説明

避難誘導システム及び避難誘導プログラム

【課題】避難経路の状態を総合的に判断して、建物施設利用者を安全かつ確実に誘導するための避難経路を選択することを目的とする。
【解決手段】建物施設を複数の区画に分割し、各区画を避難経路始点として、使用可能な出入口を含む区画までの避難経路のうち、災害発生区画の隣接区画を除く避難経路を除いた避難経路を全て探索する(200〜204)。また、災害発生区画までの距離、避難口区画までの距離、避難容量、及び区画平坦度について予め定めた係数を用いて評価した経路状態値を、各避難経路について算出する(206)。そして、経路状態値が予め定めた閾値以下の避難経路を除外した後に、最短の避難経路を選択する(208、210)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難誘導システムにかかり、特に、地震、火災、騒乱などの災害発生場所から施設利用者を安全な避難経路を選択して、避難誘導を行う避難誘導システム及び避難誘導プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な建物施設や複雑な建物施設では、地震、火災、騒乱等の各種災害が発生した場合に、施設利用者を安全な場所へ避難誘導する必要がある。そこで、特許文献1に記載の技術では、災害を検知した場合に、災害発生区画情報と、地図情報とに基づいて、災害発生地区以外に存在する避難通路のうち、誘導可能な最短距離の誘導経路を特定して、通路の床面の誘導ブロックを誘導方向を示すように発光させて誘導することが提案されている。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術では、避難経路の交差点の中心点に基準カウント数の共通灯具を設けて、順次点滅することで、避難方向を誘導し、かつ灯具列の枝列にカウント信号の変更があっても、他の枝列との点滅の整合を自然に行うことが提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の技術では、避難路小区間における通路障害情報を、障害度合いを示す障害係数で重み付けして避難路区分点から非常口までの歩行時間を演算比較して、避難路区分点からの最短避難時間となる指示避難路に従って避難誘導することが提案されている。
【特許文献1】特開2006−277382号公報
【特許文献2】特開平5−120575号公報
【特許文献3】特開平7−49986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、災害発生地区を除外して最短距離の誘導距離を特定しているが、誘導経路の状態などについては考慮していないので、改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、煙の発生方向と逆方向に避難方向を誘導しているので、避難経路の選択については改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術では、通路の障害度合いを示す障害係数で重み付を行って最短の誘導経路を求めているが、避難経路を求めるにあたり、通路の障害度合いを考慮しているものの、避難経路の容量や災害発生位置までの距離などについては考慮してないので改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、避難経路の状態を総合的に判断して、建物施設利用者を安全かつ確実に誘導するための避難経路を選択することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の避難誘導システムは、避難口を備えた建物施設を示す施設情報を複数の矩形の区画に分割した際の各区画の距離を含む位置情報、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度を含む各区画の属性情報を前記施設情報に付加した地図情報を記憶する記憶手段と、災害の発生を検出する検出手段と、前記検出手段によって災害の発生が検出されたときに、前記記憶手段に記憶された前記地図情報に基づいて、各区画を始点として前記避難口を有する区画までの避難経路を複数検索する検索手段と、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離、前記始点から避難口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度のそれぞれについて予め定めた係数と、前記記憶手段に記憶された前記属性情報と、に基づいて、前記検索手段によって検索された避難経路毎の安全状態を表す経路状態値を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記経路状態値に基づいて、最適な避難経路を選択する選択手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、記憶手段は、建物施設を複数の矩形の区画に分割した各区画の距離を含む位置情報、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度を含む各区画の属性情報を付加した地図情報が記憶される。
【0011】
検出手段では、災害の発生の検出が行われる。例えば、火災を検出する火災検出センサによって火災を検出したり、震度計によって地震を検出したり、浸水センサによって浸水を検出したり、保安員がカメラの撮影画像等によって発見した災害(火災、地震、騒乱、洪水等)を入力することで災害を検出したりすることが可能である。なお、検出手段は、例えば、火災、地震、騒乱、及び洪水の少なくとも1つの災害の発生を検出するようにしてもよい。
【0012】
検索手段では、検出手段によって災害が検出されたときに、記憶手段に記憶された地図情報に基づいて、各区画を始点として避難口を有する区画までの避難経路が複数検索される。
【0013】
また、算出手段では、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離(例えば、検索された各避難経路に含まれる区画のうち災害が発生した区画に最も近く区画から災害の発生が検出された区画までの距離や、検索された各避難経路に含まれる各区画から災害の発生が検出された区画までの平均距離等)、始点から避難口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度のそれぞれについて予め定めた係数と、記憶手段に記憶された属性情報と、に基づいて、検索手段によって検索された避難経路の安全状態を表す経路状態値が算出される。すなわち、属性情報として区画の位置情報が記憶手段に記憶されているので、位置情報から所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離、及び始点から避難口を有する区画までの距離を得ることができ、属性情報として区画の避難容量(例えば、通路幅等)や区画の平坦度が記憶手段に記憶されているので、区画の避難容量及び区画の平坦度を得ることができ、それぞれを係数化して評価することによって、総合的な避難経路の状態を表す経路状態値を算出することができる。
