遺伝子送達のための改変ノダウイルスRNA
【課題】遺伝子送達のための改変ノダウイルス RNAを提供すること。
【解決手段】本発明は、改変されたノダウイルスRNA1分子を提供する。この改変されたノダウイルスRNA1分子は、そのレプリカーゼORFの下流に(好ましくはそのB2 ORFの下流に)異種挿入を含む。この挿入は、好ましくは、1つ以上のタンパク質コード領域を含む。改変RNA1は、VLP(例えば、パピローマウイスルVLP)にパッケージされ得る。小さいサイズのノダウイルスRNA1は、このノダウイルスRNA1をHPVパッケージングに理想的にする。
【解決手段】本発明は、改変されたノダウイルスRNA1分子を提供する。この改変されたノダウイルスRNA1分子は、そのレプリカーゼORFの下流に(好ましくはそのB2 ORFの下流に)異種挿入を含む。この挿入は、好ましくは、1つ以上のタンパク質コード領域を含む。改変RNA1は、VLP(例えば、パピローマウイスルVLP)にパッケージされ得る。小さいサイズのノダウイルスRNA1は、このノダウイルスRNA1をHPVパッケージングに理想的にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(技術分野)
本発明は、遺伝子送達の分野、より詳細にはウイルス様粒子(VLP)にパッケージされた改変ノダウイルスRNAを用いた、発現のための遺伝子の送達の分野である。
【0003】
(背景技術)
Nodaviridaeは、二分節のRNAゲノムを有する。換言すれば、Nodaviridaeゲノムは、RNA1およびRNA2と命名された、2つの別個の一本鎖RNA分子からなる。これらは両方とも、同一のビリオン中にパッケージされている。RNA1はRNAレプリカーゼをコードし、RNA2はビリオンキャプシドタンパク質をコードする。フロックハウスウイルス(FHV)において、RNA1は3.1kb長であり、RNA2は1.4kbである。
【0004】
FHV RNA1のレプリカーゼ産物は、このウイルスゲノムに特異的であり、これは、FHVが自律的に複製することを可能にする(Ball et al.(1992)J.Virol.66:2326−34;Gallagher et al.(1983)J.Virol.46:481−89)。天然の状況において、レプリカーゼは高度にテンプレート特異的であり、ウイルスRNA1およびRNA2のみを複製するが、RNA2の非存在下においては自己複製もまた生じる。さらに、FHVは昆虫ウイルスであるにもかかわらず、植物、脊椎動物、および酵母を含む多くの異なる細胞型において自己複製し得る。
【0005】
RNA2およびFHVキャプシドタンパク質の操作は、広範に報告されている。表面ループへのHIVエピトープの挿入が報告されている(例えば、Scodeller et al.(1995)Vaccine 13:1233−39;Buratti et al.(1996)J.Immunol.Methods 197:7−18;Schiappacassi et al.(1997)J.Virol.Methods 63:121−27)。より一般的には、ビリオンは、エピトープ提示系として用いられている(Lorenzi & Burrone(1999)Immunotechnol.4:267−72;WO96/05293もまた参照のこと)。
【0006】
対照的に、FHV RNA1およびレプリカーゼの操作は、追跡されていない。実際、RNA1の自己複製機能は、RNA1およびそのORFの操作に対して非常に敏感であることが示されている(Ball(1995)J.Virol 69:720−727)。
【0007】
RNA1の複製の間に、RNA3と呼ばれる小さなサブゲノムRNAもまた、RNA1の3’末端から転写される。RNA3は、未知の機能を有する以下の2つの小さなタンパク質をコードする:B1(レプリカーゼと同一のオープンリーディングフレームであり、同一の翻訳終止コドンを有する)およびB2(レプリカーゼに関して+1オープンリーディングフレームである)(Ball(1992)J.Virol 66:2335−45;Johnson & Ball(1999)J.Virol.73:7933−7942)。RNA3の転写は、二本鎖RNA+/RNA−中間体が形成される場合に活性になる内部プロモーターにより制御されるようである。
【0008】
本発明の目的は、RNA1分子の改変および操作を可能にして、自己複製するその能力を開発すること、およびこのような改変RNA1分子を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
本発明は、改変ノダウイルスRNA1分子を提供し、この改変ノダウイルスRNA1分子は、このRNA1のレプリカーゼORFの下流に異種挿入を含む。この挿入は、好ましくは、上記RNA1のレプリカーゼORFおよびB2 ORFの下流である。
【0010】
(RNA1分子)
本発明は、ノダウイルスのRNA1分子に基づく。RNA1は、ノダウイルスゲノムを特異的に複製するRNAレプリカーゼをコードし、そしていくつかのノダウイルス(例えば、フロックハウスウイルス(登録番号X77156)、ゴキブリウイルス(登録番号X02396およびK02560)、シマアジ神経壊死ウイルス(AB025018)、パリアコト(pariacoto)ウイルス(AF171942)、ノダムラウイルス(AF174533)、ゴキブリウイルス(NC_001411)およびオヒョウ神経壊死ウイルス(AJ401165))由来の配列が利用可能である。
【0011】
本発明に関して、「ノダウイルスRNA1」配列は、天然で見出される配列、ならびにそれら自体の遺伝子を特異的に増幅する能力を保持するレプリカーゼをコードするそのフラグメント、改変体、および変異体を含む。
【0012】
本発明のRNA1分子は、標準的な分子生物学技術を用いることによりノダウイルスから獲得されるRNA1の改変により調製され得るか、あるいは酵素的および/または化学的手段により合成的に組み立てられ得ることが理解される。
【0013】
(RNA1分子内のORF)
ノダウイルスの利用可能なRNA1配列(上記を参照のこと)は、レプリカーゼ(または「A」)および「B2」ORFの位置を示す。本発明の分子における挿入は、レプリカーゼORFの下流であり、好ましくはB2 ORFの下流でもある。
【0014】
FHVにおいて、RNA1は、3107ヌクレオチド長である。レプリカーゼORFは、ヌクレオチド40〜3033によりコードされ、B2 ORFは、ヌクレオチド2738〜3055によりコードされる。従って、本発明により、FHVのための異種挿入は、ヌクレオチド3033と3107との間、好ましくはヌクレオチド3055と3107との間に置かれる。
【0015】
好ましくは、異種挿入は、レプリカーゼORFの5ヌクレオチドよりも下流(すなわち、FHVにおいては、ヌクレオチド3038の下流)、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ntよりも下流にある。より好ましくは、B2 ORFの5ヌクレオチドよりも下流(すなわち、FHVにおいては、ヌクレオチド3060の下流)、例えば、このORFの10、15、20、25、30、35、40、45、または50ntよりも下流にある。同様に、好ましくは異種挿入は、RNA1の3’末端の5ヌクレオチドよりも上流(すなわち、FHVにおいては、ヌクレオチド3102の上流)、例えば、この3’末端の10、15、20、25、30、35、40、45、または50ntよりも上流にある。RNA1のネイティブの3’末端配列の長さを保持することは、RNA1が、自己複製する能力を保持することの保証を手助けする(Ball(1995)J.Virol 69:720−72)。
【0016】
異種挿入が、レプリカーゼまたはB2 ORFの最後のコドンの3ヌクレオチド内(すなわち、ヌクレオチド3034〜3036または3056〜3058の間)に存在する場合、挿入の5’末端が、ORFのための終止コドン(すなわち、レプリカーゼのためにはヌクレオチド3034〜3036、またはB2のためには3056〜3058における終止コドン)を保持することが好ましい。
【0017】
(異種挿入)
本発明の改変RNA1は、異種挿入を保有する。この挿入は、好ましくはそれ自体の開始コドンおよび終止コドンを有する1つ以上のタンパク質コード領域を含む。
【0018】
挿入は、RNA1に対してネイティブな1つ以上のORFの下流に存在する場合、その翻訳において補助するために、異種挿入の5’部分はまた、cap非依存性の翻訳を指向する配列を含み得る。従って、代表的に、異種配列は、タンパク質コード領域に機能的に連結された内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。C型肝炎ウイルスまたは脳心筋炎ウイルスのIRES、もしくはピコルナウイルス、口蹄疫ウイルス、ECHOウイルス11’、古典的な豚コレラウイルス、c−myc癌原遺伝子など由来のIRESのような任意の適切なIRESが、用いられ得る(例えば、Martinez−Salas(1999)Curr.Opin.Biotechnol.10:458−464)。
【0019】
異種挿入は、コードされたレプリカーゼを介して自己複製するRNA1の能力を破壊しない。従って、改変RNA1は、発現のための目的の遺伝子を送達し得、かつそれ自体の複製を指向し得る。
【0020】
(改変RNA1のパッケージング)
改変RNA1を細胞に送達するために、例えば、ウイルス様粒子(VLP)または偽ビリオン(pseudovirion)中にそれをパッケージングすることが好ましい。
【0021】
RNA2(必要に応じて改変されたRNA2)から発現されるタンパク質を含むノダウイルス粒子が、用いられ得る。このアプローチが用いられる場合、RNA2は、好ましくは、パッケージされる改変RNA1と同一のノダウイルス由来である。
【0022】
しかし、ノダウイルスは昆虫細胞に自生しているので、哺乳動物細胞への送達が所望される場合、異なるパッケージを用いることが好ましい。好ましいパッケージは、パピローマウイルスVLP(例えば、Touze & Coursaget(1998)Nucl.Acid.Res.26:1317−1323;Kawana et al.(1998)J.Virol.72:10298−10300;Muller et al.(1997)Virol.234:93−111;Zhao et al.(1998)Virol.243:482−491;Unckell et al.(1997)J.Virol.71:2934−2939;WO97/46693;WO98/02548など)であり、これは哺乳動物細胞上のレセプターに結合し得る。
【0023】
HPV VLPを用いることは、様々な利点を提供する。第1に、HPV VLPは広範な細胞型に結合し、高レベルの結合が上皮細胞および間葉細胞で観察され、そして低いレベルの抗VLP抗体のみがヒトにおいて観察されている(Le Cann et al. (1995)J Clin.Microbiol.33:1380−1382)。第2に、異なるHPV型のL1タンパク質が同様に発現され得、VLPの使用により誘導される免疫は大部分は型特異的であるので、予め存在する抗HPV抗体の存在は回避され得、そして複数の免疫化が起こり得る。第3に、ノダウイルスRNA1は小さいので、HPV VLPに伴う公知の制限、すなわちキャプシドに包まれる核酸に対する7〜8kbpの上限を克服し得る。従って、ノダウイルスRNAは、他の核酸よりも重要な利点を提供する。
【0024】
パピローマウイルスは、好ましくはHPV−6のようなヒトパピローマウイルスである。VLPキャプシドは、タンパク質L1およびL2を含み得るか、またはL1のみから生成され得る。
【0025】
改変RNA1のパッケージングを容易にするために、パッケージを形成するタンパク質(例えば、VLPにおけるキャプシドタンパク質)は、改変RNA1と特異的に相互作用し得る配列または構造を含むように改変され得る。DNAプラスミドを用いて遭遇する問題と比較すると、RNA/タンパク質相互作用のインビボでの特異性は、ノダウイルスRNAを用いることのさらなる利点である。
【0026】
特に有用なこの型のパッケージング系は、免疫不全ウイルス(例えば、HIV、BIVなど)のtat/TAR相互作用に依存する。この系において、パッケージは、改変RNA1においてTARモチーフ(例えば、最小TAR配列(例えば、最小59マー)またはWO92/02228に記載されるモチーフ)と特異的に相互作用するtatタンパク質由来のモチーフ(例えば、最小tat配列(例えば、HIV tatのアミノ酸48〜59);Derse et al.(1991)J.Virol 65:7012−15;Chen & Frankel(1994)Biochemistry 33:2708−2715;Puglisi et al.(1995)Science 270:1200−1202もまた参照のこと)を含む。従って、本発明の改変RNA1は、TARモチーフをさらに含む。これは、異種挿入内の遺伝子の上流または下流に存在し得るが、好ましくは下流に存在し得る。代替として、TARモチーフは、レプリカーゼORFの上流(すなわち、FHVにおいてヌクレオチド40の前)に配置され得る。パピローマウイルスに基づくパッケージング系において、tat配列は、L1タンパク質に、好ましくはC末端にかまたはその付近に挿入され得る。この領域はキャプシド形成に必須ではないが(Paintsil et al.(1996)Virology 223:238−244)、この配列は、VLPの組み立てる能力を破壊するには及ばない(Muller et al.(1997)Virology 234:93−111)。tatおよびTARの相互作用は、パッケージ中での改変RNA1のパッケージングを生じる。BIV由来のtat/TARの相互作用の使用は、細胞因子を必要としない強力な相互作用なので、この相互作用の使用が好ましい。
【0027】
VLP内への核酸のパッケージングのためのtat/TARの相互作用の使用は、本発明の改変RNA1に限定されないことが理解される。
【0028】
(発明のさらなる局面)
本発明の改変RNA1は、代表的に、正のセンス方向であり、そして一本鎖である。本発明はまた、以下を提供する:(i)本発明のRNA1に相補的な一本鎖核酸;(ii)(i)に相補的な一本鎖核酸;(iii)本発明のRNA1に相補的な配列を含む一本鎖核酸;(iv)(i)に相補的な核酸を含む一本鎖核酸;および(v)鎖の1つが(i)、(ii)、(iii)、または(iv)である二本鎖核酸。用語「核酸」は、RNA、DNA、ならびにPNA(ペプチド核酸)および骨格改変DNA(backbone−modified DNA)またはRNA(例えば、ホスホロチオエートなど)のようなアナログを含む。核酸は、インビトロかまたはインビボでRNAポリメラーゼにより転写されて、本発明の改変RNA1を生成し得ることが理解される。
【0029】
本発明はまた、本発明の核酸を含む(例えば、改変RNA1を含む)VLPを提供する。このVLPは、好ましくはパピローマウイルスVLPである。
【0030】
本発明はまた、免疫不全ウイルスのtatタンパク質由来のモチーフを含むよう改変されたパピローマウイスルL1タンパク質を提供する。
【0031】
本発明はまた、本発明の改変RNA1分子を生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:(a)ノダウイルスRNA1配列を含むかまたはコードする核酸を獲得する方法;および(b)上記RNA1配列中のレプリカーゼORFおよびB2 ORFの下流に異種配列を挿入する工程。FHVが用いられる場合、その複製が28℃未満で最大活性を示すことは、注目されるべきである。
【0032】
本発明はまた、本発明のVLPを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:本発明による核酸を用いて細胞をトランスフェクトする工程;VLPキャプシドタンパク質(必要に応じて改変RNA1に特異的なモチーフを含むよう改変されたタンパク質)をコードする核酸を用いて細胞をトランスフェクトする工程;およびこの細胞からVLPを精製する工程。このプロセスは、好ましくは酵母において実施される。VLPコード核酸およびRNA1コード核酸を同一の酵母に導入するために、一倍体株を接合することが可能である(例えば、キャプシドタンパク質を発現する一倍体株が、RNA1を発現する反対の接合型の一倍体株と接合され得る)。
