説明

避難誘導システム

【課題】災害が発生した場合であっても、避難者を確実に出口へ誘導することが可能な避難誘導システムを提供する。
【解決手段】避難誘導システムは、複数のセンサ61−11〜61−m3及び複数の送信装置62−1〜62−mを具備する。複数のセンサ61−11〜61−m3は、予め設定された空間が分割されて形成される複数のエリア毎に設置され、設置されたエリア内における災害の発生を感知する。複数の送信装置62−1〜62−mは、複数のエリア毎に設置され、複数のセンサ61−11〜61−m3による感知結果に基づいて災害が発生したエリアを特定し、自己の設置エリアから災害発生エリアを避けて誘導する避難誘導情報を生成し、避難誘導情報を無線周波数帯の信号に変換して設置エリアへ向けて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば災害時に利用者に対して避難誘導を行う避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地下街やビルの内部等の屋内空間では、火事等の災害発生時に屋内空間に存在する者を非常口へ誘導するための誘導標識が設置されている。しかしながら、この種の誘導標識は、全ての非常口を指し示しているため、災害が発生した場合、誘導標識に従って移動しても、通路が通行不可となっている場合には非常口へ到達することができないおそれがあった。
【0003】
なお、避難誘導に関する発明としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−167140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の誘導標識では、災害が発生した場合、その誘導に従っても出口まで到達できない場合があった。
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、災害が発生した場合であっても、出口への誘導を確実に実現することが可能な避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、避難誘導システムは、複数のセンサ及び複数の送信装置を具備する。複数のセンサは、予め設定された空間が分割されて形成される複数のエリア毎に設置され、前記設置されたエリア内における災害の発生を感知する。複数の送信装置は、前記複数のエリア毎に設置され、前記複数のセンサによる感知結果に基づいて災害が発生したエリアを特定し、自己の設置エリアから前記災害発生エリアを避けて誘導する避難誘導情報を生成し、前記避難誘導情報を無線周波数帯の信号に変換して前記設置エリアへ向けて送信する。
【0007】
上記構成による避難誘導システムでは、予め設定された空間を複数のエリアに分割し、各エリアに設置されたセンサからの感知結果に基づいて災害が発生したエリアを特定する。そして、その特定したエリアを避けて非常口へ誘導するための避難誘導情報をエリア毎に作成し、これらの誘導情報を対応したエリアに設置された送信機からそれぞれ出力するようにしている。これにより、避難誘導システムは、災害の発生状況に応じて、各エリア専用の避難誘導情報をエリア毎に送信することが可能となり、各エリア専用の避難経路をエリア毎に存在する避難者に提示することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、災害が発生した場合であっても、避難者を確実に出口へ誘導することが可能な避難誘導システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る避難誘導システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る避難誘導システムが屋内空間に設置された例を示す図である。
【図4】図3に示す送信機のカバーエリアの一例を示す図である。
【図5】図1の制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】端末が避難誘導情報に基づいて表示する誘導図の一例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係わる避難誘導システムの機能構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示す送信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る避難誘導システムが屋内空間に設置された例を示す図である。