【0014】
そして、選択手段では、算出手段で算出された経路状態値に基づいて、最適な避難経路が選択される。すなわち、避難経路の距離や安全を考慮した経路状態値を用いて避難経路の状態を総合的に判断して避難経路を選択するので、最適な避難経路の選択が可能となる。従って、避難経路の状態を総合的に判断して、建物施設利用者を安全かつ確実に誘導するための避難経路を選択することができる。
【0015】
なお、係数は、請求項2に記載の発明のように、避難経路の安全状態を表す経路状態値を算出するのに使う係数であって、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離が長くなるに従って大きく、始点から避難口を有する区画までの距離が短くなるに従って大きく、各区画の避難容量が大きくなるに従って大きく、かつ各区画の平坦度が平らになる程大きくなるように予め定めたものを適用してもよい。この場合、選択手段は、例えば、請求項3に記載の発明のように、予め定めた閾値以下の避難経路を除外した後に、経路状態値の高い避難経路を最適として選択することによって、避難経路の状態を総合的に判断した避難経路の選択が可能となる。なお、最短経路の選択は、算出した経路状態値が最大のものを選択するようにしてもよいし、経路状態値が予め定めた値以上のものをそれぞれ最短経路として求めるようにしてもよい。また、選択手段は、経路状態値が予め定めた閾値以下の避難経路を除外して避難経路を選択するようにしてもよい。これによって、適切ではない避難経路を除外することができる。
【0016】
また、係数は、避難経路の安全状態を表す経路状態値を算出するのに使う係数であって、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離が長くなるに従って小さく、始点から避難口を有する区画までの距離が短くなるに従って小さく、各区画の避難容量が大きくなるに従って小さく、かつ各区画の平坦度が平らになる程小さくなるように予め定めたものを適用してもよい。この場合、選択手段は、経路状態値が小さい経路を選択することで、最適な避難経路を選択することができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明のように、建物施設に設けられ、避難経路を表示するための表示手段と、前記選択手段によって選択された避難経路を表すように前記表示手段を制御する制御手段と、建物施設に設けられ、前記検出手段によって検出された災害の状態に対応した災害情報を報知する報知手段と、を更に備え、前記記憶手段が、前記検出手段によって検出された災害の状態と予め定めた災害レベル及び緊急レベルに対応する報知内容を更に記憶し、前記報知手段が、前記検出手段によって検出された災害に応じて対応する前記報知内容を前記記憶手段から読み出して報知するようにしてもよい。すなわち、表示手段と制御手段を更に備えることにより、避難経路の状態を総合的に判断して、安全かつ確実な避難経路へ建物施設利用者を誘導することができ、報知手段を更に備えて、記憶手段が検出手段によって検出された災害の予め定めた災害レベル及び緊急レベルに対応する前記報知手段による報知内容を更に記憶することにより、検出された災害の予め定めた災害レベル及び緊急レベルに対応した内容を報知することが可能となる。
【0018】
なお、本発明は、建物施設に設けられ、避難経路を表示するための表示手段と、選択手段によって選択された避難経路を表すように表示手段を制御する制御手段と、更にを備えるようにしてもよいし、検出手段によって検出された災害の内容に対応した災害情報を報知する報知手段を更に備えるようにしてもよい。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、避難口の利用可否を検出する利用可否検出手段を更に備えて、検索手段が、利用可否検出手段の検出結果に基づいて、各区画を始点として利用可能な避難口を有する区画までの避難経路を検索するようにしてもよい。これによって、利用不可能な避難口へ誘導する避難経路を排除することができる。
【0020】
請求項6に記載の避難誘導プログラムは、災害の発生を検出する検出手段によって災害の発生が検出された場合に、避難口を備えた建物施設を示す施設情報を複数の矩形に分割した際の各区画の距離を含む位置情報、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度を含む各区画の属性情報を前記施設情報に付加した地図情報を記憶する記憶手段に記憶された前記地図情報に基づいて、各区画を始点として避難口を含む区画までの避難経路を複数検索する検索ステップと、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離、前記始点から避難口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度のそれぞれについて予め定めた係数と、前記記憶手段に記憶された前記属性情報と、に基づいて、前記検索ステップで検索した各避難経路毎の安全状態を表す経路状態値を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出した前記経路状態値に基づいて、最適な避難経路を選択する選択ステップと、を含む処理をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、検索ステップ、算出ステップ、及び選択ステップをコンピュータが実行することによって、請求項1に記載の検索手段、算出手段、及び選択手段の各手段として機能させることができる。従って、避難経路の状態を総合的に判断して、建物施設利用者を安全かつ確実に誘導するための避難経路を選択することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離、始点から避難口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度について予め定めた係数と、各区画の属性情報と、に基づいて避難経路毎の安全状態を表す経路状態値を算出し、算出した経路状態値に基づいて最適な避難経路を選択するので、避難経路の状態を総合的に判断して、建物施設利用者を安全かつ確実に誘導するための避難経路を選択することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの概略構成を示すブロック図である。