【0033】
本発明の核酸(特に改変されたRNA1)およびVLPはまた、医薬として使用するために提供される。それらは特に、例えば、遺伝子療法における遺伝子送達に有用である。
【0034】
本発明はまた、核酸配列を細胞に送達するためのプロセスを提供する。このプロセスは、本発明のVLPを上記細胞に導入する工程を包含する。このプロセスは、インビトロ(培養物中の細胞)またはインビボで実施され得る。
【0035】
(ノダウイルス)
ノダウイルスは、アルファノダウイルスとベータノダウイルスに分けられ、そしてノダムラウイルス、ゴキブリウイルス、Boolarraウイルス、フロックハウスウイルス(FHV)、マイマイガウイスル、マナワトゥウイルス、太西洋オヒョウウイルス、トラフグ神経壊死ウイルス、マツカワ神経壊死ウイルス、日本ヒラメ神経壊死ウイルス、Dicentrachus labrax脳炎ウイルス、パリアコトウイルス、アロワナ(Dragon)神経壊死ウイルス、オヒョウ神経壊死ウイルス、Malabaricus神経壊死ウイルス、Redspotted grouper神経壊死ウイルス、Umbrina cirrosaノダウイルス、およびシマアジ神経壊死ウイスルを含む。これらのウイルスのいずれか由来のRNA1分子が、本発明に従い用いられ得る。しかし、分子レベルで最も研究されているノダウイルスであるという理由で、FHVおよびノダムラウイルスが好ましい。ノダウイルスのさらなる詳細は、Garzon & Charpentier(Atlas of invertebrate viruses(Adams & Bonami編)の351−370頁、CRC press(1992))およびHendry(Viruses of invertebrates(Kurstak編)の227−276頁、Marcel Deker(1991))に見出され得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) RNA1のレプリカーゼORFの下流に異種挿入を含む、改変ノダウイルスRNA1分子。
(項目2) 前記異種挿入がまた、前記RNA1のB2 ORFの下流でもある、項目1に記載のRNA1分子。
(項目3) 前記異種挿入が、前記レプリカーゼORFおよびB2 ORFの5ヌクレオチドよりも下流である、項目2に記載のRNA1分子。
(項目4) 前記異種挿入が、RNA1の3’末端の5ヌクレオチドよりも上流である、項目1〜3のいずれかに記載のRNA1分子。
(項目5) 前記異種挿入が、タンパク質コード領域を含む、項目1〜4のいずれかに記載のRNA1分子。
(項目6) 前記異種挿入が前記タンパク質コード領域の上流にIRESを含む、項目5に記載のRNA1分子。
(項目7) 前記RNA1がタンパク質配列と特異的に相互作用し得る配列を含む、項目1〜6のいずれかに記載のRNA1分子。
(項目8) 前記タンパク質配列と特異的に相互作用し得る配列がTAR配列である、項目7に記載のRNA1分子。
(項目9) 前記TAR配列が前記異種挿入内に存在する、項目8に記載のRNA1分子。
(項目10) 項目1〜9のいずれかに記載のRNA1分子を含む、VLP。
(項目11) 前記VLPがパピローマウイルスVLPである、項目10に記載のVLP。
(項目12) 前記VLP L1タンパク質がtat配列を含み、キャプシドに包まれたRNA1分子が項目6〜8のいずれか1項に記載のRNA1分子である、項目11に記載のVLP。
(項目13) tatおよびTARがHIVまたはBIV由来である、項目12に記載のVLP。
(項目14) 項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1に相補的である、一本鎖核酸。
(項目15) 項目14に記載の核酸に相補的である、一本鎖核酸。
(項目16) 項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1に相補的である配列を含む、一本鎖核酸。
(項目17) 二本鎖核酸であって、該鎖のうちの1つが項目14〜16のいずれか1項に記載の一本鎖核酸である、二本鎖核酸。
(項目18) 項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1を産生するためのプロセスであって、(a)ノダウイルスRNA1配列を含むかまたはこれをコードする核酸を得る工程;および(b)該RNA1配列内のレプリカーゼORFの下流に異種配列を挿入する工程を包含する、プロセス。
(項目19) 項目18に記載のプロセスであって、工程(b)が、前記RNA1配列内の前記レプリカーゼおよびB2 ORFの下流に異種配列を挿入する工程を包含する、プロセス。
(項目20) 項目10〜13のいずれか1項に記載のVLPを産生するためのプロセスであって、該プロセスは、細胞を項目14〜17のいずれか1項に記載の核酸でトランスフェクトする工程;細胞をVLPキャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフェクトする工程であって、該タンパク質は、必要に応じて改変されて改変RNA1に特異的なモチーフを含む、工程;ならびにVLPを該細胞から精製する工程を包含する、プロセス。
(項目21) 目的の核酸配列を細胞に送達するためのプロセスであって、該プロセスは、項目10〜13のいずれか1項に記載のVLPを該細胞に導入する工程を包含し、該目的の核酸配列は、該VLP中に含まれる改変RNA1分子である、プロセス。
(項目22) 医薬としての使用のための、項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1。
(項目23) 医薬としての使用のための、項目10〜13のいずれか1項に記載のVLP。
(項目24) 項目10〜13のいずれか1項に記載のVLPを前記細胞に導入する工程を包含する、核酸配列を細胞に送達するためのプロセス。
(項目25) インビトロで実行される、項目23に記載のプロセス。
(項目26) インビボで実行される、項目23に記載のプロセス。
(項目27) VLP内に核酸をパッケージングするための、tat/TAR相互作用の使用。
(項目28) ノダウイルス由来のRNA1配列を含むRNAであって、該RNA1配列がそのレプリカーゼORFの下流に異種挿入を含むという点で特徴的である、RNA。
(項目29) 前記異種挿入がB2 ORFの下流である、項目28に記載のRNA。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1−1】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−2】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−3】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−4】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−5】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−6】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図2】図2は、pFHV[1,0]プラスミドの概略図である。HDVリボザイムは斜線であり、そして転写終結因子は黒塗りである。
【図3】図3は、pFHV[1,0]のRNA1領域での制限部位を示す。
【図4】図4は、RNA1におけるBssHII部位の除去を示す。
【図5】図5は、pFHV−BsshIIΔを示す。
【図6−1】図6は、pFHV−MutΔの構築を示す。
【図6−2】図6は、pFHV−MutΔの構築を示す。
【図7−1】図7は、pSK+−ADH2−RNA1/SpeIの構築を示す。
【図7−2】図7は、pSK+−ADH2−RNA1/SpeIの構築を示す。
【図8】図8は、pBS24.1−6L1を示す。
【図9】図9は、pSL+−ADH2−RNA1−MutΔを示す。
【図10】図10は、pEGFP−1/TARの構築を示す。
【図11】図11は、pFHV−EGFP−1/TARを示す。TARは水平のダッシュで示され、そしてGFPコード領域はドットで示される。
【図12】図12は、pFHV−EGFP−1−TARΔを示す。
【図13】図13は、pFHV−IRES−EGFP−1の構築を示す。IRESは、垂直のダッシュで示される。
【図14】図14は、pFHV−IRES−EGFP−1−b−TARの構築を示す。
【図15】図15は、pBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔ(19.6kb)を示す。
【図16】図16は、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(18.1kb)を示す。
【図17】図17は、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(−)(18.1kb)を示す。
【図18】図18は、pBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−TAR(20.2kb)を示す。
【図19】図19は、図16〜18のベクターで形質転換された酵母由来の総RNAのノーザンブロットを示す。レーン1はネガティブコントロール(AB110由来の総RNA)を示し;レーン2はRepA(+)クローン5であり;レーン3はRepA(+)クローン7であり;レーン4はRepA(−)クローン3であり;レーン5はRepA(−)クローン4であり;レーン6はRepA(+)−GFPである。酵母rRNA 26S(2250bp)および18S(1650bp)もまた示される。
【図20】図20は、図18のベクターで形質転換された酵母由来の総RNAのEGFP−1についてのノーザンブロットを示す。レーン1は、24時間誘導された培養物から抽出されたRNAを示し;レーン2は48時間後であり;レーン3は72時間後であり;レーン4はネガティブコントロール(AB110由来の総RNA)である。
【図21】図21は、レプリカーゼおよびB2のHisタグ化E.coli発現のための構築物を示す。
【図22】図22は、図21の構築物から発現されたタンパク質のSDS−PAGEを示す。22(A)のレーン1はMWマーカーおよび画分14であり;レーン2〜9は画分15〜22であり;レーン10はカラム流出物である。22(B)のレーン1は細胞溶解物の可溶性画分であり;レーン2はカラム流出物であり;レーン3〜11は画分21〜29であり;レーン12はMWマーカーである。
【図23】図23は、RepApepの質量分析を示す。
【図24】図24は、図15のベクターで形質転換された酵母由来の総タンパク質抽出物のウェスタンブロットである。レーン1〜5は、5匹の免疫マウス由来の血清と1:5000希釈にて免疫反応させた抽出物であり;レーン6は、免疫前の血清混合物を含むネガティブコントロールである。
【図25】図25は、72時間にわたる種々の酵母株由来の総タンパク質抽出物のウェスタンブロットである。レーン1は、ネガティブコントロールであり;レーン2は、48時間でのpBD−R1−G/TΔクローン5由来の総タンパク質抽出物であり;レーン3〜5は、24、28、および72時間でのRepA(+)−GFP株(クローン番号7)の総タンパク質抽出物であり;レーン6〜8は、クローン番号9についての同一物を示す。
【図26】図26は、Rep(+)−GFP株由来の総タンパク質抽出物のウェスタンブロットである。レーン1は、ネガティブコントロール(AB110由来の総タンパク質抽出物)である。レーン2は、24時間誘導された培養物由来のタンパク質を示し;レーン3は48時間後であり;レーン4は72時間後である。
【図27】図27は、pBS−ADH2/GAP−6L1Δ4−Tatの構築を示す。
【図28】図28は、抗6L1(1:5000)を用いた非還元状態下での、CsCl精製された6L1Δ4−tatタンパク質のウェスタンブロットを示す。
【図29】図29は、酵母におけるVLP中の改変RNA1の発現およびパッケージングを示す。
【図30】図30は、酵母株RepA(−)(レーン2は24時間培養、レーン3は48時間培養)、2つの異なるRepA(+)株(レーン4およびレーン5は24時間培養、レーン6およびレーン7は48時間培養)、および株RepA(+)−IRES−EGFP−/bTar(レーン8は24時間培養、レーン9は48時間培養)由来の総タンパク質のノーザンブロットを示す。ネガティブコントロールRNA(レーン1)およびRNA分子量マーカーもまた示される。矢印は、RNA3に対応するシグナルの位置を示す。
【図31】図31は、図30の(1)レーン3および(2)レーン6由来のRNAのノーザンブロットを示す。
【図32】図32は、図30に記載されるノーザンブロットを示すが、異なるプローブを用いている。矢印は、RNA1マイナス鎖に対応するシグナルの位置を示す。
【図33】図33は、48時間培養された酵母株RepA(−)(レーン2)、RepA(+)(レーン3)、RepA(+)−EGFP/hTar(レーン4)、およびRepA(+)−IRES−EGFP/bTar(レーン5)由来の総RNAについてのプライマー伸長実験を示す。ネガティブコントロールRNA(レーン1)およびインビトロで転写されたRNA1についてのポジティブコントロール(レーン6)もまた報告される。レーン4の文字a、b、c、およびdは、RNA1 5’配列上で示されるヌクレオチドに対応するバンド(この中の3つはまた、レーン3およびレーン5においても見られる)を同定する。
【図34】図34は、図33で報告された同じ総RNAを用いたS1マッピング実験を示す。ネガティブコントロールRNA(レーン1)およびインビトロで転写されたRNA1についてのポジティブコントロール(レーン6)を用いたS1反応の結果もまた報告される。
【図35】図35は、二倍体のHPV−6VLP(RNA1−IRES−GFP/hTarおよびHPV−6 L1/hTATを同時発現する)から抽出された核酸を用いたRT−PCRにより獲得された結果を示す。35Aは、酵母コントロールRNA(レーン1およびレーン3)およびVLP由来の核酸(レーン2およびレーン4)を示し;35Bは、酵母RNA(レーン1)、および未処理VLP(レーン3)かまたはベンゾナーゼ処理されたVLP(レーン2)のいずれか由来の核酸を示し;35Cは、内部コントロールとしてマウスRNAの存在下での、酵母RNA(レーン1)、および未処理VLP(レーン3)かまたはRNAse A処理されたVLP(レーン2)のいずれか由来の核酸を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明を実施するための様式)
(FHVのRNA1)
FHVゲノム由来のRNA1の配列は、GenBankにおいて登録番号X77156として与えられる。このRNA1に対応する二本鎖cDNA(3107bp)が、図1に示される。
【0038】
このcDNAは、Ball(J.Virol.(1995)69:720−727)により記載されるプラスミドpFHV[1,0]中に存在し、引き続く実験に用いられた。pFHV[1,0]はまた、以下を含む:RNA1配列から上流の18bpのT7プロモーター(このプロモーターとRNA1 5’末端との間に単一のGが存在する);RNA1配列の下流に位置するデルタ肝炎ウイルスリボザイム(89bp)(その結果、リボザイムの開裂は、RNA1のネイティブな3’末端を生じる);およびリボザイム活性を補助すると考えられる136bpのT7転写終結因子。これは、図2に示される。
【0039】
(クローニング目的のためのRNA1の改変)
クローニングを容易にするために、RNA1に対して種々の変更がなされた。
【0040】
(BssHII部位の除去)図3に示されるように、ネイティブのRNA1配列は、2つの近接するBssHII制限部位(ヌクレオチド1270および1278)を含む。これらの中の1つを、レプリカーゼアミノ酸配列に影響を与えない静的な変異を導入することにより除去した。
【0041】
RNA1のSphI/BsshIIフラグメントを、プライマーRI900−fおよびRI1272M−r(表I)を用いて生成されたPCRフラグメントにより置換した。第1のプライマーは、クローニングに必要なSphI部位を含んだ。一方、逆方向プライマーの配列は、1271位におけるGからAへの置換を含み、それによって、レプリカーゼORFを変更することなく、2つのBssHII制限部位の1つを除去した(図4)。得られたプラスミドをpFHV−BsshIIΔを呼んだ(図5)。