【図10】図7の送信ユニットが自己の設置エリアで災害が発生した場合の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】図7の送信ユニットが他のエリアで災害が発生した場合の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る避難誘導システムの実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る避難誘導システムの機能構成を示すブロック図である。図1における避難誘導システムは、センサ10−1〜10−n、制御装置20及び送信機30−1〜30−nを具備する。そして、避難誘導システムにおけるこれらの構成要素は、例えば地下街やビル等の屋内空間に設置される。
【0011】
センサ10−1〜10−nは、煙感知器及び熱感知器等であり、屋内空間における複数の場所に設置される。センサ10−1〜10−nは、煙等の発生又は閾値を超える熱量の発生の少なくとも一方を感知した場合、その感知結果を、後述する制御装置20へ通知する。なお、センサ10−1〜10−nは、光量又は赤外線分布等を感知するものであってもよい。
【0012】
制御装置20は、例えばマイクロプロセッサからなるCPU(Central Processing Unit)を備えたもので、図2のような機能構成を有する。すなわち、制御装置20は、特定部21、作成部22、メモリ23及び信号処理部24を備える。このうち、特定部21、作成部22及び信号処理部24は、アプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることによりその機能が実現される。メモリ23には、避難誘導の際に必要な情報が予め記録されている。
【0013】
特定部21は、センサ10−1〜10−nからの感知結果及びメモリ23に記録された情報に基づいて、屋内空間において災害が発生した場所を特定する。作成部22は、特定部21で特定された災害の発生場所及びメモリ23に記録された情報に基づいて、災害の発生した場所を避けて避難するための避難誘導情報を屋内空間における所定のエリア毎に作成する。
【0014】
信号処理部24は、作成部22で作成されたエリア毎の避難誘導情報を予め設定された放送規格の信号として送信可能な形態の信号に変換し、変換後のそれぞれの信号を、対応したエリアに設置された送信機30−1〜30−nへ出力する。ここで、予め設定された放送規格とは、デジタル放送の規格であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial)規格やISDB−MM規格等である。
【0015】
送信機30−1〜30−nは、屋内空間における所定のエリア毎に設置される。送信機30−1〜30−nは、送信処理部31−1〜31−nと、アンテナ32−1〜32−nとを備える。送信処理部31−1〜31−nは、制御装置20から導出された信号を、予め設定された変調方式で変調し、設置エリアに応じて予め設定された送信出力の電力に増幅し、特定の周波数帯に周波数変換して出力する。ここで、予め設定された変調方式とは、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式による変調方式であり、特定の周波数帯とは、例えばISDB−T規格のワンセグメント放送で使用される周波数帯又は、ISDB−MM規格で使用される周波数帯等のことである。
【0016】
アンテナ32−1〜32−nは、送信処理部31−1〜31−nからの信号に指向性を持たせて空間へ向けて送信する。必要となる指向性によっては1つのアンテナではなく、複数のアンテナを組み合わせて構成する。
このとき、送信機30−1〜30−nの送信出力と、アンテナ32−1〜32−nの指向性と利得は、設置エリアに応じて、該当するエリアのみに電波が届くように予め設定されている。
【0017】
次に、上記構成における動作を説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る避難誘導システムが屋内空間に設置された例を示す模式図である。屋内空間における通路は、図3に示すように形成されており、エリア41〜48に分割されている。また、エリア41には非常口51が設置され、エリア42には非常口52が設置され、エリア47には非常口53が設置され、エリア48には非常口54が設置されている。
【0018】
また、センサ10−1,10−2はエリア41に設置され、センサ10−3,10−4はエリア42に設置され、センサ10−5,10−6はエリア43に設置され、センサ10−7,10−8はエリア44に設置され、センサ10−9,10−10はエリア45に設置され、センサ10−11,10−12はエリア46に設置され、センサ10−13,10−14はエリア47に設置され、センサ10−15,10−16はエリア48に設置される。