【0024】
本発明の実施の形態に係わる 避難誘導システム10は、大規模な建物施設や複雑な建物施設において、火災、地震、騒乱、洪水(浸水)などの災害発生場所から施設利用者を安全な避難経路を選択して、安全に避難誘導を行う。
【0025】
避難誘導システム10は、災害発生検出部12、施設情報記憶部14、避難区画状態監視部16、避難経路探索部18、避難経路表示部20、及び避難状態伝達部22を備えている。
【0026】
災害発生検出部12は、建物施設及び周辺区画を含めて災害の発生を検出する。検出対象の災害としては、例えば、火災の発生、類焼、地震による損傷、騒乱の勃発、洪水等による浸水などの施設利用者を避難させる必要がある事象を検出する。具体的には、火災検知器や煙検知器等の火災検出センサによって火災の発生を検出したり、震度計の検出結果や外部から地震に関する情報を受信したりすることによって地震の発生を検出したり、建物施設内に設けられたカメラ等を保安員等が監視して騒乱の発生を検出した場合に操作入力装置等を利用して騒乱の発生を入力することで騒乱の発生を検出したり、建物施設及び建物施設周辺等に設けられた浸水センサや外部から洪水等の情報を受信したりすることによって洪水の発生を検出したりすることが可能である。
【0027】
施設情報記憶部14は、建物施設及びその周辺に関する地図情報を記憶する。該地図情報としては、建物施設及びその周辺を表す施設情報を複数の矩形の区画に分割して、各区画毎の距離を含む位置情報(例えば、矩形の区画の対角の2点座標等)、各区画に対応する部分の種類(例えば、壁や段差、観客席、広場、分岐までの通路、出入口に繋がる通路、出入口の外の部分、その他等)、区画の避難容量(通路幅等)、及び区画の床の平坦度(例えば、階段、段差、スロープ、フラットなど)を含む区画の属性情報を付加して記憶する。なお、属性情報としては、この他の区画に関する種々の情報を属性情報として記憶するようにしてもよい。また、区画は、屋内に限る限るものではなく、建物に近接する部分等を区画として含めるようにしてもよい。
【0028】
避難区画状態監視部16は、適宜建物施設に設置されたカメラやセンサ等を用いて避難通路、避難空地、避難出口等を監視する。例えば、監視区画が避難経路として利用できる状態か否かや、障害物があり利用しにくい状態になっているか否か等を各種センサやカメラ等によって監視する。カメラによって通路などの区画を監視する場合には、災害発生がない普段の状態を予め基準画像として登録して、差分画像を求め、各種画像処理を行うことによって区画の状態を監視することが可能であり、各種センサによって区画を監視する場合には、センサの検出結果から区画の状態を監視することができる。或いは、カメラで区画を監視する場合には、保安員がカメラの撮影画像を確認して、操作入力装置等を用いて区画の状態を保安員が入力することによっても区画の状態を監視することができる。
【0029】
避難経路探索部18は、災害発生検出部12によって災害が検出された場合に、避難区画状態監視部16の区画の監視結果及び施設情報記憶部14に記憶された地図情報及び属性情報に基づいて、各区画の状態を考慮した避難誘導経路を探索する。例えば、避難経路探索部18による避難経路の探索手順としては、地図情報の各区画を避難経路始点として設定する。次に、避難区画状態監視部16によって監視された各区画の状態から利用可能な出入口までの避難経路のうち、避難経路始点から災害発生検出部12によって検出された災害が発生している区画に接近する区画を含む避難経路を除外した避難経路を全て探索する。続いて、探索した避難経路に含まれる各区画の状態を考慮するための経路状態値を算出し、算出した経路状態値に基づいて適切な避難経路を選択する。なお、経路状態値としては、例えば、災害の発生が検出された区画(以下、災害発生区画と称すこともある)までの距離(探索した避難経路に含まれる区画のうち最も災害発生区画に近い区画から災害発生区画までの距離等)、始点から出入口を有する区画までの距離、各区画の避難容量(探索した避難経路に含まれる区画のうち最も通路幅の狭い区画等)、及び各区画の床の平坦度(探索した避難経路に含まれる区画のうち最も平坦度が低い区画の平坦度等)等の区画の状態を予め定めた係数で評価した値を適用する。なお、災害発生区画までの距離については、始点は、避難経路に含まれる各区画から災害発生区画までの平均距離等を用いるようにしてもよい。
【0030】
避難経路表示部20は、建物施設内の予め設置した避難誘導のための経路表示装置等によって避難経路探索部18によって探索した避難経路を表す表示を行う。このとき、予め定めた災害レベルや緊急レベルに応じた表示を行う。避難経路表示部20は、例えば、建物施設内の通路等の区画の床面や壁、天井等にLED光源を通路等に沿って複数配列し、避難経路探索部18によって探索した避難経路に従った方向へ光が移動するようにLED光源を点灯するようにしてもよい。また、災害レベルや緊急レベルに応じた表示方法としては、光の移動速度を変化させたり、光量を変化させたり、発光するLED光源の数を変化させたりすることによって対応することが可能である。
【0031】
避難状態伝達部22は、例えば、建物施設に予め適宜設置したモニタやスピーカ等によって災害の発生や、災害の程度、避難に関する情報等を表示したりスピーカで音声を流すことによって施設利用者に避難するよう報知する。
【0032】
続いて、上述の避難誘導システム10の具体的な構成例について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システム10の具体的な構成例を示すブロック図である。
【0033】
避難誘導システム10は、CPU32、RAM34、ROM36、HDD(ハードディスク)38、キーボード40、モニタ42、及び入出力インタフェース44等がバス46に接続されて構成された避難誘導コンピュータ30を備えている。
【0034】
ROM36には、避難誘導コンピュータ30を動作させるための各種プログラムや情報等が記憶され、HDD38には、避難誘導を行うための避難誘導プログラム、避難経路を探索するための避難経路探索プログラム、及び避難経路を表示するための避難経路表示プログラム等の各種プログラムや各プログラムに情報などが記憶されており、ROM36やHDD38に記憶された各種プログラムをRAM34に展開してCPU32が実行することによって、災害発生時の避難誘導を行うための処理を実行する。
【0035】
