説明

還元鉄製造用成形原料の製造方法

【課題】新たな設備の建設や複雑な運転制御を必要とすることなく、成形と焼成のために求められる適正な水分の成形原料を有利に製造するための技術を提案することにある。
【解決手段】鉄含有原料に、水やバインダーとを加えて混合機にて攪拌混合し、その混合原料を成形することによって還元鉄製造用成形原料を製造するに当たり、成形に先立つ前記混合原料の含有水分を6±0.5mass%に調整し、その後、成形機による成形によって、含有水分を5±0.5mass%とした還元鉄製造用成形原料を得る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元鉄製造用成形原料の製造方法に関し、とくに、回転炉床式還元炉などに装入される、製鉄ダスト等からなる鉄含有原料の成形物(成形原料)を事前処理する方法、とりわけ該成形原料の水分調整の方法に特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄資源は枯渇しており、製鉄副産物を有効利用して製造される還元鉄が脚光を浴びている。その還元鉄は、高炉ダストや転炉ダストなどの製鉄副産物である粉状の鉄含有原料を、例えば、回転炉床式還元炉(以下、単に「回転炉床炉」という)によって還元することによって製造されている。
【0003】
上記回転炉床炉の操業において主原料とされる粉状の鉄含有原料は、これを粉状のままで扱うと輸送過程において飛散しやすくロスと環境問題を引き起こす他、炉内では、そのほとんどが排ガスと共に排出されてしまうという問題があった。そこで、従来、このような粉状の鉄含有原料は、回転炉床炉内に装入する前に、予め成型機でブリケット化され、または造粒機でペレット化され、成形物(成形原料)とした上で、回転炉床炉内に装入するのが一般的である。
【0004】
従来の前記成形原料については、ペレットやブリケットにしたときの強度が不足することがあり、輸送過程において割れて粉化しやすいため、そのままでは前記回転炉床炉内に装入することができない場合があった。また、このような成形原料(塊成物)は付着水分量が多く、その水分が高温の炉内において急激に蒸発することによって爆裂するおそれもあることから、成形原料を一旦、乾燥した後に装入するのが一般的であった(特許文献1、2、3、4、5参照)。
【0005】
なお、電気炉や転炉の操業においては、混合原料を乾燥せずに直接投入することがあるが、この場合、Znなどの重金属が溶鋼中に残留するという不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−167624号公報
【特許文献2】特開2005−272895号公報
【特許文献3】特開2005−97665号公報
【特許文献4】特開2001−234256号公報
【特許文献5】特開平11−12624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、回転炉床炉内に装入される上記成形原料は、一般に、粉状の鉄含有原料を、加湿して混練することによりブリケットやペレットに塊成化した後、その塊成物を加熱装置により乾燥して水分調整したものを炉内に装入するようにしている。(特許文献1、2などに例示)。しかし、この方法では、新らたに乾燥設備を設けることが必要になり、設備費の増大、乾燥燃料費の増大等の問題がある。また、塊成化後の乾燥に代えて、成形工程の前の段階において、乾粉を加えることにより、含有水分が3mass%以下の水分量にまで乾燥する方法も提案されている(特許文献3参照)が、前記と同様の問題を抱えていた。
【0008】
さらに、粉状の鉄含有原料をスラリー状にしてからこれを攪拌混合し、その後含有水分が15〜30mass%になるように脱水してから成形する方法(特許文献4参照)や高速攪拌ミキサーを使って処理した後に成形する方法(特許文献5参照)などの提案もあるが、いずれもスラリー処理設備、脱水設備、あるいは特殊な攪拌機が必要であり、設備費の増大や、複雑な運転制御が必要となるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、新たな設備の建設や複雑な運転制御を必要とすることなく、成形時と焼成時の両方で適正な水分となる成形原料を製造するための技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らはまず、従来技術が抱えている上述した問題点を克服することができる方法について検討した結果、以下に述べるような手段を採用することにより解決することができることを知見し、本発明を開発するに到った。即ち、本発明は、主原料である粉状の鉄含有原料に、少なくとも水とバインダーとを加えて混合機にて攪拌混合し、その混合原料を成形することによって還元鉄製造用成形原料を製造するに当たり、成形に先立つ前記混合原料の含有水分を6±0.5mass%に調整し、その後、成形機によって成形した後の含有水分を5±0.5mass%に調整とすることを特徴とする還元鉄製造用成形原料の製造方法である。
【0011】
なお、本発明においては、
(1)混合原料の含有水分の調整を、混合機への水分添加の他、湿粉の添加量もしくは乾燥粉の添加量を調整することによって乾燥もしくは除湿することによって行うこと、
(2)前記湿粉が、湿式回収された高炉ダストや転炉ダスト、電気炉ダスト等の鉄を含む製鉄湿ダスト、ミルスケール粉、スラッジのいずれかであること、