【0019】
さらに、送信機30−1〜30−8は、エリア41〜48における予め設定された位置にそれぞれ1つ設置される。図4は、送信機30−1〜30−8のカバーエリアの一例を示す図である。送信機30−1〜30−8は、アンテナ32−1〜32−8により矢印の方向に電波を送信するように指向性が設定されている。また、電波の送信出力は、隣接するエリアの電波と混信が発生しない程度の強度となっている。なお、制御装置20は、屋内空間に設置してもよいが、送信機30−1〜30−nを制御可能な位置であれば、送信機30−1〜30−nと同一の空間に設置する必要は必ずしもないため、図3には記載していない。
【0020】
メモリ23には、避難誘導の際に必要な情報として、図3に示す屋内空間の地図、屋内空間におけるエリア41〜48の配置、センサ10−1〜10−16とこれらのセンサが設置されたエリアとの位置関係及び、屋内空間における避難経路の道順等が予め記録されている。
【0021】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置20の処理動作を示すフローチャートである。なお、ここでは、エリア43に例えば火災が発生した場合を例に説明する。
エリア43に火災が発生した場合、エリア43に設置されたセンサ10−5,10−6は煙等を感知し、火災が発生した旨を制御装置20へ通知する。
【0022】
制御装置20において、特定部21は、センサ10−1〜10−16からの通知があるか否かを判断する(ステップ51)。特定部21は、センサ10−1〜10−16からの通知を受けると(ステップ51のYes)、メモリ23に記録されたセンサ10−1〜10−16とエリア41〜48との位置関係を参照して、どのエリアで災害が発生したのかを特定する(ステップ52)。本例では、特定部21は、センサ10−5,10−6からの通知を受け、メモリ23に記録された位置関係を参照して、火災がエリア43で発生したことを特定する。そして、特定部21は、エリア43で火災が発生した旨を作成部22へ通知する。特定部21は、センサ10−1〜10−16からの通知が無い場合(ステップ51のNo)、通知を受け取るまでステップ51の処理を繰り返す。
【0023】
作成部22は、特定部21により特定されたエリア43を避けて非常口へ非難するための避難誘導情報を、メモリ23に記録された避難経路の道順を参照して、エリア41〜48毎に作成する(ステップ53)。作成部22は、作成した避難誘導情報を信号処理部24へ出力する。信号処理部24は、作成部22からの信号に信号処理を施し、エリア41用の避難誘導情報を送信機30−1へ出力し、エリア42用の避難誘導情報を送信機30−2へ出力し、エリア43用の避難誘導情報を送信機30−3へ出力し、エリア44用の避難誘導情報を送信機30−4へ出力し、エリア45用の避難誘導情報を送信機30−5へ出力し、エリア46用の避難誘導情報を送信機30−6へ出力し、エリア47用の避難誘導情報を送信機30−7へ出力し、エリア48用の避難誘導情報を送信機30−8へ出力する(ステップ54)。送信機30−1〜30−8は、制御装置20からの信号を設定された方向へ向けて送信する。
【0024】
各エリアに存在する者は、例えばワンセグ受信機能付きの携帯電話等の端末により、送信機30−1〜30−8のうち存在するエリアに設置された送信機から送信された電波を受信する。各端末は、受信した避難誘導情報に基づいた誘導図を端末が備える液晶ディプレイ等の表示部に表示する。図6は、エリア45の端末が送信機30−5から送信された電波を受信し、受信した避難誘導情報に基づいて表示する誘導図を示す模式図である。エリア43において火災が発生したため、端末には、非常口51,52ではなく、非常口53,54までの避難経路が表示される。
【0025】
以上のように、上記第1の実施形態に係る避難誘導システムでは、屋内空間を複数のエリアに分割し、各エリアに設置されたセンサ10−1〜10−nからの感知結果に基づいて災害が発生したエリアを特定する。そして、その特定したエリアを避けて非常口へ誘導するための避難誘導情報をエリア毎に作成し、これらの誘導情報を対応したエリアに設置された送信機からそれぞれ出力するようにしている。これにより、避難誘導システムは、災害の発生状況に応じて、各エリア専用の避難誘導情報をエリア毎に送信することが可能となり、各エリア専用の避難経路をエリア毎に存在する避難者に提示することが可能となる。
【0026】
