説明

避難経路誘導機能付床面システム

【課題】床面システムにおいて、避難経路表示のために床材に蓄光材を設ける作業を省略できる。
【解決手段】床面システム1は、仕上面3を有する複数の板状の床材2を連結して成る。床材2は、床材2同士を連結するための係り合い部9を備え、床材2の連結状態での係り合い部9の仕上面3側から見て露出する部分に蓄光材4が設けられる。床面システム1は、床材2を連結するだけで蓄光材4により避難経路を表示するので、避難経路表示のために床材2に蓄光材4を設ける作業を省略でき、建築作業の効率化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気などのエネルギを使用しない、環境に優しい蓄光材を備え、この蓄光材が災害発生時に暗闇で発光することで速やかに避難者を避難させるための、避難経路誘導機能を有する床面システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害の発生によって照明器具が消灯して暗闇となったとき、避難者を屋内から屋外へと避難させるために、誘導灯が天井や床に配置されている。この誘導灯の設置は、建築コストの上昇を招いていた。
【0003】
そこで、表面に凹溝が設けられたコンクリートや石材、レンガ等から成る基板で構成され、この凹溝に蓄光材が配置された床材が知られている(例えば、特許文献1参照)。この床材は、災害発生時に暗闇となったとき、蓄光材が自然発光することによって、避難者に対して避難経路を表示する。床材が誘導灯の役目を果たすので、家屋に誘導灯を設置する必要が無くなり建築コストを低減させることができる。
【0004】
しかし、この床材は、避難経路表示のために、家屋の廊下などに取り付けられる前に凹溝に蓄光材を予め配置するか、又は家屋に取り付けられた後に凹溝に蓄光材を配置しなければならず、製作に手間がかかっていた。
【0005】
また、凹溝の縁に設けられた蓄光材が歩行者のスリッパの底と直接接触することで、蓄光材は凹溝の縁から剥離し易い。蓄光材の剥離によって、床材は、発光量が小さくなり、災害発生時に確実に避難経路を表示することができなくなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−138721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、避難経路表示のために床材に蓄光材を設ける作業を省略でき、かつ、床材に設けられた蓄光材の剥離を防止して、長期間使用に耐える避難経路表示構成を提供することができる床面システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、仕上面を有する複数の板状の床材を連結して成る床面システムであって、前記床材は、床材同士を連結するための係り合い部を備え、前記床材の連結状態での前記係り合い部の仕上面側から見て露出する部分に蓄光材が設けられ、前記床材を連結したときに前記蓄光材が避難経路を表示するようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の床面システムにおいて、前記係り合い部は、一方の床材端面に設けられた凸部と、他方の床材端面に設けられ、前記凸部と係合される凹部とから成り、前記仕上面側から見て露出する部分は、前記凸部と凹部とが係合した状態で溝形状に形成され、前記蓄光材は、前記溝形状を形成する面の仕上面寄りを除く部分に設けられているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、床材を連結するだけで蓄光材により避難経路を表示することができ、従って、避難経路表示のために床材に蓄光材を設ける作業を省略でき、建築作業の効率化を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、蓄光材が歩行者のスリッパの底と直接接触しないので、蓄光材が係り合い部から剥離することが防止され、従って、長期間使用に耐える避難経路表示構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る床面システムの外観図。
【図2】同床面システムの床材の係合前状態の部分拡大斜視図。
【図3】同床材の係合状態での側面図。
【図4】同床面システムの変形例における床材の係合前状態の部分拡大斜視図。
【図5】同床材の係合状態での側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る床面システムについて図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の床面システム1の構成を示す。床面システム1は、仕上面3を有する複数の板状の床材2を連結して成る。床材2は、互いに連結するための係り合い部に蓄光材4が設けられており、複数の床材2が屋内の廊下5上に通路幅方向及び通路方向に敷き詰めて設置される。ここに、複数の床材2が敷き詰められるとき、通路幅方向に連結される係り合い部で仕上面3側から見て露出する溝形状(詳細は後述)に蓄光材4が配置されるものとし、この配置により蓄光材4の発光が、通路方向に沿った避難経路を表示するものとなる。廊下5は、居室6から、屋外に通じるドアを有する出入口7までを繋ぐ。床面システム1は、上記のように床材2を連結するだけで蓄光材4により避難経路を表示することができる。
【0014】