(3)前記乾燥粉が、乾式回収された高炉ダストや転炉ダスト等の鉄を含む製鉄乾ダストや焼結工場の返鉱などの篩下粉であること、
(4)混合原料の含有水分は、水分測定器を混合機の入側・出側にそれぞれ設置し、出側水分測定値を入側水分測定器にフィードバックして、加湿もしくは乾粉と湿粉の切り出し量を調整することによって行うこと、
がより好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成される本発明に係る成形原料の製造方法によれば、粉状の鉄含有原料の成形後の乾燥設備が不要となり、設備投資費用の負担を軽減することができる。
しかも、本発明によれば、成形に適した含有水分に調整できるだけでなく、成形後の成形物(成形原料)の水分についても、高温の回転炉床炉内に装入して加熱する際に爆裂しない適正な水分濃度に調整できるので、製品の歩留や金属化率を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、乾燥粉と湿ダストとの配合調整を行うことで、比較的少ない水添加によって、低い含水量に水分調整するので、経済的で環境にやさしい技術を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る成形原料製造工程の一例を示す略線図である。
【図2】実施例1における加水量調整時の混合粉水分の変化を示すグラフである。
【図3】他の実施例における加水量調整時の混合粉水分の変化を示すグラフである。
【図4】さらに他の実施例における加水量調整時の混合粉水分の変化を示すグラフである。
【図5】実施例2における加水量調整時の混合粉水分の変化を示すグラフである。
【図6】実施例1における水分調整後のブリケット水分と歩留、落下強度、粉率への影響を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、回転炉床炉1に、本発明を適用して製造される成形原料を装入する例を示す工程図である。この工程図に示すように、本発明の成形原料の製造方法においては、1〜複数種の鉄含有原料粉用ホッパー2a、2b…、石灰石粉用ホッパー2c、およびバインダー用ホッパー3から、それぞれの原料粉が所要の配合になるように切出しコンベヤ4上に切り出され、次いで、これらの原料粉は1基もしくは2基の混合機5、6内に装入されて攪拌混合され、そして、その混合物は混合原料ホッパー7を経たのち、成形機8にて、例えば長さ33mm×幅23mm×厚さ13〜15mm(6〜7cm)の所要の形状に成形され、次いで、例えば15mm以上の篩目のスクリーン9を通して、粒径が20〜40mm程度の成形物(成形原料)とする。こうして製造された、所要の大きさに調整された成形原料は、装入コンベヤ10を介して、回転炉床炉1内に装入される。
【0015】
上記の設備構成において、前記コンベヤ4上には、切り出された前記各種原料粉の初期(混合前)水分を測定するための初期水分測定器11が配設されていると共に、混合工程後の前記混合物ホッパー7には、混合物水分を測定するための処理後水分測定器12が配設されており、そして、前記混合機、好ましくは後段の混合機6に水分添加器13が配設される。
【0016】
以下、上記の設備を用い、本発明方法に従う水分調整、即ち、混合原料の水分を成形(造粒)するのに好ましい水分量に調整すると共に、成形後の成形物(成形原料)については、高温の炉内において爆裂するようなことなく安定して溶融還元されるような好適水分量に制御することによって、所望の還元鉄製造用成形原料を製造する方法につき説明する。
【0017】
(1)水分添加による方法
この方法は、後段の混合機6に配設したスプレーノズルのような水分添加器13により、混合原料に対し、適量の水を加えることによって、成形するのに好ましい水分量である6±0.5mass%に調整するものであり、切出しコンベヤ4上の水分測定器11の測定値をフィードバック制御することによって実現される。
(2)乾粉、湿粉の配合による方法
上記による方法と同様に、切出しコンベヤ4上の水分測定器11を使うフィードバック制御を行うことによって、後段の混合機6における混合原料の水分量が6±0.5mass%になるように、高炉の乾式除塵ダストや焼結工場で発生する篩下粉(返鉱など)などの乾粉、もしくは湿式回収された高炉ダストや転炉ダスト、電気ダストもしくはミルスケール粉、スラッジ等の湿粉を、互いに所定量を添加して混合調整する方法である。具体的には、製鉄ダストのような鉄含有原料粉に、上記乾・湿粉からなる成分調整をも目的として加えられる助材を石灰や澱粉のようなバインダーとともに添加することで、所望の水分量(6±0.5maa%)にするのである。
(3)水分添加と成分調整用助材添加との併用
上述した(1)の方法と、(2)の方法との両方法による調整により、成形に最も適した含有水分量(6±0.5maa%)にする方法である。
【0018】
本発明において、成形前の混合原料粉の水分量を6±0.5mass%に調整する理由は、上述したように、成形に当たっては適当な水分が必要であり、5.5mass%以上であれば成形機での圧密作用が充分に機能して成形ができるからである。逆に、6.5mass%超では高温炉内等での焼成時において爆裂を起す可能性があるだけでなく、該成形機内壁部に粉の付着が発生し、生産効率が低下する。このましくは5.5mass%〜6.0mass%の水分量にする。
【0019】