また、上記第1の実施形態に係る避難誘導システムは、送信機30−1〜30−nから、例えばワンセグメント放送で使用される周波数帯の電波により避難誘導情報を送信している。これにより、各エリアに存在する者は、ワンセグ受信機能付きの携帯電話等の端末を持っていれば、避難誘導情報を受信することが可能となり、安全な避難経路を利用することが可能となる。
【0027】
また、上記第1の実施形態に係る避難誘導システムは、制御装置20と送信機30−1〜30−nとはネットワークを介して接続されている。これにより、避難誘導システムでは、物理的に一対一となる配線を必要としない。
したがって、本発明に係る避難誘導システムは、災害が発生した場合であっても、避難者を確実に出口へ誘導することができる。
【0028】
なお、この発明は上記第1の実施形態に限定されるものではない。例えば、センサ等が故障するなどの異常が発生し、正確な避難誘導情報を作成することができなくなった場合、メモリ23に記録された屋内空間の地図のみを送信機30−1〜30−nから出力するようにしても良い。
【0029】
[第2の実施形態]
図7は、この発明の第2の実施形態に係わる避難誘導システムの構成を示すブロック図である。図7における避難誘導システムは、送信ユニット60−1〜60−mを具備する。そして、各送信ユニット60−1〜60−mは、例えば地下街等の屋内空間における所定のエリア毎に設置される。送信ユニット60−1〜60−mは、相互に通信し合うことで設置されたエリア毎の情報を共有する。各送信ユニット60−1〜60−mはそれぞれ同様の機能を有しているため、以下では、送信ユニット60−1を例に説明する。
【0030】
送信ユニット60−1は、センサ61−11〜61−13及び送信装置62−1を備える。センサ61−11〜61−13は、煙感知器及び熱感知器等であり、屋内空間における複数の場所に設置される。センサ61−11〜61−13は、煙等の発生又は閾値を超える熱量の発生の少なくとも一方を感知した場合、その感知結果を、送信装置62−1へ通知する。なお、センサの数は3個に限られるわけではなく、2個以下であっても4個以上であってもかまわない。また送信ユニットにセンサを内蔵しても良い。
【0031】
送信装置62−1は、例えばマイクロプロセッサからなるCPUを備えたもので、図8のような機能構成を有する。すなわち、送信装置62−1は、判断部621、特定部622、通信部623、作成部624、メモリ625、信号処理部626、送信処理部627及びアンテナ628を備える。このうち、判断部621、特定部622、作成部624及び信号処理部626は、アプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることによりその機能が実現される。メモリ625には、避難誘導の際に必要な情報が予め記録されている。
【0032】
判断部621は、センサ61−11〜61−13からの感知結果に基づいて、送信ユニット60−1が設置されたエリアにおいて災害が発生したか否かを判断する。通信部623は、他の送信装置62−2〜62−mと通信することで、災害発生に関する情報を他の送信装置62−2〜62−mと共有する。特定部622は、判断部621の判断結果又は他の送信装置62−2〜62−mと共有する災害発生情報のうち少なくともいずれかと、メモリ625に記録された情報に基づいて、屋内空間における災害の発生場所を特定する。作成部624は、特定部622で特定された災害の発生場所及びメモリ625に記録された情報に基づいて、設置されたエリアから災害の発生した場所を避けて非常口まで避難するための避難誘導情報を作成する。
【0033】
信号処理部626は、作成部624で作成されたエリア毎の避難誘導情報を予め設定された放送規格の信号として送信可能な形態の信号に変換し、変換後の信号を送信処理部627へ出力する。ここで、予め設定された放送規格とは、デジタル放送の規格であるISDB−T規格やISDB−MM規格等である。
【0034】
送信処理部627は、信号処理部626からの信号を、予め設定された変調方式で変調し、設置エリアに応じて予め設定された送信出力の電力に増幅し、特定の周波数帯に周波数変換してアンテナ628から空間へ向けて送信する。ここで、予め設定された変調方式とは、例えばOFDM方式による変調方式であり、特定の周波数帯とは、例えばISBD−T規格のワンセグメント放送で用いられる周波数帯等のことである。
【0035】
アンテナ628は、必要となる指向性によっては1つのアンテナではなく、複数のアンテナを組み合わせて構成される場合もある。
送信部627の送信出力と、アンテナ628の指向性と利得は、設置エリアに応じて、該当するエリアのみに電波が届くように予め設定されている。
【0036】