図2及び図3は、床面システム1における床材2の構成を示す。床材2は、床材2同士を通路幅方向に連結するための係り合い部9を備える。係り合い部9は、一方の床材2の端面10に設けられた雄実である凸部11と、この凸部11と係合される他方の床材2の端面12に設けられた雌実である凹部13とから形成されている。凸部11の長さは、凸部11が凹部13と係合したときに端面10と端面12の間に隙間ができるように、凹部13の深さよりも長い。仕上面3側から見て露出する部分は、凸部11と凹部13とが係合した状態で溝形状14に形成される。
【0015】
床材2の材料は、特に限定されないが、例えば、杉、松、樅、ラワン、サクラ等の木材、パーティクルボード、ハードボード、MDF(中密度繊維板)、インシュレーションボード等の木質ボード、集成材などが挙げられる。
【0016】
蓄光材4は、床材2の連結状態での係り合い部9の仕上面3側から見て露出する部分であると共に、溝形状14を形成する面の仕上面3寄りを除く部分に設けられる。なお、蓄光材4は、溝形状14を形成する面の仕上面3寄りを含む部分に設けられてもよい。床面システム1は、仕上面3寄りの部分に蓄光材4が設けられていない構成においては、床材2の蓄光材4と歩行者のスリッパの底とが直接接触しないことから、蓄光材4が係り合い部9から剥離することが防止される。従って、床面システム1は、長期間使用に耐える避難経路表示構成をユーザに提供することができる。
【0017】
蓄光材4は、金属化合物や希土類を複数混合し、さらに汎用の展色剤を混合して形成される。また、蓄光材4は、日中の自然光及び人工光を蓄光して、電気などのエネルギを一切使わないで自然発光するので、COの削減となって環境に優しい。なお、蓄光材4の発光を向上させるために、係り合い部9と蓄光材4との間に白色塗料を設けてもよい。
【0018】
このような構成とすることにより、例えば、火災が発生した居室6内から避難者が避難するとき、火災によって廊下5や居室6に設けられた照明器具が消灯して暗闇になっても、床材2の蓄光材4が自然発光する。そして、蓄光材4が自然発光して屋外に通じる出入口7までの避難経路を連続ラインとして表示するので、避難者は容易に避難することができる。なお、蓄光材4は、廊下5に設けられた窓ガラスから差し込む日中の自然光や、廊下5に設けられた照明器具から照射される人工光を蓄光することで自然発光する。従って、床面システム1は、床材2を連結するだけで上記のように蓄光材4によって避難経路を表示することができるので、避難経路表示のために床材2に蓄光材4を設ける作業を省略でき、建築作業の効率化を図ることができる。
【0019】
図4及び図5は、床面システム1の床材2の変形例を示す。この変形例は、床材2の係り合い部9の凸部11と凹部13の形状が異なる。凸部11は、端面10の略全長にわたって凸設された上じゃくり部である。凹部13は、端面12の略全長にわたって凹設された下じゃくり部である。凸部11の長さは、凸部11が凹部13と係合したときに端面10と端面12の間に隙間ができるように、凹部13の深さよりも長い。仕上面3側から見て露出する部分は、凸部11と凹部13とが係合した状態で溝形状14に形成される。蓄光材4は、床材2の連結状態での係り合い部9の仕上面3側から見て露出する部分に設けられる。蓄光材4は、溝形状14を形成する面の仕上面3寄りを除く部分に設けられる。この変形例においても、上述と同等の作用効果が得られる。
【0020】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、床材2を通路幅方向に連絡する場合の係り合い部9に形成される溝形状14に蓄光材4を設けて通路方向に連続ラインとして経路表示するものを示したが、床材2が通路幅方向ではなく、通路方向に連結されるところに係り合い部を設けて、そこに形成される溝形状に蓄光材4を設けたものであっても構わない。この場合は、蓄光材4による避難経路は、床材2の通路方向長毎に通路方向に直交する通路幅での離散した表示となる。なお、蓄光材4による経路表示は、通路方向に連続ラインとして表示されるものと、通路幅方向に離散的に表示されるものとを併せて表示するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 床面システム
2 床材
3 仕上面
4 蓄光材
9 係り合い部
10、12 端面
11 凸部
13 凹部
14 溝形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上面を有する複数の板状の床材を連結して成る床面システムであって、
前記床材は、床材同士を連結するための係り合い部を備え、
前記床材の連結状態での前記係り合い部の仕上面側から見て露出する部分に蓄光材が設けられ、
前記床材を連結したときに前記蓄光材が避難経路を表示するようにしたことを特徴とする床面システム。
【請求項2】
前記係り合い部は、一方の床材端面に設けられた凸部と、他方の床材端面に設けられ、前記凸部と係合される凹部とから成り、
前記仕上面側から見て露出する部分は、前記凸部と凹部とが係合した状態で溝形状に形成され、
前記蓄光材は、前記溝形状を形成する面の仕上面寄りを除く部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の床面システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−174433(P2010−174433A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14915(P2009−14915)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】