説明

避雷管および雷保護装置

【課題】搭載される基板を小さくできる避雷管と雷保護装置を提供する。
【解決手段】避雷管1が搭載される基板2は、パターン3を介して避雷管1に対して電気的に接続される部品(図1では省略)を搭載するものである。避雷管1は、パターン3に対して本体11の外部で電気的に接続される複数の信号電極12を有する。複数の信号電極12のパターン3の位置でのピッチは、例えば、1.27mmであり、これは、部品のピンのピッチに等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷管および雷保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅やビル内に設置するPC(パーソナルコンピュータ)やルーター等の情報通信機器は、インターネットや他の情報通信機器と接続するために、そのほとんどがLANポートを搭載している。また、住宅内においては、複数の情報通信機器がLANケーブルで接続され、LANを構成している。LANポートに接続されるLANケーブルは通常は金属のケーブルであるため、雷サージのような過電圧、過電流の通過経路となりうる。FTTHが普及している現在では、雷サージは通信線から侵入することはないが、電源線やLANに接続される情報通信機器の接地線から侵入することがあり、LANケーブルを介してLANに接続されている様々な情報通信機器に被害を与えている。
【0003】
従来、このような故障から情報通信機器を守る対策としては、LANに接続される情報通信機器を等電位化する方法や、サージ防護デバイス(SPD)による雷電流を放流する方法、パルストランスによる絶縁を用いる方法などが用いられている。この中でコストや情報通信機器単体での実施の容易さから一般的に用いられているのが、SPDを用いた雷保護装置である。LANポートの信号回路は、信号用のパルストランスで絶縁されている構成のため、通常機器内での雷保護は行われておらず、雷保護は外付けタイプの雷保護装置を取り付けて行っている。この雷保護装置は、パルストランスによる絶縁タイプのものや、放電管による雷電流放流タイプのものが実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−124381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FTTHが普及するにしたがい、DSU(Digital Service Unit)一体型HGW(Home Gate Way)において、LANポートが雷サージにより故障する事例が増加している。これは、家屋内でLANを構成することで、LANに接続される情報通信機器の電源線や接地線から雷サージが侵入すること原因である。対策として外付けタイプの雷保護装置を設置することが行われている。しかし、HGWなどのネットワーク機器はLANポートを複数搭載しており、外付けタイプの雷保護装置により対策を実施すると、LANポート数と同数の保護装置を設置する必要があり、大きな設置スペースが必要になる、LANケーブル接続が増加する、保護装置コストがかさむ等の問題があった。実際は、雷保護対策を全てのLANポートに実施する必要はないが、実施しなければならないLANポートがどれかを判断するには専門知識が必要であるため、実効上全てのLANポートに対策を行わなければならないという問題もある。
【0006】
さらに、HGW内に雷保護装置を実装することを考えると、絶縁タイプの場合、高耐圧のパルストランスが必要であるが、パルストランスは通信線2線用であるため、1LANポートで4個のパルストランスが必要となる。また、絶縁タイプでは、パルストランスの1次−2次間の高絶縁耐力が必要となるため、基板上の沿面距離を考慮した間隔を開ける必要がある。さらに複数のLANポートを搭載する場合、LANポート間の高絶縁耐力および沿面距離が必要となるため、多くのスペースを要求される。また、複数のパルストランスを実装する場合、伝送信号の劣化や反射を考慮した設計が要求されるため、複雑な配線パターンになるなど設計費用の増加などの問題もある。
【0007】
避雷素子による放流タイプの雷保護装置を実装することを考えると、現在市販されている放電管(GDT)は3極放電管となり、パルストランスと同様、図8に示すように、1LANポート当たり4個の3極避雷管1Aが必要となり、多くの実装スペースが要求される。また、パルストランスの場合と同様に、伝送信号の劣化や反射を考慮した設計が必要となる。
【0008】
以上のように、LANポートの雷保護装置を実現するためには、従来の技術を用いると、実装スペース、部品コスト、パターン配線設計コストの増大が大きな問題となり、低価格で、高信頼の情報通信機器を提供できない。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搭載される基板を小さくできる避雷管と雷保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の避雷管は、基板に搭載される避雷管であって、前記基板は、前記基板に形成されるパターンを介して前記避雷管に対して電気的に接続される部品を搭載するものであり、前記部品は、前記基板に形成されるパターンに対して電気的に接続される複数のピンを備え、前記避雷管は、前記避雷管の本体と、当該本体の内外を連通するとともに前記基板に形成されるパターンに対して本体の外部で電気的に接続される複数の信号電極と、前記各信号電極に対して本体の内部で放電のための空間を隔てて配置される接地電極と、有し、前記複数の信号電極のパターンの位置でのピッチは、前記複数のピンのパターンの位置でのピッチに等しいことを特徴とする。