例えば、HDD38は、上述の施設情報記憶部14として機能し、建物施設に関する施設情報や属性情報が地図情報として記憶される。
【0036】
キーボード40は、建物施設の保安員が操作して、避難誘導に関する情報を入力したり、災害に関する情報の入力が可能とされ、モニタ42には、避難誘導のための各種情報の表示や設定画面等の表示が可能とされている。
【0037】
入出力インタフェース44には、火災検出センサ48、震度計50、浸水センサ52、カメラ54、及び外部ネットワーク56等の上述の災害発生検出部12の機能を有する災害を検出するためのセンサやカメラ等が接続されており、災害発生の検出結果を避難誘導コンピュータ30に入力する。
【0038】
また、入出力インタフェース44には、建物施設に適宜設置され避難経路を示すための経路表示装置58、建物施設に適宜設定され災害に関する情報を表示するためのモニタ60及びスピーカ62等が接続されており、避難誘導コンピュータ30の制御によって経路表示装置58やモニタ60への各種情報の表示や、スピーカ62からの音声出力が制御される。経路表示装置58は、上述の避難経路表示部20として機能し、モニタ60やスピーカ62は、上述の避難状態伝達部22として機能する。
【0039】
さらに、入出力インタフェース44には、施錠検出センサ64等が接続されており、避難口となる出入口の施錠状態の検出結果等を避難誘導コンピュータ30に入力可能とされている。施錠検出センサ64やカメラ54は、上述の避難区画状態監視部16の機能を有する。
【0040】
なお、図2では、火災検出センサ48、浸水センサ52、モニタ60、スピーカ62、及び施錠検出センサ64は、それぞれ1つのみ示すが、建物施設内に適宜複数設けられている。
【0041】
次に、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システム10における災害の検出方法の一例について説明する。
【0042】
本実施の形態では、建物施設に適宜設置された火災検出センサ48によって火災の発生を災害として検出する。火災検出センサ48としては、炎検出センサや煙検出センサ、温度検出センサ等を適用することができる。
【0043】
また、建物施設の予め定めた位置に設けられた震度計50によって地震の震度を検出することによって、地震の発生とその程度を災害として検出する。
【0044】
また、建物施設に適宜設置された浸水センサ52によって建物施設への浸水を検出することで洪水の発生を災害として検出する。
【0045】
また、災害が発生していない状態のカメラ54の撮影画像を基準画像として予め登録しておき、カメラ54の撮影画像と基準画像との差分画像を求め、予め設定した領域(例えば、壁の部分に対応する領域や建物施設に設けた備品等の領域)の変化を検出することで、地震等による災害発生を検出するようにしてもよい。
【0046】
また、カメラ54の撮影画像を保安員が監視して、種々の災害(火災、地震、騒乱、洪水等)を認識した際に、キーボード40に災害の発生したことを表す情報や災害のレベルを表す情報を入力することによって、災害の発生を検出するようにしてもよい。
【0047】
さらには、外部ネットワーク56から地震に関する情報や、洪水に関する情報等を受信することによって災害の発生を検出するようにしてもよい。
【0048】
ここで、HDD38に記憶される地図情報及び属性情報について詳細に説明する。図3は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システム10における避難誘導コンピュータ30のHDD38に記憶される地図情報の一例を示す図である。
【0049】
ROM36やHDD38に記憶される地図情報としては、図3に示すように、建物施設の配置図を予め定めた規則に従って複数の矩形の区画に分割して記憶する。
【0050】
例えば、矩形の区画への分割の規則としては以下に示す規則に従って矩形の区画に分割することができる。
(1)壁、大きな段差等の隣接する区画に移動できない部分を1区画として矩形の区画に分割する。図3では、「a」の符号で示し、a1、a2、a3、a4・・・として示す。
(2)観客席など通路として利用できない部分を1区画として矩形の区画に分割する。図3では、「b」の符号で示し、b1、b2、b3、b4・・・として示す。
(3)広場などの1区画を矩形の区画に分割する。図3では、「c」の符号で示し、c1・・・として示す。
(4)分岐や曲がり角までの通路を1区画として矩形の区画に分割する。図3では、「d」の符号で示し、d1、d2、d3、d4・・・として示す。
(5)出入口に繋がる通路を1区画として矩形の区画に分割する。図3では、「e」の符号で示し、e1、e2、e3、e4・・・として示す。
(6)出入口の外の通路などを1区画として矩形の区画に分割する。図3では、「f」の符号で示し、f1、f2、f3、f4・・・として示す。
(7)その他の部分を1区画として矩形の区画に分割する。なお、図3ではその他としてはなしとして示す。
【0051】
また、このような規則に従って分割した矩形の区画の属性情報としては、例えば、図4に示すように、区画属性、区画番号、位置座標、避難容量、区画平坦度等を挙げることができ、これらの属性情報をHDD38に予め記憶する。なお、位置座標としては、矩形の区画であるので、例えば、矩形の区画の対角の2点の位置座標を記憶することによって、矩形の区画を表すことができる。また、避難容量については、区画面積を適用するようにしてもよいが、避難経路としての状態を検出するために用いるため通路等の幅等の情報を用いる。また、区画平坦度としては、矩形の区画の床面の平坦度を数値で表し、例えば、階段、段差、スロープ、フラット等の状態を数値で表すことができ、図4では、一例として、「1」、「2」、「3」を示すが、例えば、床がフラットの場合に1、スロープがある場合に2、段差がある場合に3等にように適宜設定する。また、図4に示す属性情報は、一例であり、その他の情報を属性情報として記憶するようにしてもよい。
【0052】
次に、HDD38に記憶記憶されるその他の情報について説明する。本実施の形態では、避難経路を探索する際に区画の状態を判断する経路状態値を求めるための予め定めた係数マップや、災害レベルや緊急レベルに応じて経路表示装置58への表示やスピーカ62からの音声出力を行うためのレベル対応マップなどが記憶される。
【0053】
図5は、区画の状態を評価する経路状態値を求めるための係数マップの一例を示す図である。経路状態値としては、上述したように、災害発生区画までの距離(探索した避難経路に含まれる区画のうち最も災害発生区画に近い区画から災害発生区画までの距離等)、始点から出入口を有する区画までの距離、各区画の避難容量(探索した避難経路に含まれる区画のうち最も通路幅の狭い区画の通路幅等)、及び各区画の床面の平坦度(探索した避難経路に含まれる区画のうち最も平坦度が低い区画の平坦度等)等を予め定めた係数で評価した値を適用する。
