100 Bioanalyzerで評価した。mRNA試料は、前に記載したようにM−MLV逆転写酵素(Gibco BRL,ゲイサーブルグ,MD)およびオリゴ(dT)プライマー(Promega,マディソン,WI)を使用して逆転写した。(DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−2、Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者では低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618)。
【0164】
ユニプレックス(uniplex)−StaRT−PCR
StaRT−PCRは、G.E.N.Eシステム1発現キット(Gene Express National Enterprises,Inc.)を用い、以前に公表されているプロトコールを使用して実施した(Willey,J.C.,Crawford,E.L.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Hoban,J.C.,Khuder,S.A.,DeMuth,J.P.,競合鋳型の標準化混合物を使用する定量的RT−PCRによる、多くの遺伝子の同時発現測定,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998),19,6−17、DeMuth,J.P.,Jackson,C.M.,Weaver,D.A.,Crawford,E.L.,Durzinsky,D.S.,Durham,S.J.,Zaher,A.,Philips,E.R.,Khuder,S.A.,Willey,J.C.,遺伝子発現指標c−myc x E2F1/p21はヒト気管支上皮細胞における悪性表現型を高度に予知するものである,Am J Respir Cell Mol Biol(1998),19,18−2、Crawford,E.L.,Khuder,S.A.,Durham,S.J.,Frampton,M.,Utell,M.,Thilly,W.G.,Weaver,D.A.,Ferencak,W.J.,Jennings,C.A.,Hammersley,J.R.,Olson,D.A.,Willey,J.C.,グルタチオントランスフェラーゼP1、グルタチオントランスフェラーゼM3、およびグルタチオンペルオキシダーゼの正常気管支上皮細胞発現は、気管支原性癌を患った患者では低い,Cancer Res(2000),60,1609−1618、Crawford,E.L.,Godfridus,J.P., Noordhuis,P.,Rots,M.G.,Vondracek,M.,Grafstrom,R.C.,Lieuallen,K.,Lennon,G.,Zahorchak,R.J.,Georgeson,M.J.,Wali,A.,Lechner,J.F.,Fan,P−S.,Kahaleh,B.,Khuder,S.A.,Warner,K.A.,Weaver,D.A.,Willey,J.C.,(2001),標準化RT(StaRT)−PCRを使用する、盲検試験で得られた、多実験室間の再現性のある遺伝子発現測定,投稿中、遺伝子発現システム1説明書、Gene Express National Enterprises,Inc.(2000),www.genexnat.com.)。
【0165】
システム1キットには、6つのCT混合物A−Fおよび適切なプライマーが含まれている。“標的遺伝子”CTの濃度は、“基準遺伝子”アクチンの濃度と比較し、各々の混合物中で変化する。マスター混合物は、RNaseを含まない水、MgCl2緩衝液、dNTP、cDNA、G.E.N.E.システム1キットからのCT混合物、およびTaqポリメラーゼを含んでいた。マスター混合物を、個々の遺伝子プライマーを含んでいるチューブに入れ、Rapidcycler(Idaho Technology,Inc.,アイダホフォールズ,ID)でサイクルを回した。各々のサイクルに対し、変性温度は94℃であり、アニーリング温度は58℃であり、および伸長温度は72℃であった。増幅後、各々のPCR生成物を、Agilent 2100 Bioanalyzer試験機でのキャピラリー電気泳動により分析した。遺伝子発現値を決定するため、各々の天然鋳型(NT)の曲線下の領域を、その関係する競合鋳型(CT)の領域と比較した。各々の発現値の単位は、106β−アクチン分子数当たりの分子数であった。
【0166】
気管支原性癌試料の取得
原発性肺癌のファインニードル吸引(FNA)物は、オハイオの医科大学で患者から得られた。各々の手順に先立って、NIHおよび施設のガイドラインに従って、通知され、署名された同意を患者から得た。ほとんどの細胞は、診断目的のため、スライド上に直接置いた。診断目的に必要とされない細胞は、Preservcyt(登録商号)溶液(CYTYC/ボックスボロー,MA)に集めた。最後の細胞病理学的診断後、Preservcyt中に残っている細胞を、我々の実験室でペレット化し、そしてRNAを抽出した。細胞数および生存度を、ガラススライド上の細胞の分析を通して細胞で評価した。
【0167】
結果
FNA検体におけるRNAの最適収集および保存を決定するための試みにおいて、H1155細胞(NSCLC)を3つの保存試薬RNA Later、PreservcytおよびTri Reagent、に置いた。RNAに対する時間および温度の影響を決定するため、H1155を4℃または−20℃で、1、3、10および30日保った。
【0168】
++として示されている高質RNA(18sおよび28sリボソームバンドの存在を示した)は、各々の試薬中で10日まで保存されたH1155 NSCLC細胞で検出された(表6)。30日保存後でも、PreservcytおよびTri Reagent中では、同じように良好に保存された。RNAは、RNA Later中、30日保存後に、4℃では部分的に分解しており(+−)、−20℃では保存されなかった。
【0169】
RNAがStaRT−PCRに適しているかどうかを決定するため、それを逆転写し、そしてβ−アクチン発現を評価した。高質または部分的に分解したRNAを示しているすべての試料でβ−アクチンを検出した(図6−表6)。予想されるように、RNA Later中、−20℃で30日保存した細胞においては、β−アクチンが検出されなかった。RNAの質は、PCR増幅される能力と高度に相関した。短期保存(1−10日)のための最適保存試薬はPreservcytおよびRNA Laterであり、10日を超える長期保存のためには、Preservcytが推薦される。Preservcytはまた、細胞学的分析にThin Prep Systemを利用する施設で使用するためにも便利である。
【0170】
最適収集および保存条件の決定後、肺FNA検体は、Preservcyt中に置き、4℃で保存した。H1155細胞と同様に、FNA検体10の内の9でRNAの質を評価した(図7−表7)。5つの試料が高質(++)または部分的に分解された(+−)RNAを有していた。予想されるように、5つすべての試料がPCR増幅可能であり、そしてβ−アクチンが検出された。逆転写に先立って、1つの試料は評価されてなく(NE)、および4つの試料は低質RNA(― ―)を示した。β−アクチンがNE検体で検出され、意外にも、2つのRNA(― ―)試料でβ−アクチンが検出された。高質RNAが存在する場合、それはPCR実験に高度に適している。低質RNAが存在する場合、PCR増幅可能ではないようであるが、それにもかかわらず使用することができる。