次に、上記構成における動作を説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係る避難誘導システムが屋内空間に設置された例を示す模式図である。屋内空間における通路は、図9に示すように形成されており、エリア41〜48に分割されている。エリア41,42,47,48には非常口51,52,53,54がそれぞれ設置されている。
【0037】
送信ユニット60−1はエリア41に設置され、送信ユニット60−2はエリア42に設置され、送信ユニット60−3はエリア43に設置され、送信ユニット60−4はエリア44に設置され、送信ユニット60−5はエリア45に設置され、送信ユニット60−6はエリア46に設置され、送信ユニット60−7はエリア47に設置され、送信ユニット60−8はエリア48に設置される。このとき、同一の送信ユニットの送信装置及びセンサは同一のエリアに設置される。送信装置62−1〜62−8は、それぞれの電波が混信しないように、指向性及び送信出力が予め設定されている。
【0038】
メモリ625には、避難誘導の際に必要な情報として、図9に示す屋内空間の地図、屋内空間におけるエリア41〜48の配置、送信ユニット60−1〜60−8と設置されたエリアとの位置関係及び、屋内空間における避難経路の道順等が予め記録されている。
【0039】
以下では、例えばエリア43で火災が発生した場合を例に送信ユニット60の処理動作を説明する。図10は、本発明の第2の実施形態に係る送信ユニット60−3の処理動作を示すフローチャートである。
エリア43に火災が発生した場合、エリア43に設置されたセンサ61−31,61−32は煙等を感知し、火災が発生した旨を送信装置62−3へ通知する。
【0040】
送信装置62−3において、判断部621は、センサ61−31,61−32からの通知に基づいて、エリア43に災害が発生したか否かを判断する(ステップ101)。判断部621は、センサ61−31,61−32からの通知を受けた場合、エリア43に災害が発生したと判断し(ステップ101のYes)、その旨を通信部623及び特定部622へ通知する。判断部621は、センサ61−31,61−32からの通知が無い場合、エリア43には災害が発生していないと判断し(ステップ101のNo)、通知を受け取るまでステップ101の処理を繰り返す。
【0041】
通信部623は、判断部621により災害が発生した旨が通知されると、他の送信装置62−1,62−2,60−4〜62−8へ災害発生に関する情報を送信する(ステップ102)。なお、通信部623は、他のエリア41,42,44〜48で災害が発生している場合には、他の送信装置62−1,62−2,60−4〜62−8から災害発生に関する情報を受信するが、本説明ではエリア43以外で災害は発生していないため、他の送信装置62−1,62−2,60−4〜62−8から災害発生に関する情報を受信することはない。
【0042】
特定部622は、判断部621の判断結果及び、メモリ625に記録された送信ユニット60−1〜60−8とエリア41〜48との位置関係を参照し、災害が発生したエリアはエリア43のみであることを特定する(ステップ103)。
作成部624は、エリア43を避けて非常口へ非難するための避難誘導情報を、メモリ625に記録された避難経路の道順を参照して作成する(ステップ104)。作成部624は、作成した避難誘導情報を信号処理部626へ出力する。信号処理部626は、作成部624からの信号に信号処理を施し、送信処理部627へ出力する。送信処理部627は、信号処理部626からの信号に送信処理を施し、アンテナ628を介して送信する(ステップ105)。
【0043】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る送信ユニット60−1の処理動作を示すフローチャートである。
まず、送信装置62−1の通信部623は、他の送信装置62−2〜62−8から災害発生に関する情報が通知されたか否かを判断する(ステップ111)。
【0044】
本説明では、エリア43に火災が発生したため、送信装置62−3の通信部623は、エリア43で災害が発生した旨の情報を送信装置62−1,62−2,60−4〜62−8へ送信する。
送信装置62−1の通信部623は、送信装置62−3からエリア43で災害が発生した旨の情報を受信し(ステップ111のYes)、特定部622へ通知する。なお、通信部623は、送信装置62−1,62−2,60−4〜62−8から災害発生に関する情報の通知がない場合(ステップ111のNo)、通知を受け取るまでステップ111の処理を繰り返す。
【0045】