【0054】
図5(A)は、災害発生区画までの距離に関する係数(災害区画距離係数)を求めるための係数マップを示し、注目区画(始点)から災害発生区画までの距離に応じた係数を予め定めた一例を示す。
【0055】
図5(B)は、注目区画(始点)から出入口(避難口)を有する区画までの距離に関する係数(避難区画距離係数)を求めるための係数マップを示し、注目区画から避難経路の出入口を有する区画までの距離に応じた係数を予め定めた一例を示す。
【0056】
図5(C)は、区画の避難容量に関する係数(避難容量係数)を求めるための係数マップを示し、一例として区画の通路幅に対応した係数を予め定めた一例を示す。
【0057】
図5(D)は、区画の床の平坦度に関する係数(区画平坦度係数)を求めるための係数マップを示し、一例として、階段、段差、スロープ、フラット等に応じた係数を予め定めた一例を示す。
【0058】
一方、図6は、災害レベルや緊急レベルに応じて経路表示装置58への表示やスピーカ62からの音声出力を行うためのレベル対応マップの一例を示す図である。なお、図6では、災害レベルを4段階、緊急レベルを3段階として示すが、各レベルはこれに限るものではなく、適宜設定可能である。
【0059】
本実施の形態では、図6に示すように、災害事象としては、火災、地震、騒乱、及び洪水を一例として示し、災害レベルとしては、火災が災害レベル4、地震が災害レベル3、騒乱が災害レベル2、洪水が災害レベル1として予め設定した例を示す。
【0060】
また、避難の緊急性としては、図6に示すように、避難の緊急性が大の場合を緊急レベル5、避難の緊急性が中の場合を緊急レベル3、避難の緊急性が小の場合を緊急レベル1として予め設定した例を示す。
【0061】
そして、レベル対応マップとしては、一例としては、火災拡大の場合には、災害レベル4、緊急レベル5として当該レベルを表す数値として「45」を割り当て、火災発生の場合には、災害レベル4、緊急レベル3として当該レベルを表す数値として「43」を割り当て、周辺部火災の場合には、災害レベル4、緊急レベル1として当該レベルを表す数値として「41」を割り当てる。
【0062】
また、建物被害中破で大規模余震の恐れがある場合には、災害レベル3、緊急レベル5として当該レベルを表す数値として「35」を割り当て、建物被害小破で大規模余震の恐れ無しの場合には、災害レベル3、緊急レベル3として当該レベルを表す数値「33」を割り当て、建物被害軽微の地震の場合には、災害レベル3、緊急レベル1として当該レベルを表す数値として「31」を割り当てる。
【0063】
また、複数区画で騒乱発生の場合には、災害レベル2、緊急レベル5として当該レベルを表す数値として「25」を割り当て、単一区画で騒乱発生の場合には、災害レベル2、緊急レベル3として当該レベルを表す数値「23」を割り当て、単一区画で小規模騒乱発生の場合には、災害レベル2、緊急レベル1として当該レベルを表す数値として「21」を割り当てる。
【0064】
さらに、建物内部に浸水の場合には、災害レベル1、緊急レベル5として当該レベルを表す数値として「15」を割り当て、建物内部で浸水恐れ有りの場合には、災害レベル1、緊急レベル3として当該レベルを表す数値として「13」を割り当て、周辺地区で浸水恐れが有る場合には、災害レベル1、緊急レベル1として当該レベルを表す数値として「11」を割り当てる。
【0065】
また、図7に示すように、図6のレベル対応マップの数値に対応して、モニタ60に表示する内容やスピーカ62から流す音声をHDD38に予め記憶しておき、レベル対応マップの数値に応じて施設利用者に対して災害に関する情報を報知する。例えば、災害として火災の発生を検出した場合、すなわち、レベル対応マップの「43」(災害レベル4、緊急レベル3)の場合には、図8に示すように、「★の区画で火災が発生しました。誘導表示に従って速やかに避難してください。」等の表示や災害発生区画の概略地図等をモニタ60に表示し、スピーカ62によってモニタ60に表示された内容の音声を流すことによって、施設利用者に災害情報を報知する。さらには、レベル対応マップの数値に対応する緊急レベルに応じて、経路表示装置58の表示を行う。
【0066】
なお、図6〜8は、一例として示すが、数値や報知内容等に関してはこれに限るものではなく、適宜設定したものを適用することができる。
【0067】
続いて、経路表示装置58の一例について説明する。図9は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの経路表示装置58の一例を示す図である。
【0068】
経路表示装置58としては、例えば、通路の床や壁、天井等に図9に示すようなLED光源等を複数配列した表示装置を適用することができ、図9に示すように、光が移動して見えるように複数のLED光源の点灯を制御する。この時、光の移動速度や発光色を変化させることで災害レベルや緊急レベルを表現することができる。
【0069】
図9(A)、(B)では、例えば、T字路の通路等に設ける表示装置の一例を示す。図9(A)、(B)では、複数のLED光源をT字形状に配列している。そして、避難経路に従って光が移動して見えるようにLED光源の点灯及び消灯を制御することによって、避難経路の方向を示す例を示す。図9(B)では、一例としては、避難経路が紙面左から下側である場合のLED光源の点滅状態を示す。
【0070】
また、図9(C)に示すように、T字形状に配列されたLED光源を複数列としてもよい。この場合には、上述のレベル対応マップの数値、すなわち災害レベルや緊急レベルに応じて点滅するLED光源列の数を変えることで災害レベルや緊急レベルに応じた表示が可能となる。また、LED光源の発光色を変化させて災害レベルや緊急レベルに応じた表示を行うようにしてもよい。
【0071】
ところで、本実施の形態に係わる避難誘導システム10では、災害が発生した場合には、災害発生区画を避けて安全に避難するための避難経路を探索するが、単に最短距離や歩行時間が短い避難経路を探索したのでは、避難経路の状態等によって安全ではない場合がある。例えば、避難経路の通路幅が狭い場合や、避難経路の通路に階段や段差等がある場合などでは、遠回りしてでも狭い通路や階段や段差等を避けた避難経路の方が安全かつ確実に避難が可能と考えられる。
【0072】
そこで、本実施の形態では、最短避難経路を探索するだけではなく、避難経路の状態を総合的に判断するための経路状態値を算出して、算出した経路状態値に基づいて、安全かつ確実に避難が可能な避難経路を選択するようになっている。