【0171】
どうして4試料が低質RNAを有するのかを決定する試みにおいて、各々の検体に対して、病理学者により独立して細胞学的特性が決定された。細胞性、生存度およびパーセント腫瘍/正常細胞を各々の試料で決定した(表7)。10試料の内の7つが、低細胞性(L)および低生存度(L)を有していた。これらの試料の内の3つが(++)または(+−)RNA状態を有しており、すべてがPCR増幅可能であった(+β−アクチン)。低細胞性および低生存度を有する残りの4試料で、2つはPCR増幅可能であったが、2つは不可能であった。10試料の内の3つは、中程度(I)または高(H)細胞性および生存度を有していた。3つすべてが良好な質のRNAを有しており、PCR増幅可能であった。細胞性が抽出されたRNA量に関係しているようであり、および生存度が、これらの細胞から得られたRNAの質に関係しているかもしれない。中程度から高細胞性の検体は、遺伝子発現研究に最適であり、低細胞性および低生存度の細胞も、7つの内の5つがPCR増幅可能であったので、それにもかかわらず適している。
【0172】
10試料の内の7つにおいて、腫瘍細胞の%は60から90%まで変動していた。2つの試料は20%腫瘍細胞を有し、1つは10%腫瘍細胞であった。同一取得時に決定されたFNA診断は、6試料でNSCLC、および4試料で非定型であった。悪性表現型の存在を確認するため、悪性度に関係する3遺伝子、c−myc、E2F−1およびp21を、10FNAの内の8つで評価し、悪性度指標、c−myc x E2F−1/p21を決定した(図8−表8)。予想されたように、+NSCLCの5つは、1.0E4から3.6E6(106β−アクチン分子当たりの分子として)の範囲にわたる非常に高い指標値を有していた。4つの非定型試料の内の3つもまた、7.2E3−5.0E4の範囲にわたる値を有する高い遺伝子発現指標を示した。追加の分析後、遺伝子発現データが得られた3つの非定型試料は、後に小細胞肺癌(SCLC)であると確認された。非定型試料中の腫瘍細胞のパーセンテージは20から80%の範囲であり、少数の異常細胞でも十分であり、遺伝子発現指標c−myc x E2F−1/p21により検出されたことを示している。
【0173】
肺小結節のFNA分析が通常の診断法であるが、本方法は、ヒト肺FNA試料に対して標準化、定量的遺伝子発現法を使用することの最初の例である。これら少量の再生できない細胞集団の遺伝子発現プロフィールは診断的および予後的意味を有しており、個別化された患者看護を導く。異なった遺伝子発現パターンはSCLCおよびNSCLC間を識別するために有用であり、悪性表現型の早期同定は、臨床処置を最適化するであろう。加えて、StaRT−PCRはまた、遺伝子発現パターン、および患者の予後を改善するための、例えば、化学耐性および転移可能性のような、それらに関係する臨床関連表現型を同定するためにも有用である。
【0174】
この実施例において、最初にNSCLCと診断され、そして後にNSCLCであると確認されたFNA試料の内の5つは、高い指標値を有していた。これら+NSCLC検体の発現の範囲は、1.0E4から3.6E6であった。この試料セットにおいて、4つは90.0%腫瘍細胞であり、そして試料#172は20%のみの腫瘍細胞しか有していなかったが、それでも最も高い指標値、6.5E5を有していた。細胞学的に非定型と診断され、後になってSCLCであると確認された、FNA試料の内の3つもまた、高い指標値を有していた。それらは、106分子β−アクチンmRNA当たり7.2E3−5.0E4mRNA分子の範囲であった。これらの試料における腫瘍細胞のパーセンテージは20−80%の範囲であった。
【0175】
他の態様
本明細書に記載した遺伝子およびIGEIマーカーセットは、NSCLCに対する新規薬剤標的の同定のための価値ある情報を提供し、そしてその情報は、他の組織における発癌の研究に使用するために拡大することができる。これらの配列は、本発明の方法において使用することができ、そして本発明のプローブおよびアレイを産生するために使用することができる。
【0176】
本発明は、本明細書に記載した具体的態様による範囲に制限されるわけではなく、本発明の個々の様相の一つの例示として意図されており、そして、本明細書に示されおよび説明されたものに加え、機能的に均等な方法および成分は本発明の範囲内であり、上記の説明および付随する図面から、それは当業者には明らかになるであろう。そのような改変は、付記された特許請求の範囲内であることが意図されている。
【0177】
雑誌論文、特許およびデータベースを含む、本明細書に引用したすべての参考文献は、特に本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1a】図1aおよび1bは、PCR増幅に使用したプライマーを示している表1である。表1はPCR増幅に使用したプライマーを示しており、遺伝子名称、GenBank寄託番号、配列番号、プライマー、cDNA中のbp位置、および生成物長を含んでいる(bp)。発現マーカー遺伝子の配列は公開データベース中に存在する。表1および5はこれらの遺伝子のためのGenBank寄託番号を提供している。GenBank中の遺伝子の配列は、GenBankまたは他の公開データベースに存在する均等物および関連配列のように、本明細書において特に援用される。“配列番号”と表示されたカラムは、表に掲げられた遺伝子を、本出願の配列表内に提供されているような配列情報と相関させている配列同定番号を指している。
【図1b】図1aおよび1bは、PCR増幅に使用したプライマーを示している表1である。表1はPCR増幅に使用したプライマーを示しており、遺伝子名称、GenBank寄託番号、配列番号、プライマー、cDNA中のbp位置、および生成物長を含んでいる(bp)。発現マーカー遺伝子の配列は公開データベース中に存在する。表1および5はこれらの遺伝子のためのGenBank寄託番号を提供している。GenBank中の遺伝子の配列は、GenBankまたは他の公開データベースに存在する均等物および関連配列のように、本明細書において特に援用される。“配列番号”と表示されたカラムは、表に掲げられた遺伝子を、本出願の配列表内に提供されているような配列情報と相関させている配列同定番号を指している。
【図2】図2は、NSCLC細胞株のIC50およびシスプラチンレベルを示している表2である。
【図3a】図3aおよび3bは、NSCLC細胞株における遺伝子発現(mRNA/106 ACTB mRNA)を示している表3である。
【図3b】図3aおよび3bは、NSCLC細胞株における遺伝子発現(mRNA/106 ACTB mRNA)を示している表3である。
【図4】図4は、NSCLC細胞株における遺伝子発現とシスプラチン化学耐性の相関を示している表4である。
【図5】図5は、NSCLC細胞株におけるシスプラチン化学耐性モデルの統計判定を示している表5である。
【図6】図6は、肺癌診断のためのファインニードル(Fine Needle)分析(FNA)に使用されたIEGIに関連する、実施例IIのH1155ヒトNSCLC細胞におけるRNAの質に対する収集法の影響を示している表6である。