【0011】
本発明の雷保護装置は、基板と前記基板に搭載される避雷管とを備える雷保護装置であって、前記基板は、前記基板に形成されるパターンを介して前記避雷管に対して電気的に接続される部品を搭載するものであり、前記部品は、前記基板に形成されるパターンに対して電気的に接続される複数のピンを備え、前記避雷管は、前記避雷管の本体と、当該本体の内外を連通するとともに前記基板に形成されるパターンに対して本体の外部で電気的に接続される複数の信号電極と、前記各信号電極に対して本体の内部で放電のための空間を隔てて配置される接地電極と、有し、前記複数の信号電極のパターンの位置でのピッチは、前記複数のピンのパターンの位置でのピッチに等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の避雷管および雷保護装置によれば、避雷管の信号電極のピッチを、部品のピンのピッチに等しくしたことで、各パターンのピッチを避雷管の近くで広げなくてよいので、避雷管を搭載する基板を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る避雷管の構成を示す図である。
【図2】避雷管1の避雷管1の内部構造の一例を示す模式図である。
【図3】避雷管1を用いた雷保護装置の第1実施例の構成を示す図である。
【図4】避雷管1を用いた雷保護装置の第2実施例の構成を示す図である。
【図5】避雷管1を用いた雷保護装置の第3実施例の構成を示す図である。
【図6】避雷管1を用いた雷保護装置の第4実施例の構成を示す図である。
【図7】避雷管1を用いた雷保護装置の第5実施例の構成を示す図である。
【図8】従来の雷保護装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1(a)は、本実施の形態に係る避雷管の斜視図であり、図1(b)は、避雷管の平面図であり、図1(c)は、避雷管の正面図である。
【0016】
避雷管1は、基板2に搭載される避雷管であって、基板2は、基板2に形成されるパターン3を介して避雷管1に対して電気的に接続される部品(図1では省略)を搭載するものである。部品は、パターン3に対して電気的に接続される複数のピンを備える。
【0017】
避雷管1は、避雷管1の本体11と、本体11の内外を連通するとともにパターン3に対して本体11の外部で電気的に接続される複数の信号電極12と、各信号電極12に対して本体11の内部で放電のための空間(図示せず)を隔てて配置される接地電極13と、有する。各信号電極12は、該当のパターン3を介して、いずれかのピン(避雷管1とともに基板2に搭載される部品のピン)に電気的に接続される。接地電極13は、図示しないパターンや金属筐体などを介して、大地などに電気的に接続される。
【0018】
複数の信号電極12のパターン3の位置での間隔(以下、信号電極12のピッチという)は、例えば、1.27mmであり、これは、部品の複数のピンのパターン3の位置での間隔(以下、ピンのピッチという)に等しい。ピッチは、1.27mmでなくてもよい。
【0019】
例えば、避雷管1は、本体11と、8本の信号電極12(12−1〜12−8)と、1本の接地電極13とを有する、いわゆる9極避雷管である。
【0020】
例えば、避雷管1は、1本の接地電極13を中心にして、8本の信号電極12のうちの4本と残りの4本の信号電極12とを対向させた構造である。前者の4本と後者の4本は互い違いに配置されている。この場合、信号電極12のピッチは、信号電極12−1と信号電極12−5の間隔である。
【0021】
このように、信号電極12のピッチを部品のピッチに等しくすることで、各パターン3のピッチ(間隔)を避雷管1の近くで広げなくてよいので、基板2を小さくできる。また、伝送信号の劣化や反射への考慮が不要である。つまり、対策部品を省け、その分、基板2を小さくできる。また、避雷管1を含む雷保護装置を小型化し、低コスト化できる。
【0022】
図2は、避雷管1の内部構造の一例を示す模式図である。
【0023】
図の避雷管1は、いわゆる9極避雷管である。避雷管1の中央に接地電極13が配置され、その一方側に信号電極12−1〜12−4が配置され、他方側に信号電極12−1〜12−4が配置される。
【0024】
信号電極間よりも、信号電極と接地電極13の間で放電しやすくするために、信号電極は、図のように、接地電極13に向かって凸状になっている。
【0025】
避雷管1の本体11は、セラミックで構成されており、本体11の内部、つまり、信号電極間ならびに信号電極と接地電極13の間の空間には、所望の放電電圧に対応する種類のガスが混入されている。
【0026】
(第1実施例)
図3は、避雷管1を用いた雷保護装置の第1実施例の構成を示す図である。
【0027】
第1実施例の雷保護装置10Aは、ホームゲートウェイ(図示せず)のような、複数のLANポートを搭載する機器のLAN回路として構成したものである。雷保護装置10Aは、基板2と、基板2に搭載される4個の避雷管1と、4個のコネクタ5と、4個のパルストランス6と、1個の集積回路7とを搭載する。各コネクタ5は、RJ45と称されるタイプのものである。避雷管1は、いわゆる9極避雷管である。
【0028】