【0042】
(付加的な部位の導入)異種配列をRNA1に挿入するために、以下の2つの付加的な制限部位を導入した:3062位にSacII部位、3072位にNotI部位(レプリカーゼおよびB2 ORFの翻訳終止コドンから下流)。さらに、唯一のSalI部位を、pFHV[0,1]のT7転写終結因子よりも下流(ヌクレオチド3337)に挿入した。これらの部位を、以下のようにPCR増幅により導入した(図6):
−プライマーApaI−fおよびDRS−r(表I)は、ApaI部位(2349位)と3101位との間のRNA1のフラグメントを増幅した。SacIIおよびNotI制限部位の導入を、DRS−rプライマー中に2つの配列を導入することにより達成した(図6a)。
−プライマーDRS−f(DRS−rの相補鎖)およびRI−KpnI−rは、ヌクレオチド3039からKpnI部位(3368位)までの領域にわたるフラグメントを増幅した(図6a)。
【0043】
2つのDNAフラグメントの融合物を、等量の2つの増幅産物を変性および混合することにより獲得した。これらは、2つのPCRフラグメント中に存在する62bpの相補的領域によりアニールした。dNTPのみの存在下でのTaqポリメラーゼを用いた伸長サイクルおよびTaqならびにプライマーApaI−fおよびRI−KpnI−rの存在下での増幅サイクルの後、平滑末端のDNA融合フラグメントを獲得し(図6b)、次いで、このフラグメントをpCR2.1ベクターにクローン化してDNA配列を調べた。ApaI−KpnIフラグメントをpCR2.1から切り取り、pFHV[1,0]およびpFHV−BsshIIΔの異種フラグメントを置換するために用いて、pFHV−Mut(示されていない)と名付けられたプラスミドおよびpFHV−MutΔ(図6c)と名付けられたプラスミドを獲得した。これらのプラスミドは、唯一のBsshII部位および新規のSacII、NotI、およびSalI制限部位を有するRNA1 cDNA全体を含んだ。
【0044】
(酵母ベクターへのRNA1のクローニング)
酵母においてRNA1(およびその改変バージョン)を発現させるために、cDNAを酵母ベクターの、酵母特異的プロモーターの下流にクローン化した。このベクターは、レプリカーゼをコードし、そして(リボザイム開裂後に)自己複製に適合する5’および3’末端を有するRNA1分子の転写を指向する。全体的なアプローチは、図7に示される。
【0045】
(pBluescript SK+におけるADH2/GAPのクローニング)発現に用いられたプロモーターは、ADH2/GAPプロモーターであった。このプロモーターの供給源として、酵母発現ベクターpBS24.1−6L1(図8;WO00/09699もまた参照のこと)を用いた。DNAフラグメントADH2/GAP−6L1を、SacIおよびSalIによる消化により、プラスミドpBS24.1−6L1から抽出し、そして同一の酵素で消化したpBluescript−SK+(Stratagene)中にクローン化した。得られた構築物を、pSK+−ADH−6L1と名付けた。
【0046】
(酵母ADH2/GAPプロモーターのPCR増幅)酵母プロモーターの一部を、SacI部位において酵母プロモーターにアニールするプライマーADH/Sac(表I)、および付加的にRNA1由来の13ヌクレオチドを含む6L1遺伝子との融合物においてプロモーターにアニールする逆方向プライマーP−R1revを用いてpSK+−ADH−6L1上で実施したPCRにより増幅した(図7a)。
【0047】
(RNA1/SphのPCR増幅)pFHV[1,0]由来のRNA cDNAの一部を、RNA1の5’末端(+1位置)でアニールするプライマーRNA1−f、およびヌクレオチド1021の唯一のSphI制限部位でアニールする逆方向プライマーRNA1−rを用いて増幅した(図7b)。
【0048】
(ADH2−RNA1/Sph融合物)この融合物を、図7aおよびbの等量の2つの増幅産物を変性および混合し、これによって両方のPCRフラグメントにおいて存在する13bpの相補的領域のアニーリングを助けることにより獲得した(図7c)。dNTPのみの存在下でのTaqを用いた伸長サイクルおよびTaq、ならびに、プライマーADH/SACおよびRNA1−rの存在下での増幅サイクルの後、融合平滑末端のDNAフラグメントを獲得した。
【0049】
(pCR2.1におけるADH2−RNA1/Sphのクローニング)この平滑末端のPCR産物をpCR2.1(Invitrogen)中にクローン化し、プラスミドpCR−ADH2/RNA1を得た(図7d)。そのDNA配列を調べて、そして期待されるプロモーター/RNA1融合配列TAAATCTA/GTTTCGAAAを確認したが、いくつかの変異が、増幅産物の他の領域に存在した。しかし、正確な増幅配列を有する唯一のクローンが、さらなる工程に必要なSphI部位を除去された変異を有した(図7d)。
【0050】
(pSK+−ADH2−6L1におけるADH2/RNA1融合産物のクローニング)この問題を克服するために、この融合産物をSacI−SpeフラグメントとしてpCR2.1から切り取り、同一の制限酵素で消化されたpSK+−ADH2−6L1中にクローン化し(図7e)、それによって最終産物pSK+−ADH2−RNA1/SpeIを獲得した(図7f)。
【0051】
(酵母ベクターへの改変RNA1の導入)pFHV−BsshIIΔ(図5)由来のEagI−KpnIフラグメントを、pSK+−ADH2−RNA1/SpeI(図7f)の対応するフラグメントと置き換えて挿入し、pSK+−ADH2−RNA1−BsshIIΔと名付けられた構築物を作製した。この構築物におけるBsshII−KpnIフラグメントを、pFHV−MutΔ(図6c)由来の対応するフラグメントで置換し、pSK+−ADH2−RNA1−MutΔと名付けられたプラスミドを生成した(図9)。
【0052】
(異種配列の挿入)
異種挿入をRNA1配列の内部に作製した。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するための遺伝子(Chalfie et al.(1994)Science 263:802−806)を、HIV由来のTAR配列と共に、レプリカーゼおよびB2のオープンリーディングフレームの下流に挿入した。
【0053】
異種挿入物を作製するために、開始点は、BsrgIおよびNotIで消化されたプラスミドpEGFP−1(Clontech)であった。BsrgI(5’)およびNotI(3’)粘着末端を有し、かつ、HIV−1 TAR配列(HIV−1ゲノムのヌクレオチド454〜520、登録番号K03455)を含むdsDNA配列を、2つの相補的なオリゴヌクレオチド(TAR−fおよびTAR−r)をアニールさせることにより獲得し、そしてこれを消化されたpEGFP−1中に挿入して、pEGFP−1/TAR(図10)を形成した。TARオリゴはEGFP ORFを保持し、そしてこれはまた、BsrgI部位からすぐ下流(その直後に新規BstEIIおよびNheI制限部位が続く)に翻訳終止コドンを含んだ。TAR配列はまた、首尾よくレプリカーゼORFの上流に挿入された。
【0054】
HIV−1 TAR配列の前にGFPコード配列を含む、pEGFP−1/TAR由来のSacII−NotIフラグメントを同一の制限酵素で消化したpFHV−Mutにクローン化し、pFHV−EGFP−1/TARと名付けられたプラスミドを獲得した(図11)。このプラスミドのSphI/SacIIフラグメントを、pFHV−MutΔ由来の対応するフラグメントで置換し(図6c)、唯一のBsshII制限部位を有するpFHV−EGFP−1/TARΔ(図12)を生成した。
【0055】
(異種挿入物の発現の促進)
ポリシストロン性RNAは、目的の2つの遺伝子間への内部リボソーム侵入部位(IRES)の挿入によって哺乳動物において翻訳され得(Parksら(1986)J.Virol.60:376−384)、これによって、第2の(下流)遺伝子のcap非依存性翻訳を可能にする。従って、異種挿入からの発現を促進するために、脳心筋炎ウイルス由来のIRESを、EGFP−1遺伝子の前に挿入した。このIRESは、代表的に、哺乳動物細胞においてのみEGFPタンパク質の翻訳を提供する。なぜなら、IRES媒介翻訳は、酵母において選択的に阻害されるからである。(Venkatesanら(1999)Nucl.Acids Res.27:562−572)。
【0056】
プラスミドpCMV−IRES/EGFP−1(図13)を、EcoRIで消化し、klenow酵素を用いてこの部位を平滑末端にし、この酵素の不活化後、NotIを用いて消化して、EGFP−1遺伝子に融合したEMCV IRESを含む5’平滑化−3’NotIフラグメントを作製した。同様に、プラスミドpFHV−MutΔ(図6c)を、SacIIで消化し、klenow酵素で処理し、次いで、NotIを用いて消化した。IRES−EGFP−1フラグメントを、消化したこのプラスミドにクローン化し、pFHV−IRES−EGFP−1(図13)を得た。
【0057】
この構築物から発現されるRNAのパッケージングを補助するために、BIV由来のTAR(ヌクレオチド5〜30のBIVゲノム、登録M32690)を、EGFP遺伝子の下流に挿入した。TAR配列を、NotI適合性の粘着末端を有する2つの相補オリゴヌクレオチド(b−TAR−fおよびb−TAR−r)をアニーリングすることによって構築した。これはまた、2つの新規な制限部位(BstEII(5’NotI部位の隣)およびXhoI(3’NotI部位の隣)を導入した。二本鎖NotIフラグメントを、NotI消化したpFHV−IRES−EGFP−1にクローン化し、pFHV−IRES−EGFP−1/b−TAR(図14)を得た。NotIフラグメントの正確な向きを、確認した。
【0058】
(酵母発現ベクターへのクローニング)
4つの酵母発現プラスミドを、以下の基本的な5’から3’の配置を用いて構築した:酵母特異的プロモーター;改変RNA1;HDVリボザイム;T7ターミネーター;酵母ポリA部位。
【0059】
最初に、SacI−BsshIIフラグメントのpBS24.1−6L1(図8)を、pSK+−ADH2−RNA1/BsshIIΔ由来の対応するフラグメントと置換し、プラスミド pBS−ADH2−RNA1/BsshIIΔ−6L1を得、ここで、RNA1 cDNAの一部は、L1遺伝子配列の3’末端に融合されていた(示さず)。これを、以下のように操作した:
1.BsshII−SalI L1フラグメントを、pFHV−EGFP−1/TARΔ由来のBsshII−SalIフラグメントと置換して、pBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔ(図15)を得た。
2.BsshII−SalI L1フラグメントを、pFHV−MutΔ由来のBsshII−SalIフラグメントと置換して、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(図16)を得た。
3.pBS−ADH2−RNA1−MutΔ中の特有のBsshII部位(1273)を充填し(レプリカーゼORFの妨害を伴う)、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(−)(図17)を作製した。
4.pBS−ADH2−RNA1−MutΔ中のBsshII−SalIフラグメント(改変RNA1 cDNA配列の一部を含む)の、pFHV−IRES−EGFP−1/b−TAR由来の対応するBsshII−SalIフラグメント(IRES−EGFP−1/b−TARを含む)での置換によって、pBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−TAR(図18)という名のプラスミドを作製した。
【0060】
(酵母の形質転換)
プラスミドpBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔ、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(−)およびpBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−TAR(図15〜18)を、実験室において以前に得たHPV−16 L2タンパク質を発現するAB110菌株(WO00/09699)に形質転換することによって導入した。生じた菌株を、それぞれ、pBS−RI−G/TΔ(選択したクローン4および5)、pBS−RI−MutΔ(選択したクローン1および3)、pBS−RI−MutΔ(−)(選択したクローン5および7)およびpBS−RI−IRES−G/b−TAR(選択したクローン5および9)と命名した。
【0061】
(自己複製の確認)
(RNA複製の確認)総RNAを、菌株pBS−RI−MutΔ、pBS−RI−MutΔ(−)およびpBS−RI−IRES−G/b−TARから抽出して、それぞれ、RepA(+)、RepA(−)およびRepA(+)−GFPと標識した。これらのRNAを、c−と標識したAB110菌株由来のネガティブコントロールRNAと一緒に、プライマーApaI−fおよびrepA−Revを用いてpFHV[1,0]に対して実行したPCRによって得た非放射性DNAプローブ(BrighStar Psoralen−Biotin標識キット,Ambion)(600bp)を用いて、ノーザンブロットによって分析した。
【0062】
図19は、結果を示し、高いハイブリダイゼーションシグナルは、レプリカーゼORFを発現するように設計された酵母クローンから抽出されたRNAでのみ(RNA1配列が挿入を有さない場合(レーン2および3)およびIRES−EGFP/bTAR配列がレプリカーゼおよびB2 ORFの下流に導入されるされる場合(レーン6)の両方において)検出されることを示す。かなり弱いシグナルが、レプリカーゼORFが妨害されたプラスミドを用いて形質転換された酵母クローン由来のRNA(レーン4および5)を用いて検出され、一方、ネガティブコントロールRNAを用いてシグナルは、検出されない。
【0063】
これらの結果は、レプリカーゼが、異種挿入物(外来遺伝子)が野生型RNA1配列に導入されたとしても、RNA1の自己複製を維持し得ることを確認する。
【0064】
自己複製する改変RNA1がIRES−EGFP/b−TAR配列を含んでいたことを確認するために、ノーザンブロットを、全EGFP領域の非放射性DNAプローブを用いて実行した。この実験によって、24、48、および72時間における組換えRNA1の発現を確認した(図20)。
【0065】
(タンパク質発現の確認)RNAレベルでの自己複製の確認と同様に、タンパク質発現をまた、抗レプリカーゼ抗体を用いてアッセイした。
【0066】
抗レプリカーゼ抗体を得るために、レプリカーゼのC末端部分(RepApepと称されるDVWEK...SNNRK)を、E.coli中で発現させた。このタンパク質は、完全B1タンパク質を含み、従って有利に、抗RepApep抗体が、B1発現ならびにレプリカーゼを検出するはずである。同じ領域をまた、+1フレームシフトさせて発現させ、細菌で発現されるB2タンパク質を得た。B1およびB2タンパク質の検出によって、自己複製を確認した。
【0067】
レプリカーゼORFのRepApep部分を、NheI(5’)およびXhoI(3’)制限部位を含むプライマーRepA−dirおよびRepA−revを用いてPCR増幅した。PCR平滑末端産物を、pCR−BluntII−TOPO(Invitrogen)にクローニングし、そして異なるクローン由来の挿入物の配列を、確認した。NheI(5’)−XhoI(3’)フラグメントを、2つの制限酵素を用いた消化によって正確なクローンのうちの1つから抽出し、そしてpTrc−HisA(Invitrogen)にクローン化し、ORFを含むpTrc−RepApep−His6と命名されたプラスミド(ここで、RepApepはヘキサヒスチジンタグとインフレームであった)(図21a)を作製した。
【0068】
全B2 ORFを、同じNheI部位およびXhoI部位を含むプライマーであるB2−dirおよびB2−revを用いたPCRによって増幅した。PCR産物を、2つの酵素を用いて消化し、pTrc−HisA(Invitrogen)に直接クローン化し、ORFを含むpTrc−B2−His6と命名されたプラスミド(ここで、B2は、ヘキサヒスチジンタグとインフレームであった)(図21b)を作製した。