特定部622は、通信部623で受信された災害発生に関する情報及びメモリ625に記録された送信ユニット60−1〜60−8とエリア41〜48との位置関係から、災害が発生したエリアはエリア43のみであることを特定する(ステップ112)。作成部624は、エリア41からエリア43を避けて非常口へ非難するための避難誘導情報を、メモリ625に記録された避難経路の道順を参照して作成する(ステップ113)。作成部624は、作成した避難誘導情報を信号処理部626へ出力する。信号処理部626は、作成部624からの信号に信号処理を施し、送信処理部627へ出力する。送信処理部627は、信号処理部626からの信号に送信処理を施し、アンテナ628を介して送信する(ステップ114)。なお、図11では、送信装置62−1を例に説明したが、送信装置62−2,62−4〜62−8も送信装置62−1と同様の処理動作を行う。
【0046】
各エリアに存在する者は、例えばワンセグ受信機能付きの携帯電話等の端末により、送信装置62−1〜62−8のそれぞれから送信された電波を受信する。各端末は、受信した避難誘導情報に基づいた誘導図を端末が備える液晶ディスプレイ等の表示部に表示する。
【0047】
以上のように、上記第2の実施形態に係る避難誘導システムでは、屋内空間を複数のエリアに分割し、各エリアに送信ユニット60−1〜60−mを設置する。そして、送信ユニット毎に備えられたセンサにより災害の発生を感知し、この災害発生情報を各送信ユニット60−1〜60−m間で共有する。そして、送信装置62−1〜62−mのそれぞれは、共有した災害発生情報を用いて災害の発生したエリアを特定し、この特定したエリアを避けて非常口へ誘導するための避難誘導情報を作成するようにしている。これにより、避難誘導システムは、災害の発生状況に応じて、各エリア専用の避難誘導情報をエリア毎に送信することが可能となり、各エリア専用の避難経路をエリア毎に存在する避難者に提示することが可能となる。
【0048】
また、上記第2の実施形態に係る避難誘導システムは、送信装置62−1〜62−mから、例えばワンセグメント放送で使用される周波数帯の電波により避難誘導情報を送信している。これにより、各エリアに存在する者は、ワンセグ受信機能付きの携帯電話等の端末を持っていれば、避難誘導情報を受信することが可能となり、安全な避難経路を利用することが可能となる。
【0049】
したがって、本発明に係る避難誘導システムは、災害が発生した場合であっても、避難者を確実に出口へ誘導することができる。
なお、この発明は上記第2の実施形態に限定されるものではない。例えば、送信装置62−1〜62−mは、センサの故障等の異常が発生したことにより、正確な避難誘導情報を作成することができなくなった場合には、メモリ625に記録された屋内空間の地図のみを送信するようにしても良い。
【0050】
また、上記第2の実施形態における図10及び図11では、エリア43のみで火災が発生した場合を例に説明したが、災害が発生するエリアは1つに限定される訳ではない。例えば、エリア43の他にエリア42で火災が発生する場合であっても同様に実施可能である。この場合、送信装置62−3の特定部622は、判断部621の判断結果と、送信装置62−2からの災害発生に関する情報とに基づいて、災害が発生したエリアがエリア42,43であることを特定する。
【0051】
[その他の実施形態]
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、災害が発生した場合に、送信機30−1〜30−n及び送信装置62−1〜62−mから特定の周波数帯を用いて避難誘導情報を送信する例について説明したが、送信機及び送信装置は、災害が発生したときのみに信号を送信することに限定される訳ではない。すなわち、送信機及び送信装置は、災害発生時以外の場合には、現在放送されているワンセグ放送波の再送信、あるいは屋内空間独自の館内情報等の特定エリアに限定されたワンセグ放送を通常放送信号として送信することも可能である。このとき、避難誘導システムは、通常放送と災害時の避難誘導情報とを並列して送信する機構を有していても良いし、災害時に通常放送から避難誘導情報へ切り替える機構を有していても良い。ただし、通常放送と災害時の避難誘導情報とを並列して送信する場合には、避難者が使用する端末において受信する信号を切り替える機構を有する必要がある。これにより、各エリアにいる者は、通常の場合には端末により一般的な情報を取得することが可能であり、災害発生時には避難誘導情報を取得することが可能となる。
【0052】
また、上記各実施形態では、図3及び図9に示すように形成された屋内空間に避難誘導システムを設置する例について説明したが、屋内空間の形は図3及び図9に示すものに限定される訳ではない。