【0073】
経路状態値の算出は、例えば、探索した全ての避難経路について、図5(A)〜(D)に示した係数マップを用いて各係数を導出する。そして、各係数の累積和を避難経路の状態を表す経路状態値として算出する。すなわち、避難経路の距離や安全を考慮した経路状態値を算出することで、異なる事象の区画の状態を係数で表すことにより同事象として扱って、区画の状態、すなわち避難経路の状態を総合的に評価することができる。
【0074】
より具体的には、災害区画距離係数をA、避難口区画距離係数をB、避難容量係数をC、区画平坦度係数をDとし、各要素について施設毎の特性を表す係数をW1〜W4とし、注目する避難経路について、災害発生区画までの距離、避難口を有する区画までの距離、避難経路に含まれる区画のうち最小の避難容量、及び避難経路に含まれる区画のうち最悪となる平坦度をHDD38に記憶された属性情報から適宜算出して図5の係数マップを用いて係数化する。そして、以下の(1)式によって経路状態値を求めることによって、区画の状態を判断することができる。判断方法としては、避難経路として適さない経路状態値を予め閾値として定め、経路状態値が閾値以下となる避難経路を排除していくことによって、安全、確実かつ迅速に避難が可能な避難経路を探索することができる。この時、閾値の値を徐々に大きくしていくことで段階的に避難経路を排除することができる。
【0075】

経路状態値=W1×A+W2×B+W3×C+W4×D ・・・(1)

なお、W1〜W4については、適用する施設に応じて設定することによって様々な施設に対応した経路状態値を算出することができる。
【0076】
次に、HDD38に記憶された避難誘導コンピュータ30で実行される、避難誘導プログラム、避難経路探索プログラム、及び避難経路表示プログラムについて順次説明する。
【0077】
図10は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの避難誘導コンピュータ30で実行される避難誘導プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0078】
避難誘導コンピュータ30によって避難誘導プログラムが起動されると、まず、ステップ100では、災害監視が開始される。すなわち、火災検出センサ48、震度計50、及び浸水センサ52の検出や、カメラ54の撮影等が開始されてステップ102へ移行する。
【0079】
ステップ102では、災害が検出されたか否か避難誘導コンピュータ30によって判定される。該判定は、例えば、火災検出センサ48によって火災や煙が検出されたか否かを判定したり、震度計50によって地震が検出されたか否かを判定したり、浸水センサ52によって浸水が検出されたか否かを判定したり、カメラ54の撮影画像と予め定めた基準画像との差分画像から地震による崩壊や施設内に設置された物品の倒壊等が検出されたか否かを判定したり、カメラ54の撮影画像を保安員が監視して、災害発生に関する情報がキーボード40を介して入力されたか否か等を判定したり、外部ネットワーク56から地震に関する情報や洪水に関する情報等を受信したか否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ104へ移行し、否定された場合にはステップ114へ移行する。
【0080】
ステップ104では、災害発生区画の登録が既に行われているか否かが避難誘導コンピュータ30によって判定される。該判定は、ステップ102の判定が既に肯定されて災害発生区画が登録されているか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ106へ移行し、肯定された場合にはステップ108へ移行する。
【0081】
ステップ106では、火災検出センサ48、震度計50、浸水センサ52、及びカメラ54等によって検出された災害に対応する区画がRAM34等に登録されてステップ110へ移行する。
【0082】
また、ステップ108では、災害発生区画が既に登録されているので、RAM34に登録された災害発生区画が更新されると共に、避難経路が探索されている場合には更新された災害発生区画を考慮した避難経路を探索するために探索された避難経路がリセットされてステップ110へ移行する。
【0083】
ステップ110では、避難経路探索処理が避難誘導コンピュータ30によって行われてステップ112へ移行する。避難経路探索処理は、避難経路探索プログラムが起動されることによって避難経路の探索を行う。
【0084】
ここで、避難経路探索プログラムについて詳細に説明する。図11は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの避難誘導コンピュータ30で実行される避難経路探索プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0085】
避難経路探索プログラムが起動されると、ステップ200では、所定の区画が避難経路始点として設定されてステップ202へ移行する。すなわち、地図情報の複数の矩形の区画に分割された各区画のうちの何れかの区画を注目の避難経路始点として設定する。なお、本実施の形態では、矩形の区画の属性が「a」のものは区画は、壁や段差であるため避難経路始点から除外するものとする。
【0086】
ステップ202では、使用可能な出入口情報が避難誘導コンピュータ30によって取得される。例えば、保安員がカメラ54の撮影画像等の監視結果からキーボード40を介して入力された情報や、施錠検出センサ64の検出結果等が避難誘導コンピュータ30によって取得される。
【0087】
ステップ204では、災害発生区画の隣接区画を除く区画を含む全避難経路が避難誘導コンピュータ30によって探索されてステップ206へ移行する。すなわち、HDD38に記憶された地図情報や属性情報から、設定された避難経路始点から利用可能な出入口を含む区画への避難経路が探索される。この時、災害発生区画に登録された区画に隣接した区画を除いた区画を含む避難経路が全て探索される。なお、利用可能な出入口はステップ202で取得した情報から判断する。
【0088】
ステップ206では、各避難経路について避難経路の経路状態値が避難誘導コンピュータ30によって算出されてステップ208へ移行する。すなわち、上述した(1)式によって探索した避難経路の状態を表す経路状態値を算出する。これによって、探索された避難経路に含まれる区画の状態を判断することができる。
【0089】