【0069】
2つの組換えタンパク質のいずれかを発現する細菌クローン由来の総可溶性タンパク質の抽出物を、Ni−NTA樹脂(Hoffmann−La Roche)を用いてIMACに供し、RepApepおよびB2タンパク質が富化された画分を、収集した(図22)。RepApepタンパク質は、SDS−PAGEにおいて予期せぬ移動プロフィールを示し、そして精製したタンパク質を、質量分析法に供し(図23)、これによって予期した15〜16kDaのMWを確認した。
【0070】
富化されたタンパク質を含む分画をプールし、PBSに対して透析し、そしてタンパク質含量を、BCA試験(Pierce)を用いて測定した。このタンパク質を、5匹のマウスの群を、3回(repApep、50μg/用量)または4回(タンパク質B2、25μg/用量)のいずれかで2週間間隔で免疫するために使用した。ワクチンを、200μlの抗原および同じ容量のMF59を用いて腹腔内(IP)投与した。[Ottら(1995)Vaccine designの277〜296頁。The subunit and adjuvant
approach(Powell & Newman編)Plenum Press]。免疫前血清を、免疫の前に収集し、そして血清サンプルを、各免疫後に2週間で採取した。
【0071】
RepApepを用いて免疫した5匹のマウスの血清サンプルを、酵母菌株pBS−RI−G/TΔ(クローン4)から調製した総タンパク質抽出物に対して1:5000希釈で試験し、約110kDaのタンパク質の検出を、これらの全てにおいて観察し、これは酵母によって発現されるレプリカーゼの存在と一致した(図24)。
【0072】
図24のレーン4に使用した同じ希釈の血清を、変化させた期間、誘導条件下で増殖させた異なる酵母菌株由来の総タンパク質抽出物に対するウエスタンブロット分析に使用した。この実験によって、RNA1レプリカーゼが、改変RNA1を発現する菌株において、24、48、および72時間目に存在することを確認した(図25)。
【0073】
図24のレーン4で使用した血清を、pBS−RI−G/TΔを保有する酵母菌株から、24、48、および72時間の誘導で調製された総タンパク質抽出物に対するウエスタンブロット分析に使用した(図26)。タンパク質のバンド(レーン2および3)を、20kDaのMWマーカーと7kDaのMWマーカーとの間で検出した。これは、ネガティブコントロール抽出物(レーン1)および誘導後72時間で調製された抽出物(レーン4)において存在しない。これは、酵母におけるB1タンパク質の合成と一致し、再び、改変RNA1の自己複製が確認された。72時間目におけるB1タンパク質の非存在は、哺乳動物細胞において以前に得られたB1およびB2発現データと一致する[Johnson & Ball (1999)J.Virol.73:7933−7942]。
【0074】
(RNA3発現の確認)総RNAを、24時間および48時間増殖させたプラスミドpBS−ADH2−RNA1MutΔ(−)、pBS−ADH2−RNA1MutΔおよびpBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−Tarを発現する酵母菌株から抽出し、そしてそれぞれ、RepA(−)、RepA(+)およびRepA(+)IGFP/b−Tarと標識した。これらのRNAを、図19のような非放射性二本鎖DNAプローブを用いたノーザンブロット分析によって分析した。図30は、フィルムを過剰に露光することによって、移動するRNA種に対応する弱いシグナルが明らかになることを示し、これは、RNA3が菌株RepA(+)の24時間および48時間(レーン4〜7)の両方で検出されることを予想する。ノーザンブロットを、レーン6由来のRNAを用いて長期間アガロースゲル上で実行し、そのフィルターを、RNA3が存在した領域のみを含むように、ハイブリダイゼーション前に切断した(図31)。これによって、RNA3の存在を確認する。菌株RepA(+)IGFP/b−Tar由来のRNAの場合(図30、レーン8および9)、挿入に起因してよりゆっくりと移動する対応するRNA3は、おそらく、強いRNA1ハイブリダイゼーションシグナルによってマスクされ、観察され得なかった。
【0075】
(RNAマイナス鎖の確認)24時間および48時間増殖させた菌株RepA(−)、RepA(+)およびRepA(+)IGFP/b−Tarから抽出したRNAを、鎖特異的非放射性プローブ(BrightStar Psoralen−Biotin標識キット、Ambion)を用いたノーザンブロットによって分析し、RNAマイナス鎖を検出した。鎖特異的プローブは、SacIIで直鎖にされたプラスミドpFHV−MutΔを用いることによって得たインビトロ転写物であった。図32は、予期したサイズのRNAに対応する強いハイブリダイゼーションシグナルが、レプリカーゼタンパク質を発現するクローンにおいてのみ(RNA1配列が挿入を有さない場合(レーン4および5)およびIRES−EGFP/b−Tar配列がB2 ORFの下流に導入されている場合(レーン6および7)の両方において)検出されることを示す。コントロールRNA(レーン1)およびレプリカーゼORFが妨害されている場合(レーン2および3)、シグナルは検出されない。
【0076】
(RNA1のプライマー伸長およびS1マッピング分析)標準的なプライマー伸長分析を、菌株RepA(−)、RepA(+)およびRepA(+)IGFP/b−Tar由来の総RNAに対してAMV逆転写酵素およびT4キナーゼ標識したオリゴヌクレオチドRl−120を用いて実行した。
【0077】
同じプライマーを用いてプラスミドpSK+−ADH2−RNA1/SpeI(図7f)に対して実行したコントロール配列と共に、伸長産物を8%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲル上で泳動した。図33は、より短い伸長産物が検出され得ることを示す。
【0078】
S1マッピング分析を、同じRNAを用いて実行した。プローブは、オリゴAZ15−for(プラスミド中のnt 6285)およびR1−120を用いてプラスミドpSV40−FHV[0,0]から得た二本鎖PCRフラグメントであった。このPCRフラグメントを、T4キナーゼを用いて標識し、NcoIを用いて消化し、検出されるmRNAの同じ極性を有する鎖から放射性標識を、取り除き、そしてゲル精製した。放射性プローブのアリコートを、総RNAにハイブリダイズさせ、そしてS1ヌクレアーゼを用いた消化を、標準的な条件下で実行した。コントロールとして、pFHV[1,0]由来のT7でインビトロ転写されたRNA1をまた、このプローブに対してハイブリダイズさせ、そしてS1消化した。S1処理された産物を、プライマーR1−90revを用いて獲得しかつRNA1に相補的であるDNA配列と共に、8%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲル上で泳動した。
【0079】
図34に示されるように、全長RNAに対応するバンドを、GFPおよびIRES−GFP挿入を有さないかまたは有するレプリカーゼAを発現するサンプルで検出し得た(レーン3、4および5)。
【0080】
(RNA1の5’末端のクローニングおよび配列決定)菌株RepA(+)−IGFP/b−Tar由来の総RNAを使用して、RNA1種の5’末端をクローン化した。クローニングは、Ambion FirstChoiceTM RLM−RACE Kit(これは、キャップされたmRNA分子の選択的なクローニングを可能にする)を用いることによって実行した。使用したプライマーは、以下であった:
1)R1−revを用いた逆転写
2)キットで供給される外部RNAアダプタープライマーおよび逆方向プライマーAZ−9rev(RNA1上のnt426)を用いた外部PCR
3)キットで供給される内部RNAアダプタープライマーおよびR1−120を用いた内部PCR。
【0081】
最終PCR産物のクローニングを、pZero平滑ベクター(Invitrogen)中に実行した。10個のクローンの配列決定によって、これら全てのクローン化された配列が、AAAACAG(RNA1配列のヌクレオチド16)で始まることが明らかになった。これは、図33において示される産物cに対応する。従って、図33のバンドbは、cの分解産物を示し得、そしてバンドbは、キャップされた形態であり得る。
【0082】
(RNA3の5’末端のクローニングおよび配列決定)同じ実験手順を使用することによって、RNA3の5’領域を、同じ酵母クローンからクローン化した。使用したプライマーは以下であった:
1)AZ−5rev(RNA1のnt 3101)を用いた逆転写
2)キットで供給される外部RNAアダプタープライマーおよび逆方向プライマーAZ−5revを用いた外部PCR
3)キットで供給される内部RNAアダプタープライマーおよびR3−2809rev(RNA1上のnt 2830)を用いた内部PCR。
【0083】
最終PCR産物を、NcoI(RNA1上のnt 2801)およびBamHI(内部アダプタープライマー内)を用いて消化し、そして同じ酵素を用いて消化したpTRC−HisB(Invitrogen)にクローン化した。
【0084】
RepA(+)菌株由来のRNAを用いて実行したRT−PCRからの10個のクローンの配列決定によって、各場合での同じ配列(RNA1のヌクレオチド2721で始まる(GTTACCAA...))が明らかになった。これは、文献ですでに報告されたRNA3開始部位に対応する。
【0085】
RepA(+)−IGFP/b−Tar菌株由来のRNAを用いて実行したRT−PCRからの18個のクローンの配列決定によって、いずれもRNA3転写開始部位に対応しないが、これらの全てが、RNA1に属する上流の配列で開始することが明らかになった。
【0086】
(HPV VLPにおけるパッケージング)
TAR挿入物を保有する改変RNA1のパッケージングを促進するために、HPV−6のL1コートタンパク質を、相補的なtatモチーフをそのC末端に含むように改変した。
【0087】
これを達成するための酵母発現ベクターの構築は、いくつかの工程を含んだ(図27)。最初に、プラスミドpBS24.1−6L1(図8)を、BsshIIおよびSalIを用いて消化し、このようにしてL1タンパク質の最後の4アミノ酸を排除した。このプラスミドは、酵母においてHPV−6 L1キャプシドタンパク質を発現する。相補的なオリゴヌクレオチド6L1Δ4および6L1Δ4invをアニーリングすることによって得た短いBsshII−SalI dsDNAを挿入し、これによって、L1 ORFを再構築し、これに翻訳終止コドンおよび新しいNotI制限部位を与えた。生じた酵母発現プラスミドを、pBS24.1−6L1Δ4と命名した。tatのHIV−1 TAR−結合ドメイン(アミノ酸36〜72)のPCR増幅を、プライマーTat−dirおよびTat−revを用いることによってHIV−1菌株IIIBのcDNAを含むプラスミドに対して実行し、これはまた、5’末端にBsshII部位を、そして3’部位にNotIおよびSalI部位を含んだ。生じた平滑末端のフラグメントを、pCR2.1プラスミドにクローン化し、そして配列決定した。BsshII−SalIフラグメントを、pCR2.1から抽出し、そして同じ制限酵素を用いて消化したpBS24.1−6L1Δ4に連結した。生じたプラスミドを、pBS24.1−6L1Δ4−Tatと命名した。
【0088】
pBS24.1−6L1Δ4−Tatを、実験室で以前に獲得しかつHPV−6 L2タンパク質を発現するJSC310菌株(WO00/09699)への、形質転換によって導入した。形質転換実験からの異なるクローンを、6L1Δ4−Tat発現に関して分析し、クローン2を、更なる実験のために選択した。
【0089】
クローン2を、誘導条件下で増殖させ、VLPの塩化セシウム(CsCl)勾配精製を、WO00/09699に記載されるように実行した。1.28〜1.29g/cm3の密度に対応するCsCl分画を、非還元条件下のSDS−PAGEで泳動し、抗6L1抗体を用いたウエスタンブロットによって分析した(図28)。115kDaのMwのタンパク質マーカーよりもゆっくりと移動したバンドの検出は、異なるL1/Tat単量体間でジスルフィド結合が形成されることを示し、これは、HPV VLPの効率的な自己アセンブリの公知の必要条件である(Sappら(1998)J.Virol.72:6186−89)。
【0090】
レプリカーゼの発現、TAR挿入物を保有する改変RNA1の自己複製、L1−Tatの発現、および改変RNA1のパッケージングが、図29に示される。全ての工程は、同じ酵母細胞で起こり、目的の遺伝子を哺乳動物細胞に送達するための感染性VLPを生じる。
【0091】
プラスミドpBS24.1−6L1Δ4−Tatを含む酵母菌株JSC310(クローン2)を、プラスミドpBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔを含む菌株AB110と接合させ、組換えRNA1誘導体(GFP遺伝子およびヒトTAR配列を含む)および組換えHPV6 L1/hTATタンパク質を同時発現する二倍体クローンを得た。接合実験からの異なるクローンを、L1およびレプリカーゼAタンパク質発現に関して試験し、そしてRNA1−EGFP−1/TAR転写レベルに関して試験した。1つの二倍体クローンを選択し、そして誘導条件下で増殖させた。VLPのCsCl勾配精製を、WO00/09699に記載されるように実行した。
【0092】
1.28〜1.29g/cm3の密度に対応するCsCl分画をプールし、そしてPBSに対して透析した。透析したVLPを、以下の異なる手順に従って実行した異なる実験に使用し、そして図35に報告する。
【0093】
図35Aにおいて、VLPを、フェノール沈澱、フェノール−クロロホルム沈澱、クロロホルム沈澱、およびエタノール沈澱で処理し、タンパク質を欠く材料を得た。水中に懸濁した最終核酸ペレットのアリコートを、さらなる処理をいずれも行わずに、OneStep RT−PCRキット(Qiagen)を用いてこのキットの指示書に従ってRT−PCRに供した。使用したプライマーは、R1−235for(RNA1上のnt 235)およびR1−1272M−rであり、予期した1037 ntのバンドを生じた(レーン2および4、これらは、2つの異なるRT−PCR分析で繰り返した同じサンプルである)。関連しない酵母RNAを、コントロールとして含めた。
【0094】
図35Bにおいて、プールしたVLPの100μlのアリコートを、フェノール(fenol)/クロロホルム抽出前に、25単位のBenzonase(Merck)を用いて37℃で24時間の処理に供した。最終核酸ペレットを、前のものと同じプライマーを用いてRT−PCRに供した。VLPを事前にBenzonaseで処理した場合(レーン2)およびいずれのBenzonase処理も行わない場合の両方において、1037 ntのバンドを観察した。
【0095】
図35Cにおいて、プールしたVLPの100μlのアリコートを、フェノール/クロロホルム抽出前に、1μg RNAse Aを用いて37℃で1時間の処理に供した。総マウスRNAを、RNAse処理の内部コントロールとしてこのサンプルに含めた。フェノール/クロロホルム抽出後、最終核酸ペレットを、2つの異なるセットのプライマー(図35Aにおいて使用した2つのRNA1プライマーおよびマウスGAPDH mRNAに対応する約600nt長のバンドを増幅する2つのプライマー)を用いてRT−PCRに供した。VLPを事前にRNAseで処理した場合(レーン2)およびいずれのRNAse処理も行わなかった場合(レーン3)の両方において、RNA1のバンド(白い矢印)が目に見えたが、GAPDH mRNAが未処理サンプルから増幅され得(黒い矢印)(レーン3)、これはRNAse処理後はほとんど見えない。
【0096】
本発明は例によってのみ記載され、そして本発明の範囲および精神内で維持しながら改変がなされ得ることは、理解される。
【0097】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(技術分野)
本発明は、遺伝子送達の分野、より詳細にはウイルス様粒子(VLP)にパッケージされた改変ノダウイルスRNAを用いた、発現のための遺伝子の送達の分野である。