【図7】図7は、実施例におけるFNA検体細胞の細胞学的情報および診断を示している表7である。
【図8】図8は、FNA試料中のc−myc、E2F1およびp21の遺伝子発現値および指標値を示している表8である。
【図9a】図9aは、マイクロアレイおよびマイクロビーズを用いる標準化RT−PCR生成物の分析を図により例示している:図9aは、遺伝子の同一性がマイクロアレイの位置により区別できる、マイクロアレイを示している。
【図9b】図9bは、マイクロアレイおよびマイクロビーズを用いる標準化RT−PCR生成物の分析を図により例示している:図9bは、ビーズの蛍光色により区別できる、マイクロビーズを示している。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剤が、癌細胞の増殖を減少させるために、および/または、癌細胞の死を起こさせるために、または癌細胞集団の増殖を阻害するために使用できるかどうかを決定するための方法であって、
a)癌細胞の試料を得る工程;
b)表1および5に同定されたマーカーの、癌細胞中での発現のレベルを決定および定量する工程;および
c)マーカーが特定のレベルで発現されている場合、剤が、該癌細胞の増殖を減少させるために、および/または、死を起こすために使用できることを同定する工程:
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項1の方法。
【請求項3】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項2の方法。
【請求項4】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項2の方法。
【請求項5】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項1の方法。
【請求項6】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用して、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項2の方法。
【請求項7】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正にまたは負に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大されたグループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
個々の遺伝子分析およびIGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または増加した死の間の関係を記述する、レベルの少なくとも一つのモデルを開発する、ことを含む、請求項6の方法。
【請求項8】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項5の方法。
【請求項9】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項1の方法。
【請求項11】
剤が化学療法用化合物である、請求項1の方法。
【請求項12】
剤が白金化合物である、請求項11の方法。
【請求項13】
剤がシスプラチンである、請求項12の方法。
【請求項14】
剤が癌の処置に有効であるかどうかを決定するための方法であって、
a)癌細胞の試料を得る工程;
b)試料を剤に暴露する工程;
c)剤へ暴露された試料中、および剤へ暴露されていない試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定および定量する工程;および
d)マーカーの発現が、該剤の存在下で変化した場合、剤が癌の処置に有効であることを同定する工程;
を含んでなる前記方法。
【請求項15】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の、試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項14の方法。
【請求項16】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項15の方法。
【請求項17】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項15の方法。
【請求項18】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項14の方法。
【請求項19】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用して、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項20】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大されたグループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
IGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または細胞死の間の関係を記述する、少なくとも一つのモデルを開発する、ことを含む、請求項19の方法。
【請求項21】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項19の方法。
【請求項22】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項14の方法。
【請求項24】
剤が化学療法用化合物である、請求項14の方法。
【請求項25】
剤が白金化合物である、請求項24の方法。
【請求項26】
剤がシスプラチンである、請求項25の方法。
【請求項27】
癌患者において、剤による処置を続けるべきかどうかを決定するための方法であって、
a)剤による処置の過程間に、患者から癌細胞を含んでなる二つまたはそれより多くの試料を得る工程;
b)二つまたはそれより多くの試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定および定量する工程;および
c)処置過程の間に、マーカーの発現レベルが著しくは変化しない場合に処置を続ける、工程
を含んでなる前記方法。
【請求項28】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の、試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項27の方法。
【請求項29】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項28の方法。
【請求項30】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項28の方法。
【請求項31】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項27の方法。