続いてステップ208では、算出した経路状態値が予め定めた閾値以下の避難経路が避難誘導コンピュータ30によって除外されてステップ210へ移行する。すなわち、通路幅が狭い区画を含む避難経路や、階段や段差等を含む避難経路、災害発生区画に比較的近い避難経路、避難口までの距離が長い避難経路等が除外され、安全かつ確実に避難可能な避難経路(経路状態値が他に比べて高い避難経路)のみが選択されることになる。なお、閾値によっては全て排除されることも考えられるので、閾値を徐々に大きくして所定数の避難経路が残るようにしてもよい。
【0090】
ステップ210では、除外されなかった避難経路のうち最短となる避難経路が選択されてステップ212へ移行する。なお、ここでは、最短となる避難経路を選択するようにしたが、経路状態値が高い避難経路(例えば、最大の経路状態値となる避難経路)を選択するようにしてもよい。
【0091】
ステップ212では、全ての区画を避難経路始点とした経路探索が終了したか否かが避難誘導コンピュータ30によって判定され、該判定が否定された場合にはステップ214へ移行し、避難経路探索を終了して、図10のステップ112へ移行する。
【0092】
ステップ214では、新たな区画を避難経路始点に設定してステップ200に戻って上述の処理が繰り返され、全ての区画を避難経路始点とした経路探索が終了したところで、ステップ212の判定が肯定されて、図10のステップ112へ移行する。
【0093】
そして、図10のステップ112へ移行すると、避難経路表示処理が避難誘導コンピュータ30によって行われてステップ114へ移行する。避難経路表示処理は、避難経路表示プログラムが起動されることによって避難経路探索プログラムによって探索された避難経路を表示するための処理を行う。
【0094】
ここで、避難経路表示プログラムについて詳細に説明する。図12は、本発明の実施の形態に係わる避難誘導システム10の避難誘導コンピュータ30で実行される避難経路表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0095】
避難経路表示プログラムが起動されると、ステップ300では、災害レベル及び緊急レベルが避難誘導コンピュータ30によって判定されてステップ302へ移行する。すなわち、各種センサやカメラ等によって検出された災害やその内容から災害レベルや緊急レベルを判定する。
【0096】
ステップ302では、経路表示装置58、モニタ60、及びスピーカ62による報知内容及び報知レベルを表す値が避難誘導コンピュータ30によって取得されてステップ304へ移行する。すなわち、検出した災害及びその内容に基づいて図6のレベル対応マップから災害レベル及び緊急レベルを表す値を取得する。
【0097】
ステップ304では、ステップ302で取得した値に応じて予め定めた報知方法で、経路表示装置58、モニタ60、及びスピーカ62が避難誘導コンピュータ30によって制御されて、図10のステップ118へ移行する。すなわち、図6のレベル対応マップの数値に対応して予め記憶された報知内容が、図7から選択されて、選択された報知内容の表示や音声出力が行われる。また、災害レベルや緊急レベルに応じた経路表示装置58への表示が行われる。経路表示装置58として複数のLED光源を配列した例を適用する場合には、例えば、災害レベルや緊急レベルが高い程、光の移動速度が速く見えるようにLED光源の発光を制御することによって、災害レベルや緊急レベルに応じた表示を行うことができる。また、色の変更を組み合わせることにより、災害レベルと緊急レベルを共に表す表示が可能となる。
【0098】
そして、図10のステップ118へ移行すると、システム停止か否か避難誘導コンピュータ30によって判定される。該判定は、避難誘導プログラムの停止が指示されたか否かを判定したり、避難誘導システム10の電源停止が指示されたか否か等を判定し、該判定が否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理が繰り返され、ステップ118の判定が肯定されたところで避難誘導プログラムを終了する。
【0099】
このように、本実施の形態に係わる避難誘導システム10では、災害が発生して避難経路を探索するにあたり、避難経路の状態を表す経路状態値を求めて最適な避難経路を探索し、建物施設内に設けられた経路表示装置58に避難経路が表示されるので、建物施設利用者に対して安全かつ確実な避難経路を誘導することができる。
【0100】
より詳細には、避難経路に含まれる区画の状態を判断する際に、始点から災害発生区画までの距離、始点から避難口区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の平坦度を係数で表すことで、同事象として評価することによって、避難経路の状態を総合的に判断して避難経路を選択するので、最適な避難経路の選択が可能となる。
【0101】
また、災害レベルや緊急レベルに応じた、避難経路の表示や、災害情報の報知(モニタ60への表示やスピーカ62からの音声出力)が行われるので、災害に応じた建物施設利用者への避難誘導が可能となる。
【0102】
さらには、各種センサやカメラによって災害を検出して、避難経路を探索するため、災害の拡大や、災害の縮小等に応じて、リアルタイムに避難経路を探索することができ、より安全かつ確実な避難誘導ができる。
【0103】
なお、上記の実施の形態では、経路表示装置58として、LED光源を用いた一例を示したが、これに限るものではなく、例えば、矢印等を点灯する表示装置を適用するようにしてもよい。
【0104】
また、上記の実施の形態では、災害発生区画までの距離、始点から出入口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度を予め定めた係数の一例として、図5に示すように、災害発生区画までの距離が長くなるに従って大きく、始点から出入口を有する区画までの距離が短くなるに従って大きく、各区画の避難容量が大きくなるに従って大きく、かつ各区画の平坦度が平らになるに従って大きくなるように予め設定したものを一例として示したが、これに限るものではなく、例えば、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離が長くなるに従って小さく、始点から避難口を有する区画までの距離が短くなるに従って小さく、各区画の避難容量が大きくなるに従って小さく、かつ各区画の平坦度が平らになる程小さくなるように予め設定したものを適用してもよい。この場合には、経路状態値が予め定めた閾値以上の避難経路を除外するようにすればよい。また、経路状態値が小さい避難経路(例えば、最小の経路状態値となる避難経路)を選択することで最適な避難経路の選択が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの具体的な構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムにおける避難誘導コンピュータのHDDに記憶される地図情報の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムにおける避難誘導コンピュータのHDDに地図情報に対応して記憶される属性情報の一例を示す図である。