【0003】
(背景技術)
Nodaviridaeは、二分節のRNAゲノムを有する。換言すれば、Nodaviridaeゲノムは、RNA1およびRNA2と命名された、2つの別個の一本鎖RNA分子からなる。これらは両方とも、同一のビリオン中にパッケージされている。RNA1はRNAレプリカーゼをコードし、RNA2はビリオンキャプシドタンパク質をコードする。フロックハウスウイルス(FHV)において、RNA1は3.1kb長であり、RNA2は1.4kbである。
【0004】
FHV RNA1のレプリカーゼ産物は、このウイルスゲノムに特異的であり、これは、FHVが自律的に複製することを可能にする(Ball et al.(1992)J.Virol.66:2326−34;Gallagher et al.(1983)J.Virol.46:481−89)。天然の状況において、レプリカーゼは高度にテンプレート特異的であり、ウイルスRNA1およびRNA2のみを複製するが、RNA2の非存在下においては自己複製もまた生じる。さらに、FHVは昆虫ウイルスであるにもかかわらず、植物、脊椎動物、および酵母を含む多くの異なる細胞型において自己複製し得る。
【0005】
RNA2およびFHVキャプシドタンパク質の操作は、広範に報告されている。表面ループへのHIVエピトープの挿入が報告されている(例えば、Scodeller et al.(1995)Vaccine 13:1233−39;Buratti et al.(1996)J.Immunol.Methods 197:7−18;Schiappacassi et al.(1997)J.Virol.Methods 63:121−27)。より一般的には、ビリオンは、エピトープ提示系として用いられている(Lorenzi & Burrone(1999)Immunotechnol.4:267−72;WO96/05293もまた参照のこと)。
【0006】
対照的に、FHV RNA1およびレプリカーゼの操作は、追跡されていない。実際、RNA1の自己複製機能は、RNA1およびそのORFの操作に対して非常に敏感であることが示されている(Ball(1995)J.Virol 69:720−727)。
【0007】
RNA1の複製の間に、RNA3と呼ばれる小さなサブゲノムRNAもまた、RNA1の3’末端から転写される。RNA3は、未知の機能を有する以下の2つの小さなタンパク質をコードする:B1(レプリカーゼと同一のオープンリーディングフレームであり、同一の翻訳終止コドンを有する)およびB2(レプリカーゼに関して+1オープンリーディングフレームである)(Ball(1992)J.Virol 66:2335−45;Johnson & Ball(1999)J.Virol.73:7933−7942)。RNA3の転写は、二本鎖RNA+/RNA−中間体が形成される場合に活性になる内部プロモーターにより制御されるようである。
【0008】
本発明の目的は、RNA1分子の改変および操作を可能にして、自己複製するその能力を開発すること、およびこのような改変RNA1分子を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
本発明は、改変ノダウイルスRNA1分子を提供し、この改変ノダウイルスRNA1分子は、このRNA1のレプリカーゼORFの下流に異種挿入を含む。この挿入は、好ましくは、上記RNA1のレプリカーゼORFおよびB2 ORFの下流である。
【0010】
(RNA1分子)
本発明は、ノダウイルスのRNA1分子に基づく。RNA1は、ノダウイルスゲノムを特異的に複製するRNAレプリカーゼをコードし、そしていくつかのノダウイルス(例えば、フロックハウスウイルス(登録番号X77156)、ゴキブリウイルス(登録番号X02396およびK02560)、シマアジ神経壊死ウイルス(AB025018)、パリアコト(pariacoto)ウイルス(AF171942)、ノダムラウイルス(AF174533)、ゴキブリウイルス(NC_001411)およびオヒョウ神経壊死ウイルス(AJ401165))由来の配列が利用可能である。
【0011】
本発明に関して、「ノダウイルスRNA1」配列は、天然で見出される配列、ならびにそれら自体の遺伝子を特異的に増幅する能力を保持するレプリカーゼをコードするそのフラグメント、改変体、および変異体を含む。
【0012】
本発明のRNA1分子は、標準的な分子生物学技術を用いることによりノダウイルスから獲得されるRNA1の改変により調製され得るか、あるいは酵素的および/または化学的手段により合成的に組み立てられ得ることが理解される。
【0013】
(RNA1分子内のORF)
ノダウイルスの利用可能なRNA1配列(上記を参照のこと)は、レプリカーゼ(または「A」)および「B2」ORFの位置を示す。本発明の分子における挿入は、レプリカーゼORFの下流であり、好ましくはB2 ORFの下流でもある。
【0014】
FHVにおいて、RNA1は、3107ヌクレオチド長である。レプリカーゼORFは、ヌクレオチド40〜3033によりコードされ、B2 ORFは、ヌクレオチド2738〜3055によりコードされる。従って、本発明により、FHVのための異種挿入は、ヌクレオチド3033と3107との間、好ましくはヌクレオチド3055と3107との間に置かれる。
【0015】
好ましくは、異種挿入は、レプリカーゼORFの5ヌクレオチドよりも下流(すなわち、FHVにおいては、ヌクレオチド3038の下流)、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ntよりも下流にある。より好ましくは、B2 ORFの5ヌクレオチドよりも下流(すなわち、FHVにおいては、ヌクレオチド3060の下流)、例えば、このORFの10、15、20、25、30、35、40、45、または50ntよりも下流にある。同様に、好ましくは異種挿入は、RNA1の3’末端の5ヌクレオチドよりも上流(すなわち、FHVにおいては、ヌクレオチド3102の上流)、例えば、この3’末端の10、15、20、25、30、35、40、45、または50ntよりも上流にある。RNA1のネイティブの3’末端配列の長さを保持することは、RNA1が、自己複製する能力を保持することの保証を手助けする(Ball(1995)J.Virol 69:720−72)。
【0016】
異種挿入が、レプリカーゼまたはB2 ORFの最後のコドンの3ヌクレオチド内(すなわち、ヌクレオチド3034〜3036または3056〜3058の間)に存在する場合、挿入の5’末端が、ORFのための終止コドン(すなわち、レプリカーゼのためにはヌクレオチド3034〜3036、またはB2のためには3056〜3058における終止コドン)を保持することが好ましい。
【0017】
(異種挿入)
本発明の改変RNA1は、異種挿入を保有する。この挿入は、好ましくはそれ自体の開始コドンおよび終止コドンを有する1つ以上のタンパク質コード領域を含む。
【0018】
挿入は、RNA1に対してネイティブな1つ以上のORFの下流に存在する場合、その翻訳において補助するために、異種挿入の5’部分はまた、cap非依存性の翻訳を指向する配列を含み得る。従って、代表的に、異種配列は、タンパク質コード領域に機能的に連結された内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。C型肝炎ウイルスまたは脳心筋炎ウイルスのIRES、もしくはピコルナウイルス、口蹄疫ウイルス、ECHOウイルス11’、古典的な豚コレラウイルス、c−myc癌原遺伝子など由来のIRESのような任意の適切なIRESが、用いられ得る(例えば、Martinez−Salas(1999)Curr.Opin.Biotechnol.10:458−464)。
【0019】
異種挿入は、コードされたレプリカーゼを介して自己複製するRNA1の能力を破壊しない。従って、改変RNA1は、発現のための目的の遺伝子を送達し得、かつそれ自体の複製を指向し得る。
【0020】
(改変RNA1のパッケージング)
改変RNA1を細胞に送達するために、例えば、ウイルス様粒子(VLP)または偽ビリオン(pseudovirion)中にそれをパッケージングすることが好ましい。
【0021】
RNA2(必要に応じて改変されたRNA2)から発現されるタンパク質を含むノダウイルス粒子が、用いられ得る。このアプローチが用いられる場合、RNA2は、好ましくは、パッケージされる改変RNA1と同一のノダウイルス由来である。
【0022】
しかし、ノダウイルスは昆虫細胞に自生しているので、哺乳動物細胞への送達が所望される場合、異なるパッケージを用いることが好ましい。好ましいパッケージは、パピローマウイルスVLP(例えば、Touze & Coursaget(1998)Nucl.Acid.Res.26:1317−1323;Kawana et al.(1998)J.Virol.72:10298−10300;Muller et al.(1997)Virol.234:93−111;Zhao et al.(1998)Virol.243:482−491;Unckell et al.(1997)J.Virol.71:2934−2939;WO97/46693;WO98/02548など)であり、これは哺乳動物細胞上のレセプターに結合し得る。
【0023】
HPV VLPを用いることは、様々な利点を提供する。第1に、HPV VLPは広範な細胞型に結合し、高レベルの結合が上皮細胞および間葉細胞で観察され、そして低いレベルの抗VLP抗体のみがヒトにおいて観察されている(Le Cann et al. (1995)J Clin.Microbiol.33:1380−1382)。第2に、異なるHPV型のL1タンパク質が同様に発現され得、VLPの使用により誘導される免疫は大部分は型特異的であるので、予め存在する抗HPV抗体の存在は回避され得、そして複数の免疫化が起こり得る。第3に、ノダウイルスRNA1は小さいので、HPV VLPに伴う公知の制限、すなわちキャプシドに包まれる核酸に対する7〜8kbpの上限を克服し得る。従って、ノダウイルスRNAは、他の核酸よりも重要な利点を提供する。
【0024】
パピローマウイルスは、好ましくはHPV−6のようなヒトパピローマウイルスである。VLPキャプシドは、タンパク質L1およびL2を含み得るか、またはL1のみから生成され得る。
【0025】
改変RNA1のパッケージングを容易にするために、パッケージを形成するタンパク質(例えば、VLPにおけるキャプシドタンパク質)は、改変RNA1と特異的に相互作用し得る配列または構造を含むように改変され得る。DNAプラスミドを用いて遭遇する問題と比較すると、RNA/タンパク質相互作用のインビボでの特異性は、ノダウイルスRNAを用いることのさらなる利点である。
【0026】
特に有用なこの型のパッケージング系は、免疫不全ウイルス(例えば、HIV、BIVなど)のtat/TAR相互作用に依存する。この系において、パッケージは、改変RNA1においてTARモチーフ(例えば、最小TAR配列(例えば、最小59マー)またはWO92/02228に記載されるモチーフ)と特異的に相互作用するtatタンパク質由来のモチーフ(例えば、最小tat配列(例えば、HIV tatのアミノ酸48〜59);Derse et al.(1991)J.Virol 65:7012−15;Chen & Frankel(1994)Biochemistry 33:2708−2715;Puglisi et al.(1995)Science 270:1200−1202もまた参照のこと)を含む。従って、本発明の改変RNA1は、TARモチーフをさらに含む。これは、異種挿入内の遺伝子の上流または下流に存在し得るが、好ましくは下流に存在し得る。代替として、TARモチーフは、レプリカーゼORFの上流(すなわち、FHVにおいてヌクレオチド40の前)に配置され得る。パピローマウイルスに基づくパッケージング系において、tat配列は、L1タンパク質に、好ましくはC末端にかまたはその付近に挿入され得る。この領域はキャプシド形成に必須ではないが(Paintsil et al.(1996)Virology 223:238−244)、この配列は、VLPの組み立てる能力を破壊するには及ばない(Muller et al.(1997)Virology 234:93−111)。tatおよびTARの相互作用は、パッケージ中での改変RNA1のパッケージングを生じる。BIV由来のtat/TARの相互作用の使用は、細胞因子を必要としない強力な相互作用なので、この相互作用の使用が好ましい。
【0027】
VLP内への核酸のパッケージングのためのtat/TARの相互作用の使用は、本発明の改変RNA1に限定されないことが理解される。
【0028】
(発明のさらなる局面)
本発明の改変RNA1は、代表的に、正のセンス方向であり、そして一本鎖である。本発明はまた、以下を提供する:(i)本発明のRNA1に相補的な一本鎖核酸;(ii)(i)に相補的な一本鎖核酸;(iii)本発明のRNA1に相補的な配列を含む一本鎖核酸;(iv)(i)に相補的な核酸を含む一本鎖核酸;および(v)鎖の1つが(i)、(ii)、(iii)、または(iv)である二本鎖核酸。用語「核酸」は、RNA、DNA、ならびにPNA(ペプチド核酸)および骨格改変DNA(backbone−modified DNA)またはRNA(例えば、ホスホロチオエートなど)のようなアナログを含む。核酸は、インビトロかまたはインビボでRNAポリメラーゼにより転写されて、本発明の改変RNA1を生成し得ることが理解される。
【0029】
本発明はまた、本発明の核酸を含む(例えば、改変RNA1を含む)VLPを提供する。このVLPは、好ましくはパピローマウイルスVLPである。
【0030】
本発明はまた、免疫不全ウイルスのtatタンパク質由来のモチーフを含むよう改変されたパピローマウイスルL1タンパク質を提供する。
【0031】
本発明はまた、本発明の改変RNA1分子を生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:(a)ノダウイルスRNA1配列を含むかまたはコードする核酸を獲得する方法;および(b)上記RNA1配列中のレプリカーゼORFおよびB2 ORFの下流に異種配列を挿入する工程。FHVが用いられる場合、その複製が28℃未満で最大活性を示すことは、注目されるべきである。
【0032】
本発明はまた、本発明のVLPを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:本発明による核酸を用いて細胞をトランスフェクトする工程;VLPキャプシドタンパク質(必要に応じて改変RNA1に特異的なモチーフを含むよう改変されたタンパク質)をコードする核酸を用いて細胞をトランスフェクトする工程;およびこの細胞からVLPを精製する工程。このプロセスは、好ましくは酵母において実施される。VLPコード核酸およびRNA1コード核酸を同一の酵母に導入するために、一倍体株を接合することが可能である(例えば、キャプシドタンパク質を発現する一倍体株が、RNA1を発現する反対の接合型の一倍体株と接合され得る)。
【0033】
本発明の核酸(特に改変されたRNA1)およびVLPはまた、医薬として使用するために提供される。それらは特に、例えば、遺伝子療法における遺伝子送達に有用である。
【0034】
本発明はまた、核酸配列を細胞に送達するためのプロセスを提供する。このプロセスは、本発明のVLPを上記細胞に導入する工程を包含する。このプロセスは、インビトロ(培養物中の細胞)またはインビボで実施され得る。
【0035】
(ノダウイルス)
ノダウイルスは、アルファノダウイルスとベータノダウイルスに分けられ、そしてノダムラウイルス、ゴキブリウイルス、Boolarraウイルス、フロックハウスウイルス(FHV)、マイマイガウイスル、マナワトゥウイルス、太西洋オヒョウウイルス、トラフグ神経壊死ウイルス、マツカワ神経壊死ウイルス、日本ヒラメ神経壊死ウイルス、Dicentrachus labrax脳炎ウイルス、パリアコトウイルス、アロワナ(Dragon)神経壊死ウイルス、オヒョウ神経壊死ウイルス、Malabaricus神経壊死ウイルス、Redspotted grouper神経壊死ウイルス、Umbrina cirrosaノダウイルス、およびシマアジ神経壊死ウイスルを含む。これらのウイルスのいずれか由来のRNA1分子が、本発明に従い用いられ得る。しかし、分子レベルで最も研究されているノダウイルスであるという理由で、FHVおよびノダムラウイルスが好ましい。ノダウイルスのさらなる詳細は、Garzon & Charpentier(Atlas of invertebrate viruses(Adams & Bonami編)の351−370頁、CRC press(1992))およびHendry(Viruses of invertebrates(Kurstak編)の227−276頁、Marcel Deker(1991))に見出され得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) RNA1のレプリカーゼORFの下流に異種挿入を含む、改変ノダウイルスRNA1分子。