避雷管1の信号電極のピッチは、コネクタ5のピンのピッチに等しく、また、パルストランス6のピンのピッチに等しい。よって、各パターン3のピッチを避雷管1の近くで広げなくてよいので、基板2を小さくでき、上記の相乗効果も得られる。
【0029】
(第2実施例)
図4は、避雷管1を用いた雷保護装置の第2実施例の構成を示す図である。
【0030】
第2実施例の雷保護装置10Bは、通信端末TのLANポートに直接接続される雷保護装置である。雷保護装置10Bは、基板2と、基板2に搭載される1個の避雷管1および2個のコネクタ81、82を備える。コネクタ81は、RJ45と称されるタイプのもので、メスのタイプである。コネクタ82は、RJ45と称されるタイプのもので、オスのタイプである。避雷管1の信号電極のピッチは、コネクタ81、82のピンのピッチに等しい。よって、各パターン3のピッチを避雷管1の近くで広げなくてよいので、基板2を小さくでき、上記の相乗効果も得られる。また、雷保護装置10Bの小型化に伴い、軽量化できるので、雷保護装置10Bは、LANポートに直接接続される雷保護装置として好適である。また、軽量なので、全てのLANポートに接続しても、重量の負担が少ない。
【0031】
(第3実施例)
図5は、避雷管1を用いた雷保護装置の第3実施例の構成を示す図である。
【0032】
第3実施例の雷保護装置10Cは、一般的な外付けタイプの雷保護装置である。雷保護装置10Cは、基板2と、基板2に搭載される1個の避雷管1および2個のコネクタ81を備える。避雷管1の信号電極のピッチは、コネクタ81のピンのピッチに等しい。つまり、避雷管1をいわゆる9極避雷管としたので、いわゆる3極避雷管を複数搭載する必要がなく、雷保護装置10Cを小型、軽量化できる。また、部品点数も少なくでき、低コスト化できる。
【0033】
(第4実施例)
図6は、避雷管1を用いた雷保護装置の第4実施例の構成を示す図である。
【0034】
第4実施例の雷保護装置10Dは、外付けタイプの電源−アナログ回線用の複合型雷保護装置に、LANポート用の回路を追加したものあり、ホームゲートウェイ(図示せず)のような、電源、アナログポート、LANポートをもつ機器に対応できる雷保護装置である。雷保護装置10Dは、基板2と、基板2に搭載される1個の避雷管1、2個のコネクタ81、電源用雷保護装置91、2個のコネクタ92およびアナログ用雷保護装置93を備える。各コネクタ92は、RJ11と称されるタイプのものである。避雷管1の信号電極のピッチは、コネクタ81のピンのピッチに等しい。よって、雷保護装置10Dを小型、軽量化できる。また、部品点数も少なくでき、低コスト化できる。なお、雷保護装置10Dは、1ポート用だが、必要なポート数に応じて、避雷管1とコネクタ81の組を増やしてもよい。通常では、このような複合型雷保護装置は、電源用雷保護装置91、アナログ用雷保護装置93を搭載しているように、保護回路数が多くなり、基板2が大型化する問題があったが、避雷管1の信号電極のピッチは、コネクタ81のピッチに等しくすることで、基板2の小型化が可能となる。
【0035】
(第5実施例)
図7は、避雷管1を用いた雷保護装置の第5実施例の構成を示す図である。
【0036】
第5実施例の雷保護装置10Eは、アナログ回路に用いられる雷保護装置である。雷保護装置10Eは、基板2と、基板2に搭載される1個の避雷管1および4個のコネクタ92を備える。避雷管1は9極避雷管であり、アナログ回線を4回線同時に保護することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 避雷管
2 基板
3 パターン
10A、10B、10C、10D、10E 雷保護装置
11 避雷管1の本体
12、12−1〜12−8 信号電極
13 接地電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載される避雷管であって、
前記基板は、前記基板に形成されるパターンを介して前記避雷管に対して電気的に接続される部品を搭載するものであり、
前記部品は、前記基板に形成されるパターンに対して電気的に接続される複数のピンを備え、
前記避雷管は、前記避雷管の本体と、当該本体の内外を連通するとともに前記基板に形成されるパターンに対して本体の外部で電気的に接続される複数の信号電極と、前記各信号電極に対して本体の内部で放電のための空間を隔てて配置される接地電極と、有し、
前記複数の信号電極のパターンの位置でのピッチは、前記複数のピンのパターンの位置でのピッチに等しい
ことを特徴とする避雷管。
【請求項2】
基板と前記基板に搭載される避雷管とを備える雷保護装置であって、
前記基板は、前記基板に形成されるパターンを介して前記避雷管に対して電気的に接続される部品を搭載するものであり、
前記部品は、前記基板に形成されるパターンに対して電気的に接続される複数のピンを備え、
前記避雷管は、前記避雷管の本体と、当該本体の内外を連通するとともに前記基板に形成されるパターンに対して本体の外部で電気的に接続される複数の信号電極と、前記各信号電極に対して本体の内部で放電のための空間を隔てて配置される接地電極と、有し、
前記複数の信号電極のパターンの位置でのピッチは、前記複数のピンのパターンの位置でのピッチに等しい
ことを特徴とする雷保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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