また、上記各実施形態では、避難誘導システムを屋内空間で使用する例について説明したが、屋内の使用に限定されるわけではなく、屋外で使用してもかまわない。なお、この場合、屋外における適切な位置にセンサ及び送信機を配置するようにする。
【0053】
さらに、この発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10−1〜10−n…センサ
20…制御装置
21…特定部
22…作成部
23…メモリ
24…信号処理部
30−1〜30−n…送信装置
31−1〜31−n…送信処理部
32−1〜32−n…アンテナ
41〜48…エリア
51〜54…非常口
60−1〜60−m…送信ユニット
61−11〜61−m3…センサ
62−1〜62−m…送信装置
621…判断部
622…特定部
623…通信部
624…作成部
625…メモリ
626…信号処理部
627…送信処理部
628…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された空間が分割されて形成される複数のエリア毎に設置され、前記設置されたエリア内における災害の発生を感知する複数のセンサと、
前記複数のエリア毎に設置され、前記複数のセンサによる感知結果に基づいて災害が発生したエリアを特定し、自己の設置エリアから前記災害発生エリアを避けて誘導する避難誘導情報を生成し、前記避難誘導情報を無線周波数帯の信号に変換して前記設置エリアへ向けて送信する複数の送信装置と
を具備することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
前記送信装置は、
前記複数のセンサのうち自己の設置エリアと同一のエリアに設置されたセンサによる感知結果に基づいて前記自己の設置エリアで災害が発生したか否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて災害が発生したエリアを特定する特定部と、
前記特定したエリアを避けて避難誘導する前記避難誘導情報を作成する作成部と、
前記作成された避難誘導情報を信号処理し、前記無線周波数帯の信号に変換して送信する送信部と
を備えることを特徴とする請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記送信装置は、
前記複数のセンサのうち自己の設置エリアと同一のエリアに設置されたセンサによる感知結果に基づいて前記自己の設置エリアで災害が発生したか否かを判断する判断部と、
前記自己の設置エリアにおける災害発生に関する情報を他のエリアに設置された他の送信装置へ送信し、他のエリアに設置された送信装置から送信された前記他のエリアにおける災害発生に関する情報を受信する通信部と、
前記判断部の判断結果又は前記他のエリアにおける災害発生に関する情報のうち少なくともいずれかに基づいて災害が発生したエリアを特定する特定部と、
前記特定したエリアを避けて避難誘導する前記避難誘導情報を作成する作成部と、
前記作成された避難誘導情報を信号処理し、前記無線周波数帯の信号に変換して送信する送信部と
を備えることを特徴とする請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記複数のエリアのうち、同一エリアに設置されたセンサと送信装置とは、一つの送信ユニットを形成することを特徴とする請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項5】
前記送信装置は、前記センサで災害の発生が感知されない間は、前記空間独自の情報信号及び外部から入力された放送信号のうち少なくともいずれかを送信することを特徴とする請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項6】
前記送信装置は、前記複数のセンサとの接続が切断された場合は前記空間の地図情報を送信することを特徴とする請求項1記載の避難誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−256361(P2012−256361A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187904(P2012−187904)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2009−152352(P2009−152352)の分割
【原出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】