(項目2) 前記異種挿入がまた、前記RNA1のB2 ORFの下流でもある、項目1に記載のRNA1分子。
(項目3) 前記異種挿入が、前記レプリカーゼORFおよびB2 ORFの5ヌクレオチドよりも下流である、項目2に記載のRNA1分子。
(項目4) 前記異種挿入が、RNA1の3’末端の5ヌクレオチドよりも上流である、項目1〜3のいずれかに記載のRNA1分子。
(項目5) 前記異種挿入が、タンパク質コード領域を含む、項目1〜4のいずれかに記載のRNA1分子。
(項目6) 前記異種挿入が前記タンパク質コード領域の上流にIRESを含む、項目5に記載のRNA1分子。
(項目7) 前記RNA1がタンパク質配列と特異的に相互作用し得る配列を含む、項目1〜6のいずれかに記載のRNA1分子。
(項目8) 前記タンパク質配列と特異的に相互作用し得る配列がTAR配列である、項目7に記載のRNA1分子。
(項目9) 前記TAR配列が前記異種挿入内に存在する、項目8に記載のRNA1分子。
(項目10) 項目1〜9のいずれかに記載のRNA1分子を含む、VLP。
(項目11) 前記VLPがパピローマウイルスVLPである、項目10に記載のVLP。
(項目12) 前記VLP L1タンパク質がtat配列を含み、キャプシドに包まれたRNA1分子が項目6〜8のいずれか1項に記載のRNA1分子である、項目11に記載のVLP。
(項目13) tatおよびTARがHIVまたはBIV由来である、項目12に記載のVLP。
(項目14) 項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1に相補的である、一本鎖核酸。
(項目15) 項目14に記載の核酸に相補的である、一本鎖核酸。
(項目16) 項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1に相補的である配列を含む、一本鎖核酸。
(項目17) 二本鎖核酸であって、該鎖のうちの1つが項目14〜16のいずれか1項に記載の一本鎖核酸である、二本鎖核酸。
(項目18) 項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1を産生するためのプロセスであって、(a)ノダウイルスRNA1配列を含むかまたはこれをコードする核酸を得る工程;および(b)該RNA1配列内のレプリカーゼORFの下流に異種配列を挿入する工程を包含する、プロセス。
(項目19) 項目18に記載のプロセスであって、工程(b)が、前記RNA1配列内の前記レプリカーゼおよびB2 ORFの下流に異種配列を挿入する工程を包含する、プロセス。
(項目20) 項目10〜13のいずれか1項に記載のVLPを産生するためのプロセスであって、該プロセスは、細胞を項目14〜17のいずれか1項に記載の核酸でトランスフェクトする工程;細胞をVLPキャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフェクトする工程であって、該タンパク質は、必要に応じて改変されて改変RNA1に特異的なモチーフを含む、工程;ならびにVLPを該細胞から精製する工程を包含する、プロセス。
(項目21) 目的の核酸配列を細胞に送達するためのプロセスであって、該プロセスは、項目10〜13のいずれか1項に記載のVLPを該細胞に導入する工程を包含し、該目的の核酸配列は、該VLP中に含まれる改変RNA1分子である、プロセス。
(項目22) 医薬としての使用のための、項目1〜9のいずれか1項に記載のRNA1。
(項目23) 医薬としての使用のための、項目10〜13のいずれか1項に記載のVLP。
(項目24) 項目10〜13のいずれか1項に記載のVLPを前記細胞に導入する工程を包含する、核酸配列を細胞に送達するためのプロセス。
(項目25) インビトロで実行される、項目23に記載のプロセス。
(項目26) インビボで実行される、項目23に記載のプロセス。
(項目27) VLP内に核酸をパッケージングするための、tat/TAR相互作用の使用。
(項目28) ノダウイルス由来のRNA1配列を含むRNAであって、該RNA1配列がそのレプリカーゼORFの下流に異種挿入を含むという点で特徴的である、RNA。
(項目29) 前記異種挿入がB2 ORFの下流である、項目28に記載のRNA。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1−1】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−2】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−3】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−4】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−5】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図1−6】図1は、FHV RNA1由来のcDNAを示す。レプリカーゼ(40)、B1(2728)、およびB2(2738)の開始コドンは、四角で囲まれている。(a)レプリカーゼ/B1および(b)B2のリーディングフレームは、両方とも完全なゲノムで示される。E.coliで発現されるRapApepフラグメントの開始は、下線である。
【図2】図2は、pFHV[1,0]プラスミドの概略図である。HDVリボザイムは斜線であり、そして転写終結因子は黒塗りである。
【図3】図3は、pFHV[1,0]のRNA1領域での制限部位を示す。
【図4】図4は、RNA1におけるBssHII部位の除去を示す。
【図5】図5は、pFHV−BsshIIΔを示す。
【図6−1】図6は、pFHV−MutΔの構築を示す。
【図6−2】図6は、pFHV−MutΔの構築を示す。
【図7−1】図7は、pSK+−ADH2−RNA1/SpeIの構築を示す。
【図7−2】図7は、pSK+−ADH2−RNA1/SpeIの構築を示す。
【図8】図8は、pBS24.1−6L1を示す。
【図9】図9は、pSL+−ADH2−RNA1−MutΔを示す。
【図10】図10は、pEGFP−1/TARの構築を示す。
【図11】図11は、pFHV−EGFP−1/TARを示す。TARは水平のダッシュで示され、そしてGFPコード領域はドットで示される。
【図12】図12は、pFHV−EGFP−1−TARΔを示す。
【図13】図13は、pFHV−IRES−EGFP−1の構築を示す。IRESは、垂直のダッシュで示される。
【図14】図14は、pFHV−IRES−EGFP−1−b−TARの構築を示す。
【図15】図15は、pBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔ(19.6kb)を示す。
【図16】図16は、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(18.1kb)を示す。
【図17】図17は、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(−)(18.1kb)を示す。
【図18】図18は、pBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−TAR(20.2kb)を示す。
【図19】図19は、図16〜18のベクターで形質転換された酵母由来の総RNAのノーザンブロットを示す。レーン1はネガティブコントロール(AB110由来の総RNA)を示し;レーン2はRepA(+)クローン5であり;レーン3はRepA(+)クローン7であり;レーン4はRepA(−)クローン3であり;レーン5はRepA(−)クローン4であり;レーン6はRepA(+)−GFPである。酵母rRNA 26S(2250bp)および18S(1650bp)もまた示される。
【図20】図20は、図18のベクターで形質転換された酵母由来の総RNAのEGFP−1についてのノーザンブロットを示す。レーン1は、24時間誘導された培養物から抽出されたRNAを示し;レーン2は48時間後であり;レーン3は72時間後であり;レーン4はネガティブコントロール(AB110由来の総RNA)である。
【図21】図21は、レプリカーゼおよびB2のHisタグ化E.coli発現のための構築物を示す。
【図22】図22は、図21の構築物から発現されたタンパク質のSDS−PAGEを示す。22(A)のレーン1はMWマーカーおよび画分14であり;レーン2〜9は画分15〜22であり;レーン10はカラム流出物である。22(B)のレーン1は細胞溶解物の可溶性画分であり;レーン2はカラム流出物であり;レーン3〜11は画分21〜29であり;レーン12はMWマーカーである。
【図23】図23は、RepApepの質量分析を示す。
【図24】図24は、図15のベクターで形質転換された酵母由来の総タンパク質抽出物のウェスタンブロットである。レーン1〜5は、5匹の免疫マウス由来の血清と1:5000希釈にて免疫反応させた抽出物であり;レーン6は、免疫前の血清混合物を含むネガティブコントロールである。
【図25】図25は、72時間にわたる種々の酵母株由来の総タンパク質抽出物のウェスタンブロットである。レーン1は、ネガティブコントロールであり;レーン2は、48時間でのpBD−R1−G/TΔクローン5由来の総タンパク質抽出物であり;レーン3〜5は、24、28、および72時間でのRepA(+)−GFP株(クローン番号7)の総タンパク質抽出物であり;レーン6〜8は、クローン番号9についての同一物を示す。
【図26】図26は、Rep(+)−GFP株由来の総タンパク質抽出物のウェスタンブロットである。レーン1は、ネガティブコントロール(AB110由来の総タンパク質抽出物)である。レーン2は、24時間誘導された培養物由来のタンパク質を示し;レーン3は48時間後であり;レーン4は72時間後である。
【図27】図27は、pBS−ADH2/GAP−6L1Δ4−Tatの構築を示す。
【図28】図28は、抗6L1(1:5000)を用いた非還元状態下での、CsCl精製された6L1Δ4−tatタンパク質のウェスタンブロットを示す。
【図29】図29は、酵母におけるVLP中の改変RNA1の発現およびパッケージングを示す。
【図30】図30は、酵母株RepA(−)(レーン2は24時間培養、レーン3は48時間培養)、2つの異なるRepA(+)株(レーン4およびレーン5は24時間培養、レーン6およびレーン7は48時間培養)、および株RepA(+)−IRES−EGFP−/bTar(レーン8は24時間培養、レーン9は48時間培養)由来の総タンパク質のノーザンブロットを示す。ネガティブコントロールRNA(レーン1)およびRNA分子量マーカーもまた示される。矢印は、RNA3に対応するシグナルの位置を示す。
【図31】図31は、図30の(1)レーン3および(2)レーン6由来のRNAのノーザンブロットを示す。
【図32】図32は、図30に記載されるノーザンブロットを示すが、異なるプローブを用いている。矢印は、RNA1マイナス鎖に対応するシグナルの位置を示す。
【図33】図33は、48時間培養された酵母株RepA(−)(レーン2)、RepA(+)(レーン3)、RepA(+)−EGFP/hTar(レーン4)、およびRepA(+)−IRES−EGFP/bTar(レーン5)由来の総RNAについてのプライマー伸長実験を示す。ネガティブコントロールRNA(レーン1)およびインビトロで転写されたRNA1についてのポジティブコントロール(レーン6)もまた報告される。レーン4の文字a、b、c、およびdは、RNA1 5’配列上で示されるヌクレオチドに対応するバンド(この中の3つはまた、レーン3およびレーン5においても見られる)を同定する。
【図34】図34は、図33で報告された同じ総RNAを用いたS1マッピング実験を示す。ネガティブコントロールRNA(レーン1)およびインビトロで転写されたRNA1についてのポジティブコントロール(レーン6)を用いたS1反応の結果もまた報告される。
【図35】図35は、二倍体のHPV−6VLP(RNA1−IRES−GFP/hTarおよびHPV−6 L1/hTATを同時発現する)から抽出された核酸を用いたRT−PCRにより獲得された結果を示す。35Aは、酵母コントロールRNA(レーン1およびレーン3)およびVLP由来の核酸(レーン2およびレーン4)を示し;35Bは、酵母RNA(レーン1)、および未処理VLP(レーン3)かまたはベンゾナーゼ処理されたVLP(レーン2)のいずれか由来の核酸を示し;35Cは、内部コントロールとしてマウスRNAの存在下での、酵母RNA(レーン1)、および未処理VLP(レーン3)かまたはRNAse A処理されたVLP(レーン2)のいずれか由来の核酸を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明を実施するための様式)
(FHVのRNA1)
FHVゲノム由来のRNA1の配列は、GenBankにおいて登録番号X77156として与えられる。このRNA1に対応する二本鎖cDNA(3107bp)が、図1に示される。
【0038】
このcDNAは、Ball(J.Virol.(1995)69:720−727)により記載されるプラスミドpFHV[1,0]中に存在し、引き続く実験に用いられた。pFHV[1,0]はまた、以下を含む:RNA1配列から上流の18bpのT7プロモーター(このプロモーターとRNA1 5’末端との間に単一のGが存在する);RNA1配列の下流に位置するデルタ肝炎ウイルスリボザイム(89bp)(その結果、リボザイムの開裂は、RNA1のネイティブな3’末端を生じる);およびリボザイム活性を補助すると考えられる136bpのT7転写終結因子。これは、図2に示される。
【0039】
(クローニング目的のためのRNA1の改変)
クローニングを容易にするために、RNA1に対して種々の変更がなされた。
【0040】
(BssHII部位の除去)図3に示されるように、ネイティブのRNA1配列は、2つの近接するBssHII制限部位(ヌクレオチド1270および1278)を含む。これらの中の1つを、レプリカーゼアミノ酸配列に影響を与えない静的な変異を導入することにより除去した。
【0041】
RNA1のSphI/BsshIIフラグメントを、プライマーRI900−fおよびRI1272M−r(表I)を用いて生成されたPCRフラグメントにより置換した。第1のプライマーは、クローニングに必要なSphI部位を含んだ。一方、逆方向プライマーの配列は、1271位におけるGからAへの置換を含み、それによって、レプリカーゼORFを変更することなく、2つのBssHII制限部位の1つを除去した(図4)。得られたプラスミドをpFHV−BsshIIΔを呼んだ(図5)。
【0042】
(付加的な部位の導入)異種配列をRNA1に挿入するために、以下の2つの付加的な制限部位を導入した:3062位にSacII部位、3072位にNotI部位(レプリカーゼおよびB2 ORFの翻訳終止コドンから下流)。さらに、唯一のSalI部位を、pFHV[0,1]のT7転写終結因子よりも下流(ヌクレオチド3337)に挿入した。これらの部位を、以下のようにPCR増幅により導入した(図6):
−プライマーApaI−fおよびDRS−r(表I)は、ApaI部位(2349位)と3101位との間のRNA1のフラグメントを増幅した。SacIIおよびNotI制限部位の導入を、DRS−rプライマー中に2つの配列を導入することにより達成した(図6a)。
−プライマーDRS−f(DRS−rの相補鎖)およびRI−KpnI−rは、ヌクレオチド3039からKpnI部位(3368位)までの領域にわたるフラグメントを増幅した(図6a)。
【0043】