【請求項32】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用して、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項28の方法。
【請求項33】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正にまたは負に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大グループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
IGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または細胞死の間の関係を記述する、少なくとも一つのモデルを開発する、
ことを含む、請求項32の方法。
【請求項34】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項31の方法。
【請求項35】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項34の方法。
【請求項36】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項27の方法。
【請求項37】
剤が化学療法用化合物である、請求項29の方法。
【請求項38】
剤が白金化合物である、請求項37の方法。
【請求項39】
剤がシスプラチンである、請求項38の方法。
【請求項40】
新規癌処置を同定するための方法であって、
a)癌細胞の試料を得る工程;
b)表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定および定量する工程;
c)試料を癌処置に暴露する工程;
d)癌処置に暴露された試料中のマーカーの発現のレベルを決定する工程;および
e)特定のレベルでマーカーが発現されている場合、癌処置が癌を処置することにおいて有効であることを同定する工程
を含んでなる前記方法。
【請求項41】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の、試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項40の方法。
【請求項42】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項41の方法。
【請求項43】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項41の方法。
【請求項44】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項40の方法。
【請求項45】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用する、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項40の方法。
【請求項46】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正にまたは負に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大されたグループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
IGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または細胞死の間の関係を記述する、少なくとも一つのモデルを開発する、
ことを含む、請求項45の方法。
【請求項47】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項44の方法。
【請求項48】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項47の方法。
【請求項49】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項40の方法。
【請求項50】
剤が化学療法用化合物である、請求項40の方法。
【請求項51】
剤が白金化合物である、請求項50の方法。
【請求項52】
剤がシスプラチンである、請求項51の方法。
【請求項53】
患者における非小細胞肺癌を診断する方法であって、
(a)c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量する工程;ここにおいて、c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は非小細胞肺癌の指標である、を含んでなる、前記方法。
【請求項54】
患者における非小細胞肺癌の進行を検出する方法であって、
(a)二つまたはそれより多くのc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量する工程;ここにおいて、c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は非小細胞肺癌進行の指標である、を含んでなる、前記方法。
【請求項55】
非小細胞肺癌の患者の処置をモニタリングする方法であって、
(a)患者に医薬組成物を投与し;
(b)患者からの細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し;および
(c)患者の遺伝子発現プロフィールと、正常肺細胞および非小細胞肺癌からなる群より選択される細胞集団からの遺伝子発現を比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項56】
非小細胞肺癌の患者を処置する方法であって、
(a)患者に医薬組成物を投与し、ここにおいて、組成物は表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の発現を改変する;
(b)処置前に得られた腫瘍細胞を含んでなる細胞または組織試料および処置後に得られた別の試料から、StaRT−PCRを使用して、標準化遺伝子発現値を含んでなるIGEIを調製し;および
(c)処置に先立って得られた試料と処置後に得られた試料とを比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項57】
非小細胞肺癌の発生および進行を調節可能な剤のためのスクリーニング法であって、
(a)非小細胞癌細胞を含んでなる細胞集団の、StaRT−PCRを使用して、標準化遺伝子発現値を含んでなる第一のIGEIを調製し、ここにおいて、第一のIGEIは、表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを決定する;
(b)細胞集団を剤に暴露し;
(c)剤に暴露された細胞集団の、StaRT−PCRを使用して、標準化遺伝子発現値を含んでなる第二のIGEIを調製し;および
(d)第一および第二のIGEIを比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項58】