【図5】区画の状態を評価する経路状態値を求めるための係数マップの一例を示す図である。
【図6】災害レベルや緊急レベルに応じて経路表示装置への表示やスピーカからの音声出力を行うためのレベル対応マップの一例を示す図である。
【図7】レベル対応マップの数値に対応した報知内容の一例を示す図である。
【図8】モニタに報知内容を表示した一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの経路表示装置の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの避難誘導コンピュータで実行される避難誘導プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの避難誘導コンピュータで実行される避難経路探索プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態に係わる避難誘導システムの避難誘導コンピュータで実行される避難経路表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
10 避難誘導システム
12 災害発生検出部
14 施設情報記憶部
16 避難区画状態監視部
18 避難経路探索部
20 避難経路表示部
22 避難情報伝達部
30 避難誘導コンピュータ
40 キーボード
44 入出力インタフェース
48 火災検出センサ
50 震度計
52 浸水センサ
54 カメラ
56 外部ネットワーク
58 経路表示装置
60 モニタ
62 スピーカ
64 施錠検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難口を備えた建物施設を示す施設情報を複数の矩形の区画に分割した際の各区画の距離を含む位置情報、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度を含む各区画の属性情報を前記施設情報に付加した地図情報を記憶する記憶手段と、
災害の発生を検出する検出手段と、
前記検出手段によって災害の発生が検出されたときに、前記記憶手段に記憶された前記地図情報に基づいて、各区画を始点として前記避難口を有する区画までの避難経路を複数検索する検索手段と、
所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離、前記始点から避難口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度のそれぞれについて予め定めた係数と、前記記憶手段に記憶された前記属性情報と、に基づいて、前記検索手段によって検索された避難経路毎の安全状態を表す経路状態値を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記経路状態値に基づいて、最適な避難経路を選択する選択手段と、
を備えた避難誘導システム。
【請求項2】
前記係数は、前記避難経路の安全状態を表す前記経路状態値を算出するのに使う係数であって、所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離が長くなるに従って大きく、前記始点から避難口を有する区画までの距離が短くなるに従って大きく、各区画の避難容量が大きくなるに従って大きく、かつ各区画の前記平坦度が平らになる程大きくなるように予め定めた請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記選択手段は、更に予め定めた閾値以下の避難経路を除外した後に、前記経路状態値の高い避難経路を最適として選択する請求項2に記載の避難誘導システム。
【請求項4】
建物施設に設けられ、避難経路を表示するための表示手段と、前記選択手段によって選択された避難経路を表すように前記表示手段を制御する制御手段と、建物施設に設けられ、前記検出手段によって検出された災害の状態に対応した災害情報を報知する報知手段と、を更に備え、前記記憶手段が、前記検出手段によって検出された災害の状態と予め定めた災害レベル及び緊急レベルに対応する報知内容を更に記憶し、前記報知手段が、前記検出手段によって検出された災害に応じて対応する前記報知内容を前記記憶手段から読み出して報知する請求項1〜3の何れか1項に記載の避難誘導システム。
【請求項5】
避難口の利用可否を検出する利用可否検出手段を更に備え、前記検索手段が、前記利用可否検出手段の検出結果に基づいて、各区画を始点として利用可能な避難口を有する区画までの避難経路を検索する請求項1〜4の何れか1項に記載の避難誘導システム。
【請求項6】
災害の発生を検出する検出手段によって災害の発生が検出された場合に、避難口を備えた建物施設を示す施設情報を複数の矩形に分割した際の各区画の距離を含む位置情報、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度を含む各区画の属性情報を前記施設情報に付加した地図情報を記憶する記憶手段に記憶された前記地図情報に基づいて、各区画を始点として避難口を含む区画までの避難経路を複数検索する検索ステップと、
所定の区画から災害の発生が検出された区画までの距離、前記始点から避難口を有する区画までの距離、各区画の避難容量、及び各区画の床面の平坦度のそれぞれについて予め定めた係数と、前記記憶手段に記憶された前記属性情報と、に基づいて、前記検索ステップで検索した各避難経路毎の安全状態を表す経路状態値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記経路状態値に基づいて、最適な避難経路を選択する選択ステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させる避難誘導プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−86314(P2010−86314A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255254(P2008−255254)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】