2つのDNAフラグメントの融合物を、等量の2つの増幅産物を変性および混合することにより獲得した。これらは、2つのPCRフラグメント中に存在する62bpの相補的領域によりアニールした。dNTPのみの存在下でのTaqポリメラーゼを用いた伸長サイクルおよびTaqならびにプライマーApaI−fおよびRI−KpnI−rの存在下での増幅サイクルの後、平滑末端のDNA融合フラグメントを獲得し(図6b)、次いで、このフラグメントをpCR2.1ベクターにクローン化してDNA配列を調べた。ApaI−KpnIフラグメントをpCR2.1から切り取り、pFHV[1,0]およびpFHV−BsshIIΔの異種フラグメントを置換するために用いて、pFHV−Mut(示されていない)と名付けられたプラスミドおよびpFHV−MutΔ(図6c)と名付けられたプラスミドを獲得した。これらのプラスミドは、唯一のBsshII部位および新規のSacII、NotI、およびSalI制限部位を有するRNA1 cDNA全体を含んだ。
【0044】
(酵母ベクターへのRNA1のクローニング)
酵母においてRNA1(およびその改変バージョン)を発現させるために、cDNAを酵母ベクターの、酵母特異的プロモーターの下流にクローン化した。このベクターは、レプリカーゼをコードし、そして(リボザイム開裂後に)自己複製に適合する5’および3’末端を有するRNA1分子の転写を指向する。全体的なアプローチは、図7に示される。
【0045】
(pBluescript SK+におけるADH2/GAPのクローニング)発現に用いられたプロモーターは、ADH2/GAPプロモーターであった。このプロモーターの供給源として、酵母発現ベクターpBS24.1−6L1(図8;WO00/09699もまた参照のこと)を用いた。DNAフラグメントADH2/GAP−6L1を、SacIおよびSalIによる消化により、プラスミドpBS24.1−6L1から抽出し、そして同一の酵素で消化したpBluescript−SK+(Stratagene)中にクローン化した。得られた構築物を、pSK+−ADH−6L1と名付けた。
【0046】
(酵母ADH2/GAPプロモーターのPCR増幅)酵母プロモーターの一部を、SacI部位において酵母プロモーターにアニールするプライマーADH/Sac(表I)、および付加的にRNA1由来の13ヌクレオチドを含む6L1遺伝子との融合物においてプロモーターにアニールする逆方向プライマーP−R1revを用いてpSK+−ADH−6L1上で実施したPCRにより増幅した(図7a)。
【0047】
(RNA1/SphのPCR増幅)pFHV[1,0]由来のRNA cDNAの一部を、RNA1の5’末端(+1位置)でアニールするプライマーRNA1−f、およびヌクレオチド1021の唯一のSphI制限部位でアニールする逆方向プライマーRNA1−rを用いて増幅した(図7b)。
【0048】
(ADH2−RNA1/Sph融合物)この融合物を、図7aおよびbの等量の2つの増幅産物を変性および混合し、これによって両方のPCRフラグメントにおいて存在する13bpの相補的領域のアニーリングを助けることにより獲得した(図7c)。dNTPのみの存在下でのTaqを用いた伸長サイクルおよびTaq、ならびに、プライマーADH/SACおよびRNA1−rの存在下での増幅サイクルの後、融合平滑末端のDNAフラグメントを獲得した。
【0049】
(pCR2.1におけるADH2−RNA1/Sphのクローニング)この平滑末端のPCR産物をpCR2.1(Invitrogen)中にクローン化し、プラスミドpCR−ADH2/RNA1を得た(図7d)。そのDNA配列を調べて、そして期待されるプロモーター/RNA1融合配列TAAATCTA/GTTTCGAAAを確認したが、いくつかの変異が、増幅産物の他の領域に存在した。しかし、正確な増幅配列を有する唯一のクローンが、さらなる工程に必要なSphI部位を除去された変異を有した(図7d)。
【0050】
(pSK+−ADH2−6L1におけるADH2/RNA1融合産物のクローニング)この問題を克服するために、この融合産物をSacI−SpeフラグメントとしてpCR2.1から切り取り、同一の制限酵素で消化されたpSK+−ADH2−6L1中にクローン化し(図7e)、それによって最終産物pSK+−ADH2−RNA1/SpeIを獲得した(図7f)。
【0051】
(酵母ベクターへの改変RNA1の導入)pFHV−BsshIIΔ(図5)由来のEagI−KpnIフラグメントを、pSK+−ADH2−RNA1/SpeI(図7f)の対応するフラグメントと置き換えて挿入し、pSK+−ADH2−RNA1−BsshIIΔと名付けられた構築物を作製した。この構築物におけるBsshII−KpnIフラグメントを、pFHV−MutΔ(図6c)由来の対応するフラグメントで置換し、pSK+−ADH2−RNA1−MutΔと名付けられたプラスミドを生成した(図9)。
【0052】
(異種配列の挿入)
異種挿入をRNA1配列の内部に作製した。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するための遺伝子(Chalfie et al.(1994)Science 263:802−806)を、HIV由来のTAR配列と共に、レプリカーゼおよびB2のオープンリーディングフレームの下流に挿入した。
【0053】
異種挿入物を作製するために、開始点は、BsrgIおよびNotIで消化されたプラスミドpEGFP−1(Clontech)であった。BsrgI(5’)およびNotI(3’)粘着末端を有し、かつ、HIV−1 TAR配列(HIV−1ゲノムのヌクレオチド454〜520、登録番号K03455)を含むdsDNA配列を、2つの相補的なオリゴヌクレオチド(TAR−fおよびTAR−r)をアニールさせることにより獲得し、そしてこれを消化されたpEGFP−1中に挿入して、pEGFP−1/TAR(図10)を形成した。TARオリゴはEGFP ORFを保持し、そしてこれはまた、BsrgI部位からすぐ下流(その直後に新規BstEIIおよびNheI制限部位が続く)に翻訳終止コドンを含んだ。TAR配列はまた、首尾よくレプリカーゼORFの上流に挿入された。
【0054】
HIV−1 TAR配列の前にGFPコード配列を含む、pEGFP−1/TAR由来のSacII−NotIフラグメントを同一の制限酵素で消化したpFHV−Mutにクローン化し、pFHV−EGFP−1/TARと名付けられたプラスミドを獲得した(図11)。このプラスミドのSphI/SacIIフラグメントを、pFHV−MutΔ由来の対応するフラグメントで置換し(図6c)、唯一のBsshII制限部位を有するpFHV−EGFP−1/TARΔ(図12)を生成した。
【0055】
(異種挿入物の発現の促進)
ポリシストロン性RNAは、目的の2つの遺伝子間への内部リボソーム侵入部位(IRES)の挿入によって哺乳動物において翻訳され得(Parksら(1986)J.Virol.60:376−384)、これによって、第2の(下流)遺伝子のcap非依存性翻訳を可能にする。従って、異種挿入からの発現を促進するために、脳心筋炎ウイルス由来のIRESを、EGFP−1遺伝子の前に挿入した。このIRESは、代表的に、哺乳動物細胞においてのみEGFPタンパク質の翻訳を提供する。なぜなら、IRES媒介翻訳は、酵母において選択的に阻害されるからである。(Venkatesanら(1999)Nucl.Acids Res.27:562−572)。
【0056】
プラスミドpCMV−IRES/EGFP−1(図13)を、EcoRIで消化し、klenow酵素を用いてこの部位を平滑末端にし、この酵素の不活化後、NotIを用いて消化して、EGFP−1遺伝子に融合したEMCV IRESを含む5’平滑化−3’NotIフラグメントを作製した。同様に、プラスミドpFHV−MutΔ(図6c)を、SacIIで消化し、klenow酵素で処理し、次いで、NotIを用いて消化した。IRES−EGFP−1フラグメントを、消化したこのプラスミドにクローン化し、pFHV−IRES−EGFP−1(図13)を得た。
【0057】
この構築物から発現されるRNAのパッケージングを補助するために、BIV由来のTAR(ヌクレオチド5〜30のBIVゲノム、登録M32690)を、EGFP遺伝子の下流に挿入した。TAR配列を、NotI適合性の粘着末端を有する2つの相補オリゴヌクレオチド(b−TAR−fおよびb−TAR−r)をアニーリングすることによって構築した。これはまた、2つの新規な制限部位(BstEII(5’NotI部位の隣)およびXhoI(3’NotI部位の隣)を導入した。二本鎖NotIフラグメントを、NotI消化したpFHV−IRES−EGFP−1にクローン化し、pFHV−IRES−EGFP−1/b−TAR(図14)を得た。NotIフラグメントの正確な向きを、確認した。
【0058】
(酵母発現ベクターへのクローニング)
4つの酵母発現プラスミドを、以下の基本的な5’から3’の配置を用いて構築した:酵母特異的プロモーター;改変RNA1;HDVリボザイム;T7ターミネーター;酵母ポリA部位。
【0059】
最初に、SacI−BsshIIフラグメントのpBS24.1−6L1(図8)を、pSK+−ADH2−RNA1/BsshIIΔ由来の対応するフラグメントと置換し、プラスミド pBS−ADH2−RNA1/BsshIIΔ−6L1を得、ここで、RNA1 cDNAの一部は、L1遺伝子配列の3’末端に融合されていた(示さず)。これを、以下のように操作した:
1.BsshII−SalI L1フラグメントを、pFHV−EGFP−1/TARΔ由来のBsshII−SalIフラグメントと置換して、pBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔ(図15)を得た。
2.BsshII−SalI L1フラグメントを、pFHV−MutΔ由来のBsshII−SalIフラグメントと置換して、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(図16)を得た。
3.pBS−ADH2−RNA1−MutΔ中の特有のBsshII部位(1273)を充填し(レプリカーゼORFの妨害を伴う)、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(−)(図17)を作製した。
4.pBS−ADH2−RNA1−MutΔ中のBsshII−SalIフラグメント(改変RNA1 cDNA配列の一部を含む)の、pFHV−IRES−EGFP−1/b−TAR由来の対応するBsshII−SalIフラグメント(IRES−EGFP−1/b−TARを含む)での置換によって、pBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−TAR(図18)という名のプラスミドを作製した。
【0060】
(酵母の形質転換)
プラスミドpBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔ、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ、pBS−ADH2−RNA1−MutΔ(−)およびpBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−TAR(図15〜18)を、実験室において以前に得たHPV−16 L2タンパク質を発現するAB110菌株(WO00/09699)に形質転換することによって導入した。生じた菌株を、それぞれ、pBS−RI−G/TΔ(選択したクローン4および5)、pBS−RI−MutΔ(選択したクローン1および3)、pBS−RI−MutΔ(−)(選択したクローン5および7)およびpBS−RI−IRES−G/b−TAR(選択したクローン5および9)と命名した。
【0061】
(自己複製の確認)
(RNA複製の確認)総RNAを、菌株pBS−RI−MutΔ、pBS−RI−MutΔ(−)およびpBS−RI−IRES−G/b−TARから抽出して、それぞれ、RepA(+)、RepA(−)およびRepA(+)−GFPと標識した。これらのRNAを、c−と標識したAB110菌株由来のネガティブコントロールRNAと一緒に、プライマーApaI−fおよびrepA−Revを用いてpFHV[1,0]に対して実行したPCRによって得た非放射性DNAプローブ(BrighStar Psoralen−Biotin標識キット,Ambion)(600bp)を用いて、ノーザンブロットによって分析した。
【0062】
図19は、結果を示し、高いハイブリダイゼーションシグナルは、レプリカーゼORFを発現するように設計された酵母クローンから抽出されたRNAでのみ(RNA1配列が挿入を有さない場合(レーン2および3)およびIRES−EGFP/bTAR配列がレプリカーゼおよびB2 ORFの下流に導入されるされる場合(レーン6)の両方において)検出されることを示す。かなり弱いシグナルが、レプリカーゼORFが妨害されたプラスミドを用いて形質転換された酵母クローン由来のRNA(レーン4および5)を用いて検出され、一方、ネガティブコントロールRNAを用いてシグナルは、検出されない。
【0063】
これらの結果は、レプリカーゼが、異種挿入物(外来遺伝子)が野生型RNA1配列に導入されたとしても、RNA1の自己複製を維持し得ることを確認する。
【0064】
自己複製する改変RNA1がIRES−EGFP/b−TAR配列を含んでいたことを確認するために、ノーザンブロットを、全EGFP領域の非放射性DNAプローブを用いて実行した。この実験によって、24、48、および72時間における組換えRNA1の発現を確認した(図20)。
【0065】
(タンパク質発現の確認)RNAレベルでの自己複製の確認と同様に、タンパク質発現をまた、抗レプリカーゼ抗体を用いてアッセイした。
【0066】
抗レプリカーゼ抗体を得るために、レプリカーゼのC末端部分(RepApepと称されるDVWEK...SNNRK)を、E.coli中で発現させた。このタンパク質は、完全B1タンパク質を含み、従って有利に、抗RepApep抗体が、B1発現ならびにレプリカーゼを検出するはずである。同じ領域をまた、+1フレームシフトさせて発現させ、細菌で発現されるB2タンパク質を得た。B1およびB2タンパク質の検出によって、自己複製を確認した。
【0067】
レプリカーゼORFのRepApep部分を、NheI(5’)およびXhoI(3’)制限部位を含むプライマーRepA−dirおよびRepA−revを用いてPCR増幅した。PCR平滑末端産物を、pCR−BluntII−TOPO(Invitrogen)にクローニングし、そして異なるクローン由来の挿入物の配列を、確認した。NheI(5’)−XhoI(3’)フラグメントを、2つの制限酵素を用いた消化によって正確なクローンのうちの1つから抽出し、そしてpTrc−HisA(Invitrogen)にクローン化し、ORFを含むpTrc−RepApep−His6と命名されたプラスミド(ここで、RepApepはヘキサヒスチジンタグとインフレームであった)(図21a)を作製した。
【0068】
全B2 ORFを、同じNheI部位およびXhoI部位を含むプライマーであるB2−dirおよびB2−revを用いたPCRによって増幅した。PCR産物を、2つの酵素を用いて消化し、pTrc−HisA(Invitrogen)に直接クローン化し、ORFを含むpTrc−B2−His6と命名されたプラスミド(ここで、B2は、ヘキサヒスチジンタグとインフレームであった)(図21b)を作製した。
【0069】
2つの組換えタンパク質のいずれかを発現する細菌クローン由来の総可溶性タンパク質の抽出物を、Ni−NTA樹脂(Hoffmann−La Roche)を用いてIMACに供し、RepApepおよびB2タンパク質が富化された画分を、収集した(図22)。RepApepタンパク質は、SDS−PAGEにおいて予期せぬ移動プロフィールを示し、そして精製したタンパク質を、質量分析法に供し(図23)、これによって予期した15〜16kDaのMWを確認した。
【0070】
富化されたタンパク質を含む分画をプールし、PBSに対して透析し、そしてタンパク質含量を、BCA試験(Pierce)を用いて測定した。このタンパク質を、5匹のマウスの群を、3回(repApep、50μg/用量)または4回(タンパク質B2、25μg/用量)のいずれかで2週間間隔で免疫するために使用した。ワクチンを、200μlの抗原および同じ容量のMF59を用いて腹腔内(IP)投与した。[Ottら(1995)Vaccine designの277〜296頁。The subunit and adjuvant