標準化定量的RT−PCRに従ったPCR生成物を、標準化された様式で測定するための、固相ハイブリダイゼーション鋳型であって:
a)少なくとも一つの固相ハイブリダイゼーション鋳型を調製し、ここにおいて、各々の遺伝子のため、競合的鋳型(CT)および天然の鋳型(NT)の両方に特異的に結合するであろう任意の長さのオリゴヌクレオチドをフィルターにスポットし;
b)フォワードプライマー(NTおよびCTの両方に共通)およびリバースCTプライマーの3’20bp間の領域が評価されるように、適したオリゴヌクレオチドを同定し;
c)前もって選定された位置で、固体支持体へオリゴヌクレオチドを結合させ;
d)CTおよびNT PCR生成物を増幅し、そしてフィルターのスポットへハイブリダイズし、そこでは各々の遺伝子(NTおよびCT)が別々に増幅される;
e)ハイブリダイゼーションのためにPCR生成物をプールし;および
f)各々の遺伝子に対して、各々が異なった蛍光で標識されている、二つのオリゴヌクレオチドプローブを調製し、ここにおいて、一つのオリゴヌクレオチドは、このオリゴヌクレオチドが、CTとは相同的ではなく、および異なった蛍光で標識されているNTの領域へ結合するように、PCR−増幅された遺伝子のためのNTに特有の配列に相同的であり、およびそれに結合するであろうし、およびここにおいて、他のオリゴヌクレオチドは、この他のオリゴヌクレオチドが、リバースプライマーの3’末端に広がるCT配列と相同的であり、およびそれに結合するであろうように、CTへ特異的でありおよび異なった蛍光で標識されている、ことを含んでなる前記鋳型。
【請求項59】
多数の遺伝子のためのNT−特異的およびCT−特異的オリゴヌクレオチドが等量で混合され、フィルター上にスポットした遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドへ結合された遺伝子−特異的PCR生成物とハイブリダイズされる、請求項58の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項60】
スポットへ結合された蛍光間の比で、CTに対するNTの量を定量化する、請求項59の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項61】
NTおよびNTプローブ間の結合親和性と比較して、CTおよびCTプローブ間には異なった結合親和性があるけれども、この相違は判定された異なった試料間、および一つの実験と別の実験間では一致している、請求項60の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項62】
鋳型が、少なくとも一つの標準化された、マイクロアレイ、マイクロビーズ、ガラススライド、または光リソグラフィーにより製造されたチップを含んでなる、請求項58の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項63】
固体支持体が少なくとも一つの膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、多量体化物質、ビーズおよびシリカ支持体を含んでなる、請求項60の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項64】
固体支持体が少なくとも二つのオリゴヌクレオチドを含んでなる、ここにおいて、オリゴヌクレオチドの各々が表1および5またはc−myc、E2F−1またはp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子へ特異的にハイブリダイズする配列を含んでなる、請求項63の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項65】
オリゴヌクレオチドが固体支持体へ共有結合で結合されている、請求項64の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項66】
オリゴヌクレオチドが固体支持体へ非共有結合で結合されている、請求項64の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項67】
(a)表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも二つの遺伝子を含んでなる、遺伝子のセットの肺組織における、分子/106β−アクチン分子の単位での、標準化数的発現レベルを同定する情報を含んでいるデータベース;および
(b)情報を見るためのユーザーインターフェイス、
を含んでなるコンピューターシステム。
【請求項68】
データベースが遺伝子の配列情報をさらに含んでなる、請求項67のコンピューターシステム。
【請求項69】
データベースが、正常肺組織における遺伝子のセットための、分子/106β−アクチン分子の単位での、標準化数的発現レベルを同定する情報をさらに含んでなる、請求項67のコンピューターシステム。
【請求項70】
データベースが、非小細胞癌組織における遺伝子のセットための、分子/106β−アクチン分子の単位での、標準化数的発現レベルを同定する情報をさらに含んでなる、請求項67のコンピューターシステム。
【請求項71】
外部データベースからの記述的情報を含んでいる記録をさらに含んでなる、ここにおいて、その情報は該遺伝子を外部データベースの記録と相関させる、請求項67−70の任意の項のコンピューターシステム。
【請求項72】
外部データベースがGenBankである、請求項71のコンピューターシステム。
【請求項73】
表1および5およびc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の、組織または細胞における標準化数的発現レベルを同定する情報を示すため、請求項67−72の任意の1項のコンピューターシステムを使用する方法であって、
(a)組織または細胞中の、表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の標準化数的発現レベルを、データベース中の遺伝子の発現のレベルと比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項74】
少なくとも二つの遺伝子の発現レベルが比較される、請求項73の方法。
【請求項75】
少なくとも五つの遺伝子の発現レベルが比較される、請求項73の方法。
【請求項76】
少なくとも10の遺伝子の発現レベルが比較される、請求項73の方法。
【請求項77】
肺癌または正常肺組織における発現のレベルと比較された、組織または細胞中の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを示すことをさらに含んでなる、請求項73の方法。
【請求項78】
該遺伝子のための遺伝子発現情報と共に包装された、請求項64−66のいずれか1項の少なくとも一つの固体支持体を含んでなるキット。
【請求項79】
遺伝子発現情報が、毒素へ暴露された組織または細胞中の遺伝子発現レベルを含んでなる、請求項78のキット。
【請求項80】
遺伝子発現情報が電子フォーマットである、請求項79のキット。
【請求項1】