次に、上述したようにして水分調整された混合原料粉は、成形機8での成形工程に廻されるが、この成形処理時の発熱により、成形原料の含有水分量はちょうど5±0.5mass%程度に結果的に調整されることになる。その結果、成形原料を乾燥工程を経ることなく、回転炉床炉1内にそのまま装入することができるようになり、この場合でも、必要な強度が確保されるために、炉内で爆裂するようなことがなくなる。
【実施例】
【0020】
(1)この実施例では、図1に示す設備を使い、水分添加器13から所定量の水を添加する方法により、混合機6出側にある混合原料ホッパ7に付帯して設けた水分測定器12により、混合粉の水分を測定し、ロール成形機8により成形原料(ブリケット)を製造したときの様子を目視により観察を行った。
【0021】
その結果を、図2、図3、図4に示す。
a.図2の例は、高炉乾式ダスト(BDC):返鉱(焼結粉):澱粉をそれぞれ89:11:2.5の割合で配合し、加水量3.5〜4.0mass%で操業した例であるが、混合粉の水分が4.5mass%を下廻ったブリケットについては、強度が低く、コンベア10出口での−15mm粉の比率が高いという結果になった。
b.図3の例は、BDC:返鉱:90:10:2.5の配合において、加水量を4.0〜4.5mass%と多くした場合であるが、混合粉水分は6.5mass%を超え、粉が成形用ロールに付着してロール詰りを起こした。
c.図4の例は、BDC:返鉱:石灰石:澱粉=81:14:5:2.5の配合において、加水量を最大4.0mass%とした場合、混合粉水分は7.0mass%となり、ロール表面への粉の付着が観察された。一方、本発明の目指す混合原料粉の水分6.5±0.5maa%の湿分調整をするとロール表面への粉の付着が発生せず、本発明が有効であることが確められた。
【0022】
(2)この実施例は、バインダー(澱粉)は一定(2.5)として、主としてBDC(74〜89)と返鉱(11〜26)の割合に大きな変化をもたせる一方で、加水量について若干の変動を抑えて、所謂、湿粉(BDC)と乾粉(返鉱)の割合を調整するという方法で水分調整を行ったものである。
【0023】
その結果を、図5に示す。図5からわかるように、原料の配合割合を変えて(A)、混合粉水分を大きく変化させると、水分量は5.0mass%を下り、ブリケット強度の低下を招いたため、加水量の引き上げが必要になった。一方、返鉱の量を抑えた場合(B、C)、加水量をあまり上げなくとも混合粉水分が高くなり、それが6.5mass%を超えるものでは、粉のロール付着が目立つようになった。
【0024】
次に、図6は、上記のA〜C期の混合原料をロール成形機8にて成形した後の成形原料(ブリケット)の水分量を測定したものであるが、水分量5.5±0.5mass%の範囲内にあるものについては、成形歩留や落下強度が高く、一方で粉率(コンベア10出口での−15mm比率)は低いという結果が得られており、それ故に、その成形原料のまま回転炉床炉に装入することができる成形原料を得ることができる。
なお、ブリケットの落下強度は、30個のブリケットについて、50cmの高さからブリケットを鉄板上に3回落下させた後の+15mm比率である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の技術は、回転炉床炉に装入するための成形原料の製造方法として有効なだけでなく、例えば、焼結機用成形原料や他の還元炉の成形用原料の製造技術としても有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 回転炉床炉
2 原料ホッパー
3 バインダー用ホッパー
4 切出しコンベヤ
5、6 混合器
7 混合原料ホッパー
8 成形機
9 スクリーン
10 装入コンベヤ
11、12 水分測定器
13 水添加器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料である粉状の鉄含有原料に、少なくとも水とバインダーとを加えて混合機にて攪拌混合し、その混合原料を成形することによって還元鉄製造用成形原料を製造するに当たり、
成形に先立つ前記混合原料の含有水分を6±0.5mass%に調整し、その後、成形機によって成形した後の含有水分を5±0.5mass%に調整することを特徴とする還元鉄製造用成形原料の製造方法。
【請求項2】
混合原料の含有水分の調整を、混合機への水分添加の他、湿粉の添加量もしくは乾燥粉の添加量を調整することによって乾燥もしくは除湿することによって行うことを特徴とする請求項1に記載の還元鉄製造用成形原料の製造方法。
【請求項3】
混合原料の含有水分は、水分測定器を混合機の入側・出側にそれぞれ設置し、出側水分測定値を入側水分測定器にフィードバックして、加湿もしくは乾粉と湿粉の切り出し量を調整することによって行うことを特徴とする請求項1または2に記載の還元鉄製造用成形原料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−111662(P2011−111662A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271183(P2009−271183)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成13年新エネルギー・産業技術総合開発機構基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】