approach(Powell & Newman編)Plenum Press]。免疫前血清を、免疫の前に収集し、そして血清サンプルを、各免疫後に2週間で採取した。
【0071】
RepApepを用いて免疫した5匹のマウスの血清サンプルを、酵母菌株pBS−RI−G/TΔ(クローン4)から調製した総タンパク質抽出物に対して1:5000希釈で試験し、約110kDaのタンパク質の検出を、これらの全てにおいて観察し、これは酵母によって発現されるレプリカーゼの存在と一致した(図24)。
【0072】
図24のレーン4に使用した同じ希釈の血清を、変化させた期間、誘導条件下で増殖させた異なる酵母菌株由来の総タンパク質抽出物に対するウエスタンブロット分析に使用した。この実験によって、RNA1レプリカーゼが、改変RNA1を発現する菌株において、24、48、および72時間目に存在することを確認した(図25)。
【0073】
図24のレーン4で使用した血清を、pBS−RI−G/TΔを保有する酵母菌株から、24、48、および72時間の誘導で調製された総タンパク質抽出物に対するウエスタンブロット分析に使用した(図26)。タンパク質のバンド(レーン2および3)を、20kDaのMWマーカーと7kDaのMWマーカーとの間で検出した。これは、ネガティブコントロール抽出物(レーン1)および誘導後72時間で調製された抽出物(レーン4)において存在しない。これは、酵母におけるB1タンパク質の合成と一致し、再び、改変RNA1の自己複製が確認された。72時間目におけるB1タンパク質の非存在は、哺乳動物細胞において以前に得られたB1およびB2発現データと一致する[Johnson & Ball (1999)J.Virol.73:7933−7942]。
【0074】
(RNA3発現の確認)総RNAを、24時間および48時間増殖させたプラスミドpBS−ADH2−RNA1MutΔ(−)、pBS−ADH2−RNA1MutΔおよびpBS−ADH2−RNA1−IRES−EGFP−1/b−Tarを発現する酵母菌株から抽出し、そしてそれぞれ、RepA(−)、RepA(+)およびRepA(+)IGFP/b−Tarと標識した。これらのRNAを、図19のような非放射性二本鎖DNAプローブを用いたノーザンブロット分析によって分析した。図30は、フィルムを過剰に露光することによって、移動するRNA種に対応する弱いシグナルが明らかになることを示し、これは、RNA3が菌株RepA(+)の24時間および48時間(レーン4〜7)の両方で検出されることを予想する。ノーザンブロットを、レーン6由来のRNAを用いて長期間アガロースゲル上で実行し、そのフィルターを、RNA3が存在した領域のみを含むように、ハイブリダイゼーション前に切断した(図31)。これによって、RNA3の存在を確認する。菌株RepA(+)IGFP/b−Tar由来のRNAの場合(図30、レーン8および9)、挿入に起因してよりゆっくりと移動する対応するRNA3は、おそらく、強いRNA1ハイブリダイゼーションシグナルによってマスクされ、観察され得なかった。
【0075】
(RNAマイナス鎖の確認)24時間および48時間増殖させた菌株RepA(−)、RepA(+)およびRepA(+)IGFP/b−Tarから抽出したRNAを、鎖特異的非放射性プローブ(BrightStar Psoralen−Biotin標識キット、Ambion)を用いたノーザンブロットによって分析し、RNAマイナス鎖を検出した。鎖特異的プローブは、SacIIで直鎖にされたプラスミドpFHV−MutΔを用いることによって得たインビトロ転写物であった。図32は、予期したサイズのRNAに対応する強いハイブリダイゼーションシグナルが、レプリカーゼタンパク質を発現するクローンにおいてのみ(RNA1配列が挿入を有さない場合(レーン4および5)およびIRES−EGFP/b−Tar配列がB2 ORFの下流に導入されている場合(レーン6および7)の両方において)検出されることを示す。コントロールRNA(レーン1)およびレプリカーゼORFが妨害されている場合(レーン2および3)、シグナルは検出されない。
【0076】
(RNA1のプライマー伸長およびS1マッピング分析)標準的なプライマー伸長分析を、菌株RepA(−)、RepA(+)およびRepA(+)IGFP/b−Tar由来の総RNAに対してAMV逆転写酵素およびT4キナーゼ標識したオリゴヌクレオチドRl−120を用いて実行した。
【0077】
同じプライマーを用いてプラスミドpSK+−ADH2−RNA1/SpeI(図7f)に対して実行したコントロール配列と共に、伸長産物を8%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲル上で泳動した。図33は、より短い伸長産物が検出され得ることを示す。
【0078】
S1マッピング分析を、同じRNAを用いて実行した。プローブは、オリゴAZ15−for(プラスミド中のnt 6285)およびR1−120を用いてプラスミドpSV40−FHV[0,0]から得た二本鎖PCRフラグメントであった。このPCRフラグメントを、T4キナーゼを用いて標識し、NcoIを用いて消化し、検出されるmRNAの同じ極性を有する鎖から放射性標識を、取り除き、そしてゲル精製した。放射性プローブのアリコートを、総RNAにハイブリダイズさせ、そしてS1ヌクレアーゼを用いた消化を、標準的な条件下で実行した。コントロールとして、pFHV[1,0]由来のT7でインビトロ転写されたRNA1をまた、このプローブに対してハイブリダイズさせ、そしてS1消化した。S1処理された産物を、プライマーR1−90revを用いて獲得しかつRNA1に相補的であるDNA配列と共に、8%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲル上で泳動した。
【0079】
図34に示されるように、全長RNAに対応するバンドを、GFPおよびIRES−GFP挿入を有さないかまたは有するレプリカーゼAを発現するサンプルで検出し得た(レーン3、4および5)。
【0080】
(RNA1の5’末端のクローニングおよび配列決定)菌株RepA(+)−IGFP/b−Tar由来の総RNAを使用して、RNA1種の5’末端をクローン化した。クローニングは、Ambion FirstChoiceTM RLM−RACE Kit(これは、キャップされたmRNA分子の選択的なクローニングを可能にする)を用いることによって実行した。使用したプライマーは、以下であった:
1)R1−revを用いた逆転写
2)キットで供給される外部RNAアダプタープライマーおよび逆方向プライマーAZ−9rev(RNA1上のnt426)を用いた外部PCR
3)キットで供給される内部RNAアダプタープライマーおよびR1−120を用いた内部PCR。
【0081】
最終PCR産物のクローニングを、pZero平滑ベクター(Invitrogen)中に実行した。10個のクローンの配列決定によって、これら全てのクローン化された配列が、AAAACAG(RNA1配列のヌクレオチド16)で始まることが明らかになった。これは、図33において示される産物cに対応する。従って、図33のバンドbは、cの分解産物を示し得、そしてバンドbは、キャップされた形態であり得る。
【0082】
(RNA3の5’末端のクローニングおよび配列決定)同じ実験手順を使用することによって、RNA3の5’領域を、同じ酵母クローンからクローン化した。使用したプライマーは以下であった:
1)AZ−5rev(RNA1のnt 3101)を用いた逆転写
2)キットで供給される外部RNAアダプタープライマーおよび逆方向プライマーAZ−5revを用いた外部PCR
3)キットで供給される内部RNAアダプタープライマーおよびR3−2809rev(RNA1上のnt 2830)を用いた内部PCR。
【0083】
最終PCR産物を、NcoI(RNA1上のnt 2801)およびBamHI(内部アダプタープライマー内)を用いて消化し、そして同じ酵素を用いて消化したpTRC−HisB(Invitrogen)にクローン化した。
【0084】
RepA(+)菌株由来のRNAを用いて実行したRT−PCRからの10個のクローンの配列決定によって、各場合での同じ配列(RNA1のヌクレオチド2721で始まる(GTTACCAA...))が明らかになった。これは、文献ですでに報告されたRNA3開始部位に対応する。
【0085】
RepA(+)−IGFP/b−Tar菌株由来のRNAを用いて実行したRT−PCRからの18個のクローンの配列決定によって、いずれもRNA3転写開始部位に対応しないが、これらの全てが、RNA1に属する上流の配列で開始することが明らかになった。
【0086】
(HPV VLPにおけるパッケージング)
TAR挿入物を保有する改変RNA1のパッケージングを促進するために、HPV−6のL1コートタンパク質を、相補的なtatモチーフをそのC末端に含むように改変した。
【0087】
これを達成するための酵母発現ベクターの構築は、いくつかの工程を含んだ(図27)。最初に、プラスミドpBS24.1−6L1(図8)を、BsshIIおよびSalIを用いて消化し、このようにしてL1タンパク質の最後の4アミノ酸を排除した。このプラスミドは、酵母においてHPV−6 L1キャプシドタンパク質を発現する。相補的なオリゴヌクレオチド6L1Δ4および6L1Δ4invをアニーリングすることによって得た短いBsshII−SalI dsDNAを挿入し、これによって、L1 ORFを再構築し、これに翻訳終止コドンおよび新しいNotI制限部位を与えた。生じた酵母発現プラスミドを、pBS24.1−6L1Δ4と命名した。tatのHIV−1 TAR−結合ドメイン(アミノ酸36〜72)のPCR増幅を、プライマーTat−dirおよびTat−revを用いることによってHIV−1菌株IIIBのcDNAを含むプラスミドに対して実行し、これはまた、5’末端にBsshII部位を、そして3’部位にNotIおよびSalI部位を含んだ。生じた平滑末端のフラグメントを、pCR2.1プラスミドにクローン化し、そして配列決定した。BsshII−SalIフラグメントを、pCR2.1から抽出し、そして同じ制限酵素を用いて消化したpBS24.1−6L1Δ4に連結した。生じたプラスミドを、pBS24.1−6L1Δ4−Tatと命名した。
【0088】
pBS24.1−6L1Δ4−Tatを、実験室で以前に獲得しかつHPV−6 L2タンパク質を発現するJSC310菌株(WO00/09699)への、形質転換によって導入した。形質転換実験からの異なるクローンを、6L1Δ4−Tat発現に関して分析し、クローン2を、更なる実験のために選択した。
【0089】
クローン2を、誘導条件下で増殖させ、VLPの塩化セシウム(CsCl)勾配精製を、WO00/09699に記載されるように実行した。1.28〜1.29g/cm3の密度に対応するCsCl分画を、非還元条件下のSDS−PAGEで泳動し、抗6L1抗体を用いたウエスタンブロットによって分析した(図28)。115kDaのMwのタンパク質マーカーよりもゆっくりと移動したバンドの検出は、異なるL1/Tat単量体間でジスルフィド結合が形成されることを示し、これは、HPV VLPの効率的な自己アセンブリの公知の必要条件である(Sappら(1998)J.Virol.72:6186−89)。
【0090】
レプリカーゼの発現、TAR挿入物を保有する改変RNA1の自己複製、L1−Tatの発現、および改変RNA1のパッケージングが、図29に示される。全ての工程は、同じ酵母細胞で起こり、目的の遺伝子を哺乳動物細胞に送達するための感染性VLPを生じる。
【0091】
プラスミドpBS24.1−6L1Δ4−Tatを含む酵母菌株JSC310(クローン2)を、プラスミドpBS−ADH2−RNA1−EGFP−1/TARΔを含む菌株AB110と接合させ、組換えRNA1誘導体(GFP遺伝子およびヒトTAR配列を含む)および組換えHPV6 L1/hTATタンパク質を同時発現する二倍体クローンを得た。接合実験からの異なるクローンを、L1およびレプリカーゼAタンパク質発現に関して試験し、そしてRNA1−EGFP−1/TAR転写レベルに関して試験した。1つの二倍体クローンを選択し、そして誘導条件下で増殖させた。VLPのCsCl勾配精製を、WO00/09699に記載されるように実行した。
【0092】
1.28〜1.29g/cm3の密度に対応するCsCl分画をプールし、そしてPBSに対して透析した。透析したVLPを、以下の異なる手順に従って実行した異なる実験に使用し、そして図35に報告する。
【0093】
図35Aにおいて、VLPを、フェノール沈澱、フェノール−クロロホルム沈澱、クロロホルム沈澱、およびエタノール沈澱で処理し、タンパク質を欠く材料を得た。水中に懸濁した最終核酸ペレットのアリコートを、さらなる処理をいずれも行わずに、OneStep RT−PCRキット(Qiagen)を用いてこのキットの指示書に従ってRT−PCRに供した。使用したプライマーは、R1−235for(RNA1上のnt 235)およびR1−1272M−rであり、予期した1037 ntのバンドを生じた(レーン2および4、これらは、2つの異なるRT−PCR分析で繰り返した同じサンプルである)。関連しない酵母RNAを、コントロールとして含めた。
【0094】
図35Bにおいて、プールしたVLPの100μlのアリコートを、フェノール(fenol)/クロロホルム抽出前に、25単位のBenzonase(Merck)を用いて37℃で24時間の処理に供した。最終核酸ペレットを、前のものと同じプライマーを用いてRT−PCRに供した。VLPを事前にBenzonaseで処理した場合(レーン2)およびいずれのBenzonase処理も行わない場合の両方において、1037 ntのバンドを観察した。
【0095】
図35Cにおいて、プールしたVLPの100μlのアリコートを、フェノール/クロロホルム抽出前に、1μg RNAse Aを用いて37℃で1時間の処理に供した。総マウスRNAを、RNAse処理の内部コントロールとしてこのサンプルに含めた。フェノール/クロロホルム抽出後、最終核酸ペレットを、2つの異なるセットのプライマー(図35Aにおいて使用した2つのRNA1プライマーおよびマウスGAPDH mRNAに対応する約600nt長のバンドを増幅する2つのプライマー)を用いてRT−PCRに供した。VLPを事前にRNAseで処理した場合(レーン2)およびいずれのRNAse処理も行わなかった場合(レーン3)の両方において、RNA1のバンド(白い矢印)が目に見えたが、GAPDH mRNAが未処理サンプルから増幅され得(黒い矢印)(レーン3)、これはRNAse処理後はほとんど見えない。
【0096】
本発明は例によってのみ記載され、そして本発明の範囲および精神内で維持しながら改変がなされ得ることは、理解される。
【0097】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図2】
【図4】
【図6−1】
【図6−2】
【図7−1】
【図7−2】
【図21】
【図29】
【図3】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図2】
【図4】
【図6−1】
【図6−2】
【図7−1】
【図7−2】
【図21】
【図29】
【図3】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2011−135897(P2011−135897A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−86845(P2011−86845)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2001−569398(P2001−569398)の分割
【原出願日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86845(P2011−86845)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2001−569398(P2001−569398)の分割
【原出願日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】
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