剤が、癌細胞の増殖を減少させるために、および/または、癌細胞の死を起こさせるために、または癌細胞集団の増殖を阻害するために使用できるかどうかを決定するための方法であって、
a)癌細胞の試料を得る工程;
b)表1および5に同定されたマーカーの、癌細胞中での発現のレベルを決定および定量する工程;および
c)マーカーが特定のレベルで発現されている場合、剤が、該癌細胞の増殖を減少させるために、および/または、死を起こすために使用できることを同定する工程:
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項1の方法。
【請求項3】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項2の方法。
【請求項4】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項2の方法。
【請求項5】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項1の方法。
【請求項6】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用して、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項2の方法。
【請求項7】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正にまたは負に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大されたグループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
個々の遺伝子分析およびIGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または増加した死の間の関係を記述する、レベルの少なくとも一つのモデルを開発する、ことを含む、請求項6の方法。
【請求項8】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項5の方法。
【請求項9】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項1の方法。
【請求項11】
剤が化学療法用化合物である、請求項1の方法。
【請求項12】
剤が白金化合物である、請求項11の方法。
【請求項13】
剤がシスプラチンである、請求項12の方法。
【請求項14】
剤が癌の処置に有効であるかどうかを決定するための方法であって、
a)癌細胞の試料を得る工程;
b)試料を剤に暴露する工程;
c)剤へ暴露された試料中、および剤へ暴露されていない試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定および定量する工程;および
d)マーカーの発現が、該剤の存在下で変化した場合、剤が癌の処置に有効であることを同定する工程;
を含んでなる前記方法。
【請求項15】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の、試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項14の方法。
【請求項16】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項15の方法。
【請求項17】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項15の方法。
【請求項18】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項14の方法。
【請求項19】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用して、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項20】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大されたグループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
IGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または細胞死の間の関係を記述する、少なくとも一つのモデルを開発する、ことを含む、請求項19の方法。
【請求項21】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項19の方法。
【請求項22】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項14の方法。
【請求項24】
剤が化学療法用化合物である、請求項14の方法。
【請求項25】
剤が白金化合物である、請求項24の方法。
【請求項26】
剤がシスプラチンである、請求項25の方法。
【請求項27】
癌患者において、剤による処置を続けるべきかどうかを決定するための方法であって、
a)剤による処置の過程間に、患者から癌細胞を含んでなる二つまたはそれより多くの試料を得る工程;
b)二つまたはそれより多くの試料中の、表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定および定量する工程;および
c)処置過程の間に、マーカーの発現レベルが著しくは変化しない場合に処置を続ける、工程
を含んでなる前記方法。
【請求項28】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の、試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項27の方法。
【請求項29】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項28の方法。
【請求項30】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項28の方法。
【請求項31】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項27の方法。
【請求項32】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用して、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項28の方法。
【請求項33】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正にまたは負に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大グループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
IGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または細胞死の間の関係を記述する、少なくとも一つのモデルを開発する、
ことを含む、請求項32の方法。
【請求項34】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項31の方法。
【請求項35】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項34の方法。
【請求項36】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項27の方法。
【請求項37】
剤が化学療法用化合物である、請求項29の方法。
【請求項38】
剤が白金化合物である、請求項37の方法。
【請求項39】
剤がシスプラチンである、請求項38の方法。
【請求項40】
新規癌処置を同定するための方法であって、
a)癌細胞の試料を得る工程;
b)表1および5に同定されたマーカーの発現のレベルを決定および定量する工程;
c)試料を癌処置に暴露する工程;
d)癌処置に暴露された試料中のマーカーの発現のレベルを決定する工程;および
e)特定のレベルでマーカーが発現されている場合、癌処置が癌を処置することにおいて有効であることを同定する工程
を含んでなる前記方法。
【請求項41】
試料中のマーカーの発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の、試料中の存在を検出することにより判定される、ここにおいて、転写されたポリヌクレオチドはマーカーを含んでなる、請求項40の方法。
【請求項42】
転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはsiRNAである、請求項41の方法。
【請求項43】
転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項41の方法。
【請求項44】
試料中のマーカーの発現のレベルが、マーカーに対応しているタンパク質またはタンパク質断片の試料中の存在を検出することにより判定される、請求項40の方法。
【請求項45】
検出する工程がさらに、RT−PCRを使用する、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含んでなる、請求項40の方法。
【請求項46】
発現のレベルを検出する工程が:
異なった機能的クラスを表している複数の遺伝子を最初にスクリーニングし、
最初のスクリーニングにおいて、正にまたは負に関係している遺伝子により代表される遺伝子の拡大されたグループを評価し、
少なくとも一つの相互作用的遺伝子発現指標(IGEI)をつくるため、正におよび負に関係している遺伝子の発現を比較し、
IGEI分析を使用し、および
表1および5に同定されたマーカーの少なくとも一つの、発現の検出のレベルと、減少した増殖および/または細胞死の間の関係を記述する、少なくとも一つのモデルを開発する、
ことを含む、請求項45の方法。
【請求項47】
タンパク質またはタンパク質断片の存在が、タンパク質またはタンパク質断片と特異的に結合する試薬を使用して検出される、請求項44の方法。
【請求項48】
試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗体断片から成る群より選択される、請求項47の方法。
【請求項49】
癌細胞が、癌細胞株および患者から得られた癌細胞から成る群より選択される、請求項40の方法。
【請求項50】
剤が化学療法用化合物である、請求項40の方法。
【請求項51】
剤が白金化合物である、請求項50の方法。
【請求項52】
剤がシスプラチンである、請求項51の方法。
【請求項53】
患者における非小細胞肺癌を診断する方法であって、
(a)c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量する工程;ここにおいて、c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は非小細胞肺癌の指標である、を含んでなる、前記方法。
【請求項54】
患者における非小細胞肺癌の進行を検出する方法であって、
(a)二つまたはそれより多くのc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の、組織試料中での発現のレベルを検出および定量する工程;ここにおいて、c−myc、E2F−1およびp21遺伝子の他と異なる発現は非小細胞肺癌進行の指標である、を含んでなる、前記方法。
【請求項55】
非小細胞肺癌の患者の処置をモニタリングする方法であって、
(a)患者に医薬組成物を投与し;
(b)患者からの細胞または組織試料から遺伝子発現プロフィールを調製し;および
(c)患者の遺伝子発現プロフィールと、正常肺細胞および非小細胞肺癌からなる群より選択される細胞集団からの遺伝子発現を比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項56】
非小細胞肺癌の患者を処置する方法であって、
(a)患者に医薬組成物を投与し、ここにおいて、組成物は表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の発現を改変する;
(b)処置前に得られた腫瘍細胞を含んでなる細胞または組織試料および処置後に得られた別の試料から、StaRT−PCRを使用して、標準化遺伝子発現値を含んでなるIGEIを調製し;および
(c)処置に先立って得られた試料と処置後に得られた試料とを比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項57】
非小細胞肺癌の発生および進行を調節可能な剤のためのスクリーニング法であって、
(a)非小細胞癌細胞を含んでなる細胞集団の、StaRT−PCRを使用して、標準化遺伝子発現値を含んでなる第一のIGEIを調製し、ここにおいて、第一のIGEIは、表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の一つまたはそれより多くの遺伝子の発現レベルを決定する;
(b)細胞集団を剤に暴露し;
(c)剤に暴露された細胞集団の、StaRT−PCRを使用して、標準化遺伝子発現値を含んでなる第二のIGEIを調製し;および
(d)第一および第二のIGEIを比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項58】
標準化定量的RT−PCRに従ったPCR生成物を、標準化された様式で測定するための、固相ハイブリダイゼーション鋳型であって:
a)少なくとも一つの固相ハイブリダイゼーション鋳型を調製し、ここにおいて、各々の遺伝子のため、競合的鋳型(CT)および天然の鋳型(NT)の両方に特異的に結合するであろう任意の長さのオリゴヌクレオチドをフィルターにスポットし;
b)フォワードプライマー(NTおよびCTの両方に共通)およびリバースCTプライマーの3’20bp間の領域が評価されるように、適したオリゴヌクレオチドを同定し;
c)前もって選定された位置で、固体支持体へオリゴヌクレオチドを結合させ;
d)CTおよびNT PCR生成物を増幅し、そしてフィルターのスポットへハイブリダイズし、そこでは各々の遺伝子(NTおよびCT)が別々に増幅される;
e)ハイブリダイゼーションのためにPCR生成物をプールし;および
f)各々の遺伝子に対して、各々が異なった蛍光で標識されている、二つのオリゴヌクレオチドプローブを調製し、ここにおいて、一つのオリゴヌクレオチドは、このオリゴヌクレオチドが、CTとは相同的ではなく、および異なった蛍光で標識されているNTの領域へ結合するように、PCR−増幅された遺伝子のためのNTに特有の配列に相同的であり、およびそれに結合するであろうし、およびここにおいて、他のオリゴヌクレオチドは、この他のオリゴヌクレオチドが、リバースプライマーの3’末端に広がるCT配列と相同的であり、およびそれに結合するであろうように、CTへ特異的でありおよび異なった蛍光で標識されている、ことを含んでなる前記鋳型。
【請求項59】
多数の遺伝子のためのNT−特異的およびCT−特異的オリゴヌクレオチドが等量で混合され、フィルター上にスポットした遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドへ結合された遺伝子−特異的PCR生成物とハイブリダイズされる、請求項58の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項60】
スポットへ結合された蛍光間の比で、CTに対するNTの量を定量化する、請求項59の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項61】
NTおよびNTプローブ間の結合親和性と比較して、CTおよびCTプローブ間には異なった結合親和性があるけれども、この相違は判定された異なった試料間、および一つの実験と別の実験間では一致している、請求項60の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項62】
鋳型が、少なくとも一つの標準化された、マイクロアレイ、マイクロビーズ、ガラススライド、または光リソグラフィーにより製造されたチップを含んでなる、請求項58の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項63】
固体支持体が少なくとも一つの膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、多量体化物質、ビーズおよびシリカ支持体を含んでなる、請求項60の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項64】
固体支持体が少なくとも二つのオリゴヌクレオチドを含んでなる、ここにおいて、オリゴヌクレオチドの各々が表1および5またはc−myc、E2F−1またはp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子へ特異的にハイブリダイズする配列を含んでなる、請求項63の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項65】
オリゴヌクレオチドが固体支持体へ共有結合で結合されている、請求項64の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項66】
オリゴヌクレオチドが固体支持体へ非共有結合で結合されている、請求項64の固相ハイブリダイゼーション鋳型。
【請求項67】
(a)表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも二つの遺伝子を含んでなる、遺伝子のセットの肺組織における、分子/106β−アクチン分子の単位での、標準化数的発現レベルを同定する情報を含んでいるデータベース;および
(b)情報を見るためのユーザーインターフェイス、
を含んでなるコンピューターシステム。
【請求項68】
データベースが遺伝子の配列情報をさらに含んでなる、請求項67のコンピューターシステム。
【請求項69】
データベースが、正常肺組織における遺伝子のセットための、分子/106β−アクチン分子の単位での、標準化数的発現レベルを同定する情報をさらに含んでなる、請求項67のコンピューターシステム。
【請求項70】
データベースが、非小細胞癌組織における遺伝子のセットための、分子/106β−アクチン分子の単位での、標準化数的発現レベルを同定する情報をさらに含んでなる、請求項67のコンピューターシステム。
【請求項71】
外部データベースからの記述的情報を含んでいる記録をさらに含んでなる、ここにおいて、その情報は該遺伝子を外部データベースの記録と相関させる、請求項67−70の任意の項のコンピューターシステム。
【請求項72】
外部データベースがGenBankである、請求項71のコンピューターシステム。
【請求項73】
表1および5およびc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の、組織または細胞における標準化数的発現レベルを同定する情報を示すため、請求項67−72の任意の1項のコンピューターシステムを使用する方法であって、
(a)組織または細胞中の、表1および5またはc−myc、E2F−1およびp21遺伝子の少なくとも一つの遺伝子の標準化数的発現レベルを、データベース中の遺伝子の発現のレベルと比較する、
ことを含んでなる前記方法。
【請求項74】
少なくとも二つの遺伝子の発現レベルが比較される、請求項73の方法。
【請求項75】
少なくとも五つの遺伝子の発現レベルが比較される、請求項73の方法。
【請求項76】
少なくとも10の遺伝子の発現レベルが比較される、請求項73の方法。
【請求項77】
肺癌または正常肺組織における発現のレベルと比較された、組織または細胞中の少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを示すことをさらに含んでなる、請求項73の方法。
【請求項78】
該遺伝子のための遺伝子発現情報と共に包装された、請求項64−66のいずれか1項の少なくとも一つの固体支持体を含んでなるキット。
【請求項79】
遺伝子発現情報が、毒素へ暴露された組織または細胞中の遺伝子発現レベルを含んでなる、請求項78のキット。
【請求項80】
遺伝子発現情報が電子フォーマットである、請求項79のキット。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【公表番号】特表2006−506945(P2006−506945A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−579627(P2003−579627)
【出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/009428
【国際公開番号】WO2003/082078
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(504363485)メディカル・カレッジ・オブ・オハイオ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/009428
【国際公開番号】WO2003/082078
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(504363485)メディカル・カレッジ・オブ・オハイオ (1)
【Fターム(参